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人気時代小説作家上田秀人の「町奉行内与力奮闘記」シリーズ第5弾。副題には「宣戦の烽(のろし)」とありました。宣戦の烽 町奉行内与力奮闘記 5 (幻冬舎時代小説文庫) [ 上田秀人 ]価格:702円(税込、送料無料) (2017/9/18時点)内与力とは、45歳の若さで大坂町奉行から江戸北町奉行に栄進した旗本・曲淵甲斐守影漸(まがりぶちかいのかみかげつぐ)の家臣、城見亨(しろみとおる)のこと。時代劇でお馴染みの町奉行与力には、幕府が御家人として配する与力と、亨のように町奉行が己の家臣から数名選んで町奉行所の与力に就かせるものがあって、亨は甲斐守の家臣(陪臣)でありながら、町奉行所与力(直臣)という微妙な立場に立たされることになる。時代劇では与力・同心が町奉行の指揮のもと一致団結して、難事件を解決していくというのが常ですが、実際はそうではなかった。世襲は認められているというものの薄禄で手柄を立てても出世の道のない与力・同心と、江戸町奉行を無難にこなしさらに出世をと考えている奉行とは、同じ奉行所にいても心に描いているものがまったく違っていた。徹底した町奉行所改革を志す甲斐守に、ただただ既得権益の確保と己の保身しか考えぬ町方与力・同心は、あろうことか江戸に巣くう闇の勢力にまで手を伸ばしてまで奉行を潰そうとする。亨を慕って大坂から江戸へやって来た大店の娘・咲江を誘拐し、曲淵甲斐守を追い落とさんがための手立てにしようというのだ。全面対決を決意した甲斐守から咲江の警護を命じられた亨。はたして亨は、次々と襲い来る刺客集団から咲江を守ることができるのだろうか?そして奉行所の既得権益にしがみつく与力・同心と甲斐守の反目は、ついに頂点に達する。・・・その行方は?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年09月18日
人気時代小説作家上田秀人の新作書き下ろし「奏者番陰記録」。その副題には「遠謀」とありました。「遠謀」を辞書で調べると、「遠い将来のことまでも考えにいれたはかりごと」とあります。いったい誰が遠い将来にまではかりごとを巡らそうとしたのか?そして、それは何のためだったのか?奏者番陰記録 遠謀 (文春文庫) [ 上田 秀人 ]価格:734円(税込、送料無料) (2017/9/11時点)時は3代家光の治世。「奏者のことを務めよ」奏者番に任ぜられた水野備後守元網は、大名の将軍謁見の場で奏上の文言を間違えるという失態を犯してしまうも、居合わせた老中松平伊豆守信網の取り成しで事なきを得る。以来伊豆守に服従するのであったが、伊豆守が筆頭老中に進み権力を掌握するに従い、元網にも城中の目が向けられることになる。西の丸奏者番に転じた元網は、次期将軍(4代家綱)側近としての不動の地位を掴むまで上り詰めたのであったが、家綱即位の後間もなく起こった由井正雪の乱が、元網の周りに思わぬ波紋を投げかけることに。正雪の野望を未然に幕府へ注進した4人の浪人への恩賞として、新規旗本に取り立てることにした幕府。その将軍謁見の場に、一人の浪人(奥村八左衛門)が病と称して現れなかったことに激怒した家綱は、元網にその理由を徹底調査することを命ずるのであったが・・・。その奥村八左衛門なる男を調べていくうちに、元網はその裏に隠された驚くべき陰謀に巻き込まれていく。元網が気付いた衝撃の陰謀とは、いったい誰のいかなる「遠謀」であったのか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年09月11日
一度読んだ本を書棚から引っ張り出して何度も読み返すということ、それが推理小説でなくともそうそうあるものではありませんよね。しかし、旅行記、旅行エッセイというものなら話は別かもしれません。実際幾度となく読み返しています。ぶらり放浪の旅に出てみたいという誘惑にかられる度に手にする本2冊。【送料無料】旅する胃袋 [ 篠藤ゆり ]価格:720円(税込、送料別)【送料無料】世界一周ひとりメシ [ イシコ ]価格:630円(税込、送料別)何もかも忘れて旅行が出来たらどんなにかいいだろうと思うことしばしばです。そんな思いが頭をもたげて来たとき、いつのまにか書棚のこの本に目がいってしまう私を誘惑するアブナイ本。かといって今の仕事や生活や、もしかしたら家族も投げ捨てて、放浪の旅に出る勇気も無謀さも持ち合わせてはいない自分もよく知っていますから、これはこれで凡人の幸せというものかも知れないと思ったりしています。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年09月08日
人気時代小説作家上田秀人の「表御番医師診療禄」は、本編で早くも第10話。その副題には「宿痾(しゅくあ)」とありました。「宿痾」とはあまり聞きな慣れぬ言葉ですが、字引きで調べてみると、「容易に治らないで、長い間悩まされている病気。持病」とありました。表御番医師診療禄10 宿痾【電子書籍】[ 上田 秀人 ]価格:691円 (2017/8/30時点)何としても継嗣をと望む5代綱吉直々の引きで、表御番医師から御広敷番医師に昇進した我らがヒーロー・矢切良衛。綱吉の命で南蛮の懐妊術を習得するために長崎に遊学したものの、わずか3月余りで江戸に呼び戻され、綱吉の愛妾お伝の方付きの大奥担当医を命じられる。城内の目は、良衛が持ち帰ったとされる阿蘭陀(オランダ)流懐妊術に集まる。「そのようなもの(阿蘭陀流懐妊術)などあろうはずもない」全てを承知している良衛のつぶやきだけが、空しく響く。そのつぶやきが消える間もなく、魔の手の差し向ける刃が次々と良衛を襲う。金の力で娘のお露を大奥に上げ、綱吉のお手付き中臈にまでさせた日本橋の廻船問屋・房総屋市右衛門は、お伝の方より先にわが娘を懐妊させようと、阿蘭陀流懐妊術を奪わんと、良衛がひそかに思いを寄せる患家・伊田美絵に魔手を伸ばす。美絵を人質に懐妊術を得ようというのだ。さらには幕府典薬頭(てんやくのかみ)半井出雲守(なからいいずものかみ)は、このままでは良衛の義父で同役の今大路兵部大輔(いまおおじひょうぶのだいゆう)に遅れをとってしまうと、手段を選ばぬ行動に出る。何としても継嗣を得んと欲する綱吉、そして6代の生母となり大奥での絶大な権力を維持したいお伝の方、その懐妊を阻もうとする大奥と幕府内の反対勢力。そして何より阿蘭陀流懐妊術などあろうはずもないのだ。・・・良衛危うし。江戸城内にうごめく野望・野心にまみれた醜き輩の姿こそ、徳川泰平の世を悩ませた容易に治らない病・「宿痾」であるに違いない。良衛はこの危機をみごと切り抜け、「宿痾」を療治することができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年08月30日
江戸の美味いものを題材にして、当時の人々の暮らしと生き様を鮮やかに蘇らせるエッセイ「大江戸美味草紙(むまそうし)」(杉浦日向子著)。大江戸美味草紙 [ 杉浦日向子 ]価格:1404円(税込、送料無料) (2017/8/2時点)前回は「暑気払いの切り札」の章から、江戸人が好んで食べたという魚のどじょうのことを、「どじやう」と「どぜう」に使い分けたという話を取り上げました。今回は「酔い覚めて」の章より、酒について。江戸人はどのくらい酒を飲んだか?杉浦さんは文献を徹底的に調べて、当時の酒量をこう計算しています。上方から入って来る上質な清酒(下り酒)は、一樽が3斗6升入りで年間100万樽。当時の江戸の人口を100万人として、その半数が飲酒したとすれば、1人1年7斗2升、一か月6升。すなわち一日2合、休肝日なし。このほかに関東の地酒が年間15~16万樽、焼酎が3万樽消費されたことを合わせると、まさに江戸は酒びたしの街であったと。江戸ッ子がおっちょこちょいで喧嘩ッ早いのは、いつもほろ酔いかげんだったからではないかとまで言わしめています。武蔵野は月の入るべき山もなし 草より出でて草にこそ入れかって平安の都人にとって、武蔵の国はへき地もへき地、人の住むところではなかった。見渡す限りの原野。すなわち、野見尽くせぬ地。呑み尽くせぬ・・・。そこで呑み尽くせぬほどなみなみと酒の入る大盃のことを「武蔵野」という。この「武蔵野」を使った大酒飲み大会の記録が残っているのだとか。文化14年(1817年)3月23日、両国柳橋の料亭「万八桜」で行われたのだそうです。その記録たるや俄かには信じられないほどの大記録。68歳の堺屋忠蔵さんは、3升入る「武蔵野」で3杯(9升)飲んだとか。かたや30歳の鯉屋利兵衛さんは、こちらはなんと6杯半(1斗9升5合)。さすがに酔いつぶれてしまったそうですが、この話には続きがあって、利兵衛さんは目覚めてから茶碗に水を17杯飲んだということです。・・・よく目が覚めたものだと感心しますね。(笑!酔い覚めのぞっとするとき世に帰りあの世から急転直下生還したような気持、したたかに酔いつぶれ、目覚めたときの酒飲みの心中を押し測った川柳、見事ですね。水を17杯飲んだという利兵衛さん、閻魔大王に酒臭いと言われ、この世に舞い戻れたのでしょうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年08月17日
上田 秀人 著 「峠道 鷹のみた風景」峠道 鷹の見た風景 (徳間文庫) [ 上田秀人 ]価格:712円(税込、送料無料) (2017/8/9時点)江戸時代中期、わずか10歳で戦国時代の名将上杉謙信を祖とする米沢藩上杉家に養嗣子として入り、16歳で家督を相続。しかし、その雄藩は借金まみれで幕府に領地返納伺いを申し出たほどの貧乏藩。その上杉藩の財政再建の基礎を築き、果断に藩政改革に取り組んで、後世名君中の名君とうたわれた9代藩主・上杉治憲の幼年期、青年期、そして鷹山と称した晩年期を描く。冒頭「時代小説が好き」と書きましたが、これは歴史上実在した人物を史実に乗っ取って書いた歴史小説というべき。表題の「鷹」とはまぎれもなく鷹山のことであろう。その鷹山の見た風景とは、鷹山が歩いた苦難の道、国境の峠までようやくたどり着き、峠から垣間見ることができた米沢平野を指すのであろうか。その峠から見た田園風景は、改革がようやく軌道に乗り出し、暗闇の中にほのかな明かりを目に出来るまでになったときの鷹山の気持ちを表しているようにも思えます。名君はいかにして名君たりえたか。藩政改革に一生を投じた鷹山に真っ向から向き合って描いた上田秀人の秀作。「峠道 鷹のみた風景」ご一読あれ。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年08月10日
江戸の美味いものを題材にして、当時の人々の暮らしと生き様を鮮やかに蘇らせるエッセイ「大江戸美味草紙(むまそうし)」(杉浦日向子著)。大江戸美味草紙 [ 杉浦日向子 ]価格:1404円(税込、送料無料) (2017/8/2時点)当時の江戸人が好んで食べた美味しい食べ物を川柳とともに紹介してくれます。その「暑気払いの切り札」の章に取り上げられていたのは、「どじょう」。今年は土用の丑の日が二日ある年だとか。現代人ならば、さしずめ鰻ということになろうかと思いますが、鰻は江戸の初期にはあまり食べられなかった魚だとか。庶民がもっぱら好んで食べたのが、どじょうだそうです。そのどじょうはどのように調理されて食べられたか?ささがしの牛房(ごぼう)のそばで皆殺し念仏も四五へん入れるどじやう汁笹掻(ささが)きにしたごぼうと一緒に煮られて、あえない最期をとげるどじょうをうまく表現していますね。江戸人はどじょう鍋が大好物であったそうです。私も東京観光で浅草の有名な老舗のどじょう料理屋で、このどじょう鍋を食べた経験があります。先にあげた川柳では「どじょう」を「どじやう」と表記してありますが、私が訪れた老舗のどじょう料理屋の暖簾には「どぜう」と書いてあったと記憶しています。「どじやう」と「どぜう」、何れが正しい表記か?正解は両方とも「 ○ 」。(笑!杉浦さんがどじょうの表記の仕方の違いについて、説明してくれています。「どじやう」はどじょうが生きているときにこう書き、「どぜう」は食い物になったときの呼称であると。すなわち、「どじやう汁」は生きたのをそのまま鍋に入れるからあくまで「どじやう」で、「どぜう鍋」はあらかじめ骨までやわらかく下茹でした姿煮や、裂いて頭を落とし骨や内臓をきれいに取り除いた開き身を用いるから、すでに「どじやう」ではなく食材としての「どぜう」なんだそうです。なるほど、そういうわけだったのですね。江戸人は妙なところにこだわりを持ったんだな?これも江戸人が命の次に大切にしたという粋というものなのだろうか。そういえばかの老舗のどじょう料理屋では、柳川鍋の注文を取るとき、「骨付き」「骨抜き」を問われました。「骨付き」にしろ「骨抜き」にしろ下処理されているから、「どぜう」ということになりますね。暖簾に書かれていた文字には、そういう深い意味があったのでした。さらには「どじょうはどうも・・・」という人のために、「鶏肉」というのも用意されていたのには驚きました。どじょう料理屋で鶏肉の卵とじを注文するなんて、ごはんにかければ親子丼じゃないか。(笑!当時の江戸人が知ったらさぞかし顔をしかめるでしょうな。(笑!今年は8月6日が土用の二の丑にあたる日とか。一の丑の日には鰻をたべたから、今度は「どじょう」・・・ではなかった、「どぜう鍋」を食べてみようかしら。江戸人の粋を味わってみるのもまた乙というもでしょう。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年08月03日
