全16件 (16件中 1-16件目)
1
東京都市計画の遺産 越澤明 2014年 防災・復興・オリンピック 国民浄財での明治神宮外苑造営、関東大震災からの復興、東京オリンピックの準備と開催返上、戦災からの復興、東京オリンピックの突貫工事、防災都市造りの半世紀に亘る停滞、木密地域不燃化プロジェクトの始動、東京オリンピック開催準備へと物語は続きまして、東京の都市計画の歴史がよく説明されていました。 連載記事をまとめた本のため、流れが読みにくいところもありますが、過去に込められた志は長く公益に資すること、また、その逆もあることが実証されています。本書で紹介された復興に込められた偉人達の公益の志と、それを実践した業績には感銘します。一方で、防災不備を招いた行政の怠慢には嘆息もでてきます。 関東大震災からの帝都復興事業を成し遂げた、後藤新平、永田秀次郎東京市長等リーダーが、広く都民に語り掛けながら、国際的視点から都市の道路網を構築していたこと、復興後の都市計画の立案者である近藤兼三郎の業績や、残された私宅は「トトロの住む家」と宮崎駿に評されたことなど、面白い読み物です。 この時に、靖国通り、昭和通り、明治通り、環6、7、8の礎が築かれたそうで、都市計画とは百年の計で未来の公益を担うものであることがよく分ります。今年完成した環状2号新虎通りを「マッカーサー道路」として多くのメディアが報道しましたが、これもまた、商業マスコミのうけ欲しさの大嘘であって、帝都復興計画一次案で既に盛られていたとは驚きです。 戦後の復興については、当初の計画と比べて実施されたのは10%にすぎず、そもそも、進駐軍は戦災復興事業に冷淡であったそうです。こんな中、立ち上がった在野の復興事業があったことが紹介されていまして感動的です。 歌舞伎町を造った地元町会長鈴木喜兵衛、中野通りを中心に新井薬師を復興した地元政治家窪田伝吉、中杉通りと阿佐ヶ谷周辺を復興させた地元和菓子屋創業者坂井寅三郎です。やる気のない都にかわり、地元の有志が大計を掲げ、行政を導いたおかげだそうです。 戦時中の延焼防止のための建物疎開地の選定は、復興後の都市計画を念頭になされたのに、敗戦後、都はその空地を放棄してしまったそうです。このため、せっかくの道路整備のチャンスを逃し、防災上の弱点となる木蜜地域を生んでしまったそうです。一方、京都では、建物疎開地を活用し、通りの新設がなされ、復興していったそうです。 1924年明治神宮外苑の競技場の竣工、返上された1940年東京オリンピック、1964年東京オリンピック、それぞれの遺産が引き継がれ、生かされ、また、壊されてきたことがよくわかります。戦前までは志も引き継がれていたものが、1964年東京オリンピック用の都市造りでは、壊したものが大きかったのもよくわかりました。 問題は、2020年までになにをするかで、今大事な時期になるそうです。未完成な都市計画を完成に近づけられる好機だそうです。著者は、これまでの都市計画の歴史をよくよく踏まえて、防災と少子高齢化対応を視点に都市計画をたてて進めていけば、おのずからオリンピックにかなう都市となり、世界から安心してお客を招き入れられると教えてくれます。 固い分野の本と思いきや、近代史と日本人の美徳と弱点を考えさせられる面白い本でした。
Nov 27, 2014
コメント(0)
