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1941 東宝 監督:熊谷久虎 陸軍省・鉄道省検閲 後援:鉄道省・陸軍報道部出演:丸山定夫、原節子、藤田進ほか約107分 モノクロ タイトルはぱっとしないが、意外になかなか面白い映画である。若き原節子が脇役で登場し、主役の丸山、藤田の掛け合いは笑いあり、喧嘩あり、涙ありのヒューマンドラマとなっている。、映画は陸軍省後援で、すでに勃発している日中戦争への招集など戦時下の緊迫感はあるものの、製作年代が1941年と第二次大戦開戦前夜であるため、まだほのぼのとした雰囲気も残している。この後の映画では急速に失われていくストーリー性や人情・喜怒哀楽が残されており、戦前映画の中では出来の良い方だと言えよう。 「指導」とは機関車の機関士が、陸軍兵士に機関車操縦技能を指導することから来ており、中国大陸前線の機関車で活躍させるべく、軍人機関士の急造が行われている事がわかる。 指導役の老機関士(丸山)の演技はうまいのかへたのなのか、実に独特。ヘラヘラ笑いにフンという意地っぱりぶりが妙に気になる。今で言えば人情味厚い意地悪じいさんと言った感じか。また、兵士(藤田)も堅い演技でぎこちない。これがまたこの映画のコミカルさとシリアルさを引き立てている。原節子はすでに大女優の風格さえ感じる演技。先の2名との奇妙な掛け合いが面白い。 映画中では本物の蒸気機関車「C58」が登場し、その操車風景が頻繁に写される。缶焚き、操車、その訓練など鉄道マニアには興味深いのではないだろうか。さらに、見物なのは「C58 218」「C58 217」の2台が併走し、抜きつ抜かれつのチェイスを繰り広げるシーン。複線並列の線路を併走するのも珍しいが、撮影の技術もたいしたものだ。また、雪降る中を疾走する遠景のシーンはどうやら特撮のようだ。カット数は多くないがなかなか秀逸な特撮と見た。なお、撮影は千葉県周辺で撮影されたようで、「ちば」駅のシーンが登場するほか、銚子の地名が出てくる。 このほか、驚いたのはこの時代において、すでに秒単位のスケジュール管理がなされていること。運行技術による順番競争も行われており、先般JR脱線事故の原因の一つともされた、過度なスケジュール管理の初源はすでにここにあることがわかる。 ラストシーンは出征シーンとなるが、ごく自然のシチュエーションながら涙が出る。時代のリアリティを感じるが故、余計なのだろう。見送る側の悲しみも良く表現されており、数年後には到底作る事が出来なかっただろうシーンである。 興奮度★★沈痛度★★★爽快度★★★★感涙度★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 蒸気機関車の老機関士瀬木(丸山)は定年まであと3年となった。しかし、最近では陸軍兵士に機関士訓練を施す「指導役」が与えられず、不満を感じている。区長に直談判したところ、最近妻を亡くし、3人の娘を抱える身を案じての配慮であったが、息子がいない瀬木にとって唯一のご奉公だとの強い要望で、ついに「指導役」が回ってくる。 童心に帰ったようにワクワクと期待を膨らませる瀬木は、やってきた新兵の中から自分の指導する佐川新太郎二等兵(藤田)を見つける。佐川は母子家庭育ちの真面目な青年であった。瀬木は佐川をかわいがり、なけなしの金を叩いて機関教本を買ってあげるなど、時に厳しく、時にやさしく指導していく。さらには、娘の婿になどという夢想まで始める。 一方、機関士田町のもとには大学出の二等兵草野がつく。下士官などは大学出の草野につらく当たるが、田町は優しく接する。 短期育成のため、機関士訓練のほか学科学習などで佐川も草野も眠る暇のないほどハードなスケジュールをこなしていく。しかし、疲労と眠気、さらには瀬木らの過度な期待によるプレッシャーに次第に負け始める。草野は疲労のあまり汽車から転落するなどもあり、運行技術の競争でも下位に沈み、佐川、草野は落ち込んでいく。それを瀬木はなぐさめるのだった。 訓練も進み、技術も大分上達した頃、佐川に帰隊命令が出る。いよいよ出征かと気をもむ瀬木だったが、面会も許されず、何の音沙汰もなく数ヶ月が過ぎていく。 突然、佐川が瀬木のもとにやってくる。出征が決まったというのだ。瀬木の家で祝宴をあげ、佐川は出征していく。佐川を乗せた機関車を娘達、瀬木らが涙ながらに見送るのだった。
2005年11月17日
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年末にかけてDVDの発売がラッシュとなりますが、ちょっと出遅れた感があるのですが「トップガン スペシャル・コレクターズ・エディション MA-1 BOX(初回限定生産・5000セット)」が12/22に発売です。 トップガンのDVDは当たり前ですが、5000セット限定でアルファ社製のMA-1フライトジャケット(特製パッチ付き)にヘルメットバッグ付きで定価52,290。欲しいです・・・ このほか、年末にかけての戦争映画DVD発売情報を更新しました。 この中で、お勧めなのは01/27発売の東宝「独立愚連隊西へ」「独立愚連隊」「血と砂」を含んだ「岡本喜八~SOLDIERS~ 岡本喜八 戦場編 6枚組 DVD-BOX」、12/23発売の東宝「太平洋の鷲」「連合艦隊司令長官山本五十六」「加藤隼戦闘隊」です。いずれもビデオにはなっていましたが、DVDになるのは初めてかな?。 今年上映の「亡国のイージス」「戦国自衛隊1549」も早くも発売ですね。 レア作品としては「炎628」がDVD初登場です。戦争映画好きの中では幻のグロ作としても知られています。私自身はさほどでもなかったですが。 あと、日本映画でノーマークだったのが「武装戦線 ~政府軍 VS 革命軍~」。フィリピン、ミンダナオ戦線を舞台にした映画だそうで、内容はどうなんでしょうか。気になります。 年末から正月用にどれを買おうか、悩みますな。
2005年11月16日
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1943 東宝 監督:渡辺邦男 海軍省検閲済 後援:海軍省 情報局国民映画 出演:高田稔、原節子、小高まさるほか 89分 モノクロ 土浦海軍航空隊の予科練飛行練習生の訓練風景と、倶楽部(班単位での民間ホームステイ)先の家族との交流を描いた、ヒューマンタッチの予科練飛行兵募集案内的映画。目的があきらかに予科練志願者を増やすための啓蒙的位置づけなので、大変予科練が美しく描かれている。確かに格好良く描かれているので、この映画を見た少年達は心惹かれるものがあったであろう。ただ、どこまで予科練の実態に沿っているのかは不明である。少なくとも、倶楽部と呼ばれる家庭の存在や、予科練の志願から卒業までの過程は良くわかる内容となっている。 ストーリー的には、予科練出身飛行兵の敵艦突入や、予科練卒業時の倶楽部家族との別れなど感動的エピソードがいくつか含まれてはいるが、構成としては稚拙な作り。倶楽部となっている家庭の体の弱い一人息子が、触発されて予科練に志願入隊していくエピソードは、本当にそんなにひ弱で大丈夫なのかと思ってしまう。また、16歳で志願となっているが、どうみても今の12,3歳にしか見えない。栄養事情の悪い当時の子供達が良くわかる。海軍用語も紹介されており、女性をおばさんという事、外出を上陸、床を甲板という事などである。 登場する兵器類では、海軍航空技術廠九〇式初歩練習機(水上機)が何度も登場する。実際に土浦で予科練用に使用されていたもので、尾翼に「ツチ601」という機番が見える。また、胴体に窓のついた輸送機バージョン?の九六式陸上攻撃機らしきものも出てくる。この他、記録映像として零戦、九六式陸攻、九五式水上偵察機が少しだけ映し出される。敵側としてはバッファロー戦闘機のようなミニチュア模型が九六式陸攻の模型と交戦する特撮が出てくるが、かなり稚拙な作りである。 この他、訓練風景で操縦桿と踏み棒で機体の制動を操作する電動?のシミュレーター機器がが登場するのが珍しい。 主題歌は「決戦の大空」と劇中で練習生が作詞したこととなっている「若鷲の歌(作詞:西条八十)」。こうして映画主題歌としてヒットしていく軍歌は多い。興奮度★★沈痛度★★★爽快度★★★感涙度★★★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 土浦海軍航空隊にある予科練で少年飛行兵達が訓練に励む。班長、分隊士、分隊長の指導のもと、機場検定では操縦桿、踏み棒を操作する電動のシミュレーターで訓練する。それが終わると実機の水上機に同乗しての訓練となる。 一方、近所にある県立土浦中学校で松村克郎(カッチャン)は木馬(跳び箱)が飛べずにいた。その克郎の家は予科練練習生の立ち寄る「倶楽部」と呼ばれる休暇家庭になっており、週末になると練習生達が遊びに来るのだ。 威勢のいい練習生達に、克郎は励まされるが、体の弱い克郎は自信が持てない。そんな克郎を姉の杉枝は心配する。 練習生達は上等飛行兵から飛行兵長に昇任し、訓練も高等になっていく。そんな時、予科練の先輩である関根たつお氏が武勲を上げ、その取材に新聞記者がやってくる。関根は印度洋で魚雷を抱いたまま敵艦に体当たり攻撃をしたのだった。予科練練習生たちも神妙にその話を聞くのだった。また、克郎も予科練の見学に行き、次第に予科練を受験する気になってくるのだった。そんな克郎を練習生達は歓迎し、励ますのだった。 倶楽部から前線の兵士に慰問袋を送る事となる。その中に、練習生の一人が作った予科練の詩を入れたところ、前線で活躍する先輩、中澤けんじ大尉から作曲され「若鷲の歌」として、返事が返ってくる。中澤大尉は予科練分隊長と同期の操縦士だ。 ついに克郎は予科練を受験し、合格する。母親も姉も妹も大いに喜ぶ。一方、練習生達は入れ替わるように卒業の時を迎える。倶楽部で最後の時を過ごし、昭和18年8月15日、次なる訓練基地へ移動していくのだった。
2005年11月13日
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1937 振進キネマ社 製作:井上麗吉 解説:静田錦波22分 モノクロ 中国戦線に出征して、戦死した紙芝居屋の青年の遺志を継いで、妹が紙芝居をやるという設定だが、ストーリーにはほとんど関係ない。というのも、本編のほとんどが、中国戦線参戦への正当性と、対シナ(満州)政策についてのプロパガンダ的内容で構成されているからだ。映画としての娯楽性、芸術性はほとんど皆無に等しく、戦意高揚国策映画そのものである。それにしても、内容がこなれていないので、はっきり言って学園祭の自主製作映画程度のレベルだ。 風変わりなのは、役者は子供、女性と多数出てくるが、会話音声は一人の男性が多数の声色を使っている。これが解説の静田錦波という人物なのか。多分、紙芝居か講談のような雰囲気をねらったものと思われる。また、紙芝居と言いながら、紙芝居が人形劇だったり実写に化けていく手法は独特。それしか手法がなかったのか、奇をてらったのか、なんとも微妙なところ。 映像中に挿入される兵器類としては、ソ連軍のものが出てくる。赤の広場を行進していると思われるBA-27装甲車、ZIS-32型トラックと思われるもの、兵隊を乗せた車台を牽引するChTZ-S-65スターリッツ砲牽引車である。このほか、ソビエト軍爆撃機として模型が登場するが、どう見ても形状は大型のp-38ライトニング。しかも、都市爆撃をするシーンの特撮では、グルグル回転するp-38似の爆撃機と、明らかに紙製の建物群がなんとも貧相。特撮技術に関しては稚拙な時代と感じる。このほか、中国戦線での戦闘シーンは記録映像ではなく、この作品のために撮影された物のようだ。興奮度★沈痛度★爽快度★感涙度★(以下 ネタバレ注意) 紙芝居屋の青年五木は、子供達に紙芝居を見せてやる。お題は「迫る国難」。・・・(紙芝居から実写・人形劇に)・・・ 盧溝橋事件(制作年1937年)にはじまり、中国人民軍250万の軍勢は数万の日本人に抗日戦線を張り始める。その背景には欧米の列強の中国権益の覇権争いがあり、愚かな中国人はその手先として日本に刃向かうのだった。 中隊ラッパ手の五木上等兵(紙芝居屋の青年)は総攻撃で敵弾に倒れる。それを見た中隊長(大尉)は自ら敵弾の中を助けに行こうとするが、部下がそれを押しとどめて戦友の上等兵が向かう。しかし、五木は既に息絶え絶えで、最後に、子供達に見せてやると書きためた紙芝居の下絵を戦友に託す。 負傷して内地に帰った戦友は、五木の妹の所へ赴き、五木の紙芝居遺稿を手渡す。妹は兄の遺志を継いで紙芝居を完成し、子供達に見せてやるのだった。
2005年11月11日
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1966 アメリカ 監督:マーク・ロブソン 出演者:アラン・ドロン、アンソニー・クイン、モーリス・ロネ、クラウディア・カルディナーレほか129分 カラー 第二次世界大戦後もフランス植民地であったベトナム独立(インドシナ戦争)(1946~1954)、アルジェリアの独立戦争(1954~1962)をフランス軍側から見たアクション映画。インドシナではフランス軍大敗のディエン・ビエン・フーの戦いから始まり、アルジェリアではアルジェリア民族解放戦線(FLN)組織の初期段階あたりまでを描いている。いずれも、フランスの一方的な植民地支配に端を発しているため、どうもフランス軍側に好感を抱く事ができない。映画中でもフランス軍の覇権的なふるまいが随所に描かれており、どちらかというとアルジェリア独立運動を好意的に描いているようだ。 主役の一人はアンソニー・クインでフランス軍の連隊長役を演じている。上昇志向の強いちょっと悪者を好演している。もう一人の主役アラン・ドロンはその部下役だが、アルジェリアの女に入れあげるなどちょっと色男のやさ男役。さすが、アメリカ映画だけあって女性とのラブロマンスは必須なのだ。 題材から言えば、かなりのシリアスものが作れるのだが、本作は史実根拠なしのアクション重視となている。そのため、ストーリーに重みがないので全体に盛り上がりに欠けるきらいがある。いくらアクションを派手にやったところで、その裏にある背景や意図が見えてこなければ幅がないのだ。 フランス軍の連隊だといっても、連隊長自らが最前線に出てるし、登場するのはやっと中隊規模。対するFLNも元フランス兵が指揮しているのだが、その構成や政治的背景が今ひとつ明確でない。 もう一点苦言を呈するならば、連隊長役のアンソニー・クインを除いて、他の役柄の性格付けが今ひとつ明瞭でない事。凶暴なのか、温和なのか、嘘つきなのか、もっと明瞭にわかるようになっていれば、作品に入れ込む事もできたであろうに。 登場する兵器類としてはヘリコプターのほかはジープとトラック、迫撃砲くらいで、ほとんど経費がかかっていないようだ。ちょっとアクション系としては寂しい。ヘリコプターは仏軍国籍をつけたベル47とシコルスキーH-19(ウエストランドホワールウィンド)が出てくる。撮影地はわざわざアルジェリアで撮ったとも思えないので、アメリカ国内撮影と思われ、これらのヘリコプターも米軍か民間のものを使用したのではないだろうか(推測)。 余談だが、アルジェの売春婦役のクラウディア・カルディナーレはチェニジア出身のグラマー美女。すごい爆乳なんだが、水着のシーンで後ろ姿見たらゲンナリ。全体にドカーンだったのね・・・興奮度★★★沈痛度★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1954年のフランス植民地ベトナム(インドシナ)。ベトナム民主共和国軍(ホーチミン軍)の猛攻の前にフランス軍はディエン・ビエン・フーを要塞化して立てこもっていた。 5月7日、連隊長ラスペギー中佐以下、腹心ボアフラ大尉、アルジェリア人マヒディら守備隊のもとへ、仏軍メリーズ将軍が空挺部隊を送り込んでくる。しかし、敵に包囲されており、良いように撃ち殺されるフランス兵を見て、ラスペギー中佐はメリーズ将軍の戦術を非難する。その際に空挺部隊の指揮官クレアフォン少佐が戦死する。また、記録係のエスクラビエ大尉は地元民を使って弾薬を持って来る。その賢さをラスペギーは評価する。 しかし、ベトナム軍の猛攻の前についにディエン・ビエン・フーの守備隊は捕虜となる。 7月22日、ついに休戦委員会が発足し、ラスペギー中佐らは解放され本国に帰国する。ところが、本国で待ち受けていたのはラスペギー中佐の解任だった。メリーズ将軍の言う事を聞かなかった罰である。他の兵隊も解散となり、エスクラビエ大尉はラスペギー中佐にクレアフォン少佐の妻に会うように進言する。クレアフォン少佐の妻は良家の出で将軍らに顔が広いのだ。 農民出のラスペギー中佐にクレアフォン夫人は最初は不快な顔をするが、次第に二人は恋仲になっていく。その結果、今後反抗しない事を約束にアルジェリア派遣の第10パラシュート連隊長に任命される。クレアフォン夫人には将軍になって凱旋したら結婚しようと約束する。 フランス植民地のアフリカ アルジェリアでは独立運動が強くなっていた。アルジェリア第12軍管区司令官はメリーズ将軍だった。メリーズ将軍はラスペギー中佐に反抗勢力が出没するガフェスへ出動を命じる。一方、元の部下で唯一戻らなかったアルジェリア人のマヒディを探しに行くが、マヒディの家は焼き払われていた。 ラスペギー中佐は行軍中に解放戦線の待ち伏せ攻撃を受ける。ボアフラ大尉の活躍で敵を制圧してみると敵は仏軍の機関銃を使用していた。アルジェリア市警の武器が奪われていたのだ。さらに解放戦線のリーダーがマヒディであることも判明した。 解放戦線の諜報員アーメドの手引きでラルム村に向かった仏軍のマール中尉ら3人が惨殺される。怒り狂ったボアフラ大尉はエスクラビエ大尉の制止も聞かずにラルム村の男を全員射殺する。非道な行いに困惑するラスペギー中佐だが、逆にこれを利用する事を思い立ち、アルジェリア住民に恐怖心を植え込む。一方、旧友マール中尉を殺したアーメドをマヒディは射殺する。 チュニスから大量の武器が解放戦線に流れたとの情報があり、ラスペギー中佐はアルジェ市内に戻り、武器の搬入を阻止する使命を帯びる。市民全員の身分を調べ上げ、通行を制限する中、エスクラビエ大尉はアルジェの売春婦アイシャに恋をする。アルジェ女とつきあうなというラスペギーの忠告も無視して、エスクラビエは熱を上げる。しかし、アイシャはマヒディの妹で、エスクラビエを利用して爆弾製造の雷管を運んでいたのだ。 市内各所で攪乱のための爆破が起き、怪しい者を投獄・尋問した結果、ついに歯科医師ベン・サドとその一味が捕まる。その一人にアイシャがいた。困惑するエスクラビエ大尉だったが、兄のマヒディを殺さないという約束で、マヒディの居場所を聞き出す。ラレム村の一件などで本国憲兵隊の召還命令(解任間違いなし)を受けていたラスペギー中佐は、手柄を立てなければという一心で、マヒディを殺さないと約束をして、解放戦線が立て籠もるオーレス山に向かう。 マヒディら解放戦線の抵抗で、フランス軍兵士が次々殺されていく。通信兵をやられて怒る狂ったボアフラ大尉は無謀な突撃を始める。ラスペギー中佐は救護ヘリを用いて解放戦線の背後にまわる。背後からの攻撃で解放戦線は壊滅的な打撃を受け、マヒディも重傷を負う。 マヒディに降伏を諭すエスクラビエ大尉とラスペギー中佐だったが、横からボアフラ大尉が銃殺してしまう。何故殺したと怒るエスクラビエに、ラスペギーはボアフラは優秀な兵士だと取り合わない。 見事解放戦線を叩いた連隊は大十字勲章を授与される。ラスペギーは念願どおり将軍に昇任する。次々に勲章を授与される姿を横目に、除隊したエクスラビエは兵舎を出て行く。しかし、その先で「INDEPENDENCE(独立)」の文字を消す市民の傍ら、懲りずに「INDEPENDENCE(独立)」の文字を書く少年がいた。エスクラビエはそれをみて笑うのだった。DVD検索「ロスト・コマンド」を探す(楽天)
2005年11月09日
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1958 新東宝 監督:土居通芳 出演:宇津井健、細川俊夫、中山昭二ほか 79分 モノクロ 記録映画でもなし、ヒューマンドラマでもなし、歴史教育映画に近い非常に堅い作品。内容的には淡々と陸海軍の青年将校の血気盛んな行動を追い、どちらかというと不遇の青年将校を擁護する立場に近いかも知れない。しかし、とにかく登場人物が多いにもかかわらず、登場人物のテロップが出るわけでも、人物説明が出るわけでもなく、張作霖爆死事件、満州事変、上海事変、5.15事件、相沢事件、2.26事件と事件の背景を良く知っていないと、何の事やらわからない箇所が多すぎる。また、時間的には昭和3年から昭和11年までを扱っており、焦点が絞り切れていない。ちょっと盛り込みすぎの感がある。 一応前半は関東軍の河本大佐、橋本中佐を中心に、後半は磯部大尉と安藤大尉を中心に据えてはいる。堕落した軍上層部、財閥、政治家の腰抜け施策に憤慨し、国家改造、革命に燃える青年将校の熱い情熱だけは伝わってくる。情熱の空回りと、勘違いが悲しい結末を呼ぶのが切ない。ただし、もっと青年将校の心情に突っ込んだ作りをすれば映画としては面白かっただろうと思う。本当に歴史教科書のような映画なのだ。 登場する兵器類は陸軍戦車として、自衛隊のM24チャーフィー軽戦車が疾走している。航空機では記録映像と思われるが、三式初歩練習機?か九〇式初歩練習機の陸上機仕様のような複葉機が登場するが機種名は良くわからなかった。興奮度★沈痛度★★★爽快度★感涙度★★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 時は昭和3年。陸軍強硬派は満州の利権を確保するため、国内軍部の制止を無視して対中開戦を目論んでいた。昭和3年6月、東宮大尉らの関東軍は満州鉄道で、張作霖の乗る列車を爆破転覆させ張作霖を爆死させる。関東軍は中国人の仕業と仕組むが、国内外共に関東軍の仕業と露見していた。時の田中総理は関東軍の出動を拒否し、首謀者の厳罰を意図するが、閣僚に反対され、軽度の処罰に止まる。 昭和4年6月、田中内閣辞職。次期首相は浜口首相で陸軍大臣は宇垣となる。関東軍は、右翼大川周明と結託し、再び昭和維新を画策し、橋本中佐を首謀として浜口首相を狙撃、宇垣将軍に決起を促すが反対され、再び失敗する。 これで収まらない関東軍河本大佐と橋本中佐は、昭和6年9月満州事変勃発と共に、再度軍政府樹立を画策。さくら会を中心に決起するが、担ぎ上げた荒木大将に反対され、再び憲兵に取り締まられる結果となる。 昭和7年2月上海事変が勃発。海軍陸戦隊の活躍を契機に、今度は霞ヶ浦航空隊の古賀中尉、三上中尉らが国家改造を目論み決起。陸軍の磯部大尉にも同調を要請するが、先の失敗で改革派以外の勢力が多いために陸軍側は無理と判断する。海軍青年将校らは犬養首相を暗殺する5.15事件を実行する。しかし、これも結局成功せず、三上中尉らは禁固15年の刑に罰せられる。ただし、この刑罰の軽さが後の青年将校らの増長につながっていく。 昭和10年8月には相沢中佐によって軍務局長永田鉄山が殺される。これによって軍首脳部は、血気盛んな青年将校を有する第一師団を満州に派遣し、封じ込める事を計画する。 これを知った陸軍青年将校らは再び決起を思い立つ。第一師団の安藤大尉は周囲からの決起催促にしばらく思案するが、友人の藤野記者が憲兵に拷問死させられたのを機に決起を決意する。昭和11年2月26日、2.26事件が実行される。決起は成功するが、決起上奏が届かず、天皇は決起軍を反乱軍扱いし、頼みの真崎将軍も翻意してしまう。ついに、勅命が下り、国賊扱いとなった決起軍の安藤大尉らは部下の下士官、兵を原隊に復帰させ、軍法会議の場で戦う事を決意する。しかし、その軍法会議は弁護人もつかない暗黒裁判となり、首謀の6名は銃殺に処される。
2005年11月06日
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1952 大映 監督:安達伸生 出演:三益愛子、根上純、船越英二、松島トモ子ほか 94分 モノクロ 今、巣鴨の母というと手相占い師が有名だが、これは戦後戦争犯罪人拘置所「巣鴨プリズン」に息子を取られた母親の悲哀の物語である。巣鴨プリズンもので言えば、「私は貝になりたい(1959)」が有名だが、この巣鴨の母も異なった視点として涙なくして見る事ができない傑作。映画のストーリー自体はそこそこだが、この時代にこのような骨太の映画があったことに感激至極である。 この作品は1952年製作で、この年の4月28日に「日本国との平和条約」が発効し、同年8月5日には「日華平和条約」が発効した、戦後日本の旅立ちのメモリアル年でもある。しかし、本作品は偏った戦勝国裁判による無実の戦犯がいることや、戦後の日本人の多くが戦犯だけに戦争責任を押しつけ、自らの責任に無関心であることを痛烈に風刺している。本編中にも平和条約11条の条項がおかしいこと、インドのパール判事が裁判が公平でない事を指摘した事などが盛り込まれている。 監督の安達伸生は「透明人間現る」など怪談ものや時代劇ものを多く手がけており、こうした映画の監督は極めて異質である。当時の日本の世論に背中を押された作品だといえるのではないだろうか。そう言う意味で、戦後日本人が戦争の事や戦争犯罪のことを忘れているという批判を受けるが、それと同時に理不尽な戦後処理に苦しめられた日本人がいたことも忘れているのではないだろうか。ちなみに、最後の戦犯が釈放されるのは本作品から5年後の事である。 この映画は戦争に引き裂かれた母子の情愛がメインたる内容だが、感動する場面はそこだけではない。仲間を思って奔走する戦友の友情、見ず知らずの老婆を助け合う下町の心温かい男女たち、そして南方に戦犯抑留される父親を待ついたいけな子供。いささか作られすぎた感もあるが、素直に感涙せざるを得ないのである。子役松島トモコには泣かされる。さすが名子役である。 映像的には多分、巣鴨プリズン本物を使っての撮影のような気がする。セットにしては結構大がかりなのだ。また、冒頭の南方からの引き揚げ船風景は一部実写が入っている様子。このほか、市電や下町の様子などが当時の面影を良く表している。(参考)平和条約第11条【戦争犯罪】日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。これらの拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した1又は2以上の政府の決定及び日本国の勧告に基くの外、行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基くの外、行使することができない。*つまり、日本が独立したあとであっても、戦勝国によって戦犯確定された戦犯処遇の権限はあくまで戦勝国に残され、外国に抑留されている強制労働者等が無実であっても釈放されない事を意味する。戦犯釈放を巡る動き (Wikipedia)興奮度★★沈痛度★★★★★爽快度★★★感涙度★★★★★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 南方からの復員船が港に入ってくる。老いた母親小森あきは4人の息子のうちたった一人生き残った末っ子の末男の帰還を待ちわびていた。末男との再会を喜ぶあきの傍らで、帰ってこなかった父親を待つ松井という母娘がいた。松井の戦友だった有吉は松井の妻に、松井が帰還直前に戦犯容疑で抑留されたことを知らせる。 小森親子は、埼玉の川口のアパートでようやく親子水入らずの生活を始めようとするが、そこに占領軍のMPがやってきて末男を戦犯として逮捕する。戦友の有吉の働きもむなしく、捕虜収容所で盗人を殴った罪で、末男は強制労働30年の刑を受けてしまう。 母親のあきは息子が拘置されている間、靴磨きをして日銭を稼ぐ。かつての末男の恋人はアメリカ兵に連れ立って歩く始末である。末男に会いに巣鴨プリズンにも出かけるが、面会予約がないと逢わせてもくれない。さらに、戦犯家族への世間の目は冷たく、アパートを出て行けと催促されるようになる。そんな中、唯一の救いは靴磨きの少年の優しさと、戦友有吉の訪問であった。 有吉は無実の罪で戦犯にされている事実に憤慨し、少しでも手助けになろうと給料の安い巣鴨プリズンの看守に就職する。そのつてで、ようやくあきは末男との面会を許される。しかし、次第に苦労がたたってあきは病気がちになる。面会のための電車賃にも事欠き、ついに歩いて巣鴨に向かう途中倒れてしまう。 倒れて看病された先は、あの松井親子のもとであった。近所の人々も下町の江戸っ子気っ風で戦犯を持つ二組の家族を応援するのだった。 昭和27年4月28日に平和条約が発効され、日本は独立する。しかし、釈放されると思っていたが釈放はされなかった。条約の第11条で日本が勝手に釈放はできないこととされていたのだ。 さらに8月5日は中国との平和条約が発効し、中国での戦犯は釈放される。しかし、南方での戦犯である末男の釈放は見込みがつかなかった。あきはがっくりとし、日増しに衰弱がひどくなる。見るに見かねた有吉と看守仲間、そして戦犯仲間は母親にカンパを集めて渡す。ところが、帰りの車中でそのカンパすらすられてしまう。 一気に気力を失ったあきが危篤状態に陥る。末男に死に目に合わせてやろうと、有吉は所長に外出許可を求めるが、規則上出来ないと言われる。しかし、熱意にほだされた所長の権限で許可され、有吉は末男をジープに乗せてあきのもとに向かう。 なんとか間に合った末男は、あきに「釈放された」と嘘をつく。あきは涙を流して喜び、周囲の人々に感謝の言葉を述べて息を引き取る。末男は「母についたたった一度の嘘になりました」と涙する。それを見た下町の人々は日本中があなたたちを忘れはしないと励ます。そして末男は再び巣鴨プリズンへ戻っていくのだった。 DVD検索「巣鴨の母」を探す(楽天)
