海外旅行紀行・戯言日記

海外旅行紀行・戯言日記

2004.01.05
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テーマ: 本日の1冊(3688)
カテゴリ: Books
働く人の権利が益々狭められようとしている様で、労働基準法改正案に解雇ルールの新設が2004年通常国会での上程が予定されています。
解雇ルールの条文(第18条の2)は「使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇することが出来る。但し、その解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」となっています。
解雇ルールと共に、有期雇用(期限付き雇用)の拡大も含んでいて、通常の仕事では3年(現行1年)、高度に専門的な仕事では5年(現行3年)までの契約を可能にするものの様です。

一見するとリストラの名目での不当解雇が制限され、近頃多くなっている派遣社員が保護される様に思われるのですが、返って使用者に自由に解雇権を行使出来ると言うアナウンス効果を招くとして糾弾するのが下記の書籍でした。


ルポ解雇(この国で今起きていること)-岩波新書(島本 慈子著)

「解雇に正当な理由が無ければならないと言うルールを作ったとすれば、有期雇用を無制限に拡大することは出来ない。解雇に理由が要る解雇制限法を持つ国は、原則として有期雇用を認めていない。
解雇を規制しても、それなら有期でやりましょう、と言うことで普通の労働者も全て有期でなったら、これは歯止めが無くなってしまう」と矛盾を指摘しています。

日本では、とりわけ労働裁判が少ない。年間の労働裁判の件数はドイツ60万件、イギリス10万件、フランス20万件に対して3000件と極端に少ない。
日本では労働裁判所は無く、一般民事裁判として係争されるのですが、EUの国は、労働問題を専門に扱う裁判所(イギリスは雇用審判所、ドイツは労働裁判所、フランスは労働審判所)があり、彼我の差はあまりにも大きい。
日本の労働者は「ほぼ無権利状態」と言っても過言では無い。

その無権利状態を解消すべく、「労働審判制度(地裁で職業裁判官の他、労使双方の専門家が審理に加わり、3回程度の審理で結審、審判の決定に不服であれば、裁判で争う)」が提案されていますが厚生労働省の労働検討会では賛否が対立して、未だ明確になっていません。
2004年の法案提出を目指し、ぎりぎりの攻防が続いています。

ルポ解雇ですから、不当解雇の実態、職場での虐め差別が克明に報告されていますので驚く程の迫力があります。
労働者側の観点だけからの報告ですから、全てを鵜呑みには出来ませんが、使用者に較べて極めて弱い立場にある労働者が一片の解雇通知で人生を狂わされてしまう姿は、読んで行く内に憤慨せざるを得ませんでした。
此処10年以上続くリストラの実態が、一部ではありますが明らかにされていると思います。
会社からの相当な虐めが予測されるこの書籍、著者の島本女史は2001年6月に会社を退職し、フリーとなった様です。

しかしながら、正月早々気分が暗くなってしまいました。






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Last updated  2005.02.14 16:07:37
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カーク船長4761 @ Re[1]:6月オスロ・フィヨルドで白夜体験(06/01) New! オジン0523さんへ 26年前に修正致します!
オジン0523 @ Re:6月オスロ・フィヨルドで白夜体験(06/01) New! 私も2011年7月に男二人で北欧の旅を楽しみ…
カーク船長4761 @ Re[1]:クレジットカード情報の漏洩(05/30) maki5417さんへ 不甲斐無いのですが、末尾…
七詩 @ Re:クレジットカード情報の漏洩(05/30) 毎日のようにそういうメールが来ます。と…
maki5417 @ Re:クレジットカード情報の漏洩(05/30) Amazon発信と称するメール 末尾が、「.c…

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