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上阳赋 The Rebel Princess最終話「陽の光がさす場所」城門で抵抗された宋懐恩(ソウカイオン)は密道から式乾殿へ侵入、馬子澹(バシタン)と王儇(オウケン)は太極殿に逃げた。今日が皇帝でいられる最後だと腹をくくった子澹、そこでせめて最期に威厳だけは守りたいと訴え、もしもの時は阿嫵(アーウォ)に斬って欲しいという。その時、宋懐恩が兵を引き連れやって来た。「王妃、降りてください…あなたを傷つけたくありません」しかし王儇は玉座のそばから動けない。そこで懐恩は自ら上段へ登り、皇帝の首を斬ると挑発した。子澹は無礼な宋懐恩に激怒、背後にいるのは誰かと問い詰めたが、懐恩は黙って門に向き直り、床に剣を付く。ドン!その時、門が開き、皇帝だけに許された黄色の礼服をまとった王藺(オウリン)が現れた。王藺が上段へ到着した。驚愕のあまり声も出ない子澹と王儇、すると懐恩は玉座にいた皇帝を床に投げ出してしまう。子澹は自分の代わりに玉座を陣取った王藺を見ると、沸々と怒りが込み上げた。「老いた逆賊めが…腹黒くあくどい奴…殺してやる!」子澹は一族の恨みを思い出して王藺へ襲いかかったが、あっけなく兵士に捕われ、そのまま引きずり出されてしまう。王藺は呆然とする娘に声をかけた。「阿嫵、お前の父亲だ、私は生きていた…偉業を成すためにはお前には隠すしかなかった じき全てが終わる、いや、新たに始まるのだ」「…その席はあなたの物ではないわ 子澹哥哥が静(セイ)児に譲ると決めたの、静児も王氏の血を引いている」王儇は父の前にひざまずき、過ちを繰り返してはならないと諌めた。しかし王藺は今度ばかりは譲れないという。王儇は仕方なく子澹が玉座に残していった短剣を手に取り、自分の首に突きつけた。あの時は母がこうして父を戒めたが、また同じ光景を見たいのだろうか。「大切なのは娘の命ですか?玉座ですか?」「阿嫵…誰も私を止められぬ、なぜ邪魔をする?…もちろん玉座よりお前の命が大事だ」すると王藺は震える阿嫵の手をつかんで短剣を取り上げた。その時、うっかり礼服の袖が切れてしまう。「愚か者めが!阿嫵っ!なぜ父亲が平和をもたらすと信じられぬのか?! 私以外にやれる者がいるか?誰がやれるというのだ?!」太極殿に王藺の怒号が響き渡った。しかし突然、背後から懐恩に刺されてしまう。「良いお話でした…何をしに来たか忘れるところだった…つまみ出せ!」王儇は兵に制止され、父が連行されるのを黙って見送ることしかできない。「王藺!私は兵力でここまで上り詰めた、だがこれは次への足掛かりに過ぎぬ」すると懐恩は剣についた血を拭い、兵士に王儇を解放するよう合図した。「蕭綦(ショウキ)が持つものは私も手に入れ、蕭綦が持てぬものも手に入れる…」懐恩は王儇に歩み寄ると、豫章王が逃げ出した婚礼の日@8話、激怒した王儇から受け取ったかんざしを返した。「阿嫵…私の皇后になってくれ」バシッ!⊂彡☆))Д´) ァゥッ!「なんて卑劣な男!」阿嫵は思わず懐恩を引っ叩いたが、その時、蕭綦が太極殿に駆けつけた。「懐恩!」懐恩は蕭綦の声に反応し、慌てて門を見た。すると蕭綦が放った矢が懐恩の胸を直撃、同時に寧朔軍がなだれ込んで太極殿を掌握する。「なぜ戻って来た…」玉座に倒れ込んだ懐恩はようやく蕭綦が寧朔へ戻っていなかったと知った。「お前が付近の軍と連絡を取り、反乱を目論んでいると知っていた だがお前を操る黒幕が誰かは分からなかった」「反乱など起こしたくなかった…」懐恩が思わず立ち上がると、包囲していた兵士は一斉に長刀で突き刺した。玉座に倒れ込んだ懐恩はうめき声をあげると、最期の時を迎えた。「…寧朔に連れ帰ってくれ…哥…二度と皇都には来たくない…」懐恩は蕭綦の元へ行こう立ち上がったが、力尽きてしまう。「二度と皇都には来ない…」すると懐恩はそのまま床に崩れ落ち、絶命した。王儇は父を探して殿内を飛び出した。すると回廊に捨て置かれた父を見つける。「私は死んだのか?生きているのか?…お前は生きているか?」「2人とも生きているわ、太医を呼んで来る!」しかし王藺は阿嫵を引き止め、抱きしめて欲しいと頼んだ。父の胸で泣き崩れる王儇、なぜ父はここまでしなければならなかったのか。「それは…愛のためだ、愛など知らぬと思うだろうが、ちゃんと知っている」「母亲を愛していた?」「…お前はどうだ?蕭綦を愛しているか?それとも子澹か?」「種類の違う愛だわ」「そうか、私の娘はすっかり大人になったのだな…私は間違っていた 人は若い頃に得られなかったものに生涯すがりつき、生きてしまうようだ…しかし正解も分からぬ」「…全てが終わったら母亲の隣で眠りたい?」「夙(シュク)児も大人になり、父親に逆らって自らの考えで行動した 夙児とお前の夫・蕭綦を呼んで来てくれないか?話したいことがある…頼む お前の願いはよく分かっている…私が死んだら当然、妻の隣で眠りたい 阿嫵…さあ行きなさい…早く…」王藺は突き放すように娘を遠ざけ、そっと目を閉じた。その時、王儇はふと振り返り、父が息を引き取ったことに気づく。王儇は悲しみのあまり倒れそうになったが、ふらふらと引き返し、再び父を抱きしめた。朝廷は平定され皇都に平和が戻った。王儇と蕭綦は兵を連れず寧朔へ帰ると決め、王夙は顧采薇(コサイビ)と一緒に見送りに来る。「ふっ、お前たちの手助けなく、丞相が務まるだろうか」「哥哥、きっと大丈夫よ」すると王儇は兄と采薇に婚礼を勧めた。「寂しくなるよ…」「そうね」王儇は子供のように兄に抱きついて別れを惜しみ、皇都を去った。…子澹は馬静に譲位、残りの生涯を皇帝陵で過ごした…朝廷は蕭綦の助言を受け、寧朔より北から玄漠(ゲンバク)の南までを3民族の共同居住地とし…多くの人々の暮らしも変わる…税を軽減し、農商業を重んじ、国は平和と繁栄の時代を迎え、″崇光(スウコウ)の治″と称されたあれから寧朔へ移り住んだ王儇と蕭綦は養子も増え、大家族となっていた。宋懐恩と玉岫の忘れ形見も元気に成長している。そんなある日、王儇は草原に太極殿の床にある大きな地図を模倣し、かつて祖太后から習ったように領土を学ばせた。「沁之(シンシ)、建寧(ケンネイ)はどこか分かる?」すると沁之が地図の上を歩き始める。「♪将軍はいつも城の中~兵士や丞相も城の中~建寧はここです!」「じゃあ暉(キ)州は?」「♪交通の要~天下二分の地~軍事の要地…暉州はここです!」「私たちがいるのはどこ?」「♪北に忽蘭(クラン)、南に六盤(ロクバン)〜 ♪星が降り、陽の光が差す、空と大地の間には高い山と淡い雲~寧朔は私たちの足元です!」「そうよ!すごいわ!もう地図を覚えたのね」蕭綦は子供たちの成長を喜びながら、阿嫵の大きくなったお腹をなでた。「母亲になるのは嬉しいか?」「もちろん、もうすぐ我が子に会える、そして帰る家がなくなったあの子たちもみんな私たちの子よ 立派な大人になれるよう導くわ、″人に優しく、世のために尽くしなさい″と…」完( ー̀ωー́ )<アウォ…皇后になってくれ…って、こっわっ!いや〜終わってしまいました~!最後は哥哥とアウォの別れに思わずポロリ…( ;∀;)好みはあれどやはりチャンツィイのオーラはハンパない!(笑楽しかった!
2022.04.29
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上阳赋 The Rebel Princess第44話「欲望の代償」蕭綦(ショウキ)は王倩(オウセン)に毒を盛られ、自ら手を切って排毒していた。駆けつけた劉(リュウ)執事は驚いて太医を呼ぶことにしたが、蕭綦はうつらうつらしながらも止める。「大事にするな」一方、江夏王・王夙(オウシュク)は王儇を心配して豫章王府までやって来た。しかし正門は堅く閉じたまま、応答がない。そこで裏門へ回ってみると、どこへ出かけていたのか阿嫵(アーウォ)と出くわした。王儇(オウケン)は兄に気づいたが、とても話す気分になれず奥へ行ってしまう。薛(セツ)夫人は池に落ちてずぶ濡れになった王倩を連れ寝殿に戻った。しかし聞いてみると計画は失敗、ひとまず騒ぎを大きくして自分を側室にせざるを得なくしようとしたという。行き当たりばったりの娘に困惑する薛夫人だったが、実は王倩には思わぬ収穫があった。「母親(ムーチン)、さっき書斎である秘密を知ったの…」王夙は徐(ジョ)女官に何があったのか聞いた。徐女官は事情を説明したが我慢できず、これまで王妃が豫章王から避妊薬を飲まされていたことまで暴露してしまう。これに王夙は激怒、豫章王の書斎に乗り込むなり殴りかかった。王儇が王倩の様子を見に来た。「詳しく説明してちょうだい、心配しないで、大王の仕業なら豫章王府が責任を取るわ」すると薛夫人がこの件にはある秘密が隠されているという。王倩は豫章王が王儇に飲ませている薬が避妊薬で、長く飲めば2度と子が持てないと教えた。にわかに信じられない王儇、そこで王倩はもう一押し必要だと企む。「大王は私を抱きながら…こう言ったの…大王は…その〜私からは言えない」王倩は咄嗟に作り話が思い浮かばず、母の顔を見た。「それが…大王は倩児を抱きながら… ″王妃は子を産めぬ身体、ゆえにお前が産んだ子を王妃の子として育てる″と…」薛夫人の残酷な言葉に王儇は立ちくらみを起こした。しかし決して取り乱さず、ともかく自分の病状を確かめるため太医を呼ぶよう命じる。拝命した阿越(アエツ)はすぐ出ていくと、回廊で慌てふためく徐女官と出会した。徐女官は王妃の元へ駆けつけ、実は興奮した王夙が大王につかみかかっていると報告した。驚いた王儇はすぐさま大王の書斎へ、するとまさに兄が短剣を振り上げ、蕭綦を刺そうとしている。咄嗟に江夏王にしがみつく劉執事、急いで引き止める徐女官、そんな騒ぎの中、王儇の目に映ったのは手から血を流し朦朧とする蕭綦の姿だった。王夙と徐女官は豫章王から事情を聞いた。しかし王夙は信じられず、夫婦を残し、外で申太医の到着を待つことにする。するとちょうど阿越が太医を連れて戻って来た。王儇は手首を切った蕭綦を介抱しながら、なぜ自分が避妊薬を飲まされていたのか知った。蕭綦は必ず治療法を見つけると励ましたが、王儇は蕭綦が子供を持てない可能性があると危惧する。「…私の子を産むのは王儇ただ一人、持てなくてもいいさ 私が年老いてこの世を去る時、そなたさえいれば十分だ」王儇は蕭綦の深い愛情に涙し、これからは2度と蕭綦を疑わないと誓った。。゚(∩ω∩`)゚。 だーわん王夙は申太医から阿嫵の病状を聞いた。自分の誤解だったと知った王夙はともかくすぐ蕭綦の診察を頼む。すると確かに蕭綦は強い媚薬を大量に飲まされていたと分かった。幸い大王がすぐ自分で血を排出し、身体に害が残らずに済んだという。薛夫人と王倩が待ちくたびれていると、ようやく王儇が戻って来た。大王と江夏王が揉めていたなら朗報だと期待する母娘、しかしどうも様子がおかしい。すると王儇は王倩にどうやって大王の書斎に入ったのか聞いた。王倩は何食わぬ顔で守衛が入れてくれたと答えたが、守衛から聞いた話では薛夫人が転んで歩けないと訴え、手を貸している隙に侵入されてしまったという。そこで薛夫人は部下が大王をかばうのは当然だと主張した。「だとしても…大王が自ら媚薬を飲んだとでも?」王儇は言い逃れする王倩に近づき、髪の毛の匂いを嗅いだ。やはり綺羅(キラ)香の匂いが残っている。「王氏の屋敷は嫌だと大騒ぎして来た2人を厚意で迎えたのに… まさかこんな悪質な策略があったとは…よくも騙してくれたわね?」薛夫人は引くに引けなくなり、濡れ衣だと憤慨して王儇をねじ伏せようとした。すると王夙が現れる。「どこまで面の皮が厚いのだ!…阿嫵、これがお前が救おうとしていた人間たちの本性だ」王夙は阿嫵が2人のために賀蘭箴(ガランシン)に頭まで下げ、そのお陰で文が届いたと投げつけた。薛夫人と王倩は慌てて文を拾って確認すると、賀蘭箴は王儇との友情を鑑み、王倩との婚約話を破棄するという。喜んだ2人はそれまでの無礼な態度を一変、急に殊勝になった。そこで王儇は王倩から文を取り上げ、結局、今回の騒ぎは2人の仕業かと迫る。「認めるの?」「…私が間違っていました!」「王妃、どうか愚か者をお許しください!」王倩と薛夫人はその場に平伏し、許しを請うた。しかし王儇は罪を認めた以上は忽蘭(クラン)へ嫁げと言い放ち、賀蘭箴からの文を燃やしてしまう。翌朝、皇太后は桂(ケイ)嬷嬷(モーモー)から豫章王府での騒ぎを聞いた。「愚かな子ね…」皇太后は王倩のために奔走した阿嫵を思うと不憫になってしまう。今や疎遠になってしまった可愛い姪、しかし再び刺客が現れても助けてくれるのは阿嫵だけだと分かっていた。「大事にしながらも用心しなくては…これも天の定めよ」一方、賀蘭箴も江夏王から王倩の件を撤回すると知らせを受けた。なぜ一夜にして王倩を嫁がせる気になったのか。不審に思った賀蘭箴は忽耶奇(コツヤキ)に豫章王府を調べるよう命じた。「それなら蘇錦児(ソキンジ)に聞けば分かります」王倩母娘は江夏王の屋敷へ戻り、ついに公主に封じられた。王倩の輿入れは宋懐恩(ソウカイオン)と玉岫(ギョクシュウ)の婚礼と同じ日、そこで王夙は王倩が忽蘭に到着したら薛夫人を琅琊に帰し、2度と皇都に来させないと決める。一方、王儇は静かな朝を迎え、蕭綦と朝食の席に着いた。すると蕭綦が突然、玉岫に王妃がいつも飲んでいる酒を用意してくれと頼む。「今日は例外だ…」蕭綦は2度と隠し事はしないと約束した以上、正直に伝えようと決めた。「話さねばならぬことがある…岳父が、つまり君の父上が亡くなった」実は王夙もすでに知っているという。蘇錦児は来るはずのない故郷からの手紙を受け取った。「(はっ)安平王が戻られたのね…」喜んだ錦児は街へ出かけ、指示通り春来巷(シュンライコウ)を探す。すると安平王の従者がわざと錦児にぶつかり、目配せして隠れ家まで案内した。馬子澹(バシタン)は粗末な屋敷で蘇錦児を待っていた。「今夜、皇帝陵に帰る」「今夜ですか?…私には分かりません、なぜこんなご苦労をなさるのか」「太后と皇帝を安心させておけば長く生きられる…で、彼女はどうだ?」「王妃ですか?」「…そうは呼びたくないが今は仕方がない、豫章王妃と呼ぼう」つづく( ๑≧ꇴ≦)面倒臭いの終わった!…でも気は抜かないで〜w
2022.02.04
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第13話)第40話「首謀の尻尾」梁尚(リャンシャン)殺害事件は私事として袁(ユエン)夫人が審理を取り仕切ることになった。曲泠君(チューリンジュン)は無実を主張、あの日、夫の部屋に食事を届けたのは自分の外套を来た侍女・幼桐(ヨウトン)だったという。そのため下僕たちはてっきり夫人が部屋に入ったと誤解したのだ。程少商(チォンシャオシャン)は審理を見守っていたが、自分に調べさせて欲しいと嘆願し、袁夫人も認めてくれる。すると袁慎(ユエンシェン)がまた難癖をつけて少商を挑発した。「自分を有能だと思っているのか?…学もないのに捜査したいとは笑わせる、ふっ」しかし少商は言い返しもせず、袁夫人に拝礼して出て行ってしまう。「おい!本気なのか?!」肩透かしを食った袁慎は自分も調べてくると母に断り、慌てて少商を追いかけた。袁慎は相変わらず減らず口を叩いていたが、内心では女子の身で現場に入った少商が心配だった。「あいつの捜査を待ったらどうだ? …それにしても穏やかになったな、以前ならすぐ言い争いになったのに」「子晟(ズーション)のおかげね、彼は私を溺愛し、大切にしてくれる、だから私も他人と争わなくなった 彼に嫁ぐなんて想像もできなかったけれど、でも考えてみたの もし彼と出会えなければ一生の心残りだとね…って、あなたに言っても無駄よね」少商は袁慎も早く妻を見つけるよう勧めた。意中の相手がいないため、自分たちのように仲睦まじい夫婦が気に食わないのだという。「あ、でも理想は下げた方がいいわ、私のような優秀な娘は見つからないから」袁慎の気持ちを知ってか知らずか痛い所を突く少商、すると捜査の妨げとばかりに袁慎は部屋から追い出されてしまう。少商は現場の部屋が外観に比べてやけに狭いと気づいた。そこで回廊を歩いて外周を図ってみたところ26歩、しかし部屋の中は20歩だと判明する。「残りの6歩はどこ?」壁には梁尚が大事にしていた金石で作った彫刻が飾られていた。その頃、凌不疑(リンブーイー)は真犯人に目星をつけ、梁家の男全員を集めていた。「梁尚は梁家家主、家主が死んで夫人が犯人となれば梁尚の子は家主の座を継げない つまり取って代われる者こそ、犯人の可能性がある…梁州牧(シュウボク)、あなたが真犯人では?」「私は梁家の養子に過ぎぬ、梁尚に代わり家主を務めているだけ 梁尚と梁遐(リャンシア)は同腹の兄弟で梁太公の血脈だ 梁尚を埋葬してから家主の位は三弟の梁遐に引き継がれる…」梁無忌(リャンウージー)は三弟に話を振ろうとしたが、梁遐はいつの間にか姿を消していた。少商は壁を叩きながら歩いているうち、音が違う場所を見つけた。そこで力一杯、壁を押してみると、隠し部屋に潜んでいた梁遐に引き込まれてしまう。「三公子…あなたが犯人ね?」隠し部屋には血だらけの衣があった。梁遐は凌将軍の捜査が自分に及ぶと恐れて密かに隠し部屋へ戻り、証拠となる衣を処分しようとしたのだろう。すると梁遐は少商の首に短刀を突きつけ、少商を殺して逃げると言い出した。少商は咄嗟に自分を人質にして交渉すれば逃げられると提案したが、梁遐は信じようとしない。その時、突然、外から凌将軍の号令が聞こえた。「部屋を壊せ!」現場を捜査していた少商がこつぜんと姿を消した。報告を受けた凌不疑は黒甲衛(コクコウエイ)に離れを破壊するよう命令、追い詰められた梁遐は仕方なく少商を人質にして外へ出る。驚いた袁慎は思わず身を乗り出したが、袁夫人は息子を止めた。「君子、危うきに近寄らずよ…行っては駄目」すると凌不疑はちょうど集まっていた梁一族を包囲し、少商を放せば一族も母親も見逃すと条件を出す。その時、少商が真犯人は三公子だと暴露した。退路を失った梁遐は少商を道連れにすると言い放ち、母親など殺せばいいと開き直る。そこで凌不疑は梁母を引きずり出し、目の前で腕を捻り上げた。母の悲鳴を聞いた梁遐はさすがに気が動転、その隙を突いて凌不疑が短剣を放ち、見事に梁遐の手に命中させる。少商は梁遐の手が離れた瞬間に逃げ出し、不疑は無事に少商を奪還した。↓少商、いつの間に護身用の刀を出したの?黒甲衛は梁遐の両膝に矢を放ち、逃亡を阻止した。老夫人は溺愛する梁遐に抱きついて悲しみに暮れたが、当の息子は母が自分のために何もしてくれなかったと嘆く。父は養子である長兄の無忌を州牧に推挙し、家主には二兄の梁尚を指名した。これも一族に有能な子弟がいなかったせいだが、梁遐は嫡子で志もある自分だけ何も手に入らなかったと母に八つ当たりする。「俺がこうなったのもお前のせいだ!いちいち騒ぎ立てるから収拾がつかなくなっただろう?!」凌不疑も少商も梁遐が誰かにそそのかされて急に事を起こしたと分かっていた。そこで不疑は廷尉府に梁遐を連行し、首謀者の名を聞き出すことにする。しかし梁遐が何か言いかけた時、上階から梁無忌が放った矢が喉を貫通した。皇帝は梁州牧が証人の口を封じをしたと知り激怒した。これでは自ら首謀者だと明かしているようなものだが、梁無忌はこの件を追及しても大局にとって利なしだと訴える。皇帝も子晟もその意味を悟っていた。そこで皇帝はひとまず梁州牧を下げる。「子晟…首謀者はもしや太子妃の従兄では?