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2024年2月刊蜜猫文庫著者:あさぎ千代春さん美貌の有能宰相リュシアンの侍女である男爵令嬢のビアンカは病気の父に死ぬまでに孫が見たい、と言われ悩んでいた。話を聞いたリュシアンが「僕がお母さんにしてあげましょうか」とまさかの求婚。すれ違いもあったが二人は結婚をし、甘く蕩けるような蜜月を堪能する。幸せの最中リュシアンが王命を受け他国へと旅立つ事に。しかし帰国の日になっても彼が帰ってこない。事件の可能性を考え、ビアンカは彼を捜しに行く事に!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ビアンカ=貧乏男爵の娘。困窮する家の為に王宮で働いている。 リュシアン=宰相。利害関係の一致でビアンカに求婚する ランベーズ=ネルキア国国王。事業の失敗により没落してしまったシエルラ男爵家。父は体を壊して、ほぼ寝たきりになってしまい、家計を支えるために一人娘のビアンカは3年ほど前から王宮で侍女として働いていた。働きが認められ、有能宰相として有名なリュシアン付きの侍女になってからは給金も上がって益々張り切る娘に、父はデビュタントもしてやれなかったと詫びた。そんな父から、「生きている間に孫の顔を見たい」と言われ、ビアンカは思い悩むように。なにせシエルラ家は生活するだけで精一杯。父の希望は叶えてあげたいけれど、結婚するには花嫁側も持参金という名の大金を用意しなければならない。社交界デビューもしていないので縁談の打診も無いし、運良く身一つでも良いと言う話が来ても親より年上の貴族の後添えだったりするので逆に父が心配しそうだ。仕事は完璧にこなしてはいても、いつもと様子の違う彼女に気付き、リュシアンが理由を尋ねると、病気ですっかり気落ちした父から孫の顔が見たいと頼まれまして、と正直に話すと彼は少し考えこんで、では僕と結婚しますか?と告げられビアンカはビックリ。20年前、前王の圧政で傾いていたこの国を、現国王・ランベーズと共に見事に立て直したリュシアンはその働きで伯爵位とガルシアの領地を賜った。侯爵家の次男でもある彼は引く手あまたで縁談の話も数えきれないほどあったそうだが、そんな暇があるなら、未だに残る前王の負の遺産を一つでも失くすべきと取り合わず、38歳になる今でも独り身だった。そんな彼がどうして貧乏貴族の娘と結婚を?聞けば、流石に40手前にもなって女の影も無いリュシアンのことをランベーズが心配し、結婚をせっついたのだと言う。いつもの調子で跳ね除けたら、言うことを聞かないならお前の花嫁候補を集めた舞踏会を毎週開催すると脅され、結婚に本腰を入れると約束せざるを得なかったと言う。その話が出たのが昨夜のこと。そして先程ビアンカの悩みを聞いてここに相手がいたっと思ったらしい。彼女は真面目で性格も良いし細やかな気遣いも出来る。少々歳の差はあるが貴族社会の結婚では別段珍しくも無い。「僕が君をお母さんにしてあげます」リュシアンはそう言って微笑んだ。何の冗談かと思ったが、よくよく思えば真面目一辺倒の彼がそんな冗談を言うはずもない。10日後、シエルラ領までやって来たリュシアンはビアンカと結婚したいと父に挨拶。父は宰相閣下がうちの娘を妻に望んでくださったと泣いて喜んでいて、ビアンカもリュシアンに感謝していた。多分、利害関係が一致しての契約婚みたいな関係になるんだろうけれど、それでも彼に精一杯尽くそうと決意。侍女の仕事は辞職し、王宮近くの邸で暮らすことになったビアンカ。急な事だったので、ガーデンパーティーを開き、それを披露宴代わりにした。気になっていたリュシアンの父・ファルケ侯爵からも歓迎されホッとしたのも束の間。いよいよ初夜を迎え心臓はバクバク。元々、父に孫の顔を見せたくて決めた結婚だ、夫婦の営みは避けて通れない。しかし、その容姿から百戦錬磨だと思われたリュシアンは妙に焦っていて、見かねて手を貸そうとしたビアンカに触られた瞬間に爆発。初夜は失敗に終わってしまった。以降、リュシアンは仕事を理由に帰ってくるのはいつも午前様。まさか、あの夜のことを気にして顔を合わせたくないのかと、彼と関係を深めようと疲労感を無くすためと称しオイルマッサージを少々強引に施したが、リュシアンは赤面するばかりでビアンカの顔をまともに見ない。これはまさか嫌われた?落ち込む彼女に僕は悪くないと意地を張っていたリュシアンは自らの過去を思い起こしていた。ファルケ侯爵の亡き妹・アニエスの子という体で侯爵家の養子になった彼は、実は教会で育った孤児だった。高級娼婦だった実母が彼を産んで姿を消し、3歳まで教会にいたが、実子を突然死で亡くしたアニエスが精神を病み衰弱して行くのを心配した侯爵が甥に似たリュシアンを引き取った。アニエスは彼を息子と思い込むことで一時持ち直し、その後眠るように息を引き取った。お役御免かと思われたリュシアンはその後ファルケ侯爵家の養子になり、その類まれな頭脳で今の地位まで登り詰めたのであった。アニエスの子であるリュシアンであれ。それは3歳の頃から自らの心に課していたこと。だから自らの行動はいつも正しいし失敗はあり得ない。初夜が上手くいかなかったのはビアンカが余計な事をしたからだ。だが、段々その考えが揺らぎ始めている。新婚旅行先で喧嘩し、離婚の危機と流石に慌てた彼は意を決して自分が童貞だとビアンカに打ち明けた。いかにもモテそうな彼が童貞?彼女も驚いていたけれど、ならお互い初めて同志、一緒に勉強しましょうというビアンカの言葉に納得。その夜、二人は漸く初夜に成功したのだった。蜜月を過ごす二人。だがいつも自分が先に終わってしまうこと、なのに毎日彼女を求めてしまうと言う相談にランベーズも困り顔。なら一旦距離を置いてみろ、とリンデ公国から依頼された講師の話を受けることに。期間は一ヶ月。それくらいあれば頭も冷えるのでは。たった一ヶ月、耐えられないはずがない。そう高をくくっていたのも束の間、2週間もすると屋敷に帰りたくて仕方ない。だがあともう少しの我慢。いよいよ明後日には帰国となった日、恩師でもあるエーリクからある話を聞いた。40年近く前、大公のお気に入りの愛人であった高級娼婦が身重のまま姿を消したこと、君が小指にしている指輪は彼女が大公から贈られた希少な鉱物で作られたものだと聞いた彼はここにきて自分の出自を知らされたのだ。やけにしつこく講師に来てくれと依頼があったはずだ。彼はその容姿と指輪から素性を調査されていたのだろう。大公も大病を患って退位が決まり、アルフォンスという公子が戴冠する予定だ。大公は優秀なリュシアンにその補佐をして貰いたいと希望しているそうで、彼をネルキアに返すつもりはないとのこと。思いもよらぬ事態に帰国できなくなった彼を心配したビアンカはランベーズの手を借りてリンデ公国に潜り込み・・・。頭は良くても色々不器用なヒーロー・リュシアンの方が主人公ポジかな?って印象の今作。38歳にて自らの出自を知っても、彼はどうあってもファルケ侯爵家の次男で、ネルキア国の宰相。本当の家族が見つかったのは嬉しい、異母弟のアルフォンスが自分を頼ってくれるのも。でも、自分の居場所はビアンカの隣。早く妻の元に帰りたい。悶々とする彼を救うためにビアンカは大公の城に潜入し、図らずも夫の出生の秘密を耳にしてしまいます。何が彼の幸せなのか。思い悩む彼女はそれでもその本心を聞きたいと、大公家主催の舞踏会に出席。そこで漸く会えたリュシアンは、持ち前の頭脳で大公の顔を潰すことなく国交間の関係にもひびが入らぬような策を実行するのでした。企みは上手く行き、ビアンカ共々帰国したリュシアンが、妻との新婚生活を満喫している様子が描かれて物語は幕。色々めんどくさい人でしたが、頭が良いからこそかなと思ったり。評価:★★★★☆
2024.08.22
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2024年6月刊蜜猫文庫著者:東万里央さん跡継ぎの弟の補佐を命じられ日陰の存在だった公女レアは、突然、宗主国のエクトール帝国の皇太子妃に望まれる。子どもが産まれにくい皇室の存続のため多産家系のレアに白羽の矢が立ったのだ。断りようもなく嫁いだレアだが、夫となるユーグは彼女の初恋の相手だった。「僕は生涯君だけを愛し続けると誓うよ」今までと違い周囲に尊重され夫に溺愛されて幸せを味わうレアだが、彼女を虐げていた父が里帰りしろと言ってきて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 レア=フレール大公国の12番目の公女。聡明で美しく明るい性格。 ユーグ=エクトール帝国皇太子でレアの夫。シャルロット=レア付きの侍女。 アンジェロ=レアの双子の弟。後に大公位を継ぐ。 ウジュニー=ユーグの養母で帝国の皇后。 イヴォンヌ=侯爵令嬢。ユーグの妃候補だった。フレール大公国の公女・レアは、父からいずれ大公位を継ぐ双子の弟アンジェロの補佐を務めるために一生独り身でいるよう命じられていた。12人もいる娘の中で最後に生まれたレアなど、飽くまでアンジェロのおまけでしかない。それに、自分たちの贅沢三昧のせいで財政はかなりひっ迫している。お前の持参金まで出せないからと。そう言われて3年、18歳になった彼女は父にエクトール帝国の皇太子に嫁ぐよう言われ、耳を疑った。姉達のように自国の貴族に降嫁するのさえ許さないと言っていたくせに、どういう風の吹き回しか。どうやら、この縁談は帝国から是非にと頼まれたものらしい。何故かエクトールの皇帝の一族はある頃から子供が産まれず何代も後継者問題に悩まされ、その度に結局分家から養子を取る方法で何とか存続して来たと言う。今の皇太子も皇帝の親戚からの養子だそうだが、さすがにこれ以上血が薄れるのはと、多産家系のフレール大公家に白羽の矢が立った。代々10人以上の子を成した家の娘ならきっと子が産まれるだろうと、多大な期待をかけられたこの婚姻。父からも絶対に後継を産んで地位を固めるよう言い含められた。あわよくば援助を期待しているのが見え見えで内心で呆れたが、1週間ほどの旅路の果てに辿り着いた帝国では夫となる皇太子が直々に迎えに来ていた。その人の姿を見てレアは驚愕。何故なら10年ほど前にフレール大公国で出会った初恋の人・ユーグだったから。お忍びで城下町に遊びに来た彼女とひと時を過ごした優しい少年。彼から記念に貰ったスノードームも思い出の品として故郷から持って来ている程で、二人は再会を喜んだ。彼もまさかレアが妃になるとは思っていなかったようだが、相手が君で良かったとしみじみと言っていた。周囲からは案の定、早く子供をと期待の眼差しを向けられたが、いくら仲睦まじくとも子は授かりもの。まだ嫁いで3ヵ月、レアに妊娠の兆候はなかった。そんなある日、舞踏会で帝国の辺境伯に嫁いでいた6番目の姉・テレーズと8年ぶりに再会したレア。何かと末妹を案じ、両親に意見してくれていた姉はこの結婚を喜んでくれていた。だが、先日里帰りをした際に父からレア宛の手紙を押し付けられたのだと彼女に渡した。きっと碌な事書いていないと苦々し気な姉の顔を思い出し、自室で手紙を開くと案の定、子供はまだかと急かす言葉と、援助を望む文面であった。いくら大国の皇太子妃と言えど、一国の財政を支える程の金額なんて簡単に出せるわけがない。ユーグに頼めば予算を組んでくれるかもしれないが正直言うのは憚られる。一回帰って来いと〆られた手紙を前に悩んでいるとユーグに事情を聞かれ、手紙を見せると一緒に里帰りすると言う。自分も大公に話があるからと。道中、曰く付きの古城に泊まって幽霊に遭遇したりとトラブルはあったが、無事フレール大公国入りした一行は大公城へ。娘だけでなく皇太子まで付いて来たので、圧を掛け金をせびろうとしていた大公は逆に義息子から圧を掛けられ援助してもらう代わりに大公位を退く羽目に。元々、金遣いが荒く、国民に重税を課していたことがバレた結果だったのだが、問題は甘やかされ過ぎてこらえ性のないアンジェロが大公位を継ぐこと。そこで10人以上の弟妹がいるというレア付きの侍女・シャルロットがアンジェロの教育係としてフレール大公国に残った。ユーグお墨付きの彼女なら大丈夫だろうと任せ、帝国に戻った二人は結婚して40年以上、不仲な皇帝夫妻(義両親)の仲を取り持ち見事仲直りさせた。その際、当時義両親が不仲になった切欠となった事件が浮き彫りに。この事件で義母は流産して以降子供が望めない体になっている。調べてみると200年ほど前から不妊ないし、産まれても早逝していたりと不審な点が多い。先日の幽霊騒動も古城の主に祖先のやらかしによる恨みによるもので、もしかしたらエクトールの皇族もある種の呪いを受けているのではと思い立った。荒唐無稽な話だが一理あるかもしれないと本格的に調査に乗り出した二人。その頃、皇宮では事故に遭い療養していたと言う侯爵令嬢・イヴォンヌが復帰。大人しい令嬢のはずが彼女は人が変わった様にユーグの愛妾の座を狙い彼に接近。噂によれば、イヴォンヌは事故以来大勢の男性を魅了しているらしく・・・。レアがいるのでイヴォンヌになんて全く靡かないユーグ。それでもヤキモキしつつ、呪いに付いて調べていたレアは現状が義両親たちの仲が拗れた事件と酷似していたことに気付きます。義母・ウジュニーを不幸のどん底に叩き落した姉のフランソワーズの行動も不審点が多かった。イヴォンヌの手口はそれと同じでチャームの魔法のようなものを使ってユーグに取り入ろうとするも、彼には通じず失敗。やがて姿を現したのは事故以来イヴォンヌに取りついていた魔女の幽霊でした。200年ほど前、当時の皇帝の庶子であったカルロマンは、市井で貧しく暮らしており、スラムで知り合った超能力を持つ少女・ジャンヌと結託。異母兄弟をジャンヌの力で抹殺し、ついにカルロマンは皇帝にまで登り詰めますが、やがてジャンヌが邪魔になり魔女として処刑してしまいます。彼女はカルロマンを恨み、彼が固執した皇族が存続できない様、本当に愛し合った者同士でなければ子が出来ないという呪いをかけます。政略結婚ばかりなので、条件の合う夫婦はなかなか現れず、世継ぎは出来ないまま長い時が過ぎた頃、現皇帝夫妻はお互い愛し合っていてウジュニーは妊娠。そうはさせじとフランソワーズに取りつき、悶着を起こして流産にまで追い込んでいたのでした。そして、レアも妊娠したことが判りジャンヌはイヴォンヌに取り憑いて再び皇宮へ。呪いはすさまじく、レアも命の危機に晒されますが、調査の結果、当時のジャンヌにもその身を案じてくれた男性がいたことが判り、彼の遺書を見たジャンヌは成仏を果たし、救出されたレアはユーグと妊娠を喜ぶのでした。非道な先代の皇帝のせいで子孫たちが迷惑を被ってたわけですが、政略結婚だからこそ呪いは功を奏していたと言う。ジャンヌもいい思いをしてただけに自業自得感はあるものの、最後は裏切られて憐れな人生でした。もう一人の幼馴染の手を取ってれば幸せになれてたのに。事件から数か月後、レアは3つ子を出産。皇女2人と皇子1人、呪いも消えたのできっと無事育つだろうと喜びに沸く中、教育の賜物かすっかり立派な大公になったアンジェロがお祝いにやって来ていて、シャルロットに求婚。苦労し通しだった彼女は大公妃になるのか生暖かい目で弟たちを見守る夫婦の様子が描かれて物語は幕。どうしようもない過去の悲劇はありましたが、そんな中でもコメディ部分もあって面白かったです。最初の子が3つ子な時点で、ヒロインの実家並みに皇太子一家は子沢山になりそうですね。評価:★★★★★
2024.07.15
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2024年6月刊蜜猫文庫著者:すずね凛さん没落した伯爵令嬢イェルダは王命により結婚する事となり、 戦争で顔に傷を負っているが美貌の公爵アウレリウスの妻となった。 捕虜になっていた事が原因で人間不信になり屋敷に閉じこもっていた彼だったが、 イェルダとの温かい交流で再び人を信じるようになっていく。 「いつの間にか、あなたを心から愛していた」 彼から溺愛され甘い蜜月が過ぎていく。 そんなある日、アウレリウスを逆恨みしていた男にイェルダが誘拐されてーーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 イエルダ=ヨハンセン伯爵家の長女。 王命により辺境で隠遁生活を送るアウレリウスに嫁いだ。アウレリウス=国王の甥でハンメルト公爵家当主。 先の戦争での怪我とストレスのため領地に引き籠っていた。没落貴族の娘・イエルダは、亡き父に代わり病弱な母とまだ幼い弟を支えて生きて来た。明るく前向きな彼女ではあったが、将来の不安はある。弟のヴィクトルは頭が良いのといずれこの家を継ぐ身、学校に行かせてやりたいけれど、入学費を始め安くはない授業料はどう考えても捻り出すことができない。申し訳ないと思いつつも、数十人ほどの子供達に教えている歌の授業料程度では家族が食べて行くだけで精一杯だった。そんなある日、屋敷に訪れた不動産業の男に、銀行からこの屋敷と土地の抵当権を買ったから借金を返せないならひと月以内に退去するよう告げられた。生前の父が詐欺紛いに負わされた借金のおかげで、裕福だったヨハンセン家はその返済に追われて一気に没落。精神的ショックからか父は早逝し、家財を売ることでかなりの額を返済したが、まだ残っているのは判っていた。痺れを切らした銀行が手を打ったのだろうが、あまりの急なことに途方に暮れた。ヴィクトルが自分が子供のいない商家に養子に行って援助してもらうよう交渉するとまで言い出したのを、慌てて止めて、お金は何とかするから母には秘密にするよう頼んだ。でもどう考えても金を用意する手立てがない。考えあぐねていると王宮から緊急の呼び出しが。没落して以来、縁遠い所であったが後日おっかなびっくりで訪れると、国王直々に話があるとのこと。王がイエルダに打診して来たのは、自らの甥に当たるハンメルト公爵との結婚。国王から直接縁談話をされて驚いていると、ハンメルト公爵・アウレリウスはかなりの訳ありの人物らしい。先の隣国との戦争に参加し、兵を率いて多大な戦果を挙げたが終戦間近に敵兵に捕縛され一時期捕虜となっていたという。だが、その際に負った怪我と精神的ストレスにより今は領地に引き籠っているのだそうだ。アウレリウスの話を聞いて彼女は胸を痛め、子供の頃、出陣式の日にカッコイイ騎士にお守りを渡したことを思い出していた。しかし、母と弟を残して嫁には行けない。素直に経済的に困窮しているのでと国王に告げると、結婚すれば公爵家が援助してくれると言い、この結婚は王命であると念押した。屋敷に帰り、母たちに結婚することになったと告げ、ヴィクトルには借金はお相手の方が肩代わりしてくれるそうだから心配はいらないと説明。アウレリウスからも借金の肩代わりと結婚を承諾する手紙が届き、数日後、イエルダは遠い辺境の地・ルゥエンへ。公爵家からの迎えの馬車に乗り込んで2日、漸く辿り着いたルゥエンの中心地は栄えており、厭世家と言いつつ領主の仕事はしっかり努めているのが伺える。しかし、屋敷は大きいけれどどこか寂れていてビックリ。人嫌いが過ぎて広大な屋敷に使用人は数人と聞いてはいたが出迎えに現れた執事のミカルを始め、あとは庭師と料理人の二人。当の本人は出迎えにすら出てこないとはある意味徹底しているではないか。だが、自他共に認めるポジティブシンキングの彼女は、会いたがっていないとミカルから聞いていても、アウレリウスが引き籠っている部屋に押しかけ、明るく挨拶。彼は呆気にとられつつも、王命なので仕方なくこの婚姻を受け入れたこと、イエルダとも仲良くするつもりはないと言い放った。頑ななアウレリウスの態度に多少傷つきつつも、この屋敷の女主人になることは認められたので、好きにやらせてもらうことにした。取り敢えず、一人で食べるのは寂しいので、食事だけは必ず一緒に採るという約束だけは何とか取り付けた。どういう経緯であっても家族となった人とは仲良くしたい。夕食の時にお喋りな彼女は一人で喋り続けていたが、相槌を打ってくてれるだけでも感謝せねば。これまた国王からハンメルト公爵家の血筋を絶やさぬよう、子を成すことを厳命されているので、次の日の夜には初夜を終えたものの、捕虜になった経験があるアウレリウスの身体には無数に傷があり、特に美しい顔に残った傷跡は大きく痛々しかった。彼はこの傷跡もコンプレックスらしく、自らを醜いと卑下していたが、イエルダは国を守った名誉の負傷、醜くなどないと本心から告げた。同衾したせいもあるのだろうが、翌日からアウレリウスの態度が少しだけ軟化。彼が産まれる前からこの家に使えていると言うミカルは主人の変化を喜び、イエルダに感謝した。初日に好きにしていいと言われたので、薄暗く本当に幽霊屋敷みたいな公爵邸を変えて行こうと人嫌いな彼を説得し、掃除等を頼むため人を雇ったイエルダ。彼女が来るまでは3人の使用人だけだったので掃除が行き届かなかったのだろう、見る見る綺麗になって、野菜も作りたいと庭の一角を貰ったイエルダはホームレスの子供たちに声をかけ雇うと荒んだ生活をせぬよう、食事を提供し給金も渡した。手癖の悪い子達の中には初日に盗みを働く者もいたけれど、リーダー格のビルに諭され、もう盗みはしないと誓い、以降は真面目に働いている。子供達の雇用については流石にアウレリウスは難色を示したものの、イエルダとミカルの説得により認識を変えたようで、彼女の意を汲んで無料の学校を建てると宣言。これも領地の発展に繋がるとのことだが、ミカルは戦争に行く前の主人に戻ったようだと喜んでいた。彼女の存在はアウレリウスに良い変化をもたらし、領地に住む貴族令嬢に馬鹿にされているイエルダのために舞踏会に参加するとまで言い出した。幽霊公爵が妻と舞踏会に出たことで、二人の美しさと仲睦まじさの噂は王都にまで広まった。今ではすっかり年の離れた妻を溺愛しているアウレリウスだったが、トラウマなのか未だに悪夢にうなされている時があるのが心配だ。そんな頃、イエルダはガストン子爵という男に声を掛けられ、激昂したアウレリウスは子爵と口論に。どうやら知人のようだが、ガストンは気になることを言っていた。彼が親友のフェリクス伯爵に裏切られたってどういうこと?ガストンは戦時中、彼の部隊にいて規律違反で除隊させられていたそうで、先日の口論でその恨みを思い出したのか、腹いせをしてやろうとイエルダを浚い・・・。規律違反した自分が悪いのに逆恨みでイエルダを拉致したとして、アウレリウスは激怒。返して欲しくば決闘だと記載されていたものの卑怯な奴なので正攻法では来ないだろうと備えていたら案の定。見事勝利して、ガストンを憲兵に引き渡します。貴族への脅迫や詐欺の常習犯だったらしく、無事御用となり、事件は幕を閉じますが、意を決してフェリクスなる人物のことを尋ねるイエルダ。君には知る権利があると語られたのは、信じていた盟友の裏切り。終戦間近、敵の罠にかかり捕縛されかかったアウレリウスを傍に居たフェリクスは援軍も呼ばずに彼を置いて一人逃げ出していたのです。多勢に無勢、アウレリウスは捕まり、終戦まで酷い拷問を受け、それがストレスとトラウマを植え付け長らく彼は苦しんでいた。真実を知り涙をこぼすイエルダに、一時は恨んでいたが、今ならフェリクスの気持ちが判ると言うアウレリウス。彼にも愛する者がいて自分は決して死ねないと思ったんだろうと。そのフェリクスも結局罪の意識に苛まれ、後に自殺していたという話は何とも切ない。そして、多分そうだろうなと思ってたんですが、当時8歳の彼女がお守りを渡した騎士はやっぱりアウレリウスでした。国王は、彼にイエルダを嫁がせて正解だったとホクホク。この人なりに甥のことを心配してて、どこからか彼女の噂を聞きつけ相手に推したのかなと。アウレリウスはすっかり引き籠りは止め、イエルダと共に領地の開拓に力を入れると王に誓い、物語は幕。あとがきにて、作者さんが筆が乗って色々書きたいことがあったのにページ数の都合で結構削除したとあって、ふとあの長いラブシーンを4回から2回に減らせばきっと入れられたよなと思ったりw評価:★★★★★やっぱり何だかんだとこの方のお話は面白いです。
