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エクスアンプロバンスの次の宿泊地は、ニースの手前にあるカーニュ・シュル・メール。
しかし、ストがどうなったのか、気が気ではない。そこでエクスからTGVに乗る予定日の前日、ド・ゴール広場近くの観光案内所に情報をもらいに行った。
カウンターに座っているのはおじさんになりかけの青年。挨拶しながら、女の子のように小首をかしげる。やさしげな声の出し方なども、なんとなく「ソッチ系」の雰囲気。
ホッ、この人ならオバさんほど横着ではないだろう。観光案内所のフランス人オバさんは、とっても感じの悪い女が多い。いかにも、「さっさと仕事を済ませたい」雰囲気をアリアリと漂わせている。自分たちのおしゃべりを仕事より優先させるなんてのは、日常茶飯事。
まずは、明日鉄道でニース方面に行くという話をして、
「ストはまだ続いてる?」
と聞いた。すると、続いている、という答え。ガックリ・・・
「明日乗る予定のTGVが予定どおり動くかどうか、調べて欲しいのだけど」
そう言うと、おもむろにテーブルの下から市内地図を出し、
「それなら、鉄道駅の窓口に行くといい。駅はここ」
駅の位置を指し示し、さっそく仕事を終わらせようとしている。ここでうっかり、ハイそうですか、と言うわけにはいかないのだ。
「鉄道駅の窓口はいつも閉まってるの。たとえ開いていても英語が話せる人がいるかどうかわからないから」
するとこんどは、テーブルの下からサッとバスの時刻表が出てきた。
「ストを避けるなら、マルセイユまでバスで行けばいい。時刻表はこれ」
これで仕事はジ・エンドと言わんばかり。
そうはいかんのよ。負けじと、エクス(TGV)10:36 → 13:00カンヌ13:10→13:00カーニュ・シュル・メールの切符を出して、
「私はすでにTGVの切符を買ってしまったの。だからあなたに、このTGVが明日予定どおり動くのかどうか調べて欲しいんだけど」
「ストの状況はどんどん変わるんだ。明日TGV駅に行って聞けば、動くかどうか分かるよ」
そんなことは、誰だって分かるよ!
「でもね、モンペリエでストに遭ったとき、その日の時刻表が印刷されて駅に張り出されていたの。つまり、前日にはもうスケジュールは決まっているということだと思う。私が乗るTGVは重要な路線だから、今日のうちにわかるんじゃないの。それにTGV駅はここから遠いから、明日TGV駅に行って電車が出ないと、とても困るのよ」
ここまで説得(?)すると、ようやく「わかった」というように頷いて、コンピュータで何やら検索しはじめる、微妙にソッチっぽいおじさんになりかけの青年。
やっぱり調べられるんじゃん。それなのに駅へ行けとか、バスで行けとか、どうしてそうやって、自分に都合よく、仕事をできるだけ簡単に済ませようとするのかね?
しばらくすると、肩をすくめ、
「インターネットには載ってない」
「鉄道のインフォメーションに電話できる?」
「やってみるよ」
案外手際よく、電話をするおじさんになりかけの青年。やっぱり番号すぐわかるんじゃん。そういう作業をさ、外国人観光客が自分でやるのは大変なのよ。
ハサミとフランス人(そしてイタリア人も)はうまく使わないとダメなのだ。こちらが理詰めで考えて、向こうがやるべきことをわかりやすく説明しないと、面倒臭がって、「私は知らない」かなんか言ってすぐに投げ出す。これがフランス人の雇われ労働者の行動パターンだ。
しばらくすると誰かが出たらしく、
「○■△■▼~」
フランス語でやりとり始める、おじさんになりかけの青年。
「今、調べてもらっているから」
とこちらに話す。ニッコリするMizumizu。最初っからそうやって親切にしてよ、まったく。
電話しながら、何やらメモを書き留めるおじさんになりかけの青年。しばらくして電話を置き、
マルセイユ 12:59→アンティーブ15:17
アンティーブ 15:22 ou 16:22→カーニュ 15:35 ou 16:35
と書いた紙を見せた。
「明日動くことが決まっているのは、このマルセイユから出る電車だけ。そのあとのカーニュ行きはどうなるかわからない」
「エクスプロバンスからマルセイユまでの私のTGVが動くかどうかわからないの?」
「わからない」
「決まってるのは、このマルセイユからアンティーブまで行く電車だけ? カーニュには停まらないの?」
「停まらない。アンティーブのあとはニースに行く電車だけど、カーニュは通過」
う~ん・・・
MizumizuがエクスからTGVに乗るのが10:36。マルセイユはすぐ近くだから11時ぐらいには着くだろう。万が一、そこでTVGが止まってしまっても、この12:59の電車に乗れば、とりあえずアンティーブまでは行けるということか。
もちろん予定どおり10:36のTGVが動いてくれれば問題ないのだが・・・
「私のTGVが動くかどうか、明日の朝になれば、インターネットで調べられるの?」
「当日なら調べられると思うよ。でもわからないけど。状況はどんどん変わるから」
状況はどんどん変わるって? 確かに、国鉄のストをやってる労働者側も、「運行するかどうかは、経営陣との話し合いによる」などと言っているのを新聞で見たが、それはかなり虚構の談話だとMizumizuは思っている。前日に、どの電車をどう間引くかは、ある程度、いやほとんど、決めてあるはずだ。「マルセイユで止めて」「そこで客を待たせて」「満杯に詰め込んで運ぶ」というのはパターンなんだから。それを乗客に事前に知らせないだけだ。
しかし、これ以上の情報は、ここで今の段階では得られないことはハッキリした。
丁寧にお礼を述べて立ち上がるMizumizu。
「ストには、ぼくらみんな苦しんでいるんだ」
とソッチぽい仕草で、同情したような声を出すおじさんになりかけの青年。
みんな苦しんでるって? 自分と関係ない他人の苦しみに、これだけ想像力を働かせない国民も少ないと思うけどね。
たまたま鉄道で移動しなければならないハメに陥った人は苦しむかもしれないが、その「苦しみ」をもし全国民が深刻に受け止めているなら、こんななぁなぁのズルズルのストを許すはずがない。
日本で同じ事をして、許されると思いますか? それが国民性の違いだ。誰のどういう権利に重きを置くか。誰のどういう不都合に憤りを共有するか。フランス人と日本人は、いろいろな面で正反対なのだ。
とにかく、マルセイユから12:59にアンティーブ行きの電車が動く、ということはわかったので、マイTGVについては、出発の朝、ホテルのフロントで調べてもらおうと心に決めた。
そして、チェックアウト当時の朝9時ぐらいに、フロントに行き、チケットを見せて、ストの話をし、
「このTGVが今日動くかどうか知りたいんだけど」
と相談した。するとすかさず、
「ぼくは知らない・・・」
オメーが知らないのは、そりゃ当たり前だよ。
「ストの状況は刻々変わるから・・・」
また同じ台詞だ。フランス人はストとなると思考停止するのか?