上田秀人の御広敷用人大奥記録、完結編となる本作は、副題に「覚悟の紅」とあります。「紅」とは、てっきり主人公の御広敷用人・水城聡四郎(みずきそうしろう)の妻紅(くれない)のことと思っていたら、そうではなく文字通りの紅(べに)、すなわち口に紅をさすの紅(べに)であった。覚悟の紅 御広敷用人 大奥記録(十二) [ 上田秀人 ]価格:669円(税込、送料無料) (2017/8/2時点)ブックカバーの挿絵を見ると、白絹の夜着姿で唇に紅をさしている女性の姿が描かれている。これは竹姫であろう。竹姫が覚悟を決めたというのは、いったいどういうことか?竹姫を継室にと望む、8代吉宗の思いに応えることができない事態を予見させる副題。そうであれば、主人公である御広敷用人の聡四郎は、主君の命に応えることができなかったというのか?天英院(6代家宣の御台所)の手の者に嫡男長福丸が毒をもられたことに激怒した吉宗の命で大奥の刷新を始める聡四郎であったが、あろうことか天英院は実家(京の近衛家)を後ろ盾に最後の暴挙に出る。聡四郎、危うし。御広敷用人大奥記録完結編、我らが水城聡四郎は、果たして主君吉宗の信に応えることができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年08月02日
今読んでいる本、浅田 次郎 著「あやし うらめし あなかなし」。浅田の手になる奇談、怪談7編が集められた短編集が、この「あやし うらめし あなかなし」。あやしうらめしあなかなし (集英社文庫) [ 浅田次郎 ]価格:626円(税込、送料無料) (2017/7/27時点)「あやし」とは「怪し」、「うらめし」とは「恨めし」だろう。「あなかなし」は「あな悲し」で、「あな」はそのあとに続く形容詞を強調する語だから、「ひじょうに悲しい」と言っていることになる。「怪し、恨めし」だけなら、これは夏の夜に語られる怪談のたぐいということになろうが、そのあとに「悲し」を強調して「あなかなし」と言っているところが、いかにも浅田流。すなわち、所詮人の生き様ははかなくてもの悲しいものだと浅田は言いたいのであろう。全7編すべてのストーリーはまったくもって奇怪で、いわゆる奇談、怪談と呼べるものであるが、登場する主人公が人の世の苦労すべてを背負い込んだような生活を強いられ、もがくように生きている様が描かれている。そんな主人公の生き様に、読者は自分の人生と何かしらの共通点を見い出し、思わずはっとしてしまう。怪しいより、恨めしいより、あな悲しとため息を漏らしてしまうのであった。「あやし うらめし あなかなし」。浅田流の世にも不思議な奇談、怪談の世界に、貴方も入り込んでみられれてはいかがか?きっと「あなかなし」とため息が口をついて出て来ること違いありません。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年07月27日
浅田 次郎 著 「椿山課長の七日間」をいっきに読破しました。椿山課長の七日間 (集英社文庫) [ 浅田次郎 ]価格:712円(税込、送料無料) (2017/7/23時点)大手デパート婦人服売り場担当課長の椿山和昭は、仕事の無理がたたって46歳の若さで脳溢血を発して死んでしまう。・・・ふと気付いてみると椿山はあの世の入口にいるではないか。そこは死者に死後の世界の講習を与えるという「スピリッツ・アライバル・センター」。本来はきっと厳粛であろうと想像する現世と来世の中間の世界を、浅田はまるで運転免許書更新センターのように、喧騒にあふれる殺伐とした事務的な世界に描いている。現世で犯した罪の大小、種類によって分かれた講習部屋に入り、そこで講習と説明を受ける。心を悔い改め、机の上の改心ボタンを押すとたちまちにして極楽に昇ることが許される。だからどんな悪人でも(悪人であればなおさらと言うべきか)このボタンを押すのであった。浅田流「悪人正機説」は、いかにも現代的ですこぶるわかり易い。なるほどそういうことなのかと妙に得心してしまう。(笑!椿山課長もボタンを押せば良かった。椿山に課せられたのは「邪淫の罪」。同期入社の佐伯知子と淫らな肉体関係を、妻と結婚するまで18年間も続けた罪だという。しかし、椿山はこれが納得できなかった。「おまえら、本当に思い残すことはないのか。そんな簡単な人生だったのかよ。自分だけとっとと極楽に行けば、それで本当にいいのかー」椿山は再審査を希望し、7日間で舞い戻る、復讐をしない、正体を明かさないの3条件のもと、美女に姿を変えて現世に舞い戻ることに。条件を一つでも破ると、地獄へ真っ逆さまに落ちるという。現世に戻った椿山の周りに現れる不思議な少女(中身は車にはねられて死んだ少年)と、一見筋目正しい弁護士風の男(中身は一家を構えるヤクザで、人違いで殺された)。実は二人とも椿山と同様再審査を希望し現世に戻った仮の姿なのであった。少年は実の父母に会って感謝の言葉を述べたい。ヤクザは残された子分を真っ当の生活に戻させることを希望したのであった。この少年とヤクザ、そして椿山課長の3人が現世でやり残したことを遂げようと悪戦苦闘して行くうちに、椿山の家族(老いた父親、妻、一人息子)、さらには「邪淫の罪」の相手佐伯知子、職場の部下嶋田係長も加わて、意外な事実が次々と明らかになっていく。果たして椿山課長は、「邪淫の罪」を晴らし、やり残したことをすべてやり遂げ、納得のゆく昇天を果たすことが出来るのであろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年07月24日
浅田次郎のエッセイ集「パリわずらい 江戸わずらい」から。パリわずらい 江戸わずらい [ 浅田 次郎 ]価格:615円(税込、送料無料) (2016/12/31時点)無類の車好きでもある筆者のドライバーとしてのこだわりについて、車社会の本場アメリカでの出来事を書いた「前とうしろ」。その前に皆さんはパーキングで駐車するとき、どんな止め方をしますか?駐車スペースや他の車の位置関係などによっても違うと思いますが、一般には一旦切り返してバックで駐車スペースへ入っていくのが普通ですよね。浅田がアメリカのホテルの駐車場で、鮮やかにバックからの駐車を一発で決めてホテルに入ろうとすると、陽気でヒマそうな係員に、日本人はどうしてみんなバックで車を止めるのかと聞かれたというのです。振り返れば浅田の車だけフロントをこちらに向けていて、他の車はみな頭から駐車している。「出るときに楽だろう」と浅田が答えると、「入るときも出るときも手間は同じだ」と係員。豈はからんや、ホテルから大きなスーツケースを引いて出て来たとき、きっちりとリアから駐車した車の荷室の扉を開けることができず、かの係員の苦笑を受け入れるしかなかったと。文脈は前後しましたが、これと同じことを韓国でも経験したと、浅田は冒頭に語っています。玄関で靴を脱いで屋内に入る国は、日本と韓国。韓国料亭で招待を受けた浅田が靴を脱いで中へ入ろうとすると、日本人はどうしてうしろ向きになって靴を脱ぐのかと尋ねられたというのです。「子どものころからの習慣です」と浅田。「来たとたんに帰り支度をしているように見えます」と韓国人。皆さん、どう思われますか?さすがの浅田先生も咄嗟のことで返答に窮したというのです。靴の脱ぎ方については、いったん脱いだ履物を、自らの手で正面に向け、玄関の端に置き直すというのが正しい作法であるように思うが、別段とうの韓国人は、正しい作法を省略して、主人に尻を見せるような靴の脱ぎ方を責めている風でもない。アメリカでの車の駐車の仕方と同様、単なる動作の合理性について、日本人の所作が理解できず、「帰り支度」と言わしめたようだと。単なる生活習慣の違い、履物の脱ぎ方では帰るときに他者の手を煩わせないため、駐車の仕方では単に出庫のとき視野を正面にしたいだけのことなのだが、外国人の目には非礼と映り、あるいは非合理的な一律性に見えるのだろう。「器用で勤勉で聡明な私たちではあるけれど、今一歩の思慮に欠けるというのも、どうやら揺るがしがたい国民性であるらしい」という浅田先生のご意見、真摯に傾聴しなければならないと思いました。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年07月12日
浅田次郎 著 「霧笛荘夜話」。とある港町の運河のほとりに立つ古ぼけた半地下作りのアパートの大家である老婆が、店子の6人の住人と自分自身について語る七つの物語。この老婆がそれぞれの部屋を案内しながら、かっての住人について語り聞かせてくれる。霧笛荘夜話 (角川文庫) [ 浅田次郎 ]価格:596円(税込、送料無料) (2017/7/10時点)一時「勝ち組、負け組」という言い方が流行った時期があったように記憶するのだが(今でもそうか?)、この物語で語られる7人は、間違いなく「負け組」に組み入れられてしまうに違いない。彼らは一同に過去の深い傷を背負い込み懸命に救いを求めて生きているはずなのに、なぜか人生の岐路で器用に生きる道を選ばず、あえて苦しみの沼に足を踏み入れてしまう道を選択してしまう。そしてあたかも不幸に追い立てられるようにして、霧笛荘にたどり着くのであったが・・・。人間だれしも「負け組」にはなりたくないとあがくのが人生というものらば、いったいこの霧笛荘の住人の人生は何と表現したらいいのだろう。抗うことすらせず諾々として「負け組」を受け入れているようにさえ見える。人生の幸せとは何か?その鍵がこの霧笛荘の住人の生きざまに隠されているとしたら・・・。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年07月10日
浅田次郎ファンを自認する私としては、氏のデビュー作といえる「地下鉄に乗って」を読まずして真の浅田ファンとは言えまいと思いつつも、氏の膨大な作品群、とりわけ時代小説の魅力に取りつかれ、手にする機会が遅れました。地下鉄に乗って (講談社文庫) [ 浅田次郎 ]価格:604円(税込、送料無料) (2017/6/28時点)いったい浅田は地下鉄に乗ってどこへ行こうというのか?本を手にしたときの最初の思いでしたが・・・。ちっぽけなアパレル会社(女性下着の製造販売会社)の営業マンの小沼真次は、行きずりで参加した高校時代の同窓会の帰りに、地下鉄の駅の構内でその高校時代の"のっぺい"とあだ名されていた恩師・野平に遭う。野平とは25年前に週一回授業で書道を教わっただけの生徒と教師の関係であったにも関わらず、"のっぺい"は真次が思い出したくない、兄や父のことを、そして今の境遇のことまでも次々に話しかけて来る。・・・あの日真次の敬愛する兄昭一が、地下鉄に飛び込んで自殺したことまで。「丸ノ内線の、新中野の駅だったか」「・・・よく覚えていらっしゃいますね」「おや、忘れたかね。僕はあの晩、警察に行ったのだよ。君もおったじゃないか、弟さんも」そうか、今日は兄の命日であった。"のっぺい"と別れ不愉快な思いを抱きながら丸ノ内線の永田町から赤坂見附に通じる長い地下道を抜け、階段を昇ったそこに広がる光景は、なんとあの日あの時の新中野の地下鉄の入り口であった。兄の死以来ずっと抱えて来た父へのわだかまり、行き場のないくすぶった思いが真次をあの日あの時に連れ戻したというのか。真次はその奇妙な体験を会社の服飾ザイナーのみち子に話す。家庭を持つ身ながら真次は、みち子とはお互いに特別の感情を抱いていた。その日以来、みち子を巻き込んで、真次の前に次々と過去の世界が現れる。満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市でアムールと呼ばれれ精力的に闇の商いで産を成してゆく父にも出会う。ソ連軍に追われ命からがら逃げた満州の戦場でも勇敢な父を見、関東大震災後の昭和の初め、路上で荷車を引く少年時代の父をも目にする。これはいったいどうしたというのか?うすうす気づきはじめた真次に、みち子はこう告げたのだった。「行こう、真次さん。まだやらなければならないことが残っているわ」「向こうの世界でやり残したことがあるの」と。東京オリンピックの年、兄が自らの命を絶った年、みち子が生まれた年。赤坂見附で下りて永田町の地下道にある階段を昇ると・・・。そこには思いもかけない驚愕の結末が待っていた。感動の終章は、涙なくては読み進めることはできません。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年06月28日