2024.06.28
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2024年4月刊蜜猫文庫著者:七福さゆりさん母の再婚で公爵令嬢になったエステルはその可憐さを王子に見初められ婚約者となった。だが聡明に成長した彼女は不真面目な王子に疎まれ婚約破棄されてしまう。皆の前で辱められ悲しむ彼女を救ったのは、エステルにあえて自分を義兄とは呼ばせなかった公爵令息ジェロームだった。「はいと言ってくれるまで求婚し続けるよ」密かに想っていた彼に溺愛され幸せなエステル。しかしそれを面白く思わない王子が嫌がらせを始めて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エステル=婚約者である第二王子から突然婚約破棄された公爵令嬢。ジェローム=エステルの義兄。ギャツビー=王国の第二王子。 サンドラ=エステルの友人の伯爵令嬢。 ノエ=第一王子。美しく心優しいカヴァリエ公爵令嬢のエステルは、僅か7歳の時に第二王子・ギャツビーに見初められ、婚約者となった。第一王子のノエの母は平民で後ろ盾も無いため、王位はギャツビーが継ぐだろうともっぱらの評判だった。しかし、エステルは公爵夫人の連れ子で元は男爵令嬢。将来王妃になってから血筋のことで侮られてはいけないと義父である公爵は娘に厳しく教育を施した。毎日勉強と習い事に明け暮れるエステルを慰め、父上には内緒だよと禁止されている甘いお菓子をこっそり差し入れてくれたのは4歳上の義兄・ジェロームだった。彼はエステルをとても可愛がってくれた。継母の連れ子なんて蟠りもありそうなのに、初っ端から好意を向けてくれていたので彼女もすぐに懐いた。今は忙しくてあまり会えないけれど、ジェロームがいればこの辛い勉強も耐えられる気がした。しかし、この仲睦まじい姿をギャツビーに見られてしまい、気分を害した彼は公爵にジェロームを寄宿制の騎士学校に入れることを命じた。挙句にエステルとの手紙のやり取りまで禁じたのだ。大好きな兄と引き離され、エステルは泣き暮らした。義父も王子の命令に逆らうことが出来ないことは理解できる。それでも10年は会えないと思うと悲しくて堪らない。そんなある日、見知らぬ令嬢から届いた手紙の中身はジェロームからの近況報告と妹を気遣う内容の手紙。同級生の妹が協力してくれてたらしい。定期的に送られるその手紙で立ち直ったエステルはお妃教育にも身を入れ始め、18歳になると令嬢の中の令嬢とまで言われるようになっていた。その日、王宮に呼び出されたエステルはギャツビーから一方的に婚約破棄を申し渡された。彼の横には勝ち誇ったような友人のサンドラの姿が。少し前からギャツビーから肉体関係を強要されていたエステルは貴族の婚前交渉は禁じられているからと突っぱねていた。それがどうもお気に召さなかったようだ。未来の国王の命令を聞けない女はいらない。サンドラはそんなギャツビーに取り入って彼を寝取ったということか。相手が王子ではこの理不尽過ぎる婚約破棄にも文句を言うわけにもいかず義父は申し出を受け入れたが、屋敷に帰ると激怒していた。娘の将来を思い、厳しい教育を娘に課していただけに申し訳なさから義父は涙ながらにエステルに詫びていた。これも親心故だったのだから謝らないで欲しいと告げ、今後どうするかを話し合ったが、エステルには今後まともな縁談は望めないという辛い現実が圧し掛かった。あのバカ王子のせいでと歯噛みする義父は可愛い娘を高齢の貴族の後添えに出すくらいならと修道院に行った方が良いと告げた。しかし、それを止めたのは10年ぶりに帰宅したジェロームであった。学校を首席で卒業し騎士団長にまで登り詰めた義兄はエステルの前で片膝をつくと指輪を差し出してプロポーズをした。修道院になど行かずとも俺の妻になればいいと。息子のエステルへの想いを知っていた両親はその手があったと大喜び。この国では義兄妹の結婚は禁じられていないのだしなんの問題も無い。手紙のやり取りを切欠にジェロームに想いを寄せていたエステルは、叶わぬ恋だと思っていただけにこの幸運を噛み締め彼からの求婚を受け入れたのだった。これを機に持病がある義父は母と共に領地で静養することを決め、ジェロームに爵位を譲った。その後すぐに彼はエステルとの婚約を発表。話を聞きつけたギャツビーは惜しくなったのか、手近で手を打つくらいなら俺の愛妾にしてやるとふざけた手紙を寄越しジェロームと義父を怒らせていた。社交界では義兄妹同士の結婚に口さがないことをいう者も多かったが、二人は気にしない様努めた。こうした揶揄が出るのは承知の上での結婚なのだから。後日、舞踏会でギャツビーはエステルに言い寄りきっぱり拒絶され怒りに燃えていた。そもそも彼女は外見だけでなく優秀過ぎた。自分が一番でないと気が済まない彼はジェロームを遠ざけ、彼女には俺を褒めろと強要していた。素直な性格のエステルから褒められることはなく寝室に誘えば断られ、腹を立てたギャツビーは次期国王というプレッシャーもあってストレスから市井で流行っている違法薬物に手を出してしまった。性格や思考能力に影響を及ぼすこの薬は依存性が高く手放せなくなる。問題発言や行動が増え王宮で問題視され始めていた頃、第一王子ノエの母親が実はさる王国の王女ということが発覚し・・・。ノエはジェロームの親友で性格も良く優秀な人でした。でも生母の身分がネックで王位は継げないとされていましたが、ここにきてその母の身分が判明し王宮では大騒ぎに。戦争に巻き込まれこの国まで逃げて来た王女は従者と侍女と離れ離れになった後事故に遭って記憶喪失になっていました。王女を介抱してくれた貴族の家で記憶の無いまま働き後に国王に見初められノエを産んだという。当然、王妃より身分が高いことが判ったため、ギャツビーの立場は悪くなり焦った彼は一層薬物にハマっていき、ジェロームによって違法薬物購入とその使用を暴かれ継承権を剥奪されるのでした。サンドラもギャツビーにより薬を薦められて中毒症状を起こしており、幻覚からエステルを襲って敢無く逮捕。薬物の後遺症でギャツビーとサンドラは牢獄でも苦しめられることになります。婚約してからというもの、エステルとジェロームはラブシーンばかりでおいおい婚前交渉しまくりやんけと思ったものの、両親公認なら無問題かと納得。そもそも両想いの男女を屋敷に置いて田舎に引っ込んでるんだから結婚するんだし好きにやれってことなんでしょう。これだけラブラブだったので結婚式後にすぐに妊娠が発覚。無事に長男も産まれて3年後、延期になっていた新婚旅行に出掛ける二人の様子が描かれて終わっています。婚約破棄する王子がバカで最後には破滅するという王道展開でした。変に捻ってないのが逆に良い。評価:★★★★☆
2024.05.08
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2024年3月刊密猫F文庫著者:ちろりんさん伯爵令嬢アガサは突然、憧れの美形騎士ローガンにプロポーズをされる。聞けば彼は竜の呪いにより魔力が暴走してしまう状態で魔力吸引体質のアガサに性交渉で力を吸い取ってもらうしかないらしい。「君を大切にし、夫としての務めをまっとうする」彼を救う為の契約結婚のはずが彼はアガサを愛すると誓い甘い接触を繰り返し、戸惑いつつも蕩けるような日々を過ごす。そんなある日、魔獣討伐途中の彼の魔力が暴走してしまいー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アガサ=家計を助けるために魔法省で働く伯爵令嬢。 ローガン=公爵家嫡男。国王・ヨゼフの従兄弟で王国騎士団長を務める。 ヨゼフ=ブリングシェアー王国国王。バートランド=王国魔導士団長。ローガンとヨゼフの友人。 ダスティン=魔法警邏隊の局長。当主が投資に失敗した挙句、多額の借金を背負ってしまったシューリス伯爵家。屋敷の売却で何とか完済したものの、借金を作った本人は責任も取らずに心労による療養のためと称して領地に籠ってしまった。大好きだった父の情けない対応には当時14歳だったアガサは心底幻滅したものだ。王都に残った母と弟のため、支援を見込んでアガサは結婚を急いだが、伯爵家の没落ぶりは社交界に知れ渡っており、馬鹿にされるばかり。中には愛人としてなら面倒見てやると言ってくる下品な輩もいて、断った際に起きたトラブルもあって、暫くは結婚は諦めることにした。その後、何とか職探しをして数年前から勤め始めたのがこの魔法省だ。アガサの仕事は所謂苦情受付のようなもので、民たちからの相談を内容によってランク付けし、騎士団や魔法警邏隊に仕事を振り分けている。ある日、国王・ヨゼフが魔法省を訪れ、アガサにある頼みごとをしてきた。彼女に王の従兄弟で騎士団長のローガンと結婚して欲しいと言うのだ。その場には当のローガンもいて、彼はアガサの前に跪くといきなりのプロポーズ。さすがに騎士団にはしょっちゅう依頼で世話になっているから彼のことも見知っているけれど、求婚されるほどの付き合いではない。一体どういうこと????ヨゼフの説明によれば、数日前魔法省から依頼された暴れる竜の討伐に向かったローガンは、死にかけの竜に噛まれ呪いに掛けられてしまったのだそうだ。以来、彼の身体に竜の魔力が宿り、定期的に発散しないとローガンは魔力の影響で暴走した挙句死に至ると言う。自分が回したあの依頼でまさかそんなことになっていようとは。思わず心を痛めたが、そこから何で結婚なんてことに?同席していた魔導士団長バートランドによれば、ローガンを救うには彼の魔力を吸収できる者が必要でそれがアガサなのだと。この国には魔法を使える者が少なくないが、アガサにはとんとその才能は無い。しかし、昨日行われた視察にてバートランドが職員全員に握手をして、潜在能力の有無を探った結果、アガサがその該当者だと判明。魔法というよりは体質なので本人が気づかなかったのも仕方ない。だが、ローガンのためには喉から手が出る程欲しい能力だった。魔力を吸収するなんて稀有な体質だとヨゼフたちに褒め祖やされたものの、その方法は手を握ったり、キスなど密な接触が必須条件。そして一番効率が良いのは性交渉なんだと真顔で言われ、結婚を迫られた意味も理解した。そりゃ、伯爵家の娘に治療と称して性交渉をせがむとなれば大問題だ。でも、公爵家の嫡男であるローガンはこんな没落令嬢と結婚なんて本当に良いのだろうかと心配にもなったが、今回の場合は国王の肝入りの縁談と言っても差し支えないものだと聞いて安心した。当のローガンも結婚するからにはあなたを大事にするし、愛情も育んで行きたいとはいうけれど、周りには事情は伏せるとは言えこれは言うなれば契約結婚みたいなものだろう。魔力を吸収し切ってしまえば役目は終わり。その時は潔く離婚にも応じなければ。余り深入りしない様心に留め、アガサはこの結婚を承諾したのだった。しかし、ローガンは翌日からアガサと親睦を深めるためと称し、魔法省に足繁く通い始めた。おかげで彼に憧れていた女性達からは妬まれたが、2ヶ月後の結婚を機に魔法省を退職するのでそれまでの我慢だ。何より、横柄な態度でアガサを見下す警邏隊局長・ダスティンとも顔を合わせずに済む。実はこのダスティンこそ、アガサを愛人にしてやると宣った侯爵子息だった。今日もウザイ絡み方をされたので、結婚して退職すると言ってやったら絶句してたっけ。それから数日が経ち、予想よりも早くに魔力暴走が起こりかけ、その場は何とかキスで収まったものの、念のためと結婚が早まり、早々に公爵邸に移り住むことになってしまった。シューリス家にはローガンが支援を約束してくれたので、アガサが働かずとも家族は暮らしていける。娘の結婚ということで領地から父もやって来たが、これからは公爵家から財務管理の者をつけるので馬鹿な投資はさせないとローガンから釘を刺されていた。支援と言い、伯爵家の管理など、報酬代わりと彼は言うけれど感謝してもしきれない。無事、式を終え初夜の役目も果たした所、やはり性交渉が一番吸収できているようで、ローガンも調子が良さそうだった。以降、感謝の現れなのかプレイボーイのヨゼフとバートランドからの入れ知恵か、毎日贈り物を寄越して来るのには参った。お菓子や花束はまぁ嬉しい。でもさすがに屋敷が買えそうなほどのネックレスは貰えないと固辞。父に釘を刺してくれた時は格好良かったのに、こうも自分のために湯水のように金を使う彼を見ると悲しくなり、つい厳しく叱ってしまった。おかげで数日間はギクシャクしたけれど、彼からの謝罪で仲直りし、お手製だと言うアミュレットを貰った時は素直に喜んだ。竜の魔力も大分吸えたと思うが、遠征により2週間ほど離れた時はやはり発散できずに暴走しかけるというトラブルも。その際、アガサには結界も攻撃魔法の類も吸収できることが判り、バートランド発案のローガンの解呪作戦が決行されることになった。それは、アガサが一度に限界までローガンの魔力を吸収し切ってしまうというもので・・・。竜や呪い、魔法などファンタジー色の強いお話でした。ローガンは自分を救ってくれる体質の没落令嬢・アガサに感謝しつつ、彼女を知るごとに惹かれていきます。一方、アガサはこの結婚は国王から命じられた任務みたいなものと思っていて、問題が解決すればお役御免と思い、深入りはしない様にしていました。しかし、ローガンの溺愛ぶりに戸惑いつつも結局は絆されてラブラブ夫婦に。そんな中、またしてもダスティンにうざ絡みされてローガンが激怒。こいつホントに性格がねじ曲がってる上にドクズでした。最後にもやらかして相応の罰を受けていたので彼女への無礼のことも有耶無耶にされなくて良かった。ローガンを救う作戦は成功し、アガサは魔力吸収の力を失うという結果となります。が、彼の体内にあった魔力も無くなったのでもう必要のないものでした。後に竜の真実や、新たに生まれた卵を巡って悶着もありつつ、大団円で本編は〆前述の通り、かなりファンタジー色が濃いですが、余計な恋のライバルとか現れないだけモヤモヤ度は少な目。お話も面白いのでサクサクと読めるのは良いですね。(イラっと来るのはダスティンのとこだけ)評価:★★★★★
2024.04.22
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2024年2月刊蜜猫文庫著者:クレインさん子爵令嬢コレットは弟を救う為、戦時中に縁があった公爵フェリクスの家に援助を求めにくいが、出征している彼の妻だと勘違いされ成り行きで妻を演じることに。帰ってきたフェリクスは一部記憶がなく彼女を妻として受け入れてしまう。「俺はきみに恋に落ちたんだろうな」真実を言えぬまま甘い初夜を迎え引き返せない所まで来てしまった。そんなある日、記憶を取り戻す為、二人の出会いであるコレットの家に向かう事になり!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 コレット=勘違いから戦争で不在中の当主の妻として公爵家に迎え入れられた子 爵令嬢。フェリクス=バシュラール公爵家当主。ベルトラン=第三王子。 ロドルフ=フェリクスの父で前当主。3年にも及ぶ、隣国・フォルタン王国との戦争が終り、公爵邸に戻って来た当主のフェリクス。主の帰還に喜びに沸く屋敷の者たち。母が亡くなって以来不仲だった父もこの時ばかりは息子の無事を喜んでいるようだった。だが、父の横には見知らぬ女性が。執事からの紹介によると彼女は自分の妻だという。母譲りの美貌ながら病的な青白い肌に黒髪のせいで、まるで吸血鬼のようだと令嬢達から怖がられているフェリクスはとにかくモテなかった。おかげで出征前も婚約者がいなかったので余計に妻と言うワードにピンと来ない。いや、待てよ、もしやあの時か。実は彼は戦場で怪我を負った際、一時期記憶障害も起こしていた。2年ほど前のことだが、彼女が屋敷に来たのも2年前と聞くので時期もピッタリ。当時のことは靄がかかったかのように思い出せないが、その時に出会って恋をし、求婚していたとしたら辻褄は合う。見れば彼女は母の形見でもある家宝のレッドダイヤモンドの指輪までしている。失くしたと思っていたのに、彼女に贈っていたのだな。そんな事情もあって、フェリクスはあっさり自分が不在中に屋敷にいた女性を妻として受け入れたのだった。一方、当の本人であるコレットは嘘がバレやしないかと生きた心地がしなかった。この2年、前当主・ロドルフには随分良くしてもらったし、使用人たちも皆、奥様と呼んで慕ってくれた。でも、フェリクスが帰ってきたら嘘もバレてしまう。断罪の時を待っていたのだが、彼は特に疑問にも思わずコレットを受け入れたのでビックリ。しかも、当然とばかりに押し倒して来たので肝が冷えた。そりゃ夫婦なんだしと思い直し、フェリクスを受け入れたものの、本当はあの時から彼が好きだったので嬉しくもあった。このまま黙っていればフェリクスの妻でいられる。それにしても、どうしてこんなにあっさり信じたのか、疑問に思っていると彼から記憶障害を起こしていた時のことで覚えていないのだと申し訳なさそうに言われて合点がいった。相手の記憶が無いのを良いことに、狡いと思いながらも彼の妻を演じ続けることにしたコレットは、彼から結婚に至った経緯を尋ねられて巧妙に嘘と真実を交えながら二人の出会いを語った。国境近くの豊かな領地を持つアングラード子爵の長女として産まれたコレットは優しい両親と弟に囲まれ幸せに暮らしていた。実りの良いこの地は税収も良く、父は商会も営んでいたので羽振りも良かったが、そんな平和が崩れ去ったのは3年前、コレットが17歳の時だった。隣国フォルタン王国が国境から攻め入り子爵領にも侵攻。父は家族を別荘まで逃がし、少しでも時間稼ぎになればと駐留していた騎士団と共に戦ったが多勢に無勢、父は戦死しその遺体は長い事晒されていたという。王都から第三王子率いる軍が到着するとフォルタン軍は撤退して行ったが、お嬢様育ちの母と病弱な弟を抱えてコレットは途方に暮れていた。屋敷は司令部にするとして接収され、コレットは領内の女たちと怪我人達の治療と看護に奔走。フェリクスとの出会いもその時で、運び込まれた彼は腹に大きな傷を負い更に落馬して頭を打っていた。部隊の隊長だという彼はコレットに感謝し、曲がったことが大嫌いな彼の一声で治療所の治安もかなり良くなった。女たちはまるで吸血鬼のようで怖いと彼の看護を嫌がっていたが、コレットは清拭したフェリクスの美しい顔に一目惚れ。進んで彼の看護をしていた。そのせいか二人の仲は深まり、軽口も言い合うように。そんな最中、動けるようになったフェリクスに出動命令が出て、この地を去り際、礼代わりにと渡されたのがあの指輪だった。戦死して遺品泥棒にあったら死んでも死にきれない。家宝の指輪なので預かってほしい。失くしたくないからと強引に押し切られる形で受け取ったものなので、実際は求婚などされていない。それから暫く経って、軍の移動により子爵領に平和は訪れた。だが、激戦地だったため、かつての豊な地は焼野原。屋敷は王子たちが引き上げた後、使用人たちによって金目の物を持ち逃げされていた。多少持っていた金品は戦時中のインフレによりすぐに底をつき、コレットたちは困窮。間の悪いことに弟のオーブリーが体調を崩して寝たきりになってしまい彼女は決断を迫られた。フェリクスには悪いけど戦時のどさくさで失くしたことにして売ってしまおうかと何度も考え、しげしげと眺めていると指輪にバシュラールという刻印が。バシュラールと言えばこの国唯一の公爵家。指輪を届ければ多少の謝礼金が貰えるかもしれない。王都に行けさえすれば後は身売りでも何でもして稼げば家族を養える。丁度、物資を届けに来ていた荷馬車の馭者に頼み込み、何とか公爵領に辿り着いたコレットが指輪を届けると、ロドルフは彼女を息子の嫁と勘違い。あれよあれよという間に公爵夫人にされてしまった。ロドルフはフェリクスの嫁ならばと、コレットからの訴えを聞き入れすぐさま子爵領に人をやり支援。オーブリーに腕利きの医師を寄越した上に完治すると屋敷に母共々迎え入れ面倒を見てくれた。今は母も弟も領地が心配だからと帰ってしまったけれど、コレットはせめてもの恩返しにと家政を手伝い、足の悪いロドルフの世話をした。おかげですっかり彼女は気に入られ、今に至る。コレットの思惑といくつかの真実を伏せた話を聞いてフェリクスは感動していた。記憶を失くしていた頃の自分を褒めてやりたい。よくぞ、こんな出来た嫁を見つけたものだと。すっかりコレットを気に入ったフェリクスは彼女を溺愛。まだ神殿と王に許可を貰っていないので正式な夫婦ではないから早く式を挙げたいとロドルフをせっついていた。好きな人と結婚できるのは嬉しい。でも、詐欺紛いのことをしている自覚のあるコレットは罪悪感に苛まれていた。フェリクスが子爵領の現状をベルトランに直訴し、早急に復興支援してもらえるよう手配してくれたので、もう少しすれば以前のように美しい地に戻るだろう。しかし、敗戦国となったフォルタン王国の一部の者が報復のチャンスを狙っているとの一報が。その工作員がどうやら領民が戻りつつある子爵領・メルシエに潜伏しているらしく・・・。国境近くに領地を構えていたせいで戦争に巻き込まれてしまったアングラード子爵家。コレットは戦争で父を失い、母と弟を支えて必死に生きていました。軍が引き上げ、元々豊な地なのですぐにやり直せるかと思いきや、待っていたのは辛い現実。世間知らずのお嬢様が領主代理なら不正もバレないだろうと物資や支援金も横取りされて領地にはほとんど支援が来ない。弟が病に罹り食うや食わずな生活を強いられていたコレットは追い詰められ、フェリクスから預かった指輪で金を得ようと公爵家へ。謝礼金を得られれば御の字かと思っていたら公爵夫人の扱いを受け、芋づる式に領地も徐々にだが復興できて家族も救える結果に。でも、いつバレるかと冷や冷や。フェリクスが帰還して断罪されるのを覚悟していたら、記憶の無い彼に歓迎された上に自慢の妻だと周囲に自慢までされて居た堪れない。式の準備も着々と進んだある日、彼がコレットの家族に挨拶したいとメルシエを訪れた際、例の工作員に彼女が攫われピンチに。この騒動は割と早く解決するんですが、これを機にコレットは真実を彼に打ち明けます。怒り狂うかに思われた彼は実は少し前に記憶を取り戻しており、求婚などしていない事も思い出していました。でも、実は彼も看護してくれたコレットに一目惚れし妻に迎えたいと考えていて、だからあの指輪を渡したのだと白状。求婚しなかったのは断られるのが怖かったから、尤もな理由を付けて押し付けたのだという。正直、勇気を出してプロポーズしておけばコレットが罪悪感に苛まれることは無かったのではと思いますが、上手くいって何より。一々、周囲には込入った事情を話す必要は無しと二人の無の中でだけに秘めて、後にフェリクス達は予定通りに式を挙げハッピーエンドで終わっています。ラストに記載されてた顔はフェリクス似で性格はコレット似という、二人の娘の逸話が気になる。評価:★★★★★かなりの良作だったと思います。
