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2023年12月刊ティアラ文庫著者:蒼磨奏さん大切な幼馴染であるルーカス王子との婚約が決まり嬉しいティナ。一方、彼は自分の怪力がティナを傷つけてしまうと、浮かない顔で…。二人は結婚式まで触れ合う練習をすることに。手を繋ぐ程度だと思っていたら「ティナは誰にも渡さない」独占欲剥き出しに囁かれ、甘く巧みに愛撫される。最奥まで明け渡し、快感に満たされて。超ギャップ系王子様から誰よりも大切にされる幸せ婚! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ティナ=公爵家の一人娘。 命の恩人であるルーカスに幼い頃から想いを寄せていた。 ルーカス=王国の第三王子。 怪力の持ち主でティナに触れることを恐れている。 シャロン=ティナの叔母。アンリエッタ=隣国の王女でルーカスの長兄の婚約者。クヌート公爵家の一人娘のティナは、8歳の時に落石事故によって両親を亡くした。その際、一時だが生き埋めになっていた彼女を救ったのはこの国の第三王子・ルーカスだった。ロギス王国の王族は代々怪力で、現国王は勿論、三人の王子たちも漏れなく怪力の持ち主であった。そのことから災害時は人命救助にもよく駆り出されており、クヌート家が巻き込まれた事故にも三兄弟が駆け付け救助に当たった。しかし、公爵夫妻は死亡しており、生き残ったのは公爵の妹のシャロンと娘のティナのみ。元軍人で王子たちの教育係も務めていたシャロンは目に大けがを負ったものの、後に公爵位を継いでティナを引き取り育てている。あの事故から一年後、力のコントロールが上手くいかず荒れていたルーカスは、シャロンのいるクヌート公爵家に預けられた。屋敷にはティナも暮らしており、事故のショックで喋れなくなっていた。けれでも、お転婆な彼女は思いもよらない事をしでかしてはルーカスの手を焼かせ、ティナの世話を焼いているうちにいつの間にか荒んだ心も落ち着いて力加減も出来るように。親睦を深め、お互い無くてはならない存在になった頃、ルーカスに城への帰還命令が届いた。別れの時、ティナは言葉を発し叔母とルーカスを驚かせたが、双方遊びに行くことを約束したのだった。それから11年経ち、美しく成長したティナは、叔母と共に王城へ呼び出されるとルーカスとの婚約が決まったと知らされた。大喜びのティナであったが、ルーカスから婚姻の前に何かあってはいけないからと、彼女に触れあう練習をしたいと頼まれた。どうやら彼には懸念事項があるようだ。一応、閨教育は受けているのと、叔母も苦い顔をしつつも許可してくれたので練習に付き合うと承諾。しかし、コントロールできていたはずの力加減は、いざティナと行為に及ぼうとすると暴走してしまい・・・。ティナのあられもない姿に興奮し、特注の頑丈なベッドはルーカスの力によってあちこちにヒビが。こんなことでは彼女を殺してしまうと思い悩みますが、私はそんなやわじゃないからと励ますティナ。その頃、隣国から排斥された奴隷商がこの国に流れて来て、国境付近で人さらいが頻発しているとの報告が。隣国の王女・アンリエッタと第一王子・サイラスとの婚約も間近で、この事件は由々しき事態。それとは別にアンリエッタは怪力の持ち主と聞きサイラスとの結婚を怖がっていました。そこで、歳が近く未来の王子妃のティナにお鉢が回り、王女と交流。自らの過去を交え、ルーカスとの馴れ初めを語るとアンリエッタも漸く心を決めます。そんな中、ティナは人攫いに攫われかけたり、ルーカス共々川の氾濫に巻き込まれたりトラブルに見舞われるもお転婆気質と叔母からの教えで乗り切るという逞しさを発揮。妖精のような可憐な容姿の彼女を傷付けてしまうかもと悩んでいたルーカスは、それが杞憂だったと判り練習も大成功。無事に結婚式を迎え終わっています。割とラブコメ調なので、シリアス部分と言えば奴隷商人の横行と公爵家の悲劇くらい?変な恋のライバルとかも出てこなかったのでモヤモヤ度はゼロ。怪力の持ち主ながら繊細なヒーローと、可憐な容姿をしていても叔母譲りなのか中身は豪胆なヒロイン。いい具合にバランス取れてて、そこが面白みを増してたように思います。あと、イラストレーターさんもコメントしてましたが、9歳の頃のティナがめっちゃ可愛くてそりゃルーカスも惚れるわ、と。評価:★★★★★
2024.01.15
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2023年8月刊ティアラ文庫著者:栢野すばるさん勘が良いことが取り柄の貧乏伯爵令嬢・エリアーナ。図書館の本棚からまさか幼なじみの王太子シグウェルが落ちてくるなんて!?助けたあと、王宮で孤立する彼に請われ公式寵姫に。彼を補佐するなかで、二人の距離は近づいて…。「俺は今も昔も君が好きだ」真摯に告白され、抱き締められる。焦れた身体の最奥を貫かれ、圧倒的な快感に心まで蕩けて。一途な王太子の本気の溺愛! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エリアーナ=伯爵令嬢。異常に勘が鋭く、その才を見込まれ王太子の公式寵姫と して王宮に迎え入れられる。 シグウェル=王太子。常時義母に命を狙われており疑心暗鬼になっていた。 ギネシア=何かと黒い噂が多い国王の後妻。エリアーナは年頃の伯爵令嬢。しかし、両親が持ち込む縁談は裕福ではあるが父くらいの年齢の貴族の後添えとか、金目当てのものばかり。彼らは美しく育った娘を金の生る木としか思っていないようだった。そもそも領地からの税収もあるのだし、贅沢三昧しなければ不自由なく暮らしていける。だが、母が慈善事業にハマり施療院を運営してから状況は少しずつ変わっていった。無料で診てもらえると平民達からの評判は上々だったが、支援してくれていた先の王妃が病気で早逝すると方針が変わったと助成金は絶たれた。頼りにしてくれていた者たちには悪いがそこで手を引けば良かったのに、エリアーナの後に出来た二人の子を死産したことで精神を病んでいた母は慈善事業をすることで立ち直ったのだからと娘の意見など聞く耳持たず。父も母に賛同していていつのまにやら贅沢は敵とまで言い出して、屋敷にある金目の物を売り払いそれを施療院の運営に当てる始末。エリアーナの結婚式に付けてくれと祖母が残してくれたティアラまで取り上げられてしまった時は、もう駄目だこの人達と頭を抱えた。両親が心の拠り所にしている施療院も今ではすっかり貧民窟のゴロツキ達の溜まり場になっており、そいつらの生活の為に伯爵家の財産は使われていた。正直、自分のこの勘の良さで投資した方が稼げるのに、女性が金稼ぎすることをこの国の貴族は非常に嫌う。まぁだから娘を金持ちのおじさんに売る羽目になっているのだから呆れてものも言えない。心配事は絶えないが、ある薬品を持ち図書館に来ていたエリアーナはそこで、幼馴染である王太子・シグウェルと再会。かれこれ7年ぶりだろうか。それにしても本棚の上から転げ落ちて来たからビックリした。どうやら毒を受け身体が痺れ、動けるうちに本棚の上に上がり身を隠していたらしい。成程、それで解毒剤の瓶を持って行けと勘が告げてたわけか。彼女は苦しむシグウェルに薬剤を飲ませ介抱した。久しぶりに会った彼は随分美しい青年に育っていたが、あんなに仲が良かったのにエリアーナを疑いの目で見ているのが気になった。まぁ、タイミングよく解毒剤を持ってたらそうよね。そこで、真実を打ち明けることに。元々、自分は勘が良く必ずその通りになること、今朝は何故か解毒剤を持って図書館に行けと勘が告げたのでそれに従って来たと答えた。当然、シグウェルは半信半疑だったが、後日受けさせたテストでの脅威の的中率を見れば信じざるを得ない。彼は暫し考えたのち、エリアーナに力を貸して欲しいと告げた。シグウェルは何かと黒い噂のある王妃・ギネシアに命を狙われているのだそうだ。ギネシアは何かしらの薬を使い国王を操り、王太子付きの侍従達にも同じ薬で傀儡とし先日の事件が起きた。おかげで彼は休まる時が無い。しかし、エリアーナの勘があれば裏切り者も見つけられる。幼馴染なのだし、力になってやりたいがその途端もめ事に巻き込まれるのは勘に頼らずとも判る。断ろうと口を開きかけると彼からエリアーナを公式寵姫扱いにするので給料も出すと言われ、考えが変わった。結構な額だし、親が好き勝手使えない様に個人口座も作ってくれるなんて至れり尽くせりではないか。二つ返事で引き受けたエリアーナは翌日には王宮で暮らすことに。寵姫とはいえ、シグウェルは決して手は出さないと約束してくれたけれど、役職的に王太子のお手付き扱いになるので今後役を解かれても結婚は難しくなる。が、それまでに金を貯めて田舎で一人悠々自適に暮らせばいいのだ。そう思っていた矢先、たまに正気に戻る国王が早く孫の顔が見たいと媚薬入りのボンボンを差し入れたことで、二人は抗えず一線を越えてしまう。公式寵姫は所謂王太子妃が決まるまでの繋ぎ。妃が来ればお役御免になる。しかし、子が出来れば愛妾にはなれるのだ。だが、初恋をこじらせていたシグウェルはいずれ彼女を正式に妃にと考えていた。彼に溺愛されているうちにエリアーナもシグウェルを愛するようになり仲睦まじく暮らしていた。勿論、その間も持ち前の勘の良さでシグウェルのサポートもしていたが。そんなある日、王国を地震が襲い、地方で壊滅的な被害が出た。エリアーナの勘によっていち早く救援活動に向かうことができたシグウェルは国民達に称えられ、一層彼女のことを得難い存在だと再認識していた。その頃、王宮ではシグウェルを際立たせる公式寵姫を邪魔に思っていたギネシアが策を講じ、エリアーナを追い出し貧民窟へ送ってしまった。売り飛ばされるのも娼婦になるのも御免と彼女は賭博で稼いでやるからと元締めに交渉。宣言通り巨額を稼ぐ彼女は重宝され、貞操を守っていた。ギネシアの兄がギャンブル狂でたっぷり搾り取ってやった時は胸がすく思いだったが、その金が実は麻薬を購入するために用意されたものだったと知り・・・。2ヶ月後、王宮に帰還したシグウェルはエリアーナがいなくなっててビックリ。聞くとギネシアが追い出したというが伯爵家にも戻ってないのは確認済み。王妃付きの側近一人一人を締め上げ、貧民窟まで探しに行った彼は何とかエリアーナを救出。でもそんなところに2ヶ月もいたので、当然貴族達は彼女を妃に迎えることを大反対。しかも、エリアーナの妊娠が発覚。本当に王太子の子なのかと疑われ、身を引こうとしますが絶対に汚されてなどいないという彼女の言葉を信じます。そして国王も薬の供給が絶たれたことで正気を取り戻しギネシアを告発。兄共々罪に問われ投獄されます。国王も退任を発表し、シグウェルが王位を継いだ数か月後王女を産んだエリアーナ。幸い、子供は彼に激似だったことで不貞を疑う者も少なくなって悪評も下火に。しかし、意図せずとも貧民窟にいたこが尾を引いて中々王妃にはなれず、その後に長男を産んで漸く結婚できたという何とも波乱万丈なお話でした。夫婦は最終的に三人の子宝に恵まれます。ヒロイン・エリアーナのメンタルが鋼並みだったせいで、妙な安心感はあったけどシグウェルの目に留まったことで毒親を始め色々な困難を跳ねのけてく様は痛快。国民に大人気の王妃になったと言うのも頷けます。下世話ですが、あの凄い勘があったらナンバーズやロト、競馬とか当たり放題なんじゃないかと思うと羨ましい。実際彼女は賭博師として大活躍してましたしねw評価:★★★★★
