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アイルランド火山噴火だけではない。今回のフランス旅行には、最初から最後まで「鉄道のスト」がつきまとった。
しかも、ちょうどMizumizuがフランスに来る直前から始まり、8日間の予定が延期になり(苦笑)、移動する日は全部ストにかぶるという不運に見舞われてしまった。
さらにさらに、こんなときに限って、北のパリから南のニース、さらには南西部のカルカッソンヌまで訪問予定地に入れていたのだからたまらない。
悪名高きヨーロッパの鉄道ストだが、ここまで完全に巻き込まれたのは生まれて初めて。「1日まるまる動かなくなる」ということはないのだが、「間引き運転」になり、結果、どの列車も乗車率100%をはるかに超えたうえ、(乗り降りにその分時間を取られるためか)時間も遅れ遅れになる。
朝7時のパリ・リヨン駅。すでにこんなに人でごった返している。まだストと知らず、「平日なのに、ずいぶん南へ行く人が多いんだな~」などとノンキに構えていたMizumizu。
目指すは、カルカッソンヌ。TGVでモンペリエまで行き、そこから乗り換え。ところが、モンペリエで降りたら、乗り換えるはずの電車の案内がない。
インフォメーションで聞いて、電車が間引かれたことを知り、はじめて、「これって、スト?」と気づく。
モンペリエでおもいのほか時間ができてしまい、しかたなく急きょ市内観光などして過ごし、やっと来たカルカッソンヌ行きの列車に乗ったら・・・
中はこんな状態。前の電車は座席は指定してあったのだが(もちろん座席指定料金を払って)、当然パーに。いや、もちろん再度指定することはできたかもしれないが、なにせモンペリエ駅の切符売り場には半端じゃない行列ができている(しかも、ストなので、開いてる窓口が1つだけだった)。並んだところで、もう席はないかもしれないので、席料は捨て、当然Mizumizu+Mizumizu母もモンペリエからカルカッソンヌまで通路に座った(車両内の通路には絨毯が敷いてあるので、座りやすい?)。
別の日のマルセイユ駅の外。カルカッソンヌからエクスアンプロバンスに来て、エクスから直接ニース方面(のカーニュ・シュル・メールという小さな町)に行く予定が、TGVが遅れたうえ、行き先が変更になりニースのはるか手前、マルセイユ止まりになってしまった。
モンペリエやエクスアンプロバンス・センター駅にはなんと荷物預けが駅になかった(どこまでふざけてるのだ、南仏!)。マルセイユ駅にはあったのだが、なんとなんと1回8ユーロ!(つまり1000円以上)。
こんなに高いから、だれも預けない。係員もえらくヒマそう(係員のいる荷物預けね)。間引き運転されて待ちぼうけをくらってる客は、駅の外の大階段に荷物ともども腰を降ろしている。
やっとこさ、ニース行きのTGVが来るというのでホームに集まった乗客。長いホームの先まで、人でいっぱい。
当然・・・
フランスの誇る新幹線TGVも、難民輸送列車に。
TGVで感心するのは、荷物入れが多いこと。頭上にも、席の間にも、車両の端や真ん中にも荷物を入れることができる。いくらでも入る感じ。でも、やっぱりここまで乗客が多いとどうにもならない荷物が人とともに通路に。
フランス人って、なんだか日本人なら海外旅行にも持って行かないような大荷物をもって国内移動している人が多い。どこに行くんだ?
ニースからパリへ帰る日。ニース駅の構内も難民避難所状態に。
切符売り場にも長蛇の列。このときばかりは、先に切符を買っておいてよかったと胸をなでおろした。
ストは最後まで終わらなかった。Mizumizuたちの旅の後半では、飛行機が飛んでいなかったから、鉄道で移動したい人も多かっただろうに、「それはそれ」。飛行機が動かないから、困ってる人たちに配慮してストやめて鉄道を動かしてあげよう、なんて考える人は皆無のようで、逆に当初8日間の予定だったストが延期された模様。
しかし、フランスのスト。
「間引き運転」だったから、到着がいちいち4時間ぐらい遅れるものの、目的地には一応その日のうちに行けるようになっていた。
これだと、労働者が経営者に圧力をかけてることになりにくいと思うのだが?