加賀百万石の若き留守居役・瀬能数馬(せのうかずま)の活躍を描く「百万石の留守居役」第9話の副題は「因果」と書かれていました。因果 百万石の留守居役(九) (講談社文庫) [ 上田 秀人 ]価格:712円(税込、送料無料) (2017/6/21時点)時は5代将軍に綱吉が就任したばかりのころ、最大の外様大名加賀前田藩の藩主は、2代秀忠の孫にあたる綱紀(つなのり)。祖母が2代藩主利常に嫁した秀忠の娘・天徳院(珠姫)。数馬は珠姫の輿入れのとき幕府から加賀藩に付けられてきた元旗本の出。加賀藩にとってはいわば厄介者として白い目で見られた江戸者。珠姫が18歳という若さで亡くなってからは、瀬能家はその墓守という閑職に追いやられていたが、数馬のたぐいまれなる才能を見抜いた綱紀が、江戸詰め留守居役に抜擢し、今回綱紀の参勤の伴を命じられ国元金沢に帰還することになった。その道中最後の宿高岡では、慣例に習い綱紀は2代藩主利長の霊廟のある瑞龍寺に参拝することに。しかし、そこには思いがけない襲撃者が潜んでいた。奮闘の末に襲撃者を撃退した数馬に、綱紀は「加賀の闇を見せる」という。「加賀の闇」とは何か?その答えすら見いだせない数馬にさらなる命が下る。「越前松平を探れ」外様最大の雄藩加賀前田の東西に配置された越前松平、越後高田松平の徳川親藩。はたして綱紀の意図はどこに?百万石の若き留守居役・数馬は綱紀の意図を汲み、加賀百万石を守り抜くことができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年06月21日
人気時代小説作家・上田秀人の新シリーズ「日雇い浪人生活録」の第3話は、副題が「金の策謀」となっていました。副題を追ってみると、第1話が「金の価値」、第2話が「金の諍い」だから、「金(かね)」にまつろうことを描くことが筆者の主眼だということが見えて来ますね。金の策謀 日雇い浪人生活録 3 (ハルキ文庫 時代小説文庫) [ 上田秀人 ]価格:691円(税込、送料無料) (2017/6/6時点)主人公は、日雇いの仕事で日々の糊口をしのぐ親の代からの浪人・諌山左馬之助と、左馬之助を店の用心棒として雇った江戸屈指の両替屋・分銅屋仁左衛門。「幕政の中心を米から金へ変えよ」時は9代家重の治世、大御所吉宗が世を去る直前に吉宗が家重とその側近の若きお側御用取次・田沼意次にのみ言い残した遺言が、この物語の根底にある。田沼意次は、江戸屈指の両替屋・分銅屋仁左衛門の経済力を利用することで吉宗の遺言を実行しようと仁左衛門に近づく。一方米を動かすことによって莫大な利益を得て来た札差の加賀屋は、いかなる手段を講じてもこれを阻まんと策動する。とある日加賀屋が差し向けた刺客に襲われた左馬之助は、亡き父親譲りの鉄扇術の一撃で刺客を撃退したのであったが、逆に町方から士分を殺害した下手人として追われることに。両替商・分銅屋仁左衛門と札差の豪商加賀屋、両者の背後には、幕政の中心を米から金に代えて幕府の再建を計ろうとする田沼意次と、あくまで経済の中心は米でなければならぬ守旧派の"策謀"が渦巻いていた。この渦に大きく飲み込まれてしまった左馬之助は、この窮地からいかにして脱しようというのか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年06月06日
時代小説作家・浅田次郎の珠玉の短編集「五郎治殿御始末」に収録されている6篇の中から、「遠い砲音」を読み返しています。五郎治殿御始末改版 (中公文庫) [ 浅田次郎 ]価格:561円(税込、送料無料) (2017/5/31時点)主人公は近衛歩兵師団砲兵第3中隊長の土江彦蔵。元長門清浦藩一万石、毛利修理大夫(豊後日出藩木下家より迎えられた養子)の家臣で、50石取りのお馬回り役を務めた藩士。新政府の陸軍中尉の任につきながらも、依然として前の主人毛利修理大夫との主従関係を断ち切れず、一人息子の長三郎とともに屋敷に残って修理大夫に仕えている。そういう古い頭の元藩士であるから、新政府が導入した西洋定時法がどうしても馴染めない。早い話が時計の針が読めぬのである。歩兵大隊との合同調練の日、実弾砲撃訓練の指揮を命じられた彦蔵は、歩兵の指揮を執る若き歩兵少尉と時計の針合わせを厳重に行って演習に臨んだのであったが、あろうことか突撃する歩兵の頭上に、実弾の雨を降らせてしまった。「おまん、腹ば切れ。切れんのならわしが叩き斬っちゃる」怒り狂う薩摩出身の砲兵大隊長を何とかなだめすかし、取りなしてくれたのは、フランスから招へいされた砲術教官のロラン大尉。実はロラン大尉は毛利修理大夫の外国語教師として、修理大夫にフランス語を教えており、修理大夫から忠節を忘れぬ彦蔵のことをよく聞かされていたのであった。ロラン大尉は潔く責任を取ろうとする彦蔵にこう言ったのである。「貴官は軍人の鑑である。何となれば、軍人の本分は忠節にあり、その忠節を常日ごろからいたしおる貴官こそ、あっぱれなる近衛将校である。しかるに、その忠節を忠節とも思わず、もったいのうござるの感謝さえ致す貴官に対し、本官は最大の敬意を表したい」と。「遅刻じゃあっ、急げ、遅刻じゃあっ」「中隊長殿、時間は」「11時と、ええ・・・50ミニウトか。いや、40」「あと何ミニウトでござるかっ」「ようわからん。ともかく急げ」彦蔵の所属する砲兵大隊に新たな命が下った。昼の12時(彦蔵の頭で考えるところの午の刻)に時を知らせる空砲を打つ任務を担うことになったのである。新たな任務に精を出す彦蔵に、とある日修理大夫がこう切り出す。何とロラン大尉の帰国に同行してフランスに留学すると。「勝ってついでに今一つ。外国での独り暮らしは心許ない。長三郎に伴をさせるつもりじゃ」「天下人を祖と仰ぐ木下の家に生まれ、毛利の家に貰われた予は、そちの忠義に報ゆることができぬ。そちが忠心ゆえに去らぬと申すなら、予がそちから去らねばならぬ」さらに修理大夫は涙を流しながら続ける。「予は長三郎を弟と思うてフランスに伴う。ロラン大尉の伝を頼って、必ずや立派に西洋の学問を修めさせる・・・」と。時代の趨勢に抗じきれず、刀を置き髻を切ったというものの、武門の矜持を捨てきれずに葛藤した維新の下級武士の姿をみごとに描いた「遠い砲音」。「遅刻じゃあっ、遅刻じゃあっ」依然として西洋定時に慣れぬ元長門清浦藩士・土江彦蔵が鳴らす号砲は、はるか洋上を行く毛利修理大夫の耳にはたして届いたのであろうか・・・?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年05月31日
浅田次郎の短編集「お腹召しませ」に収録されている全6篇の中の一作、「江戸残念考」を読み直しています。お腹召しませ (中公文庫) [ 浅田次郎 ]価格:637円(税込、送料無料) (2017/5/20時点)・・・何が残念であるのか?風変わりな表題は、筆者が子供のころに興じたチャンバラ遊びで、切られ役を演じた時に発するセリフ、「うぅ~む、残念!・・・無念じゃ」から採られているのでした。「残念!」と唸るやばったり倒れる浅田少年の迫真の演技は、子ども仲間でも評判であったと。その「残念」という言葉こそ、子どものころに筆者の祖父が語って聞かせてくれたご先祖様(祖父の祖父)の話、幕末の激動期の江戸で旗本御家人の間で「脱走」とともに流行った言葉。時は慶応4年の正月というからすでに大政奉還がなった後のこと、主人公が御先手組与力・浅田次郎左衛門というのだから、読者は思わず「おおっ!」と声を上げてしまう。ご先祖様はご維新の折にこっ酷い目をみた武門の出であると浅田自身が言っているところをみれば、ついに自分の先祖が舐めた辛酸を題材にしたのだなと色めき立つのである。正月二日、組頭に年頭の挨拶に行った次郎左衛門は、組頭が急遽登城のため留守であることを知る。「旦那様。少々お耳を」伴を言いつけた祖父の代からの郎党の孫兵衛が次郎左衛門に囁きかけてきた。めでたい、めでたいと言うておる場合ではないと。「どうやら大坂に御出張中の上様(15代慶喜)は、薩摩長州と一戦なされるご覚悟かと」えっ、と思わず声を飲む次郎左衛門。よくよく考えてみれば、この正月が太平無事に迎えられているのは不思議なことではないか。合戦となればその名のとおり徳川の先鋒を務めるのが御先手組。慌てて組屋敷へ戻る次郎左衛門であったが、あろうことか屋敷には三河万歳が上がり込んでいて、奥から家族の嬌声が聞こえて来るではないか。奥の間に入り二百五十余年ただの一度も使われることなく、正月の飾りとなってしまっている鎧兜に向かい合う次郎左衛門に、老いた母がこう言う。「これ次郎左殿、いかがいたした。正月早々、御組頭様が何かつまらぬことでも申されたか。お前様の不機嫌な顔は、お父上の葬式以来じゃ」太平の世に慣れきってしまったのは何も我が家だけのことではなかった。徳川旗本御家人八万旗がかくのごとくならば、鳥羽伏見で散々に薩長に打ち負かされた御大将の上様は、大坂に兵卒を残したまま軍船で江戸に逃げ帰る体たらく。鳥羽伏見で討ち死にしたものとばかり思っていた次郎左衛門の愛娘さよの許婚者、同じ御先手組の石川直右衛門が江戸へ逃げ帰って来て、夜中に屋敷の庭先でさよと抱き合って喜ぶ姿を見るにいたって、次郎左衛門は徳川が負けたことを知るのであった。しかも、会津桑名に謹慎を命じた上様は、なんと千代田の城を出て上野寛永寺に蟄居し、朝廷に恭順の意を表していると。「ざ、残念!」天を仰ぐ次郎左衛門であった。その次郎左衛門の婿となる直右衛門が、なんと上野に籠り薩長と最後の一戦をと望む旗本御家人の中に加わわらんとして、明朝組屋敷を出ると孫兵衛が伝える。「旦那様。お引き止めになるのなら、傍に知られぬ今宵の内かと」「死にぞこねの脱走が、止めて止まるものか。それにしても勝手なやつじゃ。討ち死の、夜這いの、祝言の、脱走のと、よくもまあ人を騒がせよる」「しかし旦那様。上野に奔(はし)れば万にひとつもお命はありますまい。それではいかにもお嬢様がご不憫」ことここに至って次郎左衛門と孫兵衛主従は決断した。「残念、無念」はこれを最後にしようと。夜来の雨も上がった翌朝、御先手組屋敷の辻にとどろく次郎左衛門の大音響。「早朝よりお騒がせ致し申す。拙者、御先手弓組与力、浅田次郎左衛門にござる。御与力御同心のおのおの方はお立会いめされよ・・・」さて、次郎左衛門が「残念、無念」を最後にするためにとった行動とはいかに?時は幕末維新の激動期、武門の矜持にこだわりつつも時代の趨勢に抗じきれず、刀を置き髻を切らねばならなかった侍、とりわけ下級武士の葛藤をみごとに描く浅田の「江戸残念考」、その最終章は感動なくして読むことはできません。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年05月24日
今読んでいる本、加藤 廣著「戦国武将の辞世」。時代小説ファン、とりわけ信長ファンであれば、75歳で文壇デビューした加藤 廣の信長三部作(「信長の棺」「秀吉の枷」「明智左馬之助の恋」)を読まずには語れませんね。信長の不可解な死(本能寺の変)の謎を追って、正確な時代考証を背景にした壮大な構想力に、読者はどっぷりと嵌ってしまう。その出筆のためにこつこつと集めた資料の中から、戦国武将たちの辞世や本音を語る言葉を選んで集めたのが、この「戦国武将の辞世」。戦国武将の辞世 遺言に秘められた真実 (朝日新書) [ 加藤廣 ]価格:820円(税込、送料無料) (2017/5/19時点)辞世といえば、日本人ならすぐ豊臣秀吉の辞世を思い浮かべますよね。「露と落ち露と消えにし我が身かな 浪速のことは夢のまた夢」死に臨み、人の一生ははかない一滴の露のようなものであると達観した境地を詠んだもの。一般的にはこのように解釈されているようですが、筆者の視点はさすがに鋭かった。この句にある「浪速のこと」については、百姓の小倅から天下人までになったことというふうに我々は解釈するのですが、筆者によれば文字通り「浪速」、すなわち「大坂(大坂城)」と解釈すべきだというのです。では「大坂(大坂城)」のこととはいったい何か?そのヒントは本妻寧々(ねね)に送った次の手紙にあると筆者は説きます。「・・・二の丸(淀の方)が解任したとの知らせ受けた。めでたい。(だが)われわれは、子など欲しくはない。わしの子は鶴松(夭逝した第一子)だったが、あの世に行ってしまった。(こたびの子は)二の丸だけの子であろうな」「浪速のこと」に隠された秀吉の悲哀を汲むべきであると。筆者が選んだ27人の乱世を生き抜いた武将の一生を締めくくる辞世の句や遺言状。それにはどんな秘密が隠されているというのだろう?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年05月19日
