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内田樹先生の「刊行停止宣言」がニュース記事にまでなってますね。仏文学者の内田樹さん「スト」宣言に賛否 売れっ子新刊ラッシュに待った(産経新聞)この件で、思うところが2点ぐらいあります。1つは、こういう作家の方って、内田樹先生以外にもたくさんいるよなあ、ということ。私の尊敬する細野真宏先生もそうですし、本田健さんや神田昌典さん、野口嘉則さんもそうだと思うのですが、自著がたくさん売れた時に、あえて本を出さずにブームを発生させなかったんですよね。ブームになるといろいろオカシクなるのは、誰よりも作家本人がわかっていることですから。私も『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』のあとは出版依頼が何十と来ましたが、次に出た本は『さおだけ屋』の2年後です(『さおだけ屋』出版前の企画は除く)。ブームになるチャンスがあっても、それに乗るかどうかは作家自身でコントロールできますからね。私は本業重視派なので、たくさん本を出す気は毛頭なかったです。今回の件でもう1つ思ったことは、「質の低下」って、なんだろなということ。出版業界において、「質の低下」=「ニーズのミスマッチ」だと思うんですよ。100万部売れた後に、3万人をターゲットにした本を書いたとしても、出版社さんや書店さんはブームに乗じて30万部ぐらいは期待してしまう。結果、30万部売れてしまい、27万人ぐらいの人が不満を感じてしまう。基本はこれの繰り返しで読者は離れていき、売れなくなっていくのだと思います。ま、本当に粗製乱造な本もありますけどね (^^;)
2010.08.30
『最後のパレード ディズニーランドで本当にあった心温まる話』(中村克・著)サンクチュアリ出版ですが、新たな盗用が見つかったそうです。―――――<ディズニーランド本無断転載>オリエンタルランド社内文集からも ベストセラー「最後のパレード ディズニーランドで本当にあった心温まる話」(中村克著)の盗用疑惑で、東京ディズニーランドを運営する「オリエンタルランド」(OLC、千葉県浦安市)の社内文集の作品数編も、OLCや執筆者の許諾を得ないまま転載されていたことが25日分かった。 版元の「サンクチュアリ・パブリッシング」(東京都新宿区)は無許諾使用を認め、文集執筆者に謝罪した。 文集はOLCが昨年4月に作った「Making dreams come true~これが私たちの仕事」。 従業員らの体験作文など55編を収めた。 版元によると、中村氏が資料として入手し、編集者が5~6編をほぼそのまま本に収録。 中村氏はエピソードに対する短いコメントを書いた。 転載について「調査中で今は答えられない」という。 難病の少女との交流のエピソードを使われた執筆者は「思い出が汚されたようで悲しい」と話した。 OLC広報部は「類似には気付いていた。著作権は当社にあり、著者や出版社に使用は認めていない」とのコメントを出した。(毎日新聞・赤字は山田が加えた)―――――「編集者もそのまま本に収録」自分の書いた文章が、「他人が書いた」ことにされて世間に発表される辛さを考えもしないのでしょう……。私の4月21日のブログでは、タグに「ネットのパクリは氷山の一角?」としか書きませんでしたが、確証が得られたので今回ははっきり書きましょう。盗作者は1ヶ所じゃ済まないんですよ。たくさん盗作しているものなんですよ!あと、中村克氏のブログでの言い訳が面白いですね。ちなみに、今回のような盗用ですと、著作権法違反の刑事罰で、個人は「10年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金」法人は「3億円以下の罰金」。親告罪(被害者が告訴しないと成立しない罪)ですけど。
2009.04.26
昨日のブログで取り上げた『利休にたずねよ』の「逆再生」という構成手法。もうちょっと説明すると、「逆再生」とはストーリーの時間軸が逆に進んでいくので、千利休の場合は、豊臣秀吉から命じられた切腹シーンから始まって、青年時代へと戻っていきます。たいてい、結果が分かってからその原因を探っていく話になります。「逆再生」がミステリーっぽくなるのは、ミステリーの基本が「殺人事件が起きてからその犯人を捜す」、つまり、「結果→原因」と同じ手続きを踏むからです。なので、「逆再生」を使えば誰でもミステリーっぽいものが作れます。私も一度、「逆再生」で書いてみたいんですよねぇ。でも、「結果」が劇的でも、「原因」がよっぽど面白くないと作品が成立しないのが、難点なんですよね……。
2009.04.08
3日続けて告知になってしまってすみません。去年収録したFMラジオの放送日が決まったので、ご報告をば。あのやりすぎた会計企画本『もえビジ 会計RPG、密室の女子大生会計士』について、自由に語っております。―――――●FM放送「ベストセラーズチャンネル」【放送局】 TOKYOFM傘下のMusicBird、全国コミュニティFM50局ネット【放送日】 2009年1月11日(日) 4:30- 4:40【放送局一覧】 http://bestsellers.fm/list.html●インターネットラジオサイト「ベストセラーズチャンネル」【URL】 http://bestsellers.fm 【配信日】 2009年2月末を予定※放送日や配信日は、ラジオ局側やネットラジオのシステムの事情により、 ごく稀に変更になることもあり得ますので、あらかじめご了承ください。―――――実は、過去にも下の本で出演しておりましたので、こちらもどうぞ。「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 禁じられた数字〈下〉(パーソナリティ:主藤孝司)
2009.01.07
昨日、BSイレブンで放送されたベストセラー紹介番組『ベストセラーBOOK TV』。思っていたよりもノリが軽く、思っていたよりもしっかりと本を紹介する番組でした。斎藤広達さんや土井英司さんの紹介する本はどれも買いたくなりましたし、古瀬絵理さんの仕切りもすごく上手かったです。 (広達さんや土井さんが紹介して、思わず読みたくなった本)私はあまりに自由に本の話ができたので、嬉しくなって偉そうにしゃべりすぎたな、と反省しております。「ベストセラーBOOK TV」は、12月22日(月)7時00分~8時28分に、前半部分のみ再放送があります。来年レギュラー番組化されるかもしれないらしいので、とても楽しみです。ちなみに、私が『もえビジ』そっちのけで紹介した書店営業の動画「本屋でどうでしょう」はこちらです。 本屋でどうでしょう・1 (品川駅スタート) 本屋でどうでしょう・2 (早くもトラブル発生) 本屋でどうでしょう・3 (残念な事実が発覚) 本屋でどうでしょう・4 (雨の中の激闘) 本屋でどうでしょう・5 (最終回)勝間和代さんが「この動画、面白いですよね!」とおっしゃったのには、さすがにビックリいたしました Σ(゜ロ゜;)!
