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1974 東映 監督:佐藤純彌 出演者千葉真一、若林豪、夏八木薫、菅原文太、丹波哲郎ほか 96分 カラー 先日、丹波哲郎親分がご逝去されましたので、追悼記念として出演作を取り上げます。丹波さんはall cinemaを見ただけでも出演作は307作品もあり、そのall cinemaのリストにこのルバング島は入っていないことからも、さらに多くの作品に出演していることがわかります。独特の口調とふてぶてしい態度が印象的ですが、古手の戦争映画には主演級で、1970年代以降は高級将校役として出演していることが多いです。本作では草鹿少将役として脇役ではありますが出演しています。 昭和49(1974)年フィリピンのルバング島から帰還した旧日本兵小野田寛朗少尉にあやかった陸軍中野学校映画。ただし、冒頭に小野田少尉の帰還風景やインタビューが挿入されていはいるものの、小野田少尉とは全く関係のないフィクションである。さらに加えて言えば、いかにもシリアス実録のようなタイトルでありながら、かなりの脚色と娯楽的要素が盛り込まれている。この作品を小野田さんがご覧になったのかどうかは知らないが、もし見ていたとしたらどう思ったのだろうか、と思わざるを得ないほどの脚色ぶりなのである。もちろん、娯楽作品ならば全く問題がないわけであるが、それにしても人間の尊厳やプライバシーという観点では、本作製作から30年の間に変化したのだなあという実感を得た。 さて、本作の監督は佐藤純彌監督で「男たちの大和(2005)」を制作した人でもある。この人の作品はどうもつかみ所がないのだが、どちらかというと大仰な設定で表現がきつい所が多いようにも思える。本作も見事に派手な設定とどぎつい表現が多く、何だか任侠映画のようだ。調べてみたら、ちょうどこの時期任侠映画を多く監督しているようで、ストップモーションを利用した死亡シーンや音楽などはまるで任侠映画そのもの(笑)。そう言う意味で、本作はシリアスではなくアクション映画として位置づければそれなりに見えてくる。 ただ、この監督は作品に必ずテーマのようなものを掲げており、それは冒頭の小野田少尉の、30年間何を考えていたかという問に対する「任務貫徹のみ」という答えがあることを理解しておく必要はある。この任務貫徹には情報部員としてたとえ終戦となっても、遊撃戦という任務を全うすべしという特殊性と、たとえ天皇の玉音放送があっても日本民族のために死すべしという暗黙の掟が背景にある。こうしたいわゆるスパイの特殊任務の悲劇なのだ。 ストーリーはかなり現実離れした無茶なものが多い。訓練過程で「現役師団長を暗殺してこい」などそれはないだろう。また、格闘教練は千葉真一の空手だし、ソビエト大使館潜入の千葉真一は忍者かよと笑える箇所も少なくない。かと思えば、米軍パイロット虐殺シーンや村人によるリンチシーンなどかなり際どい表現もあるし、登場人物の残酷で不幸な結末は決して明るい作品とは言えない。むしろ、見終わった後の不快感や絶望感は結構強い。こうした内容や表現は、果たして陸軍中野学校の実態にどれくらい沿っているのだろうか、単なる娯楽にしては印象操作の感も否めない。でも、面白いけど・・・。 任侠映画がよく「実録・・・」という表現を使っているが、本作もそれと同じと考えれば良いだろう。実録としたほうがインパクトが強いというだけのことである。「任務貫徹」という陸軍中野学校の掟に縛られた主人公と小野田少尉をそこにダブらせることで本作のテーゼに据えているのだろうが・・・・果たしてそれで良かったのか。製作当時のリアリティ(真実)性追及と現在(2006年)のそれとはかなりジェネレーションギャップがあるように感じる。マスコミニズムの変化と戦争に対する社会意識の希薄化というものが反映されているのだろうか。そんなことを強く感じた作品でもあった。千葉ちゃんの空手指導 任侠映画バリの若林豪の最期・・・ 興奮度★★★ 沈痛度★★★★ 爽快度★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 見習士官村上浩次郎(若林豪)は参謀本部から呼び出し命令を受けて新橋駅に立っていた。長髪に平服といういでたちを憲兵伍長に咎められ逮捕暴行を受けるが、参謀本部に引き渡される。 参謀本部では草鹿少将(丹波哲朗)、滝口中尉(菅原文太)らが待ちかまえており、国のために死ねるかと厳しい詰問がある。その詰問に合格した村上は東部三三部隊(陸軍中野学校)への転属を命じられる。そこには同様に集められた見習士官の菊池一平(千葉真一)、日高昭光(夏八木薫)らがおり、教官の滝口中尉から秘密戦士(情報部員)となることを告げられる。 当初はとまどった彼らだったが、厳しい訓練を受け、滝口中尉から秘密戦士としての心構えを教育されるにつれ、意識が高まってくる。滝口中尉は、天皇は同じ人間であり、天皇のために死ぬのではなく日本民族のために死ぬのだと力説する。また、訓練中に死亡した春日井への責務で自害しようとする菊池に、秘密戦士にとって死ぬのは恥で卑怯なことだと説く。 昭和19年7月、滝口教官は玉砕したサイパン島に残置謀者として潜入し、後任の教官阪田大尉(室田日出夫)とともに、中野学校は群馬県富岡に疎開する。そこでも厳しい訓練を続け、昭和20年3月、ついに最終試験を課される。村上ら三名は栃木刑務所の囚人解放、菊池ら三名は宇都宮飛行場格納庫爆破、日高ら二名は宇都宮師団長飯塚中将暗殺を命じられる。絶対に素性や任務を話してはいけない約束だ。しかも、阪田大尉は地元憲兵隊に中国人スパイが逃亡していると流言を流布する。 日高と関は師団長暗殺に失敗し、関は憲兵隊に捕らえられ日高は付近の実家に隠れる。憲兵隊の拷問で瀕死となった関は仲間に救われたが、日高は実家のお手伝いの密告で自警団に追われてリンチ死する。 4月になり、見習士官は少尉として各地の任務に転属する。村上は東部三八部隊の遊撃隊教官に、大友は中部三七部隊の遊撃隊教官に、菊池ら三名は参謀本部付きとなる。 日ソ不可侵条約の危機に、菊池少尉はソビエト大使館に盗聴器を仕掛けにいく任務を帯びる。しかし、潜入に失敗し逮捕された菊池は政治的問題のために処刑される。それを村上少尉が見届ける。 8月、ついに日本は降伏する。村上はいよいよ秘密戦士としての任務を果たすときと、教官の阪田から命令されたように部下を連れて山に籠もり、遊撃戦の準備に入る。しかし、次第に脱落者が増え、ついに三名となる。米軍キャンプに潜入しようとしたところを見つかり、部下二名が死亡。一人となった村上は米軍司令官の乗ったジープに単身襲撃をかける。しかし、あえなく反撃され蜂の巣となった村上の目には、米軍司令官の通訳としてジープに座っている、阪田の姿が映っていた。 かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年10月04日
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1964 東宝 監督:古沢憲吾 出演:三橋達也、佐藤充、夏木陽介、酒井和歌子、新珠三千代、藤田進ほか 104分 カラー 航空自衛隊が主役の名作航空機映画。F86Fセイバー、F-104スターファイター戦闘機が嫌というほど登場し、邦画の航空機映画としてはかなりの傑作。 内容的にはF86Fから最新鋭戦闘機F-104へ機種転換する際、の隊長(教官)と訓練生の交流を描いたものだが、ヒューマンドラマ風の演出はかなり臭いのであまり期待しない方が良い。佐藤充が登場するあたりで予想は出来るが(笑)。あんな脳天気で横柄な奴そうそういないだろう。また、隊長の娘役(酒井和歌子)は 15歳だというのに、おじさんにしか見えない三上一尉(佐藤充)にアプローチするなどちょっとませガキすぎ。隊長役の三橋達也もなかなか渋い演技をしてはいるが、まだ若いのかちょっと深みが足りない。こういう辺りはいかにも時代を感じさせる。 とはいえ、機種転換の様子や訓練風景などの描写は、一般人には知ることの出来ないところであり、なかなか興味深いものがある。きっと今の機種転換の様子とも異なっているだろうあたりがレアな匂いがする。また、小村二尉が基地アナウンス嬢の由紀ちゃんと結婚するシーンで、基地隊員、職員による結婚披露の様子がいかにも航空自衛隊らしいのが面白い。他にも色々と航空自衛隊ならではの逸話のようなものを沢山盛り込んであるのは楽しい。演技としては、隊長の妻役の新珠三千代がいかにも当時の良妻賢母を演じているのが好感。 当然、航空自衛隊の全面撮影協力で、協力部隊として浜松北基地、千歳基地、小牧基地、静浜基地、第一航空団、第二航空団、第三航空団、第十五飛行教育団、輸送航空団、保安管制気象団、航空救難群、第一術科学校、第二術科学校、特別飛行研究班「ブルーインパルス」の名前が登場する。 主役となるのは浜松基地第二航空隊のタイガー飛行隊という四人組で、着任する山崎二佐のもと機種転換訓練に明け暮れる。ほとんどがF86Fの映像だが、飛行映像は多分ブルーインパルス隊員によるものであろう、クロスや低空飛行、背面飛行などのアクロバット飛行、対地機銃掃射が格好良い。役者の顔が見えるシーンだけは実寸大模型が用いられているが、そのシーンはほんの一部に過ぎず、あとは全て実機である。ただ、音声技術が乏しいのかジェット音の迫力という点には欠ける。もっと音が拾えていれば迫力が増したであろう。なお、F-104の独特の高金属音はしっかり聞こえているのはいい。 そのF86Fだが実に多数の機体が登場する。あえてPRのため多くの機体を登場させたのか、映像編集でそうせざるを得なかったのか、連続する飛行シーンや離着陸シーンですらめまぐるしく機体番号が変わる。AT-6テキサンの飛行シーンなどでは模型も含めて4機の映像がつなぎ合わせてある。それでも、機体のカラーリングが同一なのでさほど違和感はない。 登場したF86Fセイバーはほとんどが尾翼に黄黒チェッカーの第一飛行隊所属機で、映像上で確認できた機体番号を列記する。(赤字はその後に事故喪失機) F86F432 455 512 524 571 705 711 727 736 740 741 743 747 757 772 778794 801 808 809 819 826 835 837 842 847 858 865 872 901 910 919 927 937940 948 949 971 975 (三九機) T-33A(複座)285 372 404 664(四機) F-104509 510 516 519 520 528 533 543 (八機) AT-6テキサン076 112 167 (三機) F86Fの模型513 647 847 937 947 948 971 976 とにかく、今では見る事の出来ないF86F、F-104の飛行を堪能できるのでとても興奮した映画であった。この当時F-104は「人間が乗る最後の戦闘機」と呼ばれていたぐらいで、着陸したF-104の薄い主翼に触れようとした隊員に「危ない切れるぞ」というシーンも泣かせる。 隊長の山崎二佐は戦前は戦闘機パイロットという設定。さすがにこの時代ならそういうこともあり得るのだなあと感慨ひとしお。また、ラスト飛行で暴風雨の中燃料ギリギリで飛行するのだが、実際にはそんな無茶するのだろうか。 奥行きはないが、ストレートに戦闘機を楽しめる映画であった。 興奮度★★★★★ 沈痛度★ 爽快度★★★★ 感涙度★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 浜松基地第二飛行隊、通称タイガー飛行隊の三上一尉(佐藤充)、小村二尉(夏木陽介)、佐々二尉、風間三尉はF86Fセイバー戦闘機のパイロットで、派手な飛行をする荒くれ者である。そこに新隊長として山崎二佐(三橋達也)が着任し、彼らを新型戦闘機F-104への転換訓練に入る。しかし、山崎二佐の見下した態度に四人は反抗心を抱く。加えて、風間三尉の錐揉み事故で経験からギリギリの判断を下した山崎に不信感を抱く。 一方、山崎二佐の娘洋子は脳天気に振る舞うが、ある日父から知らない女性宛の現金書留を見つけてしまう。その宛先を訪ねた洋子は、父が戦前に戦闘機パイロットで、撃墜された機体が幼稚園に落下し、幼稚園の先生を死なせてしまったため、その父親にずっと現金を送り続けていたことを知る。 寡黙に多くを語らない山崎二佐は、事故の恐怖で飛べなくなった風間三尉を矯正するために行った落下傘降下で腰を痛めてしまう。その後遺症のため、四名の訓練終了後に地上勤務となる事を言い渡される。飛べなくなる事に納得のいかない山崎二佐であったが、隊員の小村二尉が基地アナウンスの由紀と結婚し、仲人役を務めるなどしているうちに次第に地上勤務を受け入れる気になってくる。 いよいよ四名は訓練が終了し、F-104操縦学生となるため千歳基地へ向かうこととなる。山崎二佐は四人を率いて最後のフライトに飛び立つが、そのフライトはあえて悪天候の夜間飛行を選ぶのだった。そして暴風雨の中、無事千歳空港へ降り立ち、四名との固い信頼を勝ち得るのだった。 かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年10月03日
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昨日久しぶりにレンタルビデオ屋に行ったら、結構持っていない戦争映画及びその風味のある作品が並んでいました。いつもなら、えいやっと買ってしまうんですが、最近財政状況が特に厳しいもので・・・厳選せねばならないのです。 そこで、保存を要しないB級映画、もしくは後々にでもいつでも手に入りそうなもの、いつかスカパーなどでやりそうなものはとりあえずレンタルで見てしまおうかなとも思っているのですが、何せB級かどうかがわからない・・・。 まあ、ということで備忘録として検討中のものを羅列します(あくまで自分用ね)タイフーン(2005韓国)架空海洋アクションだから・・・これはすぐにスカパーでもやりそうな気配デッドライン 報復の導火線(2005米)フィリピンテロ組織と米軍の戦闘らしいけど・・・結構爆弾ぽい。買う勇気がない。ちなみに続編もあるみたい↓デッドライン2 爆炎の彼方(2005米)アメリカン・ソルジャーズ(2005カナダ)前から気になっていたのだが、イラク戦争を題材にしたもの・・・カナダ製作?微妙だ。デッドマン・ソルジャーズ(2006米)おいらの嫌いなホラーらしい。でも、戦闘シーンとかなんだか面白そう。凄く気になる。コードネーム・イーグル(2004米)これもフィリピンテロ組織対米軍もの。最近はフィリピン物がはやりなのか。デッドライン(2004タイ)タイ反乱軍と警察隊の戦いだとか。実際の通貨危機を題材にしたとかで・・・どうなんでしょう。タイド・オブ・ウォー(2005米)潜水艦バトルアクション? 凄い不安・・・ さて、どうしましょう。今のところ買うならデッドマン・ソルジャーが筆頭かな。あとはレンタルかなあ。お勧めがあれば教えて下さい。 私って、パッケージに騙されるんだよなあ追加戦革機銃隊1945 (Straight Into Darkness) (2005米)レンタル用のみ発売中
2006年10月02日
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1993 ドイツ 監督:ヨゼフ・フィルスマイアー 出演者:トーマス・クレッチマン、ドミニク・ホルヴィッツ、ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヨヘン・ニッケルほか 138分 カラー スターリングラードと言えば、2000年版の「スターリングラード(2000)」が有名だが、このドイツ版スターリングラードも隠れた名作と言われている。あの名作「Uボート(1981)」のスタッフが総結集して製作したというのがウリなだけあって、シリアス感十分な大作に仕上がっている。国内上映もされ、ビデオにもなったことがあるようだが、現在DVDとしては発売されていない。私は、英国版DVDを輸入して視聴したが、英語吹き替え版でリスニング能力に乏しいため、半分ぐらいしか理解できなかった(汗)。 題名通り、本作は第二次世界大戦のドイツ対ソビエト戦の激戦地スターリングラードでの攻防戦を描いている。このスターリングラードで、当初圧倒的優位だったドイツ軍は、ソビエト軍の執拗な抵抗と人海戦術の前に、逆に第6軍20個師団約26万人がソビエト軍に完全に包囲され、迫り来る冬将軍の打撃をも受け、1943年1月にパウルス元帥以下10万人のドイツ兵が投降している。残りの兵士は戦死若しくは凍死によって失われるという、ドイツ軍史上最悪の戦いでもあった。 本作はこうしたドイツ軍の悲惨な状況を描いたものだが、主人公は突撃大隊の一小隊となっている。士官学校を出たばかりの新米少尉と歴戦の強者揃いの軍曹、伍長連中に新兵といったメンバーに、辣腕中隊長(大尉)、冷酷な憲兵大尉、将軍などを組み合わせて、スターリングラード戦の矛盾と悲惨さ、そして補給の欠乏と寒さを嫌と言うほど描いている。 ただ、残念なのは若干のヒューマンドラマが挿入されている点。正義感が強い少尉が軍隊内の矛盾に立ち向かっていくのは良いが、ちょっと美化しすぎている感がある。悪役の憲兵大尉もある意味成敗されているし、視聴者受けのストーリーが見え隠れし、もっとドロドロとした重苦しいテーマに終始した方が良かった気がする。このほか、ソビエト軍の女性兵士イリーナが登場し、少尉とのからみや憲兵大尉の慰み者になるなどのシーンがあるが、果たして本作に必要だったのだろうか。アメリカ映画ならともかく、シリアスさを重視するなら全く不必要な登場人物だったし、イリーナの感情吐露は本作にそぐわない気がする。どうも製作者側は東西ドイツ統一後ということで、東西陣営に配慮してヒューマンドラマ風なものを企図したようだが、そう言う意味ではちょっと中途半端な感じ。はっきり言って本作はシリアスものに仕立て上げた方がよかっただろう。 戦闘シーンはかなりシリアスに表現され、市街戦のシーンは銃弾や爆発シーンなど秀逸な出来。雪原の塹壕での対戦車戦シーンはソビエト軍のT34/85戦車が数台登場し、肉弾戦と戦車が蛸壺を蹂躙するシーンはなんとも悲惨で、胴体を切断される兵士の姿は凄惨。ただ、登場する戦車の台数が限られたためか、撮影空間の広がりが感じられずスケール感が小さくなっているのは残念な所。また、良くできていたのは極寒のシーン。寒々しい雪原では、役者の顔が見えなくなるほどフードをかぶるなどリアル感に留意しているのは好感が持てるが、その反面登場人物の顔が見分けにくくなっているのは難点。なお、白兵戦で撃ってもなかなか死なないロシアの大男には笑った。そういうイメージがあるのだろうか。 登場する兵器類は先に挙げたT-34/85戦車が数台。見た感じは本物に見えるがどうなんでしょう。また、移動シーンで装甲列車が出てくるほか、スターリングラードではsdkfz250装甲兵員輸送車っぽい車輌が数台写っている。航空機ではピトムニク飛行場シーンでJu52輸送機風のものが登場するが、飛行はしない。全体的に兵器類にはあまり金がかかっていないが、廃墟の市街戦や雪原でのシーンが主なのでさほどチープ感はない。ちなみに、雪原シーンはフィンランド、市街地シーンはチェコのボヘミアやプラハで撮影されたようだ。 主題歌でエンディングにも流れる音楽「スターリングラード」は印象的。ドイツ軍の勇猛さと華やかさを感じさせつつ、ソビエトの広大な雪原と無情さを醸し出している。何かのゲームのBGMにも使用されていたような気がするが、やや切なくさせる曲調だ。 全体としてやや無駄なヒューマンドラマが気になるが、それでもなおシリアスなスターリングラード包囲戦が悲惨に描かれているのは特筆できる。十分に見応えがあると言える。スターリングラード攻防戦を題材にした映画としては、「壮烈第六軍-最後の戦線(1958)」が秀逸。ちなみに、本作はこの壮烈第六軍を元ネタにしているとも言われ、内容的には良くにている。この他「スターリングラード大攻防戦(1972)」「バトル・フォー・スターリングラード(1975)」というソビエト映画もある。前者は包囲後に冬の嵐作戦のドイツ軍を迎え撃つ砲兵隊の話で、後者は青作戦に撤退を余儀なくされるソビエト軍を描いている。これらをセットで視聴するとスターリングラード攻防戦の全容が垣間見えてくるだろう。 興奮度★★★★ 沈痛度★★★★★ 爽快度★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1942年、イタリアで束の間のバカンスを楽しんでいたドイツ軍の突撃大隊はソビエト行きを命じられる。第二中隊のとある小隊には士官学校を出たばかりの新任少尉ハンス・フォン・ヴィッツラント少尉(トーマス・クレッチマン)が着任するが、アフリカ戦線で功績をあげた部下のマンフレッド・ロールダー(通称:ロロ)軍曹(ヨヘン・ニッケル)やフリッツ・ライザー上級伍長(ドミニク・ホルヴィッツ)らは小馬鹿にする。小隊にはこのほか新兵のジェジェ・ミューラーらがいた。 装甲列車の貨物車に詰め込まれ、のどかな風景を眺めて移動する小隊だったが、目的地のスターリングラードに着くとそこは倒れ込む傷病兵やソビエト兵の捕虜などでごった返す別世界であった。小隊は第六軍の精鋭ヘルマン・ムスク大尉の中隊に配属される。義手のムスク大尉は辣腕だが冷徹な将校であり、ソビエト軍陣地へ攻撃をしかけていく。この戦いでハンス少尉の小隊も次々と死者を出していき、新兵のジェジェは恐怖の余り味方を誤射してしまう。落ち込み狂乱するジェジェを歴戦のロロ軍曹やフリッツ伍長は慰める。 1942年11月になり、市街地で膠着状態となる。ソビエト軍と対峙する中、ハンス少尉は一時休戦を申し出て中間地帯の死傷者の収容を行う。しかし、お互いにパンを交換するなど親交の最中に一人が銃を発射して交戦に。どさくさの中で小隊は一人のソビエト少年を連れてきてしまう。次第にソビエト少年と仲良くなっていくが、小隊の形勢は不利になっていく。 そこで、ハンス少尉ら四名は下水道を通って本隊へ援軍を要請に行くこととする。その下水道でハンス少尉はソビエト軍女兵士イリーナと遭遇し捕虜にする。しかし、イリーナの逆襲で四人は逆に追われる立場となり、一人が地雷で瀕死となる。なんとか本隊にたどり着いたハンス少尉らだが、負傷兵の治療に手が回らない状況にいらだったフリッツ伍長が看護兵に暴行を働く。さらに、ムスク大尉に援軍を要望したハンス少尉には憲兵隊のハラー大尉が敵前逃亡の烙印を押し、小隊は階級剥奪の上懲罰部隊に回されてしまう。 懲罰部隊で小隊は雪原での地雷除去任務につかされる。与えられる食料も少なく、厳寒の最前線での任務は厳しかった。そんな中、ムスク大尉の提案で小隊は第六軍包囲のソビエト軍戦車の撃破任務を命じられる。無事に任務を遂行できれば階級復帰を許すというのだ。ほとんど成功の見込みのない対戦車戦に火炎瓶と手投げ弾で挑む小隊は次々に戦死していくが、なんとか敵戦車の進行を食い止めて原隊復帰を果たす。しかし、そんな小隊に忠誠心を示させるためハラー大尉はソビエト人の銃殺を命じる。その中にはあのソビエト少年の姿もあった。ハンス少尉は、なんとか少年を助けようとするがそれもかなわず、小隊は銃殺を実行せざるを得なかった。 戦局は次第に悪化し、厳しい寒さが襲ってくる。嫌気がさしてきたハンス少尉、フィリッツ伍長、ジェジェの三人は脱走を試みる。途中で死んだ傷病兵から傷病証明書を盗み、飛行場にたどり着く。しかし、本国に戻る飛行機には高級将校しか搭乗できず、ついに飛ぶ飛行機すらなくなってしまう。三人は仕方なく元に戻るが、そこには傷ついたムスク大尉の姿もあった。 輸送機が落としていった物資を拾いに小隊員が行き、食料をむさぼっていると、ハラー大尉がやってきて脅しをかける。しかし、もはやハラー大尉に従う気などなかった小隊はハラー大尉を射殺する。しかし、その際にハラー大尉の撃った弾でジェジェが死亡してしまう。ハラー大尉の住処に行くと、そこには潤沢な食料や物資があった。さらに、ソビエト女兵士イリーナがベッドにくくりつけられ慰み者にされていた。ハンス少尉は縄をほどいてやる。 残った者はムスク大尉を含めたった5名だった。ムスク大尉はあくまで戦うことを命じるが、戦争に疲れたオットーが自殺を図る。ムスク大尉はロロ軍曹の肩を借りて外に出て行く。ムスク大尉は途中で命が尽きるが、軍曹は両手を上げて降伏する将軍らの行列に出会うのだった。 ハンス少尉とフリッツ伍長、イリーナの3人はあてもなく外に出ていく。ソビエト軍に遭遇したイリーナは手を振るが射殺されてしまう。そしてハンス少尉も力尽き、フリッツ伍長もそれを看取るように命を落とすのだった。 DVD検索「スターリングラード」を探す(楽天) ←多分ないと思うけどかぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年09月30日
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2005 蓮ユニバース 監督:池谷薫 出演者:奥村和一、金子傳、村山隼人ほか 101分 カラー ドキュメンタリー いま、反戦家や平和市民団体の間で密やかなブームになっているという本作を見てきた。東京では単館系での上映だが、今後全国でもポツポツと上映される機会もあるようだ。残留日本軍についてはかねてより興味のあったところであり、何か新しい真相でも出てくるのかとちょっと期待しての視聴。 本作は、第二次世界大戦後も中国に残留して戦闘を続けた日本兵がいたという、「日本軍山西省問題」で裁判を起こした原告団の一人「奥村和一」氏を中心に据えたドキュメンタリーである。日本軍山西省問題とは、古くは昭和31年に国会でも取り上げられたもので、日本陸軍支那派遣軍第1軍配下の将兵約2,600名が、戦後も中国国民党系軍閥錫山(えんしゃくざん)の一派として中国共産党軍と戦っている。結局数年に渡って戦闘した結果、約550人が戦死し700人以上が捕虜となったのだが、日本兵らが日本軍部(日本政府)の命令で残留したのか、自発的に残ったのかという問題がクローズアップされてくる。一説では第1軍の軍司令官澄田中将ら一部の幹部が、戦犯である自己保身のために閥錫山と密約して部下の将兵を売軍したとも言われているが、戦後の証人喚問ではそれを否定したうえ、関係する証拠等はほとんど出ていない。日本政府としても、外交上公式に残留を認めるわけにもいかず、事実上将兵らは軍命ではなく、自己意志で残留したと結論づけられている。これにより、残留日本兵は戦後の戦闘期間が軍人恩給対象にならなかったうえ、戦死した将兵も含め日本兵としての名誉を著しく傷つけられることとなる。本作の主人公奥村氏は1991年から結成された「全国山西省在留者団体協議会」の一員として参加し、2001年には軍人恩給請求に関する提訴を行い、 2005年に最高裁が上告棄却として終わっている。 本作の主題となるべきテーマには、大きく日本軍山西省問題と奥村氏個人についての二つがあろう。 日本軍山西省問題については、事実上命令系統がどうであったにせよ実に痛ましい事件であり、残留した将兵の気持ちを思い量れば言葉もないし、ましてや戦死した将兵の無念さはいくばくであろうか。さらに、残留の意志決定した上級幹部はともかく、下級将兵のほとんどは皇軍復古のための聖戦と信じての戦闘であったろうし、それに対しての国や裁判所の結論は余りにも冷たいものであるとも感じる。決定的な証拠がない以上は、軍命令であったという見解を国が覆すことができないのは自明の理だが、少なくとも名誉の回復に至る道筋を検討することは不可能ではないだろう。そういう意味で、本作の製作と公開が名誉の回復への一助になったであろうことは想像に難くない。 奥村和一氏は当時兵長として残留しており、中国戦線での自身の殺人行為への贖罪、そして売軍されたという裏切り行為への怒りに満ちている。中国戦線に参加した一日本兵の心情とその戦後処理という、一個人の心の精算をドキュメントとして捉えたものは珍しく貴重なものであろう。 この二つのテーマが重厚にかつ慎重に織り込まれているとするならば、本作はとてつもなく偉大なノンフィクション映画として賛美を得たであろう。 しかし、本作は後半に行けば行くほど、上記の二つのテーマバランスが崩れていってしまった。日本軍山西省問題が薄っぺらになり、本作が奥村氏個人のドキュメンタリーであったということに気づかされる。さらに、やはりというべきか、軍司令官批判=日本軍批判=日本政府批判という論理飛躍で結論づけられていってしまったのには閉口。冒頭に知識の乏しい女子高生や女医とのトンチンカンなやりとりでも違和感を覚えたが、ラストでは軍装趣味の右翼や小野田元少尉との対決シーンを恣意的に取り入れるなど、奥村氏個人の怒りを凝縮したものにすり替わっていく。申し訳ないが、ご老体の奥村氏を連れて中国 3,000kmの旅の結果がこの程度なのかという思いと、奥村氏個人の怒りを見るために1,800円も払う気はないぞという憤慨の気持ちすら起こった。 国(政府)、裁判所、旧軍、さらにはノンポリ国民までを悪玉に仕立て上げ、「総括」「総括」と批判する手法は、どこぞの過激派を彷彿とさせるものがある。 そもそも、日本軍山西省問題について言えば、本作では核心に何ら触れていない。奥村氏ドキュメンタリーなのだからそれでいいのだ、と言われればそれまでだが、奥村氏の怒りの原点は山西省問題にあるのだから、そこを紐解かずにどうしようというのか。怒りの対象である政府や裁判所の見解や論点が触れられたのはほぼ皆無であり、逆に原告団の主張もほとんど出てこない。従って、奥村氏が何を怒っているのかというと、「自分が用意した資料を裁判所が全て無視した」と言っているようにしか見えないのだ。また、その資料にしてもほとんどが既存資料ばかりで、取材に出かけておきながら何ら新資料が提示されないし、資料の信憑性についての視点も全くない。制作陣側が資料精査しようという意志は全く感じられず、山西省問題を扱ったドキュメンタリーとするには失格レベルだ。さらに、奥村氏はたかが兵長であり、ご自身でも述べているが作戦や処刑等の真意については知り得る立場にないし、理解できる立場にもない。となれば、山西省問題については指揮官クラスである元中隊長(中尉)らのドキュメントを中心に組み立てていくべきであろう。事実、原告団長は元中尉であるし、実務リーダー格も元将校のようだ。ところが、本作を見ていると不思議なことに一人の元中尉を除けば、他の原告団員らが奥村氏に対して非常に冷めているのがわかる。彼らは名誉の回復を求めているに過ぎないように見受けられるが、奥村氏の場合は異なった方向にベクトルが向いているように見受けられる。 その奥村氏に関して言えば、氏自身が何をしたいのか非常に混乱しているように見える。氏のプロフィールには中共帰りのレッテルで公安にマークされたとあるが、そこに一つの原点があるようにも思える。中国捕虜時代には転向教化も当然なされてたはずだし、戦後の苦しい時代を考えれば批判的思想に傾倒するのも無理もない。ましてや氏を利用しようとする団体、勢力の影響もあるのだろう、政府(国)、裁判所、旧軍批判に我を失っている激情を強く感じる。ところが、劇中に登場するように氏が殺害した中国民間人と思っていた人物が実は逃亡警備兵であったと知るや否や安堵の気持ちが出たり、激戦地の要塞に赴いた際には亡き戦友への気持ちを吐露するなど、旧日本兵としての人格擁護の側面も登場する。本人はそれを反省と称してはいるが、軍を批判する人格性と軍の戦友を擁護する人格性との葛藤だと思う。ただこれは、氏個人の戦後総括そのものであって、戦後世代に引きずるべきものではないし、ましてや国家批判等に転嫁するべきものではない。自己完結しなければならないということをご本人は理解しているのだろうが、回りが利用するためにそうさせないともいえる。その典型的な例が、パンフレットに寄稿している評論家の佐藤忠男氏のコメントにある。「・・・奥村さんの山西省への旅の過程で明らかになってくるのは、日本軍が共産党側かと疑われる中国民衆に対していかに残虐であったかということである。その残虐行為を支えていたのは、まさに日本帝国陸軍の意識であったということである。さらにその意識は今日でも全く精算されているとは言えないのではないかということである。・・・」少なくとも、日本帝国理軍の意識を引きずっているとすれば奥村氏ら旧軍兵であり、我々戦後世代にその意識があるとは到底思えない。罪人がいつまでも利用され続ける構図である。そもそも、意識の精算とはどうやったらできるのか、問うてみたい所だ。 本作は結構評判が良いようだが、果たして何が評判が良いのか困惑する部分がある。奥村氏が老体に鞭打って頑張っている姿に感動した、というのならばそれでもいい。ただ、私個人的には、自己完結すべき問題であるし、政治的目的があるのでなければドキュメンタリー映画にして公開するほどのものでもないと思う。山西省問題を取り上げるのであれば、先に述べたようにドキュメンタリーとして内容は皆無に等しい。戦争の悲惨さを知らしめるのだ、というにしても内容がない上に、もっと真に迫る映画はごまんとある。結局のところ、こんな問題(事件)があったことを知らなかった、という驚きやショックによる評価点なのだろうと思う。そういう意味では、世に知らしめたという点では評価できるのだろうし、何にしても自身の罪と生活をさらけ出した奥村氏の勇気と努力に敬意を表すべきであろう。本作は奥村氏の戦争殺人懺悔録として、氏の心情を焦点にしたほうがずっと良い出来になったであろう。 このほか、残留工作に反対したという宮崎元中佐の取材映像ををもっと見せて欲しかった。 残念ながら、内容的には駄作の部類になってしまったが、いずれ別の形で奥村氏の活動の成果も含め、日本軍山西省問題の真実に迫るドキュメンタリーが制作されることを期待してやまない。ちなみに、山西省問題を知るだけならば、書籍やインターネットで映画以上の情報を得ることができる。 蟻の兵隊公式HP 国会会議録(衆議院)←「山西地区残留同胞の現地復員処理に関する件」で検索 (昭和31年12月03日) 興奮度★ 沈痛度★★ 爽快度★ 感涙度★★かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年09月22日