別院の警護を任されておるし」「孫勝(スンション)ならもう捕らえました、解放すれば数日も生きられないでしょう 首謀者が誰なのか、陛下もすでにお気づきかと…」その夜、越姮(ユエホン)は永楽宮に三兄を呼びつけ、厳しく追及した。「亡き大兄の半分でも知恵があったら太子を陥れようなんて愚かなことはしない!」「不服だったのだ… もともと饟(ジョウ)県越氏は安泰だったのに、なぜ文(ウェン)氏と共に造反せねばならなかったのか」小越侯は妹から何度、諌められても諦めがつかず、恨み言を漏らした。本来なら妹が皇后となり、三皇子が世継ぎとなって次の皇帝になれたはずだという。しかし越姮は三兄が自分たち母子のためではなく、自分が国舅(コッキュウ)になりたいだけだと分かっていた。「霍翀(フォチョン)に代わって不満を言える立場?! 三兄、なぜ孤城に遅れて到着したの?瘴気(ショウキ)を口実に霍翀を死に追いやろうとしたのでは?」「言いがかりだ!」すると越姮は凌不疑のこと、貨幣の鋳造の件も韓武(ハンウー)に刺客を送り込んだことも、少なからず証拠を揃えているはずだという。それでも上奏しないのは越氏の面子を考えて三兄の自首の機会を与えてくれたのだろう。「なぜ瘴気に毒があると言いながら馬だけは無事だったの?なぜ軍報には記されてなかったの? 答えなさいっ!」「…救援の要請を受け出征後、道中で前方に瘴気があると知ってな しかし調査した斥候が瘴気は問題ないと報告した ちょうどその頃、乾安(ケンアン)王の軍も急いで向かっていた そこで考えた、乾安王の救援の時間を遅らせることができたら陛下は宣(シュエン)氏を咎めるとな だから斥候を殺した」その話を皇帝と凌不疑が聞いていた。凌不疑は越妃の公正な判断のおかげでついに小越侯の尻尾をつかんだ。あの時、乾安王は長年、不仲だった小越侯を信じられず、自ら一隊を率いて瘴気を調べに向かったという。やがて配下の彭坤(ポンクン)から乾安王が瘴気に侵され、密林で死んだと報告を受けた。しかし瘴気に毒はなかったはず、つまり彭坤がこの機に乗じて乾安王を殺害し、兵権を奪ったのだろう。一方、孤城は雍(ヨウ)王が兵器をすり替えたせいで10日は持ちこたえられる所、2日で陥落していた。孤城の惨劇は奇しくもそれぞれの私心が重なり招いた結果だった。小越侯は武器のすり替えなど知らなかったと否定、確かに援軍が遅れるよう画策したが、たとえ数日、遅れても間に合うと確信していたからだという。「乾安王を殺してなどおりません!ましてや兵器のすり替えなど… 陛下、私は孤城陥落とは無関係です!」しかし15年前ならいざ知らず、皇太子を失脚させるべく罠にはめたことが皇帝の逆鱗に触れた。兄との今生の別れを覚悟し、そっと目を閉じる越姮。すると皇帝は越氏一族の忠誠と生き残った兄妹に免じて命は奪わず、爵位を剥奪して皇陵の墓守を命じるという。越姮はむしろ皇帝の優柔不断さに驚いたが、凌不疑は反発する様子もなく、ただ黙っていた。凌不疑が長秋宮に戻るとまだ少商がいた。少商は今日のことを両親が知れば説教されるため、帰らなかったという。「無茶をするなと言ったのに、なぜ危険を侵す?」「私でなければ誰が皇后と太子の汚名をそそぐの?…助けたかったの、だから怒らないで」「はぁお、責めないよ、でも君に何かあったら自分を許せない」すると少商は凌不疑の眉間の皺を伸ばした。「孤城の件は決着したのに嬉しくないの?」「少商…家族を傷つけた相手を法で裁けないとしたらどうする?」「まだ敵がいるの?」「いや、仮定の話だ」「私はやられたら必ずやり返す、家族を傷つけた人は許さない、千倍にして返すわ」「ではもし復讐することで愛する人を傷つけるとしたら?」「…人生は取捨選択、重要な方を選ぶ」その答えを聞いた不疑は思わず少商を抱きしめた。一方、屋敷へ戻った袁夫人は息子に妻を選ぶよう勧めていた。母の思わぬ言葉に驚く袁慎、実は夫人は息子の意中の相手が程娘子だと気づいたという。袁慎は少商が婚約してから何度も縁談を探したが、満足する相手が見つからなかったと話した。「今になって思えば、面影が重ならぬからかも…一手の遅れが運の尽きでした しかし程少商が成婚しても私は日々を生きていかねば」↓(´ω`)しょぼん凌不疑は越妃に呼ばれて再び永楽宮を訪ねた。実は越姮が兄を誘導して処罰させたのは霍家と霍兄、そして何より子晟のためだという。「兄に対する処罰に不満でしょうね… でもあなたには長年のわだかまりを捨て成婚して欲しい、普通の暮らしをするべきよ」しかし不疑は小越侯の処分に不満はなかった。舅父は小越氏の手で死んだわけではなく、越氏とて大勢が亡くなっている。「皇帝が厳罰を避けた心情を子晟も理解できます 今後は越氏に償いは求めません、ただし黒幕の罪は一生を費やしても償いきれないでしょう」すると不疑は帰ってしまう。つづく( ๑≧ꇴ≦)うわっ!不吉な予感!w子晟、どうやら黒幕を知っているみたいだねそれにしても袁慎がらしくなくてちょっとつまらないw
2023.10.30
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第29話)最終話「輝く星河の下」程少商(チォンシャオシャン)は梁邱起(リャンチゥチー)たちと郭(カク)村に入った。郭村は天下の食糧庫、1年の生産でいくつもの都城を養うことができる。少商は貯蔵された油を回収して水源を探すよう命じたが、ふと王延姫(ワンイエンジー)の言葉が頭をよぎった。…皇太子が訪ねる郭村の道中に油を撒いたわ…少商は火が起これば高所から吹いてくる風に煽られ、村だけに留まらないと気づく。「田朔(ティエンシュオ)は峪(ヨク)州の食糧を焼き尽くし、民を飢えさせて国の根幹を崩すつもりね」その時、突然、村に火矢が飛んできた。一方、霍不疑(フォブーイー)は梁邱飛(リャンチゥフェイ)たちと皇太子を援護し、田朔を追いつめていた。しかし山の向こうから黒い煙が上がるのが見える。「霍不疑、私の術中にハマったな? 郭村には勇者200人がいる、油で広大な田畑を焼けば天下の民は死ぬしかない、ふふ 確か皇帝は仁義に篤いのであろう? 息子を救って民を見捨てたとなれば、衆口にどう向き合うのか見ものだな!」田朔は勝ち誇ったように笑ったが、不疑は郭村なら少商が守ると自信を見せた。驚いた皇太子は再び少商を失えば一生、後悔すると訴えたが、不疑は退こうとしない。「霍不疑…国や民を思う忠良を気取りながら、結局、権貴を選ぶのか?! 文(ウェン)賊に取り入り、無能な太子は救うが自分の女は見殺しか?!この偽善者め!」「少商と約束した、天下を第一に夫婦で肩を並べ戦うと… 少商は知恵と勇気で必ず郭村を守り抜く、私はそう信じている」不疑は田朔に襲いかかり、胸を突き刺した。「グッ…お前の手で死ねたら忠義の名に恥じぬ」「殺せと挑発を?…戻帝が臨終の際、名のある官員や宮人は全て殉死したな お前が生き延びたのは無名の虫ケラに過ぎぬからでは?」「黙れ!忠臣が虫ケラなわけがない!敵討ちのために私を生かしたのだ!」田朔は不疑を出し抜いたつもりだったが、逆に足下を見られ激しく動揺してしまう。「敵討ちを託したか…それとも名を覚えていないだけか?」結局、不疑は止めを刺さず、田朔から剣を引き抜いた。「郭村へ!」その頃、焼き討ちをかけられた郭村では少商や梁邱起たちが身を挺して民を守っていた。じりじりと迫る残党たち、しかし間一髪のところで知らせを受けた程家が駆けつける。「嫋嫋(ニャオニャオ)に指一本、触れるな!」少商が父の声に気づいて振り返ると、激しい煙の合間から両親や兄夫婦たちの姿が見えた。「嫋嫋!阿母が来たわ!」こうして程家は一丸となり郭村の民と田畑を守り抜く。霍不疑は必死に郭村まで馬を駆けたが、到着した時にはすでに戦いが終わっていた。「郭村は無事よ、私たちは勝った…」「勝ったんだな」再会を果たした2人は固く抱き合い、ようやく夫婦一心となった。深傷を負った袁慎(ユエンシェン)は軍営で静養していた。すると幕舎に不疑が現れ、いつまで寝ているのかとしつこく聞いてくる。「私はお前の家の居候か?口うるさいぞ?」「妻を心配させるからだ」袁慎は大事ないと安心させたが、最後に伝えたいことがあった。「私と少商は似ていると思って来たが、間違いだった 両親の影響で私は深い情愛を嫌悪していた 幼心にも誠実すぎる情愛は刃や劇毒も同じだと感じたのだ 前途ある己の足を引っ張り、志を奪ってしまうと… だが少商は違った、だからお前たちは情愛が深いのだな」「…お前が気に食わなかった、だがこの5年、少商が最も辛い時に見守ってくれた だが安心してくれ、もう彼女を辛い目には遭わせない」「どうだかな、さもなくば…」「その心配はない」袁慎は即答する不疑に失笑し、これで少商への想いにけじめをつけた。子晟(ズーション)と少商の復縁は皇帝の耳にも届いた。その夜、皇帝は越(ユエ)皇后と夜空を見上げながら、これも宣神諳(シュエンシェンアン)が静かに2人を見守ってくれたおかげだと感慨深い。一方、軍営でも少商と不疑が満天の星空を見上げていた。「故人は本当に星になるの?」「昔、私もこうして星河を見上げたものだ、父母や兄妹が星に姿を変えて私を見ていないかと… それで分かったんだ、彼らに語りかけていると、声が届いた時には星が瞬く」「…皇后?私です、少商です、聞こえますか?」すると驚いたことにある星が瞬いた。「皇后だ…阿父、阿母、彼女が一生を共にする相手です、見えますか?」不疑が家族に少商を紹介すると、いくつもの星が一斉に輝いた。「皇后は私たちの復縁を望んでいたわ、だからきっと喜んでいるはずよ」不疑は少商の手を取り、愛おしそうに見つめた。すると少商は不疑の手首にある″少商の弦″に目を留め、これを見るたびに胸が熱くなるのを感じたと明かす。「子晟、あなたは情が深く感情豊かで純粋な心を持っている、この天下で一番の郎君だわ あなたとの出会いはこの上ない幸せよ」「少商、君は最も純粋で善良だ、確固たる意志を持ち、この天下で誰より勝る女子だ 君に出会えて私もこの上なく幸せだ」2人は互いの真心を捧げ合い、唇を重ねた。しかしちょうど幕舎から出て来た程始(チォンシー)と蕭元漪(シャオユエンイー)に見られてしまう。程始は父として何とも複雑な気持ちだったが、愛妻に諌められて目をつぶるしかなかった。「えっへん…霍不疑よ、娘を託したぞ だがうちの嫋嫋に不義理をしたら程家が一丸となって殴り込む」「…ぜひ」その時、程頌(チォンソン)と万萋萋(ワンチーチー)、程少宮(チォンシャオゴン)、程姎(チォンヤン)、青蓯(チンツォン)も天幕から出て来た。曲陵(キョクリョウ)侯府では老夫人が夜空に手を合わせ、天の加護に感謝していた。少宮の手紙によれば大郎と嫁が再び功績をあげ、頌児夫妻まで手柄を立てたという。しかも霍将軍と四娘子はそのまま驊(カ)県で成婚するとあった。「婚約ではない、成婚よ?これで聘礼(ヘイレイ)の品も逃げないわね、ぶははははは~! 孫娘の成婚を阻む度胸のある者はいるかしら?!」実は2人の成婚を阻む者が宮中にいた。「驊県で成婚だと?!だが朕がその場におらぬぞ?!無効だ!絶対に許さぬ! 今すぐ2人を呼び戻せ!都で再度、婚礼をやり直す! あんまりではないか!この日のために長年、苦心して来たのは朕だ!」すると越皇后は呆れ果て、寝殿に戻ってしまう。そんな皇帝の嘆きなど知る由もなく、程家は揃って星河を見上げながら幸せに包まれた。完( ˙꒳˙ )2ターン目も終わったw配信の時はあっという間に挫折しかし明蘭の時と同樣、10話まで我慢すれば面白いと聞いて日本上陸を機に再度チャレンジいや〜諦めないで良かった!ただこれ原作ではタイムスリップものなんですよねそれを知った上で見ると嫋嫋の心情も分かりやすかったかなさて管理人的最終話は54となりました追憶のような最後を期待していたので、この安易なまとめ方にちょっと肩透かし途中でまさかの必殺早送りが出そうになりましたが、ここでウマーで駆けるウーレイ登場!ウーレイがコーナー攻める!攻める!wwwなるほど、全てはこの瞬間のためにあったのね! ←いや違うwもう内容はどうでもいい! ←え?wだってウーレイがカッコいいんだもの♡( ˶´꒳`˵ )
2024.01.03
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第12話)第39話「積もる痴情のもつれ」皇帝に呼ばれて参内した小越(ユエ)侯。すると崇徳(スウトク)宮には杖刑で負傷した凌不疑(リンブーイー)の姿もあった。「越卿、実はそちに相談があってな…五公主とそちの末息子を早く成婚させたい」小越侯は困惑した。今や都中が五公主の噂でもちきり、そんな中で成婚すれば越氏まで影響を受け兼ねない。しかし皇帝は越氏があえて今、五公主を嫁に迎えることで噂が嘘だと示し、五公主の名誉を守りたいという。小越侯は皇帝の命に背くこともできず拝命するしかなかったが、これが凌不疑の差し金だと分かった。一方、皇太子の想い人だった曲泠君(チューリンジュン)は旧友と積もる話もできないまま慌ただしく宮中を出た。夫・梁尚(リャンシャン)が曲泠君をぞんざいに扱う様子を目の当たりにした五皇子妃は、かつて仲良く遊んでいた友の境遇が気がかりでならない。しかし程少商(チォンシャオシャン)は常識的で誠実だと評判の梁(リャン)州牧(シュウボク)が義兄なら夫人も大丈夫だと安心させた。その頃、梁尚は苛立ちながら曲泠君を連れて城門を出ようとしていた。すると東宮の使いが現れ、辞別の品を届ける。曲泠君は夫の手前、辞退したが、使いは皇太子が別れを惜しんで自ら授けた品だと釘を刺した。そこで代わりに梁尚が化粧箱を受け取ったが、中身が皇太子の手巾だと知るや馬車に乗り込むなり曲泠君に暴行してしまう。走り去る馬車から漏れ聞こえる曲泠君の悲鳴、皇太子妃はその声を城楼で耳にしながらほくそ笑んでいた。そんなある日、凌不疑が長秋宮にやって来た。少商はちょうど皇后や皇太子夫妻と談笑していたが、驚いたことに曲泠君が夫を殺したという一報が入ったという。「廷尉府が捕らえに向かいました、殺めたのは昨日の午の時の頃だとか 曲泠君が食事を届け、その後、刺された梁尚を下僕が発見しました」しかし皇太子が殺したのは曲泠君ではないと断言した。実はその時間、皇太子と曲泠君は紫桂(シケイ)別院で会っていたという。一方、梁府では廷尉府侍郎である袁慎(ユエンシェン)が舅父・梁無忌(リャンウージー)と対峙していた。袁慎は不明な点が多いため廷尉府が遺体と容疑者を預かると決めたが、公にしたくない舅父に邪魔されてしまう。「お前の母も梁家の嫡女だ、母方の名声にも関わる、連行はさせられん」結局、袁慎は伯父に阻まれ断念、改めて人を遣わすことにした。皇太子妃は皇太子と曲泠君が密会していたと知り深く傷ついた。「それほど彼女は魅力的ですか?再会しただけで理性を失わせ、醜聞を引き起こすとは… しかも死人まで出して、とても取り繕えない」皇太子妃は曲泠君が皇太子と復縁するため夫を殺したと決めつけると、ついに皇太子は堪忍袋の尾が切れた。「彼女と会ったのは梁尚から十余年も乱暴されていたからだ 曲泠君の悲惨な境遇もそなたのせいだ!答えよ、余の手巾がなぜ曲泠君の手に?」実は皇太子妃の嫌がらせは今日に限ったことではなかった。皇太子は皇太子妃がこの十余年、自分の名義で梁家に事ありげな品を贈り続けていたことを把握していたという。これでは梁尚が自分たちの関係を疑い、乱暴するのも当然だった。少商は衝撃の事実に驚愕、その時、初めて東宮を訪れた時のことを思い出し、はっとする。あの時、確かに皇太子妃は自分のかんざしを外し、梁夫人に渡すよう指示していた。しかし皇太子妃は原因なら皇太子にあると反発する。「曲泠君にとってこの十余年は生き地獄だったしょう、では私はどうだったと? 枕を同じくしても殿下の心は遠く離れていた…私の心が痛まないとでも思いますか?」「縁は切れたと言ったであろう?!成婚した時に誓った、そなたと余生を歩むと… だかそなたは改めもせず、結果、今に至り、余が好まぬばかりか、宮中の誰にも尊敬されぬ」すると皇太子は皇太子妃に最後の機会を与えた。「望むなら曲泠君のために陛下の前で余と一緒に嘆願するのだ 望まぬのならすぐに消えうせろ!」「…曲泠君はまるで私と殿下の心に刺さる棘のよう あんな女、今すぐ廷尉府の牢に入れられ死ねばいいのよ!絶対に嘆願などしない」皇太子妃は積年の恨みをぶちまけ、皇后に拝礼して長秋宮を出た。その夜、皇太子は父皇に事情を説明し、廷尉府に曲泠君の潔白を証明してほしいと嘆願した。皇帝は臣下の妻と密会していた皇太子に激怒、すぐ廃することもできると怒号を響かせる。「男女が別院で密かに会いながら潔白だと主張して誰が信じるというのだ?! 天下の見本になるべき太子が男女の情などで己の名声を壊すとは!」すると皇后が矢も盾もたまらず、涙ながらに母として子を信じると訴えた。「陛下は父として息子を信じてくださいますか?」結局、皇帝は東宮と天下のために示しをつけるとし、子晟(ズーション)に真相解明を命じた。凌不疑は拝命して寝殿を出た。すると物陰で聞き耳を立てている少商を見つける。ばつが悪い少商だったが、調査に行くなら一緒に行きたいと頼んだ。本当のところ不疑は嫁選びを誤り、自分の首を絞める結果になった皇太子に呆れているという。しかし少商は皇太子の果敢な決断に敬服すると言った。「太子が自分の名誉のために曲泠君の苦難を見過ごせば、それこそ失望するわ …ねえ、行ってもいいでしょう?」「分かった、だがかき乱さないと約束してくれ」「いつ私がかき乱したの?」「いつもだろう?」凌不疑は黒甲衛(コクコウエイ)を引き連れ、梁家の捜査にやって来た。梁州牧と梁尚の同腹の弟・梁遐(リャンシア)が現場となる部屋に案内したが、まだ生々しい血の痕が残っている。不疑は同行した少商を気遣い、曲泠君の様子を見て来るよう頼んで外へ出した。「私は梁州牧に話がある、事は梁府の男全員に関わる…全員に同席してもらおう」その頃、曲泠君は子供たちと引き離され、君姑から容赦ない制裁を受けていた。「お前を打ち殺してくれる!息子の敵討ちだ!」驚いた侍女・幼桐(ヨウトン)は咄嗟に主に覆い被さってかばったが、そこへ少商が駆けつけ止めた。「老夫人、調査中なのに私刑に処すとは…」しかし老夫人は少商が皇后付きだと知り、皇后が息子を助けるため送り込んだと誤解してしまう。「自分の息子は大事で、私の息子は死ねばいいというの?そんな理不尽なことがあると?」老夫人は興奮して再び曲泠君を打ち据えろと叫んだが、その時、袁慎が母を連れてやって来た。袁夫人は早速、長老を呼び集め、嫡女として一族の掟に従い審理を始めた。当時はまだ父の側女だった庶母、寒門の出なのはともかく、狭量で私心しかなく、到底、父の妻とは認められないという。すると老夫人は正妻となっても一族に見下されていたと不満を漏らした。溺愛する梁遐を仕官させたくても一族が推挙してくれず、家主にしようとしても年功序列だと言って機会を与えてくれなかったという。しかし袁夫人はそもそもこんな騒動となった発端は老夫人にあると指摘した。実は老夫人が正妻になったのは梁尚を産んだ時ではなく、梁遐を産んだ時だったという。そのため老夫人は梁尚が庶出だと知られるを嫌って梁遐にばかり目をかけ、そのせいで梁尚は神経質で疑り深い性格に育っていた。「末子に家主を継がせたいから曲泠君の断罪を急いだのね 梁家がなければ甲斐性なしの2人の息子の命など何の価値もないけれど…」袁夫人は聡明な曲泠君がなぜ虐げられても訴え出なかったのか訝しんだ。実は曲泠君は何度か離縁を申し出たが、梁尚から皇太子との醜聞を言いふらすと脅され断念したという。子ができてからも離縁を考えたが、出て行くなら子を置いて行けと迫られ諦めていた。すると袁夫人は事件当日、梁尚に食事を届けたのは誰なのか確認する。「侍女の幼桐です」その頃、凌不疑は梁家の男たちを集め、この中に犯人がいると踏んでいた。女が背後から一太刀(ヒトタチ)で胸を刺し、命を取るのは難しい。しかも梁尚は交友がなく、終日、部屋に閉じこもって金石の彫刻に没頭していた。「彼に恨みがあり、利害を争うのは外部の人間ではない、梁家の者だけだ 本件は太子に関わり、たった1日で都中に広まった 犯人の手際がいいのも呼応する者がいたからだ それに梁尚は梁家家主、家主が死んで夫人が犯人となれば梁尚の子は家主の座を継げない つまり取って代われる者こそ、犯人の可能性がある…梁州牧、あなたが真犯人では?」つづく( ゚ェ゚)… ←皇后も所在なさげw