2005年11月02日
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1944 東宝 監督:黒澤明 情報局選定国民映画 出演:志村喬、矢口陽子、入江たか子ほか 85分 モノクロ あの黒澤明監督の監督第2作目。黒澤監督が国民映画を製作するとどうなるのかという興味津々なわけなのだが、内容的には駄作のレベル。ドラマなのかノンフィクションなのか中途半端な感じで、やはり国民映画では能力を発揮できないということか。ただ、映画が情念描写が中心となっている点は、なんとなく黒澤監督らしいと言えばそうにもとれるが、女子工員のおどろおどろしい情念は国策映画として成功だったのかどうかも疑わしい。 年代的にも敗色濃い中、精神力での兵器増産を謳ったもので、相当な悲壮感が漂っている。無茶苦茶なスローガンと偽善的な発言と行動は、いくらなんでも当時の観客にだって受け入れがたい物があったのではないだろうか。自虐的な諦め観を植え付ける効果だけはありそうだが。というわけで、映画的には何一つ面白いことはなく、当時の国民総動員の姿を垣間見る事が出来る記録としての価値があるくらいだろう。地方から上京した女子隊員たちがふるさとの土を一握りづつ持ち寄って来ることや、寮の部屋に両親の写真や「お母さん」と書いた文字を掲げて挨拶するシーンなどは今の日本には見られない風景である。まあ、それでも女子挺身隊の本当の姿を描いているとも言い切れず、様々な要因を差し引いて見る必要もありそうだ。 本作で興味深いのは、主人公の女子挺身隊の青年隊長役である矢口陽子が本作出演後に黒澤監督と結婚したという点だ。作品中では強情で意地っ張りなやや暗い印象が強いのだが、いわゆる大和撫子の典型例ということなのだろうか。 当然のことながら戦闘シーンも兵器も出てこない。唯一工場が光学機器工場なので、ツノ型双眼鏡(砲隊鏡、カニメガネ)が出てくる。この照準を調整する目盛修整室が青年隊長の仕事場なのだ。この他、レンズ中に戦闘機を追う映像も出てくるので、戦闘機の照準機も制作しているのかも知れない。興奮度★沈痛度★★★爽快度★感涙度★★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 平塚にある東亜光学の工場では勤労奉仕活動として、全国から集まってきた女子挺身隊員が光学機器の製造にあたっていた。工場では非常増産強調運動が4ヶ月間にわたって始められる事となり、男子には10割、女子には5割の増産目標が掲げられた。 この話を聞いて女子隊員たちは不満を募らせ、ひそひそ話に終始する。工場の課長は見るに見かねて青年隊長の渡辺つるに話を聞く。なんのことはない、増産が不満なのではなく、男子の半分であるのが不満だというのだ。そこで男子の2/3まで増産目標をアップするのであった。 女子挺進隊員らは寮生活を送っている。寮長の水島のもと夜は鼓笛隊の練習をしている。曲は国民進軍歌である。女子隊員達は熱心に仕事に励み、みるみる増産グラフが上昇を始める。そんな様子に工場の課長らは、「好成績だが5,000mを100mで走っているようなものだ」と心配する。 その心配通り、鈴村が熱を出し、父親が迎えに来て帰郷して休養を図る事になると、一気にバランスが崩れ始める。加えて電休日?に山崎さんが屋根から落下して怪我をし、レンズ磨きのラインは総崩れとなる。課長は渡辺つるに、イライラせずに気分転換をしたらいいと進言し、バレーボールを始めさせる。再び精気を取り戻した彼女たちは徐々に増産が戻り始める。 ところが、今度は渡辺つるの母親が衰弱したとの連絡がある。しかし、責任感に萌える渡辺は父親の進言もあり、それを隠して仕事に打ち込む。また、病弱で熱を出している山口シズ子に頼まれて、熱のことを隠して職場につかせてやる。 日本の戦局は、タワラ、マキン、クェゼリン、ルオットと悪化の一途を進む。次第に疲れの色の見えてきた女子挺身隊は再び成績が急降下を始めるのだった。さらに、イライラの増した岡部と服部が口論を始める。寮長の水島が隊員の士気を高めるために病気の癒えた鈴村を呼び戻しに地方へ出かけている間に、女子隊員達の不満は絶好調に達する。皆の不満を押さえようとする渡辺であったが、逆に岡部に山口に依怙贔屓をしていることを指摘される。皆の冷たい視線に、ついに山口が熱の事を暴露。岡部も服部も反省して、ふるさとの土のもと涙にくれるのであった。 加えてドタバタに気を取られた渡辺が、照準を合わせていないレンズを納めてしまった。渡辺は数千個の中から徹夜でそのレンズを探すのだった。それを課長らが共に残って見守る。 こうした一件があり再び女子隊員達の増産グラフが伸び始める。そして、渡辺の母親が死去。家に帰れと言う課長らに、渡辺は私よりも山口さんを休ませてあげてくれと言う。それを聞いた水島は、強いばかりでなく、やさしい良い子になりましたと褒めるのだったDVD検索「一番美しく」を探す(楽天)
2005年11月01日
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1956 大映 監督:佐藤武 出演:笠智衆、中山昭二、矢島ひろ子ほか 99分 モノクロ 原作は棟田博の「サイパンから来た列車」。サイパン島で玉砕した師団の兵士の幽霊が10年ぶりに東京へ帰ってくる話。背景に対して半透明の兵士達の姿はカメラの二重写しで撮影したもので、斬新ではあるがモノクロ映像のおどろおどろしさから、いささか怖い感じもする。 幽霊が汽車に乗って帰ってきて、東京の親類知人を訪ねて回るという発想に驚かされるが、その内容は涙なしには見る事ができない悲しい物語である。ストーリー自体はたいしたことないのだが、無念にも玉砕した兵士が見た戦後の東京と、家族の姿はことさら兵士の無念さをかき立てる。残念ながら兵士達の声は家族達には届かないが、ここで見た10年後の東京をサイパン島に残ったほかの霊魂に報告しに戻っていく姿に、映画ながら思わず手を合わせたくなった。 映画の主題は微妙で、玉砕兵士の鎮魂とも取れるが、戦後10年間で変貌した日本人への批判ともとれる。戦争の無意味さからの反戦的表現もないわけではないが、むしろ旗を振って兵士を送り出した日本人達が、戦後に豹変して批判的になり、金や権力に溺れていることに対する警鐘でもある。帰るところのないサイパン玉砕兵の魂が泣いているのだ。 帰還するのはサイパン島玉砕の師団長(少将)以下150名余り。師団全員ではなく、東京に親類がいるものだけの選抜隊という設定だ。ちなみに108師団も108連隊も実在するが、サイパンには行っていない。人物中心の映画のため、戦闘シーンは全くないが、戦後日本の姿として自衛隊の戦車が登場する。戦車は1952年に米軍から375両供与されたM24チャーフィー軽戦車で日の丸付きの姿である。また、米軍撮影の日本兵玉砕の記録映像が少量挿入されているが、塹壕に崩れ落ちる日本兵、累々と重なる日本兵の死体などかなり悲惨な動画である。 とにかく、サイパン島玉砕何万人と言っても、一人一人の兵士に家族がいて、生活があったことをまじまじと実感させられる。とかく特攻兵は取り上げられるが、こうした年配徴集兵の名も無き兵士達のことも忘れてはならないと、涙せずにはいられなかった。興奮度★沈痛度★★★★爽快度★感涙度★★★★★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 戦後10年たった東京駅。終電車が終わった東京駅15番線に旧日本兵が乗った汽車が到着する。乗っているのはサイパン島で玉砕した師団の約150名の英霊。東京にゆかりのあるものが選抜され、戦後10年たった東京の様子を見聞し、サイパンに残っている仲間に報告するためだ。 0時15分、師団長秋吉少将(笠)の号令のもと、各兵士はそれぞれの親類の元に散っていく。集合時間は午前4:00である。 那須泰彦中尉は恋人雪子のもとへ向かう。那須は出征前に登山した山で強引にキスをしようとして雪子が滑落し、足を骨折したまま出征したことを心配していた。戦地に届いた手紙では足は完治したとあったが、実際には足は不具になっていた事を知る。また、那須のことを想い結婚もせずにいることを知り、那須は感激する。 秋吉少将はまず皇居へはせ参じ、陛下に玉砕をお詫びする。その後、警察に追われて射殺された若者に出会う。なんとそれは息子の巌であった。タクシー強盗を働き、運転手を射殺した結果だった。息子巌の堕落ぶりをなじる秋吉だったが、死して霊となった巌は父秋吉に語るのだった。戦後、玉砕した部下の家族が石を投げに来た事、家族で田舎に逃げるしかなかったこと、天皇は戦争は望んでいなかったと言い、戦後は言論を翻した金持ちと権力者がふんぞり返っている事など。もう、こうするしかなかったのだと。 従軍記者の能瀬は妻子がいた。しかし、出征時に3年経って帰ってこなかったら再婚しろと言ってあった。元の家に行ったところ妻子はいなかったため、再婚したのだろうと安心し、元の新聞社へ行く。そこで同僚の松木は次長として活躍していた。何でも他人のものを欲しがって奪ってしまう松木だったが、何故か憎めない男だった。その松木を眺めていると、松木の妻が出産したとの報が入る。松木も結婚したかと、その後をついていくと、なんとその妻とは能瀬の妻であった。松木が能瀬の娘みつ子もかわいがる姿を見て、能瀬は逆に妻子の将来を安心するのだった。 志水一等兵は年配の徴集兵で、若くて美人妻が再婚したのではないかと心配だった。同行した町田一等兵とともに家を覗くと、やつれた妻がミシンを踏んでいる。息子も整備士として働いているようで安心するが、娘は父親がいない事で就職ができないことを悩んでいる。再婚もせずに、子供を育てた妻に感謝しつつ、妻子を幸せにしてやれなかったことを悔やむ志水であった。 河野中尉は一晩中母親を捜して歩いた。しかし、結局見つからず集合場所に戻る。遠くで母親の声が聞こえたような気がする。 午前4時になり師団は集合し乗車する。ただ一人戻ってこなかった志水一等兵もぎりぎりで間に合い、サイパン島玉砕の英霊達はサイパンへ帰っていくのであった。DVD検索「姿なき一〇八部隊」を探す(楽天)・・・該当なし
2005年10月28日
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1954 東宝 監督:丸山誠治 出演:池部良、司葉子ほか 99分 モノクロ 戦争映画かと思って視聴したが、思いっきりメロドラマであった。しかも、もう見るに堪えないほどのベタベタ純愛ものときた。加えて、この時代の演出や演技、恋愛観は、今とは全く違うのだというカルチャーショックをひどく受けた。主演の青年、亘役の池部良は後の石原裕次郎や小林旭につながるような男っぽいというか、今で言えば傲慢でデリカシーのないタイプ。一つ間違えばセクハラ、女性差別とも取れるような言動は見ているこちらもハラハラするほど。一方、マドンナ久美子役の司葉子はこの作品がスクリーンデビューなんだそうだが、頑なでイジイジしていて男に尽くすようなタイプ。なかなかうまく交際が進まず、まるで今のドロドロ昼ドラを見ているような感じがする。 一応戦時中から戦後までを舞台にしており、亘は徴兵で戦地に行くし、久美子は広島で原爆に被爆する設定だが、そのあたりの映像は一切出てこない。政治的な背景もまったく感じられないし、本当に純粋な恋愛映画なのだ。唯一陸軍中尉役で登場する友人の軍服姿と、空襲待避シーンが戦時下であることを示している。 それにしても、亘はいつも久美子のもとへうろちょろとやってきて、仕事をしている雰囲気はないし、結構突っ込み所もあるのだが、こういう作品を作らせる時代背景というものを感じながら見るのも一興かもしれない。あと、池部の走り方ちょっと変。興奮度★沈痛度★★★爽快度★感涙度★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 第二次世界大戦末期の東京。大学の研究者(学生?)の藤森亘(わたる)(池部)は母親が入院している病院を見舞う。そこで母親の介護をしている看護婦の堀久美子(司)と出会い、次第に二人は恋心を抱いていく。 亘の親友である陸軍中尉の小島は前線勤務を前にたった一人の妹礼子の身を心配しており、亘に嫁に貰ってくれるよう頼み込む。それを知った傷心の久美子は故郷の広島へ帰る事を決意する。 久美子の帰郷する列車に飛び乗った亘は、強引に久美子に求婚し、結婚の約束をする。しかし、亘招集の電報で別れなければならなかった。 それから5年の歳月がたち、久美子は広島で被爆。顔にケロイドを負い、体の具合も良くなかったため、人目を避けて密かに乳児院で働いていた。院長の勧めで久美子は東京の病院で被爆治療を受ける事を決意する。検査の結果、脾臓が腫れており白血病の恐れがある事を知ってしまう。さらに、病院で雑誌取材をしていた礼子と遭遇し、礼子と亘が婚約していることも知る。 亘は戦後ずっと久美子を捜していたが、行方がわからなかったのだ。礼子は亘の心が自分にないのを知っていたため、亘に久美子の居場所を教える。しかし、久美子は再び行方をくらませてしまう。亘が訪れた乳児院の院長は、そってしておいてやれと行き先を教えなかったが、亘の熱情についに折れ、久美子が信州の病院にいることを教える。 信州の久美子のもとを訪れた亘に、久美子は動揺を隠しきれない。傷跡の残る顔と被爆症の身では亘の愛情を受け入れられなかったのだ。一旦は亘の愛を受け入れた久美子だが、夜中に湖で入水自殺を図る。間一髪のところを救った亘の愛に、ようやく久美子は生きる希望を見いだすのだった。 DVD検索「君死に給うことなかれ」を探す(楽天)
2005年10月27日
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1943 アメリカ 監督:ルイス・セイラー出演:アンソニー・クイン、プレントン・フォスター、ロイド・ノーランほか94分 モノクロ 第二次世界大戦の米海兵隊のガダルカナル島上陸作戦を描いたもので、実際に戦闘が行われた1942年秋の翌年には製作されているというのは、さすがアメリカとしか言いようがない。従って、内容的には多分に戦意昂揚的なものになってはいるが、日本軍守備隊の抵抗の激しさや、海兵隊が苦戦した様子がしっかりと描かれている。ただ、ストーリー的には今ひとつでエピソードの繋がりも悪い。ガダルカナル戦が終わって間もないということや戦時中の機密ということもあるのだろう、ちょっと物足りない気がする。 なお、エピソードの一つとして捕虜となった日本兵の嘘で日本軍の待ち伏せ攻撃に遭うというシーンや、洞窟に立てこもる日本軍を攻撃するシーンは「地獄の戦場(1950)」と極似している。アメリカはよほどこういうシーンがお好きなようだ。 また、日本兵の描写は軍装、兵器ともに相当適当だ。顔つきはアジア系の役者を使っているようだがかなり違和感有り。しかも、話している会話は片言の日本語で何だか腹が立つ。この他、日本兵が銃剣で米兵に止めを刺している光景を残虐だと言っている割に、アメリカ兵も凄い勢いで銃剣で止めを刺しているのにはひどく矛盾を感じる。 映画の撮影には海兵隊が協力しており、登場する兵器類は本物である。戦車、火砲、上陸用舟艇が多数登場するほか、記録映像を少量織り交ぜている。戦車はM3スチュアート軽戦車のようだ。火砲はいくつもの種類が登場していたが詳しくないのでわからない。ただ、日本軍がアメリカ製迫撃砲を使っているのは笑った。航空機では、F4Fワイルドキャットが多数出てくるほか、記録映像だが空母に待機するF4Fワイルドキャット、発艦するTBDデバステーター艦攻が見える。いずれもラダーストライプが施されているが、所属部隊の記号は消されている。また、日本軍の空爆シーンで陸軍九七式軽爆(第90戦隊)の飛行シーンが出てくるが、こんなところにこんな古い機種が飛んでるわけもなく、実写ではあるがどこからか仕入れた映像らしい。 ちなみに、映画での主役部隊は第1海兵師団第5海兵連隊となっている。(参考リンク) アメリカ海兵隊研究サイト → ガダルカナル戦興奮度★★★沈痛度★★爽快度★★感涙度★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1942年7月26日、アメリカの第1海兵師団第5海兵連隊は輸送船の上にいた。行き先も知らされず穏やかな海の上で、皆演習と思いこんでいた。しかし、周囲には巡洋艦や補給艦の姿も見え始め、いよいよ戦地に赴く事が決定される。 行き先はガダルカナル島であった。日本軍守備隊がルンガ飛行場を建設しているこの地は今後の決戦のカギを握る重要拠点だ。海兵隊はその先陣として送り込まれる事となった。その中にはまだ髭も生えていないような若者チキン(ジョー)やニューヨークのタクシー運転手だったマローン、色男のスース、神父のドネリーなどがいた。 8月7日、上陸は日本軍の反撃もなく、無血で成功した。しかし、日本軍はジャングルに潜みゲリラ戦で待ちかまえていた。余裕をぶっていた海兵隊員だったが、狙撃で最初の戦死者が出る。次第に、海兵隊員はゲリラ的な日本兵に脅かされ、恐怖を覚えるようになってくるのだった。 8月13日、日本兵の捕虜を取る。捕虜の証言から8km先のマタニカウ村で多くの日本兵が投降したいと言っているとの情報を得る。グレイソン大佐はクロス大尉、スースらに村へ偵察に行くよう命令する。慎重に海上から村に接近したクロス大尉らだが、やはり日本軍の罠であり、激しい銃撃を受ける。ターマンド中尉が戦死し、他の兵士も次々に倒れる。ついにクロス大尉、スースら3名だけが残される。しかし、クロス大尉も撃たれスース一人が海に逃げ込む事に成功する。海上からスースは銃剣でとどめを刺す日本兵見て憤慨する。 海兵隊はマタニカウ村へ攻撃を仕掛ける。若者のチキンは戦闘中に日本軍将校の日本刀欲しさに接近し、撃たれて負傷する。ようやく村を占領したときには死傷者が多く出ていた。海兵隊員は疲れ果て、敵である日本に敬意を表するほどになっていた。 米軍の応援部隊はなかなか来ず、度々日本軍の空爆にあう。10月10日になってようやく陸軍が上陸する。とともに食料や弾薬も補給されるのだった。海兵隊は陸軍と合流して内陸部の掃討戦を始める。日本軍は崖の洞窟に潜んでおり、一つ一つ潰していくしか手はなかった。 日本軍も再度ガダルカナルのルンガ(ヘンダーソン)飛行場を奪取するため、戦艦二隻、巡洋艦八隻をもって艦砲射撃を浴びせてくる(注:史実では第8艦隊の戦艦金剛、榛名、重巡鳥海、衣笠らが艦砲射撃を行っている)。米軍も負けじと航空戦を支配し、ヘンダーソン飛行場には米軍機の増援部隊が到着する。M3軽戦車も数多く上陸される。 11月10日の海兵隊記念日に総攻撃が決行された。バンデクリフト少将の指揮の下、戦車や航空機支援で日本軍を駆逐、ついに12月10日に日本軍を殲滅に成功する。海兵隊はハルゼー将軍からねぎらいの言葉を受け、次の任地へ向かうのだった。東京まであと5,440KM。 DVD検索「ガダルカナル・ダイアリー」を探す(楽天)
2005年10月26日
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1971 アメリカ 監督:ダルトン・トランボ出演:ティモシー・ボトムズ、キャシー・フィールズ、ジェイソン・ロバーズほか 112分 モノクロ・カラー 第一次世界大戦で延髄と性器を除いて全ての器官を損傷し、何も見えず、何も聞こえず、何も話せなくなったアメリカ兵の感情と葛藤を描いた異色作品。監督は1947年のハリウッド赤狩りで追放されたダルトン・トランボの復帰後監督第一作。それだけに、反戦映画としても知られているが、私としてはそうは思えない。こうした植物人間状態は何も戦争だけが原因でなるわけでもなく、交通事故でも病気でもあり得る話である。そう言う意味で反戦的メッセージは顕著に見えてこない。では、軍部批判かといえば、確かに軍は植物人間となった彼を人体実験としている設定なのだが、それもまた強烈なものではない。実は、この映画は実際に第一次大戦で四肢と感覚器を失った英軍将校がいたという実話をネタにしており、多分に興味本位的な要素がある。人間の欲望、生きる権利、生への執着など命の尊厳という観点が強く出されているものだ。反戦という観点で見ても面白くはない。 映像は現在の植物状態をモノクロ、はつらつと生きていた過去をカラーで表現している。通常なら反対にするのだが、つらく暗頓とした現状をモノクロで表す事で効果的であると言える。ただし、現在と過去のシーンがかなり頻繁に入れ替わる上、過去の回想シーンは叙情的、象徴的なものが多く少しわかりづらいかも知れない。従って、盛り上がりもなくだらけた映画となってしまっている。 題材や映像手法が斬新なだけに評価は大きく二分されそうな感じである。私個人的には好きになれない映画ではある。触れてはいけないタブーに踏み込んでいるような気がするのである。安楽死や尊厳死などに通じる、結論のない深淵な深みにはまっていきそうだ。本作が好きな人も嫌いな人もすべからく重い気持ちにさせること請け合いである。 戦闘シーンとしては、瀕死を負った原因の砲弾弾着シーンや塹壕内の映像がある程度。興奮度★沈痛度★★★★★爽快度★感涙度★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) アメリカコロラド州の青年ジョーは第一次世界大戦出征のため徴兵された。しかし、敵国の砲弾によってジョーは瀕死の傷を負い、姓名不詳の兵として軍病院に運び込まれる。延髄と性器以外は全て損傷し植物人間状態だった。しかし、意識だけははっきりしており、ジョーは出征前の恋人カリーンとの一夜を思い出していた。 軍医は死者と同様、意識もないジョーを生かしておくのは他の患者を救うための実験であると言い放つ。ガクガクと定期的に動くのは条件反射だとも言う。 ジョーは次第に両腕も両足もないことに気づく。さらに目も、歯も舌もないことに愕然とする。意識はあるが、外界で何が起こっているのかもわからず、意志を伝えることもできない。人が歩く振動によって誰かが来た事がわかる程度だ。 看護婦の一人が窓を開放する。日差しが差し込みジョーの顔に当たる。温かい。日射しだ!太陽を感じでジョーはかつての楽しい日々を思い出した。さらに、爆撃を受けた瞬間も思い出した。英軍の隣にいて、ドイツ軍の遺体処理を命じられて塹壕外に出たところを直撃されたのだ。 クリスマスの日、ジョーの面倒を見る看護婦がジョーの胸を拭きながら、MERYと文字をなぞる。ジョーは今日がメリークリスマスだと理解できた。今日から日付もわかるようになったのだ。しかし、意志の伝達ができない。そこでジョニーはモールス信号を送る事を思いつく。 ジョーは僅かにうごく頭の動きでS.O.Sを送り続ける。それを見た看護婦が軍医らを呼ぶ。将校はモールス信号である事に気づいた。将校は何を求めているかを尋ねる。すると、ジョーは「外に出たい。自分に唯一出来る事は見せ物として自分の姿を見せる事だ」と答える。将校は軍の体面上できないと言う。ジョーは「さもなくば殺してくれ」と言う。しかし、将校は窓を閉め、看護婦らにも一切の他言を禁じる。それを見た神父はあきれかえり、看護婦も密かに生命維持装置をはずそうと試みるが、将校に見つかり退室を言い渡される。再びジョーに暗闇の世界が訪れる。 DVD検索「ジョニーは戦場へ行った」を探す(楽天)
2005年10月24日
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1995 東映 監督:出目昌伸 東映・バンダイ提携作品出演:緒方直人、織田裕二、風間トオル、仲村トオル、的場浩司、鶴田真由ほか 129分 カラー 戦後50年記念で製作された「きけ、わだつみの声」のリメイク版。旧作は「日本戦没学生の手記 きけ、わだつみの声 (1950)」であるが、リメイクとはいえ内容は全く異なっており、舞台もフィリピンルソン島リンガエン湾となっている。しかし、結論から言うとひどい駄作だ。出演者は若手の人気俳優を取りそろえているが、残念ながら彼らに平和のスローガンを叫ばせるだけの映画で、役者自体が軽々しい雰囲気に見えてくるのが残念。また、アクセントのつもりだろうが、破天荒な兵士役に的場浩司を起用しており、すっかりコメディかアクション映画と勘違させる場違いなもの。歴史的な重みなど全く感じない。 さらに、とにかく悲惨な場面やエピソードを次々に挿入してくるが、あまりに極端すぎて、何やら背後に恣意的な歴史観の押しつけすらあるのではないかと勘ぐりたくなるほどだ。的場が連れてきた従軍慰安婦が朝鮮人の強制連行であったなど、内容的に少しは史実に基づいたものがあるのだろうか。そういう意味で、リアルな手記というイメージがなく、作り上げられた絵空事としか思えない。それは、本作が現代の明治大学ラグビー青年(緒方)が夢の中でタイムスリップするという手法を取っている事でも増長されている。タイムスリップした現代青年が戦時思想に順応できずに、徴兵拒否をして逃亡を続ける逸話だが、今の平和思想から見れば戦時中の人々が狂っているということを強調したいのであろうが、逆に無責任で女々しい平和ボケをクローズアップさせている。表面的な反戦だけにとどまり、戦争の本質的な部分は意図的にカットしているような印象があり、何のために本作を作ったのか意図がわからない。 前作から45年。前作と比較してみれば、その間に日本人が失ったものが良くわかる。映画の手法云々以前に、あまりもストレートな感情表現と「こんな戦争誰が始めたんだ」などの平和スローガン連呼は見ていて辟易とする。確かに戦争の悲壮さの現実性が薄れているとはいえ、ただ平和をシュプレヒコールのように叫び批判する事でしか戦争を直視してこなかったツケなのであろう。また、主人公らを戦争被害者としてしか捉えておらず、平和の到来が他力本願的にやってくるかのような錯覚は、原作「きけ、わだつみの声」の本当の声には応えていないと思う。学徒兵の声はもっと複雑で、もっと深淵で高尚なものであったと信じている。 映像的にはそこそこの爆薬量で戦闘シーンは迫力がある。また、累々とした日本兵の屍などは結構リアル。航空機は零戦52型の実機が1機(サイパン鹵獲機の「61-120」で、アメリカのプレインズ・オブ・フェイム所有だとか)ともっとずんぐりした機体(テキサンだと思う)が1機出てくる。せっかく実機使ってもたった2機しか飛行しないのでしょぼいんだけど。その他はラジコンかミニチュアの特撮となっている。特攻シーンは特攻記録映像の使い回し。それ以外は見所はない。 全体として、脚本のレベルが低いうえ、役者の選択、映像編集の技術など日本映画の没落を感じざるを得ない作品だ。幾多も盛り込まれた感動シーンもさほど感情移入できないなど、これこそわだつみの声に対する冒涜なのではないかと感じるのであった。 興奮度★沈痛度★★爽快度★感涙度★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1995年、明治大学ラグビー部の鶴谷(緒方)はグラウンドで見た事のないラガーマン3人に出会う。聞けば明治大学の勝村(織田)、早稲田大学の芥川(仲村)、東京大学の相原(風間)だという。そして次の瞬間、昭和18年10月21日の神宮外苑の学徒出陣壮行会の行進の列に混ざっていた。現代を生きてきた鶴谷にとって、何が起こっているのもわからず、徴兵で戦地に行くなど理解すら出来なかった。何故徴兵拒否しないのか、戦争に反対しないのかという鶴谷の疑問に、勝村らは仕方ないだろうと一笑に付すのであった。広島郊外の実家に戻った鶴谷は、両親や近所の人が出征祝いに興じる中、徴兵拒否を決意する。 勝村は幹部候補生となり仙台師団で訓練を積み、陸軍少尉として昭和20年1月南方へ送られることとなる。行き先も知らされず輸送船団は南方へ進むが、フィリピン北方でアメリカ軍潜水艦の雷撃でことごとく撃沈される。勝村少尉はなんとかルソン島リンガエン湾に泳いでたどり着くが、砂浜でもアメリカ戦闘機の機銃掃射でやられ、最終的に部下はほとんど残っていなかった。同じ輸送船に乗り込んでいた一人に東大の相原一等兵がいた。相原はあえて士官候補にはならず兵卒として入隊していた。せめてもの抵抗であったのだ。相原は足をやられ、野戦病院に担ぎ込まれる。しかし、赤十字を掲げた野戦病院もアメリカ軍戦闘機の銃撃の対象となっていた。 早稲田の芥川は海軍航空隊に入隊しており、少尉任官とともに特攻隊員として志願していた。いよいよ特攻命令が下される事となり、1日の休暇を許された芥川少尉は亡くなった恋人の墓参りをし、母親と妹と面会する。決して、特攻の事を悟られてはならぬと厳命されていた芥川は悟られないように務め、引き出しの中に遺書を隠して去る。しかし、別れ際に大声でさようならと叫ぶ芥川に母親は息子の特攻死を悟る。 リンガエン湾の野戦病院では、遊軍となっていた近藤中尉が指揮をとっていた。しかし、近藤中尉以下の部下は土民の村で掠奪、殺人など横暴で残虐な行為を続ける。制止しようとする勝村少尉にも命令だと言い放つ。また、壊滅したリンガエン湾守備隊の生き残り大野木上等兵(的場)が司令部から取ってきたオートバイに慰安婦を乗せて合流する。大野木は米軍から鹵獲した機関銃を持っていた。慰安婦は実は朝鮮人で騙されて連れてこられたという。 敵が近づいてきたため、近藤中尉は撤退を始める。しかし、歩けない傷病兵は置き去りにされ自決用の手榴弾を渡される。次々に自決する仲間を尻目に撤退するが、近藤中尉の部下は看護婦らを暴行しようと企む。しかし、勝村の抵抗で未遂に終わり、勝村は上官である近藤中尉を射殺してしまう。近藤の部下は別行動をとり、勝村は指揮官となる。大野木上等兵は慰安婦と共に海岸へ出るが、米軍機の機銃掃射で二人とも死亡する。 鶴谷は無人島で逃亡生活を送るが、憲兵隊の執拗な追跡で次第に追いつめられる。実家では両親が非国民の家として罵声や石を投げつけられている。 8月16日になり芥川は特攻機に搭乗して敵艦に突入する。 勝村の部隊は軍医、婦長ともに死亡し、もはや限界に近づきつつあった。やっとみつけた洞窟内で先に行った近藤中尉の部下達の死体を見つける。しかも、もも肉を食べた形跡すらあった。勝村少尉は、負傷している相原と看護婦に降伏しろと言い残し、自らは手榴弾の束でボールのようにし、「こんな戦争誰がはじめたんだ」と敵陣に突入トライして果てる。さらに、相原と看護婦も白旗をあげて行進するも力尽きる。 逃亡していた鶴谷は鉄塔の上に追いつめられ、「日本は負けるんだ」と大声で叫ぶが、ついに広島憲兵隊に捕まる。そして拷問の末、日本刀で切られる。その瞬間、ぴかっと閃光が走り、広島は焼け野原となる。原爆の投下だ。鶴谷は「こんなに血を流さないと終わらないのか」と呟く。 グラウンドで我に返った鶴谷は、勝村らの姿を探すがどこにもいない。しかし、ロッカールームに行くと、そこに汚れた軍靴があった。やっぱり彼らはいたんだ。鶴谷は3人とともにグラウンドでラグビーに興じるのだった。DVD検索「きけ、わだつみの声」を探す(楽天)
