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2009.02.08
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冬の移籍市場がクローズされた。最後は駆け込み的に幾つもの移籍が成立し大物選手も数多く動くなど、世界に暗い影を落とす金融危機も無縁のような錯覚に陥ってしまいそうであった。だがリーグ別にその影響は如実に表れている。イタリアメディアの試算によれば、今冬のセリエAにおける移籍に際して支払われた移籍金は前年比約43%減の約33億円であるという。スペインではレアルがフンテラールとディアッラの2人に対して約52億円を支出したが、これはバルセロナの独走と怪我人の多さなどチーム事情によるところも大きい。レアル以外で言えばベティスがRオリベイラを復帰させたが、残りのクラブはほとんどが懐具合も考慮して現状維持を選んでいる。翻ってプレミアリーグは移籍が活発であった。プレミア全体で支払われた移籍金は約212億円であり、昨年と比較しても約13億円増という数字になっている。ここまで膨れ上がった理由の1つは間違いなくシティの存在が大きく影響している。ブリッジ、ベラミー、デヨング、ギブンと各国代表クラスの選手を次々に獲得し、シティが湯水のように支払った移籍金は述べ約66億円。この数字はプレミアリーグ史上最高額であり、スペイン全体の数字をも上回っているという。バックにオイルマネーが付いているとはいえ、世相を逆行するような市場での動きは当然多くの反発を招き、デヨングに関しては半年待てば6分の1の移籍金で獲得できたことから皮肉を言われたりもしている。そのシティに肉薄する動きを見せたのがトットナムである。デフォー、キーンというかつての2トップだけでなくシンボンダやパラシオス、クディチーニとプレミア経験者や元古巣の選手を獲得し、現状を打破すべく即効性を持たせた補強戦略で約60億円を投資した。だが両クラブ以外の移籍を見ると同じプレミア間の移籍がほとんどであり、またそのほとんどがローン移籍であることから、完全移籍させるだけの経済的余裕がないことが窺える。だが一方でシティやトットナムから出る移籍金が海外に出回らず国内で流通していることに関しては「金は天下の回りもの」ではないがポジティブに捉えても良い部分ではないだろうか。ところで、プレミア間移籍がこれだけ活発な原因として経済的側面だけが大きく影響しているわけではない。もちろん先に述べた金融危機やポンドの対ユーロ下落による選手輸入のデメリットも影響はしているが、未曾有の大混戦となっている残留争いもこの事に関して決して無関係ではない。現在最下位のWBAの勝点は22であるが、9位フルアムの勝点が29と下位12クラブが勝点差7の間でひしめいているわけだ。さらに細かく言えば14位トットナムが勝点24、そして12位ボルトンが勝点27と、試合数にばらつきがあるとはいえ1試合の勝敗で順位が大きく入れ替わる可能性がかなり高くなっているのである。そうなると首脳陣は他と差別化を図るべく、また弱点を埋めるべく補強を考えるというもの。しかしクラブの金庫に余裕は少ない。ならば最低限のノルマである残留という結果に向けて今シーズンまでのローンで選手を獲得することが唯一の手段となってくる。そして選手を獲得しても時間をかけてチームに馴染ませるという悠長なことは言ってられない順位表であるがゆえ、海外クラブより少しでもその水を知っているプレミア所属選手がターゲットになってくる。これは直接のライバルから選手を引き抜く意味でもあり、今冬は特に活発な動きが見られた。シーズン終了まで残り3ヶ月強。夏にこの冬を後悔しなければならないのはどのクラブなのであろうか。ほな、また。
2009.02.07
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1月25日、ホッフェンハイムが新スタジアムとなるライン・ネッカー・アレーナのお披露目を行った。1年5ヶ月を経て完成したスタジアムの落成式にはオーナーのディトマール・ホップをはじめ多数の支援者が集まった。その中でホップはこう挨拶した。「今日はクラブの歴史上で偉大な1日になった。 この素晴らしいスタジアムを誇りに思い、完成をとても嬉しく思っている。 私の夢はクラブの奇跡がこのスタジアムでも続いてくれることだ。 そして今後も長い間、このスタジアムでブンデスリーガの試合を見れると願っている」少年時代にホッフェンハイムでのプレー経験もあるホップは、32歳のときに興したソフトウェア会社が当たり億万長者になった。その後企業の一線から退いた際に「地元に恩返しがしたい」と病院や学校に援助をするようになり、ホッフェンハイムへの支援もその1つだった。だが最初はボール代だけだったのが、徐々にサッカークラブの経営にのめりこんでいき、ついにはクラブを買い取り、ブンデスリーガへの挑戦を目指すことになった。会社を興し成功させた実績は、サッカークラブでも同じであった。優秀なスタッフを揃えると同時に若手育成のための下部組織の強化も怠らず、クラブの顔ともいうべき監督には“教授”のニックネームで通るラングニックを招聘するなど、明確なビジョンと長期的なスパンでのクラブ強化は次第に実を結んでいった。結果、20年前には8部リーグに所属していたホッフェンハイムは今シーズン、見事にブンデスリーガ昇格を果たすことに成功した。ホッフェンハイムの基本戦術はゾーンプレスによる全員守備、そしてボールを奪った後の素早いカウンターである。だがこのカウンターのスピードが半端ではない。バイエルンさえも手を焼くスピードは、ラングニックの教えを選手全員が共通認識し、お互いがお互いを知り尽くしているからこそ噛み合っているものだと言えるだろう。1試合平均2,47得点はもちろんながら、下位との対決を8勝1分で終えたこと、つまり取りこぼしなく勝つべきチームに確実に勝ったことが、前半戦を首位で折り返した最大の要因ではないだろうか。皮肉屋は「強豪チームの不甲斐無さに助けられた」「(得点源の)イビセビッチの離脱(今シーズン絶望)で成績も下がるだろう」と出る杭を打とうとするが、例えそれが正しい意見でも個人的には異を唱えたい。ウィンターブレイクが明けた最初の試合。新スタジアムにコトブスを迎えた一戦は、イビセビッチの代役を期待しローンで獲得したサノゴの得点もあり、2対0で勝利を収めた。シーズンは後半戦が始まったばかりだが、カウンターのスピードのごとく勢いを持続したまま最後まで走りきるホッフェンハイムを見てみたいのはぼくだけではないはずだ。ホッフェンハイムの奇跡が続くことを願ってやまない。ほな、また。
2009.02.03
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フンテラール、ディアッラと今冬の移籍市場で獲得したレアル・マドリー。残された補強箇所は右サイドだけだったが、その結果は意外な選手だったと言えるだろう。移籍期限間際で獲得したフォベールは現在25歳。2007年夏にフランスのオゼールからウェストハムに移籍したものの、シーズン前の練習試合でアキレス腱を断裂するなどプレミアにおいて目立った成績は残せなかった。しかしフランス代表ドメネク監督は、代表初招集時に彼に背番号10を与えるなど才能を高く評価していた。そしてレアルのラモス監督も表現は悪いながらも「(右サイドバックもウィンガーもこなせる)使い勝手の良い選手」と大きな期待を寄せている。フォベールの獲得を意外と感じたのは、当初から噂に挙がっていたのが彼ではなかったからだ。もちろんフォベールという名前自体にも疑問を持ったものの、メディアの間ではウィガンのエクアドル代表バレンシアが最有力という声が大きかった。どうやらラモスの第一候補は噂どおりバレンシアだったらしい。しかし移籍金の面で約14億円を上限とするレアルと約21億円を希望したウィガンとの間で折り合いが付かず、結果交渉は決裂。そして約2億3千万円の半年ローン(買取オプションはプラス約7億円)という安価で獲得できることでフォベールにターゲットを変更したというのが真相のようだ。ただバレンシア本人はレアル移籍を希望するコメントを残していただけに、もしかしたらフォベールとの交渉の噂が耳に入っていたのかもしれない。そしてその交渉の詳細やレアルの現状を考慮して、ここはウィガンに留まるほうがベターだと考えたのかもしれない。では交渉の詳細やレアルの現状とは一体何なのか。まずはフォベールが半年契約だということ。その後の買取オプションはあるものの、フォベールの結果如何では、自身をより高く再評価してもらえる可能性があるということだ。これはウィガン、バレンシア共に同じことが言え、また結果を残しづらい冬に移籍するよりも、キャンプからチームに合流できる夏の移籍のほうが両者得策であると考えても不思議ではない。それよりもレアルが今夏に会長選挙を控えることのほうが、すぐの移籍を躊躇させた大きな理由ではないだろうか。以前にも述べたが、レアルの会長はソシオの投票によって決められる。会長選に立候補した人物の公約がソシオの会長を選ぶ上での判断基準になるのだが、別の言い方をすればその当選した会長によってチーム作りが大きく変わってくるのである。そう考えるとフォベールの活躍に関わらず、バレンシアにとっては自分の置けるポジションがない場合も出てくるのである。例えば噂どおりペレスがCロナウド獲得を公約に掲げ当選し、実際に連れてきたとしよう。間違いなく右サイドのファーストチョイスはロナウドになるのではないだろうか。そしてフォベールもラモスの信任を得た場合、バレンシアのポジションはもはや存在しない。また獲得を熱望していたラモス自身がすでにレアルからいなくなっている場合も考えられる。そうなると新監督によってはポジションこそあれど出場機会を得られない可能性だって考えられる。可能性はゼロではない。ただ現状、あまりにも先行きが不透明すぎる。ならば「もし」を使うことで「あの時移籍を決めていれば」と過去を後悔するようなことになったとしても、「タイミングじゃなかった。仕方がない」とサッパリ諦められるぐらいの心情が、バレンシアの今の本心なのではないだろうか。ほな、また。
2009.02.03
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毎年この季節あたりになるとイタリアから聞こえてくるのが、ネドベドの去就に関する噂である。一般には少し受け入れがたい、言い換えれば玄人好みする選手ではあるが、その体力と精神力はサッカー界では十二分に認知されており、彼を欲しがらないクラブや監督などまず存在しないのではないだろうか。ただしそこには注意書きがつく。ネドベドが20代後半から30代前半ならば。ネドベドもすでに36歳である。当然年齢には勝てず、プレースタイルからくる勤続疲労からか怪我がちであり、治りも以前に比べれば当然遅くなっていることだろう。クラブにとって厄介なのは、そんなネドベドが今後の意志を明言しないところである。何も彼をお払い箱にしようとは考えていない。これまでの一選手としての、そしてユベントスに貢献したキャリアを考えれば、仮に引退するなら盛大に送り出したいというのがクラブの本音であろう。その一方で、彼の空いたポジションを埋める作業も同時進行で考えなければならない。だがネドベドが去就を明確にしない今、果たして後継者を決めることが彼のプライドを傷つけることにはならないだろうか。それによって彼の引退を早めることにはならないだろうか。その反対に、当然その後継者は前任と同レベルの選手でなくてはならず、その選定には注意深く臨まなければならない。そうなるとクラブは先行きが不透明なまま、砂漠の中から飴玉を見つけ出すような苦しい任務を遂行しなければならない状況であると言えよう。クラブは1つの打開策として先手を打った。ネドベドに対して2つの選択肢を用意したのだ。1つは今シーズンで引退し、クラブのユースチームのコーチに就任する案、もう1つは来シーズンも契約するが、出場試合数に応じた給与が支払われるという案だ。将来手形を見せて敬意を示しつつ、ネドベド後へシフトチェンジしたいクラブの本心がこのあたりにも見え隠れするが、これはネドベドにとっても悪い話ではない。去就を決断できない理由が心と体のバランスであることを本人が一番分かっているからだ。もっとプレーしたい気持ちと同様に、中途半端な気持ちと体ではプレーしたくない。ネドベドとはそういう選手であり、仮にプレーするならシーズンを通してプレーしなければ意味がないとも思っているはずである。そういう意味では当然というべきか、クラブからの提示されたオファーの後者をネドベドは拒否した。そして彼の代理人は続けて「引退かどうかはコンディション次第だ。ただ彼は子供が好きだし、誰かに何かを教えることも好きなんだ」と述べている。3部に相当するセリエC1のランチャーノがネドベド獲得の意思を表明し、カイトやモドリッチといった名前が次々と後継者候補に噂されるなど、事態は収拾の欠片さえ見えない。全てはネドベドの決断次第である。ほな、また。
2009.01.31
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イングランドFA杯4回戦リバプール対エバートンのマージーサイド・ダービーは1対1の引き分けに終わった。1週間前のリーグ戦と合わせて2連戦となった両雄の激突だったが、2戦とも1対1の引き分けに終わり、FA杯の結果によって2月4日には再試合が行われることも決定した。これで次がシーズン4度目の対戦となり、ファンならずとも再試合が今から待ちきれない気持ちで一杯だろう。先にも書いたように2戦とも1対1の引き分けに終わったこの2連戦だが、内容及び結果は現在の両者のチーム状況を明確に反映し、かつ対照的であったといえるのではないだろうか。まずリバプール。2戦共に得点を奪ったのは大黒柱のジェラードであった。決定的なシーンを迎えたり、2戦目の華麗なヒールでのアシストなどトーレスの活躍も大きいが、それでもジェラードの存在はリバプールにとって間違いなく欠かせない。まさにジェラード頼みである。逆に言えばジェラードを消すことさえ出来れば、リバプールの恐さは半減する可能性もあると言えるのではないだろうか。もちろんそれを実行に移すだけの戦力が必要にもなってくるが、リバプールの出方次第ではそれも可能になる。現在リバプールは2トップと1トップを併用する形を採用している。2戦目はトーレスの1トップにジェラードのトップ下という布陣であったが、前線にスペースがあることでトーレスのスピードを活かした攻撃やジェラードの飛び出しなど、エバートンの守備を何度も混乱に陥れさせた。一方で1戦目で採ったキーンとトーレスの2トップはまだまだ機能しているとは言いがたく、なによりキーンが攻撃の足を引っ張っている感さえ漂っている。また彼ら2人が前線にいることでジェラードのポジションがややゴールより遠くなることで、その分ボールに絡むポジションも1トップのそれに比べても遠くなってしまっている。もちろん左サイドにリエラを配するなど修正は可能であるが、ベニテスが送り出すスタメンによっては、ジェラードの相手に与える威圧感はそれなりに変わってしまうのである。一方のエバートンは2戦ともセットプレーから得点を奪った。両者の攻撃力を単純比較してもリバプールに優位なだけでなく、それ以上にFWに怪我人が続出し最前線にケーヒルを置かざるを得ない現状ではそれも仕方のないことではある。しかし、それでもセットプレーから得点を奪った自信はエバートンにとって大きい。「相手守備はケーヒルに手を焼いている」「相手はセットプレーの守備に難がある」と彼らが思えば、それを手に入れるための戦術を必ず採用してくるであろう。そしてここ数試合の結果を見てもエバートンは守備に自信を持っている。「相手の攻撃を体を張って防ぎ、ワンチャンスにかける」チームにこのような意思疎通が出来上がれば、戦術はかなり明確になる。2戦目の残り30分の攻防を見てもそれは明らかではないだろうか。そしてこの2連戦、エバートンのフェライーニは出場停止によりピッチに立つことが出来なかった。だが彼の出場によって攻撃時ゴール前での高さというオプションが増えるだけでなく、守備における潰しの効果も期待出来ることから戦術遂行成功度は確実に上がるはずである。ただエバートンにネガティブな要素もなくはない。リバプールとの2連戦後はアーセナル(1対1の引き分け)、我がユナイテッドと上位との2連戦を挟み再試合のリバプール戦を迎える。選手層の薄い中で気の抜けない試合が続くことで、再試合を迎えるにあたって体力や集中力の疲労度がどこまで進行しているかが心配なところである。ところがリバプールはウィガン戦(1対1の引き分け)後にチェルシーとの大一番が待っている。ホームで戦うとはいえ2位3位を争う直接のライバルだけにベクトルを再試合に合わせることは絶対に出来ない。そしてチェルシー戦で使った体力や集中力を回復する時間なくグッディソンに乗り込まなければならず、そう考えるとエバートンのネガティブな要素はリバプールにとっても同様であるといえる。1戦目は選手交代を含めて逃げ切りを図りながら勝てず、2戦目は同点に追いついて以降、終始攻めながらも勝ち越せなかったリバプール。2試合とも引き分けながらリバプールは落胆で試合を終え、逆にエバートンにはチーム内に自信が残った。今週末の結果にもよるだろうが、再試合に向けて勢いを持って臨めるのはエバートンである。ほな、また。
2009.01.29
