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生活"過"保護クライシス 松下美希 2014年 それでも働かない人々 生活保護の一線で働くケースワーカーの嘆きの声の小編。困窮者の保護・自立支援に専念したい希望と、手を煩わされる金目当てのふとどき者への憤りが込められている。 終戦後の制度発足後、最多数を更新続けているのが現状だそうだ。この十年でとくに、けがも病気もない「稼働年齢」層(15から64歳だそうだ)の受給者が、倍以上伸びていて、現在、217万人の受給者の内、18%を占めているそうだ。求人倍率が1を超えて求人は改善してるのに、まだ増え続けているそうだ。また、高齢者は、45%を占め、その中には、年金、失業、健康の保険料を払ってこなかった人も目立つそうだ。今、自助しない人、過去にしてこなかった人が多くなっていると言うことらしい。 制度の目的が、「最低生活の保障」と「自立の助長」となっているそうで、後者がなかなか難しいらしい。就労支援が、人権への神経質なまでの配慮、政治家・弁護士の過剰介入などで、厳格運営、指導ができず、トラブルを避け、事なかれの安きに流れ、無駄な給付のたれ流しをまねくおそれもあるそうだ。 そもそも、以前は、就労努力を怠ると給付されない制度であったらしいが、非正規雇用の増大で簡単に職を失う人が増え、国が失業者への給付を緩和したそうだ。更に、就労支援を担う人も臨時雇いの一年雇用の職員が多く、薄給の人もいるらしい。国は、法制と体制が弱いのに、間口を広げたらしい。 非正規雇用ででも働いても、生活保護給付以下の水準であることがあり、苦労してまでまともに働く気がなくなる人が目立ってきているらしい。扶養者の支えについては、子や兄弟がいても貰えるものはもらっておけとの身内が多くなってきているらしい。勤労観からの恥や外聞はあまり関係ないらしい。 稼働年齢層の受給者増の問題は、給付水準と賃金水準が逆転して「自立の助長」が「依存の助長」になってしまう状況らしい。非勤労精神に人を追い込む格差社会、Average is Overの社会に日本が堕してしまった兆候に見えてしまった。ケースワーカーの志が叶う状況にならないものだろうか。働く意欲の創出は、国家づくりとして取り組むべきことであると思うのだが。 日本の軍事費は、4兆8千億円であるが、生活保護には、3兆8千億かけているそうだ。
Dec 25, 2014
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ふるさとをつくる 小嶋多恵子 2014年 アマチュア文化最前線 日本には三万ほどの伝統文化があるらしい。どうもそれらはアマチュアが自前で仲間と世代間をつないできているものらしい。そして「伝統」とは守旧的な依怙地なものではなく、時代に応じて工夫が凝らされて変化させてきた人々の行動のことらしい。 サントリー文化財団の地域文化賞の選定活動に永く携わった著者は、様々な地域文化活動を紹介しています。それぞれの活動の歴史が説明されていまして、アマチュア文化とは何なのか、地域住民と行政にとってのまつりの意義とは何なのかがよくわかりました。 梅棹忠夫は、一文の得にもならん阿呆らしいことを一生懸命やることが、本当の文化だと常々おっしゃっていたそうです。なにやらその意味が本書でよくわかりました。 日本の真髄は、地域の文化活動によく表れているようです。地域文化を開拓し、ふるさとを継ぐ人々を教えてもらいました。地方創生、若者の流出防止、町興しには、地域文化の再生にかぎがあるようです。 よさこいソーラン祭り 江差追分会 昭和新山国際雪合戦 いいだ人形劇フェスタ 能勢 浄瑠璃の里 うるま市 肝高の阿麻和利 内子町 町並み 福島県川俣町 コスキン・エン・ハポン 高知県仁淀川町 秋葉神社祭礼練り
Dec 13, 2014
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アメリカ本土を爆撃した男 倉田耕一 2014年 大統領から星条旗を贈られた藤田信雄中尉の数奇なる運命 明治44年・1944年大分県西国東生まれの元伊25号潜水艦飛行長が辿った戦時、戦後の実話。真珠湾攻撃、オレゴン・ブルッキングス市エミリー山森林爆撃、霞ケ浦海軍航空隊教官、特攻隊員での終戦。戦後、飛行機に距離をおき、事業に邁進。思いがけぬ爆撃地市民との交流。老境での事業倒産。爆撃地市民への恩返しに再起。そして名誉市民となり爆撃地点に埋葬される波乱万丈の一生が語られています。 戦時から平成までのノンフィクションですが、気持ちが晴れ晴れとする人生賛歌です。過酷な歴史を生き抜いた老兵の意気と贖罪の事績に圧倒されます。激烈な時局を生き抜きながら、国家命令でも自分の行いとして償いをつけ、交流を深め、融和を果たし、恩を返す人物に感銘します。爆撃した国の大統領にその武勇と贖罪を称えられた誠実な武人伝です。見事な生き方を教えられました。 高松宮宣仁親王、大平正芳、レーガン、トラ・トラ・トラのプロデューサー、イラナ・ソル等、数々の逸話が披露されて大変興味深かったです。
Dec 10, 2014