2005年10月24日
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1950 東映 監督:関川秀雄 出演:伊豆肇、沼田曜一、河野秋武、原保美ほか 109分 モノクロ 学問半ばで戦場に駆り出された学徒兵とその教授の心情と苦悩、そして戦場の不条理を描いた反戦的映画。学徒兵の手記とあるだけに、学徒兵を好意的に描き、兵学校出や幹部の不正や不条理ぶりをことさら強調している。学徒兵は軟弱だと言われつつも、士官任官として優遇された複雑な立場がつらい。また、そこに大学の助教授が兵卒として徴兵されてくるという、二重の伏線が戦場での立場の逆転と上官命令絶対の不条理を際だたせている。大学助教授だとわかるや犬の真似をさせる士官や、反抗的な部下を射殺する上官など、なかなかキツイ描写もある。 本作は、後の反戦映画のように顕著な反戦史観やスローガンをあまり前面に出しておらず、映像や人物描写によってそれを著そうとしている点は好感が持てる。従って、映像的にはかなり悲惨なものがあるし、行動も切羽詰まった究極の選択ばかりである。自決シーンや突撃シーンなど、最後まで胸にずしんと重くのしかかるものがある。ただし、仏文助教授と学徒のやりとりなどはインテリさが強調されすぎて、逆にインテリに対する嫌悪感さえ抱かせる。学徒=インテリ=学生運動=反戦という戦後日本に植え付けられた構図が浮かんでくる。救いは、重傷の見習士官(学徒兵)が口先ばかりで自決すらできないシーンが映画の公平感を保っている点だ。学徒にもいろいろいるだろうし、学徒の苦悩とは本当にこんなものだったのかという疑問は大いに残る。 映像的にはやつれた軍装、沼地に屍れる兵隊描写がなかなか秀逸。モノクロだから余計にリアルなのだろうが、後世の映画に負けていない。兵器類は全く登場しないが、戦闘シーンでの爆薬使用量は少なくない。建物の爆破や手榴弾の爆破シーンは結構迫力がある。ただし、ラストの死体から魂が抜け出すシーンはいかがなものか。1950、60年代の映画にありがちな、滅亡(敗北)からの再生をイメージする特徴的な技法だとは思うのだが。 興奮度★★★沈痛度★★★★★爽快度★感涙度★★(以下あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 敗色濃いビルマ方面での戦線。東京大学仏文助教授だった大木二等兵と鶴田上等兵は全滅した弓兵団サク部隊の生き残りとして、ようやく柴山部隊にたどり着く。大隊長の柴山少佐は員数外を快く思わなかったが、二人を青地軍曹の小隊に付けることにする。そこに牧見習士官がやってくるが、実は大木二等兵は東京大学で牧の担当教官でもあったのだ。再会を喜ぶ二人だが、兵学校での岸野中尉はインテリを不愉快に思い、大木二等兵に犬の真似をさせて制裁を加える。 牧見習士官の小隊には河西一等兵という学生運動家がいた。同じインテリとして大木と河西は話が弾み、大木は何故もっと戦争に反対しなかったのかと反省するのだった。 いよいよ戦局が悪くなり、柴山大隊は後方陣地へ撤退する事となる。その際に歩けない重病患者は置いていく事にする。その選別は野々村軍医中尉が行うが、慶応大出の野々村中尉は学徒兵に好意的だった。撤退が近づいてきた頃、青地小隊の部下達が鶴田上等兵の扇動で大隊長の馬を殺して食べる事を計画。青地軍曹は部下の体力の事を思い、それを黙認する。 怒り狂った柴山少佐と岸野中尉は、犯人が青地軍曹だと知り制裁を加える。それを河西一等兵が止めに入ったため、岸野中尉は叛乱分子として河西一等兵を密かに殺害してしまう。 大隊の撤退が始まり、動けない7名が手榴弾を支給されて現地に取り残された。片足の千葉上等兵は後を追いかけるが追いつけるはずもない。他の一等兵は気が触れた軍曹と自爆する。気丈に振る舞った木村見習士官も自決しようとするが、恐れをなして失敗し、他の兵によって安楽死される。こうして7名全員が死んでいく。 一方、移動した大隊も敵と激しい攻防戦を繰り広げていた。野々村軍医も目をやられ毒薬で自決する。劣勢となった柴山少佐と岸野中尉は数名の部下を連れて脱出する事を画策する。それを見た青地軍曹は「戦争なんてナンセンスだ。誰が始めたんだ」と叫び白旗を掲げて歩いていく。しかし、直撃弾で爆死する。牧見習士官は胸部に破片を受け、大木二等兵に抱かれていた。二人はモンテーニュについての講義を始め、ついに大木二等兵も銃弾に倒れるのだった。DVD検索「日本戦没学生の手記 きけ、わだつみの声」を探す(楽天)
2005年10月21日
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1954 新東宝 監督:阿部豊 出演:早川雪洲、藤田進、山村聡、丹波哲郎、宇津井健ほか109分 モノクロ 意外と知られていない、日本無条件降伏受諾を巡る政府・軍部の騒動を描いたもの。降伏に反対する陸軍将校の決起顛末を描いた映画としては「日本のいちばん長い日(1967)」が有名であるが、本作はそれよりも10年以上も前に製作されたものである。「日本のいちばん長い日」は原作者半藤一利の詳細な取材に基づいて製作されているのだが、本作は大雑把な作りとはいえ、十分史実に沿って作られているのが驚きだ。脚本の館岡謙之助が優れていたのであろうか。 戦後映画にありがちな軍部批判や左翼がかったものではなく、淡々と歴史的史実を描いていくのは好感が持てる。ただし、淡々としすぎていて、登場人物像の描写が少なく面白みには欠けるかも知れない。メインとなる陸相、陸軍決起将校ともに感情移入するにはちょっと物足りないのだ。なお、本作の登場人物はいずれも仮名を用いている。例えば、阿南陸相は川浪大将、米内海相は米田、東郷外相は南郷、田中東部軍司令官は中田、森近衛師団長は林、陸相の義弟である竹下中佐は竹田といった具合だ。ちょっとした変更なので、大方誰だか推測がつく。役者では、血気盛んな陸軍将校役の丹波哲郎、海軍将校役の宇津井健が熱い。 あの8月15日の天皇陛下の玉音放送が録音版であり、その放送を阻止せんがために陸軍将校が玉音盤を奪取しようと画策したことなど、多くの若者は知らないだろう。将校らは天皇に降伏受諾を思いとどまって貰おうと死を持って画策するが、その真意、心境とは何だったのか。自決した阿南陸相の感じた責任とは。一方、降伏を受諾した東郷外相らの真意とは。たった数日間の出来事ながら、日本の未来を左右する大事が展開されていたことに驚くとともに、混迷する当事者の痛みや辛さを感じずにいられない。誰が悪いという問題ではないのだ。 タイトルの日本敗れずとは、戦後十年めざましい復興を遂げる日本は、決して根本から敗れたわけではないということを意味している。徹底抗戦派、決起将校らが危惧した国体、日本人の滅亡には至らなかったのである。興奮度★★沈痛度★★★爽快度★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意) 昭和20年8月、沖縄戦も敗れいよいよ敗色が濃くなる中、ポツダム宣言が出される。それは一日本軍国主義を抹消、二日本本土を占領、三日本軍の武装解除、四連合国による戦犯の処罰という無条件降伏の通知であった。さらに8/6に広島、8/9に長崎に原爆が投下され、加えてソ連が参戦する。 8月9日、最高戦争指導会議の場でポツダム宣言受諾について紛糾する。首相、米田海相、南郷外相は無条件受諾をすべきだとするが、川浪陸相、梅沢参謀総長、豊島軍令部総長はあくまで占領区域の制限、武装解除、戦犯処置は日本が行うこととする条件を付すことを主張する。しかし、条件付きを連合国が受けるとは思えず、その場合は徹底抗戦すべきだという。これをうけ、第一回の御前会議が開かれる。天皇はこれ以上の戦争継続は我が民族を滅ぼすものと、ポツダム宣言受諾の方針を固める。 一方、国内の和平派の逃げ腰に怒りがおさまらない、陸軍軍務課長新井大佐以下稲垣中佐、黒田中佐、畑少佐、松崎少佐、北少佐ら将校らは政権転覆のクーデターを画策していた。そのために川浪陸相の同意を得ようと直談判するも、川浪陸相は次の御前会議まで待てと回答を延ばす。川浪陸相としては将校らの意見も良くわかっているが、やはり天皇の御意に背くことでもあり如何ともしがたかったのだ。事前に中田東部軍司令官と林近衛師団長を呼び、天皇陛下の御心に従うよう伝える。 第二回の御前会議が始まる。もはやポツダム宣言受諾しか道はないとの判断で、ついに8月15日正午に玉音放送を行うことが決定される。川浪陸相もこの決定に従った。 しかし、この決定を知った陸軍将校らは、裏切られたと収まらなかった。新井課長、稲垣中佐、竹田中佐は川浪陸相の意に従うが、畑少佐、松崎少佐、北少佐らと海軍航空士官学校中原大尉はクーデターを敢行する。まずは玉音盤の放送を阻止することが先決と、中田東部軍司令官のもとへ同意を求めに行くが断られ、次いで林近衛師団長のもとへ行く。ここでも林師団長に断られ、ついに師団長を殺害し、偽の師団命令を出す。近衛師団第一連隊を出動させ、宮中及び放送局を占拠し、玉音盤の捜索を行う。玉音盤は宮中で録音され、宮内省内大臣の金庫にしまわれていたが、放送局の田部も宮内省職員も頑として口を割らなかった。 川浪陸相は玉音放送の前に自決を決意する。義弟の竹田中佐の見守る中腹を割いて自決する。偽師団命令が出ていることを知った中田東部軍司令官は急遽近衛師団のもとに行き、畑少佐らと面会。川浪陸相が自決したことなど説得を重ね、ついに畑少佐らはクーデターを諦めて自決するのだった。(注意 人名は劇中使用しているもので、実名ではありません)DVD検索「日本敗れず」を探す(楽天)
2005年10月18日
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1945 松竹 監督:佐々木康 作詞:野口米次郎、岡本一平、西条八十 作曲:山田耕筰、中山晋平出演:高峰三枝子、轟夕起子、月丘夢路、藤原義江、笠智衆ほか71分 モノクロ 制作が昭和20年3月という、本当に戦争末期の作品。本作は軍歌「米英撃滅の歌」のいわゆるプロモーション映画の位置づけとなる。作詞作曲は蒼々たるメンバーであるが、流行するだけの猶予がなかったためだろうか、ほとんど耳にする事がないマイナー軍歌である。曲調も今ひとつ盛り上がらない暗めなのも気になるのだが。 ということで、ストーリーは極めて単純で音楽学校を卒業した三人娘が紆余曲折のあと歌劇団で新曲「米英撃滅の歌」を歌う、というものだ。しかし、ストーリーは簡単だが、実は中に盛り込まれた戦意昂揚的会話はかなりシビアだ。「支那人の傍若無人な振る舞いはひどいもの」といった中国人敵視から「ジャズはアメリカの文化謀略である」といったものまである。また、映像中に出てくるスコップに「アッツ島を忘れるな」「山本元帥に続け」といったスローガンが書かれているのも面白い。 この英米撃滅の歌はどちらかというと、国内の産業戦士に向けて作られた歌のようで、炭坑、航空機製造工場、造船所といった場面で工員らが歌い行進している場面が多い。増産に向けて頑張れと言うことのようだ。そのため、映像では炭坑のシーンのほか、一式陸攻らしき航空機の生産ライン、輸送船らしき船の造船及び進水風景が映し出される。また、ラストシーンでは防空識別帯をつけた隼か鍾馗らしき飛行機と、編隊を組む隼の姿も見える。 全体として、ストーリーも映像もさほど面白いところはない。まあ、この時期に及んで映画に期待するのも無理なのだろうが。唯一、三人娘の会話から当時の女性の生態が偲ばれるといった程度であろうか。良くない男とつきあおうとする友人に向けて「それなら、わたくし、断然妨害してよ」なんて言葉は今や死語なわけです。興奮度★沈痛度★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 昭和14年、音楽学校の卒業演奏会がある。卒業した弓子、ちず?、みえ?の三人の娘はそれぞれの進路に進むこととなる。弓子は良家のお嬢様であり、そのまま藤原歌劇団に入って歌劇を続けることにした。弓子はちずも一緒にと誘うが、貧しかったちずは情をかけられるのが嫌でそれを断り、ジャズ音楽家の萩原と結婚してしまう。みえは父親が倒れたのを契機に、田舎の実家へ戻り、そこで学校の先生をする道を選択する。 作曲家の小牧たかしは、新進気鋭の作曲家だが、外国の模倣から抜けきっていない曲になってしまうことに満足がいかない。弓子は小牧と結婚し、田園調布に居を構える。また、小牧の友人であり、みえの親戚である軍楽隊兵曹の川上が前線に赴く。 一方、ちずは萩原と上海にいた。ジャズがアメリカの文化謀略だと知った萩原は次第に特命機関(スパイ)活動に熱を入れていく。折しも日独伊三国同盟が締結され、弓子の藤原歌劇団が上海でカルメンを上演する。ちずと再会した弓子は、ちずに東京へ戻る事を勧めるがちずは頑として聞かない。しかし、その晩萩原は支那人によって暗殺されてしまう。 いよいよ昭和17年12月になり日米開戦となる。真珠湾奇襲が成功し、シンガポールへ快進撃を続ける中、小牧は感動や感激を音楽にすればいいのだと作曲に開眼する。それは勤労音楽であり、炭坑や造船所で働く労働者への鼓舞となるのだ。小牧は次々に産業戦士の意気昂揚のため曲を作り、藤原歌劇団が慰問団として歌を歌って回る。その結果、採炭増産が成功するのだった。 軍楽隊の川上が戦病死する。小牧は「米英撃滅の歌」を製作する。製作発表は学徒出陣の式典で行うこととなり、弓子はちずとみえを呼び、再び三人で歌う事とするのだった。 DVD検索「撃滅の歌」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年10月16日
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1944 松竹 監督:木下恵介 原作:火野葦平 陸軍省後援 情報局国民映画出演:笠智衆、三津田健、上原謙、東野英次郎、田中絹代ほか87分 モノクロ 第二次世界大戦の真っ直中に製作された戦意昂揚国民映画(S19年11月完成)。とはいえ、戦争前半期のような勇ましいタイプではなく、主眼は男子の出征を推奨する内容となっている。九州の質屋の息子が陸軍兵として出征していくまでを描いたものだが、後援が陸軍省、戦局も雲行きが悪い中、映画の検閲は相当厳しくなっている様子が伺える。もはや、映画のストーリーなどどうでもよく、冒頭の日本国体や対外排斥戦争の正統性を説く歴史解説、また随所に盛り込まれる戦陣訓や軍国主義的会話が異様な雰囲気を醸し出している。そのため、映画としての出来はかなり低いと言わざるを得ない。 むしろ、本作は戦争末期の日本国民の雰囲気と切羽詰まった軍部や映画界の迷走ぶりを垣間見る記録映画としての価値がある。映画中に出てくる会話も建前と本音が入り乱れ、木下監督も相当苦しんだと思われる。意外なのは、映画の大半までは、頑ななまでの軍国主義調なのだが、ラスト間近で突然、戦地に子をやる母親の情愛が前面に出てくる。行進する息子に追いすがる母、目で頷き合う母子の姿は、かなり女々しいと取られても仕方のない程だ。木下監督としては人の心を描こうとしたのであろうが、軍部としてはいささか苦虫を噛んだに違いない。しかし、こうした表現が許されたのも、母の情愛への共感を借りなければ、戦意昂揚出来ないほど切迫した世情であったと推測できるのだ。 主演級は笠智衆と東野英次郎で母親役は田中絹代。後の名優達の若き姿が楽しめる。登場する兵器類は全くないが、九州福岡の市街地の風景や山笠祭りの映像は貴重なものである。また、先にも述べたが、軍国主義観が随所に盛り込まれており、「上京して一番に宮城に行かぬとは何事だ」とか本に茶をこぼして「本にお詫び申し上げなさい」など逆鱗に触れる価値観が今では想像すらできないのが驚きだ。興奮度★沈痛度★★★爽快度★感涙度★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 幕末(慶応二年)の九州小倉。長州騎兵隊が城下に攻め入り、質屋「高木屋」も逃げる準備を進めている。しかし、息子の高木友の丞は騎兵隊に興味を抱いていた。瀕死の藩士竹内から水戸光圀公の著した「大日本史」を預かった友の丞は、明治維新後騎兵隊の山県有朋と懇意になる。 折しも日清戦争後の支那に関して三国干渉が始まり、高木友の丞は怒りにまかせて山県のもとに陳情に赴く。山県から日本はまだ蓄えができていないと諭された友の丞は東京で倒れる。急遽見舞いに上京した息子友彦(笠)に対し、友の丞は「上京して一番に宮城へまいらないとはどういうことか」と叱りつける。 明治37年日露戦争が勃発。高木友彦は陸軍歩兵大尉として出陣するが、結局病で一度も前線に出ることなく帰還する。失意のまま質屋の高木屋は借金で傾き、窮地を救おうとした小松屋まで怒らせてしまい、結局店を小さくして再出発を図る事にする。 その時、運送会社を営む桜木常三郎(東野)が従業員の奉公団の指導者を求めている事を知り、訪ねるが、ここでも些細な事から喧嘩別れする。桜木はその気っ風に惚れ採用すると言ってくるが、友彦は頑として受け入れない。しかし、祭りの日に母親を気遣う桜木の姿を見て、友彦は指導者を受ける事を決心する。 友彦の息子伸太郎も成人し、陸軍に入営。上等兵候補として訓練に励む。その同期には桜木の息子常吉もいた。ところが、元寇の話題で「神風が吹かなかったらどうなっていただろう」という桜木に「風が吹かなくても絶対に日本は負けない」と友彦が怒り、再び喧嘩別れしてしまう。 支那事変が勃発。伸太郎も上等兵となり、桜木の息子は戦地に赴く。しかし、伸太郎は初年兵係として国内に残留することに。親同士は喧嘩していても息子同士は戦友であり、伸太郎はなんとか仲直りしてくれるよう友彦に頼む。 桜木常三郎は、軍属となり港湾事務所で働き始める。その元に友彦のかつての戦友仁科大尉がやってきて、前線の戦闘情報を話す。その話は息子常吉が所属するイカリ大隊機関銃隊のものであり、決死の突撃を果たした話を聞いた桜木は、息子の消息を仁科大尉に執拗に訪ねる。その態度に仁科大尉は「自分の息子のことばかり言うな」と怒りつける。そこに、友彦が桜木に謝るためにやってきて、仁科と再開する。その姿を見て桜木は「戦友とはいいものだなあ」と呟く。 ついに伸太郎も前線に赴くことが決定。母親のわかは見送りにいかないと言うが、家で戦陣訓をつぶやくうちにいてもたっても居れず、行進に向かう。行進する息子伸太郎を必至で捜し出すと、その脇をずっとついていく。目と目でうなづきあう母と子。わかは息子を合掌して見送るのだった。DVD検索「陸軍」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年10月09日
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1988 イギリス 監督:イアン・トイントン出演:ボイド・ゲインズ、ディビッド・ホロビッチ、ニール・ダッジョン、トム・バーリントンほか300分(各100分) カラー イギリスのテレビドラマとして製作された航空戦記。DVDBOXは3本立てで、(1)迫りくるナチの脅威 (2)ナチに蹂躙されるヨーロッパ (3)英本土空中戦となっている。バトル・オブ・ブリテンと言えば、やはり「空軍大戦略(1969)」が有名だが、本作は空軍大戦略に負けないだけ十分の内容と迫力がある。バトル・オブ・ブリテンとは1939年9月から約1年間のドイツ空軍隊イギリス空軍の死闘を指すもので、本作の原作は1983年に出版されたデレク・ロビンソンの同名小説である。監督はあの24時間リアルタイムサスペンスドラマ「24」を手がけた人物でもある。登場する航空機も実機のスピットファイアやメッサーシュミットということで、空中戦も大迫力である。空軍大戦略ほど多くの実機は登場しないものの、時代が新しい分、カメラワークも良く、むしろ迫力感がアップしているとも言える。 結論から言えば、私個人的には空軍大戦略よりも好きかもしれない。空軍大戦略の方は、どちらかというとストーリー性が乏しく、戦記物の雰囲気があり、数多くの実機シーンと史実エピソードを多く盛り込んでいるのに対し、本作は三話構成になっており、ホーネット中隊を核とした一貫したストーリー構成がある。その分史実戦記的な部分が乏しいが、空中戦の迫力とともに妥協のないシビアなストーリー性に圧倒されてしまうのだ。 第一話、第二話は比較的のんびりとした調子で、戦闘シーンも少なく、人物エピソード中心となっており、今ひとつの作品かと思わせるが、第三話はいきなり激しい展開を見せる。容赦なくパイロットは死んでいくし、物語としての温情もない。第二話までの流れがその伏線であったと気づかされる。このことは、対独戦に対して危機感の甘かった英国人の感覚をそのまま映像化したようなものなのかもしれない。 本作はスピットファイア戦闘機に乗るホーネット中隊を中心に描いているが、登場人物は比較的多いと言える。しっかりと顔と名前を覚えておく必要がある。ただ、個性的な役者が多く覚えやすい方だとは思う。パイロットの性格も、貴族出身の形式主義の隊長、悪態ばかり付き態度の悪い男、アメリカ人義勇兵、チェコ人パイロット、哲学的な副官、学者肌の情報部員など、実に個性的というか特徴的に設定されており、いろいろな性格の人物像を追いかけていくのが楽しい。自分はどのタイプかとか、どのタイプが好感が持てるかなどという観点で見ても楽しいだろう。とはいえ、結構簡単にパイロットが戦死していくのはつらいが。 登場する航空機の情報がないので、今ひとつよくわからないが、スピットファイアは防滴型風防のタイプで、実際に飛行しているのは最大6機程のようだ。空軍大戦略使用機の使い回しか?。メッサーシュミットBf109は空戦シーンがほとんどで、良く判別できない。実機と思しきものもあるが、空戦シーンの多くはラジコンかミニチュアと思われる。同じく、ハインケルHe111も登場するが、どれも実機らしさはなくミニチュアのような気がする。空戦シーンでは、空軍大戦略同様コックピット前方からの撮影が用いられている。空軍大戦略ではいささか行き過ぎの感があったが、こちらは結構リアルに見える。 好みの問題で空軍大戦略の方がいいという人もいるだろうが、どちらもバトル・オブ・ブリテンで酷使される英国空軍パイロットの過酷な戦いぶりが良く表現されている。チャーチルが彼らについて語った「Never in the field of human conflict was so mach owed by so many to so few(人類の戦闘において、かくも多数の人々が、かくも少数の人々によって、これほど多くの恩恵をうけたことはかつてない)」が全てなのである。興奮度★★★★★沈痛度★★★★爽快度★★★感涙度★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)(1) 1939年9月ドイツ軍はポーランドへ侵攻。イギリスは最後通牒を通告する。イギリス国内の戦闘機隊ホーネット中隊は訓練にあけくれている。中隊長が事故死し、バートン大尉が隊長代理を務める。もともと指揮官タイプではないバートンは部下を取りまとめるのに苦労する。特に、モギーは言動が悪い。 そんな中、事件が起きる。部下の能力は高くなく、特に敵味方機の識別能力が劣っていた。案の定、ユンカース88爆撃機と誤認して撃墜したのが英軍のブレニム爆撃機であり、死者が出る。バートンは本部へ謝罪に向かうがそのまま身柄を拘束される。変わって中隊長に着任したのはレックス少佐だった。愛犬の「バカ犬」を連れた英国貴族のレックス少佐は立ち振る舞いも雅やかであった。 部隊はフランスのル・トゥケへ転進する。レックス少佐は強引に古い城を司令部に据え、料理人を雇って豪華な食事を振る舞う。正式にドイツ軍と戦線を開いていないまま、時が過ぎていく。ケンブリッジ大学卒の情報部員スケルトン中尉は対独戦(ポーランド・チェコ支援)の意義に疑問を呈するが、ブレッチリー准将は一蹴する。 バートンの後継にはアメリカ人義勇兵のクリス・ハート少尉が着任する。スペイン内戦経験がある男だが、規律に自由なうえ説教癖があり、レックス少佐とは反りがあわなかった。 モギーはピップやスターに司令部近くにある橋の下を飛行機で潜ることをけしかける。技術のあるモギーは難なく成功するが、スターは激突死してしまう。初めての戦死者が出るが、モギーは極めて冷めている。ピップも潜ることが出来なかったが、モギーには潜ったと言い張る。スターはフランスで葬られるが、フランス人は好意的ではない。フランス人のために戦っているのにとパイロットらは怒るのだった。(2) 1939年12月。中隊は遭遇したドイツ軍He111爆撃機を撃墜。彼らは初めて墜落した機でドイツ軍パイロットの死体を見る。戦争を実感した瞬間だ。 一方、フィッツ少尉は未亡人ヘレンとフラッシュ・ゴードン少尉はニコールというフランス人女性と恋に落ちる。やがて、二人は結婚する事にする。 レックス少佐は正確な編隊飛行を強要する。しかし、ハート少尉は実戦では役立たないと批判する。レックス少佐はハートを中隊からはずしたがるが、准将はアメリカ兵が活躍していることを世間的に知らしめるため、それを許可しなかった。 中隊は金も持たずに帰隊する4日間のサバイバル訓練を実施する。モギーはわざと犯罪を犯して警察に車両で帰隊する。一方ハートはミラーらを誘ってスイスへ行き観光旅行を楽しむ。レックス少佐もこれには怒り心頭になる。 ある日、レックス少佐らはMe109に後方から襲撃される。レックス少佐が編隊飛行を気にしすぎた結果である。その結果、ミラーが戦死。フラッシュは落下傘で脱出。ピップも脱出時に頭を強打して負傷する。部下たちは次第にレックス少佐に不信感を持ち始め、「最後尾に付けという命令は無視しろ」とまで言い始めるのだった。 1940年3月、新人のトレベリアンが配属されるが、またもや背後からの攻撃で最後尾だったトレベリアンは僚機の誰にも知られぬまま撃墜される。また、コックスは指を飛ばされる。ハートは厳しくレックスを批判し、中立を保ってきた中隊副官のアンクル大尉や情報部員のスケルトン中尉もまた批判的であった。 フィッツ少尉とフラッシュ少尉の合同結婚式の日、ドイツ軍の空爆がある。背中に破片を受けたレックス少佐だったが、強引に空戦に飛び立つ。この日を境に次第にレックス少佐の言動が好戦的に変わっていく。ついに、レックス少佐は多大な敵機に突入を試み、それに従ったマリオット、ダットンとともに戦死する。 レックス少佐の後任にはバートン大尉が着任する。しかし、すでに中隊の残機は4機となっていた。ピップは負傷が完治していたが、臆病になっており飛行機に乗ろうとしなかった。さらに、避難途中のニコールが死亡し、フラッシュは気がおかしくなりはじめる。(3) 残り4機を乗り回しながら奮戦が始まる。しかし、ついにスティッキーが撃墜され、ようやく搭乗したピップは撃たれてもいないのに非常脱出し、ホーネット中隊は残り2機となってしまう。ここで、中隊はイギリス本土に引き揚げる事となる。 本土のB・ヘイゼル基地に隊員らは集合する。フラッシュはかなり変人と化していた。モギーは新人ステビングをけしかけて赤十字機を撃墜させる。准将は撃墜を公表させないが、今度も見たら撃ち落とせと命令する。 フラッシュは逆さま飛行をするなど行動がおかしくなる。 1949年8月になり、フリップ、モーリス、モランと歴戦の勇士が次々と戦死していく。さらに、フィッツも海上に墜落する。しかし、夫人のヘレンは夫の死を認めようとせず、飛行場に顔を出すようになる。モギーも被弾し脱出するが、モギー機は市街地に墜落。民間人に死者が出る。モギーは反省する風もないが、准将は事実を全て伏せろと命令する。 新人パイロットが補充され、中隊の練度もかなり落ちてくる。戦果報告もかなり怪しいと見たスケルトン中尉はガンカメラの設置を行う。その結果、ガンカメラに写されていたのは、別機による撃墜シーンと、味方機への射撃シーンであった。 小隊長サビーが撃墜され、後任小隊長にフラッシュ少尉が着く。しかし、ついにフラッシュも被弾し、なんとか機体を着陸させるがその場で絶命する。もはや、ホーネット中隊の生え抜き隊員はほんの一握りとなっていた。機体とパイロットの消耗戦である。 チャーチルが演説をする。「人類の戦闘において、かくも多数の人々が、かくも少数の人々によって、これほど多くの恩恵をうけたことはかつてない」。またもやホーネット中隊は残機が5機となる。 ついに、チェコ人パイロットハディも戦死、ハート少尉も炎上する機体から脱出するもパラシュートが開かずに墜落死する。モギーは味方陣地上空で Me109を撃墜するも後方からの銃撃で戦死する。生え抜きで後に残ったのはバートン大尉とピップだけとなってしまう。 1940年9月7日、ドイツ軍最大の攻撃が始まる。バートンとピップは迎撃に空に飛び立つ。この日がバトル・オブ・ブリテンの峠となる。DVD検索「バトル・オブ・ブリテン」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年10月04日
