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昨日に引き続き四日目のエンリッチメントセミナーの様子をお届けしたい。セミナー四日目(3月24日)のスケジュール5:00- 6:00 Pre-Dawn Meals8:00- 9:30 Breakfast(Optional)- 11:00 Hotel Checkout午後は飛行機の出発時刻まで自由行動最終日は朝食を各自済ませた後、チェックアウトをして解散となった。主催者の発表では当日120名、50もの国と地域のフルブライターが一堂に会したという。これだけ大規模なセミナーを実施できる奨学金財団はきっとフルブライト以外ないのではないだろうか。改めてフルブライトネットワークの凄さをこのセミナーを通じて肌で感じることができた。各国の将来のリーダー達と繋がることができたので、今回の旅で築いたネットワークをこれからも大事にしていきたい。フライトまで多少時間があったので、バスツアーをした時に通りがたったMartin Luther King, Jr. National Historical Parkに行くことにした。この施設はNational Park Serviceに管理されており、予約不要かつ無料で施設内に入ることができる。アトランタを訪れる機会があれば是非訪問したい場所である。Martin Luther King Jrの遺体を運んだとされるワゴン(caisson)を拝むことができる。決して豪華ではなく、農具を運ぶようなワゴンである。このワゴンが貧困にあえぐ人々のために人生を捧げたキング牧師を象徴しているしているようである。ミュージアムでは私利私欲のためでなく、人々の自由のために心血を注いだキング牧師が歩んだ人生とその時代背景に迫まることができる。写真:キング牧師の遺体を運んだワゴンまた、キング牧師が暗殺された時に泊まっていたホテルの鍵や所持品までミュージアムでは見ることができる。小さなアタッシュケースに必需品を詰め込み全米各地を移動していたらしい。キング牧師は必要最低限の物しか所持しないミニマリストだったのかもしれない。写真:キング牧師の所持品(真ん中にあるのがホテルのルームキー)ミュージアムの入り口にはキング牧師の名言が写真と共に掲げられていた。“It is no longer a choice, my friend, between violence and nonviolence. It is either nonviolence or nonexistence.”(もはや暴力か非暴力の二者択一ではないのです。非暴力か無のいずれかなのです。)※筆者訳しかしながら、近年アメリカで起こったBlack Lives Matter Movementで見られるようにアメリカ国内では人種違いによる暴力は根強く残っている。また、人種、宗教の違いによる分断は以前よりも深まっている気がする。様々な思想や宗教、利害関係が複雑に絡み合う今日の高度情報社会だからこそ、今一度キング牧師の言葉に耳を傾ける必要があるのかもしれない。あからさまな人種差別の経験はないが、私もmicro aggressionと呼ばれる小さな目に見えないアジア人差別のような扱いを受けたことがある。日本国内では経験する機会はないかもしれないが、日本国内を飛び出すと大抵日本人はマイノリティーグループである。どこか心細さを感じるのは自分が常にマイノリティーの立場にいるを強いられるからかもしれない。キング牧師の言葉は寂しさを感じている心に寄り添ってくれるものばかりであった。今回のアトランタへの旅を通じて、多様性を受け入れて認め合うことの素晴らしさと今日の多様性に至るまでに先人達が経験した苦悩を垣間見ることができた。エンリッチセミナーのグループ発表で印象に残った言葉がある。“Freedom should not be taken granted. It is something that must be earned with a collective effort.” 「自由」は与えられる権利(given rights)ではない。各々が弛まぬ努力の末に獲得する権利である。我々が今日享受している自由は先人達の努力によって成り立っている。我々も未来の世代のためにこの自由のバトンを繋げなければならないと感じた。久々に清々しい疲労を感じながら私はどこまでも続く広大な大地を飛行機の窓から眺めていた。大学に戻ったら大量の課題が待っている。また明日から頑張る英気を養った気がした。写真:今回のエンリッチメントセミナーに参加したフルブライターの出身地をまとめたものこれでエンリッチメントセミナーのシリーズは終了である。明日以降はまた通常運転に戻りたい。それでは今日も良い1日を。きたろう
2024.05.21
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昨日に引き続き三日目のエンリッチメントセミナーの様子をお届けしたい。セミナー三日目(3月23日)のスケジュール5:00- 6:00 Pre-Dawn Meals7:00- 8:00 Breakfast8:00- 8:15 Agenda Overview & Community Service Briefing8:15-9:00 Depart for Community Service11:30- 12:30 Return to Hotel12:15-13:30 Lunch14:00- 15:00 Fulbright Grant Benefits & Responsibilities15:00- 15:15 Break15:15- 16:30 Seminar Reflection Workshop17:30- 21:00 Closing Dinner21:00- 21:30 Return to Hotel三日目の朝はコミュニティサービスから始まった。数ある選択肢の中から私はTree Atlantaというボランティア団体が行なっている植樹活動に参加することになった。他にも低所得者層の地域住民に家具を作ったり、近所の公園を清掃する活動など様々なコミュニティサービスが用意されていた。家と図書館の往復ばかりしていて日光を最近浴びていないような気がしたので、運動をしながら地球に貢献ができる植樹活動は魅力的に思えた。朝食を済ませた後に部屋に戻って汚れても問題がない服装に着替えた。前日までずっと雨が降っており地面がぬかるんでいないか心配したが、現場のhighwayの近くに着くと思ったより地面は濡れていなかった。ちょうどよく水分を含んでいて植樹をするには絶好の状態のようである。一通り植樹の仕方を教わった後に3人1組で早速木を植え始めた。穴の深さ、根っこの向き、植えた時の木の角度が木の成長に大きな影響を及ぼすという。3人で手順を確認しながら木を植えた。作業を進めていくうちにどんどん握力がなくなっていることに気がついた。また、普段全く使わない筋肉を使っているせいか体の節々にだるさを感じる。私のチームは合計8本近くの木を植樹した。最後に大きなスギの木を植えて、2時間近くのコミュニティーサービスが終了した。正直、想像を遥かに超える重労働だった。チームを組んだメンバーと労いの意を込めてhigh fiveをしてバスに戻った。微力ながらアトランタの街と地球の環境保全に貢献していたら嬉しい。バスの座席に戻って着ていたTシャツは汗でびっしょりになり、足がガクガク震えていることに気づいた。そのままシャワーを浴びて一眠りしたい気分だったが、スケジュールより遅れていたため部屋で一休みすることもできず昼食会場に急いだ。写真:植樹している様子昼食後はフルブライトのアドバイザーから奨学金制度の説明とQ&Aセッションが設けられた。内容は奨学金受給者のみ関係する話なのでこちらのブログでは割愛したい。セミナーの締めくくりとして最後に振り返りのワークショップが行われた。本当にあっという間の3日間であった。Civil Rights Movementの中心地Atlantaで世界中から集まったフルブライターと人権について議論することができて非常に有益な時間となった。Martin Luther King Jr.の時代からずっと人種差別の問題はアメリカ社会に影を落としている。そしてこの人種差別の問題はアメリカに限った話ではない。移民の話題になると「日本はなぜ移民をそんなに制限しているんだい?日本は難民を受け入れる気はないの?」と聞かれることがある。最近ではバイデン大統領が「日本、ロシア、インドは外国人嫌い(xenophobiac)だ」と発言し波紋が広がった。確かにバイデン大統領がそのように発言したことは遺憾に思うが、そのような考えを日本に対して持っている人々が一定数いることも知っておかなければならない。多文化社会と共生はグローバルな世界で生きる我々にとって避けては通れぬ道である。法整備も重要かもしれないが、それ以前に我々一人一人のマインドセット(心の持ち方)が問われているような気がする。この三日間で出会ったフルブライターは私が日本からやってきたことを伝えると、彼らのお気に入りの漫画タイトルを嬉しそうに話してくれた。ナルト、ワンピース、呪術廻戦、ドラゴンボール、東京喰種トーキョーグール、名探偵コナン、鬼滅の刃などたくさんの漫画のタイトルを耳にした。漫画で登場する日本語のセリフを披露していくれるフルブライターまでいて大変驚いた。日本のサブカルチャーは世界に受け入れられていることを肌で感じた次第だ。海外の文化に興味を持つと同時に自国の文化や歴史、(サブカルチャー)についてももっと勉強しなくてはならないと痛感した。最終日の夜はRay’s on the Riverという川の畔のレストランで夕陽に照らされながら夕食を楽しんだ。この夕食でもDepatment of State(米国国務省)の方とご一緒する機会を得た。”Thank you for choosing me as a Fulbrighter.”と感謝の意を伝えると、”No. We did not choose you. You earned the position.”と言われた。奨学金の選考は抽選ではない。自分で道を切り拓いた者だけが得られる権利のように私には聞こえた。後日メールでお礼を伝えると”Stay active wiht Fulbright!(フルブライトと関わりを持ち続けなさい)”と激励の言葉を頂戴した。この貴重な経験を今後の人生にどう繋げるかが大きな課題となりそうだ。写真:最終日のディナー会場(夕陽が非常に美しかった)最終日の様子についてはまた後日綴ることにする。それでは今日も良い1日を。きたろう
2024.05.16
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昨日に引き続き二日目のエンリッチメントセミナーの様子をお届けしたい。初日の記事はこちらセミナー二日目(3月22日)のスケジュール5:00- 6:00 Pre-Dawn Meals7:30- 9:00 Breakfast9:00- 9:30 Seminar Kick-off9:30-10:30 Make Big Talk Workshop10:30-11:00 Break11:00- 12:30 Panel Discussion- Honoring a Legacy: Remembering the Civil Rights Movement and Building a Future12:30-13:30 Lunch13:30- 14:00 Depart for Site Visits16:00- 16:30 Return to Hotel16:30- 18:30 Advising Office Hours18:30- 21:00 Dinner at a Local Restaurantちょうどエンリッチメントセミナー期間がイスラム教のラマダンと被っていたため、日中断食をしている参加者のために日の入り前の朝食が用意されていた。また、祈りを捧げるmeditation roomもホテルに準備されていた。多様な民族が集まるイベントではこのような配慮も必然的に求められてくるのであろう。改めて多様性とは言うが易く行うは難しと感じた次第である。朝食、キックオフセミナーで諸注意を聞いた後に最初のワークショップに参加した。Make Big Talk WorkshopではKalina SilvermanがZoomに登場した。Small talk(小さい雑談)ではなくあえて大きな話題(Big Talk)を投げかけることでその人の人格や本質が見えてくるという内容であった。また、時に我々は瑣末なことに気を遣いすぎて本来話すべきことから逃避をしているらしい。最初にBig talkをする際のtipsを学んだ後に実際に各テーブルでbig talkをしてみるという流れになっていた。テーブルに並べられた質問(big talk questions)をいくつか紹介したい。What is one of the kindest things that someone has ever done for you?/ What gives you hope?/ What are you curious about lately?/ How are you making a difference in the world?/ What do you fight for?どれも初対面の人とするトピックではないことは明らかである。しかしKalina Silvermanは初対面であってもこのようなbig talkをすることは相手のことを知る上で重要だと述べていた。彼女が通りすがりの人にbig talk questionsを投げかける動画がYouTubeに上がっているのでそちらもご覧いただければと思う。彼女がこのプロジェクトを始めた理由もこの動画を見ればお分かりいただけるのではないだろうか。↓リンク↓こちらパネルディスカッションではCivil Rights Movementを研究されている4名の教授がいらっしゃった。堅苦しい講義というより、1890年あたりから始まるCivil Rights Movementの長い歴史をエピソードも交えて紹介するものであった。パネリストの一人が途中で「普段決して泣くことがなかった父が唯一泣いた日がマーティンルーサーキングジュニアが暗殺された日だった。キングJr.の死亡を伝える速報が流れた瞬間に父は泣き崩れた。」と話されていて出来事のインパクトの大きさを物語っていた。私が知っているのは事実としての情報のみであり、その背後にある人々の感情やその時の様子は欠落している。当事者のリアルなボイス(声)を聞けたのは非常に有益だった。午後のフィールドワークでは当初Martin Luther King’s Jr.の母校であるMorehouse Collegeに訪問予定だったのだが、諸事情によりアトランタの歴史保護区のツアーに変更になった。個人的にはMorehouse Collegeの訪問を楽しみにしていただけに非常に残念であった。また、この日は生憎の天候で予定されていたツアーは変更を余儀なくされ、バスで歴史保護地区を回るという簡素なツアーになってしまった。ツアーガイドがバスで回りながら建物の説明をしてくれるのだが、雨で視界が悪く一体何について述べているのかイマイチわからなかった。最後に回ることができたMartin Luther King Jr.の生家と墓石を見学してツアーは終了となった。改めてこのアトランタの地でCivil Rights Movementが始まったのだと肌で感じることができた。ホテルに戻った後は自由時間となった。夕食は各自25ドルまで使えるカードを渡され、好きなレストランで済ませるというものであった。私はルームメイトが誘ってくれたグループに参加することにした。ブラジル、イタリア、カナダ、そして日本からきたフルブライター8名でホテルの裏にあるハンバーガー屋さんで大きなチーズバーガーを頬張った。そのまま市内のバーに流れ込み、日付が変わるあたりまで会話を楽しんだ。ホテルの部屋に戻ると疲れがどっと襲ってきた。朝からスケジュールが詰まっていて一息つく暇もないほどであった。急いでシャワーを浴びてベットに潜り込んだ。目を閉じると気づけば翌朝になっていた。2ヶ月前の出来事の記憶を呼び起こしながら日記を書くのは非常に難しい。もっと早い段階で下書きだけでも残しておくべきだったと今更後悔している。残りの二日間は後日アップすることにする。Martin Luther King Jr.が通っていた教会:Martin Luther King Jr. の生家:King夫妻が安らかに眠るお墓:降りしきる冷たい雨はキング牧師の死を悲しむ追悼の涙のようにも思えた。静寂を切り裂く水面を打つ雨音はいつまでも絶えることなく続いた。お墓の近くには次の言葉が刻まれていた。"The Dream Lives, The Legacy Continues."(夢は生き続ける。そして、遺産も残り続ける。)それでは今日も良い1日を。きたろう