実録!熱血ケースワーカー物語 碇井伸悟 2007年 2014年加筆 格差の拡大、中流層の崩壊、他国より高い貧困率など大きな問題となっていますが、本書は、苦境に陥った人々を最前線で支えている地方公務員の奮闘録です。苦境に苦しむ人、それをも食い物にする人、なんとか支える人、厳しい現場の人たちには頭がさがります。そこまで来ている日本の現状がやるせなく悲しくなってもきてしまいます。 2014年8月には生活保護受給者は、216万人となり、2014年度の予算は3兆8000億円にもなっているそうです。100人あたり1.7人の率となるそうです。高齢者が半数近くを占め、増加は止まらない原因は、何なのか対策が急務ですが、一人一人にとっては、日々の生活にかかわる待ったなしの事態で、その対処を担っている公務員がケースワーカーだそうで、著者は、今でこそ空手道誠空会館長ですが、十年以上に亘るケースワーカーとしての経験が熱く語られていました。 著者によれば、本腰の就労対策が必要な状況で、ケースワーカーのど根性では支えきれず、給付金を計算するケーサンワーカーに堕してしまうと危機感をつのらせています。 体力と気合で苦境にある人の救護と自立を支援し、厳しく暖かく取り組む姿勢に感服します。制度と組織を生かして理念を貫こうとする現場の知恵にあふれる実践力が大変気持ちよい本でした。 それにしてもメディアの流す負の報道は、センセーショナルな事項を追い求める商業主義が過ぎる気がしますが、食い物にするふとどき者がいるのも悲しい事実で、それに対して脇を締めて戦っているケースワーカーの奮闘振りも本書で知り、救われる気分になりました。 本書は、10年以上前の時代の著者が取り組んだ事例が中心となっているようですが、更に悪化している今の状況でも果敢に取り組まれているワーカーが多いことを祈るばかりです。
Nov 21, 2014
コメント(0)
千年企業の大逆転 野村進 2014年 百年を超える歴史のある会社の紹介本。周辺の余談、脇道の歴史小ネタも楽しめます。少し散漫なきらいもある文章ですが、若い読者への配慮なのかも知れません。 紹介される「千年」企業は、その精神が「千年」持つと言いたいらしいのですが、いずれも苦難や危機を乗り越え、創意工夫、研究開発を重ねて、核となる業を様々に変革、発展させてきた老舗企業でした。情勢や技術革新に応じて過去に固執せずに「伝えられた考え方」で時代に対応した成果が老舗の歴史となったようです。老舗の業績とは、時代、時代の精神の発露であったようです。 5社が紹介されていました。近江屋ロープ株式会社 1805年ヤシマ工業株式会社 1804年新田ゼラチン株式会社 1918年テイボー株式会社 1896年 三笠産業株式会社 1912年
Nov 19, 2014
コメント(0)
クリント・イーストウッド監督、主演・総指揮モーガン・フリーマン ネルソン・マンデラによる南アフリカの再生、許しの映画。 弾圧、投獄、殺戮に耐え、飲み込んで許し、人種を超えて未来を造った人物伝です。歴史認識とは、怨念ではなく、謝罪を求める怒りでもなく、寛容と未来への意欲に結実するのが正しい認識。生きている者にとっての未来への理解が正しい歴史認識と言っていると思う。 佐高信が2010年に感涙したそうです。アメリカ映画でハリウッドの中心の人が作っています。健やかなコマーシャリズムと思われます。
Nov 17, 2014
コメント(0)
大破局の「反日」アジア、大繁栄の「親日」アジア 長谷川慶太郎 2014年 大昔、著者による国防力の比較をよみ、ソビエトの共産軍兵士の士気の低さ、兵器の故障多発と低い稼働率、組織の腐敗、国民の無気力の蔓延について事象を挙げた説明がなされ、戦力を実力で比べたら日本にとって問題ではないとの解説に関心したことがあります。虚飾に惑わされずに実態を分析する凄みを感じました。 あれからだいぶたちましたので、著者は80歳台後半になられていますが、慧眼衰えずと感心しました。 中国の現状分析を読んで、著者が指摘していたソビエトの崩壊と似たようなことになっているのがよくわかりました。本書では、中国の人民解放軍の権勢と、格差にあえぐ人心と、富裕層も外資も逃げ出しに入った経済の実態が、大崩壊のシナリオになっている事が明かされています。 北朝鮮での中国とのパイプ役の重鎮の粛清が、中国内の瀋陽軍区と習近平の権力闘争で軍が敗れ、北朝鮮を操っていた瀋陽軍区の影響力が低下し北朝鮮を見捨てたことによるものであったとは。