2023.12.19
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2023年4月刊ティアラ文庫著者:熊野まゆさん凶暴で危険と恐れられる魔王オリヴェルに嫁いだ聖フェアリ王国第二王女・エヴェリーナ。会ってみると、優雅で人望厚い人物。彼の温かさに次第に惹かれていく。「かわいい、私の妻ー」熱のこもった息遣いが混ざり合う中、性急なキスと巧みな愛撫で絶頂に蕩ける。雄杭が最奥に到達する度、痺れるような快楽が全身を巡り、至上の幸福に包まれて。魔王様に溺愛される超幸せ婚! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エヴェリーナ=聖フェアリ王国の第二王女。 オリヴェル=クロンクヴィスタ魔国国王。 マリアン=エヴェリーナの異母姉。父の命で政略結婚することになったエヴェリーナ。王女でありながら聖力が乏しく、精霊の声も聞くことが出来ない彼女は、国では腫物扱い。その上、異母姉のマリアンから虐げられていた。しかもその姉からエヴェリーナは純潔を貫くこと、そして魔王の弱みを探って来いと無茶な命令をされたのだった。あまり仲が良くない国同士の婚姻。自らの扱いに期待はしていなかったものの、夫となるオリヴェルは彼女を溺愛。教育係の侯爵・クラースを始め、エヴェリーナの輿入れは歓迎された。数週間後、オリヴェルとエヴェリーナは婚礼の儀を終え、無事夫婦となったのだが、婚礼の前に調査した結果、彼女の聖力が弱いのは何者かによる封印によるものだと判明し・・・。異母姉に虐げられていた王女が、嫁いで幸せになるという、割とオーソドックスな内容になってます。嫁ぎ先で大事にされ、夫から惜しみない愛情を受け本来の自分を取り戻していくエヴェリーナ。純潔を守れなんて言う、異母姉の命令なんて守るはず無いじゃんね。政略結婚とは言え、王様に嫁いでんだから。とはいえ、このバカバカしい命令は姉側の都合で、エヴェリーナにかかっている封印と関係があることがラスト間際に判ります。この辺は封印を解く方法やら交えて読んでるとまぁそうだろうなとすぐにピンとくるかと。それにしても、マリアンに乗せられて嫁ぎ先でエヴェリーナに嫌味三昧だった悪役親子は消えるの早かったなー。主犯格であるマリアンへの罰は落としどころとしては納得いくものとして、28歳くらいでそんなに若さに固執するもの?アラフィフとかなら判らないでもないんだけど。おまけに供給源の妹を〇しちゃったら、その後はどこからその聖力を補充するつもりだったんだろう。追い詰められていたとはいえ、行き当たりばったり過ぎないかい?そう思うと悪役としてはかなり小物の印象です。評価:★★★★☆
2023.05.12
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2022年11月刊ティアラ文庫著者:栢野すばるさん人質の側妃サリアは皇帝ヴァルストラの寵愛を受けていたが、陰謀により追放されてしまう。生まれた娘と慎ましく暮らしていると、迎えがやってきて!?「俺にとって、貴女以外は妻ではない」ずっと自分を探し続けてくれた彼の真摯な言葉に涙が溢れる。抱き締められ口づけられれば、心も甘く蕩けてゆきー。有能皇帝に愛し尽くされ、家族になれる日が来るなんて。最高の幸せ婚! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 サリア=小国の第三王女。 異母兄に疎まれ「人質妃」としてヴァルストラに献上された。ヴァルストラ=ハルバーン帝国皇帝。サリアを寵愛する。 ミルフィア=サリアとヴァルストラの娘。 ルネッサ=女官長。 リスター=ヴァルストラの幼馴染で近衛隊長。 ルストーム=宰相。シークレットベビーものです。帝国の属国・リネル王国の第三王女サリアは、父王亡き後異母兄に疎まれ皇帝ヴァルストラに献上された。側妃ならばまだ救いもあったのだが、サリアは底辺の扱いを受ける「人質妃」として送られたので、皇宮でも彼女を蔑む者も多い。ただ御子を産むためだけの存在であり、子供を産めば引き離されて寂れた宮殿に幽閉される。そんな境遇に堕とされ人生を諦めかけていたものの、ヴァルストラはサリアを気に入り、彼女だけを傍に置いた。彼は「人質妃」などと言う不憫な制度は撤廃し、サリアを皇后にしようと決意していたのだが、それを快く思わない者もいた。属国の王女、ましてや「人質妃」にそんな待遇を与えられては堪らない。宰相ルストームはヴァルストラが外遊で長く皇宮を離れている間を狙い、サリアの罪をでっちあげで国外追放してしまったのだった。行き場を失くしたサリアは母国へと帰り、名を偽ってとある伯爵邸にて住み込みで働き始め、やがて妊娠に気付き数か月後女の子を産んだ。皇宮から追い出されてから4年。ミルフィアと名付けた子は3歳となった。母になったせいか随分と図太くはなったが、最近体調も思わしくない。娘共々野垂れ死ぬことだけは避けたいが・・・。そんなある日、騎士団が伯爵家を訪れ、サリアとミルフィアは帝国へと連れ戻された。途中、ヴァルストラとも再会し、彼が言うにはこの4年サリアの行方を探し続けていたらしい。ミルフィアは彼とよく似ており皇族の証もあった。サリアは無理が祟って、身体を壊し要休養となったのだが、女官長ルネッサらの気遣いもあって徐々に回復。その間、親子の交流もあったようで、ミルフィアとヴァルストラは随分仲良くなっていた。復調したサリアはヴァルストラから自分がいなかった4年間の出来事を聞き、彼が進めている財政改革に感心し賛同した。ルストームは彼の怒りを買い、横領していたこともバレて宰相職を退いたらしい。領地に籠って出て来ないと言うから、現状目の上のたんこぶは消えた。今、ヴァルストラの周りにいるのは彼に賛同する者たちばかり。だから女官長始め、サリアたちに好意的なのか。ミルフィアは正嫡として皇女とし、サリアを皇后にするのが目下の目標だそうだが、実はこの皇后の件が一番難題だとも言う。娘と引き離されないだけでも充分だと考えていたサリアはヴァルストラの決意に戸惑うも、この4年で培った図太さもあって自分なりに彼の役に立てるよう決意。彼女達を暖かく見守ってくれる者も増えたが、ヴァルストラの幼馴染でもあるリスターだけはいつまでもサリアを蔑んでいた。そんな日々が続いた頃、前宰相派の者がサリアを襲い・・・。美しい王女様の波乱万丈なお話で、とにかく作中色んな事が起きます。最初からブレないのがヒーローのヒロインへの溺愛ぶりで、娘の存在共々癒しになってました。女官長さんも良い人だったし。前宰相はヒーローの親戚だったこともあってか、一時一番の権力を持ってたみたいだけど、ヒロインを追い出したことでヒーローの怒りを買い、余罪もバレてクビに。終盤は相応の報いを受けてスッキリとしたものの、個人的にはこの人よりヒーローの幼馴染の近衛隊長の態度の方がムカつきました。何様なの、この人。まあ、図太くなったヒロインにはもうダメージを与えられてないから良いけど、この人の態度だけは読んでて最後までモヤモヤしてたなぁ。それでもエピローグでは無事皇后となり、いつまでヒロインLOVEのヒーロー共々、家族も増えて仲睦まじく暮らしている様子が見れて何とかほっこり。評価:★★★★★図太いヒロイン、良いですね。
2022.12.25
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2022年12月刊ティアラ文庫著者:蒼磨奏さん死んだあと目覚めたら隣国の公爵令嬢になっていた元王女のパトリシア。しかも婚約者は秘かに好きだった騎士ラディウス!?正体を知られ婚約破棄かと思ったら、強く抱き締められて……。「今度は絶対に離さない。君が欲しい」濃密な口づけと巧みな愛撫。痺れるほどの快感に乱される。切ないほど一途に求めてくる彼にずっと想われていたと知りーー。寡黙な騎士が本気で迫る独占愛! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 パトリシア=モルテ王国王女。婚約者を庇い落命するが、6年後公爵令嬢・フェ リシアとして蘇る ラディウス=パトリシアの幼馴染で王国騎士。 フェリシア=カスターダ王国の公爵令嬢でラディウスの婚約者。病により早逝し たがパトリシアの魂が宿り蘇生する。 イードル=稀代の賢者と呼ばれる天才魔術師。 ベラドナ=ラディウスの妹で国家魔術師 ハインリヒ=モルテ王国王太子でパトリシアの兄。アデルバード=カスターダ王国国王。パトリシアの元婚約者。蒼磨奏さんの最新作です。16日発売の本なので、ネタバレの方は控えめで。モルテ王国の王女・パトリシアは幼馴染の騎士ラディウスを恋慕っていた。そして、ラディウスもまた彼女に想いを寄せていたのだが、二人は身分差のせいで結ばれるのは困難だった。やがて、パトリシアは隣国の王太子・アデルバードとの婚約が決まり、ラディウスは彼女と距離を置くように。自分を避ける彼の態度に胸を痛めていたパトリシアは、ある日アデルバードを狙った暗殺者の凶刃から彼を庇い亡くなった。自分でも死を自覚したのに、何故か目覚めたパトリシアは自分の姿が変わっていることに驚きます。そして、あの日から6年経っていた。今の彼女の名はフェリシア。モルテ王国の隣国・カスターダ王国の公爵令嬢であり、以前の自分とは違い病弱で儚げな女性であった。どうやら自分は何かしらの力によって他人の身体で蘇ったらしい。しかも、驚いたことにフェリシアの婚約者があのラディウスだと言うのだ。当初は、破談の意思を示していたラディウスだったが、フェリシアと接するうちに態度が軟化。どうも以前の彼女とは性格が変わったことと、その仕草に思う所があったようで、ふいに彼から呼びかけられた前世での愛称「リシア」につい答えてしまったことでラディウスは確信します。フェリシアの中にパトリシアがいると。そして彼女もバレてしまった事を知り、真実を話すと彼は大層喜び、改めて二人は婚約を交わし仲睦まじくラディウスの屋敷で暮らすことに。フェリシアを溺愛するラディウスだったが、彼女はふとなぜこうもこんな荒唐無稽な話を彼が信じてくれたのか疑問に思い始めます。恐らく自分を蘇らせたのは稀代の魔術師・イードルで間違いない。死者蘇生などやってのけるのは彼しかいないのだから。ラディウスに自分が蘇った経緯を知りたいのでイードルに会いに行きたいと話すフェリシア。しかし、彼はそれを反対。どうやら知られたくないことがあるようで埒が明かず、かの魔術師が暮らす山近くに魔獣討伐に向かうラディウスの隊にフェリシアも無理矢理に同行。すると、当のイードルが彼女の意を汲んで自ら会いに来て、パトリシアへ蘇生魔術を施した経緯を教えてくれた。やはりそれはラディウスの切なる願いによるもので・・・。ラディウスの想いが切ない。それほどまでにパトリシアのことを。涙ぐましい彼の努力にじんわり来ました。中盤以降は詳しくは書きませんけど、外見が変わっても魂が同じならそれは本人だと言い切るラディウスは彼女の内面に惚れてたんだなと実感。死者蘇生も普通にやったらゾンビと変わらんもんね。なら魂を相性の良い体に宿らせると言う方法は納得。その代わり、元の身体の持ち主は死ぬ。ラディウスの願いはそんな犠牲も伴うもの。元のフェリシアの気持ちは作中でも描かれており、イードルと彼女の関係も何か良い。ファンタジー色の濃いお話ではありましたが、思い続ける二人の絆の深さ、苦難を乗り越えてのハッピーエンド感は素晴らしい。評価:★★★★★転生というか、蘇りものがお好きな方は是非。
