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黒木舜平名義の太宰の推理小説、「断崖の錯覚」が収められている本。「断崖…」をのぞけばほぼ随想であり、中には自分の兄が選挙に立候補するのでその応援に書いた短文もある。『晩年』前後の初期の文章は自己韜晦と憐憫に満ちて言い訳がましく、「もの思う葦」とその周辺をのぞいてあまり何度も読みたい文章は少ない。中期の文章は短くまとめられているがどちらかというと大人しめで事務的であまり興味をひかない。何といっても最晩年の「如是我聞」が面白い。当時の文壇の重鎮、志賀直哉に嚙みついた破れかぶれの文章のように見えるが、さにあらず。書かれた当時の評価はそうであっても、今日「暗夜行路」を読む日本人がどれくらいいるか。『人間失格』や『斜陽』はその生彩を失ったか。翻訳も含めての話である。太宰治全集 10/太宰治【3000円以上送料無料】太宰治全集(10)【電子書籍】[ 太宰治 ]個人的には、こちらの方が内容が精選されていいと思う。↓【中古】 もの思う葦 改版 / 太宰 治 / 新潮社 [文庫]【宅配便出荷】【中古】もの思う葦 / 太宰治
2020.11.06
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もう少々お待ちください。
2020.03.25
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伝記の項目に入れてもよかったのだけれど、内容が結構雑多な気がして、ここに入れた。読む前からタイトルで見当がつくように、これは水木しげるの奥さんが書いた本である。映画化もされたそうだが、そちらの方はまだ、見ていない。本を読む限りでは、奥さんは、古風な人らしい。キャリアウーマンとは反対に、専業主婦に生まれてきたような人だ。お見合いから結婚までわずか5日。一戸建てと聞いたのがあばら家で、頼みの綱の傷病軍人の恩給も(水木しげるは戦争で左腕を失った)、親族が管理しているとあっては、「騙された」と逃げ出すのが普通だろう。しかし彼女は逃げなかった。逃げるどころか、極貧生活の最中にも、「別れることなど考えもしなかった」と言い切る。夫の仕事風景に感動し、夫の屈辱をわが身のことのように感じる。まさに夫唱婦随である。波風が立たなかったわけではない。貧しい時は貧しいなりに、『ゲゲゲの鬼太郎』がアニメ化されてヒットしてからは、働きバチのように働く貧乏性の夫を気遣い、喧嘩もした。しかし読む限りにおいては、彼女のような人をやまとなでしこと呼ばずしてだれを呼ぶか、という感慨の方が強い。どうでもいいことだが、つげ義春さん、池上遼一さん、矢口高雄さん…すごい人が水木先生のアシスタントをしていたんだな、と思ったことであった。【中古】 ゲゲゲの女房 人生は…終わりよければ、すべてよし!! /武良布枝(著者) 【中古】afb
2018.12.05
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『父・漱石とその周辺』の「それから」です。前回は〈近代日本文学〉の範疇に入れましたが、今回は随筆扱いにします。「父と母のいる風景」といってもそれにふさわしいものはほとんどなく、「野戦病院」のように著者の個人的体験記のようなものが入っているからです。個人的に興味深いのは、早稲田界隈に関する箇所と、漱石が朝日新聞への「こころ」の連載終了後、次は誰に書いてもらおうかと当時の記者並みに苦心惨憺したという話。当初は志賀直哉に白羽の矢を立てたのですがうまくいかず、鈴木三重吉、武者小路実篤、小川未明、谷崎潤一郎など人選がまとまったのですが、武者小路以外は誰も締め切りを守りません。心痛のあまり持病が酷くなったのではないかと息子さんは書いておられますが、当時の文士気質というのが眼前に彷彿とせられるようで、文豪には気の毒ですが読んでいてにやにやさせられる章です。その名も父の「心」と「暗夜行路」。他にも芥川龍之介、寺田寅彦、菊池寛、野上弥生子などに関する逸話のあって興味深い本です。[単行本]【中古】【メール便可】父と母のいる風景 続父・漱石とその周辺 / 夏目伸六
2015.10.14
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手元にあるのは、詩人が20代の終わりに書いたものに、「&」の講を加えて再出版した谷川流「英和辞典」。今読むとやや断定的な口調が気にかかるけれども、若書きと言ってしまえばそれまで。一方、いかにも谷川さんらしい文章でもあり。26講中<xanthochroi>だけ何のことやらわからなかったので辞書で調べたら、「黄白人種」とあった。なるほど。処分本No.224。【中古】 アルファベット26講 中公文庫/谷川俊太郎【著】 【中古】afb
2013.02.01