2023.10.28
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上阳赋 The Rebel Princess第45話「喜と悲」馬子澹(バシタン)は皇帝陵に戻る前、密かに蘇錦児(ソキンジ)と接触した。「…彼女はどうだ?」「王妃はお元気です、大王も王妃を大切になさっています」「やはりそうか…容易に手に入らない女だ、大切にして当然だ」すると錦児はいずれにしても王儇(オウケン)は豫章(ヨショウ)王の妻だと釘を刺した。しかし子澹は心の赴くまま生きると伝え、それより自分に協力して欲しいという。「安平王の頼みなら命でも差し出せます」「…王妃を裏切ることになってもか?」「もう裏切っています、あなた様のために…」一方、父の死を知った王儇は衝撃のあまり倒れた。駆けつけた申(シン)太医は鎮静薬を飲ませて王妃を眠らせたが、心労により古傷や流産で弱っていた身体は衰弱、また何かあれば命の危険もあるという。しかし幸いにも豫章王府には賀蘭箴(ガランシン)が贈った氷綃(ヒョウショウ)花があった。申太医の話ではこの貴重な花は傷を癒やし、寿命を延ばす効果があるという。「この花を煎じて飲めば十数年は寿命が延びます…その代わり決して懐妊してはなりませぬ」子澹は錦児が自分を皇都へ戻すため、従姉の皇后・謝宛如(シャエンジョ)の間者になったと知った。「しかし私が今世で忠誠を誓うのは安平王ただお一人です」すると子澹は自分を助けたいなら皇后であれ豫章王府であれ、ささいな動きも全て自分の腹心に伝えるよう頼む。「私の帰りを待て、お前への恩は忘れぬと約束する」王儇は幼い頃の幸せな夢を見ながら、このまま目覚めたくないと願った。しかし現実に引き戻され、氷綃花の薬を飲むことになる。蕭綦はいつものように口直しの砂糖菓子を差し出したが、王儇は口にしなかった。「両親を亡くして知ったわ、薬の苦さなどたかが知れていると…」すると蕭綦は幼い頃、両親を疫病で失ったことを思い出し、確かに永遠に続く痛みだという。思えば長く軍にいて多くの命を奪い、自分の両手は血にまみれていた。「そんな私への罰として子を持てぬのなら何も文句は言えぬ だが…天は私を気遣い、そなたを妻としてくださった」蕭綦は正直に王儇の身体では子供を産むのが難しいと伝え、2人で生きて行こうと励ました。我が子が母を失うくらいなら子はいなくていいという。「この人生では子がいなくていい」蕭綦は阿嫵(アーウォ)を抱き寄せると、王儇はしばし蕭綦の胸で泣いた。。゚(∩ω∩`)゚。だーわんその夜、皇帝・馬子隆(バシリュウ)は身重の皇后の様子を見に行った。宛如は政務で疲れた皇帝を気遣ったが、子隆はしみじみ謝家の女子は男の心をつかむのがうまいと感心する。「父皇が謝貴妃を寵愛した理由が分かる」「(はっ)他意はありません、陛下に尽くしたいと思っただけで…」「打算などとは思ぬ、そなたの心はよく分かっておる」←いや分かってないwすると宛如は近頃、お腹の子が何度も寝返りを打ってよく眠れず、どうも心が落ち着かないと言った。「どんなことであれ見過ごさず、用心した方がよいのでは?」一方、皇太后は王倩(オウセン)の失敗にもめげず、新たに選抜させた妃嬪たちを入宮させていた。しかし目を掛けていた娘・顧采薇(コサイビ)が選ばれなかったと知り、側室が駄目なら甥・王夙(オウシュク)の相手にするのも悪くないという。忽蘭(クラン)の使者として皇都に来ていた賀蘭箴たちは帰国の途についた。一行の中には賀蘭拓(ガランタク)に嫁ぐ王倩の馬車もあったが、見送りは一人もいない。同じ頃、豫章王府の前には宋懐恩(ソウカイオン)が花嫁を迎えに来ていた。義妹の門出を笑顔で送り出したい王儇だったが、これまで苦楽を共にして来た蕭玉岫(ショウギョクシュウ)との別れに涙をこらえるだけで精一杯となる。「行きなさい…」すると玉岫は最後に叩頭し、別れの挨拶とした。粛毅(シュクキ)伯府で宋懐恩と玉岫の盛大な祝宴が行なわれた。懐恩は酔った勢いで床入りの儀へ向かったが、玉岫の花嫁姿にあの日の王儇の姿を重ねてしまう。そんな王妃への秘めた思いを隠し、懐恩は玉岫を抱きしめ、全てを心の中に封じ込めた。懐恩は新妻を残し、江夏王と共に江南へ旅立った。王夙と宋懐恩は早速、治水工事に取りかかったが、造っても造ってもすぐ雨で崩され、やがて人も馬も限界に近づく。水害により広まった疫病もいよいよ薬が底をつき、このままでは持ちこたえられそうになかった。ともかく排水路が完成しなければ話にならず、王夙は働き盛りの男を工事に合流させる命令を出すと決める。「労働時間別に食料を分ける、そうすれば兵士も休めるし、避難民には仕事ができる」その夜、皇都も雷雨になった。王儇は窓から外を眺めながら、江南ではどれほどの雨なのだろうと兄を心配する。思えばこの時、王儇は兄との別れで泣いていなかった。恐らく兄が江南へ夢を叶えに行ったからだろう。…しばらくして予想通りの結末になったと知ったが、その間、何が起きたのかは予想できなかった…のちに哥哥と再会した日、何もかもが変わり果ててしまっていた一方、宮中では突然、皇后が産気づいていた。つづく(  ̄꒳ ̄)色々とフラグが立ってます
2022.02.10
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第14話)第41話「約束の地」皇太子妃孫(スン)氏は庶民に降格、北宮送りとなった。もはや孫氏を気に掛ける者などいなかったが、程少商(チォンシャオシャン)だけが最後の別れにやって来る。「…約束を守って成婚した太子殿下と支え合いながら縁を大事にするべきでした 殿下が曲泠君(チューリンジュン)を忘れられなかったのではない、あなたが思い出させたのよ? 自分の不幸を人のせいにしないで」しかし孫氏は非を認めず、反省すべきことなどないと頑なだった。少商は話しても無駄だとあきらめ、帰ることにする。「あなたを縛り付けているのは宮中ではない、あなたの心よ?」こうして冷宮の門は堅く閉じられた。少商はようやく皇太子と曲泠君が結ばれると思ったが、驚いたことに曲泠君は梁無忌(リャンウージー)に再嫁すると知る。確かに梁州牧(シュウボク)はこれまで身を挺して曲泠君を庇っていた。凌不疑(リンブーイー)は磊落(ライラク)な梁州牧のこと、成婚後は曲泠君の子を我が子とみなしてくれるはずだという。すると少商はしみじみ子晟(ズーション)と巡り会えたことに感謝した。「自分は不運だと思っていたけれど、これまでの運をためてあなたに出会えたのね… 私は運が良く、見る目もある、ふふ」「見る目があるのは私だろう?」そんなある日、寿春(ジュシュン)に有事との急報が舞い込んだ。文(ウェン)帝は早速、寿春平定のため策を練ることにした。集まったのは凌不疑と将軍の万松柏(ワンソンバイ)、崔祐(ツイヨウ)の3人、どちらにしても寿春は挙兵に適さない土地のため、孤立させれば落とすのは早い。そうと知ってか、今回は朝臣や世家が適齢の子息たちを軍に入れて鍛えたいと嘆願する上奏が絶えなかった。とは言えひ弱な子息たちを率いるのは難儀だろう。すると成婚を控えた凌不疑が出征したいと名乗りを上げ、皇帝の逆鱗に触れた。少商は戦術会議に手作りの甘酒を差し入れるつもりだった。しかし凌不疑が皇帝を怒らせてしまい、届けられそうにない。不疑が心配で心ここに在らずの少商、そこで皇后は皇帝を説得する知恵を授けた。皇帝は将軍2人を追い返し、子晟の首根っ子を捕まえて部屋の隅に立たせた。「この青二才め!寿春などお前が案じるまでもない!」「彭坤(ポンクン)も孤城の陥落を招いた一因、戾(レイ)帝と結託していたはずです」不疑は彭坤に直接、確かめたかったが、皇帝は都でおとなしく成婚を待つよう言い聞かせた。「万が一があれば成婚できないぞ?!」少商は甘酒の差し入れを口実に崇徳(スウトク)宮にやってきた。実は皇后から皇帝に伝言があるという。「将軍は戦場へ馳せるべし、都に隠れ、怠惰であれば、子晟の徳は位負けすると指摘される…」「本当に皇后が言ったのか?」皇后は皇太子の一件から身体が衰える一方だった。皇帝もそんな中での諫言を無視できなかったが、やはり子晟を無事に成婚させなくては気が休まらない。しかし少商は子を思うなら背後から支持すべきだと諌め、親だけでなく妻も夫を支持する必要があると訴えた。皇帝は仕方なく子晟の出征を認めた。ただし彭坤を捕らえてすぐ都に戻り、必ず予定通り婚儀を上げろと命じて2人を解放する。すると少商は凌不疑の顔を両手で挟み、まじまじと見つめた。「じっくりと眺めて覚えておかなくちゃ 阿父が戻った時は目の半分と歯が白いだけで、残りは真っ黒だったから 身を粉にして戦わないで、墨と成婚するのは嫌だもの」「それほど心配ならなぜ陛下に出征を勧めたんだ?」「舅父の死と孤城の全滅はあなたの心痛であり、わだかまりでもある ご不調の皇后の世話がなければ私もあなたと敵を倒しに行っていた …子晟、あなたが彭坤を捕らえる姿を見たかった、敵討ちの痛快さを私も味わいたいもの」「はお、その言葉だけで十分だ」「早く戻ってきてね、待ってるわ、あなたが娶ってくれるのを」「最も盛大な婚礼を挙げるよ、待っていてくれ」ある夜、少商は大きな荷物を背負い、黒衣で変装して凌軍の大営に潜入した。しかし難なく将軍の天幕に到着、もしこれが敵の偵察だったらあっさり手中に落ちているだろう。少商はあきれたが、凌不疑は巡回中の兵士たちが気づかないと思うのかと笑った。実は兵士たちはわざと将軍の新婦を見逃し、それとなく将軍の天幕まで誘導してくれたという。「つまり私を笑って眺めていたの?…チッ!クソリンブーイー(ボソ」すると不疑は出発前に贈り物があると言った。凌不疑は少商を連れて櫓に登り、草原を指差した。実は皇帝に凱旋後、何が欲しいか問われ、軍営の横の土地と答えたという。不疑は少商が自分で屋敷を建てるのが夢だと覚えていた。「そこが私たちの住む屋敷になる、全て自由にしていい、今後、あの地が私たちの家だ 求めていただろう?正真正銘の自由な地を…そこなら誰にも責められず、誰からも足蹴にされない あの地で子を産み育て、老いていく、連れ添いながら…」少商は感激のあまり声が出なかった。誤解した不疑はまた勝手に決めたことを謝ったが、少商は喜んで口づけする。「気に入ったわ…」少商は自分も三叔父夫妻のように花や月を愛でながら、子晟と共白髪となり、生死を共にできると思うと万感迫る思いだった。「約束して、凱旋したら私たちの新しい家を建てると…」「はお、約束するよ」「私が危険を冒して来た理由が分かる?…贈り物を持ってきたの」凌不疑の出征の日、城門では若い未婚夫婦が別れを惜しんでいた。不疑は少商がくれた鎧をまとっていたが、少商の痛々しい指に気づいて驚く。「今後は2度と裁縫しなくていい」「鴛鴦が気に入らないの?」「鴛鴦?てっきり鶏の羽かと…」「鴛鴦よ!命を顧みない時、この羽を見れば都で待っている私を思い出すでしょう?」背後で控えていた護衛・梁邱起(リャンチゥチー)と梁邱飛(リャンチゥフェイ)は愕然となった。まさか若公主の甲冑に鴛鴦の羽が施されていたとは…。( ̄▽ ̄;)<出征したくなくなった…敵軍に笑われる「気に入らなければ羽は外していいけれど、この帷子(カタビラ)は脱がないでね 銅の糸と麻で織ってあるから、軽いけれど刀傷を防げる…兎の刺繍も入れたのよ?」「あれは兎?…鼠だとばかり」「兎よ…私の干支だから…」「そうだ、兎だ、君が兎と言えば兎だ」「…もともと兎なんですけど(ボソッ」そんな仲睦まじい若夫婦の様子を城楼から皇帝たちが眺めていた。皇帝と越(ユエ)妃は2人にかつての自分たちの姿を重ねて懐かしんだが、そこに皇后の入る隙はない。一方、少商の父も支援部隊として銅牛(ドウギュウ)県へ銅を運ぶ任務を命じられていた。程始(チォンシー)は娘が自分には襪子(シトウズ)すら縫ってくれなかったとぼやいたが、蕭元漪(シャオユエンイー)はあの恥ずかしい鎧を着たいのかと笑う。「そうだな、鶏の羽なんぞまとったらさらす顔もないw」凌不疑は必ず生きて戻ると誓い、馬にまたがった。すると少商に小さな袋を投げ渡す。中には凌府の印章が入っていた。「世の情人が結ばれるのは最も美しいことですね」皇后は若い夫婦の姿に感銘を受けたが、ふと寂しさを覚えた。…だけど私はそんな想いを味わえなかった…つづく( ;∀;) イイハナシダナーと思っていたのに、羽のせいで台無しよwwwww
2023.11.05
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上阳赋 The Rebel Princess第43話「誠意あるもてなし」江南の治水を任された江夏王・王夙(オウシュク)は王儇(オウケン)に誘われて慈安寺にやって来た。兄妹水入らずで過ごす亡き母の居所、すると王儇が保存していた治水策を返してくれる。王夙は3年かけて書き上げた治水策を懐かしんだが、もはや当時の勇ましい青年ではないとこぼした。もし失敗すれば大成に王氏の居場所はなくなるだろう。しかし王儇は今でも江南から戻った兄が治水策に情熱を注いだ姿を良く覚えていた。「信じているわ、母親(ムーチン)もきっと同じよ…私は皇都で美酒を用意して哥哥の帰りを待ってる」「…約束するよ、成功して戻り、その酒を飲む」賀蘭箴(ガランシン)は豫章王妃から文を受け取った。何でも急に予定を変更し、江夏王府で会いたいという。賀蘭箴は素直に屋敷を訪ね、確かに王妃が心からもてなしてくれるなら心変わりもあると意味ありげに言った。王儇は賀蘭箴の希望で庭園を案内した。すると賀蘭箴は大成を去る前に王儇と会いたかったとやけに馴れ馴れしい。しかし王儇は警戒し、自重するよう諌めた。「で、阿嫵(アーウォ)はここで育ったのか?」「…アーウォ?」何とか王儇とのわだかまりを解きたい賀蘭箴だったが、改めて″豫章王妃″と言い直した。「深読みするな、今日1日だけでも気兼ねない友になりたいだけさ」一方、薛(セツ)夫人は王儇が江夏王府に出かけ、夕食も済ませてくると知った。そこで急いで寝殿に戻り、王倩(オウセン)にこれが最後の好機になると伝える。父と兄が生きていればこんな屈辱は受けずに済んだだろう。しかし王倩は今となってはこれが最善の方法だと覚悟を決めた。薛夫人は王倩を美しく着飾ってから正堂へ連れて行った。「階段の下に兵がいるわ、私が気を引くからその間にこっそり入りなさい」すると薛夫人はわざと転んで兵士に助けを求める。王倩はその隙に上階へ一気に駆け上がり、豫章王の書斎に忍び込んで媚薬を仕込んだ。王夙は宴席をもうけ、賀蘭箴に公主を王倩以外の女に変えて欲しいと頼んだ。「もちろん礼は惜しみません」そこで賀蘭箴にも美しい娘を献上することにしたが、賀蘭箴はそれより王妃の舞踊が見たいという。王夙は妹への無礼に激怒、賀蘭箴を追い返そうとしたが、王儇は王倩を救うため条件を飲んだ。日が暮れる頃、蕭綦(ショウキ)が王府に帰って来た。ひとまず王倩は物陰に隠れて機会をうかがうことにしたが、思いがけず蕭綦が太医を連れて書斎に入ってくる。「王妃の病状は良くなったか?」「それは…ご存知の通り流産の時の出血が多く、懸命な治療で一命は取り止めましたが…」王儇の病は完治していなかった。実は王儇は例え懐妊しても身体がもたず、また流産すれば命の危険があるという。蕭綦は王儇の病状を知りながら王妃が唯一の妻であると公言し、笑顔の裏で苦悩しながら王儇に避妊薬を飲ませていたのだ。そんな献身的な大王のためにも太医はあらゆる手を尽くして王妃の治療薬を見つけると誓う。蕭綦はともかく王妃を生かすことが先決だと伝え、水を飲んで喉を潤した。王儇の舞踊が始まった。その舞を見た賀蘭箴は思わず席を立ち、王儇と共に踊り始める。「まさか忽蘭(クラン)の踊りを知っていたとはな…」賀蘭箴は王儇の誠意を受け取り、手厚いもてなしだったと感謝して帰って行った。賀蘭箴は蕭綦を始末する代償として王儇の要求を飲むことにした。忽耶奇(コツヤキ)は確かに王妃には並はずれた魅力があるが、蕭綦の死後に安平王・馬子澹(バシタン)に捧げる約束だと釘を刺す。「たかが女のために計画を棒に振ると?!」「分かっているさ…自分の心なら」王儇はかつて草原で見た忽蘭の踊りを覚えていた。すっかり悪酔いした王夙は門まで妹を見送りながら、なぜ王倩を助けるのかと首を傾げる。確かに玉岫(ギョクシュウ)の件は許せなかったが、それでも王儇は王倩が駒になるのを見過ごせなかった。「婚姻の強制が嫌なの…」「蕭綦との婚姻を根に持っていると?」「いいえ…彼は優しいわ」王儇は夫婦喧嘩のことを隠して帰ったが、王夙は徐(ジョ)女官の困惑した様子を見て何かあったと察した。「王安(オウアン)、馬車を用意してくれ、後を追う」蕭綦はひとりになると水の中に入っていた媚薬のせいで急に身体が火照って来た。何度も王儇の帰りを確認するが、まだ戻って来ないという。やがて蕭綦は衣をゆるめ、熱さのせいでまた媚薬入りの水を飲んでしまう。蕭綦の様子をうかがっていた王倩は朦朧として来たことを確認、ついに背後からそっと抱きついた。「帰って来たのか?」「…はい、戻りました」王倩は王儇を装って蕭綦を誘惑、すると蕭綦はそのまま王倩を押し倒してしまう。しかし蕭綦はふと阿嫵ではなく王倩だと気づいた。「…明日になったらここを去れ、2度と現れるな」憤慨した蕭綦は必死に理性を保ち、王倩を突き飛ばした。「…大王、仕方ありません、私を恨まないで」すると王倩は部屋を飛び出し、泣きながら王府を出て行ってしまう。その頃、豫章王府に戻った王儇は寝支度をしていた。すると徐女官が駆けつけ、王倩が裏門から飛び出し、池に飛び込んだと知らせる。王儇たちは慌てて様子を見に行ったが、すでに人だかりができていた。薛夫人はこれを利用し、娘が従姉の夫である豫章王に辱められたと吹聴する。思わぬ騒ぎに困惑する王儇、ともかくすぐ屋敷へ戻るよう命じ、大王を呼んでくるよう頼んだ。劉(リュウ)執事は急いで大王の書斎に駆けつけた。すると蕭綦が手首から血を流している。驚いた劉執事は咄嗟に戸を閉め、大王に駆け寄った。「大王!何事ですか?」つづく( ๑≧ꇴ≦)そうか、あの謎の踊りは忽蘭の鷹の舞だったのか…って、知らんけどw
2022.02.03
