全147件 (147件中 1-50件目)
2024年9月刊ベリーズ文庫著者:若菜モモさん学芸員の澪里は、パリの古城での美術展に参加。そこで悪質なトラブルから助けてくれたのは、ホテル王と名高い若き富豪・聖也で…!スマートで包容力溢れる彼に急速に惹かれていく澪里。しかし聖也からは1年間の契約結婚を依頼されてしまう。恩のある澪里は契約妻として奮闘するが…。「俺だけを見てろ」-彼には他に愛する人がいるはずなのに、なぜか痺れるほど甘い激愛を刻み込まれて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 真壁澪里=学芸員。フランス語が堪能な事からパリの美術館に出向していた。 氷室聖也=若きホテル王。澪里を見初め結婚を申し込む。敷島惠利子=外務大臣の娘で大の絵画好き。聖也の見合い相手。美術館巡りが好きな両親の影響で、自身も大の美術館オタクとなった澪里は、念願の学芸員という職に就き、現在はパリの美術館に出向している。元々父の仕事の都合で小学校時代はフランスに暮らしていた彼女が、同じく出向を希望していた主任を差し置いて決まったのは偏に言語面で不自由が無いからだろう。社交的な同僚のおかげで人間関係にもさほど苦労することは無かったが、先日館長からあと1ずなのにずなのに今月末には帰国するよう命じられてがっかり。どうやら現在籍を置いている東京の美術館が目玉となる作品がないせいで経営難らしい。それで主任からも帰国の際に何か良い絵を持って帰るよう言ってきたわけか。そんなある日、以前から家族ぐるみで懇意にしているアパルトマンの大家の息子から、コレクターとして有名なレシュレル侯爵が開催する美術品を愛でる会のチケットを入手したとの連絡が。貴族位を持つその人物は数年に一度この手の催しを開くとは耳にしていたが、伝手が無いので端から諦めていた。澪里は彼に感謝し、ドレスコードがあるとのことで奮発して少々お高いワンピースを購入。一人で上流階級の場に参加するのは気が引けたけれど、レシュレル侯爵のコレクションを見たい気持ちの方が勝った。ドキドキしながら車を降りると、駐車場のぬかるみに立派な懐中時計が落ちていた。もしかしてあの人のかなと、前を歩く背の高い青年に声をかけるとやはりその人の物だったらしく、大事な父の形見なんだと礼を言われた。中で知り合いが待っているらしい青年と別れ、自分は想像以上に素晴らしい侯爵のコレクションに見入っていると、いかにも好色そうな男性に声を掛けられた。少々警戒しつつも澪里が大好きな画家・アンドレアの名作「陽だまりの中のライラック」を所持していると言われ、見たいなら招待するという言葉につい頷きそうに。そんな彼女を恋人を装って助けてくれたのは先程の懐中時計の青年。男は青年が誰か知っているらしく、あたふたと逃げて行った。彼は氷室聖也と名乗り、あんな判り易い手に引っかかりそうになるとはと苦笑い。あいつはアンドレアの作品なんか持ってやしないし招待を受けたが最後、乱暴されてたところだと聞いてゾッとした。怖気をこらえて礼を言えば、それでもここにいる間は諦めてないかもしれないので君が見学している間は恋人兼ガード役を引き受けてくれた。懐中時計を拾い、泥まみれだったのをハンカチで拭いてくれたお返しだと彼は笑っていたが、よくよく見るとなんてカッコイイ人なんだろう。まだ30そこそこだろうし、参加者の付き添いとかかしら?気になってこっそり見回すと、さっきの男が恨みがましく睨んでいた。制限時間一杯コレクションを堪能し満足しきりだったが、彼にはきっと退屈だったろう。改めて礼を言っているとなんと侯爵に声を掛けられた。若いお嬢さんにこれほど興味を持ってもらえたなんてと大層機嫌が良く、お腹が好いただろうとお土産まで貰ってしまった。有意義な時間を過ごせたと気分よく帰ろうとすれば、聖也からアンドレアに興味があるのかと聞かれ、大好きだと答えれば知り合いにアンドレアの作品を多数所持する者がいるから紹介すると言われ、一も二もなく飛びついた。さっきあっさり騙されそうになったくせに、なぜだか彼の言うことは信じられる気がする。聖也も仕事があるので行けるのは明日のみ、なのにわざわざ迎えに来てくれるそうなので連絡先とアパルトマンの住所を教えてその日は別れた。翌日、車で片道2時間ほどかけてやって来たのはパリの郊外にあるごく普通の民家。そこに住むモーリーという中年女性はアンドレアの子孫とのこと。かなり親しい間柄らしく聖也の頼みならと多数の作品を見せてもらえた。だがその中でもやはり「陽だまりの中のライラック」は格別だ。見れば見る程素晴らしく、うちの美術館で公開したいと言う気持ちが。帰りは少々トラブルに見舞われたものの、聖也のおかげでなんとか無事に済み、いずれまた会うことを約束すると彼は日本へ帰って行った。その夜、興奮冷めやらず、企画の一つとして「陽だまりの中のライラック」の公開案を主任にメール。するとすぐに食いついて来て、何としても貸し出してもらえるよう交渉しろと命じられた。聖也からはあれからもメールでやり取りしていて、困ったことがあれば力になると言われていた。しかし、彼の伝手で絵のレンタルを頼むは違うと思う。後日、モーリーにダメもとで頼んでみたが澪里のことは気に入っているけれど、搬送など道中の取り扱いが不安なのでと断られてしまった。それも当然かと、主任にあれは飽く迄ただの案なこと、一応持ち主に打診はしたがきっぱり断れたと報告。それでも諦めきれないようでかなり叱責されたが無理なものは無理。ついハイになって案を出したことを激しく後悔。結局タイムリミットが来て澪里も日本へ帰国したのだった。だが、古巣の美術館に着けば主任の上田からあの絵を目玉展示にすると聞いて澪里は耳を疑った。あれは持ち主から許可を貰えなかったと報告したはずと申し立てたが、聞く耳持たず、逆に澪里の方が上田の企画を妬み嫌がらせをしていると言う話にすり替わっていた。館長からも叱責され、同僚達からも悪し様に言われ、追い詰められていく彼女。唯一同期の神野だけは信じてくれて励ましてくれたけれど、針の筵のような状態の上、迫る期限。一人裏庭で声を殺して泣く澪里を物陰から聖也が見ていた。数日後、ホテル業界の最大手・クイーンズグループのCEOの使いと名乗る人物が、あの絵を携えて来館。彼は澪里の尽力により持ち主から借り受けることができたこと、だが保管方法など持ち主が不安に思っているため、日本にある間の警備はクイーンズ側が引き受けると報告。飽くまで上田ではなく澪里の手柄だと強調したことで、彼女を叱責していた館長はあっさり手のひら返し、同僚達にも今回のトラブルは上田の勇み足だったと説明。澪里は彼らから真摯な謝罪を受けた。後日、館長から真偽を問われた上田は自分を差し置いてフランスに行った澪里を妬み、無理難題を押し付け右往左往する様が観たかったと白状。早々バレることは判っていたようで既に次の就職先を見つけての行動だったらしい。真相を聞いて澪里も唖然。結局、上田はクビになり、澪里が今回のイベントの責任者に任命された。後日、CEOにお礼をと指定されたホテルに赴くと待っていたのは聖也だった。今回の件、恐らく彼がモーリーに口をきいてくれたのだろうとは予想していたのだが、彼がそのCEO本人だったとは。あまりにも若いので聖也の傍に居た男性の方がCEOで彼は秘書課何かだと思ってた自分が恥ずかしい。一応、高級洋菓子を土産に持ってきたがこんなの食べ慣れてそうだし、つい私に何かできることがあれば、と申し出ていた。実は以前、聖也から契約婚を持ち掛けられており、今回のゴタゴタで断っていた。するとやはり彼の希望は澪里との結婚。世話焼き祖父さんの見合い攻撃から逃れるため1年間でいいので妻役を引き受けて欲しいという。期間限定ってことはきっと、この間だけやり過ごして後に本当に好きな人と結婚するつもりなんだろう。彼にはフランスの時から随分世話になった。決心した彼女は私が妻役を上手くできるか判らないけれど、と前置き、契約婚を引き受けたのだった。驚くことに、彼はこのホテルの最上階のペントハウスで暮らしていた。当然、澪里の住まいもここになり、パーティー等のパートナーを務めた。聖也が世話焼き祖父さんと呼んでいた野本氏は政界の重鎮だそうで、彼を実の孫のように可愛がっていた。早く身を固めろと多くの縁談を持ち込んでいたが、澪里を紹介すると喜んでいた。一先ず最難関は乗り越えた。聖也はとにかく多忙で世界中飛び回っていたが、連絡自体はマメで何かと気遣ってくれる。彼に惹かれ始めていた澪里はこんなに優しくされたら離れ難くなってしまうではないかとため息。そんな最中、「陽だまりの中のライラック」の警備費用に頭を悩ませていた美術館に新たなオーナーが決まった。外務大臣の娘で絵画コレクターだと言うお嬢様・敷島惠利子が挨拶に訪れ、そのあと話があるからと澪里を呼び出した。その席で、惠利子から私は聖也の恋人なのと告白され・・・。両片想いものです。懐中時計を拾い、汚れるのもいとわずハンカチで拭いて返してくれた澪里に聖也は一目惚れ。その外見と財力から色目を使われることが多かった彼は、その時全く自分に興味を示さず美術品に全力集中していた彼女を益々気に入り、結婚するならこの人しかいないと考えます。なので、澪里のためならとモーリーを紹介すれば、感謝されこそすれどうも男としては見てくれていない。おまけに野本の祖父さんからは縁談攻撃が激しく、つい先日紹介された外務大臣の娘・惠利子との話も断ったばかり。できれば澪里に結婚前提の恋人になってもらいたいのだが、恋愛に興味が無さそうなのがネック。試しに契約婚を持ち掛けたが、トラブルがあってそれどころじゃないと断られた。何があった?と調べれば、上司の嫌がらせで窮地に立っている。恩を着せつつもりはないけれど、モーリーに頼み込んでなんとか貸し出しの許可を得たのでした。この努力のおかげで契約婚には応じてもらえたものの、惠利子の策略により、澪里は誤解。契約を破棄したいと話す彼女を必死に止め、君は惠利子に騙されていると語るのでした。恋人どころか、一度しか会ったことない見合い相手なんだけどと聞いて彼女もビックリ。聖夜に一目惚れした惠利子はなんとか彼の妻になりたいとお人好しの澪里をペテンにかけていたのでした。真相と聖也の本音を聞けたことで、自らの気持ちを打ち明けた二人は契約を破棄、「陽だまりの中のライラック」の公開で美術館の人気も盛り返し、仲睦まじい二人の様子が描かれて物語は幕。大富豪というテーマなだけあって、契約婚の報酬だったり色々スケールが違いました。プライベートジェット、乗ってみたい。評価:★★★★☆
2024.09.24
コメント(0)
2023年8月刊ベリーズ文庫著者:葉月りゅうさん空港で働く莉真は、結婚に憧れているが失恋のせいで新たな恋ができずにいた。そんな中、仕事で出会った敏腕パイロット・暁月に事情を知られ、突然求婚されて!? 結婚に対して冷めた考えを持つ彼は、なぜか“恋愛前提”の夫婦になることを提案! 色気たっぷりに迫られて、意を決し妻になった莉真。「俺なしでは生きられなくしてやる」--暁月は狡猾に莉真を翻弄し、容赦なく溺愛し始めて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 降籏莉真=運航情報官。結婚に強い憧れがあり、失恋を吹っ切るために暁月の提 案でスピード婚した。 相良暁月=社内最年少で機長に昇進したエリートパイロット。 莉真に興味を持ち結婚を申し込む。 城戸拓郎=莉真の先輩情報官で初恋の人。 倉科望=暁月と拓郎の幼馴染のCA松本空港で運航情報官として働く莉真は、2年前の失恋を引き摺っていた。両親が営む居酒屋の常連で、当時この管制塔に勤務していた城戸拓郎は、垢抜けてカッコイイ人だった。8歳上の彼に一目惚れして同じ運行情報官を目指して猛勉強の末、無事資格を取った彼女はその足で城戸に告白。晴れて付き合うことになったのだが、彼が既婚者だと知ったのは数か月ほど経った後のこと。知らずに不倫の片棒を担がされていたことがショックだったのと、城戸の奥さんに申し訳なくてすぐに別れを切り出し破局。すぐに移動願を出して故郷であるこの松本に帰って来た。仕事の都合上、中々休みが合わず交際期間の割にはデートしたのも数回だけなのと、肉体関係まで至らなかったのが救いだった。今思えば彼の方も妻に対して罪悪感があったのかもしれない。友人の茜からは、いい加減忘れて新しい恋を見つけなよと言われているものの、なかなか踏み切れないのは未だ彼を嫌いになれないせいか。志望動機は城戸だったけれど、この仕事はやりがいもあるし元より空に憧れがあった莉真にとっては天職だ。暫くは仕事に打ち込もう。そう心に決めていた。そんな彼女にある出会いが。7月の初めに、ヒノモト航空の期待株・コーパイの相良暁月が、莉真の尊敬する情報官・ゴンさんの知り合いだとかで飲み会に参加したのだ。なるほど、城戸とは違うタイプだが優等生っぽいイケメンだ。これはCA達にもモテモテだろうなと思いきや、機長の昇進試験にどうしても受かりたいので、恋愛にうつつを抜かしている暇はないと言っていた。辛辣な物言いに性格そのものはちょっとクセがありそうだけど、きっと正直なんだろうとは思う。最年少機長を狙ってるらしいので、願い事も思い浮かばなかったから七夕の短冊には彼の試験が成功するよう書いておこうと決めた。それから1ヶ月ほど経った頃、移動の辞令が出て羽田に戻った莉真はそこにまだ城戸が勤務していてげんなり。意識しない様努めたが気疲れで3日目に既にグロッキー状態だ。ゴンさんは新千歳に行ってしまったし、茜は松本に残っている。愚痴を聞いてもらえる者も無くストレスMAXの中、暁月と再会。彼はあの後無事に試験を突破して機長に昇進していた。暁月は、彼女を見つけると駆け寄って来て、これを書いてくれたのは君だろ?とあの短冊を撮影したスマホ画面を見せた。ありがとうと礼を言う彼に、願い事が思い浮かばなかっただけだからと言い訳していると、丁度城戸が通りかかって暁月に砕けた様子で話しかけている。聞けば二人は幼馴染なのだそうだ、それとあと一人年下の子の3人で良く吊るんでいたと聞いて世間は狭いものだなと思った。話の流れで城戸が離婚していたことを知って、驚いたがもう自分には関係のないことだ。城戸は本当に通りかかっただけの様ですぐその場を離れると、暁月からあいつと何かあった?と尋ねられた。実はあの飲み会の日、飲み過ぎてベラベラと自らの失恋の痛手とサイテー野郎の愚痴を暁月に話していた。そのサイテー野郎が彼なんですと白状すると、成程と納得していた。幼馴染のことを悪し様に言ってしまったから気分を害したかと思いきや、まぁ、妻がいる時に君と交際するのはどうかと思うから言われて当然と特に気にしてないようでホッとした。その後、彼に誘われ飲みに出かけた莉真はストレスもあって酒が進み、徐に「私、結婚に憧れがあるんです!」と暁月に話しだした。莉真の両親は仲睦まじく、子供心にこんな夫婦になりたいと思っていた。それも相俟って城戸とのことは相当ショックだったこと、おかげで次に進めないんですと溢す彼女に、暁月は逆に両親が不仲だったそうで全くと言っていいほど結婚願望がないらしい。一生独身かもなと自嘲する彼に、いや、結婚はいいものですよ、絶対に幸せになれますからと引かない莉真。すると暁月はじゃあ俺にその幸せってやつを教えてほしいといきなりのプロポーズ。君も拓郎を忘れるチャンスじゃないか?と言われ、彼女の心も揺れた。実のところ、独身になったせいか、悪びれもせず城戸に誘いを掛けられて困っている。でも結婚してしまえば彼も弁えるのでは。渡りに船とはまさにこのこと。しかし、契約婚という形にはしたくない。結婚するからには仲良くやっていきたいしいずれ子供もが欲しい。そう意見を言えば、同意を得られたので交際期間ゼロながら結婚することにした。そうと決まればとなんとか休日が合う日に松本に帰って両親に結婚報告すれば、暁月がパイロットと知って飛行機好きの父は歓喜。一発OKを貰ったが問題は彼の父。お堅い公務員と聞いていたが、航空局のお偉いさんと聞いて驚愕した。義父は結婚したら妻は家庭に入るべきという持論らしく、仕事は続けますと言う莉真に少し不満があったようだが、暁月の口添えで一応納得してくれたようだ。双方の許可も得たので、早々に二人は入籍し暁月のマンションでの同居が始まった。あんなことを言っておきながら、彼は莉真に対してマメ男ぶりを発揮。フライトで外国に行けばSNSで写真を送って来て土産も欠かさない。二人の結婚は彼を狙うCA達にとっては大ショックだったようで一時期騒ぎとなり、城戸はアイツの性格上一生独身だと思ったのにと首を捻っていた。しかし、入籍後はちょっかいもかけられなくなったので助かった。そんな最中、偶然暁月がCA姿の女性と親し気にしている姿を見て以来、モヤモヤした気持ちが収まらない莉真。後にそのCAが倉科望という例の幼馴染と知ってホッとした。彼女を女として見たことはないと彼は言っていたが、望の方は長らく暁月に想いを寄せていたらしい。でも、望の家もまたお堅い家で親の決めた婚約者がおり、結婚も間近なのだと言う。今となっては暁月を夫として愛し始めていた莉真も彼女の事情に同情していた頃、城戸も親の決めた相手と望まぬ結婚をし、上手くいかずに離婚間近だった時に莉真から告白されてつい応じてしまったのだと知った。それでも付き合うなら全てにケリをつけてからだろうと暁月も言っていた。彼もまた莉真を大事に思うだけに城戸の弱さに腹を立てていたのだ。彼女と両想いになり、暁月が夫婦生活に幸せを感じ始めていた頃、航空局に匿名のクレームが。内容は城戸と莉真との不倫を匂わせるような写真で、二人を処分しないとマスコミにリークすると言う文章が添付されていた。事態を重く受け止めた暁月の父は莉真に新千歳空港への転属を命じ・・・。この写真、実は結婚祝いの飲み会の時のもので傍にはゴンさんたちもいました。が、絶妙な角度で撮られたせいで、たまたまひそひそ話で耳を寄せていた場面が妙に艶っぽい構図に。莉真もそこは誤解だと義父に訴えるも、一先ず城戸と距離を置けと言われ、泣く泣く辞令を受け入れざるを得なくなります。さすがに城戸も焦り、暁月に真摯に詫びると二人で協力し合い、このふざけた密告をした犯人の割り出しに奔走。騒ぎを聞きつけた望は心当たりがあったようで、その人物に詰め寄ると素直に白状したので、暁月の父の前に突き出します。犯人は望の元婚約者で航空局職員でした。彼は望と城戸との仲を誤解し、こいつは幼馴染の妻にも手を出している、情報官がこんなことでいいのかとクレームを入れていたのです。でも元婚約者の思惑は外れ、実際、転属という名の左遷になりかけたのは城戸ではなく莉真だったことから暁月は激怒。元婚約者は先日望から婚約解消されて腹が立ったのだと詫び、相応の処分も甘んじて受け入れるのでした。義父が莉真を飛ばそうとしたのは偏に息子のため、彼も漸く厳しい父の内心を知って蟠りも少しだけ解けたのだけど、素直じゃない父子の歩み寄りはまだまだ遠そう。それにしてもこの幼馴染3人、実家に問題あり過ぎじゃ(^_^;)騒動後、身内だけのささやかな式を挙げ、莉真が暁月に妊娠報告をして本編は幕。書き下ろしの番外編は本編ラストから3年半後のお話。城戸と望もそれぞれ良い相手を見つけて結婚したこと、相良家の日常の一コマが描かれています。今作は、同じくパイロットもののスピンオフだそうで、そちらのヒーロー&ヒロインもちょっとだけ登場してます。そちらはまだ未読なため、近いうちに購入して読んでみようと思います。評価:★★★★☆
2024.09.21
コメント(0)
2018年12月刊ベリーズ文庫著者:真彩-mahya-さん貴族の娘・鳴鈴は、賊に襲われたところを助けてくれた容姿端麗で屈強な武人に恋をする。しかし父の強引な勧めで、皇帝の子息に嫁ぐことが決定。彼への想いを封印して迎えた当日、謁見の場にはあの武人ー夫となる皇子・飛龍が!結婚を喜ぶも、堅物な彼は素っ気なくて…。しかしある日、何者かに命を狙われた鳴鈴を救った飛龍は、これまでと違い、甘く情熱的に鳴鈴を求めてきて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 徐鳴鈴=崔国の貴族の娘。 愛する飛龍の妻になるが相手にされず思い悩む。 向飛龍=数々の武功を立てた崔国の第二皇子。その日、鳴鈴は遠縁に当たる皇帝の寵妃・翠蝶徳妃からの招待で後宮に遊びに行っていた。話も弾み、帰る頃には夜も更け帰りを急いだが、彼女の乗る馬車は運悪く夜盗の襲撃を受けた。主を守るため、護衛代わりの侍従・緑礼も奮闘したが、隙をつかれ鳴鈴は賊により馬車から引き摺り下ろされてしまった。しかし、間一髪のところ加勢に入ってくれた武人が。ガタイの良い青年は武将だろうか。幾人か部下を連れていたけれど、それでも賊のほとんどは彼が倒していてその強さとカッコ良さに鳴鈴は青年に一目惚れ。惜しくも首領格らしき賊には逃げられてしまったが、彼女達に目立った怪我がないのを見届けると青年はさっさとその場を去り、碌にお礼も出来なかったと鳴鈴はガックリ。以降、名も知らぬ命の恩人に想いを馳せていた鳴鈴だったが、ある日、父から縁談を命じられ悲しみに暮れた。お嫁に行くならあの方の元が良い。泣き暮らす彼女に緑礼も手を焼いていたが、よくよく話を聞くに、お相手は第二皇子とのこと。貴族にしては珍しく野心もなく実直な父もそんな方に娘が、と大興奮。そして、これは翠蝶徳妃の推薦であることを話した。そもそも皇族との結婚をこちらから断ることはできない。泣く泣く嫁ぐのを了承した鳴鈴は、顔合わせの際、夫となる人があの武将だと知ってビックリ。向飛龍、それが第二皇子で命の恩人の名であった。29歳の彼は、理由あって長らく妃を娶らなかったと言う。飛龍の実母と親しかった翠蝶徳妃はじきに三十路となる皇子がいつまでも独り身では立場も悪くなりかねないと、お気に入りの娘である鳴鈴との結婚を皇帝に推し、承諾させたという経緯であった。随分年上だと思っていたが、まさかの11歳上。加えて、鳴鈴は身体も小さく18歳にしてはかなり幼く見えた。アンバランスな夫婦の誕生に失笑する者もいたけれど、鳴鈴はめげなかった。だって恋焦がれたあの方の妻になれたんだもの。結婚してすぐに彼が治める北の地・星稜で暮らすことになった鳴鈴。丁度冬の時期だったので温暖な王都育ちの彼女は早々に体調を崩してしまった。薬も飲めず、喘鳴する主に緑礼もオロオロしていた所、見かねた飛龍が口移しで無理矢理薬を嚥下させるという出来事が。初めての口づけがまさかの口移しとは。そう、鳴鈴は初夜すら迎えていなかったのだ。この結婚自体、母代わりの徳妃からのゴリ押しで彼も断れなかったのかもしれない。不本意な結婚だったせいか同じ寝台で眠っても彼からは一切手を出されず、鳴鈴は枕を濡らす日々。でも無理矢理でも薬をしっかり飲んだおかげで彼女は数日もすれば復調し緑礼相手に楽しくおしゃべりしている姿が見受けられた。飛龍とて、鳴鈴を嫌いなわけではない。外見も性格も可愛いし、貴族令嬢ながら気取った所も無いので、すぐに好意を持つようになっていた。だが、思い出すのは10年前の悲劇。自分が鳴鈴を寵愛していると知れれば、また同じ事が起こるかもしれない。だから我慢だ我慢。だが、そんな飛龍の心遣いが思いもよらぬ結果に。夫に相手にされない童顔の妃と、鳴鈴の立場が日増しに悪くなっていったのだ。ある日のこと、毎年の行事で久方ぶりに王宮に帰った二人。鳴鈴は懇意にしている第三王子の妃・宇春と、飛龍は気の合う兄弟たちと夫々過ごしていた。その折、皇太子妃に飛龍との仲を揶揄され、落ち込んだ彼女は一人庭園にある池でぼんやりしていた所、何者かに襲撃され腹を刺された挙句池に落ちると言う事件が起きた。幸い、飛龍が慰めにと送った鏡を懐に忍ばせていたため、怪我は無かったもののこの件は暫く王宮を騒がせた。数日後、気晴らしにと出掛けた市でも彼女が襲撃され、飛龍はまた繰り返されるのかと苦悩。なのに、不安だろうにそれをおくびにも出さず、逆に夫を慰める鳴鈴に、彼は自らの過去を語ったのだった。10年前、雪花という貴族の娘と恋仲になった飛龍は彼女との結婚を決めた。同時期、優秀だった彼は二人の兄を差し置いて皇太子に決まっており、特に長兄・宿鵬は雪花に惚れていたこともあって弟を恨んでいた。それでも兄の申し出での決闘にも勝ち、結婚も立太子することもケリは付いたと思っていた矢先、ある事件が起きた。雪花を諦めきれない宿鵬が彼女を襲い殴り殺してしまったのだ。お前なんかを選ぶから、抵抗したからだと嘲笑う兄に罰を下したのは雪花の父だった。だが、当然皇子を手に掛けたものはいくら貴族でも重罰は免れない。雪花の実家・梁家は取り潰しになり親族は地方へ送られることに。その際、飛龍は何の罪もない梁一族がなんとか暮らしていけるよう地方で便宜を図ったが、それでも一族の滅亡は飛龍のせいと恨んでいる輩もいるはず。この事件後、飛龍は皇太子の座から降り、二番目の兄・浩然が皇太子となった。以来、彼はもう武勲を立てるのは止めよう、自分が目立って皇太子になんてなったから妬まれた。もし後に妃が出来たとしてもまた雪花のように殺されてしまうかもしれない。だから寵愛はしない。そう心に誓ったのだった。話を聞いた鳴鈴はその重い過去に絶句。でも、私は死にませんよ、と彼を励ました。案外逞しい彼女を見て、大人しくしていても妬まれ付け狙われるなら、素直に寵愛を見せつけてやると飛龍は開き直り、鳴鈴がたじたじになるほど彼女を溺愛し始めた。漸く初夜を迎え、幸せを体感していた二人。しかし、そんな生活を邪魔するように飛龍に進軍してくる隣国の迎撃を命じられ・・・。外見は幼妻なヒロインが愛を貫きヒーローと幸せになると言うお話。なまじ皇子が多いためにそりの合わない者とは兄弟と言えど、しょっちゅう争っていました。優秀な弟に嫉妬し、想い人を奪われた長兄さんの悔しい気持ちも判らないでもないですが、それが後に多くの人々を巻き込む悲劇を産むことに。雪花さんの死後、彼女の父は恨みを晴らすために宿鵬を殺害。飛龍が便宜を図ったものの梁一族の多くは辛酸を舐めることに。逆恨みした彼らは飛龍の幸せを許せず、鳴鈴を狙いますが、星稜ならともかく王宮に侵入できたのはおかしい。もしや手引きした者がいるのでは?一方、飛龍は出征先で何故か味方に襲われ重傷を負い危機に陥っていました。それを助けたのは第三皇子に頼み込み無理矢理ついて来た鳴鈴。危機を脱した彼は王宮に乗り込み、真犯人を問い詰めます。犯人についてはばらしてもアレなので伏せますが、結局この事件でを機にまた飛龍が皇太子になることが決定。鳴鈴も徐皇太子妃になるのでした。本編はここで終わっていますが、書き下ろしの番外編はその後日談。いつまでも妊娠の兆候が無い鳴鈴に業を煮やし、側妃を迎えるよう責める高官たち。そんな最中、鳴鈴の妊娠が判明して、っていう内容です。結局飛龍は彼女以外の妃を持たなかったが、最終的に7人の子宝に恵まれたと記載されてたので、確かに側妃は不要よね、と思いました。なんちゃって中華ファンタジーであった今作。苦手に思う方にも読み易いんじゃないかな、と。とにかく鳴鈴が可愛い。評価:★★★★★
2024.09.14
コメント(0)
2024年8月刊ベリーズ文庫著者:三沢ケイさん15歳の時に政治の駒として大国王太子のハーレムに送られたアリス。大勢いる妃の中で最下位の扱いを受けて7年。夫である王太子が失脚&ハーレム解散!バツイチ出戻り王女だと陰口を叩かれるアリスに2度目の結婚の打診がー!?相手は氷の国の“冷酷王”と噂されるウィルフリッド。「愛も子も望むな」と言われたはずが、彼の瞳から甘さが滲み出す…!?予想外の溺愛展開に戸惑いまくりのジレきゅんラブ。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アリス=アーヴィ国の王女。 7年間大国のハーレムで最下位の妃として暮らしていた。ウィルフリッド=システィス国国王。水と氷を操る力を持つ。 ヴィクター=ウィルフリッドの叔父。大国・ビクルスのクリス王太子の元に嫁いだアリスは、41番目の妃としてハーレムに入れられた。当時の彼女は15歳。しかし、これだけの数の妃を集めながらも実際に彼が入れ上げていたのは最年長(37歳)のルシア妃一人。大の年上好きのクリスはルシアだけを寵愛し、贅沢三昧をさせていた。当然、他の妃たちは放ったらかし。輿入れした最初の頃は強力な媚薬を用意するなど躍起になっている者もいたのだが、渡りが無ければ使い様が無い。先ず年上好きという時点でクリスより年下のアリスは好みの範疇外。夫に会う機会も舞踏会くらいで、何年経っても結婚したと言う実感は湧かなかった。それでも、ライバルにすら成り得ないと、アリスはルシア以外の妃たちから随分と可愛がられた。給金制のハーレムで最下位の彼女の生活費は少ない。そこでアリスは好意的な妃たちの御用聞きや身の回りの世話などをして小遣いを稼ぎ逞しく過ごしていた。輿入れして7年目のある日。広間に集められた妃たちは、第二王子のエルゴからクリスの廃太子が決定したと知らされた。どうやら、ルシアに入れ込み過ぎて散財しまくったのが問題視されたらしい。新しくエルゴが王太子になるそうなのだが、彼はハーレムの解体を宣言。早々に妃たちは国に帰るよう命じた。クリスとルシアの間には子供も生まれていたが、彼らはビクルス王家が引き取り、ルシアは追い出されると言う。とはいえ、クリスの散財原因が彼女なのだから当然の結果なのだが。国に戻ったアリスを両親と兄夫婦は歓迎してくれたが、7年もハーレムに居て子を授かれなかった王女なんて外聞が悪いことは自分でも承知している。お気に入り以外は論外とばかりにガン無視されてたなんて話、誰も信じてくれないだろう。いっそ、ビクルスでの生活を生かして外交官みたいな仕事をするのも良いかもしれない。ハーレムでは自国の自慢をしたがる妃の多いこと。親身になって聞いているうちに他国の事情や特異な分野なども覚えてしまった。嫁には行けずともこういう形でなら力になれる。アリスはそう思っていた。そんな彼女に縁談が齎されたのは暫く経ってからのこと。北方にあるシスティス国王が是非アリスと結婚したいと打診して来たらしい。願っても無い申し入れだが、両親は浮かぬ顔。訳を尋ねれば結婚相手のウィルフリッドは冷酷王という呼び名があり、先の国王と王太子を暗殺し王に登り詰めた人物だと言う。せっかく帰って来た娘をそんな男の元にやりたくはない。気持ちは嬉しいけれど、渋る父に心配いらないと説き伏せ、アリスはこの縁談を進めて欲しいと頼んだ。話し合いを重ねて半年後、システィス国にやって来た彼女は翌日にはウィルフリッドと式を挙げ、正式に王妃となった。彼は随分と多忙らしく、初夜もすっぽかされて思わず茫然。まさか2番目の夫からもそんな扱いを受けるとは。気を取り直してベッドサイドにあった飲み物を煽ったが、それが酒だと気付いたのは一気飲みした後だった。目覚めると隣に半裸のウィルフリッドがいてビックリ。結婚したのを忘れて悲鳴を上げたことで城内は大騒ぎに。飛んできた侍女や護衛達に謝り倒し騒ぎが収まったあと、ウィルフリッドから今回の結婚に至った理由を聞かされた。彼は、以前ビクルスの王宮舞踏会でちょこまか動き回っては客人の要望を聞き、対応している彼女を見かけ、その気配りと博識さに驚いたのだそうだ。小国の風習にまで通じて何か国語もの言語も理解する頭脳。これは得難い人材だと思い、かの国のハーレムが解体され彼女が国に戻ったと聞いてすぐ、結婚の打診をしたのだと言う。そういうわけで、君を見初めたとかではない。それにこの結婚で愛も子供も望まないでほしい。きっぱりと言われてアリスも内心ショックを受けた。ああ、それで私が選ばれたのね。それに、能力は買ってくれていると言ってたじゃない。黒い噂のある国王とバツイチの王妃。訳ありなのはお互い様。凹んなんていられない。期待されているのだから頑張らないと。以来、アリスはあちこち視察に出掛けては、彼女なりの着眼点で細々とした問題点に着目。ウィルフリッドの補佐をしているヴィクターに資料を見せてもらい、意見をまとめたものをウィルフリッドに提出し目を通してもらっていた。ここに来て一ヶ月、これまでにいくつかの案が採用され、彼女のモチベーションも上がっている。アリスがハーレム時代に懇意にしていた妃の祖国が丁度思案中の技術が得意だったと思い出したのも功を奏した。今ではウィルフリッドだけでなく上層部も彼女の手腕を認めてくれている。ただ、国の将来の為に識字率を上げるべきと貧しい者たちも通える無料の学校案を出した時にはヴィクターに猛反対されてしまったが、貴族にも色々な考えを持つ者がいる。ましてや彼はウィルフリッドの叔父に当たる人物だ。ウィルフリッドに意見を聞いてからもう一度提案してみよう。一方、ウィルフリッドは優秀とは思っていたものの、予想以上の成果を上げ続けているアリスに驚いていた。地頭が良いのはさることながら彼女は性格も良いし愛嬌もある。小柄で可憐な容姿も好ましい。彼女に歩み寄りたい気持ちはあるけれど、思い出すのはあの日亡くなった父と兄のこと。自分の能力が暴走した結果二人を死に追いやってしまった。未だに罪悪感に苛まれていた彼は、アリスが視察からの帰り道で突然の吹雪に襲われたと聞き、部屋を飛び出した。能力で吹雪を消したウィルフリッドはこの事故が元で寝込んだ彼女を心配しつつ、状況があの日と同じであることに疑問を抱いていた。水と氷を操る能力を持つのが自分以外にもいたとしたら。数日後、回復したアリスと話し合い、当時の事件のことを打ち明けたウィルフリッド。彼女も彼の力の暴走とは思っていなかった。それにしても晴天だったのにいきなり吹雪とか不自然すぎるそしてウィルフリッドはふと、ヴィクターが救貧院の地下に水道工事をというアリスの案に難色を示していたのを思い出した。他国の技術を取り入れることが我慢ならないらしい。費用は掛かるが一度作れば便利になし他にも適応するからと説得しても取り合わないので国王権限で案を通したが、当初は使用人に全てを任せているから不便さに実感が湧かないのだと思っていた。だが、叔父もウィルフリッドと同じ能力を持っているとすれば合点がいく。そして叔父の家に招待されたアリスがハーレムで見た媚薬が叔父の部屋にあったのを目撃していた。あの薬は飲むと意識が朦朧とするらしい。あの日の父は正にそんな様子だった。彼はヴィクターが国王と王太子殺害の犯人だと確信し・・・。まぁ、犯人はこの人しかいないでしょうってことでヴィクターが真犯人です。彼は稀有な能力を持ちながら先に生まれたと言うだけで王位に就いた兄を恨んでました。その恨みは消えることなく、ある日、妻の姉経由でビクルスの媚薬を入手。視察先でこっそりお茶に仕込んで兄に飲ませ、意識を失った頃、自らの能力で吹雪を起こし馬車を横転させたのでした。その時、ウィルフリッドが能力に目覚めたことで彼一人生き残ってしまいヴィクターの計画は失敗。幼い王を支えるという名目で国を牛耳る方にシフトチェンジすることに。でも優秀な彼はそう長い事はヴィクターに実権を握らせていませんでした。歯がゆく思った頃、アリスを嫁にしたいと相談され、これは使えると新たな作戦を練ったものの、選民意識が徒になってウィルフリッドに疑いを持たれ罠にかかって御用。ヴィクターの妻の姉があのルシアだったのも負けた原因かな。アリスがいたから芋づる式にあの媚薬のことまでバレてしまったという。結局、やらかしがやらかしなので、ヴィクターは後に処刑。この頃にはお互い両想いだった二人は本物の夫婦になり、アリスの妊娠が判明して本編は幕。書き下ろしの番外編は、妊娠前、ウィルフリッドと夫婦仲よく舞踏会に参加するお話でした。聡明で可愛らしいヒロインに段々惚れて行くヒーローの図がオーソドックスながら良かったです。評価:★★★★☆
2024.09.07
コメント(0)
