きょういく ユースフル! ~ 僕は触媒になりたい ~

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2011.05.04
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カテゴリ: 特別支援教育

先日、次のようなご相談をブログへのコメントとしていただきました。

=============================
小学校で学校に来ても何もやらないこがいて、
先日担任に叱られた後、自分の頭を壁にたたきつけたり、
自分の頬をビンタしたりパニックになり・・

そんな子にはどんな言葉をかけたらよろしいのか何か
アドバイスいただけませんでしょうか?
=============================

情景を思い浮かべただけで胸が痛いです。

的を得たアドバイスをすることはできないと思いますが、
自傷行為のある子に対して僕が以前どんな取り組みをしていたか、
ほんのご参考までに書いておきます。

●とことんつきあう

自傷行為が出てしまったら、それを止めることをまず考えますが、そう簡単にはいきません。

気持ちがおさまっていないのに、
たとえ頭突きを止めたとしても、
別の形で出てしまいます。

まずは、本人や周りの子にけがをさせるわけにはいきませんから
体を張って止める。
そのあとは、ずっと抱きかかえたり、
危険のない行為に変わったら、ずっと見守り続けたり・・・。
本人の痛いまでにつらい気持ちを共有し、
一緒になってつらい時間を過ごしました。

何もできなくても、せめて気持ちに寄り添いたい、という一念でやってきました。

こういう時間は忘れられませんね。
こういう時間が2度とないようにと誓って、
「どうすればいいか」ということを考え、取り組んできました。

●原因の分析

「問題行動」と呼ばれる行動には
必ずその原因や背景があります。直接のきっかけになる事象・・・
それから、遠因となることがら・・・。

問題解決のために、その原因をつきとめようと記録をとったり、原因だと思えるものを取り除いたりしてきました。

専門家の先生にも相談し、客観的なアドバイスもいただきました。

「記録」の形式としては、
機能分析 」と呼ばれる、
枠が並列して並んでいるものを使ったこともあります。

(「 機能分析 」や「 応用行動分析 」という言葉で検索すると
 くわしいことが分かると思います。)

「問題」の対応に追われているときなど、
子どもとかかわっている時間には記録を取る余裕がないので、記録を書くのは放課後。
なるべく具体的に思い出すようにしました。

応用行動分析の考え方では、
「問題」の事後のかかわり方が、
本人にとって報酬になっていないか
、ということを気をつけて見ます。

すべてのかかわりの中では、
本人の気持ちに沿いながら、「問題」とされる行動をしておきながらそれが本人によい結果を生まないように
最大限配慮を続けました。

逆に、代替行動や、その場面でしてほしいことが、本人の望みや願いをかなえるようにお膳立てを図りました。

●「よい行動」を増やし、「悪い行動」をへらす

具体的には、見通しをもつことが苦手な子には、
「この時間にやること」をカードにして並べ、
その最後に本人の望むものを配置しました。
「やること」が終わればそのたびにカードを黒板に貼りに行き、
担任や周りの子から
「できたね」「がんばってるね」といった評価を受けます。
課題がスムーズに行けば授業時間内でも
自分の好きな行為ができることを保証し、
そのことが本人の心の安定につながっていきました。

「みんなと同じ」を一律に強制するのはナンセンスです。
人にはそれぞれ好きなことやこだわりがあり、
それが尊重される環境かどうかは決定的に重要です。

「学校だから、教室内だから許されない」という考えは、
ある程度幅を広げて、その子との関係において
捉えなおさなければなりませんでした。
例えば、離席や立ち歩きにしても、
完全にダメと言ってしまうと、お互いに打つ手なしになります。
本人のストレスはいつか爆発してしまう。
でもそれは無理のないことです。

完全にダメ、という考えではなく、柔軟に考え、折り合いをつけていく。

前述の、課題ができたらカードを貼りに行く、
ということも、
決められた課題ができたら、
別の部屋に行ってよいとか、外に行ってよい、ということも
そういった折り合いの中から生まれてきたことです。

●「ごほうび」はやがていらなくなった

前述のように、
本人がやりたいことを保証してやりたい、という僕の気持ちから、
「よい行動」→「ごほうび」的なアプローチをすることがありました。

ところが、あるころから、課題をやり終えても、
「ごほうび」的な行動は特にとりたがらなくなりました。
課題をしっかりと終え、その後も教室に居つづけます。

これは、その子にとって、教室が居心地のいい場所であることのあかしだな、と思いました。

教室が居心地のいい場所であれば、そこを離れる必要はなくなります。

周りの子や先生たちのかかわりがとてもやさしいものであれば、「問題」行動は出る必要がなくなります。

本当に必要なのは、そういった環境なのだ、と僕は初めて気づいたのでした。

最近読んでいる本ですが、
発達障がいを持つ子の「いいところ」応援計画
という本があります。


発達障がいを持つ子の「いいところ」応援計画
(阿部利彦、ぶどう社、2006、1700円)

この本の50ページに
その子を変える前に、まず環境を整えよう
とあります。

また、78ページには
PLAN:ゼロ 」として「 学級の安定 」と書かれています。

著者の阿部利彦先生は、 「その子」よりも「まわり」
一貫して言い続けておられます。

僕は気づくのが遅かったですが、この視点はとても大事な視点だと思っています。

ご参考までにご一読を。

全ての教育現場から、自傷行為をはじめ、
周りに理解してもらえないからこそ出てくる「問題」とされる行動が
少しでもなくなることを、切に願っています。

ありがとうのおじぎ男の子
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Last updated  2011.05.04 22:44:02
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