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さて今日は好評を戴いております「株式投資本オールタイムベスト」シリーズをお送りします。
株式投資本オールタイムベスト第8位は、ウォール街のランダム・ウォーカー(バートン・マルキール著、日本経済新聞社)です。
「効率的市場仮説という宗教の経典」としてインデックス投資家にとっては「聖書」として崇められ、それとは対照的に我々アクティブ投資家にとっては「邪教の悪魔の書」として名高いベストセラー
ですが、「コテコテのアクティブ優待族」である私の評価は、、、、?
さてその前にこの「悪魔の書」との私の出会いの歴史について話をしますと、私が最初にこの本を読んだのは2001年のことでした。つまり投資家としてのヒヨヒヨの最初期に出会ったのです。 「3分の2以上のアクティブファンドはそのコスト高からインデックスファンドに勝てない。」 という冷厳な事実はまさにこれからアクティブ投資家を目指そうとしていた私には本当に衝撃的でしたし、「株式市場というのはなんと厳しいところなのか!!!」と思って身がギューっと引き締まったのを今でも覚えています。
その後2002年の前半までに3回再読し、ほとんどの内容を頭に叩き込んだ上で私は覚悟を決めて灼熱の地獄の日本株市場での戦いに飛び出して行きました。「インデックスに打ち勝つのは確かに生易しいことではないし簡単なことではない。でも自分は今こんなに貧乏であることを考えるとインデックスのパフォーマンスでは到底満足できないし、将来お金持ちになることも出来ない。そして何よりもインデックス投資は心底つまらない。それに対してアクティブ投資は滅法面白い。人生は一度きりなんだから楽しいことがしたいし、自分の可能性を信じ、極限までの努力を続け、リスクを取って思い切り戦うしかない。」そう思ったのです。
退路を断った私にとって、マルキール博士の言う「インデックス投資で大多数のプロを上回る成績を上げられる。」というのはまさに 「不都合な真実」 であり、その日から本棚の奥に追いやって意図的に目に入らないように、読まないように工夫してきました。ただ今回の株式投資本オールタイムベストシリーズを始めようと思ったときに、「仕方ない。久方振りにあの禁断の書と対面せざるを得ないな。」と悟って改めて読み返しました。私の手元にあるのは1999年に発売となった原著第7版となります。。。。。
色褪せ、15年前の初々しかった頃の自分の書き込みが多数ある「禁教の書」を読み返すのはちょっと不思議で複雑な感覚でした。そして読み終わった私の感想は、
マルキール先生、悪魔呼ばわりしてすいませんでした。やっぱり素晴らしい内容でした。
というものでした。
この本は全編にユーモアのセンスが溢れとにかく読んでいて面白いんですね。前半の「世界のバブルの歴史」からして素晴らしいですし、その後の1960年代、1970年代、1980年代、1990年代にも繰り返し「市場の狂気と愚かさ」が現れたと言う話も何度読んでもニヤニヤしてしまうような味わい深さがあります。
また後半では「市場で成功するための3つのルール」が載っているのですが、
1. 今後5年以上の長期利益成長率が市場平均以上の銘柄を買うこと。
2. 株価がファンダメンタル価値以上になっている銘柄には手を出すな。
3. 投資家が「砂上の楼閣」をつくれるようなストーリーが描ける銘柄を探そう。
というのは、妥当で端的な素晴らしい指摘です。特に3は素晴らしく、マルキール博士が「本当は市場はそれほどには効率的なところではない。」と心の中では思っているんだろうなあ、と感じます。また良く考えると私が今6425ユニバーサルエンターテインメントを超主力の一角として戦っているのも、「フィリピン巨大カジノの胴元に数年後になるというストーリー」が極上の「砂上の楼閣」造りに繋がることを高く評価してのことであり、何のことは無い、投資家になって15年が経った今でも私はマルキール博士の手のひらの上でずっと遊んでいたに過ぎないのだ、と気付いたのでした。
ただ1つだけ、「卓越したパフォーマンス記録の多くは偶然によって説明され得るしまた実際に説明がつく」という、いわゆる「ダーツ投げ理論」はやはり明白に間違っていると思います。その具体例を出すと、「続マーケットの魔術師」で登場しているエドワード・ソープという投資家はその最初のファンドのPNP(プリンストン・ニューポート・パートナーズ)で1969年11月から1988年12月までの19年間を運営し、その内の227ヶ月で大きな利益を出し、損失を出した3ヶ月も全て1%未満と言う成績を出しています。
これは「コインを230回投げて227回以上表が出るという確率」と同じことですが、この確率は無限に小さく「10の63乗分の1」となります。これは世界の全人口が投資家で全員がダーツ投げに参加すると仮定しても、その中にエドワード・ソープと同じかそれ以上の運用成績を出す確率が「10の60乗分の1」以下しかないということになります。
つまり、
効率的市場仮説は明白に間違っている
ということです。「無数のサルにキーボードを与えてランダムに叩かせ続けても、決してシェークスピアの戯曲は完成しない」んですね。
ただし、効率的市場仮説が間違っているからと言って市場に勝つことが簡単だ、ということには1ミリもなりませんし、マルキール博士のこの著作が歴史的傑作であることは間違いが無いと思います。私はこの第7版を再読した後で、
最新の第10版を購入し改めて読み直しました。やはり素晴らしい内容でしたし、これからは「悪魔の書」として敵視せずに、本棚の1軍に戻して時折手にとって行きたいと思っています。(笑)
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