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1932 アメリカ 監督:フランク・ボーゼージ出演者:ゲイリー・クーパー、ヘレン・ヘイズ、アドルフ・マンジューほか78分 モノクロ A FAREWELL TO ARMS DVD検索「武器よさらば」を探す(楽天) かの有名なヘミングウエィの小説「武器よさらば」を映画化したヒューマンドラマ。小説が一世を風靡した直後の1932年製作で、主演はゲイリー・クーパーということもあり、戦前作としては不朽の名作に位置づけられる。モノクロ映像でオリジナルは150分だが、現在DVDになっているものは78分とかなり短く編集されているようだ。 映画の舞台は第一次世界大戦のイタリア戦線で、英米伊などの連合軍とオーストリア・ハンガリー・独の同盟軍が戦っている。主人公はアメリカ人の義勇兵で、衛生士官でありながら恋のために前線から脱走するという恋愛悲話なのだが、恋のためなら脱走兵の汚名も辞さないという熱情と、悲劇による死と戦争による死をオーバーラップさせた反戦平和観が世の人々を熱狂させたようだ。 だが正直言って、今視聴すると恋への熱情も平和観も、どうもしっくり来ない。当時の恋愛観、戦争観、倫理観との相違が大きいような気がするのだ。もちろん、視聴したものが短縮版で肝心な所がカットされているのやも知れぬが、恋愛や脱走の契機が陳腐で新鮮味に欠ける。その最大の理由はやはり時代による齟齬なのだろうと思う。第一次大戦時の倫理観、特に英国女性(主人公は米人だが部隊は英軍で恋人も英国人看護婦)の性に対する倫理観はかなり制約されていたと思われ、本作で描かれる兵士と看護婦の恋は禁断以外の何物でもなかったはずだろう。また、兵士の無断前線離脱は即銃殺刑というのが第一次大戦時の厳しいセオリーであって、現在我々が感じるような恋人に会いたいから逃げちゃったというような生やさしいものではないはずなのだ。しかし、残念ながら本作からはそのあたりのニュアンスがほとんど伝わってこないのだ。当時の人々にとっては、そんな事は説明せずとも周知の大前提であったのだろうが、時代を経て理解しがたくなっているのも事実なのだろう。 また、映像やストーリー編集も古くささを感じてしまうため、単に映画というくくりで見ると、やや物足りなさを感じてしまう。その映像だが、随所に主人公視点やオマージュ風カットなど、当時としては斬新だったろう箇所も見られるが今見るとさほど活かされているようにも見えない。 とは言え、出来るだけ当時の人間になったつもりで、様々なバイアスを排除した上で見ると、やはり衝撃作だったのだろうとは思う。第一次大戦の戦傷者数は異常なほど多く、残酷で非情なものであった。その重苦しく悲痛な死の代償から新しい光明を探そうとする時代の中、戦場での栄誉の死よりも愛を選ぶという選択は、タブーからの衝撃的な脱却だったと想像できる。現実には実行できずとも、映画や小説の中で救いを求めていたのかも知れない。 なお、登場する兵器類はほとんどない。救急トラックがそこそこ登場するほか、同盟軍側の複葉爆撃機がミニチュア特撮で出てくるのみ。空爆や砲撃シーンはそれなりの火薬量が使用され迫力はあるが、破裂位置や場所という点ではイメージ的なレベルでリアル感はない。 総じて、映画としてはたいして面白いというものではなかったが、製作年代や時代背景を考えるとやはり名作と言っても過言ではないのだろう。興奮度★★沈痛度★★★爽快度★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 第一次大戦時のイタリア。イタリア、イギリス軍はオーストリア・ハンガリー軍と戦闘状態にあった。イギリス軍衛生部隊にはアメリカ人義勇兵の衛生兵ヘンリー中尉がおり、イタリア軍207部隊の前線勤務から戻ってくる。迎えたのは旧友の軍医リナルディ大尉でバーで酒を飲み、惹かれている看護士のキャサリンとその友人ファーガソンを紹介する。ヘンリー中尉はすぐにキャサリンに恋してしまい、横恋慕されたリナルディ大尉はあっけにとられる。キャサリンもヘンリー中尉に次第に惹かれるようになるが、兵士と看護士の恋愛は御法度だった。 そんな中207部隊にプラバ北の前線に出動命令が出る。ヘンリー中尉はキャサリンに別れを告げなかったことを後悔し、勝手に戻ってきてしまう。そんな姿を見た上官はキャサリンをミラノの病院に勤務がえさせる。 前線に戻ったヘンリー中尉だが、なんの勤務もせぬうちに砲撃で頭と足を負傷してしまう。リナルディ大尉が治療にあたり、リナルディの好意でキャサリンのいるミラノへ後送される。 ミラノの病院で再開した二人は直ちに熱い恋に落ち、牧師のもとでささやかな結婚式をあげる。だが禁断の恋であり婦長らはいまいましく思い、傷が癒えたヘンリー中尉を再び前線に送り出す。切ない別れを終えたキャサリンは一人で待ち続けることを恐れ、スイスのプリサーゴへ移住しヘンリーに手紙を出す。だが、虫の居所が悪かったリナルディ大尉はキャサリンからの手紙を返送してしまい、ヘンリー中尉はキャサリンと音信不通になってしまう。 不安を覚えたヘンリー中尉はミラノへキャサリンを探しに行くことを決意。無断の前線離脱は脱走兵となるが、敗残兵らの列に混じり、軍警察の追っ手をまいてミラノに辿り着く。だが、そこにはキャサリンはおらず、誰も行く先を教えてくれない。唯一看護士からキャサリンが妊娠していることを知る。 ホテルで隠れてキャサリンの行方を追うヘンリー中尉は、リナルディ大尉に捜索広告を出してくれと頼む。さらに、上官の少佐の取り計らいで、ヘンリー中尉は精神記憶障害で前線から離脱したということで昇進の上前線に戻れることに。だが、ヘンリー中尉はそれを断ってキャサリンに会いたいと大尉に告げる。リナルディ大尉はヘンリー中尉の情熱に負け、キャサリンがスイスにいることを告げる。 ホテルマンとリナルディ大尉の手助けでヘンリー中尉はボートでスイスに向かう。だが、スイスでは手紙が届かないことに動転したキャサリンが流産に。しかも死産の上キャサリン自体が生命の危機に陥る。ようやくヘンリー中尉がスイスの病院に到着するが、もはや手の施しようがなかった。ヘンリー中尉は手術中に神に祈り、ようやくキャサリンと面会できるが、キャサリンは瀕死の床で「アメリカに帰って建築家になってね」と呟き息絶える。 ちょうど休戦宣言が出され戦争は終わった。ヘンリー中尉はキャサリンの遺体を抱き上げ、「平和が訪れたよ」と言うのだった。
2010年08月08日
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1950 アメリカ 監督:ルイス・セイラー出演者:デヴィッド・ブライアン、ジョン・エイガー、フランク・ラヴジョイ、ポール・ピサーニほか91分 モノクロ BREAKETHROUGH名画DVD 総攻撃 VCDD-80(監督:ルイス・セイラー/出演:ジョン・エイガー) DVD検索「総攻撃」を探す(楽天) 1944年の連合軍ノルマンディー上陸作戦を主に、米歩兵第1師団のとある小隊を描いたミリタリーヒューマンドラマ。新任小隊長がベテラン中隊長や軍曹に助けられながら、次第に指揮官として育っていく過程を描いている。戦争記録映像を多用しながらも、ある程度は史実の時系列に沿って展開し、ミリタリーアクションとしても小隊・中隊戦術を垣間見ることが出来る作品。後半やや飛ばし気味で記録映像に頼っている嫌いはあるが、前半部分は後年の名作「最前線物語 (1980)」や「バンド・オブ・ブラザーズ」に影響を与えたのではないかと思うほど良く似た雰囲気を出している。 本作の主役小隊は米陸軍歩兵第1師団(ビッグ・レッド・ワン)所属で、ノルマンディー上陸作戦時にオマハビーチのイージーレッド地点上陸を敢行していることから、歩兵第16連隊所属のE・F中隊あたりであることが想定される。その後、内陸部の生け垣掃討作戦を実施しているが、地名が明確になっていないので、それ以上のことは不明。 ちなみに歩兵第1師団はノルマンディー上陸戦以前にアフリカ戦線、シシリア戦線で勇名を馳せており、このあたりは「最前線物語」に詳しく描かれる。主役の新任小隊長マロリイ少尉はノルマンディー戦からの着任となる。 小隊指揮官はたいてい士官学校を卒業したばかりの新米少尉で、学校で習った机上の空論と経験不足が問題となり、部下のベテラン兵からの信頼を得るのが最大の課題となる。本作もまさにここが焦点となっており、部下の死に冷淡な上官(中隊長)と戦術や感情での対立を経ながらも、その冷淡さの理由と必要性が次第に明らかになってくるのだ。こうした戦場での指揮官の苦悩と立場を描いた作品は少なくないが、本作もこの点においては秀作の部類に入るだろう。 ストーリー展開としてはかなりノーマルな作りで、会話や行動ともに特に目立つものはなく、終盤部分でもう一波乱あるのかと思ったが、いきなり「あれっ」と終わってしまったのがもったいなかった。起承転で終わってしまった感じ。まあ、逆に日常的な雰囲気のドキュメンタリー風といえるかもしれない。一応小隊の軍曹視点での展開になっているようだ。 役者は比較的個性的で、役柄の性格付けも教員あがりの小隊長、政治家志望、コメディアン、マッチョ、牧師、新入り、犬好きなどしっかりしていて明快。コメディアンが物まねをするシーンもあり、結構上手そうだが良くわからない。ただ、劇中に名称があまり出てこないので顔と名前が一致しにくいのと、人物描写の掘り下げがやや浅めなのが難点か。 映像はモノクロで、戦闘シーンや戦場背景等はやや見劣りするが、製作年代を考えればそこそこの出来か。中でも興味深かったのは上陸戦時の戦闘シーンで、敵鉄条網やトーチカを撃破するための破壊筒使用や機関銃、小銃、手榴弾の使い分けが面白かった。 兵器類は上陸戦に用いた上陸用舟艇のほか、陸上兵器でシャーマン戦車、ドイツ軍戦車役としてM46パットン戦車?ベースに偽砲塔を被せたものが登場する。砲塔は物干し竿のような陳腐な物(笑)。 記録映像は多様で、上陸戦時の艦隊風景、上空支援の航空機類、上陸戦後の両軍戦車、ソフトスキン類が出てくる。有名なノルマンディ上陸戦映像もあり、終盤はオーバーロード作戦時のものが目立つ。ドイツ軍戦車ではII号戦車やIII号戦車の姿も見える。 全般に古い年代の映画としては良くできている方だとは思うが、もう一つインパクトに欠けた。ノルマンディー上陸戦を描いた作品の一つとして、戦史的見地から見る分にはそこそこ面白いとは思う。 興奮度★★沈痛度★★爽快度★★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1944年春、イギリスの米軍駐屯地に滞在する米陸軍歩兵第1師団のもとに、元教員で士官学校を卒業したばかりのジョン・マロリイ少尉が小隊長として任官してくる。所属する中隊長はヘール大尉で、マロリイ少尉の第1小隊に模擬訓練をさせる。しかし、新米のマロリイ少尉は破壊筒を仕掛けたロジェック二等兵を助けるため、自ら救出に向かい、自分の役割だった発煙筒を炊くのを忘れてしまう。小隊のピート・ベル二等軍曹が窮地を救うが、ヘール大尉はマロリイ少尉に激怒する。ベル二等軍曹はマロリイに、大尉は自分がいた小隊だけに厳しい愛情なのだと諭す。ヘール大尉は事あるごとに士官学校での教えなど実戦では通用しないと、マロリイ少尉に厳しく当たり、少尉は大尉が自分を嫌っているのだと思いこむ。 いよいよノルマンディ上陸作戦が開始され、小隊はオマハビーチのイージーレッド地区上陸を割り当てられる。艦上で少尉は大尉に身の上話を話しかけるが、身の上話は聞きたくない、おまえも部下のことを知るなと怒られる。 作戦第一段階で航空機攻撃、艦砲射撃が開始され、続いて小隊も上陸用舟艇に乗ってビーチに向かう。ドイツ軍のトーチカ陣地からは激しい銃撃が行われ、小隊も海岸に釘付けにされる。その中コメディアン志望のハンセンが足を撃たれて負傷。マロリイ少尉は敵陣地に銃撃と手榴弾攻撃で何とか攻略に成功する。小隊はさらに前進を命じられ、内陸部に行くが、ドイツ軍は生け垣に身を潜めて待ち伏せ攻撃してくるのだった。 マロリイの小隊は常に危険な偵察を命じられ、ロスマン二等兵、ロジェック二等兵、ネルソン二等兵(新入り)、ベル軍曹らは偵察に向かい、ドイツ軍の潜む地点を報告する。ヘール大尉はすぐさまマロリイ少尉に戦車隊と連動して攻撃を命じるが、潜んでいたドイツ軍戦車砲で戦車は破壊され、窮地に追い込まれる。マロリイ少尉はヘンダースン三等軍曹(牧師)にバズーカ砲での攻撃を命じ、敵戦車砲破壊に成功する。だが、ヘンダースン軍曹は戦死し、少尉は悲しみにくれる。軍曹の死にうちひしがれる少尉に大尉は冷徹に死体の片づけを命じ、少尉は大尉に血も涙もないのかと抗議する。だが、実は大尉も軍曹の旧知であり、深い悲しみを負っていたのだった。 マロリイ小隊にもとにフランス人町長と娘がやってくる。もう町にはドイツ軍はいないので砲撃を止めて欲しいと言うのだ。大尉はマロリイ少尉に偵察を命じる。マロリイ少尉らは町の中に入り、フランス人住民の手厚い歓迎を受ける。ヘール大尉の中隊も合流し、拠点を構築する。だが、建物の窓から突然銃撃を受け、ワトスン、ワレス、ジンボ(犬好き)が戦死してしまう。大尉は家の狙撃者を殺すが、それはドイツ軍スパイのフランス人女性だった。 マロリイ少尉は相変わらず危険な偵察任務に就かされるが、そこでドイツ軍の機甲師団を発見する。少尉は大尉に報告するが大尉の司令部はドイツ軍の激しい砲撃を受ける。大尉は少尉に戦車の撃破を命じる。敵戦車の攻撃にマロリイ少尉は勇猛果敢に挑み、バズーカ砲で対抗するも苦戦する。背後に回られた戦車に対し、足を負傷したドミニク伍長(政治家志望)は戦車によじ登り手榴弾を投げ込んで撃破する。何とかドイツ軍を食い止めたマロリイ少尉をヘール大尉ははじめて誉めるのだった。 中隊は休暇で後方に移動する。大尉は少尉に優秀だからこそ常に危険な任務に就かせていたのだと告白する。そこに負傷から癒えたハンセンが戻るが、すでにジンボらも戦死したことを悲しむ。ベル二等軍曹は看護婦の女性兵に声を掛け休暇を楽しむ。 いよいよパットン機甲師団も進撃を開始し、中隊は援護のためにマリニーの町に総攻撃をしかけることに。そんな折、ヘール大尉は大隊本部に呼び出され、旧友の大隊長モリー中佐から司令部付異動を命じられる。見た目は昇任人事だが、疲れ切ったヘール大尉の事実上の解任だった。気を落とす大尉だったが、後任推薦でマロリイ少尉を推挙する。中佐はまだ少尉なのにと言うが、大尉の強い推薦におされ、マロリイを中尉に昇進させて中隊長にすることを承認する。マロリイは大尉から昇任を告げられ驚くが、大尉はマロリイの優秀さを誉め、部下の身の上話を聞くなと助言する。 マロリイの小隊には新人のジョンソン少尉が赴任してくる。中隊長となったマロリイは、かつての上官ヘール大尉のように、ジョンソン少尉に身の上話などするな、ベル軍曹の言うことを聞けと冷たく言い放つ。ジョンソン少尉はマロリイ中尉を怖い人だと身をすくめるが、ベル軍曹は大丈夫だと笑って言うのだった。 部隊はサン・ロー・の町を制圧し、連合軍はフランスからドイツ軍を駆逐するのだった。
2010年07月21日
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WOWOWで放映中の海外戦争ドラマ「パシフィック」の第1話ガダルカナル前編みました。うーむ、第1話のせいか、いまひとつ盛り上がりませんでしたね。戦闘シーンもなんだかみにくいし、迫力もいまひとつ。はじまったばかりなんで、ストーリーもキャラもはっきりしないです。しかも、日本兵・・・・かわいそす・・・。まあ、第2話以降はもっと良くなって行くんでしょうけど、DVD待ちでいいかなこりゃ(笑)ちなみに、第1話はweb配信もしてるようです。25日(日)まで。http://www.wowow.co.jp/drama/pacific/motion/index.html原作のひとつペリリュー・沖縄戦記買いました。こちらはなかなか良い本ですね。ペリリュー・沖縄戦記
2010年07月20日
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WOWOWでこれからスピルバーグと、トム・ハンクスの「パシフィック」が放映です。第1回の今日だけは無料放送なので、視聴してみようと思います。さっきまで、撮影予告編みたいな番組やっててみてみましたが、バンドオブブラザーズにまけないくらいリアルっぽいです。たぶんWOWOW契約はしないので・・・いずれ出るだろうDVDを購入する予定ですが、全話早くみてみたい・・・原作はこれ。ペリリュー・沖縄戦記
2010年07月18日
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最近映画の「姿なき一〇八部隊」についての問い合わせが多いなあ、と思っておりましたら今年の8月14日にTBSの恒例の終戦ドラマでリメイクをやるそうです。 TBS「歸國」 原作は棟田博の「サイパンから来た列車」で、棟田は「拝啓天皇陛下様」の原作者でもあります。 【中古】afb【古本】拝啓天皇陛下様/棟田博 ビートたけしや小栗旬も出演だそうで、何の役なんでしょうか。役柄をみるかぎり、旧作とはちょっと設定が違うようです。原作読んでいないので、どちらが原作に近いのか知りませんけど(汗)。
2010年07月03日
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1943 イギリス 監督:チャールズ・フレンド出演者:ウォルター・フィッツジェラルド、マーヴィー・ジョーンズ、ラルフ・マイケル ほか94分 モノクロ SAN DEMETRIO LONDON DVD検索「船団最後の日」を探す(楽天) 第二次世界大戦時、米英間の物資輸送船団に従事したイギリス石油運搬船サン・デメトリオ号の遭難と奇跡的帰還を描いたドキュメンタリータッチのヒューマンドラマ。サン・デメトリオ号の遭難・帰還は史実で、F・テニスン・ジェッシの原作をもとに多少の脚色を加えて製作されたものらしい。モノクロ映像にやや雑な映像、ベタっぽい会話で構成されており、ドキュメントという重みに依存しすぎて、映画としては雑なイメージがあるが、製作年がちょうど命がけの米英間物資輸送作戦真っ盛りという時期を鑑みれば、戦意高揚的な作品として重要な役割を果たしているのだとも言えよう。ちなみに、こうした軍に徴発された米英商船の活躍を描いた戦意高揚映画はこの時期数多く制作されており、「栄光に死す(1939米)」「潜水艦轟沈す(1940英)」「北大西洋(1941米)」「Uボート撃滅(1942米)」「暁の雷撃戦(1944英)」など数多い。ただ、いずれも商船が主役なので、戦争映画としては若干淡泊で面白みに欠けるが。 米(ソ)英間の物資輸送船団はコンボイとも呼ばれ、アメリカが連合軍として正式参戦する以前から頻繁に行われており、ドイツ軍水上艦やUボートの格好の餌食となっていた。本作の主役サン・デメトリオ号も1940年10月から11月にかけてコンボイHX-84に参加し、テキサスのガルベストンから航空燃料12000トンを輸送していた。この頃はまだアメリカ軍は参戦していない上、護衛船も貧弱であり、唯一の護衛は武装商船ジャービス・ベイ(6インチ砲が8門)のみという貧弱なものだったらしい。ジャービス・ベイは独軍ポケット戦艦アドミラルシェアー(11インチ砲)に撃沈され、フェーゲン艦長は死後ビクトリア十字勲章を授与されている。 本作で興味深いのは、他作品とやや異なって商船員の活躍ぶりを描くというよりは、一旦は火災により放置した商船を再び操船し、イギリス本土に積荷輸送を成功させ、商船員がその対価を報償されるというストーリーである点だ。この頃の商船員の戦死率はかなり高かったものと思われるが、その恐怖を勇敢ぶりで打ち払うだけでなく、対価の報酬という側面で高揚させようとする企図が見えてくるのだ。イギリスが置かれた立場と将来の不安という歴史的瞬間を背景に見てみると、かなり興味深い題材と描き方だとも言えよう。 ちなみにサン・デメトリオ号は本作で描かれるように、無事輸送を成功させるが、後1942年3月17日にU-404によって撃沈されているらしい。 一応は独軍戦艦アドミラルシェアーと船団との海戦シーンがあるものの、本作ではほとんど戦争映画らしい戦闘シーンはない。しかもサン・デメトリオ号自体は本物の商船を利用しての撮影だが、独軍戦艦や武装商船などはミニチュアを使用し、海戦や荒天シーンは特撮や合成がメインとなっている。あとは船内内部、漂流中のボートシーンで、会話がメインとなっている。 船員のほとんどは英国人だが、一人だけアメリカ(カナダ系?)人が混じっており、この当時アメリカ人の勇士的参加があったことを偲ばせる。 このほか特筆される点としては、軍人ではない商船員たちの行動パターンと、エンジン機関の復旧シーン、海図もコンパスもない中での操船工夫などがあげられる。無為に死を選ぶのではなく、生に対する執着と経験が生き生きと描かれている。 全般に淡々とした流れで、さほど起承転結があるわけでもない。終盤もあまりにあっけない展開で、映画としての完成度は低い部類だろう。むしろ歴史的映画として学問的に検証しながら見るには面白い作品かもしれないが。興奮度★★沈痛度★★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1940年10月28日、イギリスの油輸送船サン・デメトリオ号はウェイト船長のもとコンボイHX-84に参加する。船団はテキサスのガルベストンから航空燃料12000トンを輸送することとなり、船員の中にはカナダ系アメリカ人プレストンも従事していた。 38隻の船団は唯一の護衛船である武装商船ジャービス・ベイに守られて航行するが、11月5日、独軍ポケット戦艦アドミラルシェアーに発見されてしまう。ジャービス・ベイのフェーゲン艦長は射程距離で勝てないことを分かった上で、戦艦に突進し囮となる。ジャービス・ベイは見る間に火だるまとなり撃沈される。サン・デメトリオにも砲弾が被弾するが、ジャービス・ベイのおかげで夕暮れとなりなんとか離脱する。 だが、被弾は火災を起こし、積荷の航空燃料への引火が危ぶまれる。ウェイト船長は船の放棄を決断し、2隻のボートに分譲して離脱する。ウェイト船長の乗った25名のボートは途中で他船に救助されるが、二等航海士ホーキンス、機関長カール・ボラードの乗った16名のボートは漂流をし始める。 負傷したジョン・ボイルを乗せたホーキンスのボートだが、水も食料も乏しく荒天に疲弊しきる。途中で船舶を発見するもそれは炎上中のデメトリ号だった。また星を航空機と勘違いすることも。しかし、二日間を経過し疲弊がひどくなったために、ホーキンスらはサン・デメトリオ号に戻ることを決意する。 乗船したホーキンスらは火災を消火し、エンジンの再起動のため修理を始める。食料や水をかき集めるも火が使えず、さらに通信機器もコンパスも破壊されていた。ボートも失ってしまう。もはや自力で戻るしか手はない。 なんとかエンジンも復旧し、艦内通信の工夫も行い、コンパスの代わりに太陽で航行することに成功する。だが、負傷したジョン・ボイルは弱って死亡してしまう。ユニオンジャックに遺体包み、海葬するのだった。 7日間が経過し、ようやく陸地にたどり着く。そこはアイルランドだったが、本社からの手配でタグボートに曳航されてイギリスに戻ることが出来る。積荷の航空燃料はほとんどが無傷だった。この功績を讃えられ、海事審判所ではホーキンス、プレストン、ジョン・ボイルらに1000ポンドなど報奨金が支払われたのだった。
2010年07月01日
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来年2月に公開予定の日本の戦争映画です。竹野内豊や唐沢寿明などが演じるそうで、サイパンでの戦いを映画化するようです。竹野内豊、たった47人の兵力で45,000人の米軍を翻弄した実在の人物演じる(シネマトゥデイ)主人公は、太平洋戦争中、激戦地の一つであったサイパン島で、たった47人の兵力で4万5,000人もの米軍を翻弄した実在の人物、大場栄陸軍大尉だそうで、竹野内が演じるのだとか。さて、どんな映画になるのでしょうか。内容が内容だけに、期待はしたいところですね。
2010年06月30日
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スピルバーグとトム・ハンクス製作指揮のテレビムービー「バンド・オブ・ブラザーズ 」の第2弾作が出るようです。その名も「ザ・パシフィック」7月18日からWOWOWで放映するそうです。10話のオムニバス形式で、太平洋戦線が舞台の力作だそうで、製作費用200億だとか。BOBが素晴らしい作品だっただけに大いに期待です。ただ、相手が日本というのが・・・。是非とも見たいところですが、はてWOWOWに加入すべきか、DVDになるのを待つべきか・・・。たぶんいい作品なのでDVDでもっておきたいので、発売まで待とうかな・・・。ただ、第1話は無料だそうなので、それだけでも見ておこうか。ちなみに原作の一つには「ペリリュー・沖縄戦記」などとなっているそうです。ペリリュー・沖縄戦記 【中古】海外TVドラマDVD バンド・オブ・ブラザーズ 5【10P14jun10】 【中古】海外TVドラマDVD バンド・オブ・ブラザーズ 1
2010年06月17日
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今年の夏8月に「キャタピラー」という映画が公開されるそうです。若松孝二監督で、戦時中の日本が舞台だそうです。キャッチフレーズは『実録・連合赤軍あさま山荘への道程』の若松孝二監督が描く性と反戦なかなか微妙な感じですけど、どうでしょう。
2010年06月09日
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2006 ドイツ 監督:ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヨゼフ・フィルスマイアー出演者:ギデオン・ブルクハルト、ラーレ・ヤバシュ、レナ・バイヤーリンク、シベルケキリほか122分 カラー DER LETZTE ZUG/ POSLEDNI VLAK, THE LAST TRAIN【23%OFF!】アウシュビッツ行 最終列車 ヒトラー第三帝国ホロコースト(DVD) DVD検索「アウシュビッツ行最終列車」を探す(楽天) ドイツナチスによる、ユダヤ人アウシュビッツ収容所送りを描いたヒューマンドラマ。ユダヤ人虐殺を描いた映画は数多くあり、決して目新しい題材でも、史実に沿ったドキュメンタリータッチのものでもないが、アウシュビッツ移送の一列車だけに焦点を当てたミクロ視点が新鮮と言える。 言うまでもないが、ナチスはユダヤ人抹殺計画により、ドイツを始めとするヨーロッパ各国のユダヤ人をアウシュビッツ強制収容所などに強制移送し、強制労働やガス室などで殺害した。本作はドイツ在住だったユダヤ人が強制的に列車に乗せられ、アウシュビッツ収容所に着くまでの顛末を描いたものである。ほんの一握りのユダヤ人だけが列車から脱出することができるのだが、大多数のユダヤ人は虫けらのごとく殺されていく。かなりのシリアス調で比較的重い映画の部類に入るだろう。 映画としてはストーリーのインパクトや映像スケール感にやや欠ける嫌いがあり、一見お手軽テレビムービー風の出来具合。映画ならばもう少しメリハリの効いた完成度が欲しかったところで、日本未公開というのも頷けるレベル。 その理由として、邦題や英語題で「最終列車」がメインテーマになっているように、「命」の最終列車という強烈で悲壮感漂う舞台が設定されているにも関わらず、その最終列車に乗せられるという運命の分かれ道的な導入部表現がやや甘い感じなのだ。ユダヤ人の多くは行き先も列車に乗せられる理由も解らずに移送されるのだが、次第に最終列車の運命を理解し、恐怖と葛藤に打ちのめされ、そしてそれを受け入れていくというのが本作の最大の見せ場だろうと思われる。だが、登場人物の心の変化描写が余り上出来ではなく、かつ登場人物の回想シーンが空気を読まずに挿入されるため、見ている側の心情の盛り上がりに欠けるのだ。 さらに、映画の起承転結で言えば、「起」のインパクトが薄く、「承」への流れが悪く、「転」が見あたらない。救いは「結」が余韻を残して美的に作り上げられていることくらいで、やはり映画としての完成度は高くないと言える。 とは言え、描かれる題材は重く、人間の生命を考える上で心に響くものは多い。主人公の一人である少女ニナのいたいけでありながらも強い心を持つ姿には感涙するし、列車内での老若男女の言動もいかにもユダヤ人らしい。粗雑で乱暴な若者がいる一方で、温厚で知的なユダヤ人像も描かれ、何と言ってもユダヤ教に対する敬虔さが強く描かれているのが印象的だ。 一方、ドイツ軍は当然ながら冷酷粗野に描かれるが、列車移送指揮官のクレヴァスSS中尉がその親玉である。だが、中尉は冷酷に描かれてはいるのだが、今ひとつ彼の性格付けがなされておらず、映画に対しての貢献度が低いのが残念。興味深かったのは途中で登場するウクライナ人SSで、ドイツSSに比して冷酷だと評されていた。また、ドイツ軍は全て悪玉というわけではなく、途中の駅で出会ったドイツ国防軍兵士らは、SS中尉に逆らってまでもユダヤ人たちに食料や水を与えていたのが印象的だ。この辺りも短絡的な悪玉善玉史観にとらわれないフェアな描写だと言える。 また、移送列車の機関士たちも映画のストーリーを支えている。機関士らは多分ドイツ人だと思われるが、息子を戦争で失った者やユダヤ人の恋人を強制移送された者など、厭戦的一般のドイツ人の心情を表現している。ユダヤ人とドイツSS、一般的ドイツ人など多様な人間模様をきちんと描いているのは好感だ。 ロケ地はドイツ、リトアニアだそうだ。主に列車と駅のシーンなので余りスケール感を感じることもなく、比較的安価な映画のイメージ。まあ、列車内での出来事がターゲットの映画なわけだから、映像に期待してもしょうがないのだが。ただ、列車内を描くのであれば、もっと登場人物の表情とか列車内部の描写など、カメラワークに凝っても良かったのではと思う。それだけで映画のインパクトは変わったのではないだろうか。 全般に可もなく不可もなくといった出来具合で、見終わった後の映画に対する新鮮度はさしてないものの、ユダヤ人問題を真摯に見るぞ、という意気込みがあるのならば、興味深い視点での映画だと思う。興奮度★★★沈痛度★★★★☆爽快度★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) ドイツナチスによってベルリン市内のユダヤ人たちが強制的に連行されていく。元ボクサーだったヘンリー・ノイマン夫婦と幼い二人の子供(ニナと赤ん坊)、フリードリヒ医師と娘アーロンとその子、ギャクが好きな歌手ヤーコプとピアニストの妻ガブリエルらはアパートから強制的に連行される。壁の中に隠れていた宝石商アルベルト・ローゼンと恋人ルースも見つかってしまう。 多くのユダヤ人たちはアウシュビッツ行きの貨物列車に強制乗車させられる。移送指揮官はSSクレヴァス中尉で、冷酷に任務を遂行する若者だ。乗車の際にこれを拒否した肉屋の夫人が銃殺され、ユダヤ人たちは渋々乗車する。 列車は鍵を掛けられ小さな窓しかない。詰め込まれた多くの乗員に対し、食料はなく水もバケツ一杯だ。ヘンリーは貨車内の主導者となり、授乳する妊婦を優先に水を分配するがすぐになくなってしまう。途中の駅でウクライナ人SSたちが水を配るが、焦った少年がこぼしてしまう。ヘンリーは少年を叱りとばす。ウクライナ人SSらは絞首台を作っており、恐怖に怯えるが、殺されたのは別の貨車のユダヤ人だった。 アルベルトとヘンリーは列車の鉄格子を切って外に出て鍵をはずして列車から飛び降りることを計画。体の小さい少年イジーが外に出ることに。だがイジーは落車して死亡。父親はヘンリーを激怒する。次にルースがこれにチャレンジし成功。だが逃げるのを焦った男二人が飛び降りて発見され射殺される。クレヴァス中尉は誰が鍵を開けたのか尋問する。中尉はヘンリーの娘ニナを尋問する。だがあくまでもニナは寝ていたと言い張り、クレヴァス中尉はニナの態度に好感を持って尋問を中止する。だが水と食料を要求した男は容赦なく射殺する。 貨車内は死体が重なり、喉の渇きと飢えに満ちる。止まった駅で防衛するドイツ兵に水と食料を要求すると与えてくれる。クレヴァス中尉は勝手なことをするなと責めるが、ドイツ国防軍の指揮官は無視して食料と水を与えるのだった。 アルベルトとヘンリーは今度は床に穴を開けて脱出を試みる。再び水が乏しくなり、ユダヤ人らは小便を飲んで過ごす。ヤーコプは兵士に歌を歌って水を求めるが無駄だった。ようやく駅員らが水を掛けてくれて水を得るが、もはや皆必死の状況だった。そんな中、幼いヘンリーの赤ん坊が死亡し、妻は絶叫する。 いよいよアウシュビッツが近くなり、小さな床穴からルースとニナが逃げることに。夜に停車した隙を見て二人は脱走。貨車内のユダヤ人らは兵士の気を引くために大騒ぎを。ドイツ兵は銃を撃ち込んで他の貨車のユダヤ人らは死亡する。その隙にルースとニナは走るがニナの足が線路に挟まってしまい、ドイツ兵に発見される。間一髪の所を周囲に潜んでいたレジスタンスに救われて二人はレジスタンスに保護される。 列車の機関士はクレヴァス中尉の悪口を言う。彼の恋人はユダヤ人で彼女も移送されたのだそうだ。 列車はアウシュビッツに到着し、希望のない収容所へ収容されていく。ヤーコプは妻が死亡した嘆きから貨車の前で歌を歌い続け、射殺される。森に隠れたニナは父親に教わったとおり、辛くなったら「聞けイスラエル」の歌を歌うのだった。
2010年05月29日
