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2024.01.24
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テーマ: 読書(8283)
カテゴリ: 本日読了
2024/01/24/水曜日/空気は冷えて大寒





〈DATA〉
出版社 毎日新聞出版
著者  梨木香歩

2023年9月15日  印刷
2023年9月30日  発行


毎日新聞連載 202006〜202303掲載


〈私的読書メーター〉 毎日新聞連載のエッセイ集。2020年6月から2023年3月までを収録。大学卒業後に英国留学した後『西の魔女が死んだ』でデビューして以来、この方の持ち味が一貫している様に驚きつつ敬愛の念が湧く。認知症を患う母を施設から引き取り、古い自宅を処分した上で家族と交互に看護している九州の実家、その近在の山荘、高度1700mの八ヶ岳の山荘、かつて暮らした琵琶湖の見える住まい、東京の自宅などを鳥のように渡りながら、カラやアカショウビン、シカやヒメネズミ、キノコや樹木、草花との交歓を記す。湯たんぽの結びの文が秀逸。〉


さて、その秀逸な文末が掲載されていたのが
「秋は悲しき」

なぜ湯たんぽを英国の人はホットウォーターボトルというのか。それはどう見てもゴムバックであるのに、と彼女はいう。

二十代で暮らした英国の下宿女主人は、寒い夜には梨木さんにも夜の儀式のよう湯を入れ、カバーを掛けて手渡した。

大荷物になるに関わらず旅先にも梨木さんの分まで携行する。

思えば40年以上、その疑問を抱えて生きて来た、旅して来たといえる彼女の境涯である。

なぜバッグでなくてボトルか。おまじないを唱えながら湯たんぽを手渡してくれた夫人ももうとうに草葉の影に横たわる。

その由来がとうとう判然とする。

「長い間持ち続けてすっかり血肉になったような、昔馴染みの疑問に、 墓標が立った思いでいる。 寂しい、けれど決着を見届けた安堵、とでもいうような。」

墓標が立った思い。
そう言える疑問を携え続けることの重さと長さ

え、たかが湯たんぽだって⁈

なんで(どんな理由で)泣いたか、ではなく、どれだけ泣いたか、それが決定的に重要だと 『飛ぶ教室』 の長い前書きで ケストナー も言っているではないか。


彼女がこの世を去って、件の夫人と再会したならば、必ずやその話題に花を咲かせることだろう。

そんなお土産話を携え、あの世に渡れる仕合せをしみじみ寿ぐ。





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最終更新日  2024.01.24 12:58:55
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