朝日新聞朝刊 2015年5月5日の記事です。
お笑いコンビ「ゆーとぴあ」の「ホープさん」の闘病記です。大腸がん、「多形がん」と呼ばれる肺がん、そして胃、空腸への転移と続きます。
得意技「ゴムぱっちん」のポーズを取るゆーとぴあ時代の城後さん(左)と、相方の帆足新一さん=2007年1月
お笑いコンビ「ゆーとぴあ」で活躍した「ホープさん」こと、城後光義(じょうごみつよし)さん(65)に初めてがんが見つかったのは2007年だった。念のため受けた検査で、大腸に8個のポリープが見つかった。内視鏡で切除して調べたところ、このうち3個が悪性腫瘍(しゅよう)だった。
2回目のがんが見つかったのは、舞台で咳(せき)が止まらず血痰(けったん)が出て検査を受けたのがきっかけだった。13年6月、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)で、「多形がん」というタイプの肺がんと診断された。
当時、医師とコントのようなやりとりがあったという。
「今すぐ、たばこをやめてください」
「先生、たばこをやめてまで長生きしたくないんです。いい芸人は長生きしないものですから」
「城後さん、たばこをやめないと手術ができません。手術ができなければ、余命は3カ月です」
「3カ月? すぐやめます」
7月、約8センチの腫瘍を取るため、左肺の上葉を切りとる手術を受けた。リンパ節への転移もなく、手術後の抗がん剤治療や放射線照射もなかった。1カ月ほどで退院し、「さあ、舞台で暴れ回るぞ」と張り切っていた。
ところがその矢先に、胃と小腸に新たながんが見つかった。きちんと食事をとっても、どんどんやせてゆく。13年の年末、異変を感じてかかりつけの医院を受診し、東京共済病院(東京都目黒区)を紹介された。
胃の中央から下部にかけてと、小腸のうち十二指腸に近い空腸と呼ばれる部分の2カ所にがんができていた。肺がんの手術の後に受けた検査で転移は見つからなかった。だが、多形がんの場合、急速に大きくなることがあるという。
城後さんは思った。
「がん君、君もよくがんばるな。俺はもう縁を切りたいんだよ。おまえが死ぬか、俺が死なないと、別れられないんだな」
胃のがんは通常の切除手術で対応できる。だが、問題は空腸のほうだった。がんの大きさはこぶしほどあり、動脈から3ミリのところまで広がっていた。
3度目のがんで、城後さんは初めて死を意識した。
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