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2010 フランス・アメリカ・スペイン・イギリス 監督:ポール・グリーングラス出演者: マット・デイモン、グレッグ・キニア、ブレンダン・グリーソン、エイミー・ライアンほか114分 カラー GREEN ZONE DVD検索「グリーン・ゾーン」を探す(楽天) 実際の話、イラク戦争後、結局見つからなかったイラクの大量破壊兵器だが、それをネタにサスペンスアクション映画にしてしまったのが本作。もともとイラクの大量破壊兵器保有疑惑についてはアメリカ政府捏造陰謀説、CIA誤認説、サダム・フセイン詭弁説など様々な憶測を呼んできたが、本作では政府の一部の高官による陰謀ということになっている(笑)。内容が内容だけに、アメリカ政府やアメリカ軍的にはなかなかきな臭い映画だと思われるが、まあどちらかというとアクション映画メインの作りなので、社会的風刺や告発といった観点はかなり薄いと言えるだろう。 本作は2003年のイラク戦争後、米軍とUNMOVIC(国連監視検証査察委員会)による大量破壊兵器捜索活動を舞台にしている。米軍は移動探索班 (MET)を組織して、情報提供された大量破壊兵器保管地を捜索していく。まだ、当時はイラク軍も正式に解体されていない上、スンニ派を中心とした抵抗勢力が存在していたため、かなり危険な任務であったらしい。表題のグリーン・ゾーンは、当時バグダッドを中心にした安全地域をこう呼んでいたことからついたらしいが、郊外の危険な任務に比して、グリーゾーンの政府高官たちは優雅な日々を送っていたという皮肉も描かれている。 また、本作はCIAが好意的に描かれているのも興味深い。何か思い入れがあるのだろうか。 ストーリー的には、サスペンス展開も程よく刺激的で、時間が経つのが早く感じた。ただし、内容がフィクションであるために、イラク戦争というシビアな話題の割りに軽々しく描かれることに、多少の違和感は感じた。また、主人公のMET指揮官であるミラー上級准尉が、アクションもの主人公らしく熱血漢であることは良いのだが、国家の威信をかけた一大事にやや軽率な感じがするのと、階級の割りに権限を持ちすぎているのがちょっと・・・。しかも、自分の正義感のために部下を危険に巻き込むあたりも納得できず。シリアス性という点でやや緊張感をそいだ。 アクションという点では、まあまあ及第点。銃撃戦やカーアクション、追跡劇がウリなのだと思われるが、思ったほどは凄くない。映像がぶれて見にくいのと、CGによる補正がやや目に付いてリアル感やスケール感が余り感じられなかった。戦争映画ではなく、アクション映画なのだから、と言ってしまえばそれまでだが、やはりイラク戦らしい雰囲気がもう少し欲しかったところ。 主演のマット・デイモンはアクションスターらしい迫真の演技。脇を固める部下の兵士たちは本物のイラク戦争帰還兵が多数演じているそうで、動きについては文句ない。どうせなら、もう少し市街戦の映像を見てみたかった気もするが。唯一の女性役のエイミー・ライアンはいまひとつ存在感なし。かなりのキーマンかと思ったが、さほどでもなくちょっと物足りなかった。 ロケはモロッコ、スペイン、イギリスだそうだ。だいぶCGも用いられているだろうが、いかにもイラクらしい雰囲気は良く出ていた。兵器類はM-1戦車、 M-2戦闘車、ハンヴィー、M35トラックなどの姿が見えたほか、ヘリではH-1イロコイ、CH-47チヌークなどの姿が見える。ただ、若干背景との違和感がある場面もあったので、CG合成の可能性もあるようだ。 全般にコンパクトにまとめてきた感じで、アクション映画としてはまあまあといったところか。ただ、アクションが凄いかと言うとそうでもなく、ストーリーにもう少しシリアス性とインパクトがあればもっと楽しめたかもしれない。興奮度★★★沈痛度★★爽快度★★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) イラク戦開始直後のイラク。アメリカ軍を主体とする同盟軍はバグダッドを手中に収め、国連とともにイラク軍が保有するとされる大量破壊兵器の捜索に乗り出す。任務は米軍の移動探索班(MET)が行い、METデルタのロイ・ミラー上級准尉を指揮官とする分遣隊も、指示された場所の捜索に出動する。しかし、そこにはイラク軍残党が陣取っており、先遣隊と壮烈な銃撃戦を繰り広げている。さらには、住人による略奪が行われており、ミラー上級准尉は部下の軍曹の忠告も聞かず、保管庫へ強行突入する。だが、そこは単なる便器工場跡で、大量破壊兵器はなかった。これまでの任務も全て空振りに終わっており、ミラー上級准尉は、情報の出所の信憑性に疑問を抱く。 ブリーフィングの席でミラー上級准尉は上官の大佐や少将に疑問を投げかけるが、任務を遂行しろと命じられるだけだった。そんなミラーの姿を見て、CIAのブラウンが近づいてくる。ブラウンも情報の出所に疑問を感じており、CIAとして政府高官の国防総省パウンドストーンを怪しいとにらむ。パウンドストーンは情報の出所を「マゼラン」という人物だとしか明かさず、ウオール・ストリート・ジャーナル女性記者のローリー・デインに、都合のいい情報をリークしている。 ミラーは再び大量破壊兵器捜索の任務に出るが、今度は地面を掘削するばかりだった。またも空振りだったが、そこにイラク人のフレディがある情報を持ってやってくる。フレディは国の行く末を憂いており、スンニ派幹部の会合情報を持ってきたのだ。ミラーはまたもや部下の制止を聞かず、勝手にスンニ派幹部会合現場に急行する。そこで銃撃戦が勃発し、数人の幹部を捕獲するも、高級幹部(クラブのジャック)のアル・ラウィ将軍を取り逃がす。だが、会合場所の住人 は秘密の手帳を持っており、この手帳には幹部の住所など機密が記載されていた。 幹部を尋問しようとしたミラーだが、そこに陸軍のブリッグス少佐らがやってきて、幹部を連行してしまう。少佐は手帳の引渡しを求めるが、ミラーはフレディに託して手帳を隠す。ミラーはすぐさま、CIAのブラウンに会い、手帳を渡す。ブラウンはミラーを自分の部下に引き入れるのだった。また、記者ローリーもミラーの行動に気づき、接触を図る。ミラーは記者の記事を検索し、情報源の「マゼラン」についてローリーが何か知っていると感づく。 CIAのブラウンらは大量破壊兵器はもともと存在せず、パウンドストーンによる茶番劇だと推測する。そこで、イラク軍の復権と自身の地位を求めているアル・ラウィ将軍と直接取り引きし、大量破壊兵器がなかったことを公表しようと目論む。ミラーが取り引きに出ようとしたとき、パウンドストーンが大統領命令を持ってCIAに乗り込み、手帳を回収する。さらに、パウンドストーンはブリッグス少佐を使ってスンニ派幹部を暗殺していく。 ミラーは捕まっていたスンニ派幹部捕虜から「ヨルダンでの約束」という言葉を聞き出し、「マゼラン」とはアル・ラウィ将軍のことで、パウンドストーンとアル・ラウィ将軍がヨルダンで密約していたことを突き止める。さらにブリッグス少佐の手先に暗殺されそうになったスンニ派幹部を助けてアル・ラウィ将軍との面会の約束を取り付ける。だが、パウンドストーンは先に、イラク軍の解体を公表してしまう。これでアル・ラウィ将軍は約束を反故にされたと怒り、ミラーを捕らえてしまう。また、パウンドストーンはブリッグス少佐にアル・ラウィ将軍の暗殺を命じる。少佐率いる米陸軍はアル・ラウィ将軍のアジトを急襲する。将軍は逃げ出し、ミラーはその後を追う。さらにその後をブリッグス少佐が追う展開に。ついに将軍は追い詰められるが、少佐は将軍の部下に射殺される。ミラーはようやく将軍を追い詰めるが、そこにフレディが現れ将軍を射殺してしまう。フレディは愛国のためアメリカ人には勝手にさせない、と言って去っていく。 パウンドストーンは自分のシナリオどおり、イラク復興計画を実行する。だが、彼が担ぎ出した亡命イラク人には力がなく、混乱に陥る。ミラーはパウンドストーンの陰謀をメモにし、ローリー記者をはじめマスメディアに流すのだった。
2010年05月20日
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2008 ドイツ・オーストリア 監督:ルイジ・ファロルニ出演者:レテキダン・ミカエル、ソロミエ・ミカエル、セーブル・ティラフン ほか92分 カラー HEART OF FIRE/Feuerherz【21%OFF!】アフリカン・ソルジャー 少女兵士の戦場(DVD) 【発売日お届け!2010年7月2日発売】 DVD検索「アフリカン・ソルジャー」を探す(楽天) エチオピア支配下のエリトリアを舞台に、エリトリア独立戦争における黒人少女戦士の悲劇を描いた、戦争ヒューマンドラマ。アフリカ内戦では多くの少年少女兵士が製造され、凄惨な悲劇が起こっていることは知られているが、本作もセナイト・メハリの自伝小説をもとに製作されたドキュメンタリー風のタッチで、多くの社会的風刺と警鐘が盛り込まれている。映画はメハリ自身の視点で、アウェトという少女によって語られていく。 エリトリアはアフリカ北東部の小国で、イタリア・イギリス植民地からの脱却後、エチオピアの併合を受けており、その独立のために1970年代からエリトリア解放戦線(ELF)やエリトリア人民解放戦線(EPLF)によるゲリラ戦が繰り広げられた。結果、エチオピアのティグレ人民解放戦線(TPLF)らとの協同により1993年独立を果たすこととなる。本作はその独立直前の時期を描いたもので、エチオピア軍に対抗しつつも、ELFとEPLFの主導権争いの内紛が切々と描かれている。作品中では主人公が所属し、古い組織のジェブハと新興組織のシャビアという組織が登場する。良く分からないが、独立後も母国に戻れないというテロップが流れるので、主人公のジェブハがELF系の組織のような気がする。 ストーリー自体は結構コンパクトで、やや淡泊な印象。まあ、少女兵士の経験談をもとにしているのだから当然といえば当然だが、エリトリア独立戦争や内紛の状況はいささかわかりにくいのは事実。その辺りを知らなくても映画としては、少女兵士の誕生や悲劇など、心に響く部分は多分にあるので問題ないのだが、戦争マニア的にはやや不満も。やはり少女兵士を製造せざるを得ない背景や、彼らの気質や人種を理解する上ではもう少し突っ込んで欲しかったところか。 主人公のアウェトは銃を持つのがやっという年齢で、銃を持つことの意味に翻弄されつつも、やはり最後は理性を保つのだが、アフリカ各地で問題になっている少年少女兵の多くは、強制的・強圧的に兵士にされ、理性や感情の精神的崩壊が著しいと聞く。その辺りももっと描いてあると幅が広がった様な気がする。 とはいえ、何故少年少女が銃を持つのかといった闇の部分には、十分触れることができる作りとなっている。物質的にも精神的にも裕福になった我々日本人にとっては、なかなか理解しがたい状況ではあるが、たかだが60年前の日本においてもそれに近い状況があったことを忘れてはならないだろう。子供が生きるために銃を持つ、それは人間の性なのか、大人が悪いのか・・・。 ロケ地はケニア。アフリカらしさが十分出ており、スケール感もそこそこ。映像もきれいで、派手なアクションがあるわけではないが、カメラワークも悪くない。内戦ということもあって、登場する兵器類は小銃のみ。銃撃戦そのものも派手さはない。まあ、少女兵が銃を乱射するシーンなど見たくもないのが心情だが。 全般に良くできている映画で、バランスも悪くはない。ただ、インパクト感や後味という点ではもう一歩何か欲しかったところ。途中での盛り上がりや、起承転結がもう少しシャープだと良かったかも知れない。ただ、こうした少年少女兵の問題を提起した社会派映画としては秀逸な部類に入るだろう。極端なメッセージ性や政治性がないのも好感を持った要因の一つかもしれない。 興奮度★★沈痛度★★★★爽快度★★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) アフリカの小国エリトリアはエチオピアからの独立を図るため、武装蜂起しゲリラ戦を行っていた。少女アウェトの父も戦士で、アウェトを修道院に預けたまま行方不明になっていた。 修道院のシスター・アナのもとで暮らしていたアウェトに、父の使いで姉フレウェイニが訪ねてくる。アウェトは父のもとに帰ることになる。バスを乗り継ぎ、エリトリア解放区に入るとそこには多くのエリトリア人と解放戦線戦士がいた。父ハイレはジェブハの元戦士で、胸に傷を自慢していたが、実はバーの喧嘩で刺された傷であることを姉フレウェイニから聞かされる。古いジェブハは新興の組織シャビアと抗争を始めていた。 家では継母ゲネットとその子供がおり、フレウェイニとアウェトは厄介もの扱いでこき使われる。問題を度々起こすアウェトを見て、父ハイレはフレウェイニとアウェトを連れてアスマラのジェブハ本拠地に連れて行く。 二人は真の社会主義国家を目指すジェブハに所属することとなり、姉のフレウェイニは銃を支給され、教官マアザのもとで兵として訓練を始めさせられる。アウェトは小さいために、ミケーレのもとで教育を受ける。だが、少ない食料は兵が優先でアウェトらは食事がもらえない。我慢するアウェトだが、徐々にマアザらに認められていく。 フレウェイニは度々の戦闘に駆り出され、最初は勇敢に戦っていたが、仲間の死を目の当たりにしてから次第に陰鬱になっていく。そしてシャビアとの抗争が激化し、全面戦争に入る。マアザはアウェトら小さい子にも銃を与えて訓練を始める。ミケーレはそれに批判的だったが黙殺される。アウェトは戦争に懐疑的なミケーレの話しを聞き、自分たちの銃の弾を抜いてしまう。その直後、シャビアの襲撃を受けたアウェトらは反撃しようとするが弾がなく、少年のテスファイが足を撃たれてしまう。アウェトは酷く怒られ、姉ら仲間の信頼も失っていく。 ミケーレはアウェトら少年少女を連れてスーダンに脱出することを計画。だが、その晩シャビアの遊撃を受け、ミケーレは死亡してしまう。 ある日、アウェトらは敵の背後にまわって敵を撃つ。瀕死の敵兵のサンダルを見てアウェトは内紛の意義に疑問を感じる。アウェトはマアザに銃を突き返し、もう終わったのよと姉やテスファイとともに徒歩で砂漠をわたり、スーダンに向かうことにする。途中で力尽きようとした所で、スーダン人に救われる。アウェトはその後スーダンでジェブハの亡命者と出会い、ヨーロッパに渡る。マアザの部隊は全滅したと聞く。 1993年エリトリアは独立を果たすが、アウェトは母国に戻ることができていない。
2010年05月18日
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2007 アメリカ・クロアチア・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ 監督:リチャード・シェパード出演者:リチャード・ギア、 テレンス・ハワード、ジェシー・アイゼンバーグほか103分 カラー THE HUNTING PARTYハンティング・パーティ-CIAの陰謀- DVD検索「ハンティング・パーティ」を探す(楽天) ボスニア紛争終結後のボスニアを舞台に、民族浄化という名のもとに行われた虐殺容疑のセルビア軍戦犯確保のスクープを狙う、戦場カメラマン・戦争ジャーナリストが繰り広げるサスペンスドラマ。国連が彼の首に500万ドルの懸賞金を賭けながらも、本気で逮捕しようとしないジレンマの中、私怨も絡み3人のジャーナリストが無謀な賭けに出るのだ。民間人が主人公のため、銃撃戦などのアクション性は低いが、実話ベースに作られたというだけあって、社会告発的なシリアスドラマ性も持ち合わせているのが特徴か。 副題にもあるようにCIAの陰謀?関与が示唆されているわけだが、元ネタとなった雑誌記事の信憑性もどこまで信頼できるかわからないし、ジャーナリスト視点という時点で憶測、妄想も多分に含まれているだろうから、まあその辺りは差し引いて娯楽作品として楽しんだ方がいいだろう。とは言うものの、本作全般に社会告発的、ジャーナリズム的な微妙な臭いがしており、娯楽作品として楽しむにはいささか中途半端な印象だ。ストーリー全般の流れは悪くないし、リチャード・ギアまで主演させているのに、どこかしらB級臭がしてくるのは何故なのだろう。 ボスニア紛争は複雑な内紛だったわけだが、クロアチア人とセルビア人の虐殺応酬が最も凄惨を極めたと言える。本作はセルビア軍指導者のボガノヴィッチが虐殺指導者として戦犯容疑者になっているのだが、これはセルビア軍指揮官で虐殺指導者のラドバン・カラジッチがモデルになっているものと思われる。 また、これら戦犯容疑者の確保に国連やCIAが及び腰だったり、陰謀?を図っていたことは広く知られている。だが、その実態は未だ不明確であり、本作もそのあたりをすっきりと突っ込むことができなかったのが、作品のもやもや感を増長させる結果となった。ちなみに、ボスニア紛争の虐殺を題材にした映画は多く、「ブコバルに手紙は届かない(1994)」「ウエルカム・トゥ・サラエボ(1997)」「セイヴィア(1998)」「セイビング・フロム・エネミーライン(2005)」などがある。本作は虐殺シーンはほとんどないが、上記作はかなり凄惨なシーンも登場する。さらに、セルビア軍戦犯が登場する作品では「ブリザード・ウォー(1999)」がなんとも絶妙(笑)。 さてストーリーだが、ジャーナリスト視点ということで一般受けしやすい内容となっているのが好感。それにセルビア軍勢力、国連、CIAが絡む複雑な人間関係なのだが、難解になりがちな点をすっきりとまとめ上げているのは秀逸だ。これはジャーナリストのサイモン・ハント(リチャード・ギア)をアウトロー的な性格付けにして娯楽性を高め、他の登場人物の性格付けをぼやかしても問題ないように仕立てているからだと思われる。ただ、セルビア軍戦犯確保に至るクライマックスシーンは、どうしても掘り下げが甘くなっている感があり、実話ベースということを排除してでもCIA描写やアクションを派手に描いた方が面白かったも知れない。 一応サスペンスのジャンルに分類してみたが、サスペンス性という点では、うーむ・・・というレベル。社会派の印象が強すぎてさほどドキドキ感はないし、どんでん返し的な部分もあまりインパクトがない。 主演のリチャード・ギアはそこそこの存在感を醸し出してはいたが、彼にしては煮え切らない今ひとつの印象。ジャーナリスト仲間のテレンス・ハワード、ジェシー・アイゼンバーグも役者としては悪くないが、3人のアンバランス感はB級的な臭いを匂わせる要因ともなった。 アクションシーンは前述のとおりほとんどなし。ロケはクロアチアやボスニア・ヘルツェゴヴィナで行われたようで、唯一登場する兵器はソヴィエト製ヘリコプターのミルヒップだけ。 全般に、ストーリーとしての完成度は高い部類だと思うが、インパクトや娯楽性という点では不完全燃焼。見終わった後の満足感が足りないし、社会派としての余韻も思ったよりも薄い。もっと派手な作りのボスニア紛争映画のサブとして見る分には、奥行きができて良いかも知れないが・・・。 興奮度★★沈痛度★★★爽快度★★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) アメリカ人ジャーナリストのサイモン・ハントは、カメラマンのダックとともにソマリア、ボスニア紛争など戦場の場を駆け抜け、数々の賞を受賞していた。だが、1994年のボスニア紛争取材で生放送中にハントはキレてしまい、以降テレビの前から姿を消す。実はハントの恋人がセルビア軍指導者ボガノヴィッチによる虐殺で殺され、ハントは怒りで感情を抑えられなくなったのだ。 それから5年、2000年秋。カメラマンのダックは活躍し、富と名声を得ていた。紛争の終わったボスニアではボガノヴィッチが戦犯として国連から500万ドルの懸賞金を賭けられていた。 たまたまボスニアに取材に入ったダックのもとに、ハントが姿を現す。ボガノヴィッチの居場所を知っており、スクープインタビューを取ろうというのだ。最初は断ろうとしていたダックだが、旧友の希望と熱意により共に行動することを決意。さらに同行していた副社長の息子ベンジャミン・ストラウスもボンボンからの脱出を図るために、参加することに。 ボガノヴィッチ一味はチェレビチの山奥に潜んでいるらしいが、警護軍団が回りを固め、サージャンという冷酷な男がリーダを勤めている。3人は情報を得るためチェレビチに向かって移動するが、途中に立ち寄った食堂で銃を発射される。すでにセルビア軍に目を付けられたかと思ったが、実は金に困るハントが金を支払っていなかったのだった。さらに、ハントはボガノヴィッチのインタビューを取るのではなく、私怨のために生け捕りにしようと企んでいることが発覚する。 国連司令部は真剣にボガノヴィッチを追おうとしない。アメリカ、イギリス、フランスともに実は裏でボガノヴィッチを繋がっているとの憶測もある。だが、国連指揮官の一人ボリスだけはボガノヴィッチを追いつめようと考えており、3人を勝手にCIAの潜入捜査員と勘違いしている。3人はそれを敢えて否定せずに利用することに。 チェレビチに到着した3人は村でボガノヴィッチの情報を聞き出そうとするが、村人たちのガードは堅く、逆に追い出されてしまう。さらにオレンジ色の3台の車に囲まれてしまうが、これは闇商人のクロアチア人でハントの旧知だった。 いったん戻った3人にボリスからマルヤナという女を紹介される。ボガノヴィッチとの接点を探るが、どうもマルヤナも怪しい。CIAであることを怪しまれた3人はベンジャミンの機転で乗り切るが、ホテルに戻ったところをボガノヴィッチらに捕らえられてしまう。 3人は拷問を受け、サージャンによって殺害されそうになる。そこに本物のCIAが突入。命は助けられたがCIAはボガノヴィッチを逃がしてしまう。ハントらはCIAがわざと逃がしたのではと睨むが、CIAに怒られて退去を命じられる。何故かボリスもアフリカに国外追放され、ボガノヴィッチ追跡網は瓦解する。 3人は退去させられる際に、やはりボガノヴィッチを捕まえようと考え逃亡し、ボガノヴィッチが護衛を付けずに狩りに出るところを待ちかまえて捕らえる。3人はボガノヴィッチを虐殺したイスラム教徒のマルダの町に置き去りにする。ボガノヴィッチの姿を見たイスラム教徒らはボガノヴィッチに詰め寄るのだった。
2010年05月04日
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1945 アメリカ 監督:ウイリアム・A・ウエルマン出演者:ロバート・ミッチャム、バージェス・メレディス、フレディ・スティールほか109分 モノクロ STORY OF G.I.JOE【ポイント10倍】\2000以上で全国送料無料!!※代引き手数料を除くG・I ジョーロバート・ミッチャムDVD検索「G.I.JOE」を探す(楽天) 第二次世界大戦時、アメリカ軍の北アフリカ戦線、イタリア戦線を従軍記者の目から観たドキュメンタリータッチのヒューマンドラマ。本作のナレーション役及び主人公となる従軍記者アニー・パイルは実在の人物で、米軍の前線で人情味溢れる取材を続け、1944年にはピューリッツアー賞を受賞している。本作はそのアニー・パイルの著書「Brave Men」「Here is your war」を下敷きに構成されているようで、従軍記者の見た郷愁と苦悩に満ちた前線の兵士たちのリアルな戦場を再現している。 製作公開は1945年6月で、ドイツは降伏したものの日本とは未だ戦争状態にあり、戦争に対する緊迫感がひしひしと感じられる。というのも、主役級以外の登場人物、特に将校をはじめ一般兵、従軍記者たちは皆本物で、演技力はともかくもその存在自体がリアルなのである。一応ストーリー性もあって従軍記者アニー・パイルによる米陸軍第1師団第18歩兵連隊第1大隊C中隊の従軍、交流を描いたヒューマンドラマとなってはいるが、娯楽作にはあり得ないようなリアル感があるために、冒頭に書いたようにドキュメンタリーのような印象を強く感じる。 ちなみに、アニー・パイルは1945年4月18日に沖縄戦従軍取材中に日本軍によって狙撃され死亡している。本作の制作にあたり監修助言もしているようだが、公開の日の目を見ることはなかったといういわく付きでもある。 監督のウイリアム・Aウエルマンは第一次大戦時はパイロットだったそうで、本当は歩兵嫌いで本作の製作に二の足を踏んだとか。 戦時中の作品ということで、戦意高揚的な意図が強いのかと思ったが、意外にも本作はかなり悲惨で苦渋をなめるアメリカ軍を描き、決して好戦的な戦意高揚になるような内容でもない。日本では敗色濃い時期に悲壮感漂う映画が製作されているが、それにやや近い印象もある。アメリカでは逆に戦勝ムードの中、戦意高揚プロパガンダよりも前線の兵士の勇敢さを讃える戦争のリアルさを重視したのかもしれない。 描かれているのは対独の北アフリカ戦線とイタリア戦線で、小隊・中隊規模での戦闘が連続的に描かれる。モノクロ映像ということもあって、映画の雰囲気は米ドラマ「コンバット」を髣髴とさせる。制作時期を考えるとコンバットが本作の影響を受けているのかもしれないが(笑)。また、本作中でドイツ軍が籠ったイタリア修道院の空爆をアイゼンハワー将軍が決定するのだが、そのアイゼンハワーは本作を絶賛したとか。 ストーリー自体はアニー・パイルの自伝的な感じとなっているので、ややぶつ切り的で、編集技術も特筆できるほどのものではない。淡々と冷徹に戦闘は進み、兵隊が死んでいくばかりで、無常感が強いのでストーリーを楽しむにはやや不適かもしれない。 本作で高く評価できるのは戦闘シーンだろう。アメリカ本国での撮影だそうだが、北アフリカの砂漠シーン、イタリア山岳地帯での教会、修道院廃墟シーンのセットが実にリアルだ。かなり細かい造形がなされており、現代作でもここまでリアルなセットにはそうそうお目にかかれないだろう。さらに、火薬を適切に使用した戦闘シーンが卓越しており、何と言っても兵士の動きがリアルなのだ。役者以外は本職なのだから当たり前なのかもしれないが、記録映像を用いているのではないかと思うほど迫真なのだ。特に市街戦での射撃、着弾シーン、手りゅう弾爆発の間合いなどは戦前とは思えないほどしっかりしているし、実弾を用いているのではと思われる場面すらある。ちなみに、出演している兵の一部はその後各地の前線に赴き、戦死しているそうだから、そう言う目で見るとなおさら心に沁みるものがある。 こうしたリアル感たっぷりの映画はやはり戦時中、戦後間もない時期だからこそ出来るのもので、言葉では説明できない臨場感が漂っている。同様の作品に「第一空挺兵団(1946 英)」というのがあるが、リアル型戦争映画の傑作と言えよう。 また、本作と同様に北アフリカ戦からヨーロッパ戦までの米歩兵を描いた作品に「最前線物語(1980米)」があり、こちらも同じ第1師団の第16歩兵連隊の兵を扱っている。 登場する兵器類は当然本物ばかり。ただ、アメリカでの撮影ということもあって第一線の兵器類はあまり登場しない。廃墟セットなどに力が入っている割にしょぼい印象もある。主に登場するのはM3中戦車で、一部M4シャーマン中戦車が出ているかもしれない。M3は射撃、走行シーンのほか着弾炎上シーンも見られる。あとは牽引される野砲ぐらいで、航空機(爆撃機)映像もあるが、本作のために撮影されたものかどうかは疑わしい。 全般に淡々とした作品だが、戦史をなぞる歴史的映画としては秀作の部類に入るだろう。挿入される様々な兵士のエピソードも一見無駄のような印象もあるが、前線の兵士の実情だと思えば、これもまた感慨ひとしおなのである。DVDとして見ることができるようになったことに感謝したい作品であった。興奮度★★★★沈痛度★★★★★爽快度★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 北アフリカのチェ二ジアに駐留する、アメリカ陸軍第1師団第18歩兵連隊第1大隊C中隊に中年の従軍記者アニー・パイルがやってくる。アニーは前線への同行を希望し、ウォーカー中尉の隊についていくことに。第18連隊はまだ前線での経験が浅く、兵士の多くが戦闘に参加する実感をまだ得ていない。だが、前線に赴くトラック上でドイツ軍機の敵襲を受け、初めての戦死者を出し、戦場の実感を初めて体感するのだった。 いよいよドイツ軍と対峙する前線に到着すると、第18連隊第1大隊はドイツ軍の攻撃に陣地を守ることとなる。だが、経験不足の米軍に歴戦のドイル軍と戦車部隊は圧倒的な強さで攻め入り、ハント中佐の第1大隊は甚大な被害を受けるのだった。ホートン大尉のD中隊は連絡が途絶え、ラフル大尉は重傷。ロバート大尉とウォーカー中尉のC中隊だけが前線に残っているにすぎなかった。米軍の戦車隊は緒戦で全滅し、敵戦車によって突破されてしまう。ハント中佐は大隊本部でフリーアス三等軍曹に書類を焼却させ、無線手のストローベルに各隊撤退を命じさせる。はじめての戦争と敗戦で意気消沈するが、この経験こそが兵を強くするのだ。 アニーはしばらく他の戦場にいたが、第18連隊C中隊はその後イタリア戦線に参加し、シシリア・サレルノ上陸戦を行っていた。アニーは再び大尉となったウォーカーと行動を共にする。中隊は歴戦を重ね、兵士も入れ替わったが屈強な部隊になっていた。部隊はワーニッキ軍曹、ドンダロ二等兵、「羽無し」マーフィー二等兵などがいた。ワーニッキ軍曹は本国の息子の声が入ったレコードを受け取るが、蓄音器がなく声を聞くことができない。ミュー二等兵は死亡保険に入るが受取人の身内がいないため、仲間の名前を受取人に書いていく。マーフィーは看護中尉レッドと戦場で結婚式をあげる。ドンダロは戦闘で解放したイタリアの村でイタリア人女性と恋仲になっていく。 C中隊は山上の修道院に向かうが、敵の砲撃に会う。修道院はドイツ軍の砲弾監視所になっているのだった。ウォーカー大尉は砲兵隊に修道院の砲撃を要請するが、カソリックの信仰心のため砲撃は拒否される。C中隊は歩兵による偵察活動を余儀なくされ、457高地で小火器、793高地に迫撃砲の存在を確認するも、ジョセフ中尉、スペンサー、トエントレンらが戦死する。消耗する隊に補充兵がやってくる。ワーニッキ軍曹らは極度の疲労や悪天候にも関わらず、偵察を繰り返すが、ついにマーフィーが戦死してしまう。 アーニーは書いた記事でピューリッツアー賞を受賞する。クリスマスになり隊は七面鳥で祝うが、本部からはドイツ兵捕虜の確保が命じられる。ウォーカー大尉は自ら偵察に出かけ、ようやく一人の捕虜を連れ帰る。大尉は多くの部下を失ったことに苦悩し、アニーがそれを慰める。ドンダロは隊を抜け出してイタリア女の所へ。それが見つかり、ウォーカー大尉はドンダロに便所掘りを命じるのだった。 ようやく、アイゼンハワー将軍の決断で修道院の空爆が行われる。だが、空爆後の廃墟はドイツ軍の要塞と化し、さらに戦闘はこう着状態となり、寒い冬を迎える。ある日偵察から帰ったワーニッキ軍曹はいつものように壊れた蓄音器にレコードをかけると、ついに幼い息子の声を聞くことができる。その声を聞いた軍曹はボロボロになった精神状態が崩壊し、気がくるってしまう。 その後、ようやく修道院の占領に成功する。アーニーはC中隊にモンテ・カッシーノで再開する。再開を喜ぶC中隊の面々だったが、馬に運ばれてくる戦死者の中にウォーカー大尉の姿があった。驚き絶句するアーニーとC中隊の兵。だが、次なる任務のため各人は大尉に訣別し、再び無言で前線への道のりを進み始めるのだった。
2010年04月07日
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1942 イギリス 監督:レスリー・ハワード出演者:レスリー・ハワード、デヴィッド・ニーヴン、ロザムンド・ジョンほか118分 モノクロ SPITFIRE/THE FIRST OF THE FEW【DVD】スピットファイアー<1998/11/25> DVD検索「スピットファイアー」を探す(楽天) 第二次世界大戦時の英軍名戦闘機スピットファイアの誕生裏話を、設計者R・J・ミッチェルを主人公にして描いた伝記的ヒューマンドラマ。製作時期はちょうどドイツ空軍とイギリス空軍が激しい航空戦(バトル・オブ・ブリテン)を繰り広げた直後であり、功労者のミッチェル技師(1937年に癌で死去)を称えるとともに、戦意高揚プロパガンダが色濃く感じられる。ロンドン爆撃などドイツ軍の航空攻撃に怯えるイギリス国民に対し、優秀な戦闘機があることを誇示し安心させるとともに、これから激化する航空戦を予期させるものでもある。 プロパガンダ的要素が強いことから、イギリス軍航空部隊の全面協力を得ており、ミッチェルのヒューマンドラマのみならず、勇壮な戦闘機の迫力感あるアクション的要素も多分に持っているのが特徴だ。本作では実在のミッチェル技師を核に置き、筋の大枠は実話ながらも、架空の人物や設定を織り交ぜた作りとなっている。 ミッチェルは、イギリスの著名航空メーカーであるスーパーマリーン社の技師であった。戦前は主に高速を競う水上機レース(シュナイダー・トロフィー・カップ)の設計技師として活躍しており、本作もこの水上機レースでの活躍からストーリーが始まる。ミッチェルの設計した単葉一体型のスーパーマリンS・5は1927年に優勝を果たし、以降S・6、S・6bの機体で3連覇を果たしてシュナイダー・トロフィーを英国に持ち帰っている(3連覇するとトロフィーを獲得できる)。その後第二次大戦の勃発と共に戦闘機設計に従事することとなり、S・6をベースとしたスピットファイア戦闘機を完成させるのだ。ミッチェル自身は原型機完成後の1937年に癌で死去しまうが、スピットファイア戦闘機は戦後まで改良を重ねて実戦の最前線で活躍する。 ストーリー自体は伝記ベースということで比較的淡々としているが、架空の設定だが友人でテストパイロットを務めるクリスプ中尉の存在が物語に華を添えている。もちろん、ミッチェル一人でスピットファイアを完成させたはずもなかろうが、本作ではミッチェルとクリスプの友情と励まし合いで成功へと導いていくのだ。さらに、ミッチェルの妻と子供、航空機関係者などが登場してくるが、中でも軍資金に困ったミッチェルに資金提供するホウストン夫人の存在が興味深い。この夫人の資金提供は実話で、当時は軍や政府の援助を受けて王立航空クラブベースで水上機レースに参加していたため、国状が悪化すると資金が打ち切られてしまうのだ。国の威信をかけたレースを愛国者であるホウストン夫人が見ていられなかったという訳だ。 なお、監督であり主役のミッチェル役を演じたレスリー・ハワードは、作品完成の1年後に搭乗した輸送機がドイツ軍機によって撃墜され死亡している。 本作の醍醐味の一つはやはり実物のスピットファイア戦闘機にあるだろう。英軍の全面協力を受けただけあって、多数の実機が画面内を飛び回っている。飛行シーンもさることながら、やはりエンジンの唸り音が生々しい。実写撮影のほかには空戦の記録映像も含まれているようだが、簡単な空戦シーンは撮影によるものらしい。協力した部隊はコード名「SD」の第501飛行隊で、当時英国内のIbsley基地に駐在して防空任務についていた。この部隊が選ばれた背景には、国内にいることはもちろんだが、撮影当時(1941年9月頃)主力となっていたスピットファイアMK.V型に対し、映画にマッチした旧式のMK.II 型を運用していたかららしい。見た目では余り区別はつかないが、このあたりにもこだわりが見て取れる。通常のアラーム任務の合間を縫って飛行シーンを撮影したのだとか。なお、第501飛行隊の飛行司令クリス・バーニカウントはクリスプ中尉の友人役で登場し、空戦でドイツ軍機(Me109)に撃墜される役を演じているらしい。 映画中で確認できたコードナンバーは「SD-C、D、E、K、P、L、G」がある。また、ドイツ軍機としてMe109や爆撃機が登場するがいくつかは鹵獲機かもしれないが、記録映像の可能性も高い。また、シュナイダーカップでの水上機はS・5を模した模型のほか、レースの実写記録映像やミニチュア特撮が使用されている。 全般に戦闘機誕生裏話のようなものだけに、華々しさというものはないのだが、製作年代や製作背景、そして多くの実機映像は戦史を考える上では貴重なものである。ミリヲタとしては食い入るように見入ってしまった佳作であった。 興奮度★★★★沈痛度★★爽快度★★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1940年の7月、ドイツとイギリスの間で大規模な航空戦、バトル・オブ・ブリテンが勃発した。英国内はドイツ軍の空爆に晒され、英国陸軍航空機隊は防空の任務に従事している。とあるスピットファイア戦闘機の航空隊では若いパイロット達に混じり、隊長がスピットファイア戦闘機の開発に携わった頃の話を始める。 1922年、スーパーマリン社の設計技師R・J・ミッチェルは空飛ぶ海鳥の姿を眺めながら新しい水上機レースの機体を考えていた。それまでは複葉機体が普通だったが、ミッチェルは単葉一体型の機体を考えていた。国の威信を賭けたシュナイダー・トロフィー・カップでライバルに勝つには斬新な発想が必要だった。しかし、その発想の申し出に会社の重役たちは笑い飛ばすのだった。 そんな所に旧友のジェフ・クリスプ中尉が訪ねてくる。女性好きのクリスプだが、テストパイロットとしてタッグを組まないかと申し出る。ミッチェルは気を取り直して、再度重役たちに申し出るが、再び却下される。家に戻り妻やクリスプに慰められていると、会社から採用の電話が入る。 1925年試作機が完成し、シュナイダーカップに参加する。パイロットのクリスプは230マイル以上のスピードを叩き出すものの失神してしまい海中に墜落。瀕死の重傷を負うものの、クリスプは病院で看護婦にちょっかいだすのだった。 1927年に再び大会に参加する。会場はイタリアでムッソリーニも関心を持っている大会だ。レース直前にピストントラブルに見舞われるが、徹夜で修理。ついにスーパーマリンS・5は281マイルの最高記録を打ち立てて優勝を果たす。 その後、1929年の大会でも優勝を果たすが、政府や軍からの資金提供が打ち切られる。資金に困ったミッチェルだったが、パーティで出会った資産家のホウストン夫人が愛国心から10万ポンドの資金提供を申し出てくれる。その結果1931年の大会で404マイルの記録を打ち立てて3連覇し、ついにシュナイダートロフィーはイギリスへ持ち帰られるのだった。 数年後、一般の設計に戻ったミッチェルのもとをクリスプが訪ね、ドイツに旅行に行こうと誘う。ミッチェルは妻と共にドイツへ旅し、そこでドイツの航空機関係者、後の名機を開発するメッサーシュミット博士と出会う。和気藹々とした会談だったが、一部のドイツ軍人はすでにヒトラーの覇権主義に毒されており、ミッチェルらは若干の不安を感じるのだった。 帰国したミッチェルは会社や軍関係者に戦闘機開発を具申する。資金も協力者も乏しかったが、政府関係者やエンジンメーカーのロールスロイス社などに掛け合って戦闘機の設計を始める。水上機のS・6をベースにロールスロイスエンジンを乗せるのだ。不眠不休で設計を続けるミッチェルに秘書が心配し、クリスプに休むよう言ってくれと頼む。何とか休養をとるミッチェルだったが、実は余命8ヶ月の癌に冒されていた。ようやく軍の制式採用が決まるが、ミッチェルは8ヶ月で完成させると一層仕事に打ち込むようになる。妻も病気のこと知り悲しむが、ミッチェルは重要な仕事だとして理解を得ようとする。 ついにドイツ軍がスペインを空爆。開発を急がねばならない。ようやく試作機が完成した頃ミッチェルはもはや車いすでの生活となっていた。試作機をテストするクリスプはミッチェルの家の上空を飛行する。見上げるミッチェルは微笑みを漏らす。そして、妻や友人らに感謝の言葉を述べたミッチェルは息を引き取るのだった。 クリスプが若いパイロットたちにスピットファイアの開発の話をし終わると同時に、ドイツ軍の空襲警報が鳴る。パイロット達はスピットファイアに乗って大空に上がっていく。クリスプもまた空に上がり、ドイツ軍の爆撃機や戦闘機と空戦を繰り広げる。数機を撃墜したクリスプだが、列機もまた被弾して墜ちていくのだった。
2010年04月03日
