2011年03月06日
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カテゴリ: シリーズ京歩き


そして、それが今も受け継がれています。
中でもその代表格といえるのが、西陣織と呼ばれる絹織物。

その絢爛華麗な織物は、平安朝の頃の宮廷の織り集団の技を引き継ぐものであるといわれ、
日本の伝統美を象徴するもののひとつであると云うことができます。

先日、この西陣の界隈を歩いてみました。
西陣のお寺めぐりを通して、西陣の歴史について考えてみたいというのが、
今回の記事のテーマであります。


まず、訪れたのが、西陣の人たちから「聖天さん」と呼ばれ、親しまれているお寺「雨宝院」。


雨宝院


ここには、「染殿井」と呼ばれる井戸があって、
この水は、染色に使うとよく染まるといわれていることから、
昔は、染物関係の人が、よくこの水を汲みに来ていたのだそうです。


染殿井


ここの境内は、狭いにもかかわらず、いくつものお堂が並び、
しかも、松や桜などの樹々が境内をうめつくしているため鬱蒼としていて、
まるで、町の中のジャングルのようです。

雑然としているといえば、そうなんですが、
とても静かで、何の物音も聞こえない、
不思議に落ち着ける、魅力のあるお寺です。


雨宝院境内


また、ここは、桜が開花する頃も見ごたえがあるそうです。
根元近くからも花を咲かせる、歓喜桜と呼ばれている名木もあり、
京都では、隠れた桜の名所として知られているのだそうです。


歓喜桜



「雨宝院」を出て、町を歩くと、やはり、織物関係の会社が目につきます。
中小規模の会社が多いですね。

この西陣という名の起こりは、応仁の乱の時に、
西軍の本陣が置かれたということによるもの。

西陣というのは、
そういう地名があるわけではなくて、
ただ単に、この地域一帯のことを西陣と呼び習わされてきたわけです。

応仁の乱の時には、西陣の職人たちも戦禍をのがれ、
堺や奈良に避難をしていました。
そして、乱が終息したと聞くと、また、ここへ戻ってきて、
西陣の織物業を復興させたのです。

そして、その後、西陣は最も繁栄した時代を迎えることになります。


次に訪れたのが、「報恩寺」というお寺です。

ここの寺の梵鐘は、重要文化財にも指定されているという古鐘で、
別称「撞かずの鐘」とも呼ばれています。
そして、この鐘が「撞かずの鐘」と呼ばれるに至った由来には、
西陣織が盛んだった頃の、哀しい織子の物語が伝えられているのです。


報恩寺


報恩寺の鐘は朝夕に撞かれることになっていて、
一帯の織屋では、この音で仕事を始め、この音で仕事を終えるようにしていました。

とある織屋に、仲の悪い丁稚と織子がいて、
ある時、2人は、夕刻の鐘が何回鳴るかを言い争います。

織子は九つといい、丁稚は八つと言い張り、
負けた方は何でも言うことをきく、と約束しました。

本当の鐘の数は九つだったのですが、ずる賢い丁稚は、
寺男に八つの鐘を撞くように頼みます。

そして、その鐘の数を聞くや否や、丁稚は織子を責めたて、
織子は、その悔しさのあまり、鐘楼に帯をかけ、首をくくって死んでしまいました。

このことがあって以来、お寺も鐘を撞くのをやめてしまい、
やがて、この鐘は「撞かずの鐘」と呼ばれるようになりました。


撞かずの鐘


ところで、
西陣の歴史というのは、幾度となく苦難に見舞われて、
また、その度に、復興を遂げるという繰り返しでもありました。


中でも、大きな苦難であったと言えるのが
天明8年(1788)の「西陣焼け」と呼ばれる大火。

この時、西陣の一帯は焼き尽くされ、
さらには、機織機3000台余りを失うなど、壊滅的な打撃を受けることとなりました。

しかし、そうした中からも、西陣は立ち直り、
見事に、再生を遂げたのです。


一方、この大火の中でも、奇跡的にも焼けることなく堂宇が残り、
地元の人からも不焼寺(焼けずの寺)と呼ばれ、信仰を集めた寺があります。

それが、ここ「本隆寺」です。


本隆寺門前


西陣の界隈には、日蓮宗の本山を称する寺が多いのですが、ここもそのひとつですね。

ゆったりとした寺のつくりで、何となくホッとできるお寺でありました。


本隆寺境内


その後の西陣は、江戸末期の、奢侈禁止令でも打撃を受け、
また、明治維新後の東京遷都により、西陣もさびれて、その活気を失っていきます。

京都が、そして織物業が衰退。

しかし、ここから、又、新たな西陣の復興が始まることになります。

西陣から、何人もの専門家をヨーロッパに留学させ、
西洋の先進技術を取り入れることにより、徹底的な近代化を進めたのです。

洋式織機の導入による近代化。
これにより西陣は、再び、織物の技術革新の先進地として、
日本の織物業をリードしていくことになったのでした。


西陣織会館


西陣の一角にある「西陣織会館」です。

ここでは、西陣織の展示や西陣の歴史の紹介の他に、
手織りの体験やきもの衣装の体験、着物1日レンタルなども出来るようになっています。

さらに、きものショーなども随時行われていて、
色々と楽しめる施設になっています。

この日もアジア系の団体客がきていて、大層、賑わっていました。


きものショー


近年は、きもの離れが進み、
また、このところの不況による節約志向もあって、
現在、西陣は大きな不振にあえいでいます。

「西陣織会館」で行われている様々な企画というのも、
そうした中で、伝統産業や、和装についての楽しさ・素晴らしさを
少しでも多くの人に知ってもらおうとするための取り組みでもあります。

しかし、これまで、幾度もそうした苦難を乗り越えてきているのが西陣の歴史です。
今、また、再び活気を取り戻そうと、新たな切り口を模索している、
そんな、西陣の姿をそこに見たような気がします。





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最終更新日  2011年03月06日 22時00分06秒
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