2022.12.19
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2017年4月刊ティアラ文庫著者:柚原テイルさん庶民的でうぶな王女アストレアに電撃プロポーズしたのは若き皇帝陛下ライダル!皇妃に選ばれたい他のお姫様たちをよそに、いきなり新婚生活が始まった。「こんなに愛おしいのはお前だけだ」ベッドで甘く囁き、柔らかな唇で敏感になった胸先を愛撫する彼。熱い楔を下半身に埋められ、アストレアは忘我の彼方に導かれてーー。強引な皇帝と控えめ王女のハイテンションな結婚物語! ↑楽天ブックスより、内容紹介文引用登場人物 アストレア=小国・ルディエンス王国の第15王女。 自他共に認める存在感の無さを買われライダルの妃に迎えられた。 ライダル=大国・ロゼリア帝国の皇帝。 アストレアの人柄と雰囲気を気に入り、国へ連れ帰る。 リーリア=アストレア付きの第一侍女 ヴィルヴァ=ライダルのお妃候補の一人。リファ大公国の王女。 クロリス=ライダルのお妃候補の一人。サーゼラス国の王女 ゲランド=ロゼリア帝国の財務官。 ヨス=ロゼリア帝国の宰相。積読本を消化しようということで、フェアで購入してそのままだった柚原テイルさんの作品。発行日からして、さすがに電子版しかリンクがありませんでした(^_^;)アストレアは小国・ルディエンス王国の王女。父王には何人もの妃がおり、とにかく子沢山だった。王女だけでも15人、王子ともなるとそれ以上の人数になる。そんな中で、アストレアは王女らしからぬ素朴な性格と事なかれ主義の上、存在感の無さから家族の中でも空気に等しく目立たない。地味な色合いのドレスを好むことから、来賓客に侍女と間違えられることもしばしば。それでも、彼女はその程度で無礼だと腹を立てることは一切無く、自分一人ならわざわざ訂正もしなかった。そんなある日、隣国・ロゼリア帝国の皇帝が王国を訪れ、歓迎の宴が開かれた。国王はあわよくば大勢いる未婚の王女のうちの誰かを側妃でもいいので、皇帝・ライダルが見初めてくれないかと期待していた。美人揃いの王女たちは父の意図を汲みそれは派手に着飾り気合も充分。だが、国王の薦めにライダルが選んだのは、端にひっそり控えていたアストレアだった。国王や王子王女たち皆驚いていたものの、ライダルの「ギラギラしていない所が気に入った」という答えに納得。確かに、この中でその条件に合う姫はアストレアしかいない。父ですら名前どころかそんな娘いたっけか、な扱いだったのだから。輿入れの話はトントン拍子に決まり、挙式は帝国でするとのことで、帰国するライダルと共にアストレアも一緒に旅立つことになったのだった。馬車の中でライダルと会話を交わしたアストレアは、彼の思う今後の帝国の在り方を聞いて及ばずながら自分もライダルを支えて行こうと決意します。先代皇帝はとにかく戦争で属国や領地を増やすことに躍起になっていたが、それではダメだとライダルは皇太子時代から進言していたと言う。皇位を継いでからは貿易に力を入れ、暮らしやすい国を目指すのだと努力を重ね、漸く周辺諸国の賛同も得れた。アストレアの国との繋がりを求めたのはそういうことか。だが、彼女を后に選んだのは政略以外の理由もあるらしい。二人は2年ほど前に出会っており、その時のアストレアの為人を気に入り、何かと思い出していたのだそうだ。皇位を継いで周りから結婚をせっつかれて思ったのは、どうせ妻にするならあの王女が良いと。王女らしからぬ言動も多いアストレアは第一侍女のリーリアに呆れられながらも、やがてその素朴さや謙虚さで周囲から慕われるように。皇妃になり立場が変わっても、アストレア自身は何一つ変わることなく、彼女を蹴落とさんとする他のお妃候補達の心を掴みます。そもそも、アストレアを溺愛するライダルにその気が無いので側妃になるのも望みは薄い。しかし、祖国の意向は帝国との繋がりを持つこと。焦る姫たちにアストレアが提案したのは、ならば皇妃の友人として末永く交流すればいいのではと。一見突拍子もない話ではあったが文通の約束を交わし、先ずそれぞれの国へ皇妃の名で挨拶の手紙を送ったことで上手く行った。これで他の縁談を考えることが出来ると姫たちには感謝され、特にヴィルヴァとクロリスとは随分仲良くなったと思う。アストレアののほほんとした性格は他人の警戒心を薄らせるのかもかもしれない。多くの味方を得たのは良いが、その裏でライダルの統治を良く思わない高官たちもいた。彼らは先ず、アストレアに賄賂を送り懐柔を図るも、案の定彼女の天然ぶりに不発。報告を受けたライダルも彼女と側近たちに警戒を促しますが、新たな港の開設に伴い、視察の為現場に向かっていたアストレアが何者かに攫われて・・・。結構ラブコメ寄りのお話なので、読んでてニヤリとする場面が多々ありました。アストレアのモノローグが面白いんです。天然もあそこまで極まってると、早々悩みも抱えないのではないだろうか(失礼)。それでも挙式前は大国の皇妃という立場に慄いていたようですけど、却ってこういう子の方が驕らない分上手くやってけるんじゃないかと。悪党たちは何か気弱で間抜けだったし、正直ゆるゆるな内容でしたが、こういうふんわりしたお話を合間に入れると次はじれじれ系にも挑めると言うもの。何も考えず、楽しいお話が読みたい、な気分の時に是非お勧めしたい作品です。評価:★★★★★
2022.11.19
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2016年10月刊ティアラ文庫著者:蒼磨奏さん(早く好きなだけ抱きたい)心の声が聞ける秘薬を飲み、婚約者オルキスの本心がわかるようになったアイリーン。朴訥で真面目な騎士団長様が、こんなに私を愛してくれているなんて。彼が紳士なまま迎えた初夜ー抑えていた欲望が爆発!強引に唇を奪い、逞しい身体で押さえつけてきて!灼熱の楔で貫かれ、休みなく責められ続ける。好きだけど口に出せない厳格な男の胸のうちは? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アイリーン=エルシュタット侯爵令嬢。父親代わりの国王の薦めで寡黙な騎士団 長・オルキスに嫁いだ。 オルキス=王国騎士団団長でアイリーンの夫。 真面目で無口だが心の声は饒舌。 マヌエル=アイリーンの母お気に入りの吟遊詩人。 ヴィクター=アイリーンの兄でオルキスの部下6年前の作品ですが、多分購入したのはこの作家さんのフェアの時だったはず。(寝かせ過ぎてうろ覚え)歳の差婚夫婦のラブコメです。寡黙で生真面目な騎士団長・オルキスは今年30歳。ある日、国王に呼び出された彼はいい加減妻帯しろと、侯爵家の娘であるアイリーンとの結婚を命じられた。アイリーンか、オルキスはふと10年前まだ新米騎士だった頃、出会った少女を思い出した。ピアノの腕は素晴らしいが音痴で、無邪気で明るい子だった。そういえば、エルシュタット侯爵家の当主は早逝しており、名付け親である国王がアイリーンを実の娘の様に可愛がっていると聞く。それに、長男のヴィクターは騎士団に所属していたな。一方、アイリーンも後に国王からオルキスとの縁談を聞かされ承諾していた。流石に今は遠慮もあって一線を引いているけれど、親代わりの国王の言うことに間違いはないと思っている。顔合わせで見たオルキスは寡黙な人だったが、国王の信頼も厚い人物で随分気に入られているらしい。だからこそ、娘の様に思っているアイリーンの夫として申し分ないと考えたのだろう。貴族間ではよくある政略結婚ではあったが、夫婦になるからには彼とは仲良くやっていきたい。アイリーンはそう思っていた。式の日が近づき、アイリーンは長らく屋敷に居候していた吟遊詩人・マヌエルから餞別の代わりにと瓶に入った丸薬をプレゼントされた。彼はアイリーンの母の故郷であるトラム国の出身だったことから、重用しもてなされていた。ピアノを弾くアイリーンとも音楽談議で盛り上がった仲だった。彼もまた旅に出るそうだが、それよりこの丸薬はどういったものなのか。マヌエルが言うにはトラムの呪術師謹製の秘薬だそうで、これを飲むと意中の相手の心の声が聞こえるのだとか。1粒飲めば1週間は効果があり、副作用も無し。相手の気持ちが知りたいのならば飲むと良い。でも使い続けるのはおススメはしない。何やら含みのあることを言っていたが、自分はオルキスのあの寡黙ぶりも好ましく思っているけれど、本音を知りたくもある。試しに飲んでみるかと1粒。すると頭に響いてきたのはオルキスの恥ずかしくなるほどのアイリーンLOVEの声。あの無表情の裏でこんなことを考えてたのかと思うと、嬉しい反面居た堪れない。だが、どうやら彼はかなりアイリーンに惚れてくれている様だった。挙式後、ついに夫婦となり新婚生活が始まった。薬の効果は切れておらず、彼の心の声にアイリーンは羞恥心を募らせるばかり。漸く効果が無くなりホッとしたのもつかの間、心の声が聞こえないと無口過ぎるオルキスとの会話が続かない。これはこれで由々しき事態。そもそも共通の話題がほとんど無いのは婚約期間中に判っていたはず。さすがに兄の話ばかりでは間が持たない。結局アイリーンは恥ずかしい方を取った。あの丸薬を再び飲んでしまったのだ。おかげで仲睦まじく暮らせていたが、罪悪感も覚える様に。そもそも、オルキスだって心の声を聞かれていると知ればいい気はしないだろう。これを最後にもうあの薬を飲むのはやめよう。マヌエルに再び会えたらお礼を言って返却するのだ。そう決意して間もないうちに、オルキスとデートをしていたアイリーンは町で歌を歌っているマヌエルと再会。優男風のマヌエルと随分親しげに話すアイリーンの姿にオルキスは嫉妬心を滾らせ・・・。当然、これはオルキスの勘違いなんですけど、自分が口下手なのも災いして二人はギクシャクしてしまいます。国王にも心配されて関係修復するよう怒られるもどうにも上手く行かない。見かねたマヌエルがオルキスに種明かし。自分は亡くなった恋人を想い続けているのでアイリーンをそういう目で見ていない事、そしてあの秘薬のことも語り、あとは本人と話せと発破をかけられるのでした。そして、心の声を読んでいたことをアイリーンは詫び、彼女もまた彼を愛していると本心を告げます。目出度く二人は元鞘に戻り、離婚の危機は回避。オルキスがマヌエルに1粒丸薬を貰い、アイリーンの心の声を聴きながら行為に及ぶと言うむっつりな仕返しもどきは読んでて笑えます。こんな素直な子を疑うなんてアホやなとは思うものの、良い子だからこそ横から掻っ攫われそうで怖くなっちゃうんでしょうね。ラストではもう彼の不器用さをアイリーンは判っているけど、取り敢えず、オルキスさんは心の中の声の半分くらいは口に出した方がいい。評価:★★★★★
