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日経連載の伊集院 静氏による「ミチクサ先生」、今日が第53回目。文学を志すものなら誰しもそうなのでしょう。伊集院氏もこの国を代表する明治の文豪漱石を語るとき、同時代を生きた鴎外と子規についても触れずにはおられなかったのに違いありません。幼年期の漱石、鴎外、子規の並み外れた神童ぶりについては、これまですでに触れています。今話は明治16~18年ころのことでしょうか、漱石が青年期を迎えたようとしているころについて語られようとしています。今日はちょうど時を同じくして、郷里の松山から東京を目指して出て来た一人の少年・正岡升(子規)が新橋のステーションに降り立った時のことが書かれています。「これはどうじゃ。まるで祭りのようじゃ」これが子規16歳、明治16年の初夏のこと。東京を初めて目にしたときの子規の驚きようを、伊集院氏はこのように口語で平易に表現しています。・・・う~む、そういえば私にも同じ経験がありますね。私が初めて東京の土を踏んだのは子規より2歳長じた18歳になったばかりの1月のこと。場所は新橋ではなく上野。当地北陸富山から、北陸線夜行寝台特急”北陸”のB寝台の最上段のベッドに揺られ、上越線長岡経由で終点上野に着いたのが早朝7時前だったにも関わらず・・・。「これはどうなっとんがい。まんで祭りだにか」(笑!どこをどう行けばよいのかわからぬまま、列車から降りる人の波についていくと、山手線のホームにたどり着けた。東京ではまず山手線の路線図を頭におき、最寄りの駅がどこなのかを考えれば、行けないところはないと教えられていたのです。(苦笑!話を明治に戻します。上京の翌年17年の9月には東京予備門(後の第一高等中学校)に入学した子規でしたが、入学する前からすでに「筆まかせ」を書き始めていますね。【中古】 筆まかせ抄 岩波文庫/正岡子規(著者) 【中古】afb価格:300円(税込、送料別) (2019/11/3時点)楽天で購入私は受験した東京の学校には進まなかったから、東京に残ることはありませんでしたし、もちろん子規のように随想を練るといった才能などあろうはずもなかった。ただいたって健康に恵まれ、カリエスなど病むことがなかったのは幸いだったと、その後の子規のことを知れば知るほど、そう思わずにいられません。さて、その後東京予備門でこの子規に出合うことになる「ミチクサ先生」ですが、漱石と子規の親交については、どのように描かれるのでしょうか。伊集院氏の筆が待たれます。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年11月03日
日経の連載小説が新しくなりましたね。伊集院静氏の手になる「ミチクサ先生」。「ミチクサ先生」とは、明治の文豪夏目漱石のことだということが、すでにわかっています。本日の連載が30回目になりますが、時は明治7年、養子に出された金之助少年(漱石)が当時新政府によって創設されたばかりの小学校に入学しようとしていたころのことが描かれています。一昨日の第28回では、筆者はこの年明治5年12月3日を明治6年の1月1日にするという暦の改変と一日を24時時間にとする定時法の導入についても、触れています。新暦の導入を聞いた町場の高利貸が、仰天してこう言ったと。「これはまずい。ひと月分の利息が消えちゃう」と。明治5年の年の暮れに突然実施された改暦については、学制の制定や軍隊の創設、鉄道の施設など矢継ぎ早の政策を実施したことにより、新政府の財政は破綻寸前にまで追い込まれていて、急遽の策として編み出されたのが、太陰暦から太陽暦への突然の改暦であったという話をものの本で読んだことがあります。たまたま翌年の明治6年が閏月のある年であったので、このタイミングで新暦に切り換えれば給与をはじめとする人件費などの経費が大幅に省略できると、当時の大蔵卿大隈重信が発案したものだと。まあ、さぞかし町場の高利貸しは嘆いたことでしょうが、大隈重信はほくそ笑んだというわけですね。(笑!また、月の満ち欠けを基準にひと月を定めた太陰暦では、毎月の15日は満月、晦日は新月ときまっているから、月の満ち欠けを見るだけで日にちを容易に知ることが出来た。これが新暦の太陽暦となると、日にちがよめぬということになり長年太陰暦に慣れ親しんできた当時の人々は、「晦日に月の出づれば、玉子の四角もあるべし」とおおいに嘆いたと。一日を24時間とする定時法についても触れておきましょう。現代の我々であれば、時計を見れば、今が何時かすぐにわかるというものですが、どうも当時の人々は1日を24等分したものが1時間、それをさらに60等分したものが1分という新しい時間の単位は、感覚的にも受け入れることが出来なかったらしい。時代小説の名手・浅田次郎は、これを題材にした「遠い砲音」という短編のなかで、新政府の近衛歩兵師団砲兵中隊の士官の当惑振りを、おもしろおかしく、そして悲しく描いています。「遅刻じゃあっ、急げ、遅刻じゃあっ」 「中隊長殿、時間は」 「11時と、ええ・・・50ミニウトか。いや、40」 「あと何ミニウトでござるかっ」 「ようわからん。ともかく急げ」そういった激動の時代に幼年期を過ごした夏目金之助少年は、長じていかなる人間となっていくのか。漱石はどんな「ミチクサ」を歩んだというのでしょう。伊集院静氏の手腕が待たれます。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年10月10日
人は誰でもおぎゃ~と生れ落ちたその瞬間から、老・病・死を背負うて生きる運命にあるのは、今さら言うに及びませんが、普段からそのような意識を持って日々を過ごしているという人はなかなかおられないのではないでしょうか。人生をマラソンにたとえるならば中間地点を折り返して復路を走ることになって久しい我が身、私も出来るものならば最後の瞬間まで健康でありたいと願う者の一人です。病にもかかりたくないのは当然のことですし、老け込みたくない、若い肉体を維持したいと常々思っているのですが。書店でこんな本を目にしました。老けない人は腹七分め 若返り遺伝子が活性化する食べ方 [ 古家大祐 ]価格:1430円(税込、送料無料) (2019/10/4時点)楽天で購入「歳をとりたくなければ『腹7分目』カロリー制限を」ですと。「腹八分目に医者要らず」よりさらに一分目控えなければいけないということに衝撃を隠せないでいます。(笑!ところでサーチュイン遺伝子って耳慣れない専門用語が出て来ますが、人ならだれでも持っている遺伝子だとか。この遺伝子のスイッチが入っているかいないかで肉体の若さを保てるかどうかが決まると聞けば、どうすればスイッチが入るのかぜひ教えてもらいたいもの。生命体は飢餓の恐れが出てくると、繁殖できるタイミングが整うまで生殖力を温存しようとする。つまり、老化を遅らせ、寿命をできるだけ延ばして、健康を維持させようとサーチュイン遺伝子のスイッチが入るという説明は、わかり易いといえばわかり易いですが。そもそも人の大脳皮質の古い部分にある本能と呼ばれるものは、「寝ること」(Nと略す)、「食うこと」(K)、そして自分の「DNAを残そうとすること」(D)ですよね。つまりこういうことか。Nを一定としたとき、K ⤵ ならば D ⤴ の状態にするのがサーチュイン遺伝子だと。そこで自分自身を振り返ってみると、(D)について言えばお粗末ながらも、なんとか形だけは残せたようではあります。まあ、チャンスがあればという気も未だにないわけでもありませんが・・・。( ← イエローカード!・・・笑!仕事に追われる日々のことを思えば、削るとすれば「寝ること」しか残されていませんから、ストレスは溜まる一方。そこでつい「食うこと」で本能を満たそうとしたということだろうか、結果がぶざまな下腹に反映されるということになる。これを記号で表せば、N ⤵ かつ D ⤵(笑!)ならば、K ⤴ 状態。さて貴方の大脳皮質は、はたして「K ⤵」を受け入れてくれますか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年10月04日
仕事に追われ日々時間に余裕のない生活を強いられている現代人にとって、1年365日どこをとっても1日は24時間と決まっております。秋分の日も過ぎれば、昼夜の長さは完全に逆転し、まさに秋の日はつるべ落とし、夕方5時を過ぎれば辺りはもう薄暗くなっているのに気づき、思わず仕事の手を早めるという人も多いのではないでしょうか。では昔の人はどうかというと、当時の時間の単位は文字どおり「時(とき)または刻(とき)」、一時(いっとき)が現代の単位で約2時間ということになります。今約2時間と言ったのには訳があって、昔の時間は昼と夜で長さが伸び縮みしていたがために、はっきりと2時間と言い切ることができなかったのです。「旧暦はくらしの羅針盤」(小林弦彦著 生活人新書)に詳しく書かれております。旧暦はくらしの羅針盤 [ 小林弦彦 ]価格:734円(税込、送料無料) (2016/9/27時点)すなわち、昼は昼で日の出から日の入りまでを6分割したものを一時(いっとき)とし、夜は日が暮れてから翌日日が昇るまでを6分割していたから、これからの季節昼より夜の一時の方がはるかに長くなるというわけ。反対に夏になれば、昼の一時が断然長くなる。「秋の夜長」や「春眠暁を覚えず」の例えは、こういった背景があって出たものだということが推察されます。文明の力・電気の恩恵を受けている現代と違って、昔は日が落ちれば月夜でもない限り夜は真っ暗。ろうそくや行燈の油などは、当時は超高級品であったがために、夜になればそれこそ寝るだけ。せいぜい囲炉裏端で囲炉裏の火をたよりに、細々と夜なべ仕事をするくらいだったことが想像されます。季節はまさに「読書の秋」。「灯火親しむ候」とは、まさにこれからの季節を言うのでしょうが、二宮金次郎の例えを引くまでもなく、昔の人は本を読むにも時間に物理的な制約があったことがうかがい知れますし、そもそも本を手に入れること自体並大抵のことではなっかたことを思えば、現代に生きる我々は何と幸せなことかと思うのです。週末の土・日、秋の夜長に選んだ2冊。夜の足音 短篇時代小説選 (角川文庫) [ 松本清張 ]価格:561円(税込、送料無料) (2019/9/27時点)蔵の中 短篇時代小説選 (角川文庫) [ 松本清張 ]価格:604円(税込、送料無料) (2019/9/27時点)松本清張の初期の作品。短編の時代小説が収められた文庫本。短編だから一話二話読んで眠くなったら寝ればいい。(笑い!◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年09月27日
人気時代小説作家・上田秀人の新しいシリーズが出ましたね。「裏用心棒譚(うらようじんぼうばなし)茜色の茶碗」茜の茶碗 裏用心棒譚一 (徳間文庫) [ 上田秀人 ]価格:734円(税込、送料無料) (2019/8/29時点)楽天で購入本シリーズの主人公は、「日雇い浪人生活録」シリーズに続いてまたしても浪人。親の代から浪人暮らしという「日雇い浪人生活録」シリーズの諌山左馬之助に対して、本シリーズでは、主家から密命を受けて浪人に成り下がった元相馬藩士・小宮山一之臣。それもただの浪人ではない。盗人一味の用心棒だというではないか。はたして主家の密命とは何か?何ゆえ小宮山は、浪人に身をやつさなければならなかったのか?それを解く鍵は、副題にもなっている「茜の茶碗」。相馬藩に神君家康公より下された茶碗が「茜の茶碗」といえば、時代小説ファンなら、はは~んと想像がつきますね。あろうことか相馬藩は、その宝物を賊に盗まれてしまったというのだ。この不始末が幕府に聞こえたら、藩はお取潰し必定。何としても「茜の茶碗」を探し出せ。非常な命が小宮山に下った。茶碗を探し出すまで、帰参まかりならぬ。小宮山は浪人になりすまして藩の危急を救わんと奔走するのであったが・・・。武士としての矜持と理不尽な主命の狭間に、小宮山の心は千々にゆれ乱れるのであった。はたして茜の茶碗は見つかるのか?小宮山の帰参は叶うのであろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年08月29日