2008.12.20
トークがとても面白い社長・斎藤広達さんが、今週の金曜日に「ベストセラーBOOK TV」というテレビ番組をなさいます。―――――2008年ベストセラー総まくり!今年いちばん売れた本をすべて読んだ気になる3時間!!『ベストセラーBOOK TV』 BS11(ビーエス・イレブン) 12月19日(金)19時00分~21時45分 12月22日(月)7時00分~8時28分[再]【司会】 斎藤広達さん(シカゴコンサルティング代表取締役) 土井英司さん(ブランディングプロデューサー) 古瀬絵里さん(フリーアナウンサー)【ゲスト】 勝間和代さん(作家・経済評論家) 山田真哉 (作家・会計士) 干場弓子さん(ディスカバー21社長) 日野淳さん (幻冬舎「パピルス」編集長) 高野幸生さん(TSUTAYA Book統括ディレクター) ベストセラー・ガールズ―――――普通、本の番組と言えば文芸書がメインだと思うのですが、この番組は ビジネス書がメイン。けっこう珍しいことだと思います。そういう番組に私も出ることができて、非常に光栄です。私の出番は7時半ごろらしいので、視聴環境が大丈夫な方はぜひご覧ください。
2008.12.17
私にとっては“選挙予想”でお馴染みの雑誌「AERA」さんの取材がありまいた。今回は選挙予想じゃござんせん。ビジネス書業界についてのインタビューでした。このブログでもお馴染みのあの方の特集ということで、「なぜいま30代にビジネス書が流行っているのか」について語っています。「不況だから」とか「ネットがあるから」といった凡百なことは言わず、普段周りに語っている「ビジネス書平民開放説」とか「ベストセラー=自伝説」など自説をしゃべりました。(今年ベストセラーを出していないお前が語るな、という観もありますが)12月15日発売号の予定で、表紙もあの方です。ちなみに私の選挙予想は、予定よりかなりズレて年末年始の合併号で公表する予定なのですが、はてさてどうなることやら。なお、「AERA」の今週号では、「犬ビジネスの「闇」」が非常に興味深かったです。例の事件の動機でもある犬の殺処分の実態について、自分の無知さを思い知りました。「流通システムが犬を殺す」「儲け優先主義が犬を殺す」という話なのですが、会計的には是でも、非会計の考えがなければ解決しない事例の一つですね。
2008.12.05
今年も流行語大賞のノミネート(候補語)がありましたが、このノミネートの60語を見ると今年の出版業界も見えてきます。今年はというと、「ホームレス中学生/解散!」。す、少ねえ!!ちなみに、2007年も「がばい」「鈍感力」とベストセラーから生まれた言葉が2つ。一方、2006年は「品格」「他人を見下す若者」「東京タワー」「涙本/泣ける本」と4つ。2005年も「頭がいい人、悪い人の○○○」「電車男」「NANA」、そして(自分のを入れるのもなんですが)「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の4つ。出版不況うんぬん以前に、出版の影響力低下というか、サブカルチャー化へと着実に進んでいる感じが……。今年も、「夢ゾウ」とか「悩む力」とか入ってほしかったんですけどね。「カツマニア」とか入れば、面白かったのに (^。^;)(追記)「蟹工/蟹工船」も出版業界の言葉でしたね。忘れていました。
2008.11.14
「ベストセラーを書こう!プロジェクト」いろんな出版社さんが出版オーディションをなさっていますが、こちらもその1つ。1次審査を突破した26本の候補作品が発表されているのですが、作品タイトルや著者の顔だけでなく第一章までの原稿もネット上で見れます。ブログ風なので、各作品にコメントも書き込めます。いくつか拝見したのですが、けっこうクオリティが高いんですよねぇ。そして、とてもいいのが次の点です。―――――― このプロジェクトのもう一つの特色は、将来の出版可能性を弊社に限定しないことです。(中略) ちょっと格好いいことを言えば、自社のことだけを考えるのでなく、出版業界全体 としての新人発掘に貢献できるようがんばろう、そんな願いをこめてジャンルの 限定を外した次第です。――――――老舗の日本実業出版社さんですが、とてもオープンソース的な発想です。ビジネス書の業界では無かったんじゃないかな?こういう思い切ったことって、いろんな“しがらみ”もあるので出来そうで出来ないんですよねぇ。かなり素晴らしいことだと思います。業界全体が盛り上がる可能性を秘めています。正直、業界自体を見直しました (⌒o⌒)v♪
2008.06.17
まもなく発売予定『食い逃げされてもバイトを雇うななんて大間違い(仮)』の進行状況ですが、いまバッサバッサと文章を削っております。泣きたくなるぐらいに。まさに、「泣いて馬謖を斬る」状態です。1000字のためにあれこれ調べて3時間かけて書いたものも、消去するのには3秒とかかりません。別にグチが言いたいんじゃなくて、「本というのは、ページ数と制作時間はまったく比例しないんだよぉ」ということをちょっと言いたかったんです。……また、制作時間と面白さも比例しないあたりが、情報財の宿命でもあるのですが。
2007.11.26
