全18件 (18件中 1-18件目)
1
「子供に食べさせるな」コオロギ粉末給食に苦情殺到 試食2回提供の高校困惑「誤解されている」徳島県小松島市内の県立高校・食物科が、コオロギパウダーを使った給食を試食で出したところ、「子供に食べさせるな」といったクレームが相次いでいる。これまで試食を2回行ったが、3回目以降は考えられない状況だという。今後のたんぱく源として昆虫食がクローズアップされているが、新しい食材への拒否反応は相変わらず根強いようだ。~コオロギパウダーを使った給食は、生徒同士が市販の乾燥食用コオロギを食べるゲームをしていたのを見て教諭がその美味しさに驚き、環境を考えるきっかけにと給食導入を考えた。そして、食用コオロギを手がける大学発ベンチャー企業からパウダーの提供を得て、22年11月に1回目の試食を行った。食物科の生徒らが、コロッケに使われるひき肉の代わりにパウダーを使った「かぼちゃコロッケ」を考案して作り、在校生のうち約170人が試食に加わった。食べるか否かは選択でき、給食を考案した生徒は、最初は抵抗感があったものの、香ばしくて美味しい食材だと感じたという。~ところが、昆虫食については最近、著名人らも含めた議論になっており、批判的な意見も多い。給食導入について、ネットニュースのコメント欄などでは、「管理栄養士がいるから 大丈夫じゃない?」と認める声もあったが、「アレルギー大丈夫なの?」「給食で出すなんておかしい」などと懸念する声が多かった。~徳島県教委の学校教育課は2月28日、取材に対し、次のように話した。「小中学校のような学校給食ではなく、専門科目の集団給食として実施しています。生徒がみな一斉に食べるわけではなく、希望する一部の生徒だけが試食しています。大学や企業が安全に食材を提供し、アレルギーについても生徒に説明したと聞いています。高校には、どんな意見が来ているか聞きましたが、今後どうするかは学校の判断になります。教育委員会として、このような給食を進めたり、指導をしたりするものではないと考えています」~---何を食べているかわからない野生のコオロギを採ってきて使ったわけではなく、食用として飼育され、製造されたコオロギパウダーを使用し、当然加熱調理(コオロギパウダー製造過程で加熱処理しているはずですが、それに加えて給食調理の課程でも火を通している)し、なおかつ「コオロギパウダー」であることとアレルギーについてについて説明した上で、希望者のみに提供、この過程のどこかに問題があるでしょうか。コオロギにアレルギーがあり得るとしたら、当然エビやカニも無理、ということになります。この件で私が唯一驚いたのは、この高校には給食があるのか、という点だけです。私は中学までしか給食はありませんでした。高校は、定時制には給食がありましたが、全日制にはありませんでした。私の知る限り、東京では都立私立を問わず、ほとんど同じであるはずです。まあ、それはまったくの余談なので措いて、「無理矢理食べさせられた」というのでない限り、学校の対応が批判されるいわれはないと考えます。もっとも、では自分は食べたいか、食べられるかというと、正直言ってちょっと無理かなと思いますけど。コオロギの形をしていないただのパウダーならどうということはないはずですが、素性を知ってしまうとね。これは理屈とか主義の問題ではなく、感情的な面で無理です。(日本全体が飢餓地獄に陥れば、話は変わるかもしれませんけど)そこがクリアできる人は食べればいいし、そのことになんの問題があるでしょうか。翻って、この件を批判している人の発言を見ると、生食と加熱調理、天然(野生)と飼育(養殖、栽培)をごっちゃにしている人ばかりです。いわく、ゴキブリを食べて死んだ人がいる、ナメクジを食べて死んだ人がいる、ミミズを食べて死んだ人がいる、と。そもそもナメクジやミミズとコオロギはまったく異なった動物ですから、それを同列に論じるのはいかがなものかと思いますが、世の中には生じゃ食えない、あるいは天然の生じゃ食えないけれど、養殖なら食えるものはいくらでもあります。だって、ナメクジとはカタツムリの仲間であり、カタツムリの仲間にはフランス料理の食材として知られるエスカルゴがあります。当然、エスカルゴだって野生のものを生食などしないのは言うまでもありません。そもそも、「貝」というくくりで考えれば、人類は多くの貝を、ごく一部はの例外をのぞき、ほとんどの場合は加熱調理して食べているじゃないですか。カキは生食しますけど、「生食用」と表示されているもの以外を生食するのは危険です。今日、スーパーや回転寿司のお寿司にサーモンは定番ですが、鮭鱒は天然では寄生虫がいるので生食できません。それを普通に生で食べているのは、あくまでも養殖だからです。そのほか、肉類一般をはじめ、生食はできない、しない、加熱調理が前提という食材は、この世に山ほどあります。鶏卵だって、生卵を食べるのはほぼ日本だけです。外国では、生卵を食べる習慣がないから、加熱調理される前提の衛生管理しかされていないので、生食は危険です。そういうところを無視して、食用として飼育されたコオロギのパウダーを加熱調理して食べることを、野生のゴキブリやナメクジを生食することを同列に論じるのは、為にする議論の典型と言うしかありません。
2023.03.01
コメント(0)
ウクライナ侵攻で“小麦争奪戦”「3月から供給停止」で大混乱 ロシアの戦略?ロシア軍によるウクライナ侵攻は食糧危機を招きかねない状況となっています。ロシアの攻撃で港が閉鎖されたため、大量の小麦が輸出できなくなっているからです。今後、懸念されるのは世界的な「小麦争奪戦」です。G7の外相は共同声明を採択。ウクライナ侵攻により、ロシアが世界的な食料危機を招いていると非難しています。小麦戦争による食料危機は、すでに世界中で起きています。エジプトではパンの価格が2倍以上に高騰。エジプトでは去年約600万トンの小麦を輸入。8割をロシアとウクライナに依存していました。ブラジルやインドなど他の国からの輸入に切り替えましたが、小麦の生産量、世界2位のインドが国内に安定供給するため、小麦の輸出禁止措置を取ったのです。小麦の輸出大国でもあるウクライナで一体、何が起きているのでしょうか。ウクライナ最大の港湾都市オデーサ。貿易港として栄えてきた町は、ロシア軍の侵攻によって封鎖される事態に陥っています。国連世界食糧計画「この港にある穀物は世界の4億人の食糧を支えています。しかし、港は戦争のために閉鎖されてしまいました。すぐに港を開いて貿易を再開しないと大惨事になります。世界の何百万人もの人が餓死することになります」ウクライナ農業省の次官「戦争が始まってからウクライナの小麦の9割が輸出されていない状況です。ウクライナ国内に限らず、国際的に食料不足の脅威を引き起こす戦略」ウクライナは世界有数の小麦の産地。輸出量は世界5位を誇ります。ところが、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってから貨物船での輸出が止まっています。本来であれば、小麦を積んだ貨物船はオデーサの港から黒海を経てトルコの海峡を通るルートを進みます。ところが、ロシア海軍が通行を妨害しているといいます。黒海にはロシア海軍が仕掛けた機雷が浮遊しているといいます。輸出できない小麦は、封鎖されたオデーサ港の倉庫に保管されています。その量は2000万トンにも及ぶといいます。オデーサに倉庫を持つ小麦輸出会社の社長「倉庫に関して最も大きな脅威はロシアのミサイルが直撃することです」すでに小麦畑では、ミサイルの被害が相次いでいます。そして、ロシア軍に占領された南部の地域では、小麦の強奪も起きているといいます。「南部にある倉庫からロシアが小麦を盗んだことは間違いないです。分かっているだけでも50万トンの小麦が盗まれました。」AP通信が、ある衛星写真を公開。中東シリアの港です。映っているのはロシアの貨物船。盗んだ小麦を積んでいるとみられます。CNNは港に止まっている船をロシアの貨物船「マトロス・ポジニッチ」と特定。この船は先月、クリミア半島の港で目撃されていました。シリアはロシアの友好国で、ソ連時代から密接な関係を築いています。---この影響は全世界に、従って日本にも確実に及びます。日本の小麦の自給率は13%しかありません。直接的には、日本の小麦輸入先は米国・カナダ・オーストラリアが99%以上を占め、ウクライナからの輸入は皆無に近いので、大きな影響はありません。しかし、ウクライナからの小麦輸出が止まり、それに伴って上記記事にあるようにインドも小麦輸出を禁じたことで、全世界の小麦価格が高騰しており、当然米国・カナダ・オーストラリアの小麦も価格は上がります。というか、もう上がっています。また、引用記事は小麦しか触れられていませんが、ウクライナはトウモロコシとジャガイモの生産量、輸出量も世界有数であり、そこにも致命的な影響が及ぶのは確実です。更に、高騰はこれら農産物そのものの価格に止まりません。これはウクライナでの戦争よりかなり以前からのことですが、世界的に輸送コンテナの不足と海上輸送運賃の高騰が問題となっています。もちろんこれは小麦に限らずすべての物流に影響を及ぼす話ですが。それでなくても、日本は食料の輸入において世界で「買い負け」していると言われています。選り好みしている余裕があるのかどうか元々経済失速中の日本にコロナ禍が拍車をかけ、GDPはマイナス成長と報じられています。貧しくなる日本で食料価格は上がる(もちろん、食料に限らずあらゆるものの価格が上がっている訳ですが)、泣きっ面に蜂とはこのことです。しかも、この状況はまだ始まりに過ぎません。ウクライナにおける小麦の収穫期は7~9月とのことです。昨年はウクライナの小麦は空前の大豊作であり、それを受けて輸出も過去最高の勢いだったそうです。それでも、まだ未出荷の小麦が倉庫に山積みされているのは、引用記事のとおりです。しかし、この状況では今年の小麦の収穫は絶望的です。従って、輸出どころか小麦の輸入国となる可能性が高いでしょう。仮にこの戦乱が次の種蒔き期までに収束しなければ、来年の小麦生産も絶望的となります。その影響は、ずっしりと重く、これからの日本に(もちろん全世界に、ですが、食料自給率の低い国ほど影響は大きい)のしかかってくるでしょう。私自身もこれまで農業と無縁の東京で暮らしてきた人間であり、農業についてあまり偉そうなことが言える立場でもありません。しかし、日本の低い食料自給率は、平時に世界各国で順調に食糧生産が行われ、順調にそれらが輸出入される限りは、効率的で安上がりかも知れません。でも、それは言ってみれば自転車操業を前提とした効率です。一つでも歯車が狂えば、たちどころに苦境に陥ることになります。考えてみれば、歴史にしても自然や気象にしても、歯車が狂わず長期間最適状態が維持し続けられるものではありません。今がまさに「歯車が狂った」ときなのではないでしょうか。
