りらっくママの日々

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2009年11月25日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ23(告白チャンスの年越しデート)」



海の見える公園に向かった。

そこは有名なカップルスポットだったらしくて、
夜中だっていうのに、カップルだらけだった。

もう人目もはばからずベタベタしてキスしてるカップルがいて、
つい目がそっちにいってしまう。

あまりの人混みに驚いた。
人が私を突き飛ばして前を横切る。

「イタっ!」
私がよろけて、ムッとした顔をしそうになった時、
青山くんが手を掴んだ。

「!」

「大丈夫?」

あまりにも自然に手が握られたことにビックリした。

「うん…。」

私の手を繋いだまま、青山くんは前に進んだ。
そして、もう少し人が空いていて、
港が見えるような場所に連れていってくれた。

「すごい人だったね。」

目的地に着いたからか、
青山くんはスッと手を離した。
それがちょっと淋しく感じた。

あのままずっと手を繋いでいて欲しかった。

歩いている間、
ずっと考えていた。

私は彼を愛せるかもしれない。
すごく好きだな…
って。

そう思っていたのも束の間で、
すぐに周りが一斉にカウントダウンを始めた。

年越し1分前だ。
5…4…3…2…1

ヴォー ヴォー

船が0時になったと同時に汽笛を鳴らした。
空には花火が打ち上げられて、
周りの人たちが写真を撮ってるのか、
ところどころでフラッシュが光った。

軽くキスするカップル。
自分たちを写真に撮るカップル。
みんな笑顔だった。
とても嬉しそうだった。

私たちもそう見える?

こんな華やかな年越しは初めてだった。

「明けましておめでとう!」

私は青山くんに言う。
私たちもそのカップルの中の一組に入ったみたいで嬉しくなって。

「おめでとう!」

青山くんも私を見て言った。

「良かったら、初日の出、このまま見に行かない?」

あ、やっぱり年越ししたら、私のこと帰すつもりでいたんだな…って思った。
私次第で今日はどうするか考えてくれてたのかもしれない。
私も今日はマッシーが共犯の外泊許可があったので、
青山くん次第で動こうと思っていた。

まだまだ青山くんといっしょにいたい。

「うん!行きたい!」

初詣に行くかと思っていたので、初日の出とは思ってもみなかった。
青山くんが案内してくれた場所は、
私が遠足で登ったことがある山だった。

電車が夜中に動いていることも知らなかったし、
この山で初日の出が見れることも知らなかった。
ゴンドラが動いていることも。

私たちはここに遠足で来たことがあるって話で盛り上がる。

実は私はその遠足でみんなの足手まといになって、
この山にはすごく嫌な思い出しかなかった。
以来山登りは大嫌い。

「私、山登り苦手で、
なのに後ろの方だったから、みんなに追いつくの苦労しちゃったな。」

ゴンドラに乗りながら、
私が思い出してつぶやく。

「ボクなんか、補助の先生が後ろについてたよ。
青山くんはボンヤリしてるから、いなくなってそうとか言われて。」

その様子を想像したら可笑しくなった。
そんな子がいたら、どんなに良かっただろう。

「じゃあ、私、アオヤンと同じクラスなら良かったな~!
いっしょだったら、安心して、ゆっくり登れそうだったのに。」

「先生は困るけどね。」

青山くんの他愛無い言葉に、私は更に嬉しくなって笑った。

「アオヤンといっしょにいると、焦らないでいいよ。
私も私のペースでいられそう。」

本当にホッとした。

青山くんといると、
変に緊張しなくていい。
心が和らぐ。
オノダさんといる時とは違う。
なんだろう?
この安心感。

このままずっと青山くんといっしょにいられればいいのに…
って思った。

ゴンドラから降りて、
二人で体を温めるためにワンカップのお酒を買った。
チビチビ飲む。

酔った頭で私はあることを聞く決意をする。

「アオヤン、あの…私ね…」

アオヤンのこと好きなの。
私のことどう思ってる?

たったそれだけの言葉なのに、
軽く言えちゃえば、きっと楽になれるのに。
ダメならダメでいいじゃない?

そう思うのに、
ダメならダメで良くないって思う自分がいる。


   「ホントに好きだと、言ったら終わりだもんな。
    それまでの関係壊れることあるし。」

   「いちかばちかじゃないと、言えないよな~。」


オノダさんの言葉が蘇る。

確かに、言ったことがきっかけで、
避けられたりしたら、
悲しくて後悔してしまうだろう。

それならこのままがいい。
きっとこのままがいい。

何?って顔を青山くんがした。

「顔赤いね、アオヤン!」

私は話を逸らした。

「ホント?うん、でも結構すぐに回るね。」

青山くんは笑顔で私に言った。

うん。やっぱりこのままでいい。
このままでいいんだ。

その時の私は青山くんの笑顔を見てそう思った。


言えば良かった。
言えば良かったんだよ。

今の私はそう思う。

でも私は思ったことを聞けなかったし、言えなかった。
青山くんも何も私に期待させるようなことを言わなかった。


ちょっと雲に隠れた朝日が見えた。

青山くん、大好き。

朝日を見ている青山くんの横顔を見て、
私は心の中で、そうつぶやいた。




前の話を読む

続きはまた明日

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最終更新日  2009年11月25日 20時23分38秒
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