「エコロジー」を辞書で調べると生態学のことを指すのですが、もっぱら私たちは「自然環境保護」あるいは「自然環境保護活動」という意味合いで使うことの方が多くなりました。人間も自然環境を無視しては生きていけないということに遅まきながら気づいたということです。今や世をあげてエコブーム。何でも頭にエコをつければ無難とばかりに、「地球にやさしい、環境に配慮している」の文言は、企業の経済活動にも最早欠かせないものになった感があります。それでは、皆さんは「エコロジカル・フットプリント」という言葉をご存知だろうか?英語由来のカタカナ文字を直訳すれば、「自然環境保護的な足跡」というような意味合いになるのかなと思いますが、正確には、「ある国の人間が生活レベルを維持するのに必要な農地や海、森林などの合計面積を示す」指標のことを、エコロジカル・フットプリントというのだそうです。エコロジカル・フットプリント 地球環境持続のための実践プランニング・ツール [ マティース・ワケナゲル ]価格:2376円(税込、送料無料) (2019/8/22時点)楽天で購入初めて耳にした風変わりな指標もさることながら、私が驚いたのは、「私たち日本人は、日本の国土が本来供給できる量に比べて、7倍近い自然資源を利用している」という指摘。ちょっとピンときませんね。ところが、「日本人の生活レベルで世界中の人が暮らせば、地球があと1.5個~2個必要になる」と説明されると、ちょっと背筋が寒くなって来ます。地球を増やすことはかなわぬことですから、地球の環境を守っていくには、日本人の生活レベルを今の半分くらいにするしかないということになりますね。我われは、何か非常に罪深いことをやっているような錯覚にとらわれます。・・・いや錯覚ではなくて紛れもない事実でした。果たして経済活動や生活水準を今の半分の時代にまで逆回しできるだろうか?現代の車社会から、牛・馬が田んぼをおこしていたあのころの生活にどうやって戻るというのだ。・・・頭の整理ができない状態です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年08月22日
浅田 次郎の短編時代小説集「五郎治殿御始末」より、「柘榴坂(ざくろざか)の仇討」。五郎治殿御始末改版 (中公文庫) [ 浅田次郎 ]価格:561円(税込、送料無料) (2019/8/17時点)楽天で購入武門の矜持にこだわりつつも、時代の趨勢に抗じ切れず、刀を置き髷を落とさなければならなかった幕末の武士。中でも下級武士の心情を描かせたら、浅田の右に出るものはいないだろう。「五郎治殿御始末」で、元桑名藩士岩井五郎治がそうであったように、「柘榴坂(ざくろざか)の仇討」でも元彦根藩士で大老井伊直弼の近習を勤めた志村金吾は、維新から6年の歳月が経って髷を切り散切り頭にしてさえも、刀を置くことが出来なかった。・・・どうしてあの時、殿(井伊直弼)をお守りすることが出来なかったのか。御駕籠廻り近習でありながら、手傷も負わず御駕籠を離れた雪の中に呆然と蹲っていた金吾は、厳しい詮議を負うことになった。「もはや切腹など許されぬぞ。父が腹を切り、母が咽を突いたるは、汝(うぬ)が身替わりじゃ。・・・罪を雪ぎたくば、騒動に関わりたる水戸者の首級(しるし)のひとつも挙げて、掃部頭(かもんのかみ)様の御前にお供えせよ。・・・」本懐を遂げぬまま時は移ろい、維新が成って早や6年。あの雪の日から数えれば実に13年の歳月が過ぎようとしていた。妻を場末の酌婦に身を落としめてまで糊口をしのぐ金吾にとって、大義こそその日その日の生きる糧であった。とある日金吾は、旧幕府評定所の御留役・秋元和衛より呼び出しを受けて、色めき立つ。騒動に関わった旧水戸藩士の内で行方知れずになっている者一名の所在を聞き出すことが出来たのであったが、何んと秋元はその口で「水戸の者どもは国士であった」と、金吾に言うではないか。秋元は何故金吾にそのようなことを言ったのか。それならば端から旧水戸藩士の所在など知らぬと言えばよいだけのこと。やはりあの時と同じように夜明け前から降り始め、夕刻になっても已もうとしない雪の日の夕暮れ時、新橋の駅頭にたたずむ一人の車夫の前に金吾は立ったのであったが。・・・俥(くるま)は降りしきる雪の中、人気のない柘榴坂へと進む。果して金吾は、見事本懐を遂げ、13年の屈辱を雪ぐことが出来たのであろうか?桜田門外の変に巻き込まれた二人の侍、大老井伊直弼を討った元水戸藩士と、直弼の近習であった元彦根藩士。名もなき下級武士二人の13年にわたる葛藤をみごとに描く「柘榴坂(ざくろざか)の仇討」。お奨めの一冊です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年08月17日
日本人なら「源氏物語」を知らぬ人はいないでしょう。・・・などと書けば、まるで「源氏物語」に精通しているようなもの言いに聞こえますから、あくまで日本を代表する古典の名前を承知しているというだけのことだと、お断りしなければなりません。ちょうど夏休みに入って梅雨が明けようとしている今頃の時期ではなかったか。高校3年の補習授業の古文の時間に、この「源氏物語」を読まされたことを思い出します。・・・ずいぶん難義しましたね。(苦笑!以来久しくこの古典に触れた覚えはありません。おそらくここまで読まれた大部分の人は、私と同様に苦笑いをしておられるのではないでしょうか。現在鹿児島で開業医をなさっている医師鹿島友義さんの源氏物語へのこだわり。鹿島さんは、63歳のときに日本を代表する古典「源氏物語」に挑戦することを決意されたそうです。お忙しい本業のお医者様の仕事の合間をみて、原文を読み進めたというのですから、ただただ恐れ入るばかり。ついに全巻読破され、こんな本まで出筆された。『医者が診つめた「源氏物語」』。「見つめた」ではなく「診つめた」となっているところに着目してください。【中古】 医者が診つめた「源氏物語」 /鹿島友義【著】 【中古】afb価格:822円(税込、送料別) (2019/7/25時点)楽天で購入私が強く興味を持ったのは、鹿島先生の強じんな意志とご努力もさることながら、登場人物の「病気」を専門の医学的見地から考察しようとされた工夫。まさしく「診つめ」られた部分。たとえば、有名な「いづれの御時にか、女御・更衣あまたさぶらひたまひける中に・・・」で始まる最初の章にに登場する桐壺の更衣。この主人公光源氏の母親は、「はかなき心地にわずらひて」とあるように、現代流に言えばストレスが原因の心身症。もののけのせいで難産になった源氏の正妻葵の上は、物語のモデルとなった一条天皇の中宮彰子だとすれば、重い糖尿病を患っていたとされる藤原道長の血をひく娘であることを考慮すると、糖尿病前の状態で胎児が通常より大きく育ったためではないか。源氏の親友の長男柏木は、「まことに心地もいとなやまし」なのは、きちょうめんでまじめな性格の人にしばしば診られるうつ病が疑われる・・・など。平安貴族が病気にかかったときのプライマリーケア(初期治療)が、加持祈祷であったというのも面白い。『医者が診つめた「源氏物語」』、お奨めの一冊です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年07月25日
「病が語る日本史」(酒井シズ著 講談社)本棚から何度も手に取っては読み返しています。【送料無料】病が語る日本史 [ 酒井シヅ ]価格:1,103円(税込、送料込)著者の酒井氏の経歴をみると、三重県立大学医学部卒業、東京大学大学院終了とあります。医学部のご出身なのだから医師免許をお持ちなのだろうと想像しますが、専攻が「医史学」ということですから、大学院に進まれてからは「医史学」に興味を持たれて、医者でありながら歴史学者の道を歩まれたのでしょう。現在日本医史学会の理事長を務められていると紹介されています。今も昔もこの世に生まれてきた人が避けて通れぬ道は、老・病・死。誰しも避けて通りたいと願いながら、宿命に従うしかなかった・・・。その時代時代を生きた人々は「病」をどのように捉え、どう受け入れて来たのか?著者の酒井氏もそこに強い興味を持たれたのに相違ありません。まさに「病が語る日本史」、「医者の目から見た日本史」。お奨めの一冊です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年07月18日
今読んでいる本。浅田次郎著「帰郷」。帰郷 (集英社文庫(日本)) [ 浅田 次郎 ]価格:626円(税込、送料無料) (2019/7/10時点)楽天で購入世に「戦争文学」と呼ばれるジャンルの分野があることは、一般に広く知られたことです。私は時の宰相がもはや戦後ではないと言い、この国が高度経済成長の坂を一気に駆け登ろうとしたころ小学校に通った世代。北山修二風にいえば「戦争を知らずに、僕らは生まれた」世代。私が「戦争文学」なるものを最初に読んだのは、大岡正平の「野火」であったろうか。海軍ものであれば、阿川弘之「暗い波濤」であろうか。人気作家浅田次郎は、その私らよりも3~4年先に生を受けた世代。いわゆる団塊の世代の終わりごろにあたりますから、その浅田にしたところで戦争を知ろうはずもない。「戦争文学」の書き手の多くは、何といっても先の大戦(太平洋戦争)に従軍した当事者。大岡にしても阿川にしても、筆舌に尽くし難い辛酸を味わいながらも生還を果たすことが出来た。団塊の世代の終わりごろに生まれた「戦争を知らない」はずの浅田は、どのように先の大戦を描こうというのか?私の父は「生まれた時が大震災」の大正12年生まれ。祖父は確か明治24年生まれだったか。父は昭和19年の終わりに召集を受け、補充兵として満州へ従軍。ソ満国境の警備に着いた。幸いソ連軍が父の部隊が展開しているところと離れた国境線から侵入したために、ソ連軍と交戦することはなかったという。転進命令が来てその転進先へ進軍(歩兵であったから文字通り徒歩で)してみると、そこはすでにソ連の赤軍に破られていて友軍の死体の山。ようやく赤軍に対峙した時は8月20日過ぎ。すでに終戦の詔勅が発せられていて武装解除。シベリヤへ抑留され、最後の引き上げ船でかろうじて舞鶴に戻れた口だと聞きました。帰郷したそのときの父の様子は、祖父いわく、あたかも「割りばし2本を地面に突き立てた」ようだったと。一方の祖父は、甲種合格で即時入営の現役バリバリの陸軍歩兵。幸いなことに日露戦争は終わって久しく、日中戦争は勃発前。満期除隊後に太平洋戦争の雲行きが怪しくなって、猫も杓子も兵隊に引っ張られたころでさえ、年齢がいっているので再入営を免れた口。父も祖父もそれ以上のことを話そうとはしませんでしたから、幸か不幸かやはり私は「戦争をしらない」ままでしたが、浅田の「帰郷」に出合い、あの忌まわしい時期を生き抜いた人々の生き様に直面するとき、「戦争をしらない」までも「戦争を語り継がなければならない」という浅田の思いが、少しばかりはわかるような気がしています。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年07月10日
今読んでいる本。上田 秀人著 「傀儡に非ず」。戦国の雄、織田信長に見いだされ、その類まれな知略と胆力で摂津の国一国の支配者にまでなった荒木村重。その村重をして今日まで無謀な暴挙と語り継がれて来たあの謀反を起させたのは何か?傀儡に非ず (徳間文庫) [ 上田秀人 ]価格:766円(税込、送料無料) (2019/5/9時点)楽天で購入・・・村重は、疑心暗鬼に陥りながらも忠実に信長の命に従っただけだった。上田 秀人の大胆な仮定は、室町最後の将軍・足利義昭の存在を際立たせることによって、巧みに読者の納得を誘います。ところで、日本人に歴史上好きな人物をひとりあげよと問えば、5人に3人は信長と答えるとか。何を隠そう私もそのうちのひとりです。その3人に、信長を語るとき本能寺なくして語ることは出来ぬだろうと問えば、3人が3人とも諾と首を縦に振ると決まったもの。光秀は何ゆえに本能寺に走ったのか?日本史上最大のクーデターといわれる本能寺の変は、未だに深い謎に包まれたままですが、上田はこの「傀儡に非ず」で村重の胸中を光秀(このときは光秀は信長と村重の間に入って、村重を取り成そうとさえしていた)とダブらせることで解こうとしたのではないかとさえ思えて来ます。操り人形(傀儡)のごとく振る舞おうとした村重に、絡まって身動きできないようにしてしまった操り糸。村重はそれを断ち切るしか道はなかったのだろうか・・・。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年05月09日
