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命に対峙する川上未映子の表現からすさまじいエネルギーを感じる。物語の前半は、「大阪の姉が豊胸手術のために、娘を連れて東京の妹 夏子のアパートに泊まりに来る」あれ、なんか読んだことあるな、と思ったら、『乳と卵』と同じ内容だ。一転して後半は、その10年後の話。「夏子は自分の子供に会いたいと願い、精子提供を受けて、出産することを考える」物語を貫くのは、生命の誕生について、生殖医療について、真摯に多方面に切り抜いていく、あふれるエネルギー。そもそも、日本では父親のいない子が法律上認められている。父が空欄でも、出生届は提出できるし、「未婚の母」の戸籍は公然と存在する。世界では「事実主義」の国があり、「父がいない子供はありえない」ということで、出生届に必ず父の名前を記載させるそうだ。日本の民法では「婚姻中の女性が出産した場合、その配偶者が父と推定される」ので、戸籍上の父が子供に対する責任を負う。たとえ、精子提供で産まれた子であっても関係ない。法律上の父がいないより、血のつながりがなくても法律が保証する父がいるだけでもよいではないか、と思う。一方で「未婚の母」「父のいない子」が法律で認められている日本はやはり男性優位の社会なんだ、とも思う。夏物語 [ 川上 未映子 ]
2021.08.31
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殺人罪で訴えられた医師の裁判の話。クモ膜下出血で心肺停止した患者が意識不明のまま数日がたち、回復の見込みがないため、生前の本人の意志もあり、家族の了解を得て、尊厳死に導いた医師が3年後に殺人罪で逮捕、起訴される。医療現場を知らない刑事や検察官が本人の供述を無視して、殺人のストーリーを仕立て上げる。これで、有罪になったら医師なんてやっていられない、と思う。思い出したのは、昭和天皇が死亡する前の状態だ。毎日、「下血が何ℓでした」という報道がされていた。延命治療をしても、意識が戻る見込みはなく、機械で呼吸させられて心臓は動いているが、多臓器不全になり、全身がむくんで黒くなり、顔が変わるほどパンパンになる。鼻や目からも出血し、下血すると、すごい臭いがするそうだ。つまり、昭和天皇は尊厳死も許されなかったのか。善医の罪 [ 久坂部 羊 ]
2021.08.15
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6つの短編集です。それぞれが、美術館の<あの絵>の前で思いを巡らせる。1.ドービニーの庭 ゴッホ ひろしま美術館2.鳥籠 ピカソ 大原美術館3.砂糖壺、梨とテーブルクロス セザンヌ ポーラ美術館4.オイゲニアプリマフェージの肖像 クリムト 豊田市美術館5.白馬の森 東山魁夷 長野県信濃美術館6.睡蓮 モネ 地中美術館日本の地方の美術館にも西洋の画家の作品が収蔵されていますね。瀬戸内海の直島にある地中美術館にはモネの睡蓮が4点もあるそうです。長野県信濃美術館・東山魁夷館では今「白馬の森」が展示されています。コロナ禍で、あまり出かけられないけど、収束したら、行ってみようかな。何時になることやら。〈あの絵〉のまえで【電子書籍】[ 原田マハ ]
2021.08.04
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