2022.05.20
コメント(2)
商社マンが明かす世界食料争奪戦の現場 日本がこのままでは「第二の敗戦」も「どこより高い金を出せば買えますよ、ただ買い負けているだけです」食品専門商社のA氏に話を伺う。以前、彼がこの国の食料問題に対する危機感を訴えた『憂国の商社マンが明かす「日本、買い負け」の現実 肉も魚も油も豆も中国に流れる』は思わぬ反響を呼んだ。筆者もそこまでとは思っていなかったのだが、現実に食肉や魚介類に次々と値上げ、不足のニュースが続いている。ただ一人の話だが、その一人の肌感は現に日本の危機を象徴している。多くの他国と「戦う」企業戦士も同様だろう。「それと船ですね。こちらは取り負け、日本に寄ってもらえない」その食料を運ぶコンテナ船もコンテナそのものも不足している。食料争奪戦が「戦争」だとしたら、いまはまさに「戦時下」だ。「値上げはさらに続くでしょう。いつ相場(食肉、穀物)が落ち着くかわからない」個別の値上げを見れば、魚介類でいえばウニ、イクラ、タラバガニ、ズワイガニ、数の子など、いずれも最高値かそれに近い値上がりを記録している。大手鮮魚専門店のスタッフいわく「あるだけマシ」とのことで、値段は高くても手に入れば御の字だという。「魚介は高くてよければ国内産でリカバリーできます。でも肉や穀物は厳しい」日本の食料自給率(カロリーベース)は本当に低い。コロナ前の2018年の農水省データでアメリカ132%、フランス125%、ドイツ86%、イギリス65%、イタリア60%に対して日本は37%。1980年代までは50%以上を維持してきたのに30年間ずっと低水準、30年間変わらない日本の平均賃金と同じ様相だ。(以下略)---記事の筆致には、いささかどうかと思うところもありますが、急激に経済拡大を遂げた中国が世界から食料を高価で買い付けるので、日本は「買い負け」している現実は否定しようがありません。「必要なところに必要十分な金を払います。シンプルなんです。欲しいのですから、うるさいことを言わずに欲しがるだけの金を積めばいい」という国と、とにかく安く買いたたこうとする割に過度の品質管理を要求する国では、売る側にとってどちらが上客かは明らかです。さて、やや旧聞に属するこの話を何故思い出したかというと、この記事を読んだからです。「正真正銘の熊本産なのに」ハマグリ大量返品…アサリ産地偽装で思わぬ余波大量の外国産輸入アサリの産地が「熊本県産」と偽装されていた問題で、旬を迎えた県産ハマグリの入札が中止になったり、大量の返品が出たりするなど思わぬ余波が出ている。地元漁協は「うちのハマグリは正真正銘の熊本産」。この時期は例年1kg当たり2千円ほどの高値で取引されるといい、漁業者からは落胆の声が上がっている。~アサリの偽装問題が表面化した1月下旬以降、県内外の7業者が「熊本産の商品が売れず、在庫を抱えている」などとして入札を辞退。今月6日には「店舗が取り扱ってくれない」と、3日前に出荷したハマグリ約1・9トンが返品され、漁場に戻すしかなかった。県によると、偽装問題に関連した返品は初めて。アサリと同じ貝類のため、産地偽装が持ち上がった熊本県産を敬遠する消費者が多くなったことが原因とみられる。(以下略)---産地偽装自体はとんでもない話であり、それに漁協が全く関与していなかったのかどうかは、いささか疑問の余地はあります。そのことも含めて、これが本当に「風評被害」なのか、単に「身から出た錆」なのかは議論の余地はありそうに思います。ただ、このような行為が行われた背景には、このような事情があるようです追跡取材3年 「“中国産”では売れない」 アサリ産地偽装の闇日本国内のアサリの漁獲量は1980年代以降、減少の一途をたどっている。国内の水揚げが減った分は外国からの輸入で補われている。現在は国内に流通する活アサリの実に9割近くが中国・韓国からの輸入品だ。山口県下関港。岸壁に並んだコンテナには・・・麻袋の中には中国から運ばれてきたアサリがびっしりと詰まっている。冬場はほぼ毎日、大量に陸揚げされる。ところが。東京・築地。様々な産地の海産物が一堂に集まるこの場所で…Q中国産とか輸入アサリって見たことある?「ほぼない」(築地の業者)「ゼロに等しい」(築地の業者)~「偽装しないとアサリが売れない。普通にやってるのはバカらしいんです。結局」(以下略)---つまり、国産のアサリなどもはや流通量の1割しかないのに、中国から輸入したアサリを「中国産」と表示すると売れない、というわけです。だから産地偽装というのは短絡的で非道なやり方ではありますが、国内産では全然需要を賄いきれないにもかかわらず、中国産と書いてあるだけでそっぽを向く消費者の動向が生み出した現象と言わざるを得ないでしょう。かの国は昔のかの国ならず、わが国は昔のわが国ならず。中国は貧しい発展途上国ではなく、日本は世界有数の先進国ではなくなっています。その力は完全に逆転しているのに、消費者の意識は30年前40年前と変わらないのでは、今に破綻するでしょう。そのうちに、中国は国内消費分のアサリの需要が伸びて、日本に輸出するより高く売れるから、日本に売るのはやめます、となってしまうかもしれません。そうなったら、アサリなど庶民の口には入らない高嶺の花になるでしょう。中国産というだけでそっぽを向く消費者の選択は、そう遠くない将来、「現実を知らない身の程知らずの選択」と化す可能性が高のではないか、という気がします。
2022.02.10
コメント(2)
岸田首相、麻生氏発言を陳謝=道産米めぐり、立民道連は抗議岸田文雄首相は自民党の麻生太郎副総裁が地球温暖化により北海道産米が「うまくなった」と発言したことに関し、「発言は適切ではなかった。申し訳ないと思う」と陳謝した。岸田氏は「お米は、関係者の皆さんが絶えず品種改良など大変な努力をされ、その積み重ねでおいしくなっていると認識している」と指摘。気候変動についても「災害や農産物にも影響を及ぼす地球規模の大変重要な課題だ」と語った。麻生氏は25日、札幌市などでの街頭演説で道産米について「昔は『やっかいどうまい』と言っていた。温暖化したおかげでうまくなった」などと発言。これに対し、立憲民主党北海道連は26日、文書で「農業関係者の長年にわたる努力を侮辱したもので、温暖化と結びつけるのは見当違いだ」と抗議した。---無思慮な発言を、それも北海道での応援演説でやったことが批判を浴びています。しかし、そもそも北海道で米作がなぜ可能なのでしょうか、そしてそれは温暖化と関係があるのでしょうか。函館の松前藩では江戸時代から米作が試みられていたようですが、北海道での本格的な米作は明治以降に始まり、作付面積の年度別推移をみると、昭和初期には、すでに作付面積は現在を上回る作付面積(ただし、現在のコメの作付面積は減反政策直前の1960年代よりかなり減っている)となっています。米作を地域別に見ると、多いのは道南と道央、特に旭川周辺の上川地方は北海道最大のコメどころです。網走近辺でも多少コメが作られますが、一方釧路、根室、宗谷などではほとんど米は作られません。そこで不思議なことに気が付きます。旭川の年平均気温は7.0度で釧路の年平均気温は6.7度。0.3度しか違いません。それなのに旭川は屈指の米作地帯で釧路は米が作られないのは何故か?答えは、「夏の暑さ」と「雪の量」です。旭川の8月の平均気温は21.2度、日最高気温の平均は26.8度です。一方釧路は18.2度と21.5度。日最高気温の平均に5度も違いがあります。さらに、8月の日照時間は旭川154.6時間対釧路117.6時間です。稲の成長期に低温で霧ばっかりの釧路で稲作は厳しいのです。もう一つは雪の量です。雪は実は天然の断熱材です。極寒の南極の氷床の下に、地底湖(氷底湖)があることはよく知られています。雪に覆われた土地は、ほとんど凍結しないのです。旭川は豪雪地帯ですが、釧路はあまり雪が降りません。そのため、旭川より釧路の方が地面の凍結が遅くまで残ります。ちなみに、冬の寒さ自体は釧路より旭川の方が厳しいです(1月の平均気温釧路-4.8度対旭川-7.0度)しかし、真冬の気温の差より、春になって地面の凍結がいつまで続くかの方が、コメ作りにははるかに重要なのです。冬がどんなに寒かろうが、種もみはその間は倉庫に保管しておけばいいのですから。この2つの条件によって、年平均気温では大差がないように見えるのに、旭川が米作地帯で釧路はコメが作られない、という差になります。