inti-solのブログ

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2008.11.03
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カテゴリ: 環境問題
さて、前回からかなり時間が経ってしまいましたが、地球温暖化問題についての続編です。
過去ログ
第1回
http://plaza.rakuten.co.jp/intisol/diary/200810180000/
第2回
http://plaza.rakuten.co.jp/intisol/diary/200810190000/
第3回
http://plaza.rakuten.co.jp/intisol/diary/200810230000/
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最後の問題は、地球は温暖化している、その原因はCO2であるらしい、ではその何が問題なのかという点です。

反温暖化論者がよく引き合いに出す話に、恐竜の生きていた白亜紀には、CO2濃度は今の10倍もあった、というものがあります。そして地球は今より暖かかった、しかし恐竜は栄えていた。温暖化は自然にとってよいことではないか、というわけです。
しかしこれは違います。恐竜時代のCO2濃度が今より遙かに高かったことは事実ですが、その代わり酸素濃度は今の3/4程度しかなかったのです。酸素濃度が3/4でも、人類が生存できないわけではありませんが(今の海抜3000m以上の高地と同程度の酸素量)、息苦しくて快適ではないでしょう。なによりも、当時と現在では、動物相がまったく異なります(植物相は動物相ほどには違わないけれど)。
我々は現在という時代を生きているのであって白亜紀に生きているわけではありません。守らなければならない自然環境は、「現在の」自然環境なのです。

さて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測によれば、地球の平均気温は、1990年を起点として、2100年までに、1.1度から 6.4度の気温上昇があると推定されています。非常に幅のある推計ですが、気温上昇のメカニズムは全て解明されているわけではないこと、不確定要素が多いこと(例えばCO2の排出が将来どの程度になるかによって予測も変わる)から考えて、予測に大きな幅が生じるのは仕方のないことです。中位の推計では、2~3度程度の気温上昇ということになります。

2~3度というと、なんだ、大したことではないではないかと思ってしまうかも知れません。
「恐竜時代のCO2濃度」と同じレベルで、時間の尺度を地球の歴史の長さに取れば、確かに大したことではないかも知れません。最終氷期の最盛期には、地球の平均気温は現在より7-8度も低かったと推定されています。それでも、動植物は北へ南へと大きく移動を繰り返しながら、(かなりの絶滅を伴いながらですが)生き延びてきました。
白亜期末の恐竜絶滅などは、それよりももっとすさまじく、全生物の7割が絶滅したと言われています。人間のどんな自然破壊すらとうてい及ばないようなすさまじい自然破壊ですが、それでも自然はたくましく復活したのです。まして、人為的な地球温暖化による2度や3度の気温変化など、ある程度の時間をかければ簡単に受け止めることができるでしょう。

もっとも、こういう書き方をすると、「では自然保護など必要ないではないか」という曲解を招くかもしれません。どんなに破壊しても再生するものなら自然保護など必要ないではないか、と。
何百万年、何千万年という尺度で見れば、そのとおりです。どんなに破壊されても、自然は必ず再生します。ただし、そのとき人類は生き残っていないでしょう。1千万年度後、いや百万年後でも、現生の人類が生き残っている可能性はゼロに等しいと私は思います。人類が絶滅した後で自然が回復しても、我々の子孫にとっては、破壊された自然は永遠に失われたのと同じことです。
何百万、何千万年という地球の歴史の流れと、7~80年しかない人の一生、十数万年のホモ・サピエンスという種の歴史は同列ではありません。我々の見知っている自然を、人類という種が生きているあいだ、守り受け継いでいくことこそが、自然保護という考え方の本質だと私は思います。

話を温暖化問題に戻すと、問題なのは人間社会の適応力です。
「たかが2~3度」といっても、ある特定の場所で昨日と今日で2~3度気温が違うという話ではありません。全世界の気温の平均値が2~3度上がる、それも数十年から100年という短期間の間に、という話です。これは、実はたいへんな気候の変化なのです。
今から15年前、1993年の夏に記録的な冷夏がありました。長雨が続いて、観測史上唯一、関東で梅雨明けがなかった年です。全国的に農作物が不作で、米の作況指数は74という空前の不作で、「平成の米騒動」と社会問題になりました。
その年の年平均気温は、盛岡9.7度、東京15.5度、福岡16.3度でした。
翌1994年は逆にカラ梅雨、酷暑の夏でした。晴天続きのため農作物の生育は順調でしたが、大阪と広島で8月の月平均気温が30度を超え、気温 40度以上を記録する都市が続出、東京の最高気温も39度を記録しました。関東でも水不足から取水制限が行われましたが、西日本の水不足は更に激しく、福岡市の断水は翌1995年6月まで300日近く、四国の高松でも2ヶ月以上続きました。
この年の年平均気温は盛岡10.8度、東京16.9度、福岡17.6度です。
年平均気温にしてしまえば、1993年と94年の違いはわずか1度余りに過ぎません。しかし、たったそれだけの違いで、実際には夏の暑さは天と地ほどの違いになり、米不足とその反対の水不足という大きな影響を与えたのです。人間の生活にとって、平均気温で1度2度の違いがどれほど大きな意味を持ち得るか分かります。