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1951 アメリカ 監督:ジョージ・ワグナー 出演:ジョン・ウェイン、ウォード・ボンド、パトリシア・ニールほか 111分 モノクロ 第二次世界大戦におけるアメリカ軍潜水艦の日本艦隊との攻防を描いた、潜水艦アクション。主演はジョン・ウェインで、潜水艦の副艦長(後に艦長)役を演じるが、アメリカ映画お決まりの恋愛シーンももちろん入っている。舞台は1943年の南島での民間人撤退支援作戦から始まっている。その後は日本軍艦艇(空母や駆逐艦、輸送船など)を撃沈するシーンが多くなっており、徐々にアメリカ海軍優位の構図が見えてくる。後半のクライマックスはレイテ沖海戦のような雰囲気である。 ジョン・ウェイン主演という事で、どうしてもヒーローアクションになってしまっており、戦闘シーンや作戦実施シーンはリアル感に乏しい。浮上シーンでは潜水艦の実写映像(一部記録映像と思われる)も登場するが、戦闘シーンや水中シーンはみずぼらしいミニチュアモデルとなっている。また、撃破する日本軍艦艇もカットが変わると艦種が変わっていたりとほとんど力は入れていないようだ。とにかく、日本軍を撃破するという活躍ぶりと陸の上での恋愛シーンが目立つ。その中で、サブテーマとして「戦場での友情と決断」が描かれているのが特筆できる。乗員を艦橋や海上に残したまま緊急潜航しなければならない設定で、どのように苦悩し決断するかというものである。はっきり言って平和時の我々から見ると、冷酷、残酷にも見えるが戦時における決断とはこのようなものなのだろうと実感させられる。ただ、ジョン・ウェインの演技からは苦悩の部分はほとんど見えてこず、嬉しそうにも見えるのはどうかと思うが。この緊急潜航で前艦長が戦死するシーンは、実在の潜水艦グローラーのハワード・W・ギルモア艦長をモデルにしているとも言われる。ギルモア艦長は戦死後に名誉勲章を授与されている人物だ。 このほか、アメリカ軍の魚雷が不発であるなど魚雷への信頼性が取りあげられているのも興味深い。 本作主役の潜水艦名は「サンダーフィッシュ」となっているが、実在しない艦名である。ギルモア艦長の逸話だけを捉えれば「グローラー」がモデルということにもなるが、本作ではあまりこだわっていないようだ。撮影はハワイの真珠湾海軍基地で行われ、海軍協力のもと潜水艦での撮影も行われている。度々登場する浮上シーンはガトー級潜水艦であることは間違いないが、艦名は特定できない。砲が艦尾方向についていること、機銃は艦橋前後にそれぞれ装備されていることから比較的後期型であろう。 米軍航空機ではほんのちょっとだが、空母に乗っているベアキャット?の姿も見える。また、潜水艦を攻撃する日本機はテキサン零戦である。 興奮度★★ 沈痛度★★★ 爽快度★★★ 感涙度★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1943年潜水艦サンダーフィッシュ(艦長:ポップ中佐)は南方の島から脱出する米国民間人の婦女子を救出に向かう。上陸した副艦長のデューク・ギルフォード少佐(ジョン・ウェイン)はシスターや赤ん坊を連れて脱出してくる。無事潜水艦に乗り込みハワイに帰国するが、赤ん坊のミルクを飲ませるためにギフォードはゴム手を改良してほ乳瓶代わりにする。実は、ギフォードには別れた妻がおり、生後まもなく失った子供もいたのだ。ギフォードは赤ん坊を死んだ子供と同じくブッチと名付けてかわいがるのだった。 ハワイに着き、ギフォードは看護中尉になっていた元妻メアリー・スチャートと再会する。二人は久しぶりの再会に惹かれ合うが、メアリーはポップ中佐の弟でパイロットのボブ・ペリー中尉に求婚され、揺れ動くのだった。 ギフォードは急遽潜水艦のチーフ(曹長)から呼び出しを受ける。乗組員らが原住民と騒ぎを起こしたのだ。憲兵隊少佐の厳しい追及をギフォードの機転でなんとか言い逃れて、ギフォードらは再び任務に戻る。 サンダーフィッシュは日本軍の輸送船を発見し、魚雷攻撃をかけるが、魚雷は不発で失敗に終わる。日本軍の輸送船は白旗を掲げ、ポップ艦長は浮上して接近を図るがだまし討ちで銃撃戦となる。その際に艦長は負傷し、緊急潜航を命じた艦長は艦外に取り残されて戦死する。ギフォードは代わって指揮を取り、輸送船の背後に浮上して体当たり攻撃で撃沈させる。 兄である艦長を見捨てたとして、弟のペリー中尉はギフォードに怒る。また元妻のメアリーはギフォードを慰めようとするが、ギフォードはその気持ちがわからずにメアリーの怒りを買ってしまう。 司令部の命令でギフォードら乗組員は魚雷不発の原因を調べさせられ、見事原因を解明する。そして、ギフォードが艦長となって再び戦場に赴く。レイテ沖で日本軍の大艦隊を待ち受ける事となったサンダーフィッシュは敵艦隊を発見し、危険を承知で無線連絡を敢行する。その甲斐あって日本軍の大艦隊は大打撃を受け、サンダーフィッシュも動けなくなった空母を撃沈する。 サンダーフィッシュはさらに、空戦で不時着したパイロットの収容任務につき、次々とパイロットを救出していくが、救出中に日本軍の零戦に見つかって銃撃を受ける。この際にチーフ(曹長)とジュニアが撃たれて死亡。再びギフォードは二人を収容することなく緊急潜航する事となる。救出したパイロットはペリー中尉であり、ペリーはギフォードへの誤解を解き、救助への感謝を述べるのだった。そして、ハワイに帰港したギフォードをメアリーが待っているのだった。「ブッチが待っているわよ」 DVD検索「太平洋機動作戦」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年09月21日
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2006 松竹 監督:佐々部清 出演者:市川海老蔵、 伊勢谷友介 、上野樹里 、 柏原収史 、伊崎充則 、香川照之 、古手川祐子 、三浦友和ほか 約120分 カラー 早速初日に見てきました。初日なのにお客はまばら。でも一応ハンカチは必要系の映画です。 敗戦色濃くなった1944年から海軍が海の特攻兵器として採用した人間魚雷回天。明治大学野球部のエースだった青年が、野球の夢を捨て回天搭乗員となっていくという、横山秀夫の原作「出口のない海」を山田洋次が脚本を担当して映画化したもの。主演は11代目襲名して初映画主演の市川海老蔵。題材が題材だけに泣ける映画として期待も高まる。 結論から言うと、邦画としてはコンパクトにまとまっているし、ストーリーも単純すぎず複雑すぎず、ツボを押さえた程よい作り。映像的にも傑出したものはないが、駄目出ししたくなるような悪劣なものでもない。原作は感動作との評判もあるが、私目にははっきり言ってお子様向けの軟性小説でしかなかったが、映画では原作を超えてうまく要点を押さえ、幾度も感動的場面を作り出している。以上の点を総合すればかなりの名作、と言いたい所だが評価はタイトルにあるとおり。 まず、残念だった点から先に述べると、本作は映画館で見るべき作品と言うよりは、テレビの2時間特別ドラマといった印象を受けたこと。映画館の広い画面から私の五感に迫ってくるものがない。先にコンパクトにまとまっていると書いたが、まさにコンパクトすぎて画面や台詞、演技から真に迫るものがない。加えて、エンディングに流れる竹内まりやの主題歌「返信」は、私が刷り込まれてしまったせいもあるのだろうが、テレビドラマのエンディングそのもの。 次に、本作がフィクションである点。これはもう致し方ないところなのだが、いくら回天を取材したとはいえ、架空の人物であるとわかっていると、感動的シーンもいささか興ざめなのだ。迫り来る恐怖心、逃げ出したい葛藤、切なく心残りの愛、いずれも感動を呼び起こす重要なテーマだが、リアリティなしには伝わりにくい。目に浮かんだ涙が流れ落ちるか留まるかの違いなのである。もちろん、フィクションとして感動的に練られた小説であるからこそ、ここまで感動シーンを創作できたわけではあるが。まあ、この点は戦争映画オタクからすると不満だが、一般の方は素直に感動できるのかもしれない。 このほか、映画の根幹を担う役者。並木少尉役の海老蔵さんには何の恨みもないが・・・戦争映画の役者として演技力は落第点。顔の表情が乏しく、恐怖や喜怒哀楽の違いが全然伝わってこない。北中尉役の伊勢谷友介もとても個性的な演技をしてはいるが、シリアスものとしては何か勘違いしている。ムルデカならいけただろう。潜水艦艦長役の香川照之はいかにもいそうな艦長風貌だが、ちょっと饒舌すぎ。光基地の剣崎大尉役は高橋和也。個人的な印象で申し訳ないが、男闘呼組のイメージが強すぎて・・・「タイムゾーン~」とか歌い出しそうですごい違和感。逆に良かったのは沖田兵曹役の伊崎充則と佐久間少尉役の柏原収史。伊崎は良い味出してるのだが、もう30歳近いというのにまだ少年役というのが凄い。柏原収史はかなり映画に溶け込んだ演技をしており好感が持てたが、ただ一点、出撃の際に「二号艇発進用意よし!」の台詞で緊張と興奮のあまり声が裏返る演技がわざとらしくて気にくわない。同じ声の裏返りなら「人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊(1968東映)」の松方弘樹の演技の方が数段上。さすが松方さんだ。 このほか、女性軍では恋人役の上野樹里、妹役の尾高杏奈ともにかわいい。こんな女性なら守ってあげたくなるし、手放したくないわな。登場するだけで胸がキュンとしますな(爆)。ただ、母親役の古手川祐子はちょっと戦時下の婦人としては似合わないかな。 余談だが、「男たちの大和(2005東映)」でもそうだったが、現代回顧シーンを挿入するのはいかがかと思う。大和では冒頭であったが、こちらでは最後に持ってくる。感動した気持ちのまま終わってくれた方がいいのに、潮が引くように精算されてしまうのは興ざめだった。最近の流行なのだろうか。 なかなか良かった点としては、無駄なCGがあまりないこと。無論、水中の爆雷シーンなどは致し方ない所だが、戦闘シーンを極力省いた結果でもあろうが、その分幻滅する回数も少なかった。また、本作では回天内部のセットがかなり細かく再現されている。回天操縦の手順も細かに映像化しており、難しいとされる回天操縦の一部を認識できたような気がする。並木少尉が初操縦訓練で失敗して上官に殴られた際に、「覚えられるわけないだろう!」とキレた演技は、ある意味リアルで面白かった。 また、回天搭乗員の心情表現はなかなか秀逸。出撃搭乗前の心境から発進直前の心境の変化、さらに出撃中止命令後の心情変化とめまぐるしく変わる姿をうまく表現している。航空機特攻隊に比べて状況即応的行動に左右される回天搭乗員の気持ちというのは察するに余りあるからだ。戦友との別れ、艦長との決別の辞など涙なしには見れない。これまでの回天モノ映画にひけをとらない出来となっている。 全体として、政治的、思想的なメッセージ性も特になく、フィクションとはいえども回天特攻隊の実像に限りなく迫った内容であると言え、見るべき価値のある映画と言える。内容的には是非多くの人に見て欲しいと思うのだが、映画としてどうだというと、DVDレンタルでもいいかもなと思ってしまうものであった。 興奮度★★★ 沈痛度★★★★ 爽快度★★ 感涙度★★★★ (回天を扱った映画) 人間魚雷回天(1955 新東宝) ★★★☆ 人間魚雷出撃す (1956 日活) ★★ 人間魚雷あゝ回天特別攻撃隊(1968東映) ★★★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 明治大学野球部のエース並木は肩を壊し、変化球(魔球)への意欲を見せるが、キャッチャーの剛原とは意見が対立する。彼らが集う喫茶店「ボレロ」で、並木は元陸上部の北から、いつまで野球にしがみつくのだと馬鹿にされる。マラソン選手だった北はオリンピックが中止になったために陸上部を退部していた。 戦雲急を告げ、ついに学徒出陣壮行会が開催される。並木や野球部マネージャーの小畑らも参加するが、北は一足先に海軍に志願していた。並木はどちらにせよ軍に招集される運命と悟り、野球を続けることを悩み始めていた。その日、東京中野の並木の家には恋人の鳴海美奈子が来ていた。二人は愛し合ってはいたが、時代は二人を離ればなれにするのだった。 並木はついに海軍入隊を決意する。そして、入隊した海軍対潜学校で校長から特別任務の志願者募集の訓辞がある。極めて危険だが、戦況を打開する秘密兵器だというのだ。ともに入隊していた小畑は志願できなかったが、並木は志願する。それは特攻兵器回天搭乗員の募集だったのだ。 先頭に1.6トンのTNT火薬を搭載した回天は九三式酸素魚雷を基に作られたもので、その操舵性は著しく困難であった。山口県光基地に配属なった並木は厳しい訓練を続け、単独航行の訓練に挑むが、イルカ運動のすえ危うく命を落としそうになる。そんな所に、あの北が赴任してくる。北はすでに中尉になっていたが、過去に回天出撃で艇の不良で戻ってきていた。また、基地の整備員には野球好きの伊藤兵曹がおり、並木とキャッチボールや野球談義に花を咲かせる。そして、ついに並木にも出撃の日が近づいてくる。 最後の別れに実家に戻った並木だが、一晩の滞在しか余裕がなかった。美奈子に連絡をしていなかった並木だったが、妹の幸代は美奈子に電報を打つ。しかし、美奈子は来ず、ついに翌日の列車の発車時間となる。そこにようやく夜勤明けの美奈子がやってきて二人は束の間の再会を果たす。 北中尉を隊長とし、並木少尉、佐久間少尉、沖田兵曹の回天搭乗員4名は、鹿島艦長のイ36号潜水艦に搭乗して出撃する。敵駆逐艦の爆雷攻撃を鹿島艦長の巧みな技と金比羅様のご加護で乗り切るが、沖田搭乗の回天四号艇が故障してしまう。沖田は失意の底に沈むが、残りの三名が逆に励ます。そして、ついに敵輸送船一隻を発見。北、佐久間、並木の三名は回天に乗船待機し、北に発進命令が出る。しかし、北の艇は故障で発進できず、代わりに佐久間艇が発進し見事撃沈を果たす。 残された艇は並木のみだが、北は並木に代わってくれと懇願する。貧しい農家の出の北にとって、オリンピックが夢だったが、それが潰えた今、特攻で死んで軍神になるしか道がないというのだ。並木はそれを受け入れず、敵駆逐艦発見の報とともに回天に乗船する。艦長から言い残すことはないかと聞かれ、並木は野球仲間、父母、妹、恋人の顔を浮かべながらも、「ここまで無事に連れてきてくださって有り難う御座います。皆さんのご無事を祈っています」と告げる。しかし、並木の艇もまた故障のために発進できず。生き残った並木だったが、その怒りを整備員の伊藤兵曹にぶちまける。 光基地に戻った並木は待機中についに魔球を投げることが出来る。そして、8月15日の終戦を迎えるのだが並木は出撃訓練の最中に着底事故で殉職してしまう。翌9月の台風で並木の回天が海岸に打ち上げられる。GHQに連れられてきた伊藤は回天のハッチを開け、並木の遺体に涙する。並木は死の直前に薄れる意識の中で、伊藤や美奈子あてに遺書を残していた。 現代・・・山口県大津島基地跡。一人の老人がやってくる。あの伊藤兵曹だった。伊藤は並木から貰った野球ボールを海に投げ込むのだった。 DVD検索「出口のない海」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年09月17日
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1941 社団法人日本映画社 謹輯:内閣紀元二千六百年祝典事務局 謹写:内閣、宮内省、文部省、鉄道省、厚生省、奈良県、宮崎県、鹿児島県、東京市、同盟通信社、朝日新聞社、大阪毎日新聞社、東京日日新聞社、読売新聞社、日本映画社 60分 モノクロ 昭和15年は皇紀によれば紀元二千六百年とされる年に当たり、日本では国を挙げての奉祝記念行事が行われた。もともと、昭和15年には万国博覧会、オリンピックの開催も予定されていたのだが、戦雲近づきそれが中止され、その鬱憤を晴らすかのように盛大に奉祝行事が実施されたのである。 紀元二千六百年奉祝行事はかなり前から用意周到に計画されていたようで、 「紀元二千六百年祝典記録」なるものが全13巻、A4版で各巻平均950頁、昭和天皇伝記編纂用内部資料として作成されている。本映画も同様に、奉祝行事の記録用として製作されたものらしく、日本映画新社の解説に寄れば、「官製「公式記録映画」ともいうべき作品で、『映画年鑑(昭和17年版)』にも「有料興業を主目的とせざる」とあるように、この映画が一般公開されることはなかった」そうである。 奉祝行事の記録は昭和15年の本祝典に先立って、昭和13年4月10日に明治神宮における奉祭から始まっている。その後、全国の神社をはじめ各学校や交通機関などありとあらゆる公共施設において記念事業が開催され、日本全国民はもとより、満州、そしてドイツ人までもが労働に参加している。ここでいう、記念事業とはいわゆる神社の整備、公共整備を指している。主な記念事業として登場するのは、 1 橿原神宮境域並畝傍山東北陵参道の拡張整備 1 宮崎神宮境域の拡張整備 1 神武天皇聖蹟の調査、保存顕彰 1 御陵参拝道路の改良 1 国史館の建設 1 日本文化大観の編纂出版 とある。 各神宮等の竣工式典には秩父宮、高松宮の姿が見られ、紀元節祭には軍艦「出雲」、満州皇帝溥儀もお召し艦「日向」に乗船してくる。また、映像中には神宮徴古館、宮崎神宮背後の八紘一宇碑が映し出され、イベントとしては全国の在郷軍人会から上米1升を橿原神宮に向けて村づたいに送るものや、九州一周御神火マラソン、神武天皇御東征記念の軍船「おきよ丸」遣航、第11回明治神宮国民体育大会「宮崎・畝傍間駅伝大会」などが面白い。 昭和15年の本式典が近づくと全国から奉祝文が届き始める。各県、朝鮮、満州、さらにアメリカ、ハワイ、メキシコ、パナマの代表団が明治神宮にやってきている。 10月11日の特別観艦式ではお召し艦「比叡」の映像とともに、上空には海軍航空機の編隊が飛んでいく。機影から九七式飛行艇と思われ、珍しい機体である。 10月21日には観兵式が行われ、天皇陛下が愛馬「白雪」の騎乗して現れる。パレードでは九七式中戦車チハ(旧砲塔)に九五式軽戦車が混じって進軍している。 ちょっと変なのは各神社で奉納された奉祝舞楽「ショウワラク」という舞で、古墳時代の兵士の格好で舞楽を舞うのだが、神武東征をイメージしたのだろうが、とってつけたような衣装は今見るとかなり滑稽。どうも伝統的なものではなく、奉祝にあわせた創作のようだ。 11月10日には、ついに本式典が開催される。天皇、皇后陛下のお成りのもと、皇居の宮城前広場で参列者5万人(2日間で?)が招かれて執り行われる。軍人、官吏、さらにドイツ軍将校の姿も見え、午前7時入場、午前10時半より開催される。初日は近衛内閣総理大臣の奏上で始まり、天皇勅語が奉られた。同時に日本各地の神社でも奉祝舞楽が奉納されている。 2日目は高松宮殿下の奏上で執り行われ、参拝者は引き出物の料理や酒に舌鼓を打っている。料理は持ち帰りが出来るよう野戦食料がメインとなっていたようだ。一般参列者は炎天下のもと直立のままで、各自の前には背の高い机が用意されて料理が置かれている。かなりの高齢者の姿も見えるが、時間にして1時間半程度なのでなんとか我慢できる程度だったか。 この奉祝の間、一般国民にも昼間からの飲食や芸者の踊りなども特別に許可され、街での御輿や提灯行列などの風景が写されている。 記録映画のために面白みは全くないが、こうした日本を挙げてのイベントが開催された様子が良くわかり、この時に整備された構造物で今に残るものもあり、その背景となる世相も理解できる。ただ、一般国民の真の姿はほとんど写されず、作り上げられた絵空事であり、いわゆる政治的なプロパガンダ(盛り上がり)によって国民が操られていく記録といってもいいのだろう。 興奮度★★★ 沈痛度★ 爽快度★★ 感涙度★ 日本映画新社HP ←ここの通販で買えますかぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年09月15日
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1938 6月 東京朝日新聞社 12分 モノクロ 今でこそアカまっしぐらの朝日新聞が、その当時には戦争へ国民を誘い込む戦意高揚映画を製作していたという笑うべき一作品。日中戦争開戦一周年を期に制作されたもので、映画は戦時記録映画風に記録映像を用いて制作し、上海事変から徐州陥落までをナレーションとテロップ入りでニュース的に解説してある。はっきり言って、映像に斬新性はほとんどなく、ナレーションやテロップにも面白みはない。単に時系列に事件事象を並べただけであり、そうだとしても余りに中身がない。 その中で特筆するとすれば、米人カメラマンが撮影した蒋介石軍の黄河戦線での活動風景映像が珍しい。捕獲したもの映像に流用したらしい。そのほか、航空隊の映像として九二式艦上攻撃機(複葉機)が登場している。 以下、時系列のテロップ。 ・ 上海事変 ・ 蘇州河肉弾突破 ・ ローマ防共協定調印 聖戦の真義明白 ・ 大本営設置 ・ 杭州湾上陸、南京包囲 ・ 黄河河畦戦機熟す ・ 青嶋 ・ 我が荒鷲部隊全支制空権確保 ・ いたるところに平和蘇る ・ 徐州落つ。しかし戦ひは続く よく朝日新聞は戦時中の戦意高揚報道等について、軍部に加担させられたと言い訳がましく言っているが、昭和13年の段階ですら堂々と朝日新聞製作の名前入りでこうした映画を製作しているのだ。この当時、報道は各社ともにまだ自由競争の強い時期であったはずであり、社の方針で制作したと言わざるを得ない例である。 興奮度★ 沈痛度★ 爽快度★ 感涙度★ 日本映画新社HP ←ここの通販で買えますかぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年09月14日
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2004 アメリカ 監督:P・J・ピース 出演者:トム・ベレンジャー、バイロン・マン、ジョン・ドーマン 90分 カラー トム・ベレンジャーの孤高のスナイパーシリーズ第3作目。1作目のヒットから11年後の2作目はかなりの失敗作だったが、この3作目は新人監督を起用しての巻き返し。低予算映画の宿命には、登場人物やエキストラの少なさ、ロケのいい加減なシチュエーションがあるが、本作はストーリー性と映像の工夫でなんとか体裁を保っている。全体的に説明不足と尻切れトンボ的な雰囲気はあるが、孤高のスナイパー、ベケット曹長の私生活に視点をあて、かつ1作目のジャングル、2作目の市街地だった設定を、3作目はトンネルという閉塞感をねらったコンセプトで生かしている。 スナイパーという緊迫感は相変わらず良質で、狙撃シーンや銃撃戦はそれなり。さらに、舞台がベトナムということでベトナム人警官のカンフーアクションシーンが色を添えている。また、時折入るベトナム戦ジャングルシーンはもっと見ていたい気になった。 ただ、残念なのはストーリーで言えば、息子のような存在のベトナム人警官クアンとの心情の入れ込みが描き切れていないのと、ラストシーンのシチュエーションが今ひとつ不明瞭であったこと。また、ベケットの恩人「コブラ」の性格付けで手を抜いているのが明瞭である。どれほど友人であったか、どれほど人格が変化したかの描写がなさすぎる。 映像的にはトンネルシーンがやや稚拙であったこと。低予算でトンネルシーンはかなり難しかったであろうが、ろうそくの灯りが点々とつき、かなり広いトンネルはまるでインディージョーンズ映画の探検シーンのようだ。さらに、トンネル奥地に広がる膨大な広場・・・・・・洞窟以外のなにものでもない。 アクション娯楽映画とすれば結構楽しめるが、戦争映画とか舞台背景などのシリアス性を求めたらかなり杜撰。「ランボー」の狙撃版といったところであろうか。 ちなみに、ロケはタイだそうだ。従って雰囲気はかなりベトナムに似ていると言ってもいいのだろう。また、ベケットが戦争映画のテレビを見ているシーンがあるが、流れているのは「戦場にかける橋」。映画中の登場人物が帽子を取るのと同時にベケットも帽子を取るのがなかなか格好良い。 また、この主人公ベケット曹長は、ベトナム戦の英雄ハスコック氏をモデルにしているのだそうだ。 興奮度★★★ 沈痛度★★ 爽快度★★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 戦傷により除隊していたベケットだったが、再び海兵隊に上級曹長として復帰する。酒に浸り命令を聞かないベケットに、上官のララビー大尉は業を煮やすが、ベケットは一向に気にしない。そして、ベトナム戦時の親友で命の恩人だったポール・フィネガンの息子ニールの結婚式で、ベケットはフィネガンの遺書を読み上げる。フィネガンの妻でベケットに恋心を寄せるシドは、指が痙攣するベケットを診察し、負傷の後遺症であることを告げる。 ベトナムのホーチミンではヤクの売人が警察に捕まっていた。国境でイスラエル過激派などにヤクや武器を密売している闇組織の一味だ。 ベケットはNSAのエイブリー副部長に呼び出され、ベトナムへ飛んで闇組織のボス通称「コブラ」の暗殺指令を受ける。そのコブラとは実は生きていたフィネガンだった。もとはCIAの指令で動いていたフィネガンだが、現在は若者を従えて私軍を組織しヤクを仕切るため邪魔になったのだ。 ベケットは親友で命の恩人ということで悩むが、指令を引き受けてホーチミンに飛ぶ。現地ではNSAの一員であるホーチミン警察警官のクアンが連絡員として待っていた。クアン自身は米軍兵の落とし子であった。クアンの情報通りにフィネガンが姿を現し、ベケットは狙撃するが指の震えで失敗する。そして、そのベケットを別の狙撃手が狙っていた。 ベケットは警察に捕まり、同様に捕まっていたフィネガンと再会するが、人の変わっていたフィネガンはベケットにエイブリーに騙されたのだと告げる。フィネガンの部下の爆破工作でフィネガンもベケットも警察を脱出するが、ベケットは真実を探るためにフィネガンの本拠地に潜入する。 フィネガンの本拠地はベトコンの作った地下トンネルだった。クアンもベケットに協力し、同行するが足を踏み外してフィネガンの部下に捕まってしまう。クアンはフィネガンの部下と1対1の対決に勝利するも、フィネガンらに銃を突きつけられて絶体絶命に。そこで、ベケットはフィネガンの口から真実を聞かされる。 ベトナム戦争でフィネガンらと戦友だったエイブリー副部長とゲイラー上院議員はヤクにラリって現地女性と乱交騒ぎを起こしていた。そのシーンをカメラマンのヨークが撮影していたために、不祥事発覚を恐れたエイブリーとゲイラーはヨークを殺害し、フィネガンとベケットを相打ちにさせようとしていたのだった。 しかし、元に戻る事を拒否したフィネガンをベケットは殺す。そして、若者たちからベケットは、ベトナムの神話になぞらえてコブラを倒したマングースと呼ばれるのだった。 DVD検索「山猫は眠らない 決別の照準」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年09月13日
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スカパー!やケーブルで視聴できる日本映画専門チャンネルで、11月に三島由紀夫関連作品をなんと17作品も一挙放映するのだそうです。そのラインアップを抜粋すると【全17作品】「春の雪」TV初(PPV除く)「幸福号出帆」「金閣寺」「潮騒(’75)」「音楽」「潮騒(’71)」CS初「愛の渇き」「複雑な彼」「肉体の学校」TV初「剣」「燈台」「不道徳教育講座」「炎上」「美徳のよろめき」「潮騒(’54)」CS初「にっぽん製」〈関連作品〉「みやび 三島由紀夫」TV初ということ。 こんなに映画化されてたっけ、というぐらいありますね。見たことないのも多いです。「不道徳教育講座」なんてどんな仕上がりになっているの気になります。「潮騒」も全部で6作品ありますけど、'54や'71のものは見たことないです。どうせなら'85の堀ちえみのもやって欲しかった。そういえば「F104」って映像化されてなかったですかねえ。なんかあったような気もするのですが、気のせいかな。 三島作品を楽天で検索してみたら三島由紀夫DVD作品検索 116件もヒットしました。 憂国春の雪剣獣の戯れ永すぎた春複雑な彼潮騒'75山口百恵潮騒'64吉永小百合愛の渇き炎上(金閣寺)午後の曳航(イギリス作品)