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2007 ロシア 監督:ウラディミール・ポタポフ出演者:セルゲイ・マコーヴィコフ、アンナ・タラトーキア、セルゲイ・バタロフほか92分 カラー07th CHANGES THE DIRECTION/07-Y MENYAET KURS/07 AMENDS FLIGHT PLANステルスX(DVD) ◆20%OFF!DVD検索「ステルスX」を探す(楽天) ロシアの極秘ステルス技術を搭載した爆撃機がテロリストによって奪取されるのを阻止するという航空アクション。設定もストーリーも、んん?どこかで観たようなというありきたりのパターンなのだが、意外なのはロシア映画という点だ。正直言ってストーリーもアクションもB級で、見るべき内容はないに等しいのだが、唯一ロシア空軍が主役と言うレアさだけが見所なのだ(笑)。 監督も役者も知らねえなあというマイナーさで、ハリウッドアクション的ラブロマンスにしても、いい歳した冴えないおっさんと若い女性の組み合わせは何だか納得いかない(笑)。ただ女性のオルガ中尉役のアンナ・タラトーキアだけはそこそこ美人。 一昔前の航空機乗っ取りアクション映画の場合だと、たいていは米露どちらかが悪者になるのだが、本作ではなんと米露合同演習が背景と言うことで、共同してテロリストに対処していく。冷戦終結による両国への配慮ということなのだろうが、何だかヌルイ感じがするのは否めない。米露軍の最新技術をもってして陳腐なアラブテロリストにやられてしまうのも余りにしょぼ過ぎるし、相手がテロリストごときだとアクションとしてはいまいち盛り上がらない。 加えてストーリーに盛り上がりも捻りもないので、淡々と時間が流れていくだけだし、テロリストによる乗っ取り、遠隔操作装置の解除など緊迫感あふれるべきシーンでも、タイミングの悪いぶつ切り編集や無意味なエピソード挿入で盛り上がりが阻害された。 ミリタリー的な視点としても、登場する基地や作戦、ステルスシステム(ゴルゴンシステム)などにリアル感がまるでなく、そこに突っ込む気すら起きてこない。 さて、唯一の見どころロシア軍兵器だが、ロシア空軍の協力を得たということで、空軍機の飛行シーンが楽しめる。ロシア映画ではロシア軍機が登場するものも少なくないが、大抵は調達しやすいヘリコプターかロシア空軍の記録映像の使いまわしが多い。本作では主役となるツポレフTu-160ブラックジャック爆撃機(機番07)、2機のスホーイSu-27フランカー戦闘機(機番06,67)、A-50長距離レーダー監視機(機番42)が離着陸、飛行シーンを本作のために披露している。Tu-160は一昔前の機体とは言え配備数も少なく実際の飛行シーンは珍しい。機内のシーンも多分本物と思われ、ロシア軍の情報公開も進んだものだと感心する。4機による編隊飛行も一部合成と思しき所もあるが、なかなか見ることのできないシーンだろう。どうせならSu-27の機動飛行シーンぐらい入れてくれたらもっと良かったのに。このほかAn-12カブ輸送機、Tu-95爆撃機、民間型AS-350B3ヘリが登場している。 海軍兵器ではロシア海軍役としてクリヴァクI改型フリゲート艦「プイルキィ(艦番702)」と米軍空母役としてロシア海軍唯一の空母である重航空巡洋艦「クズネツォフ」の映像が出てくる。プイルキィは撮影されたもののようだがクズネツォフは記録映像かもしれない。 全体に映画としては、ストーリー編集ともに楽しめるレベルに達していない。ステルス性や航空アクションといったミリタリー的関心という点でも満足できる内容にはない。せっかくロシアク軍が協力してくれたのだから、もっと根性入れて作って欲しかったところ。何となく色々な所に配慮してたらこんな映画になりましたという感じ。 興奮度★★沈痛度★爽快度★★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 元ロシア空軍爆撃機連隊副隊長ボンダレンコ中佐が輸送機でテロリストに機密機材を積んでやってくる。テロリストに金でロシアを売っているのだ。その帰路中先はテロリストによって爆破される。 フォゲット諸島のテロリスト基地にヘリに乗った武器商人のマイケルと元米兵?ビークスがやってくる。マイケルの要請によりテロリストはロシア軍機と新兵器ステルス技術を盗もうとしているのだ。 ロシア軍は技術部隊のオルガ・クラスノバ中尉(女性)によって開発されたステルス技術「ゴルゴンシステム」実験のため、Tuー160爆撃機「07」を飛行させる計画だ。その実験は米軍との合同演習の一部として行うこととしており、護衛にSUー27戦闘機2機、長距離レーダー監視機も同行することとなっていた。途中で米軍のレーダーから消え、米軍の鼻を明かそうというのだ。 だが、秘密計画はテロリストに漏れており、連隊長の大佐は危険を察知し、爆撃機「07」のパイロットをニコラエフから癖はあるが勇敢なキルサノフ中佐に変更する。キルサノフ中佐は離婚歴があり海軍士官候補生の息子もいるが、オルガ中尉に恋心を寄せており、オルガ中尉の父クラスノバ元大佐もキルサノフを勧めている。キルサノフはなかなかオルガに結婚してくれと言えないまま任務に就く。 爆撃機07の爆弾槽にはスパイのセルゲイによって遠隔制御装置が取り付けられていた。いよいよ米露の合同軍事演習が始まり、キルサノフ中佐、オルガ中尉らの爆撃機も離陸する。そのころ、キルサノフの息子は港でテロリストアジズがセルゲイを殺害するのを目撃し、テロリストが爆撃機乗っ取りを狙っていることを軍に知らせる。上空でオルガ中尉がゴルゴンシステムを作動させると、海上の米露艦船レーダーから4機の機影が消えた。実験は成功だった。だが、その瞬間爆撃機07の操縦管が効かなくなる。テロリストによって遠隔操作モードに入ったのだ。無線も停止し、キルサノフ中佐は懐中電灯のモールス信号で戦闘機に知らせるが分からない。ようやく緊急無線で連絡を取り乗っ取られたことを知らせる。モスクワではアメリカの商業衛星420を経由して遠隔支配されていることを突き止め、ロシア大統領はアメリカ大統領に電話して衛星の破壊か機能停止を要請する。 機内では搭載した長距離ミサイルが発射準備に入ったことを知る。マイケルらは爆撃機乗っ取りだけを目的としていたが、テロリストはミサイルを米軍のテクセル基地に向けて発射することを目論んでいた。テロリストを非難するマイケルとビークスはテロリストに殺害される。機内ではなんとか制御装置を解除しようとするがなかなかできない。オルガ中尉はミサイルのソフトディスクを取り出すことを思い立ち、ミサイル発射の1秒前になんとかディスクをはずす。 だがテロリストによる操縦は続いており、テロリスト基地に近付いていく。モスクワでは機体の破壊も検討するが、キルサノフ中佐は新たなミサイルをテロリスト基地に照準したうえで、オルガ中尉らに脱出を命じる。だが、オルガ中尉らはキルサノフ中佐を置いて脱出はできないと言う。 宇宙では米軍宇宙ステーション「デルタ」が商業衛星に到達し機能停止に成功する。テロリストの制御は解け、キルサノフの爆撃機はテロリスト基地にミサイルを発射し、帰路につく。キルサノフ中佐は列機に「編隊を組もう」と言うが、オルガ中尉は「ゴルゴンシステム作動中で見えなくて残念ね」と笑うのだった。 基地にようやく帰還した爆撃機の機内ではキルサノフがオルガに「言いたいことがある」と言うが、オルガは「言葉よりも・・・」と言いキスするのだった。
2010年03月25日
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2007 ポーランド 監督:アンジェイ・ワイダ出演者:マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジュミイェフスキ、アンジェイ・ヒラ、ヴィクトリャ・ゴンシェフスカほか122分 カラー KATYN【21%OFF!】カティンの森(DVD) 【発売日お届け!2010年5月7日発売】DVD検索「カティンの森」を探す(楽天) 第二次世界大戦中ロシア西部のカティンの森で起こったポーランド人将校1万5000人の虐殺事件を描いたヒューマンドラマ。監督のアンジェイ・ワイダは旧社会主義体制のポーランド時代から「地下水道(1956)」「灰とダイヤモンド(1958)」「鷲の指輪(1992)」「聖週間(1995)」など抑圧されたポーランド人、ユダヤ人迫害を題材に作品を作り続けてきた名匠である。特に本作のカティンの森事件はワイダ監督の父親が犠牲になった現場であっただけに、監督の集大成的作品とも言える。監督特有の陰鬱とした非感情的な人物描写により、どのように虐殺事件が再現され、社会告発されていくのかが見所でもあった。第80回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされている。 1940年春に起こったカティンの森虐殺事件は、ソヴィエト赤軍によるポーランド軍指揮能力抹殺のための捕虜将校大量虐殺事件だったが、1943年春にソヴィエトに攻め入ったドイツ軍により発見され世界的に告発され、記録映画も作成されている。しかし、同年秋にはソヴィエトの領地席巻によりカティンの地はソヴィエトの物となり、逆にソヴィエト赤軍はドイツ軍の仕業として非難するのである。その後、ポーランドはソヴィエトの支配下に置かれ、カティンの森の真実に触れることはタブー視されることとなる。この事件がソヴィエト軍の虐殺だと公式に認めたのはソヴィエト解体後の1990年になってのこととなる。 さて、ストーリーはアンジェイ・ワイダ監督や実在の人物の話を参考にしてはいるものの、登場人物、出来事ともに大枠はフィクションとなっている。主人公のポーランド軍大尉とその妻子を中核に置きながら、数人のポーランド軍将校とその家族の顛末をサスペンス的に進めていく。若干の謎解き的な要素もあることはあるが、主として悲劇を羅列していくヒューマンドラマといった印象が強い。盛り込んだエピソードは監督にとってどれも不可欠な要素であったろうが、若干余計に感じるシーンもあり、全体的なまとまりという点ではややもったいない。 映像的にはワイダ監督特有の叙情的な静的画面が健在で、かつ無音を効果的に利用した隠喩的表現が印象的だ。ワイダ監督の映画は、自身の陰鬱な経験を何人も理解できるはずがない、と言わんばかりの拒否感を前面に醸し出しておきながら、何故か見ている者の心を問答無用に引きずり込んでいく不思議さがあるのだ。銃殺シーンではややグロい場面もあり、虐殺の記録映像はかなり見るに堪えない映像も登場するが、これも監督にとっては必要最低限の表現だったと思われる。 だが、正直言って本作はワイダ監督の集大成作品としては期待はずれという印象は拭えなかった。自身の過去や経験を集大成として込めたにしては物足りないのだ。確かに人物描写は監督らしさの片鱗もあるのだが、全般に明るく希望に満ちている印象が強い。また、虐殺を実行したソヴィエト赤軍に対しても、ポーランドを蹂躙したドイツ軍に対しても、その怒りを強く感じることはない。社会的、政治的メッセージ性はもともと直接前面に出さない監督とはいえ、怒りや悲しみの根源を欠いてしまうと、主人公らポーランド人への心情移入が難しくなってくるのだ。この題材だからこそ期待したのだが、実のところワイダ監督をはじめポーランド人の心はそんなところにはないのかもしれないと感じた。過去の悲劇を繰り返しまいと誓いながらも、「赦し」こそ未来への平和なのだということなのかもしれない。長い間ポーランドの圧制下で苦渋を舐め、解放された監督の行き着いた結果なのだと思えば、それはそれでありかなとは思う。 兵士のエキストラ等はそこそこの人数をかけているが、兵器類に関してはほとんど登場しない。トラック類、ジープ類のほか機関車が出るのみで、銃撃戦もない。軍装に関してはポーランド軍槍騎兵、ソヴィエト赤軍国境警備隊、ドイツ軍が登場する。階級章や服装はそれなりにしっかりしているようだが、全般に皆小綺麗すぎる。このあたりはリアル感を阻害した要因かもしれない。ちなみに主人公の大尉はクラクフ第8槍騎兵連隊に所属している。 カティンの森事件を扱ったレア作であり、全般に良くまとまった好作品であった。一般的にはこの程度の内容で十分だったかも知れないが、やはり個人的にはもっとワイダ作品的な陰鬱感と、もっと歴史を掘り下げた鋭い切り口を期待したかったところだ。興奮度★★★★沈痛度★★★★★爽快度★感涙度★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1939年9月ドイツ軍がポーランドに侵攻。間もなくドイツと不可侵の密約を交わしたソヴィエトが東側から侵入し、クラクフのポーランド第8槍騎兵連隊の将校らがソヴィエト赤軍の捕虜となる。捕虜となった将校の一人アンジェイ大尉の妻アンナと娘ニカが夫を探して国境近くまでやってくる。同じく捕まった大将の妻ルジャは一緒に逃げようと誘うが、アンナは国境までいく。アンジェイ大尉と部下のイェジ中尉がソヴィエト軍の列車に積み込まれる直前、再会することができるが、アンジェイ大尉は軍人の責務だとして妻と娘に別れを告げる。 一方クラクフの町ではアンジェイ大尉の父ヤン教授が大学の召集を受けていた。妻に別れを告げて大学の講堂に行くが、そこにはドイツ軍将校が待ち構えており、大学は閉鎖され、教授らは皆連行されていく。 アンジェイ大尉らはソヴィエトのコジェルスク収容所に収容された。すでに11月となるが何の動きもない。飛行船技師のピョトル中尉は血気盛んに蜂起を叫ぶが、アンジェイらがなだめ、従軍神父は彼の手にロザリオを渡す。クリスマスになると収容所ではお祝いが許された。大将を中心に歌を歌って過ごすのだった。意外にも収容所の生活は緩やかだった。 ポーランド国境の町ではアンナとニカが足止めを食らっていた。ポーランド軍将校の家族と言うことで移動が許されないのだ。そこで兄カジミェシェの家に居候していた。その家にはソヴィエト軍大尉も住み込んでおり、大尉はアンナに求婚していた。なんとかアンナを逃がしてやりたいと言うのだ。だが、アンナはこれを固辞した。その折、ソヴィエト軍はポーランド軍将校の家族を収容所送りすることを計画。カジミェシェの家にも捜索が来て、カジミェシェの妻と子は連行されるが、アンナとニカはソヴィエト軍大尉に匿われて難を逃れる。そしてクラクフまで逃げるのだった。クラクフでは祖母と再会するが、そのもとにザクセン収容所に収容された祖父ヤン教授死亡の知らせが届く。 コジェルスク収容所では大きな動きはないが、腎臓の調子の悪いアンジェイ大尉にイェジ中尉が自分のセーターをプレゼントする。そしてアンジェイ大尉は収容所での生活や収容者リストを手帳に記録していく。 4月に入り、いよいよ収容所にも動きが出てくる。何人かが選ばれ移送されていくことに。その中には大将やアンジェイ大尉も含まれていた。見送るイェジ中尉に別れを告げ、貨車に乗り込む。 1943年4月13日になり、クラクフの町にクラクフ報知によりカティンの森で虐殺されたポーランド将校の名前を知らせていた。ドイツ軍によって発見され、ソヴィエト軍の仕業と判明したのだ。アンナと祖母は不安な気持ちで新聞を見ているが、大将やイェジ中尉、ピョトル中尉の名はあるが、夫アンジェイ大尉の名前はなくほっとする。一方、大将の妻ルジャのもとにドイツ軍からの出頭命令が来る。大将の虐殺にあたり、ソヴィエト軍を非難する声明を出せと言うのだ。ルジャがこれを断ると、ドイツ兵はドイツが製作した虐殺現場の映画を見せられる。外に出たルジャは足がもつれる。 その後11月になるとクラクフはソヴィエト軍占領地域となる。大将の家に元家政婦だったスタシャが大将の形見を持ってやってくる。スタシャは良い身なりでパルチザンとしてソヴィエト軍側についた夫が市長に出世したのだ。 夫の帰りを待つアンナの家に男がやってくる。父かと思ってとびついたニカだったが、それは死んだはずのイェジ中尉だった。ソヴィエト軍側についたイェジは今や少佐になっており、虐殺されたのはイェジのセーターを着ていたアンジェイ大尉だったと伝える。呆然とするアンナと祖母。 イェジ少佐はその足でクラクフ法医学研究所に立ち寄る。ここにはかつてドイツ軍が発掘して保管した虐殺現場の証拠があった。ソヴィエト軍は虐殺をドイツ軍のせいにし、証拠を隠滅しようとしていた。所長はその証拠を隠そうとしていたが、内務人民委員の制服を着たイェジの姿を見て焦る。だが、イェジはアンジェイの遺品を探し出して家族に渡してほしいと伝える。いまやポーランド国民もポーランド軍もカティンの虐殺をドイツ軍の仕業としか言わなくなっていた。街中でソヴィエト軍は虐殺のニュース映画をドイツ軍の仕業として報道していた。これをみた大将夫人ルジャはソヴィエト兵に反論するが、イェジがそれを制止する。そのイェジに対しルジャは嘘を付き続けることを強く非難する。自身も嘘をつくことに我慢ならないイェジは酒場で荒れ、その帰り道ついに拳銃で自殺してしまう。 ピョトル中尉の妹アグニェシュカはワルシャワ蜂起の生き残りだったが、カティンの森現場に行った神父から兄の遺体にあったロザリオを渡される。そして墓碑を作るためにアンナが務める写真館に遺影を依頼する。その写真館にカジミェシェの息子タデウシュがやってくる。そのタデウシュは元パルチザンであり、いまだにソヴィエトに対して恨みがある。そして街のポスターをはがした罪で警官に追われることになる。たまたまいた大将の娘エヴァの手引きで逃げるが、その後再び追われ車にはねられて死亡する。 アグニェシュカはソヴィエト軍に殺されたと記された兄の墓碑を教会に持っていくが受け入れを拒否される。仕方なく墓地に持っていくが姉イレナは体制に従うよう諭すが聞き入れない。そして警官に連行され、処刑のため地下に連れて行かれるのだった。(以下略)
2010年03月17日
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2008 イスラエル 監督:アリ・フォルマン出演者:ボアズ・レイン・バスキーラ、オーリ・シヴァン ほか90分 カラー WALTZ WITH BASHIR戦場でワルツを 完全版 / アリ・フォルマン DVD検索「戦場でワルツを」を探す(楽天) 1982年のイスラエルによるレバノン侵攻を題材に、作戦に参加したアリ監督の実体験をもとに、PTSD(戦争後遺症)の記憶障害から戦友らへの取材を通して記憶を取り戻していく様子を描くドキュメンタリー作品。ドキュメンタリー作品とはいえ、全編のほぼ全てがアニメーションによるという異色作で、 2009年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた注目作でもある。 戦闘からまだ日も浅く、実写による映画も可能であったろうが、あえてアニメーションという手法を取ることによって、作品にこれまでにはない異様な空間と抒情を呼び起こしている。実写では実在のリアル感が前面に出るのに対し、アニメーションでは幻想や架空の映像を作り出すことができ、登場人物の演技では演出できない心の奥底までを描写することができるようだ。内容的にはかなり直球のドキュメンタリーなのだが、正直空想ファンタジーを見ているかのような錯覚に陥る。再現することが困難な戦争系のドキュメンタリーを制作する手法としては、まさに目から鱗が落ちるような成功作と言えるだろう。まあ、こんなんばかりだと困っちゃうけど(笑)。 1982年のレバノン侵攻はイスラエル北のレバノン南部に潜伏するPLO(パレスチナ解放機構)の排除を目的にイスラエル軍がレバノンに侵攻したもので、本作ではそこで起きたサブラ・シャティーラの虐殺に焦点をあてて描いている。サブラ・シャティーラの虐殺はレバノン国内のキリスト教マロン派のファランヘ党によるパレスチナ難民(イスラム教徒)虐殺事件で、イスラエル軍の傍観のもと行われ、国内外に大きな波紋を投げかけるとともに、イスラエル兵にとっても大きなトラウマになったようだ。 主人公であり監督のアリは、レバノン侵攻作戦に従軍した記憶を失っており、このサブラ・シャティーラの虐殺の断片的記憶が甦ってきたのを期に、自身が加担したのかどうか、事件の真相はどうだったのかを紐解いていくのだ。 制作にあたり、4年間にわたる取材を行ったということで、本作ではアリの戦友や知人など8人の証言者が登場する。うち6名は実声による出演もしており、アリと同行した戦友や虐殺を目撃した兵など、自身の過去を贖罪するかのように告白していく。ただし、そこにはイスラエル人としての贖罪という意味合いは薄く、政治的・宗教的問題を正面から取り上げる企図はないようで、個々人の罪の意識と戦争への疑念を解放していくものでしかない。アラブ側からは批判的な声もあがってはいるようだが、監督自身が言っているように、あくまでアリという個人の過去の記憶を取り戻していく物語として描かれている。従って、戦争ドキュメンタリーとして戦争の意義や背景、反戦メッセージというものを期待して見ると、若干歯切れの悪さや物足りなさを感じてしまうが、物語として見た場合は良くできているし、一兵士のミクロ的心理という側面ではかなり秀逸な出来だと言えるだろう。特に、PTSDがどのような要因で発症し、個々人がどのようにそれを捉え、対処しているのかという描写はかなり生々しく伝わってくる。戦争後遺症を扱った映画は数多くあるが、かなりミクロ的視点で描いた作品の部類にはいるだろう。 なお、ラストシーンのみに虐殺現場で悲嘆にくれる女性たちの実写映像を盛り込んでおり、幻想的な流れの中で進んできたストーリーから一瞬にして現実に引き戻すという、大きな効果を生んだことも特筆すべき点である。 アニメーションではあるが、戦闘シーンはなかなか秀逸。装甲兵員輸送車やメルカバ戦車、ヘリコプターなどはリアルに描かれているし、兵員輸送車上からの銃撃シーンや、市街地銃撃戦シーンはアニメーションにしては良くできている。また、登場人物の一人は髪の毛をふさふさに再現しての描写だそうだが(笑)、そういったことができるのもアニメーションの醍醐味だろう。 異色作とは言え、映画としては良くできており、十分に堪能できた。ただ、アニメーションのためにやや幻想的な色合いが強く、ドキュメンタリー的としてのリアル感が薄いという点が難点と言えば難点か。内容的には個人回想的で焦点を絞ったものであったことを考えると、実写ではかなりショボイ作品になった可能性があり、内容の薄さから星3つくらいのところかもしれないが、アニメーションを利用することで膨らみのある雰囲気になり、戦争モノにアニメーション技法を活用した斬新さに星4つ(笑)。 興奮度★★★★沈痛度★★★★爽快度★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 2006年の冬。イスラエルの映画監督アリのもとへ20数年前の戦友ボアズが訪ねてくる。かつてのレバノン侵攻作戦の折番犬を26匹殺害したトラウマで毎夜犬に襲われる夢を見るというのだ。話を聞くアリにはレバノン侵攻時の記憶がまるでないことに気づく。だが、話し終わったとき、アリに3人の戦友と共に海から上陸し、ベイルート西部でパレスチナ難民キャンプから泣き叫んで逃げてくる女たちに遭遇した記憶が甦ってくる。アリはサブラ・シャティーラの虐殺に自身が加担したのではないかという疑念を抱き始め、失われた記憶を取り戻そうと、戦友であり自身の精神科医であるオーリを訪ねる。オーリは記憶は作り上げられることもあるとしながらも、記憶に出てきた戦友のカルミを訪ねることを勧める。 カルミはオランダで成功し、広大な土地を所有していた。カルミは多くを語ろうとしなかったが、その中で初任務の際に司令船に乗せられ裸の女に抱かれる幻想の中、上陸した地点で無実の家族の乗ったベンツを蜂の巣にした記憶を話す。だが、アリの記憶のシーンには覚えがないと言う。 次に、レバノン侵攻に従軍した兵からの情報を得ることで記憶を辿ろうとする。戦車隊員だったロニーはほのぼのとした進軍の最中に突然の敵からの攻撃を受けていた。戦車は破壊され、逃げ出した他の乗員は射殺され、彼だけが取り残された。暗い海を泳ぎ味方陣地にたどり着いたロニーだったが、仲間を見殺しにした罪悪感に苛まれ、遺族に会うのも墓参りもできなくなっていた。だが、そこにもアリの記憶に繋がる物はなかった。 マーシャルアーツの達人フレンケルは匂いで自分の居場所を知らせるため、強い香水パチョリをつけた男で、アリとともに進軍した戦友だが、彼はロケット砲を構えた少年を銃撃したことを話す。その場にアリもいたはずだと言うが、アリには記憶がない。PTSDの専門家ソロモンは自己防衛のために記憶を消しているのだという。 徐々に記憶を取り戻してきたアリは、市街戦で著名なジャーナリストのイシャイが隠れもせず堂々と歩く姿を思い出す。さらに、膠着状態に痺れを切らしたフランケルが機関銃を手にワルツを踊るように銃撃していた姿を思い出す。だが、あの海の記憶には繋がらない。オーリは、アリの両親がアウシュヴィッツにいたことを指摘し、虐殺に対する恐怖からアリが記憶を消しているのではないかと言う。 その虐殺現場にいた戦車指揮官だったハラジから話を聞くことに。ハラジはキャンプを見下ろす地点の護衛にいたが、そこでキャンプに進軍するファラヘ党兵の姿を目撃していた。さらに、部下からキャンプ内でファラヘ党員が婦女子を虐殺しているとの報告を受け、司令部に報告するが、ハラジ自身がその現場を直接見たわけではなく、司令部は知っているとだけの回答で黙殺する。また、一方記者のイシャイもまたイスラエル軍の幹部から虐殺の情報を得て、国防大臣シャロンに電話するが、まともな反応は得られなかったと言う。イシャイは難民キャンプに直接出向くが、その時にようやくイスラエル軍将軍が現場に到着しファラヘ党員に殺害を止めるよう指示する。キャンプ内に入ったイシャイは折り重なる男や女子供の遺体を発見する。 ようやくアリの記憶が甦ってくる。アリ自身はキャンプの後方に所属していたが、あの日アリは虐殺現場で悲嘆に暮れる女性たちの姿を目撃していたのだった。
2010年03月15日
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2008 アメリカ 監督:キャスリン・ビグロー出演者: ジェレミー・レナー、アンソニ・マッキー、ブライアン・ジェラティーほか131分 カラー THE HURT LOCKERDVD検索「ハート・ロッカー」を探す(楽天) 2004年のイラクを舞台に、駐留するアメリカ陸軍爆発物処理班員の心理と緊迫するミッションを描いたドキュメンタリー調ヒューマンドラマ。2010年アカデミー賞で6部門受賞した女性監督キャスリン・ビグローの意欲作。今なおイラクで仕掛けられる爆弾テロに対抗する危険なミッションをハンディカメラを多用し、息詰まるような緊張感を醸し出す。さらに、処理にあたる爆弾処理班員の揺れ動く心情を、彼らの人生背景を交えながら描いていく。 イラクにおける即席爆弾(IED)は主に反政府、反米のテロ組織によるもので、政府機関や軍施設・車輌を破壊することを目的としている。ただし、その爆発で民間人が多く巻き込まれたり、民間人を人間爆弾に仕立てたりと、非人道的なテロ攻撃として知られる。こうしたIEDは劇中にも登場するが不発の榴弾砲や成形炸薬を用いたもので、この処理は遠隔地爆発させるのが最も効果的だが、市街地等では本作の主人公の様な爆発物処理資格者(EOD)による処理が必要になってくるのだ。 本作の主人公は第1歩兵師団にアタッチされた第52兵器グループ(52nd Ordnance Group)所属隊員で、専門の教育を受けたスペシャリストである。本作では歩兵部隊からの爆発物発見の情報により出動を要請され、軍曹をリーダーにした3人構成で任務に当たっている。装甲ハンヴィーで移動し、遠隔操作ロボットや耐爆スーツを着込んでの手作業処理で対処していく。当然のことながら手作業では信管除去や起爆装置除去時の誤爆の危険性もあるし、本作中でも登場するようにテロ犯による遠隔起爆操作で爆発する危険性もある。処理作業中に当たる兵士の極度のストレスはもとより、周辺の警戒にあたる兵士のストレスも尋常ではない。 本作では処理にあたるEODはジェームズ二等軍曹だが、残りの二人はサンボーン三等軍曹とエルドリッジ技術兵で、直接爆発物処理に当たらないところを見ると護衛要員として編成されているようだ。ちなみに、ジェームズ二等軍曹はアフガンにも従軍した経験があり、800個あまりの爆発物を処理した経験のある猛者となっている。サンボーン三等軍曹は7年間諜報部勤務経験がある設定になっている。 ストーリーとしては適度な起承転結と、7つのミッションシーンが連続して展開し、かなり見ごたえのある出来栄え。登場人物の個性や背景も連動して描かれているので、いわゆる物語として見た場合は完成度がかなり高いといえるだろう。爆発物処理シーンは爆弾処理映像と、緊迫する周辺映像を織り交ぜ、見る者を引き込んでいく。しかも、処理が必ずしも成功するわけでもなく、犠牲者が出るたびにそのミッションへの恐怖とテロへの怒りが湧きあがるのだ。 だが、一般的な物語としては上出来の部類と言えるのだが、戦争映画という視点で見た場合、若干の物足りなさを感じてしまう。まず、爆弾処理の緊張感と隊員のストレス表現の甘さがあげられる。エンターテイメントとしてはグロさや神経消耗を緩和する意味でこれでいいのだろうが、ミリヲタ的には物足りない (笑)。せっかくレアな題材を取り上げたのだから、そのあたりの描写をもっと期待していたのだが。噴き出る汗や震える手などの描写もあまりないし、何よりも爆弾処理班のミッションが軍全体の中でどのように位置づけられているのかや、その流れや経緯というのものが欠落している。あまり経費がかかっていないそうだが、周辺映像があまり映し出されていなかったり、登場する兵士数が少ないのもちょっと物足りなさを感じた原因かもしれない。 また、意外に淡々とミッションが遂行されすぎていて、リアル感がない。加えて、主人公のジェームズ二等軍曹の性格付けが危険を楽しむかのような勇者に描かれすぎていて、実際の隊員とは違うのではという非リアル感を感じてしまったのも残念。何度も言うが、エンターテイメントとしてはこれでいいのだろうが、本当の隊員の苦悩や恐怖というものをもっと見てみたかったところだ。 もう一点としては本作に政治性も社会性もあまり込められていないという点がある。余り色濃いメッセージが入っているのも閉口するが、本作ほどエンターテイメント性に終始していると、せっかくの題材の意味がないような気がする。何か一本筋の通ったテーマ性があると、もう少し心に沁みるものがあったのではないかと思うのだ。それだけ、本作からは心に響くものが感じられなかった。 本作はヨルダンでロケされたそうだ。イラク近隣国ということで映像の雰囲気は抜群だ。兵器類も装甲ハンヴィーのほか若干の戦車が使用されている。爆発シーンや銃器射撃シーンもかなり秀逸。爆発した爆弾の破片が飛び散るシーンも迫力あるし、テロ組織と銃撃戦を繰り広げるシーンではスコープで射撃指示をしながら銃を発射するのだが、発射から着弾までの時間差や射撃誤差などはなかなかリアルだ。死体など若干のグロい映像もあるが、人間爆弾の爆発シーンなどは思ったほどグロくはない。逆にこうしたグロさがない分リアル感を阻害したのかもしれないが。 なお、途中でイラク人に扮したアメリカ人部隊と出会う。彼らはPMSCと呼ばれる民間軍事会社の連中である。米軍が作成したテロリストトランプを持っている。賞金稼ぎ的な意味合いで登場するが、実際こうした人々が活動していることは興味深い。 全般に見やすい映画であったし、それなりに満足感を得ることができたが、果たしてアカデミー賞作品としてはどうなのかと言うと、若干疑問は残る。もう少し深みがあったらなあ。 興奮度★★★★沈痛度★★★爽快度★★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 2004年夏のイラク。イラクに駐留する米陸軍第1歩兵師団のブラボー中隊にアタッチされている爆発物処理班が爆発物の処理にあたる。当初は遠隔操作ロボットを操作していたが、誘爆用火薬を乗せた荷台が破損し、班長のトンプソン軍曹が耐爆スーツを着て手作業に向かう。しかし、側にいたイラク人商人の携帯電話操作により起爆装置が作動し155mm榴弾が爆発し、トンプソン軍曹は戦死してしまう。 B中隊任務明けまで38日 トンプソン軍曹の代わりにジェームズ二等軍曹が赴任してくる。やや変わり者のジェームズ二等軍曹に真面目なサンボーン三等軍曹は余り馬が合わない。そんな中、住宅街で爆発物が発見されたと情報があり出動する。まず確認のために遠隔操作ロボットで確かめようとするサンボーンに対し、ジェームズは自ら耐爆スーツを着て行ってしまう。しかも自らスモークを焚いて味方のサンボーンやエルドリッチ技術兵から見えなくしてしまう始末だ。いらだつサンボーン軍曹がようやく目にしたのは、歩兵の制止を無視して突っ込んでくるタクシーだった。ジェームス二等軍曹はタクシーを制止し、拳銃で脅してタクシーを戻らせる。そして爆発物を発見して処理。さらにケーブルにつながれた6つの爆弾を発見し、処理に成功する。サンボーンはジェームズにルールを守れと言うが、ジェームズは全く意に介さない。 あと37日 国連施設の前に駐車している不審な車があるとの情報で出動。ジェームズは車に向うが、そこにテロリストの狙撃で車が炎上。サンボーンとエルドリッチが周辺警戒する中、ジェームズは平然と消火活動をし、トランクからたくさんの爆弾を発見する。まだ起爆装置を持ったテロリストがいるかもしれない中、ジェームズはどうせ死ぬならと防護服を脱ぎ、起爆装置を探し始める。ビデオカメラを構えるイラク人など怪しいギャラリーがいる中、サンボーンらは極度の緊張感を強いられるが、ジェームズは淡々と起爆装置を探し、ついに車内のスイッチを発見して除去する。やってきた将軍から褒められたジェームズはこれまでに873個もの爆弾を処理したことを明かす。 あと23日 砂漠の中で爆発物を発見した班は爆破処理を実施する。その途中でジェームズが帽子を忘れたと取りに戻る。サンボーンは誤爆しやすいんだと呟きながらジェームズを爆死させてしまおうという考えが一瞬よぎる。その帰り、砂漠の中でトランプに描かれたテロリスト幹部を二名連れた民間軍事会社の連中と出会う。タイヤがパンクして立ち往生していたのだ。そこに追走してきたテロリストらから狙撃を受け、軍事会社の兵が死亡する。さらに迫撃砲でも攻撃を受け、また二人が死亡する。ジェームズは遠くの建物に籠ったテロリストをスコープで確認し、サンボーンが狙撃していく。背後からも敵が迫り、エルドリッチがこれを撃退する。こうして徐々に仲間の距離が縮まっていくが、ジェームズには離婚した妻と息子がいることが判明する。 あと16日 班は不発弾処理に出かける。精神消耗しているエルドリッチの主治医ケンブリッジ軍医大佐も安全だということで同行する。そこに爆弾製造工場のアジトを発見する。さらに少年の死体に爆弾を詰めた人間爆弾を発見。ジェームズは基地で仲良くなったベッカムと言う少年ではないかと疑念を持ち、彼の死体から爆弾を除去し連れて行こうとする。だが、民間人に扮した爆発物の爆発でケンブリッジ大佐が戦死する。ジェームズは基地に戻り、ベッカム少年を使用していたイラク人商人を詰問し、ベッカムを人間爆弾に売ったのでないかと父親に迫るのだった。 晩になり大規模な爆発事件の調査に出かける。その調査で遠隔操作をした痕跡を発見し、頭に血が上っているジェームズは追撃を決意する。エルドリッチは乗り気でなかったが参加し、ほどなくテロリストたちを追い詰める。だが、エルドリッチは足を撃たれて負傷。拉致されそうな所を救いだされる。負傷して後走されるエルドリッチはジェームズに悪態をつくのだった。また、ベッカムは生きており、またジェームズに話しかけるが、ジェームズはもう情をかけまいと無視するのだった。 あと2日 一般市民に爆弾を巻きつけた人間爆弾を発見する。しかもタイマーがくくりつけられており、サンボーンは無理だと反対するが、ジェームズは爆弾除去に向かう。だが、堅い鍵が複数付けられており、それを時間内に切ることは不可能だった。ジェームズは男に申し訳ないと言って退避し、爆弾男は爆死してしまう。 ジェームスはイラクから本国に帰還。離婚した妻と息子に再開する。だが、平和な生活は彼に満足感を与えなかった。再びジェームズはイラクの任務に戻るのだった。
2010年03月14日
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ちょっと関西方面に行っておりましたいろいろと散策してまいりまして、ちょいと疲れました。大阪市内もうろついたんですが、いつのも癖で地下鉄乗らずにずっと歩いてしまい、足が棒・・・そんで、ついでなんでこっちでまだ上映してないアカデミー賞作品「ハート・ロッカー」を見てきました。どこに映画館があるのかさっぱりだったんですが、レストランのお兄さんに教えて貰って(汗)なんとか辿り着きました。で、作品なんですが後ほどレビューを書こうと思いますが、結論から言うと★4つ!非常にコンパクトに良くまとまった作品で、イラクものでかつ爆発物除去というリアリティに富む作品ではあったのですが、なんか物足りない・・・きれいに、というか政治色も軍事色も排除した深入りしない作品だったんで、一般受けはきっといいと思うんですが、ミリヲタ的にはちと足りないのですね(笑)。爆弾処理班の心理的プレッシャーは途方もなく大きいと思うんですが、そのあたりが、思ったほど伝わってこなかったです。物語としては良くできているとは思うんですが・・・まあ、戦争映画好きとしては見逃せない作品であることには違いないですが。
2010年03月12日