2024年8月刊ベリーズ文庫著者:花木きなさんOLの美月は彼氏に浮気された上、足を怪我して途方にくれていた。そんな時、警視正の巧と再会。彼は子供の頃からの憧れの人。そんな巧の提案で怪我が治るまで一緒に暮らすことに! しかも、しつこい縁談に困っているという理由で契約結婚を打診され!? 助けになりたいと承諾したら、クールな巧の瞳は熱を帯びていく。「俺のことだけ見てればいい」--溢れ出す激愛に美月の胸は高鳴るばかりで…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 飛島美月=真面目な会社員。失恋直後に憧れの人だった巧と再会した。 早戸巧=警視正。トラブル続きで途方に暮れる美月に契約婚を持ち掛ける。 矢沢=巧の同期で部下。 森麻美=美月の親友。 大塚陽平=美月の元カレ。大手雑貨&日用品販売会社に勤める美月はその日最悪の誕生日を経験した。交際して1年の恋人・大塚陽平が奮発しくれたホテルのディナー。シャンパンで乾杯した直後に、美月はいきなり背後から襟を引っ張られてビックリ。耳元で怒鳴る人物を横目で見るとなんと顔見知りの女性社員・内村双葉で、陽平を浮気者と罵っていた。その内容を聞くに、どうやら陽平は美月と交際しつつ裏で内村とも付き合い彼女の妊娠を機に入籍していたらしい。初めての恋人にとんでもない裏切りをされていたのもショックだが、知らずに不倫の片棒を担がされていたのはもっとダメージが大きい。内村は激怒して人の話を聞かないし、彼女にしてみればすっかり美月も悪者で間女扱いなのだろう。勢いよく突き飛ばされた挙句、シャンパンを頭からかけられた美月は茫然。店員も飛んできて止めても内村の怒りは収まらず、手が付けられない。突き飛ばされた拍子に足首を捻ったようで上手く立ち上がれない彼女に手を差し伸べる人物が。見上げるとスーツ姿の見知った顔。巧さん、と呟いた美月は数年ぶりに憧れの人と再会したのだった。早戸巧は15年前、高校3年生の時に事故で両親を亡くして天涯孤独になった。親権者がいなかったため、弁護士をしていた美月の父が後見人を務めることに。彼が高校を卒業するまでの数か月、父は精神的に不安定であった巧を心配し飛島家で預かっていたという経緯がある。ショックから立ち直った巧は、クラスに馴染めない美月にさり気なく寄り添い、彼なりの言葉で慰めてくれた。以来、巧は美月にとって憧れの人となっていた。そんな彼が大学入学を機に飛島家を出て行き、卒業後は警察学校に入学したと聞いた時は驚いたものだ。彼の両親はひき逃げで亡くなっているから、色々思う所があったのかもしれない。巧は無事に警察官になり、連絡を取り続けている父には警視になったと報告があったと言う。そんな彼にとんでもない愁嘆場を見られ、美月は恥ずかしくて仕方ない。彼は捜査の都合でこのホテルに泊まっていたらしい。同僚と慰労も兼ねてここで食事をしていた所、騒ぎが耳に入り、職業柄暴力沙汰になる前にと見に行くと美月が突き飛ばされシャンパンをぶっかけられていたので驚いたと言う。間に合わなくてすまないと詫びた彼は、美月から事情を聴いて内村を傷害で逮捕出来ると告げた。どう考えても美月は被害者だ。下ろしたてのワンピースは台無し、足首の腫れようを見るに捻挫かもしくは折れているかもしれない。しかし、美月はそれを望まず、内村の気持ちもわかるからと固辞。翌朝、病院に行くと足首の骨にヒビが入っていた。何故か付き添ってくれた巧は眉をひそめた。恋人の私物が大量に残っているので美月は部屋には帰りたくない。しかしこの足では引っ越しするのも困難だ。実家で暫く厄介になるのが一番ではあるけれど問題は母親だ。近々彼氏を紹介すると話していたのに、破局した上に怪我して帰って来たとなればどれだけ悲しむか。とある事情で熟年離婚して以来、精神的に不安定な母を心配させたくない。でも、部屋には戻りたくないしと悩む彼女に、なら足が治るまでうちに来いよと巧が提案。迷惑かけちゃうからと最初は断ったものの、実際の所、彼の申し出はありがたい。出勤ついでに会社近くまで送ってくれるというので、暫く厄介になることに。料理は嫌いじゃないからせめて居候する代わりに弁当を作り夕飯も美月が引き受けた。怪我で数日休んでいた美月が出社すると、同僚達の態度が余所余所しい。態度の変わらない者もいたが、視線の冷たさにかつてない疲労感を味わった。あの日すぐ起こったことを打ち明け、事情を知るる親友の麻美は、美月が休んでる間に内村が困ったことをしでかしてさと休憩中に教えてくれた。怒りが収まらない彼女は美月が夫と不倫していたと部長に訴えたらしい。部長は口が堅いので沈黙を貫いているが、内村が仲の良い社員に愚痴り、それに尾ひれがついて広まり、結果美月は略奪を仕掛けてフラれた性悪女というレッテルが貼られたと言うわけだ。勿論、鵜呑みにしてない人も多いけどねと麻美は言うが、かなり少数派だ。陽平もだんまりを通しているので美月だけが悪者扱い。これは正直堪える。不幸中の幸いだったのは、部長が少数派だったこと。陽平にも厳しく問い質し、独身と偽って交際していたことが判明。美月に非はないと判断されたのだ。但し、陽平は処罰され全く違う部署に飛ばされると言う。この件で後日美月は更に悪者扱いになったのだが、ストレスで高熱を出し寝込んだ彼女を甲斐甲斐しく世話してくれた巧の気遣いのおかげで吹っ切ることが出来た。足もテーピングだけで良くなり、礼をさせて欲しいと話す美月に巧が希望したのは結婚。唖然とする彼女に、彼なりに事情があるのだと言う。役職柄、見合い話が多く下手に受ければ上司の手前、断れずに結婚コース。流石にそれは回避したいのだそうだ。もう婚約者がいて近々結婚すると言えば話も来なくなる。美月も母親に恋人を紹介するはずだったなら俺と交際していたと言うことにすればいい。利害関係が一致するし、美月なら俺のことをよく知っているからと言われ、憧れだった人との結婚に美月の胸はときめいた。陽平のことはあの日幻滅して恋情も既に無い。母も巧のことを可愛がっていたからきっと喜ぶだろう。戸惑いもあったがつい、私と結婚しましょう。そう答えていた。父と別れて以来ふさぎ込みがちだった母・聡子は、美月が巧と結婚すると聞いて大喜びだった。父には巧から報告してもらった。数年前、被疑者の弁護をしていた父は被告人の身内から逆恨みされ2年にも及ぶ嫌がらせを受けた。聡子がうつ病になったのを機に家族にこれ以上害が及ばぬよう離婚という判断をした父に美月は腹を立てた。嫌がらせの方は示談で解決しても家族は元に戻らない。巧も疎遠にしているうちにそんなことになっていたのかとショックを受けていたが、美月が父親に対して蟠りがあるのも判る。入籍して暫く経った頃、社内での美月の扱いも漸く軟化。陽平の方に問題ありと皆も判って来たようだ。針のむしろのような日々を乗り越えられたのは麻美や部長、信じてくれた同僚のおかげでもあるが、やはり巧の存在が大きい。最初は契約婚でも、いずれ彼との子供が欲しい。そう思い始めていた頃、契約書が出来たと見せられた書面に夫婦の営みに付いて何ら書かれていない。「君を絶対に愛さないから安心してくれ」と巧に告げられた美月は愕然。後日紹介された巧の友人・矢沢から、彼が両親の死の影響で人とかかわりを持とうとしていないこと、捜査一課にいる手前命の危険もあることから一生結婚しない気でいるのかと思ったという矢沢は、美月はきっとあいつにとってよき理解者なんだと思うと言ってくれた。巧の絶対に愛さないと言った言葉の意味は分かったが、どうにもやりきれない。麻美に相談すればいざとなれば別れるという選択肢もあると発破をかけられ、決意した彼女は・・・。契約婚ものですが、例に漏れず両片想いです。人生どん底の経験をした巧は、もし結婚しても自分が死んだら残された家族に自分と同じ想いをさせてしまうと思い悩んでいました。しかし、偶然にも恩人の娘であり好意を寄せていた美月の修羅場に遭遇。世話を焼いているうちに彼女となら考えを変えることができるかもしれないと契約という形で結婚を申し込んだのでした。絶対に愛さないと言ったのは同意を得るまではベッドに誘わないと言う意味だったらしく、美月に問い詰められ白状した際、紛らわしいと怒られていましたw確かにこれは誤解されるわ。この間に、巧の両親をひき逃げした犯人も漸く見つかったり、彼の心にも転機が訪れたりしているんですけど、美月が離婚したがっていると思い込んで慌てている様が可笑しかったです。辛い過去がある分色々考えちゃうのは判るんですけどねぇ。二人はじっくり話し合い、契約は止め本当の夫婦になった頃、巧に説得された美月の父も聡子との復縁を決意。双方上手くいって物語は幕。陽平は相応の報いを受けてたけど、個人的に内村さんにも責任は取らせるべきだと思いました。不倫されて気の毒とは思うけど美月は騙されてたわけだし間女憎しと怪我迄負わされ、社内に噂を広める結果になったわけですから。流石にやり過ぎよね。せめてケガさせた謝罪はしなさいよ。評価:★★★★☆
2024.08.27
コメント(0)
2020年11月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん彼氏にフラれたOLの里桜。やけ酒に付き合ってくれた御曹司の響と勢いで一夜を共にしてしまう。弱みを握られた里桜に響が持ち掛けたのは、形だけの契約結婚で…!?やけっぱちの里桜は離婚届を用意した夫婦関係を承諾。しかし、始まった新婚生活は想定外に溺甘で…!?「里桜が欲しくてたまらない」-唇を犯され、独占欲を刻まれてしまう里桜。離婚前提のはずが、高鳴る鼓動を隠せなくて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 七瀬里桜=大手不不動産会社に勤める会社員。恋人にフラれ落ち込んでいた所、 響から契約婚を持ち掛けられた。 相馬響=里桜の勤め先の御曹司で上司。切れ者でワンマンな面もあり、里桜と の契約婚も強引に進める。付き合って2年の恋人を親友に寝取られてしまった里桜は、失恋のショックもさることながら、つまらない見栄を張ったおかげで窮地に立たされていた。あなたにフラれたって、実はもっと条件の良い人から交際申し込まれているから、なんて。なんであんな嘘ついたんだろう。ムッとした元カレから、それなら俺たちの結婚式に連れて来いよと言われ、内心では冷や汗ダラダラだ。だって、いくら何でも酷いじゃないか、結婚も間近だと思ってたのに恋人の親友にあっさり鞍替えとか。しかも、出来ちゃった婚と聞いて気分が悪くなった。それでもやっぱり悔しくて、トイレで一人泣こうと思ったら企画部の上司・相馬響とぶつかり泣き顔を見られてしまった。仕事面では俺様でワンマンな彼だけど、さすがにギョッとして泣いている理由を尋ねて来た。でも頑なに理由を言わない里桜に、業を煮やしたのか。愚痴なら聞いてやると彼の行きつけだと言うバーへ。大して強くないのに口当たりの良い酒をガバガバ飲んだ里桜は漸く響に先程恋人・木内隆二に二股を掛けられた挙句フラれたこと、しかも相手は自分の親友で出来ちゃった婚するんですって、と吐露。木内と言えば住宅事業部の係長だったか。正直、2年も気を持たせておいて恋人の親友に手を出すとは男目線で見ても碌な奴じゃない。結婚してから浮気されるよりはマシだったと思うべきか。結局、その夜は気が済むまで彼女の愚痴を聞き、案の定悪酔いした里桜を介抱する羽目になった響は、後日、かねてより考えていたことを実行に移すことにした。休日、料亭に里桜を呼び出した響は彼女にある提案をした。俺と契約結婚をして欲しいと。話を聞いて唖然とした里桜は当然断って来たが、それで、木内の結婚式に同伴する相手探しは間に合うのか?と問えば彼女は返答に困っている。根が真面目な彼女が、ただ元カレと親友の鼻を明かすためだけに交際できるわけがない。それを見越しての提案だった。大手不動産会社の御曹司で次期社長の自分ならお相手としては打ってつけだろう。それでも渋る彼女に、響は実は自分も並みいる縁談に困り果てていること、だが、ビジネス婚ほど虚しいものはない。だから相手が見つかるまで時間が欲しい。お互い利害関係が一致してはいないか?そう諭され、里桜もそれもそうかと考え始めた。悩んだ末に、彼女は響の提案を受け入れたのだった。二人の結婚話はトントン拍子に進んだ。両家の両親から許可も得て入籍を済ませ、職場にも報告。現在、渋谷に建設予定のショッピングモールの企画で部署は大忙しだったが、契約婚とは言え、里桜は仕事もプライベートでも響をサポートするつもりでいた。次期社長としてアメリカで修業していた彼は良くも悪くもワンマンな面がある。響が赴任した当時はその性格とやり方で部署の空気が凍り付くこともしばしば。そんな雰囲気をいつも払拭していたのが里桜であった。響はそんなこまやかな心遣いができる彼女を気に入り契約婚を申し込んだわけだが、生活を共にすると人となりも一層判って好感度も増して来る。やはり彼女に頼んで正解だった。響も木内の結婚式ではしっかり役目を果たし、後日、奴が経費の横領をしていたこと、その金で女と遊び歩いていたことを人事にチクるという些細な仕返しを代わりにしておいた。しかし、彼女にもメリットだと思われていたこの契約婚は里桜を思いもよらないトラブルに巻き込む羽目に。響に恨みを持つライバル社の御曹司が響の女遊びの写真をでっちあげ、これをマスコミにリークされたくなければ、と里桜を脅し乱暴しようと目論んだのだ。幸い、彼女の異変に気付いた響が乱入して来たことによって事なきを得たが、彼は自分のせいで里桜を危険な目に遭わせたたと猛省。こんな時でもあなたのせいじゃないと健気な彼女に、響は自分の想いを漸く自覚した。ショッピングモールのテナントに響の高校時代の友人・三宅次郎が経営するエステサロンに出店を依頼することになり、里桜も懇意にさせてもらっていた。次郎から最近の響は妻自慢ばかりしているのよと言われ面映ゆくなっていた所、彼女の唇は柔らかいんだとか聞いてられないわ、という話に目が点。飽くまで契約婚なので、その手のスキンシップはしないと言う取り決めもしていた。ので、当然キスも彼とはしたことが無い。まさか、彼に好きな人が出来た?これまた契約でお互い本命が出来たら即離婚という文章が頭の中を巡り、里桜は大ショック。何故なら彼女は響に心惹かれ始めていたから。しかし、全て承知で契約を交わしたはず。里桜は彼のために離婚を決意し・・・。まぁ、これは完全に誤解なんですが。実は里桜への想いを自覚した響は寝ている彼女にキスしていました。当然これは違反なので秘密にしていたものの、ついつい次郎には惚気てしまい、そんなこと思いもよらない次郎がお熱くていいわねぇと茶化してたんですね。しかし、これが彼女に思いの外ダメージを与え、離婚を決意したはいいが、仕事に身が入らず大きなミスをしてしまいます。幸い響のフォローで何とかなったけれど、余所余所しい里桜を見かねて彼から一度距離を置こうと別居宣言されて茫然。次郎も心配し、彼から里桜に探りを入れて貰ったら離婚を考えてると聞いて次郎もびっくり。でも、彼に本命が出来たから辛いけど別れるのと泣く彼女の様子を響に伝えると慌ててすっ飛んできた彼から、キスの件も白状され本命が他でもない自分だったと漸く気付くのでした。その後、二人は契約書を破り、本当の夫婦として一緒に生きることを決め、それから暫くして響が指揮を執っていたショッピングモールも無事に開店に漕ぎ着けます。エピローグでは響の常務就任が内定し、里桜の妊娠報告で物語は幕。この作家さんのベリーズ作品は皆同じ世界線なので、ショッピングモールに出店する店舗やブランドは見たことがある所ばかり。読んでて思わずニヤニヤしてしまいます。評価:★★★★★
2024.08.16
コメント(0)
2023年12月刊ベリーズ文庫著者:あさぎ千代春さん家のために若くして政略結婚させられた莉央。相手は、容姿端麗だけど冷徹なIT界の帝王・高嶺。互いに顔も知らないまま十年が経ち、莉央はついに“夫”に離婚を突きつける。けれど高嶺は離婚を拒否し、まさかの溺愛モード全開に豹変!? 莉央を強引に自分のマンションに同居させ、「お前が欲しい」と熱っぽく愛を囁いてくる。愛のない結婚のはずなのに溺愛される毎日に戸惑う莉央だけど…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 結城莉央=公家の血筋のお嬢様。 契約婚をしたまま放っておかれた夫との離婚を決意する。 高嶺正智=IT企業のCEOで莉央の戸籍上の夫。 天宮翔平=正智の二十年来の親友で副社長。設楽桐史朗=莉央の師匠の日本画家。 税所羽澄=莉央の幼馴染。京都の名家、公家の血筋の結城家の一人娘・莉央は16歳の時にとある人物と入籍をした。事業に失敗した父が援助を持ち掛けられ、背に腹は代えられぬと娘を差し出したのだ。だが、夫の高嶺正智とは別居で実は会った事さえない。これが当初の条件らしいが、いくら別居とはいえ妻の様子が気にならないのだろうか。金食い虫の祖母と父が相次いで亡くなり、援助してもらう必要がなくなった頃には、莉央は26歳になっていた。その日、幼馴染の羽澄を伴い上京した莉央は夫が経営する会社までやって来た。名乗るとすぐに高嶺の部屋に通され、そこにいたのは背の高い30代半ばのハンサムな青年。この人が私の。彼も莉央を見て驚いていたが、それでも当初の予定通り、援助されていた金の一部の返却と離婚届を渡すことに成功。記入してくれたら明日また自分が取りに来るとだけ言うとさっさと部屋を後にした。一方、当の正智は初対面の妻から突然離婚を切り出されて唖然としていた。経緯はともかく、別居の上悠々自適でお嬢様生活を満喫できていたはずなのに一体何が不満なのか。CEOの妻が乗り込んで来たと社内で大騒ぎになっていると聞きつけ、副社長の天宮が飛び込んできたが、話を聞いて次の株主総会でこの離婚話が知れたら拙いと、それまで何とか莉央に思い留まらせろと忠告。明日また来るそうだから説得するとは言ってみたものの、初めて見た妻の美しさが目に焼き付いて離れない正智であった。母から、もうあの二人はいないのだし屋敷を売ればどうとでも生きていけるからあなたも自分の人生を生きなさい。そう言われて独り立ちを決意した莉央。昔から結城家に忠義を尽くしてくれている羽澄の実家・税所家が変わらず力を貸してくれるそうなので、母も一人で質素に暮らすと言う。屋敷は売却しても文化財として残るらしい。ただ名義が結城家でなくなるだけだ。莉央も正智と離婚したらこの東京で仕事を見つけるつもりだ。母は年齢的に無理できないけれど莉央まで税所家に世話になる訳にはいかないのだから。一先ず、東京にいる日本画の師匠・設楽に連絡を取り、今後の身の振り方を相談した彼女は、師匠から本格的に画家になることを薦められた。君には素晴らしい才能があるからと。そして、口約束ではあるが元々、設楽は莉央の婚約者だったと聞いてビックリ。でも、彼女の父が金に困り娘を売るように正智と入籍させてしまった。設楽は海外にファンが多く、今は絵を一枚書けば家一軒買えるほどの値が付く人気画家だ。いずれ、フランスに永住しようと考えてるそうで、離婚が成立したら一緒に来ないかとも言われ、莉央の心は揺れた。翌日、離婚届を預かるために再び正智の会社に行くと、あっさりサインするかと思った彼から離婚はしないと言われ大ショック。何度理由を尋ねてもダメだの一点張り。ここでは何だからと正智が暮らすタワマンに連れて行かれた莉央は困惑。そりゃあ、全額返せてはいないけれど、どうして引き留めるの?押し問答しているうちに何だか疲労感がどっと来て眩暈を起こした彼女は昏倒。慌てた彼が読んだ医師の診断では過労と栄養失調であった。色々気が張って食欲が無く、あまり丈夫ではない莉央は限界だったのだ。正智は莉央と結城家に関して調べるよう天宮に依頼。翌日、目を覚ました莉央は東京で一人暮らしをする部屋を探すからと出て行こうとするので、俺も付いて行くと強引に正智も付いて来た。また倒れられたら大変だ、と。スマホの使い方もおぼつかないので大丈夫かと思ったら、案の定、悪質な不動産屋のおとり広告に引っかかってぼったくられそうになっている。ため息を吐いた正智は部屋が見つかるまで俺の部屋で暮らそうと提案。代わりに食事の支度をしてくれれば良いからと頼まれた莉央は渋々了承。強引でぶっきらぼうなくせに、どこか優しい正智のことが早くも彼女は気になり始めていた。結婚十年目にして初めて一緒に暮らし始めた二人。やたらとスキンシップが多いし、俺に振り向かせてみせると愛を囁く正智の言動に莉央は毎日ドキドキしっぱなし。若い女は宝石や高い服が好きだろう?とどこぞの外商がどっさりプレゼントを持って来た時は帰宅した正智をこんなの要らないと叱った。すると翌日からは毎日花を買って帰宅する。おかげで部屋中花だらけだ。でも絵のモチーフになるから助かる。設楽の案で名を売るには個展が一番だと、彼のコネで三か月後に開催が決まってしまった。実家にある作品は全部出し、後は数点描き下ろすことになっている。実のところ、食事の支度だけでこの広いマンションに暮らせるのはありがたい。その頃、正智は天宮の報告で結城家の実情を知り項垂れていた。結婚を理由に援助さえすれば、さっさと持ち直して楽に暮らせていると思っていたのに。実際は、商才の無い義父と義祖母は贅沢を辞められず、体面を保つために金を使い、家計は火の車。やがて認知症になった義祖母を施設に入れることもできずにその介護のために莉央は大学進学も諦めていた。きっと義母一人に負担を負わせない為だろう。義父と義祖母は去年相次いで亡くなり、漸く生活も立て直せるようになったから、こんな結婚は止めたいと切り出したわけか。正智は、不誠実過ぎた自らの行いに罪悪感を抱いた。別れたいと希望する莉央の気持ちも痛いほど理解できる。だが、一緒に暮らし始めてからというもの、彼女を手放すことは出来なくなっている。株主たちの評判などどうでもいい、自分が彼女と別れたくないのだ。莉央の方もまた、正智と離れ難く思い始めていた。多分、自分は彼を愛しているんだ。今となっては素直にそう思える。いくつか作品を描き上げ、個展を開催する銀嶺堂のオーナーには少々厳しいことも言われたけれど、最終的にはあなたには才能があると太鼓判を押されたことで自信も付いたのも、理由かもしれない。一人の人間として認められる。ずっとそうなりたいと思っていたから。だが、そんなある日、正智と有名女優との熱愛がスクープされ・・・。当然ながら、このスクープは誤報です。この頃には正智は莉央一筋だったので、他に目をくれるはずもなく、写真を撮られたのが彼が以前住んでたマンションで男性が背格好が非常に正智に似ている事から間違われただけでした。でも女優は本命を隠しておきたいらしくだんまりを決め込んだことで、莉央の誤解は解けないまま。失意の彼女に羽澄から連絡があり京都に帰ってきてくださいと言われた彼女は素直に従います。でも、正智は後手に回ってしまった自らの対応に怒りを覚えつつも、天宮に発破をかけられ京都へ。再会した莉央に体を張って誠意を示した正智は何とか許しを貰い、せっかく京都に来たのだからと義母の南美子が一人暮らす結城家へ。そこで、十年前に契約婚を申し入れた経緯を二人に明かすのでした。この理由についてはあんまりばらしてもアレなので、興味のある方は読んでみてください。正智の複雑な身の上や、高嶺家の事情とか色々判ります。あと、姑に娘しか生まないといびられ続けた南美子さんの苦労とかね。いびり続けた姑の世話に、夫は馬鹿みたいに対面のために金を使う。鎌倉時代からの名家の人間がこんな調子じゃ聞いて呆れる。正智から真相を聞いて、どんな事情でもあなたに結城家を選んでもらって良かったという莉央に彼は益々惚れ直すのでした。その後、二人は東京に戻り、夫婦としてやり直すことを決めます。設楽には正智と生きていくことを告げ、外国に行く話を断るも、師弟関係は変わらず。設楽のコネでデビューする若い女性画家を酷評する気満々だった批評家は描き下された彼女の絵を見て考えを改め、好評のまま個展は幕を閉じ、新進気鋭の日本画家として莉央は認められます。当然、正智はそんな彼女を支え仲睦まじい二人の様子が描かれて本編は幕。実は3回書籍化され直している今作。それ毎に足された番外編は本編の後日談が3作でした。相変わらず妻にベタ惚れで、彼女の態度に一喜一憂している正智がなんとも笑えます。天宮さんも大変だなぁ。評価:★★★★★
2024.08.12
コメント(0)
2024年5月刊ベリーズ文庫著者:友野紅子さん高位貴族なのに魔力が弱いティーナ。おまけに極度のあがり症で、社交界デビューも果たせていない。お姉様は魔力も高く、完璧な淑女だというのに…。ひっそりと生きる純粋なティーナに突如魔の手が迫ってくる。救ってくれたのは、最強公爵・ファルザードで…!? 彼と出会って実は自分は「精霊のいとし子」だと発覚! まさかの溺愛と能力開花で幸せな未来に導かれる、大逆転ラブストーリー! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ティーナ=侯爵家の次女。姉と比べて出来損ないだと思い込んでいる。ファルザード=前国王の息子。叔父に王位を奪われ廃太子となった。 マリエンヌ=ティーナの姉。自分が一番でないと気が済まない性格。 ミリア=ティーナが町で知り合った孤児院育ちの少女。 ジェニス=王太子。ファルザードの従弟で彼を毛嫌いしている。皆、何かしらの魔力を持っているこの国で侯爵家に生まれながらも僅かな魔力しか無いティーナ。出来の良い姉・マリエンヌと比べて自分は・・・。優しい両親は姉妹を二人とも分け隔てなく愛してくれているけれど、それでも王妃にすら一目置かれているマリエンヌのことは自慢らしい。話題の中心はいつも姉だった。マリエンヌは今度、隣国の王太子の歓迎セレモニーで得意のピアノを披露するそう。輝かしい功績を残し、社交界の花である姉はきっと良縁に恵まれるだろう。両親の悩みの種は引っ込み思案であがり症の次女のこと。容姿も学業も申し分無いのに、同年代の男性と話すなんて無理!舞踏会どころか女性ばかりのお茶会にすら行きたがらない。少し前に屋敷近くで拾った子猫・ラーラの面倒を見るようになってからは多少は明るくなったものを見て、無理強いはせず時に任せようと判断したのだった。ある日のこと、買い物に出掛けたティーナは孤児院の庭で育てた花を売る少女・ミリアと出会った。言葉遣いは悪いが、仲間想いの彼女を気に入ったティーナは、侯爵邸の庭師直伝の栽培法を伝授。自らも孤児院に通い、花の手入れと販売を手伝うことになった。少々発育が悪く見栄えも今イチだった花はティーナのおかげで見る見る美しく成長し、売り上げも倍増。だが、おかげで彼女の技術は質の悪い輩に目を付けられ薔薇によく似た麻薬草の栽培を知らず押し付けられそうになった所を、組織の足取りを追っていた公爵・ファルザードに救われた。ふと見ると彼の側にはラーラによく似た雰囲気の黒猫。ザイオンと呼ばれた黒猫はラーラに何やら話しかけている風にも見えて微笑ましく見つめていると、ファルザードは何故か思案顔。その後、何かと彼はティーナに会いに来て、終いには孤児院での彼女の仕事まで手伝うように。一方、ファルザードはティーナに自分と同じものを感じていた。ザイオンによれば彼女は間違いなくファルザードと同じく「精霊のいとし子」だ。微々たる魔力だと本人は思っているようだがとんでもない。因みに彼女が連れているラーラは光の精霊。ラーラがまだ幼いのとティーナの自覚が無いだけで現に彼女の育てる植物の生育が異常なのは明らかだった。しかし、精霊のいとし子と世間に知られればその力を欲した者たちによって争いが起こりかねない。過去にも聖女となったいとし子は時の権力者によって不幸になっている。そうならないよう見守るつもりで近付いたのだが、いつしかファルザードはティーナに心惹かれ始めていた。そんな最中、公務の一環で王太子・ジェニスが孤児院を慰問。いつものように栽培に精を出していたティーナも出迎えの列に参加したところ、ジェニスは彼女に精霊の光を見た。こんなところに精霊のいとし子がっ。しかも侯爵家の娘だと言う。だが、本人は自覚無しのようなので敢えてその特別性は知らせず、国王夫妻に結婚したい娘がいると報告。すぐにでも城に迎え入れたいと息巻く息子を諫めた国王は流行り病に倒れた。王の側近達がそんなことをしている場合かと眉を顰める中、しつこくティーナに自分との婚約を迫るジェニス。困り果てたティーナはファルザードに相談したかったが、流行り病の対処のために王都から遠く離れたアゼリアに行っていて連絡が取れない。だが、そんな妹の姿を見て助け舟を出したのはマリエンヌ。ティーナだけでなく自分含め、然るべき貴族家の令嬢達から見極めて判断して欲しいと。いとし子を手に入れるため、怪しまれてはならぬと一先ずマリエンヌの案を受け入れたジェニスだったが、その彼女から妹は貧民街を出入りし、情夫までいるアバズレだと吹き込まれて激怒。ジェニスは罰としてティーナをアゼリアにある重症患者の保養施設、別名・死の館に送ると宣言し・・・。この頃にはいとし子として覚醒を果たしていた彼女はラーラが傍に居たため、死の館でもその能力を発揮。見る見る患者たちの容体も良くなったことで聖女と呼ばれるように。アゼリアに駐留していたファルザードは噂を聞きつけ、件の聖女に会いに行くと案の定ティーナで、二人は無事再会。ここの送られたのもジェニスに求婚されていたものの謂れのない悪評で怒りを買ったからだと説明。でも、アゼリアに来ればあなたに会えると思っていたと告白され、彼も自分の想いを告げるのでした。そして、この流行り病の対処法にもティーナは思い付いており、ファルザードだからこそできることだと伝えます。光の力は癒すことは出来ても病自体は根絶できない。でもザイオンの使う闇の力は病原そのものを亡ぼせるのでは、と。一理あると試してみると効果は抜群。その前から、前王の息子で国の治安に力を入れていたファルザードを王に、という希望が多く、今回の病原体の根絶。ましてや彼が精霊のいとし子だと発覚したことで、病が治った現王もついに退位を決断します。ジェニスはマリエンヌに唆され、彼女に王太子権限を委譲していたのが徒となり、マリエンヌが王室に不満を持ったデモ隊に対して武力行使した責任を問われることに。そもそも妹を貶めるような女を簡単に信じるなよ、とは思いますが後に自ら語っていた様にファルザードへの恐れで焦っていたようです。騒動の真相とこれまでのやらかしが判って毒婦呼ばわりされることになったマリエンヌは、歓迎パーティーで知り合った隣国の王太子を頼り亡命。逃げ切られたかと思いきや、ファルザードの側近に予想外の伏兵が。その人物の尽力によってマリエンヌは罪人として強制送還され罰を受けるのでした。ファルザードとティーナは騒動の半年後に結婚。王籍も戻り、手順を踏んで結婚から半年後に王位を継いで国王に。聖人と聖女の国王夫妻として称えられ物語は幕。姉が全く反省していないどころか、優しいふりして妹を疎んじその存在を抹消したかったと本人に吐露している様がともかく醜悪で、その前に真実を知った両親がマリエンヌを見限ってた風なのも頷ける。こんな人でなしの姉でも嫌いになれないと話すティーナは本当に人が好すぎる。結局、因果応報で立場逆転した姉妹のお話でした。タイトルは完全にラストのネタバレって感じ。あとがきにおまけのSSも掲載されています。評価:★★★★★
2024.08.02
コメント(0)
2024年7月刊ベリーズ文庫著者:田崎くるみさん呉服屋の令嬢・桜花は名家出身のパイロット・大翔とのお見合いに連れて来られる。家業を継いで大きくしたいという夢がある桜花。そのため縁談は断るつもりだったけど…。初対面のはずの大翔は「君以外と結婚するつもりは一切ない」と、なぜか桜花を娶る気満々! やむなく結婚前提の交際が始まって…。「とことん愛してやるから覚悟して」--まさかの溺愛宣言で情熱的に迫ってくる彼には抗えなくて…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 松雪桜花=老舗呉服店「松雪屋」の令嬢。過去のトラウマから飛行機が苦手。 上杉大翔=若手有望株のパイロットで桜花の見合い相手。 松雪栄臣=「松雪屋」の若旦那で桜花の兄。老舗呉服店の娘・桜花は着物をこよなく愛し、日本だけでなく海外にもその良さを広めたいと考えていた。店は3歳年上の兄・栄臣が継ぎ、自分はそのサポートと接客。展示会などのイベント企画なども引き受けると忙しく仕事一辺倒になってしまう。25にもなるのに恋愛経験ゼロな孫娘に親代わりの祖母が嘆いて、だまし討ちのような形で見合いに連れて来られてしまった。卑怯だとごねて帰ろうとしたら、お相手が上得意客・上杉家のお坊ちゃんで会うだけでもと祖母に頼まれて渋々席に着くとやって来たのは上杉氏とスーツ姿の青年。俳優も顔負けなルックスの彼は上杉大翔と名乗り、某航空会社でパイロットをしていると言う。どう見ても引く手数多なタイプだったので、そちらもおじいさんからのゴリ押しだったんですか?と冗談めかして尋ねると、答えは予想外なもので是非にと彼の方から申し込んだと聞いて驚いた。大翔は問題ないようなら結婚を前提に交際したいとグイグイくるので、一先ず考えさせてくださいと返事は後日伝えることに。とはいえ、あの押しの強さで連絡先まで交換する羽目になり、以降毎日おはようおやすみコールが来る。両親が飛行機事故で亡くなって以来、飛行機がトラウマな彼女にとってパイロットとの結婚は厳しいかと思っていた。だが、操縦席から見えるオーロラの素晴らしさを語られ、実際の写真を見せられると何故だか興味が湧いて乗ってみたい気にさせられる。どういうわけだか、彼が語る飛行機の話は聞いてて心地よいし、以前は見るのも嫌だった旅客機を見ても怖くない。それに今みたいに何かといえば飛行機について語る男の子がいたような。でも思い出そうとすると酷い頭痛が襲ってきて不安になる。そんな彼女に一途な思いを寄せる大翔は、実は桜花の幼馴染で幼いながら結婚の約束を交わしていた仲だった。だが、残念ながら桜花はあの不幸な事故によって両親と記憶の一部を失ってしまった。精神的なショックによる記憶障害は、パイロットや飛行機というワードをよく口にしていた大翔のことまで封印してしまい、見合いの席で初対面ばりの反応をされた時は悲しくなった。しかし周囲の後押しによって外堀は埋まりつつあり、最初は結婚なんてと渋っていた桜花も、最近はデートに誘えば随分嬉しそうでホッとしている。妹に対して過保護な栄臣から大翔の仕事ぶりが観たいと桜花が自ら羽田に行ったと聞いた時は驚きつつもトラウマを克服しつつあるのを知って嬉しくなったが、その夜、意気消沈して帰宅したと連絡が来てビックリ。喧嘩でもしたのかと聞かれても心当たりが無い。不思議に思っていると、最近やたらと馴れ馴れしくしてくるCAが、桜花に大翔に近づくなと追い払ってやったと報告して来たので温厚な彼にしては珍しくCAに激怒。どうやら思い込みの激しい性格の様で、以前、困っているところを助けたら自分に好意があると勘違いした挙句恋人気取りだったようだ。この調子で、私の恋人に近づくなと責められれば桜花も勘違いして当然か。事の経緯が判明したので桜花に事情を話し、何とか誤解は解けたが、このトラブルで彼女も恋心を自覚したのだと告げられ、晴れて二人は恋人同士に。しかし、二人の仲が進展するほど、桜花は頭痛によって体調を崩すように。フラッシュバックするある男の子との思い出。栄臣たちに報告すると、彼女は初めて自分が記憶障害だったことを教えられた。だが、自ら思い出さないと意味が無い。あの男の子が大翔のことなら思い出したい。桜花はカウンセリングに通うことを決意し・・・・。【極甘婚シリーズ】第3弾。架空の町・ベリが丘が舞台のお話ですが、この辺はあまり気にしなくて良いです。ってか、この設定必要?と思わないでもない。初恋同士のカップルが大人になって再会。でもヒロインは両親の死のショックで記憶障害を起こし、彼のことを忘れていました。でも大翔と接するうちに再び恋をするように。次第に記憶が戻り始めるも、頭痛に苛まれ中々思い出せない。でも真実が知りたいのだと桜花は治療を受ける決意をし、その意を汲んだ大翔は彼女が望むまま、自分が副機長を担当するロンドンへのフライトに桜花を招待。パニックを起こすかと思われたこの試み、周囲の心配をよそに彼女はトラウマを克服。外国にも行けることになったので、かねてより話が出ていたロンドンでの着物セレクトショップに桜花が携わることが決まります。この頃には婚約していた二人でしたが、以前からの彼女の夢を後押す形で遠距離恋愛に。数年後、日本に戻った桜花が大翔と結婚式を挙げて本編は幕。書き下ろしの番外編は、二人の新婚旅行エピでした。コアラの抱き心地の良さがクセになるらしいですが、一度抱っこしてみたいです。評価:★★★★☆
2024.07.25
コメント(0)
2017年7月刊ベリーズ文庫著者:pinoriさん平民の血を引く王女・クレアは、他の王族から疎まれ城の塔に幽閉されていた。ある日、王宮は隣国の奇襲にあい、クレアは謎のイケメン騎士・シオンにさらわれ、隣国の城に軟禁されてしまう。捕虜なのに、なぜか大事に扱われ甘く迫ってくる彼に翻弄されてばかり。しかも、騎士だと思っていた彼の正体は、実は王太子だった!?殿下のご寵愛はますます加速していき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 クレア=テネーブル王国王女。 平民の血を引いている事から長らく塔に幽閉されていた。 シド=グランツ王国第一王子で騎士団長。 クレアを見初め自国に連れ帰った。 ガイル=クレアの護衛騎士。 ラモーネ=グランツ王国第二王妃。 ルイス=シドの異母弟で第二王子。テネーブル王国の王女・クレアは、王宮近くにある塔で幽閉同然の暮らしをしていた。国王のお手付きになり一応第三王妃という身分を得ながらも母は平民ということで、後に生まれたクレアも王族扱いされていないからだった。そんな母はふとした折に娘にこんな生活を強いていることを詫び、数年前病を患い亡くなった。一人残された彼女は、今は日がな読書と刺繍に明け暮れる日々。それでも日に三度食事は貰えたし希望すれば本も刺繍糸も差し入れてもらえる。護衛のガイルによれば市井の民たちに比べればここでの生活はかなりマシなのだそうだ。そして、民の不満が爆発寸前だと言うことも。そんなある日のこと、圧政に耐えかねた民たちが王宮を襲撃。塔にも火が放たれたがシオンと名乗る騎士によって負傷したガイル共々クレアは保護され、隣国グランツ王国へ。ここでは専属侍女まで付けられ、故郷に居た頃よりお姫扱い。彼女はその厚遇ぶりに戸惑うばかり。侍女・シルヴィアによればそれもシド王子の温情によるものだと言う。シド王子はテネーブルの民に手を貸し、クーデターは成功をおさめ、国王一家は国外追放となったと聞く。しかし、国内は未だ不安定の為、暫くはグランツ王国の支配下になるらしい。そのため、テネーブルの民の大勢がこの国に避難して来ている。シオンの説明によって現状を把握したクレアは、自分がのうのうとここで保護されていいのかと疑問に思っていたが、あの日以来毎日顔を見せに来るシオンとのやりとりはなぜか心地よく、戸惑いもあったけれど、クレアもここでの生活に慣れつつあった。シオンにテネーブルでの暮らしぶりを聞かれ、血統主義の王妃とその子供たちに母共々冷遇されていた事、王族扱いされていなくとも国王の血を引いている以上いざという時はその責務を果たすよう常々言い含められていたことなどを話すクレアに対し、彼は痛ましい表情を浮かべ、君はもう自由になっていいんだと告げた。しかし、この城にテネーブルの王女が匿われているという情報がどこからか漏れ、王国にいたテネーブルの民たちから非難が殺到。矢面に立たされたクレアを救ったのは自分こそがあのクーデターに手を貸したシド王子だと名乗ったシオンだった。彼はクレアを自分の婚約者だと言い、何人も彼女を傷付けることは許さないと宣言。大恩ある王子の不興を買うことを恐れ、民たちは一旦は引いたものの、一ヶ月近くバレなかったと言うのに何故今になって騒ぎになったのか。この騒動後、シドは自らの事情と王位継承争いにより何度も第二王妃に暗殺されかけ女性不信であることを明かした。そしてそんな自分の認識を変えてくれたのがクレアなのだとも。シドからの告白を受け、ここに来て以来ずっと感じていた胸の痛みの理由に思い当たったクレアは彼の気持ちを受け入れたのだが、息子を王位につけるべくシドを邪魔に思う第二王妃・ラモーネがクレアに接近。テネーブルの姫がシドの妃になるのは彼の立場を悪くするとクレアを脅し・・・。王族扱いされなかった王女と王位継承権で揉める大国の王子との恋物語です。今作の悪役ポジとなるラモーネ王妃は、身体が弱くシドに比べると凡庸な息子・ルイスの保身のために何としても王位に付けたかった。行き過ぎた母親の愛は息子をも追詰め、シドは何度も暗殺の憂き目にあったことで女性不信に。でも彼はクレアと出会ったことで、認識を改めるのですが、ラモーネは愛する者が出来てさらに強くなったシドが疎ましくて仕方ない。そこで考えたのがクレアと引き離して彼の弱体化を図ることでした。ラモーネからの脅迫でシドの為に身を引こうと決意したクレアですが、その前に何度も彼を傷付けたとしてラモーネをボコったクレアが男前過ぎ。結局、企みがバレてクレアは連れ戻されるも、ラモーネの言う通りシドとクレアとの結婚は外聞が悪い。そこで考えたのはテネーブルの王女の存在を消すこと。クレアはリリィと名を変え、王族ではなく一人の女として生きることを決め本編は幕。サイトでの連載はここで終わってるのでラモーネとの決着がついてないままでした。が、書籍化に当たり、後日談というか形でその後の顛末が描かれており、ラモーネの息子・ルイスがクレアと出会い、その心情を語っています。この子も母親の暴走で色々嫌な目に合っていた分気の毒な子だったけど、愚痴る彼に対してのクレアの言葉が正論ながら辛辣過ぎてルイスも面食らっていました。でも、彼女の言葉で目が覚めたのかルイスは母を諫め、自分は王にはならない、シドの補佐をしたいのだと宣言。こうして長らく続いていたグランツ王国の王位継承争いは幕を閉じるのでした。可愛い我が子にここまで言われちゃ、お母さんも諦めざるを得ないよね。シドは父である国王の許可を得て、正式にクレアにプロポーズして物語は終わっています。ザ・王道な展開なのと、健気ながら実は図太いヒロインが良い。評価:★★★★☆
2024.07.22
コメント(0)