2006年09月12日
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1979 ユーゴスラビア 監督:ハイルディン・クルヴァヴァック 出演者:ベッキム・フェーミュ、Rados Bajic、Velimir 'Bata' Zivojinovic、Radko Polic、Suada Avdicほか 93分 カラー 現在 Gyao で無料放送中なので視聴しました。(9/21まで)。ユーゴスラビアものはかなりレア作品なので今がチャンスです。 旧ユーゴスラビアでは、結構多くの戦争映画が作られている。マカロニコンバットの系譜と評されるものが多いが、ほとんど見ることが出来ないものばかりであるのが残念。本作は1980年代に日本でテレビ放映されたこともあるもので、マカロニコンバットの雰囲気もありつつ、もうちょっとシリアス調の航空アクション、パルチザンもの。 ユーゴスラビアは第二次大戦中はドイツの占領下にあり、戦後は共産主義者チトー大統領のもと社会主義国家を樹立する。しかし、ソビエトとの対立が表面化すると1950年代前半はむしろ西側諸国と接近する。その後ソビエトとの関係修復がなされ、1980年のチトー死去以降は激しい内戦に発展することは言うまでもない。本作はチトー死去直前の製作であり、最後のユーゴ戦争映画と言ってもいいだろう。お国柄、東西両陣営の兵器類が登場し、本作が作られた政治的、国際的背景も考慮してみると興味深い。 先にも書いたが、マカロニコンバット系なのでアクションはオーバーだし、設定等はかなりいい加減。本作はパルチザン航空隊を結成し、占領ドイツ軍に対抗するという話だが、史実にどれだけ沿っているのかさえわからない。英軍に支援されたチトー派がハリケーンを運用していたことは知られるが。 とはいえ、意外にも本作はストーリー的にも映像的にもなかなか見応えがあるのだ。単純明快な英雄的ストーリーは実にわかりやすく爽快だし、ドイツ、ユーゴどちらかに肩入れすることなく見ることができるのもいい。やや死亡率が高くて悲壮感が漂う傾向はあるが、女性とのベタベタ具合も少なく話を阻害しない。欠点をあげれば、地理的関係が良くわからないのと、敵側の作戦情報が手に取るようにわかるのはいかがなものか。また、全くのど素人があっという間に戦闘機パイロットになって空戦をしてしまうところも変だろう。 映像的にはやはり航空機シーンが見物だ。空中戦シーンこそはミニチュアを用いたりとたいしたことはないが、単純な飛行シーンや爆撃シーンは実機を用いており、なかなかの迫力がある。火薬使用量も決して少なくはなく、カメラワークや編集もアメリカ映画にひけをとらない。 登場する航空機の実機はかなりの数にのぼり、多分ユーゴスラビア空軍の協力によるものと思われる。パルチザンが用いる戦闘爆撃機は、ボーイングステアーマンPT-17ケイデットとそっくり。少なくとも3機以上が登場し、軽快な離着陸や宙返りを見せてくれるが、ケイデットそのものなのかユーゴオリジナルかもしれない。ドイツ軍側の偵察機としてはセスナL-19そっくりのユーゴオリジナル、UTVA-66。ドイツ軍側の戦闘機としては鈎十字をマークされた10機以上の航空機が登場するが、見たことのない機体で判断に苦しんだ。一見米軍のSBDドーントレスやAT-6Aテキサンにも似ているし、キャノピー形状や質感からするとソビエトのYak-11にも似ているなどと延々と調べてみるとSOKO-522という機体であった。もう一つ、後半からドイツ軍にもパルチザン側にも運用される脚出し型の軽飛行機も10機以上登場するが、これまた見たことない機体で、調べた結果、SOKO- J20Kraguj(p2)という機体。いずれもユーゴスラビア生産の機体で、SOKO-522は160機、SOKO-J20は43機が生産されているようだ。ちなみに、SOKO-522は1977年に全機退役しており、地上で炎上するシーンはもしかもすると実機?かもしれない。これだけ訳のわからない航空機があるのもユーゴスラビアならではの風景と言える。このほか、遠目で良くわからなかったがJu-52も出ているかも知れない。 地上兵器としては一瞬だがT34/85戦車が列をなしている。秀逸なのはドイツ軍の四連装対空機関銃。防盾に鈎十字が書いてあったりはするが、結構リアルに撃っていたりするのがいい。SOKO-522SOKO-J20Kraguj PT-17? UTVA-66 (参考) Air Museum Belgrade 興奮度★★★★ 沈痛度★★★ 爽快度★★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1942年のユーゴスラビア。元空軍パイロットのドラガン少佐はチトー元帥から直々の命令でパルチザン航空隊の指揮官に命じられる。とはいえ、機体も資材もパイロットも何もない状態から始めなければならず、副官のベゴビッチ中尉がつけられたのみであった。 ドイツ軍に制圧されたユーゴ上空の制空権を奪取するのが目的だが、ようやく2機の戦闘機が調達される。同時に着任したのはパイロットのスラーベン・レイヴィッチ中尉、ズラトコ・コビジッチ、整備兼射撃手のミラン・ストイビッチ、射撃手のトビスラデ・ウーゼラッチの4名であった。 早速、山間部の空き地に設けられた飛行場から飛び立った2機の戦闘機は、ドイツ軍飛行場を急襲し、多大な損害を与えるがコビジッチの搭乗機は被弾撃墜されてしまう。 ドイツ軍飛行場では、ユーゴスラビア人の整備士フォスとゼーコが徴用されて働いていたが、ゼーコはフォスが元戦闘機乗りと言うことを知っており、二人で戦闘機を奪ってパルチザンに合流しようと持ちかける。しかし、フォスは慎重で相手にしようとしない。 ドイツ軍はパルチザンが航空隊を組織したことを知り、壊滅作戦のためにクラウベルグSS大佐を送り込む。基地司令のモーデル大佐とともにパルチザン航空隊の在処を探ろうと試みる。 パルチザン部隊ではシャーリー・チャルビックがイタリア軍から戦闘機を奪取して合流し、その射撃手にはドラガン少佐の馬係だったダリバー・ボービッチが抜擢される。飛行機にあこがれていたダリバーは、恋仲になっていた地元の娘ミラと大喜びする。そのダリバーに、待ち伏せされたパルチザン部隊の支援爆撃任務がやってくる。ダリバーは見事任務を果たすが、その帰還途中でドイツ軍機と遭遇し、空戦のすえ撃墜を果たす。 しかし、航空隊飛行場の在処を探られたパルチザン部隊は、ドイツ軍機の急襲を受ける。1機が地上で破壊され、人員にも被害が出る。部隊はやむなく移動することとなる。 ドイツ軍基地のフォスとゼーコはついにパルチザンへの合流を決意する。ドイツ軍機を盗んで、パルチザン部隊に合流するが、その途中でドイツ軍爆撃機を撃墜するものの、機体の不良で片輪が出ずに不時着してしまう。 シャーリーとダリバーはドイツ軍基地に潜入し、破壊工作のうえドイツ軍機を奪って逃走する。しかし、途中でシャーリーが撃たれて重傷となり、操縦を素人のダリバーに任せることになる。シャーリーの指導でなんとか着陸したダリバーだったが、着陸したときにはシャーリーは事切れていた。 また、フォスとゼーコはドイツ軍機と空中戦となり、後席のゼーコが戦死してしまう。さらに、ドイツ軍の空襲でミラが死亡。多くの民間人も死亡する。 ドイツ軍は海岸線奪還計画を決行することとなる。それを阻止するために航空隊は橋の爆撃任務を命じられる。ダリバーも一人前のパイロットに育ち、8機に増えたパルチザン航空隊は爆弾を抱えて攻撃するが、ドイツ軍の対空砲撃で徐々に被害が出始める。子供が生まれたばかりのボリス中尉も被弾し、橋に体当たりをかけて崩落させる。さらに、ドイツ軍機の追撃を受けたドラガン少佐も被弾し、無事に着陸することはなかった。 新生されたパルチザン第一空軍基地に、フォス、ダリバー、レイヴィッチの3名が降り立つ。一体誰なんだと訝しがる若いパイロットたちに、基地指揮官のスミエルスキー大尉が言うのだった。「我が国空軍の前身、パルチザン航空隊で生き残った三名だ。敬意を表して敬礼!。」かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年09月10日
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1957 アメリカ 監督:アンソニー・マン出演:ロバート・ライアン、アルド・レイ、ロバート・キースほか100分 モノクロ 朝鮮戦争における米軍小隊の孤立を厭戦的に描いた作品。朝鮮戦争を題材にした映画としては初期作の方で、ヴァン・ヴァン・プラーグの「終わりなき日」という小説を映画化したものである。疲弊し、焦燥した指揮官と兵隊達、見えない敵兵に囲まれた閉塞感と恐怖感が、簡素な構図の中にびっしりと描かれている。テレビドラマのコンバットのようなイメージが強く、シリアスものというよりは、ヒューマンドラマタッチとなっている。 ロケ地はアメリカの岩砂漠のような場所で、今ひとつ朝鮮半島らしさはない。登場する敵兵(北朝鮮兵)もごく少量で朝鮮戦争のシリアスさを期待して見たらハズレであった。予算的にはチープ映画だったのだろう、人的量で恐怖感を与え続けた北朝鮮軍の圧迫感が感じられないのは残念だった。はっきり言って、これが朝鮮戦争である必然性がなく、イタリア戦線だと言ってもわからなかったかもしれない。 映画の設定時期は1950年9月6日となっており、場所は洛東江攻防戦である。9月16日には仁川上陸戦が開始され、これに呼応して洛東江反撃が始まるので、その前段階ということになる。米軍・韓国軍が洛東江を挟んで対峙し、北朝鮮軍の猛攻撃に耐えているといったシチュエーションである。こうした状況は会話の端々には出てくるが、今ひとつ緊迫感はない。なお、登場する小隊は第2師団インディアンヘッドの第9連隊所属で、途中で合流する敗残兵は第1騎兵師団の肩章をつけている。このあたりは、概ね史実に近いとも言える。 アクションシーンはやや西部劇調に誇張されたアクションが目立つ。北朝鮮軍が保持する陣地への攻撃シーンは、クライマックスでそれなりの緊迫感があって良いのだが、どうせなら武器の選択や攻撃計画の全体像がわかるようなシーンにして欲しかった。どうも、とってつけたようなバズーカや手榴弾などの武器選択に疑問が残るし、兵たちの動きがわかりにくい。登場する兵器は銃器類以外はなしなのもちょっと寂しい。 主役は小隊長の中尉と途中で合流した一等軍曹の二人と思われるが、どちらも厭戦感を好演しているのだが、役柄の性格付けが今ひとつわからない。さらに、17名いる部下に至っては特徴付けがかなり薄いので最後まで誰が誰だかわからない。もう少し、朝鮮戦争らしさと個々の心情を表現できていれば良い作品になったのではないだろうか 興奮度★★沈痛度★★★★爽快度★★感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1950年9月6日、韓国。米第2師団第9連隊第34中隊第2小隊(レッドドッグス)は洛東江の陣地で孤立した。大隊本部を呼び出そうとするが応答がない。北朝鮮軍に包囲され、ハノンが殺害されたため仕方なく、小隊長のベンソン中尉は友軍が陣を構える465高地まで待避することを決意する。しかし、病人のズウィックリー伍長を抱え、トラックも破壊されているため、小隊17名は弾薬を背負っての徒歩移動となった。 途中で、疾走してくる友軍のジープを発見する。ジープには敗走してきた第1騎兵師団の大佐とモンタナー一等軍曹が乗っていたが、ベンソン中尉はジープを奪取する。大佐は、敵の地雷攻撃で神経をやられており、話すこともできず、モンタナー軍曹が面倒を見ていた。モンタナー軍曹は一刻も早く釜山に向かいたいというが、ベンソン中尉は許さない。 行軍中にしんがりを務めていたキリアン二等軍曹が敵の偵察兵に殺される。代わりにモンタナー軍曹がしんがりを務め、見事敵兵を仕留める。これには、ベンソン中尉も認めざるを得なかった。しかし、敵兵の通信で小隊に砲撃が加えられる。この砲撃でテイラー、ヴィラの2名が戦死する。 さらに進むと先頭を歩いていたルイス一等軍曹が地雷原を発見。気が狂ったルイス軍曹は地雷を踏んで戦死する。そこに一人の北朝鮮兵が投降してきて、ベンソン中尉は北朝鮮兵を先頭にして地雷原を突破する。 ついに、465高地に到着するがどうも雰囲気が怪しい。ベンソン中尉は北朝鮮兵に崖を昇らせる。すると、案の定銃撃されて射殺されるが、撃ったのは米兵だった。ところが、その米兵をモンタナー軍曹が撃ち殺す。咎める中尉だったが、死体をよく見ると米兵に化けた北朝鮮兵だった。465高地も北朝鮮軍に支配されていたのだ。 ついに、行き場がなくなった小隊だったが、ベンソン中尉は北朝鮮軍陣地に攻撃を仕掛ける事を決意する。モンタナー軍曹と大佐はジープに残る。無謀とも言える攻撃で次々に部下が戦死していく。その時、意識が回復した大佐は攻撃に参加する。大佐の猛攻撃で北朝鮮軍銃陣地を撃破するも、ついに大佐も戦死する。残った敵機銃陣地は一つだが、こちらも生き残ったのはベンソン中尉とモンタナー軍曹だけだった。二人は火炎放射器を持って最後の攻撃に出、ついに465高地を奪取する。 後に、もう一人の生き残った軍曹が姿を現し、友軍がやってくる。中尉は大佐が渡しそびれた勲章を死んだ部下に授与するのだった。 DVD検索「最前線」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年09月08日
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戦争映画を集めて視聴しているわけですが、ついに・・・抗日中華映画に進出しました。はっきり言って中華映画などたいして期待もできませんし、見れば原辰徳なわけなんですが、やっぱり見なければ何も語れないというわけで調べてみました。中国戦争映画 制作年代のわかるもの 年代順 鋼鉄戦士(1951中) 鶏毛信(小さな密使)(1954中) 平原遊撃隊(1955中) 衝破黎明前的黒暗(1956中) 鉄道遊撃隊(1956中) (DVD)-抗日戦争片 上甘嶺(1956中) 朝鮮戦争 柳堡的故事(1957中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 狼牙山五壮士(1958中) 長空比翼(1958中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 朝鮮戦争 永不消失的電波(1958中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 戦上海(上海の戦い)(1959中) (DVD)-中国戦争電影永恒経 回民支隊(1959中) 紅色娘子軍(1960中) 地雷戦(1962中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 東進序曲(総攻撃の前夜)(1962中) 小兵張[ga2](わんぱく兵チャン)(1963中) (DVD)-儿童故事片 抓壮丁(1963中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 兵臨城下(城下に迫る兵)(1964中) 英雄兒女(1956中) 朝鮮戦争 奇襲(1960中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 朝鮮戦争 三八線上(1960中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 朝鮮戦争 苦菜花(1965中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 地道戦(地下道戦)(1965中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 打撃侵略者(1965中) 朝鮮戦争 南征北戦(1974中) 激戦無名川(1974中) 朝鮮戦争 閃閃的紅星(1974中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 長空勇鷹(1976中) 朝鮮戦争 南海長城(1976中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 小花(戦場の花)(1979中) 解放石家庄(1981中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 1947年内戦時の石家荘解放戦 四渡赤水(1983中) (DVD2枚)-中国戦争電影永恒経典 将軍与孤女(將軍與孤女)(1984中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 大閲兵(1985中) (DVD) 1984年建国35周年閲兵式にむけての訓練 破襲戦(1986中) 八女投江(1987中) 中華戦士(1987香港) 日本軍の毒ガス工場建設を阻止!カンフー映画 今夜星光燦爛(1988中) (DVD)-中国戦争電影永恒経典 晩鐘(1989中) 戦争子午線(1991中) 犬王(1993中) エンド・オブ・ザ・ロード(1993香港) 反共産党軍「狐軍」の悲惨な実態 南京大屠殺(南京 1937)(1995中) 紫日(紫の落陽)(中) 鬼子来了(鬼が来た!)(2000中) 太行山上(2005中) 制作年代のわからないもの 順不同 江山多嬌 (DVD)-中国戦争電影永恒経典 両生之地 (DVD)-中国戦争電影永恒経典 怒潮 (DVD)-中国戦争電影永恒経典 農奴 (DVD)-中国戦争電影永恒経典 晩秋 (DVD)-中国戦争電影永恒経典 世紀大閲兵(DVD) 現代中国軍 製作年代が不明なものも多くて、よくわからないことが多いですね。上記のほとんどが近年DVDとして発売されているようです。私は書虫さんというところで通販購入しましたが、結構品揃えが良いです。私は買っていませんが中国軍の軍事書籍なんかもあるので興味津々です。 安く買うならばYesAsia.comが安いかもしれません。古典戦争映画ならば703円(送料込み)で購入できるものもあります。 中国に金を落とすと思うと腹立たしいですが・・・。 なお、中国はDVDのリージョンが6ですが、販売しているほとんどがリージョンALLなので日本でも見ることができます。またテレビ形式もPALとNTSCがありますが、ほとんど日本と同じNTSCも出ているので大丈夫。もしPALでもパソコンでみるなら無問題です。 私はとりあえず著名な抗日、抗美国ものの四本、「三八線上」「地道戦」「地雷戦」「鉄道遊撃隊」を購入してみました。(YesAsia.com)そのうち、朝鮮戦争を扱った「三八線上」を昨日から見始めたところですがとりあえず、映りました。もちろん日本語字幕や吹き替えなんてないので、中国語のままですが、字幕を繁体中文(台湾・香港)、簡体中文(中国本土)、英語から選べるのでそれで見るしかありません。中国語の繁体は日本語の漢字に近いので文字面だけでもそれなりに理解できます。簡体はさっぱりわかりません。意外とわかりやすいのが英語。会話の半分ぐらいしか訳されていないのですが、かなり簡素化された英語で英語の不得意な私でも理解しやすいのです。 そういうわけで、突然中国戦線に撃って出たのでありました。どうなるこ・と・や・ら 楽天の中でも、新しい作品ならば扱っているようですね。太行山上 香港版DVD紫日 台湾版DVDジャスミンの花開く(茉莉花開)香港版DVD
2006年09月07日
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1939 ミヅナカ映画部 企画:報知新聞社 構成:長尾史録 出演:音楽映画 報知新聞懸賞当選歌「英霊讃歌」 10分 モノクロ 報知新聞社が募集した軍歌の当選作「英霊讃歌(作詞:山崎真基人)」に山田耕筰が作曲したものを紹介する音楽映画。当時は戦意昂揚のためにこうした新聞社等の公募がしばしば行われていた。 本作は、英霊讃歌という曲を紹介しながら日本民族の正統性や一致団結、新東亜建設の理念を蕩々と解説していく。なかなか難しい内容のナレーションで、要は大君を中心に老若男女、農民も工員も前線の兵士と共に戦おうということのようだ。 英霊讃歌は軍歌というか、西洋的な音楽で葬送的な雰囲気が強い。歌詞のほうもタイトルを見ればわかるが、英霊の英雄行為を讃えるものとなっている。 映像の方は、序盤は靖国神社例大祭、戦死者の葬送風景が厳かに写される。白い木箱に頭を垂れる婦人や兵士の映像は痛ましいものがある。後半からは国民総動員、一致団結を象徴するように、農村、漁村、工場で働く風景が映し出されていく。短い時間ではあるが、当時の世相を知る上では貴重な作品であろう。 興奮度★ 沈痛度★ 爽快度★ 感涙度★ 日本映画新社通販 DVD「戦時下のスクリーン」は2005年7月30日発売。 DVD2枚組(分売不可):\10,500(税込)+\700(税込送料) ネットを泳いでいたら、こんな素晴らしいレビューページを見つけました。主婦のようですが、洞察眼の鋭い中身のある解説がなされています。他の戦時下映画も同様です。脱帽です。 英霊賛歌3(ちゃこりんのこんなこと思ったのさページ)
2006年09月05日
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1938 聯合映画社 制作:加納千吉 構成:大島屯 出演:ドキュメンタリー 指導:大蔵省國民貯蓄奨励局 10分 モノクロ 映画というか、CM(広報)というか、1938年当時の日中戦争で疲弊してきた国家経済を彷彿とさせる異色作。こうした本格的な国策映画が残っていたこと自体に感激ものである。こうした映画は娯楽作品の合間等に放映されたのであろう。映像に飢えていた当時の国民はきっとこんな作品でも目を皿のようにして見ていた事であろう。 映像は賀尾蔵相本人が登場し、国家予算の戦費は12年度で25億円あまり、13年度で48億円にのぼり、今後は80億円が必要となると説き、国民は物品購入を控えて節約し、その金で戦債を購入すべきと訴える。これが面白い事に、実に懇切丁寧に図表入りで、しかもその使途まで明示して説明するのだ。今で言うプレゼンテーションそのものである。そして、国民に切実に訴える。「戦争はこれからだ」と。 なお、映像中に八九式中戦車などの兵器類の映像が一瞬映っている。また、国民精神総動員など様々なプロパガンダ広告が街中にあふれているのも興味深い。 興奮度★ 沈痛度★ 爽快度★ 感涙度★ 日本映画新社通販 DVD「戦時下のスクリーン」は2005年7月30日発売。 DVD2枚組(分売不可):\10,500(税込)+\700(税込送料)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年08月24日
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お盆前くらいに目覚ましテレビでもやっていましたが、いよいよクリント・イーストウッドの硫黄島二部作の公開が決定したようです。 アメリカ側視点の「父親たちの星条旗」は10月28日公開で、硫黄島に星条旗を掲げた兵士達が英雄視されながらも国のプロパガンダに利用され、苦悩していく様子を描いたもののようです。 日本側視点の「硫黄島からの手紙」は12月9日公開で、硫黄島守備隊司令官の栗林中将を中心にした物語のようで、最近発行された栗林中将が幼い娘にあてた手紙のノンフィクション小説でも著名ですね。 両映画のトレーラーも公開されたようですのでご覧下さい。ワーナーブロス公式HP アメリカ版はどうだか知りませんが、日本版は渡辺謙主演ですからそれなりに期待は出来そうです。トレーラーを見る限りは最近の日本映画のような安っぽさと幼い感情表現ではないようなので、ちょっと期待です。少なくとも、あの硫黄島を題材にした時点で男泣きに泣きそうです。 昨日はテレビで沖縄戦をモチーフにした「最後のナイチンゲール」というドラマをやっていましたが、何年か前の明石屋さんま主演の「サトウキビ畑の唄」と同様、チープで深みのない反戦アピールに辟易としたので、この不快感を一掃して欲しいものです。戦争物というのはストレートな戦争忌避感情表現は逆効果だと思うのですがね。人生には色々な選択肢としがらみがあるのであって、戦争忌避という感情は取捨選択の過程で自分の内情から沸き上がってこなければ意味がないし、むしろ戦争を嫌うだけでは戦争は止まらないのであって、それをいかに阻止できるかを考えさせねばならないのです。 そう言えば、9月16日からは、回天特別攻撃隊の「出口のない海」公開ですね。こちらは期待できるでしょうか。最近の日本映画を見る限り・・・・期待しないほうがいいのかな。最近の日本人監督は人生経験が浅いのか、実に心情表現が下手ですね。見る側も駄目なのかもしれないけれど、役者の表情やセリフに頼りすぎです。もっとシナリオ構成で攻める映画を見てみたいです。 最近、何だか自分で映画を作りたい気持ちが強くなってきました。映画界とは全く縁もありませんので到底無理ですが、もっとたくさんの戦争エピソードを映画にして残しておくべきではないかと感じるのです。名も無き兵士の魂の数だけ映画が作れるはずです。特に、カウラ収容所事件やタラワ環礁守備隊あたりは是非とも映画化して欲しいものです。栗林忠道硫黄島(とう)からの手紙散るぞ悲しき出口のない海
2006年08月23日
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1938 山口シネマ公司 監督:? 出演:ドキュメンタリー 14分 モノクロ 多分、軍馬の供出プロパンガンダを目的にした広報映画であろうと思われる。馬生産地での仔馬誕生から競り市の様子に始まり、軍馬補充部での二歳馬から五歳馬までの軍馬の飼育と調教訓練風景を実に細かく描写している。第二次大戦の勃発前とはいえ、中国大陸でのきな臭さもあって軍馬の補充が必要という雰囲気が感じられる。 笑ったのは「いかに科学文明が発展しても、馬の力は絶対に必要なのです」という解説で、軍馬用プロパガンダだからそう言うしかないだろうが、機械化に遅れた日本軍の言い訳のようにも聞こえた。 馬にもやはり質があるのだそうで、良馬は乗馬として各部隊に配属されるが、そうでもない馬は輓馬として砲兵隊用に、駄馬は歩兵部隊の荷運び用に回されたのだそうだ。 どうってことない記録映像だが、軍の意外な一面を見る事ができるのは面白い。 興奮度★★ 沈痛度★ 爽快度★ 感涙度★ 日本映画社通販 DVD「戦時下のスクリーン」は2005年7月30日発売。 DVD2枚組(分売不可):\10,500(税込)+\700(税込送料)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年08月20日
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1969 大映 監督:田中重雄 出演:フランキー堺、伴淳三郎、船越英二、春風亭柳昇、梅津栄ほか 87分 カラー 春風亭柳昇の実体験原作をもとに製作されたコメディ映画の第3弾。監督も変わり、前作とはやや趣向の変わった内容となっている。設定は前作の部隊、東部第62部隊に所属したままとなっており、階級も一等兵である。落語家も多数出演しており、面白いのは前作で部隊長役だった伴淳三郎が古参上等兵役で好演しているのだ。新兵の二等兵の教育係となって与太郎が奮闘する。 前作がやや風刺というか大人向きの内容だったのが、本作では親子の情愛をテーマにした感動ものに仕上がっている。一話完結ものとしても十分な出来具合である。インチキ臭い上等兵役の伴淳三郎の演技はまさにいぶし銀。フランキー堺とはまた違った芸風で楽しさを盛り上げる。一方、木訥とした大学教授出身の水澤二等兵役には船越英二が好演し、今で言えば松方弘樹風なのだろうか、ごつい風体からは想像できない小心で繊細な役柄を演じる。 ストーリーそのものは実に単純であるが、単純であったが故に感動も強い。戦時において招集された老年兵の悲しみと苦労ぶりが窺えるし、小さな子供を想う気持ちは何時も変わらないということを実感する。本作はハッピーエンドだから笑顔で締める事が出来るが、実際には数多くの類似家族が南方や大陸で戦死を遂げたであろうことを思うと、あまりにしのびない気持ちになってくる。 下手な反戦映画よりもずっとタメになる作品だと思うし、映画全体の質をあらわした★3.5という評価以上に評価したくなる味わい深い作品であった。 興奮度★★ 沈痛度★★★ 爽快度★★★★ 感涙度★★★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 一等兵となった与太郎は東部第六二部隊で新兵(二等兵)の教育係となる。与太郎の戦友には大学教授で天文学専攻だった水澤二等兵がなり、木訥で大人しい水澤と与太郎の凸凹コンビができあがる。水澤二等兵には一人息子の正一がおり、母親がいないために親類の所に預けてきたが心配でならない。 与太郎は新兵教育でもヘマばかりし、ラッパ手に転向させられる。しかし、ここでも駄目で炊事班に回される。そんな時、班内でも実戦経験を積んだ古参兵ということで威張りちらしていた村松上等兵が夜行軍訓練でアゴを出す。病院に担ぎ込まれた先で、村松上等兵の実戦経歴が大ボラであったことが判明する。それでも憎めない村松上等兵であった。 炊事場から酒と肉とを員数つけて外出しようとした与太郎は、村松上等兵に目を付けられ村松の家に無理矢理連れて行かされる。そこには沢山の子供が腹を空かせており、持って行った肉はあっという間になくなってしまう。 そこで食べさせられた酢蛸に当たった与太郎は病院で腸チフスと診断されて隔離病棟へ。病院には美人看護婦が沢山おり、与太郎は例のごとく恋文を手当たり次第に出しまくる。また、病院にはおかまの田熊六年兵までおり、大変な騒ぎに。 結局、腸チフスは誤診で与太郎は部隊に戻る事が出来る。その頃、水澤の子供正一が親類宅を家出して部隊にやってきていた。正一の姿を見た村松上等兵は水澤二等兵に伝えると、水澤二等兵は正一の姿を追って無断外出してしまう。一方、正一は与太郎に無事保護され、部隊のトイレに匿われる。しかし、水澤二等兵は脱走兵として捕らえられ営巣に。与太郎や村松上等兵らはなんとか親子対面をと画策し、なんとか一瞬ではあったが対面を果たす。そして、正一は与太郎の師匠の家に預けられる事となったのだった。 DVD検索「新・与太郎戦記」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年08月16日