旭川の気象統計平年値釧路の気象統計平年値さて、「温暖化」というと、一般的には「夏に酷暑になる」という印象があります。しかし、実際には温暖化によって気温が上がるのは夏ではなく冬です。旭川の過去の気象統計を見ると、統計開始最初の5年間(1889-1893年)の1月の平均気温は-11.1度、北海道の米作が急拡大した昭和最初の5年間(1927-1931年)の1月の平均気温は-10.0度、最近5年間(2017-2021年)は-7.1度と、128年前と比べて4度、90年前と比べても3度も暖かくなっています。一方8月の平均気温は1888-1892年平均20.0度、1927-1931年は21.6度、最近5年は21.0度、128年前に比べて1度しか上がっておらず、90年前と比べたら、今の方が若干ですが気温が低いのです。1931年の北海道は、翌1932年とともに、記録的な大凶作となっていますが、それでも1927-1931年の平均値としては、そういう数値になります。従って、前述の米の生育条件を考えると、地球温暖化が米作に及ぼす影響は、皆無とは言えないにしても極めて限定的です。実際、前述の記録的大凶作のうち、1932年1月の旭川は、それまでの観測史上でもっとも気温の高い暖冬だったのです(2月は平年並み)。しかし冬が暖冬でも、7・8月が低温で日照時間も少なかったため、前年以上の凶作になりました。だいたい、近年の都道府県別の単位面積当たりコメの収量を見ると、年によって多少変動はありますが、2018年を除いて北海道は全国平均以上であり、とりわけ中国四国九州のどの県より北海道の方が収量は多いのです。温暖化すればコメの収量が上がるものなら、中国四国九州の収量は確実に北海道を上回っていなければおかしいはずですが、そうはなっていません。北海道の米の単位面積当たり収量が急激に増加したのは戦後1940年代末から80年代はじめの時期で、平成以降はおおむね頭打ちです。しかし、その時代の旭川は、まだ温暖化はしていません。温暖化を「年平均気温」でとらえた場合、気温上昇が顕著になったのは、旭川の気象統計を見れば平成以降です。これはつまり、収量の向上が温暖化によるのではなく、品種改良や農業技術の発展(農薬や化学肥料の効果も含めて)による、ということです。なお、これは収量、作柄に関する話です。「ご飯の味」という話なら、尚更品種改良の結果に決まっているじゃないですか。内地と北海道では栽培されるコメの品種が違います。温暖化によって本州のコシヒカリなどが北海道でも栽培できるようになったわけではありません。北海道向けの稲の品種が改良された(「ゆめぴりか」とか「きらら397」とか)結果です。それらを本州で栽培しても、気候と日照の関係で上手く育たないのです。この点からも、「北海道の米が美味しくなった」ことと温暖化に大きな関連性がないことは明らかです。
2021.10.29
コメント(0)
「レトルトを温めたお湯でコーヒー」に驚き メーカーは「禁止」「他人の常識は自分にとっての非常識」ということは、人付き合いをしていればよくあることだ。12月19日のはてな匿名ダイアリーでは、「レトルト食品を温めたお湯」という投稿が寄せられた。投稿者は友達の家に行ってレトルトカレーを食べようとした際、レトルトカレーを温めたお湯でコーヒーを淹れた友達に驚かされたという。投稿者が「いま、このお湯でカレー温めてなかった?」と聞くと、友達は「そうだよ」とさも当然のように答えたそうだ。「そんなに普通に応えられちゃうと、俺が間違えてるみたいだから、それ以上は言わなかったよ」と追求は避けたが、違和感は消えなかったようだ。~ハウス食品はサイト上で、「レトルトパウチを温めた残り湯は、他の料理には使用しないでください。パウチの成分が溶け出るようなことはありませんが、残り湯を再利用することは想定していません」と忠告している。ちなみに投稿者はその後、友人の趣味が「キャンプだか登山だか」だったことを思い出し、「だからパックご飯やレトルトカレーがあったんだと思う。それで水を大事にする癖がついているなら、俺が野暮だったかもな」と振り返っていた。他人の行動を見てぎょっとすることは誰しもあるだろうが、一呼吸置いてその背景を考えると、違う常識を持つ人への理解も進みそうだ。--- 引用記事の例も、登山が好きな人のようですけど、わたしも同じです。山では、沸騰したお湯をアルファ米に投入してから、その残り湯(足りなければ多少注ぎ足す場合あり)でレトルトを暖めて、更にそのお湯を最後にインスタント味噌汁かスープを入れます。で、食べ終わったら残りのお湯は保温ポットに戻す。または、そこに保温ポットのお湯を全部注ぎ足して、再沸騰させてからポットに戻すこともあります。そうすると、次に保温ポットのお湯を使うときに、より熱いお湯が使えるからです。限られたガス缶で暖めたお湯は貴重ですから、どうしたら一度沸かしたお湯を最大限に有効活用できるかって考えますよ。レトルトを暖めたお湯だって、熱湯消毒済(笑)だから、問題ないし。捨てる水も最小限にするために、というか、そもそも山では通常、水場はあっても「洗い場」なんてないし、洗剤も使えないから、使用済の食器はティッシュかペーパータオルで拭くだけです。拭いたティッシュペーパーはもちろん持ち帰り。わたしは軟弱登山者なので、連続テン泊は最大で3泊までしか経験がなく(それも1回くらいで、ほとんどは1泊か2泊)、それで問題が生じたことはありません。もちろん、帰宅後はちゃんと洗剤で洗いますよ。食べ残しを捨てるなんてもってのほかなので、インスタントラーメン(テン泊時はサッポロ一番を朝食にすることが多いです)は水を減らして粉末スープも減らすことが多いです。汁を飲み残すことがないようにするためです(鍋が小さい、ということもありますけど)。ただし、時々山でパスタを茹でることがありますが(湯で時間が極力短い麺と、具はレトルトです)、山でもスパゲティを茹でた残り湯は再利用せず捨てます、さすがに(笑)もっとも、山では感じないけど、家では、レトルトを温めたお湯を再利用するとアルミの香りがすることがあります。だから、家ではやりません。ましてや、来客にレトルトの残り湯を使ったコーヒーやお茶を出すのはさすがにちょっと・・・・・・。それにしても、何故山ではレトルトの残り湯を使ってもアルミのにおいを感じないのかなあ。いや、そうとも限らないか。かなり昔ですけど、職場の先輩と一緒にテン泊とき、生ビールを飲んだのですよ。「美味しいね、もう1杯ほしいねえ」「でも高いね」(その山の生ビールは1杯800円くらでした)で、缶ビールを買ってきて、生ビールを飲み干したジョッキに入れて飲んだのでした。すげーアルミ臭かった。普段そんなふうに感じることはないのですが、ジョッキの生ビールの直後に缶ビールを飲むと、こんなにアルミ臭いのか、と思ってしまいました。もっとも、この話を、高校同期のある山仲間(某飲料メーカー勤務)にしたら、「それは管理が悪くて古くなった缶ビールだよ、普通はそんなことにならない」と言われました。そうなのか。「レトルトパウチを温めた残り湯は、他の料理には使用しないでください。」とハウス食品が告知しているとは知りませんでしたが、これまでそんなことは気にしたこともありませんでしたが、これからも多分気にしないでしょう(笑)。
2018.12.23
コメント(2)
豊洲市場 地下水に微量のヒ素・六価クロム 環境基準下回る豊洲市場の土壌の汚染対策をめぐる問題で、東京都は、盛り土が行われていなかった市場の建物の地下にたまった水について調査した結果を発表しました。検査項目とした7種類の有害物質のうち、ベンゼンやシアンなど5種類は検出されなかった一方で、環境基準を下回る微量のヒ素と六価クロムが含まれていたことがわかりました。豊洲市場の土壌汚染対策をめぐっては、東京都が専門家の提言に反して建物の地下には盛り土をしていなかったことが明らかになり、主要な建物の地下に設けられた空洞には水がたまっています。東京都は今月13日に水を採取し、豊洲市場で過去に検出された有害物質を検査項目として成分を調べた結果を17日、発表しました。それによりますと、検査項目とした7種類の有害物質のうち、ベンゼンやシアン化合物、鉛、水銀、それにカドミウムの5種類は検出されませんでした。一方で、環境基準を下回り、基準の1割から3割程度の微量のヒ素と六価クロムが含まれていたことがわかりました。この結果について、都の担当者は「結果については問題ないと考えている。ただ、今後開かれる専門家会議で指摘などを受ければ、追加の調査を検討する」と話しています。(以下略)---豊洲という土地柄自体は、高級マンションの林立し、多くの人が住んでいる場所であり、「豊洲が」危険というわけではないことに注意が必要です。多くのマンションや商業施設が林立している地域と、新市場は少し離れた場所です。地図で確認する限り、豊洲新市場は「ゆりかもめ」で豊洲駅から2駅、1km以上離れています。この場所は、元々東京ガスの工場跡地だったとのことで(そういえば、入ったことはないけれど、近くにガスの科学館という施設もある)、その当時の汚染物質が土壌中に残っていることが問題となっているわけです。私は、先の都知事選では小池知事には票を投じなかったし、彼女の政治的立ち位置にも賛同はしかねますが、これまで、いわば既成事実化でなあなあに進行してきた、豊洲新市場をめぐる深刻な問題を大きくクローズアップさせた功績は、認めざるを得ないだろうと思います。引用記事によると、地下に溜まっていた水に含まれる有害物質は環境基準を下回るとか。