日本人ほどあいまいな物言いをする民族はいないといいます。訪問先でそこの主人から昼時に「ごいっしょにお昼ごはんを食べていかれたらどうですか?」などと、食事を勧められたら、「いいえ、今日は、いづれまた・・・」と早々に席を立つのが当たり前のこと。すなわち日本語のあいまいさとは、訪れた客に「昼時になったので、この辺で帰ってくれないだろうか」とストレートに言わないどころか、「昼飯を用意するから食っていけ」と真逆の言い方をすることによく現れています。言われた方も言われた方で、「では、おことばに甘えて・・・」などと言おうものなら、台所でその家の奥さんがずっこけてしまうことをよく承知している。「いえ、このあと寄るところがありまして・・・」などと言葉をにごして、やおら腰を上げるのが礼儀とその辺のところはよくわきまえています。このあたりのやりとりの機微が欧米人には理解しがたいらしく、日本語はあいまいである、日本人は何を言われてもただへらへらと笑っているだけ、と言われる所以なのでしょう。では中国人はどうか?爆笑!エリート中国人 [ 小澤裕美 ]価格:799円(税込、送料無料) (2016/11/7時点)第5章「中国人との上手な付き合い方、教えます」に書いてあります。中国人に「今度遊びに来てください」は禁句であると。お土産やプレゼントにしても、「ほんの気持ちですけど」などと形式的なものでお茶をにごすのなら、初めからあげない方がよほどましだと。すなわち日本人の「私はあなたのことを気遣いしていますよ」の意味の「ほんのささやかなモノですけど・・・」は、中国では「こんな程度にしか自分のことを思っていないのか・・・」ととられてしまうそうですから、本当に注意が必要ですね。コワイ民族ですね、中国人って。。。もともと「意言外にあるを尊ぶ」や「行間を読む」というのは、日本の文章表現だけに特徴あることではなく、中国でも行間から作者の真意が汲み取れるような漢詩こそ一級の詩であるといわれていて、日本も長い歴史の中でそれに倣って来たにすぎないのに、その文化が本家の中国より日本で昇華されたというのは、何事にもやわらかく婉曲を好む日本人だからこそ可能であったのかも知れません。何事にもやわらかく婉曲でどこが悪い。日本人に生まれてよかったと思うのです。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年04月13日
戦国の名だたる武将は劣勢を余儀なくされた戦をどのように戦ったか、という観点から書かれた短編時代小説七編を収録した「戦国 番狂わせ七番勝負」。戦国 番狂わせ七番勝負 (文春文庫) [ 木下 昌輝 ]価格:928円(税込、送料無料) (2019/4/10時点)楽天で購入中でも木下昌輝の手になる「信長の首」が面白い。日本人に歴史上好きな人物を一人あげよと問えば、5人に3人は信長と答えるというくらい、日本人は信長が好き。何を隠そう私もその一人です。信長を語るとき避けて通れぬのが本能寺。日本史上最大のクーデターともいわれる本能寺の変は何故起きたのが?・・・信長ほどに猜疑心の強い者が、何故少ない伴廻りで本能寺に泊まったのか?光秀を本能寺に突き動かしたものは何か?そして光秀の裏で本能寺に関与した人物は誰であったのか?次から次へと浮かんで来るさまざまの謎のなかでもひときわ多く語られている謎、焼け跡から信長の遺体が見つからなかったのはなぜか?つい先ごろ見たテレビ(NHKだったか)の検証番組では、信長の遺体は隠されたわけでもなく、さらには生きて逃れたのでもなく、ただ単に信長の遺体が信長の廻りで死んだ多くの近習の遺体に交じって、信長と特定できなかったのだという甚だ拍子抜けの結論を、燃焼工学の科学的実験までしたうえで下していましたが。木下昌輝は、この謎を南蛮から渡来した宣教師ヴァリニャーノが使役人として連れて来た黒人奴隷ヤジル(和名弥助)の奇抜な行動で、解こうとしているところがいかにも斬新で面白い。好奇心の強い信長は当時黒奴と呼ばれさげすまれたこの弥助を家臣に取り立て、常に側に置こうとしたのは、歴史上の事実でもありますね。本能寺の変でも信長の側近くにいた弥助は、生きたまま捉えら光秀の前に引き出されたものの、光秀が「黒奴は動物で何も知らず、また日本人でもない故、これを殺さず」と命じたがゆえに一命を拾い、当時の京にあった南蛮時に身を預けられたと歴史書は語っていますが、その後の消息については歴史から忽然と消えてしまった。本能寺から逃れることが出来た弥助こそが、信長の遺体の行方を知っているという筆者。しかしもしそうだとしても、それはどのようにしてなされたのだというのだ?ヒントは、ヴァリニャーノに買われる前の弥助の主人は、戦場を駆け巡っていた金創医(戦場外科医)で、弥助はその金創医の助手のようなことをさせられていたということ。最期まで読んだ読者は、木下昌輝の奇抜な謎ときに驚きの声を発するに違いありません。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年04月11日
天は二物を与えずといいますが、何ごとにも例外があるのは世の常でもありましょう。例えば文壇に目をやれば、作家にして医者という大きな二足のわらじを履いているという人いますね。まずすぐ名前が出るのは、明治の文豪・森鴎外。鴎外は軍医でしたね。斎藤茂吉は歌人にして精神科医。その子息である北 杜夫も父同様精神科医で作家。手塚治虫は医学博士でありながら、医者の道に進まなかった変わり種。まあ、その種は言うまでもなく大天才の種だったわけですが。昭和・平成にまで時代を下ると、「失楽園」の渡辺純一は確か外科医でなかったか。時代小説で次から次へヒットを飛ばす上田秀人は、歯科医師の顔を持つ。もう一人私の好きな作家をあげるとすれば、篠田達明。かなりお歳を召されたようですが、整形外科医としての知見をもとにした『モナ・リザは高脂血症だった』『徳川将軍家十五代のカルテ』『歴代天皇のカルテ』『偉人たちのカルテ』などのユニークな作品を書いている。モナ・リザは高脂血症だった [ 篠田達明 ]価格:734円(税込、送料無料) (2017/3/11時点)ところで近頃の若い医者は、カルテに記入された検査データばかり見て、患者を診ようとしないと言われていますね。医者へ行けば、レントゲンを撮られ、血を採られ、尿を調べられ、・・・それらから得られた検査データを見て、「〇〇の数値が異常ですねぇ~」と言うだけ。数字が高いか低いかぐらいなら、私にだって言い当てられる。その昔名医と言われた医者は、まず「どうなさいました?」と患者の顔色を優しくうかがったものです。篠田先生こそ、患者の顔色どころか名画に描かれているモデルの顔を見るだけで、ピタリと隠れた病気を探り当てるという名医。篠田先生は、かの名画を見ただけで、モナ・リザは高脂血症だったと診断されています。皆さんも『モナ・リザの微笑み』に隠された意外な病気の秘密を探ってみてください。『モナ・リザは高脂血症だった』お奨めの一冊です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年03月19日
上田秀人の人気シリーズ、表御番医師診療禄(13)。ついに最終章を迎えました。副題には「不治」とあります。表御番医師診療禄13 不治 (角川文庫) [ 上田 秀人 ]価格:734円(税込、送料無料) (2019/2/26時点)楽天で購入時は5代将軍綱吉の治世。表御番医師から御広敷番医師に栄進し、綱吉の寵姫お伝の方の担当医師となった矢切良衛は、お伝の口添えもあって綱吉の脈までとるほどの厚い信頼を得るまでになった。綱吉は良衛に習得させた南蛮医術によって、何としても寵姫お伝に継嗣の懐妊をと望むのであった。現代に生きる我々は、綱吉の望みが叶うことなく、甲府から甥の綱豊(6代家宣)を養子に迎えることになったことを知っていますね。そこで上田は最終章となる本編の副題に「不治」を持ってきたのであろう。一方良衛は、側用人に出世した柳澤吉保の命で将軍の食事について調べていくうち、その根源に徳川の血筋を揺るがす驚くべき陰謀が隠されていることに気付く。3代家光、その嫡男で4代家綱、そして5代を継いだ弟の綱吉。なんとその家光の嫡流を亡き者にしようと企てるものがいるのではないか?何故に徳川宗家の血筋を絶とうとするのか?祐筆部屋で将軍家の過去を調べてゆくうちに、ついに良衛は徳川の嫡流の秘密に気付くのだったが・・・。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2019年02月26日
何もかも忘れて、ぶらり放浪の旅に出てみたいという誘惑に駈られることありませんか?しかし、今の生活や仕事、さらには家族のことを思うと、それらを打ち捨ててまで自由奔放に行動する勇気を持ち合わせていない小心者の私は、ある意味幸せであるに違いないと思ったりもしています。 放浪の旅をしてみたいが、そんな勇気は持ち合わせていない。しかし、それ故に幸せであるだろう人々にお奨めします。この本を読んで放浪してください。篠藤 ゆり著 「旅する胃袋」本棚から取り出して、また読んでいます。【送料無料】旅する胃袋 [ 篠藤ゆり ]価格:720円(税込、送料別)標高4000メートルにある寺でバター茶に癒され、香港で禁断の食材を味わい、砂漠で人生最高のトマトエッグスープに出会う。見知らぬ世界各地を旅し、土地土地の珍しい食べ物を口にしてみたい・・・、誰でも思うが、なかなか叶うことがない願望を、この一冊は寝床で温かい布団に包まりながら叶えてくれます。ただし、お腹がへってなかなか寝つかれなくなってしまうのが欠点ではありますが・・・。(笑!◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年11月30日
お奨めの一冊「江戸川柳で現代を読む」 (小林弘忠著 日本放送出版協会)今では装丁がよれよれになってしまい、背表紙がほどけてバラバラになってしまいそうな本。本棚から取り出してまた読んでいます。【送料無料】江戸川柳で現代を読む [ 小林弘忠 ]価格:714円(税込、送料込)傑作ぞろいの川柳の中から、私が選んだこれぞ江戸川柳というもの二首をご紹介しましょう。夕立に取り込んでやる隣の子出ぬ乳も泣く子の口へ箸やすめにわか雨に長屋の隣の家の洗濯物と子供を家に入れてやる御かみさん、 ・・・エライ!母親が用事で留守にしている間、ひもじいと言って泣く隣の乳飲み子に、もうすでに出なくなって久しい自分の乳首を含ませる長屋の御かみさん、 ・・・カァ~、やるねっ!人情溢れる当時の江戸市民の生活ぶりがじ~んと伝わってきて、涙ものだ!川柳に涙をこぼす馬鹿もおり ( ← 私のことです・・・笑!)書名にあるごとく現代の世相と比較すると、はたして当時と今とどちらが住みよい世の中なのだろうかと思ってしまいます。現代なら、さしずめ・・・・・(以下の二首は私が作りました)マンションの上から落とす隣の子我が子にも飲ませてなるか乳垂れる人の痛みに敏感である、そんなやさしさって、やはり大切だと思った次第です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年11月28日
時間があって金にも十分余裕があれば、ゆっくり体と心をを休めたいものだと思ったとしても、別段お叱りを受けるものではないでしょう。毎週末の日経には、各旅行代理店のツアー広告が何社も掲載されていますが、私はいつもその広告を見比べて、やれ高いだの、ホテルのグレードがどうの、食事は何を食わしてくれるだの、行けもしない国内有名温泉地や外国の観光地に立つ自分を夢想したりしていますが、これって侘し過ぎますかね。何もかも忘れて旅行が出来たらどんなにかいいだろうと思うことしばしばです。かといって今の仕事や生活や、もしかしたら家族も投げ捨てて、放浪の旅に出る勇気も無謀さも私は持ち合わせてはいないのですが、これはこれで凡人の幸せというものかも知れないと思ったりしています。そんな思いで、今この一冊の本を手にしています。【送料無料】世界一周ひとりメシ [ イシコ ]価格:630円(税込、送料別)世界33の都市を訪れ、その地で"ひとりメシ"を食おうという「イシコ」(筆者、ペンネームか?)なる人物こそ、誰もが一度は憧れたにちがいない放浪者。私も「イシコ」とともに世界一周一人メシの旅に出ることにしました。今私は、南米ウルグアイの主都モンテビデオからトラブル続きの飛行機便を乗り継ぎ、ロサンゼルス国際空港に着いたばかり、空港内のカウンターバーで早朝からカクテル(ブラッディマリー)を飲んでいます。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年11月06日