(あくまでも私の私見ですが、)ビジネス書をわかりやすく書くコツは、ある程度時間をかけることにあると思っています。それは、別に長い時間ずっとウンウン唸りながら書け、という意味ではなくて、書いた文章を冷静な目で見直すためには長い時間を空けたほうがいい、という意味です。その理由は、人はわかりやすく説明しようとすると、どうしても情報過多になりがちだからです。そして、それをバッサリ削るためには、時間を空けたほうがいいのです。時間を空けていないと「せっかく頑張って書いた文章だから……」といった感情が入り、文章を適正に削れなくなります。しかし、同じようなことを何度も繰り返す文章ほど、こんなにウザいものはありません(会話でもそうでしょうね)。でも、そういうビジネス書もけっこう目に付くんですよねぇ。というわけで、『食い逃げされても~』の下巻の進行ですが、現在そういう状況です。
2007.11.08
ちょっと前の話になるのですが、私の愛読4誌のうちの1つ「新文化」(他3つはは日経新聞・経営財務・税務通信)の2007年10月18日号に、お待ちかねの「出版流通データブック2007」が付いていました。注目の“書籍新刊・出版点数”は、77,722点(前年より1.6%増)。 →8万点の大台に乗ると言われながら、伸び率は去年に引き続き落ちましたね。 自費出版系の急激な伸びが落ち着いてのでしょうか?“週刊誌・出版点数”は、95点(前年より10.4%減)。 →2年連続の10%減少ですが、やはり週刊誌の時代ではなくなったということなのか、 2000年代前半の週刊誌の増加が単なるブームだったのか。“書籍新刊・平均価格”は、1,174円(前年より1.4%減)。 →こちらも2年連続の減少。ビジネス書では値段が高くなっているような気もするのですが、 文芸とか安い本も多いのかな?出版全体の“推定販売金額”は、2.15兆円(前年より2.0%減) →書籍は100億円盛り返していますが、雑誌が600億円減らしています。 9年連続減少の雑誌は、やはり時代の流れとして厳しいんでしょうね。あと、気になるのは、出版広告費と雑誌広告収入の減少が止まらない点。2000年前後って、出版業にとってある意味ピークだったのか。
2007.10.30
「ほぼ日刊イトイ新聞」で以前、糸井重里社長が薦めていた『広告コピーってこう書くんだ!読本』を読みました。こちらの本、コピーライター志望でなくても、広告業界を目指してなくても、勉強になりますよ。普遍的な「モノへの視点」の話を、平易にしてくれますからね。そして、よく知っている広告の具体例が多いのもGOOD。でね、“コピーを書くというのは、100本ほど書き散らして→受け手の気持ちに立って選んで→受け手にわかりやすくするために磨く、つまり「散らかす→選ぶ→磨く」”という話があったのですが、「そうそう、本作りもそうなんだよねっ」と思わず膝を打ちました。特にビジネス書作りは、主題を見つけたら、とりあえずたくさんの話を書き散らして、そこから厳選して、そして文章を徹底的に磨く作業ですから。
2007.10.20
日販さんが発表した「2007年度上半期ベストセラー」を見て思ったのですが、ビジネス書が全然売れてないですね。総合20位までにビジネス書は一冊も入らず、また、「単行本ビジネス」においても『鏡の法則』など1~3位はビジネスというか自己啓発ジャンルなので、純粋に経済・経営を扱っているものでは『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』の4位が最高位。うーん。2005年だと、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』『これだけは知っておきたい個人情報保護』2001年までさかのぼると、『チーズはどこへ消えた?』『金持ち父さん貧乏父さん』が総合ベスト10入りしていたのですが。……とここまで書くと「近年はビジネス書が苦戦している」ようにも見えますが、実は、2001年までさかのぼっても上の4冊しか「年間総合ベスト10」入りはしていないのです。ですから、ビジネス書が全然売れてないですね。ではなく、そもそもビジネス書って滅多に売れないんですね。が正解みたいです……。
2007.06.10
そんでもって、今回の本の価格ですが、私もたずさわっている「ほぼ日ブックス」の本については、「ほぼ日ブックス製作中!!」のページにも書き込んでいるので、こちらに譲るとして、『ウサギはなぜ嘘を許せないのか?』がなぜ980円になったのか? についてちょっと書いておきたいと思います。もともと予定されていた価格は、1200円または1100円でした。「一般ビジネス書」(←前日の日記より)として、至極妥当な価格だと思います。しかし、それを強引なまでの私の主張で980円、つまり「一般書」扱いにしてもらったのです。理由を端的に言うと、今のタイミングでのコンプライアンス関係の本の市場は、「一般ビジネス書」としてまだ成熟していない、と判断したからです。最近、雑誌などでも「日本版SOX法」「内部統制」といった言葉が踊るようになりましたが、まだ本として望まれているのは「一般ビジネス書」ではなく「専門ビジネス書」です。だとすれば、コンプライアンスの本を出すなら、まだ市場として成熟していない「一般ビジネスよ」より「一般書」としたほうがリスクが小さいだろうと思ったのです。「一般ビジネス書」ではなく「一般書」として成功した『チーズはどこへ消えた?』が880円だったことも重要なヒントでした。この本も原価だけを考えたら1000円以上しそうな本なのですが、聞いた話によると、会議のときに「末広がりで880円にしよう!」という役員の鶴の一声で決まったとか。まあ、世の中には会計の考え方を根底からくすがえす値付けもあるということです(^^;
2006.10.01