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日本未公開 8/4 DVD発売2005 イギリス 監督:コリン・ティーグ 出演者:ビリー・ゼイン、カレル・ローデン、マイケル・マドセン、トミー・フラナガンほか 90分 カラー 発売元の宣伝では「第二次世界大戦末期、(略)最大規模の空挺作戦「マーケット・ガーデン作戦」をドイツ軍占領下のオランダで展開し、(略)その中に「マッチボックス」という極秘指令を受けた小隊の姿があった。一国の運命を左右する任務とは何だったのか!?「マーケット・ガーデン作戦」の裏に隠された真実を、壮大なスケールで描いたノンフィクション作品。」とある。「遠すぎた橋」で知られるマーケットガーデン作戦をノンフィクションで描いたとなると、嫌がおうにも期待は高まるというものだ。 ところが・・・・「マッチボックス作戦」何それ?。内容は・・・・全くのフィクションじゃないの!シリアスドキュメンタリータッチを期待したのだが、アクションコメディサスペンスではないの。ドイツ軍の略奪した財宝を独英米軍が争奪戦を繰り広げるといった面白おかしいサスペンス。マーケットガーデン作戦などただ単に名を借りただけで、財宝のありかがあの遠すぎた橋のアンヘルムだったというだけ。もう、最高にガックリした。 とはいえ、最初からフィクションのアクションサスペンスだと思ってみれば、それはそれで面白い。ちょっとあり得ない設定やアクションが多々あるものの、ドイツ軍二派、英軍、米軍の4つ巴の盗賊団的争奪戦の人物設定や軽快などんでん返しは楽しめる。この作品海外での評価はさほど低くはないので、輸入元の日本企業の宣伝に問題があるといえるだろう。タイトルや前宣伝に多くの誤謬があるのはいかがなものか。とはいえ、私のように間違って購入する輩もいるので、ある意味成功なのかもしれないが。シリアスものという先入観がなければ評価の★は3つはいったところ。 そういったわけで、シリアスアクションではないため、戦闘シーンや登場兵器類は期待できない。小銃、機関銃での銃撃戦はそこそこ、爆破シーンも今ひとつ。英軍空挺部隊シーンもほとんどが記録映像(モノクロ)とCGによるものとなっている。もちろん戦車や装甲車の類はなしで、ソフトスキンにしてもワーゲン、ジープに普通のトラックのみ。唯一でてくる航空機は3発の水上輸送機だがイタリア機ぽい感じはするが、何者か不明。モノクロ記録映像ではショートスターリング爆撃機と曳航されるグライダーエアスピード・ホーサが登場する。また、ロケセットはオランダの水車小屋がメインというお手軽さ。かなりの低予算映画であることは間違いない。 サスペンスとしてのストーリー性は、意外な登場人物の組み合わせや展開でまずまず楽しめるが、多彩な登場人物にきっちりした性格付けをしている割にはストリーに反映されていないのは残念。その登場人物については個性の強い役者を揃えており、ストーリーとは直結しないところでの言動はなかなか面白い。はっきり言って本作はコメディといってもいいのかもしれない。随所に盛り込まれた笑いを探すのも一興である。そういえば、冒頭の小便入りスープあたりからその傾向があることに気付けばよかった。 また、本作はイギリス制作だがイギリス映画というのは本当にアメリカ人を馬鹿にしている。イギリスのアメリカ人像は脳天気で場当たり的で功利的といった感じなのだろう。むしろ真面目なドイツ人の方を好意的に描いている。 ファインフィルムズHP 興奮度★★★ 沈痛度★ 爽快度★★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1944年9月、オランダ一帯に英米カナダの連合軍空挺部隊が降下する「マーケット・ガーデン」作戦の実行にあたり、一人の英軍空挺部隊大尉が特命を帯びる。その名も「マッチボックス作戦」と呼ばれ、1機の曳航グライダーに搭乗した小隊規模の特殊任務要員がオランダに向け飛び立っていく。 グライダーは曳航爆撃機の被弾により、予定からはずれた地点に落下し、隊員2名が死亡する。さらに、応戦に来たドイツ軍との交戦で、指揮官の大尉が戦死してしまう。指揮官を失った部隊の次席はマクミラン軍曹だが、階級から言うとカナダ人パイロットのオーツ中尉だ。しかし、指令の目的は大尉しか知らず、手元には座標の書かれた指令書があるのみだ。足に負傷を負ったマクミラン軍曹とオーツ中尉の指揮のもと部隊は座標地点に向けて歩を進めるが、作戦直前に部隊に加わったパウエル伍長の言動がどうも怪しい。伍長も何か指令の秘密を知っているようだ。おかしいと言えば、この部隊に合流したばかりのベイカー伍長は爆破処理班の専門家で、衛生兵のウェリングスは数カ国語を話す能力はあるが実戦は初めてという始末だ。ウェリングスは初の実戦にガタガタ震えるのみで役に立たない。 一方、オランダのアルンヘムでは闇商人グスタフのもとにドイツナチ親衛隊のフェラー中尉がやってくる。フェラー中尉は、グスタフとフェラーの後任となったケスラーSS少佐の謀略でソビエト前線に飛ばされた恨みがあり、ケスラー少佐とグスタフが管理するドイツ軍の略奪した財宝を奪い取ろうとしていた。フェラー中尉の手下にはスナイパーのマックスとベックがいた。フェラーはグスタフを脅して財宝の隠しているアルンヘムの農家の地下へ行った。その農場には2人の娘サスキアとベニータがおり、二人はレジスタンスとして連合軍に情報を送っていた。フェラーは財宝を運ぶのにトラックが必要と判断し、マックスを見張りに置いてベックと街に出る。ところが、トラックを奪って帰還中に地雷で横転、結局歩いて戻るハメになる。 グスタフはフェラーから逃れてケスラー少佐の所へ行き、フェラー中尉の計画を密告する。それを知ったケスラー少佐はいち早く財宝を確保しようと移動を始めるが、その途中でグスタフはケスラーに裏切られて置き去りにされてしまう。さらに運の悪い事にグスタフはアメリカ軍(101空挺部隊)少佐の一行に捕虜にされてしまう。また、フェラーらもアメリカ兵に化けてアメリカ軍陣地を突破する。 アルンヘム近くに到達した英軍特殊任務部隊は、ついにパウエル伍長を追及し、作戦の目的が財宝の確保にある事を知る。レジスタンスの女性と合流し、見張り役のマックスを捕らえて財宝を調べようとするが、地下エレベータには爆薬が仕掛けられており、容易に近づけない。しかも、爆破処理員のベイカー伍長はヤク中で使い物にならず、結局ドイツ軍のケスラー少佐がやってくるまで隠れて機会を窺う事にする。もはや、彼らは作戦任務の遂行など眼中になく、分け前のピンハネに夢中だった。 アルンヘムの農家に到着したケスラー少佐は、財宝を湖上の水上輸送機に積み込ませる。英軍のオーツ中尉はうまく敵パイロットになりすまして水上機を奪い、ついに隠れていた英軍兵らがドイツ軍兵を銃撃する。この銃撃戦でベイカー伍長が戦死、マックスも女性らを逃がしながらも撃たれて死亡する。一方、密かに隠れていたフェラー中尉は復讐のためにケスラー少佐のもとに向かい、銃撃戦の末ケスラーを地下室に閉じこめる。水上機には財宝と英軍兵士、そして紛れ込んだフェラーとベックが乗り込み発進しようとしていた。その時、グスタフから財宝の話を聞いたアメリカ軍が到着し、ドイツ軍水上機に銃撃を始める。これでパウエル伍長が戦死、水上機はなんとか飛び上がったもののエンジン不調で不時着する。 財宝は無事英国政府の元に届けられる。財宝は個人のものにはならなかったが、作戦は一応成功した。しかし、展示されている財宝を再び盗み出す一味がいた・・・・。「これが戦争さ」 DVD検索「ラストフロント」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年08月15日
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いよいよ「男たちの大和」DVD発売ですね。男たちの大和 特別限定版(初回限定生産) 私もすでに入手済みですが、どうせ買うなら限定豪華版をお薦めします。特典DISC2枚付きで「秘録・大和伝説」なる豪華ブックレットとフィルムしおりもついています。ブックレットと、しおりは・・・・どうでもいい感じですが、特典ディスク2のメイキングシーンや大和生存者インタビューなどはなかなか良い物です。私はこれまで一度も映画人になろうと思ったことはありませんでしたが、今回ほど映画人のことを羨ましいと思ったことはありませんでした。 さて、この発売を記念して地元の本屋で、なんと撮影に使用された三連装機銃が展示されています。撮影会もあるそうなので行ってみようかと思います。本屋の入り口にいきなり機銃が置いてあってびっくりです。 話は違いますが本屋で写真と地図で読む!知られざる占領下の東京なる本を見つけました。すでに写真と地図で読む!知られざる軍都多摩・武蔵野写真と地図で読む!帝都東京・地下の謎写真と地図で読む!知られざる軍都東京が発売済みですが、いいですねえこの本。掲載されている建物の多くは行ったこともあるものですが、こうした建物を当時を想像して巡るのも面白いですね。また、こうした建物のNゲージミニチュアでも出してくれればジオアラマが作れるなと妄想したりして。 地方に行けば地方の占領建物があるので、そうしたものも記録できればいいなあと思ったりもしています。
2006年08月13日
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ご心配をおかけしております 病状もやや安定してきましたが、どうも視力をかなり失っているようで、全治まで1年かかるかも知れないと言われました。1週間目が見えず寝たきりだったので、さすがに飽きました。何もすることが出来ないのもつらいものです。 で、ぼちぼちと復活ののろしを上げていきたいと思いますので、よろしくお願いします(まずは、恒例の書き置き映画レビューからですが・・・・。 1969 大映 監督:臼坂礼次郎 出演:フランキー堺、伴淳三郎、若水ヤエ子、成田三樹夫、春風亭柳橋、梅津栄ほか 80分 カラー 春風亭柳昇の実体験原作をもとに製作されたコメディ映画「与太郎戦記」の第2弾。舞台は中国大陸から日本国内へと移る。落語家出身の一等兵(昇級した)秋本与太郎を演じるフランキー堺の名演技は健在で、周囲の脇役も含めて全編に笑いが満載だ。本作は大きく前半の中野学校入隊編と後半の部隊長当番兵編の2つに分かれる。どちらも面白いが、前半の中野学校はとある誤解で陸軍中野学校(スパイ学校)に入学した与太郎が、偶然と勘違いで訓練をこなしていく過程に爆笑できる。後半の部隊長当番兵編は部隊長の正妻と二号さんの間で哀れな与太郎が振り回され、果ては偽装結婚までという、おとぼけぶりが笑いを誘う。ただ、後半の方がやや皮肉めいた部分が多いので、大人向きと言った感じか。むしろ、中野学校部分だけで構成しても良かったかも知れない。 部隊長は伴淳三郎。威厳のある反面、女房に頭の上がらないおどけ役。ヤクザ映画でもお馴染みの成田三樹夫も中野学校教官の渋い演技。フランキー堺とのマッチングが良い。もちろん、本作にもおかまの6年兵田熊も登場。相変わらず気持ち悪い(笑)。 ちょっと驚いたのは、輸送用トラックに結構旧式のものが使用されていることと、一瞬だが野砲が写っていること。兵器が歩兵銃以外はほとんど登場しない本シリーズにしては珍しい。 興奮度★★ 沈痛度★★ 爽快度★★★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 元の部隊0165部隊に戻った与太郎だが、突然憲兵隊中佐から呼集がかかる。何を悪い事をしたかと心配する与太郎だったが、なんと「靖国神社へ行け」との命令だった。てっきり死ねとのことと勘違いした与太郎だったが、実は陸軍中野学校へ入校しろとのことであった。 中野学校では矢吹少佐、教官の伍長のもと様々な訓練が行われる。もともと知能も体力もどうということない与太郎だったが、並み居る秀才たちを偶然と幸運で優秀な成績を残す。とはいえ、暗号や鉄棒はどうにもならず、教官らも与太郎が優秀なのか、駄目なのか理解に苦しむのだった。伍長は与太郎の経歴書から与太郎の特技がロシア語であると知り、与太郎がロシアのスパイとして破壊工作をしているのではないかとの疑念を持つ。与太郎を呼んで詰問したところ、何の事はない「露語」という文字は「落語」の間違いだったのだ。与太郎が中野学校に呼ばれたのもこのためだったのだ。 晴れて一般部隊に戻された与太郎は東部第六二部隊に入隊する。そこには料亭の若旦那(二等兵)ら新兵がいた。若旦那は上官である与太郎に敬語を使わず、しばしば与太郎ともども怒られるはめに。ある時歩哨に立っていた与太郎は、馬の扱いがうまいことから柳川部隊長の当番兵を仰せつかる。 柳川部隊長は本宅の本妻のほかにすみ江という二号さんを囲っていた。本妻は軍司令官の娘であり、絶対に2号の事は話してはならないと、固く口止めを食らっていたが、与太郎が幼馴染みの千恵子と逢っているところに本妻の貞子夫人がやってきてしまう。柳川部隊長は這々の体で逃げるが、すみ江は出任せで与太郎の妻だと言ってしまう。それを真に受けた貞子夫人は与太郎とすみ江が入籍していないと聞き、仲人を申し出て結婚式の段取りを進めてしまう。 千恵子さんには誤解で逃げられ、部隊長からは形式だけだから頼むと言われ、与太郎も困ってしまうが仕方がない。結婚式の当日、若旦那が付添人としてついてきて無事に祝言が執り行われる。後ろ髪を引かれながら部隊長夫妻が帰宅したあと、すみ江は与太郎を誘ってくる。それに怒った与太郎は帰営して部隊長にすみ江の不貞を報告するのだった。 かくして、師団司令部から出動命令が下り、部隊も南方への船上にあった。12/8開戦の夜の事であった。 DVD検索「続・与太郎戦記」を探す(楽天) 与太郎戦記原作かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別おまけレンタル屋で見かけてから発売を待っていた映画「バトル・オン・フロントライン USマリーン 要塞奪還指令」ですが、どうもセル用発売がないようで、中古品で売られていたので購入しました。確か、第一次大戦もののはずです。レア作品なのでお勧めかも。\788(中古)
2006年08月11日
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1965 アメリカ 監督:ベンハルト・ヴィッキ 出演者:マーロン・ブランド、ユル・ブリンナー、ジャネット・マーゴリン、トレヴァー・ハワードほか 124分 モノクロ 体調が優れないのと、仕事が忙しいので本当に戦争映画シリーズと化しています。しばしご勘弁。 第二次世界大戦時に日本からヨーロッパへ生ゴムを輸送するドイツ貨物船を、英軍が奪取しようと工作員を送り込むというヴェルナー・ヨエルク・ルエデッケの小説の映画化。ストーリーは意外性とサスペンス性に富んでいるが、さほど面白く練られているという印象はない。というのも、内容がかなり重く暗いのだ。登場する英、米、独軍ともに決して良いようには描かれておらず、厭戦的メッセージが強いように思う。複数の反戦的主人公の言動が全てを物語っており、風刺的色合いが強い。スパイ(工作員)と爆発物も登場するが、アクション性はほとんどなくどちらかというと心理戦がメイン。 本作で光っているのは、やはりマーロン・ブランドの渋い演技。厭戦的ドイツ人がSS将校に化けて船に乗り込むのだが、その役柄に合っているかどうかは疑問だが、口をあまり開けずに低い声で唸るのにしびれた(笑)。対するドイツ貨物船船長役にはユル・ブリンナー。ロシア生まれらしい顔立ちとスキンヘッドはドイツ軍の潜水艦長役にもはまりそうだが、本作の船長役もなかなか良い。ユダヤ人少女役にはジャネット・マーゴリン。整った顔立ちに大きな瞳にそそられるが、役柄の悲惨さはしのびない。 映像の多くは貨物船上となっており、貨物船の上部構造、機関室内部の構造も良くできている。複雑で雑然とした機関のイメージがよく出ている。モノクロなのであまり目立たないが、結構大規模なセットを用意したのではないだろうか。爆破シーンは特撮であろうが、あまり違和感を感じさせない出来。ただ、船内に仕掛けられている爆破装置はなんだかチープだし、拿捕を恐れての自沈装置のつもりなんだろうが、ストーリー的には理解しづらい。 また、日本軍の潜水艦も登場するが、搭載砲や艦橋の出来具合から、一部本物のアメリカ軍潜水艦上で撮影しているかもしれない。さらに、一瞬だが、日本軍潜水艦の浮上シーンの記録映像も挿入されているようだ。映画の冒頭には日本の街並みも登場するのだが、どこで撮影したものだろうか。 アクション性とか、スパイサスペンスを期待していると思い切り裏切られる。自己都合ばかりの軍隊の汚さと、登場する人々のエゴが辛辣に描かれており、結構気が重くなる。頑なに信じるものと従わざるを得ないものの矛盾と対立が強調されている。唯一の女性エスター(マーゴリン)を取り巻く男達の欲望や、いかにも善玉のような存在でありながら、敵対する男が溺れるのを助けようともせずにせせら笑う男など、そこには善玉や悪玉という区別はない。人間のエゴがことさら強調されるのだ。 こうした毒々しい作りは1960年代に流行っていたのだろうか、イメージ的には同じく艦船サスペンス「駆逐艦ベッドフォード作戦」と同じ系統のような気がする。 興奮度★★ 沈痛度★★★★ 爽快度★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1942年の日本。ドイツ海軍ミューラー大佐はドイツ大使館に呼ばれ、日本からフランスへ生ゴム 7,000トンを運ぶ貨物船インゴ号の船長を命じられる。しかも、船員の多くは前科者たちであり、ミューラーは憤慨するがウェンデル提督は、かつて酒によって魚雷を食ったという失態を盾に強要する。この航海は途中で連合軍の攻撃も予想され、万が一の時のために船内に爆薬をセットしていた。 ドイツから厭戦のためにインドへ逃げてきていたクレインは、英軍のスタッター大佐に会う。大佐はクレインにインゴ号へスパイとして乗り込み、生ゴムを奪取する作戦に協力するよう強要する。断るクレインだったが、ドイツSSに所在を売ると脅迫され、やむなく引き受ける事に。 クレインはSSのカイル大佐を名乗ってインゴ号に乗り込む。厭戦家のミューラー船長とは端から折り合いが悪いが、ナチ党員の副官クルーゼとは懇意になることができた。また、船員として乗り込んだ政治犯のロバら複数の反抗分子は途中で船から脱走する事を画策していた。クルーゼの信用を勝ち取ったクレインは破壊分子の調査と銘打って、船内中の爆薬の在処を聞き出す事に成功する。 その爆薬装置を破壊してまわる矢先にインゴ号は連合軍の護衛船団に遭遇してしまう。英軍貨物船に偽装したインゴ号はうまく騙せたと思った矢先、クレインが汽笛を鳴らす。汽笛に気づいた英軍艦艇は停船を命じるが、その瞬間英軍艦艇は日本軍の潜水艦によって魚雷攻撃を受ける。英軍船団は退散し、インゴ号は難を逃れる。その一連の行動を見ていた政治犯のロバはクレインに真意をただし、船の乗っ取り計画の協力をすることとなる。 その後、接触した日本軍潜水艦にはドイツ軍ウェンデル提督が乗船しており、撃沈したアメリカ艦船の捕虜をインゴ号へ移送するために乗り込んでくる。ウェンデル提督はカイルSS大佐の存在を疑いを抱く。のらりくらりと話術で逃れるクレインだったが、ドイツ本国への照会をかけることとなり、24時間後にはばれることが必至となる。 クレインとロバはアメリカ軍捕虜の協力を得ることを計画し、その説得役に捕虜と一緒に連れてこられたユダヤ人少女のエスターを取り込む。エスターは本国で親兄弟を殺されたうえ、ドイツ兵のレイプを受けていた。船長のミューラーは親切に接するが、傷ついた心は癒えなかった。エスターは倉庫に閉じこめられていた米人捕虜を説得するが、捕虜達はエスターを犯してしまおうとして混乱する。エスターは自分の身を好きにしてもいいからクレインらに協力するようお願いする。 ミューラー船長の息子が魚雷艇で功績をあげる。しかし、その撃沈したのが病院船だと知り、ミューラーは飲酒して暴れる。日頃からミューラーを気にくわなかったクルーゼは指揮権を取り上げてミューラーを監禁する。さらに、ウェンデル提督からカイル大佐は偽物と知らせる。 一方、クレインらも反乱を発起する。しかし、多勢に無勢で間もなくドイツ船員側に鎮圧される。抵抗したエスターはクルーゼに額を撃ち抜かれる。それを見たクレインは船の爆破装置を起動させて爆破することを決意する。迫り来る追っ手から逃げながら、爆破装置を復旧し、ついにスイッチを入れる。 爆破されたインゴ号は傾斜を初め、クルーゼは退船を命じる。船員らは次々に海に飛び込み、クルーゼも海に入るが救命ボートに近づけない。政治犯のロバがおいでおいでしながら遠ざかっているのだ。ついにクルーゼは溺れて海中に没する。 インゴ号にはミューラー船長とクレインが残っていた。インゴ号は大きく開いた穴をラード油が封じて沈没を間逃れていた。連合軍に連絡をとって欲しいと頼むクレインに、ミューラーはドイツに忠誠を示して断るが、信じるものがあってうらやましいと言うクレインの言葉に、ついに連合軍へ打電を始める。 DVD検索「モリツリ」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年08月04日
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1987 香港 監督:デヴィッド・チャン 出演者:ミシェール・ヨー、松井哲也、リチャード・ウンほか 92分 カラー これを戦争映画の仲間に入れてしまったことを後悔しているが、いわゆる第二次世界大戦の抗日戦を背景にしたカンフーアクションコメディー。香港アクションにストーリーやリアル性を求める事自体愚かな行為だが、本作は特に内容、アクションともにつまらない。インディ・ジョーンズの映画に影響を受けて製作されたとも言われる。 主演の女版インディ・ジョーンズにはアクション女優として先駆け的なミシェル・ヨー(キング)。元はミス・マレーシアでバレリーナという経歴をもち、最も油に乗った時期。女性とは思えない徒手やムチなどの拳法技は凄い。対する悪役日本軍大佐役にはアクション指導でも知られる松井哲也が直々の出演。しかし松井自身がアクションを披露する事はほとんどなく、単に役者としては3流なのだろう、かなり変な日本人になってしまっている。 ストーリーはブータンのカイ城というところに日本軍が毒ガス工場を造ろうとするのを、中国軍スパイと住民が阻止するために戦うといったもので、まああり得ない設定に展開でかなり興ざめ。お楽しみはやはりカンフーになるのだろうけど、設定が第二次大戦という銃器の発達した時代ともなると、銃対徒手という無茶な設定や不自然さが特に顕著になる。その点同じ現代戦カンフーで言えば、同年作の「イースタンコンドル(1987)」のほうがずっといい。カンフー映画ってのは、「悲壮感」があってなんぼのものと勝手に思っているのだが、本作はとにかく暢気なカンフー使いがあっけらかんと戦っているのがつまらない。処刑寸前だというのにニコニコしているのはいかがなものか。学芸会のような演技とノリで、緊迫感がゼロでは締まらない。 本作で唯一の収穫と言えば、登場する兵器類。主人公のミンミンは女性パイロットという設定であり、なんと複葉機(デハビランドDH.82タイガーモス)と零戦(T-6テキサン練習機改造)が空中戦を繰り広げる。派手な空中戦とまではいかないが、なかなか見物だ。このほか、ラスト間際に日本軍の戦車が2台登場するのだが、これはM24チャーフィー軽戦車。全くの改造なしでの登場のようだが、ロケ地が香港と台湾ということなので、台湾陸軍からの借用のような気もする。 総合的には、まあ期待もしていなかったけど、その予想も裏切らない程度の出来であった。 ちなみに突っ込んでも仕方がないとは思うが、登場する日本軍で変な所。日本兵の武器の一つして日本刀がしばしば登場するが、刀の使い方はまるでカンフー。蛮竜刀じゃないんだから。さらに、その刀使いの兵達は特別に黒服を着ており、刀は背中に背負っている。それは忍者だね。しかも、その黒服って・・・・普通の詰め襟学生服だよね。顔つきはどうみても中国人のサラサラヘアーのワンレン髪の学生さん達が、学芸会で走り回っているようにしか見えないのは・・・ちょっと。日本軍の正規兵の軍装はちょっと変だけど許容範囲。階級章だけはきちんとストーリーと合っているところが笑えた。あと、日本軍指揮官は、日本語字幕では松井大佐(襟章も大佐)だが、英語版なんかではGeneral Togaとなっている。 興奮度★ 沈痛度★ 爽快度★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1938年、ブータンのカイ城。その太守ヤウダの元に、進駐してきた日本軍の松井大佐がやってくる。この地に毒ガス工場を建設するため、協力しろというのだ。ヤウダは表向きは協力するふりをしながら、設計図等を持ち出して中国政府に保護してもらおうと画策する。 一方、カイ城周辺に中国政府の特務員「天字1号」が潜入していた。日本軍の捜索をかいくぐりながらヤウダと 接触を試みる。 女パイロットのミンミンは軍閥フツ親分の孫娘で、なかなかのカンフー使いである。おじの所に戻ったミンミンに中国軍のロン大将が訪れ、天字1号と接触し、ヤウダを救出してきて欲しいと要請する。ミンミンは快諾し、天字1号の証明のために時計を巻いた伝書鳩を飛ばす。 しかし、鳩は天字1号には届かず、詐欺師のウォンに渡ってしまう。カイ城に向かったミンミンの複葉機は途中で日本軍の零戦に遭遇し、見事撃墜するが、自らも被弾して不時着。徒歩で向かった先であの腕時計をした詐欺師ウォンに出会う。 てっきり詐欺師を天字1号と勘違いしたミンミンは、追われる詐欺師を助けるが、日本軍に捕らえられそうになった所を本物の天字1号に助けられる。こうして、詐欺師も仲間となり、3人はヤウダ救出に向かう。 不審者侵入の報が入り、城内が慌ただしくなる。ヤウダとヤウダの恋人チンチンを連れて3人は脱出を図るが、飛行機の燃料を奪おうとしている間に、逆に捕らえられてしまう。 ヤウダは松井大佐からミンミンら3名を反逆者として処刑するよう命じられる。しかし、ヤウダは命令を拒否し自らも処刑台にくくりつけられる。チンチンが嘆願に走るも、チンチンまでもが処刑台に縛られる。 もはやこれまでと思われたとき、見守っていた群衆の中から「ヤウダ」コールがわき上がる。そして処刑に関わっていた兵士達もが「ヤウダ」コールを叫び、松井大佐ら日本兵に襲いかかる。 日本軍は這々の体で撤退するが、再び大攻勢をかけてくるのは時間の問題だった。ヤウダやミンミンらはカイ城に立て篭もって抗戦する事にする。松井大佐ら日本軍がやってくる。多勢に無勢、武器もほとんどないヤウダらはは次第に劣勢に陥っていく。さらに、松井大佐は年老いた老人達を盾にする。しかし、老人達の身を挺した反抗で逆に松井大佐らが苦境に陥り、松井大佐は捕らえられる。 ミンミンは松井大佐を殺そうとする兵を制し、「攻めても無駄だと伝えよ」と松井大佐を解放する。松井大佐はミンミンに「もう大軍が迫っている」と言い、唯一生き残る方法を示唆して去る。 日本軍の大軍が到着したとき、カイ城は炎上していた。もはや利用価値がないと判断し、日本軍は帰っていく。 DVD検索「中華戦士」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年08月03日
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1960 アメリカ 監督:ジョン・ウェイン 出演:ジョン・ウェイン、リチャード・ウィドマーク、ローレンス・ハーヴェイほか 190分 カラー 今年も8月になりました。今日は具合が悪くて自宅(自主)待機です。8月15日の終戦記念日を迎えるにあたり書きためた戦争映画レビューの大放出月間に入ります いわゆる西部劇に該当するが、メキシコ政府とテキサス独立派の戦いということで一応戦争映画の仲間入り。アラモの戦いとは1863年にテキサス州がメキシコ領であった時代に、テキサス独立を掲げてメキシコ軍と「アラモ砦(教会)」に立て籠もって戦った史実である。アメリカ人にとっては、南北戦争と並んで忘れられない愛国の戦争でもある。 本作は、ジョン・ウェインの主演・監督・制作という一人舞台だが、映画会社からも断られてもなお「アラモ」を作りたかったというジョン・ウェインの熱意あふれる力作である。テキサスの現地にアラモ砦を制作してまでの撮影であり、3ヶ月余りの撮影期間に2,000頭以上の馬と人員を集めた、当時としては超大作の部類である。そのため、上映時間も3時間を超える作品となっており、やや冗長感は否めないが、十分に楽しめるだけの内容とはなっている。エピソードのほとんどは史実(一部伝説)に沿って作られているが、細かい設定や人物像は若干脚色もあるようだ。主人公となるデイビー・クロケット大佐、トラビス大佐、ジム・ボウイ大佐の3人の死に方や、有名な「線引き」のシーンがないなど、ジョン・ウェインの作品への思い入れが良くわかる。 本作を見て驚いたのは、決して内容がアメリカ愛国的に傾倒しているわけではないこと。確かに、アラモ砦の180人余りのアメリカ人たちは勇者ではあるが、敵側であるサンタ・アナ大統領のメキシコ軍も勇敢で、義理・人情豊かなシーンがしばしば登場する。この辺りは見ていて気持ちがいい。ただし、史実的には砦の生存者もサンタ・アナに処刑されているし、本当のところはどうであったかわからない。 時代が時代なので、戦闘シーンはやや退屈。人馬が多数登場する攻防戦はそれなりに迫力はあるけれど、緩慢な槍兵や騎兵の動きは変。こうした戦闘シーンの演技指導もジョン・ウェインだったというから、一人では手に負えなかったのだろう。ただ、逆にその稚拙さが60年代という時代を感じさせて、良い味を出しているとも言えるが。 デイビー・クロケット大佐はクロケット帽という獣のしっぽがついた帽子でも有名だが、下院議員も務めた豪傑をジョン・ウェインが演じている。年頃もちょうど50歳程で適合していたようだが、個人的にはジョン・ウェインの演技は好きではない。西部劇にも合わないし、クロケットの印象とも違うような。一方、生真面目なトラビス大佐役は美形のローレンス・ハーヴェイが演じており、いかにも軍人役がはまっている。ボウイ役のリチャード・ウィドマークはまさに西部劇役者そのもの。こう見ると、3人の個性が良く表れているとはいえ、ちょっと全体のバランスには違和感を覚えた。ジョン・ウェインの映画だからジョン・ウェインへの比率が高いのは仕方ないが、それならそれでクロケットの伝記にしてしまったほうが素直だったろう。 とはいえ、全体には結構楽しんで見ることが出来た。ただ、日本の江戸時代のように、すでに我々現代人の感覚とはずれた時代の話であり、見る前にアラモ砦の歴史について少し勉強しておくとよりいいと思う。 興奮度★★★ 沈痛度★★★★ 爽快度★★★ 感涙度★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1836年、テキサスはメキシコ領としてサンタ・アナ大統領の統治下にあった。しかし、アメリカ系住民の多いテキサスでは独立運動が起こり、サンタ・アナ大統領のメキシコ軍との間で攻防戦が始まっていた。 テキサス軍はヒューストン将軍のもと態勢を整えようとするが、大勢のメキシコ軍にはるかに劣っていた。そこで、ヒューストン将軍は、トラビス少佐を急遽大佐に昇格させて廃教会を砦に仕立てた「アラモ砦」の守備につかせて、時間稼ぎを計画する。 サンタ・アナの軍勢は数千名にもなるが、トラビスの隊はたった27名しかいなかった。元の隊長ジム・ボウイ大佐はボウイナイフの発明者で勇敢だが、くそ真面目なトラビスとは馬があわなかった。そのボウイ大佐には義勇兵100名がついていた。トラビスはボウイにも助けて欲しいと素直に言えない。 一方、サンアントニオの町にテネシー州からやってきたデイビー・クロケット大佐ら20名あまりのテネシー兵がいた。クロケットは素手で猛獣と格闘したり下院議員を務めたりと伝説の男である。トラビスはクロケットの元を訪れ、共に独立戦争を戦うことを頼む。クロケットは巧みに部下の戦意を煽り、テネシー男らは自らの意志でアラモ砦の守備に参加する。 意見のあわないボウイ大佐も、クロケットが砦に入ると仕方なく砦に入る。こうして180名あまりの男達がアラモ砦の守備につく。 メキシコ軍の大軍がついにやっきて、砦を包囲する。サンタ・アナは砦に降伏を呼びかけるが、トラビスは大砲を撃って拒絶する。メキシコ軍は射程の長い大砲を保持していたため、ボウイは勝手に夜襲でこれを破壊する。しかし、この勝手な規律違反をトラビスは厳しく咎める。また、数日して、ボウイのもとに手紙が届く。敵側と密通していると厳しく咎めるトラビスだったが、実は手紙がボウイの妻の病死を伝えるものだったと知り、次第に二人の間に和解の気持ちが芽生え始める。 さらに数日経ち、食料が腐り始め赤痢が発生し始める。そのため、ボウイやクロケットらは敵陣地の牛を夜闇に紛れて奪取する。 籠城から10日がたち、いよいよメキシコ軍の総攻撃が始まろうとする。サンタ・アナは城内の婦女子ら非戦闘員の脱出を勧め、トラビスらはそれに従い婦女子を城外に出す。しかし、トラビスの副官の大尉の妻子だけは城内に残った。 メキシコ軍の攻撃は最初は正面だけであり、大損害を出して撤退する。だが、次は四面から攻めてくるのは間違いない。さらに、頼りにしていたファニン大佐の援軍が来ない事が判明する。もはや、守備隊の全滅は時間の問題だ。トラビスはクロケットやボウイの城外脱出を認めるが、全員残る事を選択する。 そして包囲から13日目。メキシコ軍の猛攻撃にトラビス、クロケット、ボウイら全ての守備兵は戦死する。城内で唯一生き残った大尉の妻子が馬に乗って砦を後にする。帽子を脱いで見送るサンタ・アナ。そして、アラモ砦の全滅を知ったヒューストン将軍は、決して彼らを忘れるなと部下を鼓舞するのだった。 DVD検索「アラモ」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年08月02日