知らない町を 歩いてみたいどこか遠くへ 行きたい永 六輔ならずともまだ見ぬ町を歩いてみたいと誰しも思うもの。しかし、まだ見ぬ町には違いないのですが、名前が少々変わっている町ばかり13年間にわたって100カ所も訪れるというもの好きな人がいるって聞いたら、皆さん、驚きませんか?13年、100カ所なんて時間も金も許してくれようはずもありませんが、せめて一生に一度はそんな放浪の旅をしてみたいと心ひそかに思っているのですが・・・。「世界でもっとも阿呆な旅」(安居 良基著 幻冬舎)を本棚から取り出しては、癒されぬ気持ちを慰めています。世界でもっとも阿呆な旅 [ 安居良基 ]価格:1620円(税込、送料無料) (2016/10/6時点)13年かけて100カ所も忍耐のいる旅をしたことにも驚きますが、それよりもっと驚くのが訪れた町の名前。今からその町の名前をお知らせしますから、心を落ち着かせて読んでください。先ずは、海外編より、スケベニンゲン(Scheveningen)エロマンガ (Eromanga)アホ (Ajo)シリフケ (Silifke)シリブリ (Silinri)パンティ(Panti)オナラスカ (Onalaska)マルデアホ (Mar de Ajo)断っておきますが、決してふざけているのでありませんよ。カッコの中にアルファベットで表記したように実在する地名なんです。著者はごく普通のサラリーマンということですが、会社のまとまった休みはすべて珍地名の歴訪に費やしてきたという変わり者。この本、前書きからしておもしろい。「高校の地理の試験に出題された島の名前が分からなくて、『エロマンガ島』と答えた。戻された答案には赤い字で『ふざけるな!』と書いてあったので、地理の先生のところに行き、実在する島であることを地図帳を見せて説明したところ、先生はなぜか感心しておられた・・・」と。しかもこの本はただ単に面白いだけでなく、現地の風物の紹介や人との出会い、写真も満載ですから、旅好きにとってはたまらないノンフィクションの旅行記となっています。・・・かなうものなら、いつか私も行ってみたいものですな、スケベニンゲン!(笑!◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2018年10月19日
日本人ほどあいまいな物言いをする民族はいないと言われています。訪問先でそこの主人から昼時に「ごいっしょにお昼ごはんを食べていかれたらどうですか?」などと、食事を勧められたら、「いいえ、今日は。いづれまた・・・」と早々に席を立つのが当たり前のこと。すなわち日本語のあいまいさとは、訪れた客に「昼時になったので、この辺で帰ってくれないだろうか」とストレートに言わないどころか、「昼飯を用意するから食っていけ」と真逆の言い方をすることによく現れています。言われた方も言われた方で、「では、おことばに甘えて・・・」などと言おうものなら、台所でその家の奥さんがずっこけてしまうことをよく承知している。「いえ、このあと寄るところがありまして・・・」などと言葉をにごして、やおら腰を上げるのが礼儀とその辺のところはよくわきまえています。このあたりのやりとりの機微が欧米人には理解しがたいらしく、日本語はあいまいである、日本人は何を言われてもただへらへらと笑っているだけ、と言われる所以なのでしょう。では中国人はどうか?爆笑!エリート中国人 [ 小澤裕美 ]価格:799円(税込、送料無料) (2016/11/7時点)第5章「中国人との上手な付き合い方、教えます」に書いてあります。中国人に「今度遊びに来てください」は禁句であると。お土産やプレゼントにしても、「ほんの気持ちですけど」などと形式的なものでお茶をにごすのなら、初めからあげない方がよほどましだと。すなわち日本人の「私はあなたのことを気遣いしていますよ」の意味の「ほんのささやかなモノですけど・・・」は、中国では「こんな程度にしか自分のことを思っていないのか・・・」ととられてしまうそうですから、本当に注意が必要ですね。もともと「意言外にあるを尊ぶ」や「行間を読む」というのは、日本の文章表現だけに特徴あることではなく、中国でも行間から作者の真意が汲み取れるような漢詩こそ一級の詩であるといわれていて、日本も長い歴史の中でそれに倣って来たのでしたが、その文化が本家の中国より日本で昇華されたというのは、何事にもやわらかく婉曲を好む日本人だからこそ可能であったということでしょうか。何事にもやわらかく婉曲でどこが悪い。日本人に生まれてよかったと思うのです。・・・って、私としたことが、ストレートな物言いになってしまいました。(爆笑!◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2018年10月16日
芳しいにおいなら嗅いで恍惚にひたってみたいと思いますが、クサイにおいはご免被りたいもの。でも、怖いもの見たさ、クサイもの嗅ぎたさ、ちょっと鼻を近づけてみるっていうのはありかも知れません。普段なかなか嗅ぐことができない「におい」を、実際に嗅いで楽しむという展覧会が大阪・梅田で開催されているという話題です。ウエブトピックスより、加齢臭かいだ女子、のけぞったけど「大満足」 におい展うら若き乙女が近寄って来てうれしくないオジサンはまずいないと思うのですが、鼻をクンクンしたかと思えばいきなりのけぞられたのではショック。こちらがのけぞりたい心境です。(笑!同時に配信されている動画をご覧ください。加齢臭は言わずもがな、足のにおい、シュールストレミング・・・、中には「?」ってのもある。これは勇気が要りますねえ。(笑!シュールストレミングって、イワシを発酵させたあの缶詰ですね。東京農業大学教授で発酵学の第一人者でありながら、自ら「食の冒険家」と称する小島武夫博士は、その著「地球怪食紀行」の冒頭にこのシュールストレミングのことを書いておられます。地球怪食紀行 「鋼の胃袋」世界を飛ぶ (知恵の森文庫) [ 小泉武夫 ]価格:756円(税込、送料無料) (2018/9/30時点)楽天で購入なんと小島先生は、ストックホルムのホテルの部屋の中でこの缶詰を開けてしまったのだとか。あわててトイレの便器に入れて蓋をしたものの時すでに遅し。それからしばらくの間、だれも先生のそばに寄ろうとはしなかったと。後に地元の人に先生が聞いたところによれば、地元ではシュールストレミングは、冷蔵庫で冷して内部の発酵によってできたガスの圧力を下げてから空けるのだそうです。しかも、必ず家の外で空けるのが鉄則なのですと。 約50種類の「におい」を展示してあるというこの「におい展」、「地球怪食紀行」を片手に訪れてみるのも面白いのではないでしょうか。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年09月30日
浅田 次郎 著 「赤猫異聞」を読み終わって、深い感動に身の震えが止まりません。赤猫異聞 (新潮文庫) [ 浅田次郎 ]価格:680円(税込、送料無料) (2018/9/25時点)楽天で購入時は大政奉還がなり、慶応から明治に改元されたその年の暮れのこと。新政府の機構がいまだ整わぬ江戸市中を襲った大火事。火の手が伝馬町の牢屋敷に迫り、代々牢屋奉行を務める石出帯刀は牢人の解き放ち(赤猫)を決断する。しかし、簡単には解き放てぬ囚人が三人いた。博奕打ちの信州無宿繁松、旗本の倅岩瀬七之丞、夜鷹の元締め白魚のお仙。繁松にはその朝打ち首の沙汰が突然に申し渡され、刑が執行されようとする直前に火事騒ぎとなり、執行が中止になったといういわくづき。岩瀬七之丞は薩長出身の新政府の官吏を八人も闇切りにした伏見・上野の生き残り。お仙は江戸市中の夜鷹を取り仕切る元締め。三人が三人とも旧江戸町奉行所役人にとっても、新政府の官吏にしても後々表沙汰になってはならぬ訳ありの囚人。赤猫騒ぎのどさくさに紛れて、一度は三人を殺してしまおうと石出帯刀以下の役人は迫りくる炎の中で刀を抜いたのであったが、鍵役同心丸山小兵衛の決死の諫言により、解き放ちとなった。ただし、「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪。全員戻らなければ、丸山小兵衛が腹を切る」という条件が付く。いや、これは太宰の「走れメロス」かという思いが脳裏をかすめるも、読み進めるうちに浅田は単に道徳の教科書に出て来るような正直礼賛を書こうとしているのではないことがすぐわかる。天も地もひっくり返るほどの激動期に、言い尽くせぬ理不尽な思いを抱いて縛についた繁松、七之丞、お仙。解き放ちを幸いに、その理不尽を晴らそうと向かった先で三人が見たものとは?最終章の丸山小兵衛の同役杉浦正名(まさな)が語る真相。あの時迫りくる猛火の中で、三人を解き放ったのちに小兵衛は杉浦の耳元でささやいた。「杉浦。わしに力を貸せ。・・・天下の御法はわが胸の内にある。わしは戦をするゆえ、力を貸してくれ」。小兵衛はどう力を貸せと言っているのか?驚愕の最終章に、読者は感動に身を震わさずにはおれません。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年09月26日
日本人なら歴史ファンならずとも、信長、秀吉、家康、光秀と書けば、あえて姓を明らかにせずともそれが誰か知らぬ人はいませんね。長く続いた戦乱の世がようやく収束を見ようとし始めた16世紀の終わり、この四人の登場人物がこの国の歴史の大舞台を動かしたといえましょう。その4人の関係をコミカルに描いた戦国四人シリーズの第4弾。その舞台は、これも誰一人として知らぬことはない桶狭間というのですから驚きです。今読んでいる本。鈴木輝一郎著、「桶狭間の四人 光秀の逆転」。桶狭間の四人 光秀の逆転 [ 鈴木輝一郎 ]価格:1728円(税込、送料無料) (2018/9/22時点)楽天で購入「金ケ崎」、「姉川」、「長篠」と続いたこのシリーズ。史実によれば、近江の浅井・越前の朝倉と刃を交えた金ケ崎と姉川の戦いが1570年、甲斐の武田を滅ぼすことになった長篠の戦いが1575年。桶狭間の戦いは1560年のことですから、舞台は長篠より15年前に遡ることになります。尾張の領地をめぐる織田一族の血で血を洗うような抗争をようやく終息させたばかりの信長に襲い来る新たな脅威。当時街道一の弓取りといわれた駿河・遠江の太守今川の西進。京へ兵を進めようとする今川勢4万に対して、信長が動員できたのはせいぜい2千。どう考えても織田に勝ち目がないとされたこの戦い。所説いろいろある中で、 鈴木輝一郎の考えはけた違いにユニーク。副題に「光秀の逆転」とあるように、史実では桶狭間には参戦していないとされる光秀を登場させ、当時浪人の光秀は今川に仕官しようとしていた。秀吉はその橋渡しの担い手として、今川方の先鋒であった家康(当時は松平元康)と秘かに連絡をとっていた。秀吉は状況を見ながら切羽詰まれば織田から今川に寝返ることを秘かに企んでいた。そのための今川義元への重要な手土産が光秀というわけ。負けることなど一瞬たりとも考えていなかった義元からしてみれば、後々の尾張の統治をどうするかこそが問題で、義元は尾張をのみ込んだあとの自治を信長に任せようと考えていた。ゆえに圧倒的な勢力を信長に見せつけ、戦わずして信長を下らせようとしていた。義元は端から織田を滅ぼすことなど考えていなかったのだと。そのためには織田との繋が何としても必要であった。そこへ秀吉と光秀がやって来たではないか。一方信長は、最後の最後まで決心がつかなかった。このままでは、今川に下ろうとする配下に命を狙われかねない。ゆえにたえず行方をくらましていた。今川勢と対峙する善照寺砦に集結した2千の将兵さえ信用できなかった。伴廻りの数騎のみでやって来た熱田神宮、向かうは今川の本陣か、善照寺砦砦か、どこへ行ったとしても待つは死のみ。そこへ秀吉と光秀が戻って来る。信長が下した決断とは・・・。日本の歴史に燦然と名を残す桶狭間を舞台に、かの4人の武将はなにを考えどう行動したか? 鈴木輝一郎はそれを徹底的にコミカルに描いていますが、もしかしたら桶狭間の歴史の裏には、そのような事実が隠されていたとしたら・・・。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年09月22日