2024年7月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん都心を離れてオーベルジュで働く一華。客であるエリート外交官・神木の案内係をするうちに彼に惹かれていく。そんな彼から3ヶ月限定の妻役を頼まれ…!? 失恋に落ち込むが、彼を助けたい一心で引き受けることに。いつわりの新婚生活では、甘く守られる日々に想いが膨らむばかり。一方の神木も密かに独占欲を募らせていた。「もう抑えられない」--いつわりの関係の裏には深い愛が潜んでいて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 岸本一華=元一流ホテルのフロントクラーク。 理由あって都会を離れて芦ノ湖のオーベルジュで働いている。 神木雅也=外交官。一華の仕事ぶりと人柄を気に入り、ある依頼をする。 岸本広夢=パイロットで一華の兄。 エリン=イギリスの政治家の娘。神木に結婚を迫る。芦ノ湖にあるオーベルジュのスタッフとして働く一華は真面目で努力家。2年前まで同系列のホテル・アルカンシエルのフロントで働いていたのだが、同僚へセクハラをする顧客に意見したことで恨みを買い、その嫌がらせの延長で冤罪事件にまで発展。想像以上の騒動となって当時はマスコミを賑わせた。そんな彼女を家族が献身的に支えてくれたが、精神的に大ダメージを受け退職を決意したところ、アルカンシエルの現社長・八坂がこのオーベルジュに配置転換してくれたのだった。そんなある日のこと、八坂の友人で外交官をしている神木雅也が、今度来日するエルサルバドルの要人をこのオーベルジュでもてなしたいと下見に訪れた。八坂のお墨付き、一華の協力を是非、と話す彼はガタイは良いが当たりが柔らかくハンサムな青年だった。英語だけでなくスペイン語まで堪能な彼は尊敬に値するし、何より嫌味な所が無い。神木の相談によれば、ベタでも外国人が喜ぶプランにしたいとのことで地元で美味しいと評判のかき揚げの店や陶芸教室、芦ノ湖近辺のおすすめポイントなどいくつかPU2泊3日の予定ならば詰め込み過ぎない方が良いかと思って提示すると、彼も賛同してくれた。下見にも付き合うと二人は意気投合。男らしい彼に一華が好意を抱き始めた頃、神木は東京へ帰って行った。それから暫く経って、エルサルバドルから要人夫妻が来日。神木が案内と通訳を務め、一華と二人で考えたプランは予想よりも好評で彼らからもお褒めの言葉を貰い、満足の行く仕事となった。この成功が多少なりとも一華の自信を取り戻す結果となり、八坂から東京へ戻って来るよう打診され、都内のオーベルジュのコンシェルジュの話を引き受けた。都会はまだ少々怖くもあるが、次の勤務地であるオーベルジュ「桜月夜」は会員制。富裕層ばかりなのでアルカンシエルよりも客層は良い。事件以来すっかり過保護になった兄の広夢は心配していたけれど八坂の気遣いに感謝しつつ東京に戻った一華は、あれ以来連絡先を交換していた神木から祝いだと食事に誘われた。彼は八坂から当時のことを聞いたらしい。逆恨みの延長で犯罪者扱いされた一華の気持ちはいかばかりか。優秀故に八坂が彼女を手放したくなくて地方へ逃がしたのも納得ができる。神木もまた一華に強く惹かれており想いを告げようとしていたが、いざ彼女が受け入れてくれたとて結婚ともなれば仕事を辞めさせることになる。海外転勤に社交、外交官の妻はそれだけ大変だからだ。八坂にも難色を示されたこともあり、一先ず現状で困っていることで一華に協力を仰ぐことにした。俺の妻のフリをして欲しいんだ、と。エルサルバドルの前に赴任していたイギリス滞在時に、神木は現地の政治家の娘・エリンからしつこいほどのアプローチを受けて困り果てていたと言う。好きな人が居るから無理だと断り続けたが彼女は諦めない。急遽エルサルバドルに行くことになって何とか逃げられたものの、任務が終わって暫く日本勤めが決まるとエリンが今度来日するらしい。数か月ほど滞在してその間じっくり彼を落とす算段なのが見え見えで神木は決断を迫られている。非情だと思われても手酷くフるのが良いのだろうが、エリンの父はかなり外交に影響力がある人物のようで、下手に怒らせるわけにはいかない。そこで自分は帰国後に恋人と結婚しましたと言い張り何とか諦めさせたいのだと。のっぴきならない状況に協力するのは吝かではないが、神木が好きなだけに複雑な心境だ。だが、期間限定のフリとはいえ彼の妻役が出来る。迷った末に彼女はその頼みを引き受けたのだった。神木の実家が所有していると言う一軒家で同居を始めた二人。エリンも予定通り来日し、彼のパートナーとしてパーティーに出席した一華は案の定、彼女に敵視された。ワインをぶっかけられて神木は厳重抗議したが、一華が会員制のオーベルジュのコンシェルジュだと知るや知人の大使の伝手を使い客としてやって来て・・・。このエリンさん、実は神木が好きなわけではなく、自分を棄てた婚約者への当てつけで彼に付き纏っていたんです。だからこそ、その思い通りになるのは違う。一華も同意見で、早速オーベルジュに対して嫌がらせをしてきたエリンに彼女も抗議。神木も本来の会員である特権大使にエリンの所業をチクったことで、大使が激怒。彼女は桜月夜からチェックアウトせざるを得なくなります。その後、何の音沙汰も無いので諦めたのかとほっとしたのも束の間、問題が解決してしまえばこのかりそめの妻役も終わり。彼と離れ難くて一華は思い悩みます。一方、神木は八坂や、彼女の兄・広夢に根回しして一華と結婚したいと相談。まぁ本人が納得するなら退職するのも一緒に外国に行くのもいいんじゃないの?(意訳)と何とか同意を得ていました。こうして先に外堀を埋める周到ぶりは仕事柄なんでしょうか。エリンの方も、彼女を棄てた婚約者がクズなんであってあなたまで一緒にクズになる必要は無いと一華に諭され、二人にこれまでの行動について謝罪。イギリスへとエリンが帰ると、神木は自分の想いを語り一華にプロポーズするのでした。危険な国に行くこともあると言うので、娘もだけど夫になる君のことも心配と一華の両親に言われた神木は自らの身も守ることを約束。八坂たちに惜しまれつつも退職した彼女は一年後、彼と共にイギリスへ。今ではすっかり仲良くなったエリンの薦めでイギリスの教会で式を挙げる二人の姿が描かれて幕。この作者さんのお話(ベリーズ、マカロン)は皆どこかしらと接点ありまして、一華のお兄さんの広夢さんは「極上パイロットはあふれる激情で新妻を愛し貫く」のヒーローです。(感想記事UP済み)冤罪事件で傷付いた妹を支えた彼は大の愛妻家でもあり、↑のヒロイン・鞠花さんは名前だけ登場。スピンオフってだけでなく、世界線が一緒なだけにニヤリとできる場面も多いのが良いです。もう一人の重要人物・アルカンシエルの社長・八坂さんのお話はまだ読めていないので、探さないと。評価:★★★★★
2024.07.21
コメント(0)
2024年6月刊ベリーズ文庫著者:吉澤紗矢さん幼い頃に母を亡くした美紅。親戚の家に引き取られたが歓迎されず、肩身の狭い思いをして暮らしてきた。使用人のように働かされていたある日、財閥一族の後継者・史輝の花嫁に指名され…!? 実は彼は、美紅にとって初恋の相手。身分差婚だと周囲の反対に遭うが…。「俺にとって大切なのは、君の幸せだけだ」--良き妻であろうと懸命に振る舞う美紅を、史輝は一途な深い愛で包み守ってくれて…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 京極美紅=幼い頃に母を亡くし、親代わりの伯父夫婦から虐げられていた。 仕来りにより次期当主・史輝の妻に選ばれる。 京極史輝=旧財閥・京極グループの跡取りで美紅の夫。 笛吹令華=美紅の伯母。とある理由で美紅を恨み毛嫌いしていた。笛吹百合華=美紅の従姉。母親に似た気質で同じく美紅を嫌っている。結城紗希子=京極家に嫁いだ美紅付きの使用人。笛吹美紅は、10歳の時に事故で母を亡くして以来、母方の実家・笛吹家で世話になっている。だが、伯父夫婦は母を嫌っており、娘の美紅のことも厄介者として虐げ、高校卒業後は使用人として扱った。令華は特に当たりがキツく、罵声を浴びせらるのもしょっちゅうのこと。ヒエラルキーの頂点である本家・京極家直系のお嬢様なのもあって伯父ですら頭が上がらない。娘の百合華と二人、美紅を苛め抜いていても止める者は誰もいなかった。この家に引き取られて13年。伯父に呼び出された美紅は、本家の跡取り・京極史輝に嫁ぐよう命じられた。旧財閥グループのトップを務める京極家の総帥は、分家の令嬢を娶らねばならないと言うしきたりがあった。本来ならば歳周りからして百合華が適任なのだが、母親が令華とあって血が濃すぎるとして除外され、もう一人の笛吹家の令嬢・美紅に白羽の矢が立ったのだった。私が史輝くんの妻に?お互いの母親同士が親友で、幼い頃はよく遊んだ彼は美紅にとって初恋の人だった。伯父の家に引き取られた後は立場をわきまえろと令華に恫喝されて会えなくなって以来疎遠になっていたのに。令華たちは最後まで反対していたが、本家の総意ということで流石に伯母の意見は通らず、美紅は多忙の中わざわざ訪れた史輝に促されて早々に京極邸に居を移すことに。現当主・隆志の命により、入籍と内輪の披露宴は数日中に行われ、晴れて彼女は京極美紅になった。新婚でも史輝は忙しい様で会えない日が続いたが、身の周りの世話をしてくれることになった使用人の紗希子とは歳も近く、随分と打ち解けた。古参の使用人たちに色々指導されながら、総帥の妻としての勉強に励む美紅。その頃には漸く史輝も仕事がひと段落ついて、彼女をデートに連れ出すと、この結婚の真意を語った。まだ子供だった彼は美紅の窮状を知りつつも何もできなかった。令華は未だに影響力があって横やりを入れればもめ事になる。兼ねてより美紅の母親から娘を頼むと言われていたこともあって、模索した結果、自分の妻に迎え入れると決めたのだと言う。それ以前に、君が好きだったからなのもあると告げた彼に、しきたりから適当に決められたわけではないと知りホッとした。周りからどう言われようと幸せになろうと二人は誓い、以降仲睦まじく暮らしていた。入籍して暫く経った頃、女性限定の催しを開いた美紅は、案の定、百合華に絡まれ悪し様に罵られてしまった。間に史輝が入って大ごとにならずに済んだが、令華と二人何やら気になることを言っていた。美紅を貶めようとアレコレ画策しているようで、紗希子の協力を得て注意をしていたけれど、最近の体調不良から美紅は出先で昏倒。目覚めると、介抱してくれたらしい見知らぬ男性が傍に居た。その場は礼を言ってすぐ別れたが、後日鬼の首を取ったかのように令華たちが、美紅の不貞を訴え始めたのだ。証拠だと言う写真を見るとあの時の男性に抱えられた自分の姿。まさか彼もグルだっとは。事実無根だと隆志には話したが、令華の影響力が強すぎて徐々に美紅は追い詰められて行った。間の悪いことに史輝は海外出張中。実は体調不良の原因も妊娠していたからで、早く彼に直に伝えたかったのに。このままでは無実の罪で離婚させられそうな雰囲気だ。一方、史輝はこれまでの令華の横暴と身勝手ぶりを許すわけにはいかないと、極秘に調査を進めていて・・・。割と序盤から夫婦仲は良かったので、夫という心強い味方がいた美紅は、総帥の妻として見くびられてはいけないと卑屈な性根を変えるべく努力していました。しかし、史輝の留守中に令華たちの罠にはまって絶体絶命の危機。そこに颯爽と現れたのは急ぎ帰国した史輝。隆志は血の繋がらない妹の令華に惚れられ、そんな彼女の狂気から逃れるために、笛吹家に嫁がせていました。格下の家に嫁に来た令華は不満爆発。我儘放題していたら義妹(美紅の母)に窘められ、腹をたてた令華によって美紅の母は追い出されていたのでした。行く場を亡くした母を、もう一つの分家・結城家が匿い、そこの長男と恋に落ちた母は美紅を身籠るも、またもや令華の介入によって長男は事故死。母がシングルマザーになったのも元を正せば全部令華のせいというとんでもない性悪ぶり。まぁ、引け目があって甘やかしてた史輝の父も良くないんですが、こんなの野放しにしてた罪は重い。息子に諭され、隆志は令華と不倫のでっち上げに関わった百合華、妻の権威をかさに着て多額の横領をしていた笛吹からすべての権利を取り上げると宣言。自らも責任を取って総帥の座を降りるのでした。厄介者達が一掃されたことと、美紅の身の上の真実も明らかとなったことで彼女を悪く言う者はいなくなり、妊娠したことを告げると史輝は大喜び、実の父の墓参りに行く彼らの様子が描かれて幕。書き下ろしの番外編は本編の後日談。無事長女を出産し、紗希子の手を借りながらも子育てに奮闘する二人のエピソードと、父親の実家・結城家のお話。評価:★★★★☆
2024.07.03
コメント(0)
2024年6月刊ベリーズ文庫著者:にしのムラサキさん世界的企業で社長秘書を務める心春。社長の玲司は冷淡、冷血、鉄仮面…などと言われているが、部下思いで優しい一面も。心春は彼を心から敬愛していた。秘書として彼に見合う縁談相手探しに奮闘していたある日、「結婚したいのは君だ」と突然求婚される! プライベートでも彼を支えられる!(嬉)と思っていたのに、なぜか甘い新婚生活が始まって!? 「もう逃がさない」溺愛漬けの毎日に陥落寸前です(汗) ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 森下心春=社長秘書。崇拝していた玲司から求婚され結婚した。 本城玲司=世界的大企業のCEO。妻を溺愛している。 浦田紗彩=心春の先輩秘書で友人。 本城誠司=玲司の兄。 新原乃愛=心春の高校時代の同級生。世界的半導体メーカーの社長・本城玲司の秘書をしている心春は、玲司に心酔し崇拝していた。元々カッコイイ人だなとは思っていたが、その印象がガラリと変わったのは3年ほど前のこと。営業部にいた心春がトラブルに巻き込まれ、精神的に追い詰められていた時、助けてくれたのが当時副社長であった彼だった。一見クールに見えても社員の窮状を見逃さない。その時から玲司は心春にとってのヒーローであり尊敬するべき上司で、最高の推しとなったのだ。その後、優秀なサポート能力を買われて社長秘書に抜擢されてからも変わらない。そんなある日、玲司の母である会長に呼び出された心春は、息子の支えになってほしいと頼まれた。言われずとも一生尽くす所存ですと答えると会長は息子の不憫さを嘆いていた。何はともあれ、今夜は玲司から二人で慰労会をしようと高級レストランで食事に誘われている。終業後、やって来た店の雰囲気も料理も最高で、わざわざこんな私の為にと感動に打ち震えていると、玲司から突然のプロポーズにビックリ。生涯支えてくれるつもりなら俺と結婚してくれと再度言われて、つい自分などがお役に立てるなら、と承諾してしまった。翌日になると、秘書課では二人の婚約が話題になっていて、浦田からは社長の態度で好意に気付かないあんたも大概に鈍いとからかわれた。どうやら、傍から見ると何とも判り易い二人だったようで、かなりヤキモキされていたらしい。知らぬは本人ばかりなり。しかし、過去のトラウマから自己肯定感の低い心春はイマイチ実感が湧かなかった。出来の良い兄・誠司にずっとコンプレックスを抱いていた玲司は、心春との出会いによって自分に自信を持つことが出来た。未だに兄とは蟠りがあるけれど、自分のことを世界一カッコイイと言い、的確なサポートをしてくれる心春にいつしか想いを寄せていた。が、慕ってはくれているようだが、浦田が言うには玲司からのアプローチも推しからのファンサだと思っている節があると聞いて愕然。見かねた母がそれとなく心春に玲司との結婚を打診したようだが、勘違いしてお似合いの令嬢のPUをして来たので驚いたと言っていた。余計なことはしてくれるなと母に釘を刺し、遠回しに言っても通じないと彼女にプロポーズして想いを告げた。トントン拍子に話は進み、心春の夢だと言うスロベニアで式を挙げ、一軒家で暮らし始めた二人。推しとの生活はドキドキの連続だが、庶民の自分が彼の妻なんて務まるだろうかとプレッシャーもある。だが、玲司から改めて君が良いんだと言われ、漸くこれが心酔や尊敬でなく恋心であると自覚した心春は尊敬している気持ちは変わらないものの、愛する人を支えて行こうと決意。その頃、営業部では、途中入社の女性社員がとんでもない成績を叩き出したと話題になっていた。優秀な人もいるものだなとその社員の名前を見た心春に苦い記憶が蘇った。それはかつて彼女を心無い言葉で傷つけた友人の名で・・・。自称・サバサバ女の乃愛は、友人面をしながらも心春といい雰囲気だった男子を横取りしたり、嫌味を言っては彼女を落ち込ませる存在でした。おまけに玲司を狙ってるようで気が気でない。心春の自己肯定感が低いのも、偏にトラウマ級となった乃愛からの言葉のせいで、当時のことを聞いていた玲司も乃愛に悪印象を持ちます。しかもトップ成績についてもどうもキナ臭いと同じ営業部の藤木からも進言があり、浦田の協力も得て裏で調査を始めた所、開始早々不正の片りんが見つかってこれは黒だと本格的に聞き取りも始まります。一方、心春のおかげで長年蟠っていた兄弟が和解。お互い誤解があったとして、徐々に打ち解け始めた頃、乃愛の調査も完了。嫌味な所もあるけれど勘違いであって欲しいと願っていた心春はかなり悪質な元級友の手口を知って心を痛めるのでした。高校時代、インターハイ出場も決まっていた陸上選手の心春は、その直前に階段から転落して足を痛め引退を余儀なくされていました。マネージャー業が思いの外性に遭い、サポートの方向いてると自覚したのもその頃。乃愛は彼女を気遣い励ましてくれた。だから嫌いになれなかったという心春の想いを踏みにじったと玲司は激怒。浦田と藤木たちの調査結果により乃愛の処分が決まります。そして、あの日心春を階段から突き落としたのも乃愛だと判って、本当にクズ女だなと。あちこちの会社でやらかしてるので賠償金が凄いことになりそうだからいい気味。事件が落ち着いて2年くらい後、長男・瑛司が産まれ自分は箱推しなんだなとしみじみ思う心春と相変わらず妻LOVEな玲司の様子が描かれて本編は幕。書き下ろしの番外編は本編の後日談。事件直後から約10年後のお話で、本編ラスト間際でもっと走りたかったと溢す彼女の為に玲司が薦めたロードバイクに思いの外ハマった彼ら。家族で大会に出るほどにまでなっていて、という日常の一コマでした。中盤まではかなりコメディ調だったんですが、乃愛の登場で一気にシリアスに。揺るがない玲司の愛の力で心春が過去を乗り越えるという、王道展開が良いんですよねぇ。評価:★★★★★
2024.06.26
コメント(0)
2021年7月刊ベリーズ文庫著者:美希みなみさん大企業の常務・祥吾に片想いをしていた秘書の紗耶香。一夜の過ちをきっかけに体だけの関係に。ところが彼から一方的に関係を解消され、そんな矢先に妊娠が発覚!?捨てられたと思いこんだ紗耶香は赤ちゃんをひとり産み育てることを決意する。しかし社長となった祥吾と再会すると、独占欲露わに結婚を迫られ…!?空白の期間を埋めるような激愛に、紗耶香の心と体は再び熱を帯び始め…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 立花紗耶香=大手食品会社の専務付き秘書として働くシングルマザー。 東和祥吾=会社社長。紗耶香の元カレ。 立花瑠偉=紗耶香と祥吾の息子。 大村蓮人=紗耶香の上司。食品メーカーの秘書課で働いていた紗耶香は、担当する常務・東和祥吾と恋人関係にあった。でも彼は大企業の御曹司で、いずれ社長に就任する人。将来どうするつもりなのか怖くて聞けないでいたある日のこと、紗耶香は自分が妊娠していることに気付いた。彼にもこのことを伝えないと。しかし、丁度その頃、社内ではライバル社への情報漏洩の調査のため、ごたついており祥吾はその対応に追われなかなか話す時間が取れないでいた。そんな頃、入社以来親身になってくれていた先輩秘書・結城から、祥吾が近いうちにどこぞの令嬢と結婚するという話を聞かされ頭の中は真っ白に。その上、いきなり秘書課から資料室に飛ばされ、意味が判らない。どういうことなのか祥吾に聞こうにも一切連絡が取れず、これが彼の答えなのだと知った。人事部からはさりげなく退職を薦められ、訳が分からないまま紗耶香はひっそりと退職。実家に戻った彼女は両親に全てを打ち明け、後に生まれた息子と共に暮らしていた。あれから約5年。息子の瑠偉はもうすぐ4歳。両親がお迎えに行ってくれるので紗耶香は3年ほど前から、以前の勤め先と同じ業種・SHOUWA食品に中途採用され、今は専務の大村付きの秘書として働いていた。が、その日、イベントプロジェクトを提携するとして、東和食品から社長が訪れていた。東和と聞いて嫌な予感がしていたら予感は的中。祥吾が社長として現れた。もう無関係だと知らない人物のように接していたけれど、別れ際いきなり手を握られてビックリ。さすがに大村がセクハラですよ、と諫めていたが、祥吾の態度はどうにも解せない。その後、大村に祥吾とのことを聞かれ、素直に事情を話すと、プロジェクトの時だけ外れてもいいと言ってくれた。でも、ただでさえ勤務時間なども便宜を図ってもらっているのもあって大丈夫だとだけ告げた。数日後、瑠偉と共に公園を訪れるとそこには祥吾が。彼は瑠偉に自分が父親だと告げ、あっという間に息子と仲良くなると、紗耶香の両親への挨拶と謝罪を望んだ。祥吾が瑠偉を抱いて離さず、このまま連れ去るのではという不安もあって渋々許可すると、持ち前の人当たりの良さであっさり両親を懐柔。今まで離れていたのは誤解があったせいだと真摯に詫びた。これからは自分が二人の面倒を見ると結婚の許可を得ようとしているのを見て、慌てて止めたが、瑠偉の親権を盾にされると頷かざるを得ない。単純な両親はすっかり彼を信頼し、結婚にも賛同。何より瑠偉が祥吾に懐いていたこともあって、この1週間後には入籍していたのだった。実家近くの一軒家で家族3人で暮らすことになったが、祥吾との仲はギクシャクしたまま。ただ、彼は息子のことは可愛い様で在宅中はよく相手をしてくれている。そんなある夜、瑠衣を寝かしつけた後、祥吾が発したのは、今は大村の愛人なのか?という何とも失礼な言葉。カチンと来て否定すると、5年前はライバル会社の社長の愛人だったんだろと返され思わず彼を平手打ちしていた。翌日、帰宅した彼から謝罪と5年前の真実が語られた。どうやら、あの情報漏洩事件の犯人として紗耶香が疑われていたらしい。祥吾は必死に彼女を庇ったが、自分の女だからでしょう、と言われればぐうの音も出ない。疑いが晴れるまで連絡を取るのを禁じられ、犯人探しに奔走していたそうだが、その間にいつの間にか彼女は資料部に飛ばされた挙句、退職していた。しかも紗耶香が使っていたPCには情報をリークしたと思われるメールの発信履歴も見つかったと言う。そこまで来ると信じていただけに裏切られた気持ちの方が大きかったと話す祥吾に、彼に疑われていたと言う事実に腹が立った。そもそも、祥吾と付き合いながらライバル社社長の愛人だなんてどれだけ身持ちの悪い女だと思われていたのか。色々言いたいこともあるけれど、祥吾も今思えば不審な点が多すぎるとして再調査を依頼しているとのこと。これまでの態度を含め本当にすまなかったと頭を下げる彼の姿を見て、状況的に仕方なかったとして一応は許すと告げた。それに、自分をはめた真犯人の方が許せない。再調査で何か判ればいいが。何とか許された祥吾はこれまでのことを猛省。再調査の途中経過を聞き、怪しき人物が数名洗い出された。一人を除いて後は祥吾に反感を持っていた者ばかり。知らず、加担させられたらしくあの騒動後すぐ退社した社員にコンタクトを取ると、やはり祥吾の反対勢力の企てだと判った。その証言をもとに尋問するとあっさり白状したので、紗耶香の疑いは晴れ、彼女にも告げるとホッとしたようだった。以来、頑なだった紗耶香の態度も軟化。漸く、家族らしくなってきた頃、騒動に加担していたもう一人の人物の名が明らかになり・・・。シークレットベビーものですが、別れた経緯がかなりの胸糞案件でした。これは一時期離れ離れになっていた理由にも納得。だけど、ヒロインが気の毒過ぎる。ヒーローの中盤までの態度もいただけないし、お前が彼女を信じないでどうするよと、腹が立ちました。もう一人の人物は、本文を読んでるとすぐ察しがつくと思います。ですよねぇって感じ。そもそも、そんな噂も無いのに令嬢との結婚が決まったみたい、的な話吹き込んだり、再会後に妙に罪悪感感じてる風だったり。よくもまぁ引っ掻き回してくれたもので。紗耶香にビンタされても仕方ない。むしろこれで許されたことに驚きましたが(^_^;)多分、彼女にとって優しい先輩だったからかな。全て真実が明らかにされ、紗耶香と瑠偉は祥吾の両親と対面。色々言われるかと思いきや、随分と好意的。両家の両親の薦めもあって近親者のみを招待した結婚式をすることになり、その様子を描いた一コマで本編は幕。おまけの番外編は、ラストシーンから約2年後のお話。後に生まれた長女・天音を含め4人家族になった東和家が大村邸に招かれたお話。書き下ろしの方は、本編後すぐの家族の話と祥吾目線の5年前、紗耶香と交際していた時のエピソードの2本でした。このお話自体、マロン文庫で出ているシリーズのスピンオフだそうで、大村専務夫妻の恋物語の方はいずれ近いうちに読んでみようかと。評価:★★★★☆
2024.06.17
コメント(0)
2023年8月刊ベリーズ文庫著者:三沢ケイさん許嫁に婚約破棄された伯爵令嬢・ベアトリスは、家の爵位を守るため婚活中! そこで出会ったのはまさかの王太子・アルフレッドで…!? 初対面のはずが、なぜかベアトリスのことを「俺のもの」宣言する彼。しかも国の秘密を知ってしまい、王太子の?補佐官兼お飾り側妃”に任命されてしまう! 職務を全うすべく奮闘していたら、俺様で苦手だった彼の甘すぎる溺愛に翻弄されていき…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ベアトリス=公衆の面前で婚約破棄された伯爵令嬢。アルフレッド=数年間の留学の後に帰国した王太子。 ジャン=王室直轄の秘密組織「金鷹団」団長。 ローラ=ベアトリスの友人。 ブルーノ=ベアトリスの元婚約者の侯爵家嫡男。 ランス=「金鷹団」団員。ベアトリスと親しくなる。大の読書好き、特にロマンスファンタジー小説が大好きだという伯爵令嬢・ベアトリス。挙句、独学で色々な国の言語を学び、各国で販売されている小説にも手を出した。好きが高じて趣味と実益を兼ね翻訳家としの仕事も別名義で引き受けているほど。これほど好きな読書に打ち込めるのは、幼少時に婚約者が決まったからに他ならない。おかげで婚活の為の社交にあくせく参加する必要も無いのだから、亡き両親には感謝している。とはいえ、婚約者であるブルーノは今更気を遣う相手ではないとでも思われているのか、最近、ぞんざいに扱われているような。今夜の王室主催の舞踏会も迎えに来るのがマナーだと言うのに別々に行きたいと連絡が来た。侍女達が腹を立てている中、本に夢中で準備が遅れてたから丁度良いと思うことにした。だが、会場に着き、すぐにブルーノを見つけて傍に行くと何だか様子がおかしい。いきなり睨みつけられたかと思えば彼から君のような性悪女とは婚約解消だと大声で告げられてびっくり。見るとブルーノの横にはほくそ笑むローラの姿が。彼女は女学校時代からの友人の一人で、つい先日もきっと似合うからと髪飾りを貰ったばかり。ドレスに合わせて今夜も付けて来たのだが、どうやらブルーノにベアトリスに大事な形見の髪飾りを取り上げられたと泣きついたらしい。そもそも、以前から彼に粉を掛け恋人関係だったというのも仄めかされ、二股掛けた挙句にこんな場所で婚約破棄して大丈夫なのか、と逆に心配になった。だが、覚えのない悪事を擦り付けられたベアトリスの方も周囲の令嬢達が信じてひそひそやっているのを目にし、ここは大人しく退散すべきと判断。会場に来てまだ1時間も経っていないのに彼女は逃げるようにその場を後にした。その際、廊下で一人の青年とぶつかり、その人の落とし物であろう手紙を拾った。見渡すともう人影もなく、落とし主のヒントでもないかと封筒を見ると何とも珍しい古代語で書かれている。そこには差出人の名前と宛名が。ジャン・アマールなる人物がさっきの彼のことだろうか。帰宅したら貴族名鑑で調べてみよう。しかし、その人物の名前は何処にもなく、婚約破棄を聞きつけて慌ててやって来た親友のマーガレットに心当たりを尋ねた。もしかして自分の婚約者なら顔が広いのでわかるかも、と聞き、その伝手を頼りやって来たのは王宮にある騎士団奥にある一室。不審がられたものの、何とか通してもらいそこにいたのは先日の青年。訝しむ彼に例の封筒を渡すとまさか宛名が読めたのか?と驚かれた。あまり使われていないが古代語ですよね、とこともなげに堪えると、封筒の中身も音読させられた。淀みなく読む彼女にジャンから名前を聞かれて名乗ると用は済んだとその場を後にした。数日後、マーガレットの好意により公爵家主催の舞踏会にやって来たベアトリスは、そこでブルーノ達と遭遇。女性は爵位を継げないので一人娘のベアトリスは婿を取るほかないのだが、不名誉な噂のせいで敬遠されていて、今は正に崖っぷち。いい気味だと馬鹿にする彼らに一体誰のせいでと腹が立ち、言い返そうとしたら、ブルーノ達を遮るようにある人物が現れた。その人が悪口雑言を繰り返していた彼らを諫めると興味本位で見ていた者たちも一斉に静まった。アルフレッド殿下、と叫んだブルーノは不興を買ったと思ったのか平伏せんばかりの態度。元婚約者の慌てように漸く、この人が先日帰国した王太子だと気付いた。なのに、その王太子がいきなりベアトリスを愛しい人と呼び、抱き寄せて来たので急な展開に頭は真っ白。硬直する彼女を王宮に連れ帰り、自室に招いたアルフレッドは徐に、君は何か国語が読めるのだ?と尋ねて来た。何のことやらと首を捻りつつその数を素直に答えると素晴らしい、と彼は大喜び。そして、君を俺の副官に任命すると言い出した。正確には王室直轄機関「金鷹団」での情報漏洩防止のために様々な言語を使う秘密文書の作成及び翻訳等が大な仕事のようだが、正直ベアトリスには何のメリットも無いではないか。すると、突然の婚約破棄で婚活に難儀しているのだろう?俺の側妃になればいい。あのバカな元婚約者たちの鼻を明かせるぞ、と囁かれて覚悟を決めた。その数日後、正式にベアトリスが王太子の側妃になることが決まり、表向き妃教育を受けながら裏で空き時間に金鷹団での仕事をしている。二足のわらじは思ったよりキツイが、元々勉強や調べものが好きなので思ったより性に合う。ジャンと言い合いをしながら楽しく毎日を過ごしていた。それにしても、側妃という名の補佐官に任命しつつも当のアルフレッドとは滅多に会わない。寧ろジャンと過ごす方が何倍も多くて、これでは彼の補佐ではないか。そう愚痴ると先輩たちは苦笑いをしていたが、その理由が判明したのは数日後。何者かに唆された挙句魔道具により容易にアルフレッドの離宮に忍び込んだローラの罠に嵌められたベアトリスはジャンに助けられた。だが、その彼が耳に付けていたピアスに触れると何と王太子の姿に。そういえば金鷹団は秘密組織、最高責任者は王太子であるアルフレッドだ。自らも行動するために魔道具で姿を変えていたのだろう。今まで溢していた愚痴が筒抜けだったのも合点がいった。彼は今回の事件が以前何度も起きたある事件と関連があるのではと、ベアトリスに護身用の魔道具・宝凛の指輪を渡し、必ず身に着けているようにと命じた。後から国宝級と聞いて冷や汗が出たものの、王妃シセルもなにやら意味深な事を呟いていたので気になってしまう。それから暫く経ったある日、本の発売日だからと認識疎外のフードを被って街に出掛けたベアトリスは不審者に襲われ・・・。作者さん曰く「たくまし令嬢」と秘密組織を指揮する王太子との恋物語です。タイトルに俺様とありますが、いうほど俺様ではなかったような。王太子に溺愛される寵姫だと評判になった頃から、何者かに命を狙われるようになったベアトリス。が、指輪の力と後に渡されたもう一つの魔道具、ジャンたちの護衛のおかげで事なきを得ていました。調査の結果、魔道具を上回る魔力で効果を打ち消されているのが判り、それが金鷹団のメンバーの者だと判明。その頃、ベアトリスは親しくしていた先輩・ランスによって郊外に連れ出されていました。そして彼が語る悲しい過去。ランスの亡くなった妹がアルフレッドの婚約者だったこと、なのに数年も経つと周りが新しい婚約者を据えたことで怒りに燃え、彼は騎士という立場を利用して選ばれた令嬢二人を事故を装って殺害していました。アルフレッドがランスの妹以降三人も婚約者を亡くしたことに傷付いていたのをその少し前に知った彼女はランスの勝手な言い分に激怒。必死に抵抗していた所を駆け付けたアルフレッドによって助け出され、その隙をつきランスは自らの命を絶つのでした。事件が解決し、アルフレッドはベアトリスを正妃にすべく諸々の手続きをしていた所、噂の公爵令嬢と結婚するものと彼女は勘違い。暇を告げるベアトリスに本心を打ち明ける彼との会話で本編は幕。書き下ろしの番外編は本編の後日談。本当に好きなら甘い言葉を囁いて欲しいとマーガレットと会話するベアトリスに実行に移して意趣返しするアルフレッドのお話でした。ブルーノとローラもちゃんと報いを受けたし、本を読むためだけにやけに行動的なヒロインは好感が持てます。アルフレッドが惚れたのもちょっとやそっとじゃ死にそうにない令嬢らしからぬところがよかったんですかねぇ。評価:★★★★☆
2024.06.14
コメント(0)
2024年5月刊ベリーズ文庫著者:未華空央さん地味女子の澪花は、偶然訪れた高級ホテルでトラブルに遭遇。なんと社長である蓮斗に助けられる。失恋が原因で男性が苦手な澪花。逃げるように去るが、後日彼が澪花の元に会いに来て!? 「契約妻になってほしい」突然の提案に、澪花は驚くばかり。病気の母の治療費のための契約関係のはずが、蓮斗は甘やかし100%で囲い込んで!? 「離さない、覚悟して」溺愛漬けの毎日に澪花は陥落寸前で…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 千葉澪花=ごく普通の会社員。 あるトラブルで知り合った蓮斗から契約婚を持ち掛けられた。 橘蓮斗=ホテル企業の御曹司で社長。澪花を見初める。姉の萌花と二人、不倫の末に蒸発した父が残した借金の返済を続けている澪花。父のことで軽い男性不信の気があった澪花は20代後半になるまで男女交際経験もなく、心配した姉の薦めもあって一人の男性と付き合い始めた。明るく優しい人だと思っていたものの、それも付き合い初めの頃だけ。一ヶ月も経つと約束は悉くドタキャンされた挙句、二股を掛けられていたことが発覚。逆ギレした彼氏に、ヤラせてくれないお前が悪いし、俺の金目当てだったんだろうと罵られ破局した。たとえ結婚しても彼に返済を手伝ってもらうつもりなど無かっただけにショックだったが、何でも話して欲しいと促されてつい色々話してしまった自分の失態だとも思う。萌花はそんなのは男の方が悪い、またいいご縁があると言ってくれているけれど、もうこりごり。姉の伝手で高級ホテルTACHIBANAで開かれるパーティーに誘われたが、派手な場所は苦手なので断った。パーティー当日、帰宅すると姉から電話で忘れ物をしたので会場まで届けに来て欲しいと頼まれた澪花は、給仕の不注意で飲み物を被りずぶ濡れに。誤り倒す給仕に大した服じゃないですからとその場を離れようとした所を、一人の青年に呼び止められた。彼は橘蓮斗と名乗り、渡された名刺を見るとこのホテルの社長とあってビックリ。従業員のミスなのだから弁償させてほしいと通された部屋でいかにも高そうなドレスを貰い、どうしてよいか判らず着替えの間席を外していた橘宛ににメモ書き持っていたありったけの札を置いてその場を逃げ出したのだった。姉には、帰宅後事情を話して謝り、翌日出社すると社員証が無いことに気付いた。すると昼休憩に橘がわざわざ社員証を届けに来てくれていた。彼から話があると就業後に会うことを約束したが、母が入院している病院からの連絡でそちらに行かねばならなくなった澪花を橘が送ってくれた。生まれつき心疾患のある母はここ数年入退院を繰り返していた。手術をすれば完治するようなのだけど、金銭的余裕が無い。この病院もそこまでの設備は無く、今回も容体が芳しくないから転院して手術した方が良いと主治医から告げられ決断を迫られていた。姉とも相談しなければ、と思っていた矢先、病院からの連絡で母がこの街にある総合病院への転院が決まったと聞かされた。しかも、手術も受けられるという。どういうことか判らなかったが、これで母も助かる。数日後、転院した母に付き添い、執刀してくれる担当医にも挨拶した澪花は、ここに来れたのも橘が手を回してくれたからだと知った。執刀医が橘とは高校の同級生だそうで、頼んでくれたらしい。しかも、入院費含め全て橘持ちというので、慌てて貰った名刺にあった番号に電話をすると、あの日の代わりに会うことになった。そこまでしてもらう義理は無いのに、と話す澪花に、では見返りとして俺と契約結婚して欲しいと告げる橘。君が気に入ったんだと言われ、飲んでくれたら生活全て自分が面倒を見ると言う。さすがに驚いて少し考えさせてほしいと猶予を貰ったが、なぜだか嫌な気分はしなかった。しかし、その数日後、元カレに偶然再会し悪し様に言われた澪花をさりげなく庇い自慢の妻だと言ってくれた橘の姿にこの人なら信じられると覚悟を決めた。生活の面倒はともかく、母の入院費や手術代の借りは返さなければならない。彼に何のメリットがあるのか不明だが、それでもできることがあるかもしれない。結婚の承諾をすると彼は喜び、母と姉にも挨拶してくれた。その後、すぐに入籍をした二人は橘の用意したマンションで同居を始めた。蓮斗の両親との顔合わせと挨拶は、彼の都合が合わず大分遅くなってしまったが、漸く会えることに。しかし、義父はともかく義母はかなり不服そう。嫌な予感がしていたら、マンションに見知らぬ女性が訪ねて来て、自分こそが蓮斗の妻になるはずだった。身の程知らずのあなたは彼と離婚しなさいと脅され・・・。この女性はどこぞの令嬢なんですけど、義母が息子の結婚相手に薦めようと思っていた人物で、蓮斗がどこの馬の骨とも知らぬ女に誑かされたばりに、ご令嬢を焚き付けていました。身辺調査もされていて父の件や借金のことを責められ、彼の為にならないと澪花は身を引く決意をします。が、様子のおかしい彼女に気付いた蓮斗に問い詰められ、令嬢に離婚しろと言われたと告白。激怒した彼は実家に乗り込み義母と大喧嘩になると、絶縁も辞さないと話す息子の言葉にショックを受けた義母は昏倒。実は澪花の母と同じく心疾患があると判り入院した義母の見舞いに足繁く訪れていたら、義母も根負けし漸く結婚が認められるのでした。契約結婚とはいえ、蓮斗はあのパーティー以前から澪花のことを一方的に見知っており、その人柄の良さに惚れていました。でも、父親と元カレの件で男性不信だと聞いて、普通にアタックしたのでは相手にされないと金銭的援助を盾に契約婚に持ち込んだという。ご令嬢の登場で契約婚なんだからと別れを切り出す彼女に慌てて本音を話す蓮斗の様子に読んでてクスリときました。漣斗と義母も和解し、半年後、式直前で澪花の妊娠が判明して本編は〆書き下ろしの番外編はそれから約1年後、長男も産まれ孫フィーバーの義実家でのエピソードでした。真面目で心根の優しいヒロインが御曹司に見初められて玉の輿。内容自体は非常にシンプルかつ王道展開だったので、その分安心感もありました。架空の街・ベリが丘が舞台なんですけど、名前のダサさに澪花が言う度に妙な笑いがw評価:★★★★☆
2024.06.04
コメント(0)