パイプ役とは人民解放軍瀋陽軍区とのパイプ役であったとは驚きました。中国の元首は北朝鮮にまず訪問してきたものが、今回、先に韓国を訪問したことは、北朝鮮を見離すものであるそうです。東西ドイツの統合の時、東ドイツはまたたくまに先進国ドイツに飲み込まれ、要職を追われた厳しいものだったそうです。統合には莫大な資金が必要だそうで、見捨てられた北朝鮮が崩壊したら、韓国は中国を頼む国家として生きていくしかない選択をしてしまったかのようです。付かずに巻き込まれないのがよいそうです。 重厚長大産業、重電、鉄鋼、素材、建機、発電、水などは、技術力が必要な産業で、長年の研鑽蓄積なしにはありえない産業だそうです。日本の水準は、群を抜き他国では真似のできない水準だそうです。これを、親日の東南アジアの国々の発展につくすのが日本のなすべきことだそうです。 東南アジアは、民主化しており、近代化に邁進していて、中国を抜くのはまちがいないそうです。域内20億人で中韓の人口を上回る規模で、資源も豊かで、人心は勤勉で規律があり、ミャンマーなどは識字率も9割と高いそうです。インドなどは、エリートの文官制度を運用し清廉な国家運営をしているそうです。そして、これらの国々は、中韓とはことなり、時効を理解し、親日国が多いそうです。日本は、その発展に必要とされ、つくすことができる唯一の技術国だそうです。 ロシアは、技術力のない国になってしまい、資源輸出に依存した経済国家であるそうです。ロシアにとっては、ウクライナは他では売れないロシア製品の輸出先として、ロシアに頼る貧しい国家にしておく必要があるそうです。 ポーランドはシェールガスが豊かにあり、これが採掘されれば、ロシアの資源支配力が衰えるおそれがあるそうです。 日本は、ロシアの資源にも、中韓の市場にも頼る必要はまったくないそうです。目立たず足を洗うべきと。
Nov 17, 2014
コメント(0)
この国はどこで間違えたのか 寺島実郎、佐高信対談 2013年 「新しい世界観を求めて」2010年の加筆改題 20年に及ぶデフレ、浅薄な新自由主義きどり、気骨なき政治、格差・貧困の痛みがわからぬ世襲議員、統治できぬ閣僚・党首、外交なき政権、未熟な団塊世代議員、素人政治に踏み荒らされる日本、追い詰められて奴顔が増える国民、小さな正義を自己顕示して自己満足する亡国のジャーナリズム・・・・・ 負の循環、間違いだらけ、知的退行極まれりといった状況が実によくわかりました。どうしようもない指導者達なのですね。 日本の未来は、ひとりひとりが考え、改めることしかないようです。 日本は米国中心の世界観でしか考えていないところが弱点だそうです。現代史では、米中関係が軸であって、例えば、タイムやライフやフォーチュンのタイムワーナーの創始者でメディア帝王のヘンリー・ルースなどは、日中戦争のときは、蒋介石を支援して日本を抑え込み、アジアを米中でリードしようとしていたそうですが、毛沢東に蒋介石が負けると一転、日本を復興させて中国を封じ込めるシナリオに変更したそうです。サンフランシスコ講和条約、日米安保もこの影響によるものだそうです。もし、蒋介石が勝っていたら日本の発展は30年おくれたかも知れないそうです。 こうした中で、親米でも親中でもなく日本の存立を考えたバランスある政治家が右派にも左派にもいたそうです。経営においても気骨ある判断で情報分析し、事業展開せねば国際社会では通用しないそうです。昔の日本には、市井の人でも魯迅を教育・支援した藤野厳九郎のような教養豊かで志のある人がおり、魯迅からも尊敬される生き方をされていたそうです。 翻って、昨今のナショナリズムは虚構でしかなく、隣国になめられたくない程度の偏狭な気分の話であって、そんなものではとうてい通用しないそうです。民族としての器、気骨ある思考と行動が問われているそうです。 イギリスは、かって支配していた国々とは今でも緩やかな共同体・イギリス連邦を形成しているそうです。南アフリカもネルソン・マンデラになって連邦に復帰したそうです。 法的システムと英語と文化遺産を柱とするイギリスの植民地経営は、巧みで支配者として責任感があり、それは尊ばれているそうです。かっての植民地に反英はないそうです。力量が問われているのだそうです。