しかし、だから問題ない、とはいえないように私は思います。そもそも、それがどういう水であるにしても、オープン前の新築の時点で地下に水が溜まっている建物ってどうなの?と思います。まともな状態ではないでしょう。たとえば新築のマンションを買うとして、「地下室には水が溜まっています、でも危険な水ではありません、居室も上階だから問題ないでしょう」と言われて、買う気になるでしょうか。そして、その水には微量ながら有害物質が含まれている。「有害だが微量(環境基準以下)」と見るか、「微量だが有害」と見るかは見解が分かれるかもしれません。しかしそもそも、最初から汚染された水が流入してきた可能性はどう考えても低く、土壌が汚染されているために、そこに流れ込んできた水が汚染されたと考えるほうが自然です。とすると、汚染源である地下の土壌汚染はどの程度か、ということも懸念されます。それに、ことは食に関わる問題です。人々の口に入るものについては、それ以外のものよりも多くの人が敏感になるものです。このコップには便を入れました。捨てて、洗剤でよく洗いました、もう清潔ですから飲み物をいれました、さあ飲んでください、と言われても、もう平常心では飲めない人が多いでしょう。緊急時、飢餓の時代なら別ですが、平時にお金を払ってそんなものを飲みたい人は、そう多くはありません。正直なところを言うと、私自身は、そういうのに対してどちらかというと無頓着なほう(原発には反対ですが、ごくわずかの放射能を極度には気にしません)なのですが、それもあくまでも程度問題だし、選択肢があるなら、わざわざ積極的に汚染されている(かも知れない)方は選びません。他にどうしても場所がないならともかく、豊洲の東京ガス工場跡でなければならない必然性もよく分かりません。(もちろん、今となっては「もう建設してしまった」という既成事実が最大の必然性なのでしょうが)いずれにしても、食に関わる問題で、「口に入れて大丈夫かなあ」という印象を与えてしまったことは、商業施設としてはもはや致命的と考えざるを得ません。ここまでに投じられてきた費用をどうするのか、という問題はありますが、もはや移転は凍結するしかないのかも知れません。
2016.09.17
コメント(3)
ペヤング虫混入騒動、なぜ過熱? 過剰反応との指摘もペヤングからゴキブリ出てきた――。発端は都内の男性が2日、ツイッターに投稿したこんな言葉と1枚の画像だった。誰もが知る人気商品。画像は一気に拡散、ヒートアップした。まるか食品の即席麺「ペヤング ハーフ&ハーフ激辛やきそば」の麺にめり込むゴキブリの写真。ネット上では驚きと画像を疑問視する声が入り乱れて広がった。男性から連絡を受けた同社は3日、男性に会って商品を回収し、画像の削除も依頼した。「原因は不確かで、インターネットの影響力を考えてお願いした」(広報担当)。このやりとりがツイッターで明かされると、今度は同社の隠蔽だとする批判が相次いだ。伊勢崎保健福祉事務所は3日、本社工場に食品衛生法に基づく立ち入り調査を実施。県は行政処分にあたる回収命令も出せる立場だが、今回は、健康被害が確認されていない▽混入が頻発していない▽製造過程で混入したか不明確――などの理由で、衛生管理面などの社内調査とその結果報告を求めるだけにとどめた。これは、昨年12月に同県のアクリフーズ(現マルハニチロ)の冷凍食品から農薬が検出され、刑事事件に発展した時とほぼ同様の対応といい、県の担当者は「虫などの異物混入事案としては通常の対応だ」という。まるか食品は4日、「製造過程での混入は考えられない」とする一方、混入が指摘された商品など2商品計約4万6千個の自主回収を決定。さらに11日、社内調査の結果、「混入の可能性は否定できない」としてペヤング全24商品の製造・販売を休止し、残りの22商品も返品・返金に応じると発表した。東大大学院の橋元良明教授(コミュニケーション論)は「オーバーリアクションだ」と指摘する。多くの消費者が知る人気商品に加え、画像のインパクトもあって、ネット上で騒ぎを大きくしたとみる。---この騒動、ひとことで言って、過剰反応としか私には思えません。ゴキブリを嫌う人も多い(私の相棒もゴキブリを極端に嫌います)けれど、冷静に考えれば、食品を扱う場所でゴキブリがいない、なんてことはあり得るはずがありません。みんな気がつかないだけで、食べ物のあるところ、ゴキブリは必ず集まってきます。一般家庭でも、食器棚の食器の上とか、冷蔵庫に入れていない野菜や果物の上とか、歩いているはずですよ。しかも、問題のゴキブリの死骸は加熱の跡があるそうで、つまり製造工程のどこで混入したか知らないけれど、その跡で加熱消毒済みですから、衛生面で問題はまったくありません。私も、ゴキブリを自分の口に入れたいとは思わないですけどね、ただ、虫の混入をそんなに嫌がっていたら、山なんか登れませんよ。山でお湯なんか沸かしていれば、鍋に虫が飛び込んでくるなんて、良くあることです。そういうのは、箸でつまみ出せば問題ないでしょう。まさしく熱湯消毒済なんだから。食べ物に虫が混入していたからといって、それで人が死ぬことはないし、健康被害が発生することも、特殊な例外を除けば、まずありません。そういう意味では、「保健所が回収命令も出せる立場だが、今回は、健康被害が確認されていない▽混入が頻発していない▽製造過程で混入したか不明確、などの理由で、衛生管理面などの社内調査とその結果報告を求めるだけにとどめた。」というのは、まず妥当な判断だったんじゃないでしょうか。虫の混入を絶対に防ぐにはどうすればいいんでしょうか?製造工場を文字どおり、水も漏らさぬ完全密閉する、ということがまず考えられます。ある程度のレベルまでは、大規模工場なら密閉化による衛生管理はしているでしょうが、完璧なんてことは不可能でしょう。(そういう意味では、この手の大手食品会社の製造ラインより、一般家庭や食堂の厨房などのほうが、よほど虫が混入する余地は大きいでしょう)それ以外は、たとえば農薬を撒き散らす、とかでしょうかね。食品の製造過程で農薬を撒き散らして、それが食品に混入するほうが、虫が混入するよりよほど健康被害が生じる可能性が高いでしょう。
2014.12.25
コメント(4)
業界「おいしい名前認めて」 サーモントラウト→ニジマスの指針案見直しへ外食メニューの表示偽装問題を受け、消費者庁がまとめた外食メニュー表示のガイドライン(指針)案で、反発を招いた「サーモントラウト」の表示。「ニジマス」と表示するよう求めていたものだが、反発の大きさに同庁は指針案を見直す方針という。すしネタの「サーモン」は生で食べられるサーモントラウトによって定着した。業界関係者は食品の特性を踏まえたルールを考えてほしいと訴えている。◆養殖だから生食可ニジマスはサーモントラウトの標準和名。指針案ではサーモントラウトをサーモンと表記した場合、「標準和名はニジマスなのにサケと認識され、問題」としている。食の安全・安心財団の中村啓一事務局長は「トビウオは標準和名がトビウオだが、九州や日本海側ではアゴと呼ばれるように、市場に流通する名前と標準和名が異なる魚は多い。食材としての名前と標準和名が異なることが必ずしも消費者を偽っていることにはならない」と指摘する。サーモントラウトはニジマスを海面養殖(沿岸の海水を使った養殖)で大きくしたもので、ニジマスであることは間違いない。ただ、淡水魚のニジマスは寄生虫の心配から生で食べる習慣は一般的でなく、同様に天然のサケも刺し身で食べる場合は凍らせたルイベにする。すしネタの「サーモンにぎり」は、養殖のサーモントラウトが日本で安定的に供給されるようになったことで定着したメニューともいえる。「サーモンにぎりとしてサケ科の魚を生で食べることができるのは、寄生虫の心配がない養殖のサーモントラウトならでは。多くの人が淡水魚と認識する『ニジマス』の呼び名ではすしネタで食べたいと思う人はいなくなるのでは」(中村事務局長)◆アブラガニは減少標準和名の表示しか認められなくなったことでスーパーなどで販売が減ったものにアブラガニがある。タラバガニと外見が似ているアブラガニは、かつて「タラバガニ」「アブラタラバ」の名前で、タラバガニより2割程度安い値段で販売され、「安くておいしい」と人気があった。しかし平成16年、アブラガニをタラバガニの名前で売ることが景品表示法違反(優良誤認)となり、これをきっかけに標準和名のアブラガニの名前でしか売れなくなった。スーパー関係者は「タラバもアブラも味はそれほど変わらない。でも、アブラガニの名前では聞こえが悪いので売りにくくなった」と打ち明ける。消費者からすれば、安くておいしい食材を買う機会が減ってしまった。(以下略)ーーーなかなか微妙な問題ですが、根本的に、鮭と鱒は生物学的には違いが定義できない、ということなのです。日本で古来から親しまれていた鮭の仲間は、サケ(シロザケ)とサクラマスの2種です。で、もともとの日本語で、サケとはシロザケであり、マスとはサクラマスだったわけです。実はサクラマスの陸封型(一生を淡水の河川で過ごす個体群)はヤマメですが、サクラマスとヤマメが同一種とは、おそらく昔の人は認識していなかったでしょう。日本(北海道を除く)に分布する鮭の仲間には、もう一種イワナがいます。しかし、これもおそらく昔の人はサケ(あるいはマス)の仲間とは思わなかったのでしょう。実際、そうは見えないですから。一方、英語では鮭の仲間は「サーモン」と「トラウト」です。一般にはサーモンはサケ、トラウトはマスと訳されますが、実際にはサーモンはタイセイヨウサケのことであり、トラウトはヨーロッパに自然分布しているブラウントラウトのことだったのです。