2024.04.08
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2023年9月刊密猫F文庫著者:七福さゆりさん自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気づいたシルヴィは破滅の未来を避けようと行動を始める。迷惑をかけた皆に謝り、婚約者の王太子リオネルには婚約破棄してもらうように頼むが、リオネルは別れるどころかむしろ迫ってくるように。「キミはいつも俺から逃げようとするね」シルヴィに媚薬入りのチョコを食べさせて蕩かし熱く抱くリオネル。最推しの彼に求められて嬉しいがリオネルは聖女と恋に落ちるはずで!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 シルヴィ=ゲーム「聖なる乙女の恋煩い」の悪役令嬢。 リオネル=シルヴィの婚約者の第一王子。ゲームのメインヒーロー。 ソフィア=ゲームのヒロイン。聖女の力を持つ。少々ブラックな会社に勤めるOL・双葉朱里の唯一の楽しみは乙女ゲームをプレイすること。余暇の全てをゲームに注ぎ込んでいたのでリアルな恋愛とは無縁だが、気持ちは満たされるので後悔は無い。ここ最近特にハマったのは十八禁乙女ゲーム「聖なる乙女の恋煩い」ストーリー含め、攻略キャラも大満足。全ルート攻略し終えスチルもコンプ、今夜はネットで二次創作を漁ろうかと意気込んでいたら、なんとパワハラ上司から突然の呼び出し。もう帰宅してるんですけど?と憤りつつも、無視なんてしたら週明けにどんな目に合うか。渋々出掛けた朱里だったが、道中突っ込んで来た車に跳ね飛ばされ、24年の人生を終えたのだった。ふと目覚めると、目に入ったのは自分を抱き起し呼びかけながらも若干迷惑そうな少年の顔。しかもシルヴィって呼んだ?見ると自分の身体は10歳前後で綺麗なドレスを着ている。そうまるで貴族のお嬢様のような。って、この少年は現在の自分の最推し・リオネルの幼少期の姿ではないか。まさかここって「聖なる乙女の恋煩い」の世界!?どうやら自分は転んで頭を強打したらしい。それで前世の朱里の記憶を思い出したわけか。しかし、転生先がハマってたゲーム、しかも十八禁というのも何だかな。おまけに寄りにも寄って悪役令嬢のシルヴィなんて、早くも二度目の人生詰んでいる。このシルヴィ、正にテンプレな悪役なのだが、ヒロイン・ソフィアの邪魔をしたせいで見事にザマァされて破滅する。それはもうどのルートでもだ。まぁ、ヒロイン憎しで色々やらかすシルヴィも良くないのだが、それにしたってあれほどの罰を受ける程でもなかったように思う。だがもうシルヴィとしての人生を歩み始めてしまっている。せめて物心つく前に思い出せたならこのヤバイ性格を自分で矯正出来たし、リオネルと婚約したいなど口が裂けても言わなかったのに。一先ず、自分を溺愛する両親以外にとも交流を深めて味方を増やしてリオネルとは婚約を破棄する。我儘で傍若無人な性格のシルヴィが方々に謝罪の手紙を出し、時には自ら出向いて頭を下げその評判も覆り始めた頃、いよいよリオネルと対面。彼にも申し訳ないことをしてしまったと、深々と頭を下げ真摯に謝罪した後、婚約破棄を申し入れた。人が変わったような彼女にリオネルは驚いていたが、婚約を交わしたのはついこの間のことなので破棄するにしても体裁が悪い。そこで数年後性格の不一致とか適当な理由で解消しようと告げると彼も承諾してくれた。しかし、どうしたことか以降リオネルは性格が180度変わった彼女に心開き、何かといえば屋敷を訪れては共に過ごすように。傍から見れば仲睦まじい婚約者同士の語らいだろうが、シルヴィにしてみればなぜいきなり彼の親密度が上がったのか不思議でならない。あれから6年経ってシルヴィが15歳になり、ある事件が起きた。リオネルが暗殺者に襲われ、間一髪のところをシルヴィに聖女の力が発現し彼を守ったのだ。この一件は目撃者が多く、未来の王妃が聖女だと国中お祭り騒ぎに。一方、リオネルの親密度は当然ながら爆上がり。年数的にいい頃合いだと思っていたのに、当初の約束とは一転して彼は婚約解消を拒否。おまけに神殿の鑑定で本当に自分が聖女だと判ってビックリ。いや、ゲームと内容変わってない? 聖女はこの2年後に現れるソフィアのはず。それともソフィアが登場したら正規ルートに戻るんだろうか。だが、聖女として認められたおかげで、ソフィアにリオネルを取られたとしても、破滅は回避できそうだった。一々嫉妬もしないし邪魔をするつもりもない。いざとなれば神殿に行けばいいのだから。逃げ道が出来たことで幾分気が楽になった彼女が17歳になったある日、親密度MAXで早く結婚したいと煮詰まっていたリオネルが媚薬を盛ってソフィアの純潔を奪ってしまい・・・。破滅ルートは回避できても、ヒーローからは逃げられなかったヒロインのお話です。悪役令嬢に転生したけれど、死にたくないので必死に努力したらやり過ぎて愛されキャラに転身。割とよくある展開なので、正ヒロインが実は悪者というのもテンプレかな。とはいえ、ソフィアが歪んでしまったのも育った環境のせいであり、悪魔(多分)に唆されて、他人の力を奪い記憶操作まで出来てしまうと言うおよそ聖女とはかけ離れた力を手に入れ、憧れと嫉妬の対象であったシルヴィを追い落とそうと画策。でも、シルヴィを愛してやまないリオネルにより二手三手早く手を打たれ敢無く御用となるのでした。作中、ソフィア目線のお話もあるので悪事に至った理由も判り、情状酌量されたのも納得。実はシルヴィがゲームでどのルートでも破滅し続けたのはソフィアの力のせいではと彼女も思い至るんですが、だとしたら奥が深すぎるだろう、あのゲームwまぁ、登場人物の一人になったからこそ判ることもあるってことでしょうかね。記憶操作能力があれば確かにいくらでも罪をでっちあげられちゃうもんねぇ。元々シルヴィの性格が悪かったのもあってやり易かったろうとは思います。その後、リオネルとシルヴィは結婚。男女の双子も産まれ幸せな日々を送る彼らの様子が描かれて終わっています。評価:★★★★☆テンプレではあるんですけどそれが一番と思う内容でした
2024.03.23
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2023年12月刊蜜猫文庫著者:華藤りえさんブリトン国の姫・エレインは私生児であるため正妃から厭われていた。いつか王籍を捨て薬師として自立したいと願う彼女だが、いきなり父に婚約者を異母妹へ譲り、隣国ロアンヌの王アデラールに嫁ぐように命じられる。人質同然の扱いだろうと諦めまじりのエレインだがアデラールは最初からエレインを優しく溺愛してくる。「こんなことでも感じるのか…」蕩かすように情熱的に抱かれ日々アデラールに惹かれていくエレインは!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エレイン=薬師。国王の婚外子で「田舎姫」と蔑まれていた。アデラール=大国の新王。人質としてエレインを妃に迎える。 エレン=エレインの異母妹。母共々姉を毛嫌いしていた。ディディエ=アデラールの従兄弟で外務大臣。 ユアン=エレインの元婚約者。ブリトン国王宮の離宮で暮らすエレインは王女でありながら王妃に嫌われ過酷な生活を強いられていた。17年ほど前、まだ王太子だった父が辺境伯の庇護下にあった薬師の娘と恋に落ち、後に産まれたのがエレインであった。両親は結婚の約束もしていたが、その頃王宮では反王権派との争いが激化。仕方なく父は公爵家の娘を妃に迎え、妻の実家の支援で何とか勝利を収めたらしい。当然ながら母は愛人扱いとなり、エレインも私生児として育った。だがさすがに申し訳ないと思ったのか、父は辺境伯に母子の庇護を頼み、エレインも認知し定期的に生活費も送られていたこともあって、不自由なく暮らすことが出来た。そしてエレインが3歳になると辺境伯の嫡男・ユアンとの婚約も決まり、辺境伯夫人としての未来も約束されていた。しかし、居心地の良い辺境伯領での暮らしも母の死により一変。辺境伯はこれからもここで面倒を見ると言ってくれたのに、エレインは無理矢理王都に連れて来られた挙句、寂れた離宮に追いやられてしまったのだ。この境遇に至ったのは王妃の采配で、父は妃の実家に頭が上がらず二人の間に生まれた王女エレン共々贅沢三昧をしていても何も言えないらしい。王妃は随分と亡き母を嫌っているようで、薬師風情がと罵りエレインのとこも侍女を使って嫌がらせする毎日。そんなに目障りなら呼び寄せなきゃいいのに。ユアンと結婚したら辺境伯領に籠るつもりだし、そうなればもう二度と会わないんだから。そう思っていた矢先、珍しく父から呼び出されて謁見の間に出向くと、そこには弟王子以外は勢ぞろいで何故かユアンまで控えていた。久しぶりに見た父は徐にエレインに嫁いで欲しいと告げた。元々ユアンと結婚するつもりだけど、漸く許可をくれるってこと?今更何をと考えているとユアンとは婚約解消し、大国ロアンヌの新国王・アデラールの元に嫁げと言うのだ。そしてユアンはエレンと結婚させるとのこと。独自の権限を持つ辺境伯家と縁を結んでおきたいと言うことらしいが、そもそもその役目をエレインが担うはずだった。それをエレンに変える意味が分からない。納得いかなくてつい無礼と知りつつ厳しく説明を求めると、どうやら10年ほど前にロアンヌ国から購入した大砲の代金が未払いなままだと言う。アデラールが即位してから、この未回収金について言及されたのだが高額なので払えず、あと数年待って欲しいと頭を下げた。しかし、10年も未払いではその約束も意味をなさない。分割で何とかと頼み込みと、先方から踏み倒されない様人質を要求されたので、王女を嫁がせるということで漸く合意をもぎ取ったのだとか。なんで10年も支払いが滞ったのか偏に王妃たちの贅沢のせいであろう。それならエレンを嫁がせるのが筋なのに、そこは王妃から猛反対されエレインを身代わりにしたわけか。ユアンも将来は国王にと思っているようだが、第一王子がいるんだから王位を継ぐのは異母弟なのに。だが、こんな嫌がらせ生活に甘んじているより、借金返済の数年ロアンヌで我慢すればいい。離婚となれば多少はお金も貰えるだろうから、母の故郷だと聞くアルバ王国で地味に暮らすのだ。どうせ向こうもこんな国の王女など興味も無いはず。運が良ければ白い結婚で済むかも。夫とななるアデラールは叔父に父王を暗殺された上に、修道院に幽閉されるという不幸な境遇を乗り越え、後にその叔父を殺して正統な王位を取り戻したのだと言う。世間では冷酷王と呼ばれているそうだが、実際は部下思いで実直な人物だった。ロアンヌへは船でしか向えず、その最中騎士の一人が漆中毒に苦しみ、それを救ったのがエレインの薬学だったので大層感謝された。どうもエレンの悪名がエレインのことだと勘違いしていたそうで、謝罪された時はそれであの軽蔑した視線だったのかと納得。王宮に着くと白い結婚ではなくがっつりと夫婦生活が始まってビックリしたが、その頃にはお互い好感を持っていたので、その仲睦まじさは噂になるほど。国王は王妃を溺愛しているという話はブリトン国にも知れ渡り、アデラールの容姿を気に入ったエレンが自分こそが彼の正妃に相応しいと乗り込んで来て・・・。不遇ヒロインものです。色々残念な性格のこの異母妹は意気揚々とロアンヌまでやって来たのは良いけれど、妻を溺愛するあまりブリトン国でのその扱いの調査結果を見てアデラールは激怒。それに加え、エレインの母親の身辺調査も並行して行っていました。すると彼女の母はアルバ王国の王女だったことが判明。当時は敵国だったロアンヌ国王と恋仲になつたことで勘当されていたのでした。でも数年もすると勘当は解け、母亡き後はアルバ王国の第一王位継承権はエレインに。しかも、国王はエレインの母と正式に結婚していたことも判り、本来なら現王妃は愛妾扱いなこととエレンの方こそ私生児になると聞き、彼女は真っ青。色々事情が分かって来るとエレインの父親も何というか考え無しだなぁ。後ろ盾が欲しくて重婚とか、普通に詐欺でしょ。この件が露見し、ブリトン国の王妃とエレンは苦しい立場に追いやられることに。当然ながら国王も重婚の罪は逃れられず。小国の姫ということで一部の者たちから反感を買っていたものの、ブリトン国の第一王女でアルバ王国の後継という肩書が加わって文句のつけようのない王妃として暖かく迎え入れられて終わっています。亡くなったお母さんも自分の立場を誇示すれば良かったのにとも思いましたが、どうも娘が余計な政権争いに巻き込まれないためだったようです。そんな事情も知らず贅沢三昧だった王妃とエレンはホントばか。あとユアンも。父親にバレて勘当されたって顛末は正にザマァ。逃がした魚は大きいねw異母弟のエドワードはエレインを慕っているようなので彼が王になれば国同士も良好関係になりそう。エレインに惚れてからのアデラールの言動が読んでて面白かったです。評価:★★★★★
2024.03.06
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2023年10月刊蜜猫文庫著者:御厨翠さん王太子と親しい男爵令嬢をいじめたと冤罪を着せられ婚約破棄されたベアトリーセは、軍人として名高いバルシュミーデ公爵ウィルフリードに求婚されそれを受けることに。彼には王太子に乱暴されかけたときに助けられたことがあった。「あなたの美しさは芸術的だ。触れれば壊してしまいそうで怖いな」美しく凜々しい夫に溺愛され幸せなベアトリーセ。だがウィルフリードの留守に彼に恨みを抱く賊が弱みを突こうと襲ってきて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ベアトリーセ=公爵令嬢。 冤罪により王太子との婚約を破棄された。 ウィルフリード=王太子の従兄で公爵家当主。ベアトリーセに求婚した。 ユーリウス=王太子。 ミーア=ユーリウスの新しい婚約者となった男爵令嬢。その美貌と優秀で清廉潔白な性格から「氷の薔薇」の異名を持つ公爵令嬢・ベアトリーセ。いずれは王太子と結婚し、未来の王妃となるはずだった彼女は、よりにもよって婚約披露パーティーの最中に王太子本人から婚約破棄を言い渡されてしまった。破談となった原因を嬉々として語る王太子・ユーリウスの話によれば、自分は傲慢で強欲、使用人を人とも思わない悪女なのだそうだ。そして、ユーリウスの新しいお気に入りの男爵令嬢のミーアを虐め抜いていたと。正直、ほとんど言葉を交わしたこともないミーアをどうすれば虐められるのか謎ではあるが、何を言っても言い訳扱いされるのがオチだろう。とはいえ、事実無根なことについては名誉の為にも一応否定しておいたが、玉座では国王夫妻が真っ青な顔をしているのが滑稽だ。同席している父や兄たちが暴れ出す前に退出するが吉。婚約破棄を承諾すると激怒する二人を連れ王宮を後にした。屋敷に戻ると案の定父たちの不満が爆発。可愛いベアトリーセがあんなアホにコケにされたと後日国王に訴えるつもりのようだが、向こうも息子の勝手な行いに頭を抱えているに違いない。凡庸で性格に難があるユーリウスより優秀で聡明な第二王子マーティアスを王太子に推す声も多いと聞く。親心でせめて後ろ盾と出来の好い妃をとベアトリーセと婚約させたのに、自らおじゃんにしていては目も当てられない。しかも、王太子から破談にされたとなればベアトリーセは次のお相手を探すのも難しい。娘の将来をも潰してくれたと父たちが怒るのも当然だった。だが、王太子の女癖の悪さも承知していたので、後に他の女に入れ込んで自分は離縁される可能性も充分あった。今思えば婚約破棄してくれたほうが傷は浅い。相応の訓練も受けていたし、行き遅れるようなら父の軍にでも入れば良い。そう考え始めていた頃、思いがけない人物からベアトリーセに求婚書が届き、公爵家は騒然となった。ベアトリーセのクラテンシュタイン家と長らく犬猿の仲だったバルシュミーデ家の当主・ウィルフリードからの求婚書には真摯な言葉で是非ともベアトリーセを妻に迎えたいとしたためられており、母はすっかり乗り気だった。父は先祖からの因縁もあって渋い顔をしていたが、陰謀論に発展しそうだったので彼女はウィルフリードの名誉のために大事になっては拙いと隠していた事実を口にした。彼は1年前、王太子に乱暴されそうだった自分を救ってくれた恩人なのだと話し、もしかしてその時に見初めてくださったのかもしれないと。その話で更に王太子に向けて父たちの憎しみが膨れ上がったが、ウィルフリードの評価は爆上がり。数日後、実際に彼が挨拶に来た際、父は娘可愛さに色々難癖を付けてはいたものの、渋々だが二人の結婚を認めたのだった。ウィルフリードの領地に嫁いだベアトリーセだが、そこでは彼の弟妹に兄嫁として認められず、ぎこちない態度を取られ続けていた。毎日悪戯を仕掛けられても笑って見過ごしていると、暫くしてあるトラブルをきっかけに、仲良くなることができた。心配事も無くなり暫く幸せな新婚生活を送っていたのだが、国境で頻発する強盗を討伐するためにウィルフリードが留守にしていた際、バルシュミーデ邸が賊の襲撃を受けて・・・・。ボンクラ王太子を支える妃として選ばれたベアトリーセは、努力家で自分にも厳しい才女でした。でも、婚前交渉厳禁の上流社会で、王太子に無体を働かされそうになった時、間一髪彼女を救ったのが、王太子の従兄でもあるウィルフリードだったのです。お互い一目惚れ同士だったものの、ベアトリーセは婚約者のいる身、でも諦めきれずにウィルフリードは彼女を見守り続けていた。そしてあの婚約破棄騒動が。あんなに頑張っていたベアトリーセを不憫に思いながらも、逆にこれはチャンス。王太子が彼女をミーアの側仕えにとふざけたことを言っていたこともあって、急ぎ結婚を申し込んだのでした。当初、ベアトリーセは彼に迷惑を掛けたくないと断るつもりだったようですが、ウィルフリードに説得され結婚を承諾。嫁ぎ先では小姑たちから反感を買うも、嫌がらせをものともせず彼らの心をがっちり掴んで仲良しに。なのに、そんな幸せを阻むように魔の手が、っていう展開です。黒幕についてはまぁ、やっぱりねと読んでいればすぐに見当つくかと。最後に公衆の面前で断罪された時はスッキリしました。勝手に妬まれた挙句恨みまで買っていたベアトリーセ達にしてみればいい迷惑な話なれど、ああいうアホに権力持たせちゃ手に負えないので、王位を継ぐ前に事件を起こしてくれて良かったのかも。評価:★★★★★割と鉄板な展開+内容なんですけど、ヒロインに好感が持てるし面白かったです。
2023.11.06
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2023年8月刊蜜猫文庫著者:ちろりんさん小国の王女アリーヤは美貌で知略家の皇帝イシュメルに嫁ぐ事に。期待に胸を膨らませていた矢先に授業で閨は痛みを伴うと聞き衝撃を受け、姉から「主導権を女性が握ればいい」と助言をもらう。早速初夜でアリーヤが彼に主導権を握らせてほしいとお願いをすると彼は賭けをして勝ったらいいと条件を出してきた。「キスだけは自分からしてみるか?」痛みを感じたら交代出来るのに実際の彼との夜は蕩けるほど甘く気持ちよくて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アリーヤ=小国の末姫。国交的に当たり障りない国の姫という事情からイシュメ ルの花嫁に選ばれた。イシュメル=大国・ジェダルザイオン帝国皇帝。 カリテア=帝国の属国の一つ・チェキシア国の王女。 メイジー=アリーヤの姉姫。政略婚ものです。今年18歳になる王女・アリーヤが、ジェダルザイオン帝国皇帝の元に嫁ぐことが決まり、その際、国母となるための閨教育が徹底的に行われた。明け透けな教師の言葉に赤くなったり青くなったりしていたアリーヤだったが、初夜はそれはそれは痛いものだと聞いてドン引き。それでも嫌がらずに全てお相手に委ねろと言うのだから、恐怖心の方が勝ってしまい、降嫁した姉姫・メイジーの元を尋ね、助言を求めた。しかし、姉も教師とほぼ同じことを言ったばかりか、彼女の場合、シーツが血の海になったという恐怖体験付きでアリーヤは顔面蒼白。どうしよう、いくら国の為の結婚とは言っても自分には耐えられそうにない。そんな妹を見て、怖がらせ過ぎたかとメイジーは、アドバイスを。ならば、女性側が主導権を握れば良いのだと。それは女側がリードを取れと言うこと?本格的な閨教育を受けたばかりの自分には聊かハードルが高い気はするけれど、背に腹は代えられない。夫となるイシュメル様が、妃の言い分を聞いてくれる方ならいいのだけれど。一抹の不安を抱えつつ、輿入れを果たしたアリーヤを、国を挙げて歓迎してくれたイシュメル。冷酷非道なやり手の皇帝とは聞いているが、思っていたよりも優しそう。これは、案外こちらの提案を聞き入れてくれるかも。そして迎えた初夜。一応、こうしたいのだと恐る恐る進言。君が勝ったなら善処しようと賭けを持ち掛けられたが、知略で有名な彼に勝てるはずもなく見事にアリーヤは惨敗。すっかり主導権はイシュメルに握られてしまった。が、思っていたより痛くない。どころか気持ち良くて聞いてたのとなんか違う。翌日、悶々とするアリーヤだったが、いきなり初夜で自分に主導権を握らせてくれと申し出た彼女をイシュメルは甚く気に入っていた。何とも面白い女ではないかと。家族の縁が薄かったと言う彼は、心優しくほっこりする雰囲気の彼女を溺愛し、忙しい公務の合間を縫って足繁くアリーヤの元に通うように。だが、以前からイシュメルの妃の座を狙っていたチェキシアの王女・カリテアが、帝国の建国祭を祝う代表としてやって来た。カリテアは対面早々、あからさまにアリーヤを敵視し・・・。政略結婚ながら、馬が合って仲良く暮らしている二人を引き裂くべくお邪魔虫登場。皇妃が無理ならこの美貌で側室にと野心を燃やすカリテアお目当てのイシュメルには全く相手にされていないのに、自分が選ばれないわけがないという自信は何処から来るのか。イシュメルの目が無い所でアリーヤに喧嘩を売ったりしたものの、別段彼女も気弱と言うわけではないので嫌味にも負けていませんでした。そんな出来事が彼の耳に入り、イシュメルにより厳しく叱責を受けたが、収まりがつかないカリテアは、新たな手段でアリーヤを追い出そうと企みます。まぁ、それも不発に終わるんですけどね。さすがに、祝いに来てくれていた姉のメイジーに嘘を吹き込み騒動に巻き込んだとアリーヤは激怒し、彼女がカリテアに与えた罰はチェキシアの面子にも関わることで、王女としての面目は丸つぶれ。とはいえ、特に誰かを害したとかではなかったので、落としどころとしてはそんなものかな。じれじれするような展開も無かったし、序盤はコメディタッチ、ヒーローも案外チョロい気はしましたが、その分展開もサクサク進んで面白かったです。評価:★★★★★