Nov 14, 2014
コメント(0)
1987年の西ドイツ映画。 舞台は、アメリカの砂漠の中で、ハイウェイの脇の景気の悪い手入れの行き届かないモーテル・ガススタンド・カフェ併設店。黒人一家が経営していて、女店主は不機嫌で亭主や子供をしかりつけてばかりいる。そんな不毛な地に紛れ込んだ夫と不仲のドイツ中年女旅行者が、一家やモーテルや回りに住む人との間で次第に交流が芽生え、不毛の店に人々が集まり始め、カフェとして再生する話。 犯罪や暴力が登場しないなごむ映画ですが、現代の地方都市の衰退と再生のきっかけを訴えているようにも感じられ、27年も前の映画なのに今の時代を舞台にしているように感ずる映画です。 大昔のユル・プリンナー、ト二ー・カーチス出演の「隊長ブーリバ」に登場したあの愛くるしいヒロイン、クリスチーネ・カウフマンが、モーテルの住人で登場。あの美少女であったとは。気がつかず、後で解説読んで気が付いた次第。懐かしいやら、やせたけど衰えずと感心したりやら。
Nov 14, 2014
コメント(0)
色彩・・ない・・巡礼・・ 2013年 青春のわだかまりを中年にして対峙して解消する話。 心象表現が長く、繰り返しが続き、社会的切迫感はない。何をいいたいのか。一定水準に達した物質文明の中では、青春の苦悩は対人関係に凝縮され、相対理解のみでは息詰まっていく時代の神経描写をしたいのか。 生活の小道具の配置記述がある。文芸的であるのか。飲食衣服装飾調度の記述は何を言いたいのか。造形物・工業創造物の精神性にはとうてい勝てない個人の精神性を言いたいのか。衣食が満たされた後の大衆像、その平均的な心象・不満足・満足を表したいのか。理解が及ばなかった。 2010年の佐高信と寺島実郎の対談書で佐高信が、田邊元の「類、種、個」の「種」をこの作者は抜いていて気に入らないと評しています。寺島実郎は、それは賢くてマーケットをよくみてやっているのではないかと。 「種」を入れるとややこしくなり、万人受けへの影響がでる思慮ではないかということのようです。「類」である限り、いかんともしがたい逃れられない「種」の縛りが絡むことのない、その手の葛藤のない話と理解すればよいようです。
Nov 13, 2014
コメント(0)
2006年のアメリカ映画。モーガン・フリーマンの主演。 再起を賭ける往年の映画俳優と、今の仕事から這い上がろうとするスーパーのレジ係りの話。 郊外のだだっ広い乾燥した日差しの強い、道路が広くてりっぱだけれども緑の少ない街が舞台。景気の悪い地場スーパーのレジ係が、よい仕事に転職しようとイラつき気味にあくせくする姿と、役作りのためにゆったりとスーパーの様子を観察する年配男優のかけあいが中心のなんのことはない物語でしたが、なんとなく詰まされる気持ちがしてくる映画でした。 トレーラーハウスに別の女と住み始めた男とのいざこざや、不動産会社の面接でうまくいかないシーンなど、レジ係のイラつく気持ちを表すシーンが積み重ねられてまして、緩慢な時間の流れと、もがく底辺の人と、ゆっくり観察する往年の男優との何か達成するわけでもない映画で何をいいたい映画なのかよくわからなかったのですが、地場スーパーから巨大スーパーの見学になり、大型スーパーの衣料品売り場で品がよくて安いとことさらフリーマンが驚くシーンがありました。 ジョージ・パッカーの「綻びゆくアメリカ」という2013年の本をよんで、はたと気が付きました。この映画もウォルマートスタイルの大量安価販売の大型資本の台頭、地場商店の消滅、家庭・コミュニティーの瓦解、孤立する人々、低賃金ですごせる低価格品の溢れる抜け出すことのできないアメリカの消費生活を揶揄しているのではないかと。 「素敵な人生のはじめ方」との邦題は、「少量買物客用専用レジ」を意味する原題からすると、ちと違うような題に思えました。