人気作家・浅田次郎氏が、JALの機内誌に連載した珠玉のエッセイを纏めたエッセイ集第2弾「アイム・ファイン」を書棚から取り出して、また読んでいます。読み終わった本をまた読み返すってこと、そうそうあるものではありませんが、自らのことを「ハゲ、デブ、メガネのアブラオヤジ」と公然と言ってはばからぬように、自虐的な文章で笑いを誘う浅田のエッセイは沈んだ暗い気持ちを一掃してくれるので、こうやって書棚に手を伸ばすことしばしばです。アイム・ファイン! (集英社文庫) [ 浅田次郎 ]価格:529円(税込、送料無料) (2017/5/17時点)冒頭に収録されている「いま、どこ?」は携帯電話の普及がもたらした電話での会話の仕方の変遷を、自身の高校時代のクラスメートとのデートをすっぽかした(すっぽかされた?)当時の思い出話を交えて、面白おかしく紹介しています。「あんたは私をすっぽかした」「なに言ってやがる。すっぽかしたのはそっちだろう」曰く、私たちは携帯電話を所有して以来、「待ち合わせ」というロマンチックな儀式を失ってしまったように思えると。17歳の浅田次郎は浅田次郎に似ても似つかず、白洲次郎に似ていたと、さりげなくそれでいて遠慮もせず書いているのも、浅田先生らしい。(笑!電話での会話は「もし、もし・・・」で始まるのが当たり前であったのが、今やいきなり「いま、どこ?」に変わってしまうにいたって、われわれは心ときめく待ち合わせのあの甘やかな時間を失ってしまったと指摘する白洲次郎、ではなかった、浅田次郎は、氏と同世代の「ハゲ、デブ、メガネのアブラオヤジ」(← 私のことです。・・・不本意ながら)を心底励ましてくれるのです。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年05月18日
人気時代小説作家・上田秀人は、江戸時代の目付、書院番、奥祐筆、勘定吟味役などの役人を主人公にしたシリーズものでヒットを飛ばしていますが、上田はこれらの役職を 「江戸幕府役職集成」「江戸役人役職大辞典」「江戸時代奉行職辞典」「江戸幕府旗本人名辞典」などの資料から見つけ出したと、自らの著書「武士の職分 江戸役人物語」で明らかにしています。上田にはぜひ「公人朝夕人(くにんちょうじゃくにん)」シリーズに挑戦してもらいたいものですな。・・・って、無理か?(笑!冗談はさておき、私は上田のように難しい資料を読み解く才能など持ち合わせていませんから、楽天ブックスからこんな本を探し出してきて、上田が新しいシリーズを出版した時のためにと、ひそかに準備をしています。「お江戸の役人 面白なんでも事典」 中江 克己 著お江戸の役人 面白なんでも事典【電子書籍】[ 中江克己 ]価格:600円 (2017/5/14時点)冒頭にあげた公人朝夕人(くにんちょうじゃくにん)なる、信じられないような役職についても書かれていました。若年寄の支配下にあって公文書を伝達したり、上申の受け渡しなどをした 同朋衆(どうぼうしゅう)組頭の差配に組み入れられていて、代々土屋孫右衛門が世襲した役職であったことも紹介されています。江戸時代は260年の天下泰平の世を保ったのは承知のとおり。戦国の気風がまだ漂っていた家康、秀忠の代までならまだしも、こんな役職が果たして必要だったのだろうかと思えるものが、堂々と幕末までに残っていたというのが興味をそそります。その最たるものを一つあげるとすれば、「貝太鼓役」。正式には「御貝役」と「押太鼓役」に分かれていた。いづれも合戦の時に味方の軍勢を鼓舞し、進退の合図としても使われた、ほら貝を吹きと陣太鼓を打つための武士。それがそのまま役職として残っていたというのですから、これほど硬直した武家社会を象徴すものはありませんね。幕末になっても「我こそは三河・駿河のころよりこの方、合戦の折に御貝役を務めた○○が子孫、○○某なるぞ。これは三方原の合戦の折に吹き鳴らしたと伝わる貝である」などと、御貝役は胸を張っていたのだろうか?公人朝夕人しかり、貝太鼓役にしてもしかり。このような役人が幕末になって黒船を迎えることになっても改まることがなかったというのは、幕府は滅ぶべくして滅んだのであろうという思いがして来ます。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年05月15日
超売れっ子作家の浅田次郎氏は、小説もさることながら無類のエッセイイストでもあります。へいぜい3本~4本の連載小説を抱えつつ、その合間にエッセイの依頼の締め切りに追われる毎日。それでいながら1年の1/3は旅先にあるというのですから、これはいかなる精神構造の持ち主であるのかと、凡夫はただただ呆れ返るばかり。ゆえに世界中の行く先々の国の国民性を鋭く嗅ぎ取る氏の感性は、さすがに超一流。ラスベガスのカジノのテーブルで「アイアム・ジャパニーズ・ノベリスト」と言ったら、テーブルは大笑いの渦。少々心外であるけれども、最高のジョークと思われるくらい私は小説家には見えぬらしいと、自らエッセイ「アイム・ファイン」で自虐的に書いてます。アメリカ人の文化人に対する軽薄さはとても我慢ならない様子。アメリカ人はただただ体と声が大きいだけで、文化の香りはさらさらしないと手厳しい。一方フランス人が文化人に対して表す尊敬の念はなまなかなものではないと、別のエッセイ集「ま、いっか」の「私のパリ」で指摘していて、これらを読み比べるとおもしろい。ま、いっか。 [ 浅田次郎 ]価格:534円(税込、送料無料) (2017/4/5時点)曰く、たまたま宿泊したホテルのフロントで職業を聞かれ、「エクリウ"アン(小説家)」と答えたら、支配人が現れて丁寧なもてなしを受けたばかりか、部屋をアップグレードしてくれたうえ、ディナーにも招待してくれたと。「以来、私はパリがいっそう好きになった。むろん個人的にいい気分になったわけではない。社会における文化や芸術の重要性を知っている彼らに、心から敬意を抱いた。・・・フランスという国は学者や芸術家や、そのほか広義でいうところの文化人を、財力や知名度ともっぱら関係なく大切に扱ってくれる」と。・・・う~む、さもありなん。私もフランスに行くことがあったなら、パリのホテルで「エクリウ"アン(小説家)」と言ってみよう。(笑!◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年05月13日
今読んでいる本。浅田次郎著「王妃の館(シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ)下」。倒産寸前の日本の旅行会社が、気位ばかりが高くて実は経営がやはり左前のフランス随一といわれる超高級ホテル・シャトー・ドゥ・ラ・レーヌを抱き込んで企てた旅費10日間で150万(「光(ポジ)ツアー」)と19万「影(ネガ)ツアー」のダブルブッキングされたツアーに参加したあの客たちはどうなったか?王妃の館(下) [ 浅田次郎 ]価格:669円(税込、送料無料) (2017/5/6時点)いかに用意周到に計画されてダブルブッキングツアーとはいえ、やはりこんな常識外れのことが無事に済むはずがなかった。二組の旅行客は、まったくの偶然から同じホテルの同じ部屋をブッキングされている者同士と知らないまま、それぞれ出会っているのだからオソロシイ。しかし、ついにツアーの二重売りが露見してしまう最終章、どういうわけか彼らはホテルのスイートルームの一室に集まり、なんと「光(ポジ)ツアー」客の一人である超売れっ子作家北白川右京が、憑かれたように書き綴る小説の原稿を奪い合うように貪り読むのであった。その原稿こそが、フランスブルボン王朝の全盛期に君臨したルイ14世と、その寵姫ディアナとその息子プティ・ルイの愛憎の物語、「王妃の館」。・・・ルイ14世はついにプティ・ルイを王太子に迎えることを決意し、ディアナとプティ・ルイの住む「王妃の館」に迎えに行く行列の先頭に立つのであったが。「王妃の館」を舞台に、17世紀と現代を光(ポジ)と影(ネガ)に見立て、読者を思いっきり笑って泣かせる感動の物語。浅田は「王妃の館」を通して、このツアーの客たちがそうであるように、そしてプティ・ルイがそうであるように、ともすれば我々現代人が忘れかけようとしている人を思いやることの大切さと、たとえ負け組と後ろ指を指されようとも常に勇気と希望を持ち続けることの大切さを、訴えたかったのでしょうか。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年05月11日
今読んでいる本。浅田次郎著「王妃の館(シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ)上」。王妃の館(上) [ 浅田次郎 ]価格:734円(税込、送料無料) (2017/5/7時点)私はフランスの近代史については、まったくの不勉強で、1789年のバスチーユの牢獄襲撃に始まるフランス革命と、その後のナポレオンの登場程度を知るだけです。フランスのブルボン王朝の絶頂期が、ルイ14世の時代であったということも、ルイ14世が太陽王と呼ばれたことで、かろうじて知るばかりです。その太陽王ルイ14世が寵姫のために建てたという「王妃の館」、今はパリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっている。「王妃の館」を舞台にして、16世紀(光・ポジ)と現代(影・ネガ)が交錯するストーリー展開に、読者はどっぷりと嵌ってしまう。こともあろうに倒産寸前の日本の旅行会社が、気位ばかりが高くて実は経営がやはり左前のこの超高級ホテルを抱き込んで、ダブルブッキングのツアーを組む。昼に滞在する客(光(ポジ)ツアー)は10日間で150万円、夜に滞在する客(影(ネガ)ツアー)は19万円という旅行代金にもあきれますが、このツアーに参加した客もみながみな訳ありで、ひと癖もふた癖もある者ばかり。いかにも危うそうに見えるこのダブルブッキングされたツアー、両方の組の客が鉢合わせしないように周到に計画されているものの、計画というものは往々にして計画通りに進まぬのが常。思わぬハプニングの連続に、読者はハラハラ、ドキドキしながらも、ツアー客のユニークな個性と行動に捧腹絶倒は免れません。前半のクライマックスは、このツアーの目玉、「王妃の館」の老コンソルジュが客に聞かせる「王妃の館」の主、ルイ14世の寵姫ディアナとその息子プティ・ルイの生い立ち。はたしてこのハチャメチャなツアーの結末はどうなるのか?ディアナとプティ・ルイは王宮に戻ることができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年05月06日
人気時代小説作家上田秀人の新シリーズ、主人公の活躍する舞台は、「辻番」でした。危急 辻番奮闘記 [ 上田 秀人 ]価格:691円(税込、送料無料) (2017/4/26時点)辻番とは、江戸市中の辻々に設けられた番所。3代将軍家光の世になって勃発した島原の乱。不穏な気配は江戸にも漂い、江戸市中では辻切りが横行。江戸の治安回復のために、幕府が大名,旗本に命じて各々の江戸屋敷前に設置させたのが辻番。町方のものは自身番と呼ばれた。時代劇の捕り物でよく耳にしますね。「お~ぅ、ちょいと番屋まで来てもらおうか」と、十手をひけらかしながら言う岡っ引きのセリフ。現代ならさしずめ「ちょっと交番までご同道願えませんか」とお巡りさんが言うようなものでしょうか。世界に類をみない日本の治安の良さは、街にある交番が大きな役目を担っていると言われていますが、その源泉は江戸時代の初め(1629年)、辻番の設置まで遡ることができる。・・・事件はその辻番で起きた。肥前平戸藩松浦家の上屋敷でも辻番が設けられ、若き藩士・斎弦ノ丞(いつきげんのじょう)が辻番士に命じられる。その任務初日のこと、弦ノ丞は隣の肥前島原藩松倉家上屋敷前での侍同士の切り合いに遭遇する。それは九州の国元で藩領を接する松倉藩と寺沢藩による島原の乱が原因の藩の生き残りを掛けた係争であることが判明するのであったが、藩内に阿蘭陀(オランダ)商館を持つ松浦藩にとっても他人ごとではなかった。島原の原城に籠る2万人にも上るという切支丹は、松倉藩だけではなく九州各地の藩から集まったものに違いないからである。さらに加えて、島原の乱鎮圧に向かった老中松平伊豆守信綱。途中立ち寄った平戸藩松浦家を視察した伊豆守によって、藩内の蔵に蓄えられている新式の鉄砲と山に積まれた千両箱の存在が知られてしまったという知らせが江戸の松浦藩邸へ届く。にわかに勃発した領地改易の危機、松浦藩江戸家老滝川大膳が取った策は?若き松浦藩辻番士・斎弦ノ丞は、絶体絶命の藩の危機を救うことができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年04月26日