本の価格については、いつも悩むものです。「本は値段を見て買わない。安いからといって売れるものじゃない」とは昔から言われてますが、もしそれが正しいなら、いまの新書ブームは説明つかなくなるわけで。本の場合、購入者の動機として「どちらを買おうかな」よりも「どれを買おうかな」の方が多いので(地図や参考書といった特定のジャンルは除く)、他の業界の商品に比べて「直接的な競合物が少ない」という性質があります。そのため、購買者の購入要因として“価格”の占める割合は比較的低い。とはいえ、ゼロではないため考慮しないわけにはいきません。そこで特に言われるのは、“価格のアナウンスメント効果”。価格を発表することで心理的影響を与え、購買者の行動を変化させることができます。たとえば四六版の実用書で考えると、1000円以下なら「一般書」ですが、1001~2000円だと「一般ビジネス書」、2000円を超えると「専門ビジネス書」、という心理的効果を与えられますよね。情報商材の世界も、「高いほど情報の価値が高い」ということになってますしね。もちろん、本の価格は、人件費や印刷費といった「原価」と「初版部数」を算出して積上げ方式で考えなければならないのですが、“価格のアナウンスメント効果”も無視できないということです。(翌日の日記につづく)
2006.09.30
電子手帳があったり、Webや携帯で時間管理ができるこのご時勢に、「ほぼ日手帳」は売れています。手帳業界全体で見ると、市場規模は小さくなっているのかもしれませんが、「ほぼ日手帳」については毎年、倍、倍のペースで売れています(そもそも手帳業界は、生徒手帳も警察手帳も母子手帳も手帳なので、どこまで市場に含めたらいいのかはよくわかりませんが)。「手帳はなぜ売れ続けているのか?」というテーマはここ最近の私の研究テーマです。「紙なのにいまさら?」「アナログなのに?」‥‥本についても、同様の議論が前からなされています。「本はWebや携帯端末に勝てるのか?」この答えは、手帳が重要なヒントを教えてくれるような気がしています。なぜなら、手帳 vs 電子手帳、本 vs Web の究極的な差は、「持ち運びのよさ」や「手ざわり感」といったあいまいなものではなく、「電気が必要か、不要か」という点だけですからね。電気が不要だからこそ得られるメリット、ということの本質を“手帳”は教えてくれているんじゃないかなあ、と。
2006.09.07
最近、出版の話をするとき、しきりに“距離感”という言葉を使います。テーマと読者との“距離感”、文章と読者との“距離感”、装丁と読者との“距離感”etc.近ごろは距離感の近い本が、大流行ですからね。無視できない言葉になってきているのです(まあ、昔からそうだといえばそうなのですが、最近はテーマを問わず“距離感”の近いものが多いですから)。“距離感”を近づけるためのテクニック自体は、それこそ昔からいろいろと開発されているので(書き手を魅力あるキャラクターにするとか、読み手自身を能動的にさせるとか)、まあそれをどう組み合わせるか、という話になるんですけどね。
2006.08.29
今回のベストセラー論のまとめ3日間にわたって「着地点」「学習目標」「軸」という話を書きつらねましたが、これらは私が“本”などを評価するうえでの“視点”として活用されています。「着地点はちゃんとあるのか?」「学習目標は適切か?」「軸がブレていないか?」これらの要素をちゃんと満たしていれば、(中身はともかく)どんな原稿でもストレスなく読むことができます。逆に、どんなに中身がよくても、これらの要素が欠けているものは単なる“エッセイ風の読み物”になってしまいます。こういう本は、「勉強しよう」と思って読んだ読者に対しストレスを与えるので、途中で本を閉ざされてしまうか、最後まで読まれたとしてもいい印象も残させずに、3日経てば中身は忘れ去られます。本に手軽さや利便性が求められてきている昨今では、読者に“ストレス”を与えない本づくり、細部にまで“心配り”をした本づくりが著者・編集者の腕の見せ所だと思っています。そういう意味では、ホテルや旅館経営で大切な“おもてなしの心”に近いのかもしれません。……というわけで、これからの自分の本づくりへの“戒め”としてここに記しておきます。ここに書いたからには、ちゃんとしないといけないですしね(^^;
2006.07.28
おとといからのベストセラー論の続きですが、今回は「軸」についてです。ここでいう「軸」とは、「軸がブレている」「軸がブレていない」の「軸」です。イトイ事務所内でも、コンテンツや商品企画の話のなかで「軸がブレてるんだよねー」といった会話がよく出てきます。「軸がブレる」といったい何が良くないのでしょうか?「一貫性がないのでフラフラしているように見える」という感情的な問題もありますが、より顕著な例を挙げると、次のような現象が起こります。・あれもこれも強調しだして、結局、何が言いたいのかよくわからない・統一したイメージが与えられないので、読者に強い印象が残らない・話が散漫になり、『読者が迷路に迷い込む』。このうち、『読者が迷路に迷い込む』というフレーズが好きで私もよく使います。このフレーズは、「話が散漫になると、論理性もなくなってくるので、読者も不安になりストレスを与えながら読ませることになる」という意味です。読者にストレスを与えることは最悪です。文がやたらと長かったり、主語・述語がわかりにくいものストレスを与えますが、論理性がしっかりしていない場合もストレスを与えます。「軸をブラさない」ということは、ストレスを与えないという意味でとても大事な“心配り”なのです。
2006.07.27
