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一輪の花の記憶
月と陽の軌跡の
夢と現(うつゝ)の境となりし時刻(とき)
蓮華の蜜あらずして口に含めぬ檸檬の飛沫は
かたくかたく閉ず碧い瞳浸し透かし
光あたるも光透さぬ
青き珠となりて溢れ出づ
瞳開ければ
狂ひ泡立つ海に
たちまちのうち
高波の絶壁現れ
その絶壁の影に
骸(むくろ)より奪ひし
肋骨の鎌を手にせし神の
不遜なる横顔の
今か 今かと鎌振り下ろすときを待つ
魔の谷の結界には
いたいけな笑み絶やさぬ一陣の風舞ひ降りて
悪戯な風は渦巻く潮へ
一輪
一輪
花のかれを
花のわれを葬りて
一輪の花の記憶は
苦々しき夢と
鼻を突くうつつを攪拌(かくはん)し
凝らすも
凝らすも
先のみえぬ明日を象り
くぐもる波音となりて
海へ
海へ
流れ織り籠(こ)まるる
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