最終氷期が終わってから現在までの約1万年は、後氷期と呼ばれる暖かい時代ですが、実はそれだけではなく、過去に例がないくらい気候の安定した時代でもあります。過去の間氷期には、現在以上に温暖だった時代もありましたが、この1万年間ほど気候の安定した時代は、過去数十万年の範囲内では他に例がありません。
氷期にしろ間氷期にしろ、実はずっと寒かったわけでもずっと暖かかったわけでもなく、気温は短い周期で激しく変動していました。南極はそれほどでもないのですが、グリーンランドは特に気候の変動が激しかったことが氷床コアの解析から分かっています。

過去1万年間気温が非常に安定していたことと、人類の文明がこの1万年で急激に発展してきたことはおそらく無関係ではないでしょう。人類の文明の基礎は農業です。しかし、一ヶ所に定住して、同じ田畑にほぼ同じような作物を栽培し続ける農業のスタイルは、気候の変化があまりないという前提条件があってはじめて可能なことです。
気候の安定していたこの1万年の中でさえ、気候のちょっとした変化で不作やそれによる飢餓が繰り返し人類を襲っているのです。過去の氷期・間氷期の激しい気候変化は、その比ではありませんでした。10年前はサトウキビが栽培できたけれど、今年はジャガイモしか栽培できなかった。10年後はいったいどうなるだろう・・・・などという状態では、どれほどすさまじい飢餓地獄が起こるか、想像に難くありません。それでは、とても文明を発展させることなど出来なかったでしょう。

2~3度の気温上昇は、1万年前以前の気候変動に比べればごく小さな変動ですが、100年という変動の期間はかなり短期間であり、農業をはじめとする人間の社会システムに打撃を与えるには充分なものです。
長い目で見れば気温が暖かくなった方が作物の生育にはおそらく好都合でしょうが、短期的にはそうとは限らないのです。例えば、日本人の主食である米は、充分な暖かさのある温暖地では、気温が上昇すると収量が減るという調査結果があります。ジャガイモなども、暖かすぎる場所には不適な作物です。
では、栽培する作物を、より温暖地向きのものに変えればいいのでしょうか。しかし人間の食生活や嗜好はそうそう簡単には変わらないので、ものすごく大きな混乱が生じます。

水不足も問題です。前述のように、1994年の猛暑では日本中で水不足が深刻化しました。
温暖化すれば、水面からの蒸発量が増大するので、全世界の平均値で見れば、おそらく降水量は増大するでしょう。しかし局地的にはそうとは限りません。今まで一滴も雨が降らなかった場所に大量の降水を見たり、逆に今までは雨が多かった地域にほとんど雨が降らなかったりという事例が大量に発生するはずです。長い目で見れば、適度に雨の降る場所に農地を開拓すればよい、ということになりますが、しかし農地の開墾には時間と労力がかかります。今年、砂漠の真ん中に急に雨が降り始めたから、来年からそこで作物を植える、というわけにはいきません。一方、既存の耕地は、半年も雨が降らなかったら灌漑設備でもない限り直ちに耕作不能に陥ります。
生活用水や飲み水も同じです。今までダムのあった場所に雨が降らなくなったら、水瓶はすぐに空っぽになります。今までダムのなかったところに雨が降るようになっても、ダムを建設するには何年もかかります。人間は食糧以上に水なしでは生きていけませんから、そんな事態になったら大混乱が生じることは目に見えています。

つまり、地球温暖化は、「自然環境の問題」に見えて、実はそうではなく人類が築き上げた脆弱な社会システムに大きな打撃を与える可能性の高い問題であることこそが重要なのです。「たかが2~3度」の気温上昇に過ぎませんから、生物学的な意味での影響はそれほど大きなものではありませんが、人類社会はその程度の小さな変化に対しても対処する機能をもっていないのです。
そのことこそが、地球温暖化問題の危機の本質だと私は考えています。
(一応は完結)





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最終更新日  2008.11.10 22:38:46
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