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2006 ドイツ・リトアニア 監督:アウドリアス・ユツェルナス出演者:ハイノ・フェルヒ、エリカ・マロジャーン、アイリダ・ギンタウタイテほか107分 カラー GHETTOヒトラーの旋律 DVD検索「ヒトラーの旋律」を探す(楽天) 第二次世界大戦時のリトアニアで、ドイツ軍によるユダヤ人種隔離政策によってゲットーに集められたユダヤ人の生への模索を描いたヒューマンドラマ。もとはイスラエルの劇作家ジョシュア・ソボルの舞台劇で、その映画化だという。 リトアニアといえば旧ソヴィエト連邦に属し、1941年6月早々とドイツ軍侵攻によって占領されている。もともとリトアニア人比率が高いため、独立志向が強く、現在は独立国家となっている。戦前はユダヤ人人口が高かったため、ナチスによるユダヤ人迫害の標的となり、多くのユダヤ人が殺害されたが、日本大使の杉原千畝が多くのユダヤ人の命を救ったことでも知られる「日本のシンドラー杉原千畝物語・六千人の命のビザ(2005TV)」。 本作はもとが舞台劇であったためか、全般にブツ切り感が強く視聴しずらい。舞台劇ではインパクト重視のため、多少の意味不明な場面や台詞があった方が印象的なのだろうが、映画でやられるとストーリーの流れが飛び飛びで訳がわからなくなってくる。いくつもの場面で意味不明な台詞やほとんどストーリーに関係しないようなエピソードが挿入される。また、劇風の急激な場面転換も多く、その度に気が逸れた。映画自体は107分と決して長いものではなかったが、それ以上に長く感じられ、かなり疲れたのが正直なところ。 ストーリーはゲットーに集められたユダヤ人の命を救おうと、あえて悪者に甘んじるユダヤ人警察長官ゲンツとドイツ軍指揮官キッテル少尉の駆け引きがメインとなり、ユダヤ人歌手ハイヤや腹話術師スルーリクらユダヤ人の生き様が描かれており、内容自体はスリルあり、涙ありと完成度は高い方と言える。ユダヤ人ものの場合、ユダヤ人警察もドイツ軍将校も大抵は悪者に描かれるのだが、本作では決して単純に悪者というわけでもなく、人として微妙な心の揺れ動きが繊細に描かれているのが秀逸だ。それだけに前述の舞台劇風の箇所さえ修正されていればと思った。 人物描写については性格付けがあまりなされていないのだが、本作に関してはそれでいいと感じた。特定の人物に入れ込むのではなく、登場人物全体の心の揺れ動きを感じるにはちょうどいい。死に直面し緊迫する場面では、個々の心情というよりは傍観者立場で見た方が、全体像や人の即物的な動きが良く分かって良いのだろう。 また、エピソードの説明もあまりされていない。若干何が起こっているのかわからなかったり、その後が気になったりもするのだが、こういう重苦しい題材の場合はそれでもいいかもしれない。 役者は著名ではないようだが、それぞれしっかりとした個性を持っており、ドイツ軍少尉、警察長官などが好演している。この演技力による性格付けが、先の人物説明不足を十分補っていたのかも知れない。ヒロイン歌手ハイヤ役はエリカ・マロジャーンで、妖艶な美女役を好演し、僅かだが美乳も披露している。 ロケはリトアニアで行われたようで、リトアニア的な雰囲気はそこそこ出ている。カメラワークも悪くなく、映像アングルもそこそこ凝っている。音楽もバイオリンを中心にした叙情的なもので映画には即しているだろう。 ただ、歴史考証的には若干問題があるようで、登場する重火器類はアメリカ製だったりとそぐわないし、何と言ってもドイツ軍指揮官キッテル少尉はゲシュタポ所属のようなのだが、制服が国防軍のものとなっている。このあたりは取りあえずどうでもいいやという雰囲気も。 全般に完成度は高いような気もするのだが、視聴し終わった後の満足感はさほどでもない。ストーリーの重苦しさもあるのだろうが、やはり舞台劇風の違和感があったような気がする。当然内容も史実というわけでもなく、舞台劇風に肉付けされているものだけに、ちょっとリアル感に欠けたのも一因かも知れない。興奮度★★★沈痛度★★★★爽快度★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1941年6月22日、ドイツ軍はリトアニアに侵入し、首都ビリニュスを占領。半年で55,000人以上のユダヤ人がパネリアイの森で処刑され、生き残った15,000人のユダヤ人はゲットーに集められた。 ゲットーの一つを管理するドイツ軍指揮官はキッテル少尉で、若干22歳の若者だった。その指揮下でユダヤ人を管理するのが元リトアニア将校のユダヤ人警察長官ゲンツとデスラーだった。 元劇場だった建物にキッテル少尉が視察に来たとき、劇場の元歌手ハイヤが地下から這い出てきて捕まる。腹に豆を隠し持っていたことから射殺されようとしたとき、腹話術師のスルーリクと人形役リナが道化で助け船を出す。キッテルはハイネに歌を歌わせ豆50グラム分を貸しにすると言い去っていく。 警察長官ゲンツはキッテルが殺人鬼だという噂をするユダヤ人の逮捕を命じられているが、実はユダヤ人を救いたいという心も持っていた。そこで、キッテルが劇場に興味を示していることをチャンスとし、地下に隠れていた踊り子や俳優らを引きずり出し、スルーリクを支配人にして劇場の再開を目論む。劇場再開に反対する労働組合で司書のヘルマン・クルックはドイツ人にこびを売るとしてゲンツに否定的だが、ゲンツはなんとか説得しようとする。 また、ヴァイスコフは闇で東部戦線で戦死したドイツ兵の軍服を仕入れ、再生してドイツ軍に売る計画を練る。ゲンツにキッテルへの許可を求め、ゲンツは工場労働者としてユダヤ人の存在を認めることができるとキッテルに話をする。その結果、兵器製造に役立つとして固定給での労働が許可された。 最初の公演は大成功を収めるが、裏では密売や闇取引が横行し始める。ゲンツは見て見ぬふりをしていたが、闇商人ガースタインが仲間に殺害される事件も発生する。ヴァイスコフは商売で儲けた金を劇場資金に投入するが、機関銃の密売がキッテルにバレ、ピンチに陥る。そこで、「部分的処刑」と「皆殺し」の違いを問われたヴァイスコフは機転を利かせ「私以外を殺すのが部分処刑、私も殺すのが皆殺しだ」と言い、処刑を免れる。 1942年4月、二人目の密売人が捕まり、さすがのゲンツも見逃すことは出来ずにキッテルの見る前で処刑を実行する。 1943年1月31日、スターリングラードの独軍第6軍がソヴィエトに降伏。次第にドイツ軍のユダヤ人処遇も厳しくなり、キッテルの表情も硬くなってくる。キッテルはゲンツを呼び、ゲットー閉鎖命令(処刑)に対し、なんとかゲットーを残すために他のゲットーからのユダヤ人を処刑することを提案する。少しでもユダヤ人の命を救いたいゲンツは全権委任を受入れ、少しでもキッテルの機嫌を損なわないよう苦慮する。 パーティーの場でヴァイスコフが工場稼働の許可を得るため、女たちはドイツ兵の暴行に耐え、さらにゲンツはハイヤに気のあるキッテルの目の前でハイヤの胸をさらけ出させ、移送されてくるユダヤ人の処刑人数を2000名から600人にまで減らすことに成功する。だが、600人の年老いたユダヤ人は森の中でリトアニア民兵により射殺される。 110回目の公演が行われた際に、キッテルは突然人口増加抑制のため3人目以上の子供を強制移送させはじめる。驚いたゲンツは少しでも子供を救おうとするが、多くの子供が連れ去られてしまう。ゲンツは自分の力のなさと、血に汚れた自分を嘆き自殺しようとする。だが、一人の女がそれをなぐさめる。 ワルシャワでゲットー蜂起が起こり、リトアニアでも森のゲリラと接触しはじめ、ゲットー脱走計画が持ち上がる。ゲンツは近くソヴィエト軍が来ることを期待し、蜂起や問題を起こすなと説得するが、ハイヤを始め多くのユダヤ人がゲンツを裏切り者と罵って去っていく。ハイヤもまた地下組織に参加するためゲットーを脱出していく。 それでもゲンツはヴァイスコフに多くのユダヤ人を雇うように説得し、聞き入れないヴァイスコフを逮捕する。それを見ていたキッテルはゲンツにゲシュタポから出頭命令が出たことを知らせる。ゲンツが地下組織やユダヤ人を逃がした罪だった。キッテルはゲンツに逃げることを勧めるが、ゲンツは断る。そしてキッテルは劇場団員を呼び出し上演させる。上演内容はドイツ軍に対する厳しい風刺だった。だがキッテルは演技を賞賛し、パンなどの食料を振る舞う。だが、その直後機関銃を構えたドイツ兵が現れ、ゲンツを含め劇場は血の海と化す。唯一隠れて生き残ったスルーリクとリナだったが、劇場舞台の下で出産した赤ん坊の産声を消すために、声真似をしたリナが顔を出す。リナはキッテルに射殺され、キッテルは民間人の格好をして去っていく。
2010年03月05日
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2006 ロシア・イギリス 監督:トム・ロバーツ出演者: トーマス・クレッチマン、ダニエル・ブリュール、ヴェラ・ファーミガ、ナタリー・プレス、ジョン・マルコヴィッチほか113分 カラー IN TRANZITエントリーでポイント+13倍!3月3日10時までナチスの墓標 レニングラード捕虜収容所(DVD) ◆20%OFF! DVD検索「ナチスの墓標」を探す(楽天) 第二次世界大戦終了後の1946年、ソヴィエトのレニングラードを舞台に、捕虜収容所に収容されたドイツ兵捕虜と看守役のロシア人女性兵たちとの騒動と交流を描いたサスペンス風ラブロマンス。日本兵のシベリア抑留でも著名だが、ソヴィエトは戦後も長く捕虜を違法に抑留酷使し続け、残酷な仕打ちの末に多大な死者を出している。本作ではドイツ軍捕虜に対する残忍な仕打ちを描きつつ、ほのかに香る淡い恋を交えたストーリーとなっている。 本作中に「実話に基づく」と言う標記が見られるので、何かベースになる逸話があったのだろうが、本作中からどこが実話でどこがフィクションなのか判別できる要素はなく、全般に作り話の印象が強い。ただ、原作者がナターシャで、主人公のロシア人女医もナターシャなので、もしかもすると作者の自伝なのかもしれないが。まあ、それにしても余りに出来すぎのストーリーなので、相当脚色はされているような気はするが。 それにしてもロシア・イギリス作というのは珍しい。映画的にはソヴィエト映画の叙情的系譜もイギリス映画の生真面目さも余り感じられない。どうも制作会社はカナダの新興者らしいので、なるほど納得。 全般にサスペンスものとしては悪くない緊張感を保てるのだが、いかんせんストーリー自体に起伏がなく、起承転結のバランスが偏っているために後半から終盤にかけてのインパクトが薄すぎる。 本作では、過酷な捕虜酷使、殺人などソヴィエト赤軍の残忍さと、何よりもソヴィエト軍やNKVD(秘密警察)の内部密告、粛正の恐怖感がじわじわと迫り来るだけに、密告者(スパイ)の謎をもっとじっくりと描ききっていたら、ラブロマンスとのバランスで絶妙な出来になり得たかもしれない。 また、不出来の理由として人物の性格付けが浅すぎた。サスペンスものとして人物背景を早くに描くことは避けたかったのかもしれないが、結局最後まで謎のままで終わったり、深みがまるでないままに終わってしまった。特に主人公の一人である女医ナターシャ、その夫で精神病のアンドレイ、鍵を握るドイツ兵のボルトやクラウスなど、主要な人物であるにも関わらず、人物背景や性格がはっきりしないままだったのは、人物に対する思い入れを思い切り阻害した。その結果、終盤のクライマックスもあっけない尻切れとんぼ状態の印象。 撮影はサンクトペテルブルク(旧レニングラード)その地で行われているようだ。広場シーンなどはその片鱗もあるのだが、主な収容所シーンや廃墟シーンなどはロケセットのようだ。せっかくのレニングラードロケもさほど生かされていない感じ。映像も妙にコントラストが強くてちょっと見にくい。カメラワークも決して上手とは言えず、テレビドラマのレベルだ。 役者では女医ナターシャ役のヴェラ・ファーミガが特筆できる。目と憂いの表情で様々なシチュエーションを演じきっているのが良い。もちろんナタリー・プレスとともに年齢を感じさせない美ヌードも披露している。一方、トーマス・クレッチマンはドイツ兵ボルト役を演じるが、役柄の設定にも問題があったようだが、今ひとつ存在感なし。ジョン・マルコヴィッチはソヴィエト軍大佐役だが、目が怖い・・・。 全般にもう一歩という出来だったが、密告の恐怖というものは堪能できるだろう。近年の日本も政権交代などで揚げ足取りや内部告発が美化されつつある状況の中、旧ソヴィエトや北朝鮮のような密告世界の恐怖を味わっておくのも、悪趣味でいいかもしれない(笑)。 なお、ソヴィエト抑留ものとしては「スターリングラードからの医者(1958独)」「9000 マイルの約束(2001独)」などがあるが、日本のシベリア抑留もの映画がほとんどないのは非常に残念なところだ。興奮度★★沈痛度★★★爽快度★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1946年のレニングラード。女性用一時収容所にはソヴィエト軍女性兵オルガ大尉以下が看守として勤務しており、軍医ナターシャも勤務していた。ナターシャの夫アンドレイは傷を負って精神病患者だった。ナターシャは側に置いておきたいため収容所の門番として雇われていた。 そこにパブロフ大佐の命令によりドイツ軍男性捕虜51人がトラックにより移送されてくる。ドイツ兵に家族を殺された怨念からベラ・チュリナ伍長らは捕虜のウエーバー伍長を射殺するなど厳しく当たる。ナターシャは捕虜の処遇を公平に当たろうとするが、オルガ大尉はパブロフ大佐に取り入ろうと必死だった。 ドイツ軍捕虜には寡黙なマックス・ボルト、曰くありげなクラウスなどがいたが、若い兵ペーターは料理人の若い娘ジーナ・チョミナと恋仲になっていく。パブロフ大佐は捕虜の中に重要戦犯が隠れているとし、あぶりださせようと女医のナターシャにドイツ兵と懇意になって探れと命じる。パブロフ大佐のもとには様々な密告が届いているようで、誰かが収容所の実態を密告しているようだった。 ドイツ兵の戦犯には1941年のレニングラードでの民間人虐殺に加担した第8SS騎兵師団のハインリヒ・ロンバルト大佐、エンリッヒ・ナイバッハ大尉がおり、ネーリングとミューラーと名乗るドイツ兵が二人と判明して絞首刑に処される。さらに、重要な戦犯がいるはずだとして、大佐はクラウス、マックスが怪しいと目星を付け、ナターシャに接近するよう命じる。 一方、クラウスもまた早期の解放を目論むため、女医ナターシャに接近して誰かを売ることをマックスにけしかけるがマックスは拒否する。 内部密告により食糧供給過多と判断した大佐は食料を1/3に減らす。そのためナターシャは近所のユダヤ人ヤコブの車庫倉庫の作業を手伝わせることで食料を得ることを提案。ユダヤ人とドイツ人の憎悪の垣根を乗り越えて、ヤコブやナターシャは車庫でダンスパーティーを企画する。楽器の出来るドイツ兵が楽器の練習を始める。 ペーターとジーナは両方とも家族を失った共感から恋仲となり、ジーナは身ごもってしまう。ナターシャは必死に隠そうとするが、密告によりペーターは食料を盗んだ罪を被せられ連行される。しかも密告しているのはアンドレイだと判明する。食料を盗んだ罪はナターシャによってベラ伍長と判明し逮捕されるが、ペーターは身ごもらせた罪で連れていかれる。ジーナは悲しみ首をつって自殺する。 突如捕虜は全裸にさせられ小屋に終結させられる。処刑かと思われたが、水をかけられ石けんを渡される。ダンスパーティのために身を清めようというオルガ大尉らの配慮だった。だが、パーティに招待されたパブロフ大佐はこの機会を逃さず、スパイの女を送り込んでいた。ダンスパーティで地元のロシア人女性と捕虜はダンスを踊り、ロシア女性が見送りに来た姿を見て、エレナ中尉やナターシャは門限を延長して捕虜を自由にする。パブロフ大佐に無碍にされたオルガ大尉も暗黙の了解だ。マックスもまた女医ナターシャの元を訪れ二人は関係を結ぶ。その帰路、マックスはクラウスに殴打され列車の線路に遺書とともに寝かされる。マックスはクラウスに罪を着せようとしたのだ。だが、そこにナターシャが助けに入り、さらにパブロフ大佐がやってくる。実はクラウスはマックスの元教え子で残忍なSS幹部だったのだ。夜を共にし、マックスはナターシャにクラウスのことを密告したのだ。クラウスは走ってきた列車に轢かれて死亡。だが、マックスはナターシャが密告させるために寝たのだと知り、ショックを受ける。 その晩、スターリンが連合国軍と合意し捕虜の返還を決定する。捕虜たちは呼び戻され、翌朝トラックで移送されていくことに。ナターシャの夫アンドレイも大佐との約束に反し、紙で折った花を託して病院に連れて行かれてしまう。マックスもまた移送される直前に一枚の手紙を託して去っていく。残ったナターシャは紙の花と手紙を眺め、複雑な思いで見送るのだった。
2010年03月01日
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1950 イギリス 監督:テレンス・ヤング出演者:ラルフ・クラントン、エドワード・アンダーダウン、ヘレン・チェリーほか103分 モノクロ THEY WERE NOT DEVIDED撃滅戦車隊3000粁(DVD) ◆20%OFF! DVD検索「撃滅戦車隊」を探す(楽天) 第二次世界大戦の英軍近衛機甲旅団の二名の士官をメインキャストに、1941年から1944年バルジ作戦(アルデンヌ攻勢)までを描いたシリアス系戦争ドラマ。戦後間もなくの製作で、モノクロ映像ながらも登場する兵器類は実車が数多く、戦争映画としてはかなりのシリアス感がある。もちろん、記録映像も挿入はされるが、実車のリアル感はやはり素晴らしい。ただし、ストーリーそのものはお粗末で、士官の友情とラブロマンスをメインテーマに描いてはいるものの、ブツ切りのストーリーに稚拙な編集で、映画のストーリー性を楽しむレベルには達していない。どちらかというと、戦意高揚映画のノリで、記録映画的に見たほうが楽しめるかも知れない。 監督のテレンス・ヤングは自身が近衛機甲師団に所属していたことがあるそうで、自身の経験したヨーロッパ戦を邂逅的に描いた伝記的な位置づけが強いのかも知れない。それだけに、主人公の1941年の入隊から1944年末のアルデンヌ攻勢まで非常に多くのエピソードを盛り込んでいる。あれもこれも描きたい、そういう監督の意志が強く感じられるのだ。だが、映画としてはあまりに詰め込みすぎで、友情もラブロマンスも片隅に追いやられてしまっており、走馬燈のように事象が流れていくのをただ目で追っているしかない。 描かれるエピソードとしては、入隊時の新兵訓練シーン、1942年のアフリカ戦、1944年のノルマンディー上陸戦前後、同年のマーケットガーデン作戦、そして同年末のバルジ作戦(アルデンヌ攻勢)となっている。ヨーロッパ戦に興味のある人ならば、ほぼ主要戦を網羅しているので十分に楽しめるだろう。 主人公の士官は近衛機甲第5旅団(字幕では近衛歩兵第5連隊)に所属しており、戦車隊の車長として活躍していく。任官時は少尉だが最後は少佐?にまで昇進しているところをみると大隊長クラスになっているのかもしれない。近衛機甲第5旅団は実際にアフリカ戦、イタリア戦、ヨーロッパ戦に参加しているので、かなり史実に近い設定になっているものと思われる。 本作で好感なのは、決して英軍を美化していないことだ。アフリカ戦やノルマンディー上陸戦には後方部隊として直接戦火を交えていないのをそのまま描いているし、マーケットガーデン作戦での英軍機甲部隊の遅い歩みによる空挺部隊壊滅も描かれている。正直言って本作の英軍はヨーロッパ戦でろくろく活躍していないのだが(笑)、まあ、ありのままを描いている点は好感が持てるのだ。 さて、本作の最大の興味は登場する兵器類にある。戦後間もないが故に、実車が走行するのが素晴らしい。まず戦車類ではMK.Vカヴェナンター(カヴィネンダー)巡航戦車、MK.IVクルセイダー巡航戦車、MK.VIIIクロムウエル巡航戦車、シャーマン・ファイアフライ戦車が縦横無尽に走り回る。ファイアフライは炎上したり、脱輪横転したりと大活躍?。また、何と本物のドイツ軍タイガーI戦車も登場する。走行こそしていないが炎上シーンまで演じるなど余りにもったいない使い方。もちろんソフトスキン類も多数登場し、ジープ系、トラック系のほかハーフトラック型の救急車も珍しい。航空機系も登場するがもしかもすると記録映像かもしれない。 全般に多彩な事象を描いて盛りだくさんという印象もあるのだが、中身自体はほとんどないに等しい。ストーリー自体は捨て置いて、登場する兵器類、そして英軍の戦いぶり(?)を堪能するという趣旨では貴重な映画となっているだろう。戦史マニア向けの一品である。 興奮度★★★★沈痛度★★★爽快度★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1940年ケータラムの英陸軍新兵訓練所の門をアメリカ人のデイビッド・モーガンがくぐる。訓練指導官の軍曹の厳しいしごきの中、イギリス人のフィリップ・ロドニー・ハミルトン、オコナーらと親睦を深めていく。特に曹長の指導は厳しく、服装、自転車の乗り方まで叱られ、駆け足をさせられるのだ。だが、指摘する事項がない場合は「散髪しろ」と指示し、これは誉め言葉でもあった。 1941年3月12日、訓練が終わると、モーガンとハミルトンの二人は少尉に任官される。そして第5機甲旅団の士官として第4大隊に同行することに。1941年12月には日本が日米に開戦布告。イギリス本土にもアメリカ兵が多数やってくるようになる。生真面目なイギリス人に対し、アメリカ人は気軽に女性に声を掛ける。旅団にはオコナーが戦車伍長として勤務していた。 1942年10月23日、アフリカのアラメインの戦闘にモーガン少尉が参加するも、車体の色を塗り替えるばかりで実戦への参加はなかった。連合軍は1943年にはイタリアのアンツィオの戦いに勝利、いよいよ1944年6月のノルマンディー上陸戦を控えている。その上陸戦を前にハミルトンはモーガンを連れて妻のもとを訪ねる。久しぶりの再会を楽しむハミルトンに遠慮してモーガンは近くの池に水泳へ行く。そこで全裸で泳いでいた赤十字隊の若い女性ジェーンと出会い親交を深める。 後日、上陸戦延期のためハミルトンとモーガンは再び妻とジェーンのもとを訪れるが、急な呼び出しによりモーガンは帰隊する。 いよいよノルマンディー上陸戦が始まるが、二人の部隊は抵抗もない後方からの上陸だった。だが、戦車での進軍中に地雷にやられトーマス軍曹が戦死。部隊初の戦死者だった。いよいよフランス内部で抵抗するドイツ軍戦車隊との交戦になり、発煙弾をたいてドイツ軍戦車を次々に撃破していく。シャーマンフライ戦車も一台やられるが独軍のタイガーなど17台を撃破する。戦車兵のオコナーは軍曹に昇任する。 次にファーレズの英軍カナダ軍を支援するため向かうが、戦車隊の歩みは遅い。パリではルクレール将軍が入城を果たす。部隊はベルギー国境に向かうこととなり、まずブリュッセルに到達する。そこで市民の大歓迎を受けもみくちゃに。大隊長のブッシー少佐の指揮の下北駅で第一連隊を待つがなかなか来ない。 一方、米英軍の空挺部隊がナイメーヘンやグラーブに降下し橋を奪取する作戦が開始される。戦車隊は米軍第101空挺師団と合流し、ナイメーヘンの橋を無抵抗のまま奪取に成功する。だが、アルンヘルムまでの道のりは遠く、8日と16時間待ち続けた英軍第1空挺師団の将兵は9月25日壊滅する。 さらに101空挺師団の指揮下に入り進軍するが、ブッシー少佐が装甲車と衝突して事故死する。遺体を運ぶためモーガンは一時ロンドンに戻り、そこでジェーンに結婚を申し込む。 1944年12月、二人はバルジ作戦のまっただ中にいた。前線偵察に出かけたモーガンが敵の迫撃弾に負傷する。助けに行ったハミルトン少佐?もまた敵弾の直撃を受けて戦死する。二人の遺体にオコナー軍曹が米英両国の国旗を掲げる。どちらがどちらかわからなくなるが、二人は怒りはしないだろうと適当に刺すのだった。
2010年02月23日
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2008 アメリカ・イタリア 監督:スパイク・リー出演者:ラズ・アロンソ、デレク・ルーク、オマー・ベンソン・ミラー、マッテオ・シャボルディ、ヴァレンティナ・チェルヴィほか160分 カラー MIRACLEATST.ANNA【トキメキ特価!】 セントアンナの奇跡 プレミアム・エディション(DVD) ◆27%OFF! DVD検索「セントアンナの奇跡」を探す(楽天) 第二次世界大戦時の1944年秋、イタリアのトスカーナ地方。アメリカ陸軍第92師団所属の黒人兵4名が迷い込んだイタリアの村で起きる奇跡を描いたサスペンス風ヒューマンドラマ。ムッソリーニが失脚した後のイタリアにはドイツ軍が駐留しており、アメリカなどの連合軍はドイツ軍に攻勢をかけていた。その部隊の一つがアメリカ陸軍第92師団バッファロー・ソルジャーで、黒人兵で編成される特殊な部隊だった。 ストーリーは1983年のアメリカニューヨークで起きた不可解な殺人事件を発端に、1944年イタリアのトスカーナの村で起きた奇跡を邂逅し、謎解きしていく仕立てになっている。第92師団所属で最前線で孤立してしまった4名の黒人兵を中心に描かれるが、不思議な力を持つイタリア人の少年アンジェロが重要なキーマンとなっている。 原作は実際に第92師団従軍の叔父を持つジェームズ・マクブライトの小説で、本作の脚本も手がけている。ストーリーそのものはフィクションだが、実在の黒人師団の虐げられた実態や、1944年8月12日に起こったイタリアのセントアンナ教会(サンタンナ・ディ・スタッツェーマ)の大虐殺、サンタ・トリニータ橋の破壊など史実も盛り込まれて構成されている。監督は「マルコムX」などを手がけた黒人監督スパイク・リー。戦争系映画は初めてだそうで、並々ならぬ意欲を感じる。 全般的にはサスペンス的な雰囲気が強いのだが、宗教的なシリアスドラマ、黒人差別を風刺した社会派ドラマといった側面も持ち、かつ戦争アクションとしても力が入っている。正直、見ている途中も観終わった後もジャンルを特定することが難しかった。結果、何だかすっきりとしないもどかしさと、ストーリー的にもいくつかの理解できない疑問点が残ってしまったのが残念。 その要因の一つとして製作者が描こうとしたテーマの難解性があるだろう。というのは、本作はキリスト教的な善悪と贖罪といったものが「奇跡」として描かれたり、黒人人種差別がちょっとした隙間に繊細に描写されているのだ。キリスト教のことは良くわからないのだが(汗)、キリスト教的な奇跡というのは「神」もしくは敬虔な信徒によって起こされるという人為的な側面が強い印象があり、自然物を万神とし奇跡は自然が起こすとする日本的な感覚からすると違和感は拭えない。何やら強引なこじ付けにも思え、どうもストーリーで起きる「奇跡」がすっきりしないのだ。また、黒人人種差別の描写も、日頃から人種差別に疎い日本人にとってはリアル感が薄いし、細かい描写もかなり見落としてしまっている感がある。本来ならば些末な差別的描写が積み重なることで、人種差別への怒りと絶望が昇華してくるように企図されているのだろうと思うが、製作側の意図ほどそれを感じることができなかった。 もう一点としては小説に忠実だったせいか、サスペンス的な作りに固執した印象が強く、ストーリー全般に説明不足が感じられたことがある。ただでさえ上記のように日本人にとっては難解であったのに加え、登場人物の性格、行動等が非説明調だったため、途中や最後の「奇跡」を理解するのに時間がかかってしまった。キリスト教徒や黒人であれば素直に理解できるのかもしれないが、私にはかなり難解であった。そういう意味では、本作から受ける感動は生きてきた環境や人生経験の差によってかなりの温度差があるのではないだろうか。私のようなバリバリの日本人にとってはやや受け容れ難い側面があるかもしれない。 また、作品のキーとなるシンボルである「プリマヴェーラの彫像」や「眠る男の横顔」の意味も非常に難解。意味深なシンボルで重要な意味があるように思えるのだが、結局私には理解できなかったのか、作品中で大きなウエートを占めているようには思えなかった。このあたりも消化不良感として残ってしまった。 小説が元になっているだけあって、4名の黒人兵はそれぞれ個性的に設定されている。主人公のネグロンは無線手の伍長。リーダーはスタンプス二等軍曹で真面目な性格。カミングス三等軍曹は女好きで即物的。「チョコレートの巨人」トレイン上等兵はストーリーの転機を創出する最も神がかった存在だ。それぞれ個性的な俳優を配し、演技としては申し分ない。ただ、前述したとおりもう少し性格付けがあっても良かったかも。また、イタリア人女性レナータは妖艶な人妻で、イタリア人のヴァレンティナ・チェルヴィが演じ、美乳ヌードも披露する。もう一人の主人公イタリア人少年アンジェロは本作デビューのイタリア人少年。まあまあの演技だが、奇跡に関係するストーリーからするともう少し神秘的な雰囲気があっても良かったところ。 本作で良かったのは登場する米独伊人がそれぞれ自国語を話している点。アメリカ映画は英語一辺倒になりがちだが、きちんと言語を使い分け俳優もそれぞれの国から選ぶあたりは監督のこだわりを感じる。また、ロケ地もイタリアで行っており、これまたこだわりだ。 さて戦闘シーンだが、本作の戦闘シーンは全体の三分の一程度だがなかなか秀逸な部類に入る。15禁がかかるほどリアルでグロいシーンもあるし、機銃弾、迫撃砲などの着弾シーンも良くできている。基本が歩兵の渡河突撃と市街戦なのでスケール感には乏しいが、リアルさは及第点だ。ただし、本作のストーリーやテーマ性から言うと、そこまでリアルな映像が必要だったかというといささか疑問は残る。主要な人物がグロい死体になっていくのは直視に堪えないし、そこまでする理由はない気がする。どちらかというと奇跡と言うファンタジー的な要素を描いているのだから、「死」の表現もオブラートに包んだ表現の方が内容に没頭できたのでは。 なお、登場する部隊としては米陸軍第92歩兵師団のほか、独軍第16SS装甲擲弾兵師団ライヒスフューラー、イタリアレジスタンスが出てくる。イタリアレジスタンスはアメリカ軍に情報提供する一方、必ずしもアメリカ軍と同調していないあたりの描写が興味深い。兵器類はほとんど登場せず、ジープ類のソフトスキンと迫撃砲、野砲程度。 全般に監督の意欲は感じられるが、思い入れが強すぎたのか、若干肩の力が入りすぎの感。先に述べたテーマ性の難解さもあいまって、思ったほど感動が得られず、作品にのめりこむことができなかった。ややマニアック系の作品だと言えようか。 興奮度★★★沈痛度★★★★爽快度★★感涙度★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1983年のニューヨーク。一人の老いた郵便局員が切手を買いにきた男を射殺する。郵便局員の名はヘクター・ネグロンと言い、犯行の理由も不明で口を閉ざしている。だが、逮捕されたヘクターの部屋からイタリアの橋についていた彫像プリマヴェーラが発見され、新聞記者の問いに重い口を開き始める。 1944年の秋、イタリアのトスカーナで米陸軍第92歩兵師団はドイツ軍と対峙していた。92師団は黒人で編成された部隊で、指揮官は白人のため黒人人種差別や偏見が満ちていた。ヘクター・ネグロン伍長の小隊は前衛偵察のため渡河作戦を実行するが、瞬く間にドイツ軍の機銃や迫撃砲の餌食となる。対岸にたどり着いたのはヘクター伍長のほかサム・トレイン上等兵、オーブリー・スタンプス二等軍曹、ビショップ・カミングス三等軍曹の4名しかいなかった。リーダーとなったスタンプス二等軍曹は味方砲兵隊に援護射撃を頼むが、白人指揮官の中隊長(大尉)は信用せずに見捨ててしまう。4人は完全に孤立し、ドイツ軍支配地のイタリアの村へ侵入しるしかなかった。 トレイン上等兵は大男だが、純粋な信仰心を持つ変わり者で、破壊された橋で拾った彫像の頭を持ち歩いている。トレイン上等兵は砲撃された廃屋で倒れていたイタリア人の少年アンジェロを助け出し、連れ歩くようになる。アンジェロは見えない友達と話をし、神秘的な力を持っている。トレインのことを「チョコレートの巨人」と呼んで慕う。 4人はドイツ軍の目を盗んでトスカーナの村にたどり着き、ファシスト党員の家に食料を求めて入る。家には夫が出征している人妻レナータがおり、英語を話すことができた。レナータらは4人を匿い世話をするようになる。無線手のヘクターは壊れていた無線機がアンジェロによって直ったのを見て、次第にアンジェロの力(奇跡)を信じるようになる。 直った無線で本隊から、ドイツ軍の総攻撃の情報を仕入れるため捕虜を取れとの指令が届く。白人の命令に従おうとするスタンプス二等軍曹だが、カミングス三等軍曹は本国などで経験した黒人人種差別のことを思い、指令に従うことに拒否反応を示す。イタリア人は黒人に無頓着で、彼らは今黒人ではなく一人の人間であったのだ。 そんな折、イタリア人パルチザングループのペッピらがドイツ兵の捕虜を一人連れてやってくる。捕虜を欲しがる黒人兵と反目しあうが、捕虜の尋問のために数日貸し出すことを認める。アンジェロはそのドイツ兵と顔見知りのようで、ドイツ兵は「走って逃げろ」と囁くのだった。その光景に不審を感じたヘクターはアンジェロから真実を聞き出す。実はアンジェロはドイツ軍SS親衛隊によるセントアンナ教会の大虐殺に巻き込まれており、そのドイツ兵によって逃がされていたのだ。その結果ドイツ兵も逃亡せざるを得なくなり、ドイツ軍はドイツ兵の捜索を行っていた。さらに、アンジェロはパルチザンのうちの一人ロドルフォにひどく怯えていた。ヘクターはロドルフォが怪しいと警告しに行くが、時遅くドイツ兵捕虜は殺害され、ロドルフォは逃亡する。ロドルフォはドイツ軍の手先だったのだ。 スタンプスは密かにレナータに惚れていたが、女好きのカミングスがレナータと寝てしまう。怒ったスタンプスはカミングスと取っ組み合いになる。(後略)
2010年02月19日
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「戦場でワルツを」(イスラエル・ドイツ・フランス・アメリカ)2008カンヌ映画祭で評判となったジャンルを超えた斬新な手法で作られた映画だそうです。金沢で今日から公開だそうなので、行ってこようかと思います。5月14日からは「グリーン・ゾーン」という映画が公開だそうです。こちらはイラク戦争を舞台にしたもので、アクションサスペンス風のようです。戦争映画というのは微妙ですが、アクション性は結構楽しめそうです。
2010年02月13日
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1988 新潮社(東宝系) 監督:高畑勲出演者(声優):辰巳努、白石綾乃 ほか90分 カラー (アニメ) Grave of the Fireflies火垂るの墓(DVD) ◆20%OFF! DVD検索「火垂るの墓」を探す(楽天) いまさらですが、懐かしの名作アニメです(笑) 1945年の神戸。空襲で母親を失い孤児となった14歳の兄と4歳の妹が混乱の中を必死に生き、悲しい運命に翻弄される様を描いたアニメ。原作は野坂昭如の小説で、自身の体験をもとにアレンジされたものである。戦争アニメとしては稀有の出来で、ストーリー、映像ともに20年以上経過した現在でも遜色ないものである。 だが、野坂昭如のストレートで悲壮な原作に引きずられたためか、本作も非常に悲壮感漂う壮絶な内容となっている。全編にわたり涙なくして観ることができない感動巨編であることは間違いないが、私個人的にはいささかやりすぎの「反則映画」と感じている。戦争映画マニアの私ですら何度も観る気にならないほど余りに哀しい。 その要因としてあげられるのは、登場人物の幾人か(叔母など)を悪玉に仕立てる反面、主人公の兄妹を美化しすぎている点、そしてなんと言っても兄妹役の声優が実際に子供を起用することによるリアリティにあるだろう。余りにも愛らしい妹節子役は当時6歳だった白石綾乃が務め、声を聞くだけで誰もが胸を締め付けられただろう。まさに反則技である(笑)。兄の清太役の辰巳努も16歳だったそうで、世間の大人を信じることができず、逞しくも孤立していく悲しみを実に良く表現している。 ストーリー上では登場する小物類、設定が卓越しているだろう。節子が欲しがるドロップ缶、そして節子の骨の入ったドロップ缶はインパクト大。また、節子がおしっこをしたがるシーンや水を運ぶシーンなど、幼さや弱さを強調する設定が多く、視聴者側はジワジワとボディブローが効いていく。 アニメーションはスタジオジブリによるもので、節子の愛らしい表情や仕草はさすがだ。空襲シーンやB-29の飛行シーンもしっかりと描かれており、なかなか秀逸。 本作は内容が内容だけに、反戦アニメと評されることも多いが、確かに反戦的要素も多分にあるとはいえ、むしろ人間の生きざまを考えさせるもののような気がする。大人を信用できない清太は自らの世界を作り上げることで生きていこうとするが、それがもとで妹節子は命を落とし、自らも死んでいく。信用できない大人に迎合すべきだったのか、すがるべきだったのか。本作の清太の行動は設定上の曖昧さもあって、様々な議論を呼んだが、それを超越した次元で生に対する人間の本能と理性の狭間を見せつけられた。多分、そう簡単には結論の出ない命題であって、アニメ作品にしては余りに重く難しい命題であろう。それだけに、アニメ作品として成功したかどうかは微妙なところだ。 正直、映画作品としてはかなり完成度が高いと感じる。だが、前述の通りアニメ作品として適していたかどうかというとちょっと疑問が残るという点で、やや評価を落とした。まあ、何度見ても泣けるんだけどね。興奮度★★★沈痛度★★★★★爽快度★★感涙度★★★★★