ところが、日本もヨーロッパも、これら「昔から知っている魚」の同類が世界中にいることを知ると(日本の場合は、世界の前にまず北海道に、色々な鮭の仲間がいた)、それぞれが各地の鮭鱒の仲間に、サケだマスだ、サーモンだトラウトだと、それぞれの言語で勝手に名前を付け始めたわけですが、それは生物学的な分類に基づいていたわけではありません。だから、サクラマス、カラフトマス、マスノスケなどは、日本語ではマスですが、英語ではサーモンです。一方日本語でも、例えば「ベニザケ」の陸封型は「ヒメマス」と呼ばれる(北海道の河川にはヒメマスがわずかに分布する)。同じ種類の魚が鮭になったり鱒になったりするわけです。分類学的にはサケ(シロザケ)もサクラマスもニジマスもサケ属であり、一方ヨーロッパのタイセイヨウサケやブラウントラウトはタイセイヨウサケ属です。だから、サケとマス、サーモンとトラウトの名前の区別は、生物学的な分類とはあまり関係がないのです。味や見た目も、同様です。前述のとおり、サクラマスとヤマメは同じ種類ですが、とてもそうは見えません。ベニザケとヒメマスも同様です。むしろ、生物学的に同一種だからと、サクラマスをヤマメと称したら(あるいはその逆も同様)、その方が問題でしょう。「紅鮭です」と言われて、どんなにでかくて赤く染まった鮭が出てくるかと思いきや、全長30センチのヒメマスを出されたら、ちょっとね。つまり、鮭鱒の仲間は、種類による差より、降海性か陸封性かという違いの方がはるかに重要なわけです。それは、言い換えればエサの種類と量の違いです。海と川ではエサとなる生物が異なるし、量もかなり違います。海の方がエサが豊富なので、海に出たサケの仲間は大きく育つし、えさの種類の関係で身がピンク色になるけれど、同じ種類でも陸封型は狭い河川で乏しいエサで生きるので、大きさも小さいし身は白っぽい場合が多い。ニジマスは天然状態では陸封魚ですが、他の鮭鱒の仲間と近縁なので、海に下っても生きていける。そこを利用して海で養殖すれば、天然のニジマスよりずっと大きく育ち、身もピンク色になり、元の淡水魚のニジマスとはかなり違った魚に成長するわけです。これを鮭と呼ぶのは、まあ差し支えないと私は思います。鮭缶だって、実際にはカラフトマスが使われていますが、鱒缶とは言わないですしね。(前述のとおり、カラフトマスは日本語ではマスだが、英語ではサーモン)こういう、名称と生物学的な分類の不整合は、例えばワシとタカ、フクロウとミミズク、チョウとガ、植物ではカシとナラなどなど、よくあることです。そこに商品価値が関わると、話が厄介になるわけです。なお、引用記事にあるタラバガニとアブラガニは話が全く違います。この2種は、互いにごく近縁ではあるけれど、別種です。複数の種類の総称でもなく、生物学的な分類と名称に不整合はない。そして、一般的にタラバガニの方がアブラガニより美味と言われ(どの程度の差か、感じ方は人それぞれでしょうが)本来の市価もアブラガニの方が安いのに、それを「タラバガニ」と偽って、タラバガニの値段で販売する業者があり、「買ってみたら美味しくなかった」という事件が多発して問題になったことから、アブラガニをタラバガニと称して販売することは禁じられています。
2014.02.24
コメント(0)
韓国が福島など8県の水産物輸入を全面禁止、日本側は「科学的根拠なし」―韓国メディア2013年9月6日、韓国メディアによると、韓国政府は同日、東京電力福島第1原発の汚染水漏れ事故を受け、福島県など8県からの水産物輸入を全面禁止すると決定した。中国日報などが伝えた。対象となるのは、福島県のほか、茨城、群馬、宮城、岩手、栃木、千葉、青森県。韓国はこれまで8県の水産物50種類の輸入を禁じていたが、汚染水漏れ事故を受けて全面禁止に拡大した。これに対し、日本メディアの報道にょると、日本の菅義偉官房長官は同日、「わが国は水産物を含む食品について厳格な安全管理を行っている。韓国政府に科学的根拠に基づいて対応してほしいと求めていく」と語った。さらに、汚染水の影響について「福島第1原発の港湾内であっても、基準値を大幅に下回っている。まったく影響はない」と説明した。---水産物輸入禁止対象の8県に海のない群馬県と栃木県が含まれているのはいささか意味不明ですが、福島周辺の魚介類を輸入禁止というのは、現状ではやむを得ないだろうと思います。「そんなことはするな」などと要求できるほど、福島産の海産物が安全とは思えないので。汚染水の問題については、8月20日に「24兆ベクレル」という記事を書いた後は、続報については書いていませんが、そのとき検出された放射線量100ミリシーベルトは、その後2200ミリシーベルト(2.2シーベルト)まだ増えているのは周知のことです。ちなみに、2シーベルトの被曝では5%が死亡、4シーベルトで半数死亡、6シーベルトだとほぼ全員死亡ですから、この放射線量を3時間浴び続けたら、全員死ぬことになるわけです。ただし、検出されている放射線はベータ線であると報じられています。ベータ線は透過力が弱いので、アルミ箔程度でも防護が可能だといわれます。その意味では、外部被曝の危険性は比較的小さい。しかし、体の中に取り込んでしまった場合は、遮るものなど何もなく直接人体の内側から放射線を浴びせる(内部被曝)わけですから、危険性は充分にあります。で、そのベータ線を出す汚染水が24兆ベクレルも漏出しており、かつその漏出は今も止まっていません。で、上記の記事を書いた際に引用した報道によると、東電は「現時点で海への流出はない」としている。とのことでしたが、その翌日には早くも、東電は前言を翻し「海に流出した可能性がある」と発表しています。福島第1原発:汚染水「海に流出の可能性」…東電発表菅官房長官は「わが国は水産物を含む食品について厳格な安全管理を行っている。」と言っているようですが、これだむ短期間のうちに言うことが一変するようでは、どこまで厳格な安全管理かは、いささか疑問の余地があるように、私には思えます。実際には、以下のような指摘もあります。特集ワイド:福島第1原発の汚染水漏れ 食卓の魚は大丈夫か◇放射性物質は減少傾向/サンマ、心配なし/じゃこ、海藻がお勧め(前略)福島県沖では、昨年6月から比較的汚染が少ないとされる県北部の相馬双葉漁協が試験操業を開始。対象を16魚種に拡大し、海域も双葉町沖から広野町沖にまで広げた。取れた魚介類は放射性物質検査で検出限界値未満であることを確認したうえで、13府県の市場に出荷していた。福島県では週1回、水産物のモニタリング結果を公表している。セシウム134と同137の合計、ヨウ素131についてコウナゴなど全部を食べる魚はそのまま、ヒラメなどは筋肉部分をゲルマニウム半導体分析器で測定。8月28日に公表された分では海産物55種158検体、川や湖の魚5種9検体、内水面の養殖魚5種7検体を調べ、国の基準値1キロ当たり100ベクレルを超えたのはコモンカスベ(エイ)のセシウムだけだった。今年6月以降、汚染水問題は深刻化の一途をたどってきた。「後出しじゃんけん」のように相次ぐ東電の発表に不信感を強めるのは、魚を食べる消費者も同じだ。福島沿岸で2011年夏から調査を継続中の東京海洋大の神田穣太(じょうた)教授は「汚染水漏れのニュースが出始めてから特に魚の汚染が悪化したわけではないと捉えています」と語る。しかし、だから安心という話ではない。「今、急に漏れたのではなく、海中の放射性物質のデータを見れば、原発事故当初から流出は続いていた。どの研究者も同じ見解を持っていました」(以下略)---「海への汚染水流出の可能性」を東電が認めるよりはるか以前より、汚染水が海に流れ込んでいたのはほぼ確実なようです。それに、魚の放射線測定は、この記事によれば「セシウム134と同137の合計、ヨウ素131についてコウナゴなど全部を食べる魚はそのまま、ヒラメなどは筋肉部分をゲルマニウム半導体分析器で測定。」とのことです。つまり、ベータ線を主体とするストロンチウム90は測定していないわけです。そもそもベータ線の正確な測定は難しく、一般的な測定器ではガンマ線しか測定できないものも多いので、やむを得ない面はあるのですが、いずれにしても、今回の汚染水問題で問題になっているベータ線に関しては、ほとんど調べられていないように見受けられます。結局、菅官房長官のいう「厳格な安全管理」は、実際には穴だらけと言うしかありません。したがって、外国が福島産の水産物の輸入に慎重になるのは当然の話で、それを批判できるような筋合いのものでもないと私は思います。ただ、さすがに現実には福島沖では現在漁は行われておらず、福島産の水産物が市場に流通することも、国外に輸出されることも、実際にはないようですけど。
2013.09.07