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思ったよりも大きくメディアに取り上げられた、我がユナイテッドのスポンサー騒動。その理由として、当のスポンサーがAIGであったことがまず挙げられる。これが仮に他の企業であれば、ここまで大きく取り上げられることはなかっただろう。そもそもスポンサーの交代は日常茶飯事とはいかないまでも、契約が終了すれば必ず訪れることである。リバプールにおけるカールスバーグなどのように例外こそあるものの、半永久的にスポンサーであり続けることの方が稀である。ただ今回はAIGがスポンサーだったこともあって、世界中を揺るがす金融危機と結び付けることで、「不況の波がここまで押し寄せている」と、いかにも大事件のように扱われてしまったわけだ。確かにAIGは現在の金融危機の発端となったサブプライム問題の影響による被害が最初に表面化したわけで、不況の象徴でもある企業と言えなくもない。しかしこれもユナイテッドからすれば危機が表面化した段階で何らかの対策が協議されているはずであるし、契約は来シーズン一杯ということで、それが1年前倒しされたと考えればクラブにそれほどの影響はないのではないだろうか。現にすでに中東やインド方面の企業とスポンサーに関する話し合いが行われているようであり、その額はAIGのそれを大きく上回るとも言われている。契約当初こそ予期できなかった事態でこそあるものの、急な撤退ではなく、危機が表面化した段階であらかじめ予想はついただけに被害は決して大きくはならないであろう。もしAIGが地方のマイナークラブのスポンサーで、契約途中でそれを降りることを決めたら、ここまでの扱いになっていただろうか。答えはNOだろう。ユナイテッドはチャンピオンズリーグを制覇し、クラブ・ワールドカップで来日も果たし、Cロナウドという多くの意味でメディアには絶好のターゲットとなる選手もいる。ただでさえ世界の注目を集め、1試合1勝敗がメディアやファンの視線を釘付けにしている。もちろん他のビッグクラブもユナイテッド同様の注目を集めてはいるものの、直近の結果を残しているクラブはユナイテッドであり、注目度はわずかながら他よりも集めやすい。極論すれば、現在世界一の称号を持つのはユナイテッドであり、そのスポンサーが金融危機の象徴となった企業であった。そしてそのスポンサーが経営再建のため、来シーズンまでとなっている契約を延長しない、もしかしたら契約見直しの可能性さえあるというのが今回の出来事である。AIGに限らず、そしてユナイテッドに限らず、スポンサー交代というのはどこのクラブにも起こりうる。そして現状を鑑みれば、遅かれ早かれスポンサーの撤退は深刻な問題としてサッカー界にも影響を与えてくるだろう。ただし今回はクラブ、スポンサーともにノーマルな状態ではなかったことが、さも大問題であるかのように取り上げられてしまった要因である。ほな、また。
2009.01.25
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詐欺で裁判中の小室哲哉被告は自身の犯行について「虚構の暴走列車」と例えたらしい。レアル・マドリーのカルデロン会長が辞任して1週間が経過した。先月の総会において、投票権のない人間を動員して自身に有利な投票を指示した疑いが持たれ、「私は何もしていない。潔白だ。だが取締役員たちの希望に沿って」辞任したのだが、別に潔白ならば辞任する必要性はどこにもないのではないだろうか。むしろ後半部分にある周囲からの圧力が職を離れる決意にまで至らしめたと思われる。同じく先月だったか、カンテラの最高責任者がカルデロンの「うち(レアル)のカンテラはバルセロナのそれに比べて良い選手が育っていない」という発言に抗議して辞任した。カンテラを育ててもトップが大金をはたいて選手を他から買い、出場機会の得られない選手は他クラブへ移籍を余儀なくされる現状を考えれば、抗議の意志は当然だ。実際、現在のリーガを見るとレアルのカンテラ育ちという選手は数多い。そして他クラブでは主力として活躍している。つまりはそれだけの才能を持った選手がレアルのカンテラには揃っているわけであり、カルデロンのカンテラ軽視発言に誰しも同意することは出来ない。話は逸れたが、現在の会長は2006年から副会長をだったボルーデが代行として務めている。ここでレアルに限らずスペインと他国と違うところは、スペインではソシオの投票でクラブに関する様々な案件が決議されることだ。イングランドやイタリアであれば株主交代やオーナーの意向で会長が決まり、ファンの入る余地はない。だがスペインはそうではない。会長になりたい人物は公約を掲げて会長選に立候補し、ソシオが「この会長ならよりクラブを強くしてくれる」と思った立候補者に一票を投じるのである。これは政治家の選挙と何ら変わらない。そしてもちろんながら公約の是非、実行力、経験、そしてもちろん選挙を戦う上での軍資金などが必要であり、自ずと名乗りを挙げる人物も限られてくる。今年夏に会長選は行われる予定だが、現在立候補するのではないかと言われているのが元会長ペレスである。『ジダネス&パボネス』と呼ばれた外から獲得したスター選手とカンテラ出身の選手を組み合わせてチーム強化を図ろうとした公約は、当選時大いに賞賛されたが、フィーゴ、ジダン、ロナウド、ベッカムと次々にスターを獲得し“銀河系”と呼ばれたのは対照的に、目先の結果を求めるあまり、そして獲得したスターをベンチに置いておくわけにもいかず、さらにはこれまでの貢献を無視してデル・ボスケやイエロをあっさりとクビにするなどしたことでファンの心は離れていき、バルセロナの好調とも重なったことで3シーズン連続無冠に終わった責任を取り2006年2月、ペレスは辞任した。ペレス本人は立候補の意思は表示しておらず、メディアを主とした周囲の噂にしか過ぎないが、就任の公約としてアーセナルのセスクとヴェンゲルの獲得を目論んでいるようである。度々噂にも挙がっているが、もちろんアーセナルは両者共に手放さないだろう。だが前回就任時にはバルセロナからフィーゴを獲得し周囲を驚かした過去を持つ。不可能と思われる補強も前科があるだけに断言は出来ない。浮いては消える我がユナイテッドのロナウド、そしてチャンピオンズリーグ出場という舞台と金銭的欲求さえ満たされればミランのカカもアンタッチャブルではなくなった。「白い暴走列車」が虚構であることを願ってやまない。ほな、また。
2009.01.23
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詐欺で裁判中の小室哲哉被告は自身の犯行について「虚構の暴走列車」と例えたらしい。レアル・マドリーがスポーツ仲裁裁判所(CAS)にUEFAを訴えた。この冬の移籍市場でアヤックスからフンテラールを、ポーツマスからディアッラそれぞれ獲得したレアルだが、当然のように戦力として2月に再開されるチャンピオンズリーグの追加選手として登録しようとした。だがUEFAの規定では3人までの追加は認められているものの、同じシーズンにUEFAの冠する大会に出場した選手は1人しか追加が認められていない。よって通常であればフンテラールかディアッラの二者択一に迫られるわけなのだが、レアルはこれを不服としたのである。新しく定められた規定でもなければ、頻繁に起こっている問題でもないのに、なぜ今回に限ってレアルは訴えを起こしたのか。それはレアルが、というよりも補強に関する権限を持つミヤトビッチがこの規定を知らなかったから。もし知っていれば、それも踏まえて補強戦略を練るはずである。というか他のクラブならそれは当然の思考である。だがバルセロナに大差を付けられ、シュスターの解任などでチームが不安定だったことも影響したのだろう。フンテラールが12月中に、ディアッラも1月頭にはレアル加入が決定していた。もちろんミヤトビッチの認識不足が一番の原因だが、首脳陣に生まれていた焦りが初歩的なミスを誘発したといえなくもない。もしも今回の上訴が認められれば規定の1人が無制限になるだけでなく、根本である3人までという取り決めさえも有名無実化してしまう。極端な話をすれば、1月を境にして前と後で同じクラブ名でもスタメンが全員入れ替わっている可能性も生まれてくる。現実的には不可能だが、どこかで線を引かないと収拾はつかず、シーズンを通した戦いである以上、最小限の追加しか認めてはいけない。おそらくレアルの訴えは却下されるだろうし、されなければならない。そして自らの初歩的なミスをUEFAになすりつけようとするような愚行を決して許してはならない。ほな、また。
2009.01.23
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ウィガン戦に勝利し、首位リバプールとの勝点差を2に縮めた我がユナイテッド。早速ベニテス監督に口撃し心理戦を仕掛けるなど本性を現し始めたファーガソンだが、その百戦錬磨の狡猾さを見ていると、彼の頭の中は一体どのようになっているのか詳しく調べてみたくなったりもする。ただその裏にはチームへの不安要素を消したいという目論みも見え隠れする。ウィガン戦では得点を決めたルーニーがハムストリングを痛め約3週間の離脱が決まった。そしてその前のチェルシー戦でも復帰試合となったエブラが足の裏を痛めこれまた約3週間、またファーディナンドは背中の痛みが再発し、完全に治すか、それとも騙し騙しでシーズンを乗り切るか決断に迫られている。幸いハーグリーブスを除けば他に怪我人はなく、この選手層である程度は乗り切れるであろう。それでもここで油断すると最後に泣くのが誰なのかをファーガソンは経験し、知っている。ルーニー離脱の間、そのポジションにはテベスが入るであろう。ベルバトフの加入で出場機会が激減し移籍の噂も絶えないテベスだが、ファンとしては絶対残留を望んでいる。だがルーニー&テベスやルーニー&ベルバトフのコンビに比べると、テベス&ベルバトフのコンビが機能しているという印象はほとんどない。コンビ自体を組んだ試合が少ないこともあるだろうが、ウィガン戦でもその印象を覆すようなコンビネーションはほぼ皆無であった。ファーガソンもテベスの能力は認めているだろうが、全幅の信頼を寄せているわけではない。それは今シーズンで切れるテベスとの契約延長のオファーを行っていないことからもそれが窺える。もし必要と考えているなら既に交渉は成立しているはずである。つまりは何らかの不満、あるいは不安をファーガソンは持っており、ベルバトフで事足りる、もしくはシーズンオフにテベスに代わる選手を引っ張ってくる、そんな構想を持っているのではないだろうか。今シーズンで契約の切れるギグスも、未だクラブから契約延長のオファーは届いていない。テベスと違い年齢的な面やクラブ一筋という経歴を考えると他のビッグクラブへの移籍などという心配はなく、契約終了=引退という道筋が妥当であり、その現実が訪れそれを受け入れる時間が必要なだけなのだが、チェルシー戦を見る限り、まだまだ後数年は一線で活躍できるだけのプレーを示したギグスに対し、クラブの発展に貢献した功労者という点で、ユナイテッドの配慮がいささか欠けているように思ってしまう。ここで頭をよぎるのは、ファーガソンの監督としての先がもう長くないということだ。これまでも何度も引退が頭をよぎったと言うが、それでもここまで監督を続けてこれたのは年齢を感じさせない情熱があったからだ。だがそれでも自身の年齢やクラブの今後を考えると、引き際を考え始めていてもおかしくはない。昨年1月、当時17歳のファビオとラファエルのダ・シウバ兄弟をフルミネンセから獲得し、今年1月にはパルチザンから21歳のトシッチを獲得した。ここ最近の補強状況を見ているとナニ、アンデルソンなど将来性の若手選手獲得の多さが目に付く。そして今シーズンはカーリング杯はもちろん、リーグ戦においてもウェルベックやギブソンなどのユース上がりの選手などの起用がこれまでに比べ多いように感じる。もちろんベルバトフやハーグリーブスの獲得は既存の競争意識を高め短期的な戦力アップを狙った補強であるが、若手の獲得や起用はいずれ訪れるであろう“ファーガソン後”を考えたものではないだろうか。今シーズンを考えた短期的、そして自身が離れた後を考え長期的な描く青写真。ファーガソンの頭の中には一体どのように描かれているのだろうか。ほな、また。
2009.01.16
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まるで数年来そこでプレーしているように、アマウリはユベントスにフィットしている。デルピエロとの連携も問題なく、彼の好調も手伝って良い意味で自由にプレー出来ているのではないだろうか。クラブには怪我で戦列を離れているトレゼゲという昨シーズンまでの正FWもいるが、その存在感さえ消してしまうほどアマウリはユベントスに欠かせない選手となっている。何もアマウリ賛美を語りたいのではない。言い方は悪いが個人的にユベントスファンではないし、この活躍を前々から予想していたわけでもない。ただ、ここまで好調を維持していると注目しないわけにはいかず、それは素人だけではなく関係者も同様である。ブラジル国籍のアマウリだが、ブラジル代表歴は過去一度もない。そして現在はイタリアに住んでおり、奥さんがイタリア人ということでイタリアのパスポートも所有している。つまりは二重国籍である。そうなるとリッピ・イタリア代表監督、ドゥンガ・ブラジル代表監督共にアマウリを代表に招集したいと考えても不思議ではない。両国とも前線に優れた選手を揃えてはいるものの、だから旬の選手でも必要ないという結論には至らない。アマウリがどちらかを選ぶなら、彼らは喜んで代表招集枠にアマウリの名を付け加えるだろう。しかしながら、そのアマウリ自身が態度をはっきりさせていない。いや、もしかしたら既に心の中ではどちらの招集に応じるか決断を下しているかもしれない。ただマスコミに対しては「どちらかの代表から正式な招集があれば決定を下し、態度をはっきりさせる」と語り、それまでは一切のコメントを残さないとしている。そう語った以後もメディアでは噂が噂を呼んでいるが、それも当然だ。アマウリが語らない以上メディアは推測で語るしかなく、それが自国代表のエースFW候補とあれば尚更である。もしも自身の中で決断が下されているのなら、それを周囲に伝えたほうが噂話は消えうせ、類の煩わしさから解消されると思うのはぼくだけだろうか。もちろん決断の理由や今後の在り方など別の注目を集めることにはなるのだが、デタラメの噂でまとわりつかれるよりは、決断を公表することで後はサッカー協会に身を委ねたほうが自身のプレーにも集中できるのではないだろうか。まぁそうは言っても決めるのはアマウリ自身だ。今年最初の親善試合は2月10日、エミレーツ・スタジアムで行われるイタリア対ブラジル戦だ。ロンドンのピッチでアマウリが着るシャツの色は“アズーリ”なのか、それとも“セレソン”なのか。『答えはピッチの中にある』ほな、また。
2009.01.12
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昨日の対ニューカッスル戦。オーウェンに先制ゴールを許しながらもベラミー、コールのゴールで1度は勝ち越したウェストハムだったが、結局は追いつかれ2対2の引き分けに終わった。試合後のゾラ監督は、「勝利してもおかしくなかった。相手は最後まで引き分けを狙っていた」と勝点3が取れなかったことに落胆していた。しかしゾラにとって今後3週間は、今回以上の落胆が次々と襲い掛かることになるかもしれない。承知のとおり未曾有の世界恐慌はサッカー界にも影響を与えている。そしてプレミアにおいてその影響を一番受けているのがウェストハムである。胸スポンサーの倒産による収入の減少に加え、アイスランド人オーナーの所有していた銀行が国有化され資産の減少以上に破産の恐れさえあるといわれている。付け加えてテベス及びマスチェラーノとの契約に絡んだシェフィールドによる告訴が裁判所によって認められ、ウェストハムに命じられた賠償金はなんと43億円にも上っている。クラブ売却案も現実味を帯びてはいるものの、先の賠償金がネックになっており交渉が進展しているという事実は今のところ表沙汰になっていない。さらに安売りはしないというオーナーの意向に加え、いくらロンドンの名門とはいえ評価の落ちたサッカークラブに大金をつぎ込む人間がどれほどいるというのだろうか。そう考えると、当分の間はウェストハム売却の話はないということになる。そうなると現状の危機を乗り越える唯一の手段は、所属選手を放出することしかない。ゾラ監督はニューカッスル戦後、「主力を放出する事実はない。私はウェストハムが更に良いクラブに生まれ変わる自信を持っている」と強気なコメントを残しているが、すでにエザリントンがストークへ完全で、ボウヤーがバーミンガムへローンでそれぞれ移籍することが発表されている。彼らはゾラのいう主力ではなく単なる余剰人員の整理と見えなくもないが、それでも選手層の面から見れば明らかにマイナスであり、これで出し止めというわけにもいかないだろう。10日現在で勝点26の10位という成績は決して悪い数字ではない。だが降格圏の18位との勝点差はわずか6しかない。つまり連敗が即降格に繋がるような数字である。選手の放出があれば残った選手に動揺が走るのはもちろんのこと、放出がなくとも加入もおそらくなく、金銭的な自身の将来について常に不安を感じながら戦い続けなければならない。ウェストハムの上空に漂う濁ったソラを、ゾラの手腕で快晴に導くことが出来るだろうか。ほな、また。
2009.01.11