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1961 東宝 監督:佐伯幸三出演:ハナ肇、渥美清、桂小金次、植木等、野村昭子、春川ますみ、ザ・ピーナッツほか 81分 モノクロ クレイジーキャッツ、渥美清が出演。さらに中国軍女兵士に野村昭子、春川ますみなどが扮する超豪華メンバーの娯楽映画。随所に笑いを取るためのコメディが織り込まれている。 舞台は第二次世界大戦末期の中国戦線だが、当然設定は適当。日本兵の姿格好はまあ見れるが、中国軍女兵の軍装やその存在そのものは無茶苦茶。中国を小馬鹿にしているのか、リアリティを求めない時代性か。まあ、そういう点はコメディなので気にする事はないのだが、一番気になるのはストーリー。クレージーキャットや渥美清が出てきて、最初から最後までコメディ路線で行ってくれればいいのだが、意外と暗く重苦しい展開がのしかかる。映画の主題をひっくり返すような、信じられないどんでん返しもあり、尻切れトンボのようなエンドと言い、何を見せたかったのかわからない。これだけの喜劇スターを集めたのだから、とことんコメディに徹して欲しかった。 映像はほとんどが屋内スタジオ撮影。銃撃戦シーンもほんの最初だけ。あとは、主人公3人と中国女兵のドタバタ。ハナ肇、渥美清、桂小金次の異種合作のコメディはなかなか見物。また、中国女兵ではドラマ「家政婦は見た」シリーズの野村昭子が隊長役でとっても良い味を出している(今とあんまり変わらないというのも凄い・・・)。春川ますみも入浴シーンで、すわヌードかと思わせるきわどい場面も。役者の味という点では素晴らしいので、やはりストーリ構成の難が残念なのである。興奮度★★沈痛度★★★爽快度★感涙度★(以下ネタバレ注意 反転でご覧ください) 第二次世界大戦末期の中国戦線。南支派遣軍木村分遣隊は中国軍の襲撃を受け、頓田(ハナ)、三木本(渥美)、松浦(桂)の三人の二等兵を残して全滅。三人は命からがら戦場を脱出する。この際商売に転じようという三木本らに対し、頓田は先任として戦線に戻る事を主張した。 途中で立ち寄った民家で、親類の子を抱く女桂花と出会う。桂花は日本兵を嫌っていたが、三人が子供ミルクを分け与えているうちに打ち解ける。 枝本分遣隊にたどり着いた三人は、分遣隊に取り込まれるが、枝本分遣隊は最下級兵でも兵長という古参部隊であった。三人は新兵として雑用に使役される。そのうち、三人は古参兵が暴行しようとしてた双子の娘ソーラン、シンシュー(ザ・ピーナッツ)を助ける。 しかし、本隊では木村分遣隊が全滅したと報告済みであり、三人が生きている事がおもわしくなかった。そこで、三人は無茶な偵察任務を言い渡される。しばらくしても戻ってこない三人に分遣隊は三人の葬儀を進めるが、ふと気づくと三人がその列に加わっているではないか。三人は無事戻ってきたのだった。 続けて、三人はさらに危険な任務を言い渡される。付近に陣を構える中国軍に潜入して情報を入手して来るというものだ。しかも、相手は女兵士の部隊である。途中で水浴び中の女兵から奪った服装を身につけ、三人は女に化けて女兵ばかりの中国軍に潜入する。女兵との入浴や、添い寝という危機をいくども乗り越えるが、ついに身体検査の過程で男である事がバレ、さらに服を奪われた女兵の帰還で日本兵である事もバレてしまう。 中国女兵隊長(野村)、副隊長(春川)のもと軍事裁判が行われる。その検察役はなんとあの桂花が務めていた。弁護人の巧みな弁護で一時は無罪になりかけるが、頑固な頓田は捕虜になる事を潔しとせず、スパイであることを暴露し、死刑判決となる。 いよいよ死刑執行が近づいてくるが、三人の死刑に気が進まない桂花のもとに、かつて暴行を助けたソーラン、シンシューも三人の死刑中止を求めてくる。桂花は隊長に進言し、三人が中国軍に協力させることを条件に死刑中止を勝ち取る。しかし、中国軍に協力する事を拒んだ頓田は機密書類を入手のうえ脱走するも、桂花に見つかり銃で撃たれる・・・・。 と頓田はここで目が醒める。明日の危険任務を前に夢を見ていたのだ。三人は改めて危険な任務に赴く。その途中で、自軍陣地が襲撃される音に気づく。戻った三人は全滅した枝本分遣隊の姿を見る。またも命を延ばした三人はあてもなく広い荒野を歩いていく。その足下には「日本降伏 戦争終結」のビラが落ちている。DVD検索「腰抜け女兵騒動」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年10月02日
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10月になると、ちょっと戦争映画は少なめになってきたようです。260 シネフィルイマジカ荒鷲の要塞(1968英米)アンダーグラウンド(1995仏独ハンガリー)駆逐艦ベッドフォード(1965米)サハラに舞う羽(2002米英)リリー・マルレーン(1981西独)310衛星劇場上海の女(1952日本)少年義勇兵(2000タイ)陸軍中野学校(1963日本)312ムービープラス1936年の日々(1972ギリシャ)315スターチャンネル戦艦バウンティー(1962米)閉ざされた森(2003加米独)パットン大戦車軍団(1969米)ブラザーフッド(2004韓)山猫は眠らない2狙撃手の掟(2002米)316スターチャンネルプラスきみの帰る場所アントワンフィッシャー(2002米)317スターチャンネルクラシック地獄の黙示録 特別完全版(2001米)ナバロンの嵐(1978英)ハートブレイク・リッジ勝利の戦場(1986米)ベンガルの槍騎兵(1935米)360スーパーチャンネル戦略大作戦(1970米)楽園をください(1999米)707日本映画専門チャンネルわが愛の記(1941日本)725AXN1941(1980米)エージェント・レッド(2000米加)グローリー(1989米)ペイパービューch171コバート・ミッション機密指令(2002米) 9/30~10/6 \420エア・マーシャルF-16北海テロリストウォーズ(2003米) 10/7~10/13 \420ディープ・クラッシュ米本土核攻撃(2002米) 10/14~10/20 \420ch162世界最強特殊部隊S.A.S第3シーズン(2004英)全4話 10/21~10/27 \735 今月の作品の中では「少年義勇兵(2000タイ)」がレア作品と言えるでしょうか。また「駆逐艦ベッドフォード(1965米)」「サハラに舞う羽(2002米英)」「閉ざされた森(2003加米独)」「グローリー(1989米)」あたりは映画としても面白いです。 このほかペーパービューのアメリカアクション映画3本立てはテレビ初公開ですが、内容の方は・・・どうなんでしょうか。あくまでアクション系映画ですのでそういう視点で見る必要があります。また、s.a.sも第3シーズンになりましたが、DVDを買うと万単位の金がかかりますからPPVで録画できるならこの機会を逃す手はありません。 ところでタイ作品の「少年義勇兵」ですが、抗日をネタにしているため、いささか不愉快な部分もあるようですが、この作品情報を調べているうちにこんな映画レビューに出会いました。非戦音楽家だそうですが、ページもひたすら「赤」いんですが、最後の件「(引用開始) 間抜けなニセ右翼の大東亜戦争肯定論に打撃を与える新事実は、まだまだこれからも次々と明るみにされることだろう。日ソ中立条約を踏みにじったソ連をとやかく言うのであれば、当然、日本がやった数々の国際法違反行為も言わなくてはならない。もしホンモノの民族主義者がこの日本にもいるのなら、まさに先の大戦を直視することから始めなければウソである(まあ、そんなんおらんわな)。(引用終)」に驚いた。何のこっちゃ。まあ、こういう輩はどんな事象でも結論が決まっているから仕方ないんだろうけど、すごい論理についてけませんでした。非戦と言うよりはモロ反日音楽家か、自虐音楽家だろうと思うんだけど。ま、いいか。
2005年10月01日
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1936 朝日新聞社 編集:星野辰男 指導:陸軍歩兵少佐 松井真二 10分 モノクロ 日露戦争奉天海戦勝利30年の陸軍記念日(3/10)に作られた「陸軍記念日を祝ふ歌(山田耕作:作曲)」の紹介と歌唱指導を兼ねたような映画。陸軍記念日を祝ふ歌は戸山軍楽隊の演奏で、背景映像は世界の列強国の軍備状況を写している。従って、当時の世界の軍事状況の一端を垣間見る事が出来、なかなか興味深いものがある。 各国の軍備紹介をするにあたり、「平和なき世界」と名打ち、「堅き備へは東亜の鎮め」と日本の軍備増強を押し進めようという意図が見えてくる。 イギリス軍の映像は軍艦が用いられている。きちんと調べていないが戦艦か重巡クラスのようだ。 ドイツ軍ではドルニエDo23爆撃機と思われる編隊飛行シーンと1号戦車?の車列行進シーンが登場。もちろんドイツ兵も出てくる。 イタリア軍はドイツ製ユンカース爆撃機?らしき編隊と、L3/33豆戦車が登場する。 エチオピア軍は兵隊の行進と騎馬隊のみ。 アメリカ軍はグラマンJ2Fダック偵察機の飛行シーンと複葉機を艦載したレキシントン(初代)級空母と戦艦か重巡クラスの戦闘艦が出てくる。 中国軍は歩兵のみ。 ソヴィエト軍はツポレフTB-3(ANT-6)?のような飛行機編隊から降りる空挺部隊のシーンと、赤の広場を行進するT-37水陸両用戦車の車列が出てくる。 日本軍は八七式重爆撃機が出てくる。 艦船の方はあまりよく調べていないのですが、世界各国の映像を入手できる時代としては実にレアな映像と言えるでしょう。興奮度★★★沈痛度★爽快度★感涙度★日本映画社通販DVD「戦時下のスクリーン」は2005年7月30日発売。DVD2枚組(分売不可):\10,500(税込)+\700(税込送料) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月29日
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1929 文部省 監督:長倉祐孝 総指揮:池永浩久 19分 モノクロ 文部省の教化映画として製作された一つで、皇国史観に基づく建国、神話、元寇襲来、黒船襲来、日清戦争、日露戦争、昭和の産業化までを歴史映画的に仕立て上げている。たかだが19分で日本の歴史を示せるわけもないが、外敵の排除という要所を押さえる事によってコンパクトに仕立て上げている。何よりも、今となって見れば、皇国史観というものが何なのかを知る上で、実に新鮮でわかりやすいものとなっている。 映画の教化主眼は、「(明治)維新後、日本は積極的に外国文化を取り入れ、産業発展に尽くし、世界に名だたる国となったが、それでもなお欧米列強には劣っている。これまで外敵を排除し、皇国を作り上げてきた日本国民の意地で更に精進しよう」といったところか。 冒頭の建国シーンはさげ美豆良(みずら)を結った弥生~古代人の姿で登場。なるほど、この時点ではようやく縄文式土器が弥生式土器より古いことがわかりかけてきた時期であり、さすがに狩猟生活の縄文人で描く事はできなかったのだろう。また、鳥見の土豪ナガスネヒコを悪者に仕立て、天皇家が征伐するのも必須シーンだ。当然だが、橿原宮に遷宮して皇紀元年としている(もちろん実年代は違うけど)。 元寇襲来では神風を亀山上皇が祈願して吹かせたとする。面白いのは、黒船がやってきて開国した事を「姑息なりし鎖国、徳川幕府三百年軽ちょう浮葉の風巷に満ちて」と徳川幕府の施政と鎖国を痛烈に批判しているところだ。皇国史観としては幕府体制は悪政の極みと言ったところなのだろう。 日本の近代化シーンでは、川崎八七式重爆撃機のエンジン部分、中島甲式四型戦闘機(ニューポール29)が登場する。欧米列強シーンでは飛行船、ビルディング、パリ凱旋門、ロンドン二階バスが象徴として紹介されている。 なお、総指揮の池永は日活の京都撮影所長だったそうだ。興奮度★★沈痛度★爽快度★感涙度★(ネタバレなし)日本映画社通販DVD「戦時下のスクリーン」は2005年7月30日発売。DVD2枚組(分売不可):\10,500(税込)+\700(税込送料) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月23日
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1938 鱗映社(日活?) 編集:増田和弘 録音:アサカ幸二 斉唱:中野忠晴、松平晃、伊藤久男、霧島昇、佐々木章、松原操、二葉あき子、渡辺はま子、香取みほ子11分 モノクロ 内閣情報部が昭和12年9月に応募し、5万8千通の応募から選ばれた「愛國行進曲」の歌唱指導映画。従ってストーリーがあるわけではなく、歌詞に応じた背景映像が映し出されるのみである。 歌唱指導だけあって、画面下に歌詞が映し出されるが、それにとどまらず丸点が小躍りするように文字を指し示していくのは画期的だ。カラオケの走りのようなものと言えよう。伸ばす音の時には高く飛び、短いときはトントンと進んでいくのが小気味良い。最後は、「映画にあわせて力強くお歌い下さい」との画面が出る。 映像は、富士山や皇居などの四季風景映像のほか、軍艦、航空機、戦車の映像が見える。軍艦では3連装砲が見えるので最上型重巡洋艦、3本煙突の軽巡洋艦と思われるものがある。航空機は海軍九六式陸上攻撃機。戦車は中国戦線と思しき映像の中で九五式軽戦車、八九式中戦車が写っている。興奮度★★沈痛度★爽快度★★★感涙度★★(ネタバレなし)日本映画社通販DVD「戦時下のスクリーン」に収録。2005年7月30日発売。DVD2枚組(分売不可):\10,500(税込)+\700(税込送料) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月21日
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1944 アメリカ 監督:エドワード・ドミトリク出演:ジョン・ウエイン、アンソニー・クイン、ポーラ・ボンディほか95分 カラー 日本軍のバターン州にあったカバナトゥアン捕虜収容所を、米軍と米軍大佐が指揮するフィリピンゲリラが協力して奪還する話。このカバナトゥアン捕虜収容所急襲作戦は実際にあった話らしく、500名の米軍捕虜が保護されたという。日本では、内容が内容のため製作後22年後に公開された。ただ、本作はカバナトゥアン収容所強襲作戦ではなく、そこに至るまでのフィリピン人ゲリラの結成と活動をメインに据えている。 ちょっと不思議なのは、作品中でカバナトゥアン作戦が1945年1月30日と出てくるが、本作は1944年制作となっている。これでは未来の話になってしまう。制作年が異なっているのだろうか。 題材が日本人にとっては、「バターン死の行進」など面白くないのもあるが、それを差し置いてもストーリー、映像共にかなりの駄作。ただ、ジョン・ウエインが登場する米軍マンセー的映画でしかない。登場する日本兵が英語で話しているのはいいとして、その他のシーンでは「あうっ」とか「いやっ」とか雄叫びだけ。なめてるのか・・・。また、格好が南方装備ではなく、中国兵か北朝鮮兵のようで最高に変。本間中将役なんかちょび髭、細目の中国人コメディアンのようだ。フィリピンゲリラの頭は、フィリピン革命の父アンドレス・ボニファシオの孫という設定。スペイン、アメリカの植民地化から独立を戦った英雄の子孫を利用して、日本軍と戦うということだが、アメリカはフィリピンに自由を与えたなどと、過去の強圧支配を棚に上げての暴論は、傲慢で鼻持ちならないアメリカンスピリッツ爆裂。(詳しくはこちらのフィリピン国民的英雄のページを参考に) 戦闘シーンは銃撃戦、射殺シーンともにお粗末。スケール感がなんとも小さい。撃たれてもないのに倒れる日本兵はいと悲し。フィリピンゲリラ間の伝達は太鼓のリズム。おまけに日本軍待ち伏せシーンは、なんと水田で水遁の術を使っている。いや、どうでもいいけどフィリピン人を馬鹿にしてるよねこの映画。 登場する兵器としては、日本軍戦車は日の丸付きM4A2シャーマン。悲しいかな、結構強そうに見える。対する米軍側はM10対戦車自走砲。たった1回しか出てこないが。とにかく金はかかっていない、内容はいい加減。かなりふざけた映画だ。興奮度★沈痛度★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1945年1月30日、米軍兵によって日本軍のフィリピンバターン州のカバナトゥアン捕虜収容所が解放される。 これから遡る事3年。フィリピンのバターン半島の米軍は、進軍する日本軍に追いやられ、マッカーサーはオーストラリアに逃げる始末だ。米軍も順次撤退し、米軍のマッデン大佐はフィリピン人アンドレス大尉らと戦っていたが、司令部からフィリピンに残ってフィリピンゲリラの結成と指揮をとるよう命令される。アンドレス大尉は恋人の芸能人ダリセイが日本軍の手先として働いている事が気がかりだった。しかし、実はダリセイは米軍のスパイだった。 マッデン大佐がフィリピンゲリラを集めている時、ついにコレヒドールが陥落し、多くの英米兵が捕虜となった。いわゆるバターン死の行進が始まる。その行進の列からマッデン大佐はアンドレス大尉を救い出す。フィリピンの英雄アンドレス・ボニファシオの子孫という事を利用しようとしてのことだ。そのことにアンドレスは不快感を示し、自由を餌に民衆を危険にさらすのかと詰め寄る。しかし、恋人ダリセイの安全を確保するまでは協力することを約束する。 日本軍の本間中将は民衆をおさえるため、フィリピン独立宣言の式典を開催する。そこにダリセイの密告で襲撃をかける。しかし、子供のマキシモが日本軍に捕らえられ拷問のうえゲリラのアジトへを吐かされる。アジトに近づくとマキシモは命を張って車を谷底に転落させるのだった。 いよいよ、米軍の上陸戦の時期が近づいてきた。フィリピンゲリラは米軍上陸の6時間の間日本軍戦車を食い止めるため、道路を封鎖する。迫り来る日本軍戦車の前に奮戦するも、もはや突破かと思われた時、援軍の米軍戦車がやってくるのだった。DVD検索「バターンを奪回せよ」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月17日
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1944 東宝 演出:山本嘉次郎 製作:村治夫 後援:海軍省 出演:大河内伝次郎 藤田進 河野秋武 月田一郎 灰田勝彦ほか95分 モノクロ 第二次大戦末期において、日本海軍雷撃部隊の悲壮な出撃を描いた作品。製作は昭和19年11月とあり、まさにマリアナ海戦、レイテ沖海戦と日本海軍が壊滅状態に陥っている時期でもある。もちろん、国民にはその事実が伏せられてはいるが、後援・監修が海軍省であり、情報局国民映画と名付けられているにも関わらず、敗北が眼前に至っているかのような悲壮感が漂っているのが驚きだ。それまでの国策映画のような明るさはほとんどなく、もはや1億総玉砕を国民に促しているかのようだ。しかも、劇中捕虜にした米兵の言葉からもアメリカの物量や質の高さを肯定するような表現があり、それまでの鬼畜米英的憎悪が見あたらないのも不思議だ。むしろ、死を前にした死に際の美の境地といったところか。 ストーリーは三上、川上、村上という海軍雷撃隊「3人の上」の少佐を中心に描かれており、艦載雷撃隊、基地雷撃隊の決死の雷撃戦を描いている。地名は出てこないがラバウルあたりがイメージになっているようだ。とにかく、航空機が欠乏している状況が強調され、なけなしの航空機で体当たり的攻撃を仕掛けていくのだが、ラストに航空機生産に携わる国民への感謝のシーンが挿入されているあたり、国内航空機産業増産を促すプロパガンダも意図されているようだ。 映像は円谷特撮と実写によって構成されている。円谷特撮は主に艦船シーンと空戦シーンだが、ちょっと予算が足りなかったのか物足りない。実写では、九七式飛行艇、零戦、九七式艦上攻撃機、天山艦上攻撃機、一式陸上攻撃機が見える。特に、九七式飛行艇の着水シーンと、天山艦攻の空母瑞鶴からの発艦シーンは見物だ。空母瑞鶴は、1944/10/25にレイテ沖海戦で沈没してしまうことから、映画上映時にはすでに沈没しておりいささかもの悲しい。登場する艦攻や零戦の尾翼マークは「312」「653」の数字が見られ、「312」は昭和19年春まで空母瑞鶴の艦載機に用いられている。「653空」は艦載攻撃隊の第3航空戦隊でマリアナ海戦、レイテ沖海戦にも瑞鶴搭載で出撃しているが、出撃時以外は内地にいたと思われることから、この撮影はマリアナ海戦前頃からレイテ沖海戦までの間に内地で撮影されたと想定できる。なお、特撮で登場する米軍機はライトニング、B-25ミッチェルのようだ。興奮度★★★沈痛度★★★★★爽快度★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 日本海軍は先の海戦でアメリカ艦隊を空母5隻以下を撃沈するも、日本側も空母2隻戦艦1隻を失ったと発表する(もちろん史実ではない)。失われた航空機の補充もままならず、ひとまず村上少佐率いる空母雷撃隊は地上基地での待機命令が出る。村上少佐とともに航空参謀の川上少佐も同乗し、基地へ到着すると、そこには同期の地上雷撃隊指揮官の三上少佐がいた。血気盛んで真面目な村上に対し、三上はあっけらかんとした楽天家である。 川上航空参謀は東京へいったん戻り、航空機の補充を要請に行く。その間、村上部隊は夜間攻撃に転じる。しかし、米軍は間近にまで迫っており、基地にも米軍機の空襲がやってくる。数少ない零戦も応戦に出るが、数に劣り、地上機もやられていく。 川上航空参謀が戻るが、東京ではどこの部隊も苦しいと言うことで補充の約束は得られなかった。怒り心頭の村上は「日本人の姿は雷撃精神にある。雷撃とは体当たりだ」と息巻くのだった。その代わりに川上は慰問映画を持ち帰った。九州だよりという映画の中で、阿久根大尉は母親の姿を見つける。その夜来襲した空襲で、阿久根大尉は魚雷の誘爆を避けるため大やけどを負ってしまう。さらに、次の空襲ではアメリカ戦闘機も来襲し、阿久根ら患者、子供達にまで銃撃を加え殺すのだった。その時、撃墜され捕虜になった米兵は「物量・質ともにアメリカが負けるわけがない」と豪語するのだった。 ようやく、補充の航空機が届く。敵の空襲にも応撃し、81機を撃退する。しかし、この戦闘機隊も前線の状況悪化のため、前線基地へ移動してしまう。戦闘機隊のいなくなった基地は敵機の空襲に為す術がない。 ついに、潜水艦が敵空母12隻を含む機動艦隊を発見。艦載雷撃隊、基地雷撃隊に出動命令が出る。艦載雷撃隊の村上は一足先に空母に戻るが、その際川上に煙草を託し決死の決意を固める。天山艦攻に搭乗した村上は、敵空母に決死の雷撃を加えるが、被弾し機上で戦死する。三上少佐もまた一式陸攻に搭乗し出撃する。空母に雷撃するも被弾し、三上少佐操縦で敵艦へ突入するのだった。 基地では司令(大佐)と川上少佐が沈痛な面持ちでたたずむ。「補充機が間に合って戦果を上げることができたのは、内地の皆さんのおかげである」。内地に向かって頭を下げるのであった。DVD検索「雷撃隊出動」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月15日
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1939 東宝 演出:熊谷久虎 製作:森田信義 後援:海軍省 監修:海軍少佐出演:大日方伝、佐伯秀男、原節子ほか93分 モノクロ 昭和12年の第二次上海事変の様子を再現した映画で、海軍省の後援だけあり、リアルな戦闘シーンが再現されている。驚きなのは、戦闘シーンの背景カットが同時期に製作されているドキュメンタリー映画「上海 支那事変後方記録(1938東宝)亀井文夫」や「支那事海軍作戦記録(1939海軍省)」の場面と極似している点だ。もしかもすると、どちらかの映画で使い回しがあるのかもしれないが、全体的に撮影ポイントも含め、史実に沿って忠実に作られている事をしのばせる。また、ドキュメンタリーの方は激しい戦闘シーンはないが、こちらはドンドンバリバリ撃ちまくっているので、迫力は満点だ。 とはいえ、一応ストーリーはあるものの、物語型映画というよりは戦記的映画の側面が強い。時系列に沿って淡々と戦場が移り変わっていくので、ある程度の基礎知識があったほうがいいだろう。 第二次上海事変は、日本海軍の大山中尉が支那保安隊に殺害されたのをきかっけに、日本軍と中国軍の交戦に至った事件で、交戦当初は上海の日本人居留区を警護する海軍陸戦隊がその防衛にあたっている。映画では、海軍陸戦隊が、数に勝る中国軍に押され、苦戦を強いられている様子を描いている。国策映画であるのに、あまり強い日本軍というイメージでは描かれていないのが興味深い。最期の時を覚悟した兵が「おっかさーん」と絶叫するシーンも人間味あふれる。ただし、日本兵はかなり規律正しく描かれており、優しく誠実な日本兵をアピールする意図はミエミエだ。また、反抗的な中国人婦人役で原節子が出演しており、怪しい中国語を喋っている。 映像的にはモノクロでやや見にくい箇所もあったが、爆薬使用量もかなり多いようで、激しい戦闘シーンが多い。登場する兵器としては、九三式側車(サイドカー)、軍用トラック、八九式中戦車、ビッカーズ・クロスレイM-25装甲車、九二式六輪装甲車がある。この当時なら上海に配備中のものも多くあっただろうから、当然実車であろう。 陸戦隊の兵士の多くは役者と思われるが、会話は極めて軍人ぽい。訓辞や、報告、電話での会話など、今の我々からすればかなり違和感があるが、これが本当の姿なのだろう。なお、序盤に登場する軍楽隊は本物のようだ。興奮度★★★★沈痛度★★★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 中国の上海は世界の列強が租界と称して治外法権区域を設けていた。日本もまた日本人居留区を保有し、海軍の上海陸戦隊がその警護にあたっていた。 昭和12年8月9日、海軍大山中尉が支那保安隊の銃撃を受け死亡。その調査責任を放棄した中国軍と日本軍は一触即発の危機を迎える。中国軍側はすでにトーチカを構築済みであり、徹底抗戦の構えをみせている。 8月12日、陸戦隊の中隊長岸中尉は陸戦隊本部正面の陣地防衛を任される。A陣地は藤巻少尉の小隊、B陣地は田辺特務少尉の小隊、C陣地は高畑兵曹長の小隊が配置される。日本人居留区の民間人は学校に避難し、中国人の婦女子も寺院に保護される。中国人婦女子の多くは日本兵の差し出す食事を食べるが、一人の女(原)だけは受け取りを拒否する。 陸戦隊が土嚢等による陣地構築を続ける中、中国軍側から発砲を受ける。しかし、大隊本部からは応戦許可が出ない。 8月13日、にらみ合いが続く中ついに応戦許可が出る。中国軍の砲撃により陸戦隊員にも死傷者が出始める。民間人も負傷者後送等に協力する。 中国軍の攻勢に圧倒される中、外国租界付近のX(エックス)家屋の確保が重要視された。突入路確保のため家屋の壁に通路を確保し突入するも失敗。ついに、広岡一等水兵ら五人の決死隊が結成される。 8月15日、「天皇陛下万歳」の声と共に決死隊の突入によりようやくX家屋を確保。防衛上の重要拠点であるがゆえに死守が命令される。前線への食糧供給が滞り始めたため、民間人らは自分たちの配給分を兵隊に回す。 しかし、中国軍は包囲戦を強化し、次第に陸戦隊は劣勢となってくる。X家屋も猛攻にさらされ中国軍に包囲されてしまう。A陣地、B陣地も死傷者が続出し、弾丸も切れはじめる。大隊本部からは絶対死守の命令で、岸中隊長も自ら指揮小隊を率いて前線へと赴く。 C陣地では大久保二等水兵と、山口二等水兵の二名だけとなっていた。応援にかけつけた岸中隊長らも応戦するが、ついに全員弾が切れる。岸中尉は残った者を連れて白兵戦に突撃するのだった。 日本軍は増援部隊を得て、約二ヶ月後に勝利を得る。これらは海軍陸戦隊の奮戦と居住民の協力があってのことであった。DVD検索「上海陸戦隊」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月12日