2024.05.15
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春学期の後半はフルブライトのエンリッチセミナー、家族の渡米、そして学期末の試験と立て続けにやってきて深呼吸をするのを忘れそうになるほどの慌ただしさだった。春学期最後の授業を終えて、少しずつ穏やかな日々を取り戻しつつある。記憶が薄れる前に3月下旬に行われたフルブライトエンリッチメントセミナーについて綴ることにする。世界中から集まった各国のフルブライターと過ごす4日間は刺激に溢れていた。エンリッチメントセミナーはフルブライト奨学生1年目に行われるフルブライト奨学金財団主催のイベントである。イベントは3月21日(木)〜3月24日(日)にかけてジョージア州アトランタで開催された。渡航費、滞在費、食費は全てイベント主催側が負担してくれるため、自己負担は空港までの交通費だけであった。奨学生の学費の支払いだけでなく、このような大規模なイベントが開催できるのは米国の政府予算がついているからであろう。フルブライト奨学金と聞くとどうしても学費・滞在費補助に目が行きがちだが、このようなイベント参加も本奨学金の大きな魅力の一つと言えるだろう。言葉では説明しようがないほど素晴らしい4日間であった。セミナーのことを綴ってもあまり読者の役に立つ情報はないかもしれない。半分備忘録を兼ねているため、ご興味のある方のみお読みいただけたらと思う。それでは忘却に争いつつ記憶を呼び起こしたい。エンリッチメントセミナーは基本的に日程と場所を選ぶことができない。突然決定通知が送られてきて参加の可否を問われる。NOにするとまた別の場所のwaiting listに登載されるらしいが、繰り上がる可能性は低いという。中には抽選に外れてセミナーに参加できなかったフルブライターもいるらしい。なるべくセミナーの案内が来たらとにかく参加をお勧めしたい。私の場合、セミナーが春学期のど真ん中で開催されたため授業を一つ欠席しなくてならなかった。授業を担当している教授に事情を説明して欠席を認めてもらった。幸いその週は提出課題がなかったため、課題の締め切り変更の依頼をする必要はなかった。課題の締め切りが複数セミナーの期間にあったらもっと丁寧に教授とコミュニケーションを図らなければならなかっただろう。セミナー初日(3月21日)のスケジュール11:00- 16:00 Arrivals and Registration12:00- 14:00 Refreshments and Advising Office Hours15:00- 17:00 Hotel Check-In18:30- 21:00 Dinner at Atlanta Botanical Gardens21:30 Return to Hotel最寄りの空港から3時間ほど飛行機に乗ってAtlantaにあるHartsfield-Jackson Atlanta International Airportに降り立った。イベント主催者が準備してくれたシャトルバスに乗り、そのまま市内にあるホテルへと向かった。チェックインを済ませ部屋に入ると、ルームメイトがすでにベッドの上でくつろいでいた。ルームメイトは私に気づくと”Are you my roommate?”と笑顔で声をかけてくれた。私のルームメイトはブラジル出身でハーバード大学にてcomparative literatureを専攻しているドクターの学生であった。エンリッチメントセミナーでは基本的に二人一部屋で過ごすことになる。最初は見ず知らずの他人と4日間過ごすことに抵抗があったが、ルームメイトと4日間過ごす中でブラジルや彼の研究分野についても話を聞くことができ、一人で過ごすよりよっぽど有意義な時間を過ごすことができたと思う。チェックインを済ませて部屋でゴロゴロしているとあっという間にディナーの集合時間となっていた。ホテルのロビーで集合してそこからバスに乗って近くの植物園に向かった。ちょうど花が見頃を迎えており、初日で初対面であるにも関わらず世界中のフルブライターと肩を組み写真をたくさん撮った。ディナーテーブルにはなんとU.S. Department of State(米国国務省)の方とご一緒する機会にも恵まれた。彼女もフルブライトブログラムに参加してフランスに行った経験があるのだという。フルブライトプログラムを米国側で運営している方だから知っているプログラム内部のお話も伺えて非常に有意義な時間となった。また、このディナーテーブルで日本から参加しているフルブライター2名とも約8ヶ月ぶりに再会を果たした。二人とは出国直前の米国大使館で行われたSend-off Party以来の再会であった。異国の地で奮闘するもの同士、元気な姿をお互い見せ合えただけでも励みをもらった。特にこの物価高、円安で日本からの留学生を取り巻く環境は厳しいものがある。正規留学は語学留学と異なり求められる水準が高い。お互い弱音は吐かないが、全員どこかで何らかの苦労をしている。どこか同じタイミングで厳しい境遇にも負けずに戦い続ける戦友のように思えた。久々に日本語を使って会話をしてホッとしている自分がいて母語の有り難みを実感すると同時にいつまで経っても英語は自分にとって第二言語なのだと突きつけられたような気がした。英語が無意識に出てくる状態とはどんな領域なのか一度経験してみたいものだ。キーノートスピーカーはMartin Luther King’s Jr.の出身校としても知られるMorehouse Collegeの教授のレクチャーであった。彼女の話を聞いて、Atlantaがthe Civil Right Movementの中心であり、この地からアフリカ系アメリカ人の自由を求める戦いが全米に拡大して行ったことを学んだ。ホテルに戻るとルームメイトは「これから友達と近くのバーで飲みに行くけどくるか」と誘いを受けた。若い頃はきっと軽快な足取りで参加していたと思うが、アラフォーに近づきつつある私の体は長旅とその後のディナーテーブルで疲れのピークを迎えていた。「お誘いありがとう。夜遅いし、今日はパスしておくよ。」とやんわり断ってベッドに滑り込んだ。その日に起きた出来事を振り返り、心地よい疲れとともに深い眠りについた。初日のキーノートプレゼンテーション:Botanical Gardensではチューリップが満開だった:ホテルに向かう道中で撮ったアトランタの景色:二日目以降はまた後日書くこととする。それでは今日も良い1日を。きたろう
2024.05.14
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最近のキャンパス:あと1ヶ月ほどで春学期も終わろうとしている。円はその後も下落を続けていていよいよ155円に到達しようとしている。(2024年4月17日現在)この円安水準で留学をするとどれほどの出費が見込まれるのか計算してみたいと思う。勿論、進学する大学院によって学費は異なるため、あくまで私の例は一つのサンプルにすぎない。また、ドルと円の為替レートも日々変化しているのでご注意いただきたい。秋学期の学費内訳Tuition $22,242General Fee $1,901Clinical Fee $344Health Insurance $2,105Meal Plan(Optional) $700秋学期合計 $27,242春学期の学費内訳Tuition $29,656General Fee $1,901Clinical Fee $344Health Insurance $2,105Meal Plan(Optional) $700春学期合計$34,706秋学期と春学期合計$61,9482024年4月17日現在のドル円の為替レートは1ドルあたり154.35円であるため、$61,948は9,561,673円(小数点切り捨て)となる。日本円で約950万円近くの学費がかかっていることに驚きを隠せない。実際にはこの金額の上にさらに生活費が上乗せされる。続いて1年目に私が受給している奨学金の内訳をご紹介したい。大学院からの奨学金(merit-based scholarship)$25,000スポンサーからの奨学金(stipend from a sponsor)$40,000奨学金合計$65,000(2024年4月17日のレートで10,032,750円)幸い一年目は奨学金が学費を上回ったため現時点で自己負担額はないが、2年目に関しては奨学金が激減する予定だ。それなりに貯蓄はしてきたが、この物価高騰と円安のダブルパンチは正直想定外であった。関係各所と連絡を取り合いながら、資金不足で強制送還にならないように最後まで足掻き続きたい。これからアメリカに留学を予定されている方は奨学金獲得が非常に重要になってくることを強調したい。留学の2年〜3年前から奨学金獲得も含めて計画的に進めることをお勧めしたい。繰り返しになるが、上記の金額は現在のレートと私の大学院の学費をもとに算出したものである。その時のレートと通う大学によって学費は大きく異なることを留意していただきたい。今日も良い1日を。きたろう
2024.04.18
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かなり遅れての投稿になってしまったが秋学期中に参加したコミュニティーサービスについて綴りたい。結論から申し上げると非常に有意義な経験で研究の傍らまた参加したいと思える活動であった。簡単に活動内容とそこから学んだことを備忘録として残しておきたい。コミュニティーサービスに参加するための手続きについては過去の記事を参照していただきたい。(過去の記事はこちら)10月の下旬から12月末まで週に2回、1回1時間大学の近くにある現地の小学校に行って学習支援をしてきた。Grade1〜Grade3までの生徒に対しone-on-oneで一人30分間算数や読み書きを教えるというものだ。私はGrade 3の男の子2人を担当することになった。ただ勉強を教えるだけではつまらない。学習支援をしながら日本の文化を伝えつつ、児童と一緒に楽しめるものはないだろうか。悩みに悩んだ挙句、折り紙を一緒に折ることにした。急遽日本にいる家族に連絡をとり100円ショップで売っている折り紙用紙を送ってもらった。(なかなか正方形の薄紙はアメリカでは売っていないことがこちらにきてから判明した。日本ではどこでも売っているようなものがアメリカでは売っていないのは盲点だった。)コーディネーターにもCan I do some Origami with my students for an icebreaker?と相談すると”that’s a great idea!”とすぐに許可をもらうことができた。A君は初日から懐いてくれてウォーミングアップ活動で行った折り紙も毎回興味を示してくれたのに対し、もう一人のB君なかなか口を開けてくれなかった。担任の先生からもらったコメントにも”Can shut down when frustrated”と書かれており、積極的に話しかけてきてくれる生徒ではないことはこちらも事前に把握していたのでそこまで驚くことはなかった。A君は明るくて”Can we do Origami again?”とこちらが提示する教材に興味津々だ。しかし、A君はたまにテンションが高くなりすぎて収拾がつかなくなることがあった。サイコロを投げるのがA君はどうしてもサイコロを上に投げてしまう。廊下にコロコロ転がるサイコロを眺めて喜んでいる。ある日サイコロを高く放り投げて、サイコロが廊下に当たった衝撃で真っ二つに割れてしまったのは今となってはA君との良い思い出だ。写真:A君が好きなレインボーフレンズのキャラクター、B君は白紙だった。きっとskaryはscaryのスペル間違いと思われる。B君は基本的に無口で口を開こうとしてくれない。”How are you?”とか”How’s your weekend?”と話しかけてみても”good”とか”nothing”とか反応は非常に薄い。A君と比べて目が合う回数も極端に少なくなかなか接点を探すのに苦労した。どんなに研究機関で理論を学んでも理論通りには絶対行かない。頭でっかちになってはいけないことをB君は私に教えてくれた気がする。B君はホワイトボードに延々と円を描くのが好きで、30分のうち5分〜7分ほど息抜きの時間を作ると集中が続くことがわかった。写真:B君の描いた円二人の共通点はまだまだ読み書きの基礎がまだ備わっていないことだ。私の勝手な先入観で「ネイティブ」は幼い頃から文字と音声を一致させられることができると思い込んでいた。実際に読み書きを教えてみると、ノンネイティブの私でも読み書きに関しては教えられることが沢山あることに気づいた。知らぬうちに日本で「ネイティブ信仰」に陥ってしまっていたのかもしれない。ノンネイティブで所謂「純ジャパ」(個人的には差別的にも聞こえてあまり私はこの用語は好きではない)の私が「ネイティブ」に英語を教えている光景は日本で育った人からしたら非常に新鮮で映っただろう。写真:最終日に渡した鶴の折紙我々が抱く「ネイティブ=英語のプロ、純ジャパ=海外経験がなく日本で育った(英語が苦手な)日本人」は一体何なのだろうか。ノンネイティブの私が現地の小学生に英語を教えているとアメリカ人のコーディネーターの方は毎回”Thank you so much for your great work”と褒めてくれる。ネイティブ、ノンネイティブなんて括りは実は最初から存在しないのではないだろうか。どこからがネイティブでどこからが非ネイティブが定義できる人は実は非常に少ない。アメリカに長年住んできる方ならお分かりだろうが、漢字が覚えられない日本人がいるように数学や読み書きが弱いアメリカ人も沢山いる。ネイティブというアンブレラタームで全てを括ってしまうのはリスクを有していることをお伝えしたい。コミュニティーサービスは非常に有益な時間であった。折角わざわざ日本からアメリカに来ているのだから研究だけでなくアメリカの実社会との繋がりを忘れずにいたい。それでは今日も良い1日を。きたろう
2024.03.09