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1月に入り冬の移籍マーケットが解禁になった。ここ数年のマーケットにおける主役と言えばチェルシーであったが、今後はマンチェスター・シティがその後を継ぐことになるであろう。今シーズン開幕前にクラブを買収したADUGの豊富な資金力でロビーニョやショーン・ライト・フィリップスなどを獲得し一気に台風の目になるであろうと思われたシティだったが、ここまでの順位は選手の質に対して比例していないポジションに位置している。いくら個々の能力が高くとも大幅な選手の入れ替えは組織を構築するのに時間がかかることは当然であり、爆発と沈黙の振り幅が激しいのも未だチームとして未完成であることを表しているといえる。今冬のマーケットにおいて大物選手獲得の噂には必ずと言っていいほどシティの名前が付いている。現在の順位と豊富な資金力を考えれば当然であるが、金で全てを手に入れることが出来るはずもない。何よりシティはネームバリューが低すぎる。チェルシーにあってシティにないものと言えなくもないが、金銭的欲求は満たされても、1サッカー選手としての上昇志向をシティが満たしてくれるかといえば疑問符が付く。ビッグ4に加えてアストンビラやエバートンなど、着実に力を付けている2番手グループが上位にいるパワーバランスを考えれば尚更だ。ただヒューズ監督は諦めていない。1月の選手獲得が難しいことは理解しつつも、選手層及び質の向上が後半戦へ向けての大前提になると考えている。「もっと選手が必要だ。 ブリッジは加入してくれたが、あと5人くらいは選手を連れてくる」バルセロナのトゥーレにオファーを出していたことが発覚したシティだが、国外クラブの中心選手を狙うよりは、イングランド国内で出番に恵まれていない有能選手に的を絞ったほうがより補強の確実性が果たして高いのではないだろうか。ブリッジがそのいい例でありAコールの加入によって出番がなくなったが、それでも代表レベルの実力の持ち主であり、試合勘さえ取り戻せば必ずやチームに貢献してくれることであろう。他の狙い目はシティとは正反対に金融危機の影響をモロに受けたウェストハムである。若く優秀な才能の宝庫でもあるウェストハムだが現在経営的に苦しい状況に直面しており、金に糸目をかけなければ思わぬ人材を獲得することが出来るかもしれない。噂ではこれまた代表レベルのパーカーの名前が挙がっているが、守備能力が高くオールマイティに動けるパーカーを獲って損はないだろう。ここまで見てきて、ふと思った。フィリップス、ブリッジ、パーカー。チェルシーに所属していた選手ばかりではないか。多方面から選手を獲得したチェルシーだが、激しい競争に敗れた選手たちは出場機会を求めてクラブを去る。そして第2のチェルシーとも言うべきシティが彼らを獲得する、あるいはしようとしている。どうしても比較してしまいがちな両クラブだが、もちろん全ての面において先を行っているのはチェルシーだ。先日日本を去ったオシム氏は「模倣だけでは成長しない」と日本サッカーに激を飛ばした。この言葉は今のシティにも当てはまる。“リトル・チェルシー”の様相を呈してきたシティだが、金では買えないオリジナリティを見つけなければいつまでもビッグ4の牙城を崩すことは出来ないだろう。それが監督なのか戦術なのかあるいは別の要素なのか、それは分からない。しかしそれを見つけたとき、順位的にも名声的にも“オーバー・チェルシー”を果たすことが出来るのではないだろうか。ほな、また。
2009.01.08
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チェルシー × ユベントスビジャレアル × パナシナイコススポルティング × バイエルンアトレティコ・マドリー × ポルトリヨン × バルセロナレアル・マドリー × リバプールアーセナル × ローマインテル × マンチェスター・ユナイテッドほな、また。
2008.12.19
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前にも書いたが、今シーズンのアーセナルの優勝の可能性はないと思う。つまりは我がユナイテッド、リバプール、チェルシーのビッグ3の優勝争いになるだろうと考えている。そのあたりをファーディナンドが単刀直入に語っている。「アーセナルは脱落する」これに反論したのがアーセナル主将セスクだ。「ユナイテッドの選手は経験が豊富だ。 だからサッカーの世界では1,2週間で全ての結果が変わることを知っているはずだ」確かに最近のサッカー界の流れは速い。「勝つ可能性はない」と語りシュスターが解任されてからファンデ・ラモスが就任し、敗れはしたものの、負けてなお強しのイメージを世界に発信したクラシコの間がわずか1週間である。またそのラモス解任からレドナップが就任し、ロンドン・ダービーとリバプール戦の結果で評価を一気に逆転させた期間もわずか10日である。アーセナルだって大方の不利の予想を覆しチェルシー、ユナイテッド戦では共に勝利を収めている。だがアーセナルの問題点は解決・改善されていない。素行にも問題はあったものの、トットナム戦でのチーム批判によって主将を剥奪されたギャラスが問題提起した内容である。チャンピオンズリーグ最終節後にはアルムニアまでもが同じ内容において喚起を促している。「アーセナルのシャツを着る以上、100%の力を出し切る必要がある。 だがそれが見えない」ヴェンゲルの方針により、若手選手の多いアーセナルにおいてギャラスのような重鎮の存在は必要である。例えそれがチーム批判に繋がろうが若手から忌み嫌われようが、ぬるま湯に浸かっているだけでは決してチームとして成長しない。それこそ90年代のユナイテッドにおけるキーンのような存在が、今のアーセナルには絶対に必要なのである。その存在があることで、若手選手の多いチームに不足しがちな経験という数値が上昇もするのである。ファーディナンドは自身のこれまでの経験も踏まえたうえで、アーセナル脱落説を唱えたのだと思う。もちろん、若手選手が一旦勢いに乗れば手が付けられないことも知っているだろう。だがそれを持続させるために必要なピースが、今のアーセナルには確実に不足していることも分かっているのではないだろうか。今週末のアーセナルはリバプールと対戦する。これに敗れれば本当に優勝争いから脱落するだろう。しかし勝てば踏みとどまり、年末年始の結果次第ではセスクの言うとおり「1,2週間で全ての結果を変える」ことが出来るだろう。アーセナルにとってシーズンで一番重要な試合になることは間違いないだろう。ほな、また。
2008.12.19
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どんな顔をして“夢の劇場”を歩けばいいのか、もしかしたらそんなことも考えたかもしれない。サンダーランドのロイ・キーン監督が辞任を表明した。開幕前には大型補強を敢行し、個人的には台風の目になるだろうと予想していた。ただここまでの結果を見る限りチームとして機能しているとは言いがたく、順位は18位と降格圏を彷徨い、ここ6試合は1勝5敗と勝利に恵まれていなかった。しかしサンダーランドに限らず、これだけの大型補強を敢行してすぐに結果が伴うことはそれほどない。初めてチームメイトとなる選手と共にプレーするわけだから各選手のスタイルを知り、組織としてきちんと機能するにはそれなりの時間が必要なのである。自身も含め周囲の期待はかなり高かったであろうが、それが即キーンの能力を疑うものにはならないだろう。クラブのクイン会長は辞任の申し出を翻意させようと必至に説得を試みたようだが、キーンの意志は固く最後は泣く泣く認めたようだ。負けず嫌いなキーンの性格のことだから、チームの不振に対する処方箋が分からず頭は混乱していたのではないだろうか。仮に選手時代なら自らがピッチに入りプレーで態度を示すことで、幾分かは修正を施すことが出来ていたであろう。だが監督という立場では言葉でしか選手にアクションを起こすことは出来ない。そのあたりのもどかしさが「自分が適任かどうか分からない」という思いに変わり、自身がクラブを去ることで上昇のキッカケをつかめればと考えたとしてもおかしくはないだろう。今週末サンダーランドは敵地で我がユナイテッドと対戦する。ファーガソンとの師弟対決として注目されていたが、今回の辞任によってキーンはオールド・トラフォードで指揮を執らず、ファーガソンもまた先日の審判侮辱の件でベンチ入り禁止の処分を受けており、当人同士だけがいない対決になってしまった。負けず嫌いのキーンのことである。不振の続く現状で、どのような顔でファーガソンと対面すればいいのか、そんなことも考えていたかもしれない。まぁそれは冗談として、とにかくキーンはクラブを去った。だがクイン会長も語っているように、キーンがクラブに残した闘志というメンタリティは確実にチームには伝わっているはずだ。そして辞任直後にそれを示すには敵地でのユナイテッドは最高の相手ではないだろうか。ほな、また。
2008.12.05
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世界的に吹き荒れる金融危機の風は、サッカー界も例外に漏れず吹き荒れている。そして一番影響を受けるであろうと言われているのがイングランド・プレミアリーグである。サッカーを道楽と捉える大富豪がオーナーの場合が多いイタリア・セリエAや、下部組織の充実とソシオという制度によって世界情勢にあまり左右されないスペイン・リーガと違い、テレビ放映権バブルなど外貨によって潤ってきたプレミアはこのたびの世界恐慌の波を全面に受けている。すでにウェストハムは胸スポンサーが契約途中で倒産し現在は胸部分に白い布を貼り付けているし、我がユナイテッドの胸スポンサーはAIGであり、ある意味今回の金融危機で一番最初に被害を受けた会社である。エバートンのモイーズ監督が、このようなリーグの現状と自身のクラブについてこう語っている。「もしクラブが1月の移籍市場で選手を数名獲得してくれたら、私は驚いてしまう。 チームには怪我人もいるため選手を放出して金を工面することもできない。 チーム強化のための選択肢はとても少なく、多くのクラブも同様であろう」そういえば当時ポーツマスの監督だったレドナップも「選手を放出しなければ選手を獲得できない」と嘆いていた。それだけ多くのクラブの財政は逼迫しており、おそらくギリギリの綱渡りを余儀なくされているのではないだろうか。さてそんなエバートンだが、先週末のトットナム戦で悲劇が起きた。チームトップの4得点を挙げているFWヤクブが試合中にアキレス腱を断裂し、今季絶望となった。さらに代わりに入ったFWサハもハムストリングを怪我しピッチを去った。付け加えてプレミア最年少得点記録を持つボーンも膝の手術により1月まで戦列を離れる予定とされており、純粋なFWはナイジェリア代表として北京五輪にも出場したアニチェビただ1人となってしまった。ボーンは1月以降に、サハも結果次第だが軽症なら年内には復帰できるだろう。だが彼らにヤクブの穴を埋めさせるには無理がある。ヤクブにないスピードがある反面、ヤクブの持つターゲットマンの資質が彼らには絶対的に不足している。それを踏まえてだろう、モイーズ監督も「故障はつきものとはいえ、ヤクブは重要な選手であり非常に失望している」と頭を抱えている。「我々には会長を始め優秀なフロントがついており、チームをサポートするためにあらゆる手段を講じてくれると信頼している」モイーズはこうも語るが、多くのクラブと同様に選択肢が少ない中で、支出を最小限に抑えた大きな驚きを彼は味わうことが出来るのだろうか。ほな、また。
2008.12.01
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年齢を重ねるごとに月日の経過を早く感じてしまうが、今年もあと1ヶ月を切った。サッカー界でも今年1年を締めくくる意味で、毎年恒例“バロンドール”の受賞者発表日が近づいてきた。今年は現地時間12月2日であり、おそらくは我がユナイテッドのロナウドが受賞するであろうと言われている。大多数の票を獲得するか、あるいはメッシとの一騎打ちになるか、それは分からない。だが代表では結果を残せなかったものの昨シーズンのリーグ優勝とチャンピオンズリーグ制覇という偉業は彼抜きには考えられなかった。彼のFKを含む得点力がダブルに大きく貢献したことは、充分にバロンドール受賞に値することであろう。一方でインテル所属のカンビアッソは、バロンドールについてこのように考えている。「バロンドールに大きな価値はないと思う。 ラウールやマルディーニのような偉大な選手たちが一度も受賞していないのだから」バロンドールとはフランスのサッカー専門誌『フランス・フットボール』が1956年に創設した歴史ある賞である。ヨーロッパ最優秀選手を選ぶ賞であったバロンドールだが、時間とサッカーの世界的広がりと共に、範囲をヨーロッパ限定であったのが世界全体に昨年から拡大された。それに伴い選出方法もヨーロッパのジャーナリストによる投票からそれ以外の地域のジャーナリストも投票に参加できるようになった。ジャーナリストによる投票、その影響もあるだろう。これまでの受賞者はFWやMFといった得点に直結する攻撃陣がほとんどである。サッカーも多くの球技同様に得点を競いあうわけだから、どうしても勝利に直結する=得点に絡んだ選手を優秀とみなしてしまうのは仕方のないことではある。しかし攻撃があれば守備があるわけで、ロナウドと同じユナイテッドでいえばファーディナンドとヴィディッチがいなくてもダブルを達成できたかといえばそうではない。相手FWを止める彼らの守備は少なからずチームの勝利に貢献していた。ただそれは見た目に分かりにくく、別の言い方をすれば派手さがない。つまり目立たない。選ぶのも人間だから仕方がないとはいえ、分かりやすい攻撃陣ばかりが受賞する賞を果たして公正な、そして歴史ある賞と言える事が出来るのだろうか。毎年1人しか選ばれないのだから、偉大な選手だからといって即受賞というわけにはいかない。ただ、名誉があるとはいえ、勝利への貢献度が目立たない守備陣にスポットが当たらない不公平さの見えるバロンドールに、カンビアッソが言うように大きな価値はない。ほな、また。
2008.12.01
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“FCハリウッド”なる響きも懐かしく想う、最近のバイエルン。シーズン序盤は勝利に恵まれず、新監督のクリンスマンにも批判が集中していたのも遠い過去のようにも感じる。それぐらい、今バイエルンは好調である。好調は言い過ぎか。ただ悪くないことだけは確かだ。何より負けないのだから。リーグでは3位、チャンピオンズリーグでは1試合を残して決勝トーナメント進出を決めている。それでもこのレベルなら当然の結果なのだろうか。とにかく今のバイエルンは負けない。守備が良いとは決していえない。それを補って余りある攻撃陣の好調さがその要因だ。リベリーを中心にクローゼ、トニの2トップが絡んだ爆発力は、もしかしたら現在のヨーロッパ随一を誇るものかもしれない。チャンピオンズリーグ・グループステージ第5節、ステアウア・ブカレスト戦に3対0で勝利した直後、トニはこう語っている。「リベリー、クローゼとの関係は素晴らしいね。 お互いが理解し合っていて、今のバイエルンの強さはそこにあるんだ」クローゼもまた、「チームは絶好調だ。これから更に良くなっていくよ」しかし、彼ら3人が好調を維持し目立てば目立つほど、ポドルスキの居場所はどんどんと小さくなっていく。現に彼自身、クラブに対し1月の移籍希望を要求したことが明らかになっており、おそらくバイエルンが強気の金額を設定しない限りは移籍が実現するだろう。そして同じことはシュバインシュタイガーにも言える。ポドルスキと違いクラブは契約延長を望んでいるが、彼自身はリベリーの活躍を内心は快く思っていないことだろう。29日に行われた2位レバークーゼンとの直接対決も、トニとクローゼが仲良く得点を挙げ2対0で勝利し、レバークーゼンに入れ替わって2位に浮上した。次節は勝点3差で首位に立つホッフェンハイムとの首位決戦である。得失点差の関係もあって大勝しない限り首位に立つことは難しいが、最後には“FCハリウッド”が定位置に収まりそうな予感がする。ほな、また。
2008.11.30
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個人的には、試合前の選手・監督のコメントは当てにしていない。別の言い方をすれば、少し古いが“右から左へ受け流す”感じで接している。なぜなら試合前に何を言ったところで、どこの世界においても最終的には結果論が支配することになる。つまりは結果以前のことなど全くの無意味なのである。とはいえ、それが全ての事象に当てはまるわけでもない。結果、予想通り・読み通りになることだってある。我がユナイテッドのファーガソン監督がコメントを出していた。「ジュゼッペ・ロッシは本当に優れた選手だ。 ビジャレアルへ放出するときは本当に悩んだよ。 ただ彼はプレーすることを望んでいたから仕方がなかった。 だから契約の際に買取オプションを組み込んだんだ」ビジャレアルと合意した際に、ユナイテッドが希望すればロッシを買い戻せるという、いわば優先交渉権のようなものを契約に組み込んでいたことをファーガソンは認めた。ただ、このコメントが出されたのはチャンピオンズリーグの前日会見でのこと。そしてユナイテッドの対戦相手は、ロッシを獲得したビジャレアルである。ファーガソンは言うまでもなく試合前の駆け引きに長けた人物であり、好んでそれを仕掛けるきらいもある。確かにパルマへローンで放出した際も最後までロッシの有望ぶりを隠さず話してきたし、ビジャレアルへの放出が決まった際も惜しむ声と同時にロッシへの賛辞を包み隠さず語っていた。だがタイミングを考えると精神的揺さぶりとも捉えることが出来る。ロッシを持ち上げることでリスペクトを見せながらも、『自分達はロッシを分かっている。そう簡単には行かせないぞ』とプレッシャーを与えているように思う。また買取オプションの件を公表することで精神的同様をチームに与えているようにも感じるのである。例えば同グループのセルティックやオールボー戦前にこのようなコメントはなかったように思う。逆に言えばビジャレアルの力を認め、だからこその仕掛けと言えなくもない。おそらくは決勝トーナメントに進出するのは両クラブだろう。そしてビジャレアルの今シーズンの戦いを見て、トーナメント以降に戦う可能性もなくはないと感じたのだろう。ならば現段階で力を見せ付けておくことで後の試合を優位に進めようと考えているのではないだろうか。さらに穿った見方をすれば、契約の切れるテベスの後釜として実際に考えているかもしれない。ただ結果そうなったとしても、現時点ではテベスの放出を完全に認めてはいないだろう。なんなら来シーズン以降の契約延長を前提として、今シーズンの動きなどをチェックしている最中であろう。今後のタイトなスケジュールを考えれば、やはり本心を含めた駆け引きを仕掛けたと捉えるのが妥当であろう。ほな、また。
2008.11.25