2023.09.15
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2023年8月刊蜜猫文庫著者:クレインさん幸せと縁遠い令嬢でしたが最高の屋根裏部屋で最上の婚約者と極上の愛を手に入れました!幸薄ネガティブ英雄侯爵子息×幸薄ポジティブ伯爵令嬢「キミにはもう、優しい世界だけをあげたい」伯爵令嬢ルーチェは連れ子の為、母を亡くしてからは使用人のような扱いを受けていた。ある日突然、美貌の英雄侯爵子息のオズヴァルドの婚約者として嫁ぐ事に。この結婚が不服な彼はルーチェを追い出す為に屋根裏部屋を与えたがルーチェにとっては心地がいい場所だった。やがてルーチェの境遇や逆境に負けない心を知った彼はルーチェを愛するようになる。「私の妻は、君だ。君がいい」彼に慈しまれ情熱的に愛されはじめて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ルーチェ=伯爵家の長女ながら使用人のようにこき使われていた。オズヴァルド=侯爵家の次期当主でルーチェの婚約者。 レオナルド=王太子。不遇ヒロインものです。こちらも発売からあまり日が経っていないのでざっくりと。婚外子として産まれたルーチェは、母の連れ子としてアルベルティ伯爵家で育てられた。彼女の母はそれはそれは美しい人で、子持ちでも構わないと懇願し続けて漸く口説き落としたらしい。そんな母はルーチェの実父のことは娘にさえほとんど語らず、数年後病でこの世を去った。伯爵は嘆き悲しみ、母の子だからと可愛がっていたルーチェにすっかり興味を無くして放置。暫くして後妻を迎えたのだが、夫の実子ならともかく、前妻の連れ子と仲良くなれるはずもなく。継母はルーチェを虐め続け、長男が産まれると更にエスカレート。ルーチェを使用人としてこき使いだしたのだった。しかもタダ働きの上、何かとケチを付けては食事を抜く等、単なる憂さ晴らしとも取れる継母のせいでガリガリに痩せ細っていた彼女もまもなく18歳になると言うある日、伯爵に呼ばれたルーチェはセヴァリーニ侯爵家の次期当主との結婚を命じられた。所謂政略結婚なのだが、伯爵はルーチェに先方に嫌われて早々に破談にして来いと言う。援助を得るための結婚ではないのか?ルーチェが疑問に思っていると、どうやらこの縁談は侯爵家側からの申し入れだそうで、応じる代わりにもしも破談になった際は侯爵家が多額の慰謝料を出すと約束したのだとか。支度金の返金も不要とのことで、破談になった方が実入りが良いと踏んでるようだった。継母は派手好きの上に金食い虫なので、実はこの家は相当困窮しているらしい。常々この屋敷から出て行くことを願っていたルーチェは、一先ず、侯爵家でのんびり住まわせてもらおうと目論んでいたのだが、彼女の相手であるオズヴァルドもまた、当主である祖父から無理矢理進められたこの縁談に不満を募らせていた。とある事情から女性不信の気がある彼は、婚約者を追い出すべく、屋敷の屋根裏部屋にルーチェを住まわせという暴挙に出て・・・。最初はどちらも破談になるよう目論んでいた二人。でも、流石は侯爵家。屋根裏部屋でも実家での扱いに比べれば天国。すっかりそこでの暮らしに満足したルーチェは、貴族の娘らしからぬ気さくさに侯爵家の使用人たちの心を掴み味方に付けてしまいます。おかげで、オズヴァルドの方が悪者扱いされた上、古参の使用人に窘められた彼は、自らの行いを反省。ルーチェに謝罪すると、誤解も解けて二人の仲は急接近。実家からは早く破談にして帰って来いと矢の催促が来るも、心を通わせ合うようになった彼らは結婚を望むように。だが、王太子であるレオナルドとルーチェが出会ったことで状況は一変。母が墓場まで持って行った実父の正体がついに判明します。まぁ、この辺りの事情は読んでるとすぐにピンとくるかと。ルーチェの出自が明らかになった時、アルベルティ伯爵家の面々はきっと顔面蒼白だろうな。そもそも、誰の子であろうと虐げるのは論外ですからね。でも、彼女の正体が判っても、二人の間に新たな試練が。レオナルドとオズヴァルドの祖父の思惑など、終盤は怒涛の展開で面白かったです。評価:★★★★★
2023.08.29
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2023年6月刊蜜猫文庫著者:逢矢沙希さん隣国との和平の縁談に自身の代わりとして異母妹を嫁がせた王女アステア。その目的は自国で冷遇されている妹を助ける為だった。心優しい妹が愛される事を願い送り出したが、身代わりは直ぐにバレて国王オルベウスからは本人が来るように要求される。断罪覚悟で向かったのに何故かオルベウスは会った事もないアステアに求愛をする。「あなたは男心を弄ぶのが上手い」美貌で少し意地悪な王に困惑しつつも溺愛生活が始まってー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アステア=ゼクセン王国第一王女。 不遇の妹の為に身代わり婚を決行する。 オルベウス=アステアの夫でヴァルネッサ王国国王。 シャリテ=アステアの異母妹。王に認知されず下女扱いされていた。 フィンリー=アステアの護衛騎士。一応、身代わり婚ものです。物語はあらすじにある通りで、事情を全部記載すると長くなるのでざっくりと。愛妾の娘と言うことで、王妃に虐待された続けた挙句下女としてタダ働きさせられていた異母妹・シャリテを救う為、自らの政略結婚相手の元に彼女を王女として輿入れさせたアステア。姿絵くらしか見てないだろうし、よく似ている容姿の姉妹なのだからバレないだろうと思ったら、到着したその日にバレて、妹の命が惜しければ本物が来いよと先方から脅しの手紙が。渋々、隣国に赴くとシャリテは手厚くもてなされており、国王オルベウスは着いたばかりのアステアと早々に式を挙げ、彼女を王妃に迎えます。てっきり、妹を身代わりに仕立てたことをこってり絞られるかと思いきや、オルベウスはアステアを溺愛。しかも、シャリテを彼女付きの侍女として王宮に留まることを許してくれた。腹違いとはいえ、仲の良い姉妹。祖国にいるより余程満ち足りた暮らしを送り、かつてない幸せな日々を送っていたが、アステアは強欲で意地の悪い両親の性格をよく知るだけにある不安を覚える様に。このまま、彼らがシャリテを好きにさせておくだろうかと。母の手前、認知こそされていないがシャリテは紛れもなく国王の娘。どこぞの裕福な国と繋がりを持つための駒として使うなんてことを考えていなけりゃ良いが。そう思っていた矢先、アステアの予感は的中。シャリテを第二王女として、商業大国として名高いラエル国に嫁がせるとの知らせが入り・・・。自分が結婚するのが嫌で無理矢理異母妹を嫁がせた、と言うのがこのジャンルのセオリーだと思うんですが、今回は逆パターン。妾の娘憎しで王妃が企てた変態親父に嫁に出されそうな異母妹を救う為に、良縁ともいえる隣国の国王の元へ行かせたヒロイン。とにかく、この国から逃がさなきゃと企てたは良いものの、ヒーローが思いの外ヒロインに惚れてたのであっさりバレて、結局ヒロインが嫁ぐ羽目に。最初はどうなるかと思われたこの結婚生活は思ったよりも快適で、側室の座を狙う公爵令嬢と火花を散らし舌戦を繰り広げたりするも、結構楽しそう。このヒロイン、さっぱりした性格で頭も良く、凄く好感持てる子で、ヒーローが何故あれだけ溺愛してるのかも納得。彼が求婚したのも、実は過去にヒロインと出会っていてというエピソードもあって、ちゃんと王道展開も。そして妹も、姉の護衛騎士の一人と想いを通わせていました。それにしてもヒロインの親のクズさよ。こんなのが統治してても国の為にならないと思ってたら、王太子はまともそうでホッとした。ヒロインと同じくこの人も思う所あったんだろうな。正直、ヒーローはこの国乗っ取っちゃってよな心境だったけど、彼が、次代とは友好的に付き合えそうな事言ってたので、あのアホ国王は早い所、息子に王位を譲って引退してほしい。嫁さんの顔色伺って認知しないなら、そもそも最初から愛妾なんて作るな。(この辺りの事情は読んでて腹が立ってしょうがなかった)中途半端が一番良くない。そんなヒロインの両親が特にざまぁされることはなく何か若干モヤモヤが残りましたが、お互い良い旦那さんに恵まれて姉妹二人とも幸せになって何より。評価:★★★★★こういうヒロイン好きです。
2023.08.18
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2017年10月刊密猫文庫著者:藍井恵さん王太子ファティスの運命の相手、『月桂樹の乙女』だと言われて王宮に連れてこられたアリシア。子孫を残すため義務的に自分を抱こうとするファティスに反感を覚えるも、彼に触れられるだけで幸福感に襲われ蕩けてしまう。「私の乙女がこんなに淫乱だなんてな?」ファティスもアリシアに何かを感じ、激しく執着してくる。お互いに否応なく惹かれあっていると認めようとした矢先、ファティスには意中の相手がいたと聞かされ!? ↑amazonより、あらすじ引用登場人物 アリシア=町医者の娘。王太子の運命の相手として王宮へ招かれる。 ファティス=カサヴェス王国の王太子。 長らく初恋の少女を探していた。代々、カサヴェス王国の王太子のお相手には、皆体のどこかに月桂樹の葉を模した痣があると言う。聊か眉唾物の話だが、痣を持つ乙女と王太子は初対面であっても強く惹かれ合うらしい。だが、当代の王太子であるファティスの妃となる人物探しは難航。貴族の娘たちの中に該当者が一人もおらず、関係者にも焦りの色が見え始めた頃、漸く見つかったのがアリシアであった。しかし、惜しむらくは彼女は平民の出であること。あれだけ探してもいなかったのだから、もしやと思わないでも無かったのだが、未来の王妃が平民となると貴族から反発も出そうで頭を悩ませていた。とはいえ、何の因果か、古の頃からこの国の王太子は運命の相手とでなければ子供が出来ないという制約があって、王家を存続さるために背に腹は代えられない。半ば無理矢理王宮へ連れて来られたアリシアは三日三晩とある部屋にファティスと共に閉じ込められて、子作りを強要されたのであった。しかし、いくら番とも言うべき運命の相手同士であっても、その程度の期間を励んだとて早々に妊娠するはずもない。初対面時の印象こそ最悪だったが、ファティスもそう悪い人ではないと判った。どちらにせよもう逃げられないなら、腹を決めるしかない。厳しいお妃教育も頑張っていた彼女だったが、舞踏会にて令嬢達のある会話を耳にして愕然とした。実はファティスは初恋の少女を長らく探しており、アリシアが運命の相手と判明してからも、迎えを半年遅らせていたことを知り・・・。運命の相手とかホントかよ、と最初は信じていなかったアリシアも今ではすっかりファティスに惚れており、彼の為にお妃教育も頑張っていたのに、この噂話のせいで彼女は家出を決行。でも、ファティスに早々に見つかってしまい、惚れた弱みで帰ることを約束するも、気になるのはやはり彼の初恋の人の存在。後継を望むならアリシアとの結婚は必須。けれどもファティスは諦められるの?悶々としていたら、実はアリシアとファティスは幼いころに出会っていたことが判明。アリシアこそがその初恋の人で当の本人が忘れてただけっていうオチ。まぁ、ファティスの方も最初は気付かず、諦めきれずに悪足搔きお迎えを遅らせてたようなので、これは致し方ない。この辺りのあらましは物語の序盤にアリシアのちょっとした思い出話として語られているので、ファティスのモノローグと照らし合わせると、ああそういうこと、とすぐにピンときます。令嬢達の嫌がらせもあるにはあったけれど、ヒロインは雑草の如く強い子なのでモヤるほどではありませんでした。おまけに若干コメディー寄りなので気楽な内容が読みたい、な方におススメ。そして何よりイラストが美麗です。評価:★★★★☆
2023.07.27
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2022年10月刊密猫文庫著者:藍井恵さん他人の「性的欲望の心の声」が聞こえる能力持ちのアデルは下心満々の男性に冷たくしているうちに「高慢令嬢」と呼ばれ孤立してしまう。社交界から離れ、修道院で孤児たちに癒やされていた彼女だが、そこを公爵ブルーノに気に入られて求婚される。「いい声が出せるじゃないか。男嫌いとは嘘だな?」性的欲望を露わにせず、ひたすらアデルを感じさせるブルーノ。高潔な彼に心惹かれるも彼の真意がわからず戸惑うアデルはー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アデル=伯爵令嬢。他人の心が聞こえる能力(ギフト)を持つ。 ブルーノ=宰相。王の従兄弟で公爵家の当主。 マーティン=国王。姿を消した恋人を探している。クリスティーナ=アデルが修道院で出会った修道女見習。 ディアドラ=侯爵令嬢。エンフィールド伯爵家の長女・アデルは、社交界デビューして間もなく、「性的欲望の声が聞こえる」能力に目覚めた。この国にはたまに能力(ギフト)持ちの者が産まれており、アデルの祖母も能力持ちだったと聞いている。そんな祖母の能力はまだ喋れず意思疎通の難しい赤子の要望を聞くというもの。アデルもどうせ目覚めるならそういう平和なのが良かった。なまじ美しくスタイルの良い彼女はデビューするとすぐさま人気者となったが、ダンスや求婚の申し込みをする男たちの欲望の声だけは頂けない。涼しい顔をして心の中は口に出来ないような下品な言葉ばかり。おかげで初日は気分が悪くなって寝込んだほど。しかし、年頃の娘に早く良い縁談を、と張り切っている両親を思うともう舞踏会に行きたくないとは言えなかった。そして本人の気持ちとは裏腹にアデルの人気は鰻登り、少しでも優位に立とうと競うように伯爵家には毎日大量の贈り物が。そんな最中、両親は娘の嫁ぎ先を絞り込んだようで、名を聞くと寄りにも寄って心の中でとんでもない言葉で自分を辱めていたあのむっつり男ではないか。正直、一番リストから外れて欲しい奴だっただけにガックリ。そういえば侯爵家の子息だったっけ。とはいえ、あんなのと結婚なんて絶対に嫌。しかも、社交界では侯爵令嬢のディアドラがアデルの人気を妬み、取り巻き達を使って彼女を孤立させただけでなく高慢令嬢という呼び名まで付けてくれたせいで友人一人いない状態。何とも寂しい人生。ともかくあいつとの結婚を回避しなければ。そこでアデルは修道女になることを決意。聖女と名高い司祭のいる修道院に赴き、その旨を伝えたのだがやんわり諭されてしまい断念。だが、修道院で預かっている孤児たちに懐かれ、彼らと遊ぶことに思いの外ハマってしまった。読み聞かせをリアルにするために着ぐるみ迄作るほど。クリスティーナと言う年の近い修道女とも親しくなったし、縁談そっちのけで楽しい日々を過ごしていた。そんなある日、犬の着ぐるみを着たまま修道院の廊下を歩いていたアデルは、この国の宰相であるブルーノに呼び止められた。どうやら人探しをしているらしい彼は、アデルの顔を見て伯爵令嬢と判り非礼を詫びたが、何故かブルーノは以降度々この修道院を訪れる様に。修道女たちの噂話によれば、宰相の探し人とは彼の恋人とのこと。今まで浮いた噂一つ無いブルーノにそんな人がいたとは意外だったが、彼からは不思議とあの下品な欲望の声が聞こえない。アデルにとっては珍しく気になる紳士であった。それから暫く経った頃、ブルーノからアデルを妻に迎えたいと伯爵家に信書が届き・・・。修道院をいくつもめぐって探し回るほど好きな人がいるくせにどうして自分を妻に?と、アデルは混乱するも、ブルーノは王の従兄弟で王族な事もあって両親は大喜び。おかげであのムッツリとの結婚はご破算になったのは助かったけど、それにより貰うだけ貰って断るとか、アデルには更に傲慢という呼び名迄付いて回るように。しかし、そんな悪評もブルーノがその地位と身分で黙らせ、アデルを溺愛。相変わらず欲望の声が聞こえず、もしかしてアデルにはそんな気起きないのかとガッカリしていると、実際は結構な触りたがりでそうでもないようでどうにも解せない。やがて、ブルーノの探し人は彼の従兄弟である国王・マーティンの恋人グローリアであることが判明。しかも、その人物に思い当たったアデルは、二人の恋路を実らせるため一肌脱ぐ、と言った展開です。この辺りはもう読んでると該当人物がすぐ判るんですけど、彼女が何故姿を消したのか、その裏に潜む王位を狙う者たちの企みなんかも浮上していきます。初登場時の印象が悪いキャラは疑いようもなく悪役で、その王道展開はいっそ清々しい。序盤はブルーノの本心が分かり難く、アデルとの接点もあまりなかったものの、あの着ぐるみを脱いだ時に一目惚れをしていたというオチでした。それにしても、心の声が聞こえるのも善し悪しですね。ブルーノも終盤は駄々洩れしてたけど、その頃はもう両想いだったから。評価:★★★★☆結構コメディ寄りのお話です。
2023.07.16
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2022年8月刊密猫文庫著者:すずね凛さん王弟ヴェネディクトのお見合い相手になったフローレンス。初恋を忘れられない彼女は断ろうとするが、一番好きでなくてもかまわないというヴェネディクトの迫力と弟を案じる国王の懇願に押され婚約をOKしてしまう。「そんな色っぽい目で見られたら男はひとたまりもない」強面だが凛々しく真摯なヴェネディクトに熱烈に迫られフローレンスも彼への想いを深めていくがある日ヴェネディクトが盗賊団の討伐に旅立つことになり!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 フローレンス=伯爵家の長女。王に頼まれ、断るはずの見合い相手・ヴェネディ クトの婚約者となる。ヴェネディクト=王弟で侯爵。何かと悪評の多い人物。 エヴリーナ=ヴェネディクトの前結婚相手。社交界デビューしてからというもの、その美しさから求婚の申し出が後を絶たない伯爵令嬢・フローレンス。そんな彼女の元に新たな見合いの打診が。お相手は、何かと悪評の多い王弟・ヴェネディクト。横暴な性格故に結婚式当日に花嫁に逃げられたとか、野獣なような外見で邪神と渾名されている人物と聞くが、心優しい彼女は噂を鵜呑みにするつもりは無い。でも、フローレンスには忘れられない初恋の人がいた。とはいえ、兜で顔も判らず探しようもないのだけど、そんな心持では殿下にも失礼だろう。家族に何と言われようとお断りしようと決め、いざ当人と顔合わせしてみると、目の覚めるような美青年。噂なんて本当にアテにならない。思わず見惚れてしまったが、断ると決めたからにはと、碌に話もせずに断りの言葉を告げ逃げ出したら、病気がちな国王から弟を頼むと懇願されてしまい、その必死な様子に人の好い彼女は断り切れず、ついヴェネディクトとの婚約を承諾してしまうのだった。ヴェネディクトは兄の頼みを聞いてくれたことを感謝し、フローレンスを大事にすると宣言。捨てられた動物たちを宮に引き取って世話をしている姿も意外だったが、彼の誠実な人柄は信じられる気がした。初恋の人に未練もあるにはあるが、顔も名も知らぬ相手。いくら懇願されたとはいえ、この人と結婚すると決めたからには自分も誠意をもって尽くそうと決意。そうして一緒に過ごしていくうちに数か月後にはすっかり仲良くなった二人。正式に婚約も発表され、後は結婚式を待つばかり。だが、そんなある日、宮にヴェネディクトの元結婚相手・エヴリーナがやって来て、彼との間に息子がいると言う。彼の話では、エヴリーナは結婚式当日に駆け落ちして、そんな関係になったことはないと話すが、息子と言われるレイフはヴェネディクトにそっくりで・・・。年に差カップルのイチャイチャ話かと思いきや、最後の最後でヒーローの隠し子騒動が。まぁ、元結婚相手(元妻ではない)の話が何度か出てたんで、そっち関連で何かあるとは予想してたものの、満を持してクライマックスに登場。初夜を迎える前にトンズラした相手なので子供なんているはずもなく、当然、その子はヒーローの子ではありませんでした。でも、二人の仲に揺さぶりをかけるには十分で、ちょっとした騒動が起こるんですが、結果誤解も解けて、元結婚相手の企みもパァ。昔のよしみで援助してくれってだけでも図々しいのに、隠し子をでっちあげるとか、ただのアホ女なので、厳しく罰しても良かったような。結局、国王は体調を理由に退位し、ヒーローが王位を継承。エピローグではその名君ぶりが描かれて終わっています。あ、初恋の人は勿論、若かりし頃のヒーローのことでした。この辺の経緯についてお知りになりたい方は読んでみてください。評価:★★★★☆じれじれ度はかなり少なめ。安心して読めます。
2023.06.24