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「精神と時の部屋」とはドラゴンボールで登場する部屋の名称である。神様の神殿内にある空間でドラゴンボールの主人公である孫悟空が修行した場所として知られている。地球とは異なり時間の流れ方が異常に早い、重力も地球よりも何倍もある、空気も非常に薄いといった特徴がある。精神時の部屋で修行した悟空は一気にパワーアップをする。私にとって大学の図書館はまさに「精神と時の部屋」と呼ぶにふさわしい場所である。時間を忘れて深夜まで文献に耽る場所だ。そこには雑音が存在しない。聞こえてくるのはページをめくる音とキーボードを打ち込む音だけだ。この空間だけは時間の軸が歪んでいるようだ。気づけば3時間4時間とあっという間に経過している。以下の写真をご覧いただきたい。日曜日の夜だというのにこれだけの学生がいる。こちらは同日別フロアの写真日本の大学(院)では考えられないことだ。そもそも日本の大学は日曜日の夜9時に開館していない。文献にもオンラインで24時間アクセスできるようになっていて日本の大学との差は歴然である。PDFを専用のアプリに読み込むと画面上にannotationを簡単に加えることができる。勿論、大学がライセンス料を支払っているため文献のダウンロードから文献保存アプリまで学生は無料で利用できる。(高額な学費に含まれていると表現した方が適切だったかもしれない。)アメリカの大学は非常に勉強熱心な学生が集まる。知識を得ることに貪欲な学生に囲まれていると自然と私もモチベーションが沸々と湧いてくる。日本にいた頃は仕事で疲れていて日曜日の午後に「机に向かおう!」と思わ(え)なかった。日本にいた頃は全てスケジュール管理されていてタスクを期日までに終わらせることに全力を注いでいた。今も忙しいことは日本にいた頃と一切変わらないが自分でスケジュールを組み立てている印象がある。今は時間があれば積極的に図書館に向かう自分がいる。同じ人間なのに環境が違うだけでこれほど人間の行動力は変わるものかと自分自身驚いている。勿論、長時間文献に立ち向かうのは労力を要するし、決して楽しいと断言できる作業ではない。しかし、推敲に推敲を重ねたレポートにいい評価が付いた時の快感は言葉に形容し難いほど嬉しい。精神時の部屋での修行を経て自分がどのようにパワーアップしているのか今から楽しみだ。アメリカの大学図書館については以前の記事でも述べた。米国の大学図書館についてさらに知りたい方は過去の記事も参照されたい。↓リンク↓こちらそれでは良い1日を。きたろう
2024.02.26
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昨日カフェで課題に励んでいたところ急に銀行からメールが届いて飛び上がるほど驚いた。メール送信主は詐欺防犯チームで至急対応が必要なのだという。携帯を確認したら知らない電話番号から数回不在着信も入っていた。以下が銀行から届いたメールである。—————————-(一部変更済み)Dear Customer: It is very important that we speak to you today concerning recent activity on your account ending in ###. Please note that this is not a solicitation email. We were unsuccessful in reaching you earlier by telephone. Please call the Retail Fraud Team at ###-###-####-## option #. Representatives are available to assist you Monday through Friday, 8:00 am until 8:45 pm, eastern standard time. If we do not receive a response from you by #:## pm, EST ##/##/2024, our bank will have to make a decision on how to process the transaction. When you call us, please use sequence number #####, so we can access your information quickly. Thank you for banking with our Bank.———————————-急いでオンラインバンクで口座を確認したが、お金を抜き取られた形跡は全くない。状況が理解できぬまま、このまま放置するのは不味いと思い一先ず支店銀行に足を運ぶことにした。銀行に到着して窓口で先ほどのメールを見せたら早速口座の調べてくれた。奨学金スポンサーに返金する際に作った小切手(check)に不備があったらしく、正しく送金ができずにいることが判明した。所定欄に全て情報を記入したし、送付先も何回も確認した郵送した。どこに手続きの不備があるのか全く理解できなかった。見かねた銀行員がスキャンされた私の小切手を表示してどこかいけなかったのか教えてくれた。銀行員:“You should have put the amount of money in words here as well.”私:「あ、しまった。」確かに小切手のサンプル用紙には数字だけでなく、Payee(受取主)の下に金額を再度書く欄があった。私は右上の数字のみを書いて送付したため詐欺防犯チームから電話がきてしまったのだ。オンラインでの決済が増えつつあるが、それでも物件の初期費用の支払いなどチェックでの支払いを指定される場面がアメリカではしばしある。サンプル用紙:(私が今回記入し忘れた場所を蛍光ペンでマークしておく。)こんなミスを繰り返しながらアメリカの地で逞しく成長していけたらと思う。これから留学や駐在を予定されている方は私の二の舞を踏まないよう気をつけていただきたい。それでは今日も良い1日を。きたろう
2024.01.21
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今回が秋学期の振り返りの最終回となる。週ごとに学習事項をまとめるだけでもかなりの時間を要した。改めて自分で読み返しても非常に濃い秋学期だったと感じる。きっと春学期はこれまで以上に濃密な時間になることだろう。どんなに忙しく大変であっても心の奥底に困難を楽しむ余裕を持っていたいと思う。余裕がなく追われるだけの日々はどこか虚しい。秋学期の反省を生かして春学期はさらに飛躍したいと思う。授業名:Approaches to Teaching English and Other Modern Languages Week 1 Course Introduction自己紹介、授業の概要、授業の進め方、成績の付け方、生成AIツールの扱いについて確認。Week 2 Historical Overview of Language Pedagogy I教科書(2冊)チャプターリーディング。文法訳読式授業(通称GTM)からコミュニカティブアプローチ(CLT)までの通史を扱った。各方法の背景を眺めると当時の外国語の在り方や学習目的を垣間見ることができた。言語教育はその時代を映す鏡のように思えた。日本では急速にスピーキングのニーズが高まっているが、それはビジネス界で外国人との交流が増えているからであろう。しかし、高校入試や大学入試に変化の兆しは見られない。社会の変化に入試システムが追いついていないようだ。Week 3 Historical Overview of Language Pedagogy II教科書のチャプターリーディング(7章)。グループに分かれて、各教授法を分析した上で発表するという授業だった。こちらの授業では各個人の貢献(contribution)が求められる。また各グループの発表に対して質問やコメントをせねばならず自分たちの発表だけでなく他者の発表にも集中を切らさずに見なければならない。まさにstudent-centered learningが実践されている。Week 4 Communicative Language Teaching I教科書のチャプターリーディング(3章)、ビデオレクチャー1本。教授がコロナ禍で作成したビデオを視聴して知識を得た上で授業に臨むスタイルだ。英語では同期型授業をsynchronous session、非同期型授業をasynchronous sessionというが、この授業は2つのタイプをうまく組み合わせた授業となっていた。つまり、授業外ではビデオを視聴し、授業中はビデオで出てきた用語を使ってディスカッションをする形となっている。ビデオはコロナがなければ存在していなかったと思うが、非常によく授業がデザインされている。Week 5 Communicative Language Teaching IIビデオレクチャー1本、論文1本。Dell Hymesが提唱したCommunicative CompetenceをベースにCommunicative Language Teachingの基本理念を学んだ。またその強みと弱みを授業中に議論した。非常に大きな可能性を秘めているが、教師に英語の運用能力が求められる気がした。また、パフォーマンス評価にはそれなりのトレーニングが必要となる。ペーパー試験が重視されるアジア諸国にはなかなか馴染みにくい教授法なのかもしれない。Week 6 Lesson Planning I教科書(2冊)チャプターリーディング(3章)。授業計画に関する授業であった。授業をデザインする上で必要な基礎知識を学んだ。Week 7 Context Shaping the Language Classroom論文2本、ビデオレクチャー1本。教える上で様々な文脈が存在する。年齢、教える人数、国、EFL/ESL、教材、カリキュラムなど数えだしたらキリがない。一つ一つの要素がどのような影響を与えるか教室内で議論した。年齢の特性なども踏まえた上で教えることで教育効果を最大限に引き出すことができるはずだ。Week 8 Teaching Interaction教科書のチャプターリーディング(3章)、ビデオレクチャー1本、論文1本。主に外国語のスピーキング、ライティングの指導法について学んだ。Week 9 Teaching Vocabulary教科書のチャプターリーディグ、ビデオレクチャー1本。語彙の基本的な習得理論と語彙の提示方法について学んだ。語彙をimplicitもしくはexplicitに提示することで生じる学習者の認知力の差についても議論した。日本では単語帳を用いてexplicitに提示することがメジャーだが、ここももしかしたら改善の余地があるかもしれないと授業を受けながら思った。Week 10 Teaching Grammar教科書のチャプターリーディング、ビデオレクチャー1本、論文1本。Week 11 Teaching Literacy教科書のチャプターリーディング(2章)、ビデオレクチャー1本。Week 12 Assessment教科書のチャプターリーディング(2章)診断的評価、形成的評価、総括的評価の違いやそれぞれの特性について学んだ。個々の特性に応じて評価を下すことができれば理想的だが、日本の一斉授業のスタイルできめ細かな評価をするのは困難だと思ってしまった。Week 13 Lesson Planning II論文1本。この授業ではアメリカの外国語の教室を3つ見学してその様子をレポートにするという課題が出されていた。本から理論を学ぶだけでなく実践から学ぶ機会があったのは非常に有り難かった。Week 14 Workshop for Final Paper2000ワードのレポートについて教授に質問できる日となっていた。教授が焼いてくれたクッキーや各自持ち寄った飲み物や料理を味わいながら秋学期を振り買った。教授が履修者に寄り添って授業を進めてくれて非常に学びの多い授業であった。理論と実践を繋げようとする姿勢が窺え大変プラクティカルな内容であった。グループで議論した内容をオンライン掲示板に毎週アップロードするという課題が出され、毎週末ズームでクラスメイトと議論した。個人での作業だけでなくグループでの作業が求められるのが印象的だった。毎週末議論を重ねる過程でクラスメイトとの仲も深まった気がする。やはり授業のデザインの仕方次第でクラスの雰囲気が変わることを実感した。学びの雰囲気作りの重要性をこの授業を通じて再認識した。有難いことにこの授業でもAをいただくことができた。ただ、このAは私個人に起因するものではなく、グループでの作業を評価してもらった結果だと思う。グループワークの比率が他の授業と比べて大きく、そこでの高評価がAにつながった。グループでの作業は勿論時にストレスを伴うが、グループワークを通じて他者と協調するために必要なコミュニケーション能力が高まった気がする。
2024.01.09
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前回の記事に引き続き秋学期の振り返りをしたい。うろ覚えの部分もあるため内容に誤りが含まれている可能性があることを予めご容赦いただきたい。授業名:Linguistics in EducationWeek 1 Introduction教科書のチャプターリーディング。自己紹介、コースの概要説明、評価の仕方、課題の説明。Week 2 Lexicon and Morphology教科書(2冊)のチャプターリーディング。論文1本。語彙の分類や生成方法について学んだ。接頭辞、接尾辞については学部生の頃に学んでいたので少しアドバンテージがあったのが大変助かった。改めて英語の語彙の形成プロセスは多様でかつダイナミックであることに大変驚かされる。Lexical rulesを用いて語彙学習をすると非常に効率よく覚えられるような気もするが、いかがだろう。backformationやblendingといった語彙形成プロセスについてもこの週に学んだ。Week 3 Phonetics教科書(2冊)のチャプターリーディング。論文1本。この週から英語の音声学の分野を学んだ。自然に身につけた音も科学的な視点から学ぶと新たな発見が沢山あった。口腔図(口の中の断面図)は大学生の頃から何度も眺めてきた図である。こちらも大学生の頃の知識が大変役立った。卒業して10数年経過しても染みついた知識は脳内にしっかり記憶されていたことが嬉しかった。努力して獲得した知識は決して無駄ではないらしい。母音と子音の違い。そして一つ一つの音声の出力方法を学んだ。Labiodental, fricatives, affricatesといった基本的な音声学の用語もこの週に学んだ。課題1提出:インタビューを行いその発言を書き起こした上で分析するという課題であった。発話の形態素や語形変化(inflections)を詳しく見ることで発話者の誤りや癖を見つけ出すことができた。Week 4 Phonology教科書のチャプターリーディング、論文3本。前週に続き言語の音声について学んだ。音声学は物理的な側面に焦点を当てるのに対し、音韻論は実際の発話に焦点を当てているように思えた。詳しくphonological rulesについて学ぶのは初めての経験だったが、大変有益だった。この2週だけでだいぶIPA(International Phonetic Alphabet)の正確な表記方法について学ぶことができた。Week 5 Syntax教科書(2冊)チャプターリーディング(3章)、論文2本。Syntaxはいわば文法構造の学問分野である。学部生の頃にも散々学び既習事項であるもののかなり苦手意識のある分野でできれば避けたかった箇所である。特にTree structureと呼ばれる文の分析(parse)は非常に難解でほろ苦い大学生の頃の記憶が一気に蘇ってきた。卒業しても苦い記憶は脳裏の奥底にしっかり残っていて自分でも驚いてしまった。この辺りもNoam Chomskyの生成文法(Generative Grammar)についても学んだ。課題2提出:インタビューを行いその発言を書き起こした上で分析するという課題であった。書き起こす作業にかなり手こずったが様々な分析方法を学ぶことができ大変参考になった。Week 6 Semantics教科書チャプターリーディング、論文3本。