「政争」、「戸惑」、「崩落」と続いた人気時代小説作家・上田秀人の新シリーズ禁裏付雅帳(きんりつきみやびちょう)第4話は、「策謀」。策謀 [ 上田秀人 ]価格:702円(税込、送料無料) (2017/4/18時点)時は11代将軍家斉の治世。老中首座松平越中守定信より禁裏付を命じられた若き旗本東城鷹矢(とうじょうたかや)の使命は、幕府が朝廷より家斉の実父一橋治済(ひとつばしはるさだ)に大御所の称号を得るために、朝廷の弱みを探ること。一方幕府に今上帝(第119代光格天皇)の実父に太上天皇の称号を求めるも拒否されていた朝廷は、なかなか首を縦に振らない。日々御所へ収められる食材の値段に不信を抱いた鷹矢は、朝廷の蔵人がつかさどる禁裏の口向きを調べようとしたのであったが、たちまちのうちに武家伝奏・中納言広橋前基(ひろはしさきもと)より、叱責を受ける。見過ごせば禁裏付の意味がなくなると主張する鷹矢に、広橋前基は言い放つ。「飾りでええ。禁裏付は武家が禁裏に突きつけた短刀や。けどな、それが真剣やったら禁裏も対応せんならん。竹光やったら笑ってられる」なんと朝廷は禁裏付など端から眼中にないのだ。鷹矢に騒ぎ立てるな、竹光になれと。いまだに朝廷の弱みを探り出せぬ鷹矢に江戸の越中守より、叱責の文が届く。絶望に暮れる鷹矢。そんな鷹矢に新たな策謀が仕掛けられる。鷹矢危うし!はたして東城鷹矢は禁裏付の任を全うし、松平越中守定信の命に答えることができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年04月18日
人気時代小説作家上田秀人の新シリーズ、「町奉行内与力奮闘記四 連環の罠」。連環の罠 [ 上田秀人 ]価格:702円(税込、送料無料) (2017/4/15時点)45歳の若さで大坂町奉行から江戸北町奉行に栄進した曲淵甲斐守影漸(まがりぶちかいのかみかげつぐ)より内与力を命じられた城見亨(しろみとおる)は、北町奉行所内の既得権益を守らんとする老練な町方与力同心たちと、江戸町奉行も出世の一階段、行く行くは大目付か留守居までと公言をはばからぬ出世欲をたぎらせる甲斐守の狭間で苦悩する。町方与力が寺社方の富くじの余得に手を突っ込んだことに端を発した曲淵甲斐守と寺社奉行の係争、寺社奉行の家臣による襲撃を退けた亨であったが、このとき捕縛した一人の侍を甲斐守と反目する町方与力同心たちは、寺社方と図って解き放ち、闇から闇へと葬ってしまう。さらには、「城見と浪人の遺恨騒ぎに仕立て上げようではないか」内与力・城見亨襲撃事件さえ、曲淵甲斐守とその忠臣・亨の排除に利用しようとする町方に、曲淵甲斐守は徹底した町奉行所改革を決断するのであったが、それは亨の立場をよりいっそう苦しいものにする。ただただ既得権益の確保と己の保身しか考えぬ町方役人は、あろうことか江戸に巣くう闇の勢力にまで手を伸ばしてまで、徹底反抗を試みんとする。亨 危うし!若き内与力・城見亨はこの危機をいかにして逃れようというのか。主君・曲淵甲斐守の期待にみごとこたえることができるだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年04月15日
今読んでいる本、浅田 次郎著 「マンチュリアン・リポート」。マンチュリアン・リポート [ 浅田次郎 ]価格:679円(税込、送料無料) (2017/4/13時点)「マンチュリアン・リポート」とは、大正が昭和と改元され、日本が50年後の破滅に向かって突き進もうとしていたころ、一人の若き陸軍中尉・志津邦陽(しずくにあき)がつづった報告書のこと。そもそも一見手紙のようにさえみえる平易な口語文で書かれたこの報告書は、いったい誰に報告するためのものであったか?書き出しの序章に陸軍刑務所に収監された志津陸軍中尉の登場によって、読者はたちまちのうちにそのような報告書があたかも実在したかのように思ってしまうのである。当時大陸の満州と呼ばれる地を実効支配し、蒋介石の北伐軍と対峙していた張作霖爆殺の史実を題材に、若き陸軍中尉の手記「Manchurian Report」と、張作霖の乗った破壊された特別列車を引いた機関車「アイアン・デューク」による独白「Monologue」を交互に著すことによって、昭和史最大の謎といわれたこの事件を解き明かそうとした浅田の会心作。激動の20世紀初めの中国史、清朝末期の戊戌(ぼじゅつ)の変に始まり、義和団事件、辛亥革命、袁世凱の登場と死、満州を実効支配した張作霖の登場を「蒼穹の昴」、「珍妃の井戸」、「中原の虹」でむさぼり読んだ読者は、ついに本作で張作霖の死について、その秘密を知ることになる。該博な知識と丹念な取材に裏打ちされた浅田史観に圧倒されぬ読者はいないと断言できましょう。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年04月14日
人気歴史小説作家浅田次郎氏は、無類のエッセイイストでもある。ま、いっか。 [ 浅田次郎 ]価格:534円(税込、送料無料) (2017/4/5時点)氏曰く、小説は頭の中でウソ八百を練らなければ書けないものであり、したがって小説家である氏は、日々ウソの山に埋もれて暮らしているようなものだと。一方エッセイはその真逆で、ものごとを見たまま、聞いたままを素直に正直に感じ取り表現する感性がなければ書けないものなのだそうな。へいぜい3本~4本の連載小説を抱えながら、その合間にエッセイの依頼を何本もこなしている氏の頭の中は、いったいどうなっているのかと少々心配になって来ます。そんな超多忙な毎日を送りながらも、1年の内の1/3は旅先で過ごすというまれに見る旅好きの氏、いったいものを書く時間がどこにあるのだろうか?おそらく小説の構想を練るために旅行に出かけ、旅先や旅の途中で見聞きしたことをたちまちのうちにエッセイにしたため、旅先から原稿を送ると、今度はじっくり大ウソの構想を練り始めるのであろう。大ウソつきと正直者の狭間で超多忙な日々を送る浅田次郎の正直ものの側面、浅田美学を知るには、珠玉の一冊といえるエッセイ集「ま、いっか」がお奨めです。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年04月05日
浅田次郎が描く激動の19世紀初め中国を舞台にした大歴史ロマン「中原の虹」最終章、「中原の虹④」。中原の虹(第4巻) [ 浅田次郎 ]価格:799円(税込、送料無料) (2017/4/4時点)幼いときに生き別れとなったあの李兄弟は、30年の歳月を経てついに再開した。幼い弟妹を故郷に捨てた呪縛にかられ続けて来た兄、李春雷(リイチュンレイ)。兄はすでにのたれ死んでしまったものと諦めながらも、もしかしたらどこかで弟妹との再会を待っているのかもしれないと思い続けてきた弟、李春雲(リチュンユン)。弟は今や中華民国大総統袁世凱(ユアンシイカイ)の名代として、兄は満州を実効支配する東北王(トンペイワン)張作霖(チャンヅオリン)の名代として、張作霖の手中にあるという中華皇帝の証・龍玉(ロンユイ)の譲渡交渉の場に臨んだのであった。袁世凱を中華皇帝と認めるはずもない兄の否という答えに、弟はさらにこう迫った。「龍玉は慰庭(ウエイテイン、袁の字)には渡しませぬ。小宮廷におわします宣統陛下に奉ります」なんと張作霖に、廃帝となった宣統帝を再び奉じて立憲君主制の国を作れと。会談は決裂し席を立った春雲に、兄は華北訛りで呼び止めた。「チュナァル(春児)」弟にはそれで十分であった。流れ落ちる涙を拭おうともせず弟はこう言った。あと3日この地大連に留まり、港に入る船でやって来る人を迎えて欲しいと。戊戌の変に夢破れ、日本に亡命していたあの梁文秀(リヤンウエンシュウ)とその妻が故国に戻って来ることを弟は知っていたのだ。梁文秀の妻こそ兄弟の妹、玲玲その人であった。名を中華民国から中華帝国とし、自ら皇帝の座につこうとした袁世凱であったが、皇帝の御印龍玉亡き皇帝には、国を統べる力はなかった。国中から帝政反対の声が沸き上がり、わずか100日余りでその座を降りることになった袁世凱に、死の使いが忍び寄る。このときついに東北王・張作霖は、長城を超え中原に入ることを決意する。はたして中原には七色の虹が光り輝くのであろうか?感動の大ロマン「中原の虹」、ここに完結す。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年04月04日
今読んでいる本、浅田次郎著「中原の虹」。中原の虹(第3巻) [ 浅田次郎 ]価格:799円(税込、送料無料) (2017/3/20時点)19世紀初めの中国、滅びゆくかっての大帝国清王朝を一人で支えて来た女傑・西太后が身罷り、傾国は加速度をましてその時を迎えようとしていた。このとき玉座にあるのは、西太后が死の床で後継を託したわずか6歳の第12代宣統帝愛新覚羅(アイシンギョロ)溥儀(プーイー)。ラストエンペラーである。浅田は清朝滅亡のクライマックスを幼帝溥儀の心を通して、こう巧みに描いている。・・・しーらない、っと。なんだかよくわからないけど、じさつ(自殺)はしないかわりに、てんし(天子)をやめちゃうってことだね。ぼくはなんにもわるいことなんかしていないのに、どうしてやめなきゃいけないのかな。まだちっちゃくてなにもできないからかな。驚くべきことにこのとき亡き西太后の霊のなせる技か、幼帝溥儀の耳に西太后の囁く声が聞こえたのだ。・・・プーイー、では、おおきなこえでこういいなさい。なんじ、ユアン・シイ・カイ。ちんはなんじのちゅうしんをよみす。ただちにみことのりを、せんとうていのなにおいてふたつせしめよ。・・・汝、ユアン・シイ・カイ。朕は汝の衷心を嘉す。直ちに詔を、宣統帝の名において布達せしめよ。・・・退位の詔が幼帝によって発せられ、この国は清から民国(中華民国)と名を変えることになったのだが、それも形ばかりのこと。混乱は日ごとに増すばかり。この国を一つにまとめ、列強諸国の侵略から国と民を守らんとする者は現れるのだろうか?現れるとするならそれは誰か?革命勢力の結集に成功したした孫文(スンウエン)か?はたまた、一度は追放されたものの再び都に呼び戻された軍閥の領袖袁世凱(ユアンシイカイ)か?いや、このとき愛新覚羅の聖地満州を実効支配する草原を駆る馬賊の総攬把(ツォンランパ)張作霖(チャン・ヅオリン)か?そして幼いときに生き別れとなったあの李兄弟、片や弟は、今は亡き西太后の信頼の厚かった、今もなお後宮を支える続ける大総管太監(ダアツォンクヮン・タイチェン)李春雲(リイチュンユン)、片や張作霖の片腕として名をとどろかせる兄李春雷(リイチュンレイ)。兄弟は果たして相見えることができるのだろうか。激動の19世紀のはじめ中国を舞台にした大歴史ロマン「中原の虹」は、いよいよ終章へと移ります。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村
2017年03月21日
今読んでいる本。浅田次郎著「中原の虹②」。中原の虹(第2巻) [ 浅田次郎 ]価格:799円(税込、送料無料) (2017/3/13時点)中国清朝末期の9代咸豊、10代同治、11代光緒の御代に、皇帝を差し置いて政を差配した西太后は、一般に漢代の呂后、唐代の則天武后と合わせて王朝を滅亡させた悪女として今日まで語り継がれていますが、浅田は「蒼穹の昴」、「中原の虹」で西太后を、自ら盾となって列強の侵略から大清国を守ろうと苦しみ抜いた女帝として、きわめて人間臭く描いています。戊戌(ぼじゅつ)の変により、自らの甥にあたる光緒帝・載湉(ツァイテン)を幽閉した西太后であったが、実は載湉を我が子以上に愛していた。病を発し己に残された日が残り少ないことを悟った西太后は、列強に蝕まれた大清国の行く末以上に、光緒帝・載湉の身の上のことを深く憂慮していたのだ。自分が死ねば、この国の官僚は光緒帝に復位を促すに相違ない。愛する載湉に滅び行く大清国を託するのは忍びないと。最後の最後まで考え抜いた西太后が死の床で下した決断。なんと次の皇帝として西太后が指名したのは、このときわずか3歳の 溥儀(プーイー)。西太后は何故幼い子に傾国を託そうというのか?光緒34 年(1908年)、秋が足早に紫禁城を過ぎ行こうとしていたとき、半世紀以上にわたって女ただ一人で国の行く末を案じ、傾国を支えて来た女帝にも、ついにその日がやって来た。その前日のこと幽閉されていた光緒帝の元へ、かって帝が最も信頼していた一人の盲目の宦官が訪れていた。西太后の苦渋の意を汲んだ側近の大総管太監(ダアツォンクヮン・タイチェン)李春雲(リイチュンユン)が差し向けた盟友蘭琴(ランチン)である。蘭琴は皇帝の前に小さな素焼の壺を静かに差し出した。「おまえはいかがするつもりか」「お伴つかまつりまする」滅び行く大清国を舞台に、浅田次郎が描く歴代の女傑・西太后と悲劇の光緒帝は、読者の琴線を大きく掻き揺らさずにはおきません。舞台はいよいよ東北の草原、満州の地へと移ります。草原を駆る馬賊の総攬把(ツォンランパ)張作霖(チャン・ヅオリン)は、韃靼の老占い師白太太(パイタイタイ)の占いのごとく、はたして草原の覇者となるのだろうか?このとき野に下っていた北洋軍閥の総帥袁世凱(ユアンシイカイ)は?満州の利権に深く関与する日本陸軍の動静やいかに?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年03月13日