2010年02月03日
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さて、2010年の1月も終わりかけていますですが(笑)、今年の戦争映画はどうなんでしょう?あんまり目立った動きはないようですが、取りあえずはハート・ロッカー(2008アメリカ)■2010年3月6日公開 全国東宝系イラク戦争における米軍爆弾処理班の出来事を描いた作品らしいウィニング チケット 遙かなるブダペスト(2003 ハンガリー)■2010年2月13日 公開 シネマアンジェリカ(渋谷)宝くじに当たって大金持ちなったハンガリー人がハンガリー動乱に巻き込まれていく様子を描いたものらしいなんてのがあるようです。でもどちらも北陸ではまだ上映予定がないみたい・・・(泣)。こういうところが田舎は嫌なのよねえ・・・そんな中、昨年末に公開が始まって、上記作品同様北陸での上映がなかった2作品がついに石川・富山上陸!やった!カティンの森■2010年3月上旬金沢シネモンド 3月13日富山総曲輪フォルツァカチンの森虐殺事件 アンジェイ・ワイダ監督戦場でワルツを(イスラエル・ドイツ・フランス・アメリカ)■2010年2月13日金沢シネモンド 3月富山総曲輪フォルツァレバノン戦争の記憶を辿る映画監督 新しい作風の意欲作どちらもなかなか良い映画のようですから非常に楽しみです
2010年01月28日
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1995 イラン 監督:ラスール・モラゴリプール出演者:マスード・カラマティ、ファラッド・アスラニほか85分 カラー JOURNEY TO CHAZZABEH /SAFAR BE CHAZZABEHバトル・シューター(DVD) ◆20%OFF! DVD検索「バトル・シューター」を探す(楽天) 戦争映画を撮影する映画監督と友人の音楽家が、1985年のイラン・イラク戦争当時にタイムスリップしてしまうという、ハプニング系ヒューマンドラマ。発想自体はありきたりだが、タイムスリップものに大きな失敗作はないはず・・・なのだが、本作はムムムな出来。イランは近年映画制作に力を入れており、 2000年代の作品はそこそこの出来具合だが、やや古手に位置する本作はやはり技術、編集、アクションともに完成度が低いと感じる。 そもそもイラン映画はイスラム教の宗教的呪縛が強いため、ヒューマンドラマ部分の友情、人情などの感情表現が非常に難解である。本作も友情関係、戦争の大義ともに素直に納得できかねるシーンが多い。また、我々日本人にはイラン・イラク戦争への馴染みや思い入れがないせいもあろうが、戦争で死んだ仲間への悲しみや怒りがほとんど伝わってこない。そのため、設定されているストーリーの起承転結に盛り上がりが感じられないのだ。 本作は友情を主たるテーマに据えているが、中盤の大部分は戦闘シーンで構成されている。戦争アクションという位置づけも可能ではあるが、戦争アクションとして堪能できるかと言うと、必ずしも十分ではなかった。T-54戦車やBMP-1歩兵戦闘車などの実動兵器類が多数登場するほか、小銃類やRPGなどの歩兵兵器、中国製J-7(ミグ21)戦闘機風の飛行映像まで登場し、戦争映画としてはかなり大盤振る舞いの部類なのだが、撮影カメラワークや兵器類の使用法が稚拙なためにそれが十分に生かされていない。ぶつ切りの戦闘シーンにおもむろに兵器が登場するので戦闘の流れが全くわからないし、位置関係も不明。火薬使用量もそこそこだが、発火、着弾など銃撃シーンとの相性が非常にバランス悪い。唯一RPGだけは実射しているのだろうか、後方噴射(バックブラスト)が度々巻きあがっているのはリアルだった。激しい銃撃戦の中、RPG射手だけが堂々と立ち上がっているのには違和感があったが、撮影上バックブラストに注意!という点ではやむを得なかったのか (笑)。なお、ミグ21風戦闘機は実機にも見えるのだが、飛行シーンが時折揺れているようにも見えたので、ミニチュア特撮かもしれない。 結局何のジャンルなのだか良く定まらないままに映画は終結し(汗)、どこを楽しめば良かったのか分からない映画だった。ヒューマンドラマ部分もペルシャ語特有の煩い罵り合いにしか聞こえないし、場面ごとの繋がりも良くないので、ほとんど感銘も感情も起きなかった。まあ、イラン映画の萌芽期作品としてこんなもんかとしておこうかな。興奮度★★沈痛度★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) イランの映画監督ワヒドはかつて経験したイラン・イラク戦争を題材にした戦争映画を撮影しており、クライマックスシーンの音楽を友人の作曲家アリに依頼していた。だが、アリはなかなか思うように録音できず、ワヒドに愚痴をこぼす。そこに映画の主人公ベールズの名で撮影現場への招待の手紙が届く。 不可解に思いながらも、アリを連れてワヒドは撮影ロケ地に行く。撮影現場ではエキストラが集まらなかったり、火薬が暴発するなど混乱をきたしていた。そんな中、二人は設営された塹壕の中を歩いていくと、いつの間にか10年前(1985年)のイラン・イラク戦争の最中にタイムスリップしてしまった。 そこには、映画の主人公ベールズがおり、ベールズは二人を最前線へと導く。最前線には戦死したはずのサマド、ワヒドの義弟のアスガーなどがおり、アスガーに話しかけようとしたが目の前で戦死してしまう。最初はロケかと勘違いしていたアリも次第に真実だと気づき始め、気が触れ始める。そして必死に携帯電話をかけ始め、なんとそれが繋がる。サマドも携帯電話を借りて家にかけるが、出た姪はサマド叔父さんは10年前に死んだと言うのだった。 ワヒドは次第に共に闘う意志を持ち始め、モラドの陣地に向かう。モラドは盲目で無線機を積んで後退する際に直撃弾を受けて戦死する。また、指揮官のハッサンはイラク軍の戦車に抵抗するため、捨て身の突撃を繰り返し、それを見たアリは止めさせようと説得する。そんな姿を見てワヒドは臆病者だと罵る。もちろん、ハッサン自身も友人のモラドの死を悼み、悲しんでいたが、戦闘ではそんなことは言っていられないのだ。敵戦車に向け、RPG弾、突撃を繰り返す。イラク軍は戦車のほかに戦闘機攻撃まで仕掛け、戦場は戦死者であふれ、写真を撮っていた幼い少年も命を落とすのだった。次第にアリにも敵に対する怒りと、戦闘の意味が理解できてくる。 だが、ついにハッサンの前線も限界に達し、怪我をしたハッサンは負傷者と一部の兵を残して後退するよう命じる。ワヒドとアリもまた後退することとなり、ハッサンらと別れを惜しみ写真を撮る。 後退した兵の後を追って塹壕を進むワヒドとアリだったが、背後から突然イラク兵が追撃をかけてくる。慌てて逃げる二人だったが、実は撮影隊のイラク兵だった。いつの間にか現代に戻っていたのだ。ほっとする二人だったが、ハッサンらと撮った写真を見ると肩を組んだはずのハッサンの姿は消えていた。
2010年01月26日
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1991 日本 監督:根本順善出演者:川谷拓三、阿部寿美子、烏丸せつこほか105分 カラー 北緯15°のデュオ~日本初の神風特別攻撃隊の軌跡~(DVD) ◆20%OFF! DVD検索「北緯15°のデュオ」を探す(楽天) 日本最初の神風特別攻撃隊敷島隊の軌跡を、俳優の川谷拓三本人が実名で登場してフィリピンを旅する、ドキュメンタリー風ヒューマンドラマ。特別攻撃隊の歴史を追いかけ、秘められたる彼らの人生を理解しようとする試みは素晴らしいが、正直言って映画レベルには至っていない。テレビの終戦記念特番レベルでしかなく、下手するとそれ以下かもしれない。 敷島隊は海軍201飛行隊所属で、関大尉ら爆装の零式艦上戦闘機が昭和19年10月15日に初めて特別攻撃隊として出撃している。本作はその敷島隊の軌跡を追うとしてはいるが、内容的にはあまり突っ込んでおらず、かなりさらりとした作りこみ。 ストーリーはほとんどがフィリピン観光PR目的としか思えないような杜撰な組み立て。コレヒドール島の要塞を訪ねるシーンなどは、ミドルサイド兵舎、ウェイ砲台(12インチ臼砲)、ギアリー砲台、ハーン砲台(2インチ長距離砲)、マイルロング兵舎、映画館跡など観光ツアーそのものの映像が続く。このほか、クラーク基地、マニラ市街、レイテ島など観光案内に無理やりストーリーを合わせたかのように思える。背後に何やら大きな力が動いているのではと疑いたくなるほどで、何故このような映画を製作したのか、その真意を計りかねる。 一応、敷島隊の出撃地を訪ね、彼らの生きた証を示していくというヒューマンドラマ構成となっているので、本来は感動と涙あふれる作品になるはずだったろう。だが、そのヒューマンドラマの核となる主役の川谷拓三は名脇役として存在感のある俳優だが、主役として登場するにはあまりに大根演技。川谷と共にフィリピンを旅する老婦人役の阿部寿美子もまたしかり。妙な明るさと場違いな雰囲気はかなり違和感を覚える。これでは感動できるものもできやしない。また、懐かしきセクシー女優烏丸せつこも登場するが、ラストのほんの少しだけ。とりあえず客寄せに出しとけといった感じで、烏丸せつこ全盛期であったことを髣髴とさせる(笑)。 その烏丸せつこの登場もそうだが、冒頭の音楽などの雰囲気はまさにバブル全盛期を思い出させる。バブリーな時期に制作した映画だけに全般に軽々しくなってしまっているのかもしれない。金にまかせてとりあえず作っておけ的な雰囲気がプンプンするのだ。また、ラスト近くでは旅先のフィリピンで行う日本人の金満主義を批判するシーンがあるが、このあたりもバブル期の日本人の行動を諌めようとする象徴的なシーンだった。当時のバブル期であったなら、こんな程度の映画でも許されたのかもしれないが、今となっては許される範疇ではないだろう。 唯一楽しめるのは観光PR風のフィリピン戦争史跡映像とクラーク米軍基地の軍用機映像くらいか。前述のコレヒドール島要塞のほか、敷島隊のいたクラーク基地の旧飛行場跡、レイテ島のカンギポポット山、十字架山などの映像が出てくる。航空機では基地返還直前のクラーク米軍基地のF-5EタイガーII戦闘機やイロコイが出てくる。 このほか、気になったのはフィリピン人の描写。途中で川谷が川でおぼれる子供を救出するのだが、フィリピン人は皆傍観するのみで誰も助けに行こうとしない。そんなフィリピン人を「フィリピン人は他人の災難には傍観者になる」と表現している。さらに日本人憎しのフィリピン人も多数登場。うーん、フィリピン人描写としては正しいのだろうか。 全般にやっつけ仕事的な雰囲気が強く、ヒューマンドラマともドキュメンタリーとも言い難い。あえて言うなら「川谷拓三のフィリピン珍道中」といった感じか。しかし、何なんだろうねこの映画。興奮度★沈痛度★★爽快度★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) フィリピンのマニラ空港。空港に降り立った俳優の川谷拓三を見つけて老婦人が寄ってくる。半ば強引に老婦人は川谷拓三と行動を共にしようと誘いかけてくる。老婦人は第二次世界大戦中フィリピンのクラーク基地で戦死した姉の息子の弔いのため、フィリピンを訪れたのだった。川谷は何の目的で訪れたかを明かそうとしないが、自由旅ということで老婦人の旅につきあうことに。 まず、コレヒドール島の要塞観光に出かけ、そこで老婦人は歌を歌って涙する。次に、姉の息子が戦死したというクラーク飛行場を訪ねるが、そこで川谷が次第に熱く語るようになる。当時の201飛行隊宿舎だった建物を訪れ、そこで川谷は敷島隊の関大尉らがここでどのように特攻命令を聞き、どのように過ごしたかを探ろうとする。実は川谷は売れない役者時代に、近所の食堂のおやじさんに敷島隊の写真を見せられ、「あなたには無限の将来があるではないか」と励まされて以来、敷島隊のことを知りたくなっていたのだった。 米軍のクラーク基地に頼みこんで入ることができ、老婦人は飛行場跡で線香を手向けるのだった。そして川谷もまた敷島隊の隊員の思いにふける。 続いて、川谷は敷島隊が突入した海を見たいと思い、老婦人を連れてレイテ島に渡る。そこで川で溺れる子供を見つける。傍観するばかりのフィリピン人を余所眼に川谷は泳いで救出する。フィリピン人は他人の災難に傍観者になる性質なのだそうだ。その川谷のもとに母親と祖父が訪ねてくるが、兄弟を日本軍に殺された祖父はお礼は言わないとしてフルーツを置いて帰っていく。川谷は複雑な心境になる。その後、突入の海上、マッカーサー上陸のパロ海岸を見学し、マニラに戻る。 川谷と老婦人はフィリピン人の双子の子供を見かけ、何かをあげようとするが何もなく、川谷が現金をあげようとする。しかし、そこに日本人の母親が現れ、怒り始める。日本人は勝手にフィリピンに来て、フィリピン人を殺し、戦後は金を与えて優越感に浸る。もうやめてくれと言うのだ。川谷も老婦人も日本人の戦死者の陰でフィリピン人も多数犠牲になっていることを改めて痛感するのだった。そして老婦人に長生きしてくださいと言い、川谷は旅を終えるのだった。
2010年01月14日
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2009 アメリカ 監督:ジェリー・ブテイン出演者: ティノ・ストラックマン、マイケル・ベリーマン、オリヴィエ・グラナー、ヘイリー・カーほか100分 カラー BROTHERSWARエンド・オブ・ウォー(DVD) ◆20%OFF! DVD検索「エンド・オブ・ウォー」を探す(楽天) 第二次世界大戦欧州戦線終末期の1945年春、ソヴィエト軍のベルリン侵攻前夜のポーランド戦線を舞台にした、サスペンス調戦争ドラマ。主人公はドイツ軍大尉で、ソヴィエト軍の観戦武官として駐在するイギリス軍将校とともに、ソヴィエトによる策謀を暴いていこうとするのだ。 実際にソヴィエト軍は本来相いれない米英と連合軍として戦ったわけだが、スターリンの野望と欺瞞に米英の連合軍は相当手を焼いたことが知られている。だが、共にドイツと戦うという名目のため、様々なことが黙認され、闇に葬り去られている。このことは、戦後にポーランド、チェコ属国化、東西ドイツ二分という形であらわれている。 上記のように内容的にはタブーとされている面白い題材を扱っているのだが、残念ながら映画作品としてはB級もの。音楽だけは壮大で情緒あふれるものが使用されているが、ストーリー、映像ともにチープさが目立ち、音楽が浮きまくっている。 映像はハンディカメラを多用した揺れ動く戦闘シーンが特徴的だが、ハンディカメラの使用タイミングやぶつ切りの編集が目障りで、素人臭さが強い。また、航空機類や爆発シーンはCGも用いているが、これまた上手ではない。 何と言ってもストーリーと台詞がダメダメ。謎解きサスペンス風の映画にしようとする意図を感じるのだが、随所に設定される意味深なシチュエーションと台詞がほとんど意味がない。あれもこれもエピソードを盛り込もうとしすぎて、無意味な会話と前振りが空回りし、その結果重要なシーンの重みが薄れてしまっている。主題になるべきソヴィエト軍の策謀も、ポーランドの永久占領工作という極めて重いテーマでありながら、内容や背景をしっかりと描いていないので、大した計画ではないように感じてしまう。描き方によっては重みのある良作になりえたかもしれない。 設定もかなり安直。都合のいい時だけ戦車が出てくるし、ソヴィエト陣地からいとも簡単にドイツ軍陣地に戻ってこれたりする。人物設定もそれぞれとってつけたようで、性格付けがほとんどないので重みがない。主人公のドイツ軍大尉も何故かゲシュタポに追われるのだが、その理由がストーリーの核になるのかと思いきや、結局何の意味もない。また、原題のBROTHERS WARとあるように、主人公の兄弟?のような人物も登場するが、兄弟関係がテーマになることもない。終始こんな調子なので、何を言いたいのか、何が主題になっているのかがブレまくっている。当然エンディングも深みを感じることなくあっけない。 兵器類はCGも多く用いられているが、ドイツ軍側ではへッツァー、ソヴィエト軍側ではT-34戦車風の実車が登場している。何かの改造かもしれないがそこだけはまとも。兵士エキストラは動きが稚拙で、素人リエナクターによる演技のような印象。軍装はそこそこきちんとしているようだが、全般に低予算映画の域を出ないだろう。なお、会話は全て英語。 本作のようなテーマを描いた作品は少ないだけに、全体の流れとしてはそこそこ興味深いものがあったが、全般としてはとにかく中途半端感にあふれていた。お手軽に作ったという印象はぬぐえず、やはりシナリオと映像編集は重要なのだと改めて感じる作品であった。 興奮度★★沈痛度★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1945年春、ポーランド、ドイツ国境。ドイツ軍はソヴィエト軍の侵攻を受け、壊滅状態だった。抵抗部隊の指揮官ミューラー大尉は手りゅう弾で敵戦車を撃破しながらなんとか抵抗を続ける。大尉は納屋に潜む狙撃兵を始末し、フリードリヒとともに森の中でソヴィエト兵に追撃される。危機一髪のところを友軍戦車に救われる。また砲兵陣地ではソヴィエト兵の襲撃におびえる若い砲兵エミールを励ますのだった。そんな中、ゲシュタポがミューラー大尉を探しにやってくる。仲間はミューラーの所在を知らないとうそぶく。 ソヴィエト軍陣地では指揮官ペトロフ大佐 (少佐?)のもとにイギリス軍の観戦武官ピアマン少佐がやってくる。ペトロフ大佐は兵セルギイに命じてイワノフ中尉のところに送らせる。ペトロフ大佐は何やら画策しており、ピアマン少佐を厄介扱いしていた。何か変な気配を感じたピアマン少佐はイワノフ中尉から逃れ、トラックに積まれたポーランド民間人の後を追う。ポーランド民間人はトラックを下ろされ、後から来たペトロフ大佐によって銃殺される。これを目撃したピアマン少佐はソヴィエトがポーランドを占領支配しようとしていることに気づく。 一方、ミューラー大尉も偵察中にポーランド人虐殺を目撃。ソヴィエト軍の追跡を受け、フリードリヒが戦死。そしてゲシュタポがミューラー大尉を匿ったとして兵を射殺している所に遭遇する。だが、そこにソヴィエト兵が追い付き、ミューラー大尉らは捕虜になってしまう。 ソヴィエト軍の監獄には他のドイツ兵とともに捕えられたピアマン少佐もいた。ドイツ兵は次々に処刑されていくが、ミューラー大尉だけは何故ゲシュタポに追われていたかに興味を持たれ処刑されずにいた。ミューラー大尉は看守を倒して逃げようとするが、すぐに捕まる。 いよいよソヴィエトの陰謀の準備が整い、モスクワから実行の命令が出る。ミューラー大尉とピアマン少佐は移送されるが、その途中で脱走。同盟国にソヴィエトの計画がばれたら世界はドイツの味方になる、とペトロフ大佐は追撃し、脱走されたイワノフ中尉は処刑される。ミューラー大尉らは協力して追手を撃破。ついにペトロフ大佐も倒す。 ミューラー大尉がゲシュタポに追われていた理由はメイソンだったからと語り、ピアマン少佐からソヴィエトの陰謀を聞いたミューラー大尉はなんとか司令部に伝えることができるよう協力することに。 ドイツ軍側へ逃亡する途中、ソヴィエト兵にレイプされそうになっているポーランド人女性アナを助ける。3人はトラックでドイツ軍陣地に到達する。看護師のアナは負傷兵を見捨てられず治療を始める。そこにはあの砲兵エミールが瀕死の状態でおりし、ミューラー大尉の目の前で息絶える。ミューラー大尉は戦争が終わりであることを悟り、部下の軍曹らに家に帰るよう命じる。さらに軍医のいる陣地に到達したところ、ドイツSS将校が脱走兵を処刑し始める。それを制止したミューラー大尉も逮捕しようとするが、ミューラー大尉は逆にSS将校を殴って阻止する。 ミューラー大尉らはさらに西へ移動し、途中で裏切り者として処刑されたドイツ兵や集団自決?したドイツ兵の遺体に出会う。そしてついにドイツ軍と連合軍(アメリカ軍)が対峙する前線に到達し、ピアマン少佐はアメリカ軍に投降して正体を明かすが、その時木陰から狙撃されてしまう。それは生き延びていたペトロフ大佐だった。同じ連合国軍として手出しできないアメリカ軍将校は舌打ちするばかりだ。 連合国軍司令部に連行されたミューラー大尉はソヴィエトの陰謀を全て告白する。だが、連合国軍指揮官は、まだ日本軍との対決が残っているとしてソヴィエトとの対立を避け、その報告を闇に葬るのだった。 戦後生き延びたミューラー大尉(老人)は激戦の地でアナが持っていた写真とピアマン少佐の懐中時計を静かに置くのだった。
2010年01月03日
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最近時間があまりなくて、というかゲームやってて(汗)、戦争映画を見ていないのですが、お正月(1月)のスカパーでの戦争映画で面白そうなのをやるようなのでチェック!260シネフィルイマジカ脱走大作戦(1968米) 1/3、19 第二次大戦ヨーロッパ戦線でのコメディ映画のようですが近年ではDVDにも地上波でも放送がないようなので、結構レア作です。ポールニューマン主演。トンマッコルへようこそ(2005韓) 1/12.17.19.23.27.30正直嫌いな映画の一つですが、こんなのも勇者たちの戦場(2006米)1/3,8,14,18,23イラク戦争帰還の米兵のPTSDの話ですが、結構いい映画です。ラストコーション(2007米中台香) 1/9,22なかなかすけべな映画です(笑)312ムービープラスヒトラー最期の12日間(2004独) 1/4,17,22,27ちょっと前の映画ですが、良くできています。ブラックブック(2006蘭独英白) 1/4,10,14,27,30ヴァーホーヴェン監督の秀作です。ランボー最後の戦場(2008米) 1/1,11,17,21,23,29早くも登場ですほかにもたくさんありますが、今日はここまで(汗)
2009年12月23日
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1969 フランス 監督:ジャン=ピエール・メルヴィル出演者:リノ・ヴァンチュラ、シモーヌ・シニョレ、ジャン=ピエール・カッセル、ポール・ムーリスほか140分 カラー L' ARMEE DES OMBRES /ARMY IN THE SHADOWS DVD検索「影の軍隊」を探す(楽天) 第二次世界大戦時の1942年、ドイツ軍占領下のフランス・パリを舞台に、フランス人レジスタンス組織の活動を描いたサスペンス調ヒューマンドラマ。全体としては戦争ヒューマンドラマなのだが、映像や音楽をはじめとした雰囲気はサスペンス的な匂いがする。このあたりはやはりフランス映画独特の作りで、ゆったりと抒情感あふれるスローテンポ、あまりおおげさなBGMを使わず無音を多用しているのが特徴か。また、登場人物の名称や性格付け、ストーリー展開の解説台詞がほとんどないのも難解なフランス映画の系譜と言えよう。 ストーリーはドイツ軍に抵抗するフランス人レジスタンスを主人公に、ゲシュタポによる逮捕、収容所からの脱走などを描くのだが、それだけに留まらず身内の裏切り者処刑までもが描かれている。レジスタンス活動と言えば英雄的で格好良いイメージもあるが、反面逮捕の恐怖に恐々とし、細々と弱々しい活動をする姿も描かれているのが興味深い。零細な地下組織にとっては、些細な一つの裏切りが組織の壊滅を意味し、ゲシュタポの厳しい拷問に耐えきれず仲間を売ってしまったレジスタンスを処刑するシーンは、実に冷淡で非情な側面を露わにしている。実は監督のメルヴィル自身がレジスタンスに関わりがあったのだそうで、この辺りのレジスタンス描写は知る人ぞ知る内情ということなのだろう。 こうしたレジスタンスの緊迫した行動をサスペンス的に描くことにより、手に汗握るドキドキ感を堪能することが出来る。特に、仲間を救出しにドイツ軍ゲシュタポ本部へ潜入するシーン、ゲシュタポが機関銃を構える中走って逃げ切れたら処刑を延期してやるというシーンは絶妙。 ただ、残念なのはレジスタンスの組織構成、その背景についての描写がほとんどなかったため、レジスタンスの命がけの行動への感情入れ込みがややしずらかった点か。本作では謎の大ボスがキーマンの一人にもなっているので、あえて描写しなかったのかも知れないが、すでに戦後半世紀以上を過ぎた今となっては、レジスタンスの行動や思考が理解しづらいかもしれない。映画的には完成度が高いのだが、現在の視点から見てやや古さを感じてしまったのが大きな減点の要素となった。 実際のフランスレジスタンスはドゴール派、共産党派など諸派が入り乱れ、内紛などもあってゴタゴタが絶えなかったようで、そのあたりは「パリは燃えているか(1966 仏米)」が詳しく描かれていて興味深い。本作ではイギリス亡命中のドゴール将軍から勲章を授与されていることから、ドゴール派のレジスタンスであることがわかる。 映像や音響で過度な演出がほとんどないため、本作は役者の演技力が注目点の一つでもある。主人公の土木技師ジェルビエ役リノ・ヴァンチュラはオーラこそ感じないが、目ばかりがぎょろぎょろといかにも日陰のレジスタンスらしい渋い演技。このほかシモーヌ・シニョレもインパクトある女傑ぶりを好演するなど、個々の俳優の豊かな個性が光っている。 撮影はフランスで行われており、登場する兵器類はフランス海軍の協力を得ているようだ。実際に撮影したのか、映像を提供されたのかは不明だが、フランスからイギリスに脱出する際に用いる潜水艦として、フランス海軍のオルセー級潜水艦が登場する。鼻先がもっこりと盛り上がった特徴的な艦首で、艦橋にはS644と見える。ただS644はダフネ級になってしまうため、詳細な艦名はよくわからない。航空機では連絡用としてライトサンダー直掩協同機風の機体とホイットレー3爆撃機が登場するが、後者の爆撃機はミニチュアのようだ。 また、使用される建物などはスケール感が感じられ、ロケにはかなり金がかかっていることを想起させる。全般に画像が暗いのは時代のせいか。 総じて完成度の高い作品と言えるが、先にあげた背景や歴史性の欠如から若干ストーリーに浅さを感じてしまったのが残念。いかにも1960年代のフランス映画らしい特徴を堪能できるが、現代の映画作風に比較するとやや物足りない。ただ、懐古的なものを求めるのであれば、それはそれで堪能できることは間違いない。興奮度★★★沈痛度★★★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1942年10月20 日、パリの凱旋門をドイツ軍が行進している。占領されたパリでは公共事業部土木技師フィリップ・ジェルビエ(41歳)がドゴール派レジスタンス分子として逮捕される。監禁された収容所にはすでにプレシス大佐、薬剤師のオペール、ドゴール支持派デモに参加したサラリーマンのボナフス、共産党員ルグラン、教師のアルメルらが投獄されていた。このほか、収容所にはロシア人、ポーランド人、ベルベル人、ユダヤ人、ジプシー、ユーゴスラビア人、ルーマニア人、チェコ人、反ナチス、反ファシストが収容されていた。 ジェルビエはルグランらと協同して収容所脱出を画策し、ドイツ監視兵を殺害して逃亡に成功する。ジェルビエは理髪店に逃げ込むが、店主は傀儡政権派だった。だが店主はジェルビエを見逃してくれる。 ジェルビエを売ったのは仲間のドナだった。ジェルビエはドナを呼び出し、ビゾン、フェリックス、新たに仲間に入ったマスクとともに隠れ家でドナを処刑することに。ジェルビエはマスクに処刑を命じるが、びびるマスクはできず、結局フェリックスが首を絞めて殺害する。 フェリックスは酒場に行き、そこで旧知のジャン・フランソワに再会する。フェリックスはフランソワが使える男だとして仲間に引き入れる。フランソワは無線機の配送を命じられ、度重なる検問を機転で突破し成功させる。 一方、ジェルビエは指名手配から逃れるために、匿っている連合軍兵士らとともにいったんイギリス本国へ渡ることに。全員をヴィエラの農場に集め、夜に待機していた潜水艦に乗って脱出する。イギリス本国ではドゴール将軍から勲章を貰う。ロンドンではドイツ軍の空襲を受けているが、兵士達は慣れたもので逃げもせずにダンスに興じている。 そんな中、フェリックスがドイツ軍に捕まったとの報が入る。イギリスで何もできないジェルビエはフランスに戻ることにし、爆撃機からの落下傘降下でパリに戻る。新しいアジトは元騎兵隊将校だったフェールタロクール男爵邸となる。 パリではフェリックスに代わって統率力に優れた女傑マチルダが指揮を執ることに。何とかゲシュタポ本部に捕らえられたフェリックスを取り戻そうと画策を練る。マチルダの計画はマチルダ、ビゾン、マスクの3名でゲシュタポ本部に潜入するというものだったが、問題は計画を中のフェリックスにどうやって伝えるかだった。それを聞いたフランソワはフェールタロクール男爵を売ってゲシュタポにあえて捕まる。フェールタロクール男爵は捕まって処刑されるがフランソワはなんとかフェリックスに会うことが出来る。だが、フェリックスは既に拷問で瀕死の状態だった。マチルダらはドイツ軍に変装し、救急車でゲシュタポに潜入し、フェリックスの移送を試みるが、医師の診断でフェリックスの移送は拒否され失敗に終わる。 ジェルビエも食事中に捕まり収監されてしまう。収監されていたほかの4名とともに銃殺刑が始まるが、ドイツ軍将校は走って逃げさせ、標的まで逃げ切れば処刑を延期してやると言う。プライドの高いジェルビエは走ることを拒否するが、威嚇されしかたなく走り始める。その時外から発煙弾が投げ込まれ、ジェルビエは投げ入れられたロープで救出される。マチルダが仕組んだ救出劇だったのだ。ジェルビエは受けた傷もあったため、1ヶ月隠れ家に隠れることに。 隠れ家にいたジェルビエのもとにレジスタンスの大物ルクがやってくる。マチルダがゲシュタポに捕まったというのだ。しかも持っていた娘の写真が見つかり、娘を盾に脅されているというのだ。さらにそこにビゾンとマスクがやってくる。マチルダが仲間を売って釈放されたというのだ。命の恩人のマチルダだが、ジェルビエはビゾンらにマチルダの殺害を命じる。ビゾンはこれを拒否するが、結局ルクの決断でマチルダ殺害が決定される。マチルダもそれを願っているはずだというのだ。 1943年2月23日マチルダを殺害する。 1943年11月8日、マスクことクロード・ウルマンは青酸カリで自殺。ビゾンは1943年12月16日、ドイツ兵によって打ち首。大物のルク・ジャルディは1944年1月22日拷問の末死亡。1944年2月13日フィリップ・ジェルビエもまた走ることを辞めるのだった。
2009年12月18日
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2009 アメリカ 監督:クエンティン・タランティーノ出演者:ブラッド・ピット、クリストフ・ヴァルツ、メラニー・ロラン、ダイアン・クルーガー、ティル・シュヴァイガー ほか152分 カラー INGLOURIOUS BASTERDS早速観てきました。でも・・・あたしにはちょっと駄目だったかも。タランティーノ好きの人にとってはかなり評価高いようですけど・・・。ちょっと辛口になっちゃいました(汗)。 第二次世界大戦時のドイツナチ支配下のフランスを舞台に、ナチのユダヤ人狩りに抵抗し、ユダヤ系アメリカ人特殊部隊とユダヤ系フランス人たちの復讐劇を描いたアクションブラックコメディ。監督は奇才と呼ばれるタランティーノで、イタリアマカロニコンバット「地獄のバスターズ(1976)」のリメイクという形で製作スタートされたそうだ。マカロニB級映画を、現代手法でリメイクするとどうなるのかというのが一つの見所でもある。 正直言って、視聴中及び見終わった後の失望感と脱力感は否めなかった(笑)。内容的には「地獄のバスターズ」とかなりの相違点があり、殴り込み特殊部隊という設定以外はリメイクとは言えず、内容はもちろん全体の雰囲気も作風も全くの別物と言って良いだろう。マカロニB級映画感はほとんどなし。予告編や評論家コメントから期待するハチャメチャさや斬新さも思ったほど痛快でなく、むしろ随所に見られるグロさばかりが浮きだった印象。 「地獄のバスターズ」のように、もうどうでも好きにしてという一方通行的展開ならば、諦め感に似た満足も得られるのだが(笑)、本作の場合ブラックコメディとシリアスドラマが混在する形で、幾度も現実に引き戻されるなど、虚構と現実を行ったり来たりさせられた感じがする。そもそも、ヒトラーやゲッベルスを始めナチの結末は全くのフィクションであり、登場人物や設定もしかり。あり得ない出来事や展開に一喜一憂する楽しみに集中したいところなのだが、時折戻されるシリアスな現実感に脱力疲弊するのだ。それは本作がユダヤ人のナチへの復讐という悲愴感漂う設定を採用したとともに、それをリアルに描きすぎてしまったことに起因しているのだと思う。もちろん、こうした命題をリアルに描くこと自体は悪くないのだが、ブラックなグロさや暴力が登場するインパクトと突飛さは、シリアスストーリーばかりを強調する結果となり、ふと架空の話であることに我に帰ると一気に興ざめしてしまう。個人的には全体のバランスが崩れているような気がするし、特に歴史的背景も一応は重視したい戦争映画マニアとしては、譲れない一線を超えられている気が・・・(笑)。 全体像はさておき、個別のシーンを見る限りは奇才ならではの奇抜な個性が際だっている。過去の作品のオマージュやニヤっとするようなユーモアがたっぷりと入っている。「ユダヤの熊」の登場シーンと音楽、ナチ殺しシュヴァイガー救出シーンなど、特に前半部にはコメディとして楽しめる要素が一杯だ。 また、主演レイン中尉役のブラッド・ピットの癖のある豪傑ぶりは快演で、ヤクをやりながら低い声で指揮する姿は格好良いながらも笑える。他のユダヤ系隊員らも実に個性的でコミカルな描写が楽しい。個人的にはナチ殺しのシュヴァイガーのB級映画的な渋さが好き。ちょっと早く死にすぎだけど・・・(笑)。また、ドイツ軍側のヒトラー、ゲッベルスも意外なほど人間味溢れる人物像になっているし、ドイツ軍人らも堅物さを残しつつ血の通った人間であることを実感させる。本作ではドイツナチの人物を一方的に悪く描くことはなく、逆にナチスハンターのアメリカ軍バスターズを残虐に描くなど、通常の勧善懲悪型設定とはまるで違うのが面白い。はてこの映画の主役は誰だっけと、いささか頭が混乱してくることもあるが、こういう描き方はタランティーノ作品ならでは楽しみ方とも言えよう。このほか、英首相チャーチルが何気なく出ていたりするのも一興だ。 ただ、残念なのは同じくナチへの復讐に燃えるユダヤ人女性ショシャナとドイツ人女優ハマーシュマルクのキャラクターで、余りに一般的すぎて面白みに欠けた。他のキャラクターが飛び抜けていただけに、もっとウイットに富んでいたりキレていた方が良かったかなあという印象。 映像的には遠景、建物内部などかなり金のかかったセットを用いている様子。カメラワークも良く美しい映像は大変見やすい。マカロニB級映画の超チープな映像やセットとは大きく一線を画する要素の一つでもある。 一方音楽はマカロニ風(笑)。冒頭のシーンに流れる古くさい音楽(遙かなるアラモ)はいかにもという感じだし、エピソード毎に流れる音楽の使い方も遊んでいるなという印象。ミスマッチな感じがなんとも爽快。 戦闘シーンはないので登場する兵器類は中型軍用車両のほか、機関銃、拳銃のみ。軍装はちょっと綺麗すぎる印象もあるが、ドイツ国防軍、SS、アメリカ軍、イギリス軍などそこそこしっかりしている。勲章類はとってつけたようにも見えるが、階級章類は一応合っている様子。ただ、ドイツ軍の英雄フレデリックがプレミア上映会で着ている白い礼装姿はちょっと違和感あり。 個々の部分を見る限りは結構楽しめるし、タランティーノ流の意外性や突飛さが好きな人にはきっと高評価になるのだろう。だが、戦争系映画としての満足度という点ではやっぱり・・・。ほとんど皆死んでしまうし(笑)、グロ映像が多すぎるし、何だか救いがない絶望感も感じてしまう。どうせハチャメチャにするならストーリー性なんてまるで無視して欲しかったし、妙にきちんとオチを設定してきたあたりにちょっと失望したかも。でもやっぱり最大の失望は不用なグロ映像か。グロ映像さえなければもっとすっきりと楽しめたような気がするが、タランティーノならやっぱりグロなのか(笑)。 全般にB級マカロニコンバットを指向しつつも、B級になりきれなかったA級映画といったところか。 関係ないけど、ドイツ兵がやっている人物あてゲーム楽しそう(笑)。興奮度★★★★沈痛度★★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)第1章 その昔・・ナチ占領下のフランスで 1941年、ドイツ軍に占領されたフランスの片田舎。ドイツ軍ハンス・ランダSS大佐らが一軒の酪農農家ラパディット家にやってくる。ランダ大佐は「ユダヤハンター」と称されるユダヤ人狩り指揮官で、ミルクを飲みながら穏やかに調書を取りながらもラパディット家がユダヤ人一家を匿っていることを白状させる。ランダ大佐は部下に床下のユダヤ人を銃撃させる。その中で唯一若い娘ショシャナだけが命からがら逃げ出すことが出来る。第2章 名誉なき野郎ども ドイツ占領下のフランス国内に、インディアンの血を引くアルド・レイン中尉率いるユダヤ系アメリカ人の特殊部隊「イングロリアス・バスターズ」が潜入する。彼らはナチの兵士を見つけては頭の皮を剥いだり、バットで撲殺するなど残忍な殺し方でゲリラ活動を行っていく。ドイツ軍の中にバスターズに対する恐怖と噂が広がっていく。バスターズには「ユダヤの熊」と呼ばれるバットで撲殺するドニー・ドノウィッツや元ドイツ軍兵士で将校13人を殺害し移送中にバスターズにスカウトされたナチ殺しのヒューゴ・スティグリッツの姿もあった。バスターズに降伏することを拒んだドイツ軍曹長がドノウィッツに撲殺されるのを目撃し、恐怖の余り味方を売った若い兵士は命を助けられるが、ナチであることを止めないように額にはハーケンクロイツの印が刻み込まれた。ヒトラーはバスターズの活動に苛立ちを覚えるのだった。第3章 パリにおけるドイツの宵 1944年6月、ショシャナは名をミミューと称して叔母夫婦の経営していた映画館を継いでいた。時勢柄ドイツ映画ばかりを上映しなければならなかったが、ある日若いドイツ兵士フレデリック・ツォラーに恋心を抱かれる。フレデリックは一兵卒だったが、SS将校らに敬意を称されるなど異常な人気ぶりだった。実は一人で300人の連合軍を撃退した戦争の英雄であり、宣伝相ゲッベルスは彼を主演にした国策映画「国家の誇り」を製作しようとしていたのだ。ドイツ兵に嫌悪感を抱くミミューは、さらにフレデリックから離れようとする。だが、フレデリックの画策でゲッベルスとの会食に強引に連れてこられる。そこで聞かされたのはフレデリックの発案で「国家の誇り」プレミア上映会をミミューの映画館で開催する提案だった。ゲッベルスはフレデリックの説得に負けて了解する。上映会にはゲッベルス以下ナチの幹部が勢揃いする予定であり、警備責任者にはランダ大佐が当たることに。そこでミミューは再びランダ大佐と再会することとなる。そして、ミミューは恋人で映写技師の黒人マイセルと、上映会当日に映画館に火を放って皆殺しにしようと計画する。当時の映画フィルムは強度の可燃性で爆薬に相当する火力があったのだ。そして反ナチの映画の撮影も開始する。第4章 映画館作戦 イギリス軍情報部のエド・フェネシュ将軍は元映画評論家のアーチー・ヒコックス中尉を呼び出し、プレミア上映会で爆薬を仕掛けてナチ幹部を爆殺することを指示する。フランスでの手引き協力はバスターズとスパイのドイツ人女優ブリジット・フォン・ハマーシュマルクが手伝うこととなっていた。ヒコックスらは近くの村の居酒屋ラ・ルイジアーヌでハマーシュマルクと落ち合うこととなっていたが、居酒屋は逃げ場のない地下であることに加え、ハマーシュマルクは子供が生まれて祝っているドイツ軍軍曹らと飲んでいた。ヒコックス、スティグリッツら3人はSSの軍服に身を包んで乗り込み、ハマーシュマルクと打合せを行い始めるが、酔ったドイツ軍兵に絡まれてうまく行かない。怒ったヒコックス、スティグリッツは下士官を叱責して遠ざけようとするが、ヒコックスの訛りを気にした上官ヘルシュトロームSS少佐が現れる。訛りは何とか誤魔化したものの、ヒコックスの3を数える手の形で少佐はヒコックスがドイツ人ではないことを見破る。机の下で銃を向け合う少佐とヒコックスらはついに銃撃戦へと展開し、ヘルシュトロームSS少佐らドイツ兵、ヒコックスらバスターズのメンバーも死亡する。生き残ったのは子供が生まれたばかりのドイツ兵と足を撃たれたハマーシュマルクのみ。レイン中尉はハマーシュマルクを救出に向かい、取引に応じたドイツ兵をハマーシュマルクは殺してしまう。状況を訝しがったレイン中尉はハマーシュマルクの傷をいたぶりながら情報を聞き出す。ハマーシュマルクはプレミア上映会にヒトラーも出席することを伝え、レイン中尉は映画館を爆破する計画の実行を決意する。だが、ドイツ語のできる兵はもはやおらず、ハマーシュマルクも足を怪我している。ハマーシュマルクは山登りで怪我したことにし、3人のバスターズはイタリア人という設定で乗り込むことに。だが、居酒屋の検分に来たランダ大佐は、現場から片足の女性用ハイヒールとハマーシュマルクの名の書かれたハンカチを拾っていた。第5章 ジャイアントフェイスの逆襲(字数制限のため以下略)