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作家・学者を中心にした「わが書斎」論のアンソロジー。ただし「書斎造りを通して出会った人びと」は例外、「縁・隨縁――集書の不思議」「蔵書始末」は蔵書論である。書斎と言えばみなさん本を置くスペースにいろいろ苦労しておられるようだ。書斎中が本で埋め尽くされそうな評論家、電動式書架で合理的に空間をつくる学者、東京大学と国立国会図書館を書庫代わりに利用する研究家、家の書斎と仕事場の書斎を別々にもつルポライターなどさまざまである。ところで書斎は読むだけでなく書く空間でもある。書斎があるのに喫茶店で執筆する翻訳家、移動する電車や飛行機の中で物を書く作家、生活空間に追われながら執筆する女性詩人や女性作家、ひとそれぞれで面白い。30年近く前の本だが、処分本候補に入れつつ、迷っている。書斎の王様【中古】afb
2012.06.27
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かつて手放した本である。それと同じものかどうかわからないけれども、古本屋の店頭に一冊50円でたなざらしにされていたのを、思わず引き取ってしまった本である。戦争末期から戦争直後にかけて中高生だった著者の回想記をなぜ手放したかというと、内容があまりに貧乏くさかったからである。あまりに不潔だったからである。この齢になってなぜ買い戻したか。内容があまりに貧乏くさかったからである。あまりに不潔だったからである。つまり、こういうことだ。中身が同じでも、現在の自分の身につまされるような本は、読んでいて辛くなる。ところがそれが過去の事象となると、懐かしく思えてくる。故人を貶めるつもりはないけれど、なんぼなんでも、あのころの小松左京氏より、学生時代の不具の方が清潔だった。貧乏くさくなかった。それでも、読んでいるとどこかしら自分に相通ずるところがあるような気がして、鬱屈してしまったのだと思う。歳月というのはありがたいものだ。切実だった感情すら、いつの間にか忘却の彼方に追いやって、なんとなく美化してしまうのだから。…【中古】 やぶれかぶれ青春記 他 (旺文社文庫 66-1)
2011.09.20
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芥川龍之介を少し骨太にして、渋い男にしたような著者は、詩人の中原中也と女を取り合った色男でもあります。中也は結局振られるんですがね。冒頭の「常識」は高校の教科書で読みました。わかりやすい文章でありますが、味読するには考えなければなりません。逆に言えば、考えれば味読できるということでもあります。彼の書いたものは一般に評論といわれているようですが、自称評論家の書いた文章は専門的な割りにとっつきにくく、あるいは衒学的であったりして、あまり好きではありません。小林の明晰な文章はそれだけで十分鑑賞に値します。小林秀雄はむしろ批評家と呼ぶに値する存在だと今回読み直して改めて思いました。 【中古】文庫 考えるヒント
2010.06.15
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井上家の内幕を面白おかしく暴露する著者の軽妙なエッセィ集。「酢豚と菜っぱ」から「針千本と筆一本」まで十二篇が収められているが、二人の馴れ初めから始まって、世の女房族への怨念と呪詛に「満ち満ちた」本でもある。しかも自己の主張の正当性を証明しようとするかのごとく、各章で文面批評をぶったり、古今東西の格言をちりばめたりしているから念入りだ。もっとも、娘が三人もいるような家庭の夫婦仲が悪いはずもないのだけれど。処分本NO.179。
2010.03.10
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当代一流の作家とコピーライターによる、ショートショートとエッセィの競作集。糸井さんはバッサリどたばた、村上さんは優雅に物憂く。そうしてどちらもオシャレである。ショートショートは作風や切り口からどちらが書き手かおおよその見当がついたが、エッセイの方はよく外れた。内容的にはきわめて軽いし、図書館にも置いてあったので処分本NO174。夢で会いましょう
2010.02.04
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昔々買って、今でも時々読み返す本。起きている時間を有効に使うにはまずぐっすり眠って充電すること。切れ端の時間を無駄にしないこと。新しい物事に臨むときは必ず初歩から入ること、などなど。書かれてから20年以上経った現在でも十分通用するヒントが満載である。もっとも、10年ごとに専門を変えてきたマルチ知識人にはなかなか及ぶべくもないが…
2009.05.25
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ドイツの人気コラムニストのエッセイにして現代版『結婚十五の歓び』。国や文化が違っても、「世の中」の倣いは古今東西を問わず普遍的なものらしい。 著者の診断によれば、女性のIQは髪の長さ÷ヒールの高さ×被教育年数-胸囲だそうな。要するにかかとが高くて胸が大きな女性ほど扱いにくいということらしい。著者は現在独身だそうだが、18番目の理由を読んで、同性愛者なのかもしれないと思ってしまった。女なしのほうが幸せな57の理由結婚十五の歓び