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2005 日本(よみうりテレビ、日本テレビ)テレビドラマ 監督:渡邊孝好 出演者:反町隆史、飯島直子、吹石一恵、勝村政信ほか 106分 カラー こんな日本人がいたのだということ知り、改めて杉原氏の行動と業績に敬意と感銘を受けた。恥ずかしながら、私の世代では杉原氏の業績はほとんど教育されてこなかったため、私自身はほとんど杉原氏についての知識はなかった。何せ外交官として人道的功績をあげた彼に対して、外務省が人道的外交官と認めたのは 2000年になってからだというのだから。しかし、それだけ戦後に冷遇され、苦難の道を歩んだ杉原氏がこのようなドラマとなり、我々の心に感動と勇気を刻みつけてくれたのだから感謝せねばならないだろう。 本作はテレビドラマとして製作されており、画質やカメラワーク、演出、背景にいたるまでややチープ感は否めない。また、主役の杉原千畝役が反町隆史、妻役が飯島直子と安直な配役だったため、映画仕立てとしてはかなり減点要素ではある。飯島直子の純日本人的良妻賢母ぶりはなかなか堂に入ったものだが、あまりに美しすぎて逆に違和感があるし、反町の派手でベタな演技は苦笑ものだ。しかし、その役者の演技力不足という致命的欠点を補うだけのドキュメンタリー性と感動がある。 杉原千畝氏については「杉原千畝記念館」もあるし、「杉原千畝生誕100周年記念事業委員会」のホームページに詳しいので割愛するが、かなり史実に忠実に構成されているようだ。へたな脚色もなさそうだし、登場人物についても実名で登場している。リトアニア領事館からの退去を命じられ、汽車にのる寸前までビザを発給し続ける姿は感動ものだ。ドイツとの同盟が結ばれようという時に、外務省からの命令を無視してまでもビザを発給する決断は立派である。ただ、これも1940年と大戦初期というまだ穏やかな空気の時代であったからだろう。もっと後の時代であったら杉原千畝と言えども手が出せなかったかもしれない。 千畝が出した2,193枚のビザで6,000人余りのユダヤ人がソビエト経由で日本に上陸したという。ドイツに殺されたユダヤ人の数からすれば、決して多くはないが世界にこれだけの数のユダヤ人を救った人がいるだろうか。日本人として誇りに思う。ちなみに、杉原氏は1974年に「イスラエル建国の恩人」として、1985年に「諸国民の中の正義の人」としてイスラエル政府から表彰されている。 日本のテレビドラマなので兵器類は一切出てこないが、戦争の裏舞台として知っておいて損はない映画であった。 興奮度★★★ 沈痛度★★★★ 爽快度★★★ 感涙度★★★★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 貧しい家に生まれた杉原千畝は大学を中退し、外務省に入省する。堪能なロシア語を生かし1934 年には日万ソ北満鉄道譲渡交渉でその手腕を発揮する。 1939年になりソビエト外交官に命じられるが、その手腕を恐れたソビエトが千畝の入国を拒否。千畝は隣国フィンランドのヘルシンキに勤務する事になる。さらにソビエトにより近いリトアニアへ偽名での入国を命じられるが、千畝は堂々とカウナスに領事館を設置する。 カナウスで地元民と交流する千畝であったが、その中にドイツに侵攻されたポーランドから逃げてきたユダヤ人難民がいた。リトアニアはソビエトに併合される事が決まり、千畝の日本領事館も退去を命じられる。 1940年7月18日、領事館の前に日本通過ビザを求めるユダヤ人が押し寄せてくる。ドイツ、ソビエトのユダヤ人狩りから逃れるためには、日本を経由してオランダ領キュラソーへ移民するしか生き残る手がないのだ。審査基準を満たさないユダヤ人の処遇に悩む千畝だったが、本国にビザの発給許可を求める。しかし、時の外務大臣松岡洋右は千畝に興味は示したものの発給許可は出さなかった。ドイツとの同盟をにらんで当然と言えば当然の行為でもあった。 7月28日、ついに千畝は外務省の方針に背いて独自でビザの発給を始める。噂が広がりリトアニア中のユダヤ人が押し寄せてくる。ソビエトの退去命令である9月5日まで移動先のホテル、さらには乗車する汽車のホームでまで発給を続けるが、それでも発給しきることはできなかった。 千畝はその後ルーマニア大使館等で勤務し、捕虜となり、1946年に帰国する。しかし、1947年になって千畝は外務省から解雇される。ビザ発給の件が問われたようだ。外務省を追われた千畝は仕事を転々とし、次男や義妹の死などを経る。 1968年になり、突然イスラエル大使館からの電話がある。大使館に行くと、そこにはビザ発給交渉にあたったユダヤ人ニシェリがいた。手には千畝が発行したビザを持って。二人は固く手を結ぶのだった。その後は幸せだったかと問われた千畝は、「今、幸せだったとわかった」と答える。 DVD検索「六千人の命のビザ/日本のシンドラー杉原千畝物語」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年07月29日
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1973 イタリア・フランス 監督:ジョルジ・パン・コスマトス 出演:リチャード・バートン、マルチェロ・マストロヤンニほか 107分 カラー イタリアは枢軸国側でありながら、その実態はドイツ軍の傀儡下にあった。そのことを示す「アルデァティーナの悲劇」と呼ばれるイタリア人虐殺事件を題材にしたレアな作品。虐殺の引き金となったレジスタンスのドイツ兵襲撃テロ「ラセッラ通り襲撃」事件やこのローマの虐殺事件については多くを知らないのだが、それなりに史実に沿って作られているらしい。登場人物もほとんどが実在していた人々だ。 また、劇中に批判的に登場する当時のローマ教皇はピウス12世であり、ナチスのユダヤ人虐殺にもこのローマ虐殺にも沈黙を続け、虐殺行為を止めるべき立場にありながら、暗に虐殺に加担したと批判される人物でもある。その背景には無宗教のソビエト共産党に対してヒトラーが事実上の防波堤となっていたことや、キリスト教のユダヤ人蔑視があったらしい。 映画はサスペンス仕立てで、イタリア人神父とドイツ軍大佐の駆け引きが見物だが、そのストーリの面白さもさることながら、虐殺事件に関与していく神父とドイツ軍大佐の心の葛藤が痛々しい。先に述べた宗教や人種差別の重みと、誤って投げられたサイは元には戻らないという歴史的繰り返しの事実が、実に重くのしかかってくる。個性豊かな役者と、映画としての娯楽性も併せ持っているため、前半部は決して暗いものではないが、後半になるに連れて事の重大さに気づかされる。ショッキングなエンディングには、久しぶりに息を飲んだ。 映像的には技術的にも決して高度ではない。だが、こうした映画にはこの程度が一番マッチしているのかも知れない。登場人物の顔のアップを多用したこの映画では、是非役者の顔の表情を堪能してもらいたい。 戦闘シーンはほとんど出てこない。キューベルワーゲンが登場する程度。もう少し、この事件の事を知れば細かいところにもっと面白さが潜んでいるかも知れない。 興奮度★★★ 沈痛度★★★★★ 爽快度★★ 感涙度★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください ) 1944年3月22日、絵画の修復を担当しているアントネッリ司祭のもとに、ドイツ軍のカプラー大佐がやってくる。修復させた絵が偽物にすり替わっていたのだ。本来なら即逮捕のところだが、カプラー大佐はムッソリーニ救出作戦の立案もした有能な大佐であり、温情で本物を差し出すことで許すのだった。 ローマのドイツ軍指揮官はクルト将軍で、翌日のファシスト党パレードの計画を立てていた。しかし、非武装中立都市とされていたローマだが、レジスタンス組織が活発化していることを理由にカプラー大佐はそれをやめるよう進言していた。 3月23日、イタリアレジスタンスは行進するドイツ軍中隊に対して、ラセッラ通りで爆薬を仕掛ける。このテロでドイツ兵32名が死亡する。怒り狂ったクルト将軍はヒトラーにイタリア人の処刑を進言する。すでにドイツ軍の敗色を悟っていたカプラー大佐は、戦後の戦犯問題も考慮に入れ、報復処刑は好ましくないとクルト将軍に進言するが、結局ヒトラーの命令という形で320名の処刑が命じられる。しかし、どのドイツ将校も処刑を拒否し、結局処刑執行担当はカプラー大佐に回ってくる。もはや拒否できないと悟ったカプラー大佐は死刑囚を中心に処刑名簿を作成するが、どう考えても足りない。そこで、ローマ警察本部長のカルーゾにも50名の犯罪者リストを提出するよう命じる。誰からも嫌われていたカルーゾだが、死刑に値しない人物の名簿を作ることは苦しみであった。カプラー大佐も同様で、何度も考え直してようやく人数を揃えるのだった。 報復処刑を知ったアントネッリ司祭は、報復をやめさせようと司祭長に掛け合い、さらにローマ教皇に仲介を要請するが、結局ローマ教皇は動かなかった。ドイツが共産主義者の防波堤になっているための保身である。アントネッリ司祭はさらにカプラー大佐にも掛け合うが、カプラー大佐はもはや流れは止められないと呟き、アントネッリにも関わるなと忠告する。 処刑はドイツ軍士官全員で行う事になった。誰もが処刑などしたくはないからだ。処刑は人目に触れないアルデァティーナ洞窟で実施された。連行された 320名余りは軽犯罪者や政治犯も含み、老人から子供までの男子であった。拳銃で次々に銃殺されていく。そんな中、一人のss士官が処刑を拒否した。カプラー大佐は自ら士官を説得し、目の前の処刑者の後頭部に銃を突きつける。振り向いた処刑者は・・・・なんと紛れ込んだアントネッリ司祭であった。一瞬躊躇したカプラー大佐だったが、アントネッリ司祭の頭部を撃ち抜く。 戦後談 カールゾ警察本部長・・・死刑 クルト・メルツァー将軍・・・1946年死刑判決されるが後に刑の取り消し。獄中死。 カプラー大佐・・・1948終身刑。1973年当時服役中。その後、脱獄し故郷で病死。 DVD検索「裂けた鈎十字」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年07月18日
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2004 ロシア 監督:ヴァチェスラフ・ニキフォロフ 出演:ビクトリア・トルガノバ、アレクセイ・チャードクほか 200分 カラー 独ソのスナイパーの孤独な戦いと、ソビエト軍偵察部隊の熾烈な塹壕線を描いた戦争アクションドラマ。近年のロシア映画の特徴を良く出しており、アップテンポな音楽とともに恋愛、ヒューマンドラマを盛り込んでいる。部分的に叙情的な映像箇所も見受けられるが、ソビエト芸術記録映画の系譜は大分薄れ、快活で饒舌なアクション映画となっている。とはいえ、ロシア独特の感情的で悲壮感あふれるストーリーは健在で、ストレートな人物描写と押しつけ気味の音楽チョイスはさすがロシア映画だ。はっきり言って、個性の強い役柄ばかりで感情移入はしずらいが。音楽は日本人から見るとかなりミスチョイスとしか思えない。 全体に様々なエピソードが盛り込まれいて飽きさせないが、ロシア映画全般に言えるように脚本が練られていないためストーリー展開にブツ切れ感がある。主人公も明確になっておらず、女スナイパー、刑務所上がりの二等兵、優秀な指揮官中尉などそれぞれの個性があまり生かされていない気がする。まあ、ロシア映画だからこんなものだろうか。 本作はDVDでは前編、後編の2巻仕立てで、それぞれ2話構成になっている。ロシアではTVムービーだったのだろうか。映像的には随所に凝ったカットがちりばめられている。人物のアップと俯瞰カット、銃弾のスローモーションなどが斬新だ。一方、戦闘シーンはさすがにロシアだけあって迫力があり、白兵戦や飛び交う銃弾音もリアルだ。ただし、アクション映画の傾向は否めず、2挺機関銃の腰だめ射撃などヲイヲイというシーンもあるのだが。 登場する兵器類はそこそこの量があるが、ソビエト軍戦車もドイツ軍戦車もベースはT-72戦車のようだ。ソビエト軍戦車はT-72の砲塔を覆うように模造砲塔が乗っているが、これがいかにもおもちゃっぽい上に、何をモデルにしているのかさっぱりわからない。ドイツ軍戦車はティーガー戦車を目指しているような感じがする造り。 決してつまらなくはないが、ストーリー性を楽しむにしても、戦争アクションや登場兵器を楽しむにしても、中途半端であることは否めない。 興奮度★★ 沈痛度★★★★ 爽快度★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1944年の白ロシア西部。ソビエト軍はドイツ軍と対峙し攻勢をかけていた。元会計士だったイノゼムツェフ少佐の第14連隊のもとに、刑務所から出所したばかりのコーリャ二等兵、優秀な能力を有するマリュチン中尉、歴戦の勇士ベソノフ伍長、そしてドイツ軍スナイパーに対抗するために派遣された射撃の連邦選手権優勝者で女性のオルガ・ポズネエワ軍曹が集められる。 コーリャは脳天気な青年であり、マリュチン中尉とともに敵拠点を制覇した功績でマリュチン中尉が指揮する偵察小隊に配属される。ドイツ軍は目前の丘の上に陣取っており、ソビエト軍にとっては奪取したい拠点であった。さらに、ドイツ軍は優秀な親衛隊スナイパーを配置しており、ソビエト軍将校と捕虜となったドイツ軍将校だけを狙うことで知られていた。ドイツ軍側には知られたくない情報があると予想された。 上層部は敵スナイパーを仕留めたうえ、敵情を探るようイノゼムツェフ少佐に求めた。マリュチン中尉の偵察隊はドイツ軍大佐を捕虜にして連れて帰る。また、オルガはドイツ軍スナイパーの一人を射殺するが、それはエースではなかった。また、通訳のコスチャ大尉と通信兵の女性が懇意となり結婚を求めていたが、コスチャは敵スパイに襲撃されて目を負傷してしまう。 捕虜の大佐からの情報で、ドイツ軍の戦車部隊と地雷原の配置が嘘くさいということがわかる。司令部は一気に攻勢をかけるよう少佐に命ずるが、少佐は慎重に偵察を重ねる事を進言する。マリュチン中尉らは偵察に出かけ、敵のティーガー戦車が木製である事を確認する。一方、オルガはコーリャを助手に敵スナイパーと駆け引きを重ねる。 ドイツ軍の前線には捕虜となったソビエト兵が配置されていた。保安部の大尉は執拗に部隊内の裏切り者をあげようと躍起になっていたが、自らがドイツ軍に捕まってしまい、さらには捕虜となっていたソビエト兵に助けられる。捕虜となっていたソビエト兵を裏切り者として処刑するのかというイノゼムツェフ少佐の問いに、大尉は自らの命を絶つ。 いよいよオルガは敵のエーススナイパーを仕留め、オルガの仕事は終わった。そして、コスチャ大尉とリダの結婚式に沸く陣地からマリュチン中尉らの部隊が決死の突撃に向かう。オルガはコーリャに生きて帰って言う。マリュチン中尉の部隊は丘のドイツ軍陣地攻略に成功する。しかし、塹壕線を死守するには手が足りなすぎた。次第に疲弊し、ついには無線が途絶える。司令部では戦車部隊投入の決断が下される。また、少佐も自ら前線へ向かう。しかし、遅すぎた。戦車部隊が到着した頃マリュチン中尉らは全滅していた。駆けつけたオルガはがっくりと肩を落とすが、その目線の先にただ一人生き残ったコーリャの姿があった。 DVD検索「レッド・スナイパー」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年07月13日
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2005 ドイツ 監督:カイ・クリスチャンセン 脚本:ヴォルフガング・ツラル ドキュメンタリー 52分 カラー ヒトラーの青春と家族の実像を浮き彫りにするドキュメンタリー。意外に知られていないヒトラーの親族たちを関係者の証言等によって描いていく。ヒトラーという権力者に振り回され、ある時はそれを利用し、すがりつき、ある時はそれに反駁する家族の姿がある。近親相姦や重婚なども含め、諸悪にまみれたヒトラー一族が歩んで来た道と、ヒトラー権力の倒壊とともに訪れる一族の悲哀は、実にドラマチックだ。 ヒトラーは権力についてからは、家族の存在をことさら消そうとしたという。神聖な総統というカリスマ性を維持するためには必要な措置であったろうが、それでもなお家族という絆を完全には捨てきれなかったヒトラーの人間性も見えてくる。 本作では、ヒトラーの祖母から兄弟まで8人ほどの親族がメインに取り上げられている。父アロイスは高級税官吏だったが暴力的で若い女に節操がなかった。ヒトラーはメイドだったクララとの間に生まれている。兄のアロイスJrは腹違いの兄で、父と対立のうえ各地を転々と渡り歩いた。ヒトラーはアロイスJrとの縁を切りたがったとされるが、アロイスJrは後に「カフェアロイス」という極右の喫茶店を開き、SS親衛隊員らが集まったという。姉のアンゲラは両親の死後、妹のパウラを引き取るなど苦労したが、後にヒトラーのオーバーザルツブルグの山荘に招かれる。ただ、持ち前の気の強さでしばしばヒトラーと対立し、山荘を追い出される。最もヒトラーが親しくしていたのは妹のパウラであったそうで、同じく山荘に招かれ、ヒトラーからの仕送りを貰っている。しかし、パウラの娘、つまりヒトラーの姪であるゲリはヒトラーに執拗に束縛されて自殺している。このほか、アロイスJrの長男ウイリアム・パトリックはイギリスに渡り、後にアメリカで反ヒトラーの講演をしたりして海兵隊にまで入隊している。一方、次男はドイツ親衛隊に入隊し戦死している。 ドイツ敗北後の家族もまた哀れな生活を送ったようだ。パウラは貧しい生活を送り、ソビエトは躍起になってヒトラーの親族を捜し回って逮捕したという。現在、ヒトラーの正式な相続人が認められているが、一切表舞台には登場していない。 ドキュメンタリーなので、映画としての面白みという点では特徴がないが、長い間秘められてきたヒトラーの家族を知る事で、またひとつヒトラーの謎を解くことができそうだ。 興奮度★★ 沈痛度★★★ 爽快度★ 感涙度★ DVD検索「ヒトラー家の人々」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年07月12日
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1959 アメリカ 監督:ジョン・スタージェス 出演:フランク・シナトラ、ジーナ・ロロブリジーダ、スティーブ・マックィーンほか 124分 カラー 第二次世界大戦のミャンマー戦線を描いたもので、シナトラ、マックィーンのヒーロー的アクションがメインとなった娯楽活劇。同時期に多数作られたアメリカのお手軽3流戦争アクションと同類かと思ったが、意外とストーリー性があって見応え十分。もちろん、史実的なものやリアル性という点では話にならないが。 主人公のレノルズ米軍大尉(シナトラ)は現地カチン族を率いて日本軍に抵抗するのだが、部下に暗号兵ナバホ族がいたり、英軍大尉がいたりと配役も豊富。また、お決まりのヒロイン役にはグラマー女優ジーナが妖しい魅力を見せてくれる。ただ、妙にベタベタするのはやはり好きになれないが。 登場する日本兵はどう見てもフィリピン人。日本兵はとっても弱いのだけれどもさほど悪者には描かれていない。むしろ、同盟国のはずの中国軍(重慶政府)が嘘つき、裏切り、非人道的に描かれているのが興味深い。また、現地カチン族に対する米軍の冷遇ぶりも描かれており、こうしたところに高慢な白人の人種差別が潜んでいることがわかる。 戦闘シーンは機関銃、小銃程度で迫力という点には劣るが、白兵戦シーンはそこそこ楽しめる。主人公らの腰だめ射撃はお約束だが、比較的中心人物も死んでいったりと米軍側が完全な強者になっていない点は評価できる。 登場する兵器類としては、航空機ではセスナモデルT-50軽輸送機(AT-17、C-78ボブキャット)、C-47(DCー3)輸送機が飛行しているほか、スチンソンO-49ビジラント観測機が見える。日本軍側としてはなんとタキシングする零戦(多分)が登場。かなり小さい映像だが本物(リペア)のように見える。このほか地上駐機としてカウルを黄色で塗った戦闘機、攻撃機型の飛行機が見えるが、いずれも該当機種がないのでハリボテであろう。ただ、カウルが黄色というのはいただけないが、陸軍機のような機体迷彩をきちんと施してあったり、第5戦隊と思われる戦隊マーキングが施されているのが興味深い。車両としては軽車両のほかM3装甲車が登場している。 興奮度★★★ 沈痛度★★ 爽快度★★★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1943年11月、北ビルマのカチン丘陵は日本軍と英米連合軍が対峙していた。4万人の日本軍を食い止めているのは、レノルズ米軍大尉とモーティマー英軍大尉が率いる現地民カチン族だった。本隊から孤立しているため、物資は空輸に頼っていた。空輸が来ると決まって日本軍の襲撃があったが、この日も難なく撃退した。しかし、カチン族の若者バイヤが撃たれて負傷。レノルズ大尉は助からないと判断して安楽のため射殺する。 レノルズとモーティマーは、本隊へ救急物資や弾薬補給、医師補充の要請のために出かける。そこで、老紳士レガスに同伴していた美女カーラに出会う。レノルズはすぐさまカーラに惹かれ始める。カーラもまた次第にレノルズに惹かれていく。また、喧嘩早いが頼りになる運転手リンガ伍長(マックィーン)を気に入り、部隊に連れて行くことにする。医師の派遣については大佐から良い返事を貰えなかったが、モーティマーが脳マラリアにかかった際に診察した軍医を無理矢理連れて行く事にする。 ジャングルに戻ると、クリスマスに日本軍の襲撃がある。どうもカチン族内部に密告者がいたようで、若者と娘が処刑される。その際にレノルズは負傷し、アッサム基地の病院に入院する。病院でレノルズはカチン族兵の待遇改善を求めて大暴れする。大佐は渋い顔だが、レノルズに日本軍飛行場の襲撃作戦を命じる。 飛行場の破壊作戦は成功したが、ナバホ族のダナフォースとカチン族のリーダーナタンが戦死する。さらに進軍すると撃破された米軍補給部隊の残骸に出会う。ひどい掠奪もなされており、どうも日本軍の仕業ではないらしい。中国軍の軍閥が中国との国境を越えて侵入したとの判断で、レノルズは独断で越境して中国軍軍閥の討伐作戦を行う。その際に、モーティマー大尉が戦死。かわりにリンガが少尉に任官して指揮を取る。そして、そこでレノルズ大尉らは重慶政府が発行した軍閥宛の侵略者(米軍含む)への攻撃許可書を発見する。重慶政府は米軍を裏切っていたのだ。しかし、米軍司令部は重慶政府の書類を捨てたうえ捕虜を解放して帰還するよう命令する。いわゆる政治的配慮だ。怒ったレノルズは中国軍捕虜を皆殺しにして戻るが、先のカチン族安楽死等の罪も重なって軍法会議に処せられる。 中国政府のチャオ将軍はレノルズの身柄引き渡しと公式謝罪を求める。しかし、レノルズは重慶政府の書類を密かに持ってきており、米軍のスローン将軍は悩む。そして、ついにスローン将軍は中国政府の要請を拒否し、レノルズは無事原隊に復帰するのだった。 DVD検索「戦雲」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年06月28日
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8月の終戦記念日を間近に、スカパー!の戦争映画も増えてきました。恒例の707日本映画専門チャンネルでは、7.8月にマライの虎 1943 モノクロ監督:古賀聖人 出演者:中田弘二/南部章三/村田宏寿/小林桂樹 空の少年兵 1940 モノクロ ドキュメンタリー監督:撮影・編集:井上莞 勝利の基礎 1941 モノクロ ドキュメンタリー監督:演出・脚本:中川順夫 太平洋戦爭の記録 日本かく戦えり 1956 モノクロ ドキュメンタリー翼の凱歌 1942 モノクロ監督:山本薩夫 脚本:黒澤明 特技監督:円谷英二 出演者:岡譲二/入江たか子/花井蘭子/月田一郎 海軍兵学校物語 あゝ江田島 1959 カラー監督:村山三男 出演者:本郷功次郎/ 野口啓二 /小林勝彦 /田宮二郎 あゝ陸軍 隼戦闘隊 1969 カラー監督:村山三男 出演者:佐藤允/本郷功次郎/峰岸隆之介/宇津井健 あゝ海軍 1969 カラー監督:村山三男 出演者:中村吉右衛門/宇津井健/本郷功次郎/森雅之 NHK特集 紫電改 最後の戦闘機 1979 カラー〈一部モノクロ〉 CS初/未ビデオ化/TVドキュメンタリー決戦の大空へ 1943 モノクロ監督:渡辺邦男 出演者:原節子/高田稔/小高まさる/黒川弥太郎 太平洋戦争 謎の戦艦陸奥 1960 モノクロ監督:小森白 出演者:天知茂/菅原文太/嵐寛寿郎/宇津井健 人間の條件 #1-#17(全26話) 1962~1963 モノクロ TVドラマ詳細:#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10、#11、#12、#13、#14、#15、#16、#17 監督:演出:阿部毅/難波敏夫 原作:五味川純平 出演者:加藤剛/藤由起子/根上淳/仁木多鶴子 を放映予定です。マライの虎、空の少年兵、勝利の基礎(いしづえ)、翼の凱歌あたりの戦前モノはなかなかレアです。NHK特集 紫電改 最後の戦闘機も楽しみですし、人間の条件は映画版ではなく、テレビドラマシリーズだそうです。詳しくはこちら 720カミングスーンTVではアルバトロス(1996韓国)デス・フロント(2002英)の2作品があります。どちらもマイナー系ですが、アルバトロスは北朝鮮政治犯収容所の実態がエログロに描かれていますし、デス・フロントは戦争映画と言うよりはホラー映画だそうで、ホラーとしての出来は結構いいのだそうです。怖いモノ見たさで見てしまうでしょう。260シネフィルイマジカでは大通りの店(1965チェコスロバキア)シン・レッド・ライン(1998米)地下水道(1956ポーランド)トンネル(2001独)灰とダイヤモンド(1957ポーランド)を放映します。アンジェイ・ワイダ監督の根暗シリーズ、地下水道や灰とダイヤモンドは必見です。特に地下水道は名作と言われるものですが、そうそう頻繁に放映しないのでチャンスです。
2006年06月25日
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日本映画新社が眠っていた戦前の日本映画を発掘し、リペアしてDVD化している事業で、「戦時下のスクリーン」の続編が登場しました。 日本映画新社HP お値段は結構高めの1万円ですが、DVD2枚セットで超レア作ばかりです。1.『大東亞戰争撃滅戰記』 社団法人日本映画社 1942(昭和17)年2.『一億前進』 加治商會 1941(昭和16)年3.『海行かば』 東京シネマ商會 1937(昭和12)年4.『御大礼觀兵式 代々木』 御大禮謹写團 撮影 1928(昭和 3)年5.『御大礼觀艦式 横浜』 海軍省 1929(昭和 4)年6.『日本ニュース第241號』 社団法人日本映画社 1945(昭和20)年製作:社團法人日本映画社7.『「映画月報」第12號』 社団法人日本映画社 1944(昭和19)年8.『天業奉頌』 社団法人日本映画社 1941(昭和16)年9.『海鷲』 藝術映画社 1942(昭和17)年10.『東亜の黎明』 朝日新聞社 1938(昭和13)年11.『科学立體戰』 軍機械化映画製作所 1939(昭和14)年の11作品が収録されています。『大東亞戰争撃滅戰記』と『天業奉頌』『海鷲』以外は10分程度の短編フィルムで、どれも面白いとか凄いというものではないでしょうが、とにかく国策映画を中心によくぞ残っていたという、レアもの揃いです。 日本映画新社のHPからの通販オンリーです。
2006年06月23日