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第11話)第38話「愛を叫んで」凌不疑(リンブーイー)の企みにより情夫を囲っていたことが都中に知れ渡ってしまった五公主。程少商(チォンシャオシャン)は五公主の噂をわざわざ皇后の耳に入れた皇太子妃に憤ったが、皇后は皇太子妃の胸中をおもんばかった。思えば皇太子妃は五公主から日常的に侮辱を受けており、平静でいられないのも仕方がない。何より寿誕の宴で美しい曲泠君(チューリンジュン)の姿を見れば心中、穏やかではいられないだろう。実は皇太子にはもともと想い人がいた。曲泠君は皇太子妃より家柄や品格に優れ、当時は頻繁に宮中に来て皇太子ら兄妹と遊んでいたという。「2人が想い合っていることは誰の目にも明らかだった ただ陛下が故郷にいた頃に婚約を決めていたの、権力を得た後に破棄すれば信用を失う だから太子は約束通り孫(スン)氏を娶るしかなかった」「太子は約束を守らなければ良かったのに…」「子晟(ズーション)も同じことを言ったわ… 幼いながらも私や陛下にこの縁談は太子にとって害になるとね」しかし結局、皇太子は孫氏を娶り、曲泠君も別の人に嫁いでしまう。「聞くけれどあなたは心から子晟のことが好きなの?」「…好きです、以前は彼のことを天上の明月のような遠い存在だと思っていました でも彼も私と同じように血が通い、喜怒哀楽もある、想いは深まりました」「陛下は子晟が身を固めぬことを案じ続け、余は子晟を理解できる者が現れるだろうかと案じた 子晟があなたを選んだのは正解だったわ」その時、翟(ジャイ)媪(ウバ)が血相を変えて寝所に駆けつけた。「皇后!大変です!十一郎が陛下を怒らせ、杖(ジョウ)刑に処されると…」少商が駆けつけるとちょうど凌不疑が皇帝から叱責されていた。何でも不疑は少商を落水させた八家の息女を突き止め、その父兄を殴打したという。実は皇帝は五公主に加担した息女たちが普段から傍若無人に振る舞っているのではと懸念した。そこで父兄らが権勢を笠に着ていないか調査させていたが、賄賂をもらっていたことが発覚する。すると不疑はこの機会を利用し、廷尉府を無視して自ら制裁を加えていた。皇帝は皇権を乱用した私刑だと激怒、厳しく罰すると怒号を響かせた。驚いた少商は許しを乞うたが、不疑は嘆願なら必要ないと冷たい。「己の罪は己で償う…君と同じように私にも矜持(キョウジ)がある、これが凌不疑だ」少商は自分への当てつけだと気づき、無茶をして婚約を台無しにするつもりかと言いかけた。その時、不疑の口から思わぬ言葉が飛び出す。「辞官して君と隠居したい、君の求める田舎でな」凌不疑の無謀な行動は全て少商のためだった。そこで少商は昨日、自分と言い争ったことが原因だとかばったが、かえって皇帝からなぜ喧嘩ばかりするのかと責められてしまう。「今度、言い争ったら何だ、朕の崇徳(スウトク)殿を襲うのか?!」すると皇帝は罰として杖刑100回後、流刑に処すと命じた。少商は何とか見逃してもらおうと必死だったが、不疑はあっさり拝命すると告げて出て行ってしまう。「ちょ…凌不疑っ!」刑場はちらちらと雪が舞い始めた。少商は皇帝と共に城楼から刑の執行を見守ったが、やがて耐えられなくなり刑場へ降りてしまう。すると知らせを聞いた皇后と越(ユエ)妃が城楼へ駆けつけた。皇后は皇帝の非情な仕打ちに心を痛めたが、越姮(ユエホン)はこれが皇帝の謀だと気づく。実は軍営での杖刑には一見、血みどろに見えても大して支障のない打ち方があった。そうとは知らず刑場に入ろうとした少商は衛兵に止められながら、なりふり構わず叫んでいる。「子晟!誓うわ!2度とあなたと喧嘩しない! いくら私に怒っていても自分の身体を犠牲にしてまで意地を張るなんて馬鹿なことしないで!」そこで皇帝は少商を止めている衛兵の手を緩ませ、子晟に近づかせるよう命じた。少商は執行台へたどり着くと、杖を振り下ろそうとした衛兵を突き飛ばして刑を止めた。「子晟、今後は何事もあなたに相談すると約束するから… これからは真心をあなたに捧げる、私のために馬鹿な真似はやめて、いいわね?」すると少商は思わず凌不疑を抱きしめた。「もうとっくにあなたを愛していた…なぜ気づかないの?」「…今、何と言った?朕は聞こえなかったぞ?!何だって?!」城楼では皇帝が少商の気持ちを確認しようと必死だった。しかし越姮は聞こえずとも見れば分かると呆れる。安堵した皇帝は刑の中止を命じたが、皇后は皇帝のやり方に反発して帰ってしまう。凌不疑は幼い頃に過ごした長秋宮で静養することになった。夜になっても不疑が心配で落ち着かない少商、しかし皇后は医官がついているとなだめる。「翟媪に安神薬を用意させたわ、ずっと泣き続けて声も枯れたでしょう? 薬を飲んで早く眠りなさい」しかし少商は矢も盾もたまらず、こっそり不疑の部屋へ行ってしまう。不疑は少商の姿を見ると嬉しそうに身体を起こした。負傷した割には元気そうな不疑、少商は思えばあの時、子晟があまりにあっさり皇帝の罰を拝命したことに気づく。「負傷したのは芝居なの?」「なぜ芝居だと?」「私が心を傷めれば目的を果たせる」「…少商に心を痛めてもらえるなんて、こんな幸せはない」少商は子晟が愛しくなり、おでこに口づけした。すると2人は見つめ合い、自然と顔を近づけて唇を重ねる。「こんなことは成婚まで待つべきか?」「それは私の台詞でしょう?」少商は子晟に笛を吹いて聴かせた。すると不疑は灯会(トウエ)で初めて少商の顔を見た時のことを思い出す。「あの時も今のように君は美しかった」「だったらなぜ後日、会いに来なかったの?」「あることを遂げるまで娶る決断ができなかった」「一目見ただけで娶ると?」「一目で十分だ…一度、見ただけで分かった、余生を共にするのは君だけだとね」「この先、欺かれない限りこの少商、あなたを裏切らないわ」こうして何度もぶつかり合いながら愛が深まった少商と不疑。その頃、曲陵(キョクリョウ)侯府では蕭元漪(シャオユエンイー)がなかなか戻ってこない嫋嫋(ニャオニャオ)に苛立っていた。少商は皇后から賜った外套を母に届けたが、蕭元漪は皇后に懐いてすっかり母を忘れた娘からの贈り物に見向きもしない。程始(チォンシー)は思わず失笑し、会えなくなると気がかりになるのかと揶揄した。「夫人、嫋嫋は凌不疑と一緒になってから、さほど問題は起こしていない」「そうね、誰が予測できた?凌不疑の方が嫋嫋より常軌を逸しているなんて…」凌不疑が報復した八家のひとりは御史中丞だった。皇帝は不疑が乗り込んでめちゃくちゃにした御史台の修理を命じたが、不疑はこの機に乗じて15年前の越氏の軍報を持ち出すことに成功する。すると予想通り軍報には戦馬の損傷は記載されていなかった。「恐らく兵の死因も瘴気ではない、小越侯は嘘をついている」しかし証人の軍医が死んで韓武(ハンウー)も殺され、当の小越侯は狡猾でなかなか尻尾を出さない。「奴がボロを出さねば…仕向けるまでだ」つづく( ˘ω˘ )さすがに真心うんぬんはもう飽きてきた…それにしても今回は上手い人が多いね~
2023.10.24
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上阳赋 The Rebel Princess第46話「皇子の誕生」皇后・謝宛如(シャエンジョ)が産気づいた。臨月までまだ3ヶ月、急な早産に驚いた皇帝・馬子隆(バシリュウ)は昭陽殿に駆けつけ、何としてでも母子を守れと叱咤する。一方、夜中に起こされた皇太后は面倒臭そうに着替えていた。桂(ケイ)嬷嬷(モーモー)は皇帝がこの数日、辛(シン)貴人を訪ねていたため、皇后の気を引く作戦だと揶揄する。「まあいいわ、行きましょう、初孫には違いないのだから…」皇后は難産で苦しみながらもついに皇子を出産した。謝家の血筋だと冷静だった皇太后も、息子そっくりな孫を抱いて目尻を下げる。一方、王儇(オウケン)も翌朝、蕭綦(ショウキ)から皇子の誕生を聞いた。「時が経つのは早いものね…」一緒に育って来た兄の王夙(オウシュク)と宛如が親になったと思うと王儇は感慨深い。すると蕭綦はそのまま阿嫵(アブ)と寝所にこもった。その頃、北の地で死を装った王藺(オウリン)は道なき道を進んでいた。護衛は皇都に戻るよう勧めたが、警戒心の強い王藺は嘘とはいつか露呈するものだと戒める。そんな王藺にとって江南の水害が思わぬ助けとなった。「まさか私が行くとは誰も思うまい」護衛は疫病が蔓延していると反対したが、王藺は江南で治水にあたる息子・王夙を訪ねると譲らなかった。「心配ならここで待て」王夙が避難民を集めたおかげで人手不足は解消された。しかし梅雨はまだ1ヶ月は続くため、先手を打たねばならないと気を引き締める。そんな中、突然、見覚えのある美しい娘が王夙を訪ねて来た。「…采微か?久しぶりだな」聞けば顧氏は江南陵陽(リョウヨウ)の出身、大雨で祖父の墓が損壊したと知らせがあり、朝廷にいる兄の代わりに修繕に来ていたという。王夙は力を貸すと申し出たが、実は采微が来たのは治水に人手が足りないと聞いたからだった。「江南の士族は顧氏から恩恵を受けているため、力になれるかと…」宮殿で皇子の誕生を祝う盛大な宴会が開かれた。しかしなぜか主役の皇子と皇后の姿がない。その頃、宛如は泣き止まない皇子に苛立ち、宮女たちに八つ当たりしていた。皇子が病弱だと噂になれば皇太子の地位に影響しかねない。鄭(テイ)嬷嬷(モーモー)はかんの虫退治も試したが効果がなかったと訴え、仕方なくある方法を提案した。皇后が遅れて息子・馬静(バセイ)を連れて大殿に現れた。皇帝は早速、臣下たちに皇子を披露、阿嫵に自分の子供を見てくれという。そこで王儇は席を立ち、皇子を腕に抱かせてもらった。皇子は眠っていたが、なぜか顔が赤く、様子がおかしい。しかし王儇は何も言わず席へ戻った。祝宴はお開きとなり、王儇は申太医の治療を受けるため鳳池(ホウチ)宮に泊まることになった。「明日、迎えに来よう…酒は飲むなよ」「…はお」すると王儇は意味ありげに微笑んで蕭綦と別れた。王儇は道すがら徐(ジョ)女官に小皇子の様子が変だったと教えた。「ものすごく顔が赤かったの、でも汗は出ていなかった」しかし徐女官は多くの付き人がいる皇子に問題があるとは思えないという。王儇は皇子を抱いた時に酒気がしたと言ったが、確かに自分の匂いだったかもしれないと笑った。鳳池宮の宮女たちは郡主との再会を喜んだ。「お帰りをお待ちしていました!王妃、申太医がお待ちです」皇祖母から賜った鳳池宮は今も何ら変わっていない。…民たちは″宮殿は欲望の城だ″という…山のような財宝と権力があり、富み栄えた場所だと言うが…私にとって宮殿は鎖であり邪悪な獣そのもの、それでいて我が家のようにも感じる…好きだけど怖くもある…今なら分かる、宮殿には愛すべき親族たちがいるが、怖いのもまた彼らだと王儇は治療が終わると、中庭の木の根を掘り始めた。実は成人の儀の前にこの下に桃花酒を埋めたという。「せっかくだから味見しないと…」「大王の言いつけを忘れたのですか?」王儇は徐女官に叱られたが、2人だけの秘密だと説得した。「少しだけですよ?」「酔わないと誓うわ」しかしそこへ招かれざる客が現れた。皇太后は阿嫵が鳳池宮に泊まると知り、急に訪ねて来た。困惑する王儇をよそに酒を飲もうと誘う皇太后、しかし王儇は口をつけようとしない。そこで皇太后は昔話を持ち出して叔母と姪の情を懐かしんだ。「…あの頃、太后は私の叔母で、私は阿嫵でした」「そうよ、私はずっとあなたの叔母です、あなたが成長して言うことを聞かなくなっただけ」皇太后は冗談めかして笑いながら、もし皇帝に嫁いでいれば何も変わらなかったという。「そなたがあの頃のままなら良かったのに…」一方、宛如は皇子に酒を飲ませて眠らせ祝宴を乗り切った。しかし昭陽殿に戻ってしばらくすると、皇子は身体中に湿疹が出て泣き出してしまう。皇太后は改めて酒を勧めたが、王儇は拒んだ。もし皇帝と婚姻すれば父と皇太后は不仲にならず、先帝も父も命を落とさずに済んだと言うのか。「母親は今も屋敷で私を待っていてくれたと?」皇太后は阿嫵がまだ自分を恨んでいると分かったが、王儇は皇太后を責めなかった。ただ自分が皇太后の障害になれば、結局、自分も排除されるのだろう。皇太后は阿嫵の言葉に驚き、和解をあきらめて席を立った。「お気をつけて」皇帝は知らせを聞いて慌てて昭陽殿に駆けつけた。確かに皇子は身体中が真っ赤になり湿疹が出ていたが、申太医は異常ないという。「…陛下、発疹の原因はおそらく酒です」「酒だと?!」太医の呆れた診断に子隆は思わずふざけるなと怒号を響かせたが…。つづく( ๑≧ꇴ≦)哥哥の満面の笑みよw
2022.02.10
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第15話)第42話「家門の災い」凌不疑(リンブーイー)は寿春(ジュシュン)に出征。程少商(チォンシャオシャン)は成婚の準備をしながら不疑の凱旋を待つことになった。曲陵(キョクリョウ)侯府では老夫人と蕭元漪(シャオユエンイー)が新婦のかんざし選びで揉めていたが、少商は心配無用だと止める。「皇后が早くから宮中の繍女や匠に作らせたのがあるから…へへ」実は子晟(ズーション)の成婚を心待ちにしていた皇帝と皇后は毎年のように準備していたため、すでに十分に揃っていた。「予定通りなら私は宮中で嫁ぎます、皇后が閨(ネヤ)も用意しているそうです」老夫人はそれならお金もかからないと喜んだが、全く出番のない母はどこか寂しそうに見えた。袁慎(ユエンシェン)は宮中で偶然、回廊で物思いにふけっている少商を見つけた。花嫁衣装や装飾品の試着でくたくただという少商、しかしふと袁慎に話しても無駄だと思い出す。「あなたは成婚と無縁だものね」「成婚できるのは自分だけだとでも言いたいのか?…だいたい成婚に何の利がある?」「あなたには″一日三秋″がどんな心情か分からないでしょうね 成婚すれば毎日、会えるし、帰りを待ちわびずに済むわ」すると負けず嫌いの袁慎は自分が先に成婚してみせると啖呵を切って行ってしまう。(」゚ロ゚)」<善見(シャンジエン)!無理しないで~!官媒(カンバイ)は袁慎に釣り合うよう才女と評判の蔡(ツァイ)氏の娘を斡旋してくれた。しかし袁慎は文句ばかり、従者は何が不満なのか分からない。「私の理想はそれほど高くない 頭は程娘子より鈍くなく、性格は程娘子より素直、容貌は程娘子より優れていれば…」「なぜどの条件も程娘子が基準なのですか?」ぁ..,..( ̄◇ ̄)(; ̄◇:;.:... (; ̄:;..,..::;.:. :::;.. .. .「程娘子に侮られたくない」すると袁慎は成婚の日取りを少商と同じにすると言い出した。そうすれば朝廷中の賓客が袁家に祝いへ来るため、少商が慌てふためくはずだという。( ゚ェ゚)…公子、あんたどうかしてるわ@従者袁慎はめかし込んで参内、早速、宮中にいる少商を見つけて自慢げに婚約したと報告した。しかし少商は袁慎が単に自分に対抗しているだけだと見抜いている。「私は子晟と巡り会えた、あなたも出会えるといいわね…あっ間違えた 婚約したのよね?じゃあもう出会えないんだ〜 でも悪くないわ、家柄の合う縁談でも満足しなくちゃね」少商は我関せず、袁慎は肩透かしを食ってしまう。↓( ˘ω˘ )<ま、せいぜい頑張れよ的な余裕w一方、寿春に出征する班(バン)侯は孫を心配し、班嘉(バンジア)の面倒を曲陵侯府に頼んだ。班嘉は一目惚れした程姎(チォンヤン)と毎日、食事を共にするようになったが、姎姎は嫁がずに伯母のそばにいたいという。そんなある日、突然、程家に災難が降りかかった。勅命で銅牛(ドウギュウ)県に向かった少商の父・程始(チォンシー)。しかし銅牛県は陥落、曲陵侯と県令・顔忠(イエンジョン)が敵と通じていたと報告が来た。朝臣たちは見せしめに曲陵侯を九族皆殺しするよう奏上し、激高した皇帝は誰とも会わず、食事も絶ってしまう。皇后は謁見できず外で待つことにしたが、そこへ越(ユエ)妃が駆けつけた。「妹妹、良いところに来てくれたわ」「…私が見て来ます」するとさすがに皇帝も寵愛する越姮(ユエホン)だけは追い返せなかった。越姮は皇帝の怒りが領土を失ったことではなく、天下の寒門のためだと分かっていた。実は程始と顔忠は皇帝が群臣の反対を押し切って選んだ寒門、その2人が敵に投降したとなれば世襲の打破は更に難しくなってしまう。「しかし両県丞(ケンジョウ)が見たのだ、2人が精銅2千斤を携え、敵に投降したと… だが当人がおらぬゆえ朕が濡れ衣だとかばったところで証明できぬ 父を処刑されたら程娘子は?子晟は?2人の婚姻はどうなる?!」越姮は皇帝の気掛かりが成婚だと知り、ひとまず表向きは法に従って公正に処理し、内情を少しずつ調べるよう助言した。皇后は皇帝と越妃の絆に割って入ることができず、黙って回廊で待っていた。やがて越姮が現れ、曲陵侯の家族は投獄され、審問を受けると報告する。「曲陵侯の件は陛下がお調べになります、ただ国の法に私情は挟めません 程娘子なら十一郎と婚約し凌家の人間とみなされ、放免されるでしょう」銅牛陥落の噂が朝廷中に広まった。何も知らなかった少商は父が処罰されると知り、勝手に宮中を飛び出してしまう。すると城門でちょうど参内した袁慎と出くわした。「少商、私の馬車を使え…私は御前で嘆願する、そなたの父親を放ってはおけない」「ありがとう」しかし曲陵侯府にはすでに太尉府の左(ズオ)将軍が程家の捕縛に来ていた。蕭元漪たちは強引に屋敷に乗り込んだ左将軍に憤慨、前庭で対峙した。聞けば夫が銅牛県令を惑わし、精銅2千を盗んで敵に投降したという。「曲陵侯府を封鎖し、共犯を捕らえるのだ!」驚いた程頌児(チォンソンアル)と程少宮(チォンシャオゴン)は剣を抜いたが、その時、少商が駆けつけた。「程氏が背いたかは陛下が判断する、この機に乗じて私怨を晴らすつもり? 私があなたの姪に汚水をかけ、夫があなたの兄の足を折った… だからあなたも殴られに来たの?」一触即発の様相となる少商と左将軍、しかし危ないところで袁慎が勅令を携えて現れた。「陛下は程娘子を巻き込むなと仰せだ」皇帝は本件を廷尉府に託し、被疑者の家族は廷尉府に護送して審問することに決めたという。蕭元漪は夫の無実を信じ、潔く一族で廷尉府の審問を受けると決めた。しかし少商だけは凌家の嫁と見なされ、無関係と判断されたという。袁慎は長秋宮に戻るよう伝えたが、少商は家族と一緒に行くと拒んだ。「嫁ぐまでは程家の娘なのよ?一人だけ生き延びるなんてできない」すると少商の言葉を聞いた蕭元漪がいきなり娘の頬を引っ叩いた。「程少商、程家がどうなろうとあなたは生き続けるの! 生き延びなければ程家の祖先が許さない!もちろん私も阿父もよ…分かるわね?」その夜は激しい雨となった。宮中に戻った少商は崇徳(スウトク)宮でずぶ濡れになりながら嘆願を始めたが、拝謁は叶わない。曹(ツァオ)常侍(ジョウジ)は戻るよう説得していたが、少商はあきらめなかった。すると皇太子が駆けつけ、少商の隣にひざまずく。「余も曲陵侯を信じる」少商はようやく禁足が解けた皇太子まで巻き込めないと言ったが、そこへ皇后までやって来た。「私も一緒に立つわ」「お体を壊してしまいます!」その時、見かねた越姮が皇帝を強引に外へ押し出した。廷尉府の地下牢に袁慎が食事の差し入れにやって来た。しかし程老婦人は二郎と三郎も拘束されたと知り、絶望する。「首を斬られてバラバラになるより餓死すれば亡骸だけは欠けずに残るわ」「私たちは食べます、潔白を証明する前に餓死してたまるもんですか」蕭元漪たちは程始を信じて必死に生きようとしていた。皇帝は渋々、少商の話を聞くことにした。「阿母や兄たちは都にいて生活に不自由などなく、私も子晟に嫁ぎます 阿父は何も不満がないのになぜ敵に通じる必要が?…つまり濡れ衣です」少商は目下、行方知れずとなった父と消えた精銅2千を探すため銅牛県へ行きたいと嘆願した。しかし皇帝が認めてくれるはずもなく、長秋宮での禁足を命じられてしまう。つづく工エエェェ(;╹⌓╹)ェェエエ工急に何なの?!
