梅林庵

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2018年12月24日

葬儀、Kん兄のこと

(8)

カテゴリ：人

平成30年12月24日(月)
　午前4時起床。快晴。
　中途半端の一日でした。こう書くと、為す術無く、ぼんやり過ごしたようですが、それは予期せぬというか、急な依頼のあっての所為でした。昨晩遅くに父からTELあり。遠い親戚が亡くなったので代わりに葬儀へ出席せよとの達しでした。始まるのが午後1時。昼前に喪服を着る必要があります。それまで、午前を走ろうか、それとも頼まれていた妻の実家に行って生け垣の剪定と芝刈りをしようか。そうこうしているうち、霜が溶け始めて猶だらだら本を読んだり音楽を聴いたり。結局なにもしないうちに陽が高くなってしまいました。その間、読み散らかした本は図書館で借りた内舘牧子。昨日手に取って3冊目。横審だったこの方はこんな内容を書くんだな、楽しむことが出来ました。写真はトラと一緒、パジャマ姿でBachを聴くの図。自撮り。珈琲の香りがよかったです。

　昼前、着替えて葬式へ。斎場は農協でした。田舎にあってはJAも、ではあります。お寺は臨済宗妙心寺派。経の最後に「喝」を宣いました。木立は禅宗の家が多いです。ここで故人のことを少し。
　佐伯豊南高校の農業科を卒業、農家を継いでイチゴを栽培するも、あまり身が入らなかったようでした。それは豪放磊落の性格に依ると私は思います。がっしりした押し出し、大きな声、歯に衣着せぬ言動。山っ気のあって、よい意味でお山の大将でした。山猟や川漁を楽しむ自由人でした。彼とは遠い親戚にあたります。拙宅によく来ていました。上がり框に腰掛け、大言壮語しながら焼酎を飲む姿を覚えています。私が小さいころ、他に漏れず将棋を指していた時にたまたま来合せ、ベニヤ板の盤を見て「いいものをやろう」と言ってくれました。五葉松の将棋盤でした。脚はついていませんが、厚さ15㎝ほど。小学生にはもったいない代物でした。そのころ、彼はすでに左肘が曲がらない状態になっていました。事故が原因でした。今の医学、整形外科であればなんとかなっていたのかもしれませんが、彼はそれを苦にしませんでした。キャッチボールを上手にこなしました。いつだったか、それも多分小学校の頃だったと思いますが、彼の車に乗せてもらいました。白の日産チェリーでした。おんぼろでした。片腕を突っ張るようハンドルを握る姿を覚えています。彼曰く「カーステレオがある。音楽を掛けてやろうか」しかし、8トラックのテープもデッキも見当たりません。私の怪訝な顔をみて彼は笑いました。「俺が歌うのさ」なんだ、そんなことか。私が高校生の頃でしょうか、何が原因かよくわかりませんが、彼の親分肌と私の家の空気にミスマッチが生じたようで、金輪際この家には来ない旨の言葉を残し、出ていきました。父と仲たがいしたのでしょうか。しばらくして、彼が50歳くらいの頃でしょうか、木立川で鮎狩をしていて、水中に倒れました。脳梗塞でした。以来、車いすの生活を30年近く。晩年、脳梗塞を再発、入院したまま帰らぬ人となりました。彼の伴侶は大きな病院の看護師でした。今も現役、総婦長をしています。長年、看病をしたようでした。長男は医者。今日の葬儀、喪主挨拶が立派でした。会葬者はほとんどが木立の人でしたが、斎場をぐるり囲んだ生花は長男の勤める大学病院や彼の医局に世話となっているであろう医院のものが多かったです。読経中、時折、私の背中に場所を憚らずの木立弁が聞こえました。「今日はおまい、小坊さんの数がおいーのぅよい。経もなげーしのー(長い)。こげん大けな葬式ぁ滅多とねーど、よい。それぃしてん（それにしても）なかなか喝が入らんのぅ。ほいてから、あるー（あれを）見てみぃ。花輪ぁ医大ん組とか医者ばっかしじゃ。たまがるのぅ（おどろく）。やっぱK兄ん息子は立派じゃーのぅ」
　合掌。

　家に戻りました。午後3時半、時刻が下がりました。しかし、今日山に行けば、親方の取りおいてくれた樫の始末がつきます。チェーンソーを軽トラの荷台へ。慌ただしく出発。すでに陽が傾き、谷合は夕刻の空気でした。写真は辿る道です。

　路肩は谷に落ちて、そこは冷たい流れです。勃然、飯田龍太の「一月の川一月の谷の中」が頭に浮かびました。荒川洋治氏が絶賛、希代の名句です。

　積み込みをしていて、親方が奥から下がってきました。ユンボの運転をしていたとのこと。蜜柑をひとつあげました。曰く
「こりゃーおまい、種がおいーのぅ」
　次の写真は積んで戻るの図。いつもは平積みですが、今日は積載オーバー。荷崩れ防止のロープを掛けました。

　これまでのストック場所は満杯。梅林下の新たな場所に輪を敷きました。

　荷役を終え、これで片が付いたな、今年の山は今日で打ち止め。決まりのついて、走ろうか。しかし、何となく面倒。この気持ちを振り切ってがんばるといいのですが、レースの予定がないとどうしても折れてしまいます。写真は風呂を浴びた後の食卓です。妻がかに玉をこさえてくれました。

　おっ、ピザも焼き上がったぞ。ワインを抜栓すればよかったな。

今日の類語
今日の類語
「金輪際」
　永久に・永遠に・これからもずっと・二度と・金輪際・もう決して・絶対に・決して・誓って・絶対・神かけて・神に誓って・天地神明にかけて・天地神明に誓って・神様に誓って
　金輪際は仏教用語に由来するそうです。広辞苑によると、仏教の宇宙観です。三界に分かれ、それぞれを金輪、水輪、風輪と呼ぶそうです。金輪が現世、水輪は現世を支える巨大な水の層、風輪は金輪と風輪の全体を囲み支える世界だそうです。そしてその外は虚空。観念的に捉えてのことでしょうが、素晴らしい。昔、宇宙に果ての有る無し、色々空想を巡らせたこともありましたが、この三輪の世界観は宇宙物理に通じるものがあります。話がそれました。金輪際とは金輪の最下層、水輪に接する際（きわ）のことをいうそうです。つまり底の底、転じて物事の極限と言う意味。それが「どこまでも」とか「とことん」という状態に用いられるようになったとのこと。

今日の一句
彼此の間師走別れの喝悲し

今日のラン
なし

今日の酒
白波2合　冷酒5勺

今日の写真はネタ切れにつき、先日に飲んだ柚子茶を。妻がこさえました。皮と氷砂糖で漬け込みました。冬至に併せた初物でした。