2022.11.01
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2022年9月刊ティアラ文庫著者:真波トウカさん従姉妹の代わりに辺境伯アレクシスへ嫁いだシャーロット。離縁を望む叔父の命令に従い、彼の嫌いな「いやらしい女」を演じることに。扇情的な下着で誘惑してみたら、突然押し倒され!?「きみをめちゃくちゃにしたい」淫らな愛撫でお腹の奥が切なくうねり、激しい快感が身体中を駆け巡ってー。絶頂に蕩けながら、身代わりの罪悪感に苦しんでいると、彼から真摯な告白が…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 シャーロット=子爵家の娘だが、両親と兄亡き後とある事件を切欠に爵位と領地剥奪の憂き目に 合い、叔父に元に身を寄せている。恩返しを強要され従姉妹の身代わりとしてア レクシスに嫁ぐことになった アレクシス=アリアドスタ辺境伯家の当主。長らくシャーロットに想いを寄せていた。 古くから領地に蔓延る麻薬組織の壊滅を狙っている。 ダリオ=アレクシスの同級生で側近。 サイモン=シャーロットの父方の叔父。亡くなった兄の代わりにエテル家の当主となった。 イザベル=シャーロットの従姉妹。異国人の恋人がおり、アレクシスとの婚姻をシャーロッ トに押し付ける。 ディエゴ=アリアドス領に昔から暮らしていたルーマ族の男で麻薬密売組織の元締め。シャーロットは家族を亡くして以来、元々彼女の父が所有していた別邸にて叔父一家と暮らしている。この王国の碧海地方・アリアドス領の隣に領地を構えていたシャーロットの生家であるエテル子爵家は、それなりに栄えていた。だが、彼女の両親が7年前に馬車の事故で亡くなり、その翌年には当主となった兄が自殺してしまったのだ。兄が残した遺書には麻薬密売にエテル家が関わっていたという懺悔の内容であった。当然、エテル家には厳しい処分が下され、爵位剥奪の上、領地も取り上げられたのだが、1人になったシャーロットを叔父が引き取ってくれたのだった。現在は爵位の無い貴族として事業を営んでいる。とは言え、世間のエテル家への風当たりは厳しい。しかも、叔父は親切心からシャーロットを引き取ったわけでもなく、彼女を使用人としてこき使った。明るくよく笑う少女だったシャーロットは叔父からの罵倒や、家族が犯罪に手を染めていたこともあっていつしか笑顔は消えていた。笑えなくなってもう何年経つだろう。ある日、叔父の部屋に呼び出されたシャーロットはとんでもない命令を受けた。それはイザベルとしてアリアドスタ辺境伯家へ嫁げと言うもの。先日従姉妹に辺境伯から求婚書が届いた様なのだが、彼女には恋人がおり現在妊娠もしているので結婚なんて無理。なら断ればよいのでは?と一応は言ってみたが、どうやら輿入れ用の支度金を使い込み、断るに断れない状況らしい。従姉妹なだけあって二人は顔立ちが似ている。イザベルの顔もよく知らないだろうから、代わりに輿入れして適当な所で離縁されて来いと無茶なことを言われて唖然。寄りにも寄って、アレクシス相手にそんなこと。渋っていると今こそ大恩を返せと詰め寄られれば、彼女に選択肢は無い。取り敢えず、離縁されればその後、イザベルを恋人の元に嫁がせるつもりのようだが、バレるとは全く思って無いようで呆れる。かくして、シャーロットはイザベルとしてアリアドスタ家に嫁いだのだが、本当に求婚して来たのかと不思議に思う位、アレクシスは妻に会いに来なかった。領地が隣同士だったこともあって、シャーロットと彼は所謂幼馴染の様なものであった。兄と同い年で出会った当初は随分無愛想な子だったけど、どんどん打ち解けてよく遊んだものだ。それはアレクシスが寄宿学校へ行くまで続き、少し経ってからエテル家の事件があって、以来彼とは会っていない。だから、自分の顔などアレクシスも覚えていないだろう。てか、そうでないと困る。数日後、漸く彼と目通りが叶ったのだが、アレクシスは彼女を歓迎し「シュガー」と呼んで溺愛した。元々、アレクシスは人にも自分にも厳しい性格で、屋敷の使用人にも厳しく接していたらしく恐れられていた。何でもつい先日も一人のメイドを急にクビにしたそうだが、よくよく彼に理由を聞くと粗相をしたとかではなく、メイドは麻薬に手を染めていたらしい。麻薬を常用したたのであれば解雇も無理からぬこと。それもこの地にいたのでは薬を絶てないと然るべき療養所へ入れたのだという。先代当主は息子に厳しかったせいですっかり無愛想に育ったものの、実際のアレクシスは心優しい人物なのはシャーロットには判っている。それにしても麻薬とは。あの手のものは廃れないものなのだとつくづく思う。早いもので嫁いでもうひと月。シャーロットは使用人に大人気で慕われていた。叔父の家でこき使われていた分、下働きの大変さが判るだけについ労いの言葉をかけていたのだが、それ以前にアレクシスの彼女の可愛がりようは予想外だった。そろそろ叔父もしびれを切らしていることだろう。厭らしい女が大嫌いと聞き及び、自分なりに奮闘してみたけれどアレクシスを喜ばせただけだったし、万策尽きた感がある。遅くなったが彼から挨拶に行きたいと言われ夫婦で恐々叔父に会いに行ったが、案の定物凄い目で見られて居た堪れない。アレクシスは俺たちはラブラブです、と見せつけ満足気だがシャーロットには針の筵だ。でも、こうした態度を嬉しく思っている自分がいる。この対面の後、ふとした偶然からシャーロットは叔父がルーマ族の男に遜っている場面を目撃。その際叔父が落とした小さな革袋を拾い何となく持っていた。そしてそれから数日が経ち、アレクシスに自分の正体がしっかりバレていたのを知り驚愕。実はこの結婚、アレクシスは現在のエテル家に探りを入れるために仕組んだものであった。何故なら、麻薬密売に加担していたのはシャーロットの家族ではなく、叔父・サイモンだったから。サイモンはルーマ族の過激派と手を組んで麻薬を売りさばき、貴族だけでなく一般市民にまで流通させているという。アリアドスタ邸のメイドもその一人だった。予想外の答えに茫然とする彼女だったが、家族が無実だったと知れたのは嬉しい。イザベルを手の内に置き、その間に証拠固めをしてから適当な理由を付けて離縁する算段だったようで、まさかシャーロットをイザベルの身代わりに寄越されたのは予想外で驚いていたらしい。それであの溺愛ぶりか。お互い初恋の人同士、二人は想いを打ち明け合い漸く結ばれるのでした。その後、彼らはついに密売組織のアジトを突き止め・・・。この叔父さん、最初から怪しさ全開だったもんなって感じの展開でしたが、辺境伯領に蔓延る麻薬事情は実は昔からある現地民との確執が一端になっていてかなり根深い問題でした。そもそも先代が先祖に習ってきちんと対策していればここまで酷くは成っていなかったんでしょうが、息子と違い人に厳しく自分に甘くな人だったせいで、父の怠慢のツケが膨れ上がっていたのです。アレクシスが優秀でなければ、この辺境伯領は大変なことになってそうね(^_^;)サイモンと元締めのルーマ族・ディエゴは逮捕され離島送り。シャーロットの家族の無実も証明されます。アレクシスの采配の元、ルーマ族との親交が再び始まった頃、心の重荷が消え去ってシャーロットは笑顔を取り戻すのでした。TL小説ながら民族間の問題も描かれていて読みごたえがあって面白かったです。例に漏れず、この夫婦も仲睦まじく幸せに暮らしそうでなにより。中盤以降はかなり端折って記載しているので、興味がおありの方は是非読んでみてください。評価:★★★★★
2022.10.03
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2022年7月刊ティアラ文庫著者:蒼磨奏さん天候を変える不思議な力を持つ侯爵令嬢ノア。魔女と呼ばれ遠巻きにされていたのに、隣国の公爵ルイスから求婚される。彼はかつて目の前で嵐を起こし怖がらせた相手。政略結婚かと思いきや、まっすぐな愛を向けられて!?「貴女以外の女性は要らない」濃厚なキスと執拗な愛撫。たっぷり焦らされてから最奥に甘い楔を打ち込まれれば、たまらない幸せに包まれる。一途で淫らな結婚物語! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ノア=ドラゴンの末裔で天候を操る異能を持つことから「カストロフの魔女 」と呼ばれている。国益のために干ばつにあえぐ大国・クティノスの 王族アレハンドル公爵と政略結婚した。 ルイス=ノアの夫。政略結婚ながらノアを溺愛する。 料理が趣味で少々天然な性格。アビゲイル=クティノス王国第一王女。病床の父に代わり政務を取り仕切ってい る。ルイスの従姉妹。 ジュード=ルイスの歳の離れた弟。当初は魔女と呼ばれる義姉・ノアを怖がって いたが、とある出来事を切欠に心を開く。 マルロー=王国の星導士。アビゲイルの側近でルイスとは友人。10日程前にでたばかりのお話なのと、ファンタジーでもあるため情報量が多いので、ざっくりと。ドラゴンの末裔・カストロフ侯爵の三女ノアは、三姉妹の中でも一番強い能力を持ち、天候を操ることが出来た。だが、身体が弱かった長女・ミーシャが流行り病で早逝してからと言うもの、ノアは感情の高ぶりで力が暴走するように。