「TGVの駅に行って、聞けば分かるよ」
それで仕事を終わらせる気? もちろん、そうはさせない。
「でもね、私のTGVはパリから出ると思う。だから10時半にエクスに来るということは、動くならもうパリを出ているはず。インターネットでそれは調べられると聞いたんだけど?」
ここまで言うと、案外素直に働き始めるフロントの青年。
Mizumizuの切符の電車の番号をブツブツ繰り返し、コンピュータをガチャガチャやって、
「パリからじゃなくて、このTGVはリールから出てる」
なるほど、パリより北から来るのね。
「今日は動いてる?」
「動いてるね。ただし、今のところ15分遅れ。でも・・・」
と言ってコンピュータを覗き込むフロントの青年。
「あれ? この切符でカンヌまで行くの?」
「そう、このTGVはニース行きだから」
「ニースまでは行かないよ。今日はマルセイユ止まりになってる」
やっぱり・・・!
「マルセイユで止めて」「そこで待たせて」「満杯に詰め込んで運ぶ」んだな。
でもまあ、マルセイユまで行けることはハッキリした。マルセイユに着いてしまえば、12:59分の電車に、同じ切符で乗れるはずだ。
エクスの街からTGV駅までは、バスの切符をすでに取ってある。
「バスは動くと思う?」
「問題ないよ。今回は鉄道のストだから。バスはストをやってない」
そこで、タクシーを呼んでもらい、街はずれのバスターミナルまで行くことにした。
来たのは、オバちゃんタクシーだった。最初はメルセデスのタクシーを寄こしたのに、出るときは、バンみたいなタクシーってのは、偶然か?
ホテルのボーイから行き先を聞くと、突然オバちゃんが、
「お~」
と大げさな声を出して、
「今日は鉄道のストだから、バスは動いていない」
なんて言い出す。フロントのお兄さんと意見が違うじゃねーの。
「全然動いてないの?」
と聞き返すと、
「ふだんよりずっと少ない・・・と思う」
いい加減な言い方だ。つまり、バスターミナルではなく、18キロ先のTGV駅までタクシーで行けと言ってるわけね。本当にちゃっかりしてるわ。自分のトクになることとなると、急に気をきかせ始めるフランス人の商売人の特徴ね。
「まだ時間は十分あるし、もうバスのチケットを買ってしまったので、とりあえず、バスターミナルに行ってくれる?」
譲らないMizumizu。15分遅れとはいえ、TGVは動いているのだから、バスが全然動かないわけがない。いつもはほぼ15分間隔で出てるのだから、多少本数が少なくなっても問題ないはずだ。
そこまで言えば、オバちゃんは素直だった。
まったく・・・こういうことも知らないと、タクシーのオバちゃんの話を真に受けて不安になっていたかもしれない。
情報で武装しないと、フランスで外国人旅行者はいちいち何でも高く払うことになる。
タクシーがバスターミナルに着いたとき、メーターは14ユーロちょっとだった。オバちゃん、メーターを止めないまま外に出て、こちらの荷物を出すのを手伝い始めた。こんなことで時間稼ぎされてもなんなので、荷物を降ろすやいなやすぐに、「いくら? 15ユーロでいい?」と言うと、オバちゃんはメーターを見に戻り、「いい」と言うので、切り上げて払った。
見ると、「Aix - TGV - Airport」と書いてある大型バスがちょうどバス停に入ってきた。
ドライバーに一応確認して乗り込む。
ホッ。
なにが「バスはとっても少ない」んだか。すぐ来たじゃないの。
セザンヌが好んで描いたサントヴィクトワール山を遠くに見ながら、バスは郊外へ向かう。
エクスアンプロバンスのTGV駅は、本当に周囲に何もない場所だ。
バス停で降り、駅の構内を通って、エレベータでホームに行った。不思議なことに、10:39発のTGVは「On Time」になっている。
ホテルで聞いたとき15分遅れだったのに、取り返したのか?
・・・ンなわけはないのだった。
これが新幹線なら、15分の程度の遅れなら取り返そうとスピードをあげるだろう(そして、かなりの確率でちゃんと時間通りに目的地に着く)が、TGVは世界最速とか威張ってるわりには、遅れは遅れのまま、どんどん遅れる。
何のために高速実験をしてるんだろう?
例によって、ギリギリまで「On Time」と表示しておいて、直前にいきなり、「40分遅れ」と出た。
40分遅れか!
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