2023.11.06
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上阳赋 The Rebel Princess第42話「夫婦喧嘩」忽蘭(クラン)王子・賀蘭箴(ガランシン)は皇后と安平王の双方と手を組んだ。しかしどちらとも結託するつもりはない。するとその夜、忽耶奇(コツヤキ)が豫章王府に現れ、王妃に伝言を託した。「あさっての巳の刻、南の鹿苑(ロクオン)だ…そのまま王妃に伝えよ」一方、昭陽殿では懐妊中の謝宛如(シャエンジョ)がまた刺客に襲われる夢を見て飛び起きていた。隣で眠っていた皇帝・馬子隆(バシリュウ)も驚いて目を覚まし、急いで太医を呼ぶよう命じる。「夢の中で刺客に腹を刺され急に腹痛が…この子の命を狙う者がいるはずです」しかし太医が脈診の結果、中毒症状はなく、ただ流産の危険性があると伝えた。「今後は絶対安静です、心穏やかにお過ごしください」朝議で王夙(オウシュク)は江夏王に封じられ、正式な王氏の長と認められた。また宋懐恩(ソウカイオン)も粛毅(シュクキ)伯の称号と同時に70里の土地と屋敷を賜り、2人は正式に江南の治水にあたるよう命じられる。こうして王夙は水路の総監督と監察御史に、懐恩も副監督と監察御史を兼任すると決まった。一方、宛如は密かに道士を呼び、夢占いを頼んだ。道士は確かに不吉だと伝えたが、だからと言って解決法などない。すると宛如の脳裏にふと豫章王の姿が浮かんだ。「はっ!蕭綦(ショウキ)?!…あの男よ! 疑わしき者は排除しなくては…この子は謝氏と私の希望なのだから」蘇錦児(ソキンジ)は風邪を引いて寝込んだ。心配した王儇(オウケン)は栄養のある食事と練炭を届けるよう命じたが、錦児は薬をもらっても火鉢に捨ててしまう。実は錦児は王妃のお供をせずにすむよう病を長引かせていた。…裏切り者のくせに気取りやがって、俺は気に入った女をすべて手に入れて来た…錦児は忽耶奇の脅し文句を思い出して身震いし、2度と悪魔に会いたくないと布団にくるまった。劉(リュウ)執事は悩んだ末、忽耶奇の王妃への伝言を大王に報告した。「分かった…下がれ」蕭綦は冷静に見えたが、執事が出ていくと怒りを抑えられず、机を蹴り飛ばしてしまう。腹を立てた様子で王儇を探す蕭綦、その姿を偶然、薛(セツ)夫人が見かけた。そこで急ぎ王倩(オウセン)の元へ駆けつけ、好機が来たという。王儇は金剛経の第6話・正信希有分(正しい信頼など実にまれだ)を書写していた。すると蕭綦が現れ、話があると言って徐(ジョ)女官を下げてしまう。「どうしたの?」王儇は蕭綦が珍しく怒っていると気づいて困惑した。「私に話があるはずだが…阿嫵?私に言うことはないか?」「何が言いたいのか分からないわ」そこで蕭綦は″南の鹿苑″を持ち出し、なぜ自分に隠れて賀蘭箴と会うのかと迫る。王儇は仕方なく賀蘭箴を説得して王倩を助けたいと説明したが、蕭綦は王倩のためなら何をしてもいいのかと声を荒らげた。「…あなたは幼い頃から独りだったけれど私は違う、王氏の一員なの、家族の意味が分かる?」「はお…成功を祈るよ」薛夫人の予想通り夫婦喧嘩した蕭綦は奥から出て来た。すると待ち伏せしていた王倩が暗がりからふいに現れる。王倩は行く末が不安で散歩していたと嘘をつき、か弱い娘を装って話し相手になって欲しいと頼んだ。「姐夫…一緒にいてください」思わず蕭綦の腕にしがみつく王倩、しかし蕭綦は王倩の手を振り解き、行ってしまう。薛夫人は娘が上手く豫章王を誘惑できるよう祈って待っていた。すると予想外に早く王倩が帰ってくる。王倩は布団にくるまり、庭園のそばで凍えそうになりながら半刻も待ったが、豫章王は自分に目もくれなかったと嘆いた。一方、宛如は悪夢のせいで弱気になったのか、ふと昔を思い出した。王儇への対抗心に駆られてここまで来たが、思えばかつては姉妹のようだったと懐かしむ。あの頃は阿嫵が子澹の王妃になると信じて疑わなかった。もし自分も士族に嫁いでいれば、こうして阿嫵と敵対することもなかっただろう。しかし王氏と謝氏、どちらにしても敵対する運命だったのだ。ここで情けをかけたり懐かしめば謝貴妃と同じ未来が待っている。「私は一族のため、お腹の子のために情などかけてはいけない…」その夜、蕭綦は奥に戻らなかった。王儇は眠れない夜を過ごしながら、蕭綦の妻であってもやはり王氏の娘であることに変わりないと身につまされる。…倩児は家族、傍観することはできない、蕭綦、安心して、あなたを傷つけたりしないから…翌朝、王儇は王夙と治水の祈願のため慈安寺に出かけた。劉執事は見送りに出たが、どこか様子がおかしい。すると馬車の中で徐女官が大王に告げ口したのが劉執事だと教えた。「知られた以上、大王は黙っておられぬかと…この件からは手を引いた方が…」「助けると約束したからには途中で投げ出せないわ…安心して、何とかする」王儇は一か八かの賭けに出ようとしていた。王儇は王夙が昔、書き上げた治水策を返した。実は王夙は自暴自棄になって捨てようとしたが、王儇が保管し、今も大切に持っていたという。あの時、王儇は兄を信じていると言った。王夙は当時を思い出して目頭が熱くなり、3年かけて書き上げた治水策を懐かしむ。「だが時が経ち、あの頃の勇ましい青年ではなくなったがな…」つづく( ̄▽ ̄;)今さら何だけど…上手いけど…やっぱり″夫婦″って感じはしないな~
2022.01.27
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第16話)第43話「鴛鴦将軍」越姮(ユエホン)は雨に濡れた皇后を心配し、生姜汁を準備させた。宣神諳(シュエンシェンアン)は皇帝が程少商(チォンシャオシャン)に接見してくれたのも越妃の助け舟のおかげだと感謝したが、越姮は自分の功績ではないと否定する。「陛下が嘆願している皇后を案じたからですよ」「慰めてくれなくていいわ、陛下とあなたは幼い頃からの誼 当時、天下のため乾安(ケンアン)王と結盟しなければ余を娶らなかった…」宣神諳は越姮の夫を横取りしてしまった後ろめたさに苛まれて来たが、越姮は20年も前のことだと笑った。当時は確かに激怒して皇帝を罵倒し、叩いたりもしたが、怒りはとうに消えたという。「余もそんなあなたの性格を大好きになった、どうりで陛下が深い情を寄せるわけね」「皇后、確かに私と陛下には幼なじみの情義があります でも皇后と陛下も苦難を共にして来た情義がある どちらが真の夫婦か、区別する必要がありますか?」越姮は皇后を実の姉のように気遣い、くれぐれも身体を大事にして欲しいと言った。そこへ長秋宮の翟(ジャイ)媪(ウバ)が駆けつけ、少商が戻ったと報告する。しかし皇帝は少商が勝手に動かないよう禁足を命じていた。皇后は悲しみに暮れる少商のため、皇帝に背いても投獄された家族に会わせてやろうと決めた。しかし意志の固い少商のこと、誰が反対しても父親を探しに行くつもりだろう。皇后は少商を阻む関となるより後ろ盾になってやりたいと願い、外出許可の命令書と一緒に令牌を持たせて見送った。「もう戻って来ないつもりね…」皇后は自ら皇帝に罰を請うつもりだったが、少商は皇后を巻き込まぬよう命令書と令牌を部屋に残していた。少商は家族との面会を求めて廷尉府にやって来た。恐る恐る偽造した令牌を出す少商、その時、ちょうど廷尉府侍郎の袁慎(ユエンシェン)が現れ、中に入れてくれる。「偽物の令牌で守衛を騙せると思ったのか?今夜、慌てて作ったのだろう?塗料が乾いていない 次も私に会えると思うn…」「次はない、今回はありがとう」袁慎はここで待っていると伝えようとしたが、少商は家族の元へ一目散に駆けて行った。地下牢では蕭元漪(シャオユエンイー)が君姑に手を焼いていた。老夫人は食べたくもない粥を無理やり飲まされ憤慨、嫋嫋(ニャオニャオ)を放任した復讐なのかと口を滑らせてしまう。しかし蕭元漪はそれでも夫の母だからこそ我慢して敬ってきたと本音を漏らした。すると突然、嫋嫋が現れる。蕭元漪は長秋宮に戻って父が帰るのを待てと言ったが、老夫人は嫋嫋にへそくりの場所を教え、その金で父と叔父たちを助けるよう頼んだ。「大母…身勝手な人だと誤解していました」「救えるだけ救うのよ、忘れないで、男たちが先だと…」↓( ꒪ͧ⌓꒪ͧ)・・・一方、出征した凌不疑(リンブーイー)は被害を最小限に抑えるため情報戦を仕掛けた。寿春(ジュシュン)に立てこもる彭坤(ポンクン)は凌軍が山賊と交戦中だと信じ、この機に乗じて食料を奪うことにする。しかし補給部隊は帰り道で黒甲衛(コクコウエイ)の奇襲に遭い、将軍・梁毅(リャンイー)は生け捕りとなった。「凌不疑!こざかしい真似を!何だ?!その鶏の羽をつけた鎧は!」(# ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ <鶏ではない!鴛鴦だっ! ←そこ?wすると不疑は役立つ情報を吐かねば助けられないと脅し、ひとまず梁将軍を投獄した。寿春は四方を守りで固め、城門は懸門(ケンモン)で縄で吊り橋を上下させていた。梁邱起(リャンチゥチー)は城外に堀があるため門が開かねば大軍が入れないと言ったが、梁邱飛(リャンチゥフェイ)は壕橋(ゴウキョウ)を架けて突入すればいいという。しかし凌不疑は犠牲者を出さないためにも戦わないと決めた。「補給を断てば一月余りも経たず自滅するだろう」そこへ伝令兵が駆けつけた。銅牛(ドウギュウ)県で県令の顔忠(イエンジョン)と程始(チォンシー)が精銅を携え投降し失踪、程家は投獄され、程娘子は都を出て行方知れずだという。夜も更けた頃、少商はついに銅牛県に到着した。するとちょうど糞尿の回収へ向かう老人と一緒になる。聞けば父は家族を連れた県令と一緒に荷車を引いて城門を出たまま行方不明になっていた。半日後に戻ったのは県令の印を持った賊軍の将軍・馬栄(マーロン)。投降を拒み続けた県丞・李逢(リーフォン)と尹嶗(インラオ)は引き回しにされたという。その際、李逢が顔忠と程将軍が敵に投降したと叫んだため、見物人たちの間で噂が広まった。「で李逢は殺されたの?」「投獄されたと聞いたが、殺されたかは知らんな」「…検問でこの荷車は調べられるかしら?」凌不疑は寿春を兵糧攻めで落とすつもりだったが、一刻の猶予もなくなった。しかし自分のために全軍の将兵を道連れにできず、梁将軍を利用して単身、乗り込むことにする。寿春では厳しい検問が待っていたが、梁将軍は大事な食料を大切に扱うよう厳命した。「異常はありません!」「…ひとつ聞きたいんだが、鶏と鴛鴦は似ているか?」「似ていません!」「俺もそう思う…どうかしているぞ」こうして不疑は梁将軍が運び込んだ食料の中に身を隠し、無事に城内へ潜入した。キリッ!( ・`ω・´)<これは鴛鴦彭坤はその夜もなかなか寝付けずにいた。その時、誰かの気配を感じて飛び起きる。彭坤の首に剣を突きつけたのは凌不疑だった。「文(ウェン)帝は私の討伐にお前をよこしたのか、だが早くここから離れろ 私に何かあればお前の父も窮地に立たされるぞ?」「どういう意味だ?!」驚いた不疑が彭坤の首に刃を立てると、運悪く王姈(ワンリン)が現れた。「まだ寝ていないの?(はっ!)誰か!刺客よ!」凌不疑は彭坤を人質にして城門まで辿り着いた。すると彭坤は自分が死ねば孤城陥落の真相を知る者がいなくなると開き直る。「父親から何も聞いていないのか?我らは同じ穴の狢、私が死んであの男に何の得がある?」不疑はすでに賊兵たちに包囲され身動きが取れなくなった。そこで彭坤は不疑が寿春から一歩でも出たら自分もろとも殺せと命じる。しかしその時、外から梁兄弟の叫び声が聞こえた。「若公主は中にいるはずだ!突入するぞ!」驚いた不疑は咄嗟に彭坤を蹴り飛ばし、城門を開けるべく孤軍奮闘した。凌不疑は独りで賊軍たちを蹴散らしながら橋の仕掛けを破壊、ついに城門が開いた。その時、彭坤が落ちていた剣を拾って背後から不疑に襲いかかる。不疑は振り返りざまに刺されたが反撃、彭坤を退けた。黒甲衛たちが城内に雪崩れ込み、寿春は平定された。凌不疑は少商の鎖帷子のお陰で命を救われ、被害も最小限で済んだと分かる。そこで彭坤を都まで護送するよう命じ、急いで銅牛県へ向かうことにした。阿起の報告では銅牛県を落とした彭坤の副将・馬栄が楼犇(ロウベン)の説得により投降したという。しかし不疑は行方不明の少商を探さねばならなかった。「程将軍が失踪し程家は投獄、少商が黙っているはずがない、必ず銅牛県にいる!」つづく( ๑≧ꇴ≦)ヤメロー!ハライタイィィィィィィィィィィ!おしどり将軍の破壊力が凄すぎてwww全ての感想がふっとんでしまった!wwwww
2023.11.10
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第20話)第47話「歯形の誓い」孤城陥落の真相を知る彭坤(ポンクン)を北軍獄に連れ去り、拷問を続ける凌不疑(リンブーイー)。すると翌朝、廷尉府侍郎・袁慎(ユエンシェン)が駆けつけ、国の法を守り、掟に従うべきだと諫言した。「程少商(チォンシャオシャン)との成婚も間近であろう?朝堂で口実を与えるな 妻に迷惑しかかけぬのなら、私が取って代わっても構わんぞ?」実はその頃、少商は御前で左(ズオ)御史中丞から追及されていた。凌不疑が彭坤の身柄を勝手に奪ったことが発覚、崇徳(スウトク)宮に皇太子や三皇子、城陽(ジョウヨウ)侯・凌益(リンイー)らが集まった。左御史中丞の話では程娘子が夫のため嘆願に来た身重の王姈(ワンリン)に乱暴したという。しかし少商は子晟(ズーション)を貶められて手巾で口を塞いだだけだと釈明した。皇帝は頭を抱えたが、そこへ凌不疑が現れる。「左大人は打たれ足らず、私の新婦に難癖を?」左御史中丞は凌不疑が勝手に彭坤を拷問したと非難した。するとすかさず少商が彭坤も孤城陥落に関わっているからだと反論する。驚いた左御史中丞は城陽侯の顔色をうかがったが、凌益は視線を逸らした。「小越(ユエ)侯が捕らわれたのが引き金です 乾安(ケンアン)王を陥れた彭坤は孤城の件も隠せないと悟り、造反したのです でも当時、一介の副将に主帥を陥れる度胸があるでしょうか?首謀者は別にいるはずです」少商は全て王姈から聞いたと明かした。夫は都の者と往来があり、密かに夫と接触し続けた者こそ黒幕だという。事情を知った皇帝は子晟も廷尉府と一緒に捜査することを認めたが、拷問させないよう三皇子に監督を任せた。凌不疑は自分を無視して足早に帰って行く少商を何とか引き留めた。「少商!」「…小越侯を泳がせていたのね? 文修君(ウェンシウジュン)への仕打ちも、御史台への報復も、全て私のためだと思っていた でも実際は私はただの口実だった」少商は裏で画策していたのが不疑とも知らず、皇后や皇太子を救うため奔走していたと思うと悔しくて涙が出た。しかし不疑がいくら諌めても皇太子は王淳(ワンチュン)や楼(ロウ)太傅を重用し、このままでは過ちを繰り返すだけだったという。「少商、誤解しないでくれ…君への行動は全て真心からだ」「なら教えて、将来、枕を共にし、子をなす相手の真の姿を…成婚するのに私はあなたを知らない 子晟、大切なことを隠していない?話してくれたら信じる」少商は核心に迫った。しかし不疑が何か言おうとしたところで東宮の侍従が駆けつける。「凌将軍、太子殿下がお呼びです」凌益は皇太子に頼んで東宮に子晟を呼んだ。皇太子は親切心で父子の対面に協力したが、父の顔を見た凌不疑は捜査があると断って引き返すことにする。すると凌益は息子を引き留め、成婚前に父子で話がしたかっただけだと訴えた。「私が彭坤を調べることになぜそれほど焦っている?審理を引き延ばしたいと?」「お前の身体を心配しているだけだ」しかし不疑は偽善など必要ないと捨て台詞を吐いて出て行ってしまう。皇太子は力になれなかったと落胆したが、凌益にはこの短い時間で十分だった。王姈は少商の嘆願のお陰で夫との面会が認められた。しかし独房ですでに息絶えた夫の無惨な姿を発見する。検視の結果、彭坤は独房に舞い込んだ花びらで喘息発作を起こし、急死していた。王姈の話では夫は重度の喘息持ちで、草花も嗅げなかったという。凌不疑が呆然と亡骸を見ていると、知らせを聞いた凌益が皇太子と一緒にやって来た。「明らかに報いだな、乾安王を陥れたことで孤城の陥落を招き、お前の舅父一族は惨殺された …これで肩の荷が降りたであろう、少商と成婚して憂なく暮らせ」その時、激情に駆られた不疑が凌益の胸ぐらをつかんだ。「お前だな!お前が殺したんだ!」驚いた皇太子が慌てて子晟を止めると、不疑は皇太子の手を払い退けて出て行った。その夜は激しい雨になった。憤懣やる方ない凌不疑は人けのない大街で酒をあおりながら、怒号を響かせる。その時、少商がやって来た。少商はへたり込んだ子晟に寄り添い、自分がそばにいるとなだめる。しかし不疑はもはや望みは絶たれたと泣き崩れた。「結局、私は何もできなかった…少商、目を閉じると見えるんだ 全身が血まみれになった彼らが私を責め続ける、なぜ敵を討ってくれないのかと… 本当は私も死んでいた、十数年も耐え続けたのに…全て無意味だった… 退路は絶たれた、少商、それでも私のそばにいてくれるか?」「何が起きてもあなたを助ける、どんな時もあなたの味方でいる」「程少商…実は…私の名は…」「若主公ォォォォォォォォォォォ~ッ!」その時、梁邱起(リャンチゥチー)と梁邱飛(リャンチゥフェイ)が駆けつけた。「大変です!夫人が…夫人が…」凌不疑と少商が杏花(キョウカ)別院に駆けつけると、崔祐(ツイヨウ)が霍君華(フォジュンホワ)に付き添っていた。霍君華はもはや虫の息だったが、驚いたことに我を取り戻している。「思えばあの時、あなたに嫁ぐべきだった、あなたに嫁いでいたらこんな末路は迎えなかったわ」その時、霍君華は崔祐の肩越しに凌不疑の姿を見つけた。「…こちらへ」霍君華は不疑をそばに呼ぶと、最後の力を振り絞って身体を起こし、顔を近づけた。「…忘れてはならない、我らの仇を」「約束します、決して忘れません、この仇は必ず討ちます」すると安心したのか、霍君華は最期に阿狸(アリ)の名を呼んで旅立った。凌不疑は一睡もせず母の棺に付き添った。心配した少商は薬湯を届けたが、不疑はどこか達観しているように見える。「少商、私が驚天動地の挙に出ても私への気持ちは変わらないか?」「棺の前で誓うわ、私、程少商は凌不疑を決して裏切らず、彼が離れない限り諦めないと誓います」すると少商と不疑は互いの腕を噛んで歯形を残し、誓いの印とした。「互いに噛んで誓った、この傷が互いの心を結んでる、改めて聞くわ、私に何か話はない?」不疑は喉まで出かかったが、結局、真相を明かすことはできなかった。「…何もない」≡≡≡ ⊂⌒~⊃。Д。)⊃ ズコッ!言わないのかーい!中庭から崔祐の怒鳴り声が聞こえた。凌不疑が外へ出てみると、崔祐が凌益と淳于(チュンユー)氏に激怒している。崔祐は思わず凌益を殴りつけたが、不疑に止められ、その場を離れた。「母の霊前に何か用か?」聞けば7日後は凌益の五十路の生辰、凌氏一族も集まるため霍君華を招待に来たが、思いがけず訃報を知ったという。凌益は宴を中止にすると言ったが、不疑は決まっているなら開けばいいと勧めた。「当日は私も礼品を持って伺おう」その話を回廊で少商が聞いていた。つづく(Ŏ艸Ŏ)息を止めて子晟の告白を待ち…(๑≧ꇴ≦)その度にプハーッとなって…そしてまさかの3段落ちw
2023.11.24