10年も前のことだが、大泣きして豪雨を呼び、洪水にしかけて婚約が破談になったことも。そんな彼女も大人になったある日、大国・クティノス王国からノアに縁談の打診が。何でも、今王国はかつてないほどの干ばつに見舞われ、深刻な水不足なのだと言う。このままでは飢饉に陥るのは時間の問題。そこで、彼女の住むユンドラ国への輸出の関税など諸々優遇するので、雨を降らすことのできるノアを貰い受けたいと言うのだ。娘が精神的に不安定な事を心配し、父・カストロフ侯爵はこの縁談に難色を示したが、ユンドラ国王は大層乗り気だった。やはりクティノスからの条件はどう考えても美味しい。しかも、ノアの結婚相手であるルイス・アレハンドル公爵まで直接交渉に赴いて来ており、断れる雰囲気ではない。雨を降らせるためだけにノアが必要ならば、いつものように該当地域まで出かけて依頼を果たせば良いだけのはず。だが、それ以外にもこの婚姻は友好国同士の絆を更に深めるためもあるらしい。これはもう決定事項なのだ。ノアは潔く了承したが、内心ではどうせ政略結婚なのだし、役目を済ませたら別居させてもらえばいいのだと考えていました。父と、今は王に嫁いで王妃になった姉フィオナも随分と心配していたが、一刻も早く国に来て欲しいとのことで、最短で準備して早々に式を挙げた二人。愛の無い結婚、ルイスも自分になど興味はないだろうと思いきや、彼はノアとの初夜を望み、形だけの夫婦などとんでもないと言う。その時は動揺して思わず雷を呼んでしまったが、おかげで最後まで事はならなかった。何事もなかったかのように、翌日から、各地を回り雨を降らすお務めに出掛けたノア。だが、この稀有な力のせいで彼女を魔女と呼ぶ者は少なくなく、実際はかなり傷付いていた。そんな彼女を気遣うルイス。実は、この降雨の術は魔法であり、力を使うたびにノアの体力を削るもので、ある日、務めのあとに彼女は高熱を出して倒れ・・・。この出来事を切欠にルイスとノアの関係が変わっていきます。ルイスは彼女への好意を隠そうともせず、ノアも真摯な性格ながら天然で優しい彼に惹かれていました。彼の弟のジュードとも仲良くなり、ノアの努力によって、多くの村や町を救えたと思う。夜会にて隙あらばルイスに粉を掛ける令嬢達に嫉妬したり、大小様々なトラブルを乗り越えて、二人は仲を深め、最後はアビゲイル達とも仲良く過ごしている様が描かれてお終い。ルイスが何故、ノアにそこまでご執心なのかは是非実際に読んで確かめてみてください。でも確かに、あれは忘れられない出会いだよなぁと納得したので、彼女にぞっこんになるのも判る気がします。異能の力のせいで、家族以外の者たちからは感謝よりも恐怖の対象で見られてしまうノアが、ルイスの想いになかなか気づかないのもさもありなん。正直、助けてもらっておいて「魔女」とか読んじゃうのは失礼極まり無いと思うんだけど、こういう世界観ではどうしても畏怖の対象にされてしまうようで。取り敢えず、ルイスの一途さが良いです。評価:★★★★★個人的に結構好きな作品。
2022.07.30
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2022年4月刊ティアラ文庫著者:栢野すばるさん初恋の騎士ユリウスと久しぶりに再会した女王オフィーリア。「今日より陛下のおそばに上がります」ときめいたのも束の間、皆の前で突然の告白!?戸惑っていると優しく抱き寄せられ……。独占欲を滲ませる情熱的な愛撫。甘すぎる快感に溺れ、淫らに作り替えられていく身体。「愛しているから絶対に失いたくない」誰にも顧みられなかったお飾りの女王が愛される悦びを知ってーー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 オフィーリア=父王の遺言に従い、2年間のみ王位に就いたお飾りの女王。 しかし、継母の嫌がらせにより冷遇され続け、味方の一人も いないまま寂しく暮らし、弟暗殺の濡れ衣を着せられた挙句 3年後に処刑される。 ユリウス=ロストバ辺境伯の跡取りでオフィーリアの初恋の人。 とある事情から、オフィーリアとの間に自身との子を設けるため に彼女の愛人に名乗り出る。 セリンシア=ユリウスの妹。気が強く剣の腕も立つ少女で、兄と共に王宮に上 がり、仕事を放棄している侍女たちに代わってオフィーリア付き の侍女に志願した。 エイザル=オフィーリアの異母弟。次の国王だが、本人にその気が無く勉強 もせず遊び惚けている。姉とは特に確執も無く仲は良い。 ヨルミナ=王太后。先代国王の王妃でエイザルの母。遺言により、2年間だ けとは言え王位に就いた継子のオフィーリアを疎み、侍女たちに も彼女の世話をしないよう命じたりと、様々な嫌がらせをした。 フォービス=護民官で、数年後オフィーリアの夫となり、彼女がエイザル暗殺 を謀ったと密告した。オフィーリアとエイザルの死後は王として 王国を支配する青年。 ロンジー=ロンシャンテ王国の守護女神。本来滅ぶはずの無い王国が滅んだ ことから軌道修正のため5年前に時間に戻してユリウスにオフィ ーリアとの間に「王の魂」を持つ子を作ること、彼女を死なせな いようにと頼んだ。ループものです。正直、あまり期待していなかったんですが(失礼)予想以上に面白かったです。戦争によって皆殺しの憂き目に合った辺境伯領の民たち。女神からの命を実行すればその未来は無くなると言う。5年の時間を戻され、昔なじみの女王オフィーリアに近づいたユリウス。ただ子を作って彼女を生き延びさせるだけで良かったのに、ミイラ取りがミイラに。しかも、ループしたのはユリウスだけではなく、と言うお話。ヒロイン・オフィーリアは若干18歳でロンシャンテ王国の女王の座に就いた。だがそれは3か月前に急死した父王の遺言により決まったことであり、在位はたったの2年間。異母弟・エイザル王子が国王になる心構えを身に着けるまでと言う、飽く迄間に合わせでお飾りの女王だった。頭が良く優秀ながら継母・ヨルミナに苛め抜かれて育ったオフィーリアは自分に自信がなく、大人しい性格だった。自己主張出来ないおかげで宰相からも相手にされず、彼の持ち込む案件とその意見にただ頷いて印を押すだけ。そんな生活だけでも気が重いのに、侍女たちは女王の世話を放棄。どうやら、ヨルミナからの命らしい。ドレスの新調も許されず、オフィーリアの生母が着ていたものを着まわしている。異母弟のエイザルは能天気に遊び回っているものの、姉との仲は悪くなかった。とは言え、味方と言うには心もとない。あと2年弱で王位に就くと言うのに、未だに勉強嫌いなのは聊かマズイ。何とか自覚を持ってほしいのだが、と継母からの嫌がらせ以上に由々しき問題だった。ある日、エイザル主催のパーティーに参加したオフィーリアは5年ぶりに初恋の人であるユリウスと再会し、内心ときめいていた。そんな彼女の想いを知ってか知らずか、ユリウスは参加者たちに向けて自分は女王の愛人になると宣言。驚くオフィーリアを尻目に、二人は公認の仲となってしまったのだが、ユリウスにはどうしても成し遂げなければならない使命があった。この5年後、敵国アセーデウス王国との戦に敗れ、このロンシャンテ王国は滅びる。原因となったのは女王オフィーリア。正確に言えば、彼女自身は戦争が始まる2年前に王子暗殺の罪で処刑されているのだが、オフィーリアの夫・フォービスにより、アセーデウスと戦争が起こりロンシャンテ王国は大敗。結果、国そのものが無くなった。ユリウスはじめ、国境を守るロストバ辺境伯率いる騎士たちは最後の一兵になるまで戦ったものの、幼児に至るまで皆殺しの憂き目に合い、ユリウスも処刑されたのだった。失意のまま死んだユリウスはあの世とのはざまで守護女神ロンジーの声を聴き、とある使命を任され時間を遡り、5年前に戻って来た。ロンジーが言うにはオフィーリアを存命させることがこの国を滅亡から救う方法であり、更に彼女との間に子を作ってもらいたいのだとも。オフィーリアが産む子は男女に関わらず、国を繁栄に導く「王の魂」を持つ者らしい。弟暗殺の濡れ衣で彼女が処刑されたのがそもそもの不幸の始まり、とにかくオフィーリアを死なせない事を目標に、彼女のそばに控えるようになったユリウス。飽く迄、故郷の辺境伯領と王国の為とオフィーリアの篭絡を画策するも、大人しいながらも芯が強い彼女にやがて惹かれ始め・・・。二人は想いを交わし、恋人になるのですが、ヨルミナとフォービスの企みによりオフィーリアは危機に陥ります。セリンシアやユリウスのおかげで事なきを得るものの、フォービスの背後にはあのアセーデウス王国がついており、オフィーリアを手に入れることで国の中枢に潜り込む手筈でした。でも、エイザルが身を護るためにバカ王子を装っていたことでヨルミナとフォービスの密約も発覚して、この後起こるはずだった戦争も回避。オフィーリアはユリウスとの子を身籠るも立派に約束の期間女王として勤めあげ、エイザルが王に。その後、産まれた娘と共にユリウスのいるロストバ領へ嫁いで終わり。オフィーリアが不遇過ぎて、これまた悔し泣きしましたが、ユリウスと思いが通じて本当に良かった。実はオフィーリアもループしてて、終盤それが判明した時はこれでタイトル回収か、と納得。ロンジーだけでなく守護神は他にもいたってオチなんですけど、とにかくループ前が不幸過ぎたので、国の為だけでなく生き直すチャンスをくれたロンジーの「上司」グッジョブ。大団円な〆で大満足な内容でした。評価:★★★★★ループものがお好きな方は是非。
2022.07.26