2024年5月刊ベリーズ文庫著者:真彩-mahya-さん幼い頃に父を亡くした看護師の七海は、弟の学費を稼いで早く母を楽にすることが目標。憧れの心臓外科医・圭吾がいる病棟に異動が決まり意気込んでいた。仕事では超冷徹人間の圭吾だが、優しい一面も。そんな中、ある理由で彼から契約結婚を持ち出される。家族のための援助と引き換えに承諾したら…。「俺と結婚してよかったと思わせてやる」まさかの溺甘豹変! 熱情露わに迫られ、七海は陥落寸前で…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 槇七海=病棟看護師。憧れの外科医・笠原から契約婚を申し込まれた。 笠原圭吾=凄腕の心臓外科医。安藤菜美恵=特別室に入院している医療機器メーカーの社長令嬢。 千葉=七海の同期の男性看護師。病棟看護師の七海がこの職業を選んだのは偏に生活の為だった。母子家庭で育ち、6歳下の弟・瑞希はまだまだ金がかかる。頭の良い弟には出来れば希望の大学に進学させてやりたい。下手なOLより稼げるのではと聊か同期は不純であったが、現実は厳しい。学校はともかく実習先で早くも挫折を味わったのだ。実習生担当の看護師がかなりの気分屋で気に入らない新人をいびり倒して辞職に追い込むと言う最悪な人物だったのが災いし、七海もその洗礼を受けた。さすがに辞めるまではしなかったけれど、休憩室で号泣する羽目に。そんな彼女をさり気なく励ましてくれたのが外科医の笠原圭吾であった。新人看護師が泣いていたので、彼はさぞ驚いただろう。実習担当看護師のことを告げ口するのは簡単だが、敢えて触れずに自分の至らなさからだと話すと、君は患者さんに頼りにされているし、きっといい看護師になれる、と。ただの社交辞令かもしれない。それでも、彼の言葉は七海を奮い立たせ、いつか笠原のいる循環器科で働くのを夢に頑張ろうと決めた。あれから3年。漸く念願が叶い循環器科に配属されることになって七海は大喜び。ここには専門学校で同期だった千葉もいるし、なにより先輩たちも明るく穏やかな人達ばかり。色々勝手も違うので初日は千葉に付いて病室を周り作業を覚えた。師長の薦めで笠原が執刀する手術を見学できたのもこの科に配属されたおかげだ。あの日から憧れの人である彼の手術はやはり凄くて余計に尊敬度が増したほど。そんなある日、循環器のことをもっと学びたくて図書館を訪れた七海は偶然にも笠原と遭遇。あちらも気付いたので挨拶すると彼も調べものがあって訪れたのだと言う。その程度の会話だし邪魔しない様後は黙って自分も本を探していたら、何だか笠原は迷惑そうにため息を吐いた。プライベートの時間まで付き纏わないでくれと言われ、思わずカチンと来て偶然図書館で会っただけでどうしてそこまで言われるのかと言い返してしまった。少し自意識過剰なのでは?とまで言い切ると彼は面食らったような表情の後、謝罪して来た。さすがに言い過ぎた感はあったので内心反省していると、笠原が疑心暗鬼になっていた理由を話してくれた。病院長の息子で名の知れた心臓外科医ともなると擦り寄って来る女性が多いらしい。ストーカー紛いに付き纏われることもあるようで、なるほどそれで自分も疑われたのかと納得した。しかも、現在進行形で被害に遭ってるのに自意識過剰なんて憧れの人に対してなんてことを。内心で冷や汗を掻いている七海を他所に、この一件以来、笠原の態度が軟化。千葉の恋バナ相談に乗っていた際、偶然出会った彼が渋い顔をしていた様に見えたのは気のせいか。それからまた暫く経った頃、特別室に入院した医療機器メーカーの社長令嬢・安藤菜美恵が笠原の婚約者だと言う噂が看護師たちの間を駆け巡った。噂の婚約者とは案外早くにお目にかかれた。見るからにお嬢様然としたその人は、七海が検温に訪れた時に何故か笠原と揉めていてビックリ。取り乱す彼女を笠原が冷静に往なしている風。婚約している割には妙な雰囲気に訳ありな感じがする。その後、何故か笠原に菜美恵とは婚約などしていないとわざわざ否定された。そして話があると夕食に誘われた七海は彼から協力して欲しんだと契約婚を持ち掛けられ複雑な心境に。理由は菜美恵の付き纏い行為を止めさせるため。実はあのお嬢様は元々、彼の兄の縁談相手だったのだそうだ。だが、兄には恋人がおり政略結婚など出来ないと断った。これには双方の親も渋い反応だったが頑なに固辞すると流石に諦めた。しかし、当の菜美恵は納得がいかず兄の恋人の方に嫌がらせを始め、恋人は命の危険すら感じたと言う。どうやら、今回の縁談、菜美恵は両親から何としてでも兄を射止めろと言い含められていたらしい。自分が理由で断られたわけではないのに彼との結婚に固執し、恋人を排除しようと躍起になった挙句、自ら車道に飛び出して事故に遭い重傷を負った。兄は恋人を守るためと一連の責任を取り後継者の座を降りて病院を辞め、恋人と入籍。今は小さなクリニックで働いているとのこと。あの穏やかそうな菜美恵がそこまでやらかしていたとは。兄が後継者でなくなったので憑き物が落ちたかのように彼女は嫌がらせと付き纏いを止めたのだが、今度は弟の笠原をターゲットに変えた。金さえ払えば入れる特別室に居座りっては彼の婚約者のように振舞っているので、ほとほと参っているという。そこで、七海を見込んで期間限定の契約婚をして欲しいというわけのようだが、彼に想いを寄せる身としてはこれは喜ぶべきなのか。でも、彼から提示された報酬はあまりにも美味しい。弟の進学費用も出してくれると聞いて覚悟を決めた。契約婚を承諾した七海は、数日後には笠原と入籍。病院近くの彼のマンションで同居生活が始まった。いざ、夫婦としての生活が始まると彼は七海を名前で呼び、自分も圭吾と名前で呼ばれたがった。万全を期してとはいうけれど、そこまで徹底的なの?入籍したことは師長にだけ告げ、発表に関しては折を見てと話し合った。菜美恵がどう出るか不明だったためだ。しかし、探偵でも使って調べたのか、菜美恵の態度が数日後には変化。彼女の物言いに不吉さを感じていた頃、七海が何者かに付け回されるという出来事が。危険を承知で引き受けたとはいえ、恐怖に震える七海のため、菜美恵に釘を刺した圭吾であったが、これが思いの外、相手を刺激したらしく・・・。兄の元縁談相手に付き纏われ、難儀していた圭吾は図書館の一件から興味を持ち、好意を抱いていた七海に契約婚を持ち掛けます。勿論、事が片付いても彼女には改めて求婚して夫婦生活は続けるつもりでした。菜美恵も結婚すれば諦めるかと思いきや、逆に手段を選ばない状況にまで追い込んでしまっていて、人を雇い七海を襲わせるという暴挙に。異変に気付いた千葉のファインプレーにより、すぐ圭吾に連絡が行ったおかげで事なきを得るも、これがきっかけで、菜美恵の親がようやく動いて娘を更生させると約束。当時、何としても彼の兄を射止めろとけしかけたことが多大なストレスになって娘を苦しめていたと悟ったのでした。猛省した両親の説得により、カウンセリングを受けることになった菜美恵がやっと落ち着いたと安藤家から正式に謝罪が来たようで、事件は幕を閉じます。兄とその妻子とも七海は懇意になり、この事件後に両想いだと判明した二人。周囲に祝福されて式を挙げる二人の様子が描かれて本編は幕。おまけの番外編は、結婚発表後すぐのかなり遅れた七海の循環器科配属歓迎会のエピソードでした。この作家さんは割と作中クスッと笑えるシーンが多かったりするんですが、今作は題材故かコメディ要素少な目。でも、頑張り屋なヒロインの性格がヒーローの人柄にも影響して事態を良い方向に導いていくという鉄板ながら良いお話だったと思います。評価:★★★★★
2024.05.27
コメント(0)
2023年9月刊ベリーズ文庫著者:Yabeさん空港で働く陽和は、エリート機長の悠斗と交際して約2年。幸せな甘い日々を過ごしていたある日、妊娠が発覚! その矢先、彼が実は御曹司で令嬢と見合いをすると知って…。自分の存在が迷惑になることを恐れ、身を引き双子を産み育てていたら、突然悠斗に再会し!? 戸惑う陽和を、彼は独占欲露わに囲いこむ。「もう二度と、君を離さない」--日ごと増していく溺愛に陽和は抗えなくて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三島陽和=グランドスタッフで働きながら双子を育てるシングルマザー。 桜葉悠斗=大手航空会社社長の次男でパイロット。陽和の元カレ。上田奈緒子=陽和の母方の叔母。 上田浩二=奈緒子の夫。両親を早くに亡くし、母方の叔母夫婦の家に居候して双子の男の子を育てている陽和。2年近く前まで、彼女は大手航空会社でグランドスタッフとして働いていたのだが、当時交際していた8歳年上の恋人・悠斗との別れを機に退職。この時既に妊娠していたため事情を聴いた奈緒子からの強い勧めで叔母夫婦の元に身を寄せることになったのだった。そして、無事に生まれた双子の保育園も決まった頃、運良く地元の空港で雇用され再びグランドスタッフとして働くことが出来た。双子の送り迎えなど奈緒子達には暫く迷惑を掛けてしまうが、ずっと好意に甘えて居候状態だっただけに心苦しくもあったので、これで漸く生活費を入れられる。少々のブランクはあったが、即戦力だとありがたがられ仕事も順調。双子たちももうすぐ2歳。だんだん父親そっくりになって来たと思う。楠木悠斗は日本では数名しかいない34歳の若き機長で、その容姿も相俟ってCAを始め女性スタッフからの人気が高かった。そんな彼からいきなり交際を申し込まれた時は何の冗談かと一回断ったほど。しかし、彼は本当に真剣なんだと多忙なくせに暇さえあれば猛アプローチ。その必死さにいつしか絆されて交際に至った。しかし、付き合いだして半年ほど経つと彼が実は社長の息子で、特別扱いされない為に母方の名字を名乗っていた事、パイトットは続けるが業務提携先のお嬢様と近々政略結婚するらしいという噂が実しやかに流れ始め、何も聞かされていない陽和は不安に苛まれた。悠斗は主に国際線を担当していて、やっと連絡がついた時、どういうことかと尋ねると、名字についてはそろそろ打ち明けるつもりだったと言う。政略結婚については縁談は来ているけれど全て断ったと話していたが何とも歯切れが悪い。御曹司ともなると色々自由に出来ないのは判るけれど最近体調が悪いのも相俟って一気に不信感が増した。その後、彼とは中々会えなくなり、約束もドタキャンされてばかり。いよいよ我慢しきれなくなった頃に陽和の妊娠が判明。今後どうするつもりなのか相談したいのに煮え切れない彼の態度に怒りが増した。どうやら結局親に押し切られて見合いをしたらしい。お相手のお嬢様に付き纏われているのを見た時ついに爆発。陽和は悠斗にもうあなたとはやっていけないと別れを告げ、連絡手段も全てブロックすると叔母たちの住む高知に引っ越したのだった。悠斗はあの後あのお嬢様と結婚したんだろうか。今思えば自分も精神的に不安定な時期でもあったので、色々心無い言葉を彼にぶつけてしまったので心残りはある。そんな矢先、突然名前を呼ばれて振り返るとそこにいたのは悠斗ではないか。彼は大股で近付くと陽和を抱きしめ、やっと見つけたとため息を吐いた。しかし、間の悪いことに奈緒子が双子たちがママに会いたいと駄々をこねたからと陽和を迎えに来たことで子供の存在が彼にバレてしまった。自分そっくりな子達にピンと来たらしい彼に俺の子だなと問われ、つい正直に認めた彼女に話をしたいと悠斗から懇願され・・・。その夜、叔母の家で改めて話し合いの場を設けてもらい彼と再会。悠斗からは自分の煮え切らない態度で陽和に要らぬ不安や誤解を抱かせたこと謝罪します。名字についてはプロポーズの際に全て打ち明けるつもりだったようで、見合いの件と言い最悪なバレ方をしてしまったんですね。勿論、陽和にベタ惚れな彼は政略結婚など応じるつもりはなく、強行手段に出ようとする父と絶縁してでも断るつもりでした。味方になってくれていた兄と母ともすり合わせをしていたものの、見合い相手が一目で悠斗を気に入り、断ったにも関わらず付き纏い、外堀を埋めるためか人を使って不本意な噂を流し始めたのだと聞き、道理で広まるのが早かったわけだと陽和も納得。このお嬢様、やることが用意周到すぎてなぁ。断られてるのにしつこく付き纏って仲が良いアピールして陽和に見せつけてたんだから、彼女にフラれたあと悠斗がキレたのも判る。しかし、片を付けたはいいけれど肝心の恋人は姿を晦ましていて彼は真っ青。でも諦めるつもりはなくずっと彼女を探していました。子供がいたのは予想外だったようですが。事情も分かって、もう一度信じてみると彼とやり直す覚悟をする陽和。未だに悠斗の父は反対していたものの、あるトラブルを切欠に思い直したようで二人の結婚は認められ、陽和は子供たちと共に彼の暮らす東京へ。ハワイで近親者のみ参加の式を挙げて本編は完。書き下ろしの番外編はそれから約1年後、陽和の誕生日のサプライズパーティーの準備をする悠斗と双子たちのほのぼの話でした。シークレットベビーものですが、再会してすぐに誤解が解けたのもあってモヤモヤ度は少な目。別れの経緯もヒーローが結構ヘタレ系で後手後手に回ったせいで関係悪化したというパターン。でもこれは誤解されても仕方ないよなぁと納得できる系。実際、このジャンルでの離れ離れになる原因なんて奇をてらわずこういうのでいいんだよ、と思ったり。取り敢えず、お嬢様が復縁まで邪魔してくるとかじゃなくて良かったです。評価:★★★★☆
2024.05.20
コメント(0)
2021年1月刊ベリーズ文庫著者:桃城猫緒さん5歳の誕生日に突然前世の記憶を取り戻したサマラ。かつてプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたと気づく。このまま16歳になれば断罪エンド確定。破滅回避のためには世界最強の偉大な魔法使いである父・ディーを味方につけて守ってもらうしかない! クールで人嫌いなパパの溺愛をゲットするため、サマラは今日もいい子で頑張ります! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 サマラ=魔公爵・ディーの一人娘でゲームの悪役令嬢。 乙女ゲー大好きな日本人女性だった前世の記憶を持つ。 ディー=大陸一の魔法使いで魔公爵。サマラの父親。 レヴ=サマラが出会った正体不明の魔法使い。 リリザ=ゲームのヒロインで膨大な魔力を持つ「奇跡の子」乙女ゲーム大好きな佐藤由香がハマりにハマった「魔法の国の恋人」当然ながら全ルートコンプを達成済みでファンブック2冊も読み込んだ。だが、ネットの噂で隠しキャラルートがあるらしいと聞き及び試行錯誤したもののイベント発生条件が全く分からない。ただの噂ではと半信半疑になりながらも諦めきれずにいたある日のこと、由香は居眠り運転のトラックに轢かれ25年の人生は幕を閉じたのだった。ふと気づくと彼女はニンジン色の髪色をした幼女の姿になっていた。そして突然流れ込んで来る5年の人生の記憶。幼女の名前はサマラ。由香の記憶も相俟って彼女は悲鳴を上げた。サマラとは「魔法の国の恋人」の悪役令嬢ではないか。攻略対象の一人・魔公爵ディーの一人娘でとにかく性格が悪く、どのルートでもラスト近くに現れる魔人の暴走に巻き込まれて死んでしまう。前世で早死にしたのに生まれ変わっても16歳までしか生きられないなんて酷過ぎる!しかし、隠しルート達成はいかずともサマラである自分はこの世界を熟知している。ストーリーを改変する事になるけれど、二度目の人生順風満帆に長生きしたっていいではないか。取り敢えず、今までの我儘放題な態度は改め良い子になろう。あと、父であるディーを自分にメロメロにさせればこれ以上頼もしい味方はいない。丁度、ディーはサマラの誕生日である今日、屋敷に帰って来るから即作戦実行だ。 媚びて媚びて媚び捲くってやる。そう意気込んではみたけれど、ディーは手強かった。そもそも、サマラは彼の実子ではない。離婚したディーの妻・ナーニアが浮気して出来た子だった。しかも妻は娘を残して男と駆け落ち。ディーがサマラを遠ざけていた気持ちも判ると言うもの。そして彼女が我儘に育った原因も寂しさからであった。この辺りの事情はディーのルートやちょっとした裏話もファンブックに載っていたので承知している。だが、こっちは命がかかっている。いくらウザがられようがめげずにアプローチをし続けた。その際、一緒にやって来たディーの友人で同じく攻略キャラ・カレオが色々気を回し、仲を取り持ってくれたおかげで1ヶ月も経つと彼の態度は少しずつ軟化。最初はディーに気に入られるために始めた魔法の勉強も今後何かの役に立つかと打ち込むようになったのも要因になったようだ。才能が無いのは重々承知しているが、あるトラブルに巻き込まれた時に妖精との契約にも成功。ディーも勉強を見てくれるようになったので魔法を使えるようにもなっていた。時は流れ、サマラは16歳になり、今までの努力が実りディーが所長を務める魔法研究所に通うことになった。そこには昔、彼女を助けてくれた正体不明の魔法使い・レヴもいて、良い友人関係も築けている。しかし、問題はここからゲームのストーリーが始まると言うこと。魔力を持つのは圧倒的に貴族に多いのに、平民ながら膨大な魔力を持ち神殿に引き取られた「奇跡の子」リリザがやって来る。そんな彼女が攻略キャラにモテモテになり、面白くないサマラは嫌がらせを繰り返した挙句、魔人の暴走という貰い事故で破滅する。幸いにも、ディーとカレオは味方に出来たが用心に越したことは無い。なるべく関わらないようにすれば、リリザにも同僚の一人としかとられないだろう。そう考えていたのだが、ここにきて抑止力がかかるのか、サマラは何かとリリザが引き起こすトラブルに巻き込まれ、何度危険な目に遭った事か。その都度間一髪でレヴに助けられていた。しかし、リリザが原因で研究所とそこにいる魔法使いたちの使い魔が多大な被害を被り、サマラの堪忍袋の緒が切れた。思わず責任を問うとリリザの味方である王太子たちに睨まれ万事休す。結局、破滅ルートなんだろうか。諦めかけたその時、彼女を助かたのはディーだった。そして、ドジなだけでは済まされない数々のやらかしを理由にリリザに退所勧告を出した。トラブルメーカーがいなくなったことで研究所に平和が訪れたのも束の間、レヴが魔力暴走を起こし・・・。悪役令嬢+ゲームの世界に転生というジャンルが大流行してた頃のお話です。そのせいか、展開もかなり王道。ただ、逆ハーではありません。努力を重ね、攻略キャラ二人を味方に付けたものの抑止力とヒロイン補正でリリザにはサマラは叶わない。先ず王太子が味方なのは権力的に強いよなぁ。そんな不利な状況下、サマラが親しくなったのはゲームでは出て来なかったレヴ。ディーには及ばないが魔法の才があり、幾度となく彼女の助けになってくれていましたが、ラスト間近で彼の魔力が暴走。魔人に変化してしまいます。そう、どのルートでもサマラを巻き込み殺してしまう正体不明の災厄。そこでサマラが思い付いたのは彼こそが隠しキャラだったのでは、ということ。彼を救うには「奇跡の子」の力が必要でリリザに頼むも、この子がもうとんでもない性悪で口だけ女。いざとなったら何の役にも立たない。絶望の中、サマラはレヴへの想いを自覚したことにより奇跡が起きて、という流れ。レヴの正体が実は妻に逃げられ落ち込んでいたディーが特秘組織に唆されて自分の血で作ったゴーレムだったりします。お父さんは飽く迄リリザの攻略キャラなので味方には出来ても攻略は出来ない。そしてレヴを救い攻略できるのはサマラのみ。このお話そのものが隠しルートの物語であったというオチでなるほどー、と。書き下ろしの番外編は、まだ距離感がある5歳の頃のサマラとディーの小話でした。前述の通り、ストーリー自体が割と王道展開で変に外してこないのも良いですね。評価:★★★★★
2024.05.17
コメント(0)
2023年9月刊ベリーズ文庫著者:惣領莉紗さん内気な会社員・杏奈は、幼馴染で勤め先の御曹司・響に長年恋心を抱いていた。しかし、ふたりの立場の差は歴然。響の態度も冷たくて、距離は広がるばかり。自分は不釣り合いだと諦めていたのに、突然彼から求婚されて!? お見合いを断るための偽装結婚かと思っていたら…。「欲しいのは君だけだ」--響は蕩けるほど甘く杏奈を抱き尽くす。予想外の溺愛にウブな杏奈は翻弄されっぱなしで…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三園杏奈=大手食品メーカーの総務部に勤める会社員。 北尾響=杏奈の勤め先の御曹司。父親同士が古い友人なことから幼い頃から仲が良かった杏奈と響。しかし、いくら家族ぐるみの付き合いとは言っても、響は大手食品メーカーの御曹司。彼の父・基の掲げる経営方針に共感を覚え、3年前にこのキタオフーズに入社したものの、今では副社長になった響との立場の違いを思い知らされ、次第に距離を取るように。それでも、お互いの誕生日を祝い合うという習慣は変わっておらず、先日響から誕生日だからと大ファンの画家の個展チケットと画集をプレゼントされた時は嬉しかった。ある日、杏奈は上司からプロジェクト案のコンテストへの参加を薦められ、チョコレートと人気画家とのコラボ案を提出した。すると最終審査5選に残り、総務部からの後押しもあってプロジェクトに参加することになった。味は良いのにイマイチな売り上げのうちのチョコもこんなパッケージにしたら手に取りやすいのではと何の気なしに出しただけだったのに。漠然とした案なので、開発部でどんなイメージにしたいかと問われても、上手く言葉に出来ず困り果てていたら、何とか意をくみ取っていい感じに纏めてくれる開発部の桐原には随分世話になった。だが、課長の甲田からはド素人の部外者と下に見られ、まともに取り合ってもくれない。しかもやけに敵視されているような。桐原によれば、甲田は仕事はできるがヒステリー気味でよく部下を困らせているのだそうだ。その上、同期の響に対しあからさまなモーションをかけており、彼が不在の日は一日中機嫌が悪いらしい。響と杏奈が幼馴染というのは社内では公然の秘密。甲田が勝手にライバル視しているだけだから気にするなと言われたが、何だかモヤモヤしてしまう。そんな心配されるような仲じゃないのに。それに、響にはしょっちゅう縁談が持ち込まれていると基が話していた。彼が結婚するならきっと名家のお嬢様とか会社に利益をもたらす人だろう。慣れない仕事に悪戦苦闘しながらも、リニューアルしたチョコレートは発売以来の大ヒット。杏奈に社長賞が贈られることが決まった。そこで、響が夕食をご馳走してくれるというので、ありがたく出向くと彼からいきなりのプロポーズにビックリ。今回のプロジェクト成功と社長賞で大分自信もついたのでは?と聞かれ、そこは素直に肯定したが、それが何故結婚と繋がるのか。響としては杏奈に余計な気を回されて距離を置かれてかなり落ち込んだらしい。子供の頃からお前が好きだったと告げられたが、そんな素振り一切なかったくせに。でも、以前彼は見合い話にうんざりしていると言っていた。もしかして、これは偽装結婚?盛大な勘違いをしている杏奈は少しでも彼の煩わしさが消えるならとその求婚に応じたのだった。その夜、響からの招集で両家の両親の前で改めて二人の結婚を報告すると父たちは大喜び。杏奈の母はこの子が社長夫人なんて大丈夫でしょうか、と少々難色を示したが、お互い幸せならと思い直し賛成してくれた。ただ、付き合いは長いが交際はしていないためまだ入籍はせず式と披露宴までは婚約期間とした。基は歓喜から一番ポロリしそうなので、然るべき時に公表するからと口止め。お互いの気持ちに多少はズレはあれど、婚約者になった途端響の溺愛は凄まじく、給料何か月分だろうと眩暈がしそうなほどの指輪を貰った時は杏奈にもいよいよ結婚するという現実味が沸いた。それから暫く経った頃、基の匂わせSNSを見た甲田が響の結婚に気付いて激怒。彼が現在進めている食事の宅配サービスの売りである無農薬野菜を作っているのが自分の祖父であり、彼との結婚を辞めないと取引させないと脅してきて・・・。お呼びでない横恋慕女からの脅しと自分の両親まで馬鹿にされに、杏奈は負けじと言い返した時初めて偽装結婚は嫌だと気付きます。まぁ、これは単に本人の勘違いなんですけど、言い合いが拍車をかけ体調を崩していた杏奈が昏倒しかけた所、間一髪間に合った響に助けられるのでした。自分も一緒に土下座するから捨てないでくれと縋る杏奈に甲田の脅しの内容にピンと来た響は彼女に引導を言い渡し、愛する人の誤解を解くことに成功。そもそも、ずっと好きだったって告白してたのに、そこは思い切りスルーされていた事にため息を吐きつつ改めてプロポーズの言葉を聞かされた杏奈は安心したのと気分の悪さも相俟って気を失い緊急搬送されることに。病院で検査の結果、杏奈の妊娠が発覚。式と披露宴の時にはかなりお腹も目立つ頃なのでドレスのデザイン変更を余儀なくされるも、数か月後、二人は式を挙げて終わっています。書き下ろしの番外編は、響が杏奈に贈った指輪秘話でした。ヒロイン・杏奈が地味で目立たないながらも実は優秀で仕事ができるって設定が良いですね。評価:★★★★☆
2024.05.15
コメント(0)
2023年6月刊ベリーズ文庫著者:藍里まめさんド真面目OLの成美は、母に頼まれたお見合いをしぶしぶ承諾。写真も見せてもらえずに当日を迎えると、相手は大企業の御曹司・朝陽だった。実は彼とは先日あるアクシデントで接触していた成美。まさかの再会に戸惑うが、朝陽は「ずっと前から好きだ」と溺愛全開で迫ってきて…。言葉巧みに追い込まれついに結婚を決断! 人生最大に甘やかされた堅物な成美は、心も体もとろとろに溶かされていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 藤江成美=清掃会社で働く事務員。朝陽と見合い結婚をした。 藤江朝陽=有名家電メーカーの御曹司で成美の夫。借金を残して蒸発した父の代わりに母と二人こつこつと返済を続けている成美に、ある日見合い話が持ち込まれた。母の勤め先である税理士事務所所長からどうしてもと頼まれ、渋々応じた成美だったが、お相手が先日スポーツジムで悶着になった青年でびっくり。しかも、彼は成美を探して伝手を頼ってこの見合いを申し込んで来たらしい。思っていたより時間がかかったと微笑む彼は藤江朝陽と名乗り、有名家電メーカーの御曹司。どう考えても自分とは釣り合わないし、一体どういう意図があるのか。それに借金の返済もあと20年はかかる。黙っているのはフェアじゃないと正直に朝陽に告げたが、まったく気にしないどころか、一旦俺の方で清算しましょうか?と言い出す始末。2億程度ならすぐに用意できると言われ、母と二人慌てて首を横に振った。正直、この借金がネックで結婚を諦めていた成美にしてみれば、これ以上ない縁談だ。朝陽の仕事の都合で予定より早くお開きになったが、是非また会いたいと連絡先だけはしっかり交換させられた。その後、朝陽とはSNSを通じて連絡を取り合っていたが彼が多忙のため、再会できたのはあれから2週間ほど経ってからのことだった。食事しながらの会話で実は朝陽はジム以前から成美のことを一方的に知っていた事を告げた。まだ彼女がお嬢様学校に通っていた頃、持ち前の正義感から先輩たちの悪ふざけで痴漢にでっちあげられた大学生を助けたことがあった。後にその大学生に感謝された上に交際して欲しいと言い寄られたのでよく覚えている。その大学生・鹿内と朝陽は当時友人関係で、先輩に臆せず冤罪だと証言したという成美に興味を持ち、鹿内がお礼を渡した時に付き添いでいたらしい。生真面目で融通の利かない性格から曲がったことが大嫌いな彼女にしてみれば、当然のことをしたまでと言い、鹿内からのアプローチをばっさり断っていたのも朝陽には新鮮だったようだ。女好きの鹿内は早々に成美を諦めたが、朝陽は話しかけるチャンスを伺っていた。しかし、家庭の事情で成美は学校を辞めてしまったのでずっと後悔していたのだと言う。それが、偶然にもあの日ジムで再会。今度こそはと色々手を打ち見合いに漕ぎ着けたと話す彼のバイタリティーが凄い。朝陽は念のため、成美の身上調査もしたようで大方の事情も知っていた。莫大な借金を残し消息を絶った父親は残された成美たちに返済しなくて済むよう離婚届も置いて行っていた。しかし、母に離婚の意思は無く夫が帰って来るの待つというので成美も覚悟を決めた。債務整理をし、残った分を母子二人で働きながら返済している。いくら金持ちでも返済にあと20年もかかる借金を抱える家の娘は敬遠される。だが、見合いの席での言葉通り、朝陽は気にしないし自分を頼ってくれと言わんばかり。さすがに2億なんて金額ではないが、それでもこれは家族がしでかしたこと。ケジメでもあるので自分達で完済したいのだと固辞した。朝陽にしてみればそういう態度も響いたのか、改めて自分と結婚して欲しいと告げた。そのめげない態度と誠実さを好ましく思っていたのと、母からの後押しもあって成美はそのプロポーズを受け入れたのだった。彼が結婚を急いだので、一か月後に二人は入籍。式は二人きりでハワイで挙げた。新婚旅行も兼ねた地で、成美は父と再会。地元のレストランで真面目に働く父を見つけてくれたのは案の定朝陽で彼女は10年ぶりに大好きな父と会うことが出来たのだ。彼を交え話し合った結果、家族のことなら娘婿の自分が力になってもおかしくないはずと説得され一旦借金分の金額を立て替えることで落ち着いた。父の問題が片付いたものの、真面目な性格故かお堅いマイルールにより朝陽が呆れるほど無理な生活をしていた成美は、これからは楽しみを見つけるべきと彼なりの矯正を受けた。子供時代は禁止されていた漫画を読んだりアニメを見るのはほぼ初体験で面白かったが、特にハマったのは格闘ゲームでこれがかなりのストレス解消になる。朝陽の提案で始めた家事の手抜きも最初は戸惑いもしたけれど、慣れてくると罪悪感も消えてかなり楽になったと思う。それから暫くして成美の妊娠が発覚。安定期に入るまでまだ互いの親には報告していないが、4ヵ月目に入り最近義実家からの電話が来るたびに朝陽が厳しい顔をしていることに胸を痛めた。結婚の挨拶の時に義実家を訪れた際も家族に無関心な義父と義兄の態度に驚いたものだ。逆に義母は朝陽に過干渉なようで成美を泥棒猫ばりに嫌っている。主に電話を寄越すのはその義母かららしいので、もしかしてその都度早く別れろとか言われているのでは?そう考えると居てもたってもおられず、アポなしで義実家を訪れた成美は成り行きで義母が無くしてしまったという思い出のネックレス探しを手伝うことになり・・・。夫の一大事とばかりに義実家に乗り込んだ成美は義母に罵声を浴びせかけられるもめげずに対話を望むと思い出のネックレス探しの協力を申し出ます。成美ちゃん、生真面目なだけでなく天然の気もあるので、義母の方もその反応に唖然。身重の身ながら休み休み探し回り、見事ネックレス発見に至り、義母に見直されるのでした。とはいえ、このお義母さん、根は悪い人でなく、家庭を顧みない夫と長男に不満があり、唯一相手をしてくれていた次男の朝陽に依存していただけという寂しい人でした。この出来事から、朝陽が間に入って義父母の仲を取り持ち、結果和解に至ります。そして、数か月後に成美は長女の清香を出産。中々タイミングが合わず、両実家の面々が顔を合わせる機会がなかったものの、清香の1歳の誕生日に漸く対面が叶い孫フィーバーに沸く親達との様子が描かれて本編は幕。書き下ろしの番外編は、相変わらずラブラブな夫婦のお話でした。ヒロイン・成美がとにかく好感持てる子で、外見も可愛いんだけどその性格に惚れたという朝陽の目は間違ってなかった。評価:★★★★★
2024.05.13
コメント(0)
2022年5月刊ベリーズ文庫著者:田崎くるみさん父の作った借金を返すため、危ないバイトをしようとしていたところを御曹司・誠吾に助けられた凪咲。そして、互いの利害の一致から契約結婚することに。やがて借金を完済し、円満離婚ーーしたはずだったのに、就職先の航空会社で敏腕パイロットになった誠吾と偶然の再会。「もう逃がさない」--とある理由から離婚を受け入れた誠吾だったが、凪咲への愛が一度溢れ出したら止まらなくて…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 鮎川凪咲=新人CA。恩人である誠吾と契約婚をしていた過去を持つ。 真田誠吾=凪咲の元夫。副操縦士として彼女と再会した。 館野=誠吾の先輩操縦士で機長。 金城満里奈=凪咲の先輩CA大学受験を間近に控えた凪咲は、父の酒乱とギャンブル依存症に悩んでいた。数年前、父が営む建築会社で働く従業員が金を持ち逃げしたことで倒産の憂き目に遭ったことからすっかり人間不信にとなり、以来、働きもせずに昼間から酒を飲んではギャンブルに明け暮れる日々。しかし、そんな父に借金が発覚。母を勝手に連帯保証人に仕立てて闇金から3百万も借りていた。最近は暴力まで振るうようになったためついに離婚の決意を固めていた矢先のことだった。このまま離婚して父が失踪でもした日には母が多額の借金を背負う羽目になる。考えた末、少しでも借金を返せるようにと凪咲が高額だが怪しげなバイトに片足を突っ込みかけた所を助けてくれたのが不動産会社の御曹司・真田誠吾であった。彼は泣きじゃくる凪咲から事情を聴いてある提案を持ち掛けた。借金を肩代わりし、離婚も出来るように弁護士も立てる。その代わり、期間限定で自分と契約結婚をして欲しいと。誠吾には余命宣告された祖父がおり、兼ねてより孫の嫁を見るまでは安心して死ねないと溢しているのだそうだ。だが、現在誠吾には交際している女性もおらず、頼めそうな者もいない。誠吾は報酬として5千万を支払い、父の更生にも力を貸してくれるという。しかも当面の間、生活に関すること全ての面倒も見ると。随分と気前の良い話だが、この時の凪咲はまだ高校3年生。フリだけでなくバレないよう万全を期して実際に婚姻届けも出すそうなので、これでも安いくらいだと言っていた。実のところ、誠吾は年齢を聞いて依頼を撤回しようと思っていたらしい。だが借金や彼女の父のことを思うとこの先どうしても大金が必要だろうし離婚についても妻の実家の問題として自分が助けてやれる。彼の本音を聞いた凪咲は覚悟を決めその申し出を受け入れたのだった。両親を早くに亡くした彼の親代わりだという祖父は凪咲を紹介すると大層喜び、誠吾を頼むと涙を流していた。凪咲は足繁く病院に通い祖父を見舞った。自分に出来るのはこれくらいだったが随分感謝された。3ヶ月後、祖父は息を引き取り、その喪が明けてすぐ二人は離婚。半年にも満たない結婚生活であった。あれから5年、大学を卒業し大手航空会社に入社した凪咲は憧れのCAになった。だが、初のフライトでの挨拶時に副操縦士として紹介されたのがまさかの誠吾でビックリ。彼にも夢があって会社は継がないとは言っていたが、それがパイロットだったとは。でも、向こうも気付いてるはずなのに初めましてと言われて少々ガッカリもしていた。それから3ヶ月、何とか大きなミスも無く業務をこなしていた凪咲は、再会時の態度は冗談ですばりに何かと誠吾からアプローチを掛けられて対応に困っていた。見ると結婚指輪もしているし、奥さんもいるんでしょと噛みつけば、外して見せられたそれが5年前のあの指輪と知って驚愕。契約婚だというのに祖父が亡くなった時は誠吾を精神的に支えてくれていた凪咲をずっと忘れられなかったと話す彼は再婚を望んでいたのだ。それに御曹司と言うことで彼にアタックする女性も多く、この指輪はいい虫除けにもなると言っていたが、再婚したいのは本心だとも言っていた。事情を知る母や友人の真琴からもそんなに思われてるなら復縁するのも良いのではないかと後押しされ、迷う凪咲。だが、先輩CAの金城が奥さんがいても誠吾へのアタックは止めないと息巻いているのを聞いて、複雑な心境に。結局自分も彼を忘れられなかったのだと自覚した。悩んだ末に彼からの求婚を受け入れる気になった矢先、凪咲は5年ぶりに父と再会。母との離婚時に弁護士に説教され、泣きながら更生すると誓ったはずの父は働いてはいるようだが未だに酒とギャンブルは止められないらしく、生活が苦しいからと凪咲に金を無心して来て・・・。このクソ親父、いい加減にしなさいよ、と読んでて本当に腹が立ちました。いつまで不幸な身の上に酔っているのか。酒飲んで大暴れした挙句ギャンブルで借金こさえて家族に逃げられたのは自分の弱さのせいなのに。何だかんだ肉親を捨てられない娘の優しさに付け込むとか。結局、いくらかお金を渡してしまったことで図に乗って空港で大声出して、金城に根も葉もない噂を流されてしまった凪咲は窮地に。金城さんも根は悪い人ではないんですが、誠吾のことと言い色々蟠りもあったのと、凪咲の父から嘘を吹き込まれていたことが判って後に和解に至ります。結構中盤で再婚の決心を固めていたので、随分早く纏まるんだなと思ったら、ここにきて最大の障害登場ですよ。誠吾の迷惑になりたくないと諦めかけた所、一人で悩まず彼に頼れと今まで何かと気にかけてくれていた機長の館野のアドバイスによって誠吾に相談することを決めるのでした。結果、元義息子に滾々と諭され、自分がいかに情けないことをしているか知った父は今度こそ立ち直ると約束し、立ち去ります。このやりとりが後に噂になって、凪咲が誠吾の妻に違いないと皆納得。館野による情報操作もあって二人は元夫婦だったという真実は伏せられたまま、再婚に至って本編は幕。書き下ろしの短編は2本。結婚式のメモリアルムービー用の写真が無いことに気付き、慌ててデートに行く二人のエピソードと、もう一つは本編から5年後、第一子・翼が産まれた時のお話。あのクズに成り下がりかけた父が立ち直ってくれたようで本当に良かった。こっそり結婚式に来てたことや、御祝儀に入ってたメモの件は読んでてもう泣けて泣けて😢評価:★★★★★
2024.05.02
コメント(0)