MetaphorやModalityについて学んだ。言語によって比喩の使い方、指示語の使い方が異なるのは非常に興味深かった。Week 7 Pragmatics教科書(2冊)のチャプターリーディング、論文2本。この週は文脈が発話に与える影響について学んだ。新出情報と既知の情報を相手にどう提示するか、それによって発話のイントネーションや文の構造にどのような変化が生じるのか文献を読みながら学んだ。英語を外国語として学んできた身としてはまさに目から鱗であった。また、とある研究によると英語学習者はpolitenessがネイティブ話者より低いという結果も出ているようで教育的示唆に富む内容であったと思う。課題3提出:3人にインタビューを実施して、そのインタビュー結果を元に分析を行うという課題だった。10個の文を与え、文法的に許容できるかできないかを判断してもらう。ネイティブと非ネイティブで文法の寛容度に大きな乖離があり非常に興味深い結果が得られた。研究の大変さと楽しさを垣間見た気がする。Week 8 Speech act and Conversation教科書のチャプターリーディング、論文3本。この辺りからだんだん言語学から社会言語学の色彩が強くなってきた印象がある。最初の5週は古典的な言語学を学んだが、後半に行くにつれて社会の中で言語がどのように機能しているか学んだ印象がある。相手によってどのように話し方が変わるか考察した。言語のformalityやpolitenessについて知識を深めることができた。Week 9 Digital Tech and Language Use論文4本。機械翻訳やテクノロジーの進歩が言語学習にどのような影響をもたらしているか学んだ。機械翻訳の歴史や生成AIの基本的な仕組みについて学ぶことができ、非常に知的好奇心をそそられた週であった。この週で中国からの留学生と一緒にグループプレゼンテーションを行った。オンラインで入念なリハーサルもして本番を迎えたが、発表時はやはり緊張した。なるべくアイコンタクトを取って、英語の発話ペースにも気をつけるようにした。教授からは”Thank you for your great presentation!”とお褒めの言葉をいただいた。課題4提出:自分で作文した文章を機械翻訳にかけて、その正確さを評価するという課題であった。昨今はChatGPTやDuolingoの台頭で外国語教育の意義そのものが問われつつある。機械翻訳もまだまだ改善の余地があることがこの課題から判明した。Week 10 Age factors in Language Acquisition 教科書チャプターリーディング、論文2本。臨界期仮説(The Critical Period Hypothesis)に関する論文を読み込み授業内でディスカッションをした。言語はとにかく早期に始めるのが良いという考えがあるがそこには問題がいくつもあることがわかった。家族をつれてアメリカに住む者としては大変興味深かった。自分の子供たちが言語をどのように吸収するのか近くで観察したいと思った。Week 11 Language and Thought教科書チャプターリーディング、論文2本。この週ではSapir-Whorf Hypothesisという有名な仮説を文献を読みながら検証した。言語が思考にどれほど影響を与えているかという問いだが、決定的な答えがまだ導き出せていないというのが個人的には興味深かった。詳しく調べるためには被験者を隔離して言語との接点をなくす必要があり、倫理的な問題があるようだ。英語ではよく”Which came first: the chicken or the egg?”ということがあるが、言語と思考の関係を学びながらこの質問がふと脳裏をよぎった。Week 12 Language Variation教科書チャプターリーディング、論文4本。この週のトピックは言語の方言だった。英語学習者は「スタンダード英語」を学んでいるが、実は英語の方言は多種多様で奥が深いことがリーディングで明らかになった。また、ネイティブスピーカーの文法への寛容度も年代によって変化をしていることも大変興味深かった。またこの週でKachruのWorld Englishesについても学んだ。African American Vernacular English(AAVE)についても学んだのもこの週だ。※エッセイ課題1を提出した。Week 13 No ClassWeek 14 Language Acquisition教科書チャプターリーディング、論文2本。第一言語、第二言語問わず「言語の習得プロセス」について学んだ。babblingから始まり、赤ん坊がどのように言語を学んでいくかを学んだ。まさに自分の子供が言語を学んでいる真っ最中で重なる部分が多々あった。言語習得には特殊なインタラクション(交流)が必要であることもわかった。テレビの前に置いておくだけでは言語の習得はなかなか促進されないらしい。これは大人の言語習得にも同じことが言えるような気がした。 ※エッセイ課題2を提出した。Week 15 Presentation and Discussion最終週は自分が作成したレポートについてプレゼンテーションを行った。最後の方は意識が朦朧になりながら課題に取り組んでいたため、正確に自分が何をしていたのかあまり正確に覚えていない。※エッセイ課題3を提出した。最終的にこの授業の成績でAをいただくことができた。読み込む論文の量も他の2つに比べて一番多く最も苦労した科目であったのは間違いない。そんな大変な科目でAをとれたことは自分にとって大きな自信となった。サイのツノのように一歩ずつ進めばゴールに辿り着けることがわかった。春学期以降も今回得た教訓を胸にどんな困難が待ち受けようとも一歩一歩確かな歩みを続けたい。上記からお分かりの通り、大学院では扱う文献の量が桁違いに多い。授業は3つしか取らないのだが、とにかく一つの授業の課題の量が日本とは比べ物にならないのだ。文献を読んだことを前提に授業が展開するため、文献をスキップした上で授業に臨むとディスカッションにうまく入っていくことができない。
2024.01.08
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春学期を迎えるとまた目まぐるしい日々が始まるだろう。来学期は秋学期よりも1つ授業科目を多く取ることが決まっていため秋学期よりも慌ただしくなることは必至である。備忘録として秋学期に履修した授業3つについて書き留めておきたい。シラバスを見ながら書いているが所々うろ覚えの箇所がある。教科書や論文を一つ一つ照らし合わせながら書いているわけではないので不正確な箇所があることはご容赦いただきたい。授業:Introduction to Applied LinguisticsWeek 1 Orientation自己紹介、授業の概要、授業の進め方、成績の付け方、Plagiarism など違反事項の確認、Week 2 応用言語学という学問とは?論文3本、オプションでもう1本の計4本。全て応用言語学に関する論文である。全て違った角度から応用言語学を定義しており、すべての論文を読んだ上でどのようにこの学問を定義するかという授業であった。従来の言語学、また教育言語学(Educational Linguistics)とどう異なるのか議論するのは非常に面白かった。Week 3 応用言語学が扱う問題論文2本。論文を読んだ後にリスポンスをCanvasに提出しなくてはならない。抽象的な描写が多くなかなか具体化していくのが難しかった。Week 4 応用言語学者の活動論文2本、オプションでもう一本の計3本。応用言語学というより社会言語学(sociolinguistics)に近い内容出会った。言語学者がどう問題を見つけ出し、その問題にアプローチしているか学んだ。Week 5 言語学習の概念化論文2本、オプションでもう一本の計3本。談話(discourse)という枠組みの中で言語学習がどう体系化されているか学んだ。言語と文脈は切り離そうとしても切り離せない。文脈が与える影響について学んだ。課題:初めて長めのレポートを提出した。自由度が非常に高い課題で、自分で問題を提起してその解決策を模索しなくてはならずかなり時間を割いてレポートを仕上げた。論文のフォーマットも慣れておらずスタイルを合わせるのにも苦戦した。結果的に100点中95点を獲得することができた。教授からもお褒めの言葉をいただき自分の投資した時間と努力は無駄でなかったと実感できた瞬間であった。Week 6 Academic Discourse Socializationとそのプロセス論文3本、教科書のチャプターリーディング。この辺りからリーディングがかなり重くなってきた印象だ。読む内容の難易度もかなり難しくなってきて一度読んだだけでは内容が頭に入ってこないことが多々あった。Week 7 議論の提示方法論文2本、ビデオ1本、オプションの論文1本の計4本。論文の書き方を再度学んだ。引用の方法や出典の書き方を復習した。特にPatchworkとPlagiarismの微妙な違いは興味深かった。知らぬうちにAcademic Dishonestyに手を染めないようこれから気をつけたいと思った。Week 8 学術論文でのコミュニケーション方法論文2本。レトリカル・シチュエーション(読む人の背景知識、目標、目的)を意識した論文の書き方を学んだ。アカデミックな論文であっても読み手を意識したわかりやすい文体を心がけたい。Week 9 応用言語学との関わり方論文1本、教科書約60ページ。Week 10 言語とアイデンティティ論文4本、オプションで1本の計5本。アイデンティティ、人種について深く扱った。日本のような比較的homogeneousの国家ではこのようなトピックは扱われたことがなかったので非常に新鮮であった。raceとethnicityの違い、Raceとracismの違いについて授業中に議論をした。アメリカ国内で人種差別を受けたクラスメイトもいて聞いていて心が痛む場面もあったが、アメリカ社会の現実を目の当たりにしたような気がした。自分が日本で育ちそのようなトピックに関心がなかったせいかもしれない。人種問題に対して無知すぎる自分に少しだけ腹が立った。Week 11 リサーチメソッドこの辺りから論文の課題は無くなった。その代わり自分で図書館に行き興味のある論文を探すようタスクが与えられた。与えられたリーディングをこなすのも大変だが、自分の興味に関連する論文を探し出して読み込む作業もそれはそれで非常に大変だ。Week 12 論文課題準備、Week 13 論文課題準備と教授からのフィードバックWeek 14 最終試験に向けて復習課題:レポート提出自分で課題を見つけ、論文を引用しながら解決策を探るという課題であった。いくつか与えられたパターンに応じて書き方を変えなくてはならず、最終的には3000〜4000ワードほどのレポートになった。Canvasに提出したあと両手を天井に突き上げ、心の中で大きく叫んだ。それほど時間をかけたし、達成感を感じた瞬間であった。成績のことはひとまず置いておいて次週やってくるファイナルに向けて机に向かうことにした。この時期は他の授業でも課題が山場を迎え、休む時間がないほど勉強した。授業が終わったら図書館へ、そしてアパートに戻って睡眠をとって、また翌朝図書館に向かう生活を続けた。時間を惜しんで書物に耽り、勉強したのは何年ぶりだろうか。学生時代の懐かしい思い出が蘇ってきた。Week 15 最終試験最後に2時間のテストが待ち受けていた。10数年ぶりに受けるテストはこれほど緊張するとは思わなかった。いくら勉強しても頭の片隅には常に不安が付きまとうのである。どんなに今までの論文を読み込んでも自分が完璧から程遠いように思えてしまう。軽く負のスパイラルに陥っていたが、友人からのアドバイスもありなんとか前向きになり試験を乗り越えることができた。最終的にこの授業はAをいただくことができた。最初は課題のペースについていくのに必死で苦労したが、後半は授業内でのディスカッションにもなれ自分からどんどん発言できるようになっていた。教授や友人が自分の発言の後に頷いてくれると自分の自信につながった。教授がディスカッションがしやすい環境を用意してくださったのも非常にありがたかった。発言をすると”Thank you.”/“I appreciate your remark.”など言ってくれるのだ。自己肯定感を高めるような助言があるとクラス内の発言はより多くなる気がした。あとはクラスのサイズの問題だろうか。私の大学では最大でも人数が17人ほどになっている。教授は17人でも「人数が多すぎる」と不満を漏らしていた。日本ではいまだに30人~40人での一斉授業が当たり前に行われている。そこでディスカッション中心の授業をしろというのにそもそも無理があるようだ。一人一人の発言に耳を傾けるためにはクラスのサイズを15名程度まで減らさないと物理的にディスカッション中心の授業は成立しないだろう。きたろう
2024.01.07
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ようやくThanksgiving休暇に入り9月に授業が始まってからゆっくり時間を気にせず寝れるようになった。今週はゆっくり過ごしながら来週に控えている課題やレポートを少しずつこなしたい。昨今の円安でなるべく自炊をするように心がけているが、それでも3食全て自分で用意することは容易いことではない。朝食と夕食は自分で用意して、お昼は大学の学食で済ませるのが最近の定番となりつつある。今回の記事はアメリカの大学の学食ではどのような食事が提供されているのかご紹介したい。もちろん大学によってはbuffetスタイル(食べ放題)で提供しているところもあるし、メニューも全く異なる。あくまでサンプルの一つに過ぎないことをご注意いただきたい。味と値段が釣り合っているかどうかについてはご想像にお任せすることにする。メニュー1:寿司(マグロとアボカド)値段:$8.99昔は海外で生物を食べたらお腹を壊すと言われたが、寿司が普及しておりスーパーでも購入できるようになっている。味も決して悪くない。メニュー2:弁当値段:$13くらい寿司、スパイシーチキン、ご飯とその上に乗っている餃子、そしてサラダという日本ではあり得ない組み合わせである。ちなみにこの商品名は「Bento」である。アメリカ人のイメージするお弁当はこのような感じらしい。メニュー3:ブリート値段:$11くらい丸いふわふわの生地の中にライス、チキン、ビーン等が沢山詰まっていてお腹が空いている時に食べたくなる一品だ。私の大学ではbeef, chicken, shrimpの3種類があってどれも美味しい。レポートや課題に追われているときに食べると元気が湧いてくる気がする。私の勝負飯のような存在だ。メニュー4:チキンテンダー値段:$8.5くらい名前の通り、チキンを揚げたものです。これに1,000円以上支払うのであれば、私はファミリーマートのチキンを4つ頼みたい。これを頼むたびにアメリカの物価は高いと痛感する。メニュー5:ハンバーガー値段:$13くらいアメリカの典型的なランチメニューだろうか。美味しかったが、やはり高額だ。毎日食べていたらそれだけで破産してしまいそうである。メニュー5:照り焼きチキンボール値段:$8.5テリヤキソースがかかっていて個人的にはかなりハマっているメニューだ。ただ量は少なめで4時ごろになるとお腹が空いてくる。この量でも1000円以上するから驚きだ。日本で500円以下でお昼が食べられていた頃が懐かしい。もちろん今回紹介したのは学食メニューの一部に過ぎない。ただおかわりの通り、メニューは大体8ドルから14ドルくらいが相場だ。留学を検討されている方はこのあたりの出費も考慮されたい。きたろう
2023.11.24