クジラの資源管理について議論する国際捕鯨委員会(IWC)の総会が今月10日からブラジルで開催されるということです。日本は今総会で食用を主目的とする商業捕鯨の一部再開を提案するということですが、オーストラリアなどの反捕鯨国の反対は必至で、協議の難航は避けらず合意にこぎつけるのは難しい見込みだとか。ただIWCの構成を見ると、全加盟国89カ国のうち、反捕鯨国が48、捕鯨支持国が41だそうで、意外や拮抗していることに驚かされます。私はてっきり日本のみ蚊帳の外と思っておりました。日本では獣肉忌避の時代が長かったにも関わらず、海洋哺乳動物である鯨は「勇魚(いさな)」と呼ばれたごとく、魚類として食べられて来たのはご承知のとおりです。発酵・醸造学分野の第一人者、東京農業大学の小島武夫名誉教授は、研究の傍ら世界中津々浦々を旅し、「食の冒険家」と自称するほどの健啖家で有名ですね。その著書「奇食珍食 」の中で、小島先生はわが国の鯨食文化について触れておられます。奇食珍食 (中公文庫) [ 小泉武夫 ]価格:596円(税込、送料無料) (2018/9/10時点)たまたま昨日テレビのバラエティー番組で、日本のタレントがフィリピンのジャングルに住む部族の村へ行き、そこの村で部族と生活を共にするという番組をやっていました。そこで食べたその部落一番のご馳走が、なんとミズオオトカゲの肉。近くの沼や川で獲ってきたオオトカゲを素早く解体し、ココナッツミルクで煮込む。アツアツの肉塊を頬張る部落の民。小島先生は、我々の身近でない動物が食べられていることを知ると、何んとなしに違和感が生じるのは、どこの民族でも同じであろうと書いておられます。その意味では、日本人が鯨を食べるのを見て他の民族が違和感を覚えるのもわからないではないと。魚、鳥、哺乳類から爬虫類・両生類、はたまた軟体動物・腔腸動物、昆虫まで、普通の人ならまずは口にしないだろうといういわゆるゲテ物、小島先生はそのすべてを賞味しつくし、その料理方法、味、風味についてこと細かく列挙しておられます。もちろん鯨も。私は小学校の学校給食で鯨の竜田揚げを食べて育った世代ですが、個人的には鯨肉特有の脂のにおいが鼻について、正直美味しかったという記憶はありませんね。今となっては鯨肉は滅多に手に入らぬ貴重品となって久しく、すでにもうその味の記憶も薄れてしまいました。懐かしい、もう一度食べてみたいという気持ちもわかないというのは、日本人として寂しい気もしないでもありません。でもミズオオトカゲの肉か鯨肉かと言われれば、そりゃあ~鯨肉を選びますけど。(笑!◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年09月11日
人気時代小説作家上田秀人の「表御番医師診療禄」シリーズ第12話。その副題には「根源」とありました。表御番医師診療禄12 根源 (角川文庫) [ 上田 秀人 ]価格:691円(税込、送料無料) (2018/9/7時点)根源(こんげん)とは、いうまでもなく「 ものごとのおおもと。 起こり。 はじまり」のこと。長編「表御番医師診療禄」シリーズもいよいよ12話にして、その陰謀の根源が明らかになっていきます。時は5代将軍綱吉の治世。綱吉の寵姫お伝の方の担当医師となった御広敷番医師の矢切良衛。当直明けの医師溜で当直医師より昨夜大奥の御台所の食事を作る仲居が腹痛を起こしたことを聞き、もしやと抱いた疑念。良衛は、側用人に出世した柳澤吉保の命で将軍の食事について調べていくうち、その根源に徳川の血筋を揺るがす驚くべき陰謀が隠されていることに気付く。徳川宗家ばかりでなく分家の甲府徳川の血筋まで断とうと目論むものは、はたして何者か?一方どうしても寵姫お伝に継嗣懐妊を望む綱吉は、徳川の血筋を揺るがす陰謀が画策されていることに気づいていない。大それた陰謀の根源に気づいた良衛に、次々と襲い来る魔の刃。はたして良衛は、吉宗とその血筋を守ることが出来るのだろうか?それにはどうしてもお伝の懐妊が必要となるのだが。上田は我々が知る歴史の事実をどのようにストーリーに反映するのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年09月07日
時間があって金にも十分余裕があれば、ゆっくり体と心をを休めたいものだと思ったとしても、別段お叱りを受けるものではないでしょう。ところが実際は、日々の生活に追われ汲々とした毎日を過ごさざるをえないのは、時間も金もないということを裏付ける以外の何ものでもありません。(涙!毎週末の日経には、各旅行代理店のツアー広告が何社も掲載されていますが、私はいつもその広告を見比べて、やれ高いだの、ホテルのグレードがどうの、食事は何を食わしてくれるだの、行けもしない国内有名温泉地や外国の観光地に立つ自分を夢想したりしていますが、まったくもってわびしい限りです。・・・何もかも忘れて放浪の旅が出来たらどんなにかいいだろう。かといって今の仕事や生活や、もしかしたら家族も投げ捨てて、放浪の旅に出る勇気も無謀さも私は持ち合わせてはいないのですが、これはこれで凡人の幸せというものかも知れないと思ったりしています。そんな極め付きの凡人と言える私が、度々本棚より取り出して開く一冊。【送料無料】世界一周ひとりメシ [ イシコ ]価格:630円(税込、送料別)世界33の都市を訪れ、その地で"ひとりメシ"を食おうという「イシコ」(筆者、ペンネームか?)なる人物こそ、誰もが一度は憧れるにちがいない放浪者。私も「イシコ」とともに世界一周一人メシの旅に出ることにしました。今私は、南米ウルグアイの主都モンテビデオからトラブル続きの飛行機便を乗り継ぎ、ロサンゼルス国際空港に着いたばかり、空港内のカウンターバーで早朝からカクテル(ブラッディマリー)を飲んでいます。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年08月03日
人気小説家浅田次郎氏は、無類のエッセイイストでもあるのは、浅田ファンなら先に承知のこと。浅田は小説とエッセイについて、自らのエッセイ集「ま、いっか。」でこう述べています。曰く、小説は頭の中でウソ八百を練らなければ書けないものであり、したがって自分は日々ウソの山に埋もれて暮らしているようなものだと。一方エッセイはその真逆で、ものごとを見たまま、聞いたままを素直に正直に感じ取り表現する感性がなければ書けないものなのだとも。そんな浅田のウソと正直を一度に味わえるのが、エッセイ集「かわいい自分には旅をさせよ」。何とならば、執筆の合間をぬって、やれ取材だ、やれ講演だと飛び歩く旅について、司馬遼太郎、三島由紀夫について、ギャンブルについて、男の魅力について・・など書き連ねたエッセイ集のなかに、時代小説「かっぱぎ権左」が収録されているからである。かわいい自分には旅をさせよ (文春文庫) [ 浅田次郎 ]価格:572円(税込、送料無料) (2018/5/28時点)氏の手掛ける時代小説はもっぱら幕末から明治初めにかけてが舞台。浅田はウソ八百のかぎりを練っているというけれど、武門の矜持にこだわりつつも時代の趨勢に抗じきれず、刀を置き髻を切らねばならなかった侍、とりわけ下級武士の葛藤を描かせたら、浅田の右に出るものはいないのではないか。明治元年5月15日、錦の御旗を掲げる薩長に下るを潔しとせず、上野の山に籠った幕府旗本、御家人の一部。三河以来の譜代御家人、百三十石取りの甲府勤番御組頭・永井権左衛門も上野の山に馳せ参ずるはずであった。しかし、いかに250年の恩顧に報いるのが譜代御家人の選ぶ道と自分に言い聞かせたとて、権左衛門は、呆けた母に病んだ妻、4人の子どもを残して大義に殉ずることはできなかった。すぐに家伝のお宝も底をつき、ふと気がつけば権左衛門は甲州街道小仏峠で追剥をしようとしている自分に驚く。そこに通りがかった一人の旅人。いかにも豊かななりをした商人の風情。迷い苦しみ躊躇する権左衛門。しかし、ついに己を追剥に落としめる行為を決行してしまうのであったが。その旅人の商人の名は、福屋吉兵衛。権左衛門が必死で振り下ろす太刀をみごと道中脇差で払い止め、こう言うたではないか。「無礼撃ちでござんすかい。それとも、はなから"かっぱぎ"のおつもりで」握り飯やら峠茶屋では蕎麦まで食わせてもらい、権左衛門は吉兵衛に連れられて江戸(東京)の長屋に戻ることに。いかに元譜代御家人とはいえ、"かっぱぎ"風情に身を落とした己にこれほどまでの情けをかける吉兵衛とは、いかなる人物であろうか?・・・もしや吉兵衛は?うすうす気づき始めた権左衛門が、神田三河町に立派な店を構える吉兵衛の住まいの奥にある蔵に案内されて見たものは?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年05月28日
食べるものを食べれば、出るものが出るのが生き物の宿命。本日の日経4面下部に載っていたユニークな書籍の広告。「リキまないで お勉強!!」というコピーには、思わず吹き出してしまいました。発売1週間で3万部突破したというその本の名は、ズバリ「うんこ図鑑」。しらべる・くらべる・おぼえるチカラが身につく! うんこ図鑑 [ 荒俣 宏 ]価格:1404円(税込、送料無料) (2018/5/16時点)目次を拾っていくと、●世界うんこマップ●うんこについての5つのギモン●くらべてみよう うんこの大きさ・色・カタチ 食べてから出るまでの時間 うんこのニオイ 姿を変えたうんこたち トイレとうんこポーズ●くわしく知ろう(一部) ゾウのうんこはどっさり・たっぷりこども3人分! 恐怖……! ハイエナのうんこが白いワケ ウォンバットのうんこはまっ四角! そのワケとは? うんこを宇宙食としてリサイクル!? カバはしっぽのスクリューでうんこをまき散らす! コウモリのうんこポーズは逆立ちのさかさま うんこを全身に塗りたくる!? クロキツネザル うんこをうんこでふく人がいる!? ……など●うんこ対決! ラウンド1 経済を動かすうんこ ラウンド2 食べるうんこ ラウンド3 身を包むうんこ ●ふろく 正しいうんこのつくり方 別に「●くわしく知ろう」とも思いませんが、カバはまだしもコウモリやクロキツネザルに生まれなくてよかったなとは思いますね。(笑!リサイクルの大切さはよくわかりますが、「うんこを宇宙食としてリサイクル」って、宇宙旅行には行きたくないものです。「●うんこ対決!」っていかにもおどろおどろしいではありませんか。ラウンド1については、うんこをするにはものを食べなければならない、ものを食べるにはものを生産しなければならないという連鎖が生まれますから、これがすなわち経済ということでしょう。ラウンド2は、宇宙食でも触れたようにご免被ります。同様にラウンド3 も、クロキツネザルのようなことはないにしても、別のもので身を包みたいものですな。(笑!極め付きは「●ふろく 」・・・皆さん、普段より正しいうんこを意識してつくっていらっしゃいますか?(大爆笑!◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年05月16日
浅田次郎の短編集「神坐(いま)す山の物語」の冒頭に収録されている「神上(かむあが)りましし伯父」。常にではないがときどき、私には見えざるものが見え、聞こえざる声が聞こえるという「私」の独白の形でつづられていくこの話。神坐す山の物語 [ 浅田次郎 ]価格:640円(税込、送料無料) (2018/4/27時点)母親の実家が代々霊山として知られる武蔵御嵩山(みたけさん)の山頂にある神社の神官の家の出という血筋がそうさせるのか。「私」は神職を継ぐ伯父(母親の兄)の死が、母親にもたらされる前に知ることができたという述懐から、この不気味な話は始まる。「私」が初めて体験した御嵩山の神道の流儀に乗っ取った通夜、葬儀、葬送が、実におどろおどろしく巧みに描かれている。そしてその節々で、「私」は伯父の姿を目にするだけでなく、意思を通わすことができたというのだ。「おかあさん、ちょっと」私は膝を抱えて、震えながら言った。「おじさんがいるんだ」母は顔色を変えた。「どこに」「僕のすぐそばだよ。あっちのほうには、おじいさんも、ヒゲのおじいさんもいるんだ」生命は父母から授かったわけではなく、それこそ神代から連綿と繋がって、この肉体を生成しているのだと知った。伯父の死と葬儀を通して「私」は人が「神上(かむあがる)」ということを知ったのだった。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年04月27日
浅田次郎の短編小説「鉄道員(ぽっぽや)」。高倉健主演で映画化され大ヒットしたので、ご存知の方多いのではないか。鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫) [ 浅田次郎 ]価格:518円(税込、送料無料) (2018/4/25時点)主人公は北海道のローカル線のさびれた終着駅の駅長を長年勤めあげ、今春定年を迎える佐藤乙松。幼い一人娘を亡くした日も、愛する妻を亡くした日も、彼はずっと駅に立ち続けてきた。かっては炭鉱で賑わったこの鉄道もこの3月で廃止になることが決まり、その最後の正月となった雪深い日に同僚の杉浦仙次(映画では小林稔侍が好演していた)が、リゾートホテルへの再就職を勧めに乙松の元へやって来たのだった。鉄道員一筋の乙松はその申し出を受け入れようはずもない。最終の昇り列車を出したあと二人は懐かしい昔話を肴に酒を酌み交わし、床に就こうとしたのであったが、乙松は駅舎にセルロイドの人形が一体忘れられているのに気づく。その夜と翌日、3人の姉妹が次々とその忘れ物の人形を取りに乙松の元を訪れるのであったが。仙次が翌日の昇り列車で帰った後、やって来た長姉と思われる少女の後ろ姿を目にした乙松は、もしやと驚くのであったが・・・。北海道の雪深い町の駅舎を舞台に、鉄道員として生きたひとりの男の孤独と哀愁をみごとに描く「鉄道員(ぽっぽや)」。お奨めの一冊です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年04月25日
