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マントンからニースに帰って来たときは、もう日が暮れかけていた。バスターミナルはちょうど旧市街の近く。旧市街にはレストランが多い。やはり、ニースに来たからには、一度ぐらい旧市街のレストランで食べてみたい。
ということで、道をわたって旧市街に入った。野菜好きのMizumizu母にはラタトゥイユ(野菜のトマトソース煮込み)などいいのではないかと思い、南仏の家庭料理を食べさせてくれるようなレストランを探したのだが、そういう店はそもそもあまりニースにはないようだ。いや、あるのかもしれないが、観光客が何も知らずにウロウロしてすぐに見つかる場所にはないということ。
ラタトゥイユなんて、ニースあたりならどのレストランでもあるんじゃないか、などと考えていたのだが、とんだ見込み違いだった。旧市街に入って、賑わっているカジュアルなレストランをのぞいても、またもピザだのパスタだのを出すイタリアンの店。
フランスでイタリアンはできれば避けたい。ふと見ると、その横に、エスニック風の店がある。
メニューを見ていると、東洋人がかった白人というのか、白人っぽい東洋人というのか、不思議にミステリアスな初老のウエイターが出てきて、「どうぞ」と愛想よく誘う。
プロムナードデザングレのホテル、ウエストエンドで食べたエスニック風のスープも地中海的アレンジが面白かったし、よし、じゃあ、ここにしてみようと入ることにした。
ウエイターはとても親切で、東洋的なサービス精神を感じた。メニューは何がなんだかよくわからいのだが、カレーつきの子牛のケバブと野菜スープ、それにハーフサイズの赤ワイン(ボルドーのメルロー+カルベネソーヴィニヨン)を頼んだ。これは、ごくごく普通の爽やか系。
以前は、フランスは日本に比べてワインは格段に安くて美味しいという印象だったが、今は日本にも南米あたりの安くてそこそこのワインが多く入ってきているせいか、レストランで普通のワインを頼む分には、フランスのほうが安いとも美味しいとも思わなくなってしまった。ヤレヤレ。
デイリーワインを生産しているフランスのワイン製造業者が、最近こうした第三国の安いワインに押されて商売が苦しくなってきているというのも頷ける。
で、料理はと言えば・・・結果として、かなりアタリのレストランだった。子牛は柔らかくクセがない。カレーソースも野菜たっぷりでマイルドな酸味が上品。サラサラした長米に非常によく合う。米にはラタトゥイユ風に料理した野菜と干し葡萄がのっていた。さらに、カッテージチーズをまぜたほうれん草のソテー(手前)とすりおろしたリンゴ(奥)、それに生野菜が添えられ、実に健康的なプレートになっている。
野菜のスープも、エスニックというよりアラビックと呼びたい逸品。煮込んだ豆の食感とヨーグルトの風味が新鮮。どこか懐かしいようでいて、これまで食べたことのない味だ。
「どう?」と聞いてきたウエイターに、「素晴らしい」と褒めちぎるMizumizu。
「シェフはフランス人なの?」と聞くと、「ノー、アフガン」だという答え。そして、「私も、半分フランス人、半分中国・ベトナム人だ」とのこと。
へ~~~~
そう言われて周囲を見ると、お客も白人にまじってアラブ系らしい人も多い。なんともインターナショナルな、不思議空間だった。
料理に大満足したので、デザートも追加で取ってみた。「カルダモン風味のミルクプリン」ということだったのだが・・・
これはカルダモンをふった甘いミルクをゼラチンで固め、アーモンドを散らしただけ・・というシロモノだった。しかもゼラチンの量が多すぎて、固まりすぎやあ。
デザートは素人臭かったけれど、全体としては非常に満足。値段は41ユーロ(5244円)。
めずらしくチップをテーブルのうえに置いてきた。向こうは全然気づいていないようだったけれど。フランスのレストランはカード決済のときにチップを書き込む方式でないのがいい。あの書き込み方式、Mizumizuはどうにも信用できない。