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ここまで社会人、そして研究者の側面から大人留学の意義を述べてきた。今回は個人的な話になるが、一人の父親の視点から留学する意義を考えてみたいと思う。今回の記事が「大人留学の意義とは」の締めくくりとなる。父親として留学する意義:「留学するなら家族も一緒」という妻との約束があったためそもそも単身での留学は想定していなかった。私自身子どもたちに日本の外の景色を若いうちに見せてあげたいと思っていた。私が海外に飛び出したのは高校3年生の研修旅行、本格的に海外に行きたいと思い始めたのは大学生になってからだった。もっと早く海外に行っていたら自分の視野はもっと広がっていたのではないかと思うことすらある。留学を決意した際に自分が海外の地で新たなことに挑戦している姿を子どもにも見せたいと思った。プロスポーツ選手が子どもに自分が出場している姿を見せたいと思う心境に似ているのかもしれない。自分の背中を見せながら自分が生きる上で大事に思っていることを伝えることができたらそれほど幸せなことはない。家族と一緒に海外の地で暮らせるのも社会人留学の特権だと思う。勿論、自分だけでなく家族のウェルビーイングもケアもしなくてはならず、一緒に暮らすからこそ発生する問題も多々あることも事実である。今は円安もあって不安は尽きないが、留学が終わって日本行きの飛行機に乗った時に子どもが「もっとアメリカに暮らしたかった」と言ってくれることを願って今はとにかく前を歩み続けたい。人手不足とされる今の日本の社会構造では大人留学はしにくい環境にあるが、大人留学がこれからのスタンダードになっていくことを願っている。特にこれからの人生は100年と言われている。学びの期間が20年でその後80年学びなしに働き続けるのはあまりにも非現実的ではないだろうか。専門性を高めてその後所属企業のみならず社会全体に貢献することができれば、社会人留学のメリットは非常に大きいはずである。留学は決して高校生、大学生の特権ではないと考えている。どの世代で留学しても必ず得られるものがあるはずだ。これからも地道に有益な情報を提供しつつ留学の裾野を広げていけたらと思う。現実からかけ離れていると鼻で笑われてしまうかもしれないが、私はそれでも理想を追求し続けたい。きたろう
2023.11.11
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前回の記事は社会人として留学する意義を考えた。今回は研究の視点から大人留学の意義を考えてみたい。なお私は研究業績をあげているわけでもないし、著書があるわけでもなくごく普通の会社員である。しかし大学院に入学するためには自分の分野を定める必要があり、研究分野は出願や大学院の選択に非常に大きな影響を与える。留学と研究は切っても切り離せない関係だ。研究者として留学する意義:読者の中には大学院進学であれば日本国内でいいじゃないかと思われるかもしれない。しかし、私は海外の大学院進学を選んだ。どうせ大学院に進学するのであれば、自分の価値観を根底から覆すような経験をしたいと思ったからだ。自分が慣れ親しんだ日本よりも海の向こう側に渡った方がそのような経験が沢山できるのではないかと考えた。沢山の論文を読み込みクラスメイトと議論をしてその議論の内容をレポートに落とし込む作業が秋学期以降繰り返されている。その全てを英語で行なっている。英語の語学力は勿論だが、英語で議論を継続する力も求められる。英語の知識を知っているだけでは歯が立たないのだ。是非これから留学を検討される人は英語を実際に使う機会を設けるよう心がけてほしい。また、折角自分の専門性を高めるのであればその道の第一線で活躍されている研究者から学びたいと考えた。欧米の大学は潤沢な研究資金があり、その資金を人材確保や研究費のために惜しみなく費やす。(その分年間の学費も非常に高額になるのは以前述べた通りだ。)自分が読んだ専門書の著者本人から少人数で指導を受けることができるのは大変幸せなことだ。研究環境の上でもアメリカは非常に優れていると感じている。また、アメリカは成果主義で学生からの評価が低かったり、業績を残していないとすぐに解雇されてしまう。そもそも年功序列という概念がアメリカには存在しないのだ。厳しい世界だが、厳しい世界だからこそ高い教育・研究の水準が保たれているような気もする。また、世界中から集まった学生と一緒に学べるのも海外で学ぶからこそ得られる経験だろう。アメリカは国籍を問わず優秀な学生が集まってくる。様々なバックグラウンドを抱えた学生と一緒の教室で学べるのは非常に刺激に満ちている。日本ももっと留学生の割合が増やしたら英語の能力も学びの質も変わってくるのではないかと密かに思っている。以上研究の視点から大人留学を考えてみた。次回は父親としての視点から留学の意義を書くつもりだ。それでは良い1日を。きたろう
2023.11.10
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秋学期も残り一ヶ月ほどなり授業と課題に追われブログの更新がなかなかできずにいる。今学期も佳境を迎え期末テストや学期末のレポートが重く乗り掛かり始めてきた。ここからが渡米してから最大の正念場を迎えそうである。気を抜かずに一つ一つ丁寧に課題を仕上げていきたい。アメリカの広い空を見上げながらふと自分はなぜ今この瞬間にアメリカの地にいるのだろうと思うことがある。奨学金のエッセイや研究計画で散々書いてきた内容なのだが、渡米した後でさらにこの問いが自分に向けられていることを感じている。社会人、研究者、そして父親の視点からこの留学の意義を再考したい。社会人として留学する意義:私は社会人になって10年が経過し現在30代である。企業では中堅の役職にいて、まさに働き盛りの世代と言ってもいいだろう。様々な仕事を任せてもらえるようになり、多くの仕事を抱えながらもそれなりにやりがいを感じていた。安定した給料もいただき、衣食住には困らず生活できていた。留学せずに日本に留まるという選択肢もあったが、私は敢えて挑戦することを選んだ。日本社会で10年以上働いてきて、社会人として専門性がこれからさらに求められてくると思ったからだ。もし労働市場が今まで以上に流動的になった時に10数年前に取得した学士号だけで家族を支えていくのは心許ないように思えた。人生は何が起こるか全く予想ができない。自分が今の会社から解雇されない保証はどこにもないのだ。また、修士号を取得して自分の専門性に磨きをかけたら今後の長い人生を歩む上でプラスになると考えた。社会人になっても学びたいと思う自分の気持ちに正直でありたいと思ったのが留学を決意したきっかけだ。スキルアップができれば新たなチャンスが生まれるかもしれない。MBAであればそこから仕事のチャンスが巡ってくることだってある。大人の留学はまさに自己のアイデンティティーの再定義の機会であり、新たな学びと出会いに満ちている。海外留学は高校生や大学生に限った話でないことをここから発信できたらと思う。次回は研究者として留学する意義について綴りたい。きたろう
2023.11.09
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ここまで「仕事・育児しながら海外大学院に出願するということ」と題してシリーズで海外大学院の出願手続きについてご紹介してきた。今回は番外編として出願が終了してから出国するまでの手続きについてご紹介したい。大学院の出願は大体12月〜1月にかけてピークを迎える。昨年の年末年始は出願の記憶以外ほとんどない。実家に帰って新年の挨拶を交わしたが、常にエッセイの題材が脳内を去来していた。出願が完了すると"Thank you for submitting your applications!"と画面に表示される。あれだけ時間を費やして死に物狂いでやってきたのに、何とも呆気ない幕切れである。提出した後に何度もポータルサイトを訪れ書類の漏れがないか確認をした。1月以降先方からも何の音沙汰もなく空白の時間だけが流れていった。3月を過ぎてから何の前触れもなく"Your Decision Now Available"と書かれた件名のメールが続々と届き始める。家族と共にポータルサイトにある通知を開くと"Congratulations!"で始まる文面が目に飛び込んできた。年甲斐にもなく大声を出しながら思い切りガッツポーズをしてしまった。2020年から3年かけて積み重ねてきた努力が報われた瞬間である。追い求め探し続けてきた最後のパズルのピースが見つかってすっぽりとはまった瞬間であった。2020年はピースはバラバラだし、そもそも完成させるためのピースが揃っているのかもわからないい状態だった。そして最大の問題は完成図がどのような光景なのかすらわからない状態からピースを繋ぎ合わせなくてはならなった。最後のピースが揃った時に今までの霧が一気に晴れていくようであった。結局6校に出願して5校から合格をいただくことができた。さらに朗報はそこで終わらなかった。合格だけでなく15,000ドル〜30,000ドルの奨学金を大学から出してもらえることが判明したのだ。これは出願時には全く想定していなかったことで完全に嬉しい誤算であった。ドル建て奨学金の最大のメリットは為替レートの影響を受けないことだ。円建てでの奨学金では為替レートの影響をダイレクトに受けてしまう。2023年10月31日現在為替レートは151円となっており、米国内の物価高と相まって日本人留学生を取り巻く環境は非常に厳しい。私が今アメリカの地で研究に励むことできているのは決して私に経済力があるわけではなく、ドル建てでの奨学金があるからである。誤解を避けるために申し上げると、ドル建てでの奨学金をうまく組み合わせてもこちらでの生活は決して楽ではない。こちらでの学費と生活費を全て現在のドル円レートで換算したら想像を絶する。厳密な計算はしていないがきっと年間1000万円は超えてしまうだろう。日本国内の私立文系の大学であれば4年間の学費を払えてしまうかもしれない。大学のランキングはさておき値段だけで判断したら日本の大学に通うメリットは大きいように思える。特に国内の大学の学費を支払って海外の提携校と交換留学ができる制度があればその制度を利用した留学を強くお勧めしたい。為替レートで考えれば日本の大学の学費の方が圧倒的に安く、費用に対して得られる効果が大きいだろう。少々脱線してしまったので話をもとに戻したい。合格通知と奨学金通知を受け取った後はZoomでウェルカムセッションが3月下旬に次々と行われた。学部長からお祝いの言葉をいただき、教授や大学院生からその大学の魅了を大いに語ってもらった。まさか5校も合格をいただけると思わず嬉しい反面、思わぬ葛藤が生じることとなった。いただける奨学金の額は異なるし、プログラムの内容、教授の専門性、立地や現地の治安もそれぞれ異なるからだ。様々な角度から天秤にかけながら迷いながら最終的に一番行きたいと思っていた学校に行くことにした。3月下旬には渡航外来病院(トラベルクリニック)で海外渡航に必要なワクチンを接種した。5月以降は荷造り準備や壮行会などで瞬く間に時間が過ぎていった。7月からはビザの申請をしながら仕事の引き継ぎをしなければならず多忙を極めた。壮行会で激励の言葉をもらうたびに留学の実感と同時に新生活への不安と焦りが少しずつ生じ始めた。また、家族と一緒に過ごせる日数が減るにつれてだんだんと家族と別れる寂しさが込み上げてきた。新しい生活への期待、不安、そして寂しさが同時に込み上げてきて自分でも当時の心境をうまく表現する言葉がなかなか見つからない。出国前夜には家族が壮行会を開いてくれて、妻の手料理と長男が書いてくれた手紙に思わず涙が溢れた。家族が書いてくれた手紙は机の上に飾ってあっていつでも眺められるようになっている。研究が行き詰まった時や落ち込む出来事があった時に読み返すと自然と元気が湧いてくる。いわば私の元気の源だ。多くの人の支えがあって私は研究に専念できていること肝に銘じながらこのシリーズを終えたい。最後に出国までの流れを時系列に並べたい。12月〜1月 出願手続き3月上旬 合否結果発表3月下旬 Welcome Zoom、渡航外来受診、進学先決定4月〜 デポジット支払い、各所挨拶回り、荷造り準備、アパート探し5月〜6月 ビザ申請7月 仕事引き継ぎ、荷造り最終チェック8月 出国後半はだいぶ荒いまとめ方で大変恐縮である。出国前は非常に慌ただしくなる。大事なことは後回しにせずどんどん処理していくことが重要だ。野球と一緒で来た球を見逃すことなくどんどん打ち返していく瞬発力が必要である。きたろう
2023.11.01
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前回は奨学金の手続きについて一通り流れをご紹介した。後編となる今回の記事では海外大学院の出願についてお話ししたい。海外大学院と言っても大学ごとに出願の時期、提出書類、応募資格は異なるので一概には言えないというのが本音だ。私は米国に限定して出願したので米国の大学院に限定して話を進めたい。留学生であれば避けて通れないのが英語運用能力を証明する書類の提出である。ETSが行なっているTOEFL、British Councilが実施しているIELTSのスコアを義務付けている大学がほとんどだ。最近ではDuolingoの使用を認める大学も増えてきた。相性の良し悪しがあるので自分の特性を鑑みながら一番スコアが出やすいテストを探して欲しい。何の根拠もなく一つの試験に固執するのが一番よくないパターンだと思う。目的はあくまで大学院に合格することであって、TOEFLやIELTSで高得点を取得することではないのだ。あくまで英語の試験は手段であって目的ではないと私は考えている。私の場合、最初はTOEFLを受けていたが、スピーキングが伸びずノンネイティブの私はどんなに話し方や表現を工夫してもコロンビア大学やハーバード大学が求める25点を越えられなかった。一回の試験に245ドル(10月24日現在36707円)もサラリーマンの懐にはかなり痛手でこのまま受け続けると留学をする前に破産しかねないと思い、すぐにIELTSに切り替えた。IELTSは本家のBritish Councilの他に委託を受けた英検、IDP、JSAF、バークレイハウスといった団体が実施しており実施団体によっても値段が異なる。25380円〜27500円(2023年10月23日現在)で受験が可能だ。円安ドル高の昨今の為替レートではIELTSの方が圧倒的にお得である。スピーキングテストは対面でネイティブ(全員綺麗なブリティッシュアクセント)と行われるのがTOEFLとの大きな違いだ。私は対面の方が自然なコミュニケーションが生まれやすくスコアもIELTSの方が出やすかったのでIELTSに切り替えたのは正解だと今でも思っている。しかし、TOEFLのライティングでは27点を出したのにこちらではなかなか7.0に届かなかった。大学院入試でつまずきやすいのはスコアメイキングかもしれない。しかし、大学院に入ってしまえばその後TOEFLやIELTSのスコアで競争することは一切ないのであくまで入試に突破するための試練だと思って取り組んでもらえたらと思う。実際こちらにきてIELTSの勉強はアカデミックライティングのいい練習になったと思う。スコアメイキングについてはまだまだ書きたいことが沢山あるのだが、他にも出願に必要なことが沢山あるので次に進みたい。英語の勉強を進みながらやらなければならないことは推薦者の選定である。前回の奨学金でも推薦者の一筆が必要だったが、大学院でも推薦者の推薦状が必要となる。大体大学が求める推薦状の数は平均三通である。奨学金の推薦文をお願いする際にやんわりと大学院出願の際にも推薦文が必要になることをお願いしておくのが得策だと思われる。