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私は株式投資の世界に入って15年になりますが、投資家にとって最も大切な能力は何か?と問われればそれは間違いなく 「柔軟性」 だろうと思います。本当に優れた投資家というのは瞬時に考えを変えることが出来ます。周りの状況が変わり考えを改めなければならない時が来ると全くためらわず、眉一つ動かさずに真逆にもいける。最高の投資家というのはそういうものだろうと思います。
日本株市場で最高のトレーダーは今はツイッターもブログもお休みされていますが、私はdsan2000さんだとずっと以前から思って尊敬しています。以前某掲示板でバリュー株投資家を勝手に評価して斬りまくるスレッドがあり、その時に各投資家に短いキャッチフレーズが付けられていたのですが、dsan2000さんの紹介文は「山の天気のように言うことがコロコロと変わるが古くからのファン多し。」というようなものでした。私はそれを「言い得て妙だなあ。でもマーケットというのはそもそもそういうところだし、抜群の数学的素養をベースとして瞬間瞬間で自在に変化して行けるのが彼の凄さなんだなあ。」といつも思っていました。
このマーケットの魔術師(株式編)ではトップバッターとしてスチュアート・ウォールトンと言う投資家が登場するのですが、彼は、「私の理想は、
クラゲのように漂い、マーケットが進む方向に流されること
です。」と語りました。
そして私はこれを読んだ時に、マーケットで必要な柔軟性を表すイメージとしてまさにぴったりの最高の言葉だと思い、それ以来、
自分はくらげになろう。
と決意したのでした。
つまり、自分はくらげで、傘の中の本体には今まで時をかけて作り上げてきた「優待バリュー株投資」という基本の型が入っている。そして、型は入っているんだけれども、その状態でマーケットの海をフワフワ、プカプカと漂い、状況に応じて順張りも逆張りもする。優待バリューがメインだけれども、優待グロース株もチャンスと思えば買う。いいと思った銘柄には大量の資金を一気に投入して全力で勝負するけれども、自分が間違っていたと判断した場合には速やかにそれを認め迅速に撤退する。そういう自在で自由な投資家をずっと今まで自分は目指していたんだということを、この本を読んだ瞬間についに悟ったのです。
またウォールトン以外でも、「適正銘柄を探し当てても大きく勝負しないなら失敗と同じ」というマイケル・ラウアー、「とにかく企業IRに電話しろ!」というピーター・リンチ直系のスティーブ・ワトソン、「勝つトレードは最初から騰がるもの」という皆様ご存知のマーク・ミネルヴィニ、損切りの仕方についての説明が史上最高に分かりやすいスティーブ・コーエンなど、「この本を腹巻にして抱いて寝ながら毎日株式投資をしようかなあ。」と真面目に考えてしまうほど実践的に役立つアドバイスが満載なのが、この桃本の素晴らしいところなのです。
字体も大きくてカジュアルで親しみやすく、
明日からの株式投資に直接的に「読む覚醒剤」のように役立つという意味においては、この3作目がシリーズ中で一番優れている
と思います。そしてこの本の面白さはそれだけではありません。この桃本でのインタビューは1999年半ばから2000年の初めと言うアメリカの株式市場の1つの大相場の天井直前に行われたために、登場している魔術師達のその後の運命は様々なものとなりました。
相場操縦の罪に問われ破産した人、大きくパフォーマンスを落としその力がナシーム・ニコラス・タレブの言う「まぐれ」に過ぎなかったことが儚く(はかなく)も露呈した人、変わらぬ驚異的なパフォーマンスを継続している人と色々だったのですが、この3作目ではシリーズ唯一の試みとして「魔術師達のその後」のフォローアップインタビューが巻末に載っていてこれが抜群に面白いのです。つまり、各インタビューを読みながら、「この魔術師はこの後一体どうなるんだろう?」ということを想像し、まるで「極上の推理小説」のように楽しめるんですね。
このように「1粒で2倍美味しい」、シリーズ中表記が最もカジュアルで読みやすいのに実は奥が物凄く深い、登場している魔術師が全員株式投資家なので親しみやすい(他のシリーズでは先物や通貨、マルチストラテジー、グローバルマクロの投資家も多く登場)等の点を考慮すると、どうしても、どう考えてもベスト10に入れざるを得なかったということなのです。未読の型は是非。
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