2024年4月刊ベリーズ文庫著者:蓮美ちまさん副社長秘書として働く凛。ある日、同僚である元恋人にひどい裏切りを受けた上、理不尽に罵倒されていた。そこに偶然居合せた副社長・亮介が助けの手を差し伸べてくれて…。申し訳なく思っていると、「俺の妻にならないか」と契約結婚を提案され…!? 冷徹なはずの彼は、なぜか凛の前では甘い一面を見せ始める。滲み出る独占欲に翻弄されっぱなしの凛。ただの契約妻なのに溺愛は加速するばかりで…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 立花凛=副社長秘書。真面目過ぎる性格を疎まれ恋人にフラれた。 海堂亮介=大手化粧品メーカーの御曹司で副社長。 原口孝允=凛の上司で元カレ。 近藤芹那=凛の後輩秘書。原口を横取りした。大手化粧品メーカーの秘書室で働く凛は、1年程交際していた彼氏・原口にフラれたばかり。原因は凛がヤラせてくれないからだそうだ。お互い初めての彼氏彼女だったから、ゆっくり焦らず行こうと言っていたのに、あっさり後輩に乗り換え、妊娠させてしまったと言うのだから呆れる。後輩・近藤芹那は貿易会社の重役のお嬢様だそうで、所謂コネ入社だ。勤務態度も褒められたものでなく、碌に仕事もしないので元々秘書室では嫌われ者だった。そんな芹那が堂々と原口との結婚と妊娠を発表したので、凛と仲の良い先輩は激怒していた。一層、自分への風当たりがきつくなったことから芹那は何を思ったのか、フラれた女はさっさと退社しろと迫って来たので、凛もキレた。流石に腹に据えかねて言い返せば、専務にコネがあるからいつでもあなたなんてクビに出来ると勝ち誇る芹那。そんな彼女の言葉を遮るように凛に助け舟を出して来たのは副社長の海堂亮介であった。彼は凛との交際を宣言。芹那にも専務に彼女をクビにする権限はない事を告げた。どうやら亮介も原口と芹那との物言いには思う所があったのだろう。あんな嘘までついて庇ってくれたのもそのせいだと凛は彼に礼を言った。しかし、あれは嘘ではなく本気で結婚したいと思っていると亮介から告げられて唖然。聞けば、彼の父である社長も凛の仕事ぶりと性格を褒め、息子の嫁にしたいと常々言っていたのだとか。そして彼の方も吝かではないとのこと。それはさておき、芹那の様子ではこれからも凛をクビに追い込もうと躍起になるはずだから、好き勝手させないためにも後ろ盾がいた方が良い。亮介の方も親はともかく仕事関係からの縁談がひっきりなしに来るので、断るのも一苦労。お互いメリットがあるので一先ず契約結婚でも良いから真剣に考えて欲しいと頼まれた。父が事故死して以来、子供4人を女手一つで育ててくれた母の助けになれば、と給料のほとんどを家に入れている凛にとって、給料の良いこの会社を辞職するのは避けたい。それに、コスメに憧れがあったからこの会社に入社したのだ。家族への支援含め自分と結婚してくれるなら悪いようにはしないと言われ、正直凛の心は揺れた。逆に自分のような地味な女でいいのかとも思う。しかし、案の定、翌日から芹那による嫌がらせは続き、それを注意しなければならないはずの直属の上司である原口は見てみないふり。先輩たちの助けで事なきを得ているが、余計な仕事を増やされて残業続きとなり毎日へとへとだった。それから暫く経った頃、一向に仕事をしない芹那が同僚達の批判を買って責められ、売り言葉に買い言葉で妊娠が嘘だったこと、凛から原口を横取りしてやりたかったことなどを口走って周囲はドン引き。開き直った芹那は今度は亮介に擦り寄り助けを求めたが、きっぱりと拒否られ自主退職することになった。この騒動の直前に凛は涼介の提案を受け入れ結婚を承諾。入籍もしていたので、それも芹那には気に入らなかったのかもしれない。芹那がいなくなると今度は何を思ったのか人妻になったと言うのに原口が凛に復縁を求めるように。もう結婚してるし有り得ないからと断り続けているが、尋常でない様子の原口に恐怖を覚えていた。それから少し経ったある日、亮介が手掛ける新ブランドコスメのお披露目間近になってそっくりな商品がライバル社から発売されることになり・・・。この元カレは一体何がしたいのか。禄でもないバカ女に騙されてヒロインをフっておきながら、副社長と結婚した途端に綺麗になった彼女に復縁を迫るとか。今更遅いっての。あと、当然ながら情報漏洩したのはこの元カレです。秘書室にある凛のPCを遠隔操作して資料をコピーし、ライバル社に送って報酬を貰いつつ彼女に罪をかぶせると言うなんとも卑劣な奴でした。凛のことをヤラせてくれないとか可愛げないとか罵ってたけど、こういう時にヤバイ本性が現れる男とは別れて正解。元カレがこんな調子なので、逆に亮介の株が上がる上がる。そりゃ、凛もすぐに靡いちゃうよなぁ。そもそも元カレのこと本当に好きだったのかも疑問だったし。当初は利害関係の一致からの契約婚のはずが、後に本人から撤回され改めてプロポーズされるのでした。そして新ブランドのコスメも大ヒット。数か月後に控えた式と披露宴について話し合う二人の様子が描かれて終わっています。書き下ろしの短編はとある事情で某「情〇大陸」的な番組の出演が決まった亮介のお話。評価:★★★★☆
2024.04.27
コメント(0)
2024年4月刊ベリーズ文庫著者:葉月りゅうさん天乃は脳外科医・夏生に片思い中だが、独身主義な彼との関係は8年も進展なし。そんなある日、病気が発覚して余命宣告される。少しでも夏生のそばにいたいと思った天乃は、縁談攻撃に困っていた彼に病気を隠し、期間限定の偽装婚約を持ちかけて…。実は一途な恋情を秘めていた夏生は溢れるほど溺愛を注ぎ込む。ずっと一緒にはいられないと天乃は姿を消すがーー「未来は俺が作ってやる」深すぎる純愛に包まれて…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 清華天乃=健康食品会社に勤める会社員。 ある日病気発覚の上余命宣告をされた。 芹澤夏生=凄腕の脳外科医で天乃の想い人。 東雲=夏生が勤める白藍病院長の娘。健康食品会社で営業アシスタントをしている天乃は、ある日駅のホームで躓き転びかけた所、その場に居合わせた老医師の強い勧めもあり彼の病院で検査を受けた結果、脳腫瘍と診断された。知らせを受けて飛んできた家族も病状を聞いて茫然としており、念のためと老医師に言われ設備の整った大きい病院で診てもらったが結果は同じで、脳腫瘍のグレード3か4であろうと。このままではもって3年、早ければ1年半の命。病理検査をしていないので良性の腫瘍の可能性も無くはないそうだが、位置が悪くここでは手術は出来ないとも言われてしまった。天乃にしてみれば確かに最近頻繁に生じていた手のこわばりに頭痛、腕が上がらない程の肩の痛み、何もない所で躓くなどの自覚症状があったものの、まさか脳腫瘍だなんて。娘が余命宣告されたことで家族は天乃の親友・秋奈の兄である脳外科医の夏生ならきっと、と彼が勤める白藍病院への転院を薦めたが、天乃は頑として譲らず、夏生にも秋奈ともう一人の親友・慎太にも余計なことは言うなと口止めし、本来ならすぐ入院しなければならない所をある願いをかなえるため1ヶ月の猶予をもぎ取った。その日、営業先でもある白藍病院に出向いた天乃は、院長の娘だと言う東雲から猛烈なアプローチをされて困り果てている夏生の姿を見て、思わず助け舟を出してしまった。東雲を引かせるための言葉はマウントと思われたようだが、二人は特別な関係と受け取ったのか一応その場は引いてくれた。なんか言動がかなり天然な印象の東雲だが、夏生の方もあのめげないアタックぶりには辟易していたらしい。天乃を見ると婚約者のフリをしてくれないかと頼んで来た。実は東雲以外にもかなりの人数からその手のお誘いが来ているようで、脳外科医として多忙な彼は余計なことに気を取られたくないのだとか。これはなんという好機。1ヶ月の間にやりたかったことが叶えられるではないか。天乃は初めて会った8年前からずっと夏生に想いを寄せていて、彼と最後の思い出作りをしたかったから。偽装とはいえ、以来、周囲に不審に思われない様、デートにも行ったし、パーティーの同伴もした。しかし、東雲はまだ夏生を諦めきれないようで、二人の関係を疑っていた。ずばりと切り込んで来られた時には焦ったけれど、偶然にもその時急に文章の理解度が落ちた上に喋れなくなるという症状に襲われた天乃は碌に受け答えが出来ず、一層不審に思われてしまったみたいで万事休す。幸いにも数分で症状は治まったものの、ここ最近急に病状が進行したように思う。脳外科で有名な白藍に入院し、夏生に手術して貰うのが一番なのは判っている。でも、記憶を失くして喋れもせず寝たきりになった自分の姿を見られたくなかった。入院もあるので期間限定と決めていた偽装婚約者の役割が終わる日、夏生から好きだと告白された天乃。両想いだったのは嬉しいが、受け入れる訳には行かずに別れを告げた。職場の上司には病名を明かし、休職という形で取引先にも挨拶を済ませると、秋奈達にも打ち明けた際、夏生には言わないで欲しいと頼んだ。最後に白藍病院の担当者にも挨拶に行くと東雲に呼び止められ、偽装婚約だったことがバレて責められた。でも好きな気持ちは負けないと自らの想いを語った天乃の姿に東雲は漸く腑に落ちたようだった。しかし直後に天乃は昏倒。そのまま白藍に入院となったせいでカルテから夏生に脳腫瘍であることを知られてしまい・・・。余命ものです。タイトルにかりそめ花嫁とありますが、内容的にはかりそめ婚約者ではないかと。それはさておき、脳腫瘍の症状が徐々に表れるシーンがとにかく怖くて、好きな人には綺麗なままの自分を覚えていて欲しいという乙女心なんて捨てて、早く彼に手術してもらいなよ、とモヤモヤ。結局、倒れて搬送されたのが白藍病院だったのと、腫瘍が難しい位置なので、執刀できるのは夏生だけ。嘘もバレたし、東雲から発破もかけられたこともあって、覚悟を決め、夏生に委ねる天乃。腫瘍が言語野領域にあるため、手術中に本人を起こして確認を取りつつ摘出して行くと言う空恐ろしい手術を無事乗り越え、全摘に成功。病理検査の結果、腫瘍は良性、しかも髄膜種だったと判明して再発の危険性はほぼ無し、定期健診は必要になるものの今後の生活に支障はないと判断されたのでした。いやー、ホント良かった。やっぱりあの症状を読んでるとね。最初に天乃の症状に気付いたあの老医師が診てくれてなかったら、知らずに病状が進んでたと思うと感謝しかないですね。実はあの老医師は脳外科の権威で夏生の父と言うのが明かされてビックリ。後に夏生から再び告白され、二人は結婚して本編は終わっています。書き下ろしの番外編は本編ラストから5年後のお話。3歳になる一人息子が早くも将来有望感を発揮していました。評価:★★★★★追記最近予約投稿してるんですが、プレビューでチェックしてる割に誤字脱字が多くて_| ̄|○今回なんて評価を★5で打ったはずなのに、見返したら3つしか出てなくて慌てて直しました。すみません、気を付けます。
2024.04.21
コメント(0)
2024年4月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さんドクターヘリの運航管理士として働く真白。そこへ、2年前に真白から別れを告げた元婚約者・篤人がパイロットとして着任する。ある悩みを抱えている真白は、彼の幸せのために身を引いたのだったが…。真白が今も独り身と知った篤人は、甘く強引に距離を縮めてきて!? 「泣かせないよ、俺が」--空白の時間を感じさせない篤人の深い愛に戸惑いつつも、真白の心は彼でいっぱいに満たされていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 遠野真白=ドクターヘリチーム所属の運航管理士。小日向篤人=ドクターヘリチームのパイロット。真白の元婚約者。 綾瀬海里=篤人の友人のフライトドクター。 田崎京香=美容師。海里の妻で真白とも親しくなる。兼ねてよりの夢だったヘリコプターのパイロットとなった真白は、持病の悪化から夢を断念せざるを得なくなった。今はパイロットを引退し、医療センターのドクターヘリチームの運航管理士をしている。だが、そこでかつての婚約者・小日向篤人と再会。結婚直前に、他に好きな人が出来たと最悪な嘘までついて別れた彼は、最後まで婚約解消を渋っていたけれど、真白の意を汲んで最終的には応じてくれた。現在、篤人とは職場では事務的な会話しか交わしていないものの、彼が未だに自分に未練があることはその態度で察せられる。そして、復縁したいと思っていることも。そんなある日、篤人に無理矢理新居の物件探しに付き合わされた真白。不動産屋でおススメされたマンションは奇しくも自分と同じ所ではないか。真白の様子から、この部屋を即決した篤人は早々に引っ越してきて、お人好しな性格の彼女に付け込んでは手料理をせがんで来る。元々、彼は料理がからっきしなのは承知していたので、大事なドクターヘリのパイロットの健康維持に協力するのは吝かではない。篤人の親友の海里の愛妻弁当と真白が作った弁当の自慢大会をしているのは居た堪れないが、こうしていると当時に戻ったような気がする。篤人からの猛アプローチも激化して来ているものの、自分は応える訳にはいかない。つい、気が立って篤人に悪態をついてしまった真白は落ち込むも、彼は以降も態度を変えない。篤人が嫌いになったからではなく、何か悩みがあることにも勘付かれているようだ。その日、朝から体調不良だった真白は眩暈を起こして昏倒しかけ、半休を取った彼女を翌日海里が診てくれた。篤人に頼まれたと言う海里にさすがに医師に隠し通せないかと悟った真白は自身の持病のことを話した。甲状腺疾患によりパイロットを続けられなくなったこと、卵巣機能の低下により妊娠できない体であることを打ち明け・・・。ドクターヘリシリーズの2作目です。前作の主役CPである海里と京香も登場し、重要な役割を担っていました。ので、1作目を読んでからの方が楽しめます。今作のヒロイン・真白は自己免疫疾患で甲状腺に異常が起こり眩暈などの症状からヘリのパイロットの仕事も断念。更に卵巣機能の低下でずっと生理が止まって妊娠の確率は5%もないと医師から告げられ、悩んだ挙句篤人との結婚を諦めました。篤人は大の子供好きで、二人は欲しいんだと未来予想図を語る彼に子供を産めないとはとてもじゃないけど言えず、悩んだ末に別れを切り出したのです。とはいえ、彼の方も当時の真白が何か抱えていることに勘付いていて、一度離れることで彼女が楽になれるならと応じたという。海里のアドバイスと京香の励ましにより、篤人と向き合うことに決めた真白は持病と不妊であることを打ち明けたのでした。篤人はそんな辛いことで悩んでたんだなと理解してくれ、子供は好きだし欲しいとは思っているが、先ずは何より真白と共に生きたいのだと告げ、二人は復縁。職場にも入籍することを報告し、海里に紹介状を書いてもらって不妊治療の最先端技術を持つ、野上総合病院の婦人科で不妊治療を受け始めた真白。野上の婦人科の女医さんもこの作家さんのベリーズ作品ではサブレギュラー化していますね。時は流れ、辛い治療も真白の身体の負担を考え3年と決めて挑んだ結果、ギリギリで妊娠に成功し喜ぶ二人の様子が描かれて本編は〆。おまけの番外編は、それから約2年後のお話で、1歳になった長男との一コマでした。運航管理士という職業、この作品で初めて知りましたが、天候によっては飛ぶ飛ばないなどの判断を下したり、今作のようなドクターヘリの場合は事前に受け入れられる病院のPUもするという、かなり大変な役割。元々パイロットだったんだし、地頭が良いんでしょうね。評価:★★★★★前述の通り、2作続けて読むのがお薦め。
2024.04.15
コメント(0)
2023年7月刊ベリーズ文庫著者:夏雪なつめさん彼氏に浮気されて家もお金も失ったOLの紬。実家に帰ると借金取りがいて脅される始末。そこに、父に恩があるという老舗呉服店の御曹司・秋人が現れて…。借金を肩代わりしてくれた彼と契約結婚することに! 威圧的な印象の秋人を嫌悪していたのに、なぜか甘さを増していく彼の溺愛に翻弄される日々。「いいだろ、夫婦なんだから」--痺れるほどの熱情を刻み込まれると、もう陥落寸前で…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 滝沢紬=父の借金の肩代わりをしてくれた秋人と契約結婚をした。 貴島秋人=老舗呉服店副社長。 花香藍=秋人の友人の茶道家。貴島小乃羽=秋人の義姉。小さな電子機器メーカーで働く紬は、最近とことんツイていない。同棲していた年下の恋人に浮気をされた挙句、家具家電一切と預金通帳とハンコを持ち逃げされ、部屋はすっからかん。財布に入れていた3万円が全財産となってしまった。しかも、あのクズ男は紬のカードで散財していたらしく、その支払いで給料が吹っ飛んだ。当然カードは現在利用停止にしているが、これではお人好し過ぎて借金を背負ってばかりいる父を責められない。先輩からもあんなヒモ男とは別れた方が良いと言われてたのに。とはいえ、浮気はともかく、こんな泥棒紛いのことまでしでかすとは思わないではないか。ため息を吐きつつ、いつものように出社すると、入り口に人だかりが。ドアに貼られた紙の文章を読んで紬は茫然。なんと会社が倒産してしまっていたのだった。踏んだり蹴ったりとはこのことか。一時的に困窮しようとも正社員だから何とかなると思っていたのでもう笑うしかない。失業保険は出そうだが心もとないのでアパートを引き払い父を頼ることにした。申し訳ないけど次の職を見つけるまで実家に住まわせてもらおう。一応、留守電に近々帰る旨を知らせ、数日後実家に戻ると、父の営む呉服店の入り口には閉店しますの文字。焦って家屋の方に行くと父の姿はなく、事情を綴った手紙ととある人物の名刺が置いてあった。どうやら父はそのお人好しぶりに付け込まれ連帯保証人になっていたようだ。そして、借金した当の本人はドロン。父に返済義務が出来てしまい、その金額なんと3千万。返すあてが無いからか父は雲隠れしたようで、間の悪いことに丁度手紙を読んで真っ青になっていた所に借金取りが来てしまった。見るからにカタギじゃない男たちは払えないなら紬を風俗で働かせると恐ろしいことを言ってるし、一人パニくっていた彼女は突然現れた一人の青年に助けられた。彼は貴島秋人と名乗り、紬の父に頼まれてやって来たと告げた。そういえば、彼の名刺が手紙の横に置いてあったっけ。秋人は闇金業者に3千万は自分が払うと言い、弁護士から連絡をさせるからと彼らを追い払ってくれた。彼のおかげで一先ず助かったようだが、家に上げた秋人から借金を肩代わりした代わりに俺の妻になってくれと言われて仰天。聞けば、秋人の祖父は紬の父に大恩があり親しい友人同士でもあったのだとか。その縁で彼の母とも懇意にしていたそうで今回の借金の件も恥を忍んで秋人の母に相談したらしい。どんな条件でも飲むと土下座したした父が承諾したのはお互いの子ども同士の結婚。顛末を聞いて、いくら切羽詰まってたからって娘を借金のカタにするなんて、と紬は憤慨したが、約束を反故にした場合耳を揃えて金を返して欲しいと言われ、条件を飲むしかなかった。それにしたって、父の店とは比べ物にならない程の老舗呉服店の後継者の妻が自分のような女で彼の方こそ良いのだろうか。しかし、秋人の方もこの結婚に関して多少のメリットはあるらしい。契約婚だと思ってもらえばいいと押し切られ、渋々婚姻届けにサインした紬は、その日のうちに秋人の住む屋敷に連れて来られ同居することに。最初の頃は秋人の俺様な性格に腹を立ててばかりだったが、一緒に暮らすうちに口は悪くても優しい人だというのは判って来た。結局絆されてしまう自分は単純だなと思いつつ、大嫌いだった着物の着付けや生地の勉強も始めた紬。昔、夫と娘を捨てて男と逃げた母は着物の似合う美人だった。だから、呉服屋の娘ながら着物に良い印象が無い。それでも母が結婚式で着たという赤い色打掛は処分できずに大事に持っている。かなりの値打ち物と聞いているが、元カレには価値が判らなかったようで持ち出されずに済んだのは不幸中の幸いであった。母への複雑な心境も秋人にはバレバレで、図星を刺された際は言い合いに発展したけれど、以来彼との距離も近付いて来たと思う。秋人の友人で茶道家の藍とはチャラチャラしてるが、話上手で慣れない日々の癒しとなり、秋人がヤキモチを妬いていたと聞いた時には心底驚いた。暫く経って、藍との会話をきっかけにそういえば秋人の実家に挨拶していないと今更ながら気付いた紬は彼に尋ねるとその必要はないときっぱりと告げられ、紹介する価値も無い存在なのかと胸を痛めた。だが、後に秋人から彼の祖父が病で倒れてからお家騒動が起こり、秋人の両親が経営方針で揉めに揉めて離婚。姑と秋人が貴島呉服店を引き継ぎ、舅と彼の兄・瑛士がそのライバル社を立てたことで今も絶賛対立中だと言う。そりゃ、不仲な家族に合わせるのを躊躇うよねと藍からも言われて、祖父が亡くなってからは更に激化しているらしい。お互い、祖父のためという名分なので双方一歩も引かずな状況下、あちらがスパイとして店に潜り込ませていた男の暴走により、紬が襲われそうになったことで秋人が激怒。流石にやり過ぎだと向こうも認めたようで謝罪のつもりか、祖父の七回忌に舅の屋敷を出禁になっていた秋人が招かれた。紬も同伴し、漸く彼の家族と会うことができたのだが、案の定空気は最悪。瑛士の妻の小乃羽がムードメーカーなおかげで多少は救われたものの、瑛士から自分の妻は弟の初恋の人で未だに想いを寄せているんだと聞かされ・・・。薄幸というよりは不運続きって感じのヒロインですが、結局は色々な積み重ねで生涯の人と出会ったって感じのお話です。ヒーロー・秋人の家は上記の理由で絶賛大喧嘩の真っ最中。義兄もわざわざそんな告げ口せんでも。性格悪すぎる。余りにも気になって、後に秋人本人に紬が率直に聞いた所、初恋なのは確かだけど小学生の頃のことで今は幼馴染であり義姉という感情しかないときっぱりと否定。モヤモヤも晴れてた上に、彼から今好きなのは紬だと告白され両想いに。とはいえ、まだまだ問題は山積み。この結婚の本当の理由やあの色打掛に纏わる秘話などが明かされ、それが秋人の両親たちをも巻き込んで良い方向へと進んでいきます。まぁ、この直前に行き違いがあって破局の危機も有ったりするんですが、かなりの終盤なので解決も早かった。紬の母も実は駆け落ちとかではなく嫁姑問題が拗れて出て行っただけだという(^_^;)なんで親戚連中も不確かな噂話を子供の前でするのか。でも、秋人の采配により二人の結婚式で母子の再会が叶って本当に良かった。例の3千万は起業して社長になっていた紬の母が返済したというオチも。実のところ、序盤を読んでた時にあの元カレが再び現れてまた何かしでかすのかと思ってましたw評価:★★★★☆
2024.04.11
コメント(0)
2021年2月刊ベリーズ文庫著者:砂川雨路さん弁護士の修二と婚約中だった陽鞠は、ある理由から結婚目前に別れを決意。しかしその時、陽鞠は修二の子どもを身ごもっていて…。ひとりで出産した娘を育てて2年が経った頃、修二から急に「会いたい」と連絡がきて戸惑いが隠せない。意を決して会ってみると、熱い視線で組み敷かれたうえに、復縁を迫られて…!?空白の時間を埋めるように一途な溺愛を注がれて、陽鞠の心は乱されていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 平坂陽鞠=フラワーショップで働くシングルマザー。 和谷修二=陽鞠の元婚約者の弁護士。平坂まりあ=陽鞠と修二の娘。 矢沢麗奈=修二が勤める法律事務所の事務員。 佐富=陽鞠の店で働くアルバイト店員。大学のサークル活動が縁で知り合った修二と陽鞠は、3年の交際を経て婚約まで漕ぎ着けた。だが、入籍間近のある日、二人は破局。お互い意地っ張りだったのもあるが、妊娠をきっかけに仕事を辞めることになった陽鞠が体調不良とストレスもあって始終機嫌が悪く言い合いになることもしばしばだった。修二も弁護士になったばかりで仕事を覚えるのに一苦労していた時期、心に余裕も無くなってついに彼の方から暫く距離を置こうと切り出されてしまったのだ。このままでは心無い言葉で傷つけ合うだけ。陽鞠が実家に帰って数か月後、長女・まりあが産まれた。修二に知らせると以降毎月きっちり養育費を振り込んで来て、再三に渡り認知をしたいと言って来ている。あの別れから3年経った頃、修二から娘に会いたいとの連絡が入り、陽鞠は迷っていた。使わずに貯めているが、養育費を貰っている手前彼にもまりあに会う権利がある。両親からも流石に会わせてあげないのは可哀そうだと説得されて、漸く決心した陽鞠は次の休日を指定して会うことに。写真は定期的に送っていたけれど、やはり実際に目にすると違うのかまりあを見た修二は涙を流して喜んでいた。そんな彼を見て今まで娘を会わせなかったことを反省した陽鞠。まりあも血の繋がり故かすぐに修二に懐き、あの日から父に会いたがっていた。タイミングよく修二からも定期的に会わせてほしいと頼まれて承諾すると、足繁く通って来ては着実に娘との絆を深めていっている。そんな最中、両親が長年の夢だったというヨーロッパ旅行に行くことになり、保育園のお迎えを頼めなくなってしまった。期間は約一ヶ月。卒業シーズンで花屋は繁忙期というのに間の悪いことに上司が悪阻で寝込んでしまい人員不足でてんやわんや。頭を悩ませていると両親が連絡したらしく、修二がお迎えしてくれるという。有難いけれど、イヤイヤ期に突入したまりあはかなり手強い。案の定扱いに苦労しているようだが、娘可愛さの前には些末事のようだ。帰宅すると修二がいるのは変な気分だけれど、実際かなり助かっている。今回で如何に両親に頼り切りだったのかを痛感した。フルタイム勤務でのワンオペ育児は厳しい。そのせいか修二からやり直さないかと打診され、気持ちが揺れた。自分の厄介な性格は知っているので、また喧嘩三昧になりそうなのが怖い。まりあのためにも再構築した方が良いのは判っているが、修二の献身は単に子供の親権が欲しいだけなのではとの店のバイト・佐富からの言葉が頭に引っかかっていてどうしても素直になれない。なのに、実際に彼の口からまりあのためにも結婚しようと言われた陽鞠は、プロポーズを断っただけでなく二度と来るなと激怒し・・・。両想いCPの復縁話です。キャリアウーマンだった陽鞠が妊娠発覚により出世を諦めざるを得なくなり、ストレスから恋人・修二に当たってしまい大げんかの末破局。別れた経緯から自分の性格の厄介さが身に染みて、修二からの求婚にも素直に応じることが出来ずって感じでまぁ読んでてじれったいこと。修二の切り出し方も、おいおい、娘をだしにするから誤解されるんやで、と。若手敏腕弁護士なんだからもっとうまく立ち回りなさいよ(^_^;)不器用な両親を他所に、娘のまりあは何故父と暮らせないのか判らず不満に思っているようで、そんな様子を見ていると陽鞠も意地張ってる場合じゃないなと思い直すように。その間、修二に好意を寄せている矢沢から、その気がないなら彼を解放してくれと頼まれ、どういうことだと彼と言い合いになったり元鞘に戻るまで長い長い。矢沢の件はただの独り相撲ですぐ解決するものの、陽鞠に想いを寄せる佐富がまた不安を煽るようなこと言うんですよ。上手く行ってほしくない横恋慕連中もウザイし、勤め先のパート店員とか人の恋路に口出し過ぎwwwしかもそれを真に受ける陽鞠の面倒臭さよ(苦笑)こんな調子で色々起こるものの、子は鎹、そして嫌いで別れたわけではないのとキャリアとか無関係な生活になったのも功を奏したのか陽鞠も素直になって結婚を承諾。エピローグではそれから2年後、第二子にも恵まれた和谷家の様子が描かれて終わっています。書き下ろしの番外編は、入籍して半年絶った頃の二人のデート話でした。評価:★★★★★
2024.04.03
コメント(0)
2018年9月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん総合商社勤務の葉月は、失恋のトラウマを乗り越えるべく営業の仕事に没頭中。ある日、仕事上の憧れの存在である部長・一ノ瀬の自宅に呼ばれ「君に夢中だ」と告白される。次期社長かつ超エリート御曹司の彼から日夜熱烈なアプローチを受け、戸惑うばかりの葉月。だけど一ノ瀬は「知ってるだろ?狙った獲物は逃さない」と宣言!色気たっぷりに迫られ陥落寸前、葉月のドキドキはもう止まらず…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 北里葉月=会社員。失恋のトラウマから仕事一筋になっていた。 一ノ瀬悠馬=大企業の御曹司で葉月の上司。 総合商社のライフテクノロジー事業部の営業として働く葉月は、2年前、婚約者の裏切りでフラれて以来、恋とは無縁の日々を送っていた。現在、憧れている人はいるけれど、その人は遠い異国にいる。彼が帰国した時に少しでも成長したと思ってもらえるよう頑張らなければ。そう思っていた矢先、急遽帰国が決まったとかで、彼が帰って来た。一ノ瀬悠馬は葉月の勤め先・三谷商事の社長の息子で、後継者と噂されている。だが、親戚筋の常務もその座を狙っているらしく、悠馬が海外転勤になるまで派閥は真っ二つに割れていた。とはいえ、突出して仕事ができる訳でもなく口ばかりの常務の味方はこの2年で大分減り、向こうで多大な業績を上げた悠馬がこうして本社に戻って来たのだから次の後継者は彼に決まったようなものだろう。そのうちに、石油事業部に移動して昇進するのではと言われている。そんな悠馬の帰国を祝う飲み会が開催され、一次会だけで抜けようとしていた彼女を悠馬が追いかけて来たと思うと、二人でゆっくり話したいという。葉月は悠馬の弟子みたいなものだったから色々聞きたいことがあるのかもしれない。しかし、彼が聞いてきたのは意外なこと。とっくに結婚していると思っていたとは?そういえば、悠馬の海外転勤の直前に彼氏の有無を聞かれて実は結婚も決まってると話したことがあったっけ。実は破談になったんですとあっけらかんと答えると彼は心底驚いている様だった。原因は婚約者の浮気。仕事柄忙しくしていた自分にも非があるかもしれないが、相手はこれで二度目の浮気ということもあってさすがに許せる範疇を越えていた。おまけに開き直った彼に浮気をしたのはお前せい、可愛げないからだと逆に責められたことで葉月は非常に傷付いていた。両親には泣かれるしで、何だかどうでもよくなってこの2年お一人様状態だ。話を聞いていた悠馬は哲也に憤慨していたが、今フリーということなら俺と付き合ってくれと交際を申し込んで来た。なんと、そんな素振り一切無かったのに、彼はずっと葉月のことを想ってくれていたらしい。婚約者がいると聞いて諦めようと思っていたが、帰国してみれば別れたと聞いて今度こそはと引くつもりは無いと意気込んでいた。張り切っているところを悪いが、あの失恋が思っていたよりショックで恋愛はもうこりごり。そう告げてみたものの、悠馬の気持ちは変わらず、以降プライベートになると口説いてくるので、次第に絆されてしまっている。我ながらちょろいと思わないでもないが、彼といると楽しい。友人以上恋人未満な日々が続いた頃、仕事のトラブルでピンチに陥った葉月をフォローし、立ち直らせてくれた悠馬の姿を見て、彼が好きだと自覚。気持ちを告げると悠馬は大喜びで、なし崩しに半同棲に持ち込まれてしまったが、拙い自分の料理を美味しいと食べてもらえると嬉しいし、悠馬の恋人の座を狙うアメリカ人のキャサリンの登場には少しヤキモキもしたけれど、全く揺らがない彼の態度に惚れ直したりもした。その後、同窓会で哲也と再会した時は、当時、葉月の両親が彼の不実を責めていたというのも初めて知った。それが原因で浮気相手とも破局したというのは自業自得だろう。その夜、両親に好きな人が出来たと報告した際は、とても喜んでもらえて悠馬も今度挨拶に来てくれるという。しかし、ここ最近になって葉月はある不安に苛まれていた。大企業の御曹司である悠馬に一般家庭の娘の自分は彼の父に歓迎されるんだろうか。そう思っていた矢先、やはり二人の結婚は悠馬の父に猛反対されて・・・。ここにきて立ちはだかる格差婚という壁。でも、悠馬は自分の嫁は葉月以外考えられない、どうあっても許してくれないなら家を出ると宣言。当然後も継がないと言ったら社長は大慌て。とはいえ、上流社会の嗜みを知らない妻なんて、という社長の言い分も判る。ならば、着付けや茶道など時間を貰えたらマスターしてきますと葉月はその日から猛特訓。3ヶ月後、付け焼刃ではあるものの、なんとか社長も納得いく結果を出し、結婚も認められて本編は幕。書き下ろしの後日談は、入籍して彼を支えるために退職した葉月がアメリカへの海外赴任にもついて行き、内助の功で頑張るエピソード。仕事はできるけど、恋には少し不器用なヒロインが心底自分に惚れているヒーローに愛され幸せになると言う、8年くらい前の本のせいか内容自体は至ってシンプル。古き良きオフィスラブって感じのお話です。ヒーローは仕事面では厳しいものの、プライベートではヒロインを溺愛。まぁこれは元カレとの対比でもあるんでしょうが、つくづくあんな最低男と結婚しなくて良かった。直前で判っただけでも良しとしなければ。そして、いつもの如く今回のヒーローは他のお話のヒーロー達とも友だちで、名前だけですが登場。弁護士の九条さんと美容師の渡会さんはもうレギュラーキャラですねw評価:★★★★☆
2024.03.31
コメント(0)
2024年3月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん美容師の京香は、密かに想い続けていた幼なじみの海里と偶然再会。フライトドクターになっていた海里は、悪質な男性客に悩む京香を心配し、偽装結婚を提案してきて!? 訳あって彼に頼ることは避けたいのにーー。強引な彼に言われるがまま始まった新婚生活では、甘い言葉と触れ合いに陥落寸前! 「俺が何年この日を待ってたと思ってるんだ」--熱を孕んだ瞳で、身も心もすべてを独占されて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 田崎京香=美容師。天涯孤独の身の上で幼馴染の海里だけが心の拠り所だった。 綾瀬海里=京香の幼馴染のフライトドクター。 渡会匠=京香の師匠兼親代わりのカリスマ美容師。 生駒光=人気俳優だが女癖が悪く京香に言い寄っている。 吉武恵麻=一時期京香が身を寄せていた後見人一家の娘。カリスマ美容師・渡会匠が営むヘアサロンで働く京香はこの店では古株に当たる。とある事情で高校中退の上、身元保証人もいない自分を雇い美容師としてここまで育ててくれた渡会には感謝してもしきれない。最近は指名も増えて、カットに関してはお墨付きをもらいそこそこ自信も付いて来た。だが、そんな彼女の頭を悩ませているのが常連客からのお誘いだ。実は人気俳優・生駒光から連絡先を渡され、脈無しと思ってもらえるよう無視していたのだが、彼は諦めず余計にその気にさせてしまったらしい。自分がフラれるとは想像すらしていないようで、暇さえあれば店にやって来る。有名芸能人ということもあって対処に困っていた。そんなある日、親友がストーカー化した元カレが起こした失火により大火傷を負う事件が発生。その際、事故の原因になった元カレの方が重傷と判断しヘリ搬送した救急医を思わず罵倒してしまった京香は、日が経つにつれ酷いことを言ってしまったと猛省していた。親友は確かに大火傷だったけど腕のみで、元カレは半身がその状態。どちらか優先か明かだったのに。休日、京香は菓子折りを持って件のドクターを尋ねると、なんと彼は幼馴染の海里ではないか。12年ぶりの再会に二人は唖然。あの時はほとんど背中を向けてたのでお互い全く気付いていなかった。一方、海里の方はずっと探していた京香と会えて絶対に逃がすものかと、彼女から連絡先を聞き出し、今夜また会おうと約束を取り付けた。その夜、改めて会った二人。京香は彼から何故あの時姿を消したのか問い詰められ、当時の出来事を話し始めた。お互いが中学生の頃、京香の両親は多重衝突事故に巻き込まれ亡くなった。家族ぐるみで親しくしていた海里の両親が葬式等取り仕切ってくれて抜け殻のようになっていた彼女を叱咤激励し立ち直らせたのは海里だった。しかし、京香が未成年と言うことで後見人制度が適応され隣町に住む遠縁の吉武家に引き取られることとなった。しかし、吉武家に身を寄せた京香を彼らは厄介者扱いした挙句、家事の一切を彼女に強要。時に暴力を振るわれることもあり、娘の恵麻はどうしてか京香をライバル視しては嫌がらせをしていたという。それでも高校を出てしまえばと我慢はしていたが、ギャンブルで借金苦となった吉武が勝手に田崎家を売却。遺産と保険金があるのに京香の学費が嵩むからとの言い訳に我慢できずに家を飛び出し途方に暮れていた所を渡会に拾ってもらったのだと。想像以上に壮絶な過去に海里は絶句し、何の力にもなれずに申し訳ないと詫びたが、今思えば高校生だった彼にはどうしようもないことだったと思う。でもそれはそれ、せめて後になってもいいから連絡はして欲しかったと怒られた。詫びの代わりに髪のカットを頼まれ二つ返事で引き受けた。翌日、またもや生駒に言い寄られていたのを助けてくれたのは、店を訪れた海里だった。生駒に難癖を付けられ、ただの幼馴染の関係では引かないだろうと咄嗟に俺の婚約者に手を出すなと啖呵を切った海里は、もうすぐ結婚すると宣言。京香も思わずその場は話を合わせてしまったが、海里はどうやら本気らしい。生駒がストーカー化したら拙いし、一先ず偽装でも結婚しようと押し切られ、彼女の親友の事件も記憶に新しいこともあり渡会も二人がそれでいいならと賛成してくれた。海里の勤め先である総合病院の近くに支店があることもあって、これを機に千葉の店に移り彼との同居も決まってしまった。しかも飽く迄偽装のつもりだったのに生駒に調べられたら厄介だと本当に入籍することに。海里の本音としては身の安全の為と言いつつ、京香を口説き落とすつもりだったし、ゆっくり仲を深めていく算段だった。そうとも知らず、ずっと好きだった彼との同居に京香はドキドキ。甲斐甲斐しく食事を作り、毎日お弁当も渡している。総合病院の訪問美容の仕事も引き受け、充実した毎日を送っていた京香だったが、吉武家にいた時、一際彼女を虐めていた恵麻と再会し・・・。当時の後見人一家がマジでクソ。ちゃんと遺産から生活費は払われてるのに厄介者扱いした挙句家政婦としてこき使ってたとか信じられない。おまけに勝手に思い出の実家を売っちゃうなんて。とはいえ、当然これは逸脱した行為なので、相談を受けた渡会から後見人選定の際に間に入った弁護士に連絡が行って、吉武家での京香の扱い含め資格なしと認定され後見人から外されていました。当然、接近禁止令も下されており以降連絡も一切取っていなかったのに、恵麻は海里の気を引きたくて京香からたまにだけど電話がくると嘘を吐き、彼に会う口実を作っていました。昔から海里に興味があり、京香には彼と付き合ってると嘘までついていたというから本当に質が悪い。家出の原因も勝手に勿論家の売却に腹を立てたからだけど、この嘘で絶望したのも大きな原因でだったのです。恵麻を問い詰めた結果、真相を知った海里は大激怒。でも海里を奪おうとしたのも過剰な嫌がらせも両親から出来の良い京香と比べられ悔しかったからと本音を吐露。あの後見人夫婦はホント、碌な事をしない💢気持ちは判らないでもないけど、それは虐めをしていい理由にはならないからね。海里への嘘含め、恥ずべきことをしていたのだと京香に諭され、恵麻も泣いて謝罪し改心したようなのでまだ人として救いはありそう。こんなのでも許そうとしちゃから京香は凄いなぁ。私なら絶縁を続行する。生駒氏は以降も問題行動を起こし、弁護士が間に入る結果に。その際、顔が売れているのを利用して京香を悪者に仕立てたせいで渡会の怒りも買って苦しい立場に追い込まれていた所、事故に遭い海里に救われるという。この辺りの展開はセオリー的にそうなるとは思ってましたw 医師なんだから親の仇だろうと助けるという海里の言葉に思う所あったのか生駒も考えを改め、後に謝罪という流れとなりました。訪問美容のエピソードが読んでて何だかもう泣けて泣けて、あと基本的にこの作家さんのベリーズ文庫は世界観が同じなのであちこちに見知ったキャラが出て来てムフフ。弁護士の九条さんは結構な出現率で、渡会さんもちょこちょこ見かける印象。あとがきでこの渡会さんのエピが見たいとリクエスト来るけどレーベル的に無理と書かれてて、どういうこと?そもそもベリーズでNGな題材があると言うのが意外。なんにせよ、余計にどういう話なのか気になるわ~。評価:★★★★★4月に出るスピンオフも楽しみです。
2024.03.26
コメント(0)