レストランのチップは元来給料の安いウエイターへの心づけだ。いや、それだって基本的に変な話だと思う。アメリカあたりでは、この「習慣」あるいは「洗脳」は社会の隅々まで行きわたっていて、誰もかれも、チップを払うのは、「あの人たち(ウエイター)は給料が安いから」だと口を揃える。この件に関しては、みな同じことを言うのだ。どれだけその理屈がアメリカ人に刷り込まれているか、よくわかる。
だが、よく考えてみて欲しい。決まった価格でサービスを客に提供する、そのためのスタッフに適正な給与を支払うのは経営者の義務なのだ。もし売上げが少なくて給料を十分に払えないというのなら、スタッフを少なくするか、経営の取り分を少なくするか、あるいは値段を上げるのが筋だ。
客から正規の料金を取り、そのくせ労働者の給料をめいっぱい安くして、その埋め合わせを客にさらに負わせるなど理屈が違うだろう。チップではなくサービス料として一括に客から徴収するほうがよほど透明で公正だ。実際に、アメリカでもNYのような都会ではレストランはそうなってきているが、それでもサービス料を15%だの17%だの取った上に、できればチップもよこせ、という店も多い。
チップを直接ウエイターにわたすならともかく、上乗せ料金をカードに書き込んでしまったら、経営側に売上げの一部として入ってしまい、肝心の「給料の安い」ウエイターにちゃんと行く保証がなくなってしまう。実際に、寿司を売り物にしているアメリカの高級和食レストランでは、チップをマネージャーや寿司職人に多く振り分けていたとして、ウエイターから訴訟を起こされた。こうしたレストランのチップはとっくにチップでなくなっているのだ。
バンコクのオリエンタルホテルでは、宿泊客がレストランで食事をすると、チップ上乗せをしない請求書が部屋に回ってくる。ところが宿泊しない客がレストランで食事をしてカードで払おうとすると、ちゃっかりチップを客が書き込む方式になっている。宿泊客と非宿泊客で請求方法を変えているというわけだ(苦笑)。
イタリアでは、チップ書き込み式している観光客相手のレストランもあるが、老舗のレストランに行くと、常連客がウエイターのポケットにお金を突っ込んでいるのを見かけることもある。ああいうのが、本当の「チップ」だろう。
店を出ると、あたりはすっかり夜で、ライトアップされた旧市街の古い建物が美しかった。
マセナ広場からプロムナードデザングレを通ってホテルまでは徒歩でも、10分ほどだし、特に危険な道でもないのだが、できれば近くまでバスで行きたいと、サン・ミッシェル通りのバス停(バスターミナルではない)で、若い黒人のお兄さんに、「ホテル・ネグレスコのほうに行くバスはあるか」と聞いてみた。ネグレスコの名前を出せば、知らない人はまずいないはずだ。
すると、驚いたように、「すぐそこだよ。歩いて2分」などと言い、熱心に身振り手振りで、「まっすぐ行って、海に出たら右に行って・・・」と教えてくれる。おかしいのは、その仕草がすでにラップダンスになっているということ。
いや、カモシカのようななが~い足のキミには歩いて2分かもしれないけどね、我々が歩いたら15分はかかるわ。
親切な天然ラッパーの黒人のお兄さんをやりすごして、バスの運転手に聞くと、「XX番のバスが近くまで行く」と教えてくれた。
教えられたバスに乗り、「ホテル・ネグレスコのそばに来たら教えて」と頼み、例によって忘れられないように、運転席のそばに座った。バスはプロムナードデザングレではなく、2本入ったBuffa通りを西に走る路線だった。
だいたいのところで、「降りるのは次?」と聞くと、「そうだ」と言われ、次で降りた。結局プロムナードに出るのに、2ブロック歩き、そこからまた2ブロックほど歩いたので、たいしてラクにはならなかったのだが。
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