2009年12月03日
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2006 アメリカ 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク出演者:クリスチャン・ベイル、スティーブ・ザーン、ジェレミー・デイヴィス、ザック・グルニエほか125分 カラー RESCUE DAWN戦場からの脱出(DVD) ◆20%OFF! DVD検索「戦場からの脱出」を探す(楽天) ベトナム戦争を背景に、ラオス上空で撃墜され北ベトナム軍の捕虜(POW)になったアメリカ軍パイロットの奇跡の脱出劇を描いた脱走系アクション。日本未公開のベトナム戦争ものということで、視聴前はかなりのB級臭を感じたのだが、思いのほかシリアスでしっかりとしたストーリーとなっている。というのも、主人公のディーター・デングラー中尉は実在の人物で、彼の実話をもとにしたものなのだそうだ。監督のヴェルナー・ヘルツォークは同じ題材でドキュメンタリー映画「 Little Dieter Needs to Fly (1997)」も製作しているだけあって、描かれる内容にはリアル感が漂っているのだ。 主人公は米海軍A-1スカイレーダー攻撃機のパイロットで、ラオス国内の北ベトナム軍補給路ホーチミンルート攻撃のため出撃した初陣で撃墜され、過酷な捕虜収容所から脱出を試みるのだ。冒頭の米軍による爆撃、攻撃シーンはそこそこ迫力があるが、ほとんどは収容所やジャングルでのサバイバルがメインとなっている。小銃火器がほとんどの戦闘シーンではあるが、それ以上にろくろく食料のない中、芋虫などの幼虫を食したり、馬鹿でかい蛭に襲われたりと、なかなかグロい映像も登場する。そうしたジャングルでのベトナム戦らしい雰囲気が良く出ており、ベトナム戦争ものとしても佳作の部類に入る。 特に素晴らしいと感じたのは、役者の役作りと演技だ。過酷な収容所生活で痩せ細っているという役に適するよう、各役者が役作りできちんと痩せている。すでに2年間収容されている捕虜はガリガリにあばら骨が浮き出ているし、新たに収容された主人公も徐々に痩せていくのが良くわかる。この辺りは監督が真剣に取り組んでいる様子が窺われ好感を持った。 ただ、惜しむらくはストーリーがやや駆け足だったところ。実話に基づいているため、様々なエピソードを盛り込んでいるのはわかるが、じっくりと焦点を合わせて描写して欲しかったところ。そのため、登場人物の性格付けがやや甘く、クライマックスの脱走劇のあたりでは不可解な言動と、理解しづらいシーンも見られ、見終わった後に淡泊な印象を得てしまった。もう少し丁寧に主人公以外の人物が描かれていたら、奇跡の脱出劇にもっと感動できたような気がする。ちなみに、捕虜収容所のラオス人看守役と捕虜収容所の収容者の大部分が実在の人物だそうで、実在の人物だとなかなか表現しづらい部分があるのかもしれない。個人的には別れ別れになった他の捕虜の結末が気になる・・・。 ロケはタイで行われたようで、登場する兵器類は空母以外はほとんどがタイ空海軍の協力によるものらしい。主人公は空母レンジャー(CVA-61)の搭乗員だったということで、空母レンジャーの記録映像も登場するが、その後の映像はエセックス級の空母(ホーネット?)にすり替わっている。また、搭乗するA -1スカイレーダー攻撃機は「AK」のマーキングで、主人公はVA-145所属だったらしい。だが、撃墜された機体シーンでは胴部にVA-25の文字が見え、これだと空母ミッドウェイ搭載機になってしまう。まあ、こうした誤謬は多少あるが、それなりに検証されたものと評価しておきたい。このA-1スカイレーダーのほか、ヘリコプターUH-1イロコイ、O-1バードドッグが登場するが、いずれもタイ空軍所有機と思われる。エンドロールには協力としてタイ空軍第2飛行群第 203飛行隊の名称が出てくる。 後半の描写がもう少し肉厚であれば、かなりの秀作になったかもしれないが、全般に戦争物として楽しめるレベルの映画と言えよう。アクション要素としても満足でき、何と言っても実話に基づくと言う点でシリアス感を堪能できる。内容的にはやや傍流ではあるが、隠れたベトナム戦争映画の佳作として評価しておきたい。 興奮度★★★★沈痛度★★★爽快度★★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1965年のトンキン湾。米海軍空母レンジャー上にA-1スカイレーダー攻撃機パイロットのディーター・デングラー中尉がいた。中尉はこれが初陣で、スプーク率いる4機の攻撃隊はラオス国内のホーチミンルート空爆の命令が下される。 スプーク、レザード、フォーカス、デングラーの4機はラオス国内に侵入し攻撃をかけるが、デングラーは対空放火に被弾し墜落してしまう。地上で北ベトナム兵の追跡を受けたデングラー中尉は水を飲んでいるところをついに捕まってしまう。 敵司令部に連れて行かれたデングラーは過酷な仕打ちを受けながらも、米国非難の書類にサインをすることを拒否。その結果、ラオス国内の捕虜収容所に連れて行かれる。そこにはすでに、アメリカ兵のユージーン・デブルイン、1年半前に撃墜された空軍パイロットのドウェイン、2年前に撃墜されたエアアメリカのベトナム人パイロットのプロセット・カムヘング、同じくYCパイロットのユック・チュウ・タオ、ラオス人?のフィシットが捕らえられていた。夜は足かせと手錠をされ、食料も乏しい中、長いものは2年間も収容されていた。看守はラオス人で最も凶暴なリトル・ヒトラー、腹黒いヌック・ザ・ルック、暴れ馬、小さくて優しいジャンボ、ウォーキートーキーらがいた。 デングラーはすぐさま脱走計画を練るが、ユージーンはもうすぐ解放されるという妄想が強く脱走を反対する。だが、デングラーは釘を1本盗んで鍵を作り、手錠をはずすことに成功する。このことで、他の捕虜からの信頼を得るようになる。さらに空の薬莢でナイフを作り、昼の炊事時間に脱柵して看守を襲撃する計画を練る。床下に脱出穴を掘り、柵に穴を開けて準備し、7月4日を脱走日に決める。 だが、看守らは食糧不足から捕虜の殺害をほのめかし始める。そこで計画を前倒しして作戦を決行する。ユージーンも嫌々ながら参加し、デングラーらは二手に分かれて看守のいる炊事場を急襲する。銃を手にしたデングラーとドウェインだったが、反対側からくるはずのユージーンらが来ない。仕方なくデングラーらは二人でラオス人看守を射殺、ジャンボだけ逃がして占拠する。そして食料等を確保してメコン川に向けて出発する。すると途中で機関銃とナタ、靴を持ったユージーンらを発見。ユージーンは混乱し、再び収容所に戻っていく。ナタは確保したが靴のないデングラーとドウェインはジャングルの中を裸足で進んでいく。小さな川に行き着き、筏で下るが滝に遭遇し危機一髪で逃れる。そこで靴底を片足発見し、足にくくりつける。食料もなく体力の落ちてきたドウェインは弱気になってくる。 空き小屋に退避している時に、上空を米軍のヘリが通過する。小屋を燃やして合図するが、米軍ヘリは救出どころか、銃撃を加えてくる。精も根も尽き果て、二人は村人たちに食料を懇願する。だが、アメリカ兵憎しの村人たちはナタでデウェインを殺害、デングラーは這々の体で逃げる。 北ベトナム軍の追跡などもあったが、デングラーは何とか隠れ、蛇などを捕まえて生き延びる。そして、ようやく1機のセスナが上空を飛び、やがてヘリコプターが救出に来る。 無事基地に戻ったデングラーはCIAによって隔離され事情聴取される。そこに飛行隊の仲間がバースデーケーキを持ってやってくる。そしてケーキ台に隠れてデングラーは空母に戻っていく。空母では乗員が出迎えてくれる。このまま本国に送還されると聞いて空母の少将らが画策したのだ。 デングラーはその後退役し、民間飛行機のパイロットとなり、4度の墜落を生き延びた。
2009年11月30日
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先週からブラッド・ピットのアクション映画「イングロリアス・バスターズ」が始まっているようで。ナチ対ユダヤ系アメリカ部隊というちょっと不思議な話だが、シリアス系ではなくてコメディタッチのアクションのよう。楽しそうなので、来週お友達と見にいくことにしてます。このほか、「戦場でワルツを」というパレスチナの話でドキュメンタリーアニメになっている異色作もやっています。ただ、単館系なので近くでやっていなのが残念。来年になれば金沢のシネモンドで上映するそうなので、それまで待つか・・・
2009年11月28日
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2007 フランス 監督:ケヴィン・マクドナルド出演者:クラウス・バルビーほか90分 カラー MY ENEMY'S ENEMY/MON MEILLEUR ENNEMI【歳末特価!】 敵こそ、我が友~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~(DVD) ◆25%OFF!DVD検索「敵こそ、我が友」を探す(楽天) 第二次世界大戦において、その残酷性から「リヨンの屠殺人」と称された元ドイツ親衛隊中尉クラウス・バルビーの数奇な人生を追ったドキュメンタリー。バルビーはたかだかSS中尉という階級ながら、当時のヴィシー政権下のリヨン市の保安を任される立場で、フランスレジスタンスの壊滅を任務とした。その中でレジスタンスの全国抵抗評議会議長だったジャン・ムーランを拷問死させたことで一躍有名となり、孤児院の44人のユダヤ人の子供を収容所送りにして死に至らしめたことでも知られる。 だが、レジスタンスを殺害したり、ユダヤ人の婦女子を収容所送りにしただけならばもっと多くの数を死に至らしめたドイツ軍将校は多い。クラウス・バルビーが取り上げられる理由は、バルビーの持つ特異な人格と特技にあると言える。バルビーは熱烈な国家社会主義者であり、たとえヒトラーが指導者でなかったとしても国家社会主義を邁進したであろう。それがゆえに戦後、第四帝国の建設の野望に駆り立てられていくのだ。そして、バルビーは拷問・尋問のプロであった。その手口は冷酷で残忍なものであったが、情報を引き出す手段として有効で効果的であったのだ。その特技は戦後もアメリカ情報部の欲するところとなり、その後の数奇な人生を形成していく。 数々の罪を犯したクラウス・バルビーは、1972年にボリビアで生活している所を発見され、1984年に終身刑が言い渡されるまで、戦犯として捕えられることはなかった。最終的には1991年にフランスで獄死するのだが、彼が戦犯にならずに生き延びた理由とそれまでの生活には謎が多い。本作はその謎に焦点を合わせたものであり、そこにはアメリカ陸軍情報部(CIC)、バチカン右派、ナチス残党による秘密結社の存在が示唆される。 本作の原題は「敵の敵は味方」という意味であり、それが本作の本質である。アメリカは戦後、対ソヴィエト対策として強い反共政策を取っていくのだが、かつてソヴィエトの敵であったドイツナチスは対ソヴィエト共産党の情報と対応策に長けていることに着目し、敵の敵を味方に利用しようとしたというのだ。バルビーは戦犯になることなくCICに雇用保護され、フランスからの引き渡し要求に際しては、バチカン右派の手引きで南米に逃げ込む。本作では元CIC職員、バルビーの通訳、バルビーに拷問を受けたレジスタンスをはじめ、歴史学者等の証言や発言によってそれを示していく。 南米のボリビアに移住したバルビーはアルトマンと名を変えて生活するが、次第にナチス残党と連絡を取ってボリビアで第四帝国の建設に意欲を燃やしていく。意外にもボリビアでのチェ・ゲバラ殺害計画にも関与したとの話もあり、ボリビア軍事革命政権の陰の指導者でもあったようだ。映画「チェ 39歳別れの手紙(2008)」の中でボリビア政府軍とCIAの関与が描かれていたが、さらに元ナチスのバルビーが絡んでいたとは実に興味深いものがある。 ナチスハンターによって逮捕されたバルビーは終身刑を言い渡されるのだが、本作では意外にもバルビーの弁護を務めるベトナム系フランス人弁護士や父親の人間性を信じる娘の映像が多用されている。一見、極悪人戦犯バルビーがアメリカ庇護による長い潜伏の後逮捕されてめでたしめでたし、と認識されがちな流れの中、実は公平な視点と大衆の正義への懐疑も描かれているのだ。弁護人は戦後間もないニュルンベルグ裁判で、デーニッツなどの戦犯ですら終身刑にならなかったのに、大衆の激情によってバルビーが終身刑となるのは先達の法を超えたと批判し、44人の孤児を収容所送りにするよう提案したのはフランス政府だったと告発する。また、バルビーは「レジスタンスは尊敬している」「戦時は私を必要としたのに、裁かれるのは私一人だ」と述べるのだ。 バルビーの犯した罪は消えることはないが、バルビーを告発するその陰にはフランス人民の責任や利用したアメリカ政府の責任の隠ぺいが見え隠れする。バルビーを罰したところで、根本の問題は何も解決されない。一人の狂信者が消え去ったところで、狂気の大衆から次の狂信者が生まれてくるのだ。そしてそれを利用し、捨てる歴史が繰り返される。 ドキュメンタリー作品としては、証言者が多数登場し、前半部分はかなり単調で飽きやすい。だが、後半からは単なる勧善懲悪作品ではないことがわかり、非常に興味深くなった。監督はケヴィン・マクドナルドで「ブラック・セプテンバー 五輪テロの真実 (1999)」という佳作も手がけており、公平な視点で核心をついていくドキュメンタリーが得意な監督のようだ。ドキュメンタリーではないが、「ラストキング・オブ・スコットランド(2006)」も良い作品だったし、なかなか期待できる監督だ。 クラウス・バルビーに興味がなかったらかなり面白くない作品だろうが、ドキュメンタリーとしては王道を行く良作だった。興奮度★★★沈痛度★★★★爽快度★感涙度★
2009年11月19日
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2007 ロシア 監督:アレクサンドル・ソクーロフ出演者:ガリーナ・ヴィシネフスカヤ、ワシーリー・ツェフツォフ、ライーザ・ギチャエワほか92分 カラー ALEXANDRA(CD)チェチェンへ アレクサンドラの旅/Andrey Sigle DVD検索「チェチェンへ アレクサンドラの旅」を探す(楽天) チェチェン共和国に侵攻するロシア軍駐屯地を舞台に、一人の老婆の目に映る戦争と人間模様を描いたヒューマンドラマ。ドラマとは言うものの全体的にはドキュメンタリー的な雰囲気が強く、抒情的かつ芸術的に人間の生と死を描いたもので、まさにソクーロフワールド炸裂だ。監督のソクーロフはソヴィエト芸術映画の系譜を色濃く継承した名監督で、これまでにも昭和天皇を描いた「太陽」、レーニンの「牡牛座レーニンの肖像」、ヒトラーの「モレク神」といった人物3部作が著名で、人物描写に長けた監督でもある。 映画の背景に設定されているのはチェチェン共和国で、チェチェンと言えばロシアからの独立を求めるチェチェン独立派武装組織によるテロ工作が頻繁に起こっており、2004 年に北オセチア共和国ベスラン学校占拠事件の記憶が生々しいところだ。ロシアは1994年の第一次紛争、1999年からの第二次紛争ともにチェチェン共和国内に軍を送り込み、武装組織の壊滅作戦を行っている。親ロシアのチェチェン人もいるようだが、紛争で多くのチェチェン人やロシア軍人が死亡していることから、互いの憎悪が日増しに強くなっている。このあたりを描いた作品には「コーカサスの虜(1996カザフ・露) 」「チェチェン・ウォー(2002露)」「厳戒武装指令(2003 露)」などがある。 さて、本作はチェチェン共和国内のロシア軍駐屯地に派遣されている27歳の孫(大尉)を訪ねた老婆アレクサンドラが、基地内の若い兵士たちや基地外のチェチェン人の姿を観察し、彼らの生を感じるストーリーである。主役の老婆はふてぶてしく、周囲に左右されない自我を貫きながらも素に人間と接していくのだが、そのとても映画には馴染まないと思われるほどの日常的な行動により、逆に他者の人間性を浮き彫りにしていくテクニックは見事としか言いようがない。このいじわるばあさん、わがままばあさんとでも形容したくなるような老婆は、ロシアでは有名なソプラノ歌手ガリーナ・ヴィシネフスカヤ。演技は素人ながらも実にインパクトのある快演ぶりだ。 内容は非常に抽象的で抒情的。チェチェン紛争を背景にしているが戦闘シーンは皆無で、兵士や一般人の日常を淡々と描き続けるのみだ。会話の意味や行動の解説はほとんどなされないため、登場人物が何を考え、監督が何を意図しているかを終始考え通さなければならない。普通の映画ならば理解不能に陥り苦痛に感じるかもしれないが、ソクーロフ作品はその自己思考が何だか気持ちいい。それはソクーロフの描写が善も悪も、有意義も無意味もひっくるめて極めて人間的であり、即物的だからだろう。過去の作品「太陽」や「牡牛座レーニンの肖像」などもそうだが、主人公やそれ取り巻く人物が非常に人間的であるからこそ、言葉で語らなくとも自分自身の経験と葛藤に投影できるのだ。従って、本作を見た人それぞれの解釈や主人公像が出来上がるものと思われる。ソクーローフにとっても、それはそれでいいと考えているに違いない。 音響効果も独特で特徴的。自然に耳に入ってくる雑音と会話、そこに何気ないBGMを多重に重ねることによって、リアルでありながらも妙に心を揺さぶる不思議な空間を作り出している。この独自の音感はまさに芸術と形容するにふさわしいだろう。いかにも俗世間のようでありながら、俗世間にはない異空間なのだ。 撮影は実際にチェチェンのロシア軍基地で行われたそうで、登場する人物もガリーナ・ヴィシネフスカヤと孫の大尉役ワシーリー・ツェフツォフ以外はほとんどが素人だそうだ。確かに会話数は少ないものの、若い兵士や民間人は素人とは思えない自然な演技だ。その中で唯一上官の大佐役だけちょっと怪しい動きがあって違和感があったのだが、本物のロシア軍将校が演じていたとのこと(笑)。 本物の基地だけあって、その存在感は見事なものだ。むさくるしいテント群、乱雑に並んでいるようで実は規則的な基地内の装備品。通常は退屈そうでありながら、時折見せる緊張感。一歩基地を出れば破壊された建物の中でチェチェン人の老若男女が営みを行っている。戦禍に巻き込まれた非日常の空間がそこにはあるのだ。 兵器類では、ロシア軍の装甲列車、BTR-80?装甲兵員輸送車が登場する。装甲兵員輸送車には老婆アレクサンドラも内部に乗り込んで見学している。このほかヘリコプターも出ていたような気がするが覚えていない(汗)。 退屈と言えば退屈な映画の部類だが、観れば観るほど不思議な魅力に惹きこまれていくだろう。派手さやインパクトこそ期待できないが、こうした芸術的映画もいいものだと感じることができる佳作である。興奮度★★★沈痛度★★爽快度★★★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) ロシアのスタヴローポリに住む80歳になる老婆アレクサンドラ・ニコラエヴナは、孫のデニス大尉に会うためにチェチェン共和国グロズヌイにあるロシア軍基地を訪れる。足の悪いアレクサンドラは時折悪態をつきながらも、軍用装甲列車に乗り、前線に向かう若い兵士たちを眺めている。 目的地に着いたアレクサンドラは同行の将校に連れられて装甲車に乗せられて基地に向かう。将校はテントの「ホテル」にアレクサンドラを案内し、アレクサンドラは旅の疲れから眠りにつく。目が覚めると隣には孫のデニス大尉(27歳)が寝ていた。泥や汗にまみれたデニスの姿にあきれながらも、デニス大尉の案内で基地内を見学する。銃の手入れや食事など若い兵士たちの姿に興味を示し、装甲車の内部にも乗ってみるが、アレクサンドラは退屈だった。デニス大尉は偵察のために出動していき、退屈なアレクサンドラは基地内を歩き回り、ゲートで若い兵士に止められる。そこでアレクサンドラは若い兵士らと話しこみ、寝入ってしまう。朝になり戻ろうとするアレクサンドラを出迎えたのは基地の部隊長の大佐だった。アレクサンドラを部屋に案内する途中でデニスについて問われた大佐は「優秀な職業軍人で、それで稼いでいるから心配ない」と答える。だが、アレクサンドラは殺ししかできない孫の除隊後を心配するのだった。 アレクサンドラはデニスに世話係の兵を付けられるが、それを制止して基地の外に出かけていく。外の市場でチェチェン人の人々と出会うが、ゲートの兵に頼まれた煙草や菓子を買おうとするが、若いチェチェン人は売ってくれない。ロシア人が嫌いなのだ。だが、年配の女性たちは優しく接してくれ、ロシア語の上手なマリカは疲れたアレクサンドラを自宅に招いて休ませる。マリカは「男たちは敵同士になるが、女たちは姉妹よ」と言うのだった。帰りには隣人の青年イリヤスが送ってくれるが、イリヤスはアレクサンドラに「もう(ロシア軍から)解放してほしい」と本音を漏らす。アレクサンドラは日本人女性の言葉を引用し、「大事なのは理性よ」と諭すのだった。基地では世話係の兵がデニス大尉に叱責されており、世話係の兵はアレクサンドラに食事を世話する。 アレクサンドラはデニスに「あなたたちは嫌われている」と告げる。デニスはわかっているとしながらも、軍人として生きるしかないのだととも言うのだった。そしてアレクサンドラは一人で生きるのが寂しいとこぼすのだった。 翌朝、デニス大尉は急な任務で数日出動することとなり、アレクサンドラに帰った方がいいと言う。アレクサンドラは市場に昨日の料金を払いに行くが、マリカたちは金を受け取らず、帰りの列車まで見送りに来る。手を振る女たちの中でマリカだけは違う方向を見続けるのだった。
2009年11月09日
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【送料無料】ミリタリーエアクラフトシリーズ ビッグバード Vol.4 BOX販売 アルジャーノンプロダクト(発売中)【NEWショップ】【おもちゃ★送料無料祭】今日は2機目のハインケルHeー177グライフ爆撃機です。2A He177 Gotenhaven Hexengrund.1944Gotenhaven Hexengrundとは何でしょう。GotenhavenはGotenhafenとも書きますし、直訳すればグディニャの魚雷研究施設とでも言えるんでしょうか。
2009年11月02日
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2007 イタリア 監督:ジャコモ・カンピオッティ出演者:マルチナ・ステッラ、ダニエレ・リオッティ、トマ・トラバッチ、アンドレナ・ティドナほか LOVE SEES NO WAR/L'AMORE E LA GUERRA206分(前編:勝機なき戦い103分、後編:最後の突撃103分) カラー 愛と裏切りの戦場~アルプスの勇士たち~前編:勝機なき戦い / マルチナ・ステッラDVD検索「愛と裏切りの戦場」を探す(楽天) 第一次世界大戦時のイタリアを舞台に、対オーストリア軍最前線での激しい戦闘の中で起こる陰謀と、淡い恋物語を描いたアクション・ラブロマンス。イタリアのテレビドラマとして製作されたようで、DVDでは前後編の2部作となっている。近年のイタリアは映画・テレビともに力が入っているようで、過去のマカロニコンバットとはまるで異なる、シリアスで真面目なドラマとなっている。 本作は1917年から1918年のイタリア北東部におけるオーストリア軍との戦闘で、カルソ地方やパズビオ山に追い込まれ窮地に立たされるイタリア軍の防戦、撤退が描かれている。イタリアは第一次大戦でオーストリア・ハンガリー帝国軍とイタリア領を巡って戦闘状態にあり、最前線での膠着した塹壕戦、要塞戦がリアルに描かれている。ちなみに、この戦闘は険しいアルプス山を主戦場としたため、アルプス戦線とも言われ、最終的にはオーストリア・ハンガリー軍の降伏で決着する。 主人公はイタリア軍軍曹で、戦死した小隊長の後を継いで小隊を率いるのだが、赤十字看護師として勤務する良家の伯爵令嬢を巡って上官である大尉と対立し、スパイ疑惑に巻き込まれていくのだ。イタリア人らしく情熱的なラブロマンスも大きな主題となっているが、イタリアらしからぬ控えめで爽やかな描写になっているのが驚きだ。また、裏切りや陰謀、友情などのサスペンス、ヒューマンドラマ的要素も含んでおり、非常に盛りだくさんな内容で見ごたえがある。それでいて物語が大きくブレることなく、前後編3時間半にわたってスムーズに楽しめたのは、一貫した視点ときちんとした起承転結が構築されていたからだと思う。やや美しく出来すぎている印象もあるが、全体に完成度の高い作品と言えるだろう。 最も印象的だったのは人物描写だ。登場人物を抑え目にし、個々の性格付けをしっかりとしているため、登場人物に心情移入しやすいし、わかりやすいのが好感。主人公のパッリ軍曹はイタリア人男性とは思えないほど控えめでクール。こういうイタリア男も格好いい(笑)。お相手の伯爵令嬢アルベルティーナもなかなかの美女だが、何と言ってもハスキーボイスが超セクシー。イタリア映画にしてはヌードシーンが控えめな作品だが、わずかに披露するヌードシーンも見どころだ。そして極めつけは孤児の少女アニータ。目がくりっとした美少女で話し方や仕草が何とも愛らしい。こんな子なら連れて帰りたくなるかも(汗)。 映像もなかなか秀逸で、雪を冠したアルプスの風景が美しく、スケール感がある。町や要塞、戦場等のロケも決して大規模ではないが、多彩なシーンが登場し、飽きさせずチープさを感じることもない。 戦闘シーンは激しさこそ左程ないが、銃撃戦や砲弾着弾などはそこそこリアル。戦争映画としても楽しめるレベル。ただし、第一次大戦なので登場する兵器は銃器類だけ。特筆すべきはやはり第一次大戦らしいシーンだろう。第一次大戦は膠着した塹壕戦が多く、無謀で凄惨な肉弾突撃が特徴的だが、本作でもご他聞に漏れず肉弾突撃シーンがある。いつ見ても不条理で凄惨なシーンだ。また、第一次大戦時は軍の指揮系統が未熟なため、無能な上官による私的制裁や横暴が起こるようで、本作でも上官によって無実の罪を着せられ軍事裁判で死刑宣告がなされる。同様の不条理さを描いた第一次大戦作品には「突撃(1957米)」「総進撃(1970 伊)」などがあり、第一次大戦独特の描写でもある。 邦題からあまり期待していなかった分、思いのほか良作だった(笑)。アクション、ラブロマンスともに及第点以上の出来だった。テレビドラマにしておくのはもったいない位で、十分映画としてもいけるレベル。近年のイタリア映画は侮れない。 興奮度★★★★沈痛度★★★★爽快度★★★感涙度★★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1917年トリノ。イタリア軍伯爵レジス大将の令嬢アルベルティーナは慰問の手紙で知り合った最前線のラニエリ中尉に恋をしていた。まだ見ぬ中尉に想いを馳せ、両親の反対を押し切って前線の赤十字看護師になることを決意する。 最前線のカルソ前線ではラニエリ中尉は第19隊の第二小隊を率いており、部下にはロッコ・パッリ軍曹がいた。実はラニエリ中尉は手紙を文才のあるパッリ軍曹に代筆させていた。 ついに、オーストリア軍陣地に突撃することとなり、パッリ軍曹はビビりまくる新兵たちを励ます。ラニエリ中尉もビビるが勇敢なパッリ軍曹を見習って先陣を切ろうとする。パッリ軍曹は中尉をかばうが、中尉は敵弾にあたってしまう。息も絶え絶えの中尉はパッリ軍曹にアルベルティーナの写真を託し、手紙を出してほしいと言い残して死亡する。第二大隊長のアヴォガドロ大尉はパッリ軍曹に、戦闘で臆病風を吹かせた兵を一人見せしめのために射殺するよう命令する。パッリ軍曹は戦死体を利用して銃殺するふりをするのだった。 アルベルティーナは赤十字看護婦として前線基地にやってくる。だが、前線の病院は想像を絶する凄惨さで、脚の切断や治療不可の死を待つ兵で埋め尽くされている。何もすることができないアルベルティーナは衝撃を受け、死を待つ兵のためにオルガンを弾く。医師には怒られたがパッリ軍曹の部下ベルテッリは天使のようだと心を癒されて死んでいく。パッリ軍曹はそれがアルベルティーナだと知るが、ラニエリ中尉が死んだことも代筆のことも言い出せなかった。一方、出世を目論むアヴォガドロ大尉はレジス令嬢アルベルティーナに接近しようとする。だが、アヴォガドロ大尉は賭けで多額の借金を負い、謎の女マティルデと急接近する。 パッリ軍曹は売春宿に住む孤児の少女アニータと仲良しだった。アニータは軍曹をロッコと呼んで慕い、次第にアニータを介してパッリ軍曹とアルベルティーナは急接近していく。 第19隊のパッリ軍曹はパズビオ山前線のイタリア軍要塞に配置される。ここはオーストリア軍の攻撃にさらされ危険な場所であった。アルベルティーナはラニエリ中尉を探しに無理やり前線にやってくる。パッリ軍曹はついにアルベルティーナにラニエリ中尉が戦死したことを伝える。アルベルティーナがショックを受けている所に父親のレジス大将がやってくる。大将はすぐにアルベルティーナに下山するよう命じるが、オーストリア軍の攻撃で瀕死の重傷を負う。身を呈したパッリ軍曹の救出にも関わらず大将はアルベルティーナの腕の中で息絶える。アヴォガドロ大尉はアルベルティーナを連れて戦線を離脱し、恋敵のパッリ軍曹にしんがり抗戦を命じる。 1917年10月24日、カポレット敗退。母親、大尉と車で避難中のアルベルティーナは民間人の負傷者を見て、現地に残って治療することを決意。そこで避難してきたアニータと再会し、同僚のコジマとともにバッサーノのヴィラマルゴン軍事病院に勤務する。 パッリ軍曹のしんがり隊はアルプスの雪山を徒歩で移動し、アルプス山上のグラッパ前線要塞に到着する。そこはオーストリア軍の難攻不落の要塞「はやぶさの巣」があり、苦戦を強いられていた。元炭鉱夫のパッリ軍曹は巡察に来たクローチェ大将にトンネルを掘って敵陣に突入する案を提案する。大将はパッリ軍曹の提案を取り入れ軍曹に指揮を取らせることに。だが、恋敵で面子を潰されたアヴォガドロ大尉は苦々しく思う。パッリ軍曹は大将に招かれた晩餐会でアルベルティーナと再会し、ついに代筆のことを告白する。一旦は怒ったアルベルティーナだったが、すぐにパッリ軍曹と恋仲となっていく。 いよいよトンネルが完成し、パッリ軍曹は敵要塞に突入する。だが、要塞はもぬけの殻で爆薬が仕掛けられていた。情報が筒抜けになっており、多くの兵が負傷し、先頭にいたパッリ軍曹は崩れた土砂で行方不明になってしまう。 アルベルティーナはもはやベテランの域に達するが、パッリ軍曹が行方不明になったことを知り不安に駆られる。だが、アヴォガドロ大尉はパッリ軍曹がスパイで敵に情報を売ったと言いふらし始める。さらにクローチェ大将は別の前線に赴き、事実上の指揮官はアヴォガドロ大尉となり、パッリ軍曹を犯罪者に仕立て上げ、アルベルティーナを狙い始める。下心ミエミエのアヴォガドロ大尉の行動をマティルデは苦々しく思い、オーストリア軍との次の取引を持ちかける。実はマティルデはオーストリアのスパイで、借金の肩代わりのかわりにアヴォガドロ大尉から情報を得ていたのだ。 パッリ軍曹は捕虜となり、オーストリア軍収容所にいた。パッリ軍曹は脱走を企て、ジローラモとアッティリオを連れて脱走する。ジローラもは足を負傷しており、追い詰められた3人は崖から飛び降りて逃げる。だが、逃げたと思った河原でアッティリオが撃たれて死亡。助けようとしたパッリ軍曹も肩を撃たれ、ジローラモはパッリ軍曹を山小屋において4週間ぶりに自軍陣地にたどり着く。だが、指揮権を持ったアヴォガドロ大尉は事実を隠蔽しパッリ軍曹に罪を押しつけるため、ジローラモを逃亡罪で逮捕する。トンマーゾはジローラモからパッリ軍曹のことを聞き、アルベルティーナとアニータを連れて山小屋に向かう。瀕死のパッリ軍曹を手当てし、アルベルティーナとアニータは一緒に山小屋で暮し始め、ついに二人は結ばれる。 ジローラモが逮捕されたことを知ったパッリ軍曹は基地に戻り、真実を語ろうとする。だが、アヴォガドロ大尉により逮捕され軍事裁判所に送られる。頼みのクローチェ大将は戦死し、パッリ軍曹はジローラモとともに銃殺刑が決定する。アヴォガドロ大尉はスパイの罪をパッリ軍曹に着せたことで強気になり、一緒にオーストリアへ逃げようと通行証を持ってきたマティルデを邪険にする。そして、アルベルティーナはパッリ軍曹を救うためにアヴォガドロ大尉の求婚に応じることを決意する。パッリ軍曹とジローラモは銃殺場に連れ出されるが、車に乗せられて移動する。連れて行かれた先はグラッパ前線の第一線だった。同様の犯罪兵とともに必死の突撃を敢行させられるのだ。(以下略)
2009年10月24日