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少なくとも今シーズンの勢力図はこうだろう。まだシーズンの3分の1が消化しただけ、時期尚早という意見もあるだろう。しかし今のアーセナルに上昇気流に乗れるような転換点を見つけることは出来ない。わずか数日前に「相手に脅威を与えることが出来ていない。たくましさが備わっていない」とチームを鼓舞する発言をしていたアーセナルの主将ギャラスが、ヴェンゲル監督によって主将を剥奪された。直接の原因はトットナム戦のハーフタイムに味方選手と口論を交わしたことがヴェンゲルの癇に障ったこと。しかしタブロイド紙にタバコを吸う姿を撮られるなど、ギャラス本人の主将としての責任感の欠如も遠因として挙げられるだろう。フラミニ、フレブの移籍、ロシツキーの離脱などシーズン前から厳しい戦いが予想されていたアーセナルだったが、ヴェンゲルは「さらに勝点を上積みできる」と強い自信を持ってシーズンに臨んだ。だがこれまでの信頼から一変、ファンの間からもヴェンゲル解任論が巻き起こり、アストンビラとシティ戦に良い所なく連敗を喫してしまった。エドゥアルドの練習復帰は確かにポジティブな出来事だ。そしてウォルコットなど主力級に怪我人が続出していることも波に乗れない理由の1つではあろう。ただ怪我人のいないクラブは皆無に等しく、そのために選手を補強したり育てることはクラブとしての最低限のリスク回避である。イングランド式のクラブ経営に照らし合わせればその長はヴェンゲルであり、当然批判もヴェンゲルに向けられて仕方のないことである。若い選手を使いながら育て、気が付けばチームになくてはならない選手に成長させていくアーセナルの強化方針では、主力の怪我人続出はそのままチームのポテンシャルの低下につながる。だから同じことが他のビッグクラブに起こってもアーセナル同様の混乱は起こらないであろう。アーセナルゆえに起こった混乱だと言える。シティに敗れシーズン4敗目を喫したアーセナル。最初にも書いたように、少なくとも今シーズンは優勝争いから脱落してと言ってもいい。ただし“少なくとも今シーズン”であり、このまま中位争いや降格などの危険性はないであろう。また今シーズンの優勝争いに再度加わる可能性もなくはない。その鍵は1月の移籍市場である。当初は「動かない」と語っていたヴェンゲルも、最近は若干言葉が軌道修正されている。現にバイエルンのDFファンブイデンが噂に挙がるなど、若手よりもどちらかといえばベテランタイプの選手を獲得するのではないかというのが専らだ。もちろん噂の段階であり、話が具体化しているかどうかは知る由もない。ただ今現在アーセナルに本当に必要なのは、昨シーズンのフラミニのようにセスクをサポートできる選手であり、アデバイヨール、ファンペルシーに続く確実な点取り屋であり、そしてピッチの上で精神的支柱となれる存在感を持ったベテランである。ギャラスが主将を剥奪された件に関して、トットナムのレドナップ監督がこうコメントしている。「選手は時にメディアに助けを求めてしまう。偉大なチームは常に控え室で議論を重ねている。そこで問題を解決させようとするリーダーがいるんだ。ユナイテッド在籍時のロイ・キーンのようにね」今思えば、アーセナルの不振が明るみになってきたのは、ギャラスの一件があったトットナム戦に終了間際に追いつかれ勝点2を落としてからではないだろうか。その相手であり、同じ地域のライバルチームの監督でもあるレドナップの言葉を、ヴェンゲルはどう受け止めているのだろうか。ほな、また。
2008.11.23
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レアル・マドリーのニステルローイが手術を行い、今シーズンの復帰はほぼ絶望になったようだ。今夏のロナウド獲得に集中するあまりに、攻撃陣の補強を疎かにしてしまった感もある戦略のツケがここにきて回ってきてしまったようである。さらには昨シーズンのリーグ優勝の功労者でもあるロビーニョを件の騒動によって放出したものだから、層はより一層薄くなったかもしれない。もちろんスカッドを見れば豪華な顔ぶれだ。だが似たようなタイプの選手が多い。翻ってニステルローイはニステルローイでしかない。タイプでいえばイグアインだろう。だがビッグクラブのスケジュールを考えれば、イグアイン1人では物足りない。加えて戦況を一変させる選手でもあるロッベンの故障の多さも悩みの種だ。昨シーズンはロビーニョがいた。だが今年はいない。ユベントス戦の連敗、国王杯敗退、リーグ戦の不振。これらは決して偶然ではない。もちろんニステルローイやロッベンを含む怪我人の多さも一因ではあるだろう。だがどんなクラブのどんな選手であろうとも、長いシーズンにおいてコンディションを維持し続けることはできない。過密なスケジュールを余儀なくされるビッグクラブなら尚更だ。そのためにはいくら他クラブから非難されようが大金をはたいて選手を獲得するのが常套である。しかしフロントは1人のスターを追いかけるあまり全体を見ようとはしなかった。現状は必然の結果である。ニステルローイの穴を巡って、周囲からは早くも1月の移籍の噂が飛び交っている。彼が手術を受けてからの1週間で見聞しただけでもアルシャビン、テベス、カベナギ、シェフチェンコと錚々たるメンバーであり、今後は彼ら以外にも多くの名前が挙がることは必至であるとともに、ある種狂騒曲的にこの話題は過熱していくことだろう。現在、これらの騒動と同時にシュスターの去就も注目されている。結果が芳しくないのだから当然と言えば当然だが、フロントの失態を押し付けられている感も拭えない。何しろ不振の元凶はフロントにあるのだから。だからシュスターを早急に解任するとは思えない。ミヤトビッチSDが語っているように「冷静になってほしい。辛抱強く待ってほしい」のが本音であり、今後の好結果で喧騒が収まるのを期待したいところだろう。一方でこの状況が続けば、流れを変える方法はシュスター解任しかない。ただそれでは周囲の喧騒は今以上に大きくなる。ミヤトビッチは自らの失態が自分に跳ね返ってくることを認識する必要がある。ほな、また。
2008.11.18
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ミランにとってのそれがインテルとのミラノ・ダービーだったように、ユベントスにとってのそれがチャンピオンズリーグ第3節レアル戦だったように、ローマにとってのそれはチャンピオンズリーグ第4節チェルシー戦のはずだった。2勝1分6敗というスタートを切ったローマは、チャンピオンズリーグの舞台においても初戦でクルージュに金星を献上するなど不甲斐無い戦いぶりであった。そしてこのチェルシー戦に敗れればグループ突破の目が非常に厳しくなるだけでなく、スパレッティの去就にまで影響を及ぼすであろうことは周知だった。そこでローマは勝った。ホームで、チェルシーを相手に。しかも3対1という結果で。だが迎えた先週末のボローニャ戦。アウェイとはいえ順位において下回るわずか3つの内の1つボローニャを相手に勝つことが出来なかった。復帰を果たしたトッティのゴールで先行しながら、後半ロスタイムにオウンゴールで失点するという最悪に近い形で。試合後、スパレッティはこう話した。「チェルシー戦と同じシステムで戦ったが、しっかり機能していた。 ただチャンピオンズリーグの後ということで、コンディションが悪かった。 さらに試合中にメクセスとドニを失ったのも痛かった」怪我人さえいなければ必ず浮上する。さもそう言いたげな口調ではあるが、仮に本当の強豪であれば、たとえ内容が伴わなく苦しみながらもボローニャから勝点3を奪えていたように思う。チェルシー相手に勝利し、トッティのゴールが決まっても上昇気流に入らないローマは今後どうなるのだろう。今週末のローマの相手はラツィオ。つまりはローマ・ダービーである。しかもラツィオは現在4位であり、リーグ随一の攻撃力(得点21はリーグ1位)を誇っている。もう言い訳は通用しない。勝つか負けるか、どちらに転んでもローマの今後を大きく変える試合になることだけは間違いない。ほな、また。
2008.11.11
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デルピエロの調子がすこぶる良い。全ての試合を見たわけではないが、ことチャンピオンズリーグのレアル・マドリー戦2試合においては、全盛時を髣髴とさせる技術、ひらめき、動きを全世界にまざまざと見せ付けた。特にカシージャスの逆を突くFKを決めたサンチャゴ・ベルナベウでの試合では、途中交代で下がるデルピエロに対して、レアルのファンさえもがスタンディング・オベージョンで見送るという珍しい光景も見受けられた。本拠地トリノで行われたレアル戦においても、開始5分にカウンターからアマウリとのワンツーから抜け出した絶妙なシュートは、位置こそゴール正面だったものの“デルピエロ・ゾーン”を思い起こさせるものだった。これによって主導権を握ったユベントスはアマウリのゴールもあって勝利を収め、5試合勝利から見放されていたことからラニエリ監督の解任騒動まで浮上していた周囲の雑音を完全に封じることに成功した。昨シーズンまでならユベントスのFWといえばトレゼゲとデルピエロだった。だがトレゼゲが怪我で戦線離脱中(復帰予定は2月)の今、トレゼゲのポジションには完全にアマウリが収まっている。控えにはヤクインタもいる状況で、たとえトレゼゲといえでもそう簡単にはポジションを奪回することは極めて困難なのではないだろうか。それほど現在のデルピエロ(とアマウリ)は好調である。ただそうなるとジョビンコの立場がどうしても気になってくる。北京オリンピックにはイタリア代表のエースとして出場し、いずれはA代表の中心になるであろうジョビンコだが、やはりデルピエロやアマウリ、トレゼゲなどと比べるとどうしても見劣りする。昨シーズンはエンポリにローンで移籍し今シーズン開幕前にクラブに戻ってきたのだが契約問題も遅々として進まず、一時期はアーセナルが本気でジョビンコの獲得を狙っていたという噂もあった。結局契約問題も解決しクラブに残留を決めたのだが、デルピエロがこれだけの活躍を見せているとなれば、当然出場機会は限られ身の振り方も改めて考えざるを得ない状況になることだろう。ジョビンコの代理人は当然ながら移籍の噂について否定し、ユベントス残留を強調している。タイプ的にデルピエロと似ているだけに、間近にお手本がいるユベントスの環境は残留の理由としては全うなものである一方で、彼が活躍する以上はジョビンコの出番がほぼないに等しく、プレーを渇望する若さが移籍の引き金となる可能性もある。現に昨シーズンはユベントスを離れてプレーしている。ここは1つ、イタリアを離れてイングランドへ旅立ってみてはどうだろう。同世代のロッシもユナイテッド、ビジャレアルを経て大きく成長したし、若いうちから外に出た経験はいつか何かに役立つ日がきっとくるはずだ。FWの駒不足に悩んでいるクラブが1つロンドンにあるのだが、いかがだろうか。ほな、また。
2008.11.09
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10月中旬、彼の猶予は今後6試合の結果如何であることをクラブから通告される。その2週間後、UEFA杯でウディネーゼになす術なく完敗を喫し、所属のベントリーは「このクラブはクソッたれだ」とチームを批判する。その次の日、彼は解任された。トットナムがファンデ・ラモスを解任したことに驚きはなかった。以前にも書いたようにクラブの歴史や現在の結果で判断すると、遅かれ早かれラモスがクラブを去ることは分かりきっていたことだった。ただ後任に選出したレドナップの招聘には驚いた。彼は現職のポーツマス監督であり、シーズン途中でのクラブ間の移動がそれほど珍しくないこととはいえ、昨シーズンのFA杯準優勝クラブでありシーズンでも好成績を残した監督をクラブが手放すとは到底思えなかった。しかしながらよくよく考えると、レドナップのポーツマス離脱、トットナム加入は当然の成り行きだったようにも思う。実はレドナップのポーツマス離脱は今回が2度目である。ということは以前にも1度クラブを率いていたことになる。その時も今回同様、シーズン途中にポーツマスからサウサンプトンへの移籍を果たしている。ちなみに両クラブは同じ街に本拠を置くライバルチームであり、その間でしかもシーズン途中に動いたレドナップ及び動かしたサウサンプトンに周囲の注目が集まっていた。だが当時のサウサンプトンはプレミアに所属していたものの降格圏を彷徨う低迷振りであり、何とか残留を果たすべくなりふり構わないチーム補強の結果がたまたまレドナップに向けられたというだけであった。話は逸れたが、降格の危機に瀕したサウサンプトンを救うべくシーズン途中に監督に就任したレドナップだったが、結果は吉と出ず下部に降格する憂き目にあった。だがレドナップはそのままクラブに残り、サウサンプトンをプレミアに復帰させるべく指揮を執り続けていた。すると今度はポーツマスが低迷から抜け出せず、フランスから呼び寄せたペラン監督もクラブの期待に応えられずシーズン途中に職を解かれてしまった。そして後任に迎えられたのがレドナップであった。修復不可能な喧嘩別れをしたわけでもなく、レドナップがクラブを離れた後にポーツマスのオーナーがロシアの富豪に変わったことも大きく影響したであろう。とにかくレドナップはポーツマスに戻った。こう見ると、レドナップはシーズン途中でクラブを去ったり加入したりすることに何ら抵抗を持っていない。監督によっては別の人間の色の付いたチームに難色を示す場合もあるが、レドナップにおそらくそれはなく、どんな状況でも自分色に染め上げる自信のようなものがあるのかもしれない。もしくは自分の確固たる、それでいて柔軟なスタイルを持っており、選手を何の先入観も持たずに客観的に観察できる眼を持っているのかもしれない。どんな状況でも集団の輪に溶け込む能力、レドナップにはそんな能力が備わっているのではないだろうか。もう1つ、レドナップは1つのところに留まることを嫌う性格なのではないだろうか。理由こそ周囲との確執であったり、他からのより良い評価だったりと様々だろうが、一旦「ここでの滞在はこれで終わり」と決めてしまえば、後は野となれ山となれではないがすぐに次を見る切り替えの早さがある。そしてこれは良いように言い換えると上昇志向の強い人間となる。9月の終わり、まだレドナップがポーツマスの監督だった頃に、彼はクラブの財政状況に不満を漏らしていた。オーナーであるロシアの富豪がクラブを売却しようとしているという噂が出たことに対して、彼はこうコメントしていた。「私は移籍期限最終日に、ディアッラに対する30億のオファーを断った。 だがクラウチを獲得するためにムンタリとPメンデスを売らなければならなかった。 昨シーズンはデフォーのためにベンジャニを売った。 ほとんどのチームが負債を抱えており、 選手獲得のために選手を売らなければならないのだよ」自身のユース選手時代、短い間ではあったがトットナムに在籍していたというレドナップ。そんな思い出のクラブからオファーが届いたことに断る理由などどこにもなかったのかもしれない。何より選手獲得のために所属選手を売らなければならない多くのクラブを尻目に、トットナムはこの夏の移籍市場でプレミア20クラブ中2位の約142億という移籍金を使い、多くの若くそして優秀な選手を獲得している。既存選手の顔ぶれを見てもビッグ4に引けを取らず、なおかつこの冬の市場でも補強のための強化費がすでに約束されており、既にデフォーやグイサといった特に攻撃陣の名前が噂として挙がっている。就任2戦目となったノース・ロンドン・ダービーでは2点のビハインドを追いついて引き分けに持ち込み、首位リバプールには先制されながら後半終了間際に逆転するなど、内容はともかく結果は間違いなく上向いている。果たしてこれがレドナップ効果なのか、それともチームのポテンシャルを考えれば当然なのか、それは今後の結果を見なければ分からない。だが今シーズンのミランがインテルとのダービーを境に調子を上げたように、ユベントスがチャンピオンズリーグ・レアル戦から不調を脱したように、アーセナル、リバプールと中2日で続いた今回の連戦での結果が、今シーズンが終わった段階でトットナムの方向性を変えた2試合として記憶されていることになるかもしれない。ほな、また。
2008.11.06
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通算100ゴールまであと1つと迫るなど、ここ最近は好調を維持している我がユナイテッドのルーニー。その要因としてベルバトフとのコンビネーションが合ってきたことと、カペッロの助言が挙げられるのではないだろうか。選手層という点では文句なしのベルバトフ獲得ではあったが、昨シーズンの攻撃力とコンビネーションを考えればルーニー、ロナウド、テベスのトリオを崩してまで獲得する必要があったのかが疑問であった。アンリ加入によって“ファンタスティック・フォー”と名付けられたバルセロナと同じ道を辿るのではないか、そんな危惧があったのも確かだ。だが試合が進みにつれてベルバトフとルーニーの息は徐々に合うようになってきた。常にポジションチェンジを繰り返しながらスペースを作り作られボールに絡むテベスとのコンビネーションと違い、ある程度前線に張りボールをキープ出来るベルバトフとのそれの方がよりルーニーの攻撃性を高めることができ、かつクールな殺し屋のような風貌のベルバトフから繰り出される優しく華麗なパスがルーニーの得点力を高めている。ただそれはファーガソンだけに教えられたものではない。昨シーズンまでのルーニーは、攻撃はもちろん守備においても自陣ゴール前まで戻るなど、自らの持久力・走力を活かしてチームに貢献していた。だが守備に追われるということは相手ゴールからの距離が遠くなるということでもあり、ロナウドの活躍もあったがルーニーの得点数は決して満足できるものではなかった。イングランド代表監督のカペッロもその辺りは分かっていたのだろう。どうすればルーニーの相手ゴール前でのプレー時間を多くすることが出来るのか。そこでカペッロは長らく代表から遠ざかっていたヘスキーをルーニーのパートナーに指名し、ルーニーに対しヘスキーとの距離を密に保つように指示したのである。これまでならクラウチがそのポジションを担うべきなのだろうが、クラウチならどうしても高さがファーストチョイスになってしまい、また線の細さもイタリアでの指導が長いカペッロのお眼鏡には適わなかったのかもしれない。いずれにしろへスキーとのコンビによって代表でもゴールを重ね、ワールドカップ予選4連勝にルーニーが大きく貢献しているのは確かだ。古巣エバートン戦では相手ファンからのブーイングに対しクラブのエンブレムにキスをし、またギグスを引き合いに出しながら「望まれる限りこのクラブでプレーしたい」とユナイテッドへの絶対的な忠誠心を示す一方で、マンチェスターのカジノにおいて自身の週給に相当する額を約2時間で使い果たし、先日のウェストハム戦では頭を綺麗に剃り上げるなど色々と世間の注目を集めるルーニー。10月24日でようやく23歳になった彼はピッチ内でもピッチ外でもまだまだ発展途上である。ほな、また。