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1941 アメリカ 監督:ヘンリー・ハサウェイ 出演者:ジョージ・サンダース、ジーン・ティアニー、ブルース・キャボットほか 88分 モノクロ イギリスの植民地ケニアにおける武器密輸、土民反乱とそれを防ごうとするイギリス軍の顛末を描く。製作年からみても、まだ植民地政策への反省など微塵も感じられず、アフリカ黒人への偏見と差別感は否めない。本作の主題は今ひとつ明確ではないが、英軍少佐の献身的活躍を前面に出したサスペンスドラマと言った感じだろうか。どんでん返しとまではいかないが、稚拙ではあるがそれなりの謎解きや伏線などもある。ただ、派手なアクションがあるわけでもなく、全般に間延びした展開はかなりダレてしまう。テンポ良く展開すれば、もっと引き込まれただろう。また、エンディングの牧師の講話ははっきりいって、イギリスの慢心そのものと感じるし不用。製作年を考えればいたしかたないのだろうが。 助演の美女ジア役はジーン・ティアニー。とにかく美人でひときわ目を引く。モノクロだし化粧も厚いのだろうが、これぞまさに絶世の美女なのだ。彼女を見るだけでも満足かもしれない(笑)。それに比べて主役の司政官は今ひとつパッとしない。英軍少佐はいかにも英軍らしい頭の堅さが良くあらわれていて、それなりの存在感がある。 アクションに期待はできないのだが、時折登場する航空機は注目だ。かなりレアな機種が登場し、冒頭でジーンが乗ってくる単発上半翼の輸送機は、明確な機種を同定できるほどの資料が手許にないのだが、イタリアのカプロンca111に似ている。また、英軍少佐が帯同してきた3発の輸送機(爆撃機)は同じくイタリアのサヴォイア・マルケッティSM.75(73)輸送機に似ている。細かい機種は異なるかもしれないが、いずれもイタリア機というのが興味深く、撮影場所はニューメキシコということだが、アメリカにこんな機種があったということなのだろうか。確かに、英領アフリカ植民地にはこうしたイタリア機が運用されていたようであるから、史実に忠実に製作したのか、たまたまなのか・・・ 興奮度★★ 沈痛度★ 爽快度★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 英国の植民地、東アフリカケニアのマニエカ駐屯地。マニエカ地方長官(司政官)のクロフォードの元に補佐役として英軍クームス少佐が赴任してくる。クームス少佐は頑固で忠実な男で、クロフォードがイタリア兵捕虜パリーニを優遇して料理人にしていることが気に食わず、捕虜扱いに戻す。また、駐屯地にオランダ人の鉱物研究者ヤン・カイペンズがやってきて英軍に協力を申し出る。 クームス少佐はナイロビ総督府から土民のシェンジ族に武器が密輸され反乱が企てられているとの情報を得、クロフォードらにその調査を委ねる。シェンジ族から奪った銃はチェコスロバキア製だった。裏にドイツの影があるようだ。 そこに、アフリカ最大の商人アプカリの娘ジアの隊商がやってくる。皆ジアの美しさに惹かれるが、なんとジアはパリーニと旧知であった。その晩パリーニの誕生パーティを開き、ジアも招待するが、その時「ハバリ」と呼ばれる予知迷信が発生する。白人6人のうち1人が死ぬというのだ。その際白人は5人しかいなかったが、デューイが戻って6人になる。さらに、クロフォードはハムドという男に夜襲を受け、ジアが軽傷を負う。ジアの介抱の際にカイペンズがオランダ人ではなく武器密輸商人であることがばれる。カイペンズはジアを仲間に引き入れようと誘い、ジアはカイペンズを探るために同行することに同意する。そのことをパリーニに伝えるが、パリーニはカイペンズに殺されてしまう。 クロフォードもクームスもカイペンズとともに去ったジアが共犯だと信じて疑わない。クロフォードはデューイとともにカイペンズ一味の後を追う。シェンジ族のところで多くの銃を発見し、火を放って燃やす。しかし、クロフォードはカイペンズに捕らえられ、先に捕らえられていたジアと再会する。二人は処刑されようとし、明日はシェンジ族のマニエカ総攻撃という段で、アプカリの隊商に化けたクームスら英軍守備隊が突入する。カイペンズはクームス少佐に殺害されるが、クームス少佐自身も撃たれて死亡する。 ロンドンで牧師をしているクームスの父親が教会で息子の死を讃える。その場には夫婦となったクロフォードとジアの姿があった。 本作はインターネット上でのみ販売してます(ソッピースキャメルHP)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年06月22日
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2006 東映 監督:出目昌伸 出演者:松平健、ブルーノ・ガンツ、阿部寛、國村隼、オリバー・ブーツ、コスティア・ウルマン、大後寿々花ほか 134分 カラー 早速今年の話題作を見てきました。 知る人なら知っている有名な開放された捕虜収容所「板東俘虜収容所」を題材にした作品。板東俘虜収容所は第一次世界大戦時に、ドイツの極東占領地青島要塞で降伏したドイツ兵の一部を収容したものである。父を会津藩士に持つ収容所所長松江中佐の人道的配慮が様々な逸話を残している。是非とも映画化して欲しかった話であった。 ところが、出演者がマツケンサンバの松平健、阿部寛と聞いて、シリアスものはあまり期待できないと感じた。両者ともあまりにコメディ路線の印象が強すぎる。対するドイツ軍総督役にはあのブルーノ・ガンツ。「ヒトラー~最期の12日間~」でヒトラー役を演じた名優である。果たしてこの作品はどうなっていくのか、ちょっと期待と不安が入り交じるのであった。 鑑賞した結果は・・・・感動あり、笑いありで映画としては結構楽しむことが出来た。松平健が扮する松江所長のコミカルな場面には幾度となく笑ったし、顔を隠し民衆に混じって阿波踊りを踊るシーンは、暴れん坊将軍の城抜けそのものである。阿部寛にしても厳つい顔をしながらも、憎めないおかしさが随所に表れていた。また、感動シーンも幾度となくあり、私が一映画で三度以上涙したのは久しぶりである。その感動の主役を担ったのはドイツ人とのハーフ少女役の大後寿々花で、かわいらしい顔立ちに哀愁と奥ゆかしさを見事に演じていた。さすが名子役だけある。 ところが、全体評価が冒頭の★3.5とはどういうことか。それは、本作はコメディ映画ではないだろうということだ。松平は冒頭から最後までコメディのマツケンにしか見えなかったし、奥方役の高島礼子はあまりにはまり役。二人の夫婦役では完全に架空の物語という印象でしかない。もちろん、コメディタッチが映画に入ることは何ら問題ないが、配役があまりにもコメディ寄りの印象だ。他の収容所長役の板東英二はベタな演技だし、上官役の泉谷しげるは言う言葉すらない。これが外国映画で字幕だったなら何でもなかったろうが、もう少し配役はなんとかならなかったのか。また、ブルーノ・ガンツはほとんど存在感なし。あの名優をこの程度の使い方では失礼かな。 もう一つの問題は構成。松江所長一家のストーリーと、ドイツ一等水兵の母への手紙が基軸となっている。しかし、別の次元で起こっているコメディと感動の逸話にすっかり打ち消されていて、ストーリー自体にまとまりがなく、スムーズな時間的進行が感じられないのだ。あと、最大の苦言としては、本作のウリでもあった「ベートーベンの第九」の登場があまりに遅いこと。クライマックスでの登場のつもりだろうが、私としてはおまけ的にしか感じられなかった。その第九がおまけで延々と流されるとなると興ざめだ。しかも、ドイツの映像や、現在の交響楽団の映像などは全く不必要ではなかったか。 また、ブルーノ・ガンツも台本を読んだときに思ったらしいが、日本人を褒めすぎている点。確かに、松江所長の人道的部分が本作の焦点ではあるが、ちょっと良い所どりしすぎの感じ。もちろん、このことは相手のドイツ人にも言えることで、本作全体が良い子ぶりっ子になっているのだ。見ていて「ムルデカ」を思い出した。本作もムルデカも日本人として見ていて心地よいし、好きな作品ではあるが・・・・もう少しうまい描き方があるだろう・・・・ 以上の点で、せっかくの名題材を配役と構成で壊してしまった感がある。本作から伝えるべき事はいろいろあると思うが、どうも出目監督の考えていることがわからなかった。「きけ、わだつみの声 (95)」の監督でもあり、ちょっと本作を作るには力不足だったのではないかな。ドイツ公開を視野に入れて、ドイツに気を遣って表面的な体裁を整えたようにも見える。 冒頭の青島攻防戦シーンは、日本映画にしては珍しくいい。火薬の発火が赤いのはいただけないが、ほんのちょっとのシーンではあったが、日本映画もやるじゃないかと思わせた。軍装類は時代考証はしっかりしているようだが、衣装が綺麗すぎる。また、松平健は衣装がきつそう(笑)。ピチピチの後ろ姿はちょっと可哀想だ(コミカルだけど)。 なお、本作の準主役でもあるカルル・バウム(オリバー・ブーツ)は、その後日本に残りバームクーヘンのユーハイムを興した人でもある。この他にも、板東俘虜収容所には数多くの逸話があるので、その辺りも触れて欲しかったとは思う。本作はドイツでの公開も決まったそうだが、果たしてどのような評価を受けるのか、いささか不安である。 とはいえ、日本人として知っておくべき歴史の一つ。笑えるし、涙できるし見ておいて損はないでしょう。 興奮度★★ 沈痛度★★ 爽快度★★★★☆ 感涙度★★★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 第一次世界大戦の最中の1914年、ドイツに対して日本が参戦する。日本軍はドイツ軍守備隊5,000名が守る中国の山東半島の租借地、青島要塞の攻撃に出る。久留米第18師団を主力とする2万8000名が包囲し、日本軍も多大な損失を出しながらも、わすか1週間足らずで攻略する。捕虜となったのはクルト・ハインリッヒ少将以下の3,900名余りだった。 捕虜は日本に移送され、当初は全国12箇所の収容所に入れられるが、戦争が長引いてきたため、全国6カ所の収容所に集約された。その際に設けられた四国徳島の板東俘虜収容所は久留米についで1,028人を収容する規模となった。 海軍上等水兵のカルル・バウムや一等水兵のヘルマン・ラーケら90名余りは久留米収容所から板東収容所に移動するが、板東収容所の雰囲気は、厳しい待遇の久留米とは想像の付かないほど自由であった。板東俘虜収容所の所長は会津出身の松江中佐で、地元住民との融和を図り、捕虜の外出も自由で、オーケストラあり、パン焼きや新聞、酒なども自由であった。松江所長はドイツ人捕虜を信頼し、彼らから様々な技術を学ぼうとした。その裏には彼の父親が敗北者会津藩士として受けた恥辱と苦しみがあり、敗者へのいたわりの心があったのだ。 ヘルマンは所内で発行している新聞「ディ・バラッケ」の記者として働きはじめ、見聞きすることをドイツにいる母親に手紙にするのだった。一方、カルル・バウムは久留米でも脱走して酷い処罰を受けたにもかかわらず、板東でも脱走を試みる。しかし、傷ついた所を板東の住民すゑ(市原悦子)とたみに助けられ、板東の人々の温かさに触れて心を開いていく。収容所に戻ったカルルに待っていたのは、厳しい処罰ではなく、松江所長のパン職人への斡旋だった。 こうして、捕虜と松江所長、そして住民との交流は深まり、捕虜達の松江中佐への尊敬の念はますます高くなる。しかし、同じ会津出身だが松江中佐のやりかたに不満のあった伊藤少尉(阿部寛)の密告により、捕虜に甘いと上層部に糾弾されてしまう。そのため収容所予算を減らされ、松江中佐はやむなく山を買って捕虜達に木を伐採させたり、家具や生活機器を作らせて販売させる「俘虜製作品博覧会」などして収入を補うのだった。 ある日、青い目をした日本人の少女志をがやってくる。ドイツ人の父親を捜しているのだった。その父親は塹壕の中で日本軍と戦うことを拒否していた男で、そのことが原因でカルルは喧嘩をしていた。しかし、父親は戦死してしまい、検死に立ち会った中尉から形見のロケットを手渡される。志をは松江中佐の家族のもとに身を寄せることとなるが、使用人の宇松は息子が青島戦で戦死したことからドイツ人嫌いとなっており、志をにもつらく当たるのだった。 1918年11月、ドイツが降伏する。戦勝に沸く徳島だったが、板東ではドイツ兵への気遣いからひっそりとしていた。そんな中、ハインリッヒ総督が自決を図ろうとする。自殺は未然に防げたが、ドイツ兵には動揺が広がっていく。松江中佐はハインリッヒ総督に、会津藩士の厳しい生活が誇りだけで支えられていたという自らの体験を語り、生きて兵達に希望と誇りを与えるべきだと説得する。 いよいよ捕虜達は解放され、ドイツへ戻ることとなるが、ドイツ兵たちは感謝の印として、ベートーベンの「交響曲第九番 歓喜の歌」の演奏会を企画する。板東の住民を集めて開催された演奏会ではドイツ兵捕虜と日本人住民の心が一つになっていくのだった。また、カルルは日本に残ってケーキ職人となり、志をを養女に引き取って育てる決意をするのだった。DVD検索「バルトの楽園」を探す(楽天) 「板東俘虜収容所関連書籍」 かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年06月19日
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2005 松竹 監督:阪本順治 出演者:真田広之、寺尾聡、佐藤浩一、中井貴一ほか 127分 カラー 風邪を引いてしまって、おもちゃいじりも何にもできなかったので、連日映画の話と言うことで・・・・今更ながらですが亡国のイージスです。映画は見に行けなかったので、録画していたものを見ました。 福井晴敏のベストセラー小説の映画化で、現代自衛隊が舞台となった架空アクションサスペンス。私は原作を読んでいないが、なかなかの評判らしい。その分、原作信者にとっては、よくありがちなことだが「??」の出来だったようだ。 それはさておき、映画としての出来は、やはりムムといった感じだった。映画前半までは様々な前フリや伏線があって先が読めないドキドキ感があったし、テンポも決して悪くなかった。世間の駄作評ほどひどくないじゃないかと思ったが、問題は後半にあった。監督が替わったのかと思わせるほど、テンポが急ぎすぎとなり描写が即物的、薄っぺらになっていく。せっかくの前半の伏線がほとんど生かされずに、単なるヒーローアクション映画となり、アクションそのものが非現実的でつまらない。かつ人物心情描写も余りにストレートすぎて心に全く届いてこない。主役の仙石先任伍長(真田)や敵役ヨンファ(中井)による言葉の演技に頼りすぎで、そこから膨らむ背景や葛藤心理がとにかく浅い。 思い起こせば、近年の「ローレライ」「男たちの大和」などの日本映画にも共通するのだが、いずれも人物描写表現が実に単純でストレートだ。もちろん、カメラワーク、編集など全てに要因はあるのだろうが、いつから日本映画界は人物描写、心理描写がこんなに下手になったのだろう。数十年前の日本映画は言葉や映像で著さずとも深淵な心理描写を得意としていたはずなのに。これも、視聴者が理解できなくなった?という時代の流れなのだろうか。中年となった私にとっては、最近のストレートな表現はいささかキツイし、何より視聴者側に考える余地がなさすぎるのだ。 後半のアクション部分を作り替えれば趣の変わったミステリアスな作品に化ける可能性もあるだろう。また、せっかく自衛隊の協力を得ての制作だけにちょっともったいない気がする。その自衛隊だが撮影に海上自衛隊イージス艦「きりしま」を提供している。やはり実艦での撮影はリアル感があって頼もしい。ただ、もう少しイージス艦の全景や稼動風景が入っているとマニアとしては嬉しいのだが。残念なのは航空自衛隊のF-2支援戦闘機。予告では真木蔵人がパイロット役でF-2が登場、と華々しく宣伝していただけに、大いに期待したのだが・・・・えっこれだけ・・・という程度。真木蔵人なんてどこに出た?という位で、最新鋭F-2支援戦闘機の機動飛行などはほとんどなし。これなら別にCG、合成だって構わないレベル。 ストーリーとしては、まあ、もとがフィクション小説だから多くは求めないが、敵役北朝鮮人の設定が今ひとつ。原作ではどうだったのか知らないが、その背景設定がぼやかしてあったため、映画の緊迫感が阻害されていた。あと、仙石先任伍長はあれだけ腹撃たれて大丈夫なのか。如月一士も同じ。まあいいけど。ごくごく普通の現代版日本映画でありました。 興奮度★★★ 沈痛度★★ 爽快度★★★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でごらんください ) 海上自衛隊イージス艦いそかぜの下士官、兵をまとめる先任伍長の仙石はごく普通の中年で、年頃の娘がいる。酒を飲んで暴れた部下の後始末も土下座して処理するなど気も休まらない。 東京湾沖へ訓練航海中に出たいそかぜにFTG所属を名乗る溝口3等海佐、山崎2等海尉ら10数人が乗り込んでくる。いそかぜの先任伍長である仙石は副長の宮津2等海佐に呼び出しを受け、いそかぜに特殊破壊兵器GUSHO(グソー)を持ち込んだ破壊工作員が乗艦していると告げられる。FTGの溝口3佐らはその調査に来たといい、それは直前に配置された如月1士だという。 その時、艦底で爆破があり如月1士が立て籠もる。仙石は説得のために如月のもとに向かうが、如月は逆に破壊工作員は溝口3佐(朝鮮名ヨンファ)であると言う。如月は破壊工作を阻止するために派遣されたDAIS隊員だという。俄に信じがたい仙石は隙を見て如月を溝口らに引き渡してしまう。 しかし、ここで宮津副長、溝口3佐(ヨンファ)らの態度が急変。下士官以下は皆退艦しろと命令する。宮津副長以下の士官らもヨンファと共謀だったのだ。宮津3佐は防大生だった息子が、彼の書いた論文「亡国・・」がもとでDAISに殺されたことを逆恨みし、自衛隊のクーデターを企てており、ヨンファはGUSHOとイージス艦を乗っ取って母国へ戻り、国家体制の転覆を目論んでおり、両者の利害が一致していたのだ。そして、宮津副長らは政府に宣戦を布告、同僚艦をハプーンミサイルで撃沈してしまう。さらにGUSHOを東京に撃ち込むと警告しながら、東京沿岸に進路を向ける。 一旦は退艦させられた仙石だったが、爆破された艦底からいそかぜに潜入を図る。また、捕らえられていた如月も隙を見て脱走し、二人はヨンファらに対抗する。艦内では激しい銃撃戦が繰り広げられ、次第にヨンファの部下、自衛官に死者が出始める。仙石は冷酷に銃撃する如月に人間味を持てと諭す。 一方、政府ではGUSHOの存在が公になることを嫌い、GUSHOの開発者アメリカから提供された特殊爆弾 をF-2支援戦闘機からいそかぜに発射して抹殺することを企図する。 いそかぜは刻々と破壊限界線に近づく。三沢基地からはF-2が飛び立つ。艦内では仙石の呼びかけで徐々にヨンファと自衛官の間に溝が生まれ始める。乗っ取り計画を後悔し始めた宮津副長、竹中3佐らはヨンファに抵抗して撃たれてしまう。また、ヨンファの部下、妹のジョンヒもまた命を失う。如月もまた仙石に言われた人間性に躊躇したあまり撃たれてしまう。そして、ついにヨンファと仙石の一騎打ちとなる。 迫り来るF-2戦闘機が爆撃を開始しようとした瞬間、衛星画面にいそかぜの甲板上で手旗信号を送る仙石の姿が映し出される。無事、GUSHOを確保したのだ。ヘリコプターに救出される仙石や如月。もはや停船できないいそかぜは艦内に残った宮津副長によって爆破されるのだった。 DVD検索「亡国のイージス」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年06月16日
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1965 日本 監督:三島由紀夫 出演者:三島由起夫、鶴岡淑子 演出:堂本正樹 28分 モノクロ 二.二六事件に関係する陸軍中尉夫妻が忠義と大義の間で自害して果てるという三島由紀夫の短編小説「憂国」の映像化である。三島自身が憂国を自身の全てを体現した小説というだけあり、三島の人生観、世界観、美意識が凝縮されている。製作後に海外で上映されたのち国内でも上演されているが、1970年の三島の自害の後、庸子夫人の希望により上映が禁止された。コピー版が海外で出回ったこともあったが、夫人の死後、プロデューサーによってフィルムが発見され今回のDVD化に至ったものである。 私はこの映画を見たことはなかったが、幼稚園時代に三島の自決を新聞で知り、「切腹」という行為と「激」というものの存在に激しい衝撃を受けた。その後三島に深く傾倒してゆき、中高生時代には友人の間から三島信奉者と呼ばれるほど、三島の文体や行動を模倣したこともあった。それほど、三島の人生観や思想論に影響を受けた私であるが、突き詰めれば突き詰めるほど、三島の美学と死生観には共鳴出来ない部分が多くなり、若干の距離を置くようになっている。 従って、三島の生き様を凝縮したとも評される本作のDVD化は興味津々であり、語りたいことは山ほどあるのだが、ここではあくまでも映画作品に関する事に限定していきたい。 本作は三島が憂国という作品を自分自身で作り上げたい、という熱情が詰まったものであり、一般的な娯楽映画とは一線を画するものであり、いわば芸術映画という範疇に入るかと思う。映像は日本人の美意識の原点である白黒の世界であり、白が映えるような衣装と背景には日常の生活物品を極力排除した素朴な空間が広がる。撮影セットは完全に能舞台を模しており、場面転換、動きまでもが能の影響を強く感じる。能の持つ空間感覚と時間軸が本作の本質にマッチしたのだという。戯曲を多く執筆した氏ならではの感覚でもあろう。 また、本作は完全に無声映画となっている。三島の小説が往々にして饒舌で理屈的であるのに対し、映画では三島直筆による字幕以外は映像テクニックのみによって表現されなければならない。はっきり言って演じている三島と鶴岡は役者としては一流とは言えないので、全ては映像(空間)と編集(時間)の美意識にかかっており、そこに三島の新たなチャレンジが感じられる。もともと、自身の肉体改造や仕草といった自己陶酔的美意識に情熱を傾けた三島の真骨頂とも言えようか。従って、三島の美的感覚に親しんでいない者が見ると、いささか嘲笑的な場面も多いのではないかと思うが、物理的な「美」ではなく精神的な「美意識」を映像にどう表現するか、という観点で見た場合大変興味深いものがある。本作の場合、中尉の妻役の表情や行動にそれが強く表れているといっても良いだろう。三島はそれを「エロース」と呼んでいる。本作だからこそできたテーマであり、ここまで表現しきった作品は他にはないだろう。 反面、三島扮する武山中尉の方は美とは程遠いものがある。割腹という衝撃的な「グロ」と「死」に対する恐怖と尊厳が表現される。三島の演技力のなさが逆にそれをリアルに際だたせている。吹き出る血潮、溢れ出る内蔵シーンはいささかやりすぎの感があり、個人的には死生観、死の美学といったものを表現するには逆効果だったと思う。ただ、後年三島が自ら割腹して果てるという結末を知る身としては、ここに三島の「美しき死への憧憬」を抑えきれなかった心情を垣間見る。簡単な言葉で言えば「怖いもの見たさ」であるが、切腹という行為について深く思念すればするほど、その実行へ自己を追い込んでいく過程なのだ。 本作のテーマを三島自身は「日本人のエロースが死といかに結びつくか」にあると述べている。ここが私の三島に共鳴できなかった一点でもある。エロースの美と死の美は違うところに発しているというのが私の感覚であり、それを同一の起点に発する三島はやはり世俗を脱した存在なのであろう。 切腹という自殺行為は欧米人には到底理解しがたい行為であろう。切腹とは「死」という結末を導き出す自殺行為というだけでなく、行為の間に藻掻き苦しみ自身の現世を精算するという目的にある。銃や薬に頼れば楽だが、それでは自決の意味が果たされない。言うまでもなく、これは武士道、禅の精神に乗っ取ったものである。それは現世の世俗を断ち切る「潔さ」の表れでもあるが、逆に言えば世俗に生きる庶民には到底出来得ないことなのでもある。 無声映画のバックミュージックは、三島自身が選んだというワグナーの「トリスタンとイゾルデ」。果たして本作に合っているのかどうかは微妙だが、二.二六事件の1936年製作のレコードを買い求めたという凝りようである。 このほか、製作に当たっての三島の意図や経過は三島自身が「憂国・映画版」新潮社で発表しており、今回発売のDVDにも同梱されているので、そちらをご覧いただきたい。なお、DVDには日本版のほか、米版、仏版、仏の別版も付いているほか、台本を収録したマルチアングルにも対応している。 本作は映画としては決して面白いものではない。しかし、少しでも「美」とか「死」というものに興味があるならば、自らを振り返る意味でも、視聴して損はない。作品の背景にあるものを深く思慮すべし。 興奮度★★★★ 沈痛度★★★★★ 爽快度★ 感涙度★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意) 二.二六事件の青年将校の同志であった武山信二中尉は、妻帯者であるという理由で二.二六事件の実行部隊からはずされていた。さらに、武山中尉の所属する近衛輜重大隊は青年将校の討伐隊に駆り出される事となり、天皇陛下への忠義と友人である青年将校への大義の間で揺れ動く。 結果、武山中尉は自決の道を選択し、妻の麗子も一緒に死を決意する。二人は死にあたり情交を結び、中尉は割腹を図り、麗子が介添えを果たす。そして、妻の麗子も夫の後を追う。 DVD検索「憂国」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年06月15日
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いよいよ8月が近づいてきますと、戦争映画の放映が増えてきます。すっかり忘れていましたが、スカパー!でも戦争映画がどーんと放映されます。 その中で、忘れてはならないのが「与太郎戦記」シリーズ。今月の衛星劇場で4部作が全て放映されます。いずれもまだDVDになっていないので、このチャンスに録画しておくといいでしょう。もちろん、私も録画します。フランキー堺 没後10年特集 ザッツ・フランキー!Part2 新・与太郎戦記 6月 14日 23日 28日 87分 続・与太郎戦記 6月 13日 23日 27日 80分 与太郎戦記 6月 12日 23日 26日 83分 与太郎戦記・女は幾万ありとても 6月 15日 23日 29日 85分 このほか、衛星劇場では 人間の條件 第1部 純愛篇 第2部 激怒篇 6月 16日 24日 203分 人間の條件 第3部 望郷篇 第4部 戦雲篇 6月 19日 24日 180分 人間の條件完結篇 第5部 死の脱出 第6部 曠野の彷徨 6月 20日 24日 193分壁あつき部屋 6月 14日 110分も放映されるので必見です。衛星劇場はスカパー!の他にも各ケーブルテレビネット網でもやっているところが多いので見ることが出来る人はラッキーでしょう。特に、続与太郎とか、与太郎女は幾万あたりはテレビで遣ることも極めて希なので見逃すともったいないです。人間の條件シリーズも個人的には原作から嫌いですが、これだけまとまって放映することもそう多くはないのでチャンスでしょう。 壁あつき部屋は巣鴨プリズンでのBC級戦犯の手記の映画化です。かなりレア作品で、放映は本日のみです。私も見たことがないので楽しみです。
2006年06月14日
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そろそろ「男たちの大和 特別限定版」のDVDでも注文しようかと、戦争映画を調べていましたら・・・ちょっと手を抜いている間に凄い量の戦争映画DVDが発売される予定になっていました。 詳しい発売予定は「新発売戦争映画情報」にまとめましたのでそちらをご覧下さい。結構調べるの大変だった・・・・ その中で、わたくしお勧めをご紹介しておきましょう。「男たちの大和 特別限定版」通常版もありますが、この特別限定版は特典DISCが2枚も付いているお得版。大和の資料も付いているそうなので、ちょっと期待。続いて「ラストフロント~1944 英米連合軍マーケット・ガーデン作戦~」「遠すぎた橋」の背景となった作戦でもあり、「バンド・オブ・ブラザース」でも少し取り上げられていますが、イギリスが久しぶりにこの題材を取り上げました。内容は全然知りませんが、結構期待しています。ソニーピクチャーズでは「633爆撃隊」など戦争映画タイトル18作品?このほか「ロスト・コマンド 名誉と栄光のためでなく」「ノルマンディー 将軍アイゼンハワーの決断」「深く静かに潜航せよ」「レマゲン鉄橋」「アンツィオ大作戦」「友よ、風に抱かれて」「未知への飛行 フェイル・セイフ」「日曜日には鼠を殺せ」「戦う翼」「将軍たちの夜」「ナバロンの嵐」「サハラ戦車隊」「マッケンジー脱出作戦」「深く静かに潜航せよ」「大列車作戦」「栄光への脱出」「帰郷」がたった1,000円ちょっとで手に入ります。邦画では終戦記念日を近くにして毎年の事ですが、レア作品が登場します。その中で特に「海兵四号生徒」これは結構レアです。そのうち、スカパーでもやってくれるかもしれませんが、待っていられません!このほか、角川から「軍艦武蔵」「五人の突撃隊」「海軍兵学校物語 あゝ江田島」「あゝ零戦」「あゝ陸軍 隼戦闘隊」「あゝ特別攻撃隊」「あゝ海軍」といったあゝシリーズも出ます。劇場公開最新作では「ホテル・ルワンダ」「ジャーヘッド」「イノセントボイス ~12歳の戦場~」「ナイト・オブ・ザ・スカイ」「ロード・オブ・ウォー」あたりは押さえておきたいところですね。ちょっと変わったところでは「ホロコースト ~アドルフ・ヒトラーの洗礼~」「残酷通信~世界の目撃者~」なんてのもあります。ただ、私はあんまりエグイのは・・・・ということで残酷通信は遠慮しました。誰か、視聴して感想を教えて下さいなー。そうそう忘れてました。既に発売中ですが、私お勧めの作品「最前線」これは朝鮮戦争を題材にしたアメリカ映画です。朝鮮戦争って相当悲惨なはずなのに、韓国が描くと英雄メロドラマになっちゃう。リアルな悲惨さと朝鮮民族の混沌を知るには数少ない洋画しかないのです。初DVDだと思います。このほか「レセ・パセ 自由への通行許可証」「ピエロの赤い鼻」あたりは良作でかつお安くなっています。お買い得でしょう。 なんて感じでポチポチとボタンを押していましたら・・・・・3万円近くになってしまいした 嫁には絶対内緒です・・・・って、商品が届いたらばれちゃうんだよねえ・・・・
2006年06月12日