2024年3月刊ベリーズ文庫著者:小嶌あおいさん人生9度目の不遇な公爵令嬢・シシィナ。継母と義妹に虐げられた挙げ句、結婚相手に毎回殺されてしまう。最悪な結末を避けるべく、今世は公爵家から脱出するためこっそり働くことを決意! 紹介された働き先はなんと王太子・ルディウスのお仕事補佐。だけど彼は自分にだけ冷たくて…。気まずく思っていたけれど、ひょんなことから溺愛モードに豹変!? 甘すぎる殿下にドキドキが止まりません…><!! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 シシィナ=公爵家の長女。継母に家を乗っ取られ冷遇されていた。ルディウス=第一王子。呪毒に纏わる事件を調査している。 アニス=猫の姿をした聖獣。エドモンド=シシィナの弟。病に罹り寝たきりに。 ナイルズ=伯爵家の跡取り。シシィナに執着している。モンクレイフ公爵家の令嬢・シシイナは、当主である父が病で亡くなってからというもの、継母とその連れ子の義妹・セシリアから虐げられていた。実母が亡くなり、数年後に父が再婚して迎えた後妻のハンナとは元々シシィナとは折り合いが悪かったのだが、父の目が無くなった途端に跡取りのエドモンドまで冷遇するなんて。今では継母は当主代理として義妹と二人、モンクレイフ家の財産を湯水のように使っている。このままではエドモンドが家を継ぐ頃には銀貨1枚残らないのではなかろうか。しかも、弟が病に罹りここ最近は特に調子が悪い。自分達は贅沢三昧のくせに、エドモンドの治療費はケチるので呼ばれた医師はヤブだし、処方してもらっている薬はあまり効果が無いように思う。それでも全く効かないわけではないので、シシィナがメイドに混じって屋敷の掃除をしたりセシリアから頼まれる代筆で小銭を稼ぎ薬代を捻出している。だが、実はこんな人生をシシィナは9回も繰り返していた。どうあっても父が亡くなり、弟も病を患った挙句、シシィナは自分に執着する伯爵家の嫡男・ナイルズに嫁がされ命を落とす。もうすぐセシリアの気まぐれで引き立て役として舞踏会に連れていかれた挙句、ナイルズに見初められてしまうので彼女は心底焦っていた。舞踏会に行かなければフラグ回避できそうな気はするが、ナイルズのクロストン伯家はモンクレイフ家とは徒歩圏内にあるため、いつ何時偶然出会っておかしくは無いのが悩ましい。こうなったら、弟と二人で母の故郷であるラノム王国まで逃げてしまおうか。しかし、先立つものがない。セシリアから貰う銀貨など薬代に消えてしまうし、どこか働き口を探さなければ。そこで亡き父が懇意にしていたシャルマ侯爵を頼り、彼が営む植物園で働き始めたシシィナは、世を騒がせる呪毒事件を調査する第一王子・ルディウスと知り合った。侯爵から植物園は暇なので、ルディウスの方を手伝ってやって欲しいと頼まれ、資料集めなど補佐をしている。でも、出来れば日銭でも稼げるようにしないとラノムで生活基盤を整えられない。母から習ったビーズ織りでブレスレットや髪飾りを作り、商いをしている侯爵夫人の店に委託販売を頼んだらまじないと使われている花のモチーフのおかげでラッキーアイテムとして大当たり。ルディウスの仕事の給料と合わせれば、案外早くあの家を出ていけるかもしれない。そんな願いも虚しく、結局セシリアに無理矢理舞踏会に連れていかれたシシィナはナイルズと遭遇。いつものように付き纏われた挙句に求婚されてしまった。多額の結納金を積まれ、継母は大喜び。早く式を挙げたいというナイルズの希望を受け入れた。このままではまた彼に殺されてしまう。ナイルズは妻となったシシィナに執着し、束縛。ちょっとした嫉妬が元で彼女を手に掛けていた。首を絞められたりナイフで滅多突きにされたり。もうあんな目に合うのはまっぴら。まだ目標額には足りないけれど、早くラノム王国に逃げなければ。焦るシシィナだったが、アニスが縁でルディウスと急接近。呪毒についても彼女の意見で解決のヒントが見つかったらしく大層感謝された。その頃、屋敷で唯一彼女達の味方をしてくれていた古参のメイドのクロエが継母たちに殴られ、預かってもらっていた逃走資金を取り上げられてしまぃ・・・。不遇ヒロインもので、タイトル通りのお話です。継母によって変態気質の男に無理矢理嫁がされた挙句、殺されてしまうという不幸ルートを辿り続けていた彼女は、今世は生き残りをかけて家を捨てることを決意。しかし、因果律が働くのかどうあっても結婚せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。そんな中、今回に限っては第一王子という力強い味方が。実は彼の追う呪毒事件と継母が繋がっていて、亡き父もその犠牲者だと判明します。エドモンドも同じ症状で手遅れになる前に手を打てて良かった。まぁ、動機は当然財産目当て。おまけにそもそも呪毒を流行らせたのがナイルズと言う。この辺りの経緯は書き出すと長文になるので割愛。どうしてシシィナがループし続けたのかも後に判ります。最後まで読み進めて、なるほどこういうことだったのかと。でも内容自体は悪くないし好きなジャンルではあるんですが、ごめんなさいちょっと読み難くてダメでした(^_^;)目が滑って文面が頭に入って行かないというか。読み終えるのに3日くらいかかって途中他作品に行ってみたり。(一昨日と昨日の2作です)表紙絵も可愛いのでループものがお好きな方には良いんじゃないでしょうか。評価:★★★
2024.03.19
コメント(0)
2024年3月刊ベリーズ文庫著者:にしのムラサキさん幼い頃から政略結婚の駒として育てられてきた海雪。ついに決まった見合い相手は、海上自衛官の柊梧だった。クールで何を考えているのか分からない彼だったけれど、始まった夫婦生活では時折見える優しさに、海雪は心揺さぶられていく。一方の柊梧は、冷徹な仮面の下に昂る激情を秘めていて!? 「君を俺のものにしたい」2ヵ月ぶりに仕事から帰ってきた彼の甘すぎる溺愛で、海雪はとろとろに溶かされて…! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 天城深雪=総合病院長の娘。 愛人の子であるため義母や異母妹から虐げられていた。 天城柊吾=深雪の夫で海上自衛隊のエリート医官 高尾雄也=深雪の異母兄。柊吾とは同級生で友人有名総合病院の令嬢・深雪は、その生まれのせいで幼い頃から自由を奪われて育った。実母が愛人と言う後ろ指刺される存在だと知ったのはこの家に引き取られてすぐのこと。義母にとっては恨みの象徴なのだろう。毎日のように泥棒猫の娘と罵倒され食事も家族と採ることは許されなかった。後に生まれた異母妹の愛奈も義母に習い姉を嘲り、そんな二人の態度を諫めもしない父。だが、異母兄の雄也と住み込みの家政婦の大井とその息子・毅は深雪に対して優しく、何かと気にかけてくれていたので、あの家でも孤独ではなかった。そんな生活が続き、24歳になった深雪は父から結婚を命じられた。元々、彼女が引き取られたのは将来病院の益になる政略結婚をさせるため。お嬢様学校に行かされたのも多くの習い事も良家に嫁ぐには必要なことだった。義母からも常々言い聞かされて来たので、最早決定事項ではあるのだが、お相手の名前を聞いて心底驚いた。天城柊吾、彼は深雪の憧れの人だったから。柊吾は海上自衛隊の医官で、通修のため高尾病院に救急医として派遣されて来た際に知り合ったのだが、彼の実家も大手総合病院と聞いて納得した。近々父の病院と提携するらしい。しかし、いざ顔合わせの食事に出向いてみれば、柊吾の素っ気なさに少々ガッカリ。政略結婚なので内心では文句たらたらなのかもしれない。その日はお通夜のような雰囲気で終わったものの、一ヶ月ほどで二人は入籍。式の時に初めて柊吾を見た愛奈が見惚れていて何だか嫌な気分になったが、基地近くのマンションで同居を始めてからは彼の態度も軟化して来ていた様に思う。医官とは言え、自衛隊員なので任務や訓練で1週間~数か月不在となる時があると結婚前から聞かされていたが、まさかハネムーンの直後から二ヶ月もいないなんて。不安もあったけれど義母たちと顔を合わせないだけで随分と気が楽だ。彼の不在中は雄也が様子伺いに来てくれる。柊吾から頼まれたからと。一方、柊吾は新婚だと言うのに深雪と早々に離れ離れとなって悶々としていた。彼もまた実は深雪に密かに想いを寄せていたのだ。告白する機会をうかがっていた矢先、友人の雄也から妹と政略結婚の体で結婚して欲しいと頼まれた。昔から高尾家の胸糞話は耳にしていたが、深雪の扱いは目に余る。義母からお前は政略結婚の駒だと言い含められそれが自分の役目だと彼女は思いこんでいる。このままだと家のために金だけはある録でもない男に嫁がされるかもしれないと雄也はヤキモキしていたようで、話を聞いた柊吾は即実行。疎遠だった実家とコンタクトを取り、上手いことを言って父をその気にさせてこの縁談を成立させたのだった。実際ここまでするほどベタ惚れなのに素っ気ない態度だったのは、単に好きな人の前だと途端に不器用になるせい。自分でも絶対に誤解されていると実感していたので、結婚後は挽回するつもりだったのに。自衛官になったことをこの時だけは後悔した。守秘義務があるためSNSで通話も出来ずいつ帰るかも連絡できないし、雄也に様子伺いさせているが心配だ。それの後、漸く帰還できることになり、スマホを見ると数日前の日付で深雪から妊娠報告が。喜び勇んで帰宅した柊吾にべたべたに甘やかされて余りの変わり様に驚く深雪だったが、これほど喜んでくれるなら嬉しい。だがそんな幸せも束の間、3ヶ月ほど経ったある日、突然義母と愛奈がマンションを訪れ、柊吾の妻の座を愛奈に譲れと深雪を脅して来て・・・。この義母、マジでなんなのよ。そもそも子供に泥棒猫の子とか罵り続けたことも信じられないし、不倫なんて片方だけじゃできないのにね。おまけに深雪のお母さんも父から独身だと偽られていたことが判明します。このことで父親がもっとクズだったことが判るので、そりゃ両親のこんな実情知ったら妹も改心するよ。お兄ちゃんの方はそんな両親に昔から不信感を持っていて、ヒステリーな母親のはけ口になっている深雪に罪悪感がありました。彼女も年頃、そろそろ縁談が舞い込むはず。深雪に想いを寄せる柊吾に政略結婚の体で結婚して欲しいと頼んだのは彼女にこの結婚を納得させるため。流石に深雪の気持ちまでは知らなかったようですが、柊吾なら幸せにしてくれる。でも後に両想いと判り、この判断が間違ってないことが判ります。お兄ちゃん、グッジョブ。この義母たちの襲撃は柊吾によって一掃されるも、数か月後またやって来て今度は深雪の不義を理由に別れさせようとしたり、ほんとしょうもない。丁度その頃彼が任務で不在だったのを逆手に取ったらしいけど、いやいや計算あってるからwwこの一連のやり取りも愛奈に目を覚まさせる切欠だったんでしょうね。アホな義母を退け、また暫く経って無事に長男を出産した深雪。家族仲よく暮らしている様子が描かれて終わっています。書き下ろしの番外編は柊吾目線の後日談。結婚して5年目、3人の子宝に恵まれるも長期間任務で不在だった彼が帰還して家族と再会するお話でした。評価:★★★★★
2024.03.12
コメント(0)
2017年5月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん大国の王太子・シャルヴェと政略結婚することになったリリアーヌ。お転婆な彼女は、精悍で美しいが冷酷非道と噂される王太子を前に「恋をしに参りました」と宣言。型破りな姫を気に入ったシャルヴェからは、冷酷どころか時にイジワルに、時に過保護なほどに熱い寵愛を受けてしまう。免疫のないリリアーヌは調子が狂いっぱなしだけれど、優しく慈悲深い彼の素顔に、本当の恋心を抱き…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リリアーヌ=小国の王女。 大国・ユノヘスからの援助を得るため政略結婚を命じられた。 シャルヴェ=ユノヘス王国の王太子。自然豊かな小国・サノワの王女リリアーヌは、ある日父王から政略結婚を命じられた。お相手は大国ユノヘスの王太子・シャルヴェ。近年、この国は豊富な水源と鉱物に目を付けられ隣国イヤールドからの侵攻により被害を出していたのだが、ついにユノヘスの支配下となる道を選んだようだ。条件を飲む代わりに向こうが提示して来たのがこの結婚らしいのだが、本来なら嫁ぐのは正妃との子である姉のはず。名ばかりの第二夫人の娘で王宮に暮らしてもいない自分でいいのだろうか。まぁ、どうせ正妃がごねてリリアーヌにお鉢が回って来たのだろう。正直いい気はしないが、自分が嫁ぐことで戦争が回避できるならそれも良い。いつだって大変な思いをするのは民たちなのだから。そうしてユノヘス王国に嫁ぐことになったリリアーヌだったが、道中この婚姻を良しとしない国から横やりが入り彼女の乗る馬車が襲撃された。幸い、リリアーヌはお転婆で身のこなしも早く剣の腕も立つ。何とか襲撃者を退けたがせっかくのドレスはボロボロ。王宮で彼女を迎えたシャルヴェは大層驚き、この型破りな王女に興味を持った。木登りはするは、火事だと聞きつければ逃げ遅れた子供を助けに燃え盛る家に飛び込んだりと、今までいくつかの縁談で顔合わせしてきたどの王女ともリリアーヌは違う。一方、リリアーヌも冷酷と言われていた彼が実は心優しく、民たちにも慕われているのを目にし、段々と心惹かれていった。やがて仲睦まじい姿を周囲に見せるようになった二人。しかし、何かと敵の多い自分から離れた方がいいと、彼女を故郷へ帰すべきかと考え始めたシャルヴェ。それというのも、彼の母と兄がある国の策略により命を落とし、国王がそのショックでずっと臥せっているせいもあったからだった。だがここまで来るとリリアーヌはシャルヴェを支えたいと帰国を拒否。その後、輿入れの際の馬車の襲撃と二人の暗殺を謀った者たちがイヤールドからの者と判り、ユノヘス王国は戦争を避けられない状況となり・・・。じゃじゃ馬な王女と辛い過去に苦しめられていた王太子との恋物語です。戦争なんてしても困るのは民たち。今作の悪役イヤールド側にも侵略に至る理由があり、シャルヴェやリリアーヌもその辺は判っていて、出来れば戦争はしたくないと言う考えでした。それでも、イヤールドも追い詰められてユノヘス王宮に侵入して二人を暗殺しようとしたりしたので、結果シャルヴェも決断を下すことに。ユノヘスは大国なので、数日で決着はついちゃうんですけど、帰還してからした二人が様子がイイ。一層絆も深まり、シャルヴェの父の回復が見込めない事から漸く王位を継ぐことを決意。リリアーヌも王妃になり、その後平安の世が続いたことが示唆されて終わっています。あんまりネタバレしてもあれなのでかなり内容を端折ってますが、展開自体は王道です。政略結婚の相手に恋をして両想いというね。シャルヴェの過去がもう本当に辛くて、決して争いは望んでないのに大国というだけで狙われるから戦うしかない。だからリリアーヌのことも何度も突き放そうとしたりしましたが、彼女自体守られるだけのか弱い王女様じゃないので何が何でも離れないとシャルヴェを支えていきます。書き下ろしの番外編は後日談で、相変わらず妻LOVEなシャルヴェ目線のエピソードでした。二人の息子であるアルノルトも登場。評価:★★★★★
2024.03.11
コメント(0)
2024年2月刊ベリーズ文庫著者:一ノ瀬千景さん政治家の隠し子として孤独に生きてきた蛍。とある事件に巻き込まれそうになっていた時、冷徹警視正の左京と出会う。蛍の身を守るため、契約結婚することになったふたり。偽りの夫婦生活のはずが、ウブな蛍の態度が彼の独占欲を煽ってしまい…!? 愛は信じないと決めていたのにーー「俺が愛を教えてやる」熱情滴る彼の眼差しに射られた蛍は陥落寸前! 痺れるほどの溺愛に身も心も蕩かされ…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 大槻蛍=政治家の隠し子。父への脅迫材料として狙われることになり、身を護 るために左京と契約結婚をした。 菅井左京=キャリア官僚で階級は警視正。 京都で不審人物に尾行されていた蛍を助けた。 如月晋也=蛍の実父の私設秘書。 山下唯=蛍の後輩。蛍は中堅の食品メーカーに勤めるごく普通のOL有給休暇を消化すべく、久しぶりに故郷である京都に里帰りしたのだが、母は既に亡く懐かしい風景を堪能して、友人の美理と会ったら東京に帰るだけ。しかし、彼女自身は全く気付かなかったのだが、30前半くらいの長身の青年から突然自分が尾行されていると耳打ちされて驚愕。どう見ても気質に見えない青年を信じてもいいのか不安にもなったが、カップルに見せかけた男女がもう随分長く後を付けて来ているらしい。急に怖くなって震えていると帰るなら早々に帰った方が良いとアドバイスされ、予定より1本早い新幹線で東京へと帰った。個人的には尾行される憶えは無いのだが、そういえば最近郵便物が無くなったり、宅配の荷物に関しても予定日に届かなかったりと不審な事が続いていた。もしかして実父関係で何か?蛍は所謂婚外子で、父は与党の大物議員の海堂治郎。認知こそされていないが大人になっても多額の生活費が毎月振り込まれていたので大学にも通うことが出来た。正直、あまり良い印象を持っていないけれど、定期的に私設秘書の如月を寄越しては近況を訪ね要望を聞いてくる。そんな矢先、如月から連絡があり指定の店に出向くとそこには京都で会ったあの青年も同席していてビックリ。青年は菅井左京と名乗り、警察官とのことだった。改めて二人の話を聞くに実父とその他議員が推し進めている違法賭博の規制案がとある組を刺激し、トラブルになっているらしい。どうあっても既決させないようあちらも必死で、主要人物である海堂の娘の蛍をターゲットにしているのだと言う。まさか無くなった郵便物もそのせい?それにしたって身内以外は隠し子のことなど知らないと思っていたのに、案外外部にも知られていたのだな。そういうわけで拉致される危険性が高いため、如月から左京と結婚してほしいと告げられて凍り付いた。左京はキャリア官僚の警視正で少し前までは組織対策課に属していた。加えて実家も官僚揃いで海堂家とは旧知の仲だそう。蛍が彼と結婚すれば迂闊に手出しは出来ない。左京にもメリットがあるから問題は無いと聞き、恐ろしさもあって考えた末に蛍もこの結婚に同意したのだった。早々に入籍して、左京のマンションで暮らし始めた蛍は家庭内別居のような生活に戸惑い、申し訳なさも感じていた。ただ同居しただけでは奴らは諦めないと本当に籍を入れたものの、事件が解決すれば自分達は離婚する。彼はバツが付いても構わないんだろうか。気になって尋ねてみれば、これは今後の出世のためにもなるからと言われて少なからずショックを受けた。どうやら彼は彼なりに親戚筋を見返してやりたい事情があるらしい。そういう理由なら多少は自分も役に立っているんだなと思えて、多少は気持ちも楽になり、世話になっている礼にと夕食を用意し始めた。最初は遠慮していた左京も美味いと言って食べてくれて、実父のことで恋も結婚も諦めていた蛍は一緒に過ごすうちに左京を意識するように。左京の方も、気立てが良く美しい彼女に心惹かれ、彼からのアプローチで二人は一線を越えるも、菅井家に訪れた際、左京とその叔父との会話で、仕事の為なら蛍を切り捨てるという彼の言葉を聞いてしまい・・・。少々サスペンス風ではありますが、荒事の類はほとんど無く、事件を通じて契約夫婦が本当の夫婦になっていく過程がメインとなってます。ので、怪しい人は本当に怪しくて、だよねーと予想通りのしでかしをしてくれました。反対に予想外だったのは海堂氏とその奥さん、蛍の後輩で何かと突っかかって来てた山下さん。隠し子のことなんてどうでもいい風だと思いきや、左京に娘と結婚して守ってほしいと依頼したのはお父さんで、浚われた蛍を心配していたのは奥さんでした。過去にバレリーナを目指してた蛍のコンテスト出場を妨害したり、この奥さん鬼かよ、な印象だったんですがこれもすべて蛍の安全のため。彼女が有名になれば裏を探られて大変な目に合う。どうやら、亡くなったお母さんも同じ考えだったよう。山下さんは真面目な蛍を嫌っていたものの、単に不器用な性格だっただけと判って態度が軟化。自宅に遊びに行くほどの仲になってたのは本当に意外でした。それから、左京のあの言葉には、実は続きがあって後に聞いた蛍が惚れ直すほどカッコイイものでした。ああいうことさらっと言えちゃう人っていいですよね。書き下ろしの短編は3本。あれから1年後に式を挙げる二人の話と、左京の部下・島くん目線のエピソード。息子・伊織が産まれた後もラブラブな夫婦のお話でした。評価:★★★★☆
2024.02.27
コメント(0)
2024年2月刊ベリーズ文庫著者:瑞希ちこさん伯爵令嬢のエルザは結婚しようとする度、なぜか王太子・ノアに殺されるループを7回続けていた。没落危機にある家を救うために今世こそ結婚したい!と意気込む彼女が思いついたのは、ノアにとって都合の良いお飾り妻になること。無事にXデーを乗り越えて破滅回避したけれど、待っていたのは極甘すぎる溺愛で…!? 嫌われていたはずの彼に、最初の人生からずーっと愛されてたなんて聞いてません(汗) ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エルザ=元孤児の伯爵令嬢。没落しかけた家を救うために結婚を決めるが何故か その度にノアに殺害されるループを7回続けている ノア=王国の第一王子。 エルザを殺し続けた人物だが8回目の生では彼女と結婚する ベティ=ノアの愛人と噂されている専属侍女。 リック=自ら聖獣と名乗る犬。伯爵令嬢のエルザはこれまで7回も人生をやり直している。孤児院で育った彼女は、自分を引き取り実の娘のように可愛がってくれた両親に感謝していた。だから、詐欺師に騙された挙句多額の借金を負った彼らを救うために援助してくれる相手との結婚を決意したのだ。なのに、結婚前夜になるとこの国の第一王子であるノアが現れてエルザは殺されてしまう。そして何故か目覚めると彼女の時間は学園のパーティーの日に戻っているのだから一体どういうことなのか。やはり、家族のためとはいえ、金目当てで結婚するのが良くないのか。とは言っても、優秀な弟が貧乏故に学園に通えないのでは目も当てられない。なんとかして成功させなければ。これまでも今日のパーティーでいつも羽振りの良さそうな人を見つけていた。7回とも相手が違ってはいたけれど、もしかしてこの日と選ぶ人物が運命の分かれ道?それ以前に、毎度殺される程、私は王子に憎まれていると言うのが腑に落ちない。孤児院時代に、王宮にある「神と精霊の庭」に迷い込んだエルザはそこでノアと遭遇。一時は一緒に遊んでいた記憶がある。無邪気にも彼はエルザにプロポーズまでしてくれたのに。学園で再会した時は嬉しかったのに、ノアの顔は強張り思い切り無視された時は本当にショックだった。でもそれにしたって、殺されなければならない理由にはならない。だが、待てよ。個人的には伯爵家に金銭的援助をしてくれればぶっちゃけ誰でもいいのだ。なら、ノアに結婚してくれと頼むのはどうだろう。聞けば、彼は専属侍女のベティと恋仲で身分違いのせいで結婚できないともっぱらの噂だった。そこでエルザがノアの形だけの妻となれば体裁は保てる。所謂契約結婚のようなものだけど、お互い利害関係も一致するはず。もしかしたらこれで結婚前夜の悲劇も回避できるかも。ダメもとでノアにこの話を持ち掛けると多少驚いてはいたものの了承されて、あれよあれよという間に二人の結婚が決まったのだった。一方、ノアは長年の想い人であるエルザから結婚を持ち掛けられて天にも昇る気持ちだった。これは是非ともベティに話を聞いてもらわなければ。元々彼女はエルザと同じ孤児院出身で友人であった。そんなベティを自らの専属侍女にしたのも爆発しそうなエルザへの恋心を聞いてもらうため。ベティの方は内心うんざりしていたが、二人が結婚するなら漸くお役御免になるのでせいせいする。しかし、お飾りの妃になるとか言っているのを見るに完全に誤解されている。早いうちに誤解を解かないと大変なことになりそうだ。ただでさえノアは嫉妬深く、エルザのことに関しては心が狭かったので。そこで、ノアは式での誓いの言葉の際、エルザに想いを告げたのだが、当の本人は予想外の展開にビックリ。彼女にしてみればXデーを回避しただけで万々歳ではあったから。やはりノアがキーだったのか。ベティからも例の噂は完全否定されノアの学園での態度の理由も聞いた。でも、二人の話が本当ならずっと想い続けていた初恋の人を殺す意味が判らない。結婚してからというもの、エルザを溺愛するノアに嘘は無いように思う。この国の王族は魔力を使い「神と精霊の庭」の管理者でもある。自ら聖獣だと言う喋る犬・リックとも仲良くなり、多少の不信感はあったが穏やかな日々を過ごすエルザ。その頃、ノアは毎晩悪夢に悩まされていた。それは家の為に結婚を決めたエルザが闇組織と繋がりのある婚約者に騙され死にかけていたと言うもので・・・。ループものです。何故か結婚前夜になると王子に殺されてしまうヒロイン・エルザ。実際、1回目以外はノアが彼女に手を下していたのは確かなんですが、それはエルザを救うためにしていたことだったのです。1回目の時、エルザは伯爵家の援助目当てで金持男を捕まえたものの、男はとんでもない悪人。家族は闇組織に売られた挙句、エルザは酷い暴力を受け正に虫の息。彼女の現状を耳にし、救出に向かったノアは騙された自分を責め死を望む彼女の姿にショックを受けます。それでも家族も救ってやるとエルザを励ますも、彼女は落ちていた剣を拾い自害してしまった。絶望した彼は「神と精霊の庭」に彼女を連れて来ると神に生き返らせるよう願うが叶えられず力を暴走。世界を破壊しかねない力を抑えるため、神は時を戻すことを提案したのでした。時が戻ったのは良いものの、記憶が残っている可能性がある。不憫すぎると彼女の記憶を消しその代償としてノアが記憶を受け継ぐことになり、彼女を見守ることを決意。しかし、戻せるのはあのパーティーの日まで。何の因果かエルザはとことん男運が無く、制約に不具合があったのか、ループしている過去をノアはあの結婚前夜でないと思い出せなくなっていた。だからどうしても後手に回り、最悪の事態に足を突っ込んでいるエルザは死でしか救えない結果に。なんとも壮絶な覚悟ですが、ループし続けるエルザをも苦しめ、今回に限ってはノアからすっかり記憶が消えていたのでややこしい事態。まぁ、彼も後に神によって強制的に思い出す羽目になるんですが、愛が重すぎて(^_^;)エルザの男運の悪さと言うか、見る目の無さはある種の才能な気もしますが、最後は丸く収まったので何より。あと、聖女要素もちょっぴりあります。書き下ろしの番外編は夫の溺愛ぶりにやや腰が引けてるエルザのお話でした。評価:★★★★★
2024.02.24
コメント(0)
2024年2月刊ベリーズ文庫著者:若菜モモさん幼い頃に両親を亡くした芹那は伯父夫婦のもとで雑用係として虐げられていた。ある時、以前お世話になった脳外科医・蒼とアメリカで運命の再会。彼の甘い溺愛に満たされ、結婚を誓い合う。芹那は帰国直後、妊娠が発覚! しかし、彼が良家の令嬢と婚約すると知って密かに身を引くが…。「君を愛してる」一途な想いで芹那を探し出した蒼の独占欲は止まらない! 蕩けるほどの最愛を注がれて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 春日芹那=幼い頃に事故で両親を亡くし、伯父夫婦の元で虐げられていた。 朝霧蒼=総合病院の御曹司で優秀な脳外科医。 春日渉=芹那の従兄。 春日楓真=蒼と芹那の息子。 家族経営のホテルのフロント係として働く芹那は、育ての親である伯父夫婦に安月給でこき使われていた。親友である初音もあの給料であの仕事量は有り得ないと激怒するほど劣悪な環境は、育ててもらった恩があるとはいえ正直しんどい。実は芹那の両親は母の両親が結婚を猛反対していたとかで籍を入れておらず、彼女は婚外子として産まれた。そんな両親は芹那が1歳の時に事故死し、一人残された彼女を伯父夫婦が仕方なく引き取ってくれたのだと言う。それでも父方の祖母が不憫に思ったのか、彼女を可愛がってくれていたのだけれど、祖母が亡くなると明らかに当たりは強くなり現在に至る。ホテルでの仕事は本来のフロントだけでなく、客室の掃除のヘルプに朝食のブッフェ用の調理など。早朝から21時近くまで働いて、休日には自宅の片付けや掃除まで押し付けられる。ほとんど自由時間が無いので、以前働いてくれていたパートの梢からはよく体の心配されていたものだ。そんなある日、伯母に命じられてクローゼットの整理をしていた芹那は、荷物の中に亡き父の遺品を詰めた段ボールを見つけた。部屋に持ち帰って開けてみると中には両親の写真と未投函となっていた母から祖父母に宛てた手紙が入っていた。悪いと思いつつ読んでみると祖父母への謝罪の言葉と赤ん坊だった芹那の写真が同封されていて思わず泣けてくる。母はアメリカ人で、芹那に似ていた。祖父母も当然アメリカ人で名前と住所も記載されているのを見て猛烈に会いたくなった。彼女は渋る伯母たちに必死に頼み込んで何とか8日間の休暇をもぎ取り、フィラデルフィアへと旅立った。こんな日数休めたのは脳腫瘍で入院して以来で、あの時も伯母は迷惑だと文句言ってたっけ。彼女はふと3年前を思い出した。22歳の時に割れるような頭痛の後に倒れた彼女は救急搬送され、検査の結果脳腫瘍と診断された。幸い、悪性ではなかったので摘出手術をして以降は回復も早かった。しかも、執刀医が脳外科医として有名な人だったらしく、経過を確認しに病室に現れた時にはあまりのカッコ良さに驚いたものだ。朝霧蒼という医師は、見舞いに来るのは同僚と友人だけで家族が誰も見舞いに訪れない彼女に同情したのか、お菓子を差し入れてくれたりおススメの推理小説を貸してくれた。しかし、彼は退院する直前に本来の活動の場であるアメリカへ帰ってしまったと言う。きっと今もバリバリと手術して多くの患者さんを助けている事だろう。フィラデルフィアに到着し、手紙の住所にタクシーで向かうと祖父母はもうそこには暮らしておらず、手掛かりは祖父が勤めているらしい病院名のみ。一縷の望みを掛けて病院に向かい祖父の名前を出すと、職員は言葉を濁し自分の口からは言えないと、祖父の教え子がいるからその人に聞いてくれと呼んでくれた。すると現れたのは朝霧で、奇妙な縁に二人は驚愕。彼は仕事が終わると夕食がてら祖父母のことを話してくれたのだが、二人は既に鬼籍に入っており会うことは叶わなかった。祖母は病で、祖父は強盗に襲われて亡くなったと聞いてショックを受けた。祖父は脳外科の権威で多くの者に慕われていて朝霧もその一人だと言う。これも何かの縁だろうと、彼は祖父母の墓参りにも付き合い、ニューヨークも観光して行けばいいと案内を買って出てくれた。ほんの数日間の付き合いであったが、お互い離れ難く、彼からの告白で結婚を前提に付き合うことになった時には自分でも驚いたが、帰国前夜にプロポーズもされて6月になったら迎えに行くと約束を貰った。しかし、芹那に全く興味が無さそうだった従兄の渉が彼女を追いかけてフィラデルフィアまでやって来た挙句、朝霧との交際を猛反対。でも、これだけは何を言われても引かないと従兄にもきっぱり何が何でも彼と結婚すると宣言したが、帰国後暫く経って、彼から朝霧が社長令嬢と結婚すると言うネットニュース記事を見せられて・・・。まぁ当然これは従兄の策略なんですけど、こいつはずーっと芹那に惚れてて朝霧と引き離そうとしていました。大体、いち脳外科医の結婚がネットとはいえニュースにならんでしょ。でも、その頃彼女は妊娠が発覚。流石に信じ込んではいませんでしたが、渉はその子の父親になるからと結婚を迫ります。が、その夜思わず漏れ聞こえた伯母と渉の会話は恐ろしいもので、朝霧との子を堕胎させようとしていること、あまつさえ優しかった祖母が自分の為に残してくれた遺産まで使い込まれていたのを知って、お腹の子を守るために芹那は家出。以前、何かと良くしてくれていた梢夫婦が経営する旅館に身を寄せます。朝霧は急に連絡のつかなくなった芹那を探し、息子・楓真が産まれて3ヶ月後に二人は再会。かなり内容は端折ってますが、この後は誤解も解けて結婚という展開になってます。この作者さんはあまり悪人に制裁は下さないパターンが多いんですけど、今作はきっちり報いを受けたのでその辺はスッキリしました。従兄もフェイクニュース作るとか悪質すぎるもんね。彼女を騙しただけでなく他にも捏造してて利益を得てたとか、本当にしょうもない奴。書き下ろしの番外編は本編の後日談で、家族3人での祖父母の墓参りのお話。評価:★★★★★くどいようですがやはり不遇ヒロインものにはザマァ展開は必要だと思うんです。
2024.02.19
コメント(0)
2021年4月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん恋愛経験0の看護師・季帆はミスを被せられ落ち込んでいたところを、エリート外科医の陽貴に救われる。しかも陽貴は「俺と結婚しよう」と求婚宣言し、交際0日で結婚することに…!?「お前は俺だけのもの」-同じ病院で働く2人が夫婦であることは秘密。それなのに、家でも職場でも熱く求められ、タジタジの季帆。そんなウブな態度に独占欲を煽られた旦那様の溺愛は、加速するばかりで…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 倉田季帆=元オペ看。医療ミスの責任を擦り付けられ看護師を辞めた。 現在は陽貴の勤める病院でクラークをしている。 倉田陽貴=季帆の夫で、優秀な脳外科医。季帆は外科医からの信頼も厚いオペ看。努力と勉強を重ね、看護師として日々精進していたが、一人の医師がミスをしたことで、彼女の夢は閉ざされる結果に。報告を受けた病院側は、騒動を恐れてミスそのものはもみ消した。おかげで執刀医である近藤から医療ミスの罪を擦り付けられた季帆も罪に問われることは無かったのだが、無実の自分にお前のせいだと罵られたことがトラウマになってオペ室に入るのが怖くなってしまった。結果、彼女は辞職。看護師も辞めて今は総合病院で脳外科病棟のクラークとして働いている。あの事件で落ち込んでいた彼女を励まし立ち直らせてくれたのは幼馴染の陽貴であった。幼い頃から兄代わりの彼は、夢破れた彼女にもう一つの夢を叶えさせてやりたいといきなりのプロポーズ。ずっと好きだったと告げられ、同じ気持ちだった季帆も受け入れた。両親の許可も得て早々に入籍した二人。陽貴はどうせならそのスキルを活かしてみては、と自身が勤める総合病院のクラークになることを薦めてくれて、彼の口利きで就職も決まったのだった。クラークとしても季帆は優秀で、若い看護師達も彼女を頼りにしていた。つい患者に感情移入してしまったりもするが、日に日に明るさを取り戻す姿を見ると力も湧いてくる。そんな最中、あの近藤医師が解雇されたと耳に入って、ビックリ。元々雑なオペをする人ではあったが立ち回り自体は上手かったのに。しかし、例の医療ミスによって問題視され始め、他の手術の映像で明らかな間違いをしておりそれを指摘されたことで、ついに上層部から切り捨てられたらしい。経緯からしてどこも近藤を雇い入れる病院は無いだろうと聞いて、多少溜飲は下がったが、陽貴の様子からして間違いの指摘をしたのが彼だと確信した。それから暫くして、陽貴の友人医師・木藤が髄膜症を患い、彼に手術の依頼をして来た。視神経を圧迫する位置にあるので難易度も高い。陽貴ならと信頼してのことだった。近藤が罰を受けたことでトラウマを克服しつつあった季帆も、陽貴の薦めで看護師への復帰を考え始めていた頃にこの手術依頼。木藤は彼女の評判も聞いていて、自分の手術にも入ってくれないかと打診された。きっと執刀医の陽貴のモチベーションも上がるからと。その話を聞いて季帆も奮起し、看護師に復帰するとリハビリのために多数のオペに入り、陽貴の手術映像を見て猛勉強。しかし、彼に密かに想いを寄せている女医の長崎にあの医療ミスの件を指摘され・・・。ここに来てその話を持ち出すか、嫌な女だなぁー。この人も看護師を下に見てる医師なので、季帆が気に入らずあれこれ難癖を付けますが、その頃には二人が結婚してることも発表されたので火に油を注ぐ結果に。でも、無事木藤さんの手術も成功し、立派にオペ看を務めた季帆も称賛を受けます。それでもしつこくあら捜しする長崎さんよ(^_^;)そんな彼女も、せん妄状態になり暴れる患者に手を焼き、処置できなかった時に季帆に助けられたことで漸く彼女を見直すのでした。夫婦間のもめ事みたいなことは全く無くて、入院患者の苦悩とか医師や看護師との関係性などの方にスポットが当たっていた今作。ぶっちゃけ、医療ミスの責任を擦り付けられたりとか充分胸糞ではあるんですけど、それも後に頼もしい旦那さんのおかげで解決してスッキリ。長崎と言うお邪魔虫はいたものの、この人も全く誤解対象にすらなってなかったので、終始揺らがない二人でありました。書き下ろしの番外編は陽貴目線の後日談で、友人の家庭の話を聞いて子供を考える夫婦のエピソードでした。評価:★★★★★
2024.02.13
コメント(0)
2021年9月刊ベリーズ文庫著者:美森萌さん恋愛経験なしのフローリスト・美海は、御曹司・貴裕と恋に落ちる。本能に溺れる官能一夜を過ごすも、貴裕に婚約者がいることが判明。のちに妊娠が発覚するが、美海は身を引くことに。秘かに産み育てていたある日、美海のもとに貴裕が姿を現して…!? 「ずっと捜してた」--婚約者の存在は勘違いで、ずっと美海を愛し、求めていたという貴裕。まるで今までの時間を取り戻すように甘い溺愛と激しい独占愛を注がれて、美海は昂る気持ちを抑えられなくて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用 登場人物 須崎美海=花屋の雇われ店長。 常連客の貴裕と恋仲になるが婚約者と名乗る女性が現れ身を引いた。 時田貴裕=リゾート運営会社の御曹司。突然姿を消した美海を探していた。 須崎貴斗=貴裕と美海の息子。生まれ故郷で母の親友・素子が夫婦で営む民宿で働く美海は、3歳の息子を育てるシングルマザー。彼女の両親は既に他界しており実家も既に無い。偶然東京で再会した素子が何も聞かずに受け入れてくれて、うちで働けばいいと誘ってくれたのだ。瀬戸内海に浮かぶ小さな島・諏訪島でまた暮らし始めてもう4年近くになる。この辺りは釣り客に人気で民宿の利用者もほぼ釣り目当てだ。食堂でもあるこの宿での美海の勤務時間は朝から夕方まで。そんなある日、素子の頼みで港まで宿泊客を迎えに行くと、現れたのはかつての恋人・貴裕だった。茫然としている彼女に、貴裕は君を迎えに来たと言っていたが、あれから4年も経っている。彼は既に婚約者と結婚しているのではないのか。思わず尋ねると、結婚などしていないしそもそも婚約者もいないと言う。だが、美海の誤解も尤もで、先ずはその辺りの事情の説明もしたいから仕事が終わってからでもいいので話をしたいと頼んで来た。どうやら、今日迎えを頼んだ素子も貴裕から前もって連絡を受けていたらしい。興信所に頼んだのか、彼は美海が子供を産んだことも知っていて、それが自分の子であると確信もしていた。さすがにそこまで判っているならと、彼女は素直に認めると、彼に貴斗を紹介。息子はすぐに貴裕に懐き、彼も美海の代わりにと子守を買って出た。多忙な彼が何とかもぎ取った休暇は1週間。貴斗が眠った後、一先ず誤解を解いておきたいと貴裕は4年前に起こったことを話してくれた。当時、花屋の雇われ店長をしていた美海は、常連客であった貴裕と親しくなった。彼から、実は最初にフラワーアレンジメントを頼んだ時から惹かれていたとの告白を受け、交際に至ったのだが、その幸せは長くは続かなかった。リゾート運営会社社長をしていた貴裕の父が事故で急逝し、一人息子の貴裕が後を継ぐことになってから会えない日々が続くように。告別式に行った際、引継ぎなどでやつれていた彼の姿を見た時は心を痛めたが、ショックで倒れた彼の母の代わりに若い女性が葬儀を仕切っていたのが気になった。そして数日後、その女性・安藤芹香が店を訪れ、貴裕と別れて欲しいと告げた。彼は自分の婚約者だからと。芹香は大企業のお嬢様だそうで、政略結婚することが決まっていると言う。しかも、破談になったら彼の会社の海外進出の計画もおじゃんになるとも。それから少しして芹香からの圧力でオーナーが突然花屋の閉店を決めてしまった。パート従業員もこんな急に横暴だと怒っていたが、美海にもどうしようもない。貴裕は海外出張に行っているし、職も奪われ美海の妊娠も発覚。途方に暮れていた所に素子と再会したのだった。美海の話を聞いて貴裕は大きなため息を吐いたあと、芹香に対して激怒していた。彼女とは一度見合いをしただけで、それも断ったこと。婚約者なんて以ての外だと言う。それでもしつこく付き纏い、葬儀の時も貴裕の未来の嫁のように振舞い仕切っていたので、親戚達からは大ブーイングだったのだそうだ。貴裕も後に抗議し、恋人がいるから芹香とも結婚しないときっぱり告げたのだが、まさかその腹いせで美海に虚言を吐いて職まで奪っていたとは。自分が出張に行っている間に美海は姿を消してしまい、足場を固めた後に本格的に捜索し見つけた時には4年近く経っていた。結局、二人とも芹香の嘘に良いように踊らされていただけと判り、誤解も解けた。だが最終的に彼を信じ切れずに逃げ出してしまった自分に貴裕の妻になる資格があるのかと思い悩み・・・。あの自称婚約者のせいで、別れなくても良いカップルが何年も離れ離れになっていたのが、本当に腹が立つ。でも、シークレットベビーものとしては、こんなあほらしい理由ですれ違ってしまうのは最早お約束な展開なのでした。お互い両想いだし、貴斗にも彼が父親だと明かしたので、あとは美海の覚悟だけなんですが、素子たちの後押しもあって漸く貴裕との結婚を決めます。その後は暫く遠距離恋愛を続け、翌年母子は東京へ。最難関だと思っていた貴裕の母は全く反対しておらず、亡くなった舅も息子の結婚は自由にしていいと常々言っていたそう。真実が判ると本当に芹香のひとり相撲だったんだなぁ。その芹香も晴れて入籍して幸せそうに式の打ち合わせをしている二人の姿を見て、ぐぬぬとなるのでした。最後は親子での結婚式シーンでENDとなってます。物語の構成としては、島での親子のエピソードが一番長かった気がします。まぁ、再会後の話ですしね。過去バナがちょっとモヤるんですけど、貴裕の良きパパっぷりが払拭してくるのとサクサク進むのでダメージは少ないです。あと、いつものことだけど内容に反してタイトルがう~~~ん。評価:★★★★☆