コメント(4)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110224-00000012-maiall-bus_all<輸入小麦>4月売り渡し、18%値上げ 不作、新興国需要増受け農林水産省は23日、民間の製粉会社に売り渡す輸入小麦の価格を4月から主要5銘柄平均で18%引き上げ、1トン当たり5万6710円とすると発表した。同省は毎年4、10月に価格を改定しているが、値上げは昨年10月に続き2期連続で、上げ幅が2桁に達するのは08年10月以来2年半ぶり。生産国の不作や新興国の需要拡大、農産物市場への投機資金流入などで国際相場が高騰しているためで、パンやめん類などの製品価格に転嫁されれば、食卓にも大きな影響が出そうだ。日本が消費量(09年で約626万トン)の85%を輸入に頼る小麦は、大半が政府を通じて輸入されている。農水省は売り渡し価格を改定時期の2カ月前までの6カ月間の輸入価格を基に算定しているため、その時期の国際価格が反映される。シカゴ市場での小麦の先物価格は、08年2月に1ブッシェル(27・2キロ)あたり12・8ドルの史上最高値をつけた後は値下がりに転じ、10年半ばまでは4~5ドル台の落ち着いた相場が続いた。しかし、同年8月に干ばつで不作となったロシアが穀物輸出を停止したことなどをきっかけに再び上昇基調に転じ、豪州での洪水や中国の干ばつも加わり今月初めには8ドル台にまで上昇した。(以下略)---------3年ほど前にも食料価格が猛烈に上昇しことがありました。その当時、日本は幻想のようにはかない「好景気」の時代でしたが、その後世界同時不況によって食料価格も大幅に下落しました。しかし昨年から再び食糧の高騰が始まっています。3年前と違って、日本は(先進国の多くも同様)不景気のただ中にあるのですが、食料価格はどんどん上がり、とうとう3年前の水準を超えてしまいました。http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20110204-OYT8T00322.htm食糧農業機関(FAO)が3日発表した1月の世界の食料価格指数は230・7となり、比較可能な1990年以来、過去最高となった。新興国の需要の増加などにより、指数を構成する砂糖、穀物、乳製品などの価格が上昇したためだ。指数の上昇は7か月連続。---------食糧高騰の原因は、異常気象による生産の低迷、それにも関わらず食糧の需要が世界的に増大していること、投機マネーの流入、食糧の一部がバイオエタノールに流れていることなどの原因によるようです。前回は好景気下の食糧高騰でしたが、現在は不景気下であるため、前回よりなお一層影響が大きいように思います。資源にしろ食糧にしろ、生産には限界があります。好景気下での高騰ならともかく、不景気下でも高騰しているということは、食料価格が下落する材料は見あたらない、ということになります。それどころか、地球の気候は、地球温暖化の影響もあって、不安定さを増しているように思いますから、ますます異常気象による不作のリスクは増大しているのではないでしょうか。金さえあれば外国からいくらでも食糧が買える、という時代がいつまでも続くとは思えません。それにも関わらず、菅政権は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加を検討と言っています。TPPに参加して、農産物に一切の関税がかからなくなると、日本の農業はどうなるのか。農水省の試算では、現在約40%の食糧自給率(カロリーベース)が14%にまで下がるといいます。今だって日本の農業は危機的ですが、自給率14%なんてことになったら、危機的を通り越して壊滅です。金さえあれば外国からいくらでも食糧が買える時代が、今後も長く続くならそれでも良いのかも知れませんが、どう考えたって危険すぎると私は思うのです。
2011.02.24
コメント(2)
宮崎県で家畜の口蹄疫が大流行して問題となっていますが、そもそも口蹄疫とはどんな病気かと思って調べてみました。以下wwikipediaより一般的には、感染すると発熱、元気消失、多量のよだれなどが見られ、舌や口中、蹄(ひづめ)の付け根などの皮膚の軟らかい部位に水疱が形成され、それが破裂して傷口になる。但し、水疱が形成されないケースも報告されている。「口蹄疫」という病名はこれに由来する。水疱が破裂した際の傷の痛み(細菌によるその後の二次感染も含む)で摂食や歩行が阻害され、体力を消耗する。幼畜の場合、致死率が50パーセントに達する場合もあるが、成畜では数パーセントである。しかし、上の症状に伴い乳収量や産肉量が減少するため、畜産業に対しては大きな打撃となる。-------------致死率数パーセント、ですか・・・・・・。そして、基本的には人間は感染しないそうです。まれに、畜産関係者や獣医などが感染することはあるものの、重症化例や死亡例は知られていないそうですし、人から人への感染もありません。それでも感染した家畜は殺処分というのは、現状の法制度の元では仕方のないことです。法律でそう決まっていますし、そもそも口蹄疫に感染した家畜は食肉にできない、つまり商品になりません。それに、日本国内だけの話では済まず、口蹄疫が発生した国の畜産品は輸出も出来なくなります。それを考えれば、口蹄疫→殺処分というのは、やむを得ないことではあります。でも、やっぱりどこか釈然としないのです。どうも、何かが違う気がしてしまう。致死率が高いとか、人間も感染する可能性が高い、重症化する可能性があるというような病気の場合(鳥インフルエンザとか)は、感染した家畜のみならず、感染した「かもしれない」家畜も全部殺処分というのは納得できるのですが。もちろん、世界的にそういうことになっている以上は、日本だけが「口蹄疫は殺処分しない」と決めてもどうしようもないことではありますが。
2010.05.18
コメント(3)
http://mainichi.jp/select/opinion/ushioda/news/20100505ddm003070069000c.html水説:グリーン化進める米軍=潮田道夫米統合軍が3月に出した2010年環境報告は驚くべき率直さで「ピークオイル」の到来を語っている。それによれば、2年以内に石油の需要が供給能力を上回り(つまり、それが「ピークオイル」である)2015年には最大で日量1000万バレルの深刻な石油不足がおきるおそれがある。世界各国とも成長が鈍化せざるをえないが、とりわけ中国とインドへの影響が深刻だろう。マティス司令官は「これは米国政府の公式見解ではないし、性格上どうしても推測がまじっている」と断っているが、しかし、米軍はこのピークオイル・シナリオに基づいて、再編されていくことになるとしている。「へー」と言うほかない。米エネルギー省はピークオイルは20年ぐらい先だと示唆していたと思うし、国際エネルギー機関も似たような見通しだったと思う。それに比べて、米軍の切迫感がはるかに強いことに驚く。そうした折、先月22日の地球の日(アースデー)にあわせて、米海軍が主力戦闘機スーパーホーネットをバイオ燃料50%混合で飛ばすデモ飛行を実施した。日本航空だって昨年、ジャンボ機をバイオ燃料で飛ばしているから、戦闘機がバイオで飛んでもそう驚かない。ただ、「米軍のグリーン化」は想像以上に進んでいて、彼らが「本気」だということが分かる。ピュー慈善基金の調査によれば、米陸軍は今後3年で4000台の電気自動車を装備する。米空軍は2025年までに使用エネルギーの25%を再生可能エネルギーに切り替える。そして、2016年までに航空機燃料の半分をバイオ混合燃料にするそうである。今回のスーパーホーネットの燃料同様に、食糧生産と競合しないカメリナというアブラナ科の植物からとる油が主力となるとみられる。米海軍は原子力船、バイオ燃料によるハイブリッドモーター船、バイオ燃料だけで飛ぶ航空機による「石油ゼロ」の攻撃グループを2016年までに編成するという。米軍というのはものすごい燃料多消費集団で、石油価格が1ドル上昇すると120億円も経費が上昇するそうだ。ピークオイルによる価格上昇を想定すれば再生可能エネルギーへの切り替えは急務だ。国防総省のドーリー次官補代理は英ガーディアン紙に、「軍隊というのは100%確実になるまで待つわけにいかない。不確実性への対処はお手のものだし」と言っている。さすが、世界最強の軍隊だね。今回はつべこべ言わずに感心しておく。---------------戦争とは壮大なエネルギーの浪費であり、また近代軍隊は石油がなければただの鉄のかたまりにしか過ぎなくなります。一方、ピークオイル論には、色々な意見がありますが、ただ一つ確実なのは、石油は有限だ、ということです。記事にあるように、2年以内に石油の供給が不足するようになるかどうかは分かりませんが、仮にそれが20年後のことだとしても、多分私が生きている間の出来事になりそうです。しかし、戦闘機をバイオ燃料で飛ばすとは、戦時中の日本の松根油のような話です。あれだって立派に「代替燃料」ですが、現実には飛行機の燃料にはとても使えないような代物だったようです。他にも、人造石油というものがありました。これは石炭から石油を作り出す技術で、戦前のドイツでは実用化されていましたが、日本では実用化できませんでした。しかし、そうまでして油を浪費して、兵器を動かすなら、戦争なんか止めて兵器を減らす(軍縮する)方が、よほど理にかなっているように私は思うんですけどね。
2010.05.11
コメント(0)
