日々草

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2006.06.25
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テーマ: 今が旬の話(408)
与党「改定案」について小論(その2)
6/20のブログで
1)自民・公明党の「教育基本法改定案」の改正の論拠は何か、について考えてみた。
今回から具体的な条文を検討することで、改定案が目指しているものは何かを考えたい。

2)与党の「教育基本法改定案」の前文は何を削り落としたか。

現在の教育基本法は全11条で、きわめて簡潔で明快である。

現行の「教育基本法」前文と与党の「改定案」前文は次のようである。

現行の『教育基本法』前文: 
 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。 この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである
 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造をめざす教育の普及徹底しなければならない。
 ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

与党『改定案』の前文:
 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家をさらに発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、 公共の精神 を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、 伝統を継承し 、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
 日本国憲法の精神にのっとり、わが国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

 この二つの前文は一見して余り違いはないように見えるかもしれない。
しかし、日本の近代史のなかでこの前文をつぶさに読んでみるならば、180度回転した世界観がそこには垣間見えるのである。

すなわち、現行の教育基本法の前文が、冒頭に日本国憲法のめざす理想、理念の実現をめざして、教育は行われることを願い、 その理想の実現は、根本において教育の力に待つべきものと 言い切っている。力強い決意がみなぎっている。新しい教育の基本を創造していくことへの希望に満ちている。

与党「改定案」は、現行のこの冒頭部分、「日本国憲法の理想の実現は教育の実現に待つべき」という部分を削除した。

この憲法との絶縁が「改定案」全体の基調である。

この部分の削除は何を意味するか。
子ども観の根本的な転換である。

 今回の教基法の改訂の先頭にたってきた森善郎前首相は、5月11日の朝日新聞紙上のインタビューで、現行の教育基本法のもとでは《…こどもたちに心の大切さを教えられないことが問題だ。教組はそういうことが書いていないと現行法を逆手にとり教えてこなかった。 改正案には「道徳心」や「公共の精神」が盛り込まれた。規範が入ることで、国旗掲揚とか国家斉唱の時の立ち居振る舞いを含め、先生は子どもの心身の発達過程に応じて教え込んでいけるようになる。》 と述べている。

 あからさまの言えば与党の改定案の「公共の精神」とは、子供たちは無知で馬鹿な存在なので、大人(教師・親)が「道徳心」を教え込まなければ、子どもはまともな大人になれない。
だから「国家」が掲げる「道徳」をこどもの身体に浸み込ませるべく学校はつべこべ言うな。
国の云う通りにやることが「公共の精神」に素直なよい教師、よい生徒ということなのだ。

 学校や親たちが「よい子」とレッテルを貼っている子供たちが、どんな子どもに育っているか。どんな大人に成長しているか、すでに実証ずみの部分も多々ある。

「よい子」が悲惨な事件を起している。「よい子」が思春期や青年期に「乗り越えられないほどの」危機的な状況に追い込まれている。

これは、森善郎前首相たちが推奨する、教基法を形骸化して、国家が目指す教育の中で作り出してきた子供たちなのだ。このような子供たちをさらに従順なロボットに仕上げていくのが「改定案」の基本的な教育の姿勢である。

子どもは「学ぶ」ことを通して、自らの心を育て成長していく。
知性を豊かに育てることが「心」を育てること。
そのためにも子どもは教育を受ける権利を生まれながらにして持っている。

そのような「学び」を否定し、上から一方的に知識を注入することを学校に担わせるのが与党の「改定案」である。
では「改定案」はどのような子ども像を、教育の目標にしているか。
次回は、「改定案」の第1章第1条;教育の目的。第2条;教育の目標を通して、具体的に読み解いていきたい。

《この記事を書いている最中に、奈良県田原市で、両親が医師の家庭の高1の息子が、自宅を放火して、母親と兄弟2人を殺害したという、家庭内殺人事件が起きた。

この事件は「学ぶ」とは何か、勉強するとはどうあることかという点で色々教訓に富んでいる事件である。

この息子は、有名な中高一貫校に通っているという。その学校がこの事件のことを学校放送を通して生徒に知らせた様子が報道されていた。校長が報道内容をそのまま伝え、その上で 「学習リズムを崩さないで頑張って欲しい」 と生徒に呼びかけたという。

この校長の生徒への呼びかけが、この学校の存在理由をすべて物語っている。これが今、権力の側にある人々が推し進めている教育「勉強する」ことの姿なのだ。
学ぶことが『心』の涵養には結びつかない学び。余りにお粗末。ひどすぎる。

多感な青年期の生徒たちに学校教育の長が言う言葉がこれであるとは、恐ろしい。寂しい限りだ。このような生徒や教師に国歌を斉唱させ、国旗に敬礼させることで、真に民主的で文化的な国ができるというのか。真に郷土を愛する大人が育つと言うのか。お題目をとなえさせれば、生徒の人としての心が育つと言うのか》





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最終更新日  2006.06.26 07:22:49
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