2024.02.08
コメント(0)
2014年11月刊ベリーズ文庫著者:真彩-mahya-さん地味で平凡な日々を送る中園麻耶は、ネットで小説を書くことが唯一の楽しみだけど、そのせいでテロ集団から命を狙われてしまうハメに…! 危機一髪、現れたのは警視庁警備部警護課、容姿も射撃の腕も超一流の“SP”高浜亮司。冴えない日常から一転、イケメンSPに守られることになった麻耶は、着替えも眠る時も24時間つきっきりでそばにいる高浜にドキドキさせられっぱなしで…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 中園摩耶=駆け出しのラノベ作家。 自身が書いた小説の内容が原因でテロリストから狙われる。 高浜亮司=透視能力を持つSP。拳銃を持つと人格が変わる。 峰岸和也=摩耶の元カレ。眼鏡店で働く摩耶は、その日店をクビになって途方に暮れていた。失意のまま帰路に就いた彼女は、人通りの無い道でいきなり男に連れ去られかけたのだが、突如現れたイケメンによって救われ事なきを得た。彼はパニくっていた摩耶を車に乗せ、警視庁へ連れて行くとそこには数名の男性が。イケメンは高浜と名乗り、摩耶がある事件に巻き込まれて命を狙われているのだと説明。どうやら、もうすぐ発売される彼女の小説に登場する悪の組織の名が実在するテロ組織名と同じだったとかで、摩耶は組織の秘密を知っている者としてターゲット認定されているらしい。しかも、そのテロ組織は彼女を名指しで殺害することを予告し、本の出版差し止めと収監中の政治犯の釈放を要求しているのだそうだ。当然、こんな要求は飲まないと公安もすでに動いてるのだが、摩耶の身の安全については特別にSPを付けて対処することで決定。事情を聴いて、だから今日も自分が危うい所で助かったのだなと納得した。それにしたって、適当に如何にもなアホっぽい名前を付けただけなのに、まさか実在してたとかそんなのあんまりだ。高浜から何かと謎の多いグループで一般人は知らなくて当然と言われても何の慰めにもなりゃしない。今回の本だって趣味でネット小説を投稿し続け、書き溜めたものをコンテストに応募し賞を採った作品だ。それが書籍化されて数か月後には店頭に並ぶはずだった。命を狙われるよりデビューがおじゃんになりそうなのが堪える。確か作家都合で出版できなかった場合は違約金が発生するとも聞いた。何が何でも公安には早々にグループを摘発してもらわないと。そして、暫くの間は高浜が担当になって摩耶を警護してくれるらしい。が、彼女のアパートはセキュリティ面に不安があって警護に向かない。特例として高浜が暮らす高級マンションに匿われることに。高浜は、穏やかでどちらかと言えば大人しいタイプであったが、何故か銃を握ると人格が変わる。幾度目かの襲撃を受けてその度に人格が変わってるのを目撃すると流石に摩耶も慣れてきた。そもそも彼の所属するのはSPと言えど、能力を持つ者ばかりを集めた特殊班だそうで、高浜は透視能力があるとのこと。一般人は普通SPによる警護対象にはならないが、例の組織がその活動内容から能力者の集まりと言われているらしく彼ら特殊班も駆り出されたようだ。出掛けるのも危険な為、つい暇つぶしに高浜と会話していると彼の身の上が自分と似ていて共感を覚えた。お互い天涯孤独で施設出身、そして同棲相手に捨てられたと言う。思わず笑ってしまう程の似通いっぷりだったが、高浜が二重人格になったのも施設にいた頃に酷い虐めに会ったせいだと聞いて胸を痛めた。高浜のもう一人の人格であるリョウとも会話する機会があったが、粗野で乱暴者に見えて実は彼も優しい人だったし、吊り橋効果もあってか摩耶は高浜に心惹かれていくように。そんなある日、奴らをおびき出すため公安からおとり役を頼まれた摩耶は、高浜達特殊班の警護の元、外出。目論見通りに彼女を狙い組織のメンバーが襲い掛かって来たのだが、その人物は何と元カレのカズヤで茫然。確保も叶わず逃げられてしまった。そして、数か月ほど前に起きた駅での爆破事故の際、摩耶は構内のトイレでカズヤと遭遇したのを思い出した。どうやら元カレはあの組織の一員らしく・・・。この元カレ、摩耶が小説の投稿をし始めた頃から目を付けていたようで偶然を装い近付いて、彼女を騙してヒモ生活を送っていました。あの小説の組織のフリをして、もし発覚したら摩耶に罪をかぶせようと目論んでのことだったらしい。まったく、そんな回りくどい真似しないとテロれないならやめちまえよ、情けない💢しかも、天涯孤独の子の寂しい気持ちに付け込んで騙すとか最低。摩耶の証言から彼女のアパートに家宅捜査に入ると泥棒が入ったかのように荒らされ、盗聴器も仕掛けられていたことが発覚。元々カズヤに好かれていたわけじゃないと判って彼女はショックを受けるも、リョウに慰められ二人は一線を越えます。しかし、高浜はもう一人がやらかしたと摩耶に土下座。マルタイに手を出してしまってSP失格だと担当を降りてしまい、摩耶もその態度に腹が立って険悪なムードに。でも、あの時逃げおおせたカズヤが再び彼女を狙い、摩耶を拉致。絶体絶命なピンチに助けに来たのはリョウに発破をかけられた高浜でした。その後、公安達も突入して見事組織のメンバーは全員御用。高浜の告白により、摩耶と交際。またあのマンションで同棲することに。その後は無事に本も発売され、一年後は書籍化2作目執筆中の彼女が高浜に見せたのは二人の出会いの物語だった、という〆発行が約10年前。ベリーズ文庫の初期の頃の本ですが、物凄くベリーズっぽくないです(誉め言葉)。往年のコバルト文庫を読んでるみたいで懐かしくなりました。TL展開は一応あるんだけど内容自体かなりサスペンス寄り。この作家さんは元々こっち系(ファンタジー小説)の方なので本領発揮って感じなのかな。そして、分厚いです(笑)約500ページもあるので、寝転んで読んでると重くて手がしびれて(^_^;)なのに税抜き680円は破格。今だったら800円超えでしょう。ヒロインの性格に好き嫌い分かれるかもですが、前述の通りサスペンス系がお好きな方におススメなお話です。評価:★★★★☆
2024.02.06
コメント(0)
2024年1月刊ベリーズ文庫著者:友野紅子さん聖女・アンジェリーナは、国のために尽くしていたつもりが、知らぬ間にその能力を戦争に使われていた。“罪悪の聖女”として敵国王族の生き残り・ディルハイドに殺されると、前世の記憶を持ったまま生まれ変わってーー!? 伯爵家の使用人として虐げられる第二の人生を送っていたら、新皇帝になったディルハイドとまさかの再会&前世が即バレ! 恨まれているはずなのに、なぜか過保護に溺愛されまくりで…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ルーシー=「絶対防御」の力を持つ聖女・アンジェリーナの生まれ変わりで、 今世では伯爵家で侍女をしている。ディルハイド=帝国の皇帝。11年前はアンジェリーナの従者を務めていた。 フェン=アンジェリーナの対となる聖獣。 彼女の死後はディルに世話をされている。ベルフォード=ディルハイドの側近。稀少な「絶対防御」という魔力を付与できる聖女・アンジェリーナ。皇帝から、その力は民たちを脅かす魔獣討伐のために必要なのだと請われ、言われるがままに出征する騎士達に付与していた彼女は、ある時、可愛がっていた従者のディルに刺されて死んだ。だが、彼女の魂は対の聖獣・フェンリルの力によって、当時5歳のルーシーの身体に転生を果たした。ルーシーはレアモルド伯爵家で働くメイドが当主に手を付けられて産まれた子だ。当然、夫人には嫌われ、異母姉のイライザからは相当虐められたが、あれから11年、屋敷から追い出されることもなく今は侍女として働く毎日。因みに体が変わっても「絶対防御」の力が使えるのは予想外であった。イライザは相変わらず我儘放題でルーシーを困らせているが、今日は皇帝・ディルハイドの誕生日を祝う舞踏会があるからとご機嫌だった。その名を聞いて、彼女は心を痛めた。この体に転生してからというもの、アンジェリーナだった時の自分が如何に世間知らずで無知だったのかを思い知らされたから。魔力の使い過ぎで昏倒する自分を心配してくれていたディルは、実は亡国の王子で、彼の国を滅ぼしたのはこの帝国だった。そして「絶対防御」は魔獣討伐ではなく、周辺諸国の侵略戦争に使われており、自分は彼らに悪魔の如く憎まれていたことも。ディルもきっと内心ではアンジェリーナを憎んでいたに違いない。だから彼に殺されたのだ。そんなディルは11年前、先帝を倒し自らが帝位に就いた。賢帝として民に慕われる彼は今年で24歳。随分立派になったことだろう。侍女の身分ではそうそう会う機会も無いので、ふとした折に優しく生意気な少年だった頃の彼を思い出していたが、機嫌のいいイライザが今日に限って帝宮に連れて行ってくれると言う。飽く迄侍女としてだが、一目でもディルを見られると思うと心が躍った。が、ディルハイドの方の機嫌が悪く、どの令嬢とも碌に話もしない。無視されたとイライザは激怒し、案の定ルーシーに八つ当たりした挙句、馬車から蹴り出されてしまった。しかも放り出されたのが運悪く下町だったので、ならず者に襲われ大ピンチ。そこを救ってくれたのはなんとフェンとディルハイドだった。どうしてこんなところに、と驚いたものの、フェンが彼女の気配を察知して飛び出して行ったのを追いかけて来たかららしい。フェンはすぐさまアンジェリーナと気付いたようだが、ディルは彼と意思疎通出来ないのでたまたま暴漢に襲われている少女を助けた形になった。姿形は違うのに、何故かとても懐かしい雰囲気を持つルーシーを放し難く、宮に連れ帰ったディルは彼女に甲斐甲斐しく付き添い、何かと贈り物をしてくるので戸惑ってしまう。彼の側近のベルフォードなどはそんなに気に行ったなら妃になさればとまで言う始末。どうやら女性に全く興味を示さなかったディルが漸く恋に落ちたのなら、しっかりモノにしてほしいという考えらしい。そんなある日、フェンと川の字になって3人で眠った際、彼は寝言でアンジェリーナに許しを乞うていた。フェンも含みのある言い方をしていたしディルによる聖女暗殺については何か裏があるのかもしれない。そして彼がいつまでも自分を想っていてくれていたことを知って嬉しくもあった。そして、ディルにはしっかり彼女の正体がバレていたことが後日判明して知らぬ存ぜぬと下手な演技をしていた自分が恥ずかしい。改めて、当時の事件の真相が彼から語られると、やはりというかあれは暗殺というより偶然が重なっての事故だったと判った。恨まれていると思い込んでいたけれど、再会してからはそれは間違いだったと知れたので、きっとこれが真実なのだろう。ディルはあの後諸悪の根源だった先帝を討ち取り、アンジェリーナの仇も打っていた。でも彼女は亡くなり心は虚しいまま。一生独身を貫く決心をしていたが、また君に会えたと言うディルの求婚をルーシーは受け入れるのだった。二人の結婚宣言はベルフォード始め、臣下たちもこれで世継ぎの問題も解決だと歓迎ムード。しかし、ルーシーの持つ「絶対防御」の聖力は、罪悪の聖女を連想させるとからと結婚を反対する者の声も多く・・・。この国には亡国出身の者たちも多く、アンジェリーナは死しても尚憎まれ続けていました。魔獣討伐に出掛けたディルと騎士たちの為にこっそり「絶対防御」を掛けてしまったルーシーは、聖女の生まれ変わりとまでは思われなかったものの、あの罪悪の聖女と同じ力というのが恨みを思い起こさせるとして一部の者たちに拒絶されてしまいます。かつてはアンジェリーナも魔獣討伐に必要だと騙されていたので、悪いのは先帝なんですけど、そんなこと知らない人達は憎い存在として彼女も一緒くたにされてたんですね。ディルはちゃんと事情を知っていたのでアンジェリーナは違うと説得し続けていたけれど、いくら彼の言うことでも受け入られず、妃に迎えるのは同じ力を持つ女とかどういうこと?と反発を買う羽目に。何もかも侵略戦争を繰り返してた先帝が悪いのに。しかし、そんな状況を覆す出来事が起きて、結果的にルーシーは皆に認められます。この辺の件は記載すると長くなるので割愛。生家である伯爵家とは縁を切り、ベルフォードの実家の侯爵家の養女となって後ろ盾を得た彼女はディルと結婚。世継ぎの皇子も産まれ、数年後には第二子も授かり喜びに沸く彼らの様子が描かれて完。今作では聖女だからこその苦労が結構赤裸々に描かれてて、従者時代のディルとフェンだけはアンジェリーナの苦悩を理解していました。亡くなるまで明るさを失わず優しさゆえに騙され続けた挙句そのせいで恨まれ、人に利用されるだけの人生。転生して漸く幸せを掴めるかと思いきや、前世で受けた恨みから結婚を反対されるとか。とにかく試練がてんこ盛りな内容でした。それを経てのラストなので、なにはともあれ想い人と結ばれて良かった。これに尽きる。評価:★★★★☆
2024.01.31
コメント(0)
2024年1月刊ベリーズ文庫著者:砂川雨路さん華道家の娘の葵は父の命令でしぶしぶお見合いにいくことに。すると、そこに現れたのは妹と結婚するはずの御曹司・成輔だった。昔から苦手意識のある彼との縁談を断ろうとするが、とある理由で破談前提で交際することに。しかも「昔から好きだった」と独占欲を露わに迫られて…!? 彼の猛溺愛は止まらなくて、ついに結婚! 恋心を持つはずはないと思っていたのに、痺れるほど甘い愛に絆されて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 院田葵=華道家の長女。リケジョで跡目は継がず研究職に就いた。 風尾成輔=大企業の御曹司でアパレル会社のCEO。 院田百合=葵の妹で次期家元。華道家の長女の葵は、両親の反対を押し切って大学も理系に進み、修士課程を終えて一般企業に研究員として就職した。ドライな父はともかく、母はそれが気に食わないようで何かと文句を付けて来るけれど、跡目は1歳下の妹の百合が継ぐことになっているのだし何ら問題は無いはず。しかしながら、両親にとって譲れないのは葵と風尾家の一人息子・成輔との結婚だった。風尾家から長らくパトロンをして貰っている手前、どうあっても成し遂げたいらしい。葵が小学生の時に決まったこの約束事。その時初めて成輔に会ったのだが、5歳年上の彼はそれはそれは美少年で彼女にとって初恋であった。でも、当然そんな彼は異常にモテていて、ある時、女の子と仲良さげに歩いているのを見てショックを受けたのも思い出だ。その時から彼に対してつい塩対応になってしまったのだけれど、成輔にしてみればこんな地味子が許嫁なんて不本意に違いない。だから気にしないことにした。彼みたいな人には百合みたいに綺麗でおしとやかな子の方が似合う。母も、勉強ばかりで素っ気ない長女より次女を嫁がせるべきではとよく溢していたので、折を見てお相手も百合に変わるのではないかと高を括っていた。だが、そんな想いも裏腹に葵が高校生になると成輔の態度が一変。やたらと彼女を構いだしたのだ。学校まで迎えに来るなど日常的で、そんな心配必要ないのに同級生の男子たちを牽制しているので驚いた。葵が京都の大学に入れば多忙だろうに定期的にご機嫌窺いにやって来るなど、なんともマメな男だ。どうせ結婚するのは百合となのに。大学を卒業し就職したある日のこと、両親たっての頼みでお見合いに出向いた葵は、現れたのが成輔でビックリ。どうもこの集まりは兼ねてよりの約束通り結婚をという最後の詰めのような場であったらしい。見合いと聞いてたからこの話も無くなったものと油断した。いつもの調子で突っぱねたが案の定母が激怒して荒れてしまったけれど、成輔の執り成しで何とか収まり、二人きりになると彼はこの結婚に対してのメリットを語り始めた。料理が得意なので食事当番は引き受ける、生活費全て彼持ち等々、一人暮らしが長い割に料理がからっきしな葵の心は動いた。しかも、仕事は辞めなくていいと言うのが大きい。帰宅後、百合に相談すると絶対に彼と結婚すべきと後押しされ、まぁいいかと承諾すると両親は大喜び。結婚の条件を話したら絶対に母に怒られるだろうから内緒にして、就職したばかりなので名字をすぐ変えたくないんだと言えば入籍は1年後とし、その代わり婚約期間中も彼と同居することになったのだった。同居が始まると彼のスパダリぶりに舌を巻いた。自慢してただけあって料理は完璧、掃除洗濯もお手の物。忙しいだろうにどれも一切手を抜かないのが凄い。天は二物どころか三物以上を与えてしまったらしい。条件とは言え、流石に妻が何もしないのは気が引ける。葵は自ら申し出て家事は分担制と決めた。おかげで苦手だった料理も多少は食べられるものを作れるように。婚約してからも葵はドライで成輔はその分彼女に尽くしている感じだったが、とにかく暑苦しいほど溺愛されているので戸惑うばかり。葵が同僚に言い寄られていたら、嫉妬剥き出しだったし、ある時尋ねると実は随分前から成輔は葵一筋だという。中学生の時は単に一緒に下校してた程度で交際してたわけじゃないと否定され陰でヤキモチ焼いてた自分にガックリ。当時、葵自身も忘れていたとある行動に成輔は心打たれそこからぞっこんなんだと告げられ、勝手に百合との仲を疑っていた彼女は猛省。成輔と向き合うことを決意して・・・。実際は葵が自覚するまで色々誤解もあるんですけど、この辺はあまりネタバレしてなということで割愛します。でもまぁ、あれだけ尽くされてるのにどうして疑うのか自己肯定低すぎなヒロインでありました。とは言え、父はともかく母親も悪いと思う。あの言い様は正直傷付きますよ。読んでてイラっと来るくらいにはムカついた。葵も決して出来は悪くなくて、頭は良いし実は跡を継げるくらい華道の方も優秀なのに、百合の方が華になると比べられてたら良い気はしないよなぁ。初恋の人である成輔もきっと百合との方がお似合い、母もそう言っていたとか、だとやっぱり彼からの愛もせっかく結婚するんだから気を使われてるだけと考えてしまう。百合ちゃんがそんな母親の性格や物言いを諫めてくれており、二人の恋を応援してたのもあって後半漸く纏まってくれた展開にホッとしました。その後はいよいよ間近に迫った挙式と、彼との子なら欲しいと子作りに乗り気になるなど仲睦まじいエピソードが続く中、長男も産まれて本編は完。書き下ろしの番外編は後日談で、成輔目線の短編2本でした。終始、成輔さんの葵LOVEっぷりが微笑ましい。評価:★★★★★
2024.01.24
コメント(0)
2020年3月刊ベリーズ文庫著者:宝月なごみさん恋愛経験ゼロの箱入り娘・美織は、政略結婚前日に最初で最後の夜遊びを決行する。相手は有名会社CEOの尊。匂い立つような大人の色気と余裕で、尊は美織の身も心も奪っていった。一夜限りの思い出と固く胸に秘めた美織だったが、なんと翌日、結婚相手として目の前に現れたのは尊だった!「俺が手取り足取り教えてあげる」と耳元で甘く囁かれ、美織は鼓動が抑えきれなくなり…。「極上旦那様シリーズ」第4弾は、ベリーズカフェ恋愛小説大賞受賞作! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 沖田美織=メガバンクの頭取の娘。婚約者との顔合わせ前に最初で最後の夜遊び を決行して尊と出会う。 鞍馬尊=航空会社のCROで美織の政略結婚相手。 勝又烈=自称・不動産会社社長。ある目的のために美織に近づく。メガバンク頭取の父を持つ美織は自他共に認める箱入り娘。もう25歳になると言うのに未だ家族は彼女の身形や素行について厳しく、恋愛も未経験のままだった。しかも明日は親の決めた結婚相手との顔合わせで、数か月後には挙式までまっしぐらときている。とはいえ敷かれたレールを行くこと自体は実はそう苦でもない。ただ、人生一度くらいは羽目を外してもいいのではないか。そんな気持ちで、お嬢様学校時代からの友人の凛子が会員になっている高級クラブに行き、一夜限りの男性を紹介してもらうつもりだ。店に着くと、待っていたのは凛子の彼氏の黒田と美織の今夜のお相手となる青年が待っていた。彼は尊とだけ名乗り、ハンサムで王子様っぽい外見だが何処か危険な雰囲気もあった。でも、凄まじい色気。男性経験の無い美織はすぐさま彼の色香に陥落して、関係を持ってしまったのだった。翌日、目を覚ますと何と自室のベッドの上。おまけに着替える準備もあるのに寝坊をしてしまったと大慌ての美織が居間にいくと、そこには祖母と仲良くお茶している尊の姿が。どうしてここにと内心血の気が引いていた彼女が訪ねると、なんと彼こそが美織の結婚相手と聞いてビックリ。尊は、顔合わせ前だけれど実は二人はこっそり会っていて昨夜は酒も入り盛り上がってしまったのだと説明したらしい。最初で最後の夜遊びという親たちが卒倒しそうなことをしでかした手前、彼の機転には感謝したけれど、昨夜、彼も夜遊び相手を探していたとかあるんだろうか。当然、答えはノー。尊と黒田とは元々顔見知りで、恋人の友人のお嬢様がワンナイトのお相手を探してると小耳に挟み、呆れつつも話を聞くと、そのお嬢様とは自分の未来の妻ではないか。高級クラブとはいえ、出入りする者達全てが信用できるわけではなく、それならばと自分が名乗りを上げたのだという。真相を知った美織は複雑な気分ではあったが、今思えば彼が気を回してくれなければ後々トラブルになっていたかもしれない。少々俺様っぽい性格ではあるものの、政略結婚でも彼とは上手くやっていけそうな気がする。その後、二人は無事婚約。普段は銀行員として働いている美織は頭取の娘と言う立場と新しい支店長の蒔田からのごますりもあって同僚達からのやっかみで孤立していた。コネ入社とか好き勝手言ってくれるけど反論するのも馬鹿らしい。出張が多い業種なので婚約期間もお互いをよく知るためにと既に同居している尊は、所用で美織の勤め先を訪れた際、彼女が虐めに近い扱いを受けていることを知って憤慨していた。意外に熱い性格の彼はカッカしていたけれど、当の本人は一々気にしてないし言いたい奴には言わせとけと思ってるからと取り合わない。その反応がツボに来たのか尊に惚れ直されたのは驚いたが嬉しい誤算かもしれない。半年後に迫った挙式の準備もあって慌ただしく過ごしていたある日、応接室で蒔田を怒鳴りつけていたインテリ風の青年・勝又と遭遇した美織。マンションの住人向けのジムだったので、彼も同じ所に住んでいたのかと思い込み、その人当たりの良さにジム友に。あの日支店長を怒鳴っていたのはきっと蒔田が失言でもしたのだろう。その後、プールでも会ったのだが、その頃から段々勝又の態度と口調も変化して来て、恐怖を感じるように。こんな時に限って尊は海外に出張してるし、迷惑でも電話で相談するべき?悶々としていた時、気晴らしにと凛子に誘われ待ち合わせ場所に出向くと、そこにはまたもや勝又が。実はヤクザなのだと正体を明かされた上、凛子を人質に取られた美織は仕方なく酒に付き合い悪酔いして昏倒。目覚めるとホテルの一室で・・・。この時点では単に誤解されそうな写真を撮りたかっただけのようで、何もなかったんですけど、勝又の巧妙な罠に美織はハマり、組へ融資できるよう細工を頼まれます。勿論、その手の組織への融資は法律違反なので父に迷惑がかかるからと突っぱねるも、彼は尊にこの写真を見せると脅迫。追い詰められた彼女は思い悩み、気落ちしている様子にさすがに尊も気が付いて調査を始めると勝又の方からコンタクトを取って来て例の写真を見せられると彼は激怒。この手の脅迫は常套手段だからと信じず、勝又の組を潰す決心をするのでした。昔、少々ヤンチャしてたらしい尊の逆襲は、やっぱりって感じでしたが、まぁそうなるよねぇと。勝又さんも過去色々あったようだけど、それに付随して美織の祖母と勝又組の前組長との意外な過去も紐解かれるのでした。当初はこの辺の件は少し唐突過ぎない?とも思いましたが、このお祖母ちゃんは最初から妙な存在感あったからなと納得。正直、尊より勝又さんの方が存在感あって、あとがきを読むに作家さんのお気に入りらしい。道理で。その後、諸々解決して尊と美織は結婚。お話自体は大団円で完結していています。書き下ろしの番外編は尊目線の実は二人の初対面はあのクラブではなく、な出会いのエピソードです。若干荒唐無稽な展開もありましたが、これもまた良し。評価:★★★★☆
2024.01.20
コメント(0)
2021年7月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん恋愛にトラウマを持つOLの真優。結婚・出産は無理かと悩んでいると、会社の御曹司である理人から「俺ではお前の子の父親にはなれないか?」と突然子作り相手に志願され…!?交際0日で結婚した2人。同時に妊活もスタートするが、理人は予想以上に溺甘な旦那様で…!?「そのためだけに抱くんじゃない。愛おしいからだ」-毎晩惜しみなく注がれる溺愛に、真優の心は熱く揺さぶられて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 椎名真優=教育関連会社で働くOL。元カレによるDVで恋に臆病になっていた。 小暮理人=真優の勤め先の御曹司で上司。教育関連会社「キッズステップ」で働く真優は仕事熱心でややワーカホリック気味。毎日のように残業して業務の傍ら数々の企画書を提出。しかしながらそのほとんどが採用されることはなく、上司の小暮から突き返されてばかり。そして論破されるまでがデフォだった。個人的に良いと思ったことを盛り込んでるのに、彼はあっさりそこに問題点も見つけるものだからぐうの音も出ない。それでもめげずに何度も企画書を持ち込んでは却下され、その後言い合いをしている二人は自他共に認める天敵コンビだった。だが、真優にとっては鬼上司の小暮も、実は気遣い屋で優しい人なのも知っている。少し前のこと、交際していた彼氏の束縛と横暴な態度に恐怖を感じ、逃げ回っていた真優は待ち伏せされ揉めているところに偶然居合わせた小暮に助けられた。その際、真優は殴らたこともあって彼は激怒。元カレは小暮の様子にビビって逃げたのだが、彼は真優に危険だからと早々に引っ越しを薦め、知り合いの弁護士にも相談してくれると言う。翌日にはこれまた小暮の手配で夜中にひっそりとマンションを退去することが出来た。その後、暫くは恐怖に震える日々で自宅に帰るのも怖かったのだが、ある日、小暮から元カレにこの件を秘密にする代わりに真優に二度と関わらない事を承諾させたと報告を受けビックリ。しっかり署名捺印された書類を見せられ、裏でここまで動いてくれた彼に感謝した。とはいえ、トラウマは早々消えないけれど、漸く前向きに色々と考えられそうではあった。それからまた暫く経って、相変わらず小暮からは企画書を突っ返されていたが、子供を対象とした教室案だけは少し手直しを入れれば使えそうだと採用決定。企画者として真優も携わることに。多くの子供たちと触れ合ううちに、彼女は恋愛や結婚はともかく自分の子供は欲しいと漠然と考えるようになった。同時期に友人が妊活することになり検査の結果不妊が発覚したらしい。悩みを聞いているうちに、26歳以降は段々出来にくくなるのだと聞いて28歳の真優は大ショック。35歳以上は高齢出産となりリスクも増えるようで、子供が欲しいならもう行動に移らなければ。思わずあれこれネット検索していたら精子提供云々のページを偶然小暮に見られてしまい、何を思ったのか、彼から「俺では君の子供の父親になれないだろうか」と告白されて・・・。話を聞くに、小暮もまた結婚には興味は無いものの亡き母の遺伝子を残したいと考えていたそうで、利害は一致しているからとのこと。認知もするし、費用も出すと押し切られ、なし崩しに承諾してしまった真優は一先ず検査をしようと婦人科を受診。生理痛が毎回酷いのでそこが気掛かりでしたが、結果はクロ。子宮内膜症と判り、妊娠はし難いと聞いてガッカリ。でも、不妊治療をして妊娠をすればその間は生理が止まり症状の改善にもなる。小暮と相談の上、そちらを選択したのだが、不妊治療は想像を絶する辛さでしかも何度も失敗。真優はストレスもあって精神的に追い詰められるも小暮の協力と支えにより持ち直します。その後、二人は話し合い彼からの提案もあって結婚。幾つもの治療法を試し、頼みの綱であった体外受精で真優は妊娠。悪阻の辛さも小暮の献身的なサポートで乗り切り、ラストには男の子が産まれて本編は完。巻末の番外編は本編から7カ月後の小暮目線で、離乳食を食べたがらない長男に手を焼く二人の様子が描かれています。内容は勿論面白かったし、良いお話なんですが不妊治療の大変さについても色々考えさせられました。それと、ヒロインの元カレのような暴力男は滅べばいい。この作家さんのお話は皆同じ時間線なので、たまーに見知ったキャラの名前が出てくると( ̄ー ̄)ニヤリとするのも醍醐味だと思います。弁護士の八木沢さんはわかったけど、ヒロインの親友の紬ちゃんが出てる本は未読なので、積読になってる既刊の中にあるかな(^_^;)評価:★★★★★
2024.01.17
コメント(0)
2023年12月刊ベリーズ文庫著者:皐月なおみさん唯一の家族だった母を亡くした日奈子。喪失感を抱える中、大手ホテルグループの御曹司・宗一郎に求婚され戸惑いを隠せない。とある事情で幼い頃から一緒に過ごしてきた彼は憧れの存在。しかし立場の差から、恋することは許されなかった。好きになってはいけないのにーー「生涯かけて君の笑顔を取り戻す」宗一郎の限りなく深い愛に絆される日向子。閉ざし切っていた心もやがて甘く溶けていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 鈴木日奈子=コンシェルジュ。長い間宗一郎に片想いをしていた。 九条宗一郎=大手ホテルグループの御曹司。 鳳美鈴=旧財閥家のお嬢様で有名なモデル。大手ホテルグループ・九条ホテルでコンシェルジュとして働く日奈子は、たった一人の家族である母を病気で亡くして以来、喪失感に苛まれていた。何をするにも悲しくなって楽しみすら見つけられない。母が残してくれた娘の為の覚書が綴られたノートを読み返しては虚しい日々を過ごしている。そんな彼女を気に掛けてくれたのは九条家の人々だった。日奈子の母は長年九条家の住み込み家政婦をしており、亡き前社長・富美子のお気に入りだった。気難しい富美子に誠心誠意尽くしてくれたと現社長夫婦にも感謝されていたほど。そのせいか、母の娘である日奈子は彼らに大層可愛がられ、7歳年上の九条家の一人息子・宗一郎に至っては厳しい富美子の教育の合間を縫って彼女の世話をしてくれた。当然、日奈子は彼に懐き実の兄のように慕っていたが、高校生にもなると恋心に変わりモテる宗一郎に恋人ができる度に心を痛めていた。でも、自分は使用人の娘で彼は旧財閥家の跡取り息子。実は母も格差婚で苦労した経緯から、娘に絶対に格差婚だけはするなと常々言い聞かせていた。それに富美子が宗一郎に結婚はそれなりの家の人としなさい、と話をしていたのを偶然耳にして日奈子の恋は決して叶うことはないと悟ったのだった。そんなある日、元気の無い彼女を気遣った友人に飲み会に誘われた日奈子が、参加者の男性に無理矢理どこかに連れ込まれそうになった所を宗一郎に救われたことをきっかけに二人の関係は大きく変化。普段からこの手の飲み会の参加を禁じていた彼に怒られ、つい、母が死んで寂しいから結婚したくなったのだと言い返した。すると、何を思ったのか宗一郎は、なら俺と結婚しようといきなりのプロポーズ。最近、週刊誌で世界的なモデルの美鈴と結婚間近だと報じられたくせに、冗談にもほどがある。思わずその件を尋ねると否定も肯定もしないのはどうやら事情があるらしい。そのうち無くなる話だし俺の本命は日奈子だと言う彼を信じていいのか。それ以前に例のノートに書かれていた、宗一郎を好きなってはいけないと母の遺言を思い出すと、このプロポーズを受け入れる訳には行かなかった。心を鬼にして宗一郎のことは恋愛対象として見れないと断った日奈子だったが、告った以上は絶対に諦めないと、この日以来、宗一郎の猛アタックが始まった。暇を見つけては日奈子の住むマンションを訪れ、手仕事の好きな彼女のやりかけの手芸にまで付き合う彼に呆気にとられつつも、子供時代によくこうして遊んでくれたり勉強を教えてもらったことを思い出した。彼は失敗したと思う料理まで世界一美味いと称賛するけど、そういえばこの人はどんな結果になっても褒めてくれたっけ。総じて九条家の面々は日奈子に甘く、社長夫妻が天涯孤独になった彼女を養子にしたいと申し出て来た時は驚いた。食い下がる彼らにそこまでしてもらうわけにはと必死に辞退したほど。あの人達ならもしかして宗一郎との結婚に反対しないかもしれないが、気になるのは富美子の言葉で・・・。故人の意向とか気にしないでもいいのに、と思い読み進めると、あの富美子さんと宗一郎の会話の意味を日奈子が取り違えていたことが後に判明します。富美子さんは厳しいながらも、仕事が大変だからこそ良い家柄とかよりも、本当に好きで支えになってくれる人を選べと言っていたらしく、それが彼にとっては日奈子だったというオチでした。まぁ、これは実体験もあって日奈子の母も曲解してたからああいう遺言を残してしまったわけですが、このお母さんの気持ちも判るんですよねぇ。なんか意図せず呪縛っぽくなっちゃってたのは不本意でしょうけども。でも、宗一郎の両親は日奈子に本当の家族になってほしいから、どうせなら息子の嫁にと望んでいたのは幸いでした。九条家の人達の真意も判り、美鈴本人からも宗一郎との仲を否定されたことから、日奈子は彼の求婚を受け入れることを決意。半年間の同棲後、結婚して終わっています。書き下ろしの番外編は本編から1ヶ月後のラブラブラブな二人のお話。評価:★★★★★ヒーローのブレなささが良いです。
2024.01.08
コメント(0)
2019年2月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん大手文具メーカーで働く鈴乃は、とある事情で親の借金を返済していたが、それを会社の御曹司・渡会に知られてしまう。「俺がお前を守る。だから結婚しよう」ーー彼が提案したのは借金を肩代わりし、鈴乃と結婚するという交換条件!? ためらう鈴乃だったが、押し切られるように甘い新婚生活がスタート! 恋を知らない初心な鈴乃の態度は知らず知らずのうちに彼の独占欲を煽ってしまい…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 高遠鈴乃=大手文具メーカーに勤める会社員。美人でデキる女を演じている。 渡会瑞希=鈴乃の先輩社員で営業部のエース。渡会まどか=瑞希の妹。大学時代、憧れの人に地味女と揶揄されて以来、悔しさからファッションやメイクを独学で研究して来た鈴乃。今となっては美人でデキる女として社内では高嶺の花扱いされている。我ながら涙ぐましい努力をして来たのでその評価自体は嬉しいのだけれど、付随して恋多き女とも言われているのには困惑している。なんでも付き合う男はハイスぺばかりで、今のお相手は外資系のエリートだとか。この噂も相俟って鈴乃にモーションを掛けて来る猛者は少なく、26になっても彼女は恋愛経験ゼロだった。こんなはずでは、と思いつつもかと言って今となってはこのスタイルをやめる訳にもいかない。実はエクセルが苦手だったり、頼まれたらイヤと言えないと言う性格など改善点は山積み。加えて現在進行形の悩みは鈴乃の生活をひっ迫させていた。そんなある日、苦手な書類作成で四苦八苦していた鈴乃はたまたま居合わせた先輩社員の渡会に助けられ、夕食までご馳走してもらってしまった。しっかりエクセルがからっきしなのがバレて顔から火が出る思いもしたが、少々意地悪な彼の素顔が垣間見れたのは役得かもしれない。遅くなったからと送ってくれた渡会に礼を言っていると、部屋のドアにこれ見よがしに督促状が張り付けられていて血の気が引いた。今月の支払い期日はまだ先のはずなのに。どう言い繕おうかと考えていたら問い詰められて渋々事情を説明することに。去年急逝した鈴乃の父は友人の連帯保証人になっていたらしく、それが法定外の利息を取る闇金だったことから払い切れずに友人は夜逃げ。支払い義務が高遠家に降りかかってしまった。コツコツ貯めていた貯金で多少は返済できたが、とにかく利息が高く中々元本が減らずな状況なのだと。眉をひそめて事情を聴いていた渡会はどこかに電話すると闇金業者の名前や借入状況を話し、処理を頼んでいた。聞けば、この手の案件に強い弁護士の友人がいるそうでもう心配はいらないと言う。しかも元本に関しては一先ず渡会が出すからとの言葉にそこまでしてもらうのは、と固辞すると、なら俺と結婚しようとぶっ飛んだ返答が。家族なら出すのは当然とどこ吹く風。それ以前に結婚するとは言ってないんですけど、と戸惑ったが確かに一旦借金は綺麗にしてしまった方が良い。完済まで時間はかかってしまうけれど渡会には毎月少しずつでも返済して行こうと決意した。翌日、改めて彼に礼を言うと早々に件の弁護士が動いてくれたそうで、あのバカ高い利息分はチャラとなり、残った金額も弁護士を通して返済完了となっていた。いくら利息分が減ったとは言えかなりの額なのに、ポンと一括で出せるとは彼はもしかしてどこぞのお坊ちゃまなんだろうか。分割で返済して行くからと話すと嫁さんなんだから気にするなと笑う彼はどこまで本気で言ってるんだろう。それでも食い下がると、なら俺の家で料理を作ってほしいと言われ、なし崩しに同居する羽目に。高級マンションにビックリしながらも、鈴乃の作る家庭料理に喜ぶ渡会に段々心惹かれていく鈴乃。大きな悩みが減ったことで心も軽くなり、兼ねてからの夢である手が不自由な人の為の文具の販売を会社に提案。渡会も賛同してくれて企画会議に出すと何とか案が通って彼共々開発に着手。その頃には、冗談かと思っていたあのプロポーズが本気と判り、受け入れた彼女は結婚の挨拶で渡会の実家に行くとそこで鈴乃の幼馴染であるまどかと再会。まどかは事故で車いす生活となり手も少し不自由となった。絵が上手だった彼女のために少しでも役立てる文具が作りたい。それが現在進行形のプロジェクトを提案した理由であった。しかも実は渡会は、鈴乃が子供時代に憧れていたまどかの兄だと判り・・・。これは鈴乃が判らなかったのは無理もなしでして、渡会兄妹の両親は当時離婚しており母方の名字だったんですが、まどかの事故を機に復縁し渡会姓に戻ってたのでした。まどかは鈴乃の献身のおかげで再び絵を描き始め、今では色鉛筆画家として画集まで出すほどの腕前に。渡会家の人々は鈴乃のことを救世主だと感謝。でもそれだけで渡会が彼女を嫁にと希望したわけではなく、昔小学生だった鈴乃からお嫁さんにして欲しいとお願いされていたからだったのです。本人すら忘れてたのでそういえば、と漸く思い出した彼女と、律儀に約束を果たした渡会。とは言え、会社で再会してからの彼女のことも好ましく思っていました。まぁ、いくら恩人でも将来を共にする人のことはしっかり見極めてますよね。そして、渡会が自分が勤める文具メーカーの会長の息子と知って再度ビックリ。てか、タイトルも御曹司だし、あらすじでバラしてた(^_^;)ここまでは割と幸せモードなんですが、高嶺の花を装ってた弊害で勘違いな輩たちに目を付けられていた鈴乃はトラブルに巻き込まれます。一人は女癖が悪くあちこち手を出しては退職に追い込んでた第一営業部の課長。もう一人は鈴乃を地味女と蔑んだ大学の同期。どちらからもピンチに追い込まれるも夫となった渡会に追い払われ、社会的制裁も食らわせます。こいつらマジで胸糞案件だったので徹底的に潰してくれた渡会の対処にはスッキリ。文房具と持ちやすさを考慮した補助具の開発は試行錯誤の末に完成に至り、異例のヒット作となると自分に自信が無かった鈴乃も変わっていきます。あの借金発覚から1年後、二人の結婚式のシーンでEND渡会がホントにスパダリでした。この人が鈴乃のことをずっと見守ってくれてて良かった。なにせ、鈴乃がクズ男ホイホイでしたからね。彼がいなけりゃどうなってたことか。評価:★★★★★
