『 連携と協働の学童保育論
ソーシャル・インクルージョンに向けた「放課後」の可能性』
(三好正彦
、2012、解放出版社、2000円)
この本の読書メモを書いている途中です。
この本の中の学童保育指導員からは、
学校の先生を始め、「子どもを育てる」すべての人に共通する理念や役割を
如実に感じることができます。
子どもにかかわるすべての人にとって、大いに参考になる本だと思います。
本日は第4回。
第1回読書メモは こちら 。
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『連携と協働の学童保育論』
4
(p70~93 第1部 第3章より。
・以降の 太字
は本の内容。
顔マークのあとの緑文字は僕の個人的コメントです。)
<第1部 第3章
「第3の教育の場としての学童保育論」より>
学童保育指導員 及川房子 の実践について
・及川は1976年以降、吹田市で学童保育指導員を始める
・及川実践の特徴は
1) 「 子どもが中心となった保育運営 」
・基本的に口出ししない
・自由な権限を与える代わりに、
その場の秩序の維持という責任を同時に付与
・子どもたちに考えさせ、悩ませる
・指導員は単なるアドバイザー的役割に徹する
2) 「 リーダー 」 (副リーダーもいる)
・班体制
(さまざまな仕事(掃除やおやつなど)を当番として、班にさせていく)
・リーダーに強い権限を与える
・指導員は「リーダーに聞いてみなさい」のように対応する
→ ここではリーダーが中心なのだという雰囲気を全体に浸透させる
・言葉以上に実体験を重視
・「人と人とのかかわり」を重視
(及川実践の基本行程)
<1> まず指導員と子どもたちとの信頼関係を築く
そのために、 遊び や 探検 をする。
子どもたちの希望する遊びに徹底的に付き合う中で信頼を築いていった。
子どもたちのやりたいことに付き合う中で、指導員が”頼れる大人”として
認識されていく。
・「たった1度の外遊びが反抗的だった態度を一変させてしまった。
子どもが変わる。自然が、そして遊びが、大きな影響を与えてくれる」
(『保育日誌1年目』より)
子どもにとっての、遊びの影響は本当に大きいです。
若い教師はベテランの教師から、
「授業が下手でもいいから、子どもと一緒に遊べ」
とよく言われるのですが、その理由がここにありますね。
↓
<2> 主体的な当番、班体制をつくる
・「学童保育」が子どもたちにとって楽しい場であると認識され、
指導員との信頼関係がある程度構築できた段階で、
主体的な取り組みをめざす。
受け身だった当番の仕事を、
「自分たちの学童保育のための仕事」という意識に変えていく。
・極力指示しないようにする。
子どもたちに自分で考えさせるように少しずつ移行させていく。
年間通しての学級づくりの取組と、似ている気がします。
<3> 自主的な運営――子どもたち中心の保育
・子どもたち中心の保育運営は、
リーダーを中心に子ども側に大きな負担がかかる。
そこで当番や1日のできごとの中で、
指導員が目についたことをみんなの前で 表彰
する。
★あらかじめ設定した保育者側のめざす「子ども像」をもとに表彰
「責任と表彰―子ども像がすべての根幹」
・取り組みを通してめざすのは保育目標である「子ども像」
・実践の成果を測るのもまた、この「子ども像」に照らし合わせたもの
・たとえば、問題解決が子ども達で収まった時、
指導員のコメントを入れながら評価表に 手づくりの金色の〇のシール
を貼る。
・その子の属する リーダーも一緒に表彰 。
→ 表彰された本人だけではなく、リーダー自身の 自信 にもつながっていく。
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・保護者談 「 人格形成の基礎の部分を大切に育ててもらった 」
教育基本法第1条に、教育は、「人格の完成」をめざす、とあります。
及川先生はまさしく、教育者であったということになります。
・及川実践の卒業生談
「 人生の原点 になった」
「単なる居場所という物理的なものではなく、
精神的な故郷、帰れる場所
である」
「及川先生は、口うるさくなく、いろんなことをやらせてくれた。
けど、見守ってくれている感じが強くする」
「(先生に) 直接怒られた経験はないが、雰囲気的に怖かった」
「ふざけたことをすると厳しく怒られる感じがした」
・及川談 「 あなたたちの学童だから、
あなたたちが作っていく
ということを
常に訴えてきたつもり」
「自分たちのクラスだから、自分たちでつくっていく」ということは
僕も担任時代によく言っていたことでした。
でも、どれだけの覚悟をもって言っていたかは、反省します。
(p93(第3章の終わり)まで。
本文中に出てきた言葉の順番は、 本メモを書くにあたり再構成しています。)
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及川実践からは、
子どもを中心にした学級経営を目指す学級担任の取組や、子どもを中心にした学校を目指す特色ある学校の取組に
非常に似通ったものを感じました。
また、「子ども像」が明確にあるということが、実践の中で明確に機能していることに驚きました。
たいていどの学校でも、教育目標の一環として
「めざす子ども像」というものがあると思いますが、
それがどれだけ実践の中で機能しているか、ということを反省させられました。
及川実践については、及川房子自身が著書を2冊出しています。
『学童保育実践の記 子どもたちと創った放課後』 (及川房子、2002)
『続・学童保育実践の記 障害児と共に歩む』 (及川房子、2009)
ぜひ読んでみたいところです。
本書はここまでが第1部でした。第2部は第4章「『学童保育』の現在と独自性について」から始まります。
本書は2部構成、全7章なので、ここまでで約半分です。
年内にはこの本の読書メモを終えてすっきりとしたいのですが、ちょっと無理そうかな。
今年もあと3日。早いですね・・・。
それでは、また次回!
↓いつも見に来てくださってありがとうございます。励みになります。
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