Nov 12, 2014
コメント(0)
イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る デービット・アトキンソン 2014年 ひとくさり、日本の奇跡といわれる高度経済成長をもたらしたのは技術優位・勤勉とする論のあやしさ、日本の非効率、大企業経営者の非科学的実態、日本の会社経営のご都合ぶり、各国の半分程度にすぎない日本の輸出ウェイトなどを暴いた後、文化財の保護の産業化を提言しています。実に核心をついていてメディアの不見識がよくわかりました。 日本の観光産業の劣等生ぶりは、世界でもアジアの中でみてもひどいものなのですね。メディアのクールジャパン自己満足報道は、夏目漱石が日本の開化について言った「皮相上滑りの開化」と似ていて、加えて寺島実郎さん曰く「虚ろな自己過信」とも同じ構図と思いました。 文化財保護を産業として取り組むことが、アジアの後塵を拝している観光を各国並みの輸出産業に育てるのに必須なことで、その効果のほどを英国での実際の取り組みの経済統計を使って実証してみせてくれています。 地方創生の有力な経済施策になるとの著者の意見に共感しました。 「地方消滅」を読んで暗澹となりましたが、「買い物難民を救え!」と本書を読んでみて、手はありそう、人材も育ちそうな気になってきましたが、一方で、己をごまかし、改めない態度を捨て、耳を傾け、よくデータを調べてから考えて、己を知り、改める君子にならねば生き残れない、そんな世紀に突入してしまったと思わされます。おめでたい自己満足から目を覚ます材料をいくつか教えてもらえました。・高度経済成長は、急激な人口増の結果・一人当たりのGDP(購買力評価ベース)つまり国の効率は、世界25位・GDPは三位だが、人口に比例するもので当たり前・GDPは今年の6月の統計ではインドに実質抜かれてる・女性の就業率は、すでに日本は62.5%(男は80.6%)で、もともと人口数千万人を超えるような国で女性就業率70%を超える国はない。よって女性の活用で経済をよくするのは、能力をもっと発揮してもっと働いてもらうことになる・ブームというが、海外の和食店の数は、日本の洋食店に比べたら微々たるもの・外人が日本で食べたいものの順位は、ステーキ、しゃぶしゃぶ、すき焼き、お寿司、鉄板焼き 和食か?・海外で和食が人気な理由は、ヘルシー、消化しやすい、洗い物が少ない、調味料が場所をとらない だって 旨くないの? ・滝川クリステルのお・も・て・な・し とくぎって言うのは、外人にとっては、相手を見下した馬鹿にした態度・これを聞いて同人は、日本では絶賛と反論 手前みそ・オリンピックを東京にした理由は、他の候補国が政治や財政で不安だから・おもてなし? よほど海外の方が客の都合に融通きかせてる。日本は店や宿の都合が優先で即「できません」 チェックインや閉店の時間、銀行の煩雑手続き、苦情に改善せず、欲しくない無用な機能満載製品など・外国人が感心しているのは、日本人が親切でやさしいからで、会社や店や老舗旅館の傲慢な「おもてなし」ではない
Nov 9, 2014
コメント(0)