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1934 アメリカ 監督:ジョン・フォード出演:ヴィクター・マクラグレン、ボリス・カーロフ、ウォーレス・フォードほか101分 モノクロ 日本語タイトルがなんとも勇ましいが、惑わされてはいけない。確かに死者も多く出るが、戦争映画としては大人しい部類。むしろ、姿の見えない敵に対する恐怖と駆け引きというサスペンス的要素が強い。カメラワークといい、単純なシナリオといい、かなり古くさい映画というイメージは強い。一応、フィリップ・マクドナルドの実話小説「偵察隊」を原作にしているのだとか。 舞台は第一次世界大戦時のメソポタミアの砂漠。英国陸軍の小隊が姿を見せない敵の狙撃兵に次々とやられていき、小隊内に動揺が走り始める。ようやくたどり着いたオアシス内で、見えない敵と、内輪もめに苦しめられるのだ。見えない敵とは、アラブ兵のことだ。 映像的には特筆すべきものはないが、狂気の男を演じるボリス・カーロフの熱演が印象的。決して上手ということはないのだが、映画の絶望感を大いに引き立てている。 登場する兵器は銃器以外では、複葉機が1機出てくるが、機種はよくわからない。複座であることはわかるのだが。 全体的には、時代背景がきちんと描かれているわけでもなく、政治的なプロパガンダがあるわけでなく、なんだかのっぺりとした作りであった。興奮度★★沈痛度★★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 第一次世界大戦中、メソポタミヤ砂漠で英国陸軍中尉が狙撃を受けて戦死する。彼の率いていた騎兵小隊は軍曹に引き継がれ行進を進めるが、実はこの小隊の目的地も作戦内容も軍曹は聞かされていなかった。 やむなく、偶然見つけたオアシスで小隊は一夜を明かすことにする。翌朝川に向かって行く予定にしていたが、歩哨任務に立った若干19歳のピアソンが殺され、古参兵のベル伍長も負傷し、頼みの綱の馬も全部盗まれてしまう。 小隊はもはやどこにも移動できなくなった。オアシスの周囲にアラブ兵が潜んでいるらしく、椰子の木に登ったヘイルが狙撃され死亡する。そこで、マッカイとクックの二名が先発隊として川に向かい救援を要請する事にする。 残された者はオアシスで警戒態勢を取るが、暑さのためエイベルソンが狂って狙撃される。さらに、川に向かったはずのマッカイとクックの遺体が馬に繋がれて戻ってくる。ブラウンは密かにオアシスを脱走する。 聖書を信奉するサンダースはすっかり精神的に異常をきたしはじめる。ベル伍長も死亡し、残ったのは軍曹、モレリ、サンダースの三人となってしまう。 その時、遊軍の飛行機が飛来する。オアシス付近に着陸するも、パイロットは狙撃兵に殺されてしまう。さらに、気の狂ったサンダースが十字架の杖を作ってオアシス外に出ていく。追いかけたモレリもろとも狙撃兵に殺されてしまう。ついに軍曹ただ一人になってしまう。 もはやこれまでと観念した軍曹だが、アラブ兵は全員やっつけたと思ったのか姿を現す。軍曹はアラブ兵を壊滅する。その時、小隊を探しに来た別の部隊がオアシスに到着。「部下はどこにいる」と聞く指揮官に、軍曹が指さした先に部下達の墓が並んでいるのだった。DVD検索「肉弾鬼中隊」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月09日
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1940 東宝・映画科学研究所 監督:阿部 豊 後援:陸軍省 監修:陸軍航空本部出演:大日方伝、月田一郎、大川平八郎ほか138分 モノクロ 皇紀二千六百年記念映画として製作された国策映画。陸軍航空隊の中国戦線での活躍ぶりを描いたものだが、時代が第二次世界大戦へ突入する前の段階であるためか、意外と国策映画ぽくはない。当時としては破格の量の実機を投入しての撮影だったと思われ、記録映画的にも貴重なものとなっている。 ストーリーは、陸軍航空学校の同期生4人を中心に進められ、仲間の戦死という悲劇に見舞われながらたくましく成長していく姿を描きつつ、軍人としての死の心得を説く。後の国策映画では考えられないが、日本軍の弱みやパイロットの弱さも露呈しており、結構人間味がある。音声が悪くかなり聞きづらい部分も多かったが、まあ楽しめる内容である。 映像は、実機の空中戦、飛行シーンに卓越している。もちろんやらせの空中戦だが、当時のカメラで良く撮れたものだと感心するほどカメラワークが良い。それだけでも十分見る価値がある。また、墜落シーン等のほんの一部に円谷特撮が入っている。さすが、円谷特撮だけあって、前後の実機シーンと遜色ない出来映えとなっている。 本作品の挿入歌は「燃ゆる大空」であり、この映画によって後に大ヒットとなった軍歌である。 登場する航空機は、飛行学校時代で立川95式中間練習機、三菱93式(1型)重爆撃機、中島91式戦闘機である。95式中間練習機には○に棒の熊谷飛行学校マーキングが見える。実戦部隊配備後は、中島97式戦闘機、三菱97式重爆撃機、三菱97式軽爆撃機、三菱99式襲撃機が出てくる。敵機役には中国軍マークを施した川崎95式戦闘機(複葉)が化けている。この95式戦闘機と97式戦闘機の空中戦シーンはなかなか見物だ。追尾シーン、墜落シーンなど特に敵役の95式戦パイロットの腕がいい。 数量的に多く出てくるのは97式戦と97式重爆。いずれも尾翼マーキングが施されておらず、どの部隊所属かは判明しないが、いずれも全面灰緑色の単色塗装となっている模様。 ちなみにこの映像の一部が「フライング・タイガー(1942米)」にパクられている。興奮度★★★★沈痛度★★★爽快度★★★感涙度★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 昭和11年頃、陸軍飛行学校の学生に中に、行本、山村、佐藤、田中の4人がいた。彼らは共に訓練し、4人であんパンを80個も平らげて伍長から怒られるほど仲が良い。訓練は複葉機の立川95式中間練習機、91式戦闘機、97式戦闘機と順に進んでいく。うち佐藤は爆撃機のパイロットとなり93式重爆の操縦を訓練する。 それから2年後の昭和13年2月、北支戦線の仁礼部隊基地に4人はいた。ただし、田中はすでに戦死していた。そこに、飛行学校の教官であった山本大尉が戦闘機隊中隊長として赴任してくる。 ある日、敵地の攻撃のために山村曹長は97式戦で飛び立ち、敵の車列を攻撃する。しかし、機体は燃料漏れを起こし、不時着する。すぐに敵に囲まれ銃撃を受けるが、僚機が果敢にも着陸して山村を救い出す。その際に、不時着した97式戦は焼却処理をする。無事、帰還した山村を重爆隊の佐藤は歓迎するのだった。 重爆隊は奈良大尉を中隊長とし、敵地の爆撃に出撃する。佐藤曹長は奈良大尉機のパイロットである。爆撃地点で敵機の襲撃を受け、奈良大尉機は右タンクを被弾し、墜落する。佐藤曹長はなんとか助かったが、あと残ったのは瀕死の奈良大尉だけであった。佐藤曹長は奈良大尉をおぶって味方陣地へ移動を始める。 仁礼部隊基地では戦闘機隊の行本、山村が佐藤の安否を心配していた。地上部隊の捜索の結果、佐藤曹長と奈良大尉の遺体が4km離れた地点で発見される。命尽きた大尉の亡骸を丁寧に葬った後、佐藤は自害したのだ。この死に際の美に行本も山村も心打たれるのだった。 中国軍がランプー?に戦闘機を終結したとの情報で、全戦闘機隊が出撃する。敵機とのめまぐるしい空中戦の末、日本軍は敵機24機撃墜の大戦果をあげる。しかし、唯一行本機だけが帰還しなかった。燃料がぎりぎりになった頃、ようやく被弾した行本機がふらふらと着陸する。行本は腹に被弾していた。隊員らの献身的な輸血にもかかわらず行本は最後の時を迎えようとしていた。半身を起こし、軍人勅諭を述べ、天皇陛下万歳と叫んで絶命する。DVD検索「燃ゆる大空」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月06日
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1942 アメリカ 監督:デヴィッド・ミラー出演:ジョン・ウェイン、ジョン・キャロル、アンナ・リーほか101分 カラー アメリカ版戦意昂揚映画。日本映画の「燃ゆる大空(1940)」に対抗するかのように、中国戦線のアメリカ義勇パイロット「フライング・タイガー」を取り上げている。しかし、内容もさることながら、映像や音楽までかなりの駄作の域を出ない。 フライング・タイガースとは、日中戦争時に中国国民党(蒋介石)をアメリカ人の義勇パイロットが支援したものであり、米軍から戦闘機P-40を購入し、アメリカ人パイロットが多数搭乗した。隊長はシェンノートと言い、要は傭兵であり、その戦果はどうもホラ話が多いようだ。ここでアメリカが中国を支援しなければ、今頃は・・・。今になって中国の軍拡に手を焼くアメリカは全く持って間抜けである。ましてや、こうしたフライング・タイガース等に助けてもらった恩義を感じない中国なんて(まあ、毛沢東は助けてもらったと思っていないからだろうけど)。そういう経緯からも、この映画でフライング・タイガースを美化している時点で興味がそがれ、かなりの減点要素。 ストーリーはシェンノートをモデルにしたと思われる隊長と部下、特に隊長と旧知だが賞金稼ぎ感覚でチームワークを乱す男の駆け引きがメインとなっている。ちょっと西部劇的な匂いが強く、リアリティに欠けるうえ、突飛な展開が多すぎる。 映像は、はっきり言って三流作品。地上駐機にカーチスP-40ウォーホークが登場するが、本物ぽくない。空戦シーンは完全にコックピット映像と背景の合成がミエミエ。しかも、機体の造形や挙動が極めて稚拙。コックピット内の日本兵が銃撃を受けるシーンなどは、キャノピーがガタンと落ちて、怪しい日本兵が目を押さえるというなんとも情けない映像。飛行シーンはといえば、インチキ臭いミニチュアと日本映画からの流用映像と思われるもので構成される。日本映画は多分「燃ゆる大空(1940)」。九七式戦と九七式重爆の飛行シーンは見た事ある。重爆機内の機銃準備シーンも良く似ている。ただし、燃ゆる大空ではモノクロだが、こちらはカラー。どういうことなんだろうか。燃ゆる大空は元々カラーフィルムだったということだろうか。 音声関係でひどいのは、やはり爆撃機内の日本兵の会話。まあ、字幕で見ればいいんだから気にするなと言われればそうだが、片言の日本語だから余計に気になってしまう。「はやく せんそ(う)のよういして」「はやく てっぽのよういして」「よろし よろし」など完全に中国人じゃんそれって感じなのだ。 登場する兵器は先にも述べたが、ハリボテぽいP-40が数機。日本映画から流用した九七式戦と九七式重爆が少し。あとは、ミニチュア制作の九六式陸攻?、九六式艦戦?と思われるものが出てくる。陸軍の九七式重爆の直後に海軍の九六式陸攻にすりかわってしまうのはいただけませんな。あと、ラストに出てくる輸送機はロッキードハドソン輸送機に似ている。しかし、特撮ミニチュアになるとすっかり姿形が変わってしまう。興奮度★沈痛度★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意反転でご覧ください) フライング・タイガースの隊長ジムは、日本軍相手にP-40で戦闘を続けている。ジムは戦死した隊員の補充のためにラングーンに赴く。そこで、バートン中尉を補充する。さらに、日本軍の攻撃を受け片肺で着陸した民間機の雇われパイロット、ウディ・ジョンソンを仲間に入れる。ジョンソンはジムの旧友で、腕はいいが賞金稼ぎが目的だ。さらに、過去の失敗から飛行を許されないベールズの妻の懇願に負けて、彼も仲間に入れる。 ジムはチームワークを重視するよう部下に指導し、誰かがパラシュート降下した際には援護するよう言い渡す。しかし、賞金稼ぎの撃墜目的のジョンソンは、パラシュート降下するベールズを見殺しにする。皆から白い目で見られたジョンソンは、密かにベールズの妻に稼いだ賞金の一部を手渡すのだった。 リンゼー大佐から夜間偵察の命令が出る。夜間飛行は危険なため隊員の身体検査を実施する。その結果、副官のハップが視力不足である事が判明し、ハップは機から降りる事になった。しかし、夜間出撃の際無断外出していたジョンソンが時間に遅れ、代わりにハップが搭乗して出撃してしまう。ハップは空中で激突死してしまう。 さすがにジムも耐えかね、ジョンソンを解雇する。そこに輸送機にのって大佐がやってくる。日本軍の輸送ルートを破壊するため、橋の爆撃をしろというのだ。極めて危険な任務のため、ジムは輸送機にニトロを積んで、一人で遂行しようとする。しかし、反省したジョンソンが密かに乗り込んでおり、二人は協力して橋を爆破する。しかし、ジョンソンは地上砲火により負傷。ジムをパラシュートで降下させたのち、ジョンソンは日本軍の列車に突入するのだった。DVD検索「フライング・タイガー」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月04日
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2004 アメリカ 監督:ロバート・ハーモン出演:トム・セレック、ジェームス・レマー、ティモシー・ボトムスほか89分 カラー 1944年6月の第二次世界大戦欧州戦線における、史上最大の作戦「ノルマンディー上陸作戦(Dデイ)」の最高司令官アイゼンハワーの作戦の計画から実行に至るまでを描いたTVムービー作品。ドイツ軍の敗北を決定づけたこの作戦がどのように計画され、実施されたかはいくつもの映画「プライベートライアン」「史上最大の作戦」「バンド・オブ・ブラザーズ」などに詳しく描かれているが、本作はアイゼンハワー大将(アイク)個人に焦点をあてて描いた佳作である。この作戦の全権を担ったアイゼンハワーの葛藤と苦悩、そして決断がどのようにして行われたかは大変興味深い。また、アイゼンハワーの視点を通して見た、英軍モントゴメリー将軍、スミス参謀総長、パットン将軍、チャーチル英首相、自由フランスのド・ゴール将軍が面白い。 本作の撮影はニュージーランドがメインだそうで、出演者もアイク役のセレックら数人を除けばオーストラリアやニュージーランド人となっている。セレックはアイクと顔つきは全然違うそうだが、落ち着き思慮深いイメージは良く出ているのではないだろうか。モントゴメリーやド・ゴール役もいい味出している。 アイクの心理描写や作戦計画場面がメインであるため、戦闘シーンや兵器シーンは全くなし。戦争映画としてはやや寂しいのだが、ストーリーとしては大変よく練られており、この作戦を知らない人でも十分話を追っていけるように作られているのが好感。ただ、アイクと米軍を相当美化しているので、英国や仏国の人から見れば結構不満なんではないだろうか。はっきり言って、モントゴメリーとド・ゴールは馬鹿扱いである。興奮度★★★沈痛度★★爽快度★★★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1943年12月、英首相チャーチルのもとに米軍大将アイゼンハワー(以下アイク)が訪れていた。アイクは連合軍の史上最大の作戦に向けて、陸海空の全権をくれなければ連合軍総司令官の任を辞任すると脅す。チャーチルは、前代未聞の大権力にその決断をためらっていた。英空軍ハリス大将、米陸軍スパーツ中将も反対意見を持っていた。しかし、アイクは全権を得なければ作戦の成功は見込めないと説得する。チャーチルはアイクの代わりに誰が適任かと考えるが、ハリスは打たれ弱い、マーシャルは米大統領が離さない、マウントパッテンは太平洋にいるなど、結局アイク以外はいないのだった。 連合軍総司令官となったアイクは、バラバラになりがちな陸海空の将軍どもを操るのが重要課題であった。地上軍総司令官となったモントゴメリーは自信過剰で、ノルマンディ上陸作戦は広正面戦略と決まっているのに、いつまでも狭正面戦略にこだわっている。モントゴメリーのプライドを保ちつつ、言うことを聞かせるのもアイクの役割であった。 1944年4月16日。ノルマンディー上陸作戦決行日(Dデイ)が近くなって来た頃、アイクのもとにパットン中将がやってくる。ソ連軍を敵視した発言で更迭されようとしているところをマーシャル参謀総長から身を預けられたのだ。パットンはアイクの元上官であり、アイクは本国送還だけは許してやる。そのかわり、ドイツ軍の目をそらすための幽霊部隊の司令官に任ずるのだった。 4月28日。英国の海岸に米兵の死体が流れ着く。米第4歩兵師団の新型兵器水陸両用車輌やDD戦車(ドナルド・ダック)の夜間訓練中に、ドイツ軍の魚雷艇攻撃を受けたのだ。兵員や兵器の損失も痛かったが、上陸作戦の内容を悟られることが懸念された。しかし、ドイツ軍はパットンがカレーに上陸するものと信じていた。 損失したLST補充期間が必要なため、上陸作戦は5/19から6/5に延期された。さらに、作戦の機密保持のためドーバー海峡の民間船渡航を全面禁止にする。ところが、米軍のヘンリー・ミラー少将がバーでの飲酒中に作戦内容を大声で話してしまう。近くにいた101空挺師団のの士官の通報で急遽逮捕され、アイクは本国送還処分にする。かつての友人であったが、心を鬼にしての決断だった。 いよいよ作戦が近くなり、イギリス国王への作戦説明会が開催される。場所はモントゴメリーの司令部で、禁煙になっているにもかかわらず、国王、首相が煙草や葉巻を吸い始め、モントゴメリーは煙にまかれる。 Dデイは天候が重要課題であった。荒天であれば上陸戦に著しい被害が及ぶのだ。ただでさえ難しい気象予報だが、アイクは気象長官に正しい予報を出すよう厳しく命令する。また、上陸戦に先立って行われる予定の、ドイツ軍背後への空挺師団降下作戦における損失予想が悩みの種であった。空軍総司令官のマロリーの予想では7割が死傷するとされ、殺戮的数字に作戦の実施に踏み切れずにいた。 6月1日。アイクはサウスウィック・ハウスに本拠地を移す。6月3日、悩みに悩んでアイクは空挺部隊の降下作戦の実施を決定する。アイクは、空軍総司令官のマロリーと第1軍司令官のブラッドレー中将に成功を託すのだった。 6月4日。上陸後のフランス国内レジスタンスの協力を得るため、自由フランスのド・ゴールに作戦を明かす。しかし、傲慢なド・ゴールは作戦にケチをつけたうえ、協力を拒むのだった。 直前になって低気圧が3つやってくることが判明。全船舶、航空機はすでに待機している。作戦を実施するには先発隊は出航しなければならない。もし、今回作戦を実行しなければ満ち潮の関係で、次回実施は夏以降となってしまう。アイクは、28時間だけ待つ事とし、Dデイを6月6日に設定する。 気象長官の予報により、嵐の切れ目が出来ることが判明し、その間をぬって作戦の実施が決定された。アイクは空挺師団の将兵観閲の帰りに、作戦失敗時の会見文書を作成する。 そして、ついに作戦が実施された。空挺部隊の損失は約2割であった。マロリーの約7割という想定をはるかに下回ったが、アイクはたった一人でも損失は損失だとつぶやく。DVD検索「ノルマンディー 将軍アイゼンハワーの決断」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月02日
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1944 東宝 監督:山本嘉次郎 特技監督:円谷英一出演:藤田進、高田稔、中村彰ほか111分 モノクロ 昭和19年3月製作の陸軍飛行第64戦隊長加藤建生中佐(死後少将)の伝記的映画。加藤中佐は個人撃墜機数こそ18機と少なめだが、その卓越した戦術と部下思いの情の厚さで日本国民に慕われた人物である。また、第64戦隊は陸軍一式戦闘機(隼)を駆ったことでも著名だが、その隼の正式採用に奔走したのも加藤中佐である。 加藤中佐は1903年生まれで、所沢飛行学校、明野飛行学校の教官を経て、中隊長として中国戦線で活躍。1941年4月から飛行第64戦隊長(少佐)の任につき、翌1942年5月22日に撃墜死している。本作は、その活躍から軍神とあがめられた加藤中佐を伝説的英雄として、第64戦隊着任から戦死までを描いたものである。なお、同様に加藤中佐を主題に描いた映画としては、「あゝ陸軍隼戦闘隊(1969大映)」 がある。こちらは加藤中佐の私生活にまで焦点をあてたやや突っ込んだ内容となっている。 本作の凄いところは、登場する航空機のほとんどが本物であること。加藤中佐らを演じるのは役者だが、実機を飛ばすのは本物のパイロットなのだ。空戦シーンの半分くらいは円谷特技監督のミニチュア特撮だが、もう半分は本物の空戦実写である。97式戦闘機、一式戦隼、97式重爆撃機、97式輸送機が地上駐機、飛行ともに大量に登場する。97式戦闘機は第64戦隊及び教飛204戦隊のマーキング、隼は第64戦隊、97式重爆は第12戦隊(北村隊)及び第60 戦隊(小山隊)のマーキングである。また、敵英軍機としてはミニチュア模型だが、バッファロー、ハリケーン、ブレニム爆撃機の姿が見える。 円谷特撮は予想以上に良い。飛行状態があまり違和感のないスムーズさ。あり得ない挙動シーンも少ない。機体のアップシーンで、降下に入って開いていた風防がバタント閉まるあたりは芸が細かい。細かいと言えば、地上爆撃シーンも実に緻密な模型を惜しげもなく爆破している。爆発も水中への着弾も実にリアル。爆破シーンと逃げる人々の合成シーンも斬新だ。戦前にしてこの技術には驚愕だ。 戦時中の映画であるため、ストーリーは勇壮に淡々と進んでいく。しかし、加藤中佐の温かく優しい心根を役者の藤田進が好演している。それだけに、単に戦意昂揚というよりは、偉人の伝記といった感じが強い。戦局が相当悪化しつつある時期の、記録映画的としての価値が高いと言える。興奮度★★★★沈痛度★★★爽快度★★★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 昭和16年4月の広東。陸軍飛行第64戦隊の戦隊長として加藤建夫少佐が着任する。97式戦闘機を駆って到着する加藤少佐の元に安場大尉が駆け寄る。 数ヶ月後、部隊に隼戦闘機(一式戦)が配備される。加藤少佐は自ら隼の特性を確かめるのであった。 昭和16年12月初旬、部隊はフコク島へ転進。マレー半島攻略戦を実施する山下奉文中将の部隊の哨戒任務を与えられる。夜間飛行の危険な任務であったが、その帰路で高田中尉を失ってしまう。加藤少佐は経験の浅い者を情に流されて出撃させた事を悔やむのだった。 12月8日には海軍が真珠湾攻撃に成功。第64戦隊はコタバルへ転進。任務はクアラルンプール爆撃の軽爆隊の援護任務だった。隼戦闘機での初の空戦が行われる。 12月25日にはラングーン爆撃の北村隊、小山隊の重爆隊援護任務に出る。加藤少佐は部下にくれぐれも援護であって敵戦闘機との空戦は避けるようにと厳命するが、群がる敵戦闘機に部下達は深追いしてしまう。その結果、援護を失った北村隊は甚大な損害を出してしまう。帰還後加藤少佐は部下を激しく叱責する。この出撃で機銃故障のまま出撃した中隊長代理奥田中尉が戦死する。 翌年1月にはマレー作戦が実施され、部隊は10日間で60回の出撃を重ね、40機の撃墜戦果をあげるが、隊員の消耗も少なくなかった。 2月6日、カハンへ移動。陸軍落下傘部隊のパレンバン攻略戦の援護任務につく。敵戦闘機を、97式輸送機に搭乗した落下傘部隊に近づけることなく、作戦は成功する。 3月9日、蘭印軍が降伏。部隊はパレンバンへ移動する。加藤少佐は中佐に昇進し、部隊はビルマ戦線へ参加する。4月8日、安場大尉が戦死。弔い合戦とばかりに加藤中佐は夜間襲撃を敢行し、中国奥地の敵機を撃墜する。 5月17日、部隊はアキャブに前進。しかし、あまりに敵地に近いため、英軍機の襲撃を度々受けるのだった。加藤中佐は英軍の爆撃機を追撃しこれを撃墜する。 5月19日、アキャブ基地からトングーへ引き揚げることとなる。しかし、出撃した射水准尉が途中で不時着する。その身を案じて加藤中佐は引き揚げをためらうのだった。5月22日敵の爆撃を受ける。急遽追撃した加藤中佐は敵ブレニム爆撃機を撃墜するも、敵弾を受け、反転して海中に自爆するのだった。 DVD検索「加藤隼戦闘隊」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年09月01日