今読んでいる本。浅田次郎著「中原の虹①」。中原の虹(第1巻) [ 浅田次郎 ]価格:723円(税込、送料無料) (2017/3/3時点)「蒼穹の昴」、「珍妃の井戸」に続く、20世紀初めの中国を舞台とした歴史小説。この物語も「蒼穹の昴」と同じく、あの韃靼の老占い師白太太(パイタイタイ)の予言から始まる。「汝 満州の王者たれ。汝 東北の覇王たれかし」汝は紫微宮の星座に護られている。虎のごとく野を駆ければ、出会う者はみなことごとく汝を畏れ崇め、服(まつろ)うであろうと予言された貧しき流民の子とは、張作霖(チャンヅオリン)。そしてもう一人。その張作霖に浪人市場で一千元で買われたならず者、李春雷(リイチュンレイ)。なんと「蒼穹の昴」の主人公で、このとき後宮の大総管太監(ダアツォンクヮン・タイチェン)にまで上りつめ、時の権力者西太后から厚い信頼を受く宦官・李春雲(リイチュンユン)の三兄だというのだ。しかし春雷は、田舎に打ち捨てて来た春雲と妹はすでに飢え死にしたものと思い、春雲はゆくえ知れずとなって久しい春雷をやはりこの世にはいないものと思っていた。舞台は清朝末期の中国東北部、満州と呼ばれた地。清朝の太祖愛新覚羅(アイシンギョロ)弩爾哈赤(ヌルハチ)の聖地でありながら、そこはすでに大清皇帝の威光も遠く及ばぬ地となってしまった。今その満州の地を支配するのは、ロシア軍でもなく日本軍でもなく、もちろん清の正規軍でもない。満州馬賊の総攬把(ツオンランパ)張作霖。そしていつもその先頭を駆けるのが一千元壮士(イーチェンユワンチョアンシ)と呼ばれ恐れられた李春雷。末期(まつご)を迎えた巨竜のごとくのたうつ清朝を一人支える西太后。しかし、巨竜の終焉は誰の目にも明らかであった。はたして張作霖は白太太(パイタイタイ)の予言のごとく満州の王者となるのであろうか?そして、春雷と春雲の行く末や如何に?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年03月03日
人気時代小説作家・上田秀人の「表御番医師診療禄」シリーズは、本編で早くも9話。今回の副題は「秘薬」と記されていました。表御番医師診療禄9 秘薬 [ 上田 秀人 ]価格:691円(税込、送料無料) (2017/2/28時点)時は5代綱吉の治世。館林藩主であったときに愛妾お伝の方との間に2人の子供をもうけたものの、いづれも幼逝させてしまった綱吉。綱吉最大の悩みは、このまま子供が授からなければ、兄である4代家綱に継嗣がいなかったゆえに嫡子継承が出来なかったと同じことが自分の代でも起こりうること。一方、大奥で綱吉の毒殺を未然に防いだ幕府寄合医師(表御番医師より昇格)矢切良衛。綱吉は蘭方医術を学んだ良衛に、当時最先端の和蘭陀(オランダ)産科の秘術を習得させんと長崎へ留学を命じたのものの、お伝から聞かされた疑念に不安を抱き、わずか2か月で良衛を江戸に戻してしまう。良衛かねてより念願の最新西洋医術の習得には、2か月という期間はあまりにも短すぎたにもかかわらず、過大な期待に胸躍らせる綱吉は、良衛をお伝の方担当の御広敷番医師に命ずるのであった。その地位を良衛に取って代わられると勘違いした大奥で産科を担当してきた奥医師・田上清往(たがみしんおう)は、良衛が持ち帰ったとされる秘術を奪おうと、権力を笠に着て、なりふり構わぬ悪辣な手立てを良衛に仕掛ける。さらに良衛を狙う者は、清往一人だけではなかった。将軍の寵姫を懐妊へと導くため、奔走する良衛に次々と襲い掛かる魔の手。良衛危うし。良衛はこの危機をどうしのごうというのか?そもそも綱吉の一方的な勝手きわまる命に、良衛はどう応えようというのだろう?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年03月01日
今読んでいる本。浅田 次郎 著 「珍妃の井戸」。列強諸国に蹂躙され荒廃した清朝末期の北京を舞台とした「蒼穹の昴」に続く、浅田 次郎の会心作。珍妃の井戸 [ 浅田次郎 ]価格:799円(税込、送料無料) (2017/2/20時点)その井戸は紫禁城の北の端、貞順門(チェンシュンメン)から東に並ぶ北三所(ペイサンスオ)の冷宮(ランクン)の外れに人知れずあった。珍妃(チェンフェイ)とは、11代光緒帝の寵愛を一身に受けた愛妾。時は栄華を誇った大清国がまさに滅ばんとする20世紀初頭のこと。義和団の騒乱と列強8か国の列強連合軍が都になだれ込むように攻め入り、さしもの紫禁城もまさに落城しようとしていたとき。銃弾の飛び交う中、ひそかに都から西安に逃れんと万歳爺(ワンソイエ、光緒帝)と老祖宗(ラオヅツオン・西太后)らは、貞順門の外れのあの一画に身を隠すように集まった。「珍妃はいかがした。珍妃を連れてまいれ」戊戌の変の後、光緒帝と引き離され北三所(ペイサンスオ)の冷宮に閉じ込められていた珍妃、ようやくのこと冷宮から連れ出されたのであったが、最愛の万歳爺と行動を共にすることはかなわなかった。皇帝の寵愛を一身に受けた美しい妃は、何故、誰に殺されたのか?読者は日英独露の高官とともに、その謎を追うことなるのだが、最後の最後に待つどんでん返し、そのあまりにも切ない真相とは・・・。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年02月20日
今読んでいる本。浅田次郎著 「蒼穹の昴④」。蒼穹の昴(4) [ 浅田次郎 ]価格:691円(税込、送料無料) (2017/2/15時点)かって宮中で神事を掌っていたという韃靼の老占い師・白太太(パイタイタイ)の予言。「紫禁城の奥深くおわします帝のお側近くに仕え、やがて中華の財物のことごとくをその手にからめ取るであろう」と予言された街道の馬糞拾いを生業とする貧しい少年李春雲(リイチュンユン)。その予言を信じ自らの手で浄身(チンシェン)し、宦官として後宮に入った春雲。時の絶対権力者老仏爺(ラオフオイエ・西太后)の目にとまるやとんとん拍子に出世を重ね、今や大総管太監(ダアツォンクヮン・タイチェン)として後宮に仕える宦官2000人の頂点に立つまでになった。「汝は長じて殿に昇り、天子様のかたわらにあって天下の政を司ることになろう」科挙の試験に最高の成績で合格し、都で高級官僚の道を歩んできた梁文秀(リアンウエンシュウ)は、ついに11代光緒帝の親政を目論む改革派の若手官僚の旗頭として立つことを決意する。老仏爺(ラオフオイエ・西太后)を廃し、この国を隣国日本がなしえた立憲君主制の国に変えようというのだ。まさに白太太(パイタイタイ)の予言どおりの運命をたどるかのように思えた春雲と文秀であったが、後宮を中心とする守旧派の拠りどころ西太后に深く重用され若くして後宮を差配するまでになった春雲と、11代光緒帝の親政を目論む改革派に旗頭として担ぎ上げられた文秀は、互いに相容れない道を歩まなければならない定めとなってしまう。光緒の28年(西暦1898年)西太后が紫禁城から離れ離宮へ移ることになり、一旦は成るかに見えた文秀らの若手改革派官僚による光緒帝の親政であったが、北洋軍閥の勇・袁世凱(ユアンシカイ)の裏切りによりわずか100日余りで、水泡と消える。西太后を排しようとした謀反人の汚名を着せられ、旧主派の官憲に追われる身となった文秀。理想が潰えもはや生きる望みを失った文秀は、死を覚悟し縛につこうとするのであったが・・・。その時大総管太監・李春雲がとった行動とは?時代の激流は、李春雲と梁文秀を木の葉のように揺らす。「媽媽(マアマア)!昴星在哪児(マオシンヅァイナアル)!」(ママ、昴はどこ)はたして昴の宿星は李春雲と梁文秀の上に輝き続けるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年02月18日
貴方はこんな漢字読めますか?「これだけは知っておきたい!難漢字ドリル」(土屋書店編集部 編)より【楽天ブックスならいつでも送料無料】これだけは知っておきたい!難読漢字ドリル [ 土屋書店 ]価格:1,069円(税込、送料込)これは副題でしょうか、「解説を読めば教養も身に付く」とも書かれていますが、教養の浅き者にとってはなんとも心騒ぐ魅惑的なただし書きですな。(笑!問題が5題ヒントといっしょに載っています。さて、皆さん読めますかな?【問題】1)玉蜀黍 2)行潦 3)剽軽 4)晩稲 5)葡萄染【ヒント】1)やさい 2)天候に関することば 3)・4)性格 5)色・・・正直に告白します。私が読めたのは4)の一問だけ。それもたぶんこう読むのではないかなという当てずっぽうが7割の回答です。他の4問はまったく手も足も出ませんでした。曲がりなりにも4)が読めたのは、当地は米どころの北陸富山ですから、子どものころから早稲・晩稲という言葉になじんでいたから。これは稲作のことじゃないか、でもヒントには性格とある。なるほどこれは稲作から派生して人の性格を表している言葉だな。そしたらこれはまったく自分のことを指しているじゃないかと気づいたわけです。「晩生」とも書きますね。そちら方面のことはまったく何も知らない"晩稲"でしたね。(苦笑!1)はやさいで最初の一文字が「玉」なら、タマネギか?でもタマネギなら玉葱だろう。・・・はて?同様に5)は最初の2文字は「ぶどう」と読みたくなりますでしょ。そして「染」ですからね。・・・「ぶどうぞめ」ってどんな色だ?ぶどう色なら確かに色は連想できますが、葡萄色に染めた色ってまったく回りくどいではありませんか。3)は素直に読めば「ひょうけい」でしょうが?「ひょうけい」な性格って、どんな性格だ?2)は音読みなら「ギョウリョウ」か「コウリョウ」でしょうけど、そんな天候に関する言葉聞いたことありません。ということは、たぶん訓読みなんだろうな?(実は「潦」の音読みは「リョウ」ではなく「ロウ」と読むことすら知りませんでした)「潦」には「さんずい」が使ってあるから、水に関する言葉だろう。天候に関する言葉だというなら、そしたら「しぐれ」とか「むらさめ」のように雨に関する自然現象を指す和名に違いない。そんな雨って?・・・ワカリマセン!まったく悔しいではありませんか。負け惜しみではありませんが、こんな漢字すらっと読める日本人、いると思います?正解はこのブログの最下部に載せておきます。貴方はこの難問答えることができますか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**【正解】1)とうもろこし 2)にわたずみ 3)ひょうきん 4)おくて 5)えびぞめ2)の「にわたずみ」って、雨が降って地面にたまった水のことだそうです。
2017年02月16日
今読んでいる本。浅田次郎 著 「五郎治殿御始末」。時は幕末維新の激動期、武門の矜持にこだわりつつも時代の趨勢に抗じきれず、刀を置き髻を切らねばならなかった侍、とりわけ下級武士の葛藤を描かせたらおそらく浅田の右に出る者はいないだろう。題名になっている「五郎治殿御始末」は、明治の御代になって元桑名藩上士岩井家の末裔が、孫に語り聞かせた己が祖父・岩井五郎治の話。「わしは丁度お前が歳のころ、死に損のうたことがある」と語り出したその話とは・・・。五郎治殿御始末改版 [ 浅田次郎 ]価格:561円(税込、送料無料) (2017/2/12時点)幕末の京で会津藩とともに薩長に抗ったがために、朝廷に弓引く逆賊の汚名を着せられ攻め立てられた桑名藩。桑名城を開城し北越柏崎に拠って新政府に抗おうとした藩主の後を追った五郎治の息子はすでに亡く、岩井の家を残さんとする五郎治は、幼い孫をつれ孫の母方の縁を頼って尾張に赴こうとする。わしは子供ながらに爺様(五郎治)が腹を切るだろうことがわかった。その前に薩長に組した憎き尾張に土下座して孫の命を託そうとしているのだと、祖父は語るのであった。桑名から船で熱田湊の宮宿まで渡ったものの、そこで路銀が費えてしまった二人には、ただ行くあてもなく街道のはずれの立ち枯れたすすきの原に彷徨いこむ。「お爺様、このあたりでようございます」「気丈なやつめ。わしもじきに参るでの。先を急がず待っておれ。よいな」五郎治が脇差を握った手に力を入れようとしたその刹那、まぼろしのごとく響いた名古屋訛りの叫び声。「待って頂戴すばせ。何をしやぁすば」「だちかんぜえも、岩井様」名古屋訛りの語り主は、その昔岩井家と親交があった宮宿で旅籠を営む尾張屋忠兵衛。わしは命を拾うた。わしはの、あれから侍であることを忘れて、尾張屋に奉公した。学校にも行かせてもろうた。一方、あの晩から数日してようとして姿をくらました五郎治であったが・・・。時は流れ、明治も10年の西郷征伐の年。一人の軍人が尾張屋の門口に立つ。その軍人の口から告げられたこととは?はたして五郎治は己にいかなる始末をつけたというのであろか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年02月12日