2008.11.04
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今シーズン開幕前、世界を大いに騒がせた我がユナイテッド所属のロナウド移籍騒動。本心は定かとして、今回はファーガソンの説得によってひとまずは残留を果たした。それでもレアル・マドリーはまだまだロナウドのことを諦めてはいないようだ。例えばニステルローイは「いつかはロナウドはレアルにやってくるだろう」と楽観しており、また両クラブの間にはニステルローイだけでなくベッカム、エインセの移籍も成立しており、レアル側に「今回も・・」という思いがあっても不思議ではない。それを踏まえてか、レアルのシュスター監督もこの件に関しこのようなコメントを残している。「ロナウドは移籍したい気持ちがとても強い。 ユナイテッドも彼を引き止められないだろう。 来年には一緒に仕事が出来るといいね」以前にも触れたが、カンナバーロは依然として故郷であるナポリでのプレーを考えている。そして今シーズンでレアルとの契約が切れることから、その決断の時期がいよいよ近づいてきているようである。これに関してのシュスターはこうコメントしている。「カンナバーロは失いたくない。 次のシーズンもここにいて欲しい」シュスターの思惑としては、ラシンにローン移籍しているガライが来シーズンから復帰することになってはいるが、新たなラインの構築には時間が必要であり、もう1シーズンカンナバーロに残留してもらうことでその流れをスムースに行いたいのである。シュスターの言葉は全て真実である。だがそれは本心であって本心ではない。ロナウドの件では彼の心をくすぐりながらも、直接的な表現を用いないことでユナイテッドに批判の言葉を出しづらくさせている。シュスターは憶測や希望を述べているだけであって、サッカー界では日常茶飯事で行われているものである。一方カンナバーロの件では、ナポリへの思いを尊重することが前提にはあるだろうが、あえてガライの名前を出さず必要性を表現することでカンナバーロのプライドをくすぐり、自らのペースで交渉をスムースに進めようという思惑が見える。全てはクラブ強化のために。ビッグクラブゆえ言葉の裏に隠された思惑が詮索され、常に批判を浴び続けるが、これがレアルではなく規模の小さなクラブであればどうだろう。どれほどの批判が浴びせられるだろうか。もしくはこれがバルセロナならどうだろう。レアルは“白い巨人”と言われている。人はより大きく、より強くありたいと常に願うが、それはそれで困ったものなのかもしれない。ほな、また。
2008.10.13
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スペイン人の国外流出が止まらない。それまでにも海外に機会を求めて出ることはあっただろうが、おそらくはベニテスのリバプール就任、それによるリバプールのスペイン人選手獲得が大きな影響を与えていると思う。そして今シーズン2人のスペイン人監督が母国以外の土地で苦戦を強いられている。1人はルイス・アラゴネス。先のユーロでスペインを44年ぶりの優勝に導いた監督である。退任後はジーコの後継者としてトルコのフェネルバフチェの監督に就任。昨シーズンのリーガ得点王グイサを引き連れたとあって、ファンはおそらくジーコ以上の結果をアラゴネスに期待していたことであろう。だが先日に行われたホームでのリーグ戦に敗れ、6試合で実に4敗目を喫してしまった。首位からすでに勝点で10も離され、すでにファンからは辞任を求める声も上がっている。だがアラゴネスは結果の悪さとその責任が自身にあることは認めつつも、自らクラブを去る意思はないようだ。思えばスペイン代表監督時代も伝統のサイド攻撃をなくしたりラウールの招集問題で周囲から散々非難されながら、最後には結果を残した人物である。怪我人の多さなど運に見放されている部分もあり楽観的に考えているのかもしれないが、トルコのファンはそうではない。遠くの結果もさることながら、代表とは違い目先の結果もリーグには求められる。その違いを早く理解しないことにはアラゴネスの首も危ういものとなってしまう。さて、アラゴネス以上に危ういのはトットナムのファンデ・ラモスだ。昨シーズン途中にセビージャからやってきたラモスだが、今シーズンは昨シーズンと違い1からクラブを作ることが出来たはずであった。そのためにクラブを惜しげもなく若手選手を次々に獲得し、その分自身の戦術にはまらない選手を放出してきた。だが蓋を開けてみれば、開幕7戦で未だ勝ち星なし。ウィガンとチェルシーに引き分けただけの2分5敗ではラモスへの批判が出ないほうがおかしいというものだ。確かにシーズン開幕前のキーン、ベルバトフの両エースFWの移籍はラモスのシナリオを大きく狂わせたであろう。そして熱を入れていたアルシャビンの獲得失敗も誤算であっただろう。だがキーンの移籍は期限ギリギリではなかったし、ベルバトフについてもある程度引き留めが無理なのもわかっていたはずだ。そしてアルシャビンについても結局移籍金額でゼニトが折れなかったわけだが、リスク対策として他の選手もリサーチしておくべきだったはずだ。結果パブリチェンコは獲得できたが、それとて第2候補だったかといえば決してそうではないだろう。これら移籍に関する部分はフロントの責任であり、ラモスは直接関係していないのかもしれない。だがそれまでに獲得した選手を見れば低迷振りの全責任がフロントにあるとも言い切れない。逆に自分色に染めた分だけ、ラモスの責任はかなり高いように思う。ラモスもアラゴネス同様自ら職を辞すことは否定しているが、トットナムのファンもフェネルバフチェのファン同様にこれだけの低迷と繰り返されるシーズン序盤のスタートダッシュ失敗にはいい加減飽き飽きしていることだろう。アラゴネスとラモス。2人の解任はどちらが先なのだろうか。ほな、また。
2008.10.07
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現在相撲界を騒がせている八百長騒動。いつの時代も消えることない、だがなくさなければならないこの問題が、今サッカー界でも起ころうとしている。事の発端は、スペインの検察がスペインに拠点を置くロシアマフィアの捜査だった。その中で録音したマフィア同士の電話の中で偶然、八百長に関与している疑惑のある会話が入っていたのである。そして疑惑の試合というのが昨シーズンのUEFA杯準決勝、ドイツのバイエルン対ロシアのゼニト・サンクトペテルブルグ戦だったのである。会話の主でもあるマフィアは6月から刑務所に収監されており、スペイン検察は今が捜査のタイミングであると判断したようで、バイエルンの本拠でもあるミュンヘンの検察庁にも捜査を依頼するようだが、仮にこれが真実だった場合、世界有数のビッグクラブでもあるバイエルンと、そのUEFA杯を制した勢いでスーパーカップまで獲った、今シーズンはチャンピオンズリーグにも出場しているゼニトが絡んでいることから各方面に大きな波紋を広げることは間違いないであろう。両クラブは今回の件に関して完全否定しているが、個人的にも八百長はなかったと思っている。まず第一に昨シーズンのバイエルンのモチベーションである。一昨シーズンの不振によりチャンピオンズリーグの出場権を逃したバイエルンは、それまでのクラブ方針であった安全経営を省みない大型補強を敢行した。リベリー、トニを筆頭に金に糸目をつけない補強の甲斐もあって、昨シーズンは国内リーグを断トツの成績でマイスターシャーレを獲得した。そして覇権奪還と同様に昨シーズンの目標でもあったのがUEFA杯の優勝であった。チャンピオンズリーグでいかに好成績を収めるかが最低条件のバイエルンにとって、その出場権を逃しUEFA杯に回らざるを得なかった事実は屈辱意外の何物でもなかったはずだ。そしてそこでの優勝が気休めにしかならないまでも、クラブの最低条件、もっといえば強制的義務でもあったはずだ。もし八百長に関与しているとなれば、当然負けた引き換えにクラブには多額の金銭が入っていることだろう。そして大型補強で散財した金庫は潤うことだろう。しかし先にも述べたように、バイエルンは世界有数の安全経営をこれまで実践してきた。たかが1シーズンの散財など微々たるものにすぎず、それよりも失ったプライドを取り戻すことが先決であり、多額の金額を積まれようと八百長に関与するとは到底思えないのである。そう考えると、試合のスコアがゼニトの八百長関与の可能性を低くさせる。ホーム&アウェイで争われた第2戦の内容が八百長の疑惑になっているのだが、この試合はゼニトが4対0でバイエルンを下している。なるほど、力の劣ると言われたゼニトが4得点で勝利を収めれば賭けに対するリターンは半端なものではなく、八百長を仕掛けるにはもってこいの試合・得点である。だがバイエルンはおそらく八百長に関与していない。そうなるとガチンコのバイエルン相手に4得点を挙げることはほぼ不可能に近い。もちろん100%ではないが、まずないといっても過言ではないだろう。そして八百長があったところで選手の幾人かが関与していても4得点は挙げられまい。それこそクラブ全体で関与していなければ到底不可能だ。そう考えると両クラブ間での合意があって初めて成立するのが八百長であることから、この試合はガチンコの勝負であったと考えられる。冒頭、サッカー界でも八百長騒動が起ころうとしていると書いたが、おそらくこのままフェードアウトしてしまうことになるであろう。そしてこのことから、ガチンコのバイエルン相手に4得点を奪ったゼニトのポテンシャルが改めて浮き彫りになったと言える。ほな、また。
2008.10.02
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先日終わった大相撲は日本の国技と言われているが、番付上位に日本人を探すのは難しい。柔道は日本のお家芸だと言われているが、柔道人口は世界1位ではない。最近プレミアリーグにおける誤審問題が立て続けに起こっている。決して今シーズンに入って急に起こったわけではなく、数シーズン前から一部ではプレミアのレフェリングの質の低さは問題視されていた。だが9月20日に行われた下部リーグでの誤審(明らかにゴールインしていないボールを、主審はゴールと判断)であったり、同27日に行われたユナイテッド対ボルトン戦での誤審(エリア内での正当なチャージをファウルと採り、ユナイテッドにPKが与えられる)と2週連続で信じられないジャッジが続けば、やはり騒動は大きくなってしまう。思えば2006年ワールドカップの予選リーグ、ブラジル対クロアチア戦で同一選手にイエローカードを3枚出したのもイングランド人主審(3枚貰うほうもどうかと思うが)であったし、昨シーズンのリバプール対チェルシー戦でもユナイテッド対ボルトン戦同様の判定で物議を醸していた。ちなみにリバプールでの件とユナイテッドの件は同じ主審であった。多くの審判の中の1人が偶然起こしたものではないのか?という意見もあるが、その審判はイングランド界では名の知れた審判であり、リバプール対チェルシーというビッグマッチを任されるほどのレベルにあるといえる。数ある1人とはいえ、それほどの審判が起こした失態はそのまま、イングランドの審判全体のレベルと言っても差し支えはないだろう。他の国でもこのような誤審騒動は起こっているが、どうもイングランドのその回数が多いように感じるのはぼくだけではないだろう。スローインにおける足の接地面の厳格さは無足から曖昧で、相手を欺く行為には例え味方であってもブーイングを浴びせるファン気質も影響しているかもしれない。正当なものであれば激しいタックルにも笛はならない、いわゆるオールドスタイルの名残が笛に心理的な躊躇を与えているのかもしれない。もちろん単に質が悪いだけかもしれない。いずれにせよ、このままでは今後も同様の騒動が、かなりの頻度で繰り返される可能性が高く、早急な対処が求められる。それが審判への再教育なのか、それとも以前から議論のあるビデオ判定の導入なのか。サッカーの母国の名に恥じないレフェリングを望みたい。ほな、また。
2008.09.30
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前任のケビン・キーガン辞任から約1ヶ月。ようやくニューカッスルの新監督が決まった。とはいえ就任したジョー・キニアー新監督は10月末までの短期契約。要するに正規の新監督を迎え入れるまでの暫定的な監督であり、いわば“つなぎ”の役割でしかない。仮に正規の新監督が見つからなかった場合は契約延長の可能性もあるが、それとて1ヶ月の結果及び内容も考慮される。新監督が見つからず、そしてチームに劇的な変化をキニアーがもたらすことが出来たならば、クラブはシーズン終盤まで彼にチームを任せることになるだろう。ただ厄介なのは、ニューカッスルが現在買収騒動の真っ只中にあることだ。キーガン辞任の引き金ともいえる現場への介入によって、ファンはオーナーのアシュリーに批判の矛先を向けた。そしてそれによってアシュリーはクラブの売却を考え始めており、現にその交渉は進んでいると報道されている。もし交渉が順調に進み10月中に成立するのであれば、新オーナーの意向が監督選びにも間違いなく反映されることになる。一部ではそうなった場合はキーガンの復帰もあるとの見方が出ているが、いずれにせよそれもオーナーがアシュリーのままなのか、それとも新オーナーが就くかどうかが決まらないことには話は先に進まない。なぜかニューカッスルにはこのようなピッチ外での騒動が後を絶たない。それは以前から言っていることだが、クラブを司るフロント陣の場当たり的で計画性のない、そして傲慢な現場への介入がそれをもたらしている。熱い応援で知られるファンのタイトル獲得へのプレッシャーは確かに厳しいものではあるだろうが、これまでに何度も自分達の方法を改めるチャンスはあったはずだ。にも関わらず彼らは同じ過ちを繰り返した。とにもかくにも、優秀な新オーナーに巡りあえることを祈るのみだ。ほな、また。
2008.09.27
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昇格組3クラブの1つ、ハル・シティがギリシャ代表ステリオス・ヤンナコプロスと契約を結んだことを発表した。なお契約の詳細は明らかにされていない。ヤンナコプロスは2003年からボルトンに加入していたが、昨シーズンは監督の交代や新加入選手に出番を奪われるなどして出場機会が激減していた。そして昨シーズン終了後に退団し、所属クラブの決まらないまま今シーズンを迎えていた。無所属ゆえに今回のように移籍市場外での契約も問題なく、そして移籍金の支払いも行わなくて良い。プレミアでの経験豊富なヤンナコプロスの獲得は、残留が目標のクラブにとっては戦力的な面以上にチームの組織面や精神面において大きな役割を果たしてくれるだろう。シーズンは始まったばかりとはいえ7位という順調すぎるほどの滑り出しを切ったクラブだが、シーズンが深まるにつれて降格の恐怖と戦いながらの試合が続く可能性が高い。そんなときに百戦錬磨のベテランがピッチ上での監督として若手選手や経験不足の選手に落ち着きを与えてくれることだろう。ただここで言いたいのは、契約が決まったヤンナコプロスのコメントである。「本当に嬉しい。 ボルトンに5年在籍したが、今が新しいスタートを切るべきだと思った。 私の夢はイングランドに留まり、ハル・シティに入団することだった」言葉だけを見れば、長年の夢が叶ってようやく憧れのクラブに入団することが出来たような印象を与える。しかし現実はクラブからレギュラーの座を奪われ、戦力外的な扱いを受けたことによって所属クラブがなくなってしまった。それを運良くとでも言えばいいのか、ハル・シティが拾ってくれた格好である。嬉しいのは間違いないがハル・シティに入団したのが嬉しいのではなく、所属クラブが決まったことが嬉しいにすぎない。そしていくら気持ちが高ぶっているとはいえ、それを夢と言ってしまっては『夢』という言葉の価値が著しく低いものとなってしまう。今夏の移籍期限終了間際にシティに移籍したロビーニョについて、もしかしたらチームメイトになっていたバラックはこのように話している。「私ならシティには行かなかった。 選手としてのキャリアのためにレアルからシティにいくことには説得力に欠ける」『夢』とは常に上にあるべき存在である。ファンの方には失礼だが、しかしながらまずハル・シティは現状においてボルトンよりも下である。ハル・シティのファンを喜ばせようとしたコメントだろうが、それ以外の誰がヤンナコプロスのコメントを信用するだろうか。ただ活躍には期待しているが。ほな、また。
2008.09.24
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いよいよ始まったチャンピオンズリーグ。カルチョ・スキャンダルによってセリエBに降格したことで3シーズン振りの出場となったユベントスは、ホームに昨シーズンのUEFA杯王者ゼニトを迎えた。先月末のスーパーカップでマンチェスター・ユナイテッドを下し、ユーロで大活躍したアルシャビンも残留するなど勢いのあるゼニトは序盤から優位に立ち、試合を通しても多くの時間で主導権を握り続けた。一方でユベントスはカモラネージが前半の間に怪我により負傷交代するなど、なかなか自分達のリズムで試合が運べない。その嫌な流れを、そして試合結果さえも引き寄せたのはデルピエロだった。後半31分、ゴールから35mという地点で得たFK。デルピエロの右足から放たれた無回転のキックは相手GKをあざ笑うかのように揺れ、ちょうどGKの頭を超えて沈みネットに吸い込まれていった。ユベントスとチャンピオンズリーグの関係性において、どうしてもまずはネドベドの悔し涙が思い出されてしまう。02-03シーズンの準決勝第2戦、対レアル・マドリー戦での累積による決勝への出場停止が確定したイエローカードの場面である。しかしよく考えればデルピエロもまた同じ頃は不遇の時代が続いていた。ローマから招聘したカペッロとの軋轢は半ば公然の事実であり、出場機会もままならいまま闇雲に時間だけが過ぎていった。チームを思って優等生的な発言に終始していた態度も、いつの頃からマスコミに対して不満を口に出し始め、「この状況が続くならチームを去る」と言わざるを得ない状況まで追い詰められていた。風向きが変わったのは、奇しくも先に書いたカルチョ・スキャンダルだった。おそらく事件がなければ続投だったカペッロが下部での指揮を拒否しレアルへ移籍。厄介者がいなくなったデルピエロは後任のデシャン、ラニエリ両監督によって信頼感を取り戻し、昨シーズンはセリエAでの得点王にも輝いた。ちなみにセリエB降格が決まった際、最も早くに残留を表明したのがデルピエロであり、チームを去りたいと公言した事実がどれだけ切羽詰まっていたかが分かる。そして迎えた今シーズン。3シーズン振りの出場となったチャンピオンズリーグは、劣勢こそ強いられたもののまずは順調な滑り出しとなった。同じグループにはレアル・マドリーも同居し、勝利を挙げたもののアウェーでのゼニト戦は今回以上の劣勢を余儀なくされるだろう。ゼニト戦後、デルピエロはこんなコメントをしている。「良いゴールを決めることが出来たし、調子も良い。 満足しているよ」続けて、「クラブには4人のFWがいるけれど、誰が出場するかは監督が決めることだ。 ベンチになったとしても悩んだりはしないよ」精神面の充実がプレーに余裕を生み昨シーズンの得点王につながった。そして今シーズンはチャンピオンズリーグという新たなモチベーションがデルピエロを突き動かしている。今の彼にとってはグループリーグ突破だけでは決して満足しないだろう。ほな、また。