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1957 松竹 監督:堀内真直出演:田村高広、田浦正巳、渡辺文雄、岸恵子105分 モノクロ 数ある特攻隊映画の一つだが、そのうちでもストレートで実直な作りの一本である。阿川弘之の文学作品「雲の墓標」の映画化である。製作年代が古い点もあるが、へたな小細工や枝葉の話をつけていない。また、50、60年代を境として見られなくなった美しい日本語と敬語による会話が心に染みる。ある意味、大根役者というか、臭い芝居でもあるが、現代のような歯が浮くような臭さではなく、純朴な臭さなのだ。 映画は旧制四高(現金沢大)の三人の学生が学徒出陣のうえ、海軍特攻隊員として敵艦に体当たりするまでを描いているが、特に目立ったエピソードや盛り上がりがあるわけではない。しかし、先にも述べた実直で純粋な作りであるが故、随所に涙無くして見る事が出来ない箇所がある。学徒ゆえ学問への未練、残してきた家族や恋人への想いを断ち切っていくまでの過程に心が揺れる。ただし、特攻映画ともなると、どうしても学徒出身者を擁護するものが多く、予科練出身者は暴力的に描かれるが、本作も若干その気はある。 映像的には時代を考えれば致し方ないところだが、かなりチープさは感じる。軍装等の考証についてはさほど違和感はないが、兵器類ともなると心許ない。飛行シーンや空中戦シーンのほとんどは模型による特撮だが、かなりチープ。特攻シーンは記録映像を使っている。何回か出てくる実機の地上及び飛行シーンは、不可思議な迷彩を施したテキサンが登場。一応、設定が艦爆隊なので二人乗りである点は許されるが。また、上官が搭乗していく機体は模型だが双発機で銀河かなと思われる。 映画中のエピソードで気になる点は、「あ号燃料」の話と「特攻信号」。サツマイモのアルコール燃料である「あ号燃料」でエンジンが止まって墜落してしまうのだ。また特攻信号の方は「敵戦艦発見 天皇陛下万歳」という信号を「ケタシタ? テバカタ?(映画中ではそう聞こえる)」と言っている。 若き田村高広が美青年だ。恋人役の岸恵子はちょっと化粧が濃い?興奮度★★★沈痛度★★★★★爽快度★感涙度★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 昭和18年の冬、第四高等学校の級友である吉野次郎、藤倉、坂井の三人は予備学生として海兵団に入隊した。坂井は両親を早くに亡くし、肉親は姉一人だけで源氏物語の研究をしていた。藤倉は実家が台湾にあった。吉野は両親共に健在だが、兄はすでに徴兵され南方に赴いていた。 三人は土浦海軍航空隊に行き、山田大尉のもと基礎訓練に明け暮れる。やがて、単操縦訓練のため出水航空隊へ転属、さらに宇佐海軍航空隊に行き、三名とも艦爆隊となる。その訓練中「あ号燃料」によるエンジン不調で若月機が墜落死する。三名とも戦争の意義に疑問を感じてはいたが、吉野は次第に命を捨てる事を宿命と考え始め、二人と意見が食い違ってくる。そんな中、吉野はふらりとよった深井家の庭で令嬢蕗子と知り合、次第に恋心が芽生えていく。 学徒出身兵は特攻隊員となる運命に、三人の心は激しく揺れる。ついに坂井も源氏物語を破り捨て、現世への未練を捨て去る。最後まで冷静だった藤倉は二人の心変わりに落胆する。 出水航空隊基地にかつての教官山田大尉がやってくる。燃料を搭載して山田大尉は飛んでいくがそれは特攻であった。いよいよ三名は少尉に任官される。それは特攻隊員として認められた事を示す。しかし、出水航空隊に敵機の空襲が襲い、出水基地は撤収し、三人は宇佐航空隊に移動する。 いよいよ学徒兵達にも特攻の日が近づいてくる。予科練上がりの兵達は学徒出身兵に精神がたるんでいると難癖をつけたがるが、同じ学徒兵である野本大尉が止める。しかし、予科練の少年兵たちもまた人間爆弾桜花搭乗兵であり、藤倉は彼らの酒を飲んでやる。 ついに、最初の特攻隊が組織される。しんのう隊に坂井少尉が割り当てられる。先に一人で行かねばならぬ坂井、吉野と藤倉は「先に行って待っててくれ」と言うが、坂井は「でもな、是非ともおまえら来るな」と言って笑って搭乗していく。坂井は姉のことを想いながら敵艦に突入するのだった。 坂井の突入を聞き、藤倉の心は揺れる。吉野も蕗子への想いを抱きながらもそれを断ち切ろうとする。二人は酒を酌み交わして冷静さを取り戻していく。そして、野本大尉と共に吉野と藤倉は特攻機に乗り込んでいくのだった。DVD検索「空ゆかば」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年08月31日
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2002 イギリス 監督:トム・グレッグ出演:ロス・ケンプ、ジェイミー・ドレイヴァン、トニー・カランほか269分 カラー イギリスのテレビドラマシリーズで、DVD版では「S.A.S英国特殊部隊」、スカパーのPPVでは「世界最強特殊部隊S.A.S第1シリーズ」として放映された。第1シリーズは全5話で第1話「Killing House」が75分、その後の4話は各50分になっており、DVDは3巻構成となっている。2004年現在第3シリーズまで製作されている。 S.A.Sとは英軍特殊空挺部隊のことで、その初源は1940年の特殊空挺部隊に始まる。厳しい選抜と訓練に裏付けされた戦闘力により、軍事作戦はもとよりテロや犯罪の際にも出動する。 本作は、S.A.S(第22部隊?)のレッドチーム(小隊単位)を主人公に数々のミッションを描いていく。第1話「Killing House」、第2話「Break out」、第3話「Natural Sellction」、第4話「The Killing of a One-eyed Bookie」、第5話「Something to do with Justice」。それぞれが一応一話完結となっているが、隊員の入除隊のからみがあるので、やはり最初から見た方がいい。 かなり激しいアクションと血なまぐさい映像もあり、S.A.Sの活動ぶりを堪能する事が出来るが、それは僅かなミスさえ許されない極度の緊張と重圧が全てである。それ故、本作のレッドチームは仲間の死さえ日常と受け止め、異常なほど冷静かつ冷徹な側面を強調している。従って、犯人射殺シーンには情のかけらは微塵もなく、S.A.Sは殺戮マシーンかといった印象を持つ人もいるかもしれない。また、登場するレッドチームの隊員も容赦なく負傷・死亡していくので、まったりとアクションを楽しみたい人には心臓に悪いかも知れない。 一方、冷酷な任務に対しての隊員の葛藤ももちろん描いている。隊員の家族も登場し、ヒューマンドラマ的な要素もないわけではない。女性隊員の存在も一つの清涼剤になってはいるが、全体のバランスから言ってちょっと微妙。興奮度★★★★★沈痛度★★★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)第1話「Killing House」 S.A.Sのレッドチームに二人の新人隊員アレックスとジェイミーが入隊する。チームの長はドーニー中尉だが、事実上のリーダー、ヘンノ・ガルビー軍曹以下ジェム・ポイントン、リッキー・マン、サム(アレックスの異母兄弟)、ピートら部下は信用していない。しかし、ヘンノ以下の結束力は何もにも勝る。 アレックスとジェイミーは手荒い歓迎を受ける。ジェイミーの母の容態が急変し姉がやってくるが、ヘンノは隊の結束のため帰宅を勧めない。しかし、ドーニー中尉が許可を与えてジェイミーは帰宅する。ジェイミーは義父と確執があり、そこでも言い争いを始めるのだった。その時、銀行強盗犯の立てこもり事件が発生し、ジェイミーも招集される。ジェイミーがS.A.S隊員であることを信じない義父だったが、自宅にまでやってきたS.A.Sのヘリを見て驚きを隠せなかった。 銀行強盗は元警察官ら4人の犯行だった。運転役のミスから人質をとって銀行に籠城する犯人は、逃走用車両を要求する。しかし、警察は車両を用意せず、犯人は一人を射殺する。ただし、射殺されたのは人質ではなく、ミスを犯した犯人の一人であった。しかし、事態を重く見た政府はS.A.Sの出動を許可する。 逃亡用車両に身を隠したS.A.S隊員は銀行に突入。次々と犯人を射殺するが、隊員のサムが負傷。ジェイミーはそれを報告してさらに奥に進む。ヘンノは未成年の犯人の一人を発見するが、未抵抗にも関わらず射殺する。 サムは死亡。任務の掟とはいえ見捨てて任務を遂行したジェイミーは罪の意識にさいなまれる。一方義理の弟のアレックスは平然と酒を酌み交わしているのだった。理解できないジェイミーだったが、ヘンノはこれがチームのやり方だと言う。除隊を考えるジェイミーだったが、やっぱり隊に戻ってくる。第2話「Break out」 英国のある細菌研究所にチェチェン人3人組がセルゲイ・ポリアコフ博士への面会を装って押し入る。研究所は口てい病の研究を装っていたが、実は炭疽菌兵器の研究を行っていたのだ。ロシアの開発した炭疽菌に対抗してチェチェン勢力も炭疽菌を入手しようとしたのだ。セルゲイ博士とチェチェン人は面識があったが、セルゲイ博士は協力に積極的ではなかった。 実験室で実験中の炭疽菌が漏れ、犯人の一人が取り残されて死亡する。S.A.Sは炭疽菌を取り戻すために投入される。しかし、犯人は炭疽菌の入った瓶を持ち歩いており、安易な突入は周辺への汚染を引き起こす。そこで、S.A.S唯一の女性士官キャロラインが医師に化けて内部に潜入する。しかし、外部にスパイがおりキャロラインとともにヘンノまでもが人質となってしまう。犯人に撃たれたヘンノは出血がひどい。S.A.S部隊はやむなく屋上から強行突入。なんとか炭疽菌の瓶を確保し、犯人を射殺するが、アレックスはポリアコフ博士までも射殺する。ジェイミーはその行為に不快感をあらわすのだった。第3話「Natural Sellction」 新しくS.A.S隊員になるための最後のサバイバル訓練が行われていた。ヘンノ軍曹が試験官となり、4名単位の候補隊員が訓練場に放たれる。それを落下傘部隊員が大挙して追いかけるのだ。制限時間内に集合場所に来なければ食事はおあずけ。落下傘部隊に捕まれば拷問が待っている。 ジェイミーの友人ミックは、ルーク、トレンティらと組んで訓練に参加していた。足を負傷したルークが遅れ始め、姿が見えなくなる。後方から迷彩服の謎の男がルークを殺害したのだ。続いて、トレンティが川縁で殺される。ヘンノは闖入者がいると知り、ジェイミーらS.A.S隊員を派遣する。その結果、かつて S.A.S隊員になりそこねたビリーが犯人であると判明。ヘンノ、ジェイミーらはビリーを捕獲する。一方、落下傘部隊に捕まったミックは厳しい拷問に耐え、晴れてS.A.S隊員になるのだった。第4話「The Killing of a One-eyed Bookie」 S.A.S隊員はグレイシーという男の警護任務についていた。グレイシーは勤王準軍事家で、英軍諜報部のジャック・コレンの情報により、IRA組織に狙われていることがわかったのだ。ジェイミーはグレイシーに化けて車で移動中に、警察の検問に化けたIRAに拉致される。後方から追跡していたヘンノとキャロラインが応戦するも、ジェイミーは連れ去られてしまう。S.A.S隊員はジェイミーの救出を望むが、行方もわからずジェイミーの命は絶望視された。しかし、命令違反を覚悟で、ヘンノとキャロラインはアイルランドに潜入し、実はIRAと二重スパイのジャック・コレンのもとに向かい、コレンからジェイミーの居場所を聞き出すのだった。一方ジェイミーは厳しい拷問を受けていたが、IRAの行動が父親の復讐であることを知り、次第に犯人と心を通わせ始めるのだった。 ヘンノはジェイミーの隠れ家に突入し、ピートらも駆けつけてIRA戦士、コレンを射殺し、ジェイミーは救出されたのだった。第5話「Something to do with Justice」 第4話の命令違反の角でヘンノとピートが除隊処分を受ける。一方、レッドチームは新リーダーとミックらを迎える。ヘンノとピートは、ヘンノの旧知が経営する人材派遣会社のつてで、ボスニアのセルビア軍の軍事教官として15週間の契約を結ぶ。 S.A.Sレッドチームはハーグの戦犯グラスノビッチの確保のためやはりボスニアに派遣される。ターゲットの潜む軍事キャンプを偵察したレッドチームはキャンプ内にヘンノとピートの姿を見つける。実は、除隊処分は敵を欺くためであり、二人は潜入調査の任務を負っていたのだ。ヘンノとピートの内偵によりグラスノビッチ確保の作戦が決まる。スウェーデンのテレビクルーに化けたジェイミー、キャロラインらが突入してグラスノビッチを確保する。しかし、セルビア軍女性に対し一瞬ヘンノが躊躇したため、ピートが撃たれる。ジェイミーによってなんとか救出されたものの、ピートは意識不明の重体となった。ピートが重体ながら、ピートの奥さんらとS.A.S隊員は酒を酌み交わすのだった。それしか気を紛らす方法がないのだ。さらに家族のことを考え、アレックスが除隊するのだった。DVD検索「S.A.S英国特殊部隊」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年08月29日
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1969 イギリス 監督:ガイ・ハミルトン出演:ローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケイン、ロバート・ショウほか133分 カラー 空物好きには評価の高い逸品。1940年のイギリス本土上空でのドイツ空軍対イギリス空軍の死闘16週間を描いた作品で、ダンケルク敗走から、ドイツ軍のイギリス本土攻撃断念までである。この作品にはあまり物語性はないと言って良い。一応コリン少佐とその妻マギー軍曹の掛け合いが中心に据えられてはいるが、イギリス軍ダウディング卿、ドイツ軍ゲーリング元帥など著名人の面々が次々と登場し、ストーリーというよりはヒストリー(戦記)として色合いが強いのだ。そういった意味で、有名な史実(エピソード)がいくつも盛り込まれているので、一度見ただけでは完全に理解しがたい物がある。また、機上で戦死する英独の名もなき兵士達の顔が幾度も大写しになるので、誰が主役かなどということは関係なくなってくる。端役の役者にとっては嬉しいかも知れないね。 さて、この映画の特筆すべき点は登場する航空機の大部分が実機である事。英軍ハリケーン、スピットファイア戦闘機(20機余)、独軍ユンカース Ju52/3m輸送機、ハインケルHe111爆撃機(50機余)、メッサーシュミットBf-109戦闘機(60機余)、ユンカースJu87爆撃機(1機)が本当に空を飛び、空戦を繰り広げているのだ。全部で100機以上の実機を揃えたそうだ。もちろん、1969年製作なので、第二次世界大戦当時の機体はほとんどなく、スペイン空軍で訓練用に使用していた戦後仕様の機体が用いられているそうだ。パイロットの多くもスペイン空軍が協力しており、スペイン空軍はこの機体を売却した利益でジェット機を購入したという逸話もある。 複数の実機が飛行し、空戦するだけでも臨場感が著しいのだが、空戦による破壊、地上や海上への墜落シーンもリアルだ。空中での爆破シーンは明らかにミニチュアか模型、もしくは合成だとわかるものも多いが、墜落シーンは実機ではないかと思わせるほどリアルだ。これらのの多くはラジコン模型を用いたものと思われるが、画面の合成によるものもありそうだ。 実機映像で圧巻なのは冒頭のBf-109の低空侵入シーン。機銃掃射シーンはちょっとタイミングおかしいが、低空(2,3m)で侵入してくる戦闘機の恐怖を体感できる素晴らしいカットだ。とにかく、地上の柵にぶつかりそうなぐらいすごい低空なのだが、実写だということだ。パイロット命張ってるなという印象。また、数度出てくるパラシュートによる機体からの脱出映像だが、そのうち1回は足が変な風に折れて、最後までパラシュートが開かない。ダミー人形による失敗映像らしいが、そのまま作品に用いられたそうだ。 地上映像もなかなか手がこんでいる。飛行場や市街地はセットの細かいところにまで時代考証がなされている。市街地等はスペインで撮影されたそうだが、炎上破壊シーンはスペインのセント・キャサリン造船所の再開発を利用して爆破・破壊シーンを撮影したとのこと。また、飛行場格納庫は本物を爆破しており、残った格納庫は現在博物館になっているそうだから、もったいないことをしたものだ。 ただ、時代が時代のため、戦闘シーンはいささか稚拙な部分も認められる。爆撃機や戦闘機の機内からの映像シーンが多用されているが、機体への被弾や血のりシーンはちょっと違和感が強い。今ならもっとリアルな映像が作れるだろうが。また、飛行シーンで何度か同じ映像を使い回しているような気がする。あれ、この絵見たぞということが幾度か。ついでに苦言を呈すれば、せっかくの空戦シーンだが実機を撮影したという安堵感からか、今ひとつ空戦の全体像が見えてこない。そのあたりを編集でも良いから位置関係がわかるようにしてくれたら、よりGOODだったと思う。 いずれにせよ、女性兵士マギー軍曹の存在が必要なんだかどうだかは気になるところだが、激しい戦闘に息を飲んで視聴した事だけは間違いない。興奮度★★★★沈痛度★★★爽快度★★★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1940年5月、フランスのイギリス軍はドイツ軍の猛攻の前に大きな被害を出している。もはや、損耗戦となったフランス戦線に見切りを付けた、戦闘機部隊司令のダウディング大将は、チャーチルに「もうフランスへは飛行機を送るな」と直訴する。 6/4、ダンケルクで英軍がフランスから撤退し、イギリスは本土決戦の決意を固める。しかし、ヒトラーはすぐさまのイギリス本土への侵攻を躊躇した。これによりイギリス軍は体制の立て直しの時間を得るのだった。 独空軍元帥のゲーリングは、まず空軍で制空権の確保が重要だとして「アシカ作戦」(イギリス本土上陸作戦)に先立って、イギリス航空基地への攻撃を始める。歴戦の強者のドイツ空軍に対し、戦闘経験の浅い英軍パイロットは次々に撃墜される。南部の航空基地はひどい打撃を受け、虎の子のレーダー基地も破壊される。英軍パイロットのコリン・ハーベイも戦闘にかり出され、妻のマギーも予備空軍軍曹として戦地に出るのだった。 第11連隊のケイス・パーク大佐は隣区の担当第12連隊のリー・マロリー大佐の迎撃が遅いと非難するが、マロリーは大編隊攻撃の効率性を主張する。しかし、現実にはとにかくパイロットが足りないのだった。 8/24、ドイツ軍のミスで爆撃機がロンドンを爆撃してしまう。報復のためにチャーチルはベルリン爆撃を連日実施する。怒ったヒトラーは、イギリス攻撃を飛行場からロンドンに切り替えてしまう。この結果、英軍はロンドンの市民への被害は増大したが、飛行場での戦闘機やパイロットの回復のチャンスを得たのだった。さらに、ポーランド、チェコの義勇兵も戦線に参加し始めるのだった。 次第に英軍も戦い方を得はじめ、ドイツ軍の爆撃機や戦闘機の被害が大きくなってくる。加えて、ゲーリングの戦術の誤りから、ついにドイツ軍はアシカ作戦の実施を断念せざるを得なくなる。しかし、マギーの夫コリン少佐の機は撃墜され、脱出するも大火傷を負うのだった。 こうして、バトル・オブ・ブリテンは終結する。チャーチルは言う。「これまで、人類の戦争で、これほど多くの人間が、これほど少ない人間に、これほど多くの恩を蒙ったことはない」。DVD検索「空軍大戦略」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年08月27日
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8月までの怒濤の戦争映画も一段落付いたところですが、9月も戦争映画はやっております。260(シネフィルイマジカ)外套と短剣(1946米)さよなら子供たち(1987仏独)マダム・グルニエのパリ解放大作戦(1973英)261チャンネルNECOあゝひめゆりの塔(1968日)310衛星劇場兵隊やくざ(1965)続兵隊やくざ(1965)新兵隊やくざ(1966)兵隊やくざ 脱獄(1966)兵隊やくざ 大脱走(1966)兵隊やくざ 俺にまかせろ(1967)兵隊やくざ 殴り込み(1967)兵隊やくざ 強奪(1968)大日本帝国海軍史第一巻(1978)犯罪者は誰か(1945)312ムービープラスグッドモーニングベトナム(1987米)315スターチャンネル華氏911(2004米)きみの帰る場所/アントワンフィッシャー(2002米)316スターチャンネルプラスハートブレイクリッジ/勝利の戦場(1986米)317スターチャンネルクラシックケイン号の叛乱(1954米)319Vパラミリタリー・エンジェルpart1 装備結集!戦車・装甲戦闘車(2002日)ミリタリー・エンジェルpart2 精鋭!レンジャー部隊(2002日)360スーパーチャンネル戦略大作戦(1970米)楽園をください(1999米)707日本映画専門チャンネル雲ながるる果てに(1953)黒い雨(1989)戦争と平和(1947)ムッちゃんの詩(1985)連合艦隊(1981)わが愛の記(1941)私は貝になりたい(1958)708東映チャンネル大日本帝国第1部シンガポールへの道(1982)大日本帝国第2部愛は波濤をこえて(1982)二百三高地(1980)715AXN1941(1980米)U.Sソルジャー(2000米)730ディズニーチャンネルダンボドロップ大作戦(1995米)PPVスカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー(2004米)(ch.100 8/24~9/2\483)世界最強特殊部隊S.A.S 第2シーズン(全6話)(2002英)(CH162 9/2~9/8 \735)Uボート最後の決断(2003米)(ch.171 9/23~9/29 \420)コバート・ミッション機密指令(2002米)(ch.171 9/30~10/6 \420)紺碧の艦隊&旭日の艦隊(アニメ)(CH179 9/1~9/30 全話で\5,775) 今月絶対にお勧めなのは、兵隊やくざシリーズですね。勝新の全8作が一挙に公開です。なかなか手に入らなかった作品ですし、近日初DVD化もされていますが、スカパー!でやってくれれば相当お得です。兵隊やくざDVD-BOX 上巻兵隊やくざ DVD-BOX下巻 もうひとつはppvですが世界最強特殊部隊S.A.S 第2シーズン(全6話)です。テレビドラマシーリーズですが第1シーズンもそうでしたがなかなかシビアなドラマが展開されます。こちらも、6話全部で735円ですからDVD買うよりはずっとお安く見ることができます。S.A.S.英国特殊部隊2 シージャックS.A.S.英国特殊部隊2 バトル・ミッションS.A.S.英国特殊部隊2 テロリズム このほかミリタリー・エンジェルとやらいう、井川絵美,黒石えりかちゃんというかわいらしいお姉ちゃんが自衛隊体験する映画もとっても気にはなるけど・・・・ミリタリー・エンジェル Part.1 装備結集!戦車・装甲戦闘車ミリタリー・エンジェル Part.2 精鋭!レンジャー訓練
2005年08月25日
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1955 フランス 監督:アラン・レネナレーション:ミッシェル・ブーケ32分 一部カラー ポーランド南部の町オヒシフィエンチムにあるドイツ軍の強制収容所「アウシュビッツ」を描いた記録映画。アウシュビッツ収容所は元はポーランドの政治犯を収容する予定であったが、後にユダヤ人の大量虐殺の場と化していくことで最も有名な収容所である。現在もその施設の一部が残り、国立オヒシフィエンチム博物館として世界遺産にも登録されている。約150万人のユダヤ人が送り込まれ、その9割以上が射殺、ガス室、、実験、餓死、病気によって死亡したとされている。 本作はフランス人監督の手によるもので、戦後間もない1955年段階で、ある意味タブーとも言えるホロコーストを題材に取り上げた勇気は評価に値する。映画としてはたった32分という短編ドキュメンタリーでありながら、その後に製作される強制収容所ものドキュメンタリーと比しても、そのインパクトや語りかけてくる説得力という点では抜きん出ていると言えよう。 と言うのは、その映像手法と時代性にある。戦後の映像はカラーを用い、戦時のアウシュビッツ映像はモノクロを用いるという明暗の分け方や、静止画像を多用することでの視覚のインパクトが強く、失った時と生命が戻らないことを語りかけてくる。しかも、戦後の映像と言っても1955年段階のものであり、現在のような博物館化したアウシュビッツではなく、廃墟そのものである。その微妙な年代差が実にリアルな生と死の間を予感させるのだ。また、淡々としたナレーションは感情的にならずに冷静に事実を直視することを見る側に強制する。単に、ドイツの批判を並べ立てるのではなく、事実の羅列によって見る側の判断力を呼び起こすのだ。 映画のラストにはユダヤ人が解放されて終わったのか・・・という投げかけがなされる。現在の我々には遠い過去の出来事になりつつあるが、製作当時としては戦犯問題、パレスチナ問題など未解決も問題も多々あった背景が偲ばれる。 短編の割には内容が濃く、正座して見る気にさせる正当派ドキュメンタリー映画と言えるのではないだろうか。1956年のジャン・ヴィゴ賞受賞。興奮度★★★★沈痛度★★★★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) ポーランドオヒシフィエンチムにあるアウシュビッツ収容所。ドイツの建設業者が利権を争って作り上げた一つの町である。収容所にはユダヤ人刑事犯(赤マーク)、ユダヤ人政治犯(青マーク)、ドイツ人刑事犯(カポ)が収容されており、赤<青<カポ<SS親衛隊の順に序列が出来ていた。収容所内ではカポによるユダヤ人いじめや懲罰のほか、親衛隊の新人いじめなどもあった。 夜にトイレに行き酔ったカポに出会うことは極めて危険なことであった。(カポは飲酒が許されていたということ)ユダヤ人の中にはカポに対抗する政治組織も作られたという。 収容所内は一つの町を形成するほどであったが、医務室とは名ばかりで死の注射を撃つ場所であったし、外科ブロックと言えば、親衛隊の医師や怪しい看護婦らが無為な人体実験を行っていた。また、売春宿も設置されそこは唯一の食料を得ることが出来る場であった。 1942年親衛隊長のヒムラーが視察。「生産的に処分しろ」の一声で、アウシュビッツでの虐殺は加速していく。列車でアウシュビッツに送られてきたユダヤ人らは、「選別」と呼ばれる振り分けで、強制労働行きかそれ以外に分けられる。それ以外とは婦女子や老人が主で、シャワー室に見せかけたガス室行きである。量産される死体の山に火葬場は処理しきれず、ついに効率のいい窯が開発される。また、収容者から奪った頭髪は毛布に、人骨は肥料に、死体は石鹸に、皮膚は紙にまで再利用しようという目論見すらあったのだ。こうした、労働力としてのユダヤ人を目当てに、シュタイヤー、グレップ、ジーメンス、ファルベンといったSS親衛隊も立ち入ることが出来ない私設収容所も設けられていた。 連合軍の進撃によりアウシュビッツのユダヤ人は解放される。しかし裁判でSS親衛隊の将校やカポは、命令に背けなかったとして無罪を主張する。ナレーターが語る、「これで終わったのか。今も隣にカポ、親衛隊、密告者がいるのだ」。DVD検索「夜と霧」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年08月23日
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いよいよ12月17日公開の映画「男たちの大和」の前売り券が発売開始です。 今なら特製動く大和ストラップがついてきます。 昔懐かしい、傾けると溶液の中を大和がスライドしていくあれですね。出来の方は・・・・・、まあなんせ大和ですから、ということで。 さて、富山県出身の辺見じゅんさんの原作の映画化だけあって、骨太ノンフィクションとして、私としては大いに期待なのです。「ローレライ」「戦国自衛隊1549」「亡国のイージス」なんかとは次元の違う作品なわけです。戦国自衛隊も亡国のイージスも見に行かずに、今から待機しているほど期待大なのです。 主演の方は反町、中村獅童ということでいささか心配なのですが、中村獅童のほうは先日のTVドラマ「実録小野田少尉」で好演していたので、なんとか頑張って欲しいものです。反町は軽い演技だけはしてくれないことを祈ってます。それからあの「ムルデカ」の山田純大くんも出るらしく期待できます。ただ、長島一茂?!。映画だけはぶち壊さないでおくれ。 だが、主題歌が長渕剛というじゃないですか。許せませんな。カラオケでは長渕の古い歌を歌う私ではありますが、もっと反骨的で男気のある奴かと思っていましたが、愛だの平和だの反戦だのを臆面もなく歌ってしまうようなちんけな奴になってしまって大いに失望しているのです。そんな男に主題歌歌わせておいていいのかいな。あとで、長渕に「反戦の思いで歌いました」などと言わせたら、それこそ映画の価値激減であります。 そもそも角川映画なので出来にはやや不安が残るのですが、原作の意図を汲んでいるとすれば、そんなちんけな平和や反戦というレベルではなく、少年兵や老年兵が死の意義すら見つけきることも出来ずに戦い、そして結果としての平和を勝ち取っていくという実に奥の深いものとなるはずです。 この映画は絶対に原作を読んでから見ることをお勧めします。史実ですからネタバレなんてものはありませんし、小説や映画では表現されない個人個人の心に触れて見ることが意義です。文庫本になって安いので買って読んだらいいでしょう。 この映画で多分泣くでしょう。もう大泣きしそうな予感大。スクリーンに敬礼までしちゃうかも。
2005年08月21日