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1946 アメリカ 監督:ルイス・マイルストン 出演者:ダナ・アンドリュース、リチャード・コンテ、スターリング・ホロウェイほか 117分 モノクロ ハリー・ブラウンの実体験小説「サレルノ・ビーチヘッド」の映画化作品。南イタリアに上陸したテキサス師団の小隊が指揮官を失いつつも、目標の農家奪取までを描いたものである。戦後直後の作品であり、登場人物や兵器類にリアリティを期待したが、本作は全く毛色の違う作品であった。監督は「西部戦線異状なし」のルイス・マイルストンで、彼らしい独自の映像観となっている。 ソビエト記録映画に見られるような叙情詩的な映像も多く、特に太陽と光を意識的に用いているのが特徴。また、戦争アクションはかなり少なく、兵士同士の会話や心情吐露が中心となっており、アメリカンジョークも多用したコメディ調ヒューマンドラマといった感じである。ストーリーの全体的な流れから言えば、シリアスとも取れなくもないが、やはり兵士の多弁に特徴があると言えるだろう。それだけに、戦場のリアリティと言った面ではやや劣り、いかにもテレビドラマ「コンバット!」の映画版と言った感じであり、映画「最前線物語」とも似ているかも知れない(もちろん最前線物語の方はシリアスだが)。 さらに、音響効果と暗めで間接的な映像はサスペンス的な雰囲気も醸し出している。特に、冒頭の小隊長の中尉が顔を負傷するシーンが暗くて良く見えない(つまり想像しろということ)という監督の意図が見えてくる。ただし、これは制作費がチープであったことの裏返しとも取れ、海上の艦船や激戦となっている浜辺の映像シーンは一切登場せずに、黒煙だけで誤魔化している。 本作のメインは兵士間の会話と心情であるが、登場人物それぞれのキャラクターが良く出ておりわかりやすい。特に、機関銃手のリヴェラ1等兵とフリードマン1等兵の会話は、アメリカンジョーク連発で面白い。牧師の息子や農家出身軍曹の心情吐露も興味深いが、内容がディープすぎるかも知れない。また、戦争映画として見た場合、重責に潰されて泣き崩れる第3位指揮官のポーター軍曹、その代わりを務めるタイン軍曹などの行動はちょっと脚色が強すぎるような気がするし単純すぎる。いかにも、戦場の兵士の心情を描いているようでありながら、小説・映画受けするように、意図的に作り上げたようにも見えるので、ちょっと興ざめ。 戦闘シーンそのものについてはかなり適当。冒頭に上陸用舟艇シーンがあるが、暗い映像の中で本物かどうかすらわからない。激しい戦闘となっている(はず)の艦砲射撃や航空機攻撃、さらには激戦と化している(はず)の浜辺は一切登場せずに黒煙と爆音だけで描く手抜きぶり。この映画は兵器が一切登場しないのか、と落胆させるが、実は数は少ないがきちんと出てくる。ドイツ軍機役としてはP-51ムスタング、米軍機役はP-38ライトニングが登場する。ただし、かなり遠方の小さな映像でミニチュアにも見えるが、どうも実機映像らしい。すごい速さで画面を右から左に抜けていくのはリアルだ。ちょっともったいない使い方。 AFVではドイツ軍装甲車が1台登場。アメリカ兵の手榴弾攻撃で横転してしまう!のだが、これはどうもアメリカ軍のM3半装軌装甲兵員輸送車の改造と思われる。フロントグリルはそのままのようだ。この他、撃破されて燃えるII号戦車が登場。しかし、一瞬見える転輪が見たことないようなものであることと、ただ燃えるシーンだけなので模型ではないかと思われる。 全体としては、戦争映画としてはやや冗長であり、ストーリのまとまり具合も余り良くない。ただ、一風変わった戦争映画の一スタイルとして見るには興味深いものがあろう。 興奮度★★★ 沈痛度★★★ 爽快度★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 1943年9月11日、南イタリアのサレルノ海岸に米第36師団(テキサス師団)が上陸作戦を敢行した。そのうちのある部隊で上陸用舟艇上で小隊長(中尉が)敵砲弾で顔を損傷。代わりにハルヴァーソン軍曹が小隊を率いる事となり、大尉(大隊長?中隊長?)との連絡にむかう。 それまでの間、上陸地点で塹壕を掘って待機状態の小隊は完全に孤立し、命令指揮系統が不在であった。 ハルヴァーソン軍曹が帰ってこないため、代わりに第三位となるエディ・ポーター軍曹が指揮を取る。ポーター軍曹はハルヴァーソン軍曹の帰還を待ち続けるが、敵戦闘機の攻撃を避けるために森の中へ隠れることにする。ビル・タイン軍曹だけがその場にとどまり、ハルヴァーソンの帰還を待った。そこに海岸で中尉の看護に当たっていたマクウイリアムズ衛生兵がやってきて、中尉とハルヴァーソン軍曹の死亡を伝える。さらに、戦況を見に行ったマクウイリアムズが敵機の銃撃で戦死する。 一方、森の中でも敵機の銃撃でホスキンズ軍曹らが負傷。ポーター軍曹はハルヴァーソン軍曹の戦死を知って、作戦目標である内陸部の農家の占領を決意する。第一分隊長にクレイマー伍長、第二分隊長にウォード軍曹、第三分隊長にタイン軍曹とし、アーチムボーとカズンスが斥候兵となった。 小隊は道路上を進んで行くと、敵機の銃撃に遭遇し、一名が死亡する。負傷したスミスはその場に置いて、こんどは小隊は水路を進んでいく事にする。すると、向こうからやってくるイタリア兵に遭遇する。ドイツ軍から逃げてきたという。通訳のトラネッラが状況を聞くと、この先にドイツ軍と戦車がいるらしい。小隊はイタリア兵をその場に置いてさらに進むと、友軍の偵察バイクとジープに出会う。先の偵察を彼らに頼むが戻ってこない。 小隊は休憩を取るが、重責に押しつぶされてきたポーター軍曹の様子がおかしくなる。もはやポーター軍曹が指揮する事は無理となり、タイン軍曹が指揮を取る事に。そこに、ドイツ軍の装甲車がやってくる。タイン軍曹は手榴弾で横転させることを計画し、見事装甲車を撃破する。一方、先行に出したバズーカ砲隊は敵戦車を撃破してくる。 いよいよ目標の農家に到達する。ウォード軍曹は部下を連れて偵察に向かう。しかし、農家にはドイツ兵が潜んでおり三挺の機関銃射撃で部下が2名死亡する。途方にくれたタイン軍曹だったが、ウィンディの進言で川へ回って橋を爆破する作戦を決意する。決死の作戦で多くの死傷者を出しながらもなんとか農家の占拠に成功する。 本作はインターネット上でのみ販売してます(ソッピースキャメルHP)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年06月07日
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2005 フランス・ドイツ・イギリス 監督:クリスチャン・カリオン 出演者:ダイアン・クルーガー、ベンノ・フユルマン、ギョーム・カネ、ゲイリー・ルイスほか 117分 カラー ちょっと気になっていたので、東京に行ったついでに銀座シネスイッチで見てきました。結論から言うと、悪くはないけど、きれいにまとめすぎかな。 公式の戦史には残っていないが、イブ・ビュトフ「フランドル地方とアルトア地方の戦い」という書籍に登場する、最前線でのクリスマス休戦と敵兵同士の交流を描いた、史実に基づくヒューマンドラマ。原作を読んだことがないので、どこまで史実に沿っているのか、またはどこまでが史実なのかはわからないが、戦争において、最前線では時としてこういうことも起きるのである。特に第一次大戦のような武士道、騎士道が色濃く残る時代は、このような事は頻繁に起こっていたようである。もちろん日本においても日露戦争の二〇三高地の戦いでの死者収容休戦の逸話などが知られている。 従って、本作が決して特異な例というわけではない、という視点で見た場合、いささか美化されすぎた印象が強い。製作にあたり軍からの反対を受けたということもあるのだろう、登場人物の設定には相当気を遣っている様子がわかる。休戦の申し入れはオペラ歌手であるドイツ兵側からであり、極悪非道のドイツが善者扱いとなるのに抵抗があったのだろう、ドイツ軍、フランス軍、スコットランド軍が平等に、腫れ物をさわるかのように描かれている。多くのシチュエーションが設定されているが、どれも深くは掘り下げずにさらっと流されている。ストーリーとしてはわかりやすく面白いかも知れないが、リアリティとか盛り上がりという点に欠ける。そのため、戦闘シーンも及び腰で、クリスマス休戦に至るまでの悲壮感と緊迫感が描き切れていないのが残念。唯一スコットランド軍兵士の兄の戦死という設定のみが戦場での憎悪を醸し出しているが、逆に浮きまくっている。 映像的にはごく普通で、幅100m程度の塹壕線の雰囲気は良く出ている。しかし、背景はCGなのか、スケール感は感じられない。戦闘シーンも今ひとつだが、塹壕内での砲撃シーンはなかなか秀逸。ドイツ軍、フランス軍、スコットランド軍の3軍が登場するが、軍装は明確に異なるとはいえ、特に何軍というテロップも少なく、ミリタリーに詳しくない人にとっては、一体これはどの軍だといささか混乱するかもしれない。 休戦の花形はなんといってもソプラノとテノールの歌声。それは素晴らしい歌声で、いかにも役者が歌っているかのようにも見えるが、アフレコでプロのソプラノ歌手ナタリー・デセイとテノール歌手ロランド・ヴィラゾンという人だそうだ。これに、キリスト教の信仰が重なってクライマックスは厳かな雰囲気を醸し出す。国籍を超えた宗教への崇拝は何と強いのだろうと感動を覚えるが、逆にその宗教が紛争の火種となっていることも事実であり、なんとも矛盾なことである。 本作は感動大作と銘打っているわけであるが、私が感涙したシーンは1カ所だけであった。ドイツ兵歌手がノーマンズランド(中間地帯)に入っていくシーンであるが、その後のシーンはいささか蛇足の感がある。もっとこのクライマックスを強調していればより感動作になったであろう。 本作は数多くのエピソードが背景に描かれている。先にも書いたが、あまりにもさらっと流されているのはもったいなく、テレビドラマシリーズのようなもので全8話といった風に仕上げた方がよかったのではないだろうか。それだけ、素材は良いものがあるのでちょっともったいない感じだった。 ちなみに、2005年フランス観客動員数第1位だそうだ。 興奮度★★★ 沈痛度★★★ 爽快度★★★ 感涙度★★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1914年、第一次大戦下のフランス北部の最前線デルソー。ドイツ軍と対峙する塹壕にはフランス軍オードベール中尉がおり、ドイツ軍陣地の奪取を命じられていた。オードベール中尉はフランス将軍の息子であり、父である将軍から後方への異動を勧められるが、聞き入れない。生まれたはずの子供と妻がドイツ軍の占領地にいるからである。フランス軍の援軍にスコットランド軍がやってくる。そこには志願してきた兄弟や従軍司祭のパーマー司祭がいた。 ドイツ軍陣地への突撃でスコットランド軍の兄弟の兄が戦死する。弟はノーマンズランド(中間地帯)に兄を置き去りにした事を悔やむ。 一方、ドイツ軍側の指揮は厳格なホルストマイヤー中尉が取っており、その部下の一人にオペラテノール歌手のシュプリンクがいた。シュプリンクの妻でソプラノ歌手であったソレンセンは、夫に会いたい一心で、クリスマスイブの日に戦地にいる皇太子に聖歌コンサートを開きたいと申し出る。たった一晩でも夫が戻ってこれるかもしれないからである。司令部は却下したが、直接皇太子の許可を得て、司令部でコンサートが開かれることとなる。シュプリンクは急遽呼び戻され、皇太子の前で聖歌を披露する。 シュプリンクは前線の仲間の事が気になり部隊に戻るが、妻のソレンセンも無理に付いてきてしまう。前線の兵は喜ぶが、ホルストマイヤー中尉は渋い顔だ。 クリスマス・イブになり、スコットランド軍の陣地ではバグパイプの演奏でクリスマスを祝う。その音がドイツ軍塹壕にも届き、シュプリンクはドイツ兵のために聖歌を歌い始める。すると今度は、そのシュプリンクの歌声にあわせてスコットランド軍のバグパイプが応える。両軍の歌声が共鳴をはじめ、それに惹かれるようにシュプリンクはホルストマイヤー中尉の制止を無視し、ノーマンズランドに歩み出る。それを見た、スコットランド軍の指揮官とフランス軍のオードベール中尉が姿を現し、さらにドイツ軍のホルストマイヤー中尉も歩み寄り、停戦の申し出を行った。 クリスマス停戦の合意がなされ、3軍の兵士らはノーマンズランドで酒を酌み交わし、合同のミサを行うのだった。 両軍は自陣に戻るが、翌朝ドイツ軍のホルトマイヤー中尉がフランス軍側にやってくる。ドイツ軍の砲撃が始まるのでドイツ軍陣地に避難するよう勧めに来たのだ。ドイツ軍の砲撃が終わると逆にフランス軍陣地へ避難し、フランス軍の砲撃を避ける。続いて、ノーマンズランドに残された両軍兵士の遺体を埋葬することにする。さらに、ホルストマイヤー中尉の計らいでオードベール中尉の妻子の健在も判明した。 しかし、こうした停戦行為はいつまでも続くわけもなく、両軍の上層部の知るところとなる。シュプリンクとソレンセンは自由の身になるためにフランス軍に投降し、フランス軍、スコットランド軍の兵士は解散させられ他の最前線へ飛ばされることに。また、ドイツ軍兵士もロシア戦線に回されていくのだった。 両軍の公式記録には残されていないが、両軍兵士の心にはしっかりと交流が刻み込まれているのだった。かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年05月26日
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「第一空挺兵団」 評価★★★★ 役者、ロケ地、エキストラまで本物の「遠すぎた橋」 THEIRS IS THE GLORY 1946 アメリカ 監督:ブライアン・デズモンド・ハースト 出演者:ノンクレジット 82分 モノクロ 戦後まもなく製作された、マーケット・ガーデン作戦における英第1空挺師団によるアルンヘム橋攻防戦を描いた映画。いわゆる後世に製作された「遠すぎた橋」そのものである。本作の驚くべき点は、英国がこのアルンヘムの悲劇を克明に記録に残そうという意図のもと、戦史に忠実にドキュメントタッチで製作された点である。この戦いから数年しか経過しておらず、記憶も定かであるということに加え、出演する兵士役の中には実際に戦闘に参加した兵士も多いらしい。さらに、ロケ地はアルンヘムその地で行い、エキストラには地元アルンヘム住民を使うというリアリティ追求である。もちろん、登場する兵器類等についても実物が多い。ドキュメンタリー的映画という位置づけになろうか。 日本語版のDVDが発売されていないので、英国版を購入して視聴したが、英語字幕なしで会話の1/10くらいしか理解できなかった・・・(汗)。なので、細かいストーリー的なものについては明確に批評できないが、本作は概ね一日目、二日目といった風に時系列的に進行するので、戦史書を片手に視聴すれば大体のことは理解できる。ドキュメンタリータッチということで、特に主役というものは設定されておらず、淡々と戦闘が進んでいくので全体ストーリーとしては面白みはない。さらに、細かい設定や個人的な動きというものもあまり描かれず、全体的な視点で描かれているようだ。序盤は第1空挺師団第1パラシュート旅団第3大隊のアルンヘム橋の攻防戦が中心となっており、後半は師団司令部の置かれたハルテンシュタインホテルを中心にした映像となっている。多分、この中に第3大隊長のフロスト中佐やアーカット第1空挺師団長なども登場していたのだろうが、誰が誰だかわからなかった(汗)。 とにかく、後続のパラシュート・グライダー降下部隊との連絡がうまくいかないこと、随所に「セカンドアーミー」という言葉が登場し、支援合流するはずの英第2軍(第30軍団)が一向に来ないという緊迫感がひしひしと伝わってくる。また、司令部やオランダ人民家には負傷者が続々と運び込まれ、もはや弾もないという極限状態に至ってまだ死守しなければならない絶望感、さらには、ついに川を渡河して撤退しなければならなくなった局面での脱力感もリアルだ。英語圏の人から見ると役者が大根でひどいとのコメントも見るが、英語の出来ない自分には何ら問題なしだ(笑)。 本作の素晴らしいところは、映像がリアルなところ。当然本職が演じているのだから様になっているのは当たり前だが、結構実弾や実兵器を用いているようだ。既に戦車マニアには知られているようだが、V号パンター戦車(D型かな?)とVI号ティーガーI戦車の本物が登場し、走行及び砲の発射シーンまである。登場時間はさほど多くないが、偽物や改造ではない本物が出てくるのもこの製作時期だからこそ。また、冒頭のパラシュート、グライダー降下シーンも優れもの。一部は記録映像の使い回しかもしれないが、降下や着陸シーンは迫力満点だし、爆撃機のグライダー曳航シーンやグライダーコックピットからの映像はなかなかレア。また、細かいところだが銃器類の発射シーンもリアルだし、撤退作戦時の夜間シーンで背後に飛び交う銃弾の光がGOOD。 ついでに、音響効果も素晴らしい。実弾の音が実にリアル。下手な最新戦争映画よりもずっといい。 ちなみに、このマーケット作戦のうちアルンヘム攻略のために降下した連合軍第1空挺軍英第1空挺師団・ポーランド旅団は約10,000名で、うち無事に脱出できたのは2,000名。戦死者は1,300名で残りは捕虜となっている。同作戦と連動して南方には米第82空挺師団、第101空挺師団が降下している。詳しくは「バンド・オブ・ブラザーズ」に描かれている。 作戦の立案と指揮は英モントゴメリー将軍で、本作戦の無謀さと指揮能力の乏しさについては賛否両論がある。 興奮度★★★ 沈痛度★★★ 爽快度★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意) 特にないが、本作に登場する主な時系列(戦史書とは食い違うところもあり) 1日目(9/17) 英第1空挺師団第1パラシュート旅団、第1グライダー旅団がアルンヘム郊外に降下。散発的なドイツ軍の抵抗もあるが、第3大隊がアルンヘム橋の確保に成功。 2日目(9/18) 後続第1空挺師団第4パラシュート旅団降下する。 3日目(9/19) ポーランド第1独立パラシュート旅団降下。 4日目(9/29) ドイツ軍の反撃が始まり、パンター戦車がやって来る。 5日目(9/21) 橋を失った第3大隊(フロスト中佐)部隊全滅(投降)。 6日目(9/22) 残りのポーランド旅団降下するも、対空砲火で被害甚大。弾薬乏しい。 7日目(9/23) ドイツ軍の降伏勧告来るが拒否。 8日目(9/24) 司令部の死守。 9日目(9/25) 撤退作戦決行。夜間にボートで川を渡河。かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年05月22日
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1943 アメリカ 監督:ルイス・マイルストン 出演者:アン・バクスター、ダナ・アンドリュース、ウォルター・ヒューストンほか 106分 モノクロ アメリカがソビエトの坑独戦を描いた異色作。ヒーローチックな役回りと西部劇調のアクションはいかにもアメリカぽいが、報国的で自虐的な人物描写や叙情的でスローなストーリー展開はソビエト映画風と言えなくもない。もちろん過激な赤軍賛美やスターリン賛美はないが、なんとなくアメリカ映画にしてはゴマすりとしか思えない描写も多い。というのも、原作、脚本がリリアン・ヘルマンという左翼映画人で、多分に共産主義マンセー的思想が入っているようなのだ。それでも、公開当時はアメリカの各賞にノミネートされたということなので、ソビエトがアメリカと同盟国であった時代の人にとっては興味深かったに違いない。 序盤は後半のドイツ軍侵攻という局面への伏線という意味で、静かで平和な農村を強調しており、本作はミュージカル映画かと思うほど、暢気な歌の場面が続く。いい加減早回ししたくなるほど間延びした感じ。ドイツ軍侵攻後の後半は一転して、パルチザン化した若者や村に残った村人の身を挺した抵抗が描かれ、それなりに楽しめる。ただ、仕方のないところではあろうが、役者の多くがいかにもアメリカ人でソビエト人らしくない。唯一子供(弟)役だけがロシア人的な雰囲気と顔立ちを呈している。 本作の主題は多分、ソビエトの国民もこんなに頑張っているんだぞ、というメッセージだろうと思うので、戦史的な部分やパルチザン活動の戦略的な部分についてはほとんど表現されていない。また、腑に落ちないのは村に駐屯したドイツ軍指揮官(軍医大佐?)が、確かにロシア人の子供から血を抜くという残虐行為をしながらも、ユダヤ人への偏見がなく温情的であるにもかかわらず、ロシア人医師が無情にも射殺してしまうあたり。時代が時代だけに微妙な表現だが、今見るとどっちもどっちという風にも取れる。このあたりは、共産主義シンパの制作者、アメリカとソビエト、そして対ドイツへの微妙な立場、ドイツ軍の残虐行為がさほど知られていない時期など、多様な条件を想定しながら見ると面白い。 登場する兵器類はほとんどなく、キューベルワーゲン風ジープと軍用トラック程度。航空機ではドイツ軍のスツーカ急降下爆撃機のミニチュア特撮が登場するが、極めて稚拙。ソビエト軍の爆撃機も登場するが今ひとつ何者かわからない。 映画としてはさほど面白い部類ではない。しかし、製作年代を考えてみると、本作がアメリカでどのような位置づけにあったのか、などそれはそれで興味深い作品である。 興奮度★★ 沈痛度★★★★ 爽快度★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1941年6月20日、ドイツはポーランドに侵攻した。しかし、ソビエトの田舎の農村ノーススター村は平和でのどかだった。高校生ダミアン・シモノフは主席の成績で卒業し、来期からはキエフ大学に進学する。ダミアンはキエフへの卒業旅行を計画し、恋人のマリナ・パブロワ(女)、その友人のクラウディア・カーリーン(女)、その弟グリシャ、そしてダミアンの兄で空軍兵のユーリャ・シモノフが同行することとなった。5人は野宿しながら徒歩でキエフに向かい、途中で追い越していく老人カープさんの馬車に便乗した。 そこに、ドイツ軍の爆撃機が飛来し、カープさんと5人を除いて皆死亡してしまう。ドイツ軍の攻撃が始まったのだ。一方、ノーススター村ではドイツ軍の侵攻に備えて、若い男達はパルチザンとして郊外の丘に集結し、残った老人や女子供は村の焼き払いを決意する。村の議長であったマリナの父ボリスは、赤軍の第12師団第4連隊ペトロフ将軍と連絡し、銃を貰い受けに行く。しかし、その帰路でドイツ軍急降下爆撃機の攻撃を受けて死亡してしまう。そこに出くわした5人とカープはボリスの意志を受け、銃をパルチザンに届ける決意をする。 ノーススター村にはドイツ軍の医療部隊が病院を設置するために駐屯した。指揮官のフォン・ハーデン軍医大佐はライプチヒ大学で学び、ユダヤ人でも気にしない豪快な性格である。一方、副官のリヒター軍医大尉は経験も浅く、任務に忠実なタイプであった。ドイツ軍は負傷兵の輸血用として村のロシア人の子供達から血漿を採取する。その結果、弱って死亡する子供もあらわれ、クラウディアの父である医師のカーリーンが阻止に立ちあがる。しかし、逆に捕らえられてしまうが、ハーデン大佐の温情で釈放される。 カープと5人は馬車で銃を運ぶが、道路の横断ができずにいた。そこで、ダミアンは囮となってその間に馬車が通過する作戦をとる。クラウディアも決死の決意でダミアンの補佐に赴くが、ドイツ兵の反撃で死亡してしまう。ダミアンも手榴弾によって失明してしまう。 カーリーン医師の報告をうけたパルチザンは、対抗する武器もなかったが、村のドイツ軍攻撃を決断する。密かに潜入してガソリンを爆発させたのを契機にパルチザンがなだれ込む。そこにようやくダミアン、マリナが到着し銃を渡すのだった。カーリーン医師はハーデン軍医のもとに赴き、リヒター大尉を射殺したのち、ハーデン大佐も射殺する。まだ、ドイツ軍への反抗ははじまったばかりだ。 本作はインターネット上でのみ販売してます(ソッピースキャメルHP)*ちなみに、パソコンのDVDで見ようと思ったらコピーガード?がかかって見られなかった。家のDVDプレーヤーならばちゃんと見る事ができました。かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年05月17日
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1994 アメリカ・イギリス 制作:ジョージ・スティーブンスJr出演:ジョージ・スティーブンスほか44分 カラー アメリカのハリウッドカメラマンであった、ジョージ・スティーブンスが米陸軍通信隊(Army Signal Corps)の中佐として従軍し、ヨーロッパ戦線の映像をカラーフィルムに収めたものを、息子であるスティーブンスJrが記録映画として仕立て上げたドキュメンタリー。 公式の映画として撮影されたものではなく、どちらかというとスティーブンスのプライベート日記として撮影されたもののため、映像に迫力はないが、当時としてはレアなカラー映像であることと、スティーブンスが見て体験した視点そのものという点でリアルである。 実は本作は日本語版がなく英語版の字幕で視聴したため、私の拙い語学力では半分ほどしか理解できなかったのだが、内容的にはさほど濃いものではなく、戦史のドキュメンタリーではなく、むしろジョージ・スティーブンスの従軍日記といった感じである。 カラー日記は1944年6月6日のノルマンディ上陸作戦(D-Day)から始まる。ここでは、記録フィルムでは幾度も使い回される著名なシーンも挿入されるが、興味深いのは艦船上での映像である。続いて、フランス国内でもドイツ軍の抵抗戦があり、パリの解放へと移っていく。米陸軍第一軍司令官ブラッドレーとフランス軍ドゴールの凱旋風景、米第28師団のパレード風景が見える。興味深いのは時折写るレジスタンスの姿であろう。 この後、バルジ大作戦を経てついにライン川を渡ることとなる。スティーブンスはそこでドイツ軍B集団32万人、25人の将軍の投降を目撃する。さらに危険ゾーンと書かれたエリアでロンドンを恐怖におとしめたV1ロケット、やV2ロケットのエンジンの山を見る。 1945年4月25日はベルリン南方で、ついに連合軍とソ連軍が合流し、ソ連兵と連合軍兵の交流シーンが見える。そして、スティーブンスはダッハウ強制収容所で、彼自身が忘れられず信じられない、死体の山に出会う。やせ細った囚人達の姿とともに、虐殺に加担したSS122人が処刑され、何人かは囚人によって撲殺されている。 そしてドイツ軍の降伏とともに各地に逃れていた避難民が帰ってくるシーンが写される。 本作は44分と短く、内容的にも日記調という事もあって断片的な映像になっている。従って本格的なドキュメンタリーと思ってみると肩すかしをくらうだろう。こんなカラー映像もあったのだという程度の感覚でみることをお勧めする。 ちなみに日本では売っていないので、私はイギリスamazonで購入しました。興奮度★★沈痛度★★爽快度★★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意)特になしかぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年05月12日
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1996 韓国 監督:イ・ヒヨスク出演:イ・ジョンジェ、チャ・インピョ、カン・リナほか104分 カラー 朝鮮戦争で北朝鮮軍の捕虜になった韓国軍陸軍少尉が、北朝鮮軍将校である旧知との確執のもと、北朝鮮政治犯収容所を脱出する話で、実際に韓国軍チョ・チャンホ中尉の脱走実話をモチーフにしているらしい。 軍役中の役者を用いたり、激しい戦闘シーンなど巨額を投資した作品であったが、はっきり言って映画としての構成、ストーリー性、カメラワーク、音楽、演技いずれをとっても三流レベル。韓国でも興行成績は著しく悪く、日本未公開も頷ける。 実話をもとに脱北者の証言等による体験談を盛り込んだものと思われるが、北朝鮮の実態を知らしめる意味では画期的な題材ではある。描かれているエピソードはいずれも脱北者の書いた書籍等でも紹介されているが、実に凄惨で残酷で過酷である。現在の親北政権(ノムヒョン大統領)では公開すらできないのではと思わせるほど、北朝鮮の怖さを暴露しているのだが、それだけ貴重で重要な題材を描いているにもかかわらず、この程度の出来であったことは実に残念である。 まず第一に、15禁がかかっているだけあって北朝鮮軍の拷問や処刑シーンは実にグロい。もともと韓国映画は血糊の使用がえげつなく、特殊メイクがへたくそだが、本作は特に酷い。妊婦の腹を割いて血がどばっと吹き出たり、地面に埋めた人間の頭をロードローラーがスイカのように踏み割っていくシーンなど、そこまで描く必要があるのだろうか。韓国映画全般にも言えることだが、作品の姿勢が常に攻撃的でトゲトゲしい。見ていて休まることがない。 次に、カメラワークと映像構成がとにかく稚拙。無意味なアップや直接的な映像、そして時折挿入されるフラッシュバックのつながりが悪い。また、ラブシーンは、30年前の日本のテレビドラマを見ているかのような臭さで見るに堪えない。 また、役者の演技もひどい。主役の韓国軍少尉役はまあまあだが、それ以外の敵役や脇役連中は素人並み。特に、本作で重要な鍵を握っている北朝鮮軍上佐役は表情がなく、彼の心理状況を読み取ることができにくいのは致命的。さらに、女性収容者などが無駄にヌードになり、SEXシーンが多い。韓国エロ映画に登場する女優も多いのだろうが、たいして美しくもないヌードがてんこ盛りというのは逆に興ざめだし、作品のレベルを落としている。確かに、北朝鮮でのSEX事情、収容所での妊娠の横行などはよく知られはいるが、もう少し描き方があっただろうに。ちなみに、準主役のカン・リナはこのとき既に32歳・・・。韓国人って皆おっぱいがお椀型なのね。あんまり美的とは思えない。 戦闘シーンは冒頭と途中に少しだけだが、火薬使用量だけは相変わらず激しい。ただ、カメラワークが悪いせいで稚拙なイメージになってしまっている。さらに、白兵戦でのカンフー張りのアクションは頂けない。兵器類では、北朝鮮軍に化けたM48パットン戦車が数台出てくる程度。 本作は北朝鮮事情を暴露したという意味で、高く評価したいのだがいかんせん出来が悪い。親北派の増えつつある韓国でもっと視聴されてしかるべきだが、当の韓国人はどう思っているのか。まさかフィクションだと思っているのではないだろうか。 (以下 ややネタバレ注意) 最後に、本作で取り上げられている収容所等での残虐なシーンをあげておく。いずれも脱北者の書籍等でも紹介されおり決してフィクションではないらしい。 囚人を地面に埋めて飛び出た頭をロードローラーで踏みつぶす。縛り付けたうえ、頭にビニール袋をかぶせて窒息死させる。ホモ行為を働いた囚人の男役のチン●を切り落とす。女役の尻の穴に焼けた火棒を突っ込む。妊娠した女の腹をナイフでかっさばく。良く日本兵の残虐行為と言われる写真で妊婦の腹をかっさばくのがあるが、妊婦の腹をかっさばく文化はあくまで半島文化であって、日本人はこういうことはしないし、そういう発想もない。そういうことを良く教えてくれた映画でもある。興奮度★★★沈痛度★★★爽快度★感涙度★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 朝鮮戦争が勃発し、ソ・キョンミンは韓国陸軍少尉として北朝鮮軍と戦う。しかし、中国軍の加勢を受けた北朝鮮軍と戦車の前に部隊は降伏し捕虜となる。ソ・キョンミン少尉は捕虜収容所から脱走を図るが、あえなく捕まってしまう。捕まえたのは北朝鮮軍ピョンサン少尉だった。ピョンサンは戦前にキョンミンと旧友であり、ミョンジュという女性を取り合った仲である。しかし、ピョンサンはミョンジュをキョンミンに奪われた悲しみと、政治的に共和国側についたため、キョンミンを憎んでいた。簡単には殺さないとつぶやくのだった。 1955年2月5日、停戦合意がなされたにも関わらず人民軍捕虜第2収容所の捕虜達は解放されなかった。キョンミンは部下を先導して北朝鮮兵に抵抗して暴動を起こすが鎮圧され、多くの部下が死亡する。この時ピョンサンは上尉になっており、栄転していくが、いずれ再会するだろうと言い残す。 1965年1月8日、カンゲ教化所にいたキョンミンはフェリョンの第22政治犯収容所に移管される。そこでは、脱走者をロードローラーでひき殺すなど、収容者に人権などありはしなかった。ここで、キョンミンは同じ韓国軍の捕虜で「艦長」と呼ばれる海軍少領(少佐)と出会う。また、前の収容所で横暴な行為を繰り返していた所長が女好きが高じ、身を落として収容されていた。キョンミンは殺された部下のことを思い出し、元所長を半殺しにしようとするが艦長に止められる。 この収容所の実施的権限は政治保衛部(情報部+共産党のようなもの)のピョンサン上佐だった。再び再会したキョンミンにピョンサンは共和国側への転向を勧めるがキョンミンは受け入れない。 さらに収容所には、モスクワ留学生でスパイ容疑をかけられたジュヒョンという男がおり、さらに政治外交部副部長だった一家も送り込まれてきた。北朝鮮では昨日の英雄が明日にも地に身を落とすのだ。収容所の所長は元副部長の娘ウンジュ・ウンジョンに目を付け手を出そうとするが、母親に抵抗されて射殺してしまう。さらに、抵抗した罪で父親の元副部長も頭にビニールを被せられ窒息死させられる。泣き崩れる娘二人だったが、キョンミンは何もすることが出来ない。また、ある時ホモ行為を働いていた二人が告発され急所を切り落とされたり、火棒を突っ込まれるなどの処刑を受ける。 1987年1月23日、女収容者の一人がトイレで胎児を産み落とす。犯人の女は即座に射殺され、さらに全女子に妊娠検査が行われる。その結果一人の女の妊娠が発覚し、所長は相手の男にに女の腹を切り裂けと命令する。男は気が狂いながら女の腹を切り裂くが、結局警備隊長に銃殺される。 ジュヒョンが持ち込んでいたロシアの本が摘発され、ジュヒョンは1週間の断食を命じられる。そのジュヒョンに食べ物を分けてやった罪でキョンミンは罰を受ける。 中央党幹部の予審が行われた。女収容者達は風呂に入り化粧に余念がない。品定めと呼ばれる売春行為であるが、選ばれれば食料にありつくことが出来るのだ。元副部長の姉娘ウンジェはプライドから行くのを断ったが、妹のウンジョンは生きるために行くことを決心する。その結果、処女だったウンジョンは所長の女になり食料を得る。 キョンミンと艦長は炭坑労務の合間に、密かに脱走トンネルを掘っていた。二人は脱走を決行しようとするが穴の位置予測がはずれて失敗する。さらに、ジュヒョンの密告でキョンミンは40日間の穴蔵拘留を命じられる。艦長は密告したジュヒョンを殺害し、自らも北朝鮮兵の銃弾に倒れる。私の魂はアルバトロスのように自由に羽ばたくと言い残して。 姉娘のウンジェはキョンミンを助けるために体を売る。しかし、キョンミンが牢から出てきた時ウンジェとウンジョン姉妹は首を吊って死んだ。実はウンジョンが所長の子を妊娠していたのだ。 1990年3月2日、収容所内にペストが流行する。実は、軍医による細菌兵器の実験だったのだ。所長は収容所に火を付けて焼き殺しを命じるが、収容者たちは怒りに暴動を起こす。北朝鮮軍警備兵は戦車までもを投入し鎮圧を図るが、その隙にキョンミンはトラックを奪って脱走を図る。 キョンミンは中国国境の川で渡河しようとしたところを警備隊長にみつかってしまう。銃殺されようというときに、ピョンサンが助ける。気の変わらないうちに行けと言い残しピョンサンが去っていく。しかし、そのピョンサンも味方に銃殺されてしまう。無事に韓国に戻ったキョンミンだったが、亡くなった人たちの姿が走馬燈のように思い起こされるのだった。DVD検索「アルバトロス」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年03月23日