粋でいなせを身上とする江戸っ子が嫌うものを一つだけあげるとすれば、「薄情な野郎だぜ~」と後ろ指を指されること。江戸は下町本所おけら長屋の住人は、誰一人とってもその日その日が精いっぱいの貧乏暮らし。喧嘩早くてお節介、その上そそっかしいの三拍子そろった連中ばかりだけれど、他人の難儀は黙って見過ごせない。そんな長屋の連中がくりなす人情話満載の「本所おけら長屋」。本所おけら長屋 (PHP文芸文庫) [ 畠山健二 ]価格:668円(税込、送料無料) (2018/4/21時点)笑いと情緒に溢れるこれぞ江戸人という長屋の住人がくりなす騒動が次から次へ。人の優しさが心に泌みる、笑いと涙の連作時代小説シリーズ第1弾。当時の長屋の住人の人情の機微は、以前「江戸川柳で現代を読む」でも取り上げましたが、「本所おけら長屋」はまったくそのとおりの長屋。笑えて、泣けて、心温まります。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年04月21日
人気小説作家浅田次郎は、そのエッセー集「パリわずらい江戸わずらい」に収録された「ドリームメーカー」の中で、自分が世にも不思議な才能の持ち主であることを書いている。それが浅田の文才のことであれば、あえて指摘するまでもないことなのだが、なんと驚くなかれ、浅田は眠りに着く前にこれから見たい夢のストーリーを思い浮かべ、そしてその通りの夢を見ることが出来るというのである。してみれば、浅田の"夢"を題材にした長編小説「ブラック オア ホワイト」も、浅田の特異な"夢見"をもとに書かれたものなのだろうか?ブラック オア ホワイト (新潮文庫) [ 浅田 次郎 ]価格:680円(税込、送料無料) (2018/4/13時点)「ブラック オア ホワイト?」ことの始まりは、スイスの湖畔のホテルでバトラーから差し出された二つの枕。白い枕で見る夢は良い夢、黒い枕をあてがえば悪い夢。エリート商社マンの都築は、仕事先のスイス、パラオ、インド、中国、日本で不思議な夢を見る。そこには決まって白黒二つの枕が置かれていて、都築はその一つを選択してしまう。「ブラック オア ホワイト?」恐ろしいことに、夢に呼応するかのように現実の都築の立場も少しずつ変わっていくのだった。夢の中には決まって、元南満州鉄道の理事で、戦後は商社マンに転身して活躍するも、ニューヨークで客死したという都築の祖父が現れる。読み進めるにしたがって読者は、この夢の中でしか会えぬ祖父の存在が、都築の商社マンとしての現実の生活に大きな影響を与えていくことに気づく。祖父はもしかして・・・。夢か現か、都築はいつのまにか現実を飲み込んだかのような夢の世界に翻弄されている自分に気づくのであったが・・・。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年04月13日
今手にしている本。島崎 晋 著「ざんねんな日本史」。学校の授業はもちろん、小説やドラマでも描かれることのない「ざんねんな」歴史の真実とあります。誰もが知っている歴史上のヒーローがこんなだったら、なるほど「ざんねん」に違いありませんね。ざんねんな日本史 武田騎馬軍団はポニーに乗ってやってきた (小学館新書) [ 島崎 晋 ]価格:842円(税込、送料無料) (2018/4/9時点)書かれている項目を見ていくと、なるほど残念。柳生十兵衛は隻眼ではなかった。一休さんは酒好き女好きの生臭坊主。鬼平はインサイダー取引に手を染めた。巌流島の決闘は一対一ではなかった。鼠小僧は貧乏人に小判を恵んでいなかった大石内蔵助は心底遊興生活を楽しんでいた。西郷は陰嚢が肥大して歩けなくなった秀吉は賭け碁に負け伊達政宗に側室を譲った。源頼朝は北条政子に頭の上がらぬ恐妻家。種子島の鉄砲伝来は中国船だった。「板垣死すとも、自由は死せず」は創作?野口英世は渡米費用を芸者遊びで散財あの柳生十兵衛が隻眼でなかったなんて、そんな十兵衛が出て来る時代劇、面白みが半減します。松方弘樹だって、千葉真一だって隻眼で剣を振るうからカッコ良いんですよね。「鬼平」と聞くだけで悪人盗賊が震え上がったというあの火付け盗賊改め方首領、長谷川平蔵が銭相場でしこたま儲けていたって知ったら、捕らえられた盗賊はさぞ嘆いたに違いありません。盗みなどせず、俺も相場に手を出すんだったと。宮本武蔵は巌流島に一人遅れてやって来たのではなかったのか?小次郎より先に数人の弟子を巌流島に渡らせておいたなんてズルイ。今話題のせご(西郷)どんは、太っていたらしいということは知っていましたが、あそこも腫れ上がって大きかったとは。田原坂の敗因が大将の股ずれにあったとは、NHKも脚本出来ますまい。学校の授業はもちろん、小説やドラマでも描かれることのない「ざんねんな」歴史の真実。肩肘張らず手軽に読めて、オモシロイ。お奨めの一冊です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年04月09日
人気時代小説作家上田秀人の「表御番医師診療禄」シリーズは、本作で早くも第11話。その副題は「埋伏」とありました。埋伏を字引きで調べてみると、「うずもれ隠れること。ひそみ隠れること。また、待ち伏せすること」とありますから、これは穏やかではありませんね。いったい何者がうずもれひそみ隠れて、誰を待ち伏せしようというのか?表御番医師診療禄11 埋伏 (角川文庫) [ 上田 秀人 ]価格:691円(税込、送料無料) (2018/2/28時点)時は5代将軍綱吉の治世。綱吉の寵姫お伝の方の担当医師となった御広敷番医師の矢切良衛は、医師溜で当直医師より昨夜大奥の御台所の食事を作る仲居が腹痛を起こしたことを知らされる。食事は中奥で取ることを基本とするが、御台所やお伝とともに大奥で夕食を取ることもある綱吉。その綱吉の食事に携わる仲居が変調を起こした。しかもその仲居は、かってお伝と綱吉の寵愛の座を巡って争い大奥を追われた側室お露の方に仕えていたというではないか。将軍の食事にもしや・・・。小納戸頭となり綱吉の側近くに仕える柳澤吉保にこのことを報せた良衛は、将軍に提供する料理について秘かに調べるよう厳命される。将軍の料理を調べるべく奔走する良衛は、将軍の食事に携わる御膳所と、体調を管理する奥医師たちに関する驚愕の事実を掴むが・・・。その良衛に秘かに埋伏し、襲い掛かろうとする新たな輩が現れる。・・・良衛危うし。はたして良衛は周到に仕組まれた罠と陰謀を切り抜け、綱吉を守ることができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年02月28日
一度読んだ本をもう一度読み直すということ、そうそうあるものではないでしょう。本棚に手を伸ばし、つい手に取ってしまう本。この本はこれで何度になるだろう。「人生で必要なことはすべて落語で学んだ」(童門 冬二著 PHP文庫) 【送料無料】人生で必要なことはすべて落語で学んだ価格:620円(税込、送料別)趣味はと聞かれれば、すまし顔で「落語観賞でしょうかねぇ~・・・」などと答えたいものです。その上人生で必要なことを学ばせてくれるというのなら、なおさらというものでしょう。目次を見ていくと、風流に生きたい/底抜けに明るい生き方/貧しいけれど豊かに暮らす/ケチと倹約のちがいは?/挫折したって歩いていける/夢をかなえる法/老後なんて心配するな/コンプレックスをプラスに変える・・・等々。どうです・・・。皆さんも普段このようなことで思い悩まれたことがあるに違いないでしょう。筆者はこのようなことをすべて落語から学んだと言っています。どうぞ"落語人間"におなりください。"落語人間"として生きていくことは、楽しくて幸福なことでもあると。人生を上手に生きるコツは、「笑い」の中にあるということを学ばせてくれる本。お奨めの一冊です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年02月12日
あの水城聡四郎が戻って来た。今読んでいる本。上田 秀人 著 「聡四郎巡検譚 旅発(たびだち)」旅発 聡四郎巡検譚 [ 上田秀人 ]価格:669円(税込、送料無料) (2018/2/4時点)「勘定吟味役異聞」シリーズ、「御広敷用人 大奥記録」シリーズで活躍した聡史郎に下った命は、「道中奉行副役(そえやく)」。禄高五百五十石の勘定方を務める旗本の家に生まれた4男坊の聡四郎。次兄、三兄はすでに他家へ養子に出され、家を継いだ長兄の下で厄介叔父として養われる身を嫌い剣の道を選んだ聡史郎を見い出したのが、当時まだ紀伊藩主であった後の8代将軍吉宗。長兄の突然の死により水城家を継ぐことになった聡史郎は、吉宗直々の引きによって勘定吟味役として抜擢される(勘定吟味役異聞シリーズ)。さらには大奥改革を目論む吉宗は、聡史郎を御広敷用人として大奥に送り込む(御広敷用人大奥記録シリーズ)。道中奉行副役とはいったい何をすればよいのかわからぬまま旅に出ることになった聡史郎だったが。聡四郎に反目して御広敷伊賀者頭の地位を追われた藤川義右衛門は、京の闇社会を束ねる利助に取り入り、行く行くは江戸の闇社会を取り仕切り、聡四郎と吉宗に復讐しようと機会を伺っていた。道中の監察権を併せ持つ目付衆にとって、吉宗が突然言い出した道中奉行副役は、心持穏やかならぬ役職。吉宗の次の狙いは目付の権限縮小にあるのではないか、断じて聡四郎に手柄を立てさせるわけにはいかぬと考える。吉宗の大奥改革によってかっての勢力を減じてしまった6代家宣の正室天栄院の実家、京近衛家も吉宗と聡四郎を良からず思いながら、秘かに機会を伺っていた。まずは東海道、そして中山道を経て江戸へ戻ろうと旅立つ聡四郎を待ち受けるは、いかなる試練か?はたして聡四郎は「道中奉行副役」の任を無事果たし、吉宗のもとに帰ることができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年02月04日
浅田次郎著 「きんぴか① 三人の悪党」。除夜の鐘を寝床で聞きながら、年を跨いで一気に読破。三人の悪党 長編悪漢小説 (光文社文庫) [ 浅田次郎 ]価格:575円(税込、送料無料) (2018/1/2時点)三人とは、敵対する組の親分とその女房(オンナ)二人を殺害し、13年の刑期を終えて出所したばかりの時代遅れのヤクザ者、阪口健太。通称ピスケン。身長1m90cm、胸囲135センチ、連隊内では泣く子も黙る空挺レンジャーにして、銃剣術五段の錬士、徒手格闘術特級の元一等陸曹、大河原勲。湾岸派兵に反対し三島由紀夫ばりに単身クーデターを起こしたあげく、自殺未遂するも頑強な頭蓋骨が拳銃の弾丸を右のこめかみから左の眉へ滑らせ一命を取りとめた。大河原勲は一等陸曹というよりも軍曹と呼ぶにふさわしい。東大卒を出て、大蔵省に入って、国会議員の秘書になって、末は国会議員・・・の道を歩むはずだった。それが収賄事件の罪を被り、大物議員に捨てられ、あげくの果てには女房(省庁有力OBの娘)にも捨てられた元政治家秘書、広橋秀彦。通称ヒデさん。この出自もバラバラなら価値観もバラバラな三人を巡り合わせたのが、警視庁四課(通称マルボウ)一筋、挙げた犯人(ホシ)の数も前代未聞なら、始末書の数も前代未聞というノンキャリア組の元警部補、ゴンさんこと向井権左衛門。彼らを欺いた巨悪に敢然と挑む三人と向井権左衛門、笑いあり涙ありの痛快悪漢小説。お奨めの一冊です。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2018年01月02日