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自決を予告?三島由紀夫の映画「憂國」フィルム発見(読売新聞)作家・三島由紀夫(1925~70)が陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で行った割腹自殺を、自ら予告するように監督・主演していた映画「憂國」(66年公開)のネガフィルムが、東京・大田区の三島邸で発見され、18日までにDVD化を含む公開が決まった。(以下略 読売新聞) こんなものが出てくるんですねえ。私は、三島由紀夫氏割腹時はまだ幼少でしたが、実に衝撃的な印象が残っています。盾の会の制服と言い、割腹という衝撃的な内容と言い、私の深層心理に深く関わった事は確かです。その後、中学までに三島全作品を読破し、言う事なす事がミシマイズムであった私は、周囲から熱烈な三島信奉者として映ったようです。 しかし、時代を重ねるにつれ徐々に三島に拒絶感を抱くようになっていきました。それは、三島と私に共通する部分が多かったからです。三島は幼い頃から病弱であり、その反動として肉体にコンプレックスを抱き、それが過激な知識欲と権力欲にシフトしていくのです。私も幼少時は病弱であったため、三島のストイックなまでの装飾願望が良くわかるのです。三島の難解な文章語を用いた文体を真似して小説家を目指したこともありましたが、自己を飾る事の苦しさから拒絶へ至ったと思っています。 とはいえ、思春期を三島に浸かって育ったがゆえ、今の私にも多分に三島の影響が残っている事は否めません。彼の生き様と美と死へのあくなき追求が何であったかを知る事は、私の今後の人生に再び大きな影響を与えることでしょう。 で、三島作品の中でも最もストレートな表現であった「憂国」がDVD化ということで、非常に期待しているのですが、どうも全集(42巻?)の付録として出るようですね。さすがに全集は高くて買えないだろうなあ。DVDだけで発売して欲しいと思うのでありました。既存の三島由紀夫全集
2005年08月19日
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1970 アメリカ 監督:ラモント・ジョンソン出演:ブライアン・キース、ヘルムート・グリームほか106分 カラー イギリス本土のマッケンジー捕虜収容所からのドイツ海軍兵士の脱走と、それを阻止しようとする英軍情報部員の駆け引きが主題となっている。企画的には意表を突いた脱走計画など面白くなる要素も多いのだが、脱走シーンとそれを追跡する最も盛り上がるべきシーンが手を抜かれており、尻すぼみとなっているのが残念。また、主役の英軍情報部員役(ブライアン・キース)が高齢過ぎるうえ、覇気が全くないためにストーリに勢いが全く感じられないし、主人公への共感は困難だ。しかも、ストレス満載のエンディングの仕立てはいかがなものだろうか。確かに、敵味方相通じるものという観点は意表はついているが、はっきり言って面白くない。ということで、映画的にはかなり中途半端で盛り上がりに欠けるものとなっている。 先にも書いたが、主役の英軍情報部員の役どころが中途半端だ。低くて小さい声で話す様は、クレバーで冷静な性格を表しているのかも知れないが、酒好きで、反抗的で、女好きという側面とどうも合致しない。結局この役柄の位置づけがはっきりしないために、映画の焦点が絞り切れていないのが残念。なお、ドイツ潜水艦艦長役のヘルムート・グリームの方は適役と言った感じ。このあたりは、実にもったいない。 登場する兵器類としては、英空軍マークをつけた小型機が登場するが、これはセスナみたいなもの。軍用機ではないと思う。唯一兵器として潜水艦が登場する。ドイツUボート役として出てくるが、アメリカ海軍のテンチ(Tench)型潜水艦である。この型は第二次大戦末期に多く建造され、戦後多くは他国に売却されている。アメリカ海軍でも遅いものは1970年代前半まで就役しているので、それを用いたものであろうか。興奮度★★★沈痛度★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 第二次世界大戦時、イギリスにあるマッケンジー捕虜収容所に、ドイツ軍兵士が収容されていた。そのリーダーは海軍潜水艦艦長のシュルーター大尉で、事あるごとに反抗的態度を示し、収容所長ペリー少佐を困らせている。実は、シュルーター大尉は本国からの指令で、潜水艦乗り28名の脱走を企図していたのだ。ペリー少佐は、ドイツ国内の英国軍捕虜収容所で25名が手錠をかけられたため、マッケンジー収容所でも報復のため手錠をかけようとするが、シュルーター大尉らは反抗を続ける。 イギリス軍のコナー大尉は元新聞記者だが、女性問題等で出世に縁遠い。今回も無届け外出の件であげられたが、友人のカー将軍に取りなしにより、情報部員としてマッケンジー収容所に送り込まれることとなった。 コナー大尉は、マッケンジー収容所に脱走計画があることを察知する。しかしその証拠は得られていない。コナー大尉がドイツ兵に手錠をかけようとすると、シュルーター大尉らは再び反抗する。これに対して、コナー大尉は用意していた消防車で放水して退散させる。しかし、その隙にイギリス兵に化けたドイツ兵2名が脱走に成功する。また、混乱に乗じて、シュルーター大尉に反抗的だったノイシェルという兵士を半殺しにする。 コナー大尉は瀕死のノイシェル暴行を目撃し、シュルーター大尉の陰謀追求を始める。そのノイシェルも病院内の暴動で殺されてしまう。 いよいよ、シュルーター大尉の脱走が実行される。味方のドイツ兵らも欺く天井崩落事故を起こし、その隙に28名が脱走する。コナー大尉は、あえてシュルーター大尉を見逃して、警察と協力して追跡、海岸で浮上したUボートごと生け捕りする作戦を計画する。 シュルーター大尉らは一時は航空機から発見されるも、それを振り切って海岸部に到達する。夕刻になり、Uボートが浮上し、シュルーター大尉らはボートで接近を図る。しかし、執念で命令違反覚悟で海軍を利用して捜索するコナー大尉の小型機に発見される。コナー大尉はすぐさま沿岸哨戒艇を呼ぶが、ぎりぎりの所でUボートはシュルーター大尉ら3名を置き去りにして潜水を開始し、逃げてしまう。 海岸の上では、コナー大尉がカー将軍からの出頭要請を受けていた。そして、海上に取り残されたシュルーター大尉を見て「お互いにまずいこととなったな」とつぶやくのだった。DVD検索「マッケンジー脱出作戦」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年08月19日
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2002 フランス 監督:ジェラール・ジュニョー出演:ジェラール・ジュニョー、ジュール・シトリュクほか103分 カラー ドイツ占領下のフランス国内のユダヤ人迫害問題を題材にしたヒューマンタッチドラマ。ユダヤ人を題材にしてはいるが、思ったほど陰湿な雰囲気ではなく、むしろほのぼのとした展開である。フランス映画にありがちな、うじうじしたものではなくテンポ良く話が進んでいくのがいい。ただし、全体としてはやはり皮肉っぽいストーリではあり、フランス映画らしさも感じる事が出来る。 監督が主演も兼ねているが、平凡で、臆病で、利己的な小市民が、徐々に人間としての尊厳に目覚めていく様子をうまく演じている。自己の保身から招いたユダヤ人への災難を、残されたユダヤ人少年を命がけでスイスに逃がしてことで、埋め合わせしようとする良心である。しかも、その過程が無理に感動を押しつけることもなく、どこか間抜けたおじさんとちょっと高慢な少年コンビが笑いを誘うのだ。なかなか後味のいい映画とも言える。また、身分を知りながら協力する看護婦や仏警察員など随所に出てくる心やさしき人々の存在も爽快だ。 当然のことながら、兵器類や戦闘シーンは全くない。戦争映画好きとしては、もっとユダヤ人収容所等の背景や戦争の悲惨さも織り込んで欲しいという気もないこともないのだが、やはりこの作品はこの程度の浅い掘り下げでこそ価値があるのだとも思う。 明るくほのぼのと、ユダヤ人問題を考えることができる名作である。興奮度★★★沈痛度★★★爽快度★★★★★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1942年7月15日のパリ。バティニョール精肉惣菜店の隣家であるユダヤ人医師バーンスタイン一家が、密かにスイス脱出のため荷物をまとめていた。フランスはドイツ軍占領下にあり、ユダヤ人一斉検挙の命令が出ていたのだ。 バーンスタイン一家が荷物をまとめ終わって車に乗り込もうとしたとき、精肉店の主人バティニョールが、肉を盗んだとバーンスタインに言いがかりを付ける。同居する娘の恋人ピエール・ジャンの入れ知恵である。ピエール・ジャンは売れない戯曲家だが、ドイツ軍秘密警察に積極的に協力する卑しい男である。一刻を争うバーンスタインは指輪を渡して去ろうとするが、ピエール・ジャンの通報でドイツ軍秘密警察がバーンスタイン一家を逮捕してしまう。 バティニョールはバーンスタイン一家がどこに連れて行かれたかには無関心であったが、ジャン・ピエールは密告を誇らしげに振る舞う。さらに、ジャン・ピエールは秘密警察のスプライヒ大佐に取り込み、豪華なバーンスタイン家に住む事を許され、加えてユダヤ人から接収した自家用車も貰い受ける。バティニョール肉店はすっかりスプライヒ大佐御用達となるのだった。妻も娘も大喜びだが、かつてはフランス軍としてドイツと戦ったバティニョールはドイツ軍に媚びへつらう事に、多少の抵抗があった。 バーンスタイン家でスプライヒ大佐のパーティを開催した日、玄関に一人の少年がやってくる。バーンスタインの息子シモンだった。収容所に送られる途中に両親に逃がしてもらったのだった。「お父さんはどこ」と聞くシモンに、バティニョールは焦って女中部屋にシモンを匿うのだった。 シモンの両親がもう戻ってこない事をなんとなくわかっているバティニョールは、自分の一家が起こした行動によるものという罪の意識から、シモンをスイスに逃してやる事を考え始める。さらに、シモンの従兄弟の姉妹も加わり、仲介屋に頼むための資金づくりに奔走する。バーンスタイン家が所有していた名画がスプライヒ大佐に押収された家具の中にあることを知ったバティニョールは、密かにその絵画を持ち出す。しかし、そのことがドイツ兵にばれ、スプライヒ大佐に呼び出しを受ける。加えて、バティニョールの行動を訝しがったジャン・ピエールに3人のユダヤ人の子供の存在がばれ、バティニョールは思わずジャン・ピエールを殺してしまう。 もはや後戻りできないバティニョールは、自ら3人の子供を連れてスイス国境へ移動する。途中の列車の中、検問所などで身分がばれそうになるが、シモンの機転で幾度も切り抜けていく。スイス国境で一時滞在した村で、シモンの余計な一言で仏警察に捕まってしまう。なんとか逃げ出したバティニョールと3人の子供は、ラビの先導でスイスへ向かう。バティニョールは、はじめ子供達だけをスイスに送るつもりだったが、親代わりとして共にスイスへ渡っていくのであった。 DVD検索「バティニョールおじさん」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年08月17日
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1946 フランス 監督:ルネ・クルマン出演:アンリ・ヴィダル、ポール・ベルナールほか101分 モノクロ 第二次世界大戦後まもなく製作されたサスペンス調潜水艦映画。監督はレジスタンスもの「鉄路の闘い」で著名なルネ・クルマン。登場人物の個性を重視した推理小説のようなタッチと、潜水艦の内部を中心としたカメラワークに特徴がある。 題材は、敗色濃いドイツの高官らが南米に潜水艦で逃亡を図るというもので、実際にあった疑惑(実はヒトラーは生存しており、戦後にアルゼンチンに入港したU-977に乗っていたのではないかというもの)に影響されたものと思われる。 サスペンス調であるが故に、作り事っぽい感は否めないが、それでも爆雷投下シーンなどには記録映像を用いたり、潜水艦内部の機器類の再現は細部にわたってリアルである。乗員の服装や艦の操作風景などは、単なるサスペンス映画の域を脱している。とはいえ、ある論評で後の潜水艦名画「U-ボート」に匹敵する程の緊迫感とあったりするが、さすがにそこまでのものではない。 登場人物は、南米に逃亡しようとするドイツ将軍、ナチ党長官、学者、新聞記者、経済界の有力者、そして女性たちと多彩であり、ドイツ敗戦を知ったあとの、権威にすがる者、現実逃避を図る者、狡猾さを発揮する者など、混乱ぶりが良く描かれている。そこに、連れてこられたフランス人医師の視点を加える事で、客観的に顛末を見守る事となり、最後まで飽きさせない展開となっている。ただ、残念なのは、あまりにドライに描かれすぎているため、ドラマティックな感動には至らず、ちょっとあっけなさを感じる点だ。こういう、ドライさもいいけど、現代ならば、もっとドロドロした映画に仕立て上げられるんだろうな。興奮度★★★沈痛度★★★★爽快度★★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1945年4月、ドイツ第三帝国の崩壊が間近になったとき、オスロの港から一隻のUボート(U-327)が密かに出航した。ランク艦長のUボートに乗船しているのは、国防軍のハウザー将軍、ナチ親衛隊長のフォスターとその腹心(チンピラ)ウイリー、イタリア人実業家カロッシとその妻ヒルダ(実はハウザーの愛人)、対独協力者でフランス人新聞記者のクーチェリエ、科学者でスカンジナビア人のエリクソンとその娘である。これから、南米に逃避行し、そこで第三帝国の復興を図る先発要員の使命を帯びていたのだ。 燃料を節約するために、Uボートは英仏海峡を通過する。しかし、英軍艦艇に発見されて爆雷攻撃を受ける。この攻撃でヒルダが頭を打って昏睡状態に陥ってしまう。冷酷なフォスターはヒルダを下船させようとするが、ハウザーは愛人ヒルダを手放さない。やむなく、ウイリー、クーチェリエら三人がフランスに上陸し、フランス人医師ギベールを拉致してくる。 ギベールは拉致された事を知り、ヒルダの治療後には、いずれ抹殺されることを予感する。出来る限り延命を図るため、ドイツ語を封印し、艦内に伝染病が蔓延しているとデッチあげる。さらに、無線士と懇意になり、脱出の機会を図る。 ギベールの思惑通り、次第に艦内に苛立ちが蔓延し、さらにはドイツが降伏し、ヒトラーが自殺したとの情報が入る。それでも、ハウザーは第三帝国復活の使命を信じて南米に達する。途中、ガロージが妻に見捨てられた事を嘆いて自殺する。また、母国フランスからスパイ容疑をかけられたことを知ったクーチェリエは、ギベールに接近し、取引を持ちかける。 南米に達して、陸地の情報員ラルガに連絡を取るが、応答がない。やむなくウイリーらが上陸したところ、ラルガはドイツ敗戦の報を聞いて、すでに協力する意志を失っていたのだ。さらに、ラルガの説得で、ウイリーもフォスターから離れる事を決心する。 これを知ったフォスターは、怒り狂い、ウイリーを捜し出し、暗黙のうちに再び服従させる。そしてウイリーにラルガを殺害させる。 燃料や食料が得られず、上陸する事も出来ない事を知ったハウザーらは、付近を航行しているドイツ軍補給船を呼び出すことにする。その際に、もはやこれまでと逃亡を図ったクーチェリエはフォスターに射殺される。さらに、エリクセンは娘を置き去りにしてボートで逃げてしまう。 運良く、補給船ポセイドン号と合流できたが、ハウザーとフォスターの意見が割れる。ポセイドン号の情報ではドイツ海軍は付近の港に寄港せよとの命令が出ているというのだ。ドイツ海軍の命令に従うべきとするハウザーは、単身ポセイドン号に乗り移ってしまう。愛人ヒルダもその後を追うが、海中に没してしまう。しかし、あくまで任務遂行を目指すフォスターは、味方のポセイドン号を魚雷攻撃で撃沈してしまい、生存者にも機関銃を撃ち放つのだった。 一方、艦内では終戦を知った船員らが反乱を起こす。スカンジナビア人の娘らとともにボートで脱出を図る。フォスターもまた反駁したウイリーに刺されて死亡する。 ところが、ギベールだけは艦内に取り残されてしまう。何日間も一人で漂流し、これまでの顛末を日記にしたためるのだった。そして、アメリカ海軍の魚雷艇に救われるのだった。DVD検索「海の牙」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年08月08日
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1958 アメリカ 監督:ロバート・ワイズ出演:バート・ランカスター、クラーク・ゲイブルほか93分 モノクロ 豊後水道を舞台として、アメリカ海軍潜水艦の日本海軍駆逐艦秋風や潜水艦との死闘を描いた作品。監督は「砂漠の鼠」「砲艦サンパブロ」のロバート・ワイズ監督で、心情描写を得意とするが、本作も潜水艦艦長と部下の心情の動きを主眼に据えている。しかし、私個人的にはワイズ監督の心情描写手法は、ベタすぎるためにストーリーにドラマチックさが欠けるのであまり好きではない。どうしても間延びした展開になりがちなのだ。 主演は「地上より永遠に」「大列車作戦」のバート・ランカスター。かなり個性の強い(顔立ちも)役者のため、本作のような心情描写を主眼とする作品の場合はちょっときつい感じがする。艦長役がすっかり食われており、将校同志の確執の理由が見えずらい。関係ないけど、ランカスター顔でかいんだよね。気になって仕方なかった。 ストーリーはそれなりの内容があるのだが、描写は今ひとつ。潜水艦内部や操作に関する部分は力が入っているのだが、海戦シーンはいささか心許ない。潜水艦戦には詳しくないので、良くわからないのだが、駆逐艦に対しての正面魚雷攻撃や平底船を潜っての魚雷攻撃など、本当にありなんだろうか。また、日本軍の描写が最高に萎える。片言の日本語はとても変だぞ。まあ、駆逐艦秋風や潜水艦がそこそこ頑張るから許せるけど。さらに、後の潜水艦映画にありがちな、爆雷攻撃等に対する海中沈黙で耐えるシーンはあまりないため、潜水艦の緊迫感をさほど感じる事がなかったのが残念。 登場する潜水艦は「ナーカ号」と呼ばれており、計画中止ではあったがバラオ型として実名の艦である。映画に用いられたのもバラオ型の潜水艦でSS- 395レッドフィッシュらしい。出航、航海シーンでは実映像として登場し、やはり実際の艦は迫力がある。海戦シーンや日本軍の駆逐艦、潜水艦、輸送船は全てミニチュア模型。そんなにチープでもないけど、臨場感はほとんどない。 日本海軍の駆逐艦は秋風、桃が登場するが、秋風は高速駆逐艦として活躍したが、ほとんどをラバウル方面で活動し、44年11月にルソン島沖で潜水艦ビンタードに撃沈されているので本作は史実とは異なる。桃の方は44年3月進水、12月にルソン島沖で潜水艦ホークビルに撃沈という事なので、これもまた架空の話。 ということで、ストーリー設定や映像にリアル感が欠けているので、本作は潜水艦映画と言うよりは、むしろアメリカ海軍士官の確執ストーリーとして見た方がいいのかもしれない。興奮度★★★沈痛度★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1942年リチャードソン中佐の潜水艦が、四国と九州の間にある豊後水道で日本海軍の駆逐艦秋風に撃沈される。 1年後の1943年、陸上勤務となっていたリチャードソン中佐は、入港した潜水艦ナーカ号の艦長が病気で退艦したとの情報を聞きつけ、豊後水道で駆逐艦秋風と対決するために、無理矢理ナーカ号の艦長に就任する。 ナーカ号の副長だったブレッドソー大尉は次の艦長と目されていたが、リチャードソン中佐に奪われて不快感をあらわす。しかも、最も危険とされる第7海域が任務地と聞き新艦長に不信感を抱く。 ナーカ号の派遣先は第7海域だが、最も危険な豊後水道は回避するよう命令が出ていた。出航後、リチャードソン中佐は、浮上航行から急速潜航後魚雷発射という厳しい訓練を課す。45秒かかるところを33秒でこなせというのだ。その訓練の最中に日本軍の潜水艦と遭遇する。しかし、艦長は敵に後ろを向いて戦闘を回避した。これで、ますます部下達は艦長が臆病者ではないかと不信感を募らせる。 しかし、次に出会ったのは駆逐艦桃と輸送船団だった。艦長は輸送船に魚雷攻撃を行って駆逐艦の注意を引いた後、駆逐艦正面に向かって浮上航行。 1,500ヤードの場所で急速潜航して魚雷発射する。見事桃の艦首に魚雷が当たって桃は撃沈。つまり、艦長は対駆逐艦戦法の訓練をしていたのだった。 艦長は命令に背いて豊後水道に入る。そしていよいよ秋風との対決となった。しかし、秋風への正面攻撃の際に日本軍航空機の攻撃を受けた上、魚雷が不発であった。秋風の爆雷攻撃にさらされたナーカ号は、魚雷発射管からゴミと戦死者の死体を発射し、撃沈したと思わせる苦肉の策に出る。まんまと日本軍は騙されるが、ブレッドソー大尉ら部下は、この危険な任務に不満を漏らす。 リチャードソン中佐は先の爆雷攻撃を受けた際に頭を強打し、危険な状態にあった。ついに、ブラッドソー大尉が軍法に則って艦長職を奪う。修理完了後、真珠湾に帰投する事とする。しかし、先の秋風との対決が、捨てたゴミから居場所が割れており、待ち伏せされていたと知ったブラッドソー大尉は、次第に秋風との対決に心が傾いていく。 部下も秋風との対決に納得し、再度決戦となる。今度はブラッドソー大尉の指揮の下見事秋風を撃沈する。ところが、背後に日本軍の潜水艦が迫る。日本潜水艦の魚雷をかわしたナーカ号は海中で機関停止する。そして、一気に浮上したナーカ号は平底船の陰に隠れた日本潜水艦を撃沈するのだった。 そして、リチャードソン中佐は息を引き取り、ブラッドソー大尉ら部下は敬意を示すのであった。DVD検索「深く静かに潜航せよ」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年08月04日
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1946 日本映画社 編集:亀井文夫 42分 モノクロ 戦後1年目に早くも製作された、支那事変から終戦までを描いた戦争批判映画で、公開後1週間で上映禁止となった作品だとか。内容は、戦前の共産党賛美と、戦前の日本軍部・政界・天皇批判に終始する。もちろん、戦争を推進した軍部や回避できなかった政界への批判は的を射ている部分もあるが、戦前の共産主義者が平和主義者であったとか、戦時事象の一つ一つの解釈は、完全に戦勝国及び共産主義史観に基づいたものである。特に、今では中国による偽造と確定されている「田中上奏文」を映画の根底に据えているのだ。戦後60年を経過した現在ならば、笑ってしまうような、極端な自虐・捏造史観がここに始まったのだと実感することが出来る。左まきの人なら泣いて喜ぶような内容だが、ノンフィクション戦記としては余りに価値に乏しい。都合のいい映像の組み替えや、事実の捏造が多々見られるのは、この後に激化していく労働運動の闘争手法を彷彿とさせるものである。さすがにここまでアカ色が強いと、GHQに没収されるのも頷ける。 映像と解説はあまり一致しておらず、また、自虐的固定観念が強すぎて、史実の掘り下げはほとんど見られないので、ストーリー的には面白みはない。全般に、軍部・政財界を支配階級とし、一般国民を労働階級と位置づけて対立させている。中でも、「共産党は勇敢に戦った」などという共産党賛美あたりは、某共産主義国家の映画かと思わせる雰囲気がある。 また、「南京2万人の大虐殺(映画ママ)」を早くも取り上げているが、結局映像、文献資料等は一切提示されず、音声で悲鳴を再現して見せているのが笑える。 戦記記録映画としてはほとんど価値はないが、どうやって日本の自虐史観ができあがったか、日本人がどのように手のひらを返していったのかという歴史を知る上で、貴重な映画であるとは言えよう。亀井文夫の戦中作「戦ふ兵隊」「支那事変後方記録上海」から比べれば、豹変したかのような作風だが、これを先見の明があったとするのか、アカ手法の典型例とするのか、視聴者の判断にお任せしたい。私個人としては、この映画は記録映画ではなく、堰が切れた共産主義プロパガンダ映画なのだと思っている。興奮度★沈痛度★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ一応注意)なしDVD検索「日本の悲劇」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年08月02日
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1947 アメリカ 監督:ヘンリー・ハサウェイ出演:ジェームズ・ギャグニー、アナベラ、ロチャード・コンテほか約95分 モノクロ 第二次世界大戦の戦闘の陰に、諜報部隊の活躍があった。本作は、Dデイ(ノルマンディー上陸作戦)を成功に導いた、米軍秘密情報活動グループO-77(オペレーション77)の隠れた活躍を描いたものである。と、いいつつこれが実際の話に基づいたものなのかどうかはさっぱりわからない。製作年代、冒頭の記録映画調のフリと言い、いかにもドキュメンタリーぽいのだが・・・。 内容は、O-77に集められた22人の中に一人のドイツスパイが紛れ込んでおり、彼に偽の情報を流して、Dデイ作戦の成功を導くというものである。誰がスパイなのか、どうやって騙していくのか、というサスペンス的要素を期待したのだが、展開は極めて単調、単純。では、アクションに期待するかというと、こちらも全くどうってことなし。この後に登場してくる多々のスパイ映画の基本形といった感じなのだろうか。 興味を感じたのは、スパイ養成の訓練のシーン。柔道の受け身をはじめ、映像記憶訓練、無線打電訓練、音響テスト、荷物を濡らさず渡河訓練、飛行機誘導訓練、嘘つき訓練、潜入調査訓練など実に多彩だ。 登場する兵器類は、当然の事ながら少ないが、オランダ降下に用いる航空機にB-24リベレーター、捕虜輸送に強行着陸する航空機がB-26マローダーと思われる。映画のための撮影ではなく、記録映像のような気がする。まあ、お手軽映画と言えばそれまでなのだが。興奮度★★★沈痛度★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1942年の真珠湾攻撃で打撃を受けたアメリカは、日本やドイツを見習って情報戦略の重要性を見直した。1944年に至るまでに76組の諜報員が巣立っていったが、77組目のO-77には22人が応募してきた。その中に、大学研究者のパピー・シンプソン、フランス人女性のスザンヌ・ド・ボーモン、オックスフォード大卒の士官候補生ジェフ・ラスター、銀行マンのビル・オコネルがいた。指揮官兼教官はボブ・シャーキーである。 22人は3ヶ月間のスパイ活動訓練と2週間の実地活動を受けるが、ボブは情報局長から22人の中に一人のドイツスパイが紛れ込んでいる事を知らされ、その特定を命じられる。ラスターとオコネルは同室であり、実地潜入訓練で友情を深める。しかし、ボブはスパイがオコネルである事を突き止める。彼がミスのない超一流の実績を誇っていたからだ。彼の本名はクンツェルと言った。 近いうちに連合軍は大規模な上陸作戦Dデイを控えていたが、その成否はドイツ軍の裏をかくことだった。情報局はドイツに偽の作戦情報を掴ませておくことを計画。そのためにクンツェルに偽情報を持たせてオランダ国内へ潜入させる事とした。 同時に連合軍はドイツ軍の秘密兵器V2ロケットに悩まされていた。そのため、ロケット基地を徹底破壊するため、フランス国内に隠れている兵站部設計者デュクロワの生け捕り作戦も計画された。こちらはラスターと通信員のスザンヌが降下する事となったが、ボブはクンツェルとともに降下させ、クンツェルが偽情報に気づいたら抹殺するようラスターに命じた。 いよいよオランダ降下が決行されるが、降下の際にクンツェルはラスターの命綱を切り、ラスターは墜落死する。クンツェルはすでにラスターの密命を察知していたのだ。 ラスターの代わりにボブがフランス行きを志願する。降下したボブはヴィシー政府の強制労働局を名乗って町長の所へ行き、デュクロワの行方を探る。しかし、レジスタンスの町長はボブを信用せず拉致してしまう。味方である事を証明するため、通信員のスザンヌにラジオで暗号を放送するように指示する。首尾良くラジオで暗号が流され、身の潔白を証明したボブはホテルに隠れているデュクロワの生け捕り作戦を開始する。しかし、クンツェルはボブがやってきたことを察知し、ボブの逮捕をねらう。 レジスタンスの暴動を隠れ蓑にホテルの警備を手薄にして、ボブはホテルに潜入。デュクロワの生け捕りに成功。しかし、クンツェルはデュクロワの輸送のために強行着陸する飛行機を発見。ボブは、クンツェルに対して妨害を図るが、ついに逮捕されてしまう。通信員スザンヌもボブが逮捕された事を本国に打電するが、ドイツ兵に見つかって射殺されてしまう。 ボブからDデイの情報を聞き出そうと、クンツェルは拷問にかける。イギリスの情報局ではナチ秘密警察本部への爆撃計画を立てていた。ボブが口を割る前に、本部ごと爆破してしまおうというのだ。そして、爆撃機が飛び立ち、ボブごと秘密警察本部が爆撃される。 DVD検索「鮮血の情報」を探す(楽天)
2005年07月30日