2008.09.19
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リーマン・ブラザーズが破綻した。それと同時にサブプライム問題から続く金融不安がここにきて一気に増幅した。アメリカ大手の保険会社AIGも、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)から最大約9兆円の融資を受けることになったようだ。とは書いたものの、これが世界経済にどのように影響するのか話す気は全くない。ぼくは専門家ではないし、その筋のプロ達がなんとかかんとか喧々諤々動いてくれるだろう。ただ気になるのは、FRBは今回の融資と引き換えにAIGの株式取得権を獲得し、権利行使によって同社発行済み株式の約80%を取得するということ。プレミアファンならお分かりだろうが、AIGは我がユナイテッドの胸スポンサーである。確か4年契約でスポンサーになったのが2年前だったか。その時はボーダフォンに変わる新スポンサーとして随分期待した(もちろん金銭面で)。だが仮にFRBが株式取得を実行に移したならば、AIGは当然FRBの管理下に置かれることで目立った行動はもちろん制限され、効果のない無駄な費用はことごとく抑えられていくことになる。いや株式どうこう以前にFRBの融資を受けた時点で周囲の目は厳しく、下手な行動を取る事は出来ない。そこで思うのが、今後のスポンサー契約がどうなるかということである。記憶に間違いがなければ、4年総額で150億円はくだらない契約だったはずだ。支払い方法にもよるだろうが、分割であれば契約の再考を求めてくる可能性もあり、また契約解除を言ってくることも考えられる。ユナイテッドとしては当然AIGからのスポンサー料を踏まえて経営管理をしているだろうから、もしそれがなくなればクラブの経営にとって痛手であり、今後の補強戦略においても何らかの支障が出ることも否定できない。そういえばこのスポンサー契約は現オーナーのグレイザー一家が持ち込んだものではなかったか。同じ街のライバルの金満ぶりがクローズアップされているだけに、なんとも対照的である。ほな、また。
2008.09.17
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プレミアリーグは20クラブで構成され、ホーム&アウェイで戦うことから各クラブ全38試合を戦うことになる。だが開幕してわずか3試合の段階で、すでに2人の監督交代が行われてしまった。1人はウェストハムのアラン・カービシュリー。現役時代にはウェストハムでのプレー経験もあるカービシュリーは、15年にも及んだチャールトンでの監督生活を終えた後、アラン・パードゥー前監督の後を継ぎ2006年12月にウェストハムの監督に就任。降格が現実味を帯びていた中での就任だったが、テベスなどの活躍もあり最終戦のユナイテッドに勝利したことで残留を確定させた。昨シーズンは10位でシーズンを終えたものの、今シーズンはここまで3戦2勝と好調だっただけに驚きの辞任である。もう1人はニューカッスルのケビン・キーガン。キーガンもカービシュリー同様に選手時代にニューカッスルへの所属経験があり、監督としても1992年から97年まで率いていた。前任サム・アラーダイスの後を受け、今年1月に就任すると下位に低迷していたチームを建て直し12位まで順位を上げてシーズンを終えた。今シーズンも積極的な補強で、ここまで1勝1分1敗というまずまずの滑り出しであった。別に成績が悪いわけでもないのに、開幕3試合での突然の2人の辞任劇。裏にはフロントの現場介入という、共通の辞任理由があった。現場を預かるトップの立場として、フロントが口を出すことほど我慢ならないことはない。金を出してくれることに関しては感謝するものの、戦術を練るのは自分であり、補強選手を活かすも殺すも自分なのである。にも関わらず現場の意志に関係なくフロントの独断で選手の補強や放出を決められると、監督としてはまともなチームなど作れるはずがない。9月1日の移籍期限間際にウェストハムは守備の要アントン・ファーディナンドを、ニューカッスルは攻撃の軸ジェームズ・ミルナーを、それぞれサンダーランド、アストンビラに放出した。そういった噂がなかっただけにファンとしては驚きの移籍であったし、もしかしたら両監督にとっても寝耳に水、晴天の霹靂の移籍だったのかもしれない。ようやくチーム構成が固まろうとしていた段階で、このようなフロント主導による移籍が行われると、監督の、ひいては一人間としてのプライドをひどく傷つけられたと感じても無理はなく、それまでの我慢もあっただろうがおそらくはこれが引き金となって辞任を決意したのであろう。フロントの確執といってもいいだろう両監督の辞任によって、クラブは後任を早急に探さなければならない。ニューカッスルは相変わらずのシアラー待望論が周囲に大きく、ウェストハムではU-21イングランド代表監督でシティでの監督経験もあるスチュアート・ピアースや現クロアチア代表監督ビリッチなど30人にも及ぶ後任候補リストが存在するといわれている。だが誰が監督になろうともフロントが現場に介入するようなクラブに成長はなく、体質を改善しない限りは今回と同様の問題が繰り返されえることは間違いない。ほな、また。
2008.09.06
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「チェルシーでプレーすることしか考えていない」移籍市場も大詰めを迎える中で記者会見を開き、レアルからの移籍願望を語ったロビーニョ。その背景にあったのは、やはりロナウド移籍騒動であった。レアルがユナイテッドのロナウド獲得を熱望し、ロビーニョを交換要員として提示したことでロビーニョのクラブに対する不信感が湧き出ていたのは周知の事実であった。その時点でロビーニョ側はレアルに対して「クラブを去りたい」旨を伝えていたのである。だがロナウド獲得が無理だと分かったレアルは一転、ロビーニョに対し残留を要請するのである。一旦は戦力外のような扱いをしながら都合よく手のひらを返されても、一度失くした信頼は二度と元には戻らない。確かにヨーロッパに渡ることが出来たのはレアルのおかげであり、入団当初の不振に喘いでいた時期も献身的なサポートを施してくれたことは感謝している。だが連覇に貢献した自負はやはり大きく、にも関わらずロナウドという同ポジションの選手のために袖にされることは、自身のプライドが許すはずがない。ロビーニョの会見を受けて、早速レアルは公式サイトにおいて見解を表明した。「ロビーニョが契約解消を望むなら、クラブはそれを受け入れざるを得ない」続けて、「売却対象でないロビーニョと交渉を続け、 公式サイトでユニフォームまで販売したチェルシーの行為は許しがたい」シーズン開幕試合のわずか数時間前の記者会見は、これから一致団結して戦っていこうとするチームの和を乱し悪影響を与えかねない行動である。そして選手の希望だけを呑んで売却意思のないクラブとの交渉を続けようとするチェルシーの行為も、移籍市場における暗黙のマナーとして決して良いものではない。思い返してほしい。わずか2ヶ月ほど前に似たような騒動が起こらなかっただろうか。そうロナウドの件である。この時はFIFA会長までもが首を突っ込み、「選手がクラブの奴隷になっている」と発言するなどひと悶着もあった。だがレアルの“紳士的”な撤退により騒動は落ち着いた。翻って今回のロビーニョとチェルシーがそのとき以上の抜き差しならない行動を取っているのは明白だ。選手がクラブの奴隷になるのは許されず、これほどまでの選手のわがままを放置していては、今後の移籍市場における倫理さえ崩壊しかねない。「レアル残留の可能性はゼロ。仮に残留しても空白のシーズンだってあり得る」とまで語るロビーニョには、もし移籍が決まっても何かしらのプレッシャーを与えるべきだし、こういう時こそFIFA会長の権威を示すべきではないだろうか。そしてどちらか一方の立場だけで話すのではなく、両者が共に納得のいくような俯瞰的な問題解決のルールを作るべきではないだろうか。ほな、また。
2008.09.01
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ヨーロッパにおける夏の移籍市場は8月31日をもって閉められる。この文章が読まれる頃には日付が変わり9月1日になっているだろう。だがそれはあくまで日本時間での話。時差の関係でヨーロッパにおけるそれはまだ変わっていない。果たしてベルバトフは我がユナイテッドに本当にやってくるのだろうか。当初はユナイテッドの獲得希望の噂だけが先行し、ベルバトフ本人やトットナム側の意思が公になることはほとんどなかった。トットナムとしてはもちろん拒否の姿勢を崩す気はなかったであろうし、ベルバトフが移籍を希望しても何とか丸め込む皮算用があったはずである。そして当のユナイテッドの本気度が、この時点ではうかがい知れなかった。だがこの夏の移籍市場において正式にベルバトフ獲得のオファーをトットナムに出したことで、ユナイテッドの本気度がとうとう明るみになった。もちろんトットナムの答えはノーである。ラモス監督はおそらくベルバトフをFWの軸に考えていたであろう。だが誤算だったのはユナイテッドの本気度ではなく、ベルバトフの本気度だった。ここまで無言を貫いていたベルバトフが移籍願望を公に話し出したのである。そうなるとトットナムは最悪の事態も考えないといけない。ベルバトフ不在の戦術を構築する必要性に迫られたラモス監督は、「ロッカールームに悪影響を与える」という理由の下、開幕からベルバトフをベンチ外にするという決断をした。監督としては至極当然のことをしたままであり、このときには移籍やむなしという考えになっていたことだろう。そしてこれによって周囲は“ベルバトフ移籍へ!”の流れに急速に変わっていったのである。元々獲得を狙っていたアルシャビンには振られたものの、同じロシア代表のパブリチェンコを獲得したことで代役は出来たトットナム。後は出来るだけ多くの移籍金をユナイテッドに支払わせるだけだったのだが、ここにきて気持ちが揺らいだのがベルバトフだった。「ユナイテッドでの出場時間はあるのだろうか」正直なところ、何を今更とも思うのだが、形が見えなかった時は明るい希望に支配されていたであろうユナイテッドへの移籍も、いざそれが形として輪郭を描けるようになると現実的な問題を考えてしまうものである。テベスやルーニー、ロナウドといった主軸が健在であり、中盤にも多くのタレントを揃えたユナイテッドに自分の居場所を明確に見つけられないとベルバトフ自身が思っても不思議ではない。しかし、ユナイテッドの動きは早かった。ベルバトフの不安を消すために、同じFWのサハをエバートンに放出することで枠を1つ空けたのである。昨シーズンのサハの貢献度を考えると、彼を放出したところでベルバトフの貢献度はおそらくそれ以上なのだから、本気度を示すにはもっと大きな枠を空けなければいけないかもしれない。だがサハという競争相手を1人消すという既成事実は、迷っているベルバトフにとっては精神的には大きな意味を持つであろう。これによってベルバトフの意思は固まったとみて間違いない。あとは未だ埋まらない移籍金の差を両者がどこまで歩み寄ることが出来るかである。残された時間はあとわずか。8月最後の長い1日はどのような結末を迎えるのであろうか。ほな、また。
2008.08.31
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個人的にシーズン前から注目していたトットナムとサンダーランドが開幕2週目で早くも激突した。ビッグ4の牙城を崩さんと多くの若手選手を獲得し“ラモス色”を強めるトットナムに対し、賢い補強戦略で連続の残留を目論む“闘将”キーン率いるサンダーランドの1戦は、正反対の印象を観ている側に植え付けた試合となった。結果は1対2とアウェイのサンダーランドが勝利したわけだが、好印象をもたらしたのはサンダーランドであった。勝利という結果もそうだが、まず内容が伴っていた。もちろんそこまでの強豪クラブではないのでミスも多い。だがキーンの血を受け継いだとでも言うべき厚く強固なディフェンスはトットナム攻撃陣に隙を与えなかった。カブールの移籍は成立しなかったものの新戦力が多いこともあって、まだまだ連携面で改善の余地は大いにある。だが対人面ではほとんどのボールを跳ね返し、強さを思い切り見せ付けていた。試合後には更にウェストハムからアントン・ファーディナンドの獲得が発表されたものだから、より強固な、そして層の厚いディフェンスラインになることであろう。攻撃面ではマルブランクとリードの両中盤サイドがこれまでのスピード一辺倒だったところに経験とテクニックをチームに与え、確実に攻撃の幅は広がっている。リチャードソンもゴールを決めるなど好調のようで、これまでのように与しやすしと考えれば、第2グループでも痛い目を見ることになるだろう。そこに今シーズンから加わったのがディウフとシセである。ディウフのスピードや攻撃性はもとより、シセの前線での強さは相手にとっては脅威である。今回の試合でも途中出場ながら相手の一瞬の隙を突き決勝ゴールを挙げるなど、早くも結果を残している。ピッチ外で多少の問題を抱えるだけに、キーンのコントロール次第では予想以上に大化けする予感を感じさせたサンダーランドであった。反対にトットナムの先行きは明るいものではない。まずはベルバトフの去就が注目されているが、騒動による他選手への影響を考慮し、この試合もベルバトフはベンチ入りさえしていなかった。彼を含めロビー・キーン、デフォー、ベントという強力な陣容を誇っていたのはわずか1年前の話で、現在残っているのはおそらく一番能力の劣るであろうベントただ1人である。そのためにこの試合では中盤の枚数を増やして攻撃性を落とさないようにしたのだが、ベイル、レノン、ベントリーなど本来はサイドを主戦場とする選手が多く、彼らのドリブル突破は脅威ではあるものの、スクランブルで連携も整っていないのだろう、単独での攻撃が多く、2次、3次と連続した厚みのある攻撃を見せることは出来なかった。救いは後半に入ってハドルストンを入れたことでモドリッチの適正なポジションを見つけられたこと、それによってジェナスの攻撃参加が増えサイドからの攻撃を活かせるようになってきたことだ。ただそうなるとベントの存在価値が希薄になるのと同時に、ドスサントスも含めた宝の持ち腐れ的選手が発生してしまう。前線で獲得の噂があったアルシャビンはほぼ可能性が消えたようだが、同じくロシア代表のパブリチェンコの獲得が現実味を帯びているらしい。いずれにせよ一刻も早く所属選手を確定させて、それらの選手を最大限に活かせるだけの戦術をラモスが見つけないことには、トットナムの目論むビッグ4の牙城は今シーズンも崩れないままで終わるだろう。ほな、また。
2008.08.29
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先日、今シーズンのチャンピオンズリーグにおけるグループステージの組み合わせ抽選が行われた。実力伯仲の、いわゆる“死のグループ”もあれば、強豪が順当に勝ち進むであろうグループも存在し、各クラブ悲喜交々の想いを胸に抽選結果を見守っていたことだろう。さて、今シーズンのグループステージ出場を決めたクラブの中に、いつもは名を連ねているクラブが1つ外れている。ミランである。ユベントスが3シーズン振りに復帰した一方で、ミランの名前がないことはファンとしては寂しい限りである。昨シーズン、最後までフィオレンティーナと最後の椅子をかけて争ったものの、4位にわずかに手が届かず出場を逃したミラン。クラブ・ワールドカップに照準を合わせたために国内リーグがお粗末になっただの、世代交代が進んでいないだの、主力に怪我人が多かった等々、理由は決して1つではないだろう。そして終わってしまったものはある意味、仕方がない。重要なのは失敗に終わった昨シーズンの冷静な分析と確実な対処である。それを見誤らなければ、おそらく来シーズンには常連のごとくグループステージの中に名を連ねることが出来るだろう。まずクラブ・ワールドカップの影響だが、これは意外と大きかったかもしれない。世界一の称号はクラブにとっては大変な名誉であり、フロント陣もこのタイトル獲得に力を入れていたことは当時のコメントからも窺い知れる。だがそれにより国内へのモチベーションは多少なりとも落ち、チャンピオンズリーグとの並行、また日本遠征による過密日程は選手に少なくない影響を肉体面・精神面共に与えていたことだろう。だが今シーズンはその影響を受けることはない。もちろんUEFA杯を見下してはいないだろうが、ある程度の段階まではローテーションを採用して主力を休ませることが出来る。そうなれば選手は週1ペースで試合をこなすことができ、他の強豪クラブと比較しても肉体面では有利になってくる。ならばクラブが考えなければいけないのは、所属選手の処遇である。特に守備陣に高齢化が進んでいることは数年前からの事実であり、それに加えて怪我人が続出したのが昨シーズンだった。アンチェロッティ続投を決断したからには、マイナーチェンジこそあるだろうが継続が基本路線であり、その中で選手層を厚くする補強であったり、血の入れ替えを行うのが自然な流れである。ただ忘れてはいけないのは、これがミランで行われることだ。もしインテルで行われるのであれば、周囲の批判に目もくれず大型補強を次々に行うことで話は終わる。しかしそうではない。ミランは新規獲得選手とミランイズムともいうべき精神を持った、例えばユースからミラン一筋のような選手を融合させることで一時代を築いてきたわけだ。そう思うと、今シーズンのミランの補強戦略に首を傾げたくなってしまう。戦力外としてシミッチを放出しておきながら、ネスタの怪我の状態を考慮してセンデロスをローンで獲得したことは、選手層を省みない典型ではないだろうか。世代交代的に問題なく完全移籍のオプションがあるとはいえ、特にセンターバックに難があったのだからクラブに残しておいたほうが懸命だったように思う。守備にはザンブロッタも加入し、中盤より前にはフラミニ、ロナウジーニョ、ボリエッロ(ローン移籍からの出戻り)、シェフチェンコを獲得し選手層は確かに厚くなった。だが彼らプラス既存選手をどのように構成するのだろうか。ピルロ、ガットゥーゾ、アンブロジーニ、カカ、パト、インザーギなど錚々たるメンバーが揃ってはいるが、いくらチーム状況がそうだとはいえ、ベンチでくすぶる選手も中には出てくるだろう。果たして彼らは我慢出来るのだろうか。今シーズンはそうでなくてもチャンピオンズリーグはないというのに。また、選手層に一流が揃ったことでこれまでの控えであったブロッキや、パロスキといったある意味ミランイズムを継承すべき、あるいは屋台骨から支えるような選手が、出場機会の減少を恐れてクラブを離れてしまった。そして右サイドバックのオッドもザンブロッタの加入でリヨン移籍が濃厚と言われている。監督は継続路線ながら、選手は大きな変更が行われて新シーズンを迎えるミラン。この状況は昨シーズンのバイエルンと似てなくもない。トニやリベリといった大型補強を敢行して、1シーズンでチャンピオンズリーグに戻ってきた彼らにミランは倣うことが出来るのだろうか。ほな、また。