ふしぎな国道 佐藤健太郎 2014年 「道」への造詣がいかんなく発揮された国道マニアによる探求紹介本。内容が内容だけに読みこたえられるものか懸念がありましたが、筆致の軽快さ、潔さ、話材転換ぐあい・テンポ、新鮮な意味解釈など、按配よくて思いのほか門外漢でも楽しめました。 日本の国の道が日本の半世紀の道のり・事情を体現しているのがよくわかります。国道の現状、管理実態の「ふしぎさ」は日本のなせる業であるようでよく腑に落ちました。通りすがりの者には無色で希薄なイメージの道ですが、実は地方色、歴史色が詰まっているのに気づかされます。 新道と旧道の行政的意味合いがあり、旧道は格下げされたものであること、そこには、新道の便利さと引き換えに昔の道と生活がすたれること、道づくりはこうした歴史を辿っているようです。マニアにとっては廃れる風景への郷愁ともなるようです。 昔、市町村は12000あり、それぞれが道を保全していたそうですが、非効率でも道を大事に使っていたのかもとも思ったりしましたが、現在459ある国道は、飽和に達し、増加は見込めず、保全が中心となるそうで、今後は本当に大事に使わないといけない時代のようです。 真剣で精緻で不思議なマニアの視点がよくわかりまして、「酷道」「険道」は避けますが、いくつか行ってみたくもなりました。辿った道の先にまもりたい好きな道がみつかる気がしてきます。ふしぎな本でした。
Nov 9, 2014
コメント(0)
買い物難民を救え! 村上稔 2014年 -移動スーパーとくし丸の挑戦- ジョージ・パッカーの「綻びゆくアメリカ」のサム・ウォルトンの章によると、ウォルトンは、地方都市の小売店に狙いを定めて進出し、地元商店を潰して「毎日が低価格」の生活スタイルのマーケットを拡大してきたと描かれています。 低価格大型スーパーに依存して生きるようにアメリカ人を変貌させ、物価は下がり、パート労働が増え、多くが低賃金となり、ウォルマートは栄え、街は衰えたと説明しています。 本書によれば、そうしたことはアメリカでは20年前からフードデザートと言って問題になっていますが、その現象が日本の地方都市でもすざましい勢いで起きており、フードデザート・食の砂漠が出現しているそうです。買い物難民が生じた原因は、ウォルマートに地域の商店がつぶされたのと同じ構図のようです。 これに取り組むソーシャルビジネスとして移動スーパーのフランチャイズ展開を起業したそうです。地方の高齢者の食生活対策事業であるそうです。 地方都市でも新興住宅地などみているとパブリックスペースのないくつろげない町づくりに日本はなってしまっているそうです。団塊世代の最期が65才を過ぎた今、いよいよ高齢化に拍車がかかるわけですが、そうしたかっての新興住宅地や団地の中に居場所は自分の家の中しかなくなって閉じこもるはめになります。そうした地域に密着した人口が地方都市でも増えていきます。 一方で上記の身近な地場スーパー、商店が淘汰され、大駐車場を備えた大規模スーパー、ディスカウント店しかなくなり、高齢者は、難民化していかざるを得なくなるそうです。 このギャップをソーシャルビジネスとして、地域の仕事を確保する持続可能性のあるやり方で推進されているそうです。大手ではなく、地場スーパーと提携して全国に軽トラのとくし丸移動スーパーをフランチャイズ展開しているそうです。 「地方消滅」に震撼しましたが、「まち・ひと・しごと創生」とは、このような創意工夫の事業家精神と社会貢献できる「仁」ある「君子」が必要なことがよくわかりました。
Nov 7, 2014
コメント(0)
From "The Last Concerts Tour", a breathtaking concert at the Gethsemanekirche in Berlin Prenzlauer Berg.Jan GarbarekHilliard Ensemble今年で最後です。1993年のOfficiumから20年以上です。
Nov 6, 2014
コメント(0)