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8月には戦争映画のピークを迎えます。今年は終戦60年という事でいつもよりも多くの映画が上映されます。この他にも、ドラマなども再放送があるようで網羅し切れません。260シネフィルイマジカ荒鷲の要塞(1968米英)アンダーグラウンド(1995仏独ハンガリー)駆逐艦ベッドフォード(1965米)さよなら子供たち(1987仏独)ジョニーは戦場へ行った(1971米)名もなきアフリカの地で(2001独)ひまわり(1970伊仏ソ)Uボート完全版(1981独)夜と霧(1955仏)リリー・マルレーン1981独)261チャンネルNECOあゝひめゆりの塔(1968)戦争と人間第一部(1970)戦争と人間第二部愛と哀しみの山河(1971)戦争と人間第三部完結編(1973)明治天皇と日露大戦争(1957)310衛星劇場愛と誓ひ(1945朝鮮映画社)撃滅の歌(1945松竹)腰抜け女兵騒動(1960松竹)最後の帰郷(1945大映)真珠湾攻撃(1942米)続・拝啓天皇陛下様(1964日本)ソリトンの悪魔(1999日本)ひろしま(1953日教組プロ)陸軍(1944松竹)陸軍中野学校(1966大映)陸軍中野学校開戦前夜(1968大映)陸軍中野学校雲一号指令(1966大映)陸軍中野学校密命(1967大映)陸軍中野学校竜三号指令(1967大映)312ムービープラス旅芸人の記録(1975ギリシャ)315スターチャンネル君の帰る場所/アントワンフィッシャー(2002米)S.W.A.T(2003米)セイビング・ジェシカ・リンチ(2003米)ティアーズ・オブ・ザ・サン(2003米)トロイ(2004米英マルタ)ハートブレイクリッジ/勝利の戦場(1986米)ブラザーフッド(2004韓)プラトーン(1986米)フルメタル・ジャケット(1987米)ペンタゴン文書/合衆国の陰謀(2003米)マスター・アンド・コマンダー(2003米)ラスト・サムライ(2003米日)317スターチャンネルクラシック地上より永遠に(1953米)史上最大の作戦(1962米)第十七捕虜収容所(1953米)パットン大戦車軍団(1969米)パリは燃えているか(1966仏米)ロンメル軍団を叩け(1971米)360スーパーチャンネル戦略大作戦(1970米)耳に残るは君の歌声(2000英仏)361ファミリー劇場あゝ特別攻撃隊(1960)あゝ陸軍隼戦闘隊(1969)707 日本映画専門チャンネルあゝ海軍(1966大映)加藤隼戦闘隊(1944)君を忘れないFLY BOYS,FLY!(1995)雲ながるる果てに(1953新世紀映画)黒い雨(1989)軍艦武蔵(1991)五人の突撃隊(1961)さらばラバウル(1954)戦艦大和(1953)戦場にながれる歌(1965東宝)戦争と青春(1991)戦争と平和(1947東宝)大東亜戦争と国際裁判(1959)太平洋奇跡の作戦キスカ(1965)太平洋の翼(1962)太平洋の鷲(1953)日本敗れず(1954新東宝)人間魚雷回天(1955)野火(1959)花の特攻隊あゝ戦友よ(1971)日の果て(1954松竹)ひめゆりの塔(1995)ビルマの竪琴(1985)南の島に雪が降る(1961)雷撃隊出動(1944)連合艦隊(1981)私は貝になりたい(1958)708東映チャンネルきけ、わだつみの声(1995東映)日本戦歿学生の手記 きけわだつみの声(1954東横)八月十五日の動乱(1962東映)ひめゆりの塔(1953東映)プライド運命の瞬間(とき)(1998東映)ホタル(2001東映)黎明八月十五日終戦秘話(1952東映)179 ppv終戦60周年企画 20世紀の戦争史(全13作品)8/12~8/25 420円>> 番組情報明治・大正・昭和三代 日本五大戦争 史上最後の世界大戦 果てしなき中国戦線 大戦前夜の欧州 大戦勃発からダンケルクの撤退 日米開戦前夜と真珠湾攻撃 米軍の反撃とミッドウェイ海戦 連合軍の反撃と北アフリカ戦線 シシリーの攻防と太平洋戦線 史上最大の作戦から大戦終結 戦争裁判と原爆の悲劇 「アメリカの敵、日本」 私のお薦め情報はのちほど・・・
2005年07月29日
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1944 松竹 監督:木下恵介出演:上原謙、東野英次郎ほか約73分 モノクロ 厳密に言えば戦争映画ではないと思うが、戦時下の日本人の姿を描いたという事で仲間に入れてあげた。監督は木下恵介、主演上原謙、東野英次郎という、今で言えば蒼々たるメンツだが、当時としてはまだまだ若手だ。 映画はとある東京の町で、ひどくなる空襲のために疎開勧告に従って田舎へ引っ越しを決意する複数の家族の物語だ。恋愛問題あり、家族問題あり、夫婦問題あり、と盛りだくさんの内容ではあるが、問題の解決は実に淡泊で、最後も明るくさようならと別れていく。さすが戦時下の映画であると感じるが、木下監督がこの映画で示したかった事は何なのだろうか。ストレートに疎開を奨励する意図だったのか、都会にいようが田舎にいようが日本人として頑張るんだということなのか。題名の歓呼の町というのも今ひとつ意味がわからない。何が歓呼なのだろうか。 撮影は、ほとんど全てが狭い街角に限定されたセットで行われており、かなりの閉塞感を感じる。1944年当時としては撮影の限界だったのだろう。 主人公は航空機メーカーのテストパイロットという設定だが、期待した航空機の映像は、映画の最後に登場する点のような機影以外は全く出てこなかった。任務としては最新鋭機の空輸ということらしい。 全体として、特に面白いわけでも感動するわけでもないが、日本の風俗を知る上で貴重な映像と言えよう。若き、上原謙、東野英次郎に注目だ。興奮度★沈痛度★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 東京のとある町。度重なる空襲被害から避難するため、疎開勧告が出されている。町内の地主、銭湯屋、印刷屋、箏曲指導の各家々でも田舎への疎開を検討していた。地主の主人は田舎での農業もいいかと思っていたが、娘が会社勤めのため置いてはいけないと婦人が猛反対している。銭湯屋では、釜石にいる娘夫婦が一緒に住もうと提案するが、頑固な親父がうんと言わない。印刷屋は父の代から二代続いた印刷屋だが、この際廃業して疎開を考えている。航空機メーカーのテストパイロットをしている古川慎吾は箏曲指導の母親と二人住まいで、航空機メーカーのある(霞ヶ浦?)への疎開を勧めるが、10年前に家でした夫の帰りを待つため、引越できないでいる。 慎吾は地主の娘たか子へ結婚を申し込んでいたが、たか子の母親が慎吾の父親が家出したこと、テストパイロットが危険な仕事である事を理由に許さなかった。悶々とするたか子に対し、慎吾は戦争の最中に私事を押し通すわけにもいかない、として許してくれるまで待とうと話す。 そんな時、慎吾の父親が10年ぶりに戻ってくる。しかし、慎吾に合わす顔がないと渋っているうちに、慎吾は新鋭戦闘機空輸の業務に赴いた。途中で敵戦闘機と出会うかも知れない危険な業務だ。印刷屋の妻がお産を始めたころ、電話が入る。慎吾が殉職したというのだ。呆然と立ちつくす母親に慎吾の父親も泣きはらす。 慎吾の父親は慎吾の働いていた航空機メーカーで働く事とする。また、印刷屋も航空機メーカーの勤務となった。皆で慎吾の無念を晴らしてやるのだ。銭湯屋も店をたたんで釜石に行く事とした。「皆連絡だけは取り合いましょうね」。そう言って各家族は別れていくのであった。 DVD検索「歓呼の町」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年07月27日
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1937 松竹 監督:佐々木康出演:佐分利信、川崎弘子、広瀬徹、桑野通子ほか約50分 モノクロ 日中戦争が勃発し、戦意昂揚のために作られた出征賛美型映画。労働運動家の主人公と幼馴染みの金持ちが共に出征し、お国のために働くという設定や、遊女が看護婦として前線に志願するなど、アカも女も姿信条に関わらず、お国のために戦うのだという意図が見え隠れする。また、映画製作とタイアップして、東京日々新聞、大阪毎日新聞主催の軍歌懸賞応募で1位の「進軍の歌」、次点の「露営の夢」が主題歌、挿入歌として用いられている。進軍の歌は映画の題名にもなっており、露営の夢(歌)「勝ってくるぞと勇ましく誓って故郷を出たからは・・・」は後に大ヒットとなった歌である。 一応ストーリーとしては、一本気だが卑屈な労働運動家が会社の専務である幼馴染みを疎ましく思っているのだが、戦地で共に戦ううちに誤解が解けていくというオチはある。しかし、戦意昂揚のためでもあるので、あまり複雑な展開にはせず、単純明快なものである。 戦闘映像は映画のために撮影した戦闘シーンと記録映像で構成されている。銃撃戦シーンの撮影には火薬を用いており、それなりの演出なのだが、白兵戦シーンは映像の継ぎ接ぎが著しくひどいものだ。もう少しなんとかならなかったものだろうか。 一方、記録映像の方は、時代を反映してレアな映像が少量だが堪能できる。航空機では三菱九三式二型重爆撃機の飛行・爆撃シーンがある。ポツンポツンと落とす爆弾がわびしい。また、機種は不明だが戦闘機らしき機影が空中を浮遊するシーンがあるが、まさにふわふわと浮遊している。速度も上昇能力も乏しい時代の航空機で、ほのぼのとした映像である。この他、編隊を組む九三式中練(?)のシーンもある。軍用車関係では、八九式中戦車のほか150mmカノン砲(?)を牽引する九二式8トン牽引車(ニク車)が登場する。 まあ、とりたてて見るべき物はないのだが、千人針の風景や街角など、この時代の背景を知る上では貴重なフィルムである事は間違いない。興奮度★★沈痛度★★★爽快度★感涙度★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 労働運動家で職工待遇改善を求めたため、投獄されていた安藤俊作のもとに召集令状が届く。警察署長の話を聞いて、安藤はお国のために出征する事を決意する(*再応集と思われる)。しかし、貧しい安藤には妻と子がいた。共に出征する事となった会社の専務である幼馴染みの遠山次郎は、安藤の妻子の面倒を引き受けると言うが、金持ちや太鼓持ちが嫌いな安藤はそれを断ってしまう。 安藤の妻は千人針を街角で頼むがなかなか進まない。そこに、遊女のお雪が通りかかり、一針縫ってあげる。お雪は金持ちの遠山に惚れており、一緒にアイスクリームを食べる事を望んでいたのだが、なかなかその機会がなかった。 遠山次郎の出征送別会が開催され、その席でお雪は遠山の身を案じるのだった。一方、安藤は妻子の行く末を考え、考えを改めて遠山に頼みに行こうとするが、妻お千代はそれを制する。 安藤と遠山が出征し、お千代は街で花売りを始める。しかし、売れ行きは芳しくない。それを見たお雪は、料亭の主人に働かせてあげることを頼む。そして、お雪自身は看護婦見習いとして中国の前線行きに志願するのだった。出征していく遠山を見て、いてもたってもいられなくなったのだ。 中国の前線では、遠山上等兵と安藤上等兵は吉田部隊(中隊?)に所属して奮闘していた。夜間に中国軍の夜襲を受け、吉田部隊は応戦する。翌日、中国軍の攻撃に包囲された吉田部隊は、軍曹、遠山上等兵、安藤上等兵の三人で本隊へ応援伝令に行く事となった。途中で軍曹が戦死、行く手には中国軍の機銃陣地があった。 自分が囮になっている間に、川を渡っていけと言う遠山に、安藤は次第に遠山への妬みが薄れ、昔のような友人の心に戻っていく。安藤は反対に自分が囮になるとして、中国軍陣地に駆けていく。撃たれる安藤を横目に遠山は川を渡る。 本隊の応援で吉田部隊は窮地を救われるが、瀕死の安藤は戦死する。しかし、遠山との友情はすっかり回復していた。そこに、看護婦見習いのお雪がやってくる。 遠山の吉田部隊は、次なる戦線へ移動する事となる。遠山はお雪に、生きて帰ったらアイスクリームを一緒に食べようと言うのだった。かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年07月23日
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1968 アメリカ 監督:エドワード・ドミトリク出演:ロバート・ミッチャム、ロバート・ライアン、ピーター・フォークほか112分 カラー 連合軍によるアンツィオ上陸戦を描いたもの。アンツィオ作戦はイタリア本土に居座るドイツ軍を連合軍(米英仏など)が南方から駆逐していたところ、ローマ南部のモンテ・カッシーニで頑強な抵抗にあったため、北部の海岸アンツィオに迂回上陸して挟撃しようとした作戦である(詳しくは下記で)。上陸は大成功をおさめたが、司令官の判断ミスにより挟撃戦そのものは甚大な被害を出した、いわゆる失敗と評されるものである。 本作は、従軍記者の目から見たアンツィオ作戦を描いており、戦争とは何かというヒューマンドラマ調の命題を持たせている。が、主役の従軍記者役ロバート・ミッチャムは存在感が強すぎ、たかが従軍記者のくせにいきなり部隊を指揮してしまったり、反吐が出るような戦争観(実はこれが主題なのだろうが)は、この映画の最大のガンだ。また、アクションシーンや演技、設定はかなり稚拙であり、アクション戦争映画としては二流以下の評価となる。ところが、驚いたことに、登場する将校名が架空のものであること以外、かなりの部分で史実に沿って忠実に作られているのだ。登場する部隊、その軍装(袖章)、チステルナ奇襲偵察隊全滅、司令官解任など、この作戦の戦記部分をきちんと網羅しているのだ。この映画は、むしろ戦記物として見るといいだろう。 劇中に登場する上陸部隊指揮官レスリー少将は第6軍団長のルーカス少将のことで間違いない。その上官らしきカーソン将軍は第5軍のクラーク中将であろう。レスリー少将のパッチは確認できないが、司令部内の兵隊が第6軍団のパッチをつけている。ただ、カーソン将軍が後半で第3師団のパッチをつけているのは謎。主人公の従軍記者のパッチは「OFFICIAL U.S.WAR CORRESPONDENT」をきちんとつけている。また、メインとなる戦闘部隊は第1特殊任務部隊(通称 悪魔の旅団)とレンジャー部隊と思われるパッチをつけている。対するドイツ軍はケッセルリング将軍が実名で登場。 兵器類は残念ながら時代考証はなされておらず、撮影当時のままで登場する。艦船類は上陸用舟艇の類のほか、ヘリポート付きの駆逐艦が出てくる。戦車はほとんどM47パットン中戦車で、ドイツ軍側の戦車もM47パットン(M41ウォーカーブルドックもしくはM24チャーフィーかも)にドイツ軍マークを付けただけ。しかも、ドイツ軍の戦車にはスピーカーが取り付けられているのは笑える。このほか、ソフトスキンの類は多々出てくるが、ジープの他にはM6スタッグハウンド装甲車らしきものが見える。ドイツ軍側はキューベルワーゲンがある。 全体に二流アクション戦争映画の匂いと、正当な戦記物の匂いが混在しており、娯楽としてみるか、シリアスとしてみるか悩むところだが、私としてはヒューマンストーリー無視で戦記として楽しむのがいいのではないかと思うのであった。なお、参考までにアンツィオ上陸戦の概要を記しておく。(参考)アンツィオ上陸戦概要アンツィオ上陸戦 1944年1月17日、アンツィオ上陸作戦に先立ち、南方の対峙戦(モンテ・カッシーノ)で英第10軍団と米第2軍団(第34,36歩兵師団)が攻撃に転じる。しかし、ラピド川渡河作戦で1万4000人の戦死を出すなど大敗を喫す。1月22日、連合軍第6軍団はドイツ防衛戦の後方、アンツィオに上陸敢行。上陸はほぼ無血で成功するが、ドイツ軍の勢力を過剰評価したルーカス少将の慎重戦略により、一気に攻め入ることをしないまま、アンツィオ周辺に防衛塹壕線を築く。その間、ドイツ軍に防衛ライン増強をしたいがままにさせてしまい、結局、増強されたドイツ軍を破ってローマに進軍できたのは5 月に入ってのこととなる。連合軍側で2万9200人の死傷者を出している。アンツィオ上陸戦参加部隊第5軍(クラーク中将)-第6軍団(ジョン・ルーカス少将) 米:第3歩兵師団(ルシアン.トラスコットjr少将)、第751戦車大隊、第82空挺師団第504パラシュート連隊、第509パラシュート歩兵大隊(ウイリアム.ヤーボロウ中佐)、1st,3d,4thレンジャー大隊(ウィリアムO.ダービー大佐)→(上陸完了後)第45歩兵師団、第1機甲師団CCA部隊、第1特殊任務部隊(2/1) 英:第1歩兵師団、第46王立戦車旅団、2個コマンドー大隊→(増援)第56歩兵師団チステルナ奇襲偵察戦 1月30日、ようやくローマが無防備状態と悟ったルーカス少将は、第1、3,4レンジャー大隊と歩兵第15連隊(第3師団)に、偵察のためにチステルナへ向かわせる。しかし、すでに増強を図ったドイツ軍第 715機械化歩兵師団及びHermann Goering機甲師団の待ち伏せ、包囲戦にさらされ、767名中自陣に帰還できたのはたった6人であった。(参考HP)・anzio1944 ・509th PARACHUTE INFANTRY BATTALION AND 504TH REGIMENTAL COMBAT TEAM LAND AT ANZIO ・特殊作戦博物館さんHPの第1特殊任務部隊ページ ・1st Special Service Force(thefreedictionarycom) 興奮度★★★沈痛度★★★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1944年1月、従軍記者のエニスは次に行われる作戦の情報を仕入れに、レンジャー大隊の知人スティムラー軍曹のもとに出向いていた。そこに、ブラックデビル(悪魔の旅団)と恐れられる第1特殊任務部隊のラビノフ伍長が乱入してくる。 1月22日、0200時、アンツィオ上陸作戦が開始される。この作戦は防御陣地の構築である、と消極的作戦説明を行う第6軍団長のレスリー少将に、エニスは厳しい質問を浴びせかける。エニスは、先般のラピド川渡河作戦での失敗を報道して准将一人を解任に追い込んだことがあるのだ。レスリー少将は不快感を露わにする。 艦砲射撃の後、連合軍は上陸を敢行するが、ドイツ軍の抵抗は全くなかった。一気に進軍を勧める英軍を制して、レスリー少将は5km地点で塹壕構築を命じる。ドイツ軍の反撃に対しての防衛線を作るためだ。 エニスは軍のジープを借りて戦線を視察して回る。しかし、ドイツ軍の影はほとんどなく、途中で第1特殊任務部隊のラビノフ伍長を同乗させて、ついにローマ市街にまで至る。ここにはドイツ軍がいたが、警備部隊程度であった。ドイツ軍はモンテ・カッシーノの戦線に全軍を投入しなければならず、手薄になっていたのだ。 エニスはローマまでの道がほとんど無敵状態であることをレスリー少将に報告するが、レスリー将軍は動こうとしなかった。その間、ドイツ軍のケッセルリング将軍は、連合軍指揮官の無能さに驚きながらも、急遽イタリア北部、フランスなどから救援の部隊を増強、さらに「シーザー線」と呼ぶ防衛陣地を構築し始める。 1月30日になって、ようやくレスリー少将はチステルナへの奇襲偵察を計画する。レンジャー3個大隊と歩兵第3師団による総勢767名で、先導は第1特殊任務部隊のラビノフ伍長が努める。エニスもまたその一隊に加わるのだった。しかし、部隊はドイツ軍の巧妙な待ち伏せに逢い、戦車部隊に包囲されてしまう。レンジャー大隊の大佐は戦死し、多くの兵が捕虜となった。エニス、ラビノフ伍長、スティムラー軍曹ら7名だけが命からがら脱出することが出来た。 スティムラー軍曹は一刻も早くアンツィオに戻るべきだとするが、ラビノフ伍長は敵陣を偵察してからと反論する。結局二手に分かれ、エニス、ラビノフら3人がドイツ軍の秘密防衛陣地を探りに行く。エニスは鉄条網の迷路に迷い、ドイツ兵に発見されそうになる。それをリチャードソンが助けるが、リチャードソンは子供の写真を拾おうとして射殺される。 一行は民家に入るが、そこにはイタリア人の母娘が住んでいた。そこにドイツ兵がやってくるが、スティムラー軍曹らはドイツ兵を全滅させる。このままでは危険だと連れて行こうとするエニスだったが、イタリア人母娘は家を離れようとしなかった。 自陣に近づきつつあったが、ある地点でドイツ狙撃兵に囲まれてしまう。ゲーム感覚で楽しむドイツ狙撃兵に次々と撃ち殺されていき、ついにラビノフ伍長も戦死する。残ったのはエニス、スティムラー軍曹ら3名だけ。これまで銃を持たなかったエニスも、ついに銃を手に戦う。やっとの思いで狙撃兵を倒したエニスだったが、その心は穏やかでなかった。 アンツィオに戻り、報告をすませるエニスだったが、レスリー少将は部隊全滅の責任で解任され、後任はハワード少将になっていた。エニスはレスリー少将に「人は死ぬのが怖くて緊張している。だからこそゲームのように楽しんで人を殺すのだ。」と言うのだった。DVD検索「アンツィオ大作戦」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年07月20日
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幻の国策映画:貴重な3本発見 プロパガンダの実態伝える(毎日新聞) 「東亜の鎮め 陸軍記念日を祝ふ歌」(1936年)、「生きた慰問袋」(42年)、「内閣情報部撰定 愛國行進曲」(38年)の3本どころか、大量にみつかったようです。今月末には早くも発売だそうですから楽しみです。日本映画新社 2005年7月30日発売予定DVD「戦時下のスクリーン」DVD2枚組(分売不可):\10,500(税込)+\700(税込送料)楽天でも発売されるかな?
2005年07月19日
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2002 イタリア 監督:エンツォ・モンテレオーネ出演:パオロ・ブリグリア、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノほか113分 カラー 第二次大戦の北アフリカ戦線、エル・アラメインの戦いを描いたイタリア映画。エル・アラメインの戦いは、ロンメル率いるドイツ・イタリア連合のアフリカ軍団(枢軸軍)が、英軍の守備するエル・アラメインの奪取を目論んで総攻撃を図るが、死守した英軍が次第に枢軸軍を押し返し(ライトフット作戦、スパーチャージ作戦)、ドイツ・イタリア軍が敗走する戦いである。本作は、組織的に撤退するドイツ軍とは裏腹に、前線に取り残されたイタリア軍の奮戦ぶりと悲壮さを、学徒志願の新兵の姿を通して描いたもので、意気高らかに志願した新兵が見た現実と、戦場の友情とエゴイズムが生々しい。 同様のシチュエーションを描いた作品として「砂漠の戦場エル・アラメン(1968伊)」があるが、良く似た雰囲気である。どちらもイタリアお得意のマカロニコンバット調ではなく、シリアス調のヒューマン重視の構成となっている。ただし、イタリア映画特有の間延びした間の取り方は健在で、いささか冗長なイメージが強い。また、資金をかけていないらしく兵器や戦闘シーンの貧弱さを誤魔化すためであろうか、映像に暗転を多用しており、これもまた眠くなる要素を提供している。 ストーリーそのものは、きちんと練られており、オチもきちんとあるのだが、ハリウッド映画のような起伏のあるものではない。ゆったりと流れていくストーリーは、やっぱりヨーロッパテイストだ。役者は全く見た事のない人たちばかりだが、イタリア人の髭の濃さだけは目立つ(爆)。演技は、イタリア人独特の無気力さや失望に対する怒り方など素晴らしい(当たり前か)。 イタリア軍は食料も弾薬も乏しく、しかもドイツ軍に置き去りにされる可哀想な役回り。しかし、本作では、随所に格好良いイタリア兵が登場する。ちょっと美化しすぎだろうとも思うが、イタリア映画なので仕方がないか。もちろん、それがストーリーのシリアスさを損ねてはいる。主役の部隊はパヴィア師団で、この他ファルゴーレ師団も登場する。いずれも、水や食料・弾薬に事欠き、英軍の爆撃に頭を抱えるばかりで、敗走して全滅するイタリア第10軍団の窮乏と悲壮感を十二分に味わう事が出来る。また、ラストシーンで戦闘で亡くなった無名戦士の墓標映像が出てくるが、イタリア人にとっては涙なしには見られないであろう。イタリアにとっては、いわゆる、戦後総括的な位置づけの映画なのかも知れない。 先にも述べたが、登場する兵器類はほとんどない。車両はキューベルワーゲンと軍用トラック程度で、戦車も出てこない。英軍砲弾の弾着シーンは多いが、砲そのものは登場しない。昼間の弾着シーンは砂埃などの演出でなかなか見応えがあるが、夜間のものは花火程度でいかにもしょぼい。しかも、戦闘の激しさを夜間映像の光(フラッシュ)で誤魔化そうとしているのか、夜間映像が実に多い。このあたりは金かけてないのがよくわかる。ただし、近年の映画だけあって、砂漠のシーンのスケール感はしっかりしている。 全体として、映画としては完結しているのだが、戦闘シーンがしょぼいこと、イタリア兵を美化しすぎな点でやや減点要素かな。 (参考)エル・アラメンの戦い1942年10月23日から11月4日まで枢軸軍側 戦死者9,000名、負傷者15,000名、捕虜35,000名連合軍側 戦死者4,600名、負傷者8,500名 興奮度★★沈痛度★★★★爽快度★感涙度★★炎の戦線エル・アラメインオフィシャルサイト (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1942年10月北アフリカ。砂漠に設けられたイタリア軍パヴィア師団第28中隊フィオーレ中尉の陣地に一台のバイクに乗った新兵セッラが到着する。セッラは大学を中退し学徒志願してきた兵で、たった一人の交代要員であった。戦局は連合軍が優勢となっており、イタリア軍陣地は英軍の砲撃により、日に日に消耗していた。水も弾薬も尽きかけており、セッラが本国で聞いていた話とは全く異なっていた。 セッラの到着当日、リッツォ曹長のもとに案内してくれた伍長も英軍砲撃の直撃を受け、耳たぶだけを残して砂に帰った。リッツォ曹長らの分隊には無気力なムードが漂っている。攻撃する砲もなく、ただ英軍の砲撃を待っているだけだからだ。ここで、セッラは古参兵から、1常に頭を下げろ、2赤痢にかかっても皆かかっているから申告するな、3サソリに気を付けろと教えられる。 ある日、陣地内に潜入した英軍の狙撃兵にイタリア兵がやられる。救助に行った看護兵も狙撃され、ついに迫撃砲手のタロッツィが呼び出され、狙撃兵を撃退する。夜になって、地雷を踏んだ英軍車両から物資を調達するため、セッラらは出かけるが、セッラは地雷を踏んでしまう。しかし、それは対戦車地雷であり命は助かった。古参兵士は「三度まで奇跡は起こる物だ。おまえは最初の砲撃、そして地雷と2回まで使ってしまった」とセッラをからかう。 セッラは水の補給に向かうが、もはや水は油のような水しか補給されなくなっていた。 いよいよ、英軍の総攻撃が近づいてきたため、リッツォ曹長とセッラは二人でカッターラ低地の偵察に出かける。延々と歩き続け、二人は以前偵察に出て行方不明となったイタリア兵の遺体を見つける。 英軍の攻撃は北部と予測され、南部の第28中隊はルスポリ戦闘団のファルゴーレ師団の支援に向かう。そこで、激しい英軍の攻撃を受け、第28中隊の兵士も負傷する。英軍の攻撃は北部で激しく、アリエテ師団は全滅し、ドイツ軍指揮官ロンメルは撤退を始める。第28中隊にもカレット・エル・カディムまで後退して防御戦を敷けとの指令が来る。しかし、後退用のトラックはあてがわれず、徒歩での後退となる。 ようやくカディムに到着するが、そこは野戦病院であり、さらにフーカへ後退する命令が出ていた。そこの野戦軍医は居残る意志を固めている。 フィオーレ中尉ら中隊は、負傷者を乗せたトラックに便乗して後退するが、途中、従兵の墓を掘る将軍に出会う。手伝いを名乗り出るが、自分に15年仕えた従兵の墓は自分でと断り、将軍は自決する。 さらに途中で、英軍の戦闘機に銃撃を受け、トラックは炎上。再び徒歩での後退となる。しかし、フーカはすでに英軍の手に落ちていた。一行はマルサ・マトルーへ集結する事となった。しかし、徒歩の中隊に英軍が追いつき、投降を呼びかける。 ついに、フィオーレ中尉、リッツォ曹長、セッラの3名だけとなり、砂漠を歩き続けるが、ついに中尉が倒れる。セッラはそこにあったバイクをなんとか動かし、共に乗る事を勧めるが、中尉と曹長は、セッラ一人で行くように指示するのであった。 映像は、エルアラメインの戦死者の墓標を写す。名前のある兵士から・・・無名の兵士へ。DVD検索「炎の戦線エル・アラメイン」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー一覧
2005年07月19日
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