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2022年5月刊ティアラ文庫著者:臣桜さん「この女は誰にも渡さない。……たとえ神であっても」アリーシャの秘裂を、皇帝リューンガルドの猛った欲棒が貫く。快感で火照る肌に浮かび上がる聖痕。肉欲を教え込まれた“聖女”は“女”へと堕ちていく……。自身の存在が争いの種となっていることに絶望する聖女と、国を愛するがゆえに孤高の存在となった皇帝。二人は強く惹かれ求め合いーー。運命を切り開く、真実の愛の物語! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アリーシャ=ヒロイン。アハガルム神聖教会の聖女。奇跡の力を持つ。 崇められ大切に育てられてきたせいで世間知らずの上、自らの役 目に生き甲斐を感じられず、無気力に生きていた。 皇帝リューンガルドと恋に落ち、人間性を取り戻す。リューンガルド=ヒーロー。大国イディド帝国の皇帝。幼少時から身内に命を狙わ れ続け、悪政を強いる父皇帝に謀反を起こした後、一族全員を粛 清したことから「殺戮皇帝」と呼ばれていた。 境遇は違えどアリーシャと同じ傷を抱えていたことから意気投合 し、後に恋人関係になる。 ダリオ=傭兵崩れの男で、数年前にアリーシャに命を救われたことで彼女 を崇拝し、影ながら見守っていた。帝国への5年参りにも随行し 暗殺されかけたアリーシャを助けた。本心では彼女に懸想してお り、アリーシャを穢したリューンガルドを憎む。 レオノラ=帝国の宰相の娘でリューンガルドの幼馴染。夫と弟が謀反の際、 先代皇帝側であった事から粛清の憂き目に合ったが、リューンガ ルドの温情で死罪を免れていた。物静かな寡婦を装いながら実は かなりの策士で毒婦。このお話も情報量が多いのでざっくりと。物心ついた頃から、無意識に奇跡の力を使いこなしていたアリーシャ。でも、隔絶された貧しい村の生まれだったこともあり、村人からは魔女と恐れられ、両親はそんな娘を持て余し、やがて疎ましく思うように。彼女が5歳になった時、噂を聞きつけやって来た教会の使者に多額の金を貰った両親は娘をあっさり売り渡した。以降、アリーシャは奇跡の力を持つ聖女として教会のシンボルとして崇められていきます。とは言え、ただ大切にされていただけではなく、病や怪我を癒す仕事は毎日のようにある。人々は彼女を崇拝し、存在に感謝したが、アリーシャの心は虚しくなるばかり。そもそも、ただ請われるままに持っている力を使っているだけであり、自分だけ質素な信者たちとは違って贅沢な食事と衣服が供されているのも納得が行かない。一方的な恋慕を向けられるのも鬱陶しいし、女性からは謂われない嫉妬心を向けられる。自分に懸想して押し倒して来た聖職者は酷い拷問をされ死んだと言う。当時の側仕えは責任を取らされ二度と会えなくなり、アリーシャは以降余計に心を閉ざしてしまった。それから二年ほど経ち、皇帝と教会の本拠地にいる教皇への謁見の為、隣国イディド帝国へ赴くことになったアリーシャ。片道10日程の行程だったが、半分ほど来た所で黒衣の集団からの襲撃に遭いアリーシャは殺されかけた。そこを助けたのが傭兵のダリオ。護衛の聖騎士や側仕えの修道女たちは全滅したものの、落ち合う場所に現れなかったことで異変を察知した皇帝リューンガルドが迎えに来て二人は保護される。首謀者はアリーシャたちが暮らしていたデュシア王国の王女・カーミラで、婚約者がアリーシャに惚れたのを逆恨みしてのことだったらしい。勿論、一国の王女とは言え、聖女暗殺は重大な罪。相応の責任を取ることになり、アリーシャは教皇もいる帝国に身を寄せることになった。リューンガルドとアリーシャは、親睦を深めるために会話の機会を持ったことで意気投合。お互い、境遇は違えど肉親との縁が薄く排他的に生きて来たことから盟友を見つけたような心境だった。ましてや美男と美女、恋に落ちるのも早かった。アリーシャの信奉者であるダリオは、教会に入れ知恵して聖女を一先ず塔の鉄格子のある部屋に閉じ込めたが、リューンガルドの方が一枚上で、塔へ忍び込みアリーシャと関係を結んでしまいます。既成事実を作ったことでリューンガルドはアリーシャを皇妃に迎えると宣言。当然、聖女を穢した上に妻になどと教会側と信者は批難したが、二人の心は決まっていた。皆一応に不安に感じていたのは純潔を失くしても奇跡の力は以降も使えるのかと言うこと。幸いにもまだ奇跡の力は失われていなかったが、リューンガルドを諦めきれないレオノラが、アリーシャを追い落とすべく策を講じ・・・。15年以上聖女としてお務めを果たして来たヒロイン。いい加減自由にしてやれよ、と思いましたが、教会側はそのおかげでお布施がバンバン懐に入ってきてお裕福になったので、彼女を手放すのは惜しかった。だが、相手は殺戮皇帝。結局、聖女の力はだんだんと薄れていき教会側が折れて二人の結婚をしぶしぶ認めます。でも、ヒロイン側だけでなく、ヒーロー側もまだまだきな臭い状況でした。彼の幼馴染がかなりの毒婦で、ヒロインを蹴落とし自分が皇妃に収まるべくダリオを意のままに操り、謀反の時はヒーローの親友だった弟を焚き付けたりしてて結構えげつない。まあ当然最後はこの幼馴染も相応の報いを受けるのですが、ヒーローはまた親しい人を失くしてしまいました。とは言え、早々に幼馴染の本性は彼にバレていたんだけど。そんなヒーローの傍には今は愛しい妻のヒロインもいて、どうやらそのお腹には子供も宿っているらしい。その子も奇跡の力を持っている兆しがあるも、何が何でも今度こそ家族は守ると二人で硬く決意して物語は終わり。何とも切ない内容でしたが、最後は希望の有るラストで良かったです。ヒーロー、ヒロイン共に家族がクソだったけど、だからこそ自分たちはそうなるまいと思えるのは良いですね。所謂反面教師ってとこでしょうか。個人的に一番腹が立って嫌いなのは、やっぱりヒーローの幼馴染。やることが卑怯だし、性格悪すぎ。手玉に取られてた男たちが憐れで。ヒロインの故郷の王女もアレな人だったけど、まだマシに思えるレベルだった。評価:★★★★★薄暗いバックボーンながら、主役二人の愛し合う姿勢が良い。
2022.07.11
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2019年9月刊ティアラ文庫著者:蒼磨 奏さん復讐のため、豪商の御曹司・清秋と結婚した雪乃。「僕の腕の中に居る時は、全てを忘れていい」逞しい胸に身を委ね、蜜を垂らす下腹部を剛直で穿たれながらはしたなく喘ぐ。彼は両親の仇の息子だというのにーー。目的を果たすまでの夫婦関係だったはずが、濃密な夜を過ごすたび、憎悪に染まった心は溶かされていく。「君を僕のものにしたい」想いを告げられれば幸せの絶頂に! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 天方雪乃=ヒロイン。元華族・天方子爵の長女。両親を心中するまで追詰めた鷹 栖家を恨み、当主殺害を試みるも失敗。警察に通報しない代わりの条 件として鷹栖家の次男・清秋に嫁いだ 鷹栖清秋=ヒーロー。豪商・鷹栖家の次男で軍人。クォーターのため青い瞳をし ている。殺人未遂事件を起こした雪乃を説得し、自らの妻に迎える。 天方夏子=雪乃の4歳下の妹。生まれつき心臓疾患があり体が弱い。 復讐に燃える姉の姿に心を痛めていた。雪乃が嫁いだ際、一緒に清秋 の屋敷に引き取られる。 蓮見柊一=清秋の友人で軍医。子供時代に継母に苛め抜かれた経緯から女性嫌い であったが、夏子の診察をしたことにより彼女に懐かれ親しくなる。鷹栖伊三郎=清秋の父。一代で財を成した豪商で雪乃の父に多額の資金援助をして いた。 袴田=元天方家の家令。子爵家が無くなってからは妻と定食屋を営んでいる 。雪乃たちを気にかけ何かと世話をしていた。復讐ものです。でも、聞かされていた話と真実はかけ離れていて・・・、と言うお話。結構中身びっしりな内容の為、詳しく書くととんでもない長文になりそうなので、ざっくり目にいきます。ヒロイン・雪乃と夏子は天方子爵の娘に産まれながら、両親が亡くなって以降は爵位を返還し、姉妹二人とある資産家の援助を受けながら細々と暮らしていました。夏子の方は、身体は弱いものの人を恨むことなく真っ直ぐ育ったが、姉・雪乃は両親の悲惨な死が忘れられません。何故なら、父母は借金苦で屋敷ごと焼身自殺を図ったのだから。焼け焦げた両親の遺体をもろに見てしまった雪乃は、更に母方の祖母から父母が豪商・鷹栖伊三郎に高金利の借金を負わされ、厳しい取り立てを受けていた事を聞き、二人を死に追いやった人物としてこの6年間、伊三郎に復讐するのを夢見る日々。母方の名字である向坂を名乗って鷹栖家の使用人になった雪乃はチャンスを伺い、ついにその日は来た。宴会で酔いつぶれて寝ている伊三郎に短刀で襲い掛かった所、次男の清秋に止められ失敗。最早これまでと潔く自害しようとしたけれど、それさえも阻止され自分は警察に突き出されるのだと覚悟した雪乃。夏子に迷惑をかけてしまうのが心残りだった彼女に、清秋は父が自殺に追い込むまで借金を取り立てるような人物では決してないと話します。雪乃はそんなはずと思いつつ、両親の死の原因についてアレコレと言っていたのは祖母だけであり、今思えば飽く迄個人の見解によるものだったのは確かだ。そもそも、当時は事故死と報道されていたし、心中を図るほど追い詰められていたかと言われればそうは見えなかった。清秋は、ならば人の生死に関わっていることだし、自分も出来ることは協力するので真相を明らかにしないかと説いた。出来れば復讐なんて止めて欲しい故の説得だったが、殺害の失敗と改めて清秋の話を聞くうちに雪乃の決心も揺らいだ。丁度早く結婚しろとせっつかれていることもあり、監視も兼ねて雪乃を妻に娶りたいと言う清秋。雪乃の方も事件の真相を調べるには彼の妻と言う立場は利用できる。かくして二人は結婚することになったのだが、形だけの夫婦関係かと思いきや、清秋は雪乃を溺愛。妹の夏子まで呼び寄せて面倒を見てくれるなど至れり尽くせりの待遇だった。そんな生活が続く中、伊三郎に仕えていた会計士や、天方家の元家令・袴田の証言によって両親を追い詰めていたのは伊三郎ではなく、母の実家・向坂家と祖母だったことが判明し・・・。伊三郎さんは復讐の相手どころか、姉妹二人に生活費の援助をしていた人物でした。要は伊三郎のせいで両親が死んだんやでー、と雪乃に吹き込んでいた母方の祖母が一番の黒幕で、事業の失敗で傾いた向坂家のために娘の嫁ぎ先である天方家に多額の借金を背負わせていたのです。そして、そんな天方夫妻を昔世話になったよしみで助けてくれていたのも伊三郎でした。何のことはない、雪乃は祖母の嘘によって大恩人を仇と思い込まされていたというオチ。その祖母も亡くなって早数年、向坂家は天方家を踏み台にして一時は生き延びたものの、因果応報なのか今は再び借金苦で没落寸前。両親は結局心中ではなく事故死だったらしく、目的を失くして燃え尽き症候群になりかけた雪乃を救ったのは今では愛しい夫の清秋でした。真相解明から数年後、二人の間に娘が産まれ、雪乃も鷹栖家の嫁として清秋と仲睦まじく暮らしている様子が描かれて終わり。清秋の初恋の人が実は雪乃だったり、途中色々と騒動も起きたりするんですけど、その辺は敢えて渇愛してます。夏子ちゃんと蓮見医師との恋物語は微笑ましくて、全体的に薄暗い内容の中、オアシス的な雰囲気でした。最後は交際することになって何より。ってか、年数的にもう結婚間近かと思ってたw ここから付き合うんかいっ!評価:★★★★★やはりこの方の明治、大正が舞台のお話は面白い。
2022.07.01