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2023年4月刊密猫文庫著者:七福さゆりさん伯爵令嬢メロディは継母と異母妹に睨まれ、実父にも見捨てられ使用人以下の扱いを受けていた。ある日耐えきれず屋敷を逃げ出した彼女は教会で第一王子エクトルと出会う。彼はメロディを知っていたようだった。彼の持つ不思議なブローチに運命の伴侶だと選ばれ王宮に連れ帰られるメロディ。「そんなに煽られたら自分が抑えられなくなる」エクトルに溺愛され美しく花開く彼女だが、異母妹がなお姉を害そうと陰謀を巡らせていて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 メロディ=モリエール伯爵家の長女。実母亡き後にやって来た継母と異母妹から 使用人以下の扱いを受けていた。 エクトル=エンタナ王国の第一王子。 レリア=メロディの異母妹。不遇ヒロインものです。伯爵家の長女であるメロディは優しい両親に愛され、幸せな日々を過ごしていた。だがそれは10歳までのこと。母が風邪をこじらせて急逝した1ヶ月後のこと、父は早々に後妻を迎え入れた。しかも、その後妻との間に既に娘がいることに驚愕。父は母に良い顔をしながらも外で愛人を作っていたのだ。メロディは大層ショックを受けたものの、後妻・イリスが屋敷を取り仕切るようになると彼女の私物は全て取り上げられ、異母妹のレリアの物とされ、メロディは使用人として扱われるように。あれから8年、メロディに同情的だった使用人はイリスによって全て解雇されており、今は新参の者たちまで彼女をこき使い虐める始末。レリアは外面は良いが、影で異母姉に嫌がらせを繰り返し、ついには大事に隠し持っていた母との思い出の絵本まで破かれてしまった。その仕打ちについにメロディは耐えきれず、雨の中屋敷を飛び出し、教会に身を寄せた所、雨宿りに寄ったらしい一人の青年と出会った。彼はエクトルと名乗り、虐めにより傷だらけのメロディを気遣ってくれた。その時、エクトルが身に着けていたブローチが輝き、それを見た彼は一人納得した様子。不思議に思いながらも、結局行くあてもないメロディは伯爵家へと戻ったのだが、勝手な真似をと彼女を待ち構えていたイリスが手を上げかけた時、屋敷を訪れ助けてくれたのはエクトルだった。彼がこの国の第一王子だと気付いた伯爵家の面々を無視し、エクトルはブローチが選んだものとしてメロディを妃に迎えると宣言。彼女を王宮へと連れ帰った。そこでメロディの待遇は一変。美味しい食事に豪華なドレス。何よりエクトルの愛情を受けて、段々健康を取り戻す彼女だったが、収まりがつかないのはレリアたちで・・・・。一番クズなのはヒロインの実父で、こいつはもう本当にどうしようもない。いや、妻を失くして豹変したとかなら判るんですけど、元から裏切ってたとなると話は変わる。しかも、犯罪に手を染め、その利益で贅沢三昧って。そりゃ、厳しい処罰を受けますわな。個人的にはあれでも生ぬるいと思うけど、未来の王妃の家族を処刑というのは体裁が悪いのかもしれない。クズは実父として、何か嫉妬メラメラだったのは異母妹。女の妬みは恐ろしい。姉に諭された時点でやめときゃ良かったのに。とはいえ、この子が歪んだのも親のせいな気もします。よく言えば純粋なんでしょう。ブローチが選んだだけで王子がヒロインをあんなに溺愛するなんてと思ってたら、実は二人は以前出会っており、王子にとって彼女は初恋の人だったと言うオチ。元々運命の人で、ブローチが選んで当然ってことだったようです。このレーベルの特徴かやけにラブシーンが多く、内容的には半分のページで終われそう。よくあるシンデレラストーリーとなっております。評価:★★★★☆
2023.06.23
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2023年5月刊蜜猫novels著者:すずね凛さん王女アポロニアは祖国を滅ぼした国の王から弟の命と引き替えに、新興国クルーガー帝国の皇帝ラインハルトの暗殺を命じられた。捧げ物として寝室に上がったアポロニアだったが計画は失敗に終わり死を覚悟する。しかしラインハルトは彼女を許す「気に入った。あなたの色香に溺れそうだ」彼はそのままアポロニアの体を求め、情熱的で甘い初夜を迎えた。美貌で一途なラインハルトからの寵愛は止まらず彼女も彼を愛するようになり!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アポロニア=亡国の王女。捕虜として囚われ、弟の命と引き換えに間諜としてラ インハルトの元へ送られる。ラインハルト=最果ての国・グルーガー帝国の皇帝。 エリク=アポロニアの弟 ガルバン=ラインハルトの侍従。 ヨハンナ=アポロニアに付いて来たネッケ王国の侍女。軍事大国であるネッケ王国から突然の侵略を受けて、アポロニア達の祖国ダーベルクは滅びた。その祭、国王夫妻は国と運命を共にしたのだが、騎士に護られ脱出したアポロニアと弟のエリクは道中追っ手に見つかり囚われ捕虜となったのだった。その後、アポロニアは王女・マリエの小間使いとして働いており、美しい彼女に嫉妬した王女からは嫌がらせや腹いせによる折檻を受け続けていた。そんなある日、最果てにある国・グルーガー帝国の躍進を恐れたネッケ国王は、謀略を巡らせた。当初はマリエを嫁がせ同盟を結ぶと見せかけ安心した隙に、戦争に持ち込もうと考えたものの、王女の我儘により却下。だが、丁度良い駒がいるではないか。元王女で教養もありそして美しい娘が。ネッケ国王はエリクの命を盾に取り、アポロニアに皇帝暗殺か、それが無理なら皇宮に留まり間諜として内情を探れと命じ、彼女を貢物として帝国へと送り出した。当のアポロニアは、勿論そんな役目は死んでも御免ではあったものの、エリクを人質に取られている以上従うしかない。条件として、事を成した暁には姉弟共に解放してくれるという言葉を信じ、侍女のヨハンナと二人遥々帝国にやって来た。ラインハルトは当初、貢物など突っぱねるつもりではあったが、雪の女神のようなアポロニアに一目惚れ。初夜からナイフを振りかざし襲って来た彼女にのっぴきならない状況を察したラインハルトは、アポロニアから事情を聞き、エリク奪還に力を貸すと約束。トラウマから戦争を嫌がる彼女のために、それ以外の方法を考えるから1年時間をくれと告げるのだった。ラインハルトはアポロニアを溺愛し、彼女を皇妃にすると宣言し方々に触れを出した。これでネッケ側は、アポロニアが皇帝に上手く取り入ったと思うはず。その間にエリクを救う手筈を整えることに。荒々しい彼に翻弄されながらも、段々とラインハルトに惹かれて行くアポロニアだったが、この結婚は1年間だけのかりそめのことと思い込んでおり・・・。多数の魔獣が登場するファンタジー色の濃い内容でしたが、ザ・王道なお話でした。不遇ヒロインが悲壮な決心の元、表向きは貢物として敵国に行かされるも、その美貌と性格の良さでヒーローに溺愛されて皇妃に迎えられます。ただ、自分のことは二の次な性格の彼女に、ヒーローがヤキモキしたりするものの、こと恋愛に関してはじれじれ展開は一切無しで、さくさく読めます。ホント、変なライバルとか出て来なくてよかった。一応あの性悪王女がそれに当たるんでしょうけど、しょうもない奴だったし、父親共々結構なザマァされてたからスッキリ。戦争せずにどうやって屈服させるの?と不思議だったんですが、なるほどそう来たか。秘密裏に弟も救出されており、無事に姉弟は再会。祖国も復興して大団円で終わっています。あとがきにて作者さんも触れていましたが、今作はとにかく脇役が光ってました。その辺の活躍を書くと長くなるので敢えて記載していませんが、みんな個性豊かで良いキャラしてる。個人的にはヒーローの使い魔・アーマがお気に入り。評価:★★★★★
2023.06.02
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2019年3月刊密猫文庫著者:すずね凛さん妹の結婚を機に婚活を始めたフローラ。意気込みが空回りして軽薄な男性に無体を働かれそうになったところを、美貌の候爵、クレメンスに助けられる。己の情けなさに泣き出してしまったフローラに彼は婚活の手伝いを申し出る。「いけない子だ。もうそんなキスを覚えて」よく似合う上質のドレスや宝品を贈られ、楽しい逢瀬を重ねた末に与えられる極上の快楽。夢見心地のフローラにクレメンスは結婚相手を自分にしろと言いだし!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 フローラ=ハワード男爵家の五女。 「旗竿」と揶揄される程の長身と黒髪がコンプレックス。クレメンス=ウィンザー侯爵家の当主。フローラの婚活指導を買って出る。 ケイト=クレメンスの妻の座を狙う伯爵令嬢。レイノルズ=フローラが婚活で知り合った男爵。ハワード男爵家の五女として産まれたフローラは自身の外見が長らくコンプレックスだった。金髪揃いの姉妹たちの中でたった一人黒髪で、誰に似たのか高い身長の彼女は細身なのも相俟って陰では「旗竿」という嬉しくない渾名で呼ばれているのも知っている。気にしない様努めてはいたが、初恋の相手である従兄弟のチャールズにまで辛らつな言葉を投げかけられてからというもの、フローラは引き籠りがちになり、そのトラウマから男性不信となっていた。それから時が流れ、妹のコニーがそのチャールズと結婚。今ではすっぱり未練も無いが、性格が悪い彼に結婚の挨拶とともに、こっそり嫁の貰い手が無いことを揶揄されさすがに彼女も憤慨。こいつの鼻を明かすためにも絶対に20歳までに、チャールズより何倍も良い男を捕まえてやる! フローラはそう心に誓ったのだった。とはいえ、今まで引き籠りだったせいか、社交界デビューもしていない身ではお相手探しは難航しそうだ。両親はやっとその気になってくれたと大喜びで、何かと顔が広い叔母に付き添いを頼み、一先ず直近に開催されるパーティーにフローラを参加させた。しかし、急だったのでドレスの新調が間に合わず姉のお下がりを仕立て直したものを着たのだが、フリルの多いドレスが激しく似合わない。おかげで、声を掛けてくれる青年貴族もおらず、気持ちは沈むばかり。漸く子爵だと言う男性に誘われたがどうやら一晩の相手探しの輩だったようで、思わず逃げ出した所を一人の青年に助けられた。彼はクレメンスと名乗り、フローラを屋敷まで送ってくれた。その道中、彼女の迂闊さも咎められたが、事情を聞くとフローラの婚活に力を貸してくれると言う。侯爵と言う身分にも驚いたが、何故こんな自分に手を貸してくれるのだろう。不思議には思ったが、その申し出を受けることに。翌日から、クレメンスによる婚活指導が始まった。先ずは彼女の装いからと、今までの似合わないひらひらのフリルではなく、その長身を生かしたシンプルなものに変え、髪型も形の良い額を際立たせてみると今までの冴えないイメージは一新。輝く程の美人に変わって、本人もびっくり。彼の口利きで、色々な男性と会ってみて、レイノルズという男爵とは随分話も弾んだが、結婚ともなるとピンと来ない。そして、これまで良くしてくれていたクレメンスに惹かれていることに気付くフローラ。クレメンスまたも素直で奥ゆかしい彼女を実は一目で気に入っており、放し難く思っていたのだが今一歩が踏み出せない。だが、最初の結婚に失敗して以来長らく独り身の息子を案じたクレメンスの母が強引に縁談を纏めようとしていることに危機感を覚えた彼は、苦し紛れに意中の女性がいるとついフローラの名を出してしまった。おかげで両家の親は大喜びであれよあれよという間に婚姻話は進んで、式は後日盛大にと一先ず二人の同居が決まったのだった。ウィンザー邸に移り住んだフローラは使用人たちにも歓迎されて、幸せに暮らしていたが、以前からクレメンスに想いを寄せていた伯爵令嬢のケイトが、レイノルズを焚き付けて二人の仲を裂こうと画策。出会ってすぐ、バツイチだと言うのはクエメンスから聞かされ、承知していたものの、その離婚原因について彼が前妻に非道な事をしたせいだとレイノルズから聞かされたフローラは・・・。お互い両想いで幸せに暮らしているんだから、そっとしといてやれよ、と。こういう横槍入れるような女だから、相手にされないんだと気付かないんでしょうね。フローラが何を聞かされても揺るがないと知ったケイトはクレメンスに汚名を着せて離婚を狙うも失敗。最後は反省して謝罪してましたが、反省する以前に先ずそういうことするなって(^_^;)このケイトのやらかしもアレだけど、個人的にはフローラの従兄弟で今は義弟のチャールズの方が腹が立つ。どこにでもいるんですよねぇ、言わなくてもいい余計な一言が多い輩って。でも、一応当初の彼女の目論見通り、クレメンスと言うハイスペック男子を捕まえたから充分その鼻は明かせたかな。クレメンスの離婚については、経緯を読むに政略結婚という弊害故なので正直仕方ないと思う。評価:★★★★☆もう4年も前の本なのか
2023.03.09
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2022年10月刊密猫文庫著者:山野辺りりさん不義の罪で母王妃を処刑され、血統を疑われて塔に幽閉されていたリィン。修道院へ入れると騙され、暗殺されそうになったところを隣国の王太子ロレントに救われる。彼はリィンの初恋の人だった。「僕の印を付けたんだよ。誰にも取られないように」彼女を救い出すために力を付け、優しく深く溺愛してくるロレントにリィンは改めて恋を自覚する。だが今の自分のままでは彼の隣に立てないと母の冤罪を晴らすことを決意してーーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リィン=アガラン国第一王女。 母親である正妃の処刑後、八年もの間幽閉されていた。 ロレント=ランツ国の王太子。購入してたのを忘れてて、危うく積読になる所でした(^_^;)不遇ヒロインものです。大国・アガラン国の王女・リィンは母である正妃・エリナが不義密通の罪で処刑されてからというもの、血統を疑われ幽閉の憂き目に合っていた。世話係のばあやまで付き合わされて申し訳なく思うが、母の無実を晴らす術もなく神に祈る日々。そんな彼女を不憫に思ってか、見張りの青年が差し入れ等をしてくれるおかげで何とか病にも罹らず生きて居られている。エリナは隣国・ランツ国国王の従姉妹で公女であった。慎ましく清廉であった母が不貞を働いたなんて未だに信じられない。それにリィンは父によく似ており、誰が見ても間違いなく親子と思うだろう。エリナは恐らく、陥れられたのだ。その存在を疎ましく思う者の手によって。ある日、月一恒例の聖職者との面会で修道院入りを勧められたリィンは、ばあやを解放してやりたい気持ちもあって受け入れた。自分がここから出れば世話係は必要なく、ばあやは家族の元へ帰れる。しかし、修道院へ向かう道中、リィンは何者かに襲われ逃げる際中に崖から転げ落ち、とある人物により助け出されます。九死に一生を得た彼女が目を覚ますと、そこにいたのは隣国・ランツ国の王太子ロレントだった。彼とは母が存命中に会っており、リィンの初恋の人で実に8年ぶりの再会であった。そして、はとこといういう関係でもある。謂れの無い罪でエリナが処刑されて以来、ランツ国王もリィンの身を案じていたらしい。修道院行きもロレントの作戦で、途中で彼女を引き取り国に連れて来る手はずだったのだが、まさかアガラン側がリィンの暗殺を目論んでいたとは。予定が狂い、彼女を危ない目に合わせてしまったが何とかその身柄は保護できた。これからはリィンをランツ国が面倒を見ると告げ、祖国で王女として暮らしていた時よりも手厚くもてなされることになった。しかし、ランツ国と言えば国土だけは大きい貧しい国と言う印象だったのだが、いざ町や施設などを見てみるにとてもそうは思えない。下手するとアガランより栄えているのではないか。不思議に思っていると、ロレントはエリナが処刑されて以来、アガラン国より立場が下のランツ国を発展させ、侮られない様虎視眈々と力を付けて来たからだと教えてくれた。その結果がこの繁栄。内心、侮っていたことを反省したリィンは、ロレントがそう決意した理由が自分を助けるためだと知り驚きます。二人はお互い初恋同士であり、子供の口約束とはいえ結婚の約束もしていた。両想いなのだし、将来的には勿論結婚はしたいが、問題はアガラン側の反応だ。死んだはずの娘が生きていると知れば、黙ってはいないだろう。リィンはロレントの側に立っても恥ずかしくない様、現状中途半端な自らの立場を確かなものにするべく、原因となった母の事件の真相究明を決意。ロレントと共にアガランとの国境へ向かいます。旅の途中に立ち寄った村でエリナの元侍女と偶然出会ったことで当時の状況が判り・・・。ヒロインの父親がクズで、側妃に唆されて正妃を陥れた挙句処刑していたと言うオチ。それ以外にも一応理由はあるんですが、その辺気になる方は読んでみてください。当然の如く、今作の一番の悪役は父親と正妃に収まった元側妃でした。この辺はまぁ読んでると特に隠してもいないので犯人は誰?ってことは無いんですけど、こんなしょうもない理由で陥れられたヒロインのお母さんが気の毒過ぎる。この二人は悪政の件もあり、国から追い出され更に罪のでっち上げで正妃を処刑したことから裁かれます。その後はどうなったのか不明なれど、命は助かっても一生幽閉かなと。王位に就いたヒロインの異母弟がまともな人だと良いけどと思いきや、後書きでは将来的に上手くやっていくのではとあったので、諸々大団円になるんでしょう。諦めなかったヒーローのおかげで救われたヒロインのお話でした。評価:★★★★序盤は可哀想だけど、さらっと読めます。
2022.12.28
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2022年6月刊密猫文庫著者:七福さゆりさん天使(?)みたいな王子様×赤面症の侯爵令嬢初恋の王子様は姉が好きなはずなのに何故か甘々溺愛新婚生活が始まりました♪「僕は幸せだよ? ずっと好きだった女の子をこの手に抱いているんだからね」公爵令嬢リジーは姉とお似合いだと噂されるマリウス王子から突然、求婚される。その後、姉が別の相手との結婚を決めたので彼女とのことはマリウスの片想いだったのかと思ったリジー。自分でマリウスを幸せにすると決意し婚約を結ぶも、彼はそれ以上に彼女を甘く溺愛してくる。「ここが気持ちいいんだね。たくさん触らせて」以前から恋していた人との夢のような日々。だがマリウスの弟王子がリジーに意味ありげに近付いてきて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リジー=音楽一家・ラングハイム公爵家の次女。 初恋の人であるマリウスに求婚されて婚約者になる。 マリウス=カトレア国の第二王子。優しく人当たりが良い人物だが、リジーに関 する事にのみ狭量で嫉妬深い。 アイリス=リジーの2歳上の姉。引っ込み思案な妹を励まし可愛がっており、リ ジーの婚約が決まってすぐに、自身も恋人・クロードとの結婚を両親 に報告した。 クロード=王立騎士団団長。アイリスと交際しており、後に結婚。オリヴァー=マリウスの異母弟。優秀な兄を妬み、リジーの横取りを企てる。代々音楽の素養があるラングハイム公爵家の次女・リジーは自身もピアノの名手であった。でも、引っ込み思案であがり症の彼女は人前になると上手く弾けない。今日も側室様主催のお茶会に招かれ、母と姉と3人でその腕前を披露していたのだが、リジーは緊張でミスを連発。演奏が終わり独り庭で泣いていると泣いていると第二王子で姉の友人でもあるマリウスがリジーを慰めてくれた。彼はどうしても家族以外の前での演奏では緊張してしまうなら、観客たちを親しい者たちだと思えば良いとアドバイス。マリウスと話したのも緊張をほぐしたのか、次に奏でた曲は一回もミスをせずに弾き切った。リジーはマリウスの言う通りだったと彼に感謝し、以降リジーにとって忘れられない出来事になったのだった。でも、これは決して叶うはずの無い恋。だって彼は姉・アイリスが好きなのだから。それから数年経ち、アイリスとは違うタイプではあったが美しく成長したリジーは、女癖が悪いと評判の伯爵にしつこく迫られ、追いかけられていた。意を決して、バルコニーから飛び降りた彼女は下にいた人物に受け止められ無傷で済んだ。見るとマリウスではないか。慌てて起き上がろうとした所、彼の手がしっかり胸を掴んでいてパニック。失礼を詫びる彼に、自分こそおかげで助かったとお礼を言ってその場は別れた。そんな出来事から一週間ほど経ったある日、マリウスが公爵家に来ると先触れがあり、いよいよ姉との婚約が決まるのかと複雑な心境だったリジー。だが、やって来たマリウスが求婚したのは姉ではなく自分だった。もしや、マリウスさまも緊張して人違いしたのかしらと家族を見回すと、両親と共に姉も大喜び。おかしい、社交界でもアイリスとマリウスの仲は有名だったと言うのに。まさかあの日、リジーの胸を触ってしまった責任から?と見当はずれな結論に達した彼女は、再三の問いかけに、つい承諾。正式な婚約発表は準備もあるため後日になるものの、双方の同意の元、二人の婚約は決まります。その夜、アイリスから改めてお祝いされたリジー。本当に嬉しそうな態度からして嘘をついているとは思えない。もしかして、ずっとマリウスの片思いだったのだろうか。悶々としているとアイリスは更に爆弾発言を。自分も結婚するのだと聞いて心底驚いたものの、単に家族には内緒にしていただけで恋人がいたらしい。相手は王立騎士団長を務めており、長らくアタックし続けた結果射止めたとのことで、その際マリウスにかなり力を貸してもらっていたのだそうだ。姉の恋バナを聞きつつ、リジーは想い人に自分ではない男との恋愛成就に協力させられたマリウスが気の毒でしょうがなかった。それならば、自分がマリウスの幸せのために努力しようと決心。彼がアイリスではなくリジーが好きだから求婚したのだとは夢にも思っていないことから、お互いの気持ちにズレが生じるわけですが、マリウスはようやく手に入れたとばかりにリジーを溺愛。婚約披露パーティーで正式に二人の婚約が発表されると、隣国の建国記念祭へも彼女を連れて行きます。その際、押しに負けて本来なら許されない婚前交渉にも及んでしまった二人。マリウスの自分への接し方と言い、リジーが自分は愛されているのではとも感じ始めていた頃、マリウスの弟・オリヴァー王子がリジーに言い寄って来て・・・。長年マリウスに恋していたリジーはオリヴァーの誘いにも全く乗らず、跳ねのけますがオリヴァーもしつこく諦めません。その間に、彼からも本心を聞き、マリウスに愛されていたと知ったリジー。二人の仲は一層深まるも、やはり気になるのはオリヴァーの動向。マリウスも弟の行動を警戒するも、彼の名を騙った手紙にリジーが呼び出されて貞操の危機に。当然、マリウスに現場に踏み込まれて事なきを得て、オリヴァーは兄から手酷い制裁を受けます。その後もまだ諦めてないようだったけれど、さすがにもう痛い目には合いたくないとマリウスのひと睨みで退散。数か月後、二人は式を挙げ、エピローグでは本編の数か月後に新婚旅行に出かけ、そこでリジーの妊娠が発覚してお終い。おまけの短編ではアイリスとその夫・クロードのやり取りが描かれています。ヒーローの異母弟の横やりが入るものの、物語自体はほぼヒーローとヒロインのイチャイチャ話です。ので、深く考えることも無くさらっと読めます。辛い展開のお話は心境的に読みたくないなって時には打って付けの本かも。因みに、ヒーローは第二王子ですが、第一王子は逸り病で早逝しており、実質ヒーローが王太子と言う扱いみたいですね。異母弟が妬むのもまぁ判らんでもないかな。評価:★★★★それなりにエロ多目の内容ですが、本人たちが幸せならそれで良し。
2022.08.08