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2006 アメリカ 監督:シドニー・J・フュリー出演者:ボビー・ホセア、アリー・シーディ、キャスパー・ヴァン・ディーン、ジェームズ・ウールヴェット、マイケル・アイアンサイドほか90分 カラー The Veteranアメリカン・ソルジャーズ2/アリー・シーディ[DVD] DVD検索「アメリカン・ソルジャーズ2」を探す(楽天) ベトナム戦争に従軍したアメリカの州議員が戦後35年経ち、戦争行方不明者の元米兵からの手紙で再びベトナムを訪れたことから起こる、隠されたベトナム戦争の真実を巡るサスペンスドラマ。力の入った戦闘アクションも多く、一見アクション系かと思わせたり、戦争批判や権力批判等の社会風刺的な側面もあるが、総体的にはサスペンスのジャンルに入るだろう。テレビムービーとして製作されたもののようだ。 監督は知る人ぞ知るB級映画名監督のシドニー・J・フェリー。フラッシュバックやぶつ切り編集、妙に説明調で感傷的な映画が特徴的だが、本作でも見事にそのままだ(笑)。従って映画の完成度という点ではかなり駄作の部類で、まずまずの内容だった前作「アメリカン・ソルジャーズ(2005)」に比べると格落ちの感は否めない。 ところで、本作の邦題「アメリカン・ソルジャーズ2」だけ見れば、いかにも「アメリカン・ソルジャーズ」のシリーズ作と誤解しがちだが、前作はイラク戦争を題材としたものであり全く関係ない。ところがだ、本作を観ていて驚いた。登場する人物、役者、ストーリー設定、そして映像・・・どこかで観たことあるぞ・・・。それは同監督作品「フィアーズ・オブ・ウォー(2001米)」なのだ。全て同じ物語を下敷きにして、というか「フィアーズ・オブ・ウォー」の別視点再構築映画なのだ。「フィアーズ」の方は中隊長ラムゼー大尉、本作はレイ軍曹といったように主人公を違え、脇役こそ若干メンバーが異なるものの、隊員の名前も役者もまるで一緒なのだ。さらに、面白いのは「フィアーズ」で行方不明になった衛生兵が今作で戦争捕虜行方不明者として登場するなど、両作が密接にリンクし、互いに補完するように穴を埋めていくのだ。また、映像も「フィアーズ」の使いまわしも多少はあるようだが、別角度からの新映像が頻繁に登場し、ああこの場面知ってる、この角度から見るとこうなるのだな、といった感動さえ感じる。衣装やセットが余りに良く似ているので、5年間のブランクを考えると新たに撮影したものではなく、「フィアーズ」制作時の未使用・未公開フィルムを活用したのかもしれない。当初から二部作として計画していたのかどうかは知らぬが、金をかけずに製作できる利点とともに、両作をセットで見ると違った楽しみ方ができるのは非常に面白い。 というわけで、単品で評価すると★2つにしかならないが、二作をセットで考えた場合には★3つあげても良いと感じた。 さて内容だが、一応本作では国家権力が弱者を見捨てていくという社会批判的主題が立てられている。だが、やはり監督特有の自己陶酔型の映像感が強すぎで、台詞も編集も稚拙なため、感情移入しきれずにストーリーが台無しになってしまった。そのため作品の意図が何だか理解できないままに事が進み、エンディングも非常に後味が悪いものとなってしまっている。このあたりは、いつまでたってもシドニー・J・フェリー流なのだなと感じる。とにかく細かいぶつ切り映像や頻繁なフラッシュバックは、見るのが疲れるし集中力を欠いてしまうのだ。いい加減視聴者の評価に気づいて欲しいところ(笑)。 これに反して映像はいつもどおり秀逸。「フィアーズ」映像の再利用かもしれないが、ベトナム戦のリアルな雰囲気が良く出ている。登場する兵器類はヘリのUH-1イロコイ程度。 とにかく本作ではストーリーや映画のテーマなどはあまり深く考えずに、「フィアーズ」と両方を見て、同じ映像、同じ設定にほくそ笑んで貰いたい。今作ではベトコン少女砲兵隊せん滅、上陸戦失敗からのヘリ撤退、ベトナム人遺体の空中投下、市街戦での無反動砲といったあたりが同じ設定として描かれている。それぞれが結構細かく設定を押さえていて、色々な発見を楽しめるだろう。 まあ、邦題つけるなら「フィアーズ・オブ・ウォー2」の方が良かったような気がするけど。興奮度★★沈痛度★★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) テレビ報道で、イラク戦争でアメリカ軍ヘリが墜落し、乗員の一人が行方不明になったというニュースが流れている。ベトナム退役軍人会で女性職員のサラは一通の手紙を見つける。宛先はレイ・ワトソンとなっており、サラはレイに電話をかける。レイは元ベトナム従軍兵で、現在は神父で州議員を務め、上院議員候補でもある。 戦争後35年ぶりにベトナムを訪れたレイ元軍曹は、メイ・リンという女性を訪ねる。ベトナム戦争時にレイと恋仲だったメイ・リンは既に結婚しており、レイとの間にできた息子もいた。だが、メイ・リンは自分を見捨てたレイを許さず門前払いにする。 ホテルに戻ったレイのもとに一人の男が現れる。銃を付きつけて居座る男はレイ元軍曹の戦友で戦死したとされていた衛生兵のドクだった。ドクは戦争捕虜として6年間収容所に入れられ、アメリカに帰国することなくベトナムにいたのだ。ドクはレイが自分を戦死者として見捨て、戦争の罪や真実を隠して上院議員になろうとしているたことを詰問する。 そのやり取りを近くのホテルで盗聴しているのはサラと戦争捕虜確認司令部(JPAC)のマクドナルドとクーバーだ。手紙の差出人が何者で、行方不明者であるかどうかを確認しようとしてるのだ。 ドクは過去の記憶をたどり、自分たちが行った罪を掘り起こしていく。ベトコンの迫撃砲攻撃を受けて殲滅した相手はベトコン少女兵だった。一方でレイは従軍神父が勇敢な活躍で部隊やドクの命も救ったことを回想し、それが理由で神父になったことを話す。だが、ドクは盗聴に気づきレイに軍がした罪を話すよう追及する。軍はヘリでベトコンの死体をぶらさげ、ベトコンの村に投下するなど民間人の殺害を行った。さらにラムゼイ大尉の制止を聞かず、レイ軍曹は村に火をつける部下を統率しなかった。その光景を映したフィルムもカメラマンも所在がわからず、その非業は闇に葬られたままだ。 またドクは同性愛者で、レイ軍曹に愛を告白したことがあった。レイ軍曹は冷たく突き放すが、市街戦で敵に捕まったドクをレイが助けなかったのはドクが同性愛者だったからだと非難する。 戦争捕虜確認司令部(JPAC)のマクドナルドとクーバーはドクが本物と確信し、レイとドクのもとに向かう。だが、レイは逆にドクに銃を突きつけ死んでくれと言う。実はレイは上院議員候補であると同時に大統領候補でもあり、スキャンダルは困るのだ。サラも実は大統領候補の身を守るために派遣された国家安全保障局(NSA)職員であることが判明する。レイは国のために必要な人物だというのだ。 部屋に入ったマクドナルドらの説得によってドクは銃を下ろす。だが、その瞬間サラがドクを射殺し、ドクは戦争捕虜ではなく、無許可離隊した兵だとこじつける。こうして国家権力が真実を隠蔽していくのだった。
2009年10月18日
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2007 フランス 監督:フローラン=エミリオ・シリ出演者:ブノワ・マジメル、アルベール・デュホンテル、オーレリアン・ルコワン、マルク・マルベほか111分 カラー L'ENNEMI INTI ME /INTIMATE ENEMIESいのちの戦場 -アルジェリア1959-(DVD) ◆20%OFF!DVD検索「いのちの戦場」を探す(楽天) 1950年代後半に起こったフランス軍対アルジェリア独立運動派の「アルジェリア戦争」を描いたシリアス系ヒューマンドラマ。アフリカのアルジェリアは 1800年代からフランスの植民地として支配され、第二次世界大戦後も植民地から解放されなかったため、インドシナと同様に独立運動が勃発する。1954 年にアルジェリア民族解放戦線(FLN)が蜂起したのを皮切りに、アルジェリア各地でフランス軍(フランス正規兵及びハルキ兵(アルジェリア人))と戦闘し、1962年の独立を勝ち取るのだ。 本作では1959年頃のアルジェリアのカビリア地方を舞台に、FLNと対峙するフランス軍最前線に赴いた新任中尉とその小隊を描いている。描かれるエピソードや登場人物等はフィクションだが、アルジェリア戦争をまともに取り上げた映画作品は非常にレアである。というのも、世界でも有数の高慢でプライド高いフランスは、インドシナ戦争ともどもアルジェリア戦争を「戦争」として認めてこず、あくまで恥ずべき内紛としか見てこなかったのであり、これに触れることはタブーでもあったのだ。ちなみに、過去の作品でアルジェリア戦争を描いた作品に「アルジェの戦い(1965伊アルジェリア)」「ロスト・コマンド 名誉と栄光のためだけでなく(1966米)」があるが、いずれもフランス以外の制作で、本作はフランスが描いた初の作品ということになる。 内容的には戦場での狂気と厭戦感を、若く道徳的だった士官が戦場での虐殺や迫害、不条理を経験することで次第に変化していく様子として描いていく。いわゆる反戦映画と言うこともできるが、単に戦争の凄惨さや愚かさを強調するだけにとどまらず、戦時の精神変化や憎しみの輪廻といった複雑な人間模様を描いているのが素晴らしい。特に秀逸なのは、アルジェリア人だがフランス軍に従軍するハルキ兵の心情、アルジェリアFNL側に寝返る兵や少年の人間憎悪の模様で、戦争は憎しみの連鎖であることを強く印象付けている。また、フランス兵自身も戦争の意義に疑問を感じ、責務の重圧の中で自我を失っていくシーンが重々しい。 もっとも、フランス作品だけあってフランスの植民地政策への贖罪感はあまり強くない。制作サイドはフランス人も真実の歴史に目を向けるべきと意欲的だし、テロップ等で若干そういう趣旨の言葉が流れるが、どちらかというと喧嘩両成敗的な雰囲気。自虐史観に慣らされた身としてはちょっと物足りない(笑)。それでもフランスにとっては画期的なんだろうけど・・・。 本作では数多くの戦闘シーンが描かれ、戦争映画としても戦闘シーンの割合は高い方と言えるだろう。偵察シーン、銃撃戦・空爆シーンともに緊迫感十分で、戦争アクションとしては及第点。ただ一つ一つのシーンが単発で、連続性や変化に乏しいのが欠点。ミッションを経るに連れて兵士らの心情に変化が現われる様子が主題なのだから、その変化の契機が理解しやすいように、もう少し強弱やインパクトが欲しかったところ。全般に平坦な印象で、音楽や映像スピードの変化などで盛り上がりがあったら良かった。ただ、これまで触れられなかったアルジェリア戦争を知ると言う点では非常にレアな作品であり、戦争映画の新たな視点として大いに評価したい。 批評ではフランス版「プラトーン」とも言われるが、確かに立ち入り禁止区域内のアルジェリア人村落へのパトロールやFLNゲリラ(フェラガ)とのゲリラ戦という点ではベトナム戦と似ているとも言えなくもない。だが、決定的に異なるのはフランス軍のか弱さだ。ベト戦の米軍もアルジェリアの仏軍もいわゆる敗者であることは一緒なのだが、兵士のタフさ、責任感や規律性、そして使用する兵器や戦術が見劣りする。まあ、本作の内容自体はフィクションなのでどこまで真実を伝えているかは疑問だが、何となくそのことが伝わってくる戦場の緊迫感の違いにつながっているようだ。 また、残念だったのはエキストラ兵士数が少なかったこと。小隊中心の描写とは言え、中隊、大隊規模での戦闘でもあったのだから、もう少しワラワラとうごめく兵士が出てこないと臨場感に欠けるのだ。 本作で登場する兵器類は結構時代考証もしっかりしているようだ。AFVではジープのほかパナールAML装輪装甲車、M3ハーフトラックが登場する。一瞬だが小型の戦車の姿も見えた。ヘリではシコルスキーH-34ウェセックス、パイアセッキH-21ショウニーが飛行している。また、ナパーム弾を支援投下する航空機は双胴ジェットのデ・ハビラントバンパイア戦闘機。これらはロケ地がモロッコなので、モロッコ軍の協力か武器エージェントの用意したものと思われる。 非常にレアな題材を描いた作品として個人的には興味深かったが、総合的な戦争映画としての出来はそこそこレベル。戦闘シーンの多さはプラス要素だが、全体バランスや編集技術の拙さはマイナス要素で相殺された感じ。これを機にアルジェリア戦争題材の映画がさらに製作されることを期待したい。興奮度★★★★沈痛度★★★★☆爽快度★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1959 年7月、アルジェリアのカビリア地方。山岳地帯のこの地ではフランス軍とFLNゲリラ(フェラガ)が、立ち入り禁止地帯にあるタイダ村を挟んで対峙している。フェラガの司令官は元フランス軍兵のアルジェリア人スリマンに率いられており、フランス軍はヴェルス少佐の指揮のもとスリマンの確保に躍起となっている。タイダの村は昼は仏軍、夜はフェラガに支配されている。 そのマゼル前線基地に、前夜の偵察戦で同志討ちで戦死した中尉の後任、テリアン中尉が赴任してくる。強い道徳観と責任感を持つテリアン中尉はベテランのドニャック軍曹のいる小隊を率いることとなる。だが、偵察でタイダの村人たちに暴力をふるうドニャック軍曹のやり方に憤慨する。ドニャック軍曹はそんなテリアン中尉を冷めた目で見る。そのほか部下にはアルジェリア人兵(ハルキ兵)も多くいた。ラシードはドニャック軍曹が寝返らせた元FLN兵。サイードは前大戦でモンテカッシーノ戦に参加した兵で戦後妻子をFLNに殺されていた。 次の偵察でテリアン中尉はフェラガに虐殺されたタイダ村の人々の死体を見て、フェラガの残虐性を知る。テリアン中尉は井戸に隠れていて助かった少年アマールを基地に連れて帰る。アマールは捕虜の虐待を止めるテリアン中尉を慕うようになる。また別の偵察では、女性隊商を殺害したドニャック軍曹をしかるが、実は女性に変装したフェラガだったことを知り、次第にドニャック軍曹に信頼を置くようになる。 基地では捕えた捕虜をヴェルス少佐の指示でドニャック軍曹の戦友で情報将校のベルトー大尉が拷問を行っていた。テリアン中尉は行為を非難し、フランスの植民地支配の間違いを指摘するが、ベルトー大尉は自らドイツ軍に受けた拷問の跡を示し、おまえもそのうち変わると笑うのだった。 捕虜の自白でスリマンのアジトが割れる。テリアン中尉の小隊は先鋒を務めるが、、FLNが待ち伏せ攻撃を仕掛けてくる。次々と倒れる部下に少佐に応援を要請するが却下され、テリアン中尉は窮地の中敵兵を殺害する。それはアマールの兄だった。そして敵に向けてナパーム弾による空爆が行われる。黒こげの敵兵の姿に呆然とする小隊には、この戦争の意味が疑問に思えてくるのだった。そんな中、ラシードが失踪する。ラシードはFLNによって残忍な処刑がされた状態で発見される。 捕虜の処置を命令されたテリアン中尉だったが、良心からそれを拒否する。代わりにドニャック軍曹が捕虜の処置を行うこととなるが、その捕虜がかつてモンテカッシーノに従軍していたことを知り、その勲章に敬意を表して捕虜を見逃すことにする。だが、サイードが射殺してしまう。ドニャック軍曹自身も徐々に戦争の意義がわからなくなってくる。 スリマンのアジトを探して再び小隊が偵察に出る。だが、途中で機関銃の待ち伏せ攻撃にあい、部下が負傷する。テリアン中尉はドニャック軍曹と別れ負傷した兵を後送するが兵は死亡してしまう。再びドニャック軍曹らと合流するために移動するが、そこで女たちの隊商を発見する。テリアン中尉はゲリラの変装と判断し射殺するがそれは本物の女性だった。中尉はひどく動揺するが任務は続行される。負傷した兵をベルトー大尉のジープが回収に来る。だが、ベルトー大尉のジープはFLNに襲撃され大尉と負傷した兵は残忍な殺され方をする。 FLNのやり方に怒りを覚えたテリアン中尉は豹変し、捕虜の拷問に自ら参加するようになる。その姿をみたアマールは失望し、テリアン中尉のもとを去っていく。テリアン中尉はしばしの休暇でフランスに戻るが、まるで異なる平和な世界に戸惑い、家族に顔を会わせることができなかった。映画館ではアルジェリアに貢献するフランス軍の姿が映し出され、真実とは異なる報道にむなしさを覚える。 再び基地に戻ったテリアン中尉は、酒におぼれ自ら電気拷問を受けるドニャック軍曹を見る。ドニャック軍曹も戦争の重圧に苦しんでいたのだ。そしてドニャック軍曹が失踪する。テリアン中尉は渓谷にドニャック軍曹を探しに出るが、FLNの銃弾を受けて倒れる。失っていく意識の中で目にしたものは銃を手にするアマールの姿だった。
2009年10月13日
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1976 カナダ 監督:ドン・エドマンズ出演者:ダイアン・ソーン、ヴィクター・アレクサンダー、マイケル・セイヤー ほか93分 カラー ILSA, HARLEM KEEPER OF THE OIL SHEIKSイルザ アラブ女収容所 悪魔のハーレム〈ヘア解禁リマスター版〉(DVD) ◆20%OFF! DVD検索「イルザ アラブ女収容所」を探す(楽天) 戦争系エログロ映画「イルザ」シリーズの第二弾。第一弾「イルザ ナチ女収容所 悪魔の生体実験(1974 米・加)」はその異端路線児ぶりにも関わらず、ナチの人体実験を批判的に捉えるなど意外にも「見れる」映画となっていた。本作では女収容所長イルザを引き継ぎ、舞台をアラブに移してアラブの独裁支配者の王室護衛長(ハーレム管理人?)として描かれる。時代やモデルとなる国名は良く分からない設定となっているが、雰囲気から見て戦後しばらくたっての石油産出国のようだ。 イルザ役は御歳44歳となるダイアン・ソーンが続投。監督もドン・エドマンズで変わらないが、出来具合から言うとちょっと期待外れだった。前作がナチの収容所と言うリアルな設定と裸だけではない政治的メッセージ性があったのに対し、本作は内容のないアラブ設定で内容に重みがないため、単なるエログロだけの作品になり下がってしまった。しかも、その裸にしても今一つ美しくない。ダイアン・ソーンの爆乳は健在だが、やっぱりいささか歳を取りすぎたか。またアラブ系と思しき二人の女性部下も陳腐な裸女ブルースリーのようで、美しさは感じられない。それに加え、本作ではイルザが普通に恋愛をしてしまうなど、鬼所長の面影が陰ってしまった。やはりサドばりばりの鬼畜を通してほしかったところ(笑)。 前作からパワーアップした部分はグロさで、処刑や拷問、人体実験シーンはかなりグロい。首ちょんぱ、目ん玉くりだし、セックスさせながら腹上爆発などは見るに堪えないほど。他にもネズミ、アリ、毒クモを使った拷問や耳、乳、尻の整形シーンも奇想天外なグロさ炸裂だ。 グロさはかなりパワーアップしたものの、やはりそれはストーリー性などの中味あってこそのもの。結局本作は得体の知れぬエログロさばかりが目立ってしまい、不快感ばかりが残る後味の悪い作品となってしまった。 登場人物もぱっとしない。イルザ以外ではイルザを恋に落とす米海軍諜報員のアダム・スコット役のマイケル・セイヤーが準主役級だが、一人爽やか系で浮きまくっている。国王シャリフ役はヴィクター・アレクサンダーでただただ気持ち悪く、国王らしい重厚さも悪辣さも感じない。イルザの女性部下二人組サテンとベルベットは先に述べたとおり陳腐な裸女ブルースリー。ヌードになる女性の数もそこそこ多いが、ヌードになる女優のレベルなどたかが知れていると思わせる程度。 唯一評価できる点はラストシーンで、幽閉から助け出された若い王子が豹変して残虐行為に走る描写。結局誰もが残虐性を持ち合わせているのだということを示しており、監督が意図的に描いたのならばなかなか奥の深いテーゼだ。所詮人間はエロスやグロの衝動には勝てないのだ。もし、この場面にもっとインパクトを持たせていれば良作になったかもしれない。 登場する兵器類としてはアエロスパシアルアルエット系のヘリが1機のみ。あとは小銃、拳銃程度で、アクションシーンそのものも非常に稚拙。思い切りストップ状態からフィルムを回し始めるのがミエミエだし、銃に撃たれるシーンも倒れ方も超B級。せめてアクションだけでもと思ったが、見どころはまるでない。 全体にガッカリな出来だったわけだが、あり得ないような衝撃エログロに興味を持つ変人ならば見るのもありかも。興奮度★★★★沈痛度★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) アラブの国王殿下シャリフでは女性を集めたハーレムが作られている。そこの王室護衛長を務めるのはイルザだ。側近のアラブ人女性二人組サテンとベルベットは拳法の達人でもある。ハーレムに立ち入った男を素手で勝負し処刑するほどだ。 その殿下のもとに各地で拉致された3名の美女が送り込まれる。ホリー・アッチャーソンは米チェーンストア王の娘、インガー・リンストロムは映画女優、アメーナ・コルドバは乗馬のヨーロッパチャンピオンだ。3名はイルザのもと殿下に奉仕するための教育を受け始める。そして古い女たちは競売用に売りさばかれることに。また、殿下好みのために耳や胸を整形したり、わざと太らせるものもいる。逃げた娘はバラバラ死体となって帰ってくる。競売では女たちが売られていくが、買ったばかりで歯を抜く買人などもいる。 シャリフのもとには石油の権益を求めて有力商人がやってくる。ウマー氏やアメリカからはカイザー博士がアダムを連れてやってくる。実はアダム・スコットは米海軍の諜報員で、事前に女スパイを送り込んでいた。だが、イルザのもとにはスコットがスパイであることはばれており、さらに女スパイもへそに仕掛けた盗聴器が発覚し、胸を押しつぶしたり眼の玉を抜くなどの拷問を受ける。 カイザー博士らは到着し歓待を受けるが、パーティの最中にカイザーらの目の前で罪を犯した使用人の手首を切り、羊の目をカイザーに食べさせる。だが、その眼は羊ではなく女スパイのものだった。 イルザは正体の割れているスコットをわざと誘惑するが、逆にスコットの男の魅力に踊らされてしまう。一方、カイザー博士は女を拒否したため、少年が送り込まれて困惑する。 また、イルザは新型兵器の開発のため女スパイを使って人体実験を行う。ウマーを殺害するためウマー用の女に仕掛けるための実験だ。女スパイの膣内に爆弾を挿入し、オーガズムに達すると爆発するのだ。実験は成功し女スパイの腹は爆発し、ウマー用の女カイーナの膣に爆弾を仕掛ける。 一方で、イルザは次第にスコットに魅了されていく。だがそんなイルザにシャリフ殿下はスコットを早く始末しろと命じる。だが、イルザはなかなか実行できず、業を煮やしたシャリフ自身がスコットを拘束して毒グモの処刑台にくくりつける。また、イルザはシャリフに罰を与えられ、汚らわしい男の慰みものにされ忠誠を誓わされる。 すっかりシャリフ殿下に嫌気がさしたイルザは女たちの反乱を企てる。スコットを助け出し、地下牢に幽閉されていた本来の後継者セリム王子を担ぎ出してシャリフを退位させようとうのだ。スコットも加わってシャリフ派と女たちの銃撃戦が始まる。サテンとベルベットが死亡し、ようやくスコットはシャリフを追い詰めて捕える。イルザは捕えたシャリフに爆弾を仕掛けられたカイーナをあてがう。カイーナは快楽に浸りオーガスムに達したときシャリフともども吹っ飛ぶのだった。スコットはカイーナを見殺しにしたことでイルザを叱責する。 イルザは新国王になったセリムに媚び入るが、セリムはイルザを自分が幽閉されていた地下牢に幽閉し、嬉々として餌を与えるのだった。
2009年10月03日
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1993 アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ出演者: リーアム・ニーソン、ベン・キングスレー、レイフ・ファインズ、キャロライン・グッドオールほか283分 モノクロ(一部カラー)SCHINDLER'S LIST 【第3弾50万ポイント山分け】シンドラーのリスト スペシャル・エディション DVD検索「シンドラーのリスト」を探す(楽天) スティーブン・スピルバーグの傑作でもあり、今でも感動大作として高い評価を得ている、ナチスのユダヤ人虐殺からの救済劇。オスカー・シンドラーという実在のドイツ人実業家が、1,100名にも及ぶユダヤ人を自社工場で雇用することにより、アウシュビッツ等のガス室送りから救い出したという実話をもとにしたものである。自らの命、財産等を顧みずユダヤ人の命を救い出した行為は、後にイスラエルから「正義の人」として表彰され、本作でも感動的な物語として描かれている。 本作はほぼ全編がモノクロで描かれ、カラーは本編中の赤い服を着た幼い少女とエピローグ部分だけとなっている。モノクロ映像がおどろおどろしいユダヤ人虐殺を過去の凄惨な歴史として認識させる一方で、唯一のカラーである赤い服の少女の結末が衝撃的で、非常に印象深い伏線となっている。 4時間半にもわたる長尺の映画で、ややもすると単調で冗長なシーンになりがちな箇所もあるが、そこはスピルバーグ一流の映像美と編集技術で飽きさせない作りとなっているのは凄い。程よいタイミングでの場面転換、無言と台詞の間の取り方はさすがである。さらに、4時間半の中で小さな起承転結を複数盛り込み、全体として大きな起承転結を持たせるという、視聴者の心の盛り上がりを誘発する技術も卓越している。 それだけに、一人のドイツ人実業家がユダヤ人が何十万と命を落としていく中で、たった1,100人ではあるけれども命を救っていく姿には大きな感動を呼び起こさせる。 ただ、1993年の公開当時はこうしたシンドラーのような人道的偉人の存在は余り知られておらず、全世界の感動と感銘を呼んだのだが、その後各地で第二第三のシンドラーの存在が明るみとなってきており、そういう観点で本作を見るとやや感銘度が薄れてくるのも事実である。 まず、本作公開後に論議を呼んだのが、シンドラーの美徳性である。シンドラー自身はユダヤ人を労働者としてしか見ていなかった、ユダヤ人を救済しようとしたのではなく、結果的にそうなったのだという意見も飛び出した。事実、本作中でもシンドラーが決して完璧な人道的人格者として描かれているわけではないが、若干美化されている印象は拭えない。公開当時は驚きと賞賛もあったが、今となってはもう少し人間くさいシンドラーの描写があったほうが、むしろシンドラー像に共感できたのではないかと思われる。また、シンドラーの反ナチ感情の芽生えや背景描写がもう少しあると、ユダヤ人に肩入れするシンドラーの立場が理解できたのではないかと思う。 イスラエルではかなり早い段階から建国功労者として幾多の外国人を表彰してきたが、本作の公開によって日本のみならず全世界にその名を知らしめる端緒となったという点では偉大な功績と言えるだろう。その後映画化されただけでも、オスカー・シンドラーのほかにイタリア人のジョルジョ・ペルラスカを描いた「戦火の奇跡~ユダヤを救った男~ (2002伊)」や日本人外交官杉浦千畝の「日本のシンドラー杉原千畝物語・六千人の命のビザ(2005日本)」などがある。このほか最近ではドイツ人のジョン・ラーベ(異論はある)やポーランド人女性のイレーナ・センドラーの名が良くあげられるようになった。また、意外にも日本軍(ハルピン特務機関の樋口少将や安江大佐など)が上海租界や満州でユダヤ人保護を行ったことも忘れてはならないところだ。 シンドラーを演じたリーアム・ニーソンは存在感ある演技で楽天家ぶりを熱演。他のユダヤ人たちは目立たぬ役者をあえて配役したのか、それがシンドラーの存在を浮きだたせる効果となっているようだ。街並みや部屋の中などのセット、ユダヤ人の服装も良くできており違和感はない。ゲットーやアウシュビッツなどでの虐殺シーンもそれなりに凄惨な描写があるが過度すぎない程度。ただ、銃殺シーン、特に頭部銃撃シーンはこの手の映画を見慣れない人には衝撃的かもしれない。虫けらのようにユダヤ人を殺すドイツ兵、狙撃銃で猟を楽しむように射殺する士官の姿は、戦時の集団狂気そのものである。また、この種の映画にはお決まりだが、幼い子供たちの虐殺や離別シーンは直視に耐えない。映像をモノクロにしたのはこうした衝撃シーンのショックを多少抑えるためでもあったのだろう。 とにかく映画としての出来は申し分ない。ナチスドイツの過去の歴史を知る上でも、人道的な感動を得るにも欠点らしい部分はないに等しいのだが、先にも書いたが美化され過ぎている感があるのと、余りに完成度が高い分胡散臭いものを感じてしまうのが欠点と言えば欠点か。興奮度★★★★沈痛度★★★★★爽快度★★★感涙度★★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1939年のドイツ軍によるポーランド侵攻が行われ、ポーランドのクラクスの街でも1万人のユダヤ人が住んでいた。ドイツからこの地にやってきたドイツ人実業家オスカー・シンドラーはドイツ軍高官に取り入り、ユダヤ人の琺瑯工場を買い取って一儲けすることを画策する。ユダヤ人の元計理士イザック・シュターンを訪ね、工場買い取りの資金提供者を募り、シュターンに工場経営を任せようと言うのだ。シュターンは乗り気ではなかったが、1941年3月20日にユダヤ人がゲットーに強制移住させられると、その生き残りのためシンドラーに協力することとなる。 シンドラーは募った資金でリポリ通りの琺瑯工場を買い取り、ドイツ軍SSが許可したユダヤ人労働者を安く雇って働かせる。技術者ではないユダヤ人は他の強制収容所に移送されるようになり、シュターンはブルーカードを得るために多くのユダヤ人をシンドラーの工場労働者として登録していく。シンドラーは莫大な利益を得るようになり、秘書を雇って悠々自適の生活を楽しむ。女遊びをしているところに妻が訪ねてくるが、シンドラーは動じることもなく妻は再びドイツに帰っていく。 そんなある日、労働許可証を忘れたシュターンが連行されてしまう。軍幹部にパイプのあるシンドラーはドイツ兵を東部戦線に飛ばすと脅し、何とかシュターンを取り戻すことに成功する。 1942年冬になり、プワシェフに建設中の強制収容所所長としてアーモン・ゲート少尉が赴任してくる。冷徹なゲート少尉は意見したユダヤ人工事主任ヘレン・ヒルシュを射殺する。 1943年3月13日、東部戦線の悪化とともにクラクフのゲットーは解体され、全員がプワシェフの強制収容所に移送される。病院の病人は安楽死され、多くの人々が物置や小屋裏などに隠れるが、ドイツ軍に発見されて銃殺されるか収容所に送られてしまう。シンドラーはその様子を目撃するが何をすることもできない。収容所では酒におぼれているゲート中尉(昇進?)が働きの悪い人を見つけると、お遊びで狙撃銃で銃殺するなど恐怖に満ちている。 シンドラーは自身の工場のユダヤ人も全て収容所に連れて行かれたために、ゲート少尉と面会し「感謝」という名の貢物を渡すことで工場のユダヤ人を取り戻すことに成功する。シュターンはゲート中尉のもとに置かれるが、シンドラーにSS幹部たちへの報酬や裏帳簿を示唆する。 収容所でもユダヤ人が労働に従事するが、ゲート中尉は生産性の悪いユダヤ人を銃殺していく。見かねたシュターンはそうしたユダヤ人を工員と偽ってシンドラーの工場に派遣するよう工作をしていく。シンドラーは黙認しているが、自身の身に危険が及ぶことを危惧していた。だが、ミス・エルザ・クラウスが収容所にいるユダヤ人の両親の解放をシンドラーに頼んだことから、次第にシンドラー自身もユダヤ人保護に目覚めていく。そして、ゲート中尉にも「許す」ことが力なのだと悟し、ゲート中尉にも変化が現れる。ただ、ユダヤ人に偏見を強く持つ中尉は、ユダヤ人メイドのヘレンに恋心を寄せるも、殴ることでしか表現することができない。 収容所にハンガリーからの新入りが到着し、病人が処分されることになる。シンドラーは自身の工場のユダヤ人を保護するが、多くのユダヤ人が列車に乗せられて移送されていく。シンドラーは劣悪な環境の貨車にホースで水をかけてやるのだった。また、子供たちもトラックに載せられ連行されていくが、シンドラーは子供も重要な働き手だとして保護しようとする。さらに、シンドラーはパーティの席でユダヤ人少女にキスしたことから人種再編成法違反として逮捕されてしまう。 いよいよ戦局が悪くなり、プワシュフの収容所も閉鎖されることとなり、全員がアウシュヴィッツに送られることとなる。シンドラーはドイツの故郷に帰ろうとするが、赤い服の少女の遺体を目撃し、思い直す。ブリンリッツに新たな工場を設立し、ゲート中尉にかけあって金でユダヤ人労働者を買い取っていく。あるだけの資金を投入し、850人のユダヤ人を救いだすことに成功する。さらに他の実業家にも話を持ちかけるのだった。 ブリンリッツにユダヤ人労働者を送るが、手違いで女性だけがアウシュヴィッツに行ってしまう。シンドラーはアウシュヴィッツの収容所所長に掛け合ってなんとか貨車に乗せて取り戻す。この際にさらに多くのユダヤ人を連れ帰ることに成功する。ブリンリッツの工場はドイツ軍も手出しできない保護地区と化す。 シンドラーの工場では軍事用品を生産するも不良品ばかりであった。シンドラーは軍事用品を作ってナチに加担することを嫌ったのだ。そのため、シンドラーの資金は底をつき始める。その間際にドイツが降伏。ドイツ兵は立ち去り、シンドラーもドイツ本国に戻ることにする。約1,100名のユダヤ人を救ったシンドラーだったが、もっと多くの命を救えたはずだと後悔する。その姿を見てユダヤ人たちは感謝の言葉を贈るのだった。 戦後、シンドラーは結婚にも事業にも失敗する。だが、1958年にイスラエル政府から「正義の人」として表彰される。シンドラーの死後も救われたユダヤ人は墓参りをするのだった。
2009年09月30日