相手への負担を軽減するためにも自分の長所や研究内容は英文で推薦者に送っておくのがマナーであろう。推薦者も多くの仕事を抱えながら非推薦者のために時間と労力をかけて推薦文を作ってくださるのだ。非推薦者に全てを丸投げするのは御法度だ。実際に推薦者と何度もメールのやり取りをしながら自分の経歴や留学の必要性などを丁寧に説明した覚えがある。決まりはないが推薦文の依頼は少なくとも締め切りの半年前には打診をしておくと相手も心の準備ができると思う。また、案外大変だったのが成績証明書(大学卒業証明書)の提出だ。アメリカ国外を卒業した学生は成績を認定された第三者機関に提出してGPAを算出してもらわないといけないのだ。これが非常に煩雑であった。なぜならば、私は学部生の頃に1年間海外留学をしており、そこで取得した単位を日本の大学の卒業単位に読み替えていたからだ。第三者機関に成績証明書を送付した後に数値化できない成績がありこのままではGPAが出せないと書類を国際郵便で送ってから二週間後に連絡が届いた。早速留学していた大学に連絡をしたところParchmentというシステムを使えば成績証明書を第三者機関に直接送ってもらえることが判明した。Parchmentでアカウントを作成して必要事項に入力すると日本にいながらアメリカからカナダへの第三者機関へと成績証明書を発送することができた。本当に便利な世の中になったものだとつくづく思うと同時にアメリカはこのような大学と第三者機関の間での連絡システム構築がしっかりしており驚かされる。私はWES(World Education Services)という機関に成績の読み替えを依頼した。成績は4段階中3.81という自分でも信じられない高数値になった。卒業して10年以上が経過するのに自分の成績を見て喜ぶのは何とも不思議な感覚である。就職先が決まっていたためか卒業時は自分の成績を見ても何とも思わなかった気がする。大学4年間サボらずに授業を出席し続けた当時の自分に感謝した。WESは読み替えを完了すると"Evaluation Completed"というメッセージと共に各大学に成績(大学卒業証明書)を電子送付してくれる。ここで気をつけなければならないのは成績証明書(大学卒業証明書)の原本データも卒業した日本の大学から各出願先の大学に送らなければならないということだ。WESから届いた証明書と私が卒業した大学から送られた証明書の2点が揃って初めて証明書が受理されたことになる。日本の大学がParchmentのシステムに加盟していれば送付が圧倒的に楽なのだが、日本の大学はまだParchmentに加盟しておらず別途手続きが必要になった。この辺りのシステムが整理されるともっと日本の学生が海外に進学しやすくなるのではないかと思った。そして、最後にエッセイである。エッセイは「自分の思いを大学に伝えるラブレター」である。なぜあなたが大学院に行く必要があるのか、行くことでどのようなメリットがあなた、そして大学にあるのか丁寧に書いてほしい。私はエッセイに一切お金をかけなかったが、添削サービスはいくらでもあるのでそちらを利用するのも一つの手なのかもしれない。ただ、添削サービスを使っても落ちる時は落ちるので最終的には自分の責任でエッセイを提出することを忘れないでほしい。自慢をするわけでもなく、卑下するわけでもなくあくまで等身大の自分を描く必要があると感じている。自慢話ばっかりラブレターに書いても相手は引いてしまうだろうし、謙虚すぎてもあなたの魅力は十分伝わらないと思う。限られた文字数で自分のエッセンスを引き出してもらいたい。大体米国の出願は12月〜1月に向けて大詰めを迎える。師走の時期は仕事が立て込んでいて全くエッセイの校正に時間を割く余裕がなかった。年末年始の休業に入ってから突貫工事で一気にエッセイを仕上げた。クリスマス・お正月はお祝いムードはゼロで受験生のごとくとにかく机に向かった。子供が寝かしつけた後に再び起きて作業をするのは正直辛かった。仕事の疲れと睡魔に襲われながら暖かい布団を抜け出さなければならないのだ。このままぬくぬく心地よく朝を迎えられたらどんなに幸せだろう何度願ったかわからない。冷え切った自分の部屋で毛布に包みながら必死に書いては消して、書いては消して、また書いてという作業をただただ繰り返していた。パソコンを開いたまま寝落ちしていたこともあった。それほどエッセイの作成は壮絶だった。きっとタイムマネージメントが上手な人はこんな状態には陥らないのだろうが、仕事と育児をしながら出願準備をしているとどうしても目の前のことが優先になってしまい顕在化しにくい大学院入試の準備が後回しになってしまった。自戒の念も込めてここに反省点を書き残しておく。本当はエッセイのコツや英語の勉強方法についても触れたかったのだが、今回は手続きにフォーカスしてお話しした。最後に時系列で流れを整理したい。2020年:英語の勉強開始2021年:TOEFL受験、IELTSに切り替える。IELTS対策本を買い漁る。2022年:推薦文の依頼とご挨拶、TOEFL受験2022年夏以降:エッセイ着手、CV(履歴書)作成開始2022年11月頃:WESにGPA算出依頼、大学の成績証明書と卒業証明書発行、IELTS受験ラッシュ2022年12月:銀行の残高証明書発行、エッセイ最終校正、2023年1月:ビデオエッセイ提出、出願締め切り2023年2月〜3月:合格発表結果発表から出国までの流れを「番外編」でご紹介することとする。追伸、ブログ開設から二ヶ月か経過しようとしているが、そろそろカウンターが5,000を越えようとしている。仕事、育児、学業で忙しい中、電車内や隙間時間に読んでくれている読者に深く感謝申し上げたい。この留学紀がインターネット上の共有知となってスクリーンの向こうにいる未知数の読者の今後に役立ったら嬉しい限りだ。きたろう
2023.10.26
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前編は奨学金についてお話ししたい。ごく一部だが各種奨学金制度についても本ブログで扱ってきた。高校生についてはこちら、大学生・社会人についてはこちらを参照していただきたい。奨学金の獲得の有無は大学院入試において非常に重要な2つの意味を持つと考えている。一つ目は経済的負担の軽減だ。アメリカの大学の学費は日本と比べ物にならないほど高額である。学部によっても費用が異なるので単純化はできないが、基本的には日本円で年間600万円700万円が当たり前の世界である。寮費や航空運賃、医療保険料、教科書代金、食費や交際費を全て入れたら1000万円は超えてしまう勢いである。私はごく普通の会社員で決して裕福ではないし、普通のサラリーマン家庭に生まれたため実家が裕福なわけでもない。さらには子供がいて守るべき家庭もあり、家のローンだってしっかり残っている。周囲からは「子供の養育費や家のローンを使い込んでまで自分に投資する必要ある??」とまで言われた。正直正論すぎて反論できなかった。しかし、お金がないということを理由に自分の夢を諦めたくはなかった。お金がなければ世の中に還元することを条件に支援してくれるスポンサーを探せばいいのではないかと考えた。会社員で家庭を持っている私にとってまさに奨学金の獲得は十分条件ではなく必須条件となった。二つ目の意味は大学出願時のアピール材料だ。奨学金が付いているということは大学からしてみれば学費を支払える能力があるという安心材料にもなる。また、何かの受賞歴と一緒で選考を通過した優秀な学生というイメージを相手に与えることが可能となる。ただし同時に注意も必要だ。私自身肩書きに寄りかかるのはあまり好きではないし、寄りかかり過ぎると自然とおごりが生じる。あくまでアピール材料の一つとして考えてほしい。アメリカの大学は合否を総合的に判断するので、一つの材料で合否が決まることはまずない。奨学金獲得で安心しすぎてその他の部分で手抜きをすればその箇所が尾を引いて不合格になるということもあり得るのだ。奨学金は決して水戸黄門の紋所ではないので注意したい。私の場合、大学院留学入試を大雑把に時系列で並べるとスポンサー(奨学金)の獲得→職場への申請→大学院の出願という流れになる。勿論オーバーラップしている箇所があり、前回の記事でもお伝えしたとおり綱渡り状態であった。実際職場への申請はスポンサーの結果発表より前に提出しなければならず、一時期は背水の陣の状態に陥った。「これで万が一奨学金がつかなかったらどうしよう」と思うたびに少しネガティブな気持ちになっていたことを今でも思い出す。なんでそんな一か八かの選択肢を取るのかと質問がきそうだが、私が留学するにはその選択肢しかなかったように思える。世の中は自分中心で回っているわけではないし、全ての手続きには手順と締切が存在する。私の都合のために待ってくれる組織なんていないのである。特に会社員で大学院留学をする場合はどこかのタイミングで腹を括らなければならない瞬間がやってくるだろう。応募する奨学金を絞り込んだら、応募条件、応募書類、締切等を確認してリスト化することをお勧めする。注意しなければならないのは奨学金の応募する数である。自分は結局三つの財団に応募したが、それでもタイムマネージメントが非常に大変だった。闇雲に応募すると二ヶ月〜三ヶ月後に結果的に自分の首を絞めることになるのでやめておいた方がいいと思う。特に社会人の場合普段の仕事をこなしながら同時並行で応募書類を準備しなければならないので精神的、肉体的負担が大きい。最終的には三つの内一番希望していた団体から内定をいただくことができた。残りの二つからも合格をいただけることを願ったが、残念ながら不採用の通知が後日届いた。どんなに全力を尽くしてエッセイを書いても突破しないこともある。受験と一緒で奨学金の獲得も御縁だと思っている。面接官との相性もあるだろうし、当日の質問事項によっても相手の印象が左右するだろう。自分を大きく見せることなく、等身大の自分の魅力を最大限発信してほしい。自分が大学院留学を検討し始めたのは確か2020年あたりである。ちょうど東京五輪が延期するかしないか揉めていた頃であった。妻にもこの辺りで「留学に行きたい」と打ち明けた気がする。妻からの返事は「家族を連れて行ってくれるならいいよ」であった。家族が帯同するとなるとお金がさらにかかることが想定された。奨学金獲得と留学は計画当初からセットで考えていた。奨学金の応募には自分の志望動機書のみならず推薦者の推薦文も必要であった。大学の指導教官、前職の上司、現職の上司にメールで事情を話し、コロナによる行動規制が緩和されたあたりを見計らって手土産と共に直接ご挨拶に伺った。コロナで数年ぶりの再会であったが、そんなブランクを感じさせないほど話が盛り上がった。一通り留学の決意に至った経緯を話して、丁寧に推薦文のお願いをすると全員快く引き受けてくださった。応援してもらえることが嬉しかったし、頭を下げてお願いしている相手にベストな結果を届けられるよう頑張ろうという気持ちが芽生えた。それと同時にもう引き戻せないプレッシャーもひしひしと感じ始めたのもこの頃だ。メディアが発達してメールで済ます文化が浸透しているが、私は大事なことは面倒臭がらずに直接足を運んでお願いするべきだと思う。膝を突き合わせることでお互い胸襟を開いて話ができると思う。5月末に書類選考があり、それを突破すると7月に二次書類選考がある。二次の書類選考は和文、英文、大学証明書、英語を証明する書類などを提出しなければならない。それを突破すると9月中旬から10月にかけて面接が行われる。かなり準備をして面接に臨んだが、かなり研究内容について突っ込まれ躊躇してしまう場面もあった。自分の研究内容を英語でうまく表現できない場面もあり、自分の不甲斐なささえ感じてしまった。面接はズームで行われたのだが、あまりにも厳しい質問が続きエネルギーを使い果たして面接終了後、真っ暗になったパソコンの画面を5分程度ずっと見つめている自分がいた。気づけばワイシャツがびっしょり濡れていて面接の緊迫感を物語っていた。その日家に帰って妻から「どうだった??」と聞かれた。正直に「全力を尽くしたけど手応えがあるかどうかはわからないな」と答えた。その後二ヶ月は全く音沙汰がなかった。しかし、大学院入試の準備は進めないとスケジュール的に間に合わない。序章でも伝えたが、本当に未確定の状態で物事を進めなければならないのは本当に辛い。ピースが一つでも揃わなければ今まで重ねてきた努力が水の泡になってしまうからだ。夢は潰えてしまうかもしれないがとにかく自分を信じて前を向いて走り続ける以外方法がなかった。12月中旬、突然"Selection Result of xxxxxxx"と書かれたメールが届いた。添付ファイルを開いてみると奨学金の内定通知であった。2020年の夏あたりから2年の半年の月日が流れようとしていた。気持ちを抑えることができず、職場のビルを飛び出して妻に電話した。「通った!通った!合格してた!」周りの目を憚ることなく叫んでいた。妻も喜んで「よかったね。おめでとう。」と言ってくれた。自然と涙が込み上げてきて頬を伝っていた。嬉し涙なのか重圧から解放された安堵の涙なのか自分では区別がつかなかった。その日は仕事が一切手につかず足早に家路につくことにしたのを鮮明に覚えている。時系列に流れを整理したい。2020年夏:留学を決意、英語の勉強開始2020年10月:奨学金の情報収集2021年前半:推薦者にメールで推薦文の依頼、ご挨拶2021年年末:エッセイ着手、応募書類の準備2022年前半:エッセイ校正、2022年5月:一次書類選考提出締切2022年6月:一次選考結果発表、追加書類準備2022年7月:二次書類選考提出締切2022年9月〜10月:最終面接選考2022年12月中旬:結果発表文字で並べるのは簡単だが、この行間にはここでは書けないような生々しい数々のドラマがある。平凡な毎日が一つの決断でこんなにも変化するものかと自分でも驚いている。私の留学は現在進行形だが、全てが終わった時にあの決断が自分と家族にとってプラスに働けば嬉しい。奨学金を獲得しても渡米はまだ決まっていない。ここから厳しい大学院入試の道のりが始まるのであった。(大学院入試編に続く)きたろう
2023.10.25
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出願手続きをどこかで記録に残しておきたいと思いながら、あまりにも怒涛すぎて書く暇もなく気づけば渡米していた。「時間があった時にやろう」というスタンスでいると全くやらないのが自分の性格だ。先延ばしせずにちょっと大変な時にでも無理やり予定を詰め込んでしまった方が自分の性に合っていると思い始めている。週末も課題にずっと追われている(論文6本+プロジェクトのZoom meeting2本)が現実逃避するかのようにブログに逃げ込んでいる自分がいる。昨年の今頃は何をしていたかなと思い返したらちょうど奨学金の選考の真っ只中であった。職場から休職の許可が下りるかわからない、奨学金が合格できるかわからない、海外の大学院に合格できるかわからない、TOEFLやIELTSのスコアはなかなか向上しないという不安の連続との戦いだった。不確定要素がありすぎてずっと暗闇のトンネルの中を目印もなくただただ走り続けているようであった。あれだけ胃に穴が何個も開きそうな状態だったのに、1年経つと他人事のように客観的に当時の様子を振り返っている自分がいるのが不思議だ。ピースが一つでも揃わなければ自分はアメリカに来られなかったと思うとまさに1年前は本当に綱渡りのような人生を歩んでいた。決して自信があったわけでもないのによくあんなリスクを背負って挑戦したものだと自分でも驚いている。きっと私がこうしてパソコンに文字を打ち込んでいる最中も暗闇のトンネルの中を走り続けている社会人、大学生、高校生がいるんだと思う。私のやり方が最適解とは思わないし、むしろこんな向こうみずなやり方は悪い例かもしれない。しかし、私の文章で励まされる人が多少なりともいることを願ってこのブログを綴りたい。私の場合、大きな壁として立ちはだかったのは大学院入試と奨学金の確保だ。会社への申請も大変だったが、申請方法や時期は各会社で異なるだろうし、このブログで紹介したところであまり参考にならないと思う。したがって、大学院入試と奨学金の大まかなスケジュールをここに残したい。気をつけていただきたいのがこれは決して所謂ハウツーブログではないということだ。留学は私の記事を読めば成功するほど簡単じゃないし、これを読んで奨学金を確保できる可能性が上がるわけでもない。自分の英語に自信があったわけではないが、海外進学専用の塾にも一切通わなかった。英文のエッセイの添削もお金を一切かけなかった。正直そこに時間とお金を割くほどの時間と余裕が当時の自分にはなかった。今思えばかなり常軌を逸した方法で専門家からしたら「ありえない」と一蹴されてしまうかもしれない。決して正攻法とは言えないアプローチ方法だが、仕事と育児をしながら大学院出願した30代の会社員のくだらない記事がトンネルの中にいる誰かを勇気づけて次の一歩の役に立つのであればと思いここに記録を残しておく。とここまで書いて長くなってしまったのでこの記事を序章として詳しくは次回にしたい。記録を残した手帳を日本に残してきてしまったため頭に残っている記憶を呼び起こしながら書くつもりだ。したがって一部記憶違いがあることを最初に付記しておく。(課題がかなり溜まっているのでアップに時間がかかることが想定される。ご容赦いただきたい。)きたろう
