メートル・ド・テル徒然草
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ウチのお店のお客様ばかりでなく、フランス料理店の顧客の方は、どちらかと言えば「インテリ」な御人が多いように思います。 特に多いのが ドクター、お医者様で、お食事を楽しんでいただけるのは勿論私どもにとっては責務ですが、一方でお客様からお教えいただく大変興味深い内容のお話も頂戴します。 先日お越しいただいたお客様は、京都の医科大学の先生。「いかがでしたか。お味はお口に合いましたでしょうか。『記憶』に残る一夜をお過ごしいただけましたでしょうか?」「そうですね、今日いただいた『フォア・グラ』。こちらのおかげで、特に長期記憶に携わる要素がたくさんありましたよ。」なんのこっちゃ!?と思いながらも、お話を聞いてみると、実は先生の専門の研究はまさに「美食」に関わるもので、何でも脂肪を多く含んだ料理は、その後に忘れることが少なく、長期的な記憶を形成する、まさにトリガー、引き金となる要素が有るのだとか。 アルツハイマー、痴呆といった症状は脳が健全で無くなっていく過程で起こるもの。 治療を研究する上で、美味しい食事、それも現代では概ね悪役とされている、「脂肪」や「糖」を摂取することによって改善が図られるかも知れないとの事。 なるほど。そもそも「脂肪」「糖」といった高カロリーの食べ物が、体に悪いとされたのは、ここ数十年来で、人類の歴史や、あるいはそれ以前の名もない哺乳類であった時代には、自然界に存在することはあまりにも稀でした。 いつ、どこで、どんな状況で、そのエネルギーに富んだ食べものにありついたのか、記憶に留めておく事は、生存していく上でも、とても大事なことでした。同じ状況が再び訪れたとき、間違いなくその食べ物を手に入れられるように、覚えておく。これは特に脳の働きにおいて、特に重要な役割でした。 思い出に残る料理とは、もしかするとその状況だけでなく、脂肪の持つ成分そのものが要因だったのかも知れません。まぁ、料理を作っているシェフには身もフタもない話ですが。 この生物学的に人類が備えた能力を活かして、痴呆の改善に寄与しようという研究を進めたいらっしゃるそうです。科学誌、ネイチャーにも論文が掲載されるようなことにもなったら、またウチにご来店くださるとおッしゃって頂けましたので、蔭ながら応援しているのですが、この研究はまた、飲食店を営む私たちにとっても大変興味深く映りました。 「思い出に残る料理であるためには、脂肪や糖の摂取が重要である。」 そういえば、遠いバブルと呼ばれた時代の事、クリスマスにはこぞってフランス料理店でのディナーに押しかけたものです。また、あのとき食べた焼肉店でのひと時を、人は思いのほか覚えているものですよね。 ご馳走とは、結構脂っこい食べ物だったように思います。 思い出せるものは、フォアグラ、神戸ビーフのフィレ肉、、、人類が叡智を駆けて創り出した「脂肪」溢れる食品ですね。 なるほど、誕生日のお祝いには、クリームたっぷりで、甘味に溢れるバースデーケーキが付き物ですが、こちらも楽しい瞬間を、長期に渡る記憶に変える、その一役をを担っていたのかも知れませんね。 …あぁ、そして、今日も記憶を蓄えるためにカラアゲ君が手離せない。
Jun 6, 2016
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