最近はあまり耳にしなくなりましたけれど、今回の不況が始まった当初、失業者を農業へ、というような意見をよく耳にしました。なるほど、そうできたらいいなあと私も思います。でも、現状の社会構造と経済原理の中では、それは不可能です。なぜ日本の農業が衰退したか、理由はいろいろあるでしょうが、根本的には「食えないから」です。どのくらい食えないかというと、以下の統計がわかりやすいと思います。農林水産統計 平成17年販売農家の経営収支これによると、2005年、販売農家の農業収入は124万円です。(粗収入398万円に対して経費が274万円)年収124万円では、生活はかなり厳しいですね。ちなみに、「販売農家」とは、耕地面積が10アール以上、または年間農産物販売金額が15万円以上の農家を指します。それ以下の規模の農家を計算に入れたら、農業収入はさらに低いものになるはずです。さて、その販売農家の中でも、主業農家(農業収入が世帯収入の半分以上、かつ65歳未満の農業従事者がいる)の農業収入は414万円ですが、準主業農家(農業収入は収入の半分以下だが65歳未満の農業従事者がいる)は63万円、副業的農家30万円。まさに「副業」にしかなりません。では、具体的に各農家がどのくらいの数かというと、農家の総数は252万戸(2008年)、そのうち販売農家は175万戸(2009年)、主業農家は35万戸(2009年)、つまり主業農家は販売農家の2割を占めるに過ぎません。全販売農家の平均耕地面積は、200アール以下のようです。そこですべて米を生産するとすると、収量は10アールあたり銘柄米で6~7俵、普通米で10俵くらいの収量があるそうです。200アールだと120~140俵(銘柄米)から200俵(普通米)という計算になります。生産者米価は銘柄米だと1俵あたり1万5千円くらいのようですから、それを140俵出荷したとすると210万円になります。年収210万、いや違います。これは「売り上げ」であって、そこから諸経費を引かなければならないわけです。他の職を持っていなければ、とても農業だけで食っていくことなどできはしないということが分かると思います。農業を巡る、こういった状況を改善できなければ、失業者を農業になんてあり得ないというしかないでしょう。(私には、農業の経験は皆無ですし、農村の出身でもありませんので念のため)
2010.02.17
コメント(0)
http://www.asahi.com/special/071031/TKY200810240301.htmlカップめんから防虫成分検出22件 「移り香」可能性も神奈川県内でカップめんから防虫剤成分が検出された問題で、これ以外にも24日までに全国で販売された複数のカップめんから防虫剤成分が検出されていたことがわかった。重大な被害報告は出ていない。メーカーの日清食品は、防虫剤のそばで保存すると成分が移るという実験結果もあると説明している。 (以下略)------------------------私はサンポーニャとケーナという笛を吹いていますが、サンポーニャはよく虫が湧く楽器です(ケーナはそんなことはないですが)。底の塞がった肉厚の薄い葦の奥は、虫にとって居心地の良い生息場所なんでしょうか。毎年夏なると湧く。楽器ケースの中で、急に粉のように細かい竹のおがくずが指に付くので、すぐにそれと分かります。それで、虫が湧くたびに、サンポーニャをビニール袋に入れて、ネオパラエースとかパラゾールとかを投げ込んで口を縛って、数日間放置しておくのです。そうすると、虫はほぼ死滅します。で、私は一度、そうやって防虫剤漬けにしておいたサンポーニャを、ビニール袋から出したその場で吹いてみたことがあります。そうしたら、喉をやられました。扁桃腺が腫れて、風邪と同じ症状です。なるほど、防虫剤は人間にも良くないんだなと痛感しました。ただ、ビニール袋の中にサンポーニャと防虫剤を密閉して保管してもその程度なのに、カップヌードルと防虫剤を同じ場所に保管しているというだけで (カップヌードルは、当然紙蓋が貼られ、その上にフィルムが被せてある状態ですよね)、入院するほどの事態になるとは、とても信じられません。それだったら、防虫剤の臭いの残る衣服を着て体調を崩す人が一杯いるはずですし。「防虫剤のにおいがある」という程度のことは、移り香が原因かも知れないけれど、入院騒ぎの原因は違うんじゃないかなあ。※ところで、そこまでやってもサンポーニャに付いた虫を完全に根絶することはできませんでした。大半は死滅するのですが、わずかに生き残っているものがいるのでしょう、翌年か翌々年の夏には再び虫が湧くのです。その後、あるプロの演奏家から完全な対処法を教えていただきました。やり方はとても単純かつ安全。サンポーニャを冷凍庫に入れてしまうのです。なるほど、虫が「ボリビア直輸入」の熱帯産だとすれば、マイナス10度以下の気温は耐えられないだろうなあ。さっそく1週間冷凍保存してみました。そうしたら効き目抜群。その後もう4~5年経っていますが、以後虫が湧いたことはありません。いずれにしても、潔癖性の人にはとても吹けない笛です。
2008.10.26
コメント(5)
毎日新聞よりさてさて、案の定やっぱり出てきましたね、農水省と三笠フーズの癒着の構図が。----------------------------残留農薬などが見つかった事故米を食用に転売していた米卸売加工会社「三笠フーズ」(大阪市北区)の冬木三男社長らが05~06年、農林水産省近畿農政局大阪農政事務所の当時の消費流通課長(62)を大阪市内の飲食店で接待していたことが分かった。同事務所は「公務員としてあるまじき行為」として、他の職員に対する接待の有無についても調査を検討する。大阪農政事務所によると、消費流通課は中国産など事故米の入札や販売、業者の指導などを担当している。接待を受けたとされる元課長は1965年入省。04~06年度に同課長を務め、06年3月に退職した。(以下略)----------------------------通常は、役所がものを買う側で、売る側である業者が接待攻勢というのがこの種の出来事の構図です。あるいは、役所が許認可権を持っている側で、許認可を受ける側が接待攻勢という構図もありますが。しかし今回は役所はものを売る側で、業者は買う側。構図が逆です。それなのに買う側が売る側を接待するというのは、買う側にとって、とても「オイシイ商品」を売ってもらっていたから、ということなんでしょう。農水省側は農水省側で、捨てるべき汚染米を買い取ってもらっていたわけだから、上得意だったのでしょうが。しかし、この構図を見れば、農水省が何も知らなかったなんて思えません。三笠フーズのやっていることに薄々気が付いていなかったはずがない、裏で結託していたと疑られても仕方がないでしょう。でも、13日の日記にも触れたように、この問題の根は、三笠フーズと農水省の癒着なんて問題よりももっと深く重大なところにあるんじゃないかと思います。
2008.09.16
コメント(0)
ここ数日、三笠フーズの事故米転売事件のことが問題になっています。特に注目されるのが、農林水産省が隠蔽に加担したのではないかという疑惑です。食品安全委員会が昨年度に行った食品安全確保総合調査のなかで、よりによって今回の事故米で検出されたカビ毒(オクラトキシン、アフラトキシン、ゼアラレノン)の汚染実態調査だけが中止されていたのです。しかし、事件が表沙汰になって、急遽調査を行うことにしたらしく、ホームページ上の「中止」という表示はここ数日の間に「平成20年度に実施中」と書き換えられています。では、何故この調査はいったん中止されたのでしょうか。理由は、どうやら、調査をすれば汚染の深刻な実態が明らかになってしまう、ということを危惧したのではないかと推測します。以下は、「きっこのブログ」にリンクが張られていた、共産党の紙智子参議院議員の質問主意書と、それに対する当時の安倍首相の答弁書です。http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/166/syuh/s166066.htmhttp://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/166/touh/t166066.htm経緯を簡単に説明すると、近年、牛乳からアフラトキシンが検出されたり、家畜が原因不明の大量死したりという事態が頻発しています。その原因は、家畜飼料に大量の農薬やカビ毒が混入しているせいではないか、と考えられます。ところが、人間が直接口にする農産物には厳しい検査がありますが、家畜の餌にはまともな検査が行われていません。そのため、公式には飼料用の穀物からアフラトキシンが検出されたことはないことになっているのですが、本当はかなり汚染されていることが予想できます。生物濃縮と言って、生物の体内で分解できない化学物質は、その生物の捕食者(家畜に対しては人間)の体内に更に高濃度で蓄積されます。だから飼料の汚染実態の調査をして欲しいというのが紙議員の主張です。それに対して安倍の回答は「調査しない」という内容。それで、当初予定していたカビ毒の汚染実態調査を答弁書どおりに中止したのでしょう。何故調査を行わなかったかと言えば、もちろん、調査すればすさまじい汚染の実態が明らかになるということを恐れたのでしょう。では、何故汚染の実態が明らかになるのが怖いのか。「きっこのブログ」は「自国民の生活よりもアメリカの利益、沖縄県民よりも在沖アメリカ兵のための政治を続けて来た売国政府にとっては、国民の健康なんかどうでもいいのだ。」と、その理由を説明しています。しかしそれはどうでしょう。私も、安倍晋三という右翼政治家は大嫌いですが、それは違うだろうと思います。いや、理由の一つではあるかも知れないけれど、理由の全てではない。本当の理由は、解決不能だから問題を先送りして逃げるために調査を中止したのだと私は思います。ここ数日、日本の食糧自給率の低さについて書いてきました。日本の食糧自給率はわずか39%、特にコメ以外の穀類はほとんど輸入です。従って、外見上は日本国内で飼育されているように見える家畜も、餌の出所を考えればほとんど自給できていません。飼料の輸入が止まれば、畜産業はあっという間に壊滅です。日本の食卓から肉や乳製品、玉子の大半が姿を消します。文字通りの飢餓地獄になるでしょう。そうでなければ、アフラトキシン漬けの肉や乳製品、玉子を食べ続けるか。まさしく究極の選択です。