2023.10.24
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前回は高校生対象(海外の学士号取得を支援する奨学金プログラム)の奨学金を紹介した。今回は海外大学院進学を目指す大学生、社会人が応募できる奨学金をご紹介したい。フルブライト奨学金人数:大学院留学プログラムについては約20名支給額:授業料40,000ドル。他に生活費、家賃手当て等も別途支給。(2023年10月現在)日米の相互理解を促すためにウィリアム・フルブライト上院議員によって設立された奨学金制度である。学費のみならず生活滞在費のサポートもあり非常に充実しているのが特徴である。進学先は米国のみ、また留学後は自国滞在義務などもあり条件がいくつかある。詳細は公式ページを参照されたい。孫正義育英財団奨学金人数:約35名支給額:給付対象となる内容に応じて合理的に必要と認められる金額を支給。(2023年10月現在)ソフトバンクCEOを務めている孫正義氏が立ち上げた財団によるプログラムである。研究分野は不問でとにかく未来を切り拓き将来のリーダーとなりうる若者を支援することが支援の目的となっている。平和中島財団奨学金人数:20名支給額:月額30万円及び往復渡航費(2023年10月現在)神山財団海外留学奨学金人数:若干名支給額:年間100万円X2年間が上限(2023年10月現在)JASSO海外留学支援制度人数:151名(前年度実績)支給額:月額8万9,000円~14万8,000円(留学先地域により異なる)、実費額(各年度250万円を上限、予算の状況に応じ300万円まで支給可能)、新規採用者の支援開始時に16万円を支給(2023年10月現在)番外編トビタテ!留学JAPAN高校生対象の奨学金でもご紹介したが、こちらのトビタテ!留学JAPAN(通称トビタテ)は大学生でも応募が可能だ。確か留学期間は1年未満で短めのプログラムにはなるが、採用人数が多いのが特徴である。短期でもいいから学生のうちに留学をしておきたいと思う学生におすすめだ。繰り返しになるが留学は情報戦でもある。相手の大学から国外にいるあなたに手を差し伸べてくれることはまずない。自分で積極的に情報収集をして、すべてを鵜呑みすることなく自分で咀嚼しながら有益なものを吸収していくサイクルを繰り返しながら牛歩でもいいから進むことが重要だと思う。きたろう
2023.10.23
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渡米して2ヶ月が経過したが、円安ドル高の状態がずっと続いている。このところずっと148円〜150円を彷徨っている感じだ。(2023年10月現在)大学院の場合、学費の支払いは1年〜2年で限られているため多少円安でも割り切って支払えるかもしれないが、大学の場合は4年間で一度入学したら卒業するまで基本的に学費を支払い続けなければならない。また、アメリカの大学は学費に加えて寮費も支払わなければならないため年間の教育費が$80,000(約11,988,400円)ほどになる。4年間通うとなると$320,000(約47953600円)必要となる。勿論、学費は各大学によって異なるため今述べた金額はあくまで目安に過ぎないが、日本の大学とは比較にならないほどの支出が見込まれる。アメリカは大学からの奨学金が日本よりもずっと充実しているがかなり優秀な成績や顕著な課外活動を収めていないと全額学費補助は難しいであろう。経済的負担を減らすためにできることは給付型の奨学金に応募することだ。今回は高校生が応募できる奨学金をいくつか紹介したい。柳井正財団海外奨学金プログラム人数:予約型、合格型合わせて40名程度金額:年間US$95,000(英国は£65,000)を上限とし、4年間(英国は原則3年間)支給(2023年10月現在)米国、英国のトップ50の大学に入学することが条件になるが、寮費も含めてこれほど手厚くサポートしてくれる奨学金は稀で国内トップレベルの奨学金プログラムと言えるだろう。笹川平和財団奨学金プログラム人数:40名程度金額:年間US$95,000(英国は£65,000)を上限とし、4年間(英国は原則3年間)支給(2023年10月現在)柳井財団に並び有名な全額給付型の奨学金プログラム。こちらも規模としては国内トップレベルである。番外編トビタテ留学JAPANこちらは短期留学となるが、官民協働での留学支援事業となる。留学未経験で英語はまだ少し心配だけどそれでも外国に行ってみたいと思う高校生に是非検討してもらいたい。これ以外にもロータリー奨学金や各自治体の奨学金プログラムなど様々な奨学金が存在する。情報収集から留学はすでに始まっている。きたろう
2023.10.22
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応募してまもなくプログラムコーディネーターからメールを受け取った。そのメールを読んで驚愕した。--------------(Some changes are added to the original message)Thank you for continuing in the process to become ....! We are grateful for your time in preparing for this commitment.You are required to obtain and submit 4 mandatory background clearances:1. Child Abuse History Clearance2. State Criminal History Check3. FBI Background Check4. Madated Reporter Training Certificate---------------海外でボランディア経験がない私にとってこの最初の文面は衝撃だった。ボランティアの応募なのになぜ日本のアルバイトよりはるかに要件が厳しいのだろうか。日本のアルバイトで身の潔白を証明する書類の提出を求められた話など聞いたことがない。ただここは日本ではなくアメリカだ。日本の当たり前を相手に押し付けても通じない。「郷に入れば郷に従え」の精神で淡々と対応するしかなさそうだ。この4つの書類を揃えるのにどれほど苦労したか備忘録として残しておきたい。1. Child Abuse History Clearanceこれは過去に児童虐待をしていないことを証明するために必要らしい。アメリカに長期滞在したことがない留学生の私がわざわざ州の児童福祉課のHPでアカウントを作って書類の発行手続きをするのはおかしな話だが国内外問わず応募した学生は提出が義務付けられているので仕方なく発行手続きを行なった。なお条件を満たしていたので発行手数料は無料であった。私の何を調べたのかわからないが、オンラインで申請して約5分後には"Your clearance application has been updated with the results of our review."の文で始めるメールが届いた。2. State Criminal History Checkこちらも州の公式ウェブサイトでアカウントを作成するよう命じられた。どうやら3.のFBI Background Checkとリンクしているようで、すぐには結果通知が届かなかった。こちらも条件を満たしていれば手数料は無料。3. FBI Background Checkこのバックグランドチェックが最大の鬼門であった。なぜならアカウントを作成した後、予約をして近くの検査所にて指紋を提出しなければならなかったからだ。なぜボランティアをするために自分の指紋を提出しなければいけないのか全く理解ができなかった。後日、同じくボランティアに参加する友人に「ボランティアなのにこんなに手続きが煩雑なんだろうね」と軽く愚痴ると「アメリカのコミュニティサービスに参加する時こんなものだよ」と返ってきた。アメリカは犯罪率が日本に比べてはるかに高く、見ず知らずの人を安易に招くとその地域の治安悪化に繋がりかねない。ボランティアだろうとしっかり身元のチェックをすることで地域の安全を保っているのだ。改めてこんなバックグランドチェックなしてボランティアに参加できる日本は平和だなと思ってしまった。因みに指紋と写真の提出で$23.25の費用が必要となった。(後ほどプログラムマネージャーに領収書を提出すれば清算してもらえるとのこと)4. Madated Reporter Training Certificateボランティア参加者は市が用意したトレーニング受講が必須となっていた。合計3時間のチュートリアルビデオを視聴した後に選択問題を解いて80%以上であれば証明書が発行してもらえる。正直大学の課題をこなしながら3時間のビデオを視聴をするのは非常に苦痛であった。ビデオを理解できていれば選択問題は簡単に解くことができた。こうして何度も心が折れそうになりながらも書類を全て揃えることができた。コミュニティサービスはまだ始まっていないが、ここからもアメリカ社会の現実を垣間見ることができた気がする。書類を揃えるだけで6時間〜7時間ほどの時間を費やし本当に研究をしながらボランティアに励めるのか少し心配になってきたが、一度決意したのだからせめてこの秋学期だけでもやり遂げるつもりだ。このブログでの文面を私の所信表明としたい。多分個人情報の観点で写真や仕事内容は掲載できないのだが、そこから得た学びは読者と共有していきたいと考えている。きたろう
2023.10.17
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大学院も7週目が終了し、もうすぐ折り返し地点に到達しようとしている。課題の量がどんどん多くなってきているが少しずつペースも掴めてきた。キャンパス内で課題に励んでいると一枚のポスターに目が留まった。よく眺めてみると大学が主催している学外でのコミュニティサービスに関する案内であった。面白そうだったので応募してみることにした。思い切って応募しようと思った理由がいくつかある。最近自宅と図書館の往復を繰り返しており何か刺激が足りないと感じ始めていた。週に1回か2回学外に出て新鮮な空気を吸うことで体と頭をリフレッシュできるのではないかと考えた。また、コミュニティサービス自体非常に面白そうで将来の自分のキャリアに役立つのではないかと思った。また、家族が合流すると今までより研究に割ける時間は少なくなる。ここで自分の許容量に達してしまっては家族が来てから研究と育児の両立は難しくなると思った。今でも決して余裕があるわけではないが、ここでさらに自分に負荷をかけることでタイムマネージメント力を高められるのではないかと思った。自分の首を絞めることにもなるかもしれないが、今後の自分に必要なスキルだと思うのでしっかり頑張りたい。最後に自分のコンフォートゾーンになりつつある大学のバブルを出てアメリカ社会をのぞいてみたいという欲が出てきたことが挙げられる。学費が高額なだけあって大学はリソースが豊富で研究環境が充実している。この恵まれた環境は非常に居心地がいいのだが、長く居座るとアメリカ社会の現実は見えてこないのではないかと思い始めている。最初の数週間は日本の大学との差に日々驚いていたが、2ヶ月が経過して少しずつその驚きも薄れ始めこの恵まれた環境に慣れてきている自分がいる。そろそろ自分のコンフォートゾーンを広げる努力をしたいと思い始めた。大学の心地よいバブルを向こうにどのような世界が広がっているのかとても楽しみで仕方ない。しかし、アメリカでのコミュニティサービス参加には大きな壁が立ちはだかっていることに私はまだ気づいていなかった。後編に続く。きたろう
2023.10.16
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今朝大学から以下のメールが送られてきました。ーーーーーーーーーーーー(Some modifications are added to the original message)Dear Student, After review and verification of your immunization records, you have not met all of the University’s immunization requirements. These requirements exist to support you along your academic journey and to create a community of care at the University. All local pharmacies such as CVS, Rite Aid, Walgreens and Urgent Care Centers have same day or same week appointments and can provide the vaccine(s). If you are unable to receive and provide documentation for your missing vaccine(s), a hold will be placed on your account in mid-October which may interrupt your advance registration which begins 10/30/23. ーーーーーーーーーーーーアメリカの大学のワクチン接種義務は日本に比べてはるかに厳しいです。私が通う大学のimmunization requirementsは以下の通りです。MMR※: 2回接種義務※Measles(はしか), Mumps(おたふくかぜ), Rubella(風疹)の混合ワクチンHepatitis B※:3回接種もしくは免疫証明書※B型肝炎ワクチン。日常会話ではHep Bと呼ばれる。Tetanus-Diphtheria-Pertussis※:1回接種義務※Tetanus(破傷風), Diphteria(ジフテリア), Pertussis(百日咳)の成人用三種混合ワクチン。通称T-dapと呼ばれている。