[Stockholm syndrome]...be no-w-here

[Stockholm syndrome]...be no-w-here

2022.08.15
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以前、月組【桜嵐記】の感想で「 特攻や玉砕を命令された時、国の未来や愛する家族のために自分は死ぬのだと思わなければ、僕は死に切れない 」と書いたが、先週に放送されたNHK『 歴史探偵 』の中で、女優の中村メイコが同じ事を語っていた。

「この小さな子供達のために僕達は潔く命を捧げるんだっていうのが、きっと当時の兵隊さん達にとって、一番の納得感があったんでしょうね。子供を見る事によって、この子達の未来のために自分達は犠牲になるんだ、この子達の良い明日があるように、僕達は我慢して飛んで行くんだっていう。それが死に繋がる事だったんですけど…」

「特攻」という自殺にも等しい作戦を前に、死の恐怖に打ち勝ち、自分を納得させるには、兵士達はやはりそう思うしかなかったのだろう。
そして、そんな彼らを励ますため、当時10歳の少女が戦地へ慰問に訪れていたという事実に衝撃を受けた。
勿論、そこには「戦争に利用された」という側面があったにせよ、これから死地に赴く男達にとって、目の前で歌い踊ってくれる子供やアイドル達の慰問は、随分と心の救いになったろうと思う。
軍部が主導して作成し、戦地の兵隊に送ったという女優やアイドル写真が掲載された『慰問雑誌』の存在も知らなかったので、もの凄く勉強になった。
(こうした視点から太平洋戦争が語られる機会は、ほとんど無かったように思う)



番組では(僕に気を遣ってくれたのか…笑)、宝塚歌劇団のエピソードが多く語られ、当時の宝塚が戦争とどう関わって来たかを窺い知る良い機会となった。
当時のトップスターが軍服姿で「皇軍万歳」と諸手を挙げる『宝塚グラフ』の写真や、タカラジェンヌ達を「非国民」呼ばわりする新聞記事などは、ファンとしては観ていて背筋が寒くなった。
そうした状況の中で、宝塚の灯火を消さないために、戦争に協力せざるを得なかった劇団の苦心の程が伝わって来た。
(ジェンヌ達の慰問を人々が素直に喜んでくれた事が、せめてもの救いだろう)

放送された番組内容(一部)はこちら →『 戦時下の”アイドル”たちの告白



そうした予備知識を入れた上で観た特集ドラマ【 アイドル 】は、劇場ムーラン・ルージュ新宿座と宝塚が重なって映る描写も多く、かなり感情移入してしまった。
特に、椎名桔平が演じる劇場の支配人・佐々木の立場は、戦争に巻き込まれた宝塚の気持ちも代弁しているように感じた。
また、主人公の明日待子(古川琴音)が戦地慰問で訪れた先で、隊長から言われる「これで、あいつらを笑って死なせてやる事ができます」という言葉は、あまりにも残酷な現実だ。
(とは言え、自分が死ぬための理由を、最期に実感として得られるかどうかは大きな差だと思う)

これは昨年放送された『歴史探偵』の「戦争とエンターテインメント」の回で知った事だが、戦時中のエンターテインメントを批判したのは軍部ではなく、実は一般市民だったらしい。
今で言う「自粛警察」である。
国民の不満や不安を和らげる目的から、軍部は寧ろ庶民の娯楽に対しては寛容だった。
(先述した『慰問雑誌』もその例だろう)
しかし、正義感の強い一部の市民達から「こんな時に娯楽なんて不謹慎だ」という投書が相次ぎ、軍部としてはエンターテインメントを取り締まらざるを得なくなったという。
「不寛容」という態度は、権力の側からでなく、意外に市民の中から生まれて来るものなのかも知れない。

ところで、ドラマ視聴後に愛希れいかのインスタグラムを見たら、本作の脚本が連続テレビ小説【おちょやん】を手掛けた八津弘幸だと知った。
だからという訳ではないだろうが、僕の喫茶店の宣伝までしてくれて有り難うございます(笑)。
(最初は偶然かと思ったが、あの画角を見て「あ、意図的だな」と気付いた)
まあ、おかげで感想を書かざるを得ない状況になってしまい、「俺はNHKに利用されている…」と感じながら、今この記事を書いている最中だ(笑)。

本作でのちゃぴは、劇場ムーラン・ルージュのトップスターながら、やがて待子にその座を奪われる高輪芳子を演じていた。
タカラジェンヌ時代から表現力には定評があったが、テレビや舞台など宝塚以外の世界を経験する事で磨きが掛かり、女優としての説得力が増している。
煙草をくゆらせる姿も違和感が無かったし、待子に対し「あなたはいつまでトップに立ち続ける事ができるかしら!?」と吐き捨てて出て行く時の表情は秀逸で、「良い女優になったなぁ…」としみじみ思った。



そして、今日は77年目の終戦記念日。
タカラジェンヌ達は勿論、女性や子供の笑顔が戦争に利用される日が二度と来ないよう、心から祈っている。
世界平和という大きな理想ではなく、「タカラジェンヌ達に悲しい想いをさせたくないから」という日常的な理由で平和を願うのも決して間違いではないと、『歴史探偵』と【アイドル】を観ながら感じた。





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Last updated  2022.08.16 16:11:42


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