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第23話)第50話「我が名は…」文(ウェン)帝の命を受け、崖から落ちた凌不疑(リンブーイー)の捜索に向かった三皇子。深手を負った不疑はかろうじて山肌の蔓に絡まり生きていた。三皇子は懸命な救出作業を見守っていたが、程少商(チォンシャオシャン)の心配が的中し、左(ズオ)将軍が引き上げを手伝うふりをして縄を切ろうとする。しかし目を光らせていた三皇子が気づき、あっけなく捕まった。「…呼応する仲間を待っているのか?だが奴らは永遠に来ないぞ 収監して拷問せよ!死んでも構わぬ!」凌不疑は崖から引き上げられ、三皇子が急いで宮中に運び込んだ。皇帝と三皇子が見守る中、医官たちの懸命な治療が続いたが、不疑は琴の弦を握りしめたまま離さず、なかなか手当が進まない。「琴の弦?」「少商の弦です…意識を失っても誰にも触らせないとは…」皇帝は老三の話を聞いて少商がいないことを思い出し、すぐ呼ぶよう命じた。曹(ツァオ)常侍(ジョウジ)は程娘子ならすでに回廊にいると伝えたが、本人曰く凌将軍とは縁が尽きたので会えないという。「首に縄をつけても連れてこい!」しかしその時、殿外から少商の笛の音が聞こえてきた。凌不疑は叶わなかった少商との成婚の夢を見た。…もし私を独りにするなら一生許さない、来世も、来来世も許さないから!…このまま死を選べば2度と少商は許してくれないだろう。走馬灯のように蘇る少商との思い出、それが不疑の生きる希望となった。…それから別院に花畑を作る、琴と笛で合奏するの、私たち2人で共白髪となり生死を共に…すると不疑は弦から手を離し、それまで無意識に受け付けなかった薬を飲み始めた。こうして不疑は峠を越え、夜が明ける。「もう凌将軍は大丈夫です!」医官の声を聞いた少商は部屋の中をのぞき、不疑の無事を見届けてから倒れた。少商が目を覚ますと皇后が付き添っていた。「せっかく子晟が目覚めたのに、そんな様子では心配になる」「…彼とはもう終わりです」少商は自分が子晟でも同じ選択をしたと理解を示したが、何が真心で何が計略なのか分からなくなったという。「あんな仕打ちは承服できない、敵を殺したいのなら、そう言って欲しかった 私も一緒に行く、たとえ黄泉だとしても一緒に行くのに… でも私を独りにするのは許せない、しかも私のためだなんて… 幼い頃は両親に捨てられ、今度は愛する人に捨てられた 陛下と皇后から教わりました、夫婦は一心同体だと…そうでしょう? でも私だけが一心で彼は隠し事ばかり、一心だったことがあったのでしょうか?」「…もう決めたのね?」「決めました」すると皇后は納得できるまで調べるよう勧めた。全てが分かった時、少商がどんな選択をしても支持するという。「余とは違ってあなたの人生は順当であって欲しい、余の分までしっかり生きるの」少商は袁慎(ユエンシェン)に頼んで淳于(チュンユー)氏と会うことにした。実は淳于氏は血の海の城陽侯符を目撃し、衝撃のあまり錯乱してしまったという。人を見ても暴れるだけで会話もできず、今は廷尉獄に収監されていた。実は少商は兼ねてから城陽侯夫妻が仲睦まじく見えず、凌益(リンイー)がなぜ非難されると知りながら後添えを迎えたのか疑問だったという。「そうか、弱みを握られ、娶るしかなかったと…」少商は淳于氏に凌益が死んだと教えた。「当時、あなたが流産した理由を知ってる?家職に聞いたの 凌益はあなたの飲食に薬を盛らせた、長年、服用すれば身ごもれなくなるわ 彭坤(ポンクン)と結託した証拠を握れば城陽侯夫人になれると思ったの? 凌益のごとき奸人が脅されたままで甘んじるはずない あなたが寄る辺もなく孤独に死ぬのを望んでいたのよ、そうしてこそ脅す気力も失せる …でも錯乱しているなら真相を知っても苦痛じゃないわね」淳于氏は激しく動揺すると、ふいに凌益に叩かれた時の事を思い出した。あの時、あまりの理不尽さに憤り、いつも手を合わせていた神像を三才観の汝陽(ジョヨウ)王妃に届けるよう頼んでいる。すると淳于氏は急にその場にひざまずき、手を合わせて一心不乱に祈りを捧げ始めた。「三才観の女媧様!私にどうか子供をお授けください…」袁慎は結局、淳于氏が錯乱しているのか偽りなのか分からなかった。すると少商はどちらにせよ生き延びるには錯乱するしかないという。「因果応報よ、これから三才観へ行く」意識を取り戻した凌不疑は朝堂で15年前の孤城陥落について証言することになった。皇帝は念のため医官を待機させ、その場で薬を煎じさせている。すると廷尉(テイイ)府・紀遵(ジーズン)が口火を切った。「教えてくれないか、当時、孤城で一体、何が起きたのか…凌将軍?」「私は霍(フォ)だ、凌ではない」今も忘れられない、あれは杏の実がなる頃だった…あの日、阿猙(アージョン)は身体が弱い阿狸(アーリー)のため、木に登って好物の杏を採ってやったしかし木から降りる時、うっかり衣が引っかかって破れてしまう『阿母が用意してくれた衣なのに…見つかったら罰を与えられる』『見せて…大丈夫、僕と衣を替えよう』阿狸は衣を交換して舅父・霍翀(フォチョン)が気づくかどうか試そうと提案した衣なら自分が破ったと言えばいいという『この杏は舅父と舅母に渡して、そうすれば阿母の前で僕をかばってくれる』阿猙は阿狸の衣を着て父の部屋に入り、書卓に杏を入れた袋を置いたすると外から父たちの声が聞こえ、咄嗟に衝立ての裏に身を隠す衝立ての隙間から見えたのは父の背中の傷を手当しながら撤退するよう説得している姑父・凌益の姿だった『援軍が遅すぎる、文氏は我らを見捨てた…将軍、孤城を守ってやる必要はありません』しかし霍翀は一蹴し、妹婿という立場に免じて聞かなかったことにすると言ったその時、阿猙は凌益が背後からいきなり父を刺すところを目撃する『ぐっ…やはり敵と通じていたか…』『なぜ降伏せぬのだ?英雄になるため我らまで道連れにすると?! 援軍は来ない、いや来られぬのだ、誰も来ない…』阿猙は父の最期を目の当たりにしながら、嗚咽が漏れないよう必死に自分の口を押さえた…「凌益の結託した相手が誰なのか謎のままでした しかし寿春(ジュシュン)で突き止めたのです、凌益と共に孤城を陥れたのが彭坤だと…」…阿猙が息を潜めて隠れていると、誰かが入って来た『投降の説得では?なぜ殺した?!』『霍翀は強情だ、絶対に投降などしない…殺さねばいつか報復される だが家族は見逃せるだろう?』『誰が見逃すと?霍翀がいなくなったのなら攻める絶好の機会だ 孤城が陥落すれば文帝の敗北を決定づける、共に主公を入城させるぞ』『騙したのか?!家族は見逃すという約束だ』『お前だけだ、どちらにせよ兵が殺す』すると凌益たちは出て行った阿猙の足元まで流れて来た霍翀の鮮血、すると建物に火が放たれ、阿猙は煙を吸い込んで気を失ってしまうしかし運良く、その日は孤城に大雨が降った阿猙が目覚める頃にはすっかり日も暮れ、外は見渡す限りの骸と血の海が広がっていたすると突然、父の妹・霍君華(フォジュンホワ)が現れ、生き残った2人は身を隠すことにするその時、稲光が暗闇を照らし、城門が見えた霍君華は悲鳴を上げ、咄嗟に甥の顔を手で覆ったが、阿猙は姑母の指の隙間からその情景を見てしまう城楼には父や叔父たちの生首が並び、その中に阿狸の顔があった…「衣を替えた阿狸は私の代わりに死んだのです」2人は賊軍がいなくなるまで丸二日、飲まず食わずで死人の山に隠れ、城門を逃げ出した。我が子の無惨な姿を見た霍君華は時に錯乱し、時に呆け、ずっと息子の名を叫びながら、都へ戻ろうと言い続けたという。そして2人は何度となく死にかけること2年、やっと都へ到着し、皇帝に謁見した。実は当時、霍君華は甥が凌益に殺されないよう阿狸と呼んでいたという。『童よ、そなたは…』皇帝はあの時、不疑に名を聞いた。しかし錯乱した婦女と幼子に過ぎない自分たちに闘う術などなく、不疑は身分を偽ったという。『私の名は…凌不疑』不疑は敵を討つために阿狸の身分でいるしかなかった。賊を父と見なし、本名を隠したのも全ては仇を葬り去るためだったという。「父のため、霍一族のため、孤城の民のため、孤城陥落に関わった者には代償を払わせる! それも達成間近と思えた… 都へ戻った私は密かに探り始めるも、凌益が次々と証拠を隠滅、そして結局、私は負けた 凌益は関わった者を彭坤も含めて全て殺害、姑母も身体が持たずに無念のうちに病死した… こうして証人が全て消え、望みは潰えた 正当に凌賊を捕らえられぬなら、自ら手を下すのみ…」「これぞ同害報復…」皇帝は不疑の前まで歩いて行くと、もう一度、あの時と同じように聞いた。「童よ、自ら言ってみよ、お前の名は?」「私の名は…霍無傷(フォウーシャン)」つづく。゚(∩ω∩`)゚。 しゃんしゃ〜ん!
2023.12.03
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第28話)第55話「肩を並べる時」楼縭(ローリー)は程少商(チォンシャオシャン)に協力を頼み、産気づいた何昭君(ハージャオジュン)を連れてなぜか廟に案内した。違和感を感じて殿内を見回す少商、するとふと安置された神像に目が留まる。その時、楼縭が隠し持っていた短剣を取り出し、突然、少商に襲いかかった。「程少商!あなたが従兄を自害に追い込み楼家は没落した、命をもらう!」少商は間一髪で楼縭の腕をつかみ助かったが、そのまま揉み合いとなった。「何昭君!神像を調べて!隠し扉があるかも!」少商の予想通り何昭君が神像を動かすと後ろの壁が開いた。少商は楼縭の足を思い切り踏みつけ、楼縭が怯んだ隙に何昭君と一緒に密室へ逃げ込んだ。すると思いがけず鉄鎖で拘束された傷だらけの袁慎(ユエンシェン)を発見する。度田令の推進中だった袁慎は油の買い占めに気づき、巡察中の皇太子が通過する郭(カク)村に貯蔵されていると突き止めた。そこで急いで知らせに向かうはずが、途中で戻(レイ)帝の残党に捕まってしまったという。少商はともかく袁慎を解放するため鍵を解錠することにしたが、袁慎は無駄だと止めた。「最も難解な連環鎖(レンカンサ)だ、解けやしない、早く逃げろ、私のために命を捨てるな」「この天下に私の解けない仕掛けはない、だから黙っていて」ちょうどその頃、外套を目深にかぶった女が廟に入って来た。楼縭は復讐を果たせなかったが、女は少商を誘い込めただけで上出来だと労う。「でも全てやり遂げてくれたのならもう用なしね…」女はいきなり楼縭の腹を刺した。「霍不疑(フォブーイー)と程少商以上に楼大房が憎い…あの世で父や母と再会するが良いわ」「阿父と阿母を殺したのは…あなた…」楼縭はようやく両親の敵に気づいたが、そこで事切れた。霍不疑一行は急遽、驊(カ)県に入った。一見、穏やかに見える城内、すると民に成りすましていた残党がいきなり襲いかかり、不疑を配下から引き離して孤立させてしまう。その頃、少商は解錠に成功し、何昭君と袁慎を連れて密室から脱出しようとしていた。しかし突然、床が開いて地下室へ落下してしまう。袁慎は自分に構わず逃げろと言ったが、天井が閉まる寸前に誰かが飛び降りて来た。「少商?!無事か?!」「なぜあなたがここに?」不疑は巡察中に異常を察知、驊県に駆けつけたところ戻帝の残党に県庭へ追い込まれたという。「ここに私を誘い込んだのは私の一番、大切な者が罠にかかったからだ」「罠だと知りながら飛び込むなんて…救援を求めてから敵を討てばいいのに!」「失ってからでは敵討ちに意味はない…生きていることが重要なんだ」その時、楼縭を殺した女が現れた。「餌には釣られないと思ったのに…ふっ、情愛にどっぷり浸かると英雄も愚鈍になるのね」少商は女の声で行方知れずとなった王延姫(ワンイエンジー)だと分かった。王延姫は面紗を外して正体を明かした。「今日、お前たちには私が作った墓場で死んでもらう 川で救われたあの瞬間から敵討ちを誓った、やっと果たせる…」地下室には楼犇(ロウベン)の位牌が安置され、床には藁が敷き詰められていた。どうやら王延姫は不疑だけでなく少商たちまで道連れにして死ぬつもりらしい。「少商、楼家で良くしてあげたのに、どうして夫を追い詰めたの? 袁慎、お前は知り過ぎたわ、計画を阻止する者は殺すしかない」少商は自分たちを逆恨みする気持ちは分かったが、身重の何昭君は無関係だと憤る。しかし王延姫は楼垚(ロウヤオ)を自由にするためだと言った。「楼垚は彼女を愛していない、無理やり娶らされたの、夫は死ぬ間際まで弟を案じていたわ 義姉として助けてやらなくては…子なら別の女が産む」その頃、楼垚は楼縭に騙されたとも知らず、従者と清(セイ)県にいた。産婆は夫の実家へ戻ったと聞いて訪ねてみたが見当たらず、従者は楼縭の勘違いではないかという。仕方なく楼垚は激しい雨の中、片っ端から医師をあたり、ようやく対応してくれた医師をなかば強引に連れ出した。夫の後を追って入水した王延姫を救ったのは田朔(ティエンシュオ)だった。復讐のため賊に寝返った王延姫、すでに皇太子が訪ねる郭村の道中にも油を撒いたという。「妻より野心を選んだ男だ、そんな者のために命を懸ける価値があるのか?」「あなたこそ少商より痛快に報復することを選んだくせに」「凌益(リンイー)を殺した後、少商を一目見て後悔した、夫婦は同心で肩を並べるべきだと… この5年、後悔しない日はない、復讐が難しくとも成婚すべきだった 共に明るい道を歩むべきだった」不疑の言葉を聞いた王延姫は夫もこうして悔い改めてくれたらと思うとやるせなくなった。「あなた…どうして私だけ置いていったの?」すると少商が楼犇も後悔していたと明かした。楼犇は少商に地形図を贈る際、窮地の時は心を縛られず天地を見いだせるようにと戒めたという。「その言葉をあなたに送るわ」しかしもはや夫の言葉も心に響かず、王延姫はついに火を放ってしまう。王延姫は積み上げておいた油を次々に倒し、地下室はあっという間に激しい炎に包まれた。すると王延姫は自ら煙に巻かれて倒れてしまう。その時、黒甲衛が駆けつけ、天井をこじ開けた。「若主公!」梁邱起(リャンチゥチー)は縄梯子を下ろし、身重の何昭君と負傷した袁慎を次々と引っ張り上げる。そして2人に続いて少商も無事に脱出、登ってくる不疑に手を伸ばしたが、突然、不疑の足に王延姫がしがみついて邪魔した。「…連れて行け、彼女を連れて行くんだ!」少商を守るため苦渋の決断を下した不疑。梁邱起は涙をのんで少商を床から引き離すと、ついに黒甲衛も力尽き、床は再び固く閉ざされてしまう。「子晟!子晟nnnnnnnnnnnnnnnn!」梁邱飛は少商を密室から逃がし、仲間たちも一斉に避難した。その時、地下室が爆発、少商たちは吹き飛ばされながらも九死に一生を得る。しかし不疑は…。少商は絶望の中、頑なだった自分を責めた。「子晟、後悔しているのでしょう?私の手を離さないと言ったのに! 私を散々つらい目に遭わせたから、この先はずっと私に尽くすのでしょう? 分かった、もう許すわ、だから返事をして、お願いよ!」不疑を失った悲しみに耐えられず絶叫しながら泣き崩れる少商、しかし、うなだれていた梁邱飛(リャンチゥフェイ)が物音に気づいて門を見た。「若主公…」霍不疑は生きていた。不疑は王延姫が中へ入れたのなら出られると判断、激しい煙の中で抜け道を探し当て、はい出したという。「少商…私を許してくれるのか?撤回しないでくれ」少商と不疑は硬く抱き合い、5年間のわだかまりが溶けて行くのが分かった。その時、ようやく清県から戻った楼垚が飛び込んで来る。「昭君!私と連れ添うと約束しただろう?共に子を育てると…約束を破ってはダメだ?!」崩れた密室の前で呆然となる楼垚、しかし何昭君は無事だった。「…楼垚?私ならここよ」「(はっ!)良かった!」楼垚は妻の手を握りしめ涙を流し、何昭君も楼垚の心に自分がいると分かって安堵した。田朔の陰謀を阻止するため、霍不疑と少商は共に立ち上がった。しかし不疑は道中の皇太子の元へ、少商は郭村で民を守ることになる。「少商、危険な任務になるぞ?」「大勢の民や天下に比べたら私たちの愛憎なんて微々たるものよ」「少商、君は唯一、私と肩を並べる者だ」こうして2人は県庭の前で別れた。郭村を目指してた皇太子一行の前に田朔が立ちふさがった。「三皇子、息災のようだな?」皇太子は今度こそ田朔を捕えようと意気込んだが、その時、伏兵が現れ、包囲されてしまう。劣勢を強いられた皇太子は自ら剣を抜き応戦するも負傷、満身創痍で田朔と対峙した。「国の後継者として死ぬのは戦場のみ…決して退かぬ!」「では主公に代わり正義の鉄槌を下す!」しかし危機一髪のところで霍不疑が駆けつけ、皇太子を守った。「霍不疑?!生きていたのか!王延姫の役立たずめが!」田朔は計画が失敗したと気づいて悪態をついたが…。つづく( ̄▽ ̄;)ちょっと田朔の声www最終話が不安になって来たw
2024.01.03
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第25話)第52話「歳月を経て」15年前の孤城陥落の真実と凌不疑(リンブーイー)の出自が明らかとなり、大きな節目を迎えた宮中。文(ウェン)帝は宣神諳(シュエンシェンアン)の希望を叶え廃后とし、皇太子も降格となった。これで越姮(ユエホン)が皇后に冊封されれば、三皇子は滞りなく東宮へ入れるだろう。一方、程少商(チォンシャオシャン)は恩人である宣皇后に終生、付き添うと決めて長秋宮へ戻った。淡々と流れていく歳月、その頃、北西に駐留する霍不疑(フォブーイー)は再び殺戮に明け暮れていた。しかし今でもその右腕には少商の弦がある…。そんなある日、少商は父からの書簡を受け取った。程家で慶事があり、二兄・程頌児(チォンソンアル)と万萋萋(ワンチーチー)、堂姉・程姎(チォンヤン)と班嘉(バンジア)、そして使用人の蓮房(リエンファン)と符登(フードン)、さらに姎姎の父で二叔父・程承(チォンチョン)と青蓯(チンツォン)が成婚したという。やがて二兄夫妻は双子に恵まれた。長秋宮でも嫁ぐ五公主を送り出し、穏やかな日々が続く。こうして5年が経った。正月の夜は雪となった。宣皇后は今年も家に帰らない少商を心配したが、少商の話では程家でそれぞれの夫婦に子が生まれ、自分が戻っても座る場所さえないという。すると宣皇后は新年の願い事で少商が良人と出会い、嫁いで子を産む姿が見たいと言った。しかし少商は一生、嫁ぐつもりはないという。「まだ吹っ切れないの?」「いいえ、ただ許せないだけ…縁が切れて別れたのです、もう有り得ません」宣皇后は少商と子晟(ズーション)の復縁を願っていたが、やはり少商は簡単に自分を曲げることはない。「ではこう願うわ、私の死後、あなたの余生に同伴がいるようにと…」「縁起でもない…」「少五が嫁いで行った今、1番の心残りがあなたなの…あ、見て、こんなに雪が降って来たわ」宣皇后は寝殿に入ることにしたが、その時、ついに倒れてしまう。孫(スン)医官は宣皇后の余命を早くて1ヶ月、長くても春までと診断した。しかし頑なに皇帝と越皇后の見舞いを拒み、長秋宮を明け渡したいと申し出る。「本来なら東海(トウカイ)王と属地に移り、東海太后と名乗るべきだと…」少商は越皇后に長秋宮を返したい旨を伝えたが、越皇后は住み慣れた永楽(エイラク)宮を移動したくないと断った。「呼び名も変えなくていい、これ以上、蒸し返すことがあれば私を不快にさせるだけよ」「越皇后に感謝します」 袁慎(ユエンシェン)が回廊で待っていると少商がやって来た。この5年、袁慎は宮中に留まる少商に付き添って縁談を全て断って来たが、待っていた甲斐はあったのだろうか。「少商、宣皇后も望んでいる、伴侶を持つ気はないか?ならば私を選べ 家柄も合うし、互いに伴侶が必要だ、いっそ宣皇后を安心させるため一芝居、打つのはどうだ」「袁善見(シャンジエン)、あなたの想いには応えられない」「少商、そなたの縁談が潰れてばかりなのは目先が利かぬからだ 私は両親からも放任されて育った、自由を望むなら都で私ほど自由な者がいるか? 我らこそ最適なのに私の望みに応えられぬと?」袁慎は互いに生まれながら誰にも関心を持たれず、病友であり盟友でもあると訴えた。利が一致すれば互いに信頼し合い、裏切ることはないという。「私は某人より自分を大切にするし、危険にも近寄らぬ、ゆえに私の方が最適だ」病床の宣皇后が薬を飲んでいると、少商が戻って来た。何やら考え事をしているのか、衝立て越しでも上の空だと分かる。実は皇帝は余命わずかとなった宣皇后のため、北西にいる霍不疑を呼び戻していた。…近いうちに到着する…複雑な面持ちで寝殿に入った少商、確かに宣皇后の言う通り、わだかまりに捉われていては更なる苦しみに陥ってしまうだろう。…過去は過ぎ去るもの、今と将来を大切にして、そのためにはわだかまりを突き破る必要がある…少商は袁慎に自分の心に″彼″がいても娶るのか聞いていた。…待つよ、そなたが奴を忘れるまで待ち続ける、いつか振り向いてくれるまで…「皇后、皇宮を出る許可をください、袁善見と婚約しようと思います」霍不疑が5年ぶりに宮中へ戻った。ますます義兄に似て来た子晟の姿に思わず目が潤む皇帝、しかし軍装でも生傷が絶えない身体だと察しがつく。「なぜ1番の精鋭を都に残したのだ?皇宮を出られない少商には必要ないであろう?」不疑は梁邱起(リャンチゥチー)を少商の護衛のために残し、梁邱飛(リャンチゥフェイ)だけをそばに置いていた。邱飛の報告では5年前、王(ワン)将軍が戾(レイ)帝の残党に襲われ、若主公が救出に向かうも敵は死士、多勢に無勢で負傷したという。「袁善見の父親が兵を率いたはずだが?」「分かりません、そして2年も経たぬうちに若主公は蜀へ討伐に行きました その時、襲撃に遭った程頌(チョンソン)将軍を…」「もういい」不疑は邱飛の話を遮ったが、皇帝は凱旋した程頌が褒美をもらいに来ない理由が分かった。「少商は知っているのか?