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2013年9月刊プランタン出版・ティアラ文庫著者:仁賀奈さん母に捨てられ富豪の養子になったマリアン。優しい義父と義兄に囲まれ幸せに暮らしていたら、名士からの縁談で二人が豹変!!「君の身体に触れていいのは私だけだ」「ずっとマリアンを抱きたかったんだ」義父に獣のように奪われた純潔。嫉妬した義兄には監禁され昼も夜も責められてしまう。三人で睦み合う淫靡な夜を経て気づいた想い。父と兄を男として愛し始めたマリアンの選択は!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用リンク先は電子書籍ですが、文庫版で所持。このお話、ヒーローが二人います。サブタイトルやあらすじでは義父と義兄に関係を迫られるヒロインって感じで書かれてますが、実際は籍には入ってないのかな?この辺ぼんやりとしか書かれてないので読み返してもよくわからない。一応、ヒロインはヒーロー二人の従姉妹の娘に当たります。とある事情から幼い頃に国一番の資産家である侯爵家に引き取られたヒロイン。義父と義兄(ヒーローその2)はヒロインを溺愛し大切に育てていたけれど、彼女が16歳になると縁談話が持ち上がり3人の関係に微妙な変化が。彼らは娘や妹としてではなく女性としてヒロインを愛しており、お互い牽制し合っていました。ある日、抜け駆けして義兄がヒロインにキスをしたことが義父を煽り、強引にヒロインと関係を結んでしまいます。当然義兄も黙っておらずヒロインはそちらとも深い関係に。彼女は思い悩み家出するも結局2人に見つかり、どちらか選べと迫られ・・・。結末としては複婚エンドになります。どちらか1人を選ぶなど無理!と言うのならこの国の法律を変えようじゃないかと、ここぞとばかりに権力を行使。総理に圧力を掛けて出されたこの法律は異例の速さで可決されたのでした。この終わり方はある意味究極のハッピーエンドな気がする。評価:★★★★★このレーベルさんですし、官能小説っぽいシーンや展開も多々あるのだけどストーリーがとにかく面白い。但し、3○が地雷な方はご注意を。
2022.04.11
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2016年6月刊プランタン出版・ティアラ文庫著者:蒼磨奏さん「君を見ていると襲いたくなる」無骨な手で乳房を揉まれ、下腹部を這う舌に、蕩ける身体。夫に抱かれると、胸が痛くなる。従姉を名乗り、冷静沈着な警官の宵と結婚した鈴。ぎこちない新婚生活だったけれど、不器用な優しさを見せる彼に惹かれていく。愛した男性から別名で呼ばれる切ない日々。そんなある日、真実を知られ一緒に暮らせないと飛び出した鈴に伝えられた言葉とは!? ↑楽天ブックスより、あらすじ文引用発売時にイラスト買いしたお話ですが、よくよく本棚を見たら蒼磨先生の作品を結構購入してたんだなぁとしみじみ。タイトル通り、大正時代が舞台の身代わり婚モノです。ここからネタバレと感想。ヒロイン・神無月鈴は老舗呉服屋の一人娘でありながら、両親を亡くして以来店の経営を引き継いだ叔父夫妻に使用人同然にこき使われて過ごしている。そんな生活の中、叔父夫婦の娘で鈴の従姉妹の美弥子だけは彼女を庇い、自分の分として着物やお菓子等を態と大目に買ってもらい、鈴にこっそり分けてくれていた。おかげで美弥子は近所では浪費家の娘と噂されていたが、当の本人は気にしていないようだった。鈴もそんな従姉妹の気遣いに感謝しつつも、食べ物はともかく、叔父達から外出を厳しく禁じられている身ではせっかくの着物をこっそり着ることも出来ないのであった。美弥子は神無月家の居候で書生の祥太郎と恋仲で、同じ屋根の下に暮らしながらも鈴を通して文のやり取りをする二人が微笑ましくもあり、ロマンチックだなと少し憧れてもいた。とは言え、叔父達に家を乗っ取られる十歳までしか学校に通えなかった彼女は学が無く、文字もひらがなしか読み書き出来ないので恋文のやり取りなど夢のまた夢。ある日、鈴は叔父から美弥子に縁談が来ていると聞くが、寝耳に水なことで祥太郎もショックを受けていた。明日この屋敷で顔合わせがあるようだが、相手は華族でこそないものの由緒正しい名家らしく叔父はこの縁談に大層乗り気だった。どうやら先方から是非神無月家のお嬢さんと結婚したいとの申し出だったらしい。気の強い娘のこと、騒ぎになりそうだからと叔父は美弥子には内緒にして事後承諾で進めるつもりのようだ。そんなやりとりをしていると丁度近くを通ったからと件の見合い相手・桐生宵(しょう)が来店したと、叔母が叔父を呼びに来た。悶々としていた祥太郎はこっそり相手を見に行こうと鈴を誘い物陰から覗き見ると、長身で凛々しく端正な顔立ちの青年で鈴は思わず見とれてしまった。宵は何故か店内を見回すと徐に、叔父夫婦に神無月家の娘は美弥子さん一人だと聞いているが相違ないかと尋ねた。面食らった叔父が間違いないと答えると、思案顔をしていた宵は叔父夫婦のお茶の誘いにも乗らずに店を辞した。夕方帰宅した美弥子に見合いのことを話すとやはり彼女は何も知らされていないようで、顔も知らない男に嫁ぐなんて絶対に嫌だと泣き崩れた。鈴は先ほど預かった祥太郎からの文を彼女に渡すと、どうやら東北にある彼の実家に一緒について来て欲しい旨書かれているようだ。叔父も祥太郎の出身地まで詳しく知らないから駆け落ち先には打って付けの所だという。鈴は優しい従姉妹のために一肌脱ぐことを決意し、二人を逃がした後は知らないふりを決め込んで時間稼ぎをすると申し出たのだが、美弥子は父達による彼女の普段からの扱いを思うと、自分たちのせいで手酷い折檻をされそうで気が気ではなかった。そんな従姉妹を自分は大丈夫だからと説き伏せ、美弥子は祥太郎との駆け落ちを決意したのだった。美弥子は去り際、父たちは強欲だからこの縁談を必ず纏めたいはず。もしかしたら鈴を代わりに嫁に出そうとくらいはしそうだから、ここを出て自由になるためにも桐生家に嫁ぐのも手かもしれないと鈴に言い含め、明け方に祥太郎と旅立って行った。翌朝、叔父は激怒し白を切る鈴を張り飛ばしたが、叔母の方は大分冷静なようでそれより見合いをどうするか相談し始めると美弥子の読み通り、二人は鈴を美也子に仕立てるつもりのようだ。碌な教育を受けていない鈴は身代わりなど無理だと拒否するが、この縁談自体もう断れないものらしく、見合いというより今日は結婚前の顔合わせの場らしい。かくして鈴は美弥子として場に引き出された。宵は仕事の都合で少し遅れるとのことで姑になる桐生夫人が先に到着していたが、夫人は鈴の容姿にケチを付け、随分な浪費家だという噂の真意を聞いてきた。鈴は普段の美弥子の物言いを真似ることで何とか乗り切ったが、丁度宵が現れたためそれ以上言及されることは無かった。二人は改めてお互い自己紹介をしたが、仕事場から駆け付けたと言う宵は警官の制服姿で、鈴はトラウマになった幼い頃の記憶を思い出したのだった。数日後、二人は祝言を挙げたのだが、出席した制服姿の警官たちを見ると鈴は気分が悪くなった。十年前、懇意にしていた政府高官が収賄容疑で逮捕され、父母が経営する呉服屋にも嫌疑がかかり屋敷にも家宅捜査が入った。父母は事実無根だと主張したが土足で上がり込んだ数十人の警官たちは、神無月邸を捜査と称して散々荒らし、押し入れに隠れていた鈴も引っ張り出された恐怖は忘れない。荒らすだけ荒らしておいて結局証拠も見つからずに疑いは晴れたのか警官たちは引き上げて行ったが、そう言えば最後に残った警官が何度も自分たちに頭を下げ謝罪していたっけなと思いつつ、鈴は以来警官が苦手だった。夫になる人が代々警察官の家系の一人息子だと知った時の衝撃も然るものだったが、宵は横暴な警察官らしからぬ人で、初夜の際も鈴はまだお互いをよく知らないからと思わず拒否してしまった。その代わりに親睦を深めるべくした趣味や好きなものについての質問の応答を、体に触れながらするという何とも恥ずかしい夫婦生活の始まりだった。翌日から鈴は率先して家事をこなし、その手際の良さは使用人たちにも目を見張るものだったそうだが、昨夜、鈴の手があかぎれだらけだったことと、顔合わせの際の殴られた跡の残る頬など、お嬢様育ちと聞いているのに宵はどうにも腑に落ちない。妻と噂の美弥子とはどうにも人物像が違い過ぎるのだ。その日、桐生美弥子宛に差出人の無い手紙が届いた。開くと美弥子からのもので、すべてひらがなで書かれたそれは鈴の身を案じる言葉が綴られていた。だが、道中路銀を盗まれて足止めを食らって、今金を工面するべく仕事を探しをしているらしい。最後の文面に少し心配になったものの、二人とも元気にやってるようではあった。祝言から2週間ほど経ち、宵がいつも読んでいる書物を何気なく捲っていた鈴は読めない漢字を飛ばして音読していると、いつの間にか後ろに立っていた宵に漢字が読めないことを知られてしまった。女学校に通っていたはずが、漢字が読めないとは。宵の不信感が更に募ったが、彼は鈴に漢字を教えると告げると、それから毎晩厳しい授業が続き、鈴は無愛想ながら何かと気遣ってくれる宵の為人と、その生活にも慣れて行くのだった。妻帯者の部下に妻の喜ぶことをしてやった方がいいとアドバイスされた宵は休日に鈴を誘い、街中を歩いてデートをした。欲しいものを買ってやるとアレコレ薦めてはみたものの、物欲の無い鈴は幼い頃の思い出らしい金平糖を欲しがった程度だった。こんな彼女のどこが浪費家なのか、疑惑は深まるばかり。アドバイスをもらった際に、部下に神無月呉服店の調査を頼んだが、その時部下は嫌な噂のある店だとも言っていた。上司の妻の実家なので言い出しにくかったとのことだが・・・。デートで初めての接吻を交わしたその夜、二人は祝言から延び延びになっていた初夜を迎えた。行為の最中に、美弥子と呼ばれることが苦しくなり、事実を言えないもどかしさに思わず泣き出した鈴に、嘘をつかれるのは嫌いだと、過去親友に裏切られ挙句その親友が目の前で自殺した過去を語った宵だったが、泣き止まない彼女にどうしたら泣き止むか何か望みは無いのか?と尋ねると、鈴は恋文が欲しいと告げるのだった。漢字が読めるようになったら男性から恋文を貰うのが夢だったと言う彼女に筆不精なんだがと前置きした彼は期待せず待っててくれと約束するのだった。桐生家の生活にも慣れ、定期的に美弥子から近況を知らせる手紙が届いており、今回は祥太郎が実入りのいい仕事を見つけてそろそろ路銀も溜まりそうだとの報告であった。二人は今、下町の貧しい貸家住まいをしているらしいが幸せそうだ。それを思うとあんなに良くしてくれている宵に嘘をついている自分に嫌気がさして来るが、ふと見ると自分宛ての手紙がもう一通置いてあり、約束していた恋文であると判った。筆不精というだけあって恋文というより日記のような内容ではあったが、鈴は恋文というものは貰うとこんなに嬉しいものだと知るのだった。とは言え、宵を好きになればなるほど鈴は罪悪感に圧し潰されそうになっており、宵もまた秘密を抱えているらしい妻に対してもどかしく思っていた。