Varicella(Chicken Pox)※:2回接種もしくは罹患履歴があれば免疫証明書※水痘もしくは水ぼうそうMeningococcal※ : (学内の寮に住んでいる学生のみ)1回接種義務※ 髄膜炎菌性髄膜炎医療系に進む学生以外はスペルを覚える必要は全くないのでご安心ください。上記は必須接種項目で実はこれ以外にも接種が推奨されるワクチンがあります。私は渡米前に渡航外来クリニック(トラベルクリニックとも呼ばれている)にてMMR(2回目)、Tdap(1回目)、Polio(1回目)のワクチンを打ちました。そして渡米後にHep Bの接種を受けております。本来日本で済ませておくべきでしたが、仕事と出国前の準備で確認を忘れておりHep Bのみ未接種のまま渡米してしまいました。8月に書類を再度読み直している時に気づいて急いで9月上旬にStudent Health Serviceで1回目の接種を終えましたが、2回目を打つためには1回目を受けてから一ヶ月期間を空けなければならず現時点ではまだ大学が求めている要件を全てクリアできていません。そして大学から今朝警告のメールが届いてしまいました。今回のメールは接種を怠っている学生に対するペナルティの予告となります。事情を説明するために急いでImmunization Officeに電話をしてみましたが大変混み合っており全然繋がりませんでした。何度も電話をかけてようやくオペレーターと話すことができました。10月中旬に予定されている2回目の接種を受ければペナルティを免れることができることが判明し胸を撫(な)で下ろすことができました。世界中からより良い研究環境を求めて学生が集まってくる大学だからこそ世界各地の疫病が学内で流行ってしまうリスクが生じます。そのリスクを軽減するために厳しいimmunization requirementsを設けているのだと察します。私は8月の時点で条件を満たせていないことに気づけたのでなんとかペナルティは免除できそうですが、もしこのメールで未接種に気づいたら時すでに遅しでした。留学される際は必ず各大学が設けているimmunization requirementsとinsurance policyの2点を確認することをおすすめします。私も30歳を超えてから合計5本のワクチンを打つことになるなんて想像もしていませんでした。アメリカの基準からすると私は無防備で過ごしすぎていたようです。留学をしていてまた一つ新たな発見に遭遇することができました。きたろう
2023.10.04
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アメリカの大学は学費が高いことで有名だが、その分リソースも豊富である。私が通っている大学のキャンパス内には大小含め図書館が14あるらしい。図書館のパンフレットには"Find a place to work, study, create, and collaborate in our libraries! Our 14 library locations offer: designated areas for quiet study, reservable rooms and booths for group study, computers, monitors, and other technology, different kinds of seating, lighting, and software to suit your particular needs"と記されている。これは10年以上前に留学した時にも受けた衝撃だが、アメリカの大学では図書館が真夜中まで開いているのである。以下の開館時間案内掲示板を見ていただきたい。ご覧の通り学期中は週7日開いていて、金曜と土曜日を除いて夜12時まで利用できるようになっている。行けば大体開いていてまるで日本のコンビニに立ち寄るような感覚で利用できてしまうのだ。遅くまで勉強した女子学生をシャトルバスで自宅まで送り届けるサービスまで存在する。キャンパスの近くに住んでいる場合は警備員が自宅までエスコートしてくれるらしい。これなら遠くに住んでいる親御さんも安心して学生を学校に送れるだろう。大学図書館が遅くまで開いているだけでなく、帰宅時のフォローまでする手厚さには脱帽である。日本とは違って公共交通機関が発達していないアメリカではキャンパスの近くに住むほか選択肢がなく、多くの学生がキャンパスの周辺に住んでいるから提供できるサービスとも言えるだろう。リーディングの課題が終わりそうにないので気分転換も兼ねて週末に図書館に行ってみると学生が熱心に課題に取り組んでいた。意外に思われるかもしれないが、アメリカの学生は勤勉である。熱心な学生に囲まれると自然と私も課題に取り組む意欲が湧いてくる。週末の図書館の様子をご覧いただきたい。かなり席が埋まっていることがお分かりだろう。特に窓際の席は人気が高い。学期が始まった直後でこれだけ埋まっているとテスト前はどうなってしまうのか。こちらはリーディングルームと呼ばれる部屋で私語が禁止されている。ページを捲る音とキーボードを打ち込む音だけが響く不思議な空間だ。つい先日課題に追われて夜21時過ぎに図書館を出ようとしたら受付の警備員が船を漕いでいた。「おいおい警備員が居眠りをしていいのか?立派な職務放棄じゃないか。」と思いつつも気持ちよさそうに寝ているので起こす気にはなれなかった。こんな場面に出くわすのもアメリカならではだと思う。暗闇に包まれたキャンパスを歩きながら自分が朝から晩までキャンパスの敷地内で過ごしていることに気がついた。まるでキャンパスの住人になった気分だ。この空間で学びたくで遥々日本からやってきたのだ。どんなにインターネットの技術が発達しても歴史ある建物と熱心な学生によって醸成されたこの独特な空間は絶対に生み出せないと思う。この環境に感謝してまた明日も頑張ろうと思う。きたろう
2023.09.20
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おはようございます。米国留学中のきたろうです。前回は日米の大学のオリエンテーションの違いについてご紹介しました。オリエンテーション期間に撮影した写真をいくつかご紹介します。(個人情報保護のために画像を修正しています。ご了承ください。また写真の転載はお断りしています。ご理解のほどよろしくお願いします。)写真1:留学生向けオリエンテーションスライド写真2:講堂で行われた全体オリエンテーション写真3:お酒を飲みながら友人と絵画に勤しむPainting with a Twist写真4:オリエンテーション期間に提供された朝食。コーヒーも無料。写真5:アイスクリーム。サイズが大きくて全部食べ切ることができない。写真6:Welcome Back Receptionで提供された食事
2023.08.29
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こんにちは、アメリカに留学中のきたろうです。今日は海外の大学のオリエンテーションをご紹介したいと思います。私は日本の大学に通ってからアメリカの大学院に来たため日米間のオリエンテーションの違いに大変驚きました。ここでは3点ほどご紹介したいと思います。①期間が長い(留学生用のオリエン二日間、アメリカ国内の学生と混じって三日間、プログラム用のオリエンテーションが一日の合計6日間)②朝食、昼食、夕食が提供される③きめ細かいマイノリティーグループへの配慮があるアメリカの大学のオリエンテーションは日本の大学よりも期間が長く、またコンテンツも非常に充実しています。どのセッションでも必ず"Congratulations! Welcome to our campus!"と笑顔で話してくれて新入生の帰属意識を高めてくれます。また、驚くことにオリエンテーション期間は朝食、昼食、夕食が大学から提供されました。日本では正直考えられないことです。食事の準備は片付けを気にせずイベントに参加できるのは非常に有り難く、浮いた時間で友人づくりやオリエンテーションの説明に専念することができました。オリエンテーション期間は着替えてキャンパスに足を運び、帰ってきたらそのまま寝てまた次の日のオリエンテーションに参加するというサイクルを繰り返しました。オリエンテーション期間は必ずネームタグを付けるのですが、名前の横にpronounsのシールを貼ることになります。これはGender Pronounsといって自分を指す代名詞を相手にどう使用してもらいたいか示すものです。男性であればHe/His/Himになりますし、女性であればShe/Her/Hersになります。どちらでもない場合にはThey/ Their/ Themを使用します。中にはHe/ Theyのように二つ以上のPronounsを使っている方も実際にいました。会話の中で間違ったPronounsを使用して不快な思いをしないようするための配慮だと考えられます。言語の壁があってコミュニティに入りにくい留学生のためのオリエンテーションもあって、大学側のきめ細かな配慮を最初のオリエンテーションから感じた次第です。備忘録としてオリエンテーションのスケジュールを載せておきます。【初日】留学生向けオリエンテーション9:00-10:00 Bfreakfast & Opening Session10:15-11:00 Immigration and Documentation 10111:00-11:30 Presentation by International Exchange Office11:30-12:00 IT session12:00-13:00 Resouces for Navigatign Around the City/ Making Your Campus Your Home13:00-14:00 Lunch14:00-15:00 Campus Activity15:00-16:00 Snack Break and Activity16:00-17:30 Dinner and Cultural Sharing Activity【二日目】留学生向けオリエンテーション9:00-10:00 Bfreakfast 10:15-11:15 Library Presentation11:20-12:30 Academic Policies and Procedures12:30-13:30 Lunch14:00-17:00 Mall Trip17:30- Grab and Go Dinner【三日目】全体オリエンテーション9:00-11:00 Bfreakfast & Opening Session11:30-12:30 Lunch11:30-14:00 Grad Resource Fair13:00-14:30 Presentation by Academic Advisor14:30-15:30 Learning Resources Presentation15:30-16:30 Academic Integrity17:00-19:00 Big Prize Trivia and Dinner【四日目】全体オリエンテーション9:00-10:00 Bfreakfast 10:15-11:00 DEIB(Diversity, Equity, Inclusion, Belonging) Presentation11:30-12:30 Library Presentation12:45-13:30 Lunch14:00-15:00 Professional Headshots/ Dealing with Imposter Syndrome/ Canvas course requirement15:15-16:15 Student Involvement Fair17:00-18:30 Painting with a Twist【五日目】全体オリエンテーション9:00-10:00 Bfreakfast11:00-14:00 Museum Private Tour/ Slavery Campus Tour/ Mural Tour15:00-17:00 Welcome Back Reception(A taste of local food, Free SWAG, Big Prize Giveaway, Photo Booth, etc.)【六日目】プログラムオリエンテーション9:00-10:00 Bfreakfast & Opening Session10:30-12:00 Program Orientation12:00-14:00 City Tour by Peer Advisors30代後半の自分にとっては盛り沢山で少し疲れた一週間でしたが、たくさんの友人にも恵まれ授業前の楽しい一週間となりました。オリエンテーション前は友人ができるか不安で誰も知り合いがいない高校に入学した新入生のような気持ちでした。社会人を経験して10数年ぶりに学生に戻ったという大きな環境の変化も不安を助長していたのかもしれません。けど、一旦コミュニティの中に入れば自分の居場所はあるのだと思うことができました。オリエンテーションを開催してくださったスタッフと大学の配慮に感謝です。アメリカの大学は確かに学費が非常に高いですが、その分お金を投じて学生にもしっかり還元していると思いました。統計ソフトやその他非常に使い勝手が良いサイテーションツールのライセンスが付与されています。研究を進める上でこのようなツールは必須であり、このような点は日本の大学も学ばなくてならないと思った次第です。長くなりました。オリエンテーションについては書きたいことが書ききれなかったので次回にします。留学を検討されている方の参考になれば幸いです。Kamel
2023.08.28
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はじめまして、日本から留学している会社員きたろうと申します。コロナ、円安、海外での物価高騰の影響で島国日本から海外に留学することは以前よりも難しくなってしまっていると感じています。グローバル化が進みモノ、ヒト、カネが四六時中飛び交っているはずなのに、実際には日本国内にいるヒトだけが停滞してしまっているような気がするのです。最近では若者の「内向き思考」も強まっているという報道もあり、海外と日本の間には大きな隔たりができてしまっているようにも感じられます。ワクチンの普及とともにだんだんと2020年〜2021年に比べればコロナの水際対策は緩和の方向に進んでおります。(2023年8月現在)私は家族を連れて米国で留学をすることを2年〜3年前から計画しており、今回その計画を実行に移すことにしました。決して現時点での生活に余裕があるわけではなくドル高円安傾向や米国内の物価高騰であちらでの生活に不安が全くないわけではございません。しかしながら現地での生活は家族、そして私にとって一生の財産になるような経験になるのではないかと考え留学を決意しました。私も留学をする際、インターネット上にある様々な先輩ブロガーの記事を参考にさせていただきました。自分の受けた恩を次の方に渡すことをpay it forward(恩送り)と英語で言いますが、次の方へバトンを渡したいという思いでブログを開設することにいたしました。私の駄文が今後留学される方のお役に立つのであればこれほど幸せなことはございません。年齢を問わず、高校生、大学生、そして私のように社会に出て働いているけれども今後の人生のために留学を検討されている社会人の方にもお読みいただけたら幸いです。留学をしながらの更新となるため、頻度はかなり遅めだと思います。ゆっくりマイペースで続けていけたらと思います。温かく見守っていただけたら嬉しいです。きたろう
2023.08.22
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