…もしや兄を助ければ復縁できると期待したのか?」「…私は過ちを犯しました、少商の許しなど求めるはずがありません 少商に知られたら、かえってもっと疎まれてしまうでしょう」皇帝は子晟に下心がないと知って安堵し、今後は度田令を監督している皇太子を補佐して欲しいという。実は少商は5年ぶりに皇宮を出ていた。袁善見との縁談を進めるためで、近々、成婚するという。「お前はどうする?崔祐(ツイヨウ)さえ正室の座は空けて妾を取ると決めたぞ?」「皇父、ご心配には及ばぬかと…」皇太子は北西の軍営で駱済通(ルオジートン)が献身的に子晟の面倒を見ていたらしいと伝えた。噂では駱済通が都へ戻って子晟と成婚すると宣言しているという。しかし不疑は憤慨、成婚などあり得ないと否定した。霍不疑は阿飛と宮中を後にした。これから直ちに霍氏の墓と祠堂を修繕し、妻は娶らず子もなさぬと祖先に報告するという。(´ ・ω・)<若主公~それってどうみても吹っ切れてないっていうか~するとちょうど外出していた袁慎たちが城門に入って来た。袁慎は馬を降りて少商を馬車から降ろしたが、その時、2人は子晟の姿に気づいて呆然となる。しばし見つめ合ったまま立ちすくむ少商と不疑、袁慎はただ黙って待つほかなかった。霍不疑は意を決して少商に向かって歩き始めた。すると少商はどう接したら良いのか分からず、咄嗟に袁慎の馬に飛び乗ってしまう。その時、不疑がまたがった少商の足を支え、大事そうにあぶみに乗せた。まるで第9話で初めて馬にまたがった少商の足をあぶみの中に通してくれた時のように…。「感謝します、霍将軍…でももう昔の程少商ではない、あぶみがなくても乗れる」少商は馬を駆けて去って行った。安堵した袁慎だったが、霍将軍が戻ったからには少商を諦めないつもりだと疑う。「少商の中で私はお前に及ばぬ、しかし少商の性分ならお前を選ぶとは限らない」しかし不疑は黙ったまま拝礼して帰って行った。北西の賈(ジア)家に嫁いだ駱済通が長秋宮に挨拶にやって来た。宣皇后と少商は都に戻った駱済通を歓迎したが、どこか言葉の端々に棘がある。「あなたは幸運ね、私なんて不遇の身… 夫が重病で四六時中、世話ばかり、再嫁を狙っていると陰口まで叩かれたわ だから私も意地になって夫の死後も賈家の君舅君姑に奉仕した でも子晟にも前を向けと言われたの 厳しい人だけれど私には寛容で、私だけ天幕に入らせ、酒や食事を届けさせた その後、天幕に入れなくなったけれど、私に苦労させないためね」駱済通は恐らく子晟が都で求婚してくれると自慢したが、宣皇后も少商も当てつけだと分かった。「…皇后が病となり吉事に水を差しましたね?」「いいえ、そういう意味では…」「分かっています、皇后が在位中は駱家を何度も庇護してきました 恩人の前で恨み言など言えるはずない、もし本音なら畜生も同然です」そこへ翟(ジャイ)媪(ウバ)がやって来た。「駱娘子、早く実家へ戻らないと…先ほど実家から連絡がありました 霍将軍が2台分の嫁荷に加え、巨大な銅鏡を届けて長老に命じたそうです ″駱娘子の嫁ぎ先をすぐ探すように″と…」「銅鏡?鏡とはね…」少商は思わず失笑した。翌日、霍不疑が屋敷へ戻ると駱済通が待っていた。駱済通は北西で連れ合った自分への仕打ちに憤ったが、不疑は確かにかつて連れ合いがいたことはあったという。あの時、駱済通は負傷した子晟の意識がないのを良い事に勝手に介抱していた。結局、すぐ軍営から追い出されたが、駱済通は外に住み着き、再び忍び込んで洗濯をしたという。「私は顔も見ていない 都へ戻る時も軍の後ろを追って来たそなたとは話もしていないぞ? それのどこが連れ合いだ?」「でも3年前、天幕にも入れてもらえなかった私が今はこうして顔を見てもらえます」駱済通は妾でも構わないと食い下がった。すると不疑が馬から降りて来る。実は不疑はとうに気づいていた。駱済通の亡夫・賈七郎(ジアチーラン)は病弱だったが、20歳の若さで死ぬほどの病ではない。「お前が謀って殺したな?その方法は言うまでもない」子晟が北西に駐留すると知った駱済通は夫の薬湯に毒を盛っていた。「…程少商のため?だから私を拒むの?」「程少商がいなくてもお前に情はなかった」つづく(ˇ꒳ˇ *)今回もいい話だったわ〜でもここにきてラクダさんが闇堕ち?せっかくしみじみしてたのにな〜
2023.12.09
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第27話)第54話「母娘の雪解け」宣(シュエン)皇后は程少商(チォンシャオシャン)と霍不疑(フォブーイー)の縁が再び結ばれることを祈って旅立った。主を失った長秋(チョウシュウ)宮の夜。不疑は少商の飴糖(トウイ)作りを手伝いながら、彼女の言葉を待っていた。やがて少商は静かに自分の胸の内を明かす。「捨てられて恨んだわ、独断専行で死を選んでも共に歩もうとしなかった 私は本音で接したのにあなたは嘘ばかり…でも5年が経ち、苦労の末に吹っ切れた 今はどうしても心を預けられない、信頼できないの」「少商…すまない、君がどう決めようと尊重するよ 君が捨てられることを何より恐れていると知りながら、私は最も傷つける方法を選んでしまった これまでの20年間は恨みの中で生きて来たが、この先の余生は悔恨の中で生きる できることなら心を取り出し、君にあげたい…でも私にはその資格がない…」すると少商は居たたまれなくなり、黙って部屋を出て行った。少商は回廊から満天の星空を見上げた。すると霍不疑が現れ、隣に並ぶ。「以前、皇后に言ったの、郎君が陽光で万里を照らすなら、私たち女は明るい星、星河に輝く 日月と星河に高低は関係なく、互いが欠かせない、共存することでこの天地を成すと… 私もしっかり生きるわ、皇后の髪を埋めたら遊歴に出る、私も天地の広さを見たいから」「私も度田令の任務が終わったら北西に戻って国境を守る、世の星河を守るために… これからは自分を大切にする、お互いにしっかり生きよう」少商と不疑は笑顔で別れた。しかし互いに相手の姿が見えなくなると立ち止まり、こらえ切れず涙してしまう。。゚(∩ω∩`)゚。少商は曲陵(キョクリョウ)侯府に戻った。すると母が初めて少商の好物を手作りしたという。5年の月日が流れ、ようやく親子3人で過ごす穏やかな時間、しかし蕭元漪(シャオユエンイー)は急に点心を食べている娘の手を止めてしまう。「もういいわ、どうせ上手じゃないから」「嫋嫋(ニャオニャオ)は何も言っていないだろう?」程始(チォンシー)は相変わらず自分に厳しい妻に失笑した。「嫋嫋、阿母が悪かった…初めての女の子だったから… 兵の指導とどう違うかも分からなかった、息子を育てるのとはもっと違うし… 娘の成長はあまりに早過ぎた、どう改めていいのかも分からなかったの 私が間違っていた、もう一度やり直せるなら決してあなたを置き去りにしない 自分のそばに置くわ、家族で生死を共にするのよ」少商は母の涙にほだされ、長年のわだかまりがゆっくり解けて行くのを感じた。少商は母の手作りの点心を甘い物に目がない祖母に届けることにした。すると偶然にも過去を悔やむ祖母の話が聞こえてくる。当時は二房の葛(ゴー)氏にそそのかされ、老夫人は父と母を支配しようと躍起になっていた。その結果、幼い嫋嫋が最も被害を被ることになったという。「やり直せるなら嫋嫋によくしてあげたい、だって私の孫だもの… 私が死んだら蓄えた金銀財宝は全てあの子に残すわ もし一生、嫁がなくても暮らしていけるようにね、本当にあの子に申し訳ない…」少商は複雑な心境になり、結局、引き返した。少商は蓮房(リエンファン)と東屋に腰掛けた。思えば田舎の別宅に送られた時、蓮房の献身的な世話がなければ今頃、自分の墓が建っていたはずだ。「あなたは私が唯一、信頼できる人だった」「もう昔のことです」少商は祖母とも仲良くなりたかったが、どうにも近寄りがたかった。程家の危機では祖母も身を投げ打ち、徐々に家族になれたと思ったが、やはりまだどう向き合えば良いのか分からない。しかしこれからは誰が自分を憎み、嫌うのかではなく、自分を大切にしてくれる人のことを考えようと決めた。「それが生きる活力になる…人は良い事を考えないと… そうしないと余生をしかと生きられなくなってしまう」蓮房はすっかり大人になった女公子の言葉に大粒の涙をこぼした。。゚(∩ω∩`)゚。 少商は宣皇后の故郷に向かう前に参内、袁慎(ユエンシェン)に別れを告げた。実は善見(シャンジエン)も外地に赴任することになり、皇帝に挨拶したところだという。「2年前、父が義兄を救出するため部隊を離れ、味方が不利な状況に陥ってな 霍不疑は父を助けるため駆けつけ、死にかけたんだ しかし陛下の恩情で父は降格の上、膠東(コウトウ)に戻るだけで済んだよ」父は祖先に面目ないと身体を壊したが、これを機に母も夫を気遣うようになってすっかり夫婦仲が改善されたという。「2人は出発前、我らの縁談を案じていた」「…ごめんなさい、望みには応えられない」「残念だな~将来、私は三公に並び称される、三公夫人になり損ねたな?」袁慎はかつてのように茶化して笑ったが、初めから不疑に勝つ見込みがないと分かっていた。この5年、少商を見守り続けた袁慎、最後は少商の立ち去る姿を見送りながら未練を断ち切った。袁慎が城楼から都を眺めていると霍不疑がやって来た。「決めたのか?」「そうだ、父のためお前は死にかけた、これ以上、競っては恩知らずになる」実は不疑も度田令の推進のため、各地を巡察し、監督すると申し出たという。袁慎は不疑が程将軍の代わりに戾(レイ)帝の残党を掃討するつもりだと気づいた。しかし少商の父や兄を助けるのはまだ分かるが、なぜ恋敵の自分の父を命懸けで救ってくれたのだろうか。すると不疑は少商が袁慎を案じているからだと明かした。「お前が達者でなければ少商は安心できない、楼垚(ロウヤオ)を推挙したのも同じ 彼女は口とは裏腹に情に篤いからな…関心を持つ者が達者なら彼女は安心できる 私がお前たちを守れば、彼女はようやく自分の道を模索できる」「お前は私より情が深く、愚かだ…彼女の愛に値する」袁慎は最後まで少商に寄り添える者がいるとしたら、不疑であって欲しいと願った。。゚(∩ω∩`)゚。不疑…サイコーか宣皇后の四十九日が過ぎ、少商は双子の兄・程少宮(チォンシャオゴン)と一緒に宣皇后の故郷へ向かった。やがて驊(カ)県から十数里の山道を進んでいたが、その時、待ち伏せしていた馬車が一行を足止めする。馬車に乗っていたのは都を追われた楼太傅の娘・楼縭(ロウリー)だった。楼縭は楼垚が少商に今の驊県を見てもらいたいと願い、招待したいという。「ありがとう、でも宣皇后の郷里に向かっているのでごめんなさい」しかし少宮はここで待っているので行ってこいと背中を押した。楼垚と何昭君(ハージャオジュン)は少商の来訪に驚いていた。どうやら自分は招待されたわけではなく、楼縭が勝手に連れて来たらしい。しかし夫婦は両親を相次いで亡くした楼縭を気遣っていた。すると空席がひとつある。何かおかしいと警戒する少商、その時、身重の何昭君が急に苦しみ出した。「お腹が痛い…産まれそう」予定日はまだ先のはずだったが、楼垚はともかく産婆に連絡するため慌てて出ていってしまう。一方、巡察に出発した霍不疑一行は道中の山林で襲撃に遭った。黒甲衛(コクコウエイ)は賊を一掃、すると付近の溝で数十人の死体が見つかる。「驊県の侍衛の鎧を着ていました、他には…袁家の部曲の身なりに酷似を…」驚いた不疑は行き先を驊県に変更した。楼縭は少商に手伝いを頼み、何昭君を連れてなぜか廟に入った。「県衙(ケンガ)に廟を立てるなんて、誰かが修行でもしているの?」少商は困惑したが、その時、突然、楼縭が隠し持っていた短剣を抜き、襲いかかって来る。「少商!」つづく( ;∀;)イイハナシダ〜って、え?これが最終回かってくらい良かったのに今さらローリーって…ないわ___w
2023.12.23
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第17話)第44話「降って沸いた功労者」行方不明の程少商(チォンシャオシャン)を探すため銅牛(ドウギュウ)県に入った凌不疑(リンブーイー)。そこで待っていたのは馬栄(マーロン)を説得して城内を解放させた河東楼(カトウロウ)氏二房の楼犇(ロウベン)だった。馬栄には投降を勧めたものの、彭坤(ポンクン)の配下に殺されてしまったという。「出征前、楼兄も同行させたいと申し出たが、楼太傅は婉曲に断った まさか楼兄が危険を冒し、銅牛県で手柄を立てるとはな」「去年、寿春(ジュシュン)へ行き馬栄と面識があったゆえ、数言ほど話せただけだ」「謙遜を…一城を守る将を数言で投降させることなどできない で、楼兄は顔忠(イエンジョン)が投降したと信じるのか?」すると楼犇は県丞・李逢(リーフォン)の証言だけでなく、県衙(ガ)の書房で顔忠の詫び状が見つかったと報告した。しかし少商の父・程始(チォンシー)の行方については何も知らないという。「それで李逢は?投降を拒んで投獄されたのであろう?」「あ、この数日、慌ただしくてな…すぐ釈放する」その時、衛兵が駆けつけた。「大変です!県衙の牢が火事です」↓まさに降って湧いた感w凌不疑は直ちに県衙の地下牢に駆けつけた。大事な証人だった李逢はすでに息絶えていたが、その時、誰かの咳き込む声がする。それは火事に巻き込まれ、炭で顔が真っ黒になった少商だった。凌不疑は無事に少商と再会、安堵した。少商もようやく身なりを整え、不疑に痛めた手首を手当してもらいながら、ここへ来るまでの苦労を切々と訴える。「でね、糞尿の桶に隠れて城内に入ったの、あの臭い、今、思い出しても頭が痛くなる…(´゚艸゚)ォェッ それで考えたの、李逢が鍵を握っていると…でも牢獄でしょう? だから焼餅(シャオビン)を2枚盗んで捕まるしかなくて…」すると不疑は急に少商が愛おしくなり笑ってしまう。「笑うところじゃないわ!」「はおらはおら~、私が来ただろう?…私は君の未来の夫だ、当然、程家の人間でもある 孤軍奮闘しなくていい、君の父は私の父でもあるのだから」「大事な時にそばにいてくれなかったじゃない(ボソッ)そうだ、牢獄では収穫もあったの」その時、部屋の外に楼犇がいた。楼犇は少商が何か嗅ぎつけたと気づいて立ち聞きしようとしたが、不疑に気づかれてしまう。「誰だ?!」「私です」仕方なく楼犇は部屋に入り、火事の死傷者名簿を渡して出て行った。少商は楼犇を疑っていた。実は収監された李逢がいずれ昇進して財を成すと自慢し、楼犇が銅牛県を奪還すれば贅沢できると話していたという。李逢は朝廷の兵が来れば馬栄が投降すると知っていたのだ。さらに火事で大騒ぎになった時、″裏切り″だの″口封じ″だの叫ぶ李逢の声が聞こえたという。「誰かと結託していたのね…阿父の失踪と何か関係があるのかしら?」少商と凌不疑は李逢の葬儀に出かけた。位牌の前で悲しみにくれる李夫人、2人は中庭から哀れな夫人の姿を見ていたが、その時、楼犇が夫人に何やら耳打ちしている様子を見かける。今や楼犇は銅牛県を救った英雄となった。少商はなぜ父が県令と精銅を運び出したのか疑問だったが、参列者の話ではあの日、程将軍と顔忠は寿春に隣接する銅牛県から精銅を守るため都に戻すという名目で運び出したという。その時、顔忠はなぜか家族も一緒に連れていた。「その経緯は誰から?」「李県丞です」するとしばらくして李夫人がふらふらと外へ出て行った。少商と凌不疑は李夫人の様子を訝しみ追跡した。李夫人は家財を売り回っているだけだったが、やがてある質屋で騒ぎを起こす。店主の査定に納得できず、外に飛び出して虐げられたと通行人に訴えたのだ。李夫人は激怒した店主に突き飛ばされて転倒したが、その時、少商は夫人が巾着を落とすのを見逃さなかった。少商は人混みから李夫人の落とした巾着を拾って凌不疑と戻った。中から出て来たのは役所の書類だったが、県の区画図を見るに顔忠が水路を掘って道を舗装する予定だったと分かる。果たして城内の整備を考えていた人間が急に投降などするだろうか。恐らく顔忠の投降が疑われないよう李逢が隠したのだろう。李夫人の回りくどい演技も、焼香を口実に現れた楼犇に脅されたせいだと察しがつく。すると少商は確かに李夫人の話は辻褄が合わないと気づいた。「李夫人は30里先の実家に戻るため質に入れると言ってた でも女の足でも2日、そんなに路銀が必要かしら? それに李逢に両親はいないのに″亭長の父親″って…誰? 30里…亭長…亭・・・ハッ!」少商の予想通り黒甲衛(コクコウエイ)は30里先の山道で亭(アズマヤ)を発見、付近で埋められた遺体を発見した。掘り出された遺体は身なりからして顔忠一家だと思われ、残りの遺体も服装から程将軍に同行した護衛だと分かる。少商は不疑が止めるのも聞かず、自ら腐敗した遺体を確認して父を探した。「少商、見つからないのは生きている証拠だ」「(ハッ!)そうね、そうよね、どこかで助けを待っているのかも…」すると少商は矢も盾もたまらず父を探しに走り出してしまう。凌不疑は慌てて少商を追いかけ捕まえた。「少商!冷静になれ!」「冷静になれるはずない!早く阿父を見つけなければ手遅れになってしまうわ!」少商は泣き喚いて父を探すと暴れたが、不疑が点穴して少商を眠らせてしまう。「君の心境は誰より私が分かっている…心配ない、私が受けた苦痛を君には味わせないよ」少商が目を覚ますと寝台だった。凌不疑の話ではまだ父は見つからず、やはり遺体の中にもいなかったという。「…阿父を探さなくては」少商は引き止める不疑に激怒したが、その時、控えていた梁邱飛(リャンチゥフェイ)が思わず口を滑らせた。「若主公は数時も若女君を背負って帰り、まだ水も飲まず…」梁邱起(リャンチゥチー)は咄嗟に弟を制したが、阿飛は何も知らずに若主公を困らせる少商に我慢できなかった。「曲陵侯の件を聞いた若主公は単身、寿春に潜入して刺されたんですよ? それでも若女君を案じてその足で銅牛県に来た この数日、不眠不休なのに少しはいたわってくれても…」「阿起、罰を受けさせろ」すると邱起は邱飛を連れて下がった。少商はようやく冷静になった。「今後は覚えていて、私のためでも命を投げ出さないと」「君のことばかり案じていた、命など考えている暇はなかった」凌不疑は少商の鎖帷子のおかげで救われていた。「時々、思うんだ、君が優しくしてくれるなら、身体にもっと穴が開いても良いと…」舅父の霍翀(フォチョン)が亡くなって母は錯乱、この世で自分を心配してくれる者は誰もいなくなった。不疑は霍家の最後の人間である自分だからこそ、今の少商の不安が痛いほど分かるという。すると少商は不疑の胸に顔を埋めた。「もう独りじゃない、私がいるわ…これからはあなたも孤軍奮闘しなくていい 私が永遠にそばにいてあなたを守る」「少商…私は…」「何?」不疑は何か言いかけたが、しばし少商の顔を見つめてから言い直した。「私は…君が必要だ」一方、文(ウェン)帝は何かと諫言してくる御史たちにうんざりしていた。その夜も左(ズオ)御史中丞が程始や程娘子を弾劾すべく謁見を願い出ていたが、皇帝は誰とも接見しようとしない。しかし左御史中丞が先に待っていた万松柏(ワンソンバイ)と言い争いとなり、腕をひね上げられ脱臼してしまう。「陛下!万松柏を訴えます!同僚に乱暴した無法者です!陛下!」皇帝は仕方なく謁見を認めると、一緒に待っていた袁慎(ユエンシェン)と楼太傅もやって来た。万将軍は転んだ左大人(ダーレン)を支えようと腕を引いただけだと釈明した。すると袁慎はもちろん、甥の功績のことで嫌味を言われた楼太傅までその通りだと認めてしまう。左御史中丞は悔しさと肩の痛みをこらえながら、未だ行方知れずの程始こそ精銅を盗んで顔忠一家を抹殺したと弾劾、一刻も早く曲陵侯一族を死罪に処し、程娘子も罰を受けさせるよう訴えた。そこで袁慎は戦の終結で慌ただしい中、御史台だけが暇を持て余していると指摘し、程娘子を帰京させる伝令は左大人自ら行ってはどうかと提案する。「なぜ私が内侍官の仕事を?!」「それはいい、確か子晟(ズーション)と程娘子とは旧情を交わした仲であろう?決まりだ!」左御史中丞は凌将軍から罰を受けたことを揶揄され、皇帝に何も言えなくなってしまう。「それから楼太傅の甥も一緒に戻ると良い、しかと論功行賞を行わないとな」楼太傅は偶然の産物だったと謙遜して辞退しようしたが、皇帝はすでに決めたことだと取り合わなかった。翌日、凌不疑と少商は楼犇に探りを入れることにした。実は顔忠にも密かに交流のある旧友がいたという。「世家の子弟だそうだ、ただ世家に迎合したと思われるのを恐れて交流を隠していたらしい 楼兄、ご存知か?」つづく( ;∀;)パパ~どこにいるの?!ルースー上手いわ~でも今回はウーレイのウルウルしたチワワのような瞳が全て持って行ったわw※亭長:役場町の長