食糧自給率を落としに落としてしまった今の日本に取れる選択肢は、その二つしかない。その現実を白日の下に晒したくなくて、安倍は、あるいは農水省の官僚は逃げを打ったのでしょう。食糧自給率を下げて、食料を外国からの輸入に依存するというのは、そういうことなのです。まさしく、自らの健康と安全を売り渡すと言うことです。ところで、例によって暴言癖のある太田農水相がまたも言ってくれました。「(流通した事故米の残留農薬)濃度は(中毒事件が起きた)中国製ギョーザの60万分の1の低濃度。人体に影響は無いということは自信を持って申し上げられる。だからあまりじたばた騒いでいない」だそうです。バカとしか言いようがありません。確かに毒餃子事件で検出されたメタミドホスより、今回のアフラトキシンの方が遙かに微量ですが、規制値もアフラトキシンの方が遙かに微量です。つまり、それだけ危険性の高い毒物ということです。別の種類の毒物の濃度を比較して、「こちらの方が微量だから安心」なんて、あまりにレベルが低すぎる。ウィキペディアによれば、「アフラトキシンは地上最強の天然発癌物質であり、その毒性はダイオキシンの10倍以上といわれる」とのことです。そして、それ以上に問題なのは、汚染されていたのはコメだということです。餃子はかなり一般的な食べ物ですが、それでも三食三食1年中餃子を食べ続ける人というのは想像し難い。しかし、一年中三食三食米飯を食べ続ける人というのは、そう稀ではないはずです。日本人の1人あたり年間米消費量は現在でも60キロ以上です。多い人は100キロ以上食べるでしょう。(1962年の日本人の平均は118キロ)。その、日本の主食が汚染されていたことの危険性は、そんなに低くありません。http://informatics.cocolog-nifty.com/news/2008/09/post-da6d.htmlによると、今回の汚染米を常食していた場合、ラットではかなり高率で肝臓ガンにかかるという実験結果が出ているようです。実験によって結果が相当に違うのですが、アフラトキシンの摂取量0.63μg(体重1kgあたり)で発症率100%という実験結果があります。米飯を年間100kg食べた場合、体重1kgあたり摂取量は0.25μgになります。肝臓ガン発症率100%の摂取量の約4割です。ということは、肝臓ガン発症率は40%・・・・・・・これより遙かに発症率の低い実験結果もあるので、確実にこのとおりとは断定できないのですが、「人体に影響は無い」ということが「自信を持って申し上げられる。」なんて状況ではないことは明白です。
2008.09.13
コメント(0)
さて、これだけ世界的に農作物の価格が高騰しているのに、日本ではどうかというと、農産物の値段はまったく値上がりしていないのです。代表例としてコメを見てみると、生産者米価は、地域やコメの種類によって違いますが、コメ価格センターの統計によると、1990年代にはほとんどの銘柄で1表(60kg)あたり2万円を越えていましたが、2007年にはほとんどのお米が1俵1万4千円台です。たとえば、1ヘクタールの水田をもつ農家があったとします。2005年の調査では、日本の全農家数約200万戸、うち耕地面積1ヘクタール以下が110万戸以上を占めるので、1ヘクタールという面積は真ん中より少し上ということになります。そして、1ヘクタールから収穫できるコメの平均的な収量は約5トンです。1表1万4千円で、5トン売って売上はいくらになるでしょう。116万円ほどになります。仮にその売上が全て収入になったとしても、とても農業だけで生活が成り立つような金額ではありません。しかも、当然のことながら、売上=収入ではありません。米を作るには農機具代、肥料代、その他諸々の費用がかかる。そのコストは1俵あたり16,000円以上というのが平均値です。と、いうことは、1俵16,000円かけて作った米を1俵14,000円で売るわけで、売れば売るほど赤字ということになります。もちろん、コストは農家ごとに差がありますし、耕地面積によっても違う(大規模農家ほどコストが安い)ので、全ての農家が赤字というわけではありませんが、たとえ赤字でなくても、売上から経費を差し引いた利益がとても生活できるような額できはないことは間違いありません。これでは農業で生活できないどころか、農業をやればやるほど損になってしまうわけで、農家がどんどん減っていく、耕作放棄がどんどん増えていくのも当然です。2005年の調査では、全国の農業人口の58%以上が65歳以上です。65歳以上の人が、あと何年農業を続けられるでしょうか。今は、まだコメに限ってはほとんど自給できていまが、あと5年もしたら、コメすら自給できなくなっているかも知れません。そのとき、外国産のコメが安価に好きなだけ輸入できるかと言えば、おそらくできません。かつて「安い」とされた輸入米ですが、ここ1~2年の価格暴騰で、国産米との価格差はあまりなくなっています。品質の差や日本までの運送費を考えれば、国産米の方が安いくらいです。さて、ではどうしたらいいのでしょうか。まず、非常に単純な話があります。現在日本では、食べ物のうち、実に4割近くが廃棄されていると言われています。残飯、賞味期限切れなどです。廃棄される食糧をゼロにする、というのは、現実的には不可能ですけれど、半分に減らせれば、それだけでも食糧自給率は大幅に上がるでしょう。そして、もう一つは、農業を競争原理主義に任せることはやめる、ということでしょう。外国の農産物の方が安いからと、日本の農業を切り捨てていって、いざ輸入できる食糧がなくなったとき、金さえ積めば日本の農業が一夜にして蘇る、などということはありません。その時、飢餓に直面してから慌てたところで、遅すぎます。
2008.09.12
コメント(0)
現在(2006年)の日本の食糧自給率(カロリーベース※)は、39%です。私自身、東京のど真ん中に住んでいて、農業に携わっているわけではない立場なので、あまり偉そうなことは言えないのですが、それにしても自給率39%という数字には危惧を覚えざるを得ません。少なくとも主要国の中に、食糧自給率がこんなに低い国は他にはありません。世界各国で永遠に必要なだけいくらでも農産物が生産できる、かつ、安価に輸入できることが確実なら、自給率がいくら下がろうが気にすることはないでしょうが、とてもそんなに楽天的な見通しをもつことはできません。現に、世界的に食糧の需要は増加しているのに、食糧の生産はそれほど増加していません。増加していないどころか、一部(特に小麦)は近年減少しています。主要な輸出国であるオーストラリアやカナダなどが相次いで干ばつなどによる不作に襲われてたからです。その結果、穀類の輸入価格はものすごく上昇しています。スーパーに行けば、嫌でも実感します。(今は、原材料価格の上昇ほどには食品の価格は上昇していません。だから、食品の価格が上がっていると言っても、目下のところはまだそれほどでもない。メーカーや生産者が耐えられる限界を超えたところで、もっと大幅な値上げが来る可能性は高いでしょう)かつて、1960年のカロリーベース食糧自給率は79%あったのですが、それが今では39%。何故こんなに自給率が下がったのかと言えば、日本の人口はその当時より増えているのに、農業生産(特に穀類)は減っているからです。たとえば、とうもろこしの生産量は、1960年に約11万トンありましたが、現在(2006年)は事実上ゼロです。以下、大麦1960年120万トン→2006年16万トン、小麦153万トン→83万トン、大豆41万トン→22万トンなど。実は、自給率ほぼ100%を保っている米にしても、生産量は1258万トン→960万トンと落ちています。(米の場合は、減反政策をはじめとする生産調整で国が意図して生産量を減らしたと言えます)農業生産がどんどん減ってきたのは、もちろん外国から安い農産物がどんどん入ってきたからです。その中で、米だけは、生産者米価が国の政策で定められて、ある程度保護されてきたけれど、それ以外の農産物はどんどん切り捨てられて、総崩れになってきた、ということです。(米も今や風前のともしび)つまり、国内で高い農産物を生産するより、外国から安い農産物を輸入する方がいいのだ、という競争原理主義的な考え方が根底にあって、米をのぞき、それ以外の農業はどんどん切り捨てられていったのではないかと思います。でも、それは外国から安価な農産物がいくらでも輸入できるという、今から見ればまったく誤った前提条件の上で成立している話です。もし食料の輸入が全面ストップしたら、間違いなく日本は飢餓地獄になります。全面ストップは大げさとしても、輸入が半分になっただけでも、日本は充分に食糧難に陥ります。さて、ではどうしたら良いんでしょうね。・・・・・・・・・こんな時間になってしまったので、続きは明日あたりに。------------------------------※カロリーベースとは食べ物の価値をそのカロリーに置き換えて計算した場合の食糧自給率ということです。分かりやすい例でいうと、日本人が仮に年間100万トンの牛肉を消費し、そのうち80万トンが国内で生産されていたとすると、外見上の牛肉の自給率は80%ですが、牛の飼料の8割を輸入に頼っているとしたら、それを「自給率80%」と称することは問題があります。牛肉の8割が自給、でもその飼料の自給率が2割としたら、牛肉の自給率は 80%×20%=16%と計算するのが「カロリーベース」の自給率です。他に、量は少ないが高価な食品によって自給率が左右されるという弊害も避けられます。
2008.09.10
コメント(0)
全18件 (18件中 1-18件目)
1