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2006 ロシア 監督:ミュラード・アリエフ出演者:アレクセイ・マカロフ、アレクサンダー・バルエフ、ヴァシリー・ラノヴォイ ほかOFFICERS: LAST SOLDIERS OF THE EMPIRE/OFITSERY: POSLEDNIE VOINY IMPERII全4巻(98分、101分、98分、99分)全8話 カラー キングダム・オブ・ソルジャーズ KGB特殊部隊 コンプリートBOX / アレクセイ・マカロフ DVD検索「キングダム・オブ・ソルジャーズ」を探す(楽天) ソヴィエト社会主義連邦崩壊前後のソヴィエト諜報組織KGB隊員の活躍を描いた、アクション系ヒューマンドラマ。背景にはベルリンの壁崩壊後、ソヴィエトという国家が失われていく政治的な描写も描かれてはいるが、どちらかというと二人の若いKGB隊員のアクションぶりがメインとなっている。雰囲気的には 1991年のロシア誕生で解体されてしまった恐怖の秘密組織KGBを偲ぶかのような感じで、厚いベールに包まれたKGBの実態と言うよりは、今はなき KGBを隠れ蓑にヒーローを祭り上げているようにも見える。 本作はロシアのテレビドラマで全8話で構成されている。一話での完結性は乏しく、次の話に持ち越すにも中途半端な感じのブツ切り状態。しかも、第1話が 1982年で第2話には1988年、そしてあっという間に1991年と時間が凄い勢いでぶっ飛んでいくので、わけがわからなくなってくる。結局全話見ないと良く分からない、見ても今ひとつなのだが(笑)、帯ドラマとしてはいかがかなという程度の出来。二人の若いKGB士官エゴールとサーシャがアフガニスタン派遣、鉄道ミサイル乗っ取りミッション、アフリカ軍事指導派遣、武器密輸摘発ミッションをクリアしていくのだが、何だか歯が浮くような人物設定に馴染めない。ロシア映画の特徴と言えばそれまでだが、エゴールは将軍の父親を持つエリートで良いところのお坊ちゃん風なのに対し、サーシャは田舎の貧しい出の好青年というベタな設定。それに加え女子医学生ジェーニャの取り合いをするという何とも安直な展開は悲しくなってくる。しかも、エゴールは筋骨隆々と言えどもちょっと太めのデブマッチョで、これがKGBか?と言いたくなる。 まあ、随所に笑い所も盛り込まれているので、爽やかに二人の掛け合いを楽しんで見ればいいのかもしれない。あんまりロシアの政治的背景やKGBという言葉に囚われることなく、単純にアクションと友情ものだと思えばいいのだろう。 内容的にはあまりパッとしないのだが、テレビドラマにしては兵器類がそこそこ出てくる。航空機ではSu-27戦闘機、アントノフAn-24輸送機、ヘリではミルMi-24ハインド、Mi-8ヒップ、UH-1イロコイが登場する。特に2機のヘリは随所に登場するので見応えがある。地上兵器ではT-72戦車やBTR-80 装甲兵員輸送車の姿がある。 全体に出来がよいとは言えないレベルで、KGBらしさはほとんど感じることができなかった。描かれるミッションもKGBならではといった風でもないし、秘密性、スパイ性といったドキドキ感はないに等しい。主人公らも今ひとつで感情移入しずらいし、第二弾はないだろうなと思わせるB級テレビドラマなのであった。興奮度★★沈痛度★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)(第1話)1982年のソヴィエト、クビンカ飛行場。ソヴィエトKGB諜報部隊の隊長イワンらはパキスタンに潜入し、トラックに積み込まれた放射性物質の奪還作戦を成功させる。 1985年モスクワ郊外。ソヴィエト軍オソルギン将軍の息子エゴール・オソルギン中尉はモスクワ軍事通訳大学を卒業し、父から車をプレゼントされる。エゴールは伯父のイワンが隊長を務めるKGB諜報部隊への入隊を希望し、オソルギン将軍はイワンに息子を託す。脳天気で坊ちゃん育ちのエゴールは伯父の所を訪問するが、伯父は部下となったエゴールに厳しく接する。エゴールとペアを組むのは海辺で争いをしたことがある田舎育ちのサーシャだった。どちらかが脱落すると連帯して除隊となる運命だ。 最初は反目し合う二人だったが、格闘訓練教官パドシビャキンのもとでメキメキと力を付け、連帯感と友情が生まれてくる。イワン隊長は二人にコードネームを付け、サーシャはシュラケン、エゴールはスタヴルと名付けられる。 1988年、大尉になった二人はイワンと共にアフガニスタンのパンシール渓谷に派遣される。そこでは空挺作戦が失敗し現地司令官のミハイルが戦死していた。エゴールは狙撃兵と遭遇し、最後は射殺するもなかなか銃を撃つことが出来なかった。キャンプに戻るとそこに若い女性看護兵ジェーニャがいた。二人はすぐさま恋に落ちるが、ジェーニャと軍医がゲリラに拉致されてしまう。サーシャとエゴールは勝手に救出に向かい、ジェーニャを救い出す。ジェーニャは医大に行くために軍隊に入隊したのだという。(第2話)1988年モスクワ。帰還した二人は勝手な作戦実行のため、処分を受けることに。イワン隊長は前途ある二人の引き渡しを拒み、代わりに機密事項警備のテストのために、ソヴィエトの鉄道戦闘ミサイル複合体奪取の特殊任務を与える。「アルアレ」のコードネームの鉄道ミサイルはセルプホフ駅に1回だけ顔を出すという情報のもと、14日間で見つけ出さなければならないのだ。二人はセルプホフ駅の警備隊長ペトレンコ中佐に接近する。エゴールは退役軍人のふりをしてペトレンコ中佐に取り入り、サーシャは構内労働者としてスパイのふりをする。ペトレンコ中佐はサーシャをスパイとして捕まえるが、エゴールがその脱出を手引きする。(第3話)ペトレンコ中佐の素振りからアルアレが来たと知った二人は列車を強奪。ソヴィエト高官の見守る中、見事アルアレの奪還に成功する。 ジェーニャが現地任務を終えて戻ってくる。医大に受かったジェーニャは3人で遊ぶが、エゴールが抜け駆けしてジェーニャと出来てしまう。さらにエゴールは昔の彼女と一緒にいるところを目撃され、ジェーニャは傷つく。サーシャは怒り、訓練で殴り合いををし、ジェーニャにプロポーズする。この事態にイワンは二人をアフリカのサンティラナ共和国に軍事教官として派遣する。3年間の任期であり、二人はジェーニャに待っていてくれと告げて赴任する。 2年後、シリヤエフ大佐のもとで任務についていた二人は、反政府組織に拉致されたソヴィエト人技師らの奪還作戦を命じられる。サンティラナ共和国のアギレラ大統領はソヴィエトからの武器供与が中止になっており、作戦実行は微妙な状態だった。(第4話)シリャエフ大佐は何かを画策しており、アギレラ大統領の弟である国防相アギレラ将軍がクーデターを目論んでいるとの情報を大統領に流す。二人はアギレラ将軍によって騙されて連れてこられたソヴィエト人ダンサーらを発見し、奪還して本国に戻す。その際にサソリのキーホルダーをジェーニャに渡すよう託す。二人はゲリラの襲撃に成功し人質一人が死亡したものの見事にミッションを成功させる。だが、アギレラ将軍は女を奪われたことで激怒し、二人に謝罪を要求してくる。(第5話)中佐に諭されて将軍に謝罪に行った二人だが、サーシャは足を撃たれて負傷してしまう。そのアギレラ将軍は兄の大統領によって逮捕され事なきを得る。そしてシリヤエフ大佐は次なる任務を二人に与える。味方の軍事キャンプに潜入し地雷を仕掛けて警備状況を検証するというものだ。だが、実は本国ではシリヤエフ中佐らの一派が軍事物資横流しをしているとの情報があり、中佐の監視を始めていた。中佐とつながっている高官らは中佐にその情報を流し、中佐は証拠隠滅を目論んでいたのだ。そしてイワン隊長を襲撃し拉致する。 また、クーデターに参加しなかったオソルギン将軍は心臓発作を起こし死去する。 何も知らない二人は基地に潜入して地雷を仕掛ける。だが、起爆させていないにもかかわらず地雷は大爆発を起こし、武器庫が大炎上する。なんとか脱出した二人だったが、帰路途中で反政府共産党ゲリラのマブトによって銃撃され、エゴールがヘリから落下してしまう。(第6話)武器を得たマブトは航空機で官邸に爆弾を落とす。シリャエフ大佐は逃亡し、負傷したサーシャはエゴールを捜索しようとするが死亡したと知らされ、帰国する。ジェーニャはオソルギン将軍の死とエゴールの死を知り落胆する。 サーシャは軍参謀本部情報総局で取り調べを受ける。情報総局こそがシリャエフ大佐とつながっており武器密輸の巣窟だったのだ。サーシャは何か秘密を知っていないか執拗な取り調べが続く。一方、エゴールは生きており、アメリカ軍の警察収容所基地に収容される。(第7話)サーシャは向精神薬を投与され、精神崩壊する。危ういところでイワンが救出に成功する。 エゴールは収容所長ヒットナーのもとで収容されているが、他の囚人バッファローとの決闘で勝利する。だが、根に持ったバッファローがナイフで襲撃し、反撃して殺してしまう。収容所の掟で処刑される運命のエゴールだったが、ポーランド人ドレンコフスキとヒットナーの策略で人身売買されて収容所を脱出できる。エゴールを買ったのは西アフリカベニンのジャック・ケイトという人物で、武器売買の民間人だった。敵対する分離派に武器を売買するゲンリヒ・マイヤーの暗殺を依頼する。そのマイヤーとはあのシリャエフ大佐だった。 一方、解放されたサーシャは諜報部隊も解散したため退職し、田舎の林業に従事する。ジェーニャはすぐにでも結婚したがり、サーシャのもとにやってくる。(第8話)エゴールはシリャエフの情報を本国に報告するため帰国しようとするが、シリャエフが雇ったヒットマンのムコタンバに間違って撃たれて負傷する。1年後、ようやくエゴールは帰国し、コーチやイワンと再会する。すでに身ごもっているジェーニャとサーシャとも再会するが、生活の安定を求めるジェーニャはサーシャを受け入れられない。イワンはすでに民間人の二人に10万ドルづつの報酬を用意し、シリャエフ逮捕の依頼をする。はじめは断っていたサーシャだが、最後の任務だとジェーニャを説得し、ミッションに参加することに。 ベニンに渡った二人はシリャエフのパーティに潜入。商人ストロイエンに化けたエゴールはシリャエフと面会する。そして別に潜入したサーシャとともにシリャエフを拘束し、船でマルタに向かうのだった。
2009年09月26日
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1955 イギリス 監督:ラルフ・トーマス出演者:ジョン・ミルズ、ジョン・グレッグソン、ドナルド・シンデン、ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス ほか95分 モノクロ ABOVE US THE WAVES潜水戦隊帰投せず(DVD) ◆20%OFF!DVD検索「潜水戦隊帰投せず」を探す(楽天) 第二次世界大戦時のイギリス海軍において、実際に行われた水中ボートや小型潜水艦によるドイツ軍艦攻撃作戦を描いたドキュメンタリー風戦争映画。ジョン・ミルズによる主演で、若干の脚色や仮名等の変更は見られるが、概ね史実に沿った作りとなっているようだ。本作で題材となっているのは、「タイトル作戦 (Operation Title)」と「ソース作戦(Operation Source)」の二本で、いずれもイギリス海軍の特殊小型艇を使用した肉薄攻撃作戦である。 タイトル作戦とは1942年10月に実施されたもので、ノルウェーに停泊中のドイツ軍ポケット戦艦テルピッツを攻撃するため、2隻の小型水中ボート「シャリオット(Human torpedo)」が漁船"Arthur"に括り付けられて出撃したもので、荒天により作戦は失敗し、"Arthur"を自沈させ10名のフロッグマンがノルウェー海岸に上陸。うち1名が射殺されるも9名が中立国スウェーデンに逃げ込んだ作戦である。 ソース作戦は1943年7月に実施されたもので、超小型の潜水艦X-class submarine(HMS X5, X6, X7)の3隻がノルウェーに停泊中のテルピッツを攻撃し、損傷を与えて6ヶ月間戦列を離れさせた作戦である。Xクラス潜水艦は4人乗りで、魚雷攻撃するのではなく、時限式機雷を投下して離脱するためのもののようだ。 いずれもかなり特殊な兵器と任務であり、「生き残った二人(1955 英)」で描かれるカヌー攻撃も含めて、何とも小賢しいことをやっていたものだと感心する。それだけ、ドイツ海軍の軍艦やUボートに手を焼いたということなのだろう。 ジョン・ミルズはこの特殊作戦の隊長(中佐)役で、ちょっと男気のある士官として好演技を見せている。このほか大尉、下士官、水兵が登場するが、比較的淡々と物語が描かれていくので、作戦実行に至るまでの過程や、作戦実施時の緊張感や悲壮感というものは余り伝わってこず、ヒューマンドラマ的要素は薄い印象。 アクションシーンも水中ボートや超小型潜水艦の現物を使用するなどリアリティはあるものの、爆発や攻撃シーンなどの派手さはほとんどない。戦争アクションとしては期待はずれの部類か。このほか、超小型潜水艦を曳航する潜水艦やテルピッツ役の水上艦も登場するが、ほとんど全景が映らないので何者かは不明。 全般にレアな題材を扱っているという点では興味深いが、インパクトや盛り上がりという点では今ひとつ。ドキュメンタリー的な雰囲気の強い映画であった。水中ボート Xクラス潜水艦興奮度★★沈痛度★★★爽快度★★感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) イギリスはドイツ軍のUボートや戦艦等による通商破壊破壊活動に手を焼いていた。そんな中、海軍フレイザー中佐は自分の潜水部隊を活用した作戦を提案する。それは二人乗りの小型水中ボートに乗って敵艦の側舷に爆雷を仕掛けるというものであった。部下のアレック・ダーフィ大尉、トム・コーベット大尉をはじめ、スマート、アバクロンビーらは100mもある潜水脱出タンク訓練や、潜水訓練など日々訓練に励む。だが、一向にレイダー提督は作戦実施命令を下さない。そこで、フレイザー中佐は極秘裏に水中ボートでレイダー提督の乗る船に爆雷を仕掛ける。何食わぬ顔でレイダー提督と話をしていた時に爆発が起き、その優秀さを知らしめるのだった。 いよいよ実戦となり、最初の作戦は漁船「INGEBORD」の喫水線下に水中ボートをくくりつけ、ノルウェーのフィヨルド内のドイツ軍戦艦テルピッツを攻撃するというものだった。ダーフィ大尉以下8名は漁船に乗り込んで出撃するが、悪天候で水中ボートが離脱しかかる。修理中にドイツ軍パトロール艇の査察を受け、なんとかやり過ごすも次の荒天でついに水中ボートを失ってしまう。大尉は作戦を断念し、漁船を放棄、ノルウェーに上陸する。途中でドイツ軍兵と遭遇し一名の兵が戦死するが、なんとか中立国スウェーデンに辿り着き、帰国できる。 次の作戦はXクラス超小型潜水艇を使っての作戦だった。フレイザー中佐らは操作の訓練を実施し、再びノルウェーの戦艦テルピッツ攻撃に出陣する。3隻の潜水艇x1、x2、x3は潜水艦に曳航され、ノルウェー沖に到達する。まずコーベット大尉ら4名がx3に乗り込む。だが目の前に浮遊機雷が接近し、必死に足で蹴ってそれを遠ざける。続いてx1にフレイザー中佐、x2にダフィ大尉が乗り込んで出撃する。3隻は徐々に湾内に侵入し、防潜網に到達する。x1のフレイザー中佐は漁船下の防潜網の隙間や防潜網の下を縫って侵入。x3のコーベット艇は潜水夫を外に出して防潜網を切断する。x2のダフィ艇は着底してしまったうえ、ドイツ軍駆逐艦と接触して潜望鏡から浸水を始める。ダフィ大尉は味方の攻撃が完了するまで着底して待機することを決意する。 戦艦テルピッツに接近したx1は潜望鏡を発見され、爆雷攻撃を受け再び潜水してテルピッツに接近する。x3は両舷の機雷を切り離して投下。だが、不具合が生じたために艦を着底させたままコーベット大尉ら4名の乗員は潜水具を装着して浮上し、テルピッツの乗員によって捕虜となる。またフレイザー中佐のx1も機雷を投下するが機関が故障したためにテルピッツ付近に浮上し、中佐以下4名が捕虜となる。 8名の捕虜はテルピッツの艦上で尋問を受けるが詳細をはぐらかしあと10分に迫った爆発時刻を待つ。そして、テルピッツがエンジンを発動しようとしたその瞬間機雷が爆発。テルピッツは浸水を始める。してやられたテルピッツの艦長はフレイザー少佐に賛辞を送る。 テルピッツから退船させられるフレイザー中佐らは付近の海上で再び大きな爆発音を聞く。それは浮上できなかったx3の自爆だった。海上に浮上するx3の残骸を見ながらフレイザー中佐らはテルピッツを後にする。
2009年09月22日
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2008 アメリカ・イタリア 監督:スパイク・リー出演者:ラズ・アロンソ、デレク・ルーク、オマー・ベンソン・ミラー、マッテオ・シャボルディ、ヴァレンティナ・チェルヴィほか160分 カラー MIRACLEATST.ANNA 第二次世界大戦時の1944年秋、イタリアのトスカーナ地方。アメリカ陸軍第92師団所属の黒人兵4名が迷い込んだイタリアの村で起きる奇跡を描いたサスペンス風ヒューマンドラマ。ムッソリーニが失脚した後のイタリアにはドイツ軍が駐留しており、アメリカなどの連合軍はドイツ軍に攻勢をかけていた。その部隊の一つがアメリカ陸軍第92師団バッファロー・ソルジャーで、黒人兵で編成される特殊な部隊だった。 ストーリーは1983年のアメリカニューヨークで起きた不可解な殺人事件を発端に、1944年イタリアのトスカーナの村で起きた奇跡を邂逅し、謎解きしていく仕立てになっている。第92師団所属で最前線で孤立してしまった4名の黒人兵を中心に描かれるが、不思議な力を持つイタリア人の少年アンジェロが重要なキーマンとなっている。 原作は実際に第92師団従軍の叔父を持つジェームズ・マクブライトの小説で、本作の脚本も手がけている。ストーリーそのものはフィクションだが、実在の黒人師団の虐げられた実態や、1944年8月12日に起こったイタリアのセントアンナ教会(サンタンナ・ディ・スタッツェーマ)の大虐殺、サンタ・トリニータ橋の破壊など史実も盛り込まれて構成されている。監督は「マルコムX」などを手がけた黒人監督スパイク・リー。戦争系映画は初めてだそうで、並々ならぬ意欲を感じる。 全般的にはサスペンス的な雰囲気が強いのだが、宗教的なシリアスドラマ、黒人差別を風刺した社会派ドラマといった側面も持ち、かつ戦争アクションとしても力が入っている。正直、見ている途中も観終わった後もジャンルを特定することが難しかった。結果、何だかすっきりとしないもどかしさと、ストーリー的にもいくつかの理解できない疑問点が残ってしまったのが残念。 その要因の一つとして製作者が描こうとしたテーマの難解性があるだろう。というのは、本作はキリスト教的な善悪と贖罪といったものが「奇跡」として描かれたり、黒人人種差別がちょっとした隙間に繊細に描写されているのだ。キリスト教のことは良くわからないのだが(汗)、キリスト教的な奇跡というのは「神」もしくは敬虔な信徒によって起こされるという人為的な側面が強い印象があり、自然物を万神とし奇跡は自然が起こすとする日本的な感覚からすると違和感は拭えない。何やら強引なこじ付けにも思え、どうもストーリーで起きる「奇跡」がすっきりしないのだ。また、黒人人種差別の描写も、日頃から人種差別に疎い日本人にとってはリアル感が薄いし、細かい描写もかなり見落としてしまっている感がある。本来ならば些末な差別的描写が積み重なることで、人種差別への怒りと絶望が昇華してくるように企図されているのだろうと思うが、製作側の意図ほどそれを感じることができなかった。 もう一点としては小説に忠実だったせいか、サスペンス的な作りに固執した印象が強く、ストーリー全般に説明不足が感じられたことがある。ただでさえ上記のように日本人にとっては難解であったのに加え、登場人物の性格、行動等が非説明調だったため、途中や最後の「奇跡」を理解するのに時間がかかってしまった。キリスト教徒や黒人であれば素直に理解できるのかもしれないが、私にはかなり難解であった。そういう意味では、本作から受ける感動は生きてきた環境や人生経験の差によってかなりの温度差があるのではないだろうか。私のようなバリバリの日本人にとってはやや受け容れ難い側面があるかもしれない。 また、作品のキーとなるシンボルである「プリマヴェーラの彫像」や「眠る男の横顔」の意味も非常に難解。意味深なシンボルで重要な意味があるように思えるのだが、結局私には理解できなかったのか、作品中で大きなウエートを占めているようには思えなかった。このあたりも消化不良感として残ってしまった。 小説が元になっているだけあって、4名の黒人兵はそれぞれ個性的に設定されている。主人公のネグロンは無線手の伍長。リーダーはスタンプス二等軍曹で真面目な性格。カミングス三等軍曹は女好きで即物的。「チョコレートの巨人」トレイン上等兵はストーリーの転機を創出する最も神がかった存在だ。それぞれ個性的な俳優を配し、演技としては申し分ない。ただ、前述したとおりもう少し性格付けがあっても良かったかも。また、イタリア人女性レナータは妖艶な人妻で、イタリア人のヴァレンティナ・チェルヴィが演じ、美乳ヌードも披露する。もう一人の主人公イタリア人少年アンジェロは本作デビューのイタリア人少年。まあまあの演技だが、奇跡に関係するストーリーからするともう少し神秘的な雰囲気があっても良かったところ。 本作で良かったのは登場する米独伊人がそれぞれ自国語を話している点。アメリカ映画は英語一辺倒になりがちだが、きちんと言語を使い分け俳優もそれぞれの国から選ぶあたりは監督のこだわりを感じる。また、ロケ地もイタリアで行っており、これまたこだわりだ。 さて戦闘シーンだが、本作の戦闘シーンは全体の三分の一程度だがなかなか秀逸な部類に入る。15禁がかかるほどリアルでグロいシーンもあるし、機銃弾、迫撃砲などの着弾シーンも良くできている。基本が歩兵の渡河突撃と市街戦なのでスケール感には乏しいが、リアルさは及第点だ。ただし、本作のストーリーやテーマ性から言うと、そこまでリアルな映像が必要だったかというといささか疑問は残る。主要な人物がグロい死体になっていくのは直視に堪えないし、そこまでする理由はない気がする。どちらかというと奇跡と言うファンタジー的な要素を描いているのだから、「死」の表現もオブラートに包んだ表現の方が内容に没頭できたのでは。 なお、登場する部隊としては米陸軍第92歩兵師団のほか、独軍第16SS装甲擲弾兵師団ライヒスフューラー、イタリアレジスタンスが出てくる。イタリアレジスタンスはアメリカ軍に情報提供する一方、必ずしもアメリカ軍と同調していないあたりの描写が興味深い。兵器類はほとんど登場せず、ジープ類のソフトスキンと迫撃砲、野砲程度。 全般に監督の意欲は感じられるが、思い入れが強すぎたのか、若干肩の力が入りすぎの感。先に述べたテーマ性の難解さもあいまって、思ったほど感動が得られず、作品にのめりこむことができなかった。ややマニアック系の作品だと言えようか。 興奮度★★★沈痛度★★★★爽快度★★感涙度★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1983年のニューヨーク。一人の老いた郵便局員が切手を買いにきた男を射殺する。郵便局員の名はヘクター・ネグロンと言い、犯行の理由も不明で口を閉ざしている。だが、逮捕されたヘクターの部屋からイタリアの橋についていた彫像プリマヴェーラが発見され、新聞記者の問いに重い口を開き始める。 1944年の秋、イタリアのトスカーナで米陸軍第92歩兵師団はドイツ軍と対峙していた。92師団は黒人で編成された部隊で、指揮官は白人のため黒人人種差別や偏見が満ちていた。ヘクター・ネグロン伍長の小隊は前衛偵察のため渡河作戦を実行するが、瞬く間にドイツ軍の機銃や迫撃砲の餌食となる。対岸にたどり着いたのはヘクター伍長のほかサム・トレイン上等兵、オーブリー・スタンプス二等軍曹、ビショップ・カミングス三等軍曹の4名しかいなかった。リーダーとなったスタンプス二等軍曹は味方砲兵隊に援護射撃を頼むが、白人指揮官の中隊長(大尉)は信用せずに見捨ててしまう。4人は完全に孤立し、ドイツ軍支配地のイタリアの村へ侵入しるしかなかった。 トレイン上等兵は大男だが、純粋な信仰心を持つ変わり者で、破壊された橋で拾った彫像の頭を持ち歩いている。トレイン上等兵は砲撃された廃屋で倒れていたイタリア人の少年アンジェロを助け出し、連れ歩くようになる。アンジェロは見えない友達と話をし、神秘的な力を持っている。トレインのことを「チョコレートの巨人」と呼んで慕う。 4人はドイツ軍の目を盗んでトスカーナの村にたどり着き、ファシスト党員の家に食料を求めて入る。家には夫が出征している人妻レナータがおり、英語を話すことができた。レナータらは4人を匿い世話をするようになる。無線手のヘクターは壊れていた無線機がアンジェロによって直ったのを見て、次第にアンジェロの力(奇跡)を信じるようになる。 直った無線で本隊から、ドイツ軍の総攻撃の情報を仕入れるため捕虜を取れとの指令が届く。白人の命令に従おうとするスタンプス二等軍曹だが、カミングス三等軍曹は本国などで経験した黒人人種差別のことを思い、指令に従うことに拒否反応を示す。イタリア人は黒人に無頓着で、彼らは今黒人ではなく一人の人間であったのだ。 そんな折、イタリア人パルチザングループのペッピらがドイツ兵の捕虜を一人連れてやってくる。捕虜を欲しがる黒人兵と反目しあうが、捕虜の尋問のために数日貸し出すことを認める。アンジェロはそのドイツ兵と顔見知りのようで、ドイツ兵は「走って逃げろ」と囁くのだった。その光景に不審を感じたヘクターはアンジェロから真実を聞き出す。実はアンジェロはドイツ軍SS親衛隊によるセントアンナ教会の大虐殺に巻き込まれており、そのドイツ兵によって逃がされていたのだ。その結果ドイツ兵も逃亡せざるを得なくなり、ドイツ軍はドイツ兵の捜索を行っていた。さらに、アンジェロはパルチザンのうちの一人ロドルフォにひどく怯えていた。ヘクターはロドルフォが怪しいと警告しに行くが、時遅くドイツ兵捕虜は殺害され、ロドルフォは逃亡する。ロドルフォはドイツ軍の手先だったのだ。 スタンプスは密かにレナータに惚れていたが、女好きのカミングスがレナータと寝てしまう。怒ったスタンプスはカミングスと取っ組み合いになる。 捕虜の尋問に米軍の白人士官ノークス大尉がやってくる。だが捕虜はすでに死亡しており、大尉は激怒する。さらにアンジェロを連れていくとするトレイン上等兵を叱責し、黒人のバードソン中尉に引き離すよう命じるが、トレインは逆に中尉の首をつかんで宙づりにする。宙づりにされた中尉の横顔は村に伝わる「眠れる男の横顔」だった。伝説では眠れる男が起きた時、ドイツ軍は去っていくとされていた。 大尉らがジープで去っていこうとしたときドイツ軍の総攻撃が始まる。大尉らのジープは木っ端みじんに吹き飛ぶ。スタンプスらとペッピらパルチザンは必死の反撃を試みるが、多勢に無勢で村人たちも倒れていく。まずトレイン上等兵が敵弾に倒れ、カミングス三等軍曹に彫像を託す。だがカミングスも倒れ、逃げていたレナータや父親も死亡する。ペッピも死亡し、残ったスタンプス二等軍曹も奮闘するがついにドイツ兵に囲まれて死亡する。唯一ヘクターだけが生き残るが、ついにドイツ兵に囲まれる。だが、その時一人のドイツ軍将校がやってきてヘクターの命を救い、「自分の身を守れ」とルガー拳銃を渡して去っていく。アンジェロも生き残った。 ニューヨークの郵便窓口でヘクターがルガー拳銃で撃ったのは移民してきたロドルフォだった。40年経ちようやくロドルフォの罪を裁いたのだ。だが、ヘクターは殺人の罪で重罪は免れなかった。ところが、ヘクターは誰かの助けによって保釈金を支払い自由の身となる。そして保釈金を支払った男の元に連れて行かれる。そこにいたのは、戦後成功したアンジェロで、二人は再開し抱擁するのだった。
2009年09月15日
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今週土曜日にフジテレビ系で「戦場のメロディ」というドラマをやるようです。 フィリピンの戦犯を慰問した渡辺はま子さんの話のようです。終戦記念日ではなく、この時期にやるのは珍しいですね。 ところで、精神的ストレスのため買い物でストレス解消に走ってしまい、ちょっと最近やばいほどの金欠。冬のボーナスまで極度の節制をしないといけないようです。ただでさえ、ウエストが激やせしているのに、さらに食費で削るしか・・・。もう財布持ち歩くのやめようかな(笑)。
2009年09月10日
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日曜日に、米陸軍の黒人師団第92師団を題材にした映画「セントアンナの奇跡」を金沢まで行ってみてきました。富山でも11月に公開するそうですが、待ち切れなかったので、金沢まで車を飛ばして行ってきました(笑)。 映画館は駅前のビル、フォーラスの中にあるのですが、映画を見ると3時間駐車料金が無料になるので、ついでにお洋服を物色してきました。おかげでまた散財・・・。やばい今年は相当服に金かけてる・・・そろそろ自制しないと破産だ! さて、映画の方ですが、うーむ・・・まあまあの出来かな。内容的には結構難解で、どうもすっきりしない。ただ、戦闘シーンはなかなか派手でグロかったです。 詳細は後日レビューに書きます。 それにしても、毎度一人で映画館は寂しいですねえ。誰か一緒に行ってくれる「おねえちゃん」はいないかなあ(汗)。
2009年09月08日
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2008 日本 脚本・演出:野伏翔 舞台監督:工藤静雄 制作:石村昌一出演者:石村とも子、山田健太、齋藤ヤスカほか120分 カラー 靖國神社・奉納野外劇 俺は、君のためにこそ死ににいく(DVD) ◆20%OFF!DVD検索「靖國神社 奉納野外劇 俺は、」を探す(楽天) 2007年に公開された映画「俺は、君のためにこそ死ににいく(2007)」の野外劇を撮影し、DVD化した作品。石原慎太郎の原作を演劇版に若干修正し、2008年8月1日から5日に靖国神社遊就館前特設野外ステージで上演されたものだそうだ。演じているのは夜想会という劇団で、富屋食堂の鳥濱トメ役には石村とも子が起用されている。 この劇団過去には「同期の桜」も奉納野外劇を上演しており、もしや・・・右傾か?とも思ったが、調べてみたら原田大二郎とか川上麻衣子なんかも参加しているまともな団体だったようだ(汗)。 演劇用にシナリオを制作したと言うことだが、内容、展開ともにほぼ全編映画バージョンと同じと言って良いだろう。映画版と異なる脚色としては国防婦人会?のお笑いシーンくらいか。それくらい、石原原作に忠実に演じられていると言っても良い。従って内容的なコメントについてはこれ以上言うことはない。 ただ、本作は演劇を撮影してDVD化しているうえ、撮影日はひどい雷雨で映像的にはちょっとひどい状態(笑)。演劇はやっぱり生で見るべきものだと思うので、生の臨場感はDVDではなかなか得られないし、どうしても映像としては格落ちの感がある。演劇を映像として評価するのは余りに酷だとは思うが、一応映画レビューなので・・・。今後も上映する予定があるそうなので、機会があれば生で見てみたいと思う。 さて、本作は演劇なので背景やセットといった部分では映画とはまるで違う。背景スクリーンに特攻シーンなどの記録映像を投影させたり、蛍の光をライトで演出させてみたりと工夫がなされているが、主なセットは机と椅子だけ。あとは役者の演技力でそれをカバーし、人の熱情を肌で感じさせるわけだが、さすがに舞台役者だけあって、演技からひしひしと伝わってくるものがあるのは凄い。演劇ならではの過剰な表現や演出も随所に見られるが、見事にストーリーの中で活かされている。ただ、富屋食堂の長女役だけは・・・舞台女優特有の立ちと走りが妙に引っかかった。何か変(笑)。 まあ、演劇をDVDで見ること自体邪道なわけだが、是非とも生で見てみたいと思わせる作品であった。余談だが、当日は雷雨で舞台の後で雷光が度々光っている。これもまた、靖国の魂が共鳴しているかのような演出にも見えてくる。興奮度★★★沈痛度★★★★爽快度★★感涙度★★★
2009年08月23日
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2007 台湾・アメリカ 監督:アン・リー出演者:トニー・レオン、タン・ウェイ、ワン・リーホン ほか158分 カラー LUST CAUTIONラスト、コーション スペシャルコレクターズエディション(DVD) ◆20%OFF!DVD検索「ラスト、コーション」を探す(楽天) 第二次世界大戦時の上海・香港を舞台に、中国人女学生の主人公が日本と接点の強い特務機関員を暗殺しようと接近するが、次第に男女の情愛に流されていくというスパイもの。濃厚なセックスシーンを交えた恋愛ヒューマンドラマとなっているが、背景には抗日活動や泥沼の中国内紛があり、社会派ドラマとしての視点も多少は感じられる。 本作は張愛玲の原作を映画化したもので、主役の女性スパイは一説に寄れば鄭蘋茹(テン・ピンルー)をモデルにしているとも言われる。だが、かなりの部分で創作されているようなので事実上フィクション映画と言えるだろう。 いわゆる日本軍が事実上支配した上海を主たる舞台としているため、抗日や反日などのひどい描き方がされているかと思いきや、そうでもない。確かに図々しそうな日本兵や脳天気な日本人も登場するが、悪玉というほどでもない。主人公らの悲惨な人生の背景には日本軍の上海占領があるのだ、と自虐史観的に見るのも一興だが、むしろ中国の内紛や覇権争い、エゴイズムが如実に描かれていると言った方がいいだろう。主人公らはいわゆる蒋介石の国民党派スパイに属するが、敵対するのは親日派の南京政府汪兆銘(汪精衛)の重臣だ。抗日活動と銘打ってはいるが、事実上の内紛であり、本作には中国共産党がほとんど登場しないものの、実際には三つ巴の骨肉争いが続いていたというのが実情だ。むしろ日本軍による上海進出より遙か以前から中国国内の凄惨な権力争いはあったのであり、むしろその行為そのものが列強の進出を促したのだ。 さて、本作は中国映画にしては過度な中国人美化や歴史捏造が余りないなと思ったが、実は監督は台湾人だった。なるほど、だから国民党が主役なのだな。赤軍や共産党がまるで出てこないのはちょっと違和感があるし、中国人を鬼畜以下としか見ていない英仏米の共同租界の描写も欲しかったところだが、まあこれはこれでいいかもしれない。 興味深かったのはやはり中国人気質の描写だ。話の展開にいささか短絡性を感じるのは、中国人の思い込みや気性の激しさが現れているからだろう。良く言えば行動的、情熱的とでも言うのだろうが、反面残虐性や強欲さとなって現れている。 また、抗日活動と言えば最近では日本軍の悪事に対する美化の代名詞のようになってしまっているが、実際はテロ行為そのものなわけで、現代社会だったら絶対に許されるべき行為ではない。抗日行為と呼ばれた裏でどれだけの不正な殺人、掠奪、裏切りが行われたかを知る上で、本作は興味深い描写が多々見られる。どちらが正しいと言うつもりはないが、日本人との正義感、道徳観の違いを大いに感じるのだ。中国の正義感では嘘、裏切りはさほど重視されない。現在の中国政府を見ればわかるとおり、大義のためならばどんな嘘や裏切りも必要悪になっていくのだ。そう言う意味では、主人公のチアチーがスパイ活動のために処女を捨てるのも、誰も止めようとしないのも、日本人にとってはかなりの違和感を感じるはずだ。 ストーリー全般としては比較的良くできている。若干長尺なために、冗長感は否めないが、美しい映像と音楽でそれをカバーしている。主役のタン・ウェイ、トニー・レオンの演技も素晴らしく、全編に渡る目力演技は斬新だ。視線と目の感情表現で次の展開を読ませるあたり、ただ者ではない。体を張った命がけのスパイ行為の中、次第に男女の情と肉欲に翻弄されていく過程も良くできている。分かり切った展開でありながら、二人の目の表情が変わっていくのが手に取るようにわかるのだ。ただ、スパイ行為そのものが学生のお遊びの延長だったり、作戦が稚拙だったりとやや間抜けな設定になっているため、せっかくの演技に深みを与えることが出来ず、感情移入しづらかったのは減点要素。 また、何と言っても本作の目玉はセックスシーンか。新人女優タン・ウェイの脱ぎっぷりも見事だが、あの手この手の斬新な体位にも驚かされる。ただ、前戯が余りないのと(笑)、直接的すぎる表現はいささか官能性に乏しいか。むしろ行為に至るまでの過程を濃密にした方が効果的だったか。日本人ならやっぱり日活好み?(笑)。なお、タン・ウェイの裸体は黒木瞳似でやや貧弱。脇毛は黒木香(爆)。 全般に見れる部類の映画ではあったが、思ったよりも社会派の切り口が甘いのと、中ダレした部分があるために大作とまでは言えないレベル。結局、見終わった後に語るべき内容がなく、「裸」の話題性しか残らないのだ。中国人、台湾人にとっても今ひとつ乗り切れない内容だったんじゃないかな。 興奮度★★★★☆沈痛度★★★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 南京政府汪精衛の特務機関長易(イー)夫人のもとで麦(マイ)夫人、馬(マー)夫人らが麻雀をしている。易が家に戻ってきたのを見て、マイ夫人は中座し喫茶店から二番目の兄宛に電話を入れる。作戦の開始の合図だ。 4年前、日本軍の進出から香港に逃れてきた女学生王佳芝(ワン チアチー)は、女友人とともに同じ大学生のクァンに演劇部に誘われる。クァンは抗日活動に興味を示しており、抗日劇を上映することで募金を集めようというのだ。チアチーは主演に抜擢され、上演は好評のうちに終わる。 クァンはもっと抗日活動に参加したく、兄の知人ツァオが対日協力者の易(イー)のもとで働いていることを知り、彼を使って接近し暗殺することを計画する。大学の演劇仲間らはその行動に賛同し、チアチーが貿易商麦の夫人役としてツァオの紹介でイー夫妻に接近する。イー夫人はすぐさまマイ夫人のチアチーを気に入り、チアチーは度々イー家に出入りするようになる。だが、なかなかイーには接近することができなかった。 ようやく洋服の仕立てを見るという名目で、チアチーはイーと二人きりになることができる。イーは食事の後チアチーの家に立ち寄るが、慎重なイーはあと少しのところで帰ってしまう。家の中で銃を持って待機していたクァンらは落胆するが、次の機会はきっと性交に至るだろうとして、処女のチアチーは唯一性経験のあるリャンと性交の練習を始める。だが、イーは上海に戻ってしまうこととなり、彼らの作戦は無駄に終わった。だが、その時家にツァオがやってくる。全ての策略を知ったツァオは恫喝に入るが、クァンらはツァオを殺害してしまう。 散り散りになった3年後、チアチーは上海の叔母の元で細々と暮らしていた。クァンと再会したチアチーは3年前自分たちの子供じみていた行動が全て国民党に監視されており、後始末も国民党がやったことを知る。クァンは国民党のスパイ工作員呉(ウー)のもとで活動しており、チアチーに再びマイ夫人としてイーと接触するよう頼む。 特務機関長になったイーと再会したチアチーは、ついに別宅でイーと性交に及ぶ。半ば強制的に犯されたチアチーはイーの信頼を得ていく。イーはゲリラの拠点を急襲し、組織も危機感を抱き始める。チアチーやクァンは早期の暗殺を要望するがウーはチアチーに略取された兵器の行方を追うように指示する。しかし、チアチーは精神的にも肉体的にも限界に近づいていた。 料亭で密会したチアチーはイーに手紙をハリド・S・ウディンに届けるよう頼まれる。ウーらは手紙を開封するが一枚の名刺が入っているだけだった。ハリドの店に手紙を届けると、店主から宝石の指輪を差し出される。イーが密かに注文していたのだ。イーの気持ちに心が揺れるチアチーは6カラットのダイヤを選ぶ。 いよいよ作戦決行の時が訪れ、麻雀を中座したチアチーはクァンに電話を入れ、イーと落ち合う。そして宝石店に向かうが、そこが暗殺舞台となるのだ。イーの気持ちに感極まったチアチーはついに「逃げて」と暗殺を暴露する。一目散に逃げるイー。チアチーやクァンらは一網打尽にされる。秘書の張はチアチーらの素性を知っていたがイーには知らせていなかったのだ。イーは苦渋の顔でチアチーらの処刑書類にサインをする。そして採石場でチアチーらの処刑が実施される。
2009年08月19日
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