自然界には毒を持つ動植物が多くいることはよく知られていますが、毒を持つ鳥の存在はあまり聞いたことがありません。ところが鳥類においても例外はなく、ニューギニアの固有種であるモズヒタキ科の3種類のモリモズの仲間には、羽毛や皮膚に神経毒が含まれているということです。書店でふと手にした本「へんな毒すごい毒」に紹介されていました。【楽天ブックスならいつでも送料無料】へんな毒すごい毒 [ 田中真知 ]価格:1,706円(税込、送料込)モリモズの次のページには、我々素人でも知っているヤドクガエルが紹介されています。ヤドクガエルの毒は自分自身が作り出すのではなく、餌とするアリ、ヤスデ、テントウムシ、ダニなどが持つ毒に由来するということです。ヤドクガエルの毒成分は数百種類にも及ぶアルカロイド形の神経毒で、主成分のバトラコトキシンは先にあげたモリモズの毒素ホモバトラコトキシンと同類であることから、モリモズの毒もヤドクガエル同様に餌としている昆虫類に由来しているのではないかと書いてありました。この毒のおかげでモリモズは鷹やヘビのような天敵に襲われることをまぬがれているそうです。そこで俄か生物学者( ← 私のことです )が考えたこと。まず、ヤドクガエルにしろモリモズにしろどうしてその虫の毒に当らないのか不思議です。次に、モリモズの天敵である鷹やヘビは、モリモズに毒があることをどうして知っているのだろう?仲間内であいつを食べたら大変なことになる。食べないようにしようなどと言っているわけではないでしょう。なぜならモリモズに毒があることを知ったときが、捕食者の命日になるわけだから。やはり捕食者に受け継がれてきた遺伝子にその情報が刻まれているという結論になるのだろうか?そしてもう一点、モリモズはヤドクガエルよりはるかに大きい体をしていますから、その体を維持していくには、ヤドクガエルよりもっと効率的に餌を捕る必要があるはずです。アリ、ヤスデ、テントウムシ、ダニなどを捕食するより、いっそのことヤドクガエルを捕食する方が、ずっと効率が上がると思われます。ところが、ヤドクガエルを捕食しようとしないのはなぜか?やはり受け継いだ遺伝子にその毒の恐ろしさがしっかりと刻み込まれているからなのでしょう。まったく不思議な毒を持つ鳥モリモズです。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年12月30日
寒い冬、アツアツの鍋を囲んで、一杯やるというのはたまりませんね。なかでもアンコウ鍋、フグ鍋といったら、間違いなく一合はよけいに飲める。(笑!ところでフグといえば、「フグは食いたし、命は惜しし」。美味しいには美味しいが、猛毒を持つ魚として有名なのがこのフグです。お奨めの一冊、「うたの動物記」(小池 光 著)にも取り上げられています。このような猛毒を持つ魚でも日本人は俳句に詠んでしまうというわけですな。【楽天ブックスならいつでも送料無料】うたの動物記 [ 小池光 ]価格:2,916円(税込、送料込)「・・・今日では毒のありかがはっきりし、われわれは安んじてこれを食うに至ったが、そうなるまではさぞ犠牲者があっただろう・・・」とも書いてあります。なるほど、そう言われれば、肝臓や卵巣を食べて命を落とした多くの勇気ある犠牲者があったればこそ、今日のフグ料理があるといえますね。物言はで腹ふくれたる河豚(ふくと)かな明治の終りころ旧制松山中学校で教鞭を執っていた若き日の漱石が読んだ句が、紹介されていました。言いたいことも言われぬのが浮世というものか、はけ口のない鬱憤が身に溜まった自分は、さしずめフグのようだと漱石は言いたかったのだろうか?「坊ちゃん」の中では、赤シャツや野太鼓の事なかれ主義に、溜まりに溜まった鬱憤をを爆発させたのが坊ちゃんでしたね。漱石が松山中学校を離任するころの作ということですから、教師としての理想と現実に苦しんだ漱石が偲ばれる句と言えるかもしれません。そこで一句、毒吐けばサヨリのごとくなる身かな◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年12月22日
人気時代小説作家上田秀人の「百万石の留守居役」は本作で早くも第10話。副題にはなんと「忖度」と書かれていました。忖度 百万石の留守居役(十) (講談社文庫) [ 上田 秀人 ]価格:712円(税込、送料無料) (2017/12/20時点)時は5代将軍綱吉が将軍の座について間もなくのころ。徳川宗家の血筋が家綱で絶え、5代将軍の座を巡って時の大老酒井雅樂守忠清と老中堀田備中守正俊の確執があったことは歴史上の事実。京の宮家より将軍を招き鎌倉幕府の前例に倣おうとした酒井忠清であったが、土壇場で堀田正俊が後継に綱吉を立てることを臨終直前の家綱に認めさせた。綱吉の将軍就任とともに酒井忠清は失脚、幕府の実権は堀田正俊に移ったのであったが。継嗣に恵まれぬ4代家綱が病の床の中で、祖父2代秀忠の玄孫にあたる加賀藩5代藩主前田綱紀を後継にと酒井忠清に打ち明けていたことが堀田正俊の知るところとなり、加賀藩は取り潰しの危機を背負うことになる。綱紀の国入りに道中留守居として帯同を命じられた若き留守居役瀬能数馬(せのうかずま)は、高岡の瑞龍寺で支藩富山藩の手の者による襲撃から辛くも綱紀を守ったものの、綱紀は金沢城に入る寸前またもや襲われる。加賀藩百万石を世継ぎなしの危機に陥れ、加賀藩を思うままにしようとした者は果たして誰か。綱紀と加賀藩宿老本田正長は、裏に加賀の監視役にして名門越前松平家が関与していると睨む。加賀藩に参勤道中途中に不祥事を起こさせれば、幕府に加賀藩取り潰しのよい口実となろうと考えた輩が、支藩富山藩にしろ越前福井藩にしろ、いたとしても不思議ではないと。4代家綱の実弟にあたる自分を差し置いて将軍にと推された綱紀を快く思っていないだろう綱吉の気持ちを「忖度」した輩を探るため、数馬は福井に向かうことに。福井藩主松平左近衛権少将(さこんえのごんのしょうしょう)綱昌に、面会することになった数馬を待ち受けていたものは?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年12月20日
突然ですが、皆さんは「国字」ということばをお聞きになったことおありでしょうか?調べてみると、わが国で考え出された独特の漢字のこと、和製漢字、とありました。例えば「峠」「畑」「凧」などがこれにあたると説明してありました。ところで日本人ならアユを知らない人はいないでしょう。同じ川魚のナマズも同様ですね。アユは、漢字で書くと「鮎」。ナマズは「鯰」。ところが冒頭いきなり、「鮎は、ナマズである」って、これは、誤植だろうと思いましたね。どう考えても「鮎はアユ」だろうと。お奨めの一冊、「うたの動物記」(小池 光 著)より、【楽天ブックスならいつでも送料無料】うたの動物記 [ 小池光 ]価格:2,916円(税込、送料込)「鮎」を字引で調べると、「ナマズ。淡水魚の一。頭は平たく大きく、からだは丸くて長く、口辺に長いひげがある」とありますから、間違いなくナマズなのです。第二項に「アユ。淡水魚の一つ。年魚、香魚」とありますが、気のせいか申し訳程度に付け足してあるように感じてしまいます。『伝説の神功皇后が、新羅の国に軍を送ろうとして、ことの成就を占うべく釣り糸を垂れた。そうしたらアユが釣れた・・・占う魚だから「鮎」である』と。では、「鯰」はどうかというと、「ナマズ。淡水魚の一。」とありますから、ややこしい。これも「鮎」(中国ではナマズ)の漢音読み「デン、ネン」の音を念にうつしかえた字とありますから、やはり本家本元の中国にはない漢字、国字ということなんでしょう。「中国のレストランで鮎の塩焼きを注文するとナマズの塩焼きが出てくるおそれがある」って、小池先生に座布団1枚進呈いたしましょう。(笑!◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年12月09日
最近嵌っていること。動物図鑑。その一冊、「ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ」は、日ごろなじみのある動物たちの持つ意外な側面を優しく教えてくれる本です。ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ [ 下間文恵 ]価格:972円(税込、送料無料) (2017/12/1時点)たとえば 「マグロは24時間泳ぎ続けないと、窒息する」という話。これを片時も休むことなく泳ぎ続けていなければならないマグロは可哀そうと思ううのは、人間の生活に当てはめて考えるからと言ってしまえばそれまでですが、マグロもマグロなりに宿命を負って懸命に生きているのだなと考え直せば、すし屋で中トロの握りを注文するのがためらわれて来はしないか? 「ダチョウは脳みそが目玉よりも小さい」って、初めて知りましたね。そりやぁ~、脳みそがたっぷりある人間から見れば、憐れむべきことかも知れませんが、ダチョウにとっては強靭な足をコントロールするには十分すぎる量のはず。なまじっか脳みそがたっぷりあるから、いらぬことを考えてしまう人間は、ダチョウより"ざんねんないきもの"ということになりはしまいか?そんなことを教えてくれる「ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ」、「せつない動物図鑑」と合わせて読めば、人間の"ざんねんさ"が浮き彫りになって、せつなくなること間違いありません。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年12月01日
人気時代小説作家上田秀人の新シリーズ「日雇い浪人生活録」第4話は、副題に「金の権能」とありました。金の権能 日雇い浪人生活録 4 (ハルキ文庫 時代小説文庫) [ 上田秀人 ]価格:691円(税込、送料無料) (2017/11/23時点)主人公は江戸屈指の両替商分銅屋仁左衛門と、仁左衛門に雇われた親の代からの素浪人諌山左馬之助。時は9代家重の治世。将軍を家重に譲ったのちも大御所として君臨した8代吉宗が遺した遺言「幕政の中心を米から金代え、幕府の再建をはかれ」は、将軍御用取次・田沼意次を焦らせる。江戸屈指の両替商分銅屋仁左衛門の経済力に着目した意次は、その経済力(金の力)を利用して干上がった幕府の蔵を満たそうとする。一方親の代からの素浪人諌山左馬之助は、その誠実な働きぶりから仁左衛門に用心棒として雇われ、ようやく糊口をしのぐことができるようになったのだが。吉宗の遺命を果たそうとする田沼意次に、今の体制が崩れれば身の破滅と血眼になる武家と米の流通を牛耳る札差は、いかなる手段をこうじてもこれを防がんと、策謀を巡らし分銅屋に襲い掛かる。いささか剣の使いにはおぼつかないものがある左馬之助。頼るは亡き父から譲り受けた鉄扇のみ。武士による政の世界と商人が担う財の世界の狭間で戸惑う左馬之助。左馬之助の振るう鉄扇は、分銅屋に襲い来る刃をみごと跳ね返すことができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年11月24日
普段我々が日常何気なしに使う外来語に「ショック」という言葉がありますね。この「ショック」という言葉、本来の意味は「血圧が下がり、生命の危険がある状態」を指すときに使用する医療言葉なのだそうです。ご存知でしたか?「えぇ~!ホント!?知らなかった!ショック!!」と思わず口走った方多いと思いますが、皆さん別段生命に危険のある状態ではありませんよね。国立国語研究所が表した「病院の言葉を分かりやすく 工夫の提案」という一風変わった本をのぞき見してみたら、これが結構面白い。全国の医療関係者からも注文が殺到しているということです。病院の言葉を分かりやすく [ 国立国語研究所 ]価格:2160円(税込、送料無料) (2016/11/9時点)それでは私たちが普段耳にする医療言葉を具体的に見ていきましょう。まず「腫瘍」。お医者さんにかかり、先生から「ちょっと腫瘍がありますから、念のため検査しておきましょう」なんて言われたら、それこそ「ショック」でへこんじゃいますが、この「腫瘍」という言葉、本来は単に「細胞が異常に増えてかたまりになったもの」を指すだけなのだそうです。ところが言われた方は大変です。「先生!本当のことを言ってください。がんなんですか!?」になっちゃう。次に「頓服(とんぷく)」最近ではあまり耳にしないようですが、私らの世代はこれって「熱冷まし」のことだと何の疑いもなくそう思い込んでいますよね。実は、「症状が出たときに薬を飲むこと」なんだそうで、だから胃薬を飲んでも頓服。医者から「胃腸がちょっと弱ってますから、消化薬頓服しましょう」なんて言われたら、私なんかだったら、「・・・!?!?」となって、それこそ熱が出ちゃいそうです。「先生、頓服を頓服してください。。。」になっちゃう。(笑!最後は、「メタボリックシンドローム」。最近は本当に「メタボ」「メタボ」ってうるさいことです。実のところこの言葉には、私も非常に身につまされるものがありまして。思わず息を吸い込んで腹を引っ込めてみたりして。(苦笑!でも本来の意味は思っている以上に医学的に重篤な体の状態を指す言葉なのです。「内臓に脂肪がたまることにより、様々な病気をひき起こしてしまう状態」・・・ショック! (笑!せめて毎日散歩でもして、「ショック」なんて誤った使い方をしなくてもいいように努力したいものだと思います。・・・あっ、今「散歩」と言いましたが、実はこの「散歩」も元は医療言葉だったてことご存知でしょうか。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年11月22日