今読んでいる本。浅田次郎著 「蒼穹の昴③」。蒼穹の昴(3) [ 浅田次郎 ]価格:691円(税込、送料無料) (2017/2/6時点)かって宮中で神事を掌っていたという韃靼の老占い師・白太太(パイタイタイ)の予言。「汝は長じて殿に昇り、天子様のかたわらにあって天下の政を司ることになろう」科挙の試験に最高の成績で合格し、都で高級官吏に登用されるや頭角をあらわし、誰からも次代の礼部尚書としてこの国を担うと刮目されるまでになった梁文秀(リアンウエンシュウ)。一方「紫禁城の奥深くおわします帝のお側近くに仕え、やがて中華の財物のことごとくをその手にからめ取るであろう」と予言された街道の馬糞拾いを生業とする貧しい少年李春雲(リイチュンユン)。驚くべきことに自らの手で浄身(チンシェン)し、宦官として後宮に入った春雲は、時の絶対権力者老仏爺(ラオフオイエ・西太后)の目にとまり、紫禁城の奥深く仕えることになる。まさに白太太(パイタイタイ)の予言どおりの運命をたどるように思えた二人であったが、後宮を中心とする守旧派の拠りどころ西太后に深く重用され若くして後宮を差配するまでになった春雲と、11代光緒帝の親政を目論む改革派に旗頭として担ぎ上げられた文秀は、互いに相容れない道を歩まなければならない定めにあるというのだろうか?末期を迎えた巨竜のごとくのたうつ大清国。国難をよそに権力闘争に明け暮れる紫禁城で、恐るべき暗殺計画が実行に移される。かって栄華を誇ったこの国は、すでにイギリス、フランス、ロシア、アメリカの列強諸外国や、さらには新興の隣国日本にも深く蝕まれ、誰の目にも崩壊はまぬがれないように映る。時代の激流は、李春雲と梁文秀を木の葉のように揺らす。・・・二人の運命や如何に?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年02月06日
今読んでいる本。浅田次郎著 「蒼穹の昴②」。蒼穹の昴(2) [ 浅田次郎 ]価格:691円(税込、送料無料) (2017/2/2時点)第一巻で、道光帝(清国8代皇帝)と咸豊帝(同9代皇帝)の御代に宮中で神事を掌っていたという韃靼の老占い師白太太(パイタイタイ)が予言したこの物語の二人の主人公の行く末。「汝は長じて殿に昇り、天子様のかたわらにあって天下の政を司ることになろう」科挙の試験に最高の成績で合格し、都で高級官吏に登用された梁文秀(リアンウエンシュウ)は、まさに占いのとおりの道を歩もうとしていた。一方「紫禁城の奥深くおわします帝のお側近くに使え、やがて中華の財物のことごとくをその手にからめ取るであろう」と予言された街道の馬糞拾いを生業とする貧しい少年李春雲(リイチュンユン)。その占いを信じた春雲は、驚くべきことに自らの手で浄身(チンシェン)し、男を断ってしまう。宦官として宮廷に入り、時の絶対権力者老仏爺(西太后)に仕える機会を伺おうというのだ。休暇を与えられ故郷梁家屯(リャンジアトン)に錦を飾る途中に立ち寄った天津で、文秀はまたまた老占い師に巡り合うのだったが、白太太は驚くべきことを文秀に告げる。「わしは、生涯にただ一度だけ嘘をついた。春児(チュンル)のことじゃ。わしはあやつに偽りの卦を立てた」なんと馬糞拾いの貧しい少年李春雲に昴の宿星などありはせぬと。しかし、春児は生きておろう。どうしてあの時一家もろとも凍え飢え死んでしまう定めにあると言えたであろうかと。不思議な定めを星に持つ春児少年、いやすでに浄身(チンシェン)したからには少年とも言えぬ身になってしまったのだが、李春雲はいかなる道を歩もうというのか?そしてはたして梁文秀は予言のとおり天子様のかたわらにあって天下の政を司ることになるのだろうか?さらには春雲と文秀の関りはどうなる?末期を迎えた巨竜のごとくのたうつ大清国と老仏爺(西太后)の行く末やいかに?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年02月02日
今読んでいる本。浅田次郎著 「蒼穹の昴(1)」。蒼穹の昴(1) [ 浅田次郎 ]価格:691円(税込、送料無料) (2017/1/27時点)「汝の守護星は胡(えびす)の昴(すばる)。汝は遠からず都に上り、紫禁城の奥深くおわします帝のお側近くに使えることとなろう。やがて、・・・中華の財物のことごとくをその手にからめ取るであろう」物語は中国清朝末期の光緒12年(1886年)の凍てつく冬のこと、老いた占い師が一人の少年にその行く末を予言するところから始まる。少年の名は李春雲(リイチュンユン)。都からはるか離れた片田舎・梁家屯(リャンジアトン)で、街道に打ち捨てられた牛馬の糞を拾い集め貧しい家の生計の助けとしている。何と占い師が告げるには、その李春雲と同じ星図の下に生まれたのは、古来より二人に限られる。大清国の版図を広げた高宗乾隆帝と天下に覇を唱えた秦の始皇帝のみであると。一方梁家屯の田畑を所有する大地主・梁家の次男で、冷や飯食いのぼんくらと噂されていた梁文秀(リアンウエンシュウ)もまた春雲と同じ年頃に、この老占い師よりこう予言されていた。「汝は長じて殿に昇り、天子様のかたわらにあって天下の政を司ることになろう」と。文秀は都合五度にわたる予備試験を突破し、いよいよ都におもむき科挙の本試験に臨むこととなる。文秀について都に行くこととなった春雲。春雲は都で何を目にするというのだろう。そして文秀の科挙の試験の合否は?はたして春雲と文秀にいかなる運命が待ち受けるというのか。老占い師の告げた予言は、二人にとって宿命と言えるものなのだろうか・・・?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年01月27日
今、浅田次郎著「天国までの百マイル」を読み終わって、ようやく溢れ出る涙をぬぐい、少し落ち着きを取り戻したところです。天国までの百マイル [ 浅田次郎 ]価格:669円(税込、送料無料) (2017/1/22時点)事業に失敗し愛する妻子とも別れたダメ男の城所安男がこのストーリーの主人公。著者の生い立ちとダブる影を持つ安男のまわりに登場する人物は、大きく2群に大別される。まず安男の3人の兄と姉。長兄は苦学の末に東大を出たエリート商社マン。次兄も国立医大卒の開業医、姉は一流銀行の支店長婦人、そしてその姉の夫でありかっては安男に多額の融資をし、最後は安男を見限った義兄の支店長。安男からみれば、血肉を分けた兄弟とはいえ、苦労の末に手にした今の幸せを失いたくないために、多額の負債を抱えて倒産した自分に関わろうとしないのはわかるとしても、明日をも知れぬ命の母親に手を差し伸べようとしないのが許せない。次にその重い心臓病を患う母親、別れた妻の英子、飲み屋のホステス・マリ、母親の主治医で内科医の藤本、神の手を持つという心臓外科医曽我、さらにはやくざ者の金貸し屋片山。捨てる神あれば救う神ありとはこのことを言うのであろう。安男をして老母をポンコツ車に乗せ天才心臓外科医・曽我のいる病院まで100マイル走らせたのは、ただただ母親の命を救いたいの一心からであったに違いないにせよ、実は安男を今の境遇から立ちなおらせ、自信のある生き方を取り戻させようとする母親の最後の賭けでもあったということが最後の最後にわかり、読者は感動に心を揺さぶられ感涙にむせぶことになるのであった。If you miss the train I'm on(もしあなたが汽車に乗り遅れたら)You will know that I am gone(私は行ってしまったと思って)ピーター・ポール&マリーの「500マイル」の歌詞が終章に暗示するものは・・・。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年01月22日
昨日に続き、浅田次郎のエッセイ集「パリわずらい 江戸わずらい」から。パリわずらい 江戸わずらい [ 浅田 次郎 ]価格:615円(税込、送料無料) (2016/12/31時点)浅田次郎氏のにわかには信じ難い不思議な得意技について。「ドリームメーカー」と題して書かれていました。もともと子供のころより夢を見ぬ夜はなかったという氏、子供のころ毎夜見た夢を日記につけていて夏休みの日記の代わりにそれを提出したら、親が学校に呼び出されたというのですから、なんとも言葉に窮します。栴檀は双葉より芳し、そのころすでに物書きの片りんを見せていたということでしょうね。「長じて小説を書くようになってからは、夢に見たままをストーリーにすることしばしばである。・・・そうした具合に長らく夢と付き合っているうち、近ころではこの別世界を相当に支配できるようになった。・・・」えぇ~!そんなことできるわけがないと思うのは、凡人の悲しさ。この天才文人は、寝入りばなに「本日のテーマ」を考えるというのです。「四面楚歌の居城にて軍議中の戦国武将、浅田次郎左衛門」、「フィレンツェの街角のカフェで妙齢の美女と恋を囁く、アーサー・ダ・ジローネ」、「丸い色眼鏡と長袍(チャンパオ)、上海フランスの夜の顔役、浅大人(チェンタアレン)。その正体は日本の特殊工作員」などなど・・・。「浅田次郎左衛門」と「浅大人(チェンタアレン)」は分かります。幕末と清朝末期の中国北東部を舞台にした数々の時代小説は、夢の中でストーリーを構築した会心作だったとは驚き以外の何物でもありません。・・・浅田先生、またまたごめんなさい。現では「ハゲ、デブ、メガネのアブラオヤジ」のジローネは、夢の中ではどんな顔をして恋を囁くというのだろう?(笑!アーサー・ダ・ジローネ主役の恋愛小説、ぜひ読んでみたいです。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年01月06日
過日、といっても昨年の大晦日12月31日のことでしたが、浅田次郎のエッセイ集「パリわずらい 江戸わずらい」を紹介しました。パリわずらい 江戸わずらい [ 浅田 次郎 ]価格:615円(税込、送料無料) (2016/12/31時点)このとき「パリわずらい 江戸わずらい」というユニークな題名について、私は「わずらい」を「煩い」と解釈したのでしたが、筆者はパリと江戸の「患い」のことについて書き記していたのでした。すなわち私は浅田の「パリ」と「江戸」への並々ならぬこだわりを書いているのだと思ったのでしたが、浅田は文字どおり「患い」(病気・疾病)について思いを巡らせていた。題名にもなったエッセイ「パリわずらい 江戸わずらい」は、40篇収められたエッセイ集の中ごろ22番目に載っていた。私はこの時まだそこまで読み通していなかったので、「煩い」と「患い」を勘違いしてしまったというわけ。「パリわずらい」とは 浅田がパリに滞在すると不思議と冬なら風邪をひいて高熱を発し、夏なら腹を下して寝込んでしまうことを指し、「江戸わずらい」とは江戸時代から昭和初期まで浅田のふるさと東京で流行った風土病・"脚気"について書かれていたのでした。・・・なるほど、文庫本の題名にもなるほですから、40篇のエッセイの中でもとりわけおもしろい!私は「恋わずらい」に引っかけて、「浅田わずらい」から抜け出せないと言ったのでしたが、たとえ「煩い」が「患い」であろうが同じことです。だって「ハゲ、デブ、メガネのアブラオヤジ」に「恋煩い」しちゃうなんて、なまなかな「患い」ではないと思いませんか?(笑!・・・浅田先生、ごめんなさい!自らのことを「ハゲ、デブ、メガネのアブラオヤジ」って堂々宣言する先生って、とても好きです♡◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2017年01月05日
今手にしている本、浅田次郎著「パリわずらい 江戸わずらい」。JALの機内誌に連載されている著者のエッセイを単行本化したエッセイ集、「つばさよつばさ」、「アイム・ファイン!」 に続く第3弾になります。ユニークな題名の前半部分からは、1年の内1/3は旅をしているという無類の旅行好きを自認する筆者のことが彷彿されます。ヨーロッパを訪れるときは、行き先がどの国であれ必ずいったんパリに下りると、エッセイの中でも記していますね。後半の部分からは、ご維新ではご先祖がこっ酷い目をみたという武士の系譜をもつ東京下町生まれの江戸っ子の生い立ちがにおってきます。パリわずらい 江戸わずらい [ 浅田 次郎 ]価格:615円(税込、送料無料) (2016/12/31時点)筆者いわく、小説家は創造力を発揚して架空の話をでっちあげる「嘘つき」でなければ務まらないし、随筆家は自分の心に感ずるままを正直に書き綴る「正直者」でなければならないと。平生3本の連載小説を同時に抱えて、毎日「嘘の限り」を考えながら、その締め切りの合間に「正直者」の原稿にも追われている毎日と自ら自嘲気味にいう筆者。いったい浅田次郎の頭の中はどうなっているのだろうと思いたくなりますが、天才文人の頭の中なぞ、凡夫にわかろうはずがありません。唯一わかるのは頭の中ではなくて、外。頭髪が後退したみごとに秀でた光り輝く額ぐらいか。(笑!超多忙作家が国内外の旅先で遭遇した抱腹絶倒の出来事から、日常の身辺に起こる驚きと感動のエピソードを集めたエッセイ40篇。私の「浅田次郎わずらい」は、当面解消されそうにありません。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2016年12月31日