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1965 ソビエト 監督:ロマン・カルメン 監修:ソ連国防省120分 モノクロ ソビエトへのドイツ軍侵攻からベルリン占領までをソビエト軍の行動を中心に記録映像で描いた歴史ドキュメンタリー映画。用いられた映像はソビエト軍従軍カメラマン(236名が参加しうち40名が死亡)のほか、連合軍側、枢軸国側の映像も織り交ぜている。 記録映像には戦闘シーン、兵士の束の間の休息、背後のソビエト民衆の生活、そしてドイツ軍による虐殺映像と実に様々なものがあるが、約4年間の歴史を2時間で描いているために、各シーンは極めて短く、フラッシュ映像的なブツ切り状態となっている。また、映像的には思いの外レア的なものは少なく、ごくごく普通の映像の羅列は飽きてくる。唯一、スコルツェニーのムッソリーニ奪還作戦の映像やパリのフランスレジスタンスの映像は新鮮だった。 さらに、ロシア語のナレーターによる戦争解説が入ってはいるが、内容的には深みがなく、戦史的なつながりを追う事も難しいし、登場する将軍や功労者についてもロシア人でなければ理解も思い入れもできずらい設定となっている。ストーリー性もなくつまらないうえ、とにかくソビエト軍、パルチザン賛美色が強いので歴史的な誤謬もあって、ちょっと興ざめ。特に後半になるとユーゴ、ルーマニア、ポーランド、チェコなどソビエト軍が解放したことを、ことさら強調しているのが痛い。ひどくなると、パリ解放までソビエト軍の力によるものというような表現まである。制作年から見れば致し方のないところであろうが、ドイツ軍の蛮行を非難している映像を見ながら、スターリンも同じような蛮行を繰り返していた事や、解放後のユーゴ、ポーランド、チェコの苦難の歴史を思い起こさざるを得なかった。 ドキュメンタリーだけに映像に登場する兵器類は当然本物。とにかく沢山出てくるので全部を正確に拾い上げることはできなかったが、目立ったものを挙げてみると、ドイツ軍側ではI号戦車、II号戦車、III号戦車、IV号戦車は当然の事ながらパンター、ティーガーI、ティーガーII、III号突撃砲など多彩な姿を見る事が出来る。航空機ではHe111、Do17、Bf110、Ju87の飛行爆撃シーンもある。ソビエト軍側ではT37水陸両用軽戦車、BT- 7快速戦車、T60軽戦車、T34/76戦車、T34/85戦車、KV-1重戦車、IUS-122突撃砲、カチューシャが多く登場する。航空機ではPe- 2爆撃機、Yak-9戦闘機、ソ連国籍のDC-3輸送機が出てくる。このほかにも色々な種類が出ているが一瞬だったりして調べていない。ただ、これだけ多くの兵器が登場はしているが、先にも述べたようにブツ切り映像のためあまりじっくりと見る事が出来ないのが残念である。 本作で取り上げられている歴史的事象は、バルバロッサ作戦、ブレスト要塞戦、パルチザン活動、モスクワ攻防戦、レニングラード包囲戦、スターリングラード攻防戦、クルスク戦車戦、イタリア降伏とムッソリーニ奪還作戦、ドニエプル川攻防戦、ノルマンディー上陸作戦、パリ解放、アルデンヌの戦い、ベルリン陥落などである。歴史的な流れを知るには悪くないが、編集、ナレーションともにたいしたことないので、今ひとつの評価にならざるを得ない。興奮度★★★沈痛度★★爽快度★感涙度★DVD検索「大祖国戦争」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年03月19日
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1940 松竹大船 監督:吉村公三郎 出演者:上原謙、佐分利信、笠智衆、桑野通子ほか 126分 モノクロ 第二次世界大戦前の支那で大活躍した、久留米戦車第一連隊の小隊長であった西住小次郎中尉(死後大尉)の伝記映画。昭和はじめての軍神と呼ばれた西住中尉は、剛毅実直で部下思いの名指揮官であったと言われ、必ず戦場偵察には自ら赴き、支那人に対しても心優しい配慮をするなど多くのエピソードを残している。徐州包囲戦で自らの偵察によって敵弾を受けて戦死するまで、第二次上海事変、南京攻略戦と30回にも及ぶ戦車戦を指揮している。 本映画は、従軍記者であった菊池寛の原作をもとに、一部ドキュメント映像も入っているようだが、ほとんどが新たに撮影されたもので伝記仕立ての構成となっている。軍神を祀るという意味合いからも、若干脚色等もあるのだろうが、ストーリーは極めてドキュメンタリー調になっている。その分、構成の面白さという点では劣るが、何といっても映像のリアルさと戦闘シーンの迫力には目を見張るものがある。1940年公開ということで1938年の5月に西住中尉が戦死してから間もなく、兵器、兵隊等の挙動等は当時の状況に限りなく近いと言えるのだろう。登場する部隊名や地名、用語がかなりわかりにくいのもそのためかと思われる。ロケは廃墟や煉瓦造りの構造物の多さから中国だろうか。もし、国内ならば相当なセットを用意した事になる。一部、あきらかに室内セットとわかる場面もある。 本作の主役は当然八九式中戦車乙型である。少なくとも15両以上の八九式中戦車が確認でき、この他先陣を切る九四式軽装甲車も登場する。単に行進するだけでなく、煉瓦の壁を突き崩して進む姿や、数は少ないが主砲を発砲する姿は実に頼もしい。ことのほか、戦車の戦術的用法は興味深く、歩兵支援として弾除け役になるだけでなく、敵のトーチカ銃眼に横付けして盾になるなど面白い。また、戦車のアップも多く、戦車長ハッチの開閉や車載機銃の動き、前部の観察窓が回転している様子、尾橇についている荷物など興味深いものがある。なお、戦車のマーキングは西住中尉車の「456」番のほか「8960」番、「み ほ」というものも見える。戦車以外では歩兵の重機、軽機がいたるところで登場し迫力満点。 また、この時期の映画にしては火薬効果が凄い。戦車周辺に着弾する様子や、敵機銃の着弾など現代映画にも匹敵するほどの技術と迫力がある。さらに、意外なほどカメラワークが洗練されており、手前に歩兵、遠方に戦車など遠近感を利用した構図や、ロング、アップの映像が実に効果的に用いられている。戦前の映画では違った意味で亀井文夫の退廃的映像があるが、本作はいわば芸術的映像と言えよう。 あとびっくりしたのは、敵側蒋介石軍の鉄兜をはじめとする軍装がどう見てもドイツ軍のものであること。てっきり、いい加減な小道具を・・・と思ったが、実は蒋介石中央軍はドイツ軍軍装だったそうだ。というのも昭和13年までドイツ軍事顧問がいたからで、本作はそれを忠実に再現していたのだ。さすがだ。 本作の製作は第二次大戦勃発直前ではあるが、決して好戦的な内容でもなく、嫌戦的なニュアンスも含まれた人情的映画である。地名や作戦の状況などがもっと分かり易くテロップなどを用いていればさらに良くなったであろう、名作である。 興奮度★★★★ 沈痛度★★ 爽快度★★★ 感涙度★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧ください) 陸軍士官学校出の西住小次郎中尉は、久留米戦車第一連隊、細木部隊の高梨中隊、戦車小隊長として任官していた。昭和12年の第二次上海事変勃発とともに、海軍陸戦隊や歩兵支援のために上海戦に参加する。敵の猛反撃を受けて苦戦中の歩兵部隊からの要請を受けて、西住中尉は小隊を率いて応援に向かう。西住中尉は剛毅な性格で、敵前偵察など危険な任務は部下にやらせず、自ら行うのを常としており、部下からは絶大な信頼を得ていた。しかし、ある時部下の荒川一等兵が戦死してしまう。さらに、高梨中隊長が負傷し、西住中尉は中隊長代理を務める。 部隊はさらに通称白壁の家の攻撃に参加する。その際にも西住中尉は自ら偵察を行おうとする。そして、白壁の家は陥落し、無事に租界地区は死守された。 いよいよ日本軍は南京城攻略戦に着手する。高梨中隊を率いた西住中尉は歩兵の支援を行い、敵トーチカの撃破に功績を残す。その際に西住中尉は足を負傷したにもかかわらず、戻らぬ部下を心配して自ら捜索に出かける。 戦死した荒川一等兵の弟から手紙が届き、「兄ちゃんが戦死しても僕は泣きませんでした。でも母ちゃんは少し泣きました」とある。また、宿営地に取り残された支那人の女が出産し、西住中尉は手厚い看護と温情をかけるが、女は翌日赤ん坊を置いて逃げてしまう。死んだ赤ん坊を西住中尉は「無名子」と名付け、手厚く葬る。 南京城攻略も成功し、1938年になり、いよいよ徐州包囲戦が始まる。士官学校の同期生岡田中尉は本国への帰還命令が出て、西住中尉と酒を交わすが、西住中尉は支那の地に骨を埋める覚悟をする。そして、渡河点の偵察に出た西住中尉は蒋介石軍の残兵に狙撃されてしまう。高梨中隊長の見守る中西住中尉は息を引き取るのだった。 DVD検索「西住戦車長伝」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年03月17日
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1972 東宝 監督:増村保造 出演者:勝新太郎、田村高廣、安田道代、宍戸錠ほか 92分 カラー やくざ上がりの大宮一等兵とインテリの有田上等兵の織りなす、娯楽アクションシリーズだが、本作は初めてのカラー作で製作も大映から東宝に代わり、勝プロが製作に関わっている。従って、これまでのモノクロシリーズ8作とは連続性はなく、独立した内容と捉えていいだろう。 カラー作品ともなると作品のイメージがガラッと変わる。モノクロだと映像の粗が目立たないがカラーではそうはいかない。どうしても背景や小道具等の出来具合が問題となる。そう言う意味では、本作はそれなりにしっかりしているし、モノクロ作品ではあまりわからなかった軍装がなかなかリアルであるということもわかった。軍服がカーキ色になっただけでこれほどまでにリアル感が増すというのは驚きでもある。 ただし、内容の出来はお粗末。ストーリーはこれまでのモノクロシリーズと似たようなものだが、八路軍スパイの女と恋仲になってしまう大宮一等兵(勝)は、以前のような豪放さやスケベさはなく、八路軍側につく売国奴のようなイメージである。勝プロの意向なのかどうなのかは知らぬが、人物設定に変化が見られるし、中国への配慮なのか八路軍が美化されているのも気に入らない。「八路軍は、盗むな、嘘つくな、捕虜殺すなが規則だ」など、どこからそんな馬鹿なイメージが出てきたのだろうか。 それにも増して最悪なのは音楽効果。八路軍女スパイ芳蘭との逢い引きシーンになる度に、「チャラリーン」とエレクトーンの間抜けな音楽が入る。余りに兵隊やくざシリーズとは相容れないメロディはどうしてしまったのだろう。本作がもとから単発のつもりだったのかもしれないが、続編が出なかったのは正解だと言える。これ以上、兵隊やくざのイメージを崩すべきではないから。 戦闘シーンは冒頭の場面だけはそこそこ迫力があるが、それ以降はどんどんしょぼくなっていく。また、モノクロシーリーズにも増して大宮の神懸かり的戦闘に拍車がかかり、スタンディング機銃撃ちや弾丸飛び交う中を両軍陣地を走り抜けるなどもう無茶苦茶。迫力があるわけでもなく、リアル感を損ねているだけ。 勝プロが関わったせいであろうが、本作は大宮一等兵にかかるウエートが非常に高い。有田上等兵の出番は極端に減り、完全に脇役扱い。どういうつもりで製作したかは知らぬが、結果的には兵隊やくざに泥を塗った形だ。宍戸錠の悪役軍曹役は本当に悪そうな奴だ。 興奮度★ 沈痛度★ 爽快度★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 厄介者扱いの有田上等兵と大宮一等兵は北支の前線部隊である北井小隊に転属を命じられる。小隊長の北井少尉は中学出の幹候で戦争嫌いの温厚な性格だが、隊で実質的に権限を握っている分隊長神永軍曹(宍戸)は狡猾で汚い性格だった。 転属移動中に有田と大宮の乗ったトラックが八路軍に襲撃され、奇跡的に有田と大宮だけが助かる。しかし、その場で北井小隊が駐屯する村の村長の息子(少年)がスパイとして捕まる。北井少尉は親日派の村長の息子がスパイのはずはないと反論するが、神永軍曹は独断で少年の処刑を大宮に命じる。大宮はあの手この手で神永を愚弄し、処刑を中断させ、ようやく北井少尉の命令で少年の命を助ける事が出来る。 その晩、少年の姉芳蘭が大宮のもとを訪れ、お礼として鶏を置いていく。大宮は美人の芳蘭にすっかり一目惚れする。しかし、芳蘭を狙っていたのは大宮だけではなかった。神永軍曹も目を付けており、スパイ容疑という名目で芳蘭を犯そうとした。間一髪の所で大宮は芳蘭を助けるが、芳蘭がスパイではないかという容疑は晴れたわけではなかった。 北井少尉は大学出の有田に、芳蘭と恋仲になってスパイかどうかを探れと命令する。有田は大宮が芳蘭を好いている事を知っており、大宮にその役目をやらせる。大宮は、芳蘭を宝物のように思っており、なかなか手を出す事ができない。期限の日が迫り、ついに大宮は手を出そうとするがするが、芳蘭はそれに先んじて「八路軍が12時に南から攻めてくる」との情報を教える。芳蘭はやはりスパイであったが、大宮の事を好きになっており情報を教えたのだ。しかし、そのまま報告すれば芳蘭は処刑されてしまうため、大宮は芳蘭を逃がしてから報告する。 神永軍曹は敵を逃がした罪で大宮を処罰すべきと進言するが、北井少尉はまずは敵襲に備えるべきとする。案の定、時間通りに敵襲があり、準備していた日本軍は八路軍を撃退する。撃退後、大宮は敵を逃した罰としてタコ殴りにされて営巣に入れられる。その晩、村長の息子が大宮のもとに忍び込んできて、芳蘭のもとに手引きする。 八路軍の芳蘭のもとに行った大宮は、芳蘭から八路軍に入らないかと誘われる。一旦は断った大宮だったが、芳蘭の魅力に次第に惹かれていく。しかし、芳蘭から今晩も日本軍襲撃があるとの情報を聞いた大宮は、残してきた有田上等兵が心配になり、急いで村に戻る。 村の日本軍は敗退し、そこには北井少尉の戦死体があった。しかし、有田の姿も神永の姿もない。実は、北井少尉は神永軍曹に殺され、有田は拉致されていったのだ。 その後、芳蘭から有田の居場所がわかったことを聞き、大宮と芳蘭は中国人に化けて潜入する。しかし、これは罠であり芳蘭もろとも捕まってしまう。有田、大宮、芳蘭は縛りつけられ、銃殺だと伝えられると、芳蘭は神永軍曹の女になる代わりに二人を釈放するよう頼む。神永軍曹はこの条件を聞き入れ、清い関係のままだった大宮の目の前で芳蘭を犯すのだった。 翌日二人は放免となったがそれも嘘だった。銃殺される直前で、二人は八路軍に助けられる。武器をもった大宮は単身神永軍曹のもとに戻る。神永軍曹との決闘の末、芳蘭が神永を銃殺し、二人は八路軍のもとに戻る。「神永に抱かれた私を嫌いか」と問う芳蘭に大宮は半狂乱になる。それを見て芳蘭は無言で去っていく。後に残った大宮と有田は中国人の服を着て再び歩いていくのだった。DVD検索「新兵隊やくざ 火線」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年03月13日
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1968 大映 監督:田中徳三 出演者:勝新太郎、田村高廣、佐藤友美、夏八木勲ほか 80分 モノクロ やくざ上がりの大宮一等兵とインテリの有田上等兵の織りなす、娯楽アクションシリーズの第8弾。田中徳三監督の6作目となるが、事実上このシリーズの終わりとなる。 舞台は終戦後の満州となっており、各地で満人(中国人)武装蜂起が起こり、日本の軍人のみならず民間人までが掠奪等の被害に遭っている状況である。そんな中、有田上等兵と大宮一等兵が一部の元日本軍人が盗んだ10万ドルを巡って様々な騒動に巻き込まれていくこととなる。ただ、これまでのシリーズに比して、中国軍(人民解放軍)の描写が増え、掠奪等の描写もあるのだが、なんとなく中国に気を使ったようなシーンも多い。大宮は生きて内地に帰りたい一心と、女と酒に惹かれる単にやんちゃな存在であったが、本作では妙に義侠心がクローズアップされ、中国軍に味方するなど、いつから正義漢になったのかと違和感が残る。 本作のマドンナ役は解放軍スパイの楊秋蘭として佐藤友美が妖しい魅力を見せている。また、謎の男役として夏八木薫。しかし、なんといっても目玉は赤ちゃん役だろう。散切り頭の坊やがなんともかわいらしい。鳴き声、仕草ともに劇中を和ませてくれること請け合い。大宮がすっかりメロメロになるのも頷ける。ただ、時代の背景として解放軍や中国ゲリラに殺された邦人やこうした赤ん坊が大勢いたことを思うと、いたたまれない心境になる。日本軍が悪いとか、中国人が残虐だとかいう事を言ってももはや意味はなく、究極の状況におかれた場合、人としてどのような行動を取るべきかということを考えさせられる。 シリーズの最後としてはやや爽快感に欠けるきらいはあるが、全8作を通してみれば大宮と有田の取ってきた脱走兵という逸脱した行為も、暴力と性欲だけに生きてきた大宮の特異性もなんだか意味のあるもののように思えてくるのが不思議だ。監督も替わるし、描かれた舞台も完全な連続性があるわけでもないが、全作をとおして見ることをお勧めする。全作として評価するならば★4つにしてもいいだろう。 興奮度★★★ 沈痛度★★ 爽快度★★ 感涙度★★★★(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 昭和20年8月15日に終戦し、満州はソ連軍に占領され日本兵の大半は捕虜となった。また、満人が各地で武装蜂起し、日本の民間人から掠奪の限りをつくしていた。 有田と大宮は日本を目指して徒歩で移動していたが、途中で杭に縛り付けられていた日本兵を見つける。生きていた5名を助けてやりさらに行くと、そこには未だ教練を続ける日本軍加藤部隊がいた。戦う意志のない有田と大宮は中隊長の怒りに触れ、監禁されてしまう。監禁中に助けてやった5人組が盗みにやってくるが、彼らは大宮らを見捨てて去ってしまう。大宮と有田は自力で縄をほどき、脱走を図るがその際にスパイとして銃殺されようとしていた女、楊秋蘭を助けてやる。 秋欄は二人が介抱してやっている隙に逃亡してしまうが、その場で大宮は泣いている赤ん坊を見つける。足手まといになると反対する有田を説得して、大宮は赤ん坊を連れて行く事にする。 大宮が赤ん坊の乳を得るために山羊を盗みに行っている間に、有田は解放軍に捕まってしまう。解放軍は盗まれた解放軍の軍資金10万ドルの在処を有田に聞くが、有田はそんあものは知らない。有田はなんとか隙を見て脱走することに成功する。 大宮は赤ん坊を抱いて歩いていくと、例の5人組に出会う。すでに二人が戦死していたが彼らこそ10万ドルを盗んだ張本人だった。しかし、特務機関の松川大尉の謀略で10万ドルを奪われ、さらに松川大尉は加藤部隊を全滅させ、10万ドルを独り占めして逃げていたのだった。大宮は3人をボコボコに殴りつけたうえ、所持品を奪い取る。 さらに行くと、大宮は怪しい中国人に話しかけられ、赤ん坊のミルクをくれる約束で用心棒として雇われる事になる。さらに、ボスの命令で賭博場の中国人を追い出すが、逆に3人組に捕まってしまう。3人は解放軍兵士であり、大宮から10万ドルの在処を聞き出そうとする。実はボスが10万ドルを隠し持っている松川だったのだ。しかし、場所を知らない大宮は処刑されることとなるが、処刑の直前にあの楊秋欄が助けてくれる。秋欄は解放軍の班長だった。秋欄から10万ドルがないと在留邦人の帰国許可が出ないと聞き、大宮は松川から10万ドルを奪い返す事を約束する。 松川は身内を皆殺害し、10万ドルの隠し場所へ行くが、忍んでいた大宮と決闘となりついに大宮は10万ドルを奪う事に成功する。そのおかげで邦人の帰国が許されるのだった。 有田を心配した大宮は残留したが、そこに足を引きづった有田が現れる。赤ん坊とともに3人は徒歩で日本を目指すのだった。DVD検索「兵隊やくざ 強奪」を探す(楽天) かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年03月10日
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1967 大映 監督:田中徳三 出演者:勝新太郎、田村高廣、細川俊之、小松方正、野川由美子ほか 89分 モノクロ やくざ上がりの大宮一等兵とインテリの有田上等兵の織りなす、娯楽アクションシリーズの第7弾。田中徳三監督の5作目。前作に引き続いて戦闘シーンが多く取り込まれ、さらに暴力あり、お色気あり、義侠心ものありと盛りだくさんになっている。 舞台は相変わらず満州で、設定が1945年の7月頃になっており、すでに第4作あたりで8月になっていはずであるから、物語としては続き物とはいえ、時間的には相前後しているようだ。また、本作でついに終戦を迎える事になる。 本作では、善玉上官役として香月少尉(細川俊之)が登場し、珍しく悪玉ばかりの将校に立ち向かっていく。義侠心をくすぐるお涙シーンもある。また、お色気役は野川由美子で、本作の大宮一等兵のスケベぶりは一層拍車がかかっている。ちょっとガツガツしすぎの感もあるが。 終戦間際から終戦を描いているだけあって、日本軍の混乱ぶりもよく表現されているほか、本作では策略によって大宮と有田が引き離されてしまうのが見所だ。力の大宮と智恵の有田がどのように対抗していくのか。また、戦闘アクションも多いのだが、今作は大宮の独壇場。たった一人で中国軍ゲリラ部隊を全滅させてしまうのはちょっとやりすぎだが、大宮の孤軍奮闘と中国人母娘を救うシーンは涙ものだ。なお、今作のキーワードは「軍旗」である。 いよいよ展開も早くなってきており、シリーズの終盤を予期させる。脚本も十分に練られてきた感があり、楽しめる1本となっている。 興奮度★★★ 沈痛度★★ 爽快度★★★ 感涙度★★★★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 部隊の手紙の受領に向かった大宮一等兵は、その帰り道軍旗室の前で自分の手紙を読み始めてしまう。それを咎めた将校、香月少尉は戦友をかばう大宮に好意を寄せる。 さらに大宮は糧秣調達で油を盗み出し、魚を捕って部隊に天ぷらをふるまう。しかし、その油はひまし油で、部隊の皆は腹を下してしまう。そんな中、分隊長赤池曹長は大宮と有田の存在が気に入らない。 部隊の相撲大会があり、行司役の赤池曹長は大宮が勝ったにも関わらず相手の勝ちにする。差し違えに異を唱えたのは香月少尉であった。香月少尉は連隊長の父を持つ毛並みのいい青年であったが、正義心も豊かな将校であった。こうした一連のことで赤池曹長と最古参の滝島准尉は大宮と有田を離ればなれにしてしまうことを計画し、有田上等兵を暗号兵にして師団司令部に送り込んでしまう。 別れを惜しむ間もなく有田は師団司令部へ赴き、驚いた大宮は脱走し、女郎のさつきのもとに向かう。そこで、赤池曹長と滝島准尉の策略だと知ったうえ、二人が副官影沼少佐とともに横領していることを突き止め暴行する。しかし、結局大宮は脱走の罪で重営倉に入れられ、飯を減らされたうえ重労働を課せられる。 昭和20年7月7日、体力の限界に達した大宮のもとに、3ヶ月の予定を繰り上げて1ヶ月半で有田が戻ってくる。これは香月少尉の裏工作のおかげであった。有田はすぐさま影沼少佐と赤池曹長の二重帳簿の証拠を掴み、取引の末大宮を助け出す。 司令部から緊急指令が入り、部隊は八路軍三個師団を迎え撃つ事になる。そのため、軍旗をサイチンの天野旅団に引き渡すため、香月少尉が軍旗護衛部隊を編成して出発する。 しかし、香月少尉の護衛部隊はゲリラの襲撃を受け、奮戦むなしく香月少尉は戦死し、軍旗が奪われてしまう。無電を傍受した大宮は単身で応援に向かい、中国軍ゲリラに立ち向かっていく。途中で、戦闘に巻き込まれた中国人母子を助け、ついに軍旗を奪還する。応援にきた部隊に対し、大宮は「香月少尉の軍旗は自分が持ち帰りたいであります」と言い先頭立つのだった。 部隊に帰ると有田から終戦になったことを知らされる。大宮はもう一つやらねばならない事があると言い、影沼少佐、滝島准尉、赤池曹長のもとに赴き、思う存分殴りつけるのだった。 DVD検索「兵隊やくざ 殴り込み」を探す(楽天)かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年03月08日
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1998 イギリス 監督:ダスティ・ドーズ 出演者:リチャード・ハーバット、デヴィッド・イースト、ローラ・パッチほか 99分 カラー 第一次世界大戦を題材にしたイギリスの若者の愛と友情ストーリー。実話の原作があるのかな?100歳になった老人の回顧録という形態をとったヒューマンドラマタッチの戦争映画。背後に見えてくる時代背景や数多くのエピソードは重厚な原作の存在が窺われ、ヒューマンドラマのみならずシリアス調の歴史ストーリーとしての期待感も抱かせる。しかし、いざ視聴してみると、日本未公開というだけあって内容的には結構お粗末。ストーリー展開が唐突だったり、映像的にも迫力がない。何を見せたいのかポイントがないため盛り上がりに欠けるし、99分という決して長くない映画にもかかわらず、ダラダラ感が著しい。 映画の舞台はイギリス本土とフランス最前線の塹壕の中がメインとなる。本土では高校生の主人公らの友情と愛情が描かれるのだが、恋人役や家族役のキャストは決して悪くなさそうだが、いかんせん心情表現が浅いために盛り上がらないのが残念。 塹壕線シーンは、グロい映像も少量あるが、狭いスタジオ内で撮影したかのように、背景映像がほとんどないため戦闘シーンに迫力感はまるでない。また、塹壕ものに不可欠な閉塞感と砲撃による恐怖感も今ひとつ表現し切れていない。なんでこんなに怯えているのか、精神的にないっているのかが伝わってこないのだ。さらに、度々起きる負傷シーンがカメラワークの悪さなのかわかりにくい。兵器類はドイツ軍側として複葉機が登場しているのみ。 とにかく、ストーリー展開が唐突すぎるのと、登場人物の性格付けがなさすぎるのは残念。多分、原作はそれなりにしっかりしているのだろうと思う。しかし、映画の焦点となる友情と愛情の盛り上がりへの伏線がお粗末すぎる。 主役級の友人の死は余りに唐突でかつ著しく軽く取り上げられているし、友人の父親の死、学校の恩師との再会と別れなど、深い意味がありそうなのに極めてあっさり描かれているのが腑に落ちない。思わず、おい、そこが盛り上がりの中心だろう、と突っ込みたくなるほどだ。 興奮度★★ 沈痛度★★★ 爽快度★★ 感涙度★ (以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい) 1914年イギリス。ヨーロッパでは第一次大戦が勃発していたが、本国の高校生にとってはまだまだ平和であった。高校生のアーサーとウィルは親友であり、厳しい規律や校則に背くこともしばしばあった。特にアーサーは冒険家であり、禁じられていた女学生のエイミーとキスをして厳罰に処せられる。 こうした中、18歳になった二人は冒険にでも出るかのように、軍隊に志願する。アーサーの姉も父親も反対したが、結局二人は軍隊に入隊し、フランスの最前線に赴く。 最前線で二人が見たものは、英雄でも冒険でもなく戦友の非情な死と敵の砲撃だけであった。軍曹の計らいで女を買うことも覚えたが、次第に二人の心はまいってくる。アーサーは伝令の際に腕を負傷し、部隊の休暇で二人は一時帰国する。アーサーは精神的にまいるがウィルは逆に冷静にアーサーの助けとなっていく。 再び前線に戻ると、高校の恩師だったスミス先生が少尉として赴任してくる。しかし、スミス少尉は砲撃で足を負傷し、本国へ送還されていく。さらに、アーサーの父親が結核で死去し、アーサー自身も敵の砲撃で戦死。ウィルはただ一人戦場に取り残される。 1918年11月11日に戦争は終わる。ウィルは名誉の負傷で帰国する。アーサーの姉アリスとアーサーの子を身ごもっていた恋人エイミーらは助け合って生きていこうと誓い合うのだった。かぽんの戦争映画レビュー新着順かぽんの戦争映画レビュー分類別
2006年03月07日
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