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「吉田調書」を読み解く 門田隆将 2014年 朝日誤報事件と現場の真実 報道の使命、倫理を正しく理解し実践できる者しか報道に携われないはずであるが、自らの思惑によって風聞記事を書いて社内の功名、発行部数増を稼ぐ輩が報道の特権を持ってしまったようだ。 歪んだ精神に報道はできない。取材を重ねて真実を掴み、真実とその本質を誰にもおもねることなく報道する。この職業倫理が、国の方向を客観的、建設的に考える機会を社会に提供すると思う。それゆえ、それを実行できる組織や人に報道特権が認められなければならないはず。それをしない新聞社はむしろ人を惑わす社会の害毒になってしまう。 ひどい事件だ。この本に登場する新聞社、政治家は、自己の立場の顕示欲と保身、功名欲に支配された疎外状況にあるのではないか。 「現場の真実」を読むと、過酷な事故対応に果敢に挑んだ人々の尊とさに感動する。救われたことに感謝しきれない。著者の「死の淵を見た男」、町田徹の「電力と震災」を読むと現場の真摯な思考と努力と決死が窮地を救い、未来を確保してくれたことがよく分る。彼らは使命を大切にし、果たした。人それぞれ何を大切にしたかで、結果は大きく変わる。結果は、世代をまたいで問われ続ける。大切にすべきことを大切にしているのかどうか、新聞社は客観報道をしてほしい。 日本が破滅しかねぬ事態に陥ったことについて、二度とこうならないように冷静に合理的に建設的な報道をなぜ新聞社はしないのだろう。著者や町田徹の現場取材を重ねた著作を読むと、同じ津波をうけても難を逃れた東北電力女川原発がなぜ15mの高さにしたのかわかってくる。また、福島県沖には、震源をなしとし津浪の危険を少なく予測する土木学会、反対に福島、茨城沖にも大規模地震震源を想定する政府地震調査研究推進本部の両論がだされ、結局、政府は土木学会の立場によってしまった国家の判断の危うさがわかってくる。こんな中でも吉田昌郎さんは、津浪の影響を検討し、土木学会に再審議要請をしていたことなどの事情があかされている。 取材さえすれば実相がわかることがよく分る。取材さえしていれば、短絡な扇動報道はできないはずだ。なぜ、現場取材をせず、日々の表層的事象を追ったり、自己の思い込みの情宣記事を書いてしまうのか。不思議でならない。 自らの組織に精神隷属した記者は、筆をとるべきではないのではないか。 本書で調書を読み解いてもらい、現場の気高い真実とは裏腹に、危機に立ち向かえず国を率いる資質のない官邸、危機には役に立たなかった東電経営者がよくわかった。現場の指揮官と現業の人達が大切なものを守りぬいたことがよくわかった。
Dec 8, 2014
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梅干と日本刀 樋口清之 1974年 日本人の知恵と独創の歴史 40年前の復刊で、昔読んだかすかな記憶で今更と思いつつ読めば、尚、新鮮な内容。クールジャパンの原典。自然に従って生きのびてきた日本人の生活が科学的で合理的であることを解説してくれる。 衣、食、住、労、祭、耕、風、水など多岐に亘る。例えば、米の合理的で科学的な食習慣、発酵食品の先進性と多様性、水利の高度な技術的歴史など。節句にみる生活習慣も薬草を食文化に取り入れ、季節に応じた健康増進を図る文化であるそうだ。 縄文時代から近代に至る重層的な日本人の習俗の変化蓄積の合理性を解き明かしてくれる。外来の動植物、事物を採り入れ日本の風土に合うように変えていく事績に日本人の独創性、合理性をみせてもらえる。 ほとんどのものが外来でいろいろな外来のものが日本流に変革され、独自なものとなっていったそうだ。着物しかり、野菜しかり。野菜で国産のものは、わさびと大根ぐらいで、いろいろな年代で各地から外来した野菜が改造され、現代のおいしい野菜がつくりあげられたそうだ。 日本の生活文化は、貴重な財産で、理解しないで見失ってしまうようなことがあってはいけないようだ。日本人の自然観察力、合理的な技術力が基礎能力としてあるからできた業で、四季の変化と自然の猛威でこの能力が鍛え上げられたそうだ。 はたしてこれからの日本は独創的改造を継続しつづけられるかどうか、地震、津浪、噴火、台風、大雨、冷害、放射能と、まだまだ、能力と精神が試され続くのでしょう。
Dec 5, 2014
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世間のカラクリ 池田清彦 2014年 メルマガを編集出版した本で、事件、大麻、地球温暖化、噴火、血圧、STAP事件、癌医療、趣味、憲法、政治、構造主義生物学と多岐にわたる評論。異論のひとつとして知っておくと損はないかなと思う本。 それにしても、末期癌の人からの匿名抗議に対して、著者が主張している癌治療は無駄とする理屈の解説は興味深いが、「この世でいちばんタチが悪いのはまじめでバカな人だと常々おもっている」、「アホは死ななきゃ治らないと公言するのももちろん私の自由」と著者の感想を披露しているのには、驚いた。「学理の横暴」を思いだしてしまった。 著者によれば、IPCCは詐欺集団で、サッチャーが原子力を推進する為に化石燃料を悪として恐怖心を煽った道具が二酸化炭素地球温暖化犯人説だそうです。正しいメカニズムは、デンマークのスベンスマルクの理論で、太陽の活動低下と雲の発生と気温の低下の関係にあるそうで、太陽活動原因が今のところ正しいと主張している。 北極圏の氷は、東大の研究者が昨年最少になると予測し、朝日も大きく報道したが、事実は最大となり、予測は外れ、朝日はそれを報道していないそうです。また、直近15年間の気温は、下がっていて、二酸化炭素は増えてるそうです。 著者は、真理と異なることを経済的、社会的理由で真理と決めたり、報道したりする世の中を変だと言っているようで、真実なんてねえよとなるようです。
Dec 4, 2014
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