戦国武将藤堂高虎の生涯を描いた長編時代小説「下天を謀る(上) (下)」(安部龍太郎著)を読破。下天を謀る 上下巻セット [ 安部龍太郎 ]価格:1447円(税込、送料無料) (2017/11/16時点)居並ぶ三河以来の譜代の臣を差し置いて、家康が最も信を置いたといわれる藤堂高虎。秀吉の天下統一を陰で支えたといわれる弟秀長に仕えて、豊臣政権の中枢にまで上り詰めた高虎が、外様でありながらなぜに家康の懐刀と言われるまでになったか。一部の歴史書では、いち早く豊臣に見切りをつけ徳川になびいた変わり身の早さを指摘するものも見かける中にあって、安部龍太郎はそれとはまったく違った観点から高虎を描いています。すなわち高虎は、天下万民が安穏に暮らせる世のために尽くすことが己の使命である(高虎が仕えた秀吉の弟・大和大納言秀長からの教え)という高い志を持ち続けようとしたのだと。ところで「下天」を辞書で調べると、天上界の中で最も劣っている天。人間 の世界とあります。一方「謀る」は、計略をめぐらしてだます。たぶらかす。計画・方法などを思いめぐらす。工夫するとありました。淀の方に溺れる老いた秀吉に、秀長から教えられた崇高な志がすでにひとかけらもないことに失望し、死を覚悟し寺に籠った高虎のもとへ届いた家康からの一通の手紙。・・・天下万民のために「下天を謀れ」と。そして時は慶長5年の秋(1600年10月)へと流れる。はたして藤堂高虎は激動の乱世をどのように生き、どのように「下天を謀った」のだろうか・・・。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年11月16日
日ごろの生活に疲れて来ると、浮世のしがらみを一切断ち切って大自然の中で一人静かに暮らしたいと思うこと、ないかと言えば確かにあります。しかし、ヤギになりたいなどと思ったこは一度もありませんが。ところが世間は広いもの、スイス・アルプス山脈でヤギの群れの一員になって3日間を過ごしたという男がいたという話題。ヤギ男いわく「人間として生きることは、多くのストレスやうつ病など、非常に大変だからだよ。僕はシンプルに生きたいんだ!」と。ウエブトピックスより、「私はヤギになりたい」ヤギとして生きることを試みた男そのために一年間をかけてヤギのように四つん這いで歩き回ることのできる専用の義肢を制作したというのですから、その執念たるや目を見張るものがありますね。・・・いや目を疑うものがあると言うべきか?(笑!義肢をつけてヤギの群れといっしょに山道を昇っているこのヤギ男の写真が同時に配信されていますね。上りは何とかなりそうにも映りますが、下りは容易じゃないでしょう。シンプルに生きたいという割には、複雑な動作を強いられているように私には見えますが・・・。(笑!さらに驚いたことには、草を食べているいる様子も配信されているではありませんか!腹を下したりしなかったのだろうか?飲み水はどうしたのだろう?スポーツ飲料を携行したから大丈夫なんて言ったら怒りますよ。(笑!睡眠は?用便は?まさかすべてヤギ流というわけにはいかないでしょう。確かに人間として生きることは多くのストレスを背負いこむことになりましょうが、ヤギのように生きるのはそれ以上のストレスに見舞われることになるようです。心頭滅却すれば火もまた涼しと古の賢人が言ったように、心を空にして自分はヤギだと強く念じれば、「メェ~」ということになるのでしょうか。しかし、よくよく考えてみれば、これだけこのヤギ男の写真が撮影されているということは、撮影スタッフが同行しているということだろう。この体験を『ゴートマン(ヤギ男):私が人間であることを休んだ方法(原題:GoatMan: How I Took a Holiday from Being Human)』という本にして出版したと書いてあるところをみれば、ナルホドと納得できますね。Goatman: How I Took a Holiday from Being Human GOATMAN [ Thomas Thwaites ]価格:3888円(税込、送料無料) (2017/11/4時点)このヤギ男、「シンプルに生きたかった」のではなく、「シンプルに儲けたかった」のに違いないという結論に達しました。楽天ブックスでは現在在庫がなく、お取り寄せということでした。ヤギ男になってみたいと思われる方、取り寄せて読まれてみられてはいかがか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年11月04日
時間があって金にも十分余裕があれば、ゆっくり体と心をを休めたいものだと思ったとしても、別段お叱りを受けるものではないでしょう。毎週末の日経には、各旅行代理店のツアー広告が何社も掲載されていますが、私はいつもその広告を見比べて、やれ高いだの、ホテルのグレードがどうの、食事は何を食わしてくれるだの、行けもしない国内有名温泉地や外国の観光地に立つ自分を夢想したりしていますが、これって侘し過ぎますかね。何もかも忘れて旅行が出来たらどんなにかいいだろうと思うことしばしばです。かといって今の仕事や生活や、もしかしたら家族も投げ捨てて、放浪の旅に出る勇気も無謀さも私は持ち合わせてはいないのですが、これはこれで凡人の幸せというものかも知れないと思ったりしています。そんな思いで、今この一冊の本を手にしています。【送料無料】世界一周ひとりメシ [ イシコ ]価格:630円(税込、送料別)世界33の都市を訪れ、その地で"ひとりメシ"を食おうという「イシコ」(筆者、ペンネームか?)なる人物こそ、誰もが一度は憧れたにちがいない放浪者。私も「イシコ」とともに世界一周一人メシの旅に出ることにしました。今私は、南米ウルグアイの主都モンテビデオからトラブル続きの飛行機便を乗り継ぎ、ロサンゼルス国際空港に着いたばかり、空港内のカウンターバーで早朝からカクテル(ブラッディマリー)を飲んでいます。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年10月30日
「せつない動物図鑑」という変わった名前に興味が惹かれました。何が"せつない"というのだろう?せつない動物図鑑 [ ブルック・バーカー ]価格:1080円(税込、送料無料) (2017/10/21時点)タコには友だちがいない、ハトはめんどくさいことを先のばしにする、カンガルーはけんかに負けるとせきをする。・・・なるほど"せつない"といえば"せつない"ですな。(笑!この世に生を受け生きていかなければならないのは、人も動物も同じこと。人生につまずきため息をつくのは、何も人ばかりではなかった。動物の失敗する姿や思わず笑ってしまう情けない行動に親近感を覚えるのは、我もまた"せつない人間"ということか?日ごろせつない思いを抱いて生きている人、ぜひご一読を。・・・癒されますぞ。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年10月21日
人気作家・浅田次郎氏が、JALの機内誌に連載した珠玉のエッセイを纏めたエッセイ集第2弾「アイム・ファイン」を書棚から取り出して、また読んでいます。アイム・ファイン! (集英社文庫) [ 浅田次郎 ]価格:529円(税込、送料無料) (2017/5/17時点)浅田のプロフィールを調べるまでもなく、氏の少年時代を題材にしたエッセイを読めば、氏はいわゆる団塊の世代の終り頃の世代だということがわかります。そのもっとも代表的なエッセイをひとつあげるとすれば、「アイム・ファイン」の終りころに収録されている「空飛ぶレタス」。いったいどうしたらレタスが空を飛ぶというのか?ことの発端は小学校5年生の土曜日の放課後に友達と広げた弁当にあった。友達の弁当には、浅田少年が今まで見たこともないキャベツのような瑞々しい葉っぱが添えられていた。・・・何ということだ。こいつの家ではキャベツを切らずに食べるのかと思ったという浅田少年。それがキャベツではなくレタスという野菜だということを知った浅田少年が、家へ帰るや「レタスが食べたい。レタスが食べたい」と母親にせがんだところ、その日の夕食の食卓に手のひら大にちぎられたレタスが大皿に盛られて載ったのだそうな。浅田少年は嬉々としながら、家長である爺さんがレタスに箸をつけるのを待っていたところ、浅田少年の意に反して爺さんは箸をつけるどころかこう言い放った。「これは何でえ」と。「レタスです。お塩を振って食べてください。次郎の大好物なんです」と母親。「進駐軍の食べ物かい」と爺さん。「あの、おじいさん。進駐軍はあらかしアメリカへ帰っちまいましたよ。再来年は東京でオリンピックが」と、その時「デェーイ」という爺さんの叫び声とともにレタスが空を飛んだのだったと書けば、ことの顛末が推察されようというもの。私たちの食生活が高度経済成長とともに変化した時代の、一片のエピソードであると浅田は書いています。家長は決して反省したりあやまったりせずにソバ屋へと向かい、母は泣く泣くあと片付けをして子供らに別誂えの食事をふるまい、その子供らは祖父や父の偉さを改めて実感しつつ、かつ母を労わるのであると。東京オリンピックを迎えた時は、私が小学校3年の時であったことを思えば、浅田氏は私より5~6歳人生の先輩であるわけですが、その5~6年の歳月がそうさせたのかどうかはわかりませんが、わが家では幸いなことにレタスが空を飛ぶというようなことはなかったと記憶しています。その後レタスは急速に普及し国民の食卓を豊かにした食材の代表格となりましたが、果たしてかっての浅田家のように空を飛ぶということがあったのでしょうか?それにしても、「デェーイ」が何とも魅力的に写るのは、私だけでしょうか?( ← イエローカード!・・・爆笑!◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年10月17日
仕事に追われ日々時間に余裕のない生活を強いられている現代人にとって、1年365日どこをとっても1日は24時間と決まっております。秋分の日が過ぎてやがて一月も経てば、昼夜の長さは完全に逆転してしまいます。夕方5時を過ぎれば辺りはもう薄暗くなっているのに気づき、思わず仕事の手を早める人も多いのではないでしょうか。では昔の人はどうであったかというと、当時の時間の単位は文字どおり「時(とき)」、一時(いっとき)が現代の単位で約2時間ということになります。今約2時間と言ったのには訳があって、昔の時間は昼と夜で長さが伸び縮みしていたがために、はっきりと2時間と言い切ることができなかったのです。「旧暦はくらしの羅針盤」(小林弦彦著 生活人新書)に詳しく書かれております。旧暦はくらしの羅針盤 [ 小林弦彦 ]価格:734円(税込、送料無料) (2016/9/27時点)すなわち、昼は昼で日の出から日の入りまでを6分割したものを一時(いっとき)とし、夜は日が暮れてから翌日日が昇るまでを6分割していたから、これからの季節昼より夜の一時の方がはるかに長くなるというわけ。反対に夏になれば、昼の一時が断然長くなる。「秋の夜長」や「春眠暁を覚えず」の例えは、こういった背景があって出たものだということが推察されます。文明の力・電気の恩恵を受けている現代と違って、昔は日が落ちれば月夜でもない限り夜は真っ暗。ろうそくや行燈の油などは、当時は超高級品であったがために、夜になればそれこそ寝るだけ。せいぜい囲炉裏端で囲炉裏の火をたよりに、細々と夜なべ仕事をするくらいだったことが想像されます。季節はまさに「読書の秋」。「灯火親しむ候」とは、まさにこれからの季節を言うのでしょうが、二宮金次郎の例えをひくまでもなく、昔の人は本を読むにも時間に物理的な制約があったことが窺い知れます。そもそも本を手に入れること自体並大抵のことではなっかたことを思えば、現代に生きる我々は何と幸せなことかと思うのです。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年10月14日
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