話のオチの部分ともいえる「着地点」に対し、ツカミの部分でも気をつけていることがあります。それは「学習目標」です。これは私の師匠ともいえる人が講師だったので、「学習目標」というお勉強用語を使っていますが、「目的」「意義」「動機付け」と言い換えてもいいでしょう。「学習目標」が必要な理由は、前フリとして、「今回のテーマは○○なので、○○について見ていきましょう。」という誘導がないと、著者の意図通りに読者が読んでくれないかもしれないからです。もしかしたら、「期待していたものと違った!」という読者の不満が起きるかもしれません。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』でも、各章の最初に「学習目標」を明記しています。偶然にもお手元にある方は、お確かめください。私は講義やミーティングの最初にも、「目的」や「意義」を説明するようにしています。まあ、講義や会議をちょっと専門的に勉強した人にとっては、常識なんでしょうけどね。このことが“ビジネス書”にも当てはまるんだ、と意識しておくことが大事なのでしょう。
2006.07.26
超ひさしぶりに、“本”について考えていることを少し。本をつくる際に、気を付けていることの一つに「着地点」というものがあります。一つの章ごとに「着地点」はあるか、一冊の本として「着地点」はあるか、といった感じで常に考えています。話としての“まとまり”というか、最後に“なるほどね”というものがないと、読後感が得られないんですよねー。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』でいうと、各章の終盤に「これを家庭に置き換えると……」という話をしていますが、これが「着地点」です。身近な話題に落とし込むことによって、会計に親近感を持ってもらい“なるほどねー”と思ってもらうような工夫をしているのです。先日、テレビで再び『ハウルの動く城』を見たのですが、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』よりも評判が落ちる一因として「着地点」の弱さがあると思いました。「自然が滅びた!」「少女が成長した!」というわかりやすい着地点があった『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』に比べ、「戦争もウヤムヤのうちに終わるし、主人公たちも成長したのやら何やら……」という『ハウルの動く城』は、やはりすっきりしません(いい映画だとは思うんですけどね)。本や映画に限らず、「着地点」のないプレゼンや講演も終わった後の感想が芳しくないです。まあ、これは自分自身への反省も込めてですけど(^^;
2006.07.25
『つまみ食い新会社法 500円でわかるシンプル版』の価格を「500円」にしたのは、安さだけが目的ではありません。“わかりやすさ”という意味でも、500円にしました。ワンコインでわかりやすいですからね。100円ショップや500円タクシーなど例を挙げるまでもなく、わかりやすい価格はそれだけで消費者の興味を引きます。出版業界でも大正15年に改造社が「現代日本文学全集」全63巻を当時としては超格安の定価1円で発売し、出版界の不況を救ったという歴史もあります。たしかに諸外国に比べて本の値段が安いのに、さらに安い本を出すのはいかがなものか、というご意見もあると思うんですけどね。価格設定も(高い安いだけでなく)商品のアピールポイントの一つである、という「価格デザイン論」。定価が固定している出版界にとっては、なかなか有効な理論だと思っています。
2006.01.15
『山田真哉のつまみ食い新会社法 500円でわかるシンプル版』(青春出版社)が、発売半月で45,000部になりました。一応、ベストセラーの仲間入りができそうな感じになってきたので、この本についても分析してみたいと思います。本書のポイントは次の2点です。1.フルカラーである2.500円であるまずは「1.フルカラーである」についてですが、私がフルカラーの本を手がけるのは、この本が初めてでした。フルカラーにした理由は、前作『図解 結構使えるつまみ食い「新会社法」』では4コママンガを多用したのですが、「カラーの方がきっと面白くなるだろうなぁ」という単純な意図。そして去年、日経さんが出されたフルカラー本『これだけは知っておきたい個人情報保護』が100万部に迫るベストセラーになったからです。これまで「法律の本ってフルカラーにする意味あるの?」と思われていたのが、この本を契機に流れが変わったのです。フルカラー本の場合、避けては通れない問題が2つあります。(1)印刷費が約4倍かかる(4色使うから)。(2)図解に配色センスがいる1つ目の問題は、大量に刷ったり、印税を含めたあらゆる点でコストカットすることでカバーできます。問題は2つ目です。本のデザイナーはたくさんいますが、図解の配色ができる人は非常に少ないのです。それもそのはず、フルカラーの本自体が少ないのですから、できる人が少ないもの当たり前です。例外は「コンピュータ書籍」です。昔からフルカラーによる解説書が多かったので、配色ができるデザイナーさんもたくさんいます。コンピュータ書籍版元であるエクスメディアさんなどが、フルカラーのビジネス書籍で活躍するのも納得です。図解の配色については、今回、私自身がかなり勉強をしました。さまざまな本を買い漁ったり、グラフィックデザインに詳しい人に習ったりしたのですが、もともと「色相調和論」に興味があったこともあり、とても楽しかったです。その成果が出ているかどうかは、ぜひ本書をご覧くださいませ(^^ (次回に続く)
2006.01.14