人気時代小説作家・上田秀人の「百万石の留守居役」シリーズは、本作で早くも第8話。副題には「参勤」と書かれていました。表紙の挿絵には、長々と続く参勤の行列を背景に脱兎のごとく駆け出して来る若き侍が凛々しく描かれていますが、これが若き「百万石の留守居役」瀬能数馬に違いありません。参勤 百万石の留守居役(八) [ 上田 秀人 ]価格:712円(税込、送料無料) (2016/12/24時点)加賀藩5代藩主前田綱紀直々の抜擢で、江戸詰め留守居役となった若き藩士・瀬能数馬。今回は若き留守居役に綱紀のお国入りの伴が命じられ、江戸から金沢を目指すことになる。今回の帰還、国元金沢で不穏な動きがあることを察知した綱紀は、12日~13日かかる旅程を10日で帰るよう数馬に命じた。中山道を追分宿から北国街道に折れ、越後高田から金沢まで北陸道を西に進む道中は、現代なら北陸新幹線が疾風のごとく走る路線に丁度重なることになりますね。しかし、金沢まで2時間半で駆け抜ける特急"かがやき"のことなど、数馬には知る由もないこと。参勤留守居役として、10日の強行軍の道中の警護、通過する諸藩との交渉、3千人にも及ぶ伴の者の宿の手配、藩主の食事、風呂の手配(藩主の食事や風呂はすべて自前でまかなった)に及ぶまで、数馬には一時も休まる暇がない。さらに道中通過する安中には、徳川譜代名門中の名門、高遠藩鳥居家の思わぬ罠が待ち受けていた。綱紀の継室をめぐる問題が、ここでも行列の行く手を遮るのであった。数馬はこの藩の窮地をどのように切り抜けようというのか?はたして若き百万石の留守居役は、綱紀の期待に応えることができるのだろうか?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2016年12月25日
皆さん当然のことながら、その土地・土地にお住まいでしょうから、お住まいの土地には愛着というものがおありでしょう。ところで、お住まいの地名についてその由来をお考えになられたことありますでしょうか?私は商売柄当然のことと言ってしまえばそれまでですが、そばについては人一倍興味があります。それでそばの歴史について調べてみると、今のように細く切られて食べられるようになったのは、江戸時代の初め頃。意外に新しい食べ物なのです。では、当時の江戸の人はどのようにそばを食べていたのかなどを調べているうちに、当時の人々の生活やものの考え方、風俗・習慣・・・といったものにまで興味を抱くようになりました。そのうちに、日本橋、両国、築地、佃島・・・などという地名、そっくり時代劇に出てくるような地名ですが、当時の江戸は世界最大の人口を誇る都市ですから、ここにもたくさんの人が住んでいて、泣いたり、笑ったり、怒ったり、・・・そしてそばを食ったりしていたのだろうなと思ってしまうのです。いづれ、ゆっくり時間をとって東京見物をしてみたいなまどと思っております。東京見物といっても、江戸の匂いが色濃く残っている街めぐりですね。・・・残念ながら、とてもそんな時間などありませんから、こんな本をめくっては、当時の江戸の匂いをかいでおります。「東京、江戸地名の由来を歩く」この中から一つ、皆さんもご存知の地名「落合」についてその由来をご紹介します。筆者は、ここで地名の文法というものに言及しております。つまり、全国に「落合」という地名があるとすれば、そこはかって必ず川と川との合流地点であり、それ以外は考えられないと。同じことがいえるのが、「追分」。これは街道と街道の分岐点につけられる地名だということです。ナルホド!言われてみればごもっとも。それで、東京、いや江戸の落合というのは、家康が引かせた人口の上水、神田上水・・・これが今の神田川だそうです・・・と妙正寺川が合流する地点、現在落合橋があるやや上流のあたりを指すということです。私など、落合といえば、ドラゴンズの落合ゼネラルマネージャーのことしか思い浮かびませんが・・・(苦笑!そんな法則が地名にもあったなんて、この本を読んで、一つ利口になりました。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2016年12月06日
あの「超高速!参勤交代」が帰ってきた。参勤交代に「超高速」はどう考えても不似合い。しかも江戸時代には使われることもなかったびっくりマーク「!」がついている。超びっくりしたのは「超高速!参勤交代」を手にしたとき。その続編となる本作には、びっくりマーク「!」どころか「リターンズ」とつけ加えてある。「超びっくり!リターンズ」したのは言うまでもありません。「はて、"りたーんず"とは?かように面妖な言葉、拙者初耳にござる」当時の武士ならきっと首を傾げたに違いないでしょう。今読んでいる本、土橋章宏著「超高速!参勤交代リターンズ」 超高速!参勤交代(リターンズ) [ 土橋章宏 ]価格:810円(税込、送料無料) (2016/11/30時点)前作でいわれなき隠し金山の疑いをかけられ、領国陸奥の国磐城から江戸まで5日の内に参勤しその証をたてよと、老中松平信祝(のぶとき)に命じられた湯長谷藩藩主内藤政醇(まさあつ)。金もない、人もいない、そして何より時間がない。そんなの絶対無理という参勤をみごと成し遂げ、信祝の鼻を明かした政醇であったが・・・。蟄居を命じられていたものの悪辣な策略をめぐらして老中に復権した信祝は、何としても湯長谷藩を潰さんと新たなる無理難題を政醇に命じたのであった。「ただちに国元へ2日で戻れ。さらには江戸城天守再建を湯長谷藩に命ずる」えぇ~!そんなの無理、無理。絶対に無理!「一同、これより飲まず、食わず、一睡も眠らずして、国元まで駆けるに駆けようぞ」「命じられていない天守再建などする必要があろうか。普請の命を伝える使者が当藩に来ていないことにするのじゃ」老中松平信祝の悪辣な無理難題に破天荒な奇策で対抗する政醇。そして政醇を支える湯長谷藩城代家老・相馬兼続以下7人衆と猿一匹の「超高速参勤交代リターンズ」はいかなる結末を迎えるのだろか。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2016年11月30日
人気時代小説作家上田秀人の新シリーズ「日雇い浪人生活録」の第2話。副題には「金の諍(いさか)い」と書かれていました。金の諍い [ 上田秀人 ]価格:691円(税込、送料無料) (2016/11/23時点)これまでの上田作品とは違い、主人公はその日その日を日雇いの仕事で糊口をしのぐ浪人・諌山左馬介(いさやまさまのすけ)。しかもこれが親の代からの素浪人だというではありませんか。第1話「金の価値」で、左馬介は夜逃げした貸し方の店の片付けの日雇い仕事に入り、そこで不審な帳面を見つけたことがそもそもの発端。先の大御所吉宗の遺言「幕政のすべてを米から金へ変えよ」を忠実に実行しようとする9代家重のお側御用取次・田沼意次。金で動く世を拓くためならと、意次に手を貸すこととなった浅草の両替商・分銅屋仁左衛門。その用心棒に雇われた左馬介。なんと左馬介が見つけた帳面には、前の金貸しの主が幕臣の要職・目付の地位にある旗本二人に貸し付けた返済の滞った貸付金の残高が記してあった。一方田沼意次らの意向を察知した江戸有数の札差・加賀屋は、経済の柱はあくまでも米でなければ商売が成り立たない。加賀屋は帳面の存在が表沙汰になっては都合が悪い二人の目付をたき付け、分銅屋をつぶそうとさまざまな手段を仕掛けるが、これを頑として跳ね除ける仁左衛門。いささか剣の腕に自信のない左馬介は、どうやって分銅屋を守ろうというのか?左馬介の繰り出す鉄扇は、暴漢の刃を見事かわすことができるのだろうか?そして当時の経済の基盤の根底を覆えしてしまおうという田沼意次の取り組みの行方は?◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2016年11月23日
日頃イライラが高じると、努めて平静を装っては入るのですが、ついつい短気の地肌が出てしまいます。「バカやろう!」禁句が飛び出してしまうのです。・・・深く深く反省しているところです。しかし、覆水盆にかえらずの例えをあらためて知らされるだけ。むなしくうなだれるのみです。そこでこんな本を買い求めてみました。ストレスの捌け口になるのではないかと思いましてね。。。全国アホ・バカ分布考 [ 松本修 ]価格:853円(税込、送料無料) (2016/11/17時点)所違えば、ことばが違う。当然のことながら、アホとバカの境界線は何処にあるのか・・・皆さんも知りたいと思いませんか?関東では、バカ。関西ではアホ。じゃぁ~、名古屋じゃなんて言うの?私は学生時代名古屋に4年住んでおりましたので、必死に思い出そうとしているのですが、どういったかな?バカとも言うし、アホとも言ったような・・・タワケ!とも言いませんでした?「タワケたこと申すでにゃ~わ!」「申す」と謙譲語を使ったりするのですよね。特にご年配の方などは。。。東京なら、「バカなこと言うもんじゃない!」大阪なら「あんさん、アホかいな!」だいたいこんな感じでしょうか?ちなみに、当地富山では、「なにダラんこというとんがい!」(なにバカなこと言っているんだ)・・・・ほんとうに『ダラなこと』言っております。しかし、ご紹介した本は、大変マジメで、この国の言語について、地域の風土・文化にまで、深く掘り下げて書かれております。ご一読を。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2016年11月17日
少々古い話で恐縮ですが、こんな人気クイズ番組がありましたね。「クイズ、タァ~イムショック!」と児玉清が言うと、時計の秒針がコチコチと動き出し、次々に問題が出題されていくというクイズ番組。この「ショック」という言葉を私たちは日常何気なく使用していますが、本来の意味は「血圧が下がり、生命の危険がある状態」を指すときに使用する医療言葉なんだそうです。ご存知でしたか?「えぇ~!ホント!?知らなかった!ショック!!」と思わず口走った方多いと思いますが、皆さん別段生命に危険のある状態ではありませんよね。国立国語研究所が表した「病院の言葉を分かりやすく 工夫の提案」という一風変わった本をのぞき見してみたら、これが結構面白い。全国の医療関係者からも注文が殺到しているということです。病院の言葉を分かりやすく [ 国立国語研究所 ]価格:2160円(税込、送料無料) (2016/11/9時点)それでは私たちが普段耳にする医療言葉を具体的に見ていきましょう。まず「腫瘍」。お医者さんにかかり、先生から「ちょっと腫瘍がありますから、念のため検査しておきましょう」なんて言われたら、それこそ「ショック」でへこんじゃいますが、この「腫瘍」という言葉、本来は単に「細胞が異常に増えてかたまりになったもの」を指すだけなのだそうです。ところが言われた方は大変です。「先生!本当のことを言ってください。がんなんですか!?」になっちゃう。次に「頓服(とんぷく)」少々ご年配の世代であるならなお更そうでしょうが、これって「熱冷まし」のことだと何の疑いもなくそう思い込んでいますよね。実は、「症状が出たときに薬を飲むこと」なんだそうで、だから胃薬を飲んでも頓服。医者から「胃腸がちょっと弱ってますから、消化薬頓服しましょう」なんて言われたら、私なんかだったら、「・・・!?!?」となって、それこそ熱が出ちゃいそうです。「先生、頓服を頓服してください。。。」になっちゃう。(笑!最後は、「メタボリックシンドローム」。最近は本当に「メタボ」「メタボ」ってうるさいことです。実のところこの言葉には、私も非常に身につまされるものがありまして。思わず息を吸い込んで腹を引っ込めてみたりして。(苦笑!でも本来の意味は思っている以上に医学的に重篤な体の状態を指す言葉なのです。「内臓に脂肪がたまることにより、様々な病気をひき起こしてしまう状態」・・・ショック! (笑!せめて毎日散歩でもして、「ショック」なんて誤った使い方をしなくてもいいように努力したいものだと思います。・・・あっ、今「散歩」と言いましたが、実はこの「散歩」も元は医療言葉だったてことご存知でしょうか。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**
2016年11月09日
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