2008.08.29
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アストンビラ残留で一段落したように見えたバリーのリバプール移籍騒動。アストンビラ側は公式サイトで正式に残留を宣言し、監督のオニールも騒動が終わって胸をなでおろす発言をしていた。だがバリーの本心は一体どこにあるのだろうか。獲得を狙っていたリバプールとしては、バリーの決心が少しでも揺らいでいるならばチャンスはゼロではない。監督のベニテスが熱望しているのであれば、フロントは間隙を縫ってでも獲得に乗り出すべきではないかと考える。しかし、どうやらフロントはバリー獲得を諦めたようだ。ベニテスによると、シーズン開幕前の先週にヒックス及びジレット両オーナーからその報告を受けたらしく、「我々はこのオフに約32億円分の選手を放出した。 それなのに両オーナーは、まだ金が足りないという。 バリーが欲しいならもっと選手を放出しろと言うんだ。 そんなことは馬鹿げている」とオーナーやフロントの姿勢に納得していないようである。リバプールの今シーズンの主な獲得選手はデゲン、ドッセーナ、キーン。デゲンが移籍金なしでの獲得とはいえキーンに40億円を費やしたため、32億円分の選手を放出したところで、経営面から見ればマイナスになっているのである。フロントとしては強化したいのはやまやまだが、バリー獲得で更に赤字が増えることは出来れば避けたいと考えているのであろう。一方で現場の立場からすると、1人でも多くの優秀な選手を望む声を上げるのは当たり前である。至上命題でもあるプレミアの覇権を奪回するにはバリーの力が必要と判断したのならば、是が非でも獲得を希望することだろう。ただベニテスが「バリー獲得のためには選手放出も辞さない」と語っていたのは、およそ1週間前のことである。そして相応のオファーがあればアロンソ放出を容認するコメントも残している。つまりは馬鹿げているとまで言ったオーナー連中の要求に自らゴーサインを出していたことになるのだ。つまりはフロントは経営面から、ベニテスは現場の立場から見た金と選手という自身の財産を巡る罵り合いをしているに過ぎず、バリー獲得、そしてチーム強化という最も重要視すべき点が2次的な要素になってしまっているのである。バリーがリバプールへ移籍するのかどうか、それは移籍市場が閉まる今月末でとりあえずの結末を迎える。クリンスマンとの密会など度々世間を騒がせてきたリバプール内部の確執の結末は当分先の話になりそうである。ほな、また。
2008.08.20
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いよいよ2008-09シーズンのプレミアリーグが開幕した。我がユナイテッドはホームでニューカッスルと対戦した。昨シーズンは2試合合計で11得点、1失点と大差でダブルを達成したが、結果から言うと今回は1対1の引き分けに終わり白星スタートとはならなかった。先発及びベンチ入りメンバーを見ると、何となく苦戦しそうな予感はあった。足首の手術によって10月まで復帰できないロナウドを始め、ハーグリーブス、パクも怪我。ナニは昨シーズンの最終戦にレッドカードをもらい出場停止中であり、アンデルソンはオリンピックのために遠く離れた北京にいる。そして親戚の不幸により急遽テベスが母国へ帰るという不運もあった。そのため(今シーズンから2人増え7人になったことを考慮しても)ベンチ入りメンバーの顔ぶれは王者らしからぬものであった。それでも前半は大きな展開から自分達のペースで試合を運べていた。スコールズやキャリックから繰り出されるロングパスは受けての足元に寸分違わず通され、何度もサイドから決定機を演出していた。だがニューカッスルGKギブンの好セーブにことごとくシュートを阻まれ、フレッチャーの1得点しか挙げられなかった。後半に得点を奪えなかったのはキャリック、ギグスの怪我による途中交代が大きく響いていた。特にキャリックの持ち味である正確なロングパスが消えたことで、球の出所がスコールズ1人にほぼ絞られたことで彼のパス特有の意外性が一般化してしまい、相手から的を絞りやすくなってしまった。もちろん前線への飛び出しも同様で、どちらが飛び出すか分からなかったものが、スコールズさえ押さえておけばよいと相手に思われてしまったことで、攻撃が単調なものになってしまった。FW不在の中でルーニーとキャンベルの2トップはそれなりに動き、前半は何度か良い連携を見せていた。だがキャンベルはテベスでもロナウドでもなく、昨シーズンの破壊力をキャンベルに求めるのは無理な話である。さらに言えばコロッチーニが相手ではほとんどのFWが決定的な仕事をさせてもらえず、キャンベルも世界レベルを肌で痛感したことだろう。そうなるとルーニーに頼らざるを得ないのだが、中盤からはパスが出ず何度も下がることでゴールへの距離が遠くなり、ゴール前へ進出してもキャンベルとの微妙な連携のズレが徐々にフラストレーションを溜める悪循環に陥っているようであった。今回の試合がシーズン終盤の大切な時期であれば、かなり先は暗いように感じるだろう。だがそうではない。もちろん勝つに越したことはないが、負けなかったことのほうが大きい。怪我人の多さは心配なところだが、長くてロナウドの10月であり、ナニやアンデルソンのように偶然が重なった不在もある。昨シーズンの開幕戦もレディング相手に引き分け、その試合でルーニーが離脱したことを思えば、今シーズンと何ら大差はない。長く険しく、そして楽しみなシーズンがいよいよ始まった。ほな、また。
2008.08.19
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「このクラブは成功する」「希望に満ち溢れたクラブに貢献したい」移籍会見において移籍先のクラブをこのように褒めちぎる光景をよく目に、そして耳にする。そのたびに「それだけが理由か?」と狭い心のぼくとしては別の、そして唯一の理由を推測する。いよいよ本番を迎える08-09シーズンにおいて、しかしながら実際、未来への希望に満ち溢れ大きな成功を収めるのではないかと思われるクラブがある。アストンビラである。一時はユナイテッドのファーガソン監督の後継者になるのではと目された名将マーティン・オニールの指導の下、そしてオニールと時を同じくしてクラブの会長に就任したラーナー氏の豊富な資金を活かして獲得した若き才能溢れる選手達の活躍によって、昨シーズンは念願のヨーロッパへの出場権は獲得できなかったものの見事6位に入り、中堅クラブからの脱却を図りつつ今シーズン以降の更なる上位進出を目指し、移籍市場でも精力的な動きを見せた。アストンビラの弱点は守備にあるといえる。チーム得点数は71とユナイテッド(80)、アーセナル(74)に続く3位ながら、チーム失点数は51と辛うじてベスト10圏内に踏みとどまれるような数字であった。第19節のチェルシーのホームに乗り込んだ4対4という試合のように、良く言えばファンが興奮する派手な撃ち合い、悪く言えば雑な試合展開というのがこのクラブの昨シーズンの特徴であった。4得点以上が7試合もありながら4失点以上が3試合、完封もわずか9試合にしかすぎなかった。そして主に右サイドバックでレギュラーを張っていたメルベリがユベントスに移籍してしまったために、より一層の守備強化の必要性に迫られたのである。ここまでの移籍市場でアストンビラが獲得した選手はフリーデル、シドウェル、ショーリー、ヤング、クエジャルといずれもディフェンス、あるいはディフェンシブな選手ばかりである。フリーデルはブラックバーンでに長年在籍しておりプレミアの経験はもちろん、GKに必要な経験も申し分ない。そしてショーリー、ヤングは左右のSBとして元の所属先でも活躍しており、イングランド代表においてもGネビル、Aコールの後継者に一番近い能力を持つ逸材である。シドウェルはおそらくバリーの移籍問題に関連しての獲得が大きな理由を占めているだろうが、それでも一昨シーズンのウィガンの躍進はシドウェルなしには語れず、チェルシーと違い周囲からのプレッシャーが少ないアストンビラでは実力通りの力を発揮できることだろう。アストンビラには数シーズン前にも、今回と同じように未来に期待を抱かせた時期があった。ヘンドリー、ヒツルスベルガー、マッキャンなどを揃えた中盤の構成は若さという勢いも手伝って、魅惑溢れるチームへの進化を予見させた。だが、監督がオレアリーだったこと、そして当時会長の無能さによって結果を残すことは出来なかった。今回は違う。監督はオニールだ。そして前線にも若いが活きのいい役者が揃っている。守備陣に新戦力が多いためにもしかしたら序盤は躓く可能性もなくはない。だがそれも時間が解決するはずだ。懸案のバリー残留に成功すれば、アストンビラの未来は希望に満ち溢れたものになるであろう。ほな、また。
2008.08.14
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2シーズン連続の優勝を飾り、チャンピオンズリーグとのダブルも獲得した我がユナイテッド。昨シーズンを見る限り弱点らしい弱点はなく、他クラブが抱えるような補強ポイントも見当たらない。あえて言えば守備ライン及びGKの質の向上による層の厚さだろうが、それとて緊急を要するものではなく、少なくとも今シーズンに与える影響はない。それゆえだろうか。プレシーズンでファーガソンに好印象を与えたダ・シウバ兄弟以外に、これまでのところ主な新規獲得選手はない。移籍市場が開いているので断言は出来ないものの、このことについてファーガソンもこう答えている。「今シーズンは、昨シーズンと同じメンバーで戦い切れると思っている。 昨シーズンの補強により、我々は年齢的にもバランスの取れた陣容になった。 今シーズンも仕事を果たせる選手が揃っている」唯一と言ってもよい懸念材料であったロナウドの移籍問題も、当人同士の直接対話によってロナウド本人が残留を宣言し一段落したこともこのコメントに影響しているのだろう。もしくは噂の根強いフンテラールやベルバトフなどとの交渉がスムースに進んでいないこともあるのかもしれない。個人的にも昨シーズンの段階で補強の必要性はないと考えていたので、ファーガソンのコメントにはほぼ同感している。だが開幕を1週間後に控えた今では、少し補強が必要ではないかと考えている。それも昨シーズン見事な破壊力を見せた攻撃陣にである。ご存知の通り、残留宣言のロナウドはシーズンオフに足の手術を行ったために復帰は10月あたりと言われている。さらにはシーズンオフのナイジェリア遠征でルーニーがウイルス性疾患にかかってしまい、未だプレシーズンマッチにさえ出場していない。昨シーズンの開幕数試合も出場停止や怪我で両選手を欠いていたが、それは突発的な、シーズンが始まる段階では予想しえなかったことであって、今回の場合とは事情が違う。付け加えればナニが出場停止で、アンデルソンがオリンピック出場で開幕から1~数試合を欠場することが濃厚だ。そしてサハは相変わらずの怪我がちで、これまた全体練習にすら参加できていない始末。そうなると残された選手はテベスとギグスぐらいである。全員が遅くとも10月には戻ってくるわけだから我慢すればいいという考えもなくはない。だがユナイテッドはチャンピオンである。各クラブがユナイテッドに照準を合わせて戦いに挑んでくる。それらを打ち破るだけの破壊力を見せ付けることが絶対に出来るかといえば、自信を持ってイエスとはいえない。中堅クラブならまだしも名門ユナイテッドゆえの周囲のプレッシャーも考慮すれば例え1人でもビッグネームを獲得したほうがいいのではないかと考えてしまう。ただそれよりも気になるのは、ケイロスの後任をどうするかということである。ファーガソンの名参謀としてユナイテッドに貢献してきたケイロスだったが、このたびフェリペの後任としてポルトガル代表監督就任が決定した。母国の代表監督という名誉のために辞任を求めたケイロスを批判する気はない。むしろ応援する。だがこれまでのケイロスの貢献を考えると、ユナイテッドにとっては大きな打撃である。ロナウドがここまでの成長を見せたのも、ファーガソンだけでなく、同郷のケイロスの存在が多分にあったからであり、それはナニやアンデルソンも同じであろう。監督と選手とのパイプ役として、あるいは緩衝材的役割を果たしていたケイロスの後任は、今後のチームを作るうえでは大きな問題である。今のところ後任は決まっておらず、ファーガソンも焦らず熟考するようなコメントを出してはいるが、このままシーズンインしてしまうわけにもいかないのではないだろうか。噂では元フランス代表であり所属経験もあるブランが候補に挙がっているらしいが、彼のようなファーガソンの考えを熟知し、かつユナイテッドの歴史と伝統を知る人物の招聘が望ましく、速やかな決断が求められるのではないだろうか。ほな、また。
2008.08.09
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昨シーズンもまた期待を裏切ったニューカッスル。エレベータークラブに過ぎなかったアラダイスを招聘し、さらにはビドゥカやジェレミといったプレミア経験の豊富な代表クラスの選手をかき集めて臨んだシーズンは、これまでのシーズンに見慣れた光景の繰り返しだった。これまでにも何度か書いてきたはずだが、ニューカッスルに足りないものは何といっても継続性である。監督の首を場当たり的に付け替えていては、ようやく浸透しかけた戦術がリセットされるだけで後退こそあれ進歩はない。素人でさえ分かる問題点がフロントに分からないはずがない。にも関わらず目先の結果にこだわったチーム強化を行っている理由とは何なのだろうか。簡単にいえば、それは名門ゆえのプライドではないだろうか。映画「シーズンチケット」の舞台にもなったように、ニューカッスルはサンダーランドと同じくノースイーストに本拠を置き、ジョーディーと呼ばれる気候とは正反対の熱いファンに支えられている北の名門クラブである。ただタイトルとは疎遠で、1955年以降はリーグはおろかFA杯のタイトルさえ獲得していない。当然ながらプレミアのタイトルも同様であり、ジョーディー達は今か今かとタイトル獲得を待ち望んでいる。おそらくそれに最も近づいたのはロブソンに率いられた99年から2004年にかけてであろう。取られたら取り返せの精神で、常に攻撃的なサッカーでファンを魅了したロブソンとニューカッスルだったが、逆に言えば守備のお粗末さが仇となりタイトル獲得はならなかった。良くも悪くも印象的だったロブソン時代の終焉と同時に理想と現実の狭間で揺れ動き、どちらに振り切ることもなく行われた中途半端な強化策がチームに混乱を招き、ファンの失望も買うことになってしまっているのである。アラダイスの後を受けて1月から指揮を執るキーガンはイングランド代表監督の経験もあるなど経歴には申し分ない監督である。だが過去を振り返ると中堅クラブであったり下部リーグでの経歴は輝かしいが、ビッグクラブであったりトップリーグでのそれはあまり芳しくない。このことからおそらくはキーガンが戦術に優れているのではなく、若干レベルの劣る選手のモチベーションを最大限に引き上げて旋風を巻き起こす才能に長けた監督であると思われる。何とか残留を果たしたキーガンとニューカッスルだが、現在デポルティボのコロッチーニとアーセナルのセンデロスという2人の代表レベルにあるセンターバックの獲得の噂が挙がっている。攻撃陣にはタレントが揃っているものの守備陣に不安があるがゆえの策なのであろうが、その攻撃陣においても理想の組み合わせをついに見つけることが出来ずシーズンを終えた。さらに噂に挙がった守備陣の強化に成功したと仮定して、キーガンが彼らを上手く扱うことが出来るのか。選手個々のタレントだけを見ればビッグ4はともかくUEFA杯圏内は十分に狙えるだけのものを持っているだけに、あとはキーガンの手腕と結果が出なくてもファンの罵声に耐えるだけのフロントの我慢強さがニューカッスル躍進の鍵となる。ほな、また。
2008.08.05