今日は以前予告していた「最近出合ったよくできた本」を紹介します。↓↓↓『ブランドのDNA ブランド戦略9つのウソとホント』(日経BP社)何がうまいって、ブランド論を“ウソとホント”というコンセプトで一貫させた切り口がうまいのです。たとえば、冒頭は「大量のマス広告がなければブランドはできない」→ウソ「強いブランドの多くがマス広告をしていない」→ホントという“対比”でフックを作っています。そして、実例として“ビームス”“ザ・リッツカールトン”を紹介するという構成。これを9つテンポ良く並べているので、非常にリズムが安定していて読みやすいです。「企業に対する批判的意見が少ない」「一般論として内容をもっと昇華させてほしい」といったマイナスの感想もありますが、このよくできた構成だけで初心者にとってはGOOD JOB!です。また、ページ端の“こぼれ話”が満載なのも、トリビアっぽくて好きです。こうした読者のことを考えた“創意工夫”に溢れている本に出合うと、とっても嬉しくなります(^^
2005.12.18
久々に「これはアカンやろー」という本を読んだので、ここにメモさせてください。最近出た新書で、ある物語を題材に専門知識を解説するという本があるのですが、1.専門用語が突然出てくるので、初心者にはわかりづらい。2.物語の扱い方が普通なので、物語のファンも楽しめない。3.各章に結論らしきものがないので、結局何が言いたいのかわからない。4.「~しているのではないのである。」といった論文口調なので、文章が冗長気味。といった感じで、とにかくどういう意図で本を書いたのかが、よくわからないのです。学者先生が初心者向けに書かれた本なので、「物語を使ってわかりやすく説明しよう」という心意気は買うのですが……。初心者にはわからない、物語ファンも楽しめない、となると、結局誰が楽しいのかというと、著者だけなんですよね。つまり、著者の“独りよがり”の本なのです。私は一部の人にしか読まれなそうなマニアックな本は好きなのですが、一般ウケを狙って誰にも読まれない本は、資源のムダだと思っています。読者を意識しない本作りは、安全性を無視した建物作りと一緒です。新書の場合、毎月一定の冊数を刊行しないといけないので、大急ぎで無理やり出したのかもしれませんが、ちょっとこれはヒドイんじゃないですかねぇ……。まあ、人のことを言える立場じゃないので、これをもって“他山の石”とさせて頂きます(^^;
2005.12.11
10月30日の日記でも取り上げた『人生は数式で考えるとうまくいく』の分析の続きをお話したいと思います。「プロフィール」が素晴らしいことは、前回お話しましたが、この本は「プロローグ」「エピローグ」も素晴らしいです。「プロフィールはもとより、プロローグもエピローグも本論には関係ないじゃないか!」と思われる方もいるかもしれません。たしかに、プロローグやエピローグは本論には関係ありませんが、購買には大きく関係してくるのです。これも「プロフィール」の際にお話したことと同じ原理で、本を購買を決める際に「プロローグ」や「エピローグ」をとりあえず読んでから決める人が意外と多いからです。つまり、「プロローグ」や「エピローグ」が面白かったら本論に期待しますし、逆につまらなかったら「本論もつまんないんじゃないか」と思われてしまうのです。『人生は数式で考えるとうまくいく』は、「プロローグ」や「エピローグ」がかなり気合の入った文章になっています。そして、読者の視線を「プロローグ」からすぐに「エピローグ」に誘導しているのも面白い点です。これが本論への期待を高める上で、効果的に作用しています。もちろん、本論自体が面白いから、こんな冒険ができるんでしょうけどね。“売れる本作り”において、気合を抜いたら負けなのは、次の3点だと思います。1.プロフィール2.プロローグ・エピローグ3.目次これらは、いずれも本を買う前によく見られるところですからね。私も毎回、気合を入れている点でもあります。【人気blogランキング】 順位はいま何位?
2005.11.03
先日も日記でご紹介した大村あつしさんの『人生は数式で考えるとうまくいく』ですが、“ベストセラー本”の勉強にも最適でしたので、ここでちょっと分析してみたいと思います。もちろん中身も素晴らしいのですが、特に本作りにたずさわる者にとって勉強になる点を2つ挙げたいと思います。まず、「プロフィール」がいいですね。えっ? と思われる方もいるかもしれませんが、本屋で本を物色している際、表紙の次にプロフィールをチェックする方は結構います。ですから、「プロフィール」がつまらなければ購買には結びつかず、「プロフィール」が面白ければさらに興味を持ってもらうことが可能になるのです。この本でよくできているのは、プロフィールの中で強調したいところの文字フォントを拡大している点です。 「今後も破られることのない記録」…… 創業会社の代表取締役の座を失い……こういった文字が拡大フォントになっているのです。「破られることのない記録」「代表取締役の座を失い」なんて、ドラマを感じさせるいい言葉ですよね。「ぜひこの本を読んでもらいたい!」という著者・編集者のハートが、こんな箇所からもビシビシと伝わってきます。本を読むなら、こういうハートのこもった本を読みたいですよね。「人々に訴えたいところは強調する」ビジネスシーンでは当たり前のことですが、「プロフィール」にまで気を配れる人はなかなかいません。ちょっとした工夫ですが、こういった所に「丁寧な本作りをしている」という心配りを感じます(人によっては「そんな小細工なんか…」と思われるかもしれませんが、この出版不況の時代では、小細工という名の「細やかな配慮の積み重ね」こそが読者引止めのための大事な要素だと思います)。さて、勉強になる点のあともう一つですが、それはまた後日に……。人気blogランキング 順位はいま何位?