ドラッカーと論語 安富歩 2014年 春秋戦国時代の孔子の「論語」とドラッカーの「マネジメント」の類似性を巧みに解説したもので、ドラッカーの思想の理解がしやすい、面白い構成でした。 こんな比較がされてまして、なるほどと合点がいきます。紀元前の思想の深さには恐れ入ります。 マネジメント 「仁」を施す マーケティング 外界とコミュニケーションして、「己を知る」 そして、目的と何をなすべきか決める イノベーション フィードバックによる学習を重ね続けて、「改める」 経営者 「君子」が、仁、徳を以ってまつりごとをなす 巻頭では「もしドラ」への著者の感じた違和感を説明してまして、ドラッカーの正しい理解の仕方を解説してくれます。有名なドラッカー解説本でもドラッカーの基本概念への誤解が多いことがよくわかりました。「もしドラ」で誤った理解が拡散してしまうのを著者は怖れてるのかもしれません。 著者によると、「論語」も「マネジメント」も自由な個人による抑圧なき組織の実現をめざしていて、孔子は覇者の専制を、ドラッカーはファシズムの全体主義の暴走を防ぐのが、ふたりの動機になっていると著者は言います。 情報、インターネット、ブラック企業なども、ドラッカーも論語もその本質を言い当てているそうです。著者は、日本語翻訳者の意訳によりドラッカーの理論は日本人受けする内容に変わっていると論証しています。その典型が「真摯」だそうです。正しくは、経営者で大切なのは、「統合された人格」、「仁」だそうです。そして未来の組織は、「仁義礼智忠信孝悌」の上に現れるそうです。
Nov 6, 2014
コメント(0)
蜩ノ記 葉室麟 2011年 先達の素晴らしい人生謳歌の名作の数々にも負けず、一番厳しい江戸歴史土俵で読みごたえのある武士道を表現していると思います。 展開に新しいものがあると思います。奇をてらったり、醜悪表現で人間の暗部の不安に媚びることなく、人の真心に勝負をかけている作者に応援ひとしおです。 藤沢周平もほっとしているのではないでしょうか。
Nov 4, 2014
コメント(0)
慟哭の海峡 門田隆将 2014年 バシー海峡で死の間際から生還した小嶋秀次氏、同海峡で最愛の弟を失ったやなせたかし氏、お二方の決意し、守り、捧げつづけた姿に感涙しました。 小嶋氏は、静岡出身で早稲田予科在学中に自ら志願して陸軍通信士として従軍し、内蒙古から南方へ転戦の途上、バシー海峡にて乗船した揚陸母艦が米軍魚雷攻撃で沈没し、炎熱の12日間の漂流の末、散り散りに沈んでゆく多くの戦友の死に耐えながら、最期に一人漂う中、発見救助されたそうです。長い療養の後、帰国して兵役免除となるも、回復後は、駆り立てられるように再び自ら志願し、南京にて従軍されたそうです。終戦の翌年に復員後は、戦後の再生に向けて事業に邁進し、そのかたわらバシー海峡の戦没者の慰霊に尽くされたそうです。 鎮魂に尽くす日本人に協力を惜しまぬ台湾の人々、夥しい数の兵士の遺体が流れ着き、台湾の人々に弔い葬られた南端の地に苦難の末に建立されたバシー海峡を望む慰霊寺院、その保全への熱意と努力、いずれも尊いものです。 柳瀬嵩氏は、重砲部隊で従軍し、暗号解読担当の軍曹として南京で敗戦を迎え、翌年復員したときには、残された唯一の肉親である弟さんはバシー海峡でなくなっていたそうです。弟さんは、皆に愛され、子供時代こそ丸顔でしたが、柔道二段となるまで成長し、京都大学法学部に進み、学徒動員により海軍少尉として駆逐艦に乗務し、対潜水艦測的中に魚雷に一撃され戦死されたそうです。 最愛の肉親を失った悲しみと残されて生きる者の情念が、絵本の底辺に生きる意味をすえたのかも知れません。生きること、助けあうことが鎮魂であったのかもしれません。烏の浜 吉村昭 1971年 終戦後、樺太から多くの日本人が引き揚げたそうです。その中に小笠原丸があり、停戦後にも関わらず稚内から小樽に向かう途中、潜水艦に魚雷攻撃と機銃掃射をあび、多くの人が殺害された記録です。増毛町大別苅には夥しい亡骸が漂着し、町民が手厚く葬ったそうです。 生き残った人の様子も描かれ、生死を分ける悲しみが一層増します。後年、名横綱となった大鵬は、たまたま、稚内で下船して難を逃れたそうです。
Nov 1, 2014
コメント(0)
全16件 (16件中 1-16件目)
1