2008.11.04
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その昔、古本屋で30円で買った本。亭主図鑑と銘打っておきながら、書いてあるのは世の女房族に対する悪態ばかり。とりあえず男性族としては読んでいてゲラゲラ笑ってしまうのだけれど、それはとりもなおさずこの本が主婦とウーマン・リブを標的にしているからに他ならぬ。もっともここに書いてあることを額面どおり受け取ると、馬鹿をみるのは読者であろう。何しろ著者は巻末で、世の中の対立軸は男と女にあらず、「経営者」と「従業員」なんですよと「種明かし」をしているのだ。要するに、賛同するしないはともかくとして、井上さんは一見女性に対する悪口ばかり並べながら、近代資本主義に消費者として絡めとられていく主婦と、過剰に適応しようとしている女権拡張論者に「共闘」を申し込んでいるというわけ。戦時中にみみっちい酒の飲み方をする男たちを哀歓たっぷりに描きながら実は当局を風刺していた太宰治と同じ手法である。もっとも婦人雑誌の読者に連載中このややこしい意図が伝わったかどうかははなはだ疑わしく、ために氏はおそらくは架空の人物である九十九里浜の魚売り(魚婆)なる人物を創造し、連載中の記事について自虐的にくささせ、おまけに解説まで書かせているのだけれど。昭和は遠くなりにけり。まあ確かに今でも女の化け物のような(不美人というのではなく浪費が服を着て歩いているような)女性がこの不景気にもかかわらず堂々と街を闊歩していたりしてそれを支えている構造はいったい何なんだ、というような男女の機微については変わらぬ面もあるにせよ、風俗的にいささか古臭くなってしまった感は否めない。処分本NO153。
2007.11.26
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89~90年、ひまわりだバブルだ湾岸戦争だと明け暮れていた頃にデイリーヨミウリに連載された随想集。日本人読者のために文庫では日英対訳になっています。遠藤さんらしい良識とユーモアが嬉しい一冊でした。
2007.10.21
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ブックオフで一冊100円で4冊購入。バラ売りだったので売れ残りだが拾いものだった。柳田国男や谷崎潤一郎、武者小路実篤なぞはとうに売切れていたが、そんなもん個人全集で読めばよろしい。通なら長谷川如是閑や辰野隆、三木清に谷川徹三といった名前にこそ狂喜すべきだ。ちなみに谷川徹三は詩人谷川俊太郎の実父である。それなのに家人はこんなもの買うくらいなら服でも買えと言う。お金で買えないものをお金で買うという行為の意味が理解できないのだろう。女子と小人は養いがたしと言った孔子の気持ちが少し、わかるような気がした。
2007.10.16
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友達が図書館から借りた本を横から斜め読みしたのだが、表紙から表題が読めなかった本はこれがはじめてである。中身はというと、クスリの常識と非常識が薬大出身の文系ライターである著者のユーモアを交えて、科学的に面白おかしく書いてある。雑学的エッセイとも読めるし、一種の啓蒙書としても役に立つ。同じマンガ描き(「家」とは書かない)でも夏目房之介センセイの本より有用なのではあるまいか。
2007.08.11
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恒例の図書館本の市で満員電車のように混雑している館内を、おしあいへしあいしながらゲットした一冊。典型的なタイトル買いもらいで、中身は全然期待したものではありませんでした。本棚の話や漫画の話、手塚治虫の追悼文や著者の生い立ちに職歴、仕事の進めかた、影響を受けた本についてなどざっくばらんに書いてあって、まあ東海林さだおさんのエッセイをもうすこしおとなしくしたもの、と言えばいいでしょうか。タダで入手したものはタダで返します。処分本NO130。
2007.04.22