2005.10.30
1.前回、余白がある効果として(1)読みやすい(2)パっと見た感じやさしい感じがする(3)目線の誘導がスムーズにいくの3つを挙げました。そのうち、「(3)目線の誘導がスムーズにいく」についてですが、何も考えずに図表などを入れている本が結構ありますよねー。「読者がどういう目線で本を読むのか」ということを、考えてくれていないのでしょうか?「キリのいい所で図表を入れたらいいや」「スペースが空いている所に図表を入れたらいいや」という編集のいい加減な本が、読みにくい本を生み、さらにはそれが読書離れの原因にもなると思うのですが……。2.細野先生の本は余白の使い方がうまいだけでなく、改行もうまいです。新聞の抜粋のところも、意味が切れるところで改行されているので、難しい新聞の文章も読みやすいです。また、小さいイラストが全ページで異なっているのもいいですよね。普通、小さいイラストはイラストレーターさんが書くので、すべてのページのイラストを描くことなんてできず、たいていは数カット用意したイラストを何度も使いまわします。しかし、細野先生の場合は自分で描かれるので、毎回そのページに合ったイラストを挿入することができます。これだけでも他の本より紙面がしっかり作り込めます。3.要は、ベストセラーを作るためには、“1ページ、1ページ、どれだけ作り込むか”という点にかかっていると思います。1ページ中における漢字比率もその一つです。文章中に漢字が占める割合が、30%以下なら「やさしく感じる」、40%以下なら「普通」、50%以上なら「難しく感じる」というビジネス文書上のマナーですが、ビジネス書においてももちろん当てはまると思います。ところが、『初心者向け』とうたっているのに、漢字比率が50%を超えている本も見られますよね。ちゃんと読者のことを考えていますか? という感じです。「余白」「イラストの入れ方」「漢字比率」といったことをすべてのページにおいて気を配るという地道な努力が、遠回りのようでベストセラーへの近道になると思うのですが、いかがでしょうか?<おわり>
2005.10.16
先週の3連休に「ベストセラー考」を書かせていただいたわけですが、出版界をはじめ非常に反響があったので再びチャレンジしてみたいと思います。ただ、よくよく考えると、私は大ベストセラーといえるものは『さおだけ屋~』しか出していないので、私の持論をこれ以上お話しするのもおこがましいかな、と。ですので、今回からは実際にベストセラーになった本から学び取っていこうと思います。だって、私なんかの話を聞くより、実際にベストセラーになった本を分析したほうが100倍得るものがあると思いますからね。そこで今回は「細野真宏研究」と題して、ミリオンセラー『経済のニュースがよくわかる本』、最新刊『世界一わかりやすい株の本』もベストセラーになっている細野真宏先生の“ベストセラー力”を分析してみたいと思います。1.細野先生の本というと、かわいい“イラスト”や適度にまとめられた“Point”に目が行きがちですが、ベストセラーの本質はそこではないと思っています。真のポイントは、その“紙面デザイン力”にあると思うのです。「紙面デザイン力……?」と思われる方も多いでしょう。それもそのはず、この言葉はさっき私が自分で名付けたからです(^^;“紙面デザイン力”とは、その名のとおり、紙面をどうデザインするかという能力です。「うちの本だって、行数や字の大きさにはこだわって作っているぞ」「太字や赤字も多用しているぞ」という方もいると思われますが、私が言う“紙面デザイン力”は文に限らず紙面全体を指しています。そして、“紙面デザイン力”で一番大事なのは『余白をどう作るか』という能力です。2.細野先生の本では、余白が実にうまく取り入れられています。たとえば、『世界一わかりやすい株の本』でも、「2・3行書いたら1行空ける」「左端は空ける」「イラストもベタ塗りにしない」と、余白を作るための仕事が実に細かいです。とにかく余白があると、(1)読みやすい(2)パっと見た感じやさしい感じがする(3)目線の誘導がスムーズにいくといった効果が得られます。なのに、ムック本でも余白をうまく使っている本は少ないです。私もムック本を作った際に「文字数は決まってますから、余白は作らないでくださいね」と言われました。「別に数行ぐらい空いていてもいいじゃないですか」と私が言うと、「空いていると気になりますから」というお返事が(;_;)普段から本をたくさん読む人なら、他の本と違った感じがするので気になるかもしれませんが、あまり本を読まない普通の人はそんなに気にならないと思うんですけど……。3.だいたい作り手には“余白恐怖症”の人が多いですよね。「余白があるくらいなら、たくさん詰め込もう」と思うのでしょう。ただ、広告デザインやWebデザインの世界では、「余白恐怖症にデザイン上手なし」という格言があるくらい、“余白を使うこと”が逆に求められます。なぜなら、余白がないと読みづらくて、本当に訴えたいことが読み手に伝わらない危険性があるからです。これはベストセラーを狙う本でも同じことがいえると思います。ベストセラーを狙う本なら、本好きではない一般読者にも読んでもらう必要があります。一般読者に読んでもらうためには、読みやすい文章である必要があります。そのためには、日本語的に読みやすいことも必要ですが、形式がすでに読みやすいことも必要です。なぜなら、本を選ぶ際に「パッと見た感じ、読みやすそう」という印象は重要なポイントですからね。ですから、細野先生の本はどれも「紙面デザイン力」により余白が効果的に入っている結果、非常に読みやすく、さらに見た感じも読みやすそうなので、大ベストセラーになっていると思うのです(もちろん、中身もいいからですけどね)。<明日の(後編)につづく>
2005.10.15
さらに昨日の続きです。1.まずは読者ターゲットを徹底的に絞らないことには、タイトルも文体も装丁も決められないと思います。「読者ターゲットは20代から40代の男女で、10代や60代にも読んでもらいたいですねー」という著者の本は、各年代に配慮をした結果、平凡な本が出来上がりがちです。また、読者ターゲットやコンセプトは首尾一貫させることが大切です。「20代向けに本を出すんですよー」と言っておきながら、古くさいタイトルをつける編集者もいます。結果的に読者ターゲットを無視していると、本が売れないのも当たり前ではないかと?2.立派な方々の「対談本」がなかなか売れないのは、首尾一貫したコンセプト、つまり「統一感」の軽視が原因だと思います。対談本の場合、たいがい2人が言いたいことを言うので、散漫な印象を読者に与えてしまい、統一感が取りにくいです。雑誌ぐらいの少ないページなら楽しんで読めますが、統一感のない展開が200ページも続くとさすがにしんどくなります。同じ「対談本」でも話し手と聞き手がはっきりと分かれている本は、構図がわかりやすく、コンセプト自体もはっきりと見えてくるので、ベストセラーもよく出ます(『経済ってそういうことだったのか会議』など)。