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2022年7月刊竹書房・密猫novels著者:すずね凛さん冷徹な竜王×貢ぎ物の姫『お前をずっと待っていたーー運命の糸はここに繋がった』厄介払いで異国に嫁がされた姫は人嫌いな旦那様に溺愛生活スタート!!!!不吉だとされるドラゴンアイを持ち、太陽光に当たれない奇病を患う皇女・ユスティーナは、継母サンドラの命でデルネイド王国国王オリフェルトに嫁がされる。荒い気性と噂されるオリフェルトだが、ユスティーナの目を見て運命を感じとり、激情をぶつけてくる。「俺なしでは生きていけぬと、言わせてやる」美しく凛々しいオリフェルトに昼夜溺愛され、幸せを感じるユスティーナだが、彼女を虐待していた継母と義姉が訪ねてきてーーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ユスティーナ=ヒロイン。リンディル皇国第一皇女。父が病で亡くなって以来 継母に疎まれ、皇女ながら離宮で幽閉同然の生活を強いられて いた。希少なドラゴンアイの持ち主で、日の光に当たれない業 病を患っているが、財政難の国への援助を請う為に大国・デル ネイドの国王オリフェルトの側室として献上された。 オリフェルド=ヒーロー。デルネイド王国の現国王で勇猛果敢な青年。 王国では吉兆の印とされるドラゴンアイのユスティーナを一目で 気に入り、側室ではなく王妃に迎えて溺愛する。 サンドラ=リンディル皇国の皇妃でユスティーナの継母。皇帝亡き後、政事 を取り仕切っているが連れ子である娘と贅沢三昧を重ねた結果、 財政難に陥る。先の皇妃の娘・ユスティーナを苛め抜き、離宮に 追いやった挙句、デルネイド王国へ身売り同然で嫁がせた。 マルガレータ=サンドラの連れ子で、ユスティーナの義姉。 母とそっくりな性格で義妹を虐めていた。 レンス=オリフェルドの側近で薬師。魔法使いの一族の末裔であり、20 年前に村が魔女に焼き払われた際に、唯一生き残った人物。 ブディカ=ユスティーナ付きの侍女。主人の輿入れに伴い、一緒に王国入り した。今日朝一に購入。早々に読み終わったので、記憶に新しいうちに記事にします。とは言え、地域によっては月曜日の発売かと思います。詳細なネタバレはしません。ご了承ください。内容に関しては、あらすじで要約されながらも大筋でバラしてる感じ(苦笑)継母と義姉が訪ねて来るのは物語も終盤。ここで二人ともざまぁされるわけですが、この継母にかなりの秘密があります。ある登場人物の過去に関わってるんですけど、これは彼の身の上話を目にしたら、割とすぐ想像がつくかも。あー、やっぱりねって印象。ヒロインの奇病(陽光に当たると体調を崩す)も実は呪いだったことが判明して、最後はその病気も完治。エピローグでは事件から数年経っており、国王夫妻には5歳になる王子もいて家族で仲良く暮らしてる様子が描かれています。主役の二人はお互いどちらも不遇な境遇を経験しており、それが余計に惹かれ合う要素にもなったようですが、とにかく序盤に出会ってから最後まで仲睦まじくイチャイチャ。余計なライバルとか出て来なかったこともあり、その辺は安心して読めました。もう本当に、横恋慕する女が現れるのが一番イヤ。ドラゴンと人間が共存しており、魔法の概念もあって、当然魔女や魔法使いもいる。結構ファンタジー色の濃い世界観でしたが、その分読みごたえもあって面白かったです。ヒーローも粗野に見えながら正統派だったし、ヒロインの不遇ぶりもそこまでではなかった気がするけど、わざわざ細かく描かれていないだけで10年くらい酷い目に合ってた様だから、やっぱりあの継母と義姉は許すまじ。評価:★★★★★ラブシーン多目のファンタジー小説って感じのお話かな。あと、ヒロインの友達の小さいドラゴンが可愛い上に、物語の功労者だと思う。
2022.07.09
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2022年2月刊竹書房・密猫文庫著者:すずね凛さん母国への支援と引き換えにマルモンテル王国の王弟に嫁いだフランセット。だが相手の乱暴な扱いに抵抗したため、即日離婚されシュバリエ公爵オベールに下げ渡されてしまう。「なんて色っぽいのだろう、堪らないよ」美しく優しいオベールの妻になれたのは嬉しいが、彼は自分に同情しただけだと思う彼女にオベールは熱を帯びた愛撫で自分の思いを伝える。幸せに浸るフランセットだが宮中の女性達は小国の田舎者と彼女を蔑み!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 フランセット=ヒロイン。小国・ラベル王国の王女。困窮する国への援助を条 件にマルモンテル王国の王弟に嫁いだ。 だが、彼の不興を買って僅か数時間で離縁されてしまい、シュ バリエ公爵・オベールに下げ渡されることになった。 オベール=ヒーロー。マルモンテル王国の王立騎士団長でシュバリエ公爵。 伯父である王から相談を受け、行き場を失くしたフランセットを 妻に迎える。マルモンテル国王 =五十路近くになっても遊興に耽り落ち着きのない弟に王族の自覚 を持たせるためにフランセットを妻に当てがった。が、早々に問 題を起こして離縁となったため、優秀な甥に彼女を任せた。 ジェラーデル=王弟で侯爵。宰相を務める。無類の女好きで、王宮に着いたばか りのフランセットを寝台に連れ込み抵抗された事に腹を立て離縁 した。 ジャンヌ=ポンパドール伯爵夫人。夫が長患いで寝たきりなのを良いことに ジェラーデルの愛人に収まり、貴婦人たちのトップになった。 身売り同然でマルモンテル王国に輿入れして来たフランセットを 田舎者と蔑み虐める。内容は全然違うんですけど、ベルばらの初期を思い出しちゃいました。ポンパドール夫人がデュ・バリー夫人みたいでwただ、ヒロインは芯は強いけど大人しい子なので、喧嘩にはなりません。色々嫌がらせされたり、社交界でも爪弾きにされたりするものの、夫に溺愛されてることもあって幸せに暮らしています。途中、ヒロインの数時間だけ夫だった侯爵が宰相と言う地位を利用して、ヒーローが数か月戦地に派遣されちゃうと言う、悲しい出来事もあったりしますが。無事帰還します。そして、後に侯爵は横領など諸々の犯罪に手を染めていたことが発覚し、裁かれることに。この侯爵も優秀な兄と甥にコンプレックスがあったようで、そのストレスから遊興に耽り、横領で得た金で愛人共々贅沢三昧してたらしいけど、それは悪事を働いていいと言う理由にはならないからねぇ。結果、王は苦渋の決断を迫られることになり、弟である侯爵を爵位剥奪の上、財産を没収。国外追放を命じます。それでも最後の情けで弟には王家所有の土地屋敷を与え、贅沢しなければ生きていけるだけの年金支給を約束。この温情は聊か甘い気もしましたが、兄心って奴なんでしょう。結局ヒーローも侯爵を許してたし。愛人だった伯爵夫人もしっかり罰を受け、社交界追放。こちらも夫が出来た人だったおかげで、許されたことで心を入れ替えると言うオチ。ざまぁもありながら、その仕置後は救いも描かれているので優しいお話だなと思いました。王には子供がおらず、王弟も国外追放となったことによりヒーローが王位を継ぐことが決まって終わり。ヒロインには忘れられない初恋の人がいたんですけど、それもヒーローの事だったり、かなり王道展開ながら、これもまた良いです。珍しく、数年後の二人が描かれつつもまだ子供がいなかったのは予想外だったかも。評価:★★★★☆この作家さんの描く正統派ヒーローは本当にカッコイイ。
2022.06.25
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2022年2月刊竹書房・密猫文庫著者:小出みきさん冷遇されている王女ユーリアは、美しい異母妹ではなく彼女を指定してきた“氷の覇王”イザークと見合いをする。が、それは彼を嵌めるための父王の罠だった。貴女が良い、と求婚され心揺れる彼女は、なんとかイザークを逃がそうとするが失敗し、異母妹から彼は囚われて死んだと聞かされ絶望する。しかし生きていたイザークは彼女を攫って彼の国で甘く溺愛する。「貴女は俺のものだ。俺だけの…」だが父王達がまた何かを企み!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ユーリア=ヒロイン。ヴォルケンシュタイン王国第一王女。 早逝した先の王妃の遺児であったため、父である国王始め家族から疎 外されて育った。ある日、<氷の覇王>と呼び名の高いリーゼンフォ ルトの国王・イザークと見合いをして一目で恋に落ちる。 イザーク=ヒーロー。長らく継承戦争にあったリーゼンフォルトの新国王。 その手腕と容貌から<氷の覇王>の異名で呼ばれている。 策に嵌って囚われの身となったが、後に自力で脱走。その際、ユーリ アも自国へ連れ帰り、花嫁として迎える。 ディルク=ヴォルケンシュタインの国王。 昔はそれなりに人徳のあった人物であったようだが、先の王妃が亡く なってすぐ妃に迎えたパウリーネの傀儡となってしまった。 リーゼンフォルトの宰相と手を組みイザーク暗殺を目論む。パウリーネ=ヴォルケンシュタインの王妃で第二王女・ハイデマリーの母。 俗に言う毒婦であり、事件の首謀者。国王を意のままに操り、先の王 妃の子である王子・アーベルを修道院に追いやり、ユーリアを寂れた 離宮に住まわせ冷遇していた。ハイデマリー=第二王女でユーリアの異母妹。 母とは外見だけでなく気性もそっくりであり、事件に加担してい る。 アーベル=ユーリアの同母兄で第一王子。 王位継承権一位の人物ながらパウリーネに疎まれ修道院に送られた。 今回の事件をきっかけにイザークの後ろ盾を得て、還俗を決意。 父王に退位を迫る。不遇ヒロイン+陰謀も絡んだお話です。先の王妃が亡くなって以来、王女でありながら冷遇され寂れた離宮暮らしをしているユーリアは、ある日珍しく国王に呼び出された。大国・リーゼンフォルトの国王イザークと見合いをせよとの命令に彼女は戸惑います。本来はかの国との繋がりを得るための政略結婚であり、父王から打診した縁談だったようだが、先方は何故だか美人と評判のハイデマリーではなく、ユーリアとの婚姻を希望してるらしく渋々彼女を離宮から呼び寄せたのだと言う。かくして、見合い当日久しぶりに着飾らされてイザークと対面したユーリアは、銀髪の美青年である若き王・イザークに一目で恋に落ちた。彼もまたたわざわざ彼女を指定してきただけに、ユーリアを妻に迎え入れたい旨告げられた。国王ディルクは冷遇している娘が気に入られたことで少々複雑な心境だったようだが、求婚されたと報告をしたユーリアに「気に入られたほうがやりやすい」と何やら引っかかる物言いをしており、何故だか嫌な予感がした。この見合いは何かおかしい。嫌な予感は的中、ディルクはリーゼンフォルトの宰相と手を組み、イザークの暗殺を目論んでいた。協力の見返りとして領土を貰えるそうだが、卑怯極まりない。父から夢中になっている娘の呼び出しなら一人で現れるであろうとユーリアに囮役を命じたが、そんな話を聞いて黙って従えるはずもなく、何とか彼を逃がそうとするも、そのユーリアを人質に取られ、イザークはなすすべもなく捕らえられてしまった。離宮に返され軟禁生活となったユーリアは数日後、イザークは幽閉後に死んだと聞かされ絶望。自身も後を追うべく自殺を図ったが死にきれなかった。後悔の日々を過ごして半年後、離宮に侵入した男に攫われたユーリアは、それが長い幽閉生活で変わり果てた姿になったイザークと気付き・・・・。密かに生かしておいてリーゼンフォルトへの切り札にでもしようと考えていたのか、イザークは殺害されることなく劣悪な環境ながら生き延びていました。元々、彼の国も長らく後継者争いで荒れていたこともあり、厳しい戦場を思えば耐えられない事も無かったとこともなげに言う彼にユーリアは父のしたことながら申し訳なくなったが、イザークの心は変わらず、彼女を妃にしたいと言う。その後、彼の部下と落ちあい、無事リーゼンフォルトへ戻った彼は宰相を断罪し、国王の座に還りついた。ユーリアは王妃として迎え入れられ、イザークに愛される日々であったが、ヴォルケンシュタイン王国は勿論この事件の落とし前は付けなければいけない。だが、王妃の生まれ故郷であることから戦争ではなく、賠償金の請求で留めたと言うのに彼女の父は支払いを拒んでいるらしい。そのせいで、王は家臣たちからかなり突き上げを食らっているそうで、あまり宜しくない状況だ。イザークは思案の末、ヴォルケンシュタインの国王を退位させることを提案。パウリーネの冷遇によって修道院送りとなり今は修行僧になっている元第一王子・アーベルを還俗させて王位につけるべく彼をリーゼンフォルトへ呼び寄せることに。この後、様々な騒動が起こり、結局現国王一家は皆罪に問われ、王は幽閉、王妃と第二王女は自給自足の修道院送りになるのですが、長らく国王に仕えていた臣下によれば、昔は王も人徳ある人物だったと判ります。それが、病気がちだった王妃存命のうちから愛妾にしていたパウリーネの甘言に乗せられ、人格も変わっていった。王妃亡き後、妃に迎えたパウリーネに言われるまま王子とユーリアを冷遇し、ついには欲に駆られ他所の国の王の命まで狙った父は、処刑こそ免れたものの、かつて娘が暮らしていた寂れた離宮に幽閉となる。王位はアーベルが継ぎ、リーゼンフォルトとは同盟を結び友好国となった。その後、正式にユーリアはイザークに嫁ぎ、挙式も執り行われ、早く子供が欲しいと願う二人の仲睦まじい様子が描かれて終わり。諸悪の根源たるパウリーネの罰がそれだけ?な気もしましたが、よくよく思えば長らく贅沢三昧で生きてきた身には自給自足生活は相当キツイだろうとは思います。それでも、娘と二人、身一つで国外追放でも良かったような。ユーリアがイザークに妃に望まれたのも、先の王妃が生きていた頃に二人は出会っており、お互い初恋だったと言う理由でした。そのすぐ後に王妃が亡くなり、ユーリアの生活も一変してそれどころじゃなくなり、イザークの国も継承権争いがあって会うことは叶わなかったのでした。それでも、初恋を叶えた二人というお話。評価:★★★★陰謀や事件など、色々騒動が起こりますが波乱万丈なストーリーで面白かったです。Cielさんのイラストもポイント高し。
2022.05.14
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2014年8月刊竹書房・密猫文庫著者:すずね凛さん花嫁選びの儀式で皇太子リュシアンの妃に選ばれ真っ青になるエヴリーヌ。美しく有能な王子は彼女に対してだけ昔からとても意地悪だったからだ。エヴリーヌをアマガエルのようだとからかい、昼夜問わず淫らな悪戯ばかり仕掛けてくるリュシアン。「やめないよ君がうんと言うまで。私の花嫁になるね?」激しく抱かれ、甘い悦楽を教えられて揺れ動く心と身体。王子の真意を測りかねている時、彼と父王との確執を知ってしまって!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エヴリーヌ=ヒロイン。クレマン公爵令嬢で「花嫁選びの儀」にて皇太子妃に選 ばれる。 幼い頃、皇太子・リュシアンとの初対面時に酷い言葉を浴びせられ ただけでなく、その翌日に池に突き落とされた経験から彼に苦手意 識があり、この婚姻に一抹の不安を覚えていた。 しかし、生活を共にするうちに世渡り上手に見えながらも不器用な 為人を知って次第に惹かれて行く。 リュシアン=ヒーロー。オーランド王国皇太子。 見目麗しく優秀なこともあって国民からの人気も高い人物である が、本性はかなりの捻くれ者であり、好きな子程虐めるタイプ。 そのせいで長らくエヴリーヌに気持ちが伝わらなかった。 出会った時から彼女に執着しており、「花嫁選びの儀」の際はく じに細工までしてエヴリーヌを皇太子妃にした。 賢王と呼び名の高い父と折り合いが悪く、冷戦状態。 国王=リュシアンの父。 名君であるが、何故か一人息子のリュシアンにだけつらく当た る。 どうやら、リュシアンを産んですぐ亡くなった王妃のことが原因 らしいが・・・。 シャルロ=リュシアンの乳兄弟で護衛役。 皇太子の本性と置かれている状況を知る数少ない人物。 フィリップ=隣国・アジャーニ王国の皇太子。 オーランド王国の産業利権の独占を企み、更にはエヴリーヌの美 しさに懸想し、横取りを企てる拗らせ系の王子に執着され続けた公爵令嬢のお話です。オーランド王国の王位継承者は二十歳になると相応しい家柄の令嬢を選び、妃に迎えるのが習わしであるのだが、数人の候補者の中から最終的にはくじ引きで決定される。ヒロイン・エヴリーヌは、年回りと公爵の娘と言うことで今回候補に入ったのだが、彼には子供時代から何かと意地悪な物言いをされているため、皇太子リュシアンの妃になるのはどうにか避けたかった。候補者は自分を入れて5人。何とも微妙な確率だったが、どうか選ばれませんようにとの彼女の願いも空しく、リュシアンが引いた玉の色は自分の持つ花の色であった。かくして、この時から候補から正式に皇太子妃になったエヴリーヌはすぐに始まる王妃教育のためにその日のうちに王宮に移り住むことに。リュシアンは相変わらず気に障る物言いばかりをしてくるのだが、やけに上機嫌で早々にエヴリーヌに手を出してきて、三日もしないうちに一線を越えてしまった。元々、式自体は妃が決まってから占術師たちによる占い結果によって日取りが選出されるため、準備期間も含めかなり先になる。なので、式の前に初夜を迎えるのは何ら問題は無いものの、結婚証明書へのサインはまだだった。妃に決まったからとは言え、早々と自分に好き勝手するリュシアンに腹は立ったものの、身体の方から先に篭絡されてしまった感はあるけれど、たまに見せる彼の不器用な優しさに段々と絆されていきます。しかも、幼い頃からの失礼な物言いも単に彼の捻くれた性格のせいであり、実際は誉め言葉のつもりであったこと、池に突き落とされたと思い込んでいた騒動も実際は自分が足を滑らせて落ちたのだと思い出したエヴリーヌ。そんなある日、彼女はリュシアンが父である国王とかなり険悪な仲だと知り、やがて何とかしたいと考え始め・・・。ヒロインは夫の親子関係修復のために陰で色々手を回し、最後にはその努力は報われて上手く行くんですけど、その間に彼女は隣国の皇太子による陰謀に巻き込まれることに。美しすぎる故の災難でありましたが、狙いは彼女だけでなく国の一大事も絡んでいたので結構な事件に発展。とは言え、ひねくれてるとは言え、ヒーローはかなり優秀なので隣国の企みなどお見通しとばかりに、颯爽とヒロインの危機に駆け付け事なきを得ます。親子関係の方は父である国王が伝統ある「花嫁選びの儀」のせいで、王妃が嫌々結婚したのではと悶々としているうちに息子の誕生と引き換えに亡くなってしまったことから本心を聞けぬままだった。それが長い事王を苦しめ、息子につらく当たってしまっていた理由らしいのだけど、子にしてみれば「知らんがな、そんなこと」だろうなぁ。結局、エヴリーヌが呼び寄せた王妃の母親によって、王妃は王を愛していたと知れたものの、生きてるうちにちゃんと会話しとけばこんなに長く親子関係も拗れなかったのに。ラストは数年後、世継ぎも産まれ、仲睦まじく暮らしている皇太子夫妻の様子が描かれて終わり。この作家さんなので相当ラブシーンが多かったけれど、ちゃんと事件含めストーリー展開もしっかりしてて面白かったです。評価:★★★★
2022.05.12
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2020年7月刊竹書房・密猫novels著者:水嶋凛さん「君にはすまないが、俺に縛られてはくれないか?」有能な騎士宰相×異世界巻き込まれメイド巻き込まれで異世界召還された元OLがハイスペックイケメン宰相となりゆきエッチからまさかの溺愛!!!?勤労メイドの乙女系サバイバル元OLのユウカは、救世の聖女を呼ぶ際に巻き込まれて異世界に召還された一般人。元々死ぬ運命だったと知って開き直り、メイドの仕事をやりつつ第二の人生を謳歌していたが、逆ハー願望のある聖女に媚薬を盛られた宰相シリルと二人きりになったことで関係を持ってしまう。「大丈夫だ。そのまま感じて…」事が終わった後、前からユウカが気になっていたという彼に求婚されるもユウカにその気はない。だがシリルは意外と諦めが悪く!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用kindle unlimited会員向けの読み放題にて読了。 交通事故に遭ったヒロインが聖女召喚に巻き込まれ異世界に飛ばされ、新天地にて人生をやり直すと言うお話。実はヒロインの方が聖女だった、とかではなく飽く迄ポジティブシンキングなだけの一般人で、そんな彼女は転移先の国の宰相であるヒーローに好感を持たれます。が、その手のゲームなり本でも読んだ故なのか、聖女が逆ハー狙いで次々と美青年だらけの重鎮たちを落としていく中、やがてヒーローもターゲットに。騙し討ちで媚薬を飲まされ苦しんでいた彼を自分の身体を差し出して救ったヒロインは当然の如くヒーローに惚れられます。だが、処女を捧げた割にはヒーローとそういう仲になる気は無く、友人以上恋人未満な関係が長らく続きます。正直、ヒーローへの態度がどうにも理解できず、どうしてこんな曖昧な関係に甘んじているのかさっぱり。内心では結構好きみたいだし、誘惑っぽいことまでしてるのに「そんな仲じゃないから」ばりに突き放す。一体どうしたいのよ、このヒロイン。終盤、ヒーローともう一人魔導士の男性を落とすべく奮闘していた聖女が暴走し上層部を巻き込んで騒動を起こすんですが、ヒロイン達の尽力によって事なきを得ます。結局、ヒロインはこの騒動と途中で起きたトラブルを経てヒーローとの仲も深まり、プロポーズを受け入れハッピーエンド。聖女が本物なせいで能力だけはあるので騒動の責任も取らされずに後に王妃になるとか、この国色々と大丈夫なんだろうか。逆ハー狙いで攻略して来た上層部の男性陣達と微妙な空気になりそうな。ヒーローと魔導士が結構優秀らしいので、将来的にはこの二人の采配にかかってそうな予感。中盤までは凄く面白くてストーリーも悪くないんですけど、最後までヒロインに好感持てなかったなぁ。為人は悪くなくともヒーローへの思わせぶりな態度は良くない。評価:★★★☆ちょっと色々と惜しかった作品
2022.04.06
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2019年6月刊竹書房・密猫文庫著者:藍井恵さん伯爵令嬢アメリアは、嫁き遅れて修道院に入る予定だったが、武勇で名高い元帥公爵、ランドルフに突然プロポーズされ、彼に嫁ぐことになる。地位も財産もあるランドルフに望まれる理由がわからず、困惑するアメリア。「気持ちいいと思う心はいやらしくなんかないんだよ」自己評価の低い彼女にランドルフは辛抱強く愛を教える。彼に惹かれていくアメリアだがランドルフの求婚の理由は彼女の絵の才能を見初めたためだと知り!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用kindle unlimited会員向けの読み放題にて読了。絵を描くことが趣味であり唯一の特技だった冴えないヒロインが、何故か国の英雄の若き元帥公爵に求婚されるお話。ヒロインは継母に蔑ろにされ、縁談は全て異母妹に回されてたせいで婚期を逃し、修道院行きが決まりそうだった所突然舞い込んだ良縁。継母に邪魔されかかるも無事結婚に漕ぎつけ仲良く暮らしていたものの、どうやら自分が選ばれたのはかつて描いた絵のせいらしいと耳にして二人の関係が拗れます。ついには仲違いして別居になったりとじれじれ度もありましたが、中盤までちょこちょこラブコメっぽいノリだっただけにこの緩急が見事でした。でも、ヒロインを妻に選んだ理由がちょっとなぁ、なこともあり、あまりこのヒーローは個人的には刺さらなかったものの、終盤事件が起きて色々吹っ切れてからは漸く持ち直した感が。評価:★★★★