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「問題はない」そう話すのは、アーセナルのヴェンゲル監督。「戦術が選手の名前で決まるとは思っていない。 クラブには優秀な若い選手がいる」確かに昨シーズンの開幕前もアンリが抜けたことで得点力不足が懸念され、優勝争いには割り込んではこないだろうといわれていたアーセナルだったが、いざシーズンが始まれば周囲の予想を大きく裏切りシーズン後半まで首位を快走した。アンリが抜けたことによりアデバイヨールの独り立ちが大きかったが、エドゥアルドの怪我が単純に戦力面だけでなく他選手への精神的な影響がシーズン終盤の失速の大きな要因となった。だが失速の要因はそれだけではない。やはり若い選手が多いことによる経験不足もその1つであった。そして今シーズン、その中でも経験豊富な部類に入るフラミニ(ミラン)、フレブ(バルセロナ)、Gシウバ(パナシナイコス)がクラブを離れた。さすがにヴェンゲルもその辺りは心配しているようで、「経験豊富な中盤の選手が獲得できるのであれば、それは必要だ」と語っている。これまでにアーセナルが獲得した主な選手はマルセイユからのナスリのみ。監督の言葉を借りれば「選手の名前では決まらない」がナスリもまだまだ若手の部類であり、経験豊富な選手ではない。それでもヴェンゲルの頭にチームに対するネガティブな印象はない。実現間近な移籍選手の存在があるのだろうか。それとも選手を信頼し自身の戦術・采配に絶対の自信があるのか。今シーズンの目標を問われたヴェンゲルはこう話した。「昨シーズンの改革の成果を見せるために、 昨シーズンより勝点14の上積みを狙っている」昨シーズンのアーセナルの勝点は83だった。優勝したユナイテッドが87だったので、仮に昨シーズンを例に挙げると、勝点14の上積みは独走での優勝を意味する。またこれまでのプレミアにおける最高勝点はモウリーニョ政権1年目におけるチェルシーの95。この数字を越えるのであれば13の上積みで十分である。ならば14という数字は一体どこから来るのか。おそらくは昨シーズンから今シーズンにかけての選手のプラスマイナスに自身の戦術の浸透度を考慮すればこれだけの勝点が稼げるという、やはりヴェンゲルの自信から来るものであろう。フラミニが去り、フレブが去った。去就が注目されていたアデバイヨールが契約延長にサインした一方で、ギャラスには移籍の噂が後を絶たない。それでもヴェンゲルには自信がある。周囲の心配をよそに昨シーズン、ヴェンゲルは見事に良い意味で予想を裏切った。その前例があるだけに、今シーズンのアーセナルも決して侮れないチームである。ほな、また。
2008.08.03
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バスク純血主義を貫き、頑ななまでにバスク人選手のみでチームを構成してきたアスレティック・ビルバオ。だが世界中から選手をかき集めて強化を図る潮流と正反対の強化論はいつしかクラブの弱体化を招き(昔ほどバスク人の有能な選手がいなくなったこともあるが)、一昨シーズンにはあわや2部降格の憂き目に直面するほどの低迷であった。昨シーズンも何とか降格を免れたが、それでもその低迷振りはクラブの経営にも反映されており、近年の財政状況は悪化の一途を辿っているようだ。金がなければ補強は出来ず、所属選手の給料も払えないわけで、チームの低迷とあいまって主力の離脱・放出が起こり、さらにチームは低迷する。まさに負のスパイラルである。だが今シーズンから、地元バスクの石油精製会社が胸スポンサーに名乗りを挙げたことで、どうやら交渉はほぼ合意に達し、年約3億4千万円のスポンサー収入が得られそうな運びになった。4年160億円のユナイテッドや5年100億円のチェルシーに比べると微々たるものだが、それでもあるにこしたことはない。クラブの理念である純血主義からも外れておらず、クラブにとっては大きな収入源となったわけだ。ただビルバオはクラブ創立から今年で110年を迎えるのだが、長い歴史の中でこれまで一度もユニフォーム自体にスポンサーを入れていなかったのである。つまり今回の胸スポンサーは、ビルバオの歴史上初めてのユニフォームスポンサーなのである。伝統の歴史を破らなければならないほど、財政上は苦しい状況だったのだろうか。クラブの強化面なども踏まえたうえでの決断だったのだろうか。個人的には好きなクラブなので、今回の件で財政面も強化面も順調に進んでくれれば申し分ないのだが、それでも1つの歴史が終わった物悲しさも同時にこみ上げてくる。ほな、また。
2008.07.31
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昨シーズンもまた2位で1年を終えたローマ。ユベントスの不在とミランの不調という理由もあったが、それでもインテルの終盤の不安定さを考えればスクデッドも決して夢ではなかった。今シーズン、ユベントスはアマウリにボウルセンを、ミランは切り札としてロナウジーニョを獲得している。さらに言えばインテルはモウリーニョを招聘するなどスクデッドだけではないもう1つのタイトル獲得へ余念がない。さてローマは。放出。昨シーズンの開幕前にバルセロナから獲得したジュリーをPSGに放出した。サイドのバックアッパーとして攻撃に厚みを加えてくれるとの想定で獲得したが、ジュリー本人にとっては出場機会の少なさが不満だった。スパレッティの信頼を得られなかったジュリー自身にも原因はあるのかもしれないが、それでも本来のポテンシャルを考えれば期待に応えられたとは言えない。期待には応えても行動に問題があったのはマンシーニ。出場すればスピードを活かしたドリブルでチャンスを演出し、ローマの攻撃には欠かせないマンシーニだが、トッティとの不仲は公然であり、途中交代を命じられた際の露骨とも言える不快な表情は、マンシーニがチーム崩壊の引き金を握っている可能性は大きかった。プレーを取るか、チームの和を取るかでクラブが選んだのが後者だったのだが、移籍先が直接のライバルでもあるインテルというのは頂けない部分である。獲得。今のところリバプールからリーセを獲得しただけ。左サイドならディフェンスも中盤もこなせ、破壊力のあるミドルシュートはローマにとっては重要なオプションになるであろう。チームの戦術とは多少スタイルの違うところもあるが、サイドの厚みが増したのは大きい。放出2人に獲得1人。数の論理で言えば戦力は落ちたことになる。この現状にトッティはフロントに対し、ビッグネームの獲得をメディアを通じてさえも要求している。これを受けて事実、フィオレンティーナのムトゥに正式オファーを出したのだが、あっさりと拒否されてしまった。原因は金。今更言うまでもないが、ローマには金がない。ここ数シーズンは常にクラブ買収の噂が絶えず、借金の額は計り知れない金額であるとも伝えられている。選手1人を獲得するにも既存の選手を放出して得た移籍金を回さざるを得ず、自転車操業的な戦力補強を余儀なくされている。ムトゥには正式オファーを出したローマだが、噂ではレアルのバプティスタやチェルシーのマルダなどが候補に挙がっているという。だがお金がない。ならば選手を売るしかない。今ローマ所属選手の中で他クラブから注目を集めているのがアクイラーニである。ユーロにもイタリア代表として出場し着実にキャリアを積んでいるアクイラーニだが、ローマではデロッシやピサロの陰に隠れ出場機会をなかなか得られていない。仮にアクイラーニを手放せば、ローマにはムトゥを得るだけの、もしくはバプティスタやマルダを獲得するだけの金を得ることが出来るだろう。しかしそれにはファンの反感を買うだけの勇気が必要である。ローマといえばトッティである。ローマで生まれローマで育ったトッティは、ロマニスタにとってまさに王子様である。トッティやデロッシもそうだが、ユースからローマでプレーしデビューも果たした彼らはファンにとってはわが子のように愛してやまない旗頭であり、目の中に入れても痛くないほど溺愛しているのである。そしてそんな土壌の中でアクイラーニも育ったのである。アクイラーニを放出することはファンにとって自分を冒涜されることと同義であり、それを行ったクラブへの不満はとてつもなく大きなパワーとなってぶつけられるだろう。アクイラーニ本人もそれを知り、かつローマを愛しているため出来るならばクラブを去りたくはない。だが1サッカー選手として出場機会を得たい、もっと活躍したい欲求を持つのも仕方のないことだ。自分が去ることでクラブが強化されるなら。そんな思いもあるかもしれない。ローマの補強具合は、アクイラーニの去就一つで大きく変わるのである。ほな、また。
2008.07.28
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昨シーズン“降格最右翼”とも言われながら、昇格組の中で唯一残留を果たしたサンダーランド。9月から11月には8試合勝利なし(3分5敗)という低スタートながら、ホームでは何とか白星を積み重ね最終節を待たずに残留を決めた。プレミアでの采配は初めてのロイ・キーン監督の下で徹底された前線からの守備は、“攻撃は水物”という守備的な選手だったキーンらしいものであり、シーズンの目標が残留というクラブの思想と完全に一致していた。クラブのネームバリューが小さいゆえに名前のある選手を獲得することは難しいなかで、自身の名前を活かして、特にマンチェスター・ユナイテッド出身の選手を補強し当初の目標を達成したキーンの引率力は称賛されてしかるべきものだった。さて今シーズンはキーンにとって、そしてサンダーランドにとっても昇格2年目のシーズンである。昨シーズンのウィガンがそうだったように“2年目のジンクス”という壁がキーンの前にも立ちはだかることになるのだが、今シーズンのチーム作りはどのように進んでいるのだろうか。これまでの主な獲得選手は、中盤両サイドにセンターもこなせるフィンランド代表タイニオ。そして間もなくフランス人のCBカブールをトットナムから獲得できるとのこと。カブールについては個人間では合意に達しており、残りはクラブ間の詳細を詰めるだけらしい。さらに現地の噂によれば同じトットナムのSBシンボンダもカブールに続いてサンダーランド入りするのではないかといわれている。個人的にこのあたりにサンダーランドの補強戦略の賢さが見てとれる。1つは、たった1シーズンの成功だけで有頂天にならず自分達の実力を過大評価していないこと。自分達を見失っていないこと。普通なら「守備は継続して、次は攻撃面に力を入れよう」となるものだが、過去にそれで降格の憂き目にあったクラブは数え切れない。現実的に考えてのクラブとしての方向性を理解し、それに則した補強を行っている。つまりは守備面の強化である。カブールとシンボンダはプレミアの経験も十分であり、スピードなどの対応面で問題はない。また付け加えておけばシンボンダとタイニオに関してはサイドの選手ということで、前線に当てるとクラブの攻撃戦術とも合致している。次にセットでの獲得。やはり新加入選手がクラブに馴染むには時間がかかる。だがそこに同じ国の言語を話したり、以前共にプレーした経験のある選手がいれば、新加入選手の適応も早くなる。おそらくロナウジーニョがシティではなくミランに移籍したのも、同胞カカの存在が大きな理由の1つであっただろう。今回に関して言えば、実はカブールとシンボンダだけでなくタイニオもトットナムからの移籍である。彼らにとって元チームメイトの存在は大変大きなものであろうことが容易に推測できる。サンダーランドのこの手法は先にも述べたユナイテッド出身選手の獲得と似ており、この辺りはクラブの補強戦略における基本理念であるのかもしれない。だがこれだけでは結果は残せない。そこで最後の一仕上げを行うのがキーンであり、最後のモチベーションの有効活用である。キーンは選手時代から“闘将”といわれ、仲間を叱咤・鼓舞することでチームのモチベーションアップに努めてきた。現役を引退してまだ間もないため、彼の現役時代のプレーを知っている選手がほとんどである。むしろ全員と言っていいかもしれない。幾多の成功を収めた彼から叱咤されれば選手達が燃えないはずはなく、必死になってプレーすることは間違いない。しかもトットナムからやってくる(であろう)選手達は、ヨル前監督の時代にはスタメンながら、ラモスが監督に就任して以降は出場機会が減少し半ば戦力外的扱いを受けていた。ラモスへ見返したい気持ちや試合出場への飢えは人一倍持っており、新天地で心機一転という気持ちで一杯だろう。“2年目のジンクス”とは大概の場合、自滅ではなく相手の研究によって壁にぶつかるケースが多い。昨シーズンは降格最右翼といわれ少し舐められていたこともあっただろう。だが残留を果たしたことで、他チームからの目が昨シーズン以上に厳しくなることは間違いない。それでも地にしっかりと足を付けて戦う闘将とその傭兵達が、今シーズンの台風の目になりそうな予感がしないでもないのである。ほな、また。
2008.07.26
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サッカーに限らずスポーツ選手全てにおいて、いつかは引退という日がやってくる。それをどのように迎えるかは人それぞれ。絶頂期で潔く去る者もいれば、最後までボロボロに戦って去る者もいる。あるいは怪我など志半ばで諦めざるを得ずに去る者だっている。ただ1つ言えるのは、自分自身でキャリアの幕引きを演出出来る選手というのは恵まれており、限られた者にのみ与えられている。ユーロでは大会前の合宿中に大怪我を負い、不参加を余儀なくされたイタリア代表でレアル・マドリー所属のカンナバーロ。代理人が彼の今後について次のように語った。「カンナバーロがレアルのユニフォームを着てプレーするのは 新シーズンで最後になるだろう。 来年の今頃は故郷ナポリのユニフォームを着ている。 彼の夢はナポリで現役を引退することだ」以前からカンナバーロ本人の口からこのような話はしていたが、それがいつになるかについては触れられていなかった。だが、代理人のコメントを見る限り、それが決して遠くない日に起きる可能性が高いことが窺える。ひいては、カンナバーロ自身が引退について考え始めていることに小さくない寂しさを覚える。34歳という年齢を考えれば仕方ないとも思うのだが、イタリアで一時代を築いた名選手の引退が近づいている現実を受け入れたくない思いもある。そうは言ってもカンナバーロ自身が決めたことであり、こちらが口を挟むべき問題でもない。また、もう2度とプレーを見れないわけでもない。少なくともレアルで1シーズン、ナポリでもう1シーズン、彼のユニフォーム姿を拝むことが出来る。とくとカウントダウンへ向かう勇姿を目に焼き付けることにしよう。ほな、また。
2008.07.22
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「我々の目標はリーグで4位以内に入ることだ」こう語るのはトットナムのファンデ・ラモス監督。セビージャ時代には才能豊かな若手達を見事に操って、クラブに数多くのタイトルをもたらした。トットナムは今シーズンに向けてユーロで評価を高めたモドリッチやバルセロナからはドス・サントスを獲得するなど、ラモスにセビージャ時代と同じようなサポートを与えている。トットナムでの初めてのフルシーズンとなる今シーズン、ラモスは一体どのようなインパクトを与えてくれるのだろうか。そのインパクトとは当然、ラモスが語った“リーグ4位以内”である。毎シーズン積極的な補強で常にシーズン前の話題をさらうものの、スタートダッシュの失敗が影響し周囲の期待を常に裏切ってきたトットナム。自滅という言葉も似合うが、それとは関係なくビッグ4の壁が厚く、そして高いのも事実である。だがそこはラモス監督。モドリッチやドス・サントスの獲得に加え、更なる補強を考えているようだ。「我々のプランは有能な若手をたくさん連れてくることだ。 もしベテラン選手にオファーを出すなら、 その選手がどれだけクラブに利益をもたらすか入念に調査する必要がある」レアルやバルセロナ、バレンシアといったクラブに真っ向から挑んできたセビージャ時代を踏襲するラモス。果たしてイングランドでもそれは通用するのだろうか。一方でビッグ4も悠々としているわけではない。チェルシーはスコラーリを監督に招聘し、デコをバルセロナから獲得した。アーセナルには放出の話題が絶えず来シーズンへの期待が厳しいものになっているが、ユナイテッドとリバプールは得点力向上を図るべく、FWの獲得を目指している。それもトットナムから。ユナイテッドは昨シーズンからマークしているベルバトフの獲得を狙っている。ファーガソンもベルバトフを絶賛しており、おそらくはアヤックスのフンテラールよりも獲得リストの上位に彼はいるだろう。すでにオファーを出したファーガソンはベルバトフ獲得を楽観的に考えており、一部には約59億円の移籍金で合意しているとも報じられている。ベルバトフの代理人もこれ対して肯定こそしなかったものの否定もしなかったことから、今後何かしらの動きが見られるかもしれない。クラウチをポーツマスに放出したリバプールはロビー・キーンに触手を伸ばしている。こちらも一部報道で約42億円のオファーがすでに提示されたらしく、ラモス監督も交渉には応じる構えを見せているらしい。ラモスがそういう態度を見せている(らしい)理由の1つにチームの若返りが挙げられる。先にも書いたように若手選手中心で戦うラモスにとって、ベテランの存在や獲得には出来る限り注意深く、そして慎重な態度が見て取れる。今がピーク、あるいはそれが過ぎつつある選手を手放し、それで得た移籍金で若手有能選手を獲得する強化策はセビージャ時代から変わらない方法論であり、それによってタイトルを獲得してきたのだからそれを今更変えることなどないだろう。だがスターティングの2トップが2人とも放出の危機にさらされるとなれば話は別だ。どちらか1人ならまだラモス監督の構想にはあっただろうが、2人ともとなれば構想自体を練り直す必要があり、新たなFWを獲得する手はずも整えないといけない。移籍期間は8月末までであり長くはないものの、少しは余裕がある。だが今からそれなりの選手を調査するには短いと言っていいだろう。すでに新シーズンに向けてのキャンプをスタートさせ、ヨーロッパにおけるコンペティションを戦っている国・クラブもある。ビッグ4の牙城を崩すと宣言したものの、そのビッグ4からまずは先制パンチを喰らった格好になったラモス監督。一体どのような反撃を見せるのだろうか。ほな、また。
2008.07.19
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