「有名人を2人そろえれば、2人のファンが買ってくれるから、本の売り上げも倍増だ!」という安易な企画はやめたほうがいいのでは……。3.ベストセラーになる本に共通しているのは、「しっかりとしたコンセプト」があることではないでしょうか(たとえそのコンセプト自体がくだらなくても)。そして、「しっかりとしたコンセプト」を作るコツは、読者の範囲や内容・文章自体も欲張らないことです。たとえば、専門知識を伝える本の場合、「入門書にしよう、実務でも使えるようにしよう、理論もしっかりと説明しよう」とあれこれ欲張って詰め込むと、読者は読みながら迷路に迷い込みます。物事を全部説明しようとしてくれる人って、一生懸命で好感は持てるんですけど、結局何が言いたいのかよくわかりません。ポイントを絞って丁寧に教えてくれる人のほうが、ビジネスでは重宝されます。だいたい、読者はそんなに期待して本を買っているわけではありません(自分も含めて……(^^;)。「入門書がほしい人」「実務書がほしい人」「理論書がほしい人」とある程度分かれているはずです。ならば、どれかに絞って本を出したほうが、満足度は高いはずです(つまり万人受けを狙うのは諦めるべきです)。「しっかりとしたコンセプト」をまず最初につくり、それを踏まえて内容や文章量・文体・装丁・タイトルなどをつくり込むこと。そして、コンセプトは最後まで絶対にブレないこと(ブレたときは最初からやり直す)。これは本に限らず、すべてのモノ作りや企画作りにおいて共通するセオリーだと思うんですけど、どうでしょう?<おわり>※ 以上の文章は、数十社の出版社とお付き合いさせていただき、数百店の書店へ一人で営業に出かけている経験から脈略なく書かせて頂きました。それなりに反響があったので、また機会があったらお話したいと思います。興味のない方にまでお付き合いさせてしまって、すみませんでした。
2005.10.10
昨日の続きです。1.「売れる本よりも、いい本を出すべきだ」と言う方がいらっしゃいますが、なんだか変な感じがします。なぜなら、本を出すならば、いい本を出すのは当たり前だと思うからです。100%の人にとって「いい本」であることは不可能です。5%の人にとって「いい本」であれば十分だと思います。2.ただ世に数多く出ている「いい本」の中で、ベストセラーになるのは数%です。一体、売れる本をそうでない本の境い目は何なのか?一般大衆を狙ったものが売れて、そうでないものが売れない、と言う方もいらっしゃいますが、それは逆だと思います。一般大衆を狙ったものは、えてして売れません。なぜなら幅広い層を狙うと、誰の心にも届かないからです。保険会社に就職すると、まずは親戚や友人に保険を売るようにと言われるそうですが、それは親戚や友人に売れないような商品が、他人に対して売れるわけがないからです。本も同じで、誰かの心に届けば、そこからクチコミが広がると思うのです。あの『不思議の国のアリス』だって、自分の娘のために書いたお話が世界中に広まったのです。3.光文社の「JJ」や「CLASSY」などを立ち上げた伝説の編集長、並河さん(現社長)は、雑誌を立ち上げる際には、まず読者ターゲットを一人に絞って、その一人の人に受け入れられるような雑誌作りをしたそうです。一見、マニアックな雑誌の作り方のようにも見えますが、一人に絞ることによってコンセプトがしっかりとし、統一感のある筋の通った雑誌が作れるのです。本も同じで、読者ターゲットを絞ることによって、コンセプトがしっかりします。読者ターゲットやコンセプトがしっかりとしていない本は、「結局、この本は何が言いたかったの?」という読後感を与えてしまい、クチコミは発生しにくくなります。<明日へ続きます>
2005.10.09
これから脈略なく書くのは、「一般向けビジネス書のベストセラー」について私が普段から考えていることです。1.「良質な本」を誤解している人って多いと思います。良質な本とは「学問的見地から見ても高度で含蓄もある一般人を啓蒙する本」だと思っている著者や編集者が結構います。そういう人たちが作った本は基本的に上からモノを見ているので、一般人には非常に読みづらいです。そういった「難解な本」は、えてして評価が高いです。なぜなら、「難解なことを書いているんだから、きっと立派な本なんだろうなぁ」と思うのが普通だからです。真正面から非難できるほどに読める人が少ないから、非難も少ないのです。「難解だ!」と非難する人はまずいません。自分の読解力のなさを認めるようなものだからです。「やさしい本」は低評価も多いです。しかし、それは誰もが読めることの証拠でもあります。良質な本とは、著者や編集者が決めるものではなく、読者が決めるものです。そして、より多くの人が「いい本だ」と思った本が、良質な本だと思います。難解すぎて読みづらい本は、たしかに一部の人にとっては良質な本かもしれませんが、多くの人にとっては無用な本なんじゃないかな?2.ベストセラーの条件はまず優秀な編集者に恵まれるかどうかです。「長く売れる良質な本を作ろうと思っているんです」という編集者は、どうなんでしょうね。市場を見ればわかりますが、「長く売れる」と判断するのは書店さんであって編集者ではないはずです。それなのに「長く売れるかどうかを決めるのは編集者である」と思っている時点で、お客様である市場を見ていないのではないでしょうか。まず発売直後に売れなければ、書店さんは店頭からその本を撤去します。ということは、最初から多少は売れるように作らなければロングセラーなどまず無理では……?3.次のようなセリフを言う編集者さんは、ビジネス感覚が古い人が多いですよね。「出だしは売れませんでしたが、今後はコツコツ売っていきます!」→時代錯誤? 年間出版点数が1万点の時代ならいざ知らず、いまは7万点です。 売れない本を置くほど書店さんも暢気ではありません。「うちは営業ががんばっていますから!」→どこの出版社もがんばっているのでは? 根拠のない「がんばります」って、言わないほうがまだマシなんじゃ……。「うちには常備棚がありますから!」→常備棚に行くお客様は少なく、いまはそういう書店自体が減っているんですが……どこの業界でもいると思うのですが、「自社の常識」でしか物事が考えられないというのは危険ですよね。古今東西、「視野を広く持つこと」「常識にとらわれないこと」が、ビジネス成功の秘訣だと思います(昔から多くの方々が言われていることですが……)。<明日へ続く>(注)業界関係者の皆さまへ 29歳のちょっと天狗になっている若造がかって気ままに脈略なく書いている文章なので、軽く読み流してくださいね。 天狗になっているときじゃないと書けない内容なので(^^; ただ、一般のビジネス社会から出版業界を見ていると、いろいろなことが見えてくるものなんです。
2005.10.08
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