2022.04.04
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2021年10月刊竹書房・密猫文庫著者:御厨翠さん公爵令嬢アルシオーネは皇帝ランベールとの結婚を前に毒殺されかけ、ブラック企業のOLだった前世を思い出す。身体は辛いが彼女は歓喜に震えていた。ランベールこそ前世愛読していた小説の推しキャラだったからだ。「そなたの頬は柔らかいな。唇はもっと柔らかかったが」政略結婚とはいえ彼に優しく扱われ淫らなキスをされてうっとりするアルシオーネ。か弱い身で彼を全力で守ろうとする彼女に、ランベールも心を動かされ!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用一月に購入品として紹介した本です。タイトルとあらすじでお分かりいただけると思いますが、所謂転生もの。ここからネタバレと感想。ブラック企業のOL麻生早都子の楽しみは推しに課金すること。だが、ある日無理が祟って過労死してしまった。ふと目覚めると、彼女の寝台を家族が囲んでおり、皆一応に安堵の表情をしていた。不思議なことに彼らが誰かは判るのに早都子の本来の家族ではない。明らかに西洋人な容姿の両親と兄、中世ヨーロッパの様な調度品。そして壁にかかったタペストリーに描かれた見覚えのある紋章などからここが小説「皇子殿下の運命の恋人」の世界だと気付いた。しかもアルシオーネと呼ばれた自分は、もしや最推しキャラであるランベールの皇妃になる人物では。ランベールはこの国の皇帝であり、小説の主人公のライバルキャラでもある。後に主人公の国と戦争になり敗れて死んでしまうのだが、早都子にとっては主人公よりランベールの方がツボだった。以降ずっと応援し続け、これまでに費やした金額を人に言ったらドン引きされること間違いなしな程に入れこんでいたのだ。その後、彼を主人公とした外伝も刊行され、アルシオーネ含めこのコデルリエ公爵家の面々もその登場人物であった。小説世界に転生するなんてと思いつつ、このアルシオーネが陥った状況も覚えている。彼女は妃として皇宮入りする日を目前に毒を盛られて意識不明になっていたのだが、つい先ほど目覚めたのである。犯人も勿論知っていて、ランベールを目の敵にしている皇太后のモルガールだ。自分の息子の第二皇子を皇位に据えるべくランベールの身の回りの者たちを排除しようとしている。無論、当人であるランベールは日々命の危険にさらされているのだが・・・。元々虚弱だったのもあり皇宮へ上がるのは延期にしようと父と兄からも勧められたけれど、アルシオーネの十六年の人生と早都子としての記憶もあった。ランベールの結末を知っている彼女だからこそ彼を守ることが出来るかもしれない。予定通りの日に皇宮に上がる旨、皇帝陛下に伝えてほしいと頼んだ。一方、ランベールは皇太后により暗殺されかけた自分の婚約者が予定通り輿入れすると聞かされて心底驚いていた。虚弱体質らしいが随分と気概のある娘ではないか。だが、皇宮に来ると言うことは皇太后も黙っていないはず。そもそも、毒を盛られたのはアルシオーネがいずれ彼の子を産む女性だからだ。世継ぎが産まれたら益々第二皇子の皇位は遠のく。政略結婚ではあるけれど、ランベールはこの勇気ある決断をしたアルシオーネを必ず守ろうと心中で誓うのだった。三日後、皇宮に上がったアルシオーネは本物のランベールを目にして感動していた。のっけからかなりの好待遇なのは父が宰相なせいかとも思ったのだが、ランベール自身がアルシオーネに対してとにかく優しいのだ。初夜を済ませた後は溺愛と言ってもいい程に愛されてるのが判る。実は作中の二人は夫婦仲がよろしくなかったと記憶している。なのに早都子が転生したアルシオーネは随分とランベールに好印象で見られているようだ。でもいくら二人は仲睦まじくともアルシオーネはまだ正式な皇妃にはなれていない。皇太后がアルシオーネとの面会を拒否し続けているため、慣例の皇妃の冠の移譲が済んでいないからだ。おかげで婚礼の儀式も執り行えず、コデルリエ公爵は激怒していた。ランベールはいざとなれば冠無しで儀式を強行するつもりのようだが、皇太后派の貴族も少なくないため批判も多いだろう。アルシオーネが皇宮入りして一ヶ月ほど経ったある日、彼女の元に第二皇子のエヴラールが訪れた。後に彼女を介して異母兄との面会に取り付けたエヴラールは、ランベールに助けてほしいと言う。エヴラールは自分付きの侍女と恋に落ち、すぐにでも結婚したいのだが皇太后に反対されているそうだ。恋人と添い遂げたいのは山々なれど、下手をするとその侍女は皇太后に秘密裏に消されかねない。ランベールの力で何処ぞに匿って貰えないかとのことだった。見返りとして冠を持ち出して来るとの申し出に、その件はやんわりと断ったランベールは兄として弟の願いを叶えると約束をした。そもそもエヴラールは皇位などには更々興味が無い。ただ、母の手前黙っていただけだ。出来れば恋人と静かに暮らしたいと言うのが本音のようだ。その侍女は命の危険があるため、アルシオーネの実家であるコデルリエ公爵家で預かることになり、エヴラールには今まで通りの生活を続けて皇太后の動きを探ってくれるよう頼んだ。エヴラールが味方になってくれたのはありがたいが、折しも大国パニシャがこのベントラント帝国の先帝が滅ぼしたフリア王国の王子を担ぎ上げて戦争を仕掛けようとしているらしい。戦となれば国も荒れるし、何よりランベールも出陣するため皇宮にはアルシオーネが一人になってしまう。ただでさえ皇太后が虎視眈々と狙っていると言うのに、どうにか戦争は避けたいところなのだが・・・。十日程経ち、戦争はもう避けられない状況になっており、アルシオーネは小説と内容が変わっていることに気が付いた。ランベールはアルシオーネと結婚した五年後に主人公の国と戦うまで戦争に行っていないはずだ。まさか、自分との関係が変わったせいで展開も変わってしまったと言うことなのか。誰にも言えない不安に駆られる彼女を連れ出したランベールは二人きりでお忍びデートを楽しむと、その夜必ず帰ってくると約束した。アルシオーネの中には早都子の記憶もあるけれど、前世の推しだからではなく、今のランベールを愛しているのだと自覚したのだった数日後出陣式を見送った彼女は、見覚えのある場面に蒼白になった。なぜならその後にランベールが戦死したのだから。彼が亡くなるとしてもこの五年後のはずだ。それに対戦国も違う。やはり、展開が大幅に変わっているのかもしれない。すぐにでもランベールに伝えたかったのだが、運悪く虚弱な彼女は心労のせいで昏倒し、二日も意識不明になってしまった。目覚めたアルシオーネは慌てたものの、幸いにもまだランベールは無事であった。彼の詰める城砦に自分も行きたいと頼んでいたら、エヴラールがある密書を手に入れたと彼女の元に訪れた。どうやら皇太后がパニシャ宛に送ろうとしていたらしく、この戦争も皇太后が仕組んだものだったのだ。おそらくランベールを亡き者にするためであろう。戦死しなければそうと見せかけた方法で殺害する計画も立てているようだし、やはり何としても彼に知らせなければ。アルシオーネはもしもの時のためにと置いて行ったのだろう、ランベールの腹心の部下であるルキーニに連れられて城砦に向かった。途中、皇太后の息がかかった騎士に襲われたが何とか退け、ランベールの元に向かったアルシオーネはパニシャの司令官と剣を交える彼の姿を見た。ランベールの方が優勢だったけど、彼は横から弓兵たちに狙われていた。だが、咄嗟に危ないと声を掛けたアルシオーネのおかげで命拾いをしたのだった。やがて、すぐさま助太刀に現れたベントラント帝国の騎士たちにより司令官は拘束されたことで一気に戦況は変わったのだ。敵兵は敗戦を悟って逃亡を図り始めていることから程なくこの戦争は帝国の勝利で終わるだろう。後を部下に任せたランベールはアルシオーネと共に皇太后を断罪すべく皇宮に戻った。皇太后モルガールは密書の内容が知られても否認していたが国家転覆罪ともなれば重罪である。アルシオーネの毒殺未遂を含めて罪に問われ、処刑こそ免れたが皇太后の地位剥奪の上生涯幽閉となった。モルガールにとっては、エヴラールが皇位継承権を放棄したことも相当ショックだったようだ。その後、帝国側の勝利で終戦となった。パニシャ国ではモルガールと通じて戦争を起こした責任を問われ国王が退位し、第一王子が継ぐようだ。親と違って随分と聡明な人物らしいので、今後の国交問題についても話し合いに応じるであろう。アルシオーネとランベールは漸く式を挙げ、彼をずっと傍で支えようと改めて誓うのだった。前世の推しのために奮闘するヒロインのお話でしたが、文庫一冊あっという間に読み終えてしまいました。それ位面白い。小説と違いヒーローとヒロインが愛し合ったことで展開が変わり思わぬ不運に見舞われる訳ですが、虚弱体質なヒロインが馬で戦場にまで行っちゃう行動力がとにかく凄い。この出来事のおかげで早々に戦など起こしてはいけないとヒーローも思ったようで、五年後に主人公に敗れてなくなると言うエピソードも無くなりそうですね。今後もヒロインと仲睦まじく国を平和に治めて行くのではないでしょうか。評価:★★★★★イラスト買いでしたが、内容も素晴らしい。
2022.03.24
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2020年12月刊竹書房・密猫文庫著者:御堂志生さんおまえ……可愛すぎる日陰の令嬢の秘密の恋人はまさかまさかの軍神皇帝!!!?正体不明の大型犬系軍人×日陰の公爵令嬢皇帝妃候補の義姉についてグラーツ帝国にやってきたアデル。ワケ有りの出生のため小間使い扱いされている彼女だが名目上は公爵令嬢だった。入国早々部屋から締め出され困っていたアデルは青年士官クラウスに助けられ親しくなる。「おまえを抱けるならこのまま背中から刺されても悔いはない」彼に求婚され小さな幸せを掴むのを夢見る日々。だが二人で過ごす部屋に乗り込んできた義姉が、クラウスを見て皇帝陛下だと驚愕し!? ↑公式サイトより、あらすじ文引用所持してるのは文庫版です。多分、発売日に購入したような。(1年以上前なのでうろ覚え)因みに例の読み放題対象作にもなってます。不遇ヒロインもの。ここからネタバレと感想。ヒロイン・アデルこと、アデライド・リリー・フィッツロイは形式上はウィドリントン公爵の次女であるが、実際は彼女を身籠ったまま母が公爵の後妻として嫁いだため父とは血の繋がりはなかった。父はそんなアデルを毛嫌いし、フィッツロイの性を名乗ることを禁じ目立たぬよう暮らせと命じた。だが、社交界には出さないがいずれ相応の家へ嫁がせるために、飽く迄公爵の温情と言う体で彼女に家庭教師をつけて学ばせた。実の母はそんなアデルを娘だと認識すらしていないようだった。17歳になったある日、義姉のクローディアがグラーツ帝国の新皇帝に嫁ぐことが決まり、公爵からクローディアの通訳兼使用人としてアデルが付き添うよう命じられた。ほとんど屋敷から出られぬまま育ったアデルは、どうせそのうち政略結婚の駒にされるはずだった。嫁いでしまえば公爵の目を逃れて生きられると思ったのに、まさか自分を毛嫌いする義姉と二人で異国に行かねばならないとは。クローディアは我儘放題で育ったせいか、堪え性が無い。帝国のベルムバッハ城に到着し、馬車では乗り入れ出来ない区域で下車を促されると、義姉は案の定対応がなってないと喚きたて、対応に現れた侍従長ハーゼンに軽くいなされていた。当然この鬱憤はアデルに向かいその日は散々ではあったが、この婚礼話自体、彼女たちの故郷マンティス王国が自国の安全のために帝国側へ持ち掛けたもので、公爵令嬢と言えどクローディアが我が物顔で振舞っていい場所ではなかった。クローディアは特にアデルの存在が気に入らないようで、幼少の頃から随分いじめられたものだ。でもそれもそのはず、アデルの母が嫁ぐために、義姉の母である前公爵夫人は不貞の罪を擦り付けられ追い出されていたのだから。アデルの母は所謂国王の庶子で、それでも未婚の母ともなれば体裁が悪い。そこでウィドリントン公爵へ母を子ごと押し付けたのだが、公爵には既に妻子がおり結局前夫人を追い出す形になってしまった。実の母はアデルに興味が無く、公爵と姉には毛嫌いされている彼女には味方が一人もいないことに事情を知った10歳の時の彼女は絶望したものだった。今日も今日とて、昼間のやり取りで機嫌が悪いクローディアに部屋を追い出され、アデルは知り合いもいない城内で途方にくれていた。せめて使用人用の部屋でも用意してもらえないかと尋ねようにも迷ってしまったのか段々人気のない場所に踏み入ってしまったようだ。だが、階段の下で話し声が聞こえて漸く人に会えたとホッとしたら、隊服を着た青年たちに見つかりスパイ扱いされてマズイ雰囲気に。思わずよろけて階段を落ちそうになった彼女を助けたのは同じ隊服の青年・クラウスだった。彼は、ここまで迷い込んだアデルの話を信用してくれただけでなく、主人に追い出されて寝る場所に困っていた彼女を城の女中頭のカミラの元に連れて行くとアデルの世話を頼んだ。どうやら二人は昔なじみらしく、ハイゼンベルグ領の出身らしい。とは言え、平民のカミラとは違い、クラウスはハイゼンベルグ辺境伯の嫡男であり、先代皇帝の甥なのだそうだが。先代皇帝は降嫁した異母妹を目の敵にしており、先の大戦にてまだ15歳だったクラウスを徴兵して激戦区に放り込んだと言う筋金入りのクズだった。幸いにもクラウスは戦場で仲間たちに恵まれて27歳になる現在まで生き延び、皇帝の方はと言えば先頃のクーデターにより打ち取られていた。随分と波乱万丈な人生を送って来たクラウスに、アデルはつい親近感を覚えるが、名を尋ねられた際に家名を名乗れず思わず涙をこぼしてしまった彼女を彼は不器用に慰めるのだった。帝国に来て一ヶ月ほど経った頃、新皇帝レオポルドは数か国語を話せると言うことでアデルはクローディアからお役御免にされた。とは言え、義姉は彼女を自由にする気はさらさらないらしく、小間使いとしてて働くよう命じた。帝国から用意された侍女は貴族なのでこき使うわけにはいかないからだった。そんな彼女を、クラウスやカミラは気遣い何かと世話を焼いてくれていた。カミラのおかげで他の女中たちとも随分親しくなったが、年頃の女たちが集まれば話題は当然恋バナである。よく二人でいるからか、女中たちはクラウスとの仲を応援すると言ってくれていたが、詳細は避けて帰国したら親の決めた相手に嫁ぐことになるからとやんわり彼との仲を否定すると、いつからいたのか、クラウスが「お前は国へ帰さない、俺の嫁にする」と宣言したのだった。この宣言に難色を示したのはクラウスの仲間たちだった。彼らは昔とは立場が違うから考え直せと進言してきたがクラウスは聞き入れない。一応、アデルの身の上を調査し公爵の愛人の娘だろうとあたりを付けていたのだが、どうももう少し隠された事実があるらしく、引き続き調査は続行となった。子供がいなかった先代皇帝がクーデターで亡くなり、後継者問題でまた争いが勃発。クーデターの首謀者・ライツ将軍が軍事力で国を征服し始め、それを良しとしないクラウスたちが城から将軍たちを追い払い退けたことで、血筋としても問題ない皇帝の甥であるクラウスが帝国の新皇帝となったのであった。普段名乗っているクラウスはミドルネームで、本名はレオポルド・クラウス・フォン・ハイゼンベルグという。城に働く下の者たちには先ず顔を知られていないのは気楽だったが、報告によりライツ元将軍がクラウスの命を狙っているらしい。クラウスは一目でアデルを気に入り、妃に望んだが副官が身元がはっきりしてからだと念押ししたのもそのせいであった。間者ではないのは明らかだがアデルの母の恋人だった人物がどうにも気になる。そして、その正体によっては二人の婚姻の障害はなくなるかもしれない。嫁に貰う宣言から数日後、アデルは何者かに浚われ襲われていたところを、間一髪でクラウスに助けられた。命と貞操の危機に瀕したことで彼女は自分の想いを認め、クラウスに好きだと伝えると自分を花嫁にしてほしいと告げるのだった。その夜二人は結ばれ、その関係はすぐカミラにはバレてしまった。そんな彼女はクラウスの副官であるガブリエルと恋に落ち、彼が戦場に出ていた間に子を産んでいたのだった。身分違いのせいで結婚を渋るカミラを見て、素性の分からない自分がクラウスの妻になっていいのか猛烈な不安に苛まれていたアデルに、クラウスは何も心配いらないと囁くのだった。あまりにも夜にアデルが出歩くので、クローディアが不振に思ったのか侍従長のハーゼンを伴い、クラウスとの密会場所にしている部屋に踏み込まれてしまった。クローディアが鬼の首を取ったかのように勝ち誇りアデルに嘲笑っていると、一緒にいる人物に気付いてハーゼン共々顔色を失くした。クラウスはアデルは自分の許嫁だと告げると今後彼女への無礼は許さないと宣言したのだった。翌朝、状況は一変してアデルは皇帝の婚約者のウィドリンドン公爵令嬢として丁重に扱われることになった。アデルが自分の世話係になったカミラに、意地を張らずに子供の為にもガブリエルについて行けと諭すとカミラはよく考えてみると答えるのだった。急遽、皇帝とアデルの婚約披露のパーティーが行われることになり、着飾らされたアデルにクローディアが不満たらたらだった。そんな中、姉妹は裏切ったハーゼンと潜んでいた者たちにより浚われ皇帝を呼び出す餌にされてしまうが、アデルはクローディア一人を逃がすとクラウスに伝えるように頼んだ。アデルは皇帝の子を身籠っていると嘘をついて時間を稼ぎ、やがて捜索に来たクラウスたちによってライツ元将軍らは敢無く捕縛されたのだった。事件から数か月経ち、二人の結婚式が執り行われた。調査の結果、母・イザベルは18年前マンティス王国に併合した小国の王子に嫁いでいたのだそうだ。二人は政略結婚で、国のためにした結婚であったが王子には当時恋人がおり、結婚三日目にして駆け落ちしてしまった。イザベルはショックを受けたが、王子の財産を没収したことで国王は満足だったらしく新たな結婚相手を探してやるつもりだったものの、やがてイザベルの妊娠が発覚。やむなくウィドリンドン公爵に新たな領地と名誉を引き換えに結婚の打診したのだった。探し出したアデルの父は、自分の娘であると証明してくれるらしく、もう彼女が素性が知れないと思い悩むこともなくなった。式の一週間後、父は病で来れなかったが、代わりに腹違いの弟妹がアデルに会いに来てくれた。クローディアも誘拐事件以来、棘が少なくなったように思う。義姉が帰国する際また遊びに来てくれと約束するとどこか楽しそうな顔をして去って行った。どうやら彼女にお義姉さま呼びされるのは悪くないらしい。人生は大きく変わる瞬間というものがあるのだなとアデルはしみじみ思うのだった。で、了。正直、購入はしたものの期待値半分くらいでしたが予想外に面白かったなって記憶。今回読み直しして、細かい部分は忘れてたけど案外展開って覚えてるものですね。義姉のクローディアが結構いいキャラしてて、アデルに意地悪してたのもそりゃ経緯を思えば歓迎はされないだろうとは思います。身勝手なのはマンティス国王と受け入れた公爵ですから。結婚後は義姉ともいい関係が築けそうなのはいい〆でした。それはそうと、ラスト近くで判明しましたがイザベルさんって未婚の母じゃなく夫に駆け落ちされちゃった人だったんですね。あれ?確か未婚の母って言ってたよね?と少し混乱してしまった(^_^;)評価:★★★☆
2022.02.22