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東海林と書いてトウカイリンと読むのだとばかり思っていた。ショージ、と読むのである。てんてんをつければジョージ。ジョージ・サダオ。なにやらガイジンさんとのハーフのようである。そこまでいかなくとも、山本ジョージさんを連想させるような男前のひびきがあるではないか。本人がどれだけ男前であるかの検証については、ここでは言及を避けたい。本の中にまだ独身だった林真理子さんとの対談があって、そこにすでに結婚していた東海林さんの写真が載っているので、各自研究に邁進されたし、と思う。中身のほうはタイトルからも察せられるように、食べ物の話が主である。もっとも、不具としてはタイトルからはずれた横道の話題のほうに興味がある。たとえば、「葬祭新聞について」。お葬式関係の新聞についてのお話である。話の内容もさることながら、葬祭新聞に掲載されている広告についての考察がまた、面白い。「家族計画について」という男の避妊具にまつわる話もある。「オリンピックについて」では、横丁の頑固親父の話を「へいへいさようごもっとも」と丁重に聞く役割である。それがまんざら演技でもないところがまた、面白い。しかし何といっても秀逸は「プロ野球について」であった。東海林さんの未来を予見する目は、すばらしい。「江川監督ひきいる球団など、想像するだけでも身ぶるいしたくなるけど、そういう時代は必ずくるのですよ。さあ、どうする。燃えない監督に燃えない選手の燃えない野球の時代、それは必ずくるのです。そのとき、プロ野球の火は消えます。燃えない野球など、だれも見にこない」王さんがまだ巨人軍の監督だった時代の話である。こんな一節もある。「そういえば、いままでのプロ野球界を支配していた思想は、軍隊帰りのおじさんたちの思想なのですね。事実、軍隊帰りの人が多かった。三原も水原も、川上も西本も…(以下略)」うーむ、なるほど。それで今でも高校野球どころか少年野球チームの選手たちは、そろいもそろってマルコメ頭をしているのだな、と地元の新聞のスポーツ欄を眺めながら、一人不気味にうなずく不具なのであった。
2006.08.30
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永六輔さんの本で初めて読んだのは岩波新書の『大往生』だったと思う。それから、古本屋でぼちぼち集めてきた。もっとも、読んだハナから処分してしまうのだけれど。六輔さんの放送作家として鍛え上げられた軽妙洒脱な文体は好きだ。独特のユーモアも好きだ。それでもつい手放してしまうのは、ひとえに我が家の蔵書のせい。カルい本は差別されてどうしても放出してしまうのである。冒頭に、三島由紀夫の話が出てくると思ったら、六輔さんが旅した1971年って、あの世界的に有名な「切腹」の翌年なんだなあ。北は北海道の網走から南はインドネシアのバリ島まで。テレビスタッフを引き連れた「一人旅」の楽屋裏と、「それから」の後日譚の見事な寄木細工をしばし、堪能。それにしても。すでにあの当時、京都の祇園祭の神輿担ぎ、地元の大学の運動部のアルバイトなしでは成り立たなかったのか…。あれからもう35年…時代風俗の記録の書としては貴重ではあるけれど、処分本NO.117に認定。チーン。
2006.04.01
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狐狸庵ものかぐうたらものと思って図書館で手に取ったのですが、中身はだいぶん違いました。『週刊宝石』に連載されたもので、語り口は氏の例のエッセイと通じるところもあるのですが、どちらかというと、現代の科学では説明できない不思議なものに対する好奇心や、知られざる名所秘跡の話、氏の交遊録などの思い出話などに比重がおかれています。やわらかくて、ユーモアとペーソスに満ちた名篇集です。ヒルティに岩波文庫から出ている『眠られぬ夜のために』というお硬い本がありますが、カトリック作家の遠藤さんも、それをもじってタイトルにしたのでしょうか?
2006.03.11
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最近、漫画作品の倒錯盗作行為がネットで話題になっておりますので、…考えるだけで不愉快になるので気分転換に隣人が図書館から借りた本を横から拝借させていただきました。ご丁寧に表紙カバーにも楕円形の「穴」があいていまして、そこから槇村さんが「イエイ」と人差し指を突き出してます。まあ何といいますか、見ただけで元気の出てくる本ではあります。恋愛と結婚とセックス、健康とこころと仕事、人生と文化と美容、などなどをテーマに30人以上の人と対談されているのですが…一番多いのは漫画家さんと作家さんですね。わたなべまさこさん、さかもと未明さん、内田春菊さんとか、武内直子さん、西村しのぶさん、山岸凉子さんとか。岡田斗司夫さんも関連かな。文字畑では柳美里さん、伏見憲明さん、井形慶子さん、下田治美さん、山本文緒さん、生田哲さん、島村洋子さん。お医者さんでは婦人科医に歯科医に精神科医。バレエダンサーが入っているのは槇村さんなら当然として、変わったところでは証券会社の社長さんや、AV監督さんとか。全体の半分以上が女性です。いろんな打ち明け話―たとえば、槇村さんの「さとる」が昔好きだった男の子の名前に由来しているなど―も面白いのですが、一番びっくりしたのがこのシリーズの途中で対談した男性と、槇村さんが結婚していた、という事実を知ったときでした。しかも、御相手はなんと外国人!槇村さとるファンなら必読の一冊です。盗作騒動でうんざりしている世の紳士淑女陛下の皆様、お口直しにいかがでしょうか?
2005.11.02
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