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武蔵境駅前のスイングホールへ、2年ぶりに佐藤美由紀さんの率いるタンゴバンドのコンサートに行った。ダンスあり、ボーカルあり、さらに今回はナレーターの方が演奏の合間合間に、タンゴの歴史をからませながら曲の紹介をしていく形式で、わかりやすく、興味深く見ることができた。"エル・チョクロ"力強いロマンティシズムを感じさせるピアノ。後半、テンポアップしていくクインテットの迫力!心が音の疾風にさらわれる。"エル・チョクロ"の次の曲、曲名は失名してしまったが、岩を削る奔流のようなヴァイオリンの音のしぶきが印象的!今回はヴァイオリンが歌う歌う!その自在で立体的で表情豊かな音にすっかり魅了されてしまった。"思いの届く日"ヴァイオリンとコントラバスのデュオ。うたうヴァイオリン、空を翔ける鳥のはばたきを彷彿とさせる。そして草原を低く渡る穏やかな風を思わせるコントラバス。その2つの音に、遠く遠く心地よく、心を運ばれる。"ラ・クンパルシータ"タンゴと言えばこの曲、というような代表的な曲なのに、仮装行列のための行進曲として、17歳の学生が作曲したと紹介され驚いた。誰もが知っている、特徴的なメロディと明確なリズム。それぞれのソロを魅せた後、地鳴りのようなコントラバスの響きが胸をざわつかせ、その後。一気にクインテットもダンサーも、音が動きが炎となり、燃え上がり、渾然一体となり、燃焼しつくして――1幕が終わる。1幕のラストにふさわしい、息を付かせないほどの迫力のパフォーマンスだった。第二部はミホコさんの歌声でシャンソンライブなどで聴き慣れたメロディ"群衆"から始まった。これもタンゴ??と思ったら、もともとアルゼンチンで作られた曲だという。知らなかった・・・"思い出"圧倒的!ピアノを全身で叩く美由紀さんが、鋭いくちばしと爪で己れの身を引き裂く黒い鷲に見えた。それくらい痛切に身を削って演奏しているように感じられた。"甘い花の香り"(?というタイトルだったと思う・・)繊細な花のように静かに登場するダンサー、リリアナさん。鍛え抜かれたしなやかな腕が背中が脚が、"静"の世界をも語る。ギター、ピアノ、バンドネオンのトリオでの演奏。かさっと乾いたギターのつまびきが、花を揺らし散らせる風を思わせる。その風にはらはらと舞う花びらの、透明感と繊細さを感じさせるピアノ。そして甘やかな花の香りそのもののようなバンドネオンの響き。その3つの音が輪舞曲のようにゆっくりめくりめく。バンドネオンの音は次第に、むせかえる有機的な濃厚な香りに変容していき、花の甘さ美しさの中に、すでに朽ち果てゆく必然が萌芽しているのを予感させる。あくまで風は無機的に花を揺らし、あくまで花は美しく繊細にそこに在る、けれど。生きて、在るもの、やがては朽ちゆくすべてのものを象徴し。バンドネオンの音を身体に濃厚にまとわりつかせ、リリアナさんは花を生きるように、踊る。最後はタンゴの革命児、ピアソラの曲が続く。"ブエノスアイレスの冬"厳しさは厳しさのままに、苦しみは苦しみのままに、情熱は情熱のままに。なにものも侵し難く、感じることをあるがままに曲解することなく、譜にし、歌にし、踊りにしていくリリシズム。それがタンゴなのだと感じさせる。登場して、上方を仰ぎ見るリリアナさんの表情が、切実でこの上なく美しい。ダンサー2人の、絡み合いの続く脚さばきは、果てしない人間同士の愛憎、すれ違い、せめぎあい、葛藤を思わせる。やがて2人のステップは、共に生きるニュアンスに感じられてくる。次々繰り出されるアクロバティックなリフト。過酷さを決して表に見せずに淡々とリードするケンジさんのクールさは、炎のようなデザインの紅いドレスをまとったリリアナさんのあふれる情念の熱さを受け止め、より際立たせる。目が離せないダンス!引き続きそのまま"リベルタンゴ"に突入する。ギターとピアノによる前奏は、不穏さをも内包しつつ、しかし解放のドラマの始まりを感じさせて、スリリング。やがて怒涛のように、止まることを許されない疾走が始まる。クインテットの演奏も、ダンスも。渾身のリベルタンゴ。その魂の疾走を聞いていると、タンゴは終わらない、続くのだ、と実感する。先へ先へ。古びず、褪せず。その加速度的な終わりのない疾走が、客席に向かって突き抜け、解放されて――ステージは終わった。タンゴは、タンゴは決して終わらないけれど。アンコールの"カミニート"では、ほぐれた空気の中、ミホコさんがケンジさんが歌い、ナレーターの方がリリアナさんと踊った。ナレーターの方の滑らかなステップとリードは見ていて心地よかった。ボーカルのミホコさんも踊り、ダンサーのケンジさんはろうろうと歌い、改めてタンゴ文化に生きている方たちの、全体性にまたもや感銘を受ける。2年前、このバンドのコンサートをこの会場で見て、タンゴという大きな1つの文化そのものを生きる人々に感動し、自分も三位一体プロジェクトをやろう!と思い至ったのだ。そこから具体的に始まったのだ。そしてこの夏に三位一体プロジェクトは、1つ形を成すことが叶った。2年間、私も走ってきたな・・この縁を与えてくれた美由紀さんに感謝!
2014.11.14
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↑"鳥"の書画作品をバックに。↑これらは静止した振りではなく、動きの中の一瞬の姿。フォトグラファーがよく捉えて下さり、感謝!↑右手で左手をつかむ仕草は、自己の二重性とその相克を象徴させてみた。理性と本能、束縛と解放、罰する者と罰せられる者・・etc.特に技術やジャンプ力や若さや柔らかさがあるわけではない自分に、どうしたら印象的な踊りを創れるか、追求した。特性である腕の長さと、自分の世界を表現する志向性・感性だけを武器に、半年間格闘した作品。曲はハンガリーの音楽家、コダーイのチェロソナタの冒頭3分。昨年から奮闘して取り組んでいた"三位一体プロジェクト"、自分の中の、詩とアートとダンスの融合を目指してきた。自作の詩、5篇を元に、書画を描き、手作り本に仕立て上げ、昨年は銀座のギャラリー、今年に入り新宿、NYのブックフェアにそれぞれ出品した。そしてダンス作品"鳥葬"により"三位一体プロジェクト"を体現できたと思う。長かった・・3月にNYで踊るのはイベント中止で叶わなかったし、5曲のうち4曲は振付したものの、披露できたのは1曲だけになってしまったが、その代わり丁寧にじっくり取り組めたので、満足&ほっとしている。「鳥葬」あなたが大きな鳥なら私の肉体を食い散らすがいい腕を胸を脚をあなたに与えよう怒りのくちばしで皮膚を食い破り憎しみの爪で肉をもぎとり哀しみの声で心臓をつんざきついばめ ついばめどんなに近くにいても心だけはあなたに明け渡すことはなかったその遺恨を葬れやがて 一陣の風がむくろを吹きさらし死臭を運ぶからから渇いた骨になっても あなたの涙はなお 痛い
2014.11.02
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