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2021年10月刊竹書房・密猫文庫著者:すずね凛さん「小国の末っ子であるアリアドネは姉姫と見合い予定だったバンドリア帝国皇帝グレゴワールに気に入られ、花嫁として連れ帰られる。一目で惹かれた彼に望まれ夢見心地のアリアドネだが、形だけの妻でいいと言われ反発する。「あなたは男女が同衾することについて、なにも知らないな?」彼女の真摯さにあてられ、思いがけずのめり込み溺愛し始めるグレゴワール。「氷の皇帝陛下」と呼ばれた彼の急激な変化に周囲も驚きを隠せず!?」↑楽天ブックスより、あらすじ文引用先日購入作紹介記事に掲載したお話です。まだ半年も経ってないのにkindle Unlimited会員向けの読み放題対象になっててビックリ。あれって一体どういう基準なんでしょうかね。未だによく判らない。ここからネタバレと感想。山間部にある小国のモロー王国は、最近代替わりした新皇帝により急激に勢力を伸ばしてきた隣国バンドリア帝国に脅威を感じていました。そんな時、病に倒れたモロー王国国王が自国の未来を模索した結果、友好の証としてバンドリア皇帝へ娘の中で最も美しいミケーネを側室として差し出すことを決断。かくして、ミケーネ王女と顔合わせすべく皇帝のモロー王国への来訪が決まったのでした。その日、王宮がピリピリした空気の中、王女アリアドネは奥庭にあるお気に入りのブランコを漕ぎながら鼻歌を口ずさんでいました。艶福家な父は正妃の他に三人の側室がおり、王が六十歳の時に産まれた彼女は特に可愛がられていた。年の離れた上の兄姉達は可愛い末妹に汚い大人を見せまいと、もう十七歳になると言うのにアリアドネは徹底的に政治関連の話から遠ざけられていた。今日はすぐ上の姉・ミケーネのお見合いの日。案の定彼女は蚊帳の外だったのでこうして奥庭にいたのだけれど、ふと気づくと迷い込んだのか一人の青年が庭に現れた。見覚えのない顔と服装だったため、おそらく帝国の関係者だろうと察したアリアドネだったが、結構高い位置にあるブランコに腰掛けていたせいか、危ないから降りろと声を掛けて来た。王宮の庭にずかずか入り込んだ挙句、無礼な物言いの青年にムッと来た彼女は文句を言いつつブランコから飛び降りると慌てた青年に抱き留められたのでした。童顔で身長の低いアリアドネは一見十二、三歳程度にしか見られないことも多いのだが、やはり青年も彼女を子供だと思ったらしく迷子扱いにまでされてしまった。彼女は勘違いを訂正すべく王女のアリアドネだと自己紹介すると、帝国の青年に気になっていた皇帝の為人を尋ねます。皇帝は人でなしで冷酷らしいから姉が可哀そうだと溢した彼女に、青年は何とも言えない顔をして聞いていた。やがて、思わず引き留めてしまったと詫びたアリアドネは、やはり迷っていたらしい青年に道を教えると早く行くよう促すのでした。自室に戻ったアリアドネは軍服っぽい装いだった先ほどの青年との出会いを反芻し、随分と素敵な人だったなと想いを馳せていると、姉姫が自分を呼びに来た。いつも蚊帳の外な自分に用なんて珍しいと思いつつ、手短に事情を聞くと皇帝がモロー王家の未婚の王女全員に会いたいと言い出したのだそうだ。きっと、もっと側室を寄越せということに違いないと姉姫は憤慨していたが、既に広間に集められていた三人の姉達も不安から震えていた。四人の王女を見ていた皇帝はやがて口を開くと淀みなくアリアドネを指名した。政務代行している兄王子が再確認しても答えは変わらず、迎え入れるのはアリアドネ一人でいいと言う。驚きで思わず顔を上げると目の前にいたのはあの青年ではないか。彼は先ほどの無礼を詫び、バンドリア帝国皇帝グレゴワール・ジャコブ三世だと自己紹介すると、二時間後には彼女を連れて国へ帰ると言い出した。あまりの性急さに兄姉達も大混乱。ミケーネの輿入れが無くなったのは喜ばしいことだが、可愛い末っ子が代わりに選ばれたとなれば話は別だ。心配する兄姉たちを他所にアリアドネは内心大喜び。グレゴワールは噂で聞くような人物ではなかったし、一目で心を奪われていたのだ、そんな彼に選ばれて嬉しくないわけがない。おかげで国の平和は約束されたわけだし、彼女に申し訳ない気持ちで一杯らしい兄姉達と病床の父に挨拶を済ませると数人のお供を連れバンドリア帝国へ嫁ぐのでした。およそ四時間の馬車旅の中、アリアドネはグレゴワールに自分が選ばれた理由を尋ねるが、単に自分が子供で御しやすいからだと自己完結して落ち込みます。一人ではしゃいでいたかと思えば急にシュンとしてしまった彼女に漸く口を開いた彼は、初めて見た時アリアドネの周りには光が満ちていたからだと答えた。つまりそれは自分をお気に召したということか?と尋ねた彼女に、曖昧な返事をするとアリアドネは安心したのかグレゴワールの膝枕で眠ってしまっていた。見た目も年齢も結構な差のある二人ですが、元々友好の証としての政略結婚なのでグレゴワールは当初側室など誰でもいいという考えでした。でもアリアドネと出会い、どうせ傍に置くなら彼女が良いと思ったのです。帝国に着くとお引き渡しの儀により、糸くず一本すら祖国のものを持ち込めないと聞いたアリアドネが泣き出してしまうと言うトラブルも起きたが、儀式は無事終了。お付きの者たちも国へ引き上げ、婚姻の書ににサインしたアリアドネはグレゴワールの妃になったのでした。皇帝自らに案内された王宮は何とも立派なものでモロー王宮とは比べ物にならない。グレゴワールの部屋にも案内された彼女はここで自分も一緒に暮らすのかと思うとドキドキしたが、彼はこれで漸く結婚しろと煩かった家臣たちも黙るだろう、おかげで政務に打ち込めると彼女の輿入れに感謝された。しかも、彼女にはお飾りでいいので好きに暮らせと言う。贅沢するのも構わないと。そんなグレゴワールの物言いにアリアドネがバカにするなと爆発。こんなにもこの結婚にウキウキしていたのに、それでは家具や調度品と同じ扱いではないかと憤慨すると、突然彼からお引き渡しの儀の意味を教えらえます。男は閨で油断しやすく一番暗殺の危険性が高いから他国の物を一切持ち込ませないのだと聞くと、急激に彼女は申し訳なくなり、反対に皇帝とは寂しくて大変なんだなとグレゴワールの方が同情されてしまった。アリアドネは、誰でも寂しいのは嫌だから無理に自分を愛する必要はないが仲良くして欲しいこと、放っておかないでくれと彼に願うのでした。アリアドネは甘やかされて育ったのと持ち前の性格ゆえか空気読めない子だったりします。でも明るくて暖かい子でもあるので、彼女と接するうちに「氷の皇帝陛下」と言われているグレゴワールも絆されていくのです。初夜の準備の最中、侍女から自分が側室ではなく正妃だと聞いて驚愕するアリアドネ。思わず寝室にやって来たグレゴワールに取り消してくれと頼むが当然却下された。しかも、側室は迎える気は一切なく、妃は彼女一人だけでいいと言う。まだ何か言いたげな彼女を黙らせ、二人は無事初夜を終えるのでした。翌日、公務を休んだ皇帝は一日中部屋から出て来ず新妻を愛で倒すと翌々日の昼頃、漸くアリアドネは解放された。世話をしに現れた侍女のエメリアは番犬のゴルゴンが彼女に懐いているのに驚き、更に皇帝をグレ様呼びしていることに驚いていた。貴賓室を王妃の部屋にすると言われたが、アリアドネはグレゴワールの部屋の予備室を整えてくれればいいと頼んだ。そして、この部屋に来てから考えていたある計画を持ち掛けるのでした。公務を終えて部屋に戻ったグレゴワールは変わり果てた自室に茫然。余りにも少女チックな内装と、いかつい首輪を付けていた番犬は代わりに大きなリボンが首に結ばれているのを見て顔を引きつらせていると、嬉しそうに部屋のコンセプトを話す彼女に感想を尋ねられ思わず「・・・悪くない」と口にしてしまった。その答えに満足したアリアドネはたくさん勉強してグレゴワールに相応しい妻になるのだとはりきっていた。そんな彼女を彼は愛しく思うのでした。その翌日、グレゴワールが家臣全員の前でアリアドネを正妃に迎えたと報告すると、誰もが内心そんな小国の末姫などでなくともと思っていたが、そんな彼らの前で何とも可愛らしい挨拶をするアリアドネに満足そうな皇帝に皆唖然。やがて二人のやりとりに思わず笑いが起こるほどほのぼのした空気が漂い、図らずもアリアドネは彼らに歓迎されたのだった。書類上ではもう夫婦ではあるが、新年早々盛大な結婚式を執り行うことが決定した。その後、裁判官も兼ねるグレゴワールの裁定の際、訳ありな罪人への彼の気遣いを暴露したりと、天然故のアリアドネの補足は氷の皇帝陛下の呼び名をだんだん下火にさせて行った。だが、そんな彼女に対しグレゴワールの溺愛は増すばかり。幸せな新婚生活を送っていたある日、彼が妙齢の女性と親しげに話しているのを見て、アリアドネはお似合いだと思い落ち込みます。気落ちする彼女を心配したグレゴワールに、自分に気兼ねせず側室を迎えてくれと言い出し、彼を怒らせてしまうのでした。周りが心配する中数日が過ぎ、グレゴワールに連れ出されたアリアドネは二人の出会いの場を模した庭園とブランコをプレゼントされます。更に彼はあの女性は自分の従姉妹であり既に既婚者だと説明すると、お前はやきもちを焼いていたのだろう?と指摘。図星を突かれた彼女は赤面しつつもプレゼントの礼を言い、勘違いを詫びると二人は仲直りするのでした。後日、件の女性・レテシア公爵夫人から、想像だにしなかったグレゴワールの過酷だった半生を語られます。だが、今の彼はアリアドネといると子供の頃の様によく笑いとても幸せそうだと言い、これからも従兄弟を頼むと告げる夫人に笑顔で約束するアリアドネだった。その後、反皇帝派によるグレゴワール暗殺未遂事件が起き、終盤駆け足ながらきな臭い事件が続くと、やがて彼の腹心だった少尉が一派の手のものとして暗躍していたことが判明します。アリアドネが心待ちにしていた結婚式の直前、反皇帝派が暗殺計画を実行に移したが、グレゴワールの傍に居過ぎて情が移った少尉が一派を裏切ったことで、彼らを退けることに成功し一網打尽となります。無事式場に辿り着いた二人は帝国民達に祝福され式を挙げたのでした。アリアドネを正妃に迎えてからのグレゴワールの治世は穏やかだが繁栄を極めた。氷の皇帝陛下の呼び名は消え、いつしか太陽の皇帝陛下と呼ばれるようになり、生涯側室を持たなかった彼はアリアドネとの間に十一人もの子宝に恵まれた。二人はいつまでも仲睦まじく、時が経ち老衰で亡くなったグレゴワールの後を追うように二年後アリアドネも逝去。その後も帝国は大いに栄えた。と締めくくって終わり。まさか二人の最後まで描かれるとは思ってませんでしたが、ラストは読んでて何だか泣けました。見た目は凸凹コンビではあったけどいい夫婦だったなぁ。それにしても側室を取らずとも五男六女とは。その子供たちが後を引き継いで末永く帝国を繁栄させたって〆も素敵です。評価:★★★★★アリアドネの空気読めなさぶりに賛否分かれそうではあるけれど、全体的に可愛らしいお話で、読後感は素晴らしい。
2022.02.14
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2018年2月刊竹書房・密猫文庫著者:葉月エリカさん「グランソン伯爵の落とし胤であるティルカは、父の命令で第一王子のルヴァートに嫁がされる。彼は落馬事故により、足が不自由になっていた。本来の朗らかさを失い、内にこもるルヴァートは結婚を拒むが、以前から彼を慕うティルカは、メイドとしてでも傍にいたいと願い出る。献身的な愛を受け、心身ともに回復していくルヴァート。「もっと君に触れたい。いい?」やがて、落馬事故が第二王子の陰謀である疑惑が深まり!?引きこもり王子×孤児院育ちのお嬢様乙女の献身的な愛が、傷を負った王子の心を癒すラブロマンス」↑楽天ブックスより、あらすじ文引用Cielさんのイラストに惹かれてピッコマで無料の3話分だけ読み、面白かったのでamazonで文庫本の方を購入。新品の在庫あって良かった。例の読み放題のラインナップにも入ってるようです。ここからネタバレと感想。ヒロイン・ティルカは孤児院育ちの十八歳。院を出て自立しなければならない年齢となり、職探しの末に住み込みの子守の仕事にありつけた。しかし、いよいよ出て行く当日、領主のゴードン・グランソン伯爵が孤児院を訪れ、ティルカを引き取りたいと言うのです。しかも正式な娘として認知したいとも。母が貴族の気まぐれで無体を働かれた挙句産まれたのが自分だと言うのは預けられた時の話を聞かされたので知ってはいたが、まさか父がこの地の領主である伯爵だったとは。更に伯爵はグランソン伯爵令嬢として、ティルカにこの国の第一王子ルヴァート殿下に嫁げと言うのでした。その名を聞き、ティルカは淡い恋心を思い出したのです。ゴードン伯爵家へ無理矢理連れてこられたティルカは一か月の間に礼儀作法を叩きこまれ花嫁修業をさせられます。その間にメイドからこっそり聞き出した話によれば、本来この縁談は腹違いの姉に来ていたと言う。だが異母姉はルヴァートに嫁ぐのは絶対嫌だと泣き続け、ほとほと伯爵夫妻も困り果てたが、正式な政略結婚で、しかも相手は王族、こちらから断るわけにもいかない。そこで思い出したのが手を付けたメイドが産んだティルカの存在。十八なら年回りも丁度いい。娘が重い病気になったとして、妹のティルカを代わりに嫁がせるならば対面は保てるだろうという苦肉の策だったある意味、身代わり花嫁ものは親がこれくらい面の皮厚く立ち回ってれば、ヒロイン達の苦労も少なかろうとは思います。一々人物丸々入れ替わらせようとするから拗れる。孤児院にいた頃、ティルカは年に一度の聖夜祭を心待ちにしていました。この日だけはささやかなご馳走にありつけたし手作りのプレゼント交換も楽しかったが、それ以前にこの国の国王一家が慰問に訪れる日だったから。ティルカは第一王子のルヴァートを見つめるだけでドキドキしていたが、彼は性格も気さくで優しい人だった。自分にとっては初恋でずっと想い続けていたが、毎年欠かさず来てくれていたのにこの前の聖夜祭には現れずガッカリしたりもした。思えば、身分違いも甚だしい恋に決着をつけるいい機会だったのに、まさかそのルヴァートに自分が嫁ぐことになるなんて・・・。何とか形だけでも淑女として整いグランソン伯爵に連れられやって来たのは鬱蒼とした森の中にあるお屋敷。出迎えたのはルヴァートの乳兄弟で従者のシオンと名乗った男性だけ。ティルカを送り届けるとさっさと伯爵は立ち去り、早速ルヴァートとの対面となったが、部屋へ向かいながらのシオンの話によればこの屋敷に使用人は彼しかいないらしい。そして、約1年半年ぶりの再会となったルヴァートの変わり果てた姿にティルカは驚きます。車椅子に腰かけた彼は機嫌が悪そうでシオンに対しての乱暴な言葉遣いなどあの頃のルヴァートと結びつかず、ティルカは最初彼だと気付かなかったほどだった。ルヴァートはティルカに気付くと、異母姉の代わりに花嫁としてやって来た彼女にに上っ面だけの同情の言葉を述べ、ケガで下半身不随になった自分に妻など不要と彼女に出て行けと言い放ちました。ティルカは何故異母姉が結婚を嫌がったのか理解した。対面後、お茶を飲みながらシオンから事情を聞くに、その事件は半年前に起きた。ルヴァートは馬の早駆けの大会に弟である第二王子・アティウスと共に参加していた。だが、レースの途中ルヴァートの愛馬が突然暴れ始め彼を振り落とした。ルヴァートは二日も意識不明状態が続き、目覚めた時には下半身の感覚が無くなっていたと言う。医者の話では落馬の際に脊椎に損傷を負ったのだろうとのことで回復の望みはほぼ無いらしい。介助無しでは一人で動くこともできない彼はいずれ廃嫡となるのは明らかで、今まで自分の周りにいた親しい連中のほとんどが手の平を返しそっぽを向いてしまった。おかげでルヴァートは自由に動けないストレスも相俟って酷い人間不信となり、今は乳兄弟のシオンしか傍に寄せ付けず、静養の名目でこの別荘に移り住んだのだとか。国王の正妃には子がおらず、ルヴァートもアティウスもそれぞれ別の側室の子供でした。正妃は二人に分け隔てなく接してくれていたが兄弟仲は悪く、アティウスが王太子になるのもルヴァートの怒りに火を注いでるらしい。ティルカはずっと想い続けていた彼を放って置くことなどできず、翌朝朝食の席で、花嫁が嫌なら自分をこの屋敷のメイドとして雇って欲しいと訴えるのでした。あらすじにもあるように、どう見ても落馬事故は弟が怪しいんですが、王位継承権がある王子同士の仲が悪いと色々大変でしょうね。メイドとして働くと宣言したティルカはその日のうちから精力的に働き始めます。酷かったシオンの手料理にはさすがに辟易していたのか、美味しいティルカの料理はルヴァートも残さず食べるようになり、彼女の明るさに影響されたのか剣呑だった彼の雰囲気も柔らかくなっていきます。でも、たまに夢見が悪いと食事もしてくれない日もありました。そんなある日、買い物のメモが切欠でティルカが碌に読み書き出来ないことが二人にバレ、シオンの提案でルヴァートが読み書きを教えることに。二人だけの時間が増え、ルヴァートの態度も大分軟化していた頃、ある嵐の夜二人の関係が大きく変わります。ルヴァートは元々ティルカに好意を持っていたのにこんな身体になって素直になれなかったのですが、懸命に尽くしてくれる彼女とずっと一緒にいたいと思い始めており、ティルカも同じ気持ちだと知ると動かない身体ながらなりに、彼女と交流を重ねていきました。そんなある日、二人でピクニックに出掛けた時、狼に襲われたティルカをよろめきながら立ち上がったルヴァートが救います。ここ最近、ティルカに隠れてシオンと二人で何かやっていると思ったらどうやらリハビリだったようだが、脊椎を損傷していたのではなかったのか。疑問に思っていると、ある日ティルカに足のマッサージをされていた際、足の感覚が戻って来て、もしやと思い医者に問い合わせて見てもらった所、脊椎ではなく頭を打ったのが原因の脳内出血によるものだろうと判った。訓練によっては別の神経回路が発達してどんどん動くようになると聞き、以降リハビリに励んでいたそうだ。ルヴァートとティルカと結ばれ、二人の蜜月は続きますが、続けていたリハビリにより歩行にも支障が無くなった頃、決着をつけるべく彼は王宮への帰還を決意します。王子妃としてティルカを連れて王宮に戻り、王妃コーデリアに会うと落馬事故について話を始めます。やはり、王妃も疑問に思っていたらしく、ルヴァートが自分の留守中に王妃に調査を依頼していたのでした。原因も調べずに早々に馬の殺処分を強行したのががアティウスの祖父の公爵だったことや、その他諸々の証拠により、アティウス派の仕業によるものとほぼ確定したが、もう一押し欲しいと言うことでティルカが囮役を買って出て罠を仕掛けます。すると見事にアティウスは引っかかり、追い詰められた彼は落馬事故の真相を白状したことで首謀者たちは全員逮捕されました。その後裁判を重ね、アティウスは遊学の名目で放逐され事実上の国外追放処分となり、母とその父の公爵も爵位剥奪の上、国外追放処分となった。一年後、長年子宝に恵まれなかった国王夫妻に待望の第一子である王女が誕生し、ティルカもルヴァートとの子を授かり妊娠中。夫婦仲良く孤児院の慰問に出掛けて了。やっぱりアティウスというか、第二王子派による犯行でした。まあこの辺は敢えて捻る必要も無いのでストレートに来た印象。出来の良い兄貴を妬み、母や祖父の甘言に乗っかってしまったらしいけど、半分とは言え兄弟だからこそコンプレックス刺激されまくってたんだろうなぁ。とは言え、ティルカへの態度とか見ると性格がアレな人だったから同情に値しないけども。終盤に出て来た王妃コーデリアさまがなんともお茶目な人で、ルヴァートの初恋がティルカだと本人の前であっさりばらしたと思えば、しっかり事件の真相にまで迫ってたりとキャラ立ってたなぁ。念願の子供が産まれて本当に良かった。このレーベルさんのノルマなのかラブシーンが多目で、その分ストーリーが圧迫されてた気もしないでもないですが、お話は面白かったです。両想いになるのも早かったしね。ティルカがとにかく好感持てるヒロインだったのもポイント高いかも。欲を言えばタイトルでちょっと損してる気が(^_^;) これで読むのを敬遠しちゃう方もいそうなだけに残念。ルヴァートは全然ワンコ要素無いんだけど、どうしてこんなタイトルにしたんだろ。評価:★★★★☆ご都合展開ではあるものの、初恋を実らせたシンデレラストーリーです。
2022.02.05
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2017年3月発売竹書房 密猫文庫著者:すずね凛さん男爵令嬢アデルは出奔した姉の身代わりに家の負債を肩代わりしてくれる伯爵の元に嫁ぐことに。相手のローレンスは意外にも若く美しい男性だった。思わずときめくも、彼は跡継ぎのためだけの結婚だと彼女を突き放す。傷付くアデル。だが初夜の彼は初めての彼女に優しく触れ、官能を教えてくれる「いいね。君はどこもかしこも感じやすい」次第に彼の誠実さを知り心惹かれるアデルだがローレンスも初々しい彼女に心を動かし始め!※楽天ブックスよりあらすじ引用感想一冊目は王道・すずね凛さんイラストのCielさんに惹かれて最初はピッコマで読んでたんですけど、まーいい所で有料に切り替わってしまいまして課金しても良かったものの、当時はまだ一度課金したら終わりだと思ってたんでギフト券を持ってたamazonでポチ。私を乙女系小説に転がせてもらった思い出深い作品なこともあり今でもちょくちょく読み返してます。ここからネタバレ有りの感想です・(現在ピッコマで連載読んでて知りたくないよっ、な方はブラウザバックしてください)ヒロイン・アデルは破産寸前の没落した男爵家の次女、ヒーロー・ローレンスは幼い頃のトラウマから女性と結婚に不信感がある伯爵家当主で実業家。いい加減生活が立ち行かなくなり屋敷もそろそろ借金のカタに取られそうで、加えて長患いで寝たきりの妻をせめていい医者に見せたいと、当主である父は金策に苦しみ精神的に追い詰められて酒浸りになる日々。ある日、少しは交渉に有利になるかと美人と評判の長女を連れ銀行に融資を頼みにいくが碌な担保が無いので当然断られます融資を断れた挙句酔ってる弾みで自分を融資担当者に売ろうとまでした父に激怒しさっさと恋人とのデートに向かったアダレード。(でもまあ本心ではなかったとはいえ普通にこれは怒るよなぁ)そんな二人のやり取りを見ていたローレンスは借金を全て肩代わりする代わりに男爵に娘さんを嫁に頂きたいと提案。銀行でのことはともかく、いくら借金の帳消しがかかっていても男爵は娘を売る気はありませんでした、ただこの結婚を機に家の状況も考えず我儘放題のアダレードが少しでも落ち着いてくれればとの思いもあってこの話を受けたものの、親の心子知らずかアダレードはアデルを代わりに行かせなさいよと書置きを残して家出してしまいます。しかし、いくら花嫁がいなくなってももはや借金を清算してもらった以上、今度は伯爵にその金額を返すあてがない。考えあぐねた結果、母を路頭に迷わすわけにはいけないからと、姉の書置き通り双子のように似ているアデルがアダレードとして嫁ぐことを自ら申し出ます。元々姉の顔は遠目でチラ見した程度。ローレンスもよく覚えてないだろうことが幸いし、入れ替わりはなんとか成功、二人は対面後に簡単な式も挙げました。ローレンスは銀行で見たアダレードとやってきた花嫁が随分雰囲気が違うので少し違和感を覚えるも、そもそもこれは契約結婚で跡継ぎを産めば妻はお役御免で、できなければ2年で離縁という約束でした。アダレードを嫁に望んだのも、奔放そうな娘なら後腐れなく別れられそうだったから。とは言え、二人の思惑とは外れお互い一緒に暮らすうちに段々惹かれ合うようになります。アデルは本当に健気で気立ての良い子なので(しかも美人)ローレンスが憎からず思うようになるのにさほど時間はかからず、割と早くから二人の蜜月期に突入。案外チョロかった、このヒーロー。まあ、ローレンスが長年わだかまっていた実母のことを考え直すようになったのも、アデルが逃げ回っていた自分の代わりに母と会って話してくれたからで、女主人として張り切り少しでも夫が過ごしやすいようにと気配りする幼な妻が可愛くないはずありません。途中で契約内容を破棄したのも無理からぬこと。しかし、アデルには姉・アダレードとして嫁いできたことでローレンスに嘘をつき続けていることに罪悪感がありもしバレたらと不安にさいなまれていましたが、主の誕生日の準備に湧く屋敷に恋人と別れたからとアダレードがブレア家の妻に成り代わるためにアデルを追い出そうとやってきて・・・。この姉、どういう面の皮なのか、さすがにいくら瓜二つでももう入れ替わりは無理だと思うんですが、真相を全部ローレンスにバラシてくれちゃったおかげで、もうここにはいられないとアデルは泣く泣く実家に帰ります。が、当のローレンスは今更アダレードと一から夫婦生活をやり直す気はさらさらなく、男爵家へ赴き改めてアデルにプロポーズをし直し晴れて二人は本当の夫婦に。男爵家もアデルからの仕送りと借金が無くなったことで荒れ放題だった屋敷も綺麗になり、母も医者にかかることで起き上がれるように。エピローグではアデルの妊娠も発覚し、仲睦まじく暮らしているようで何よりなラストでした(*^-^*)さて、悪役らしい悪役もおらず、でもそんな悪人のいない中ちょっと悪目立ちしてしまった人物として描かれていた姉も根っから我儘で自分勝手だったわけではなく、性格も良く出来の良い妹に劣等感を抱いて妬んでいただけで、自分の行いを反省はしたよう。男爵家も持ち直したことだし、そんなに悪い子でもないため多分姉にもそのうち良縁があるんじゃないでしょうかね。ヒロインが終盤まで罪悪感を持ちづづけていたことと姉の乱入以外は割と二人の世界なので、最後までほぼストレスなく読めます。じれじれはしてないけどラブシーンはそれなりに多目。なにせあらすじからして官能的だし(笑)イラストが美麗で意図せず本棚が違う作者さん作品でもCielさんがかなり多めになってる今日この頃。評価★★★★★個人的に大好きな作品なので高評価です。
2022.01.08
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