2024.01.06
コメント(0)
2023年12月刊ベリーズ文庫著者:未華空央さん仕事で悩んでいた看護師の芽衣。そんな時、憧れのフライトドクター・元宮の言葉に心救われ、ふたりは急接近する。やがて彼の独占欲が溢れ出し甘い夜を共にするも、元宮が結婚して渡米するという噂を聞いて… 。身を引いて娘をひとり産み育てていた芽衣だったが、ある日突然彼と再会して!? 「絶対に手放さない」--揺るがぬ想いで芽衣を囲い込む元宮。彼の一途すぎる溺愛に心乱されていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 佐久間芽衣=フライトナース。家族の恩人である元宮に想いを寄せている。 元宮克己=フライトドクター。芽衣と心を通わせるが協力医として3年間アメ リカに行っていた。 佐久間衣緒=克己と芽衣の娘。フライトナースとして救急病院で働く芽衣には密かに憧れる医師がいた。5年前、高速道路での事故で父が頭部を強打。意識不明となり応急処置はしたものの不安に駆られていた彼女は駆け付けたフライトドクターの冷静で的確な処置に目を奪われたのだ。幸い、父は後遺症もなく元気にしている。その経験から元々看護師だった芽衣はフライトナースになる決意を固め、必須である救急救命で2年働きながらドクターヘリ講習なども受け、2年前この病院に転属。父を助けてくれたあの医師・元宮が在籍しており、一緒に働けるのが嬉しい。当然、彼は大勢いる一患者のことなど憶えておらず、思わず礼を言った芽衣の言葉にも最初は微妙な反応だった。でもおかげで父は元気に暮らしていると話すといつもは無表情な元宮も少し嬉しそうだった。彼は大病院の御曹司で後継者、しかも脳外科医としても優秀というスペックのせいか近寄り難く遠巻きにされているが、実のところ真面目な人なんだろうと思う。救急病院なので、多くの死に直面するが家族や親しい人を亡くすと取り乱す人は多い。搬送された時には既に心肺停止状態で手遅れだった場合でも処置にあたった医師や看護師を責められたりするのでやりきれない。今日も遺族に怒鳴られショックを受けたのだが、担当医だった元宮にさり気なくフォローされ、終業後に明日は休日だからと憂さ晴らしに飲んでいると元宮とバッタリ。珍しくあちらの方から話しかけてくれて、彼なりの慰めの言葉をくれた。しかも、自分も非番だから一緒に出掛けないかと誘われてビックリ。思わず承諾してしまったけど講習でもしてくれるのかな。ラフな格好で来てと言われたので、その通りの服装で行くと連れていかれたのは山奥にある隠れ家的なカフェだった。キャンプなどのアウトドアが好きでこの近辺に良く訪れるのだという。仕事に打ち込むのはいいが、自分のことも癒さないとダメだと話す元宮の言う通り、確かに自分は心の余裕が無かった。彼のようにキャンプを趣味にするのも良いかも、そう話すと普段見せないような顔で笑った彼にドキドキ。多忙な元宮が非番の日と中々都合が合わなかったが、キャンプ用品の購入に付き合ってくれるというのでありがたくお願いすることに。買い物後は会員制のレストランで食事をご馳走になり、時間も余裕があったのもありバーに行くと、元宮から告白された芽衣。何にでも一生懸命な君にいつの間にか心惹かれていた、と言われ両想いだったと判った二人の気分は盛り上がりその日一線を越えます。その後、暫くは元宮がまた多忙となり、二人きりで会う機会は訪れずすれ違いは続いていた。だがそんなある日、彼を訪ねて一人の女医が現れたことから不穏な気配が。同僚によれば、以前元宮と見合いをした人物らしいのだが、断られたくせにめげずに忘れた頃になると現れてああして付き纏っているらしい。でも、案外結婚も秒読みなんじゃと聞かされ芽衣は大ショック。例の女医は大病院のお嬢様とのことで政略結婚なのだろうが、彼はそんなこと言ってなかった。もしかして遊びだったの?何だかモヤモヤして元宮から連絡が来ても都合が悪いと会うのを拒否。そのうちに彼が協力医としてアメリカに数年行くことが決まり、話があるというのもそのことかもと思い始めたら、あの女医・上原が彼は私とアメリカに行くのよと勝ち誇り、早々に別れるよう釘を刺されてしまった。しかも、最近体調不良だった芽衣は自分が妊娠しているのに気付き・・・。う~え~は~ら~~~~~。お判りでしょうが、これはこのバカ女の嘘です。勝手に元宮と付き合ってるとでっち上げ、別れさせようなんて片腹痛い。でも、芽衣と元宮、この二人まだ交際してなかったのが拙かった。付き合ってたならまだ彼の口から聞くまでは云々言えたんでしょうけど、そうじゃないので芽衣は妊娠してしまったのに彼の前から消えることを決意。元宮も突然彼女に拒否られた挙句病院まで辞めてしまったので、自宅に押し掛けるも同居していた芽衣の弟に追い返され困惑しますが、アメリカに行かないわけにもいかずで3年以上二人は離れ離れに。その間、芽衣は実家に帰り、ギリギリまで診療所の看護師を務めてその後女の子を出産。家族の協力を得ながら娘を育てていましたが、外出中に事故に巻き込まれた際、病院で元宮と再会。二人の間に娘が産まれたことも知られて、話をしているうちに結婚の件も上原の狂言だったと判明。誤解も解け、元宮からの懇願もあり入籍を決めます。上原さん、この後相当元宮に怒られたそうだけど、まだしつこく彼に迫ってそれを見た芽衣に誤解されたりこの人が元凶なれど、芽衣も結構疑り深いよねと思ったりw紆余曲折ありつつも、家族三人仲良くやってる様子が描かれて終わっています。評価:★★★★☆このジャンルでは誤解はつきものってことで
2023.12.28
コメント(0)
2023年12月刊ベリーズ文庫著者:若菜モモさんウブな令嬢の蘭は、祖母同士が決めた許嫁の御曹司・清志郎との結婚が迫っていた。密かに憧れていた彼との新生活にドキドキしていたが、彼の祖母から1年以内に妊娠しなければ離婚するよう言われてしまう。清志郎の態度もそっけなくて切なさが募るばかり。しかしある時、蘭のまっすぐで健気な姿が彼の独占欲に火をつけ…!? 「今ここで君が欲しい」──溢れ出す激愛で、身も心も甘く掻き抱かれ…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三澤蘭=大学卒業後、許嫁の清志郎と同居するが結婚前から彼の祖母に孫をせ っつかれタイムリミットまで決められてしまう。東妻清志郎=名家の御曹司で実業家。女学校時代の親友だと言う祖母たちの約束で産まれた時から結婚が決まっていた清志郎と蘭。議員をしている蘭の父は東妻家との縁組を喜び、彼に相応しい妻になれと娘を厳しく躾けた。そんな生活は少々息苦しかったが、蘭にとって清志郎は初恋の人だったので結婚式を心待ちにしていた。しかし、彼女が18歳になった年に祖母が亡くなると清志郎の祖母・清花は随分と落ち込み、自分もいつお迎えが来るかも判らないからと二人の結婚を急かし、早く曾孫を抱きたいと彼に頼んでいる会話を耳にしてしまい複雑な心境に。それと言うのも、どうにも清志郎は結婚に乗り気ではなかったから。蘭としてはずっと夢見て来たので諦めたくない。清志郎から本音を聞きたいと尋ねられた時も絶対にあなたと結婚すると答えた。あれから4年、無事に大学を卒業した蘭は清花たっての希望で上流階級必須のマナーを学ぶためにスイスのフィニッシングスクールに入学。約6週間のカリキュラムを終了し、今はカンヌで暮らす清志郎と同居することになった。清花としてはこの同居で愛を育んでもらいたいらしい。例え入籍前でも妊娠したならなお嬉しいと言うことのようだが、一方的に憧れているだけで、彼が蘭をそういう対象で見ていないのが丸判りなだけにどう距離を縮めて行けばいいやら。しかも、日本を発つ前に清花から、結婚して1年以内に子供が出来なければ離婚してもらうとも言われている。高齢なのもあるが、清志郎の両親は事故で亡くなっており、東妻家の直系は清花と清志郎のみ。傍系をのさばらせないためにも、余計に二人の子供を見て安心したいのだろう。清花の事情は判るものの、清志郎はいかにもモテそう。それに通いのハウスキーパーのカトリーヌは物凄い美人で、彼を狙っているのか蘭に敵意剥き出しなので気分が悪い。何で婚約者の自分が気を使わないといけないのか。だが、清志郎は後日婚約指輪を用意し、結婚の意思もあるように見える。清花からの圧で腹をくくったのかと思いきや、暴走したカトリーヌの起こしたトラブルをきっかけに彼の本心が明らかに。清志郎も蘭と同じ気持ちだったのは嬉しいが、彼なりに強引でワンマンな清花への反発心もあったようだ。素っ気なくしていたことを詫びてくれて以降は蘭を溺愛。蜜月の日々が続いていたけれど妊娠の兆しはなく、彼も急がなくていいという。清花からせっつかれているのを察し、清志郎から義祖母に話してくれるらしい。そんなある日、寝しなに電話でたたき起こされた蘭は父から母が脳梗塞で倒れて危険な状態だと聞かされ、急ぎ帰国。幸い、発見が早く後遺症も少ないだろうと言われ安心したけれど、こんな状態なのに同居している兄の姿が見えない。父に聞いても言葉を濁すしなんだか嫌な予感。その夜、友人からニュースで兄・誠の横領容疑について報じられていると聞いて蘭は驚愕。父を問い詰めると誠はネット通貨詐欺に引っかかりかなりの損失を出したのだそうだ。その穴埋めに党の金を使い込んだと容疑を掛けられたのだと。確かに1億程の金額が消えているようなのだが、兄は否認しているらしいし、家族はみな彼を信じている。悪いことは続くもので、誠の件を聞きつけた清花が蘭を呼び出し、清志郎と結婚をさせる訳には行かないと婚約破棄を言い渡してきて・・・。ちょっとお婆さん、いい加減にしなさいよっ。孫を早く作れとタイムリミットをつけるのもどうかと思ってたんですけど、今度は容疑も確定してないのに疑いを掛けられた時点でダメと聞く耳持たず。でも、清花に反対されたらどうあっても結婚は出来ない。諦めて身を引こうとしますが蘭を心配して帰国した清志郎が清花に破談にしたら縁を切ると脅し、こんなの蘭の祖母も悲しんでいると説得したのが功を奏してなんとか破談を思いとどまってくれます。兄の方は清志郎の知り合いの弁護士が優秀で、同僚に横領の罪を擦り付けられたことが判明して無罪放免に。一回どん底に落ちかけたけれど母の方も順調に回復しており、二人は早々に入籍。式は後にカンヌで身内だけで挙げようと決めるも、カンヌで今度は蘭が事故に遭い一時的な記憶喪失になったり、今作は結構波乱万丈です。まぁ、結局は何だかんだと上手くいくのでそこは安心して読めました。最初は結構誤解されるようなこと言ってたんで清志郎の気持ちが判らず、あの態度もなぁな感じではありましたが、途中彼目線のエピソードもあってそこで本音が知れたのは良かった。頑張るヒロイン・蘭ちゃんの性格が良いのも好感が持てます。評価:★★★★☆
2023.12.25
コメント(0)
2023年1月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さん夢だった航空整備士となり、日々勉強に励む鞠花。ある日、大学時代の先輩で長年片思いしているエリート副操縦士の岸本と再会し、デートすることに! 鞠花の想いはどんどん膨らんでいくけれど、実は彼女には親が決めた婚約者が。最後に想いを告げて彼の前から姿を消そうとしたけれどーー「誰にも渡すつもりはない」岸本は湧き上がる独占欲で鞠花を絡め取り、彼女を妻にすると宣言し…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 夏目鞠花=航空整備士。実は大手電機メーカーの社長令嬢で外で働くのも25歳 までと期限付き。長らく岸本に想いを寄せている。 岸本広夢=副操縦士。仕事に集中するために恋愛から遠ざかっていた。 太田克己=メガバンクの頭取の次男で鞠花の婚約者。憧れの航空整備士となり、仕事に励む鞠花。職業柄若干男尊女卑で嫌味三昧のベテランもいるけれど、憶えることも多いのでそんなの気にしちゃいられない。教育係の池尻は厳しい面もあるが気の好い人物で教え方も丁寧で判り易い。必死にメモを取りながら帰還した機体の整備と点検に入ると制服姿の岸本広夢の姿が見える。彼は大学の先輩で色々迷っていた時期、鞠花にあるアドバイスをしてくれて、おかげで期限付きではあるがこの仕事に就くことができた。それ以降、岸本は鞠花の憧れの人であり片想いの相手になった。しかし、彼は非常にモテる。同期の月島共々大人気で小柄で地味な自分など目にも止まらないだろう。帰宅すると母から実家に帰って来いとメールが来ていてげんなり。まだあと期限まで2年近くあるのに余程娘がこの仕事をしていることが気に食わないらしい。父は大手電機メーカーの二代目社長で、鞠花は一人娘。後継者として婿養子を迎えることになって18歳の時にメガバンクの頭取の次男・太田克己と婚約させられた。両親は娘の大学卒業後すぐに結婚させたかったようだが、お相手の克己の長期海外勤務が決まり、彼が帰国するまで結婚はお預けとなったのだった。おかげで25歳までは自由をもぎ取れたけれど、タイムリミットが来た時のことを思うと気が重い。そんなある日、鞠花のことを覚えていたのと、彼女の先輩整備士・井上から評判を聞いたと岸本が声を掛けてくれた。先日煩型のベテラン整備士とひと悶着あったのを耳にしたようで、心配してくれていたようだ。いやもうその言葉だけで充分と感激していた鞠花は岸本に食事に誘われてビックリ。行きつけのフレンチレストランに連れて来てくれて夢心地だった。しかし、美味しそうに食べる彼女を見て妹みたいで可愛いと言われ内心大ショック。でもこのひと時のおかげで明日の実家行きは乗り切れそうな気がする。が、当日実家で待っていたのは両親だけでなく克己までいてなんだか嫌な予感。母の上機嫌ぶりにまさかと思えば予感は的中、克己の海外勤務が早上がりになって先日帰国したとのこと。結婚を心待ちにしていた両親は早々に仕事を辞めて家に入れと言う。約束なんて知ったこっちゃないと強引に話を進める彼らを何とか振り切り帰宅したが絶望感に打ちひしがれた。相当ショックだったのか仕事に身が入らずミスも連発。見かねた井上が励ましてやってくれと岸本に話したようで、忙しいだろうに後日事情を聴いてくれた。妹みたいで放っておけないからなんでも話してくれとは言われていたけれど、こんな悩み話してもいいんだろうか。彼に促されるまま、ぽつりぽつりと自らが置かれている状況を語り始めた鞠花。社長令嬢な事は知っていたが、実は彼女は夏目家の住み込みの家政婦の娘だったこと。だがその母がガンを患いその治療費と引き換えに事故死した夏目家の長女・静奈の身代わりとして養女になったこと。以来、静奈として将来を決められ無理矢理婚約させられた挙句、そのお相手が早く帰国したので仕事を辞めて結婚しろと命令されたと聞いて岸本は絶句。実母の治療費を出したからって夏目の両親は勝手すぎやしないかと激怒。しかも、続いた鞠花の話によれば克己がかなりの問題児らしい。婚約する前から交際していた恋人とまだ切れていないようで、鞠花と結婚しても恋人を愛人として認めろとほざいたそうだ。当然、彼女は両親にも話したが、それくらい大目に見てやれと取り合わないという。鞠花が不幸まっしぐらな結婚を強いられていると知り、思わず岸本は俺と結婚しようと告げた。妹みたいで可愛いと思いつつ、再会してからというもの、実のところ彼女に好感を抱いていた岸本は鞠花が結婚すると聞いて相手に嫉妬したのだ。しかも相手はかなりのクズ。そんな奴に彼女を渡すわけにはいかない。いきなりのプロポーズに鞠花は茫然としていたが、ずっとあなたのことが好きだったと自らの想いを告白。しかし、婚約破棄となるとそう簡単に行くだろうか。一先ず婚約者の方から断るよう交渉しようと、後日克己を呼び出した岸本は何やら勝算があるようで・・・。当日は弁護士を連れて克己に婚約中の不貞行為による鞠花との婚約破棄に承諾するよう、説得する岸本。この数日間の間の調査で克己の恋人が妊娠中とも判り、海外勤務にも連れて行っていたと判明。この大胆さに読んでた私もビックリ。いやいや、独身なんだし単身での赴任なのに彼女連れって同居してたとか、それ普通に会社規定にも引っかかるよね。と思ったら後にそのことも言及されてました。おまけに妊娠してるって(ノ∀`)アチャー。しかも恋人の方は克己に婚約者がいたと知らなかったようであちらも被害者という最悪のパターン。そちらは自分でなんとかしなさいね、と前置き、一先ず克己の有責で婚約破棄をしろと話すと、渋々だが念書にサインも貰い破談に持ち込むことに成功。問題は夏目家の方で、この婚約破棄により新規プロジェクトの融資がパァだと父は激怒。更に、娘は仕事を辞めず、副操縦士と結婚すると聞いて怒りはヒートアップ。てんやわんやな状況になるも、古参の家政婦の言葉によって、母が目を覚まし辛い思いをさせたと鞠花に謝罪。岸本との結婚を認めますが、父は頑なに拒否。これは長引くかと思いきや、結局は岸本から鞠花がいかに整備士の仕事に誇りを持っているか聞かされ、実際に娘の働きぶりを見学した結果、漸く許してくれるように。この両親もねぇ、鞠花に母親の治療費出してやったんだから恩を返せとばかりに毒親っぽくなっちゃってたので思い直してくれて良かった。まぁ、克己の悪事が知れたのも大きかったよう。さすがに海外勤務に恋人連れてってその人は妊娠もしてたじゃなぁ。一応、結婚前にその手の関係は清算してくれと克己に頼んでたそうなので、心配ではあったんでしょう。結局なんやかんやありつつ、両家の承諾を得て二人は入籍。物凄いスピード婚でしたが、周囲にも祝福されて本編は終わっています。書き下ろしの番外編はそれからまた少し経って、第一子を授かった鞠花とそれを見守る岸本目線のお話でした。個人的に克己の恋人・近藤香苗さんが誠実で良い人なだけに気の毒だった。あんなクズ男に引っかかったせいで知らずに不倫の片棒担がされてたんだもん。因みに今作のヒーローの岸本さんは、先日ネタバレ感想記事をUPした「敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる」にも登場していて、そちらは今作より6年後(?)のお話になっています。↑のヒーロー月島さんも今作にちょこっと出てて、まだ成海には出会ってない頃でした。評価:★★★★★どちらかと言えばこちらの方が好みの内容です。
2023.12.20
コメント(0)
2017年8月刊ベリーズ文庫著者:田崎くるみさんOLの美月はワケあって“御曹司”が大嫌い。でも社長の息子で社内人気No.1のイケメン、恭介に「君に興味が湧いた。本気でいくからよろしく」と甘く宣言されちゃって!?強引にデートに連れ出されたりお姫様抱っこされたり、高級ホテルのスイートルームに泊まらせてくれたりと溺愛プロポーズされまくり!最初は嫌だったけど軽そうに見えて実は一途で優しい彼に次第にキュンキュンし始めて…? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 小野寺美月=ごく普通のOL。家庭の事情から御曹司を嫌っている。 神恭介=美月の勤め先の御曹司。自他共に認めるモテ男。 鈴木一郎=美月の上司。 榊原亜紀=美月の同期で親友。入社2年目の会社員の美月は御曹司が大嫌い。それというのも実父が御曹司だったそうで、その立場上結婚を反対されて結果彼女は私生児として育ったから。充分な生活費と養育費も貰ってたから片親でも苦労はしていなかったが、認知もしたし金だけ寄越せば文句ないだろうと言う父の態度も気に食わない。おかげですっかり御曹司という者の印象が悪くなってしまった。とはいえ、そうそう出会う機会も無いと思っていたのだが、先日社長の息子である神恭介が営業部に入って来てからというもの女性社員達は大騒ぎ。金持で次期社長。しかも高身長でハンサムと来ればさぞモテるだろう。女性関係も派手だと聞いてるし美月にしてみればそういう所も含めて彼は気に食わない存在だった。そんなある日、資料室に向かう途中に神と遭遇。運ぶのに難儀していた資料を引き受けてくれた。素直に礼を言って何か言いたげな彼を残して帰ろうとすると、スルーされたことが信じられないようで追いかけて来た。俺のこと知ってるよね?と馴れ馴れしくしてくる彼に社長の息子に失礼かと思いつつ、存じ上げてますが別にあなたに興味が無いのでと答えると茫然としていた。御曹司で顔が良いからって誰もがあなたに惚れる訳じゃないからと憤慨しつつ総務部に戻ると、ドジで仕事は遅いが愛されキャラの鈴木主任が上司にどやされていた。これは大変と鈴木の仕事を笑顔で半分引き受ける美月は、入社以来彼に恋していた。そう、このいかにも普通な感じがイイ。親友の亜紀は鈴木のことを「冴えない眼鏡」呼びし、あんたの趣味はホントに判らんと言われている。でも見るからに堅実そうで良いじゃないと返したが同意は得られなかった。そんな亜紀も美月の事情を知っているだけにあまりとやかくは言わなかった。しかし、もし本当に好きになったら人が御曹司だったらどうするの?とはよく言われている。いやいや、そもそもそんな人と縁無いからと笑い飛ばしていたら、なんと恭介が美月に付き纏いだしたのだ。なんで私なんかをと尋ねると、自分に興味なしという態度が気に入ったからとのこと。そんな理由で?とにかく、御曹司ってだけで恋愛対象外だし、変な噂になるのも御免。きっぱり断ったけれど恭介は諦めない。おかげでかなりキツイ言葉で迷惑だと言ってしまい、亜紀に話すと心底呆れられた。同じ部署らしい彼女が言うには恭介は仕事はできるし性格も良いそうだ。御曹司ってレッテルだけで悪く見るのはやめなよと窘めた。それに女遊びも今はしてないようだしと聞き、少々言い過ぎたかと反省。確かに根は悪い人ではないように思う。さすがに謝罪しようと考えていたら、鈴木が結婚すると聞いて美月は大ショック。長年交際している彼女がいるとは聞いていたのでいつかはそういう話が出るとは思っていたが、そうか結婚しちゃうんだ。しかもいつも仕事を手伝ってもらってるからと鈴木に夕食を奢ってもらった際に美月を妹みたいに思ってると言われダブルパンチを食らった彼女は酔いつぶれ、たまたま出くわした恭介に介抱されることに。彼は美月に手を出すことなく彼女の話を聞き慰めてくれた。おかげで翌朝にはスッキリ。妹と言われてショックではあったけど、彼女も実は鈴木のような兄が欲しかっただけと気付き、何だか色々腑に落ちた。そしてこの出来事から恭介を意識するように。亜紀からそれはもう惚れてるんだよと諭され、社長業の修行としてあちこちの支社に転勤している彼がいなくなってしまう前に告白すると決めた。途中トラブルもあってそれが後押しする結果となり、美月から気持ちを伝えたことで二人は晴れて恋人同士に。もうじき彼は青森支社に行ってしまうがほんの数か月の遠距離恋愛を耐えればいい。出発前にプロポーズもされて、懸念していた格差婚も二人なら乗り越えられると思っていた。だが、現実は思っていたよりシビアで・・・。6年前の本なので表紙が何だか懐かしいテイストです。当時はヒーローの顔が見えない構図だったんだよねぇ。タイトルもシンプル。今ならきっと「御曹司なんてお断りでしたが云々~」みたいになってたと思うwそれはさておき、生い立ちから御曹司が嫌いだったヒロインが、何の因果か母と同じような状況に追い込まれます。大企業の御曹司なので案の定結婚を反対されていると聞き、どうするのが彼の為になるか考え最終的に身を引く決意をします。幸い、反対しているのは恭介の母とその親族で父親の方は賛成しているそう。でも、格差婚と言うものは想像以上に過酷で愛だけでは乗り切れない。それでもいいといなら協力するとは言ってくれてました。けれども恭介が余計な苦労をすると聞かされればそりゃ考えちゃうよね。別れを選んだ美月でしたが、その際実父とも対面。実は恭介の父とは友人関係だったと知ります。そして、当時ののっぴきならなかった両親の事情も判明。誤解も解けて、実父の力を借り恭介の前から姿を消した美月。それから3年、色々あって破談になり家業を継ぐために故郷に帰っていた鈴木と再会したりと様々な事が起こるも、離れていた間に周りから文句は言わせないと必死に仕事をして認められるようになった恭介が彼女を迎えに来て本編は完結。書き下ろしの番外編はラストから7年後の神家のお話でした。いやー、恭介が諦めないでくれてよかった。連載時は鈴木の方が人気でこっちとくっつけるか迷ったとあとがきに書かれてたので、思い直してくれて何より。鈴木さん、良い人なんですけどTL小説ならやっぱり恭介なんだよなぁ。そして、美月の父の愛に泣けた。一歩間違えば自分達と同じ状況になりそうだったしね。きっと気が気でなかったでしょう。これだから一般人はと言われない様、結婚前にアレコレ上流階級必須の習い事を叩きこんだってエピは、これぞ親心。前述の通り、古いお話ですが今読んでも遜色ない内容で一気に読んでしまいました。おススメです。評価:★★★★★
2023.12.17
コメント(0)
2023年12月刊ベリーズ文庫著者:坂野真琴さん神の声を聞ける聖女・ブランシュはお人よしで苦労性。こき使われる毎日にちょっぴり疲れていたら、神から“結婚せよ”と突然のお告げが!? なんだかワケありの辺境伯・オレールの元へ嫁入りすることに。彼は冷めた態度だけど、ブランシュは領民の役に立とうと奮闘。すると次第に、オレールの不器用な愛が溢れ出してきて…! でも、聖女が俗世で幸せになっていいんですか…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ブランシュ=7人いる聖女の中で一番若く格下の聖女。神託によって辺境伯位を 継いだオレールに嫁ぐことが決まった。 オレール=ダヤン辺境伯。リュシアンからブランシュの夫に選ばれた。 ルネ=建国の賢者の思念体で普段は白い猫の姿をしている。 リュシアン=この世界の神。 ダミアン=失踪したオレールの兄。 マリーズ=ブランシュ付きの侍女。神の声を聞くことのできる存在の聖女として選ばれたブランシュ。7人いる聖女の中で一番若く格下の彼女はお人好しな性格も相俟って面倒な仕事を押し付けられがちだった。内心では体よく使われている自覚はあるものの神であるリュシアンが変化したと言われている水晶をピカピカに磨き上げる仕事はやりがいがある。何故なら、彼が喜んでいるのが判るから。そんなある日、信託が下された。ブランシュを辺境伯に嫁がせろと言う内容に神殿内は騒然。稀少な聖女を嫁がせろなんてとんでもない!と批判の声が挙がったが、神の思し召しを無視するわけにもいかない。結果、ブランシュの結婚が決まった。お人好しな性格からいいように使われて過労死したという前世の記憶を思い出した彼女は、転生しても似たような状況になっていることに少々嫌気がさしていた。そこでリュシアン神に神殿から出て自由に生きたい的なお祈りをしたことがある。一旦聖女になるとそうそう還俗は出来ず、一生を神に仕えるのが常だ。リュシアンが彼女の願いを聞き遂げ下したのがこの神託ならばありがたいのだけど、顔も知らない方に嫁ぐにはちょっと抵抗がある。そんなブランシュに、少し前から思念で会話するようになったルネが神の心遣いを汲んでやって欲しいと言う。そして彼女が辺境伯に嫁ぐには理由があるのだとも。偶然にも前辺境伯が亡くなり、跡を継ぐことになったオレールが手続きにやって来ていて、ブランシュとの婚姻が告げられた。彼は聖女が妻になると聞いて驚いていたが、信心深いこともあって神託で決定したのならと受け入れた。急遽顔合わせが執り行われ、ブランシュはオレールが領地に帰る時に共に付いて行くことに。先輩聖女たちは結婚して俗世に帰れる彼女を羨んでいたが、最終的には祝福し送り出してくれた。ルネも付いてくることになり、オレールが新たに領主になるダヤン領へと旅立ったブランシュ。生真面目そうでちょっと取っつき難い感はあるけど、悪い人では無さそうなオレールとは一緒に旅をするうちに大分打ち解けたように思う。しかし、辿り着いたダヤン領は想像以上に寂れていてビックリ。一応、道中で彼から数年前から疫病によって領民が激減したこと、間の悪いことに飢饉が重なりその上跡継ぎであるダミアンが失踪して先代がショックで寝込み、領地への対応が遅れたこと等聞かされていたがここまでとは。それでも領主が住む町はまだ多少は栄えてるようだけど、色々不運が重なったせいで領民はすっかり領主に期待をしなくなってしまった。兄が継ぐものと思い王都で騎士団の副団長をしていたオレールが帰郷しても歓迎されていないのはそのせいだった。だが、ブランシュが降嫁してきたことで領内は一気に活気づいた。神の声を聞く聖女ならこの状況を何とかしてくれるに違いないと。その過剰な期待にはブランシュも戸惑っていたが、自分の夫となる人の評判が悪いままなのは嫌だ。悪いのは何もかも丸投げして消えた長男ではないのか。取り敢えず、領地を盛り立てる術を考えねば。正直、枯れた地に近いこのダヤン領は特産品と呼べるものも無い。一応、ここにも小神殿がありリュシアン神の分身体の水晶が祀られているのでそれを目当ての観光が売りらしいのだが、宿泊施設が少ないのは致命的だ。なら食べ物をと、見れば稲作をしているのが判った。王都ではあまり食べられない白米を売りにしようかと考えていると山が近いのでイノシシが多く駆除しても処理に困ると耳にして閃いた。猪肉料理を提供してはどうかと。前世でジビエ料理店で働いていた経験を活かし、庶民向けのレシピを考案。試作品は美味しいと評判で早速猪肉レストランの開業に取り掛かった。すると、想像以上にウケて他領からも大勢の客がやってくるように。イノシシの処理も出来てウィンウィン。ブランシュとオレールとの関係も良好で、喪が明けてからの結婚式も楽しみだった。領主に不信感を持っていた領民たちもオレールを頼りにするようになり、ここ数年できていなかった収穫祭をやるという。しかし、そんな最中に長らく失踪していたダミアンが帰郷。彼は自分こそが領主で、ブランシュの夫になる者だと主張し・・・。このアホ長男、頭は良いものの飽き性で跡継ぎの義務を放棄し出奔。親が亡くなっても顔を見せずですっかり領民たちからも見放されていました。なのにこの主張よ。当然、何を馬鹿な事を言ってんの?と賛同する者もほとんどいません。しかし、ルネと話すブランシュの姿やその言葉を聞いて怪しんでいた侍女のマリーズが、ダミアンに協力。ブランシュを貶めてオレールを領主の座から引きずり降ろそうと企みますが、今までの功績もあってか、最初は疑惑の目を向けられたものの、彼女を悪く言う者はいませんでした。どうあっても辺境伯にはなれないと、ダミアンは金目の物を持ち出し、マリーズを連れて逃げようとするも、自分を働かせてヒモになる気満々の彼に付き従うはずもなく。クズらしく神殿に火を放ち逃走したダミアンは怒りの領民たちに見つかり囚われ、裁かれます。この人の顛末は、やらかし具合からして順当かな。亡くなった先代がオレールの方を後継にと言い残したのは、ダミアンの性分を判ってたからかも。そもそもリュシアンが彼女をこの地に行かせたのは大事な結界の一つであるダヤン領を救う為でもあったと言う。目論見は成功し見事に領地を立て直したオレールとブランシュは騒動から暫く経って、無事に式を挙げて本編は〆。書き下ろしの番外編は式の2カ月前のお話でした。ルネとリュシアン神も結構ガッツリストーリーに関わってるんですけど、記載すると相当長くなるので割愛してます。その辺含め、ベリーズにしては厚めの内容なので読み応えありました。聖女と言うと奇跡の力で云々という話が多いものの、今作内の聖女は神の声が聞こえるだけであとは普通の女性なのもポイントかと。(ヒロインは前世の記憶持ちでもあるけれど)評価:★★★★★
2023.12.16
コメント(0)
2022年1月刊ベリーズ文庫著者:佐倉伊織さんグランドスタッフとして働く成海は、ある日超美形な整備士・月島と出会い意気投合。しかし後日空港で出会った月島は、パイロットの制服に身を包んでいて…!? エリートパイロットとして将来を嘱望される彼は、ある縁談から逃れるため成海に偽装結婚を提案。偽りの新婚生活のはずが、まるで本物の妻のように成海を扱い、ときに独占欲を露わにしてくる彼に戸惑いっぱなしで…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 逢坂成海=入社2年目のグランドスタッフ。何事にも全力投球な性格を月島に気 に入られ偽装結婚相手を頼まれる。 月島一輝=将来有望な副操縦士。とある理由から成海に偽装結婚を申し込む。 籠橋京子=一輝の師匠の娘でCA。 籠橋=重鎮の機長で一輝の師匠的な存在。グランドスタッフとして働く成海は、先輩スタッフに怒られながらも日々精力的に仕事をこなしていた。そんなある日、整備士だと言う月島一輝と知り合った彼女は意気投合。初対面なのに食事にまで付き合ってしまった。実際、パイロット目当ての女性スタッフが多いのに断然整備士の方がカッコイイし尊敬すると話す成海を見て、やはり想像通りの人間だったと内心で喜ぶ一輝。ちゃっかり彼女の連絡先をGETしたものの、成海の自宅が空港から一時間もかかると聞いて眉をひそめた。それじゃ早番の日は辛いだろうと割と真剣に俺の部屋に住めよと誘ったが当然却下された。それから数日後、いつものように仕事をしていると近くを通った一輝がパイロットの制服を着ていてビックリ。整備士じゃなくて副操縦士なの?とはいえ、先輩の話によれば地上勤務の際は整備の仕事も担当していたらしい。それであの知識かと納得はしたものの、彼には籠橋京子という美人CAと交際していて婚約も間近という噂があることも教えてくれた。しかも京子は重鎮扱いの機長の娘で一輝は籠橋を師匠の如く慕っているそうだからその縁なのではと余計なことまで。休憩に入った成海は自分の連絡先は消して欲しいと一輝にメールを送った。するとリヨンに飛んでいた彼から到着と同時に連絡が来て納得がいかないと怒られた。京子と結婚するなら余計な誤解を招かないよう気を使ったのにと返せば、一輝はそもそも京子とは付き合ってすらいないと言う。逆に付き纏われて迷惑しているのだとか。師匠の娘なので邪険にも出来ず、籠橋も愛娘からの頼みもあって一輝との結婚を望んでいるらしい。それは確かに彼からしてみれば勘弁してくれ案件だろう。一先ず、帰国したらまた食事に行こうと誘われ、つい承諾してしまっていた。一輝の帰国日、成海はここ数日に渡り体調不良に悩まされていた。特に眩暈が酷くふらつきながらも無理難題を言ってくる乗客の話を聞いていたら強烈な眩暈に見舞われ成海は昏倒。意識を失う前に一輝の顔を見た気がするが、気のせいではなく医務室に自分に付き添う彼を見て心底驚いた。常駐の医師によればストレスからくる自律神経の不調ではとのことだが、一応検査を薦められた。休暇を貰えたのは助かったが、一人で置いておけないと強制的に一輝のマンションに連れていかれ療養することに。翌日、彼の友人の医師の診察を受けやはり自律神経からのもと判明すると、一輝から面倒な客はこう言って対応しろとアドバイスを受けた。そして改めて、彼からある提案をされた。俺と偽装結婚してくれないかと。どうやら籠橋機長からの圧が凄まじいことになっているようで、そのバックアップを受けて京子のアタックが鬱陶しさを増して来たらしい。正直、京子の性格は甘やかされたお嬢様らしく我儘で自分勝手でどうにも好きになれない。どうせなら成海の様な子と結婚したいのだと。事情を聴いて人の好い成海は戸惑いつつも承諾、早速同居と相成ったのだが、二人の仲を知ったらしい京子が取り巻きを引き連れて成海を恫喝して来て・・・。京子の性格を熟知していた一輝は同僚や後輩に声をかけ、自分がフライトでいない間、成海の周囲に気を付けてもらうよう頼んでいました。当然、京子の行動は全部一輝にバレバレ。こうなったら早々に籠橋に結婚報告しようと出向いたら、機長は娘を弄んでいたんだなと大激怒。結果、籠橋によって一輝はフライトシフトを外される羽目に。娘を溺愛する機長なので、この対応は織り込み済み。一輝も意に染まぬ結婚するくらいなら最悪辞職もやむなしと考えていました。でもここまで来るともう彼に惚れていた成海が籠橋に頼み込み、この処罰を取り消すよう懇願。彼女にそこまでさせてしまったと一輝は京子を呼び出し、彼女のだらしない交友関係を指摘。このやりとりを籠橋に聞かれ、娘の嘘で二人に迷惑をかけたと謝罪の上、処罰も取り消されます。このバカ娘の京子さん、ただパイロットの妻という肩書が欲しかっただけで、真面目な性格の一輝のことは別段好きじゃなかったという。ただの見栄の為にあそこまでの嫌がらせしてたんか~~いっ、と呆れました。そりゃパパにも怒られますわ。この父親もちょっとどうなのって対応でしたが、誤解が解けて何より。一輝は元々成海に惚れてたので、偽装と言いつつそのまま結婚する気満々でした。でもまぁ実際に京子に困っていたのは本当なので、事情を聞けば人の好い成海は断らないだろうという中々の策士ぶり。告白して普通に交際しなかったのは京子が何するか判らなかったからなので、いきなり結婚に持ち込んだのはそういう理由です。モテ男は辛い。でもパイロットってだけで目の色変えられてばかりじゃ、成海みたいな子は新鮮で好感抱くよね。ラストは邪魔者もいなくなり、二人仲良く海外にいる一輝の両親に挨拶も兼ねた観光旅行に旅立って完。成海が何故整備士贔屓なのかとか、一輝の事情とかその辺りは長くなるので割愛してます。この辺は実際に読まれた方が判りやすいですし。評価:★★★★★
2023.12.13
コメント(0)
全147件 (147件中 1-50件目)