つまり、経営側にとっては、間引き運転というのは、乗車率がハネ上がる分、利益率から見れば、「もうかる」はずなのだ。
列車を増発するのは大変だが、間引くのはある意味コストカットするのと同じ。ガラガラで運行する電車がなくなるというのは、経営側にとっても必ずしもデメリットにはならない。つまり払い戻しや予定キャンセルなどで総売上は減るにせよ、乗車率がハネ上がることで利益率は上がっている。
ビジネス経営にとって大事なのは、実は総売上よりも粗利(利益率)のほうだ。1台車両を動かして(つまりそれがコスト)、どれだけ人を乗せられるか。その割合が増えれば増えるほどコストに対する利益が増える。
徹頭徹尾損をするのは、駅でえんえんと待たされる乗客だけ。車で行ける人間は鉄道キャンセルすればいいのだから、割を食うのは、むしろ「鉄道以外に移動手段のない」一般市民ということになる。
どの国も、ある程度国民は洗脳されて、あるいはお互いに洗脳に手を貸して、社会の秩序や習慣を守っている。
日本では「時間遵守」がなによりの美徳だ。むしろ強迫観念に近いと言ってもいい。鉄道も含め、キチキチのきついスケジュールを組み、その時間を守るために命さえかけてる。電車が遅れたりすると、だれも彼も「どうしよう」「困った」とイライラする。よくよく考えれば、絶対に延ばせない予定など、そうはないハズなのに。
こういう国ではストは一般市民の理解を得にくい。「他の多くの人たちにかける迷惑」と「自分の主義主張を通すこと」をはかりにかけて、後者を選択する人に世間の目は冷たい。日本というのは基本的に昔からそういう社会で、このメンタリティはそう簡単には変わらない。そうやって日本という国は社会的秩序を保ってきた。
一方のフランス。フランス革命から続く、「労働者が自ら働きかけて、権利を勝ち取ってきた」という広く信じられている「常識」。この社会的コンセンサスがあるからこそ、一般人はデモやストに寛容なのだ。
だが・・・
日本人であるMizumizuから見ると、この常識も一種の洗脳に近いように思う。
「フランス革命は、まだ完全に成就していない」と言う人がいる。つまり、フランス社会に根深い「階級差」は、革命後200年を経ても完全に解消されたとは言えず、さらに近年は移民から生じた社会問題(移民してきた外国人がフランス社会に馴染めず、低賃金ゆえに教育の機会も得られず、社会の貧困層として再生産されている状態)もあいまって、逆に深刻化しつつある。
もし、フランス人が信じるように、デモやストによって労働者の地位や所得が上がっていったとすれば、デモやストが社会的に嫌われる日本人労働者以上に、フランス人労働者は豊かなはずだ。
フランス人労働者は日本人労働者より豊かだろうか? ある意味で豊かかもしれない。休暇の取りやすさという観点から見れば、間違いなくフランス人のほうが恵まれている。社会保障についても、少なくとも表面的にはフランスのほうが手厚いようにも見える。だが、経済的には?
フランスの地方の一般人の暮らしなどを見ると、Mizumizuにはどうしてもフランス人が日本人以上に豊かで、日本人以上に活発な消費活動を楽しんでいるようには見えない。家でさえ、日本の地方の一般人の家のほうが、フランスの田舎の古い石造り(で窓の小さい)の家より立派に見える。
世界中で一番よく見るヨーロッパ人はドイツ人で、ドイツは確かに経済大国なのだろうと思うが、フランス人に対してそうした印象はない。「別の国にいかなくても、いいものは全部フランスにある」などとフランス人は言うが、それこそやせ我慢というものだ。リッチになれば、海外に行って遊びたいと、誰だって思うもの。
そして、労働者が自分たちの権利を主張するためにやっているはずの鉄道スト。完全に鉄道を止めるのではなく、間引き運転するというのは、一般市民への配慮なのかもしれないが、Mizumizuが経営者なら、むしろ内心、「コストカットになるから、どんどんやってくれ。主要路線の乗車率が1週間にもわたって100%超えるなんて、ある意味結構なことじゃないか」と思うのではないか。
これが労働者と経営者のなぁなぁの出来レースなのか、国をあげての壮大な勘違いなのか、よくわからないのだが、一番割りを食ってる乗客、つまり一般市民が、これだけ「大人しく」我慢しているというのは、社会をあげての一種の「洗脳」がなければありえない。
「フランスは10%の超エリートと90%のバカでなりなっている国」という説もある。フランスを動かしているのは、10%の超インテリ層。彼らが優秀だからフランスは世界の一等国として認められているという話。
それは本当かもしれない、と内心かなりMizumizuは思っている。
「デモとストで労働者は自ら社会的地位を向上させ、権利を勝ち取ってきた。フランスはそうした開かれた平等な社会」と一般に信じ込ませ、労働者には休暇を与え、ある程度の保障も担保しつつ、経済的にはさほど豊かにさせない。デモもストも資本家は自分たちが痛手をなるたけ蒙らないように暗にコントロールし、そのうえで労働者側に少しずつ譲歩したフリをする・・・
超インテリのエリートが考えそうなシナリオだ。
余談だが、Mizumizuはフランスの核実験反対のデモに参加したことがある。そのときもフランス大使館へのデモに対し、大使館側が、「今日はパーティがあるから、あまり近づかないで」と事前にデモ隊に「要望」してきたのだ。もちろん、平和的なデモなので、デモ隊のリーダーも大使館側の要望に「配慮」した。
苦笑・・・
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