ある日彼は、机に置かれていた妻宛の手紙を見て定期的に差出人不明の手紙が届いていることを使用人が話していたことを思い出し、悪いと思いつつその手紙を読んでしまった。そして内容から二人の入れ替わりがバレてしまうのだった。文面に書かれている鈴とは誰だ?鈴はどれだけ宵に責められても喋らなかったが、翌朝もうこれまでだと身一つで桐生家を飛び出してしまった。だが、実家にも帰れず、雨が降り出しても行く当てのない彼女を見つけたのは宵であった。鈴は観念し、これまでのことを宵に包み隠さず話し謝罪した。黙って聞いていた彼はもっと早く相談してくれていればと苦い表情だったが、事態を受け入れてくれたようだ。折しも、しまい忘れた手紙は美弥子から助けを求めるものだった。どうやら祥太郎は違法の賭場で働いていたらしく先日ガサ入れの際に逮捕されてしまったらしい。違法就労者扱いなら大した罪状ではないので口利きと多少の金で釈放されると聞き、宵が手を回してくれることになった。一先ず大事にならずに済みホッとした鈴に、仲直りをするべく昼間から事に及ぼうとした宵を庭から怒鳴りつけたのは、助けを仰ぎに東京に帰って来た美弥子であった。鈴が席を外しているうちに宵は美也子に以前から疑問に思っていたことを尋ねた。不審な点が多いため、妻の実家を調べたのだと悪びれず言った宵は鈴が両親と共に死亡扱いになっていることを知っているか?と。そして、三人分の保険金を叔父夫婦が受け取っており、その他にも叔父夫妻が経営を携わってからあの店はきな臭い噂で持ちきりだった。脱税や収賄などかなりの数の罪状だと聞き、美也子は詳しいことは分からないが強欲な両親ならやりそうだとあっさり言ってのけた。思えば、鈴を外に一切出さず閉じ込めていたのは保険金詐欺で死亡届を出していたためだと納得がいく。宵は戸籍を直させて改めて神無月鈴と籍を入れ直すつもりだが、美弥子はこの7年の間両親がしてきた鈴への仕打ちを訴え彼女を幸せにしてやって欲しいと告げるのだった。数日後、神無月邸へ家宅捜査が入った。鈴の父の時は濡れ衣だったため無罪放免となったが、叔父夫婦は保険金詐欺含め罪状が多すぎてそうはいかないだろう。再び荒らされる我が家を離れて見ていた鈴を捜査の指揮していた宵が気遣うが、彼女は最後まで見届けると決めていた。そんな鈴に同じ制服姿の男性が声を掛けて来た。彼は宵の父であり、あの時家宅捜査を担当した一人だと告げた。鈴は義父があの時一人詫びてくれた人物だと知り驚くのだった。義父は怯えながらも自分を睨みつけて来た彼女の気概を気に入り、是非宵の嫁にと考え縁談話を進めたのだが、まさかの事態に困惑したのだと言う。色々あったが、これからも息子を宜しく頼むと残し、義父はその場を後にした。その後、叔父夫妻は逮捕され、今後美弥子が祥太郎と共に呉服屋を継ぐつもりだと聞いた。鈴は毎日宵に弁当を作り、甘いもの好きの彼のために甘味と文を添えていた。そんな彼女への返信を書く宵の様子で、了。不遇ヒロインものですが、叔父夫婦は相応の報いを受けたようで良かった。罪状的にここら辺が落としどころかなぁ。美弥子は結局駆け落ちを終了し、両親の代わりに呉服屋の経営をするそうだけど、この子が携わった方が色々上手く行きそうな気がする。家を離れていた間に世間にも揉まれたろうし。宵は割と最初から鈴に好感触だったおかげで両想いになってからはラブラブになるのも早かった。初めての恋文の文面は読んでて思わず泣けてきてしまった。この縁談が、実は鈴との縁談を望んだ宵の父によるものと判った時は、やっぱりねと思いました評価:★★★★★不遇ヒロインもの好きなら絶対におススメです。
2022.02.16
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罪深き堅物伯爵の渇愛 (ティアラ文庫) [ 宇奈月 香 ]楽天で購入発売:2020年10月ティアラ文庫宇奈月 香さん「公爵家のため結婚したものの、事故で記憶の一部を失ったエルティーナ。夫だという美貌の男に愛を囁かれ、淫らな愛撫と快感に溺れていく。「君と夫婦になる日を夢みてた」慈しまれる幸せな日々。だが夫の双子の兄であるイヴァンに片想いしていた記憶を取り戻し、それが今の夫の姿と重なりーー。もしかしてこの人はイヴァンなの?運命に翻弄された一途な男が仕掛けた愛の罠とは!?」ティアラ文庫作品詳細ページよりあらすじ引用例え幼馴染でも口の上手い男には気をつけろ、が教訓になりそうなお話です。美麗な表紙イラストに惹かれて読んでみたら内容も面白く、私が初めてのピッコマ課金を捧げた作品であり、紙媒体でも手元に置いておきたくて結局文庫の方も購入してしまいました(*^-^*)ここからネタバレ有りな感想です。去年の秋以降暫くピッコマのノベルスランキング上位にいた作品のため、会員の方はそちらで目にしたことがあるかも。ヒロインは領地の水害で当主である父と跡継ぎであった兄を一辺に亡くした公爵令嬢エルティーナヒーローは親同士が親友で幼いころ婚約者になったヒロインの許嫁で次期伯爵のイヴァンイヴァンには瓜二つの双子の弟・シモンがいます。父と兄を亡くし、病気がちな母を抱え途方に暮れるエルティーナ。この国では女性は爵位を継げず、後継がいない場合国に公爵位を返上しなければなりません。しかし、残された母や公爵家を慕ってくれている領民たちのことを思うと当然そんなことはできず、エルティーナは婿を取らなければいけなくなるんですが、許嫁のイヴァンはもうすぐ伯爵家を継ぐことになっており婿入りは望めそうもない。幼いころからイヴァンに恋していたエルティーナは彼に婚約解消を告げ、葬式の時意気消沈していた彼女に優しく声をかけ婿入りを提案してきたイヴァンの弟・シモンと結婚することになります。が、このシモンがとんでもない食わせ物で、無愛想だけど努力家で頭がよく仕事のできるイヴァンに比べ、要領よく愛想はいいものの飽きっぽく怠け癖のあるシモンは、自分の欠点を棚に上げ双子なのに長男というだけで伯爵家を継いだ兄に長らく嫉妬していました。これぞチャンスとばかりに傷心しているエルティーナに取り入り公爵家当主に収まったのです。(基本長男が家を継ぐので次男や三男が爵位を得るには婿入りするのが常)しかも、エルティーナと結婚し公爵位を継いだ途端本性を現し、彼女の母が亡くなると愛人を屋敷に引き入れエルティーナは離れにある乳母の家に追いやられ、以来不遇な扱いを受けるように。そんなシモンの行動をイヴァンは度々諫めていましたが爵位はシモンの方が上になってしまった為、強くは出れずそのうちブルジョワ公爵邸には出禁となり、エルティーナのことを思うとイヴァンは気を揉む日々。それもそのはず、イヴァンはある出来事がきっかけでしたが素っ気ない態度をとりつつもずっとエルティーナが好きだったのだから。実はお互い両片思いだったというやつです。そんなある日、どうしても外せない舞踏会に周囲に不仲を隠しつつ出席したシモンとエルティーナ。帰宅途中の馬車の中で、ついに彼女は長らく考えていた離婚を切り出します。結婚してもう3年、気がかりだった母も亡くなったことだし公爵としての役目をきちんと果たしてくれるなら自分が身を引くから好きにやればいい、と。おまけにエルティーナはイヴァンを想い続けていたためについ初夜を拒否したこともシモンを怒らせていた原因で二人はずっとそのまま白い結婚でした。シモンが愛人を作ったのは自分にも原因がある。シモンもそう望んでたはずだと思いきや、母の采配で(実はイヴァンの入れ知恵だった)公爵家の財産は全てエルティーナの名義となっており、シモンが好き勝手には使えないようされていました。そこで、彼はならば彼女が事故で死んだことにすればいいと金で雇った強盗に彼女を襲わせます。この辺のやり取り(特にシモンの物言いが)がホントに胸糞で、読んでてかなりイラっときました。まあ、最初から地位と財産目当ての結婚でしたからね。イヴァンがいい男なだけにどうしてこんなにも弟の方は歪んでしまったのか、身内の妬みってのは根深いものなんですねぇ。この場合双子ってのも大きい原因だったのかもしれませんが。強盗に追われて崖から落ちたエルティーナは頭を打ち失神、運よく発見が早く事なきを得たものの目覚めた彼女はある一部分のみの記憶を失っていました。そしてシモンは疑いを恐れてか襲撃された痕跡を残して行方不明に。事件を聞きつけエルティーナをかいがいしく看病していたイヴァンは自分がシモンだと名乗り、当主として公爵家で采配を振るい献身的に彼女を愛し尽くしますが、一緒に過ごすうちに幸せなのにかすかな違和感を覚えるエルティーナ。そんな生活を重ねた中、図書室で家族のアルバムを見たことをきっかけに彼女は全て思い出し、後日事の真相をイヴァンに尋ねついに彼の本心と想いを聞きます。お互い好きだったと分かりハッピーエンドと思いきや間の悪いことに事件以来行方をくらませていたシモンが屋敷に現れイヴァンには公爵位を渡さんと抵抗しますが、彼を匿っていた愛人を蔑ろにしたおかげで企みは全ておじゃん。シモンは逮捕されエルティーナとは正式に離縁が決まり、イヴァンが婿入りして新たに公爵位を継ぐこととなりました。空席になったミケラグール伯爵位は引退していた彼の父が再び担い、将来イヴァンとの子に継がせるとのこと。本来、余計な画策さえしなければシモンは伯爵位を継げたのにバカなことをしたもので。最初からイヴァンの手を取っていればこんな回り道せずに済んだんでしょうが、苦労したヒロインの3年間は一体。そんな彼女を影ながら支え続けていたイヴァンがいなければもっと大変なことになってたでしょう。まあ、彼の態度も分かり難かったのでエルティーナもそりゃ婿養子に来てくれとは言い難かったなとは思います。長らく自分は嫌われてると思ってたのもあったし。とは言え、彼女の誤解もシモンが過去から色々やらかしてたせいでもあるので、(イヴァンが用意していたエルティーナへの心尽くしの誕生日プレゼントを毎年横取りして自分からだと偽って渡していた)つくづくこの作品の諸悪の根源はシモンでしたが相応の罰は受けたのでね。彼の愛人の態度も最初もイラっとはきたのと、強盗の件は彼女の作戦だったので同情はできませんが、この人も上手いこと乗せられてた上に本気でシモンに惚れてただけ。ある意味この愛人もシモンの被害者ではあったけど、やらかしたことを思えば、修道院行きになったのは致し方ないことか。じれじれ度はままありますが、クールに見えたイヴァンが実は愛に熱い男でロマンチストだったのが個人的にかなりの好印象。話の展開も面白かった。終章での二人の甘い雰囲気は砂糖マシマシです。評価★★★★★乙女系を読みなれない方にも読みやすいかと
2022.01.09
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