2023.11.13
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第22話)第49話「捨てられし者の矜持」自ら凌益(リンイー)に手を下し、宿願の復讐を果たした凌不疑(リンブーイー)。しかし静まり返った城陽(ジョウヨウ)侯府に突然、程少商(チォンシャオシャン)が現れる。寝殿は骸で埋め尽くされ、おびただしい鮮血が窓紗を染めていた。「…なぜ来た?」「あなたは誰?凌不疑?それとも霍無傷(フォウーシャン)?」「私が誰であろうと君への真心は変わらない」「でもなぜ今日だったの?…なぜ私に教えてくれなかったの?」一族を殺された仇は必ず討たねばならなかった。しかし成婚してから敵を討てば程氏一族を巻き込んでしまう。凌不疑は自分の始末は自分でつけると言ったが、その時、外から左(ズオ)将軍の怒号が聞こえた。「凌不疑!勝手に虎符を使い兵を動員したな?!謀反を画策した罪は許されぬ! 今日、この門を出ようものなら容赦なく殺す!」退路を断った凌不疑はすでに自分の命で贖うと覚悟していた。「少商…ここでお別れだ、もう会うこともない」すると不疑は満身創痍の梁邱起(リャンチゥチー)と梁邱飛(リャンチゥフェイ)には生きて欲しいと伝え、独りで屋敷から出て行ってしまう。少商は引き止めることもできず呆然と立ちすくみ、ただ泣きじゃくっていた。門前では凌不疑と因縁のある左将軍がすでに兵を率いて待ち構えていた。そこには捕縛された程家の姿もある。不疑は深手を負いながらも警告を無視して門から出た。すると弩から放たれた弓が不疑の肩に命中する。不疑はそれでも無視して一歩ずつ左将軍へ近づくと、今度は膝に弓が刺さった。「来啊っ!」「殺ーっ!」その時、馬のいななきとともに少商が現れた。門前は騒然、さらに梁兄弟が駆けつけ馬に体当たり、左将軍を落馬させてしまう。少商は凌不疑を連れて逃亡、しかしやがて崖に追い詰められた。「少商…これは私一人で進んだ道、同行させるわけにいかない」「なら答えて、歯型の誓いは何だったの?!私たちは生死を共にすると約束した 程家もあなたを救うために来たわ…今は恨みを捨てて私のことを考えて!」「少商、君には15年前の国の悲劇だろう、だが私には長年、心に巣食ってきた深い恨みなのだ 毎夜、眠りに就く時はいつも亡魂の叫び声が耳に響く そして目の前には無惨に殺された一族と血の海が広がっている あまりに重すぎる…あまりに重すぎて捨てることができない…きっとこの先も… すまなかった、君には本当にすまないことをした 天下の大罪人となった今、私が死んでこそ君や家族を守れる…」「…もし私を独りにするなら一生許さない、来世も、来来世も許さないから!」「許してくれとは言わない…程少商、私と君の縁は尽きたのだ」その時、じりじりと迫っていた左将軍が程娘子ともども殺せと命じた。「少商…しかと生きろ、すまない」すると不疑は少商の背中を押し、独りで崖に落ちてしまう。「リンブーイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」程家は屋敷での軟禁を命じられた。少商は衝撃のあまり意識を失って運び込まれたが、家族の懸命の介抱もむなしく目を覚まさない。すると三皇子が兵を連れて曲陵(キョクリョウ)侯府に乗り込み、程少商を渡せと迫った。家族は嫋嫋(ニャオニャオ)の部屋の前に立ちはだかり抵抗、蕭元漪(シャオユエンイー)は娘の閨(ネヤ)に外部の男を立ち入らせることはできないと拒否する。しかし三皇子は会えるまで帰らないと食い下がった。「子晟(ズーション)が程娘子にどれだけ尽くしたと?今日は何が何でも子晟を助けてもらう!」「裏切ったのは向こうだ!」娘を傷つけた凌不疑に憤懣やるかたない程始(チォンシー)、その時、寝台の少商がようやく長い夢から目覚めていた。三皇子が家族と対峙していると、少商が青白い顔でふらふらとやって来た。すると三皇子は子晟の父殺し、兵の動員、虎符の使用で朝廷に激震が走り、重臣18名が連名で弾劾、死罪を上奏していると教える。しかし少商は三皇子が来なくても参内するつもりだった。家族は止めたが、少商は自分に与えられた大役を果たさねばならないという。少商は皇宮に到着、輿を降りて三皇子と長い宮道を歩いた。「三皇子と子晟はいつから良朋に?」実は少商は雁回(ガンカイ)塔で密談していたのが三皇子と子晟だったと気づいていた。三皇子の話では幼い頃、池に落とされた子晟を救ったのは皇太子ではなく自分だったという。「私も子晟も独りを好み群れを嫌った、あの時も独りでいる時に溺れている子晟に気づいたのだ」「つまり幼い頃から2人は手を組んでいたと?」すると三皇子は人払いした。「バカを言うな!皇后と母妃は対立したこともない!」雁回塔では舅父の小越(エツ)侯が子晟に補佐を勧めたが、子晟は断ったという。それにしても程娘子はなぜ自分たち2人がいたと気づいたのだろうか。少商は凌不疑が杏仁を食べて倒れた時に看病したと明かした。その時、不疑が首から下げている玉佩を見たという。よく見るとその玉佩は少商が雁回塔で失くしたものだった。「あの時、2人の声が聞こえた、だから2人だと思っていたけれど、実は3人だったのね 3人目が子晟だった…」少商はようやく分かった。凌不疑が今回、皇太子の虎符で兵を動かせば当然、皇太子の位も危うくなる。つまり不疑が宿願を果たしたことで、図らずも三皇子の念願が叶ったのだ。少商はさすが抜け目のない凌不疑だと嫌味を言いながら歩き始めた。「それで?子晟を助けられるのか?」三皇子は程娘子があまりに冷静で淡々としている様子に困惑してしまう。「取り乱したり、共に尽きる気概はないのか?!」すると少商は急に立ち止まり、鬱憤を爆発させた。「いくら女でも自分の夫が何者かも知らず、蚊帳の外に置いてもいいと?! 成婚の2日前に気づいた、でも彼が話してくれるのを待ったわ もう憤ることも恨むこともできないのに、さもなければ薄情で身勝手だと思われる… 私の身体を切り開いて彼に心を見せてあげたい、彼が真心を捧げたなら、私とて彼に心を捧げた 彼に救われた命だからこの命で報いる、彼が助からないのならこの命で相殺する 死など恐れていなかったのに… 死ぬとしても生きているのに飽きたから、決して誰かと生死を共にするわけじゃない 凌不疑はこの世で最も好きな人よ、でも私は…やっぱり私なんです」その頃、朝堂では崔祐(ツイヨウ)が凌不疑への恩情を求めていた。しかし不疑に恨みがある左御史中丞は凌不疑が亡くなった母のために父を殺したと断罪する。袁慎(ユエンシェン)は左大人が早々に経緯を知っていたことを訝しんだが、返って廷尉府は凌不疑を庇うのかと非難を浴びた。寵愛する子晟の思わぬ暴挙に頭を抱える文(ウェン)帝、すると三皇子が程娘子を連れて現れる。左大人はここぞとばかりに凌不疑の父親殺しは明白であり、酌量の余地などないと訴えた。「…凌不疑は父親を殺していません、大層な意気込みですが最初から間違っているわ」「程氏、未来の夫のために嘆願に来たのだろうが、凌不疑ならやりかねん」御史台で散々な目にあった左大人は程氏も収監して尋問するべきだと訴えたが、皇帝は少商の言葉が引っかかった。「今、何と言った?なぜ父親を殺していないと?」「陛下にお答えします…なぜなら凌益は子晟の父親ではないからです 子晟の実父は霍翀(フォチョン)将軍、子晟は霍翀将軍の忘形見である霍無傷です」(O_O)言ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~子晟は確かに城陽侯に似ておらず、どこか霍将軍の面影があった。少商の話では杏子が好物のはずの子晟が霍君華(フォジュンホワ)の手作りの杏仁菓子を食べ、熱を出したことがあったという。「霍無傷は杏仁に触っただけでも赤く腫れるとか、それで私は疑念を持ったのです そして宴の夜、本人から告げられました、自分は霍侯の息子・無傷だと… 陛下、凌益は孤城の陥落を企て、霍将軍を惨殺した黒幕、子晟は父の敵を討っただけなのです」全てを聞いた皇帝は呆然、腰が抜けるように少商の前で座り込んだ。崔祐は何も知らなかった霍君華を思うとやるせなくなったが、少商は臨終の時を思い出せば分かるという。あの時、霍君華は子晟に自分たちの敵を忘れるなと遺言を残した。そして最期は確かに天を見つめながら我が子の名を呼んでいる。「阿狸(アリ)や…阿母も行きますよ…」霍君華は全て分かっていた。すると左御史中丞が新婦である程氏の言葉では証拠にならないという。少商はようやく凌不疑の苦悩を理解した。自分が誰の子かも証明できず、城陽侯が死ねば証人も消え、生かしておいても実子だと断定すれば反論しても無駄になる。「陛下、子晟は仕方なくあんな下策を…」しかし皇帝には凌不疑が阿狸か阿猙(アージョン)か証明する方法があった。「阿猙が子供の頃に見たことがある、身体に変わった形のあざがあった」「虎の頭では?!耳が3つある…子晟の腰の半寸下にありました 子晟の身体を拭こうとした時に偶然、見たのです!」「そうとも、3つの耳がついていた!ぁぁぁぁ〜早く捜索に遣わせ! あの青二才を崖から救うのだ!医官も連れて行け!食料もだ!」三皇子は直ちに崖へ向かうことにした。すると少商が追いかけて引き止める。「子晟の命を狙う者がいます あの日、左将軍は私たちを追い詰めて矢を放てと命じ、それで子晟は崖に…」「分かった…今日のことは感謝する 今後、子晟は愛するそなたのいいなりだな、ふっ」しかし少商の顔に笑顔はなかった。一方、崖から身を投げた凌不疑は蔓にからまり、かろうじて岩肌に留まっていた。どうやら不疑が手首に巻いていた少商の弦が蔓に引っかかり、運良く助かったのだろう。「少商…」つづく( ́ඉ .̫ ඉ ̀)ァゥァゥァゥァゥァゥァゥァゥァゥ…私のガオハン、美しかったわ~ ←そっちw
2023.12.01
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上阳赋 The Rebel Princess第47話「羨望」皇宮では小皇子・馬静(バセイ)の身体に異変が現れ、騒ぎになっていた。診察した申(シン)太医は皇子に異常がなく、発疹の原因は酒だという。皇帝・馬子隆(バシリュウ)は赤子が酒を飲むはずないと激怒したが、太医は酔い覚ましを飲ませれば分かるとなだめた。小皇子はしばらくすると落ち着いた。やはり酒が原因だと明らかになったが、皇后・謝宛如(シャエンジョ)は泣き止ませるための苦肉の策だったとは言えず、白を切り通す。すると子隆は乳母がこっそり酒を飲み、皇子がその乳を飲んだせいだと疑った。乳母は何も知らないと命乞いしたが、昭陽殿から引きずり出されてしまう。宛如と鄭(テイ)嬷嬷(モーモー)は乳母に濡れ衣を着せて難を逃れた。すると皇帝はこの機会に皇子が朝から晩まで泣き通しだと相談する。太医は脈診でも異常が見つからないため、もともと体が弱い皇子の先天的な問題だと説明した。「…これは私の推察ですが、怯えからでしょう」皇子がようやく落ち着いて眠りについた。しかし今度は不安が募る宛如が泣き続け、子隆はうんざりしてしまう。「そなたは静児を産んでから変わってしまった、わがままで横暴で不満ばかりだ 以前は仕事に疲れると昭陽殿に来たいと思っていたが、今は… 静児かそなたのどちらかがいつも泣いている、疲れたよ」すると宛如はようやく泣き止み、実は太医の言葉が気がかりだと訴えった。皇子には怯える必要がなく、どうしても解せないという。一方、王儇(オウケン)の護衛・龐癸(ホウキ)は豫章(ヨショウ)王が密かに民家に通っていることを突き止めた。しかし徐(ジョ)女官が王妃と宮殿に滞在しているため相談できない。そこで翌日、再びひとりで出かけた豫章王を追跡した。まさか自分のあとを付けている女がいるとは知らずに…。子隆は皇子が怯える理由を探すため太史令を頼った。すると太史令は大きな災難を意味する廉貞(レンテイ)星が存在すると報告、その星は卑賤(ヒセン)の生まれながら一気に出世した星だという。「以前は北の方にいましたが、今は紫微(シビ)星に近く、皇都またはその周辺にいるでしょう」子隆は真っ先に蕭綦(ショウキ)を思い出し、顔色が一変した。実は太史令・盧子雲(ロシウン)は宛如の亡き父・謝淵(シャエン)の門下生だった。宛如は謝氏に恩がある太史令を利用し、皇帝に豫章王を排除させようと企む。「賀蘭箴(ガランシン)に伝えてちょうだい、動く準備をするようにと…」賀蘭箴が忽蘭(クラン)へ帰国してから侵犯はなく、辺境は静かだった。しかし蕭綦は報告を聞いても警戒を怠らないよう釘を刺す。すると穏やかな日々が性に合わない胡光烈(ココウレツ)がふと寧朔が恋しいと漏らした。「朝廷が安定し、肩の荷を下ろせる時が来たら一緒に帰ろう」( ๑≧ꇴ≦)<その言葉を待っていました!その頃、豫章王府に幸せいっぱいの蕭玉岫(ショウギョクシュウ)が訪ねて来た。実は宋懐恩(ソウカイオン)が江南に発ってすぐ懐妊が分かり、ようやく安定期に入って外出が認められたという。王儇は興味津々、懐妊するとどんな気分なのか、性別はどちらがいいかと矢継ぎ早に聞いた。そこへ徐女官が王妃の薬湯を持って来る。しかし徐女官は無神経な玉岫に苛立ちを隠せず、何も知らない玉岫は困惑した。子隆は永安宮に母を訪ね、太史令の話を伝えた。「事が重大だけに決断できません、母后がご決断を」すると皇太后は1ヶ月後にちょうど大臣たちが狩り場に行くと思い出した。そこで狩り場で刺客が皇帝の命を狙い、豫章王が皇帝を守って殉職するという筋書きを思いつく。子隆は妙策だと喜び、これなら阿嫵(アーウォ)との溝が深くなることもないと安堵した。こんな時まで阿嫵を心配する子隆に皇太后は思わずため息を漏らし、邪魔をすればたとえ阿嫵でも排除するという。(´・_・),<そうですね、覚えておきます徐女官は龐癸を訪ね、大王への疑いは誤解だったと伝えた。しかし大王を探っていた龐癸は思わぬ秘密を見つけたという。「この場所に長くて半月、短ければ5日ほど、私服で出入りされています」地図に印をつけた屋敷には2人の子供を連れた竇(トウ)という女人が住んでいた。一方、江南でも江夏王・王夙(オウシュク)が思わぬ密書を受け取っていた。「誰からだ?!」「名乗りませんでした」「次にその者が来たら捕まえておけ」紙切れに書かれた″夙″の文字は確かに死んだはずの父・王藺(オウリン)の筆跡だった。その夜、徐女官は王妃の寝支度をしながら上の空だった。王儇はまだ玉岫のことで不機嫌なのだと呆れたが、徐女官は思い切って地図を差し出す。「先ほど龐癸から報告を受けました…」皇子は相変わらず昼夜を問わず泣き続けた。宛如は眠れない日々が続き疲れ果て、皇帝も昭陽殿に寄り付かなくなってしまう。悶々とする宛如、しかしそんな皇后よそに子隆ははつらつとした妃嬪と楽しんでいた。江夏王はひとまず治水に成功、民への手当てもひと段落ついた。しかし蕭綦は慢心せず、朝廷からの資金と食料を早く届けるよう進言する。すると王府から急な知らせが舞い込んだ。蕭綦は慌てて竇夫人の屋敷へ駆けつけた。恐る恐る戸を開ける蕭綦、するとそこで王儇が子供と楽しそうに遊んでいる。実は竇夫人は蕭綦と軍で同期だった盟友の妻だった。王儇は蕭綦が亡くなった盟友の子供たちの面倒を見ていると夫人から聞いたという。「隠し事はなしよ」「…そなたが誤解したらと思って」その日、小禾(ショウカ)や沁之(シンシ)と触れ合った王儇は、王府に戻ると申太医を呼ぶよう頼んだ。蕭綦は宮中を訪ね、皇帝に謁見した。すると子隆はちょうど話があると切り出し、来月に狩りに出かけたいという。本来なら天候や天下太平を祈る恒例行事だったが、晩年の先帝は身体が弱く、何年も狩りに出かけていなかった。「どう思う?」「異論はありません」しかし豫章王の話は意外なものだった。「政務を辞任させてください…寧朔に帰ります」蕭綦は朝廷が安定したため、武将として国を守る本分を果たしたいという。ちょうどその頃、豫章王府に申太医が到着した。つづく( ๑≧ꇴ≦)子隆wすっかり見直したのに、ここぞという時はママ頼みなのねw
2022.02.17
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第26話)第53話「長秋からの旅立ち」霍不疑(フォブーイー)に嫁ぎたいと願うも手酷く追い返された駱済通(ルオジートン)。これも全て程少商(チォンシャオシャン)のせいだと逆恨みし、長秋(チョウシュウ)宮に少商を訪ねた。少商は殊勝にも先のぶしつけな態度を謝罪する駱済通を追い返せなかったが、どちらにしても助けることはできない。「彼とはもう関わりたくないし、とりなす気もない、成婚を勧めることもね…あなたの問題よ」「今日はあなたに伝えに来ただけ、北西に戻って余生を過ごすわ、これで永遠にお別れよ 明日にも出発する、ただやり残したことがあるの…」宣神諳(シュエンシェンアン)の心疾(シンツウ)は悪化の一途をたどり、今朝は身体を起こすこともできなくなった。そんな宣神諳の元に帰京した霍不疑が見舞いにやって来る。「子晟(ズーション)なの?」「私です」不疑は宣皇后が力無く伸ばした手を取り、頬に当てた。「少商ならまだ婚約していない…少商の心の中にはまだあなたがいるわ」「知っています、私の過ちです、一生かけて贖罪すると決めました」その時、宣皇后が重い身体をどうにか起こした。「少商は幼き頃、最も愛が必要な時に家族がそばにいなかった 愛しているなら少商の心に欠けたものを補ってあげて… あなたの決断を理解させるのではなく、相談し合って初めて肩を並べて進めるのよ?」「はい、今後、少商には全てを明かし、語り尽くします、隠し事はしません」「だけどもう私には時間がない、2人の成婚を見届けられないわ」「私は不肖者です…ご心配をかけて…」不疑は育ての親でもある宣皇后への不孝を思うと涙があふれ出した。すると宣神諳は子晟の涙を拭い、来世では子晟と少商を息子と娘にしたいという。「そして長生きして2人に養ってもらいながら笑顔で晩年を送るの これこそ満ち足りた人生というものよ」そこへ翟(ジャイ)媪(ウバ)が現れた。「霍将軍に急務だと…」宣神諳は最後に少商としっかり話すよう念を押し、必ず許してくれると励ました。不疑が寝殿を出ると翟媪が待っていた。梁邱起(リャンチゥチー)から知らせがあり、少商が都を離れる駱済通の馬車に同乗して郊外に向かったという。実は駱済通は宣皇后の心疾を治せる神医に心当たりがあると嘘をつき、少商を連れ出していた。少商はなかなか到着しないことを訝しんでいたが、やがて駱済通が本性を現す。「…幼き頃より彼を慕うも身分の差で明かす勇気はなかった その後、互いに婚約して望みは絶えた、でも天は私を哀れみ北西で再会させてくれたの あなたに分かる?愛する人がいながら別の人を世話する気持ちが…」駱済通は不疑への思いの丈をぶちまけると、少商に隠し持っていた短剣を突きつけた。「彼は女に目もくれないのにあなただけは別、なぜ霍不疑の目にはあなたしか映らないの?! 彼のためなら何だってやる、夫だって殺したのよ?でも彼は私を愛してくれない でもあなたを殺せば彼は私を忘れられなくなる、恨まれても本望よ」御者は崖に向かって馬を走らせた。しかし背後から凌不疑の馬が追いつき、驚いた御者は飛び降りてしまう。その時、短剣を振り上げる駱済通の姿が窓から見えた。不疑は無我夢中で手を伸ばし、素手で短剣をつかんで取り上げる。その間も馬の暴走は止まらなかった。不疑は何とか馬車に飛び移ったものの間に合わず、咄嗟に車から少商を抱きかかえ脱出、駱済通は馬車と共に谷底へ転落してしまう。( ;∀;)ァァァ~ウマーの扱いィィィィィ~不疑は少商の手をつかみ、かろうじて岩肌にしがみついた。しかし少商は不疑の手から流れる鮮血で真っ赤になった自分の手に気づき、覚悟を決める。「手を放して、あなた独りなら登ることができる」少商は自ら手を放したが、不疑は少商の手を握りしめて決して放さなかった。「独りで生きるつもりはない、君に許してもらえるとも思っていない だが歯形の誓いから君は私の妻になった、君が生きれば私も生きる、君が死ぬなら私も死ぬ!」その時、2人を探していた黒甲衛(コクコウエイ)が到着、不疑と少商は無事に引き上げられた。少商は不疑の手の傷を心配してくれた。不疑は包帯を巻けば支障はないと安心させ、皇宮まで送りたいと申し出る。しかし少商は必要ないと断った。落胆しながら馬の元へ歩き出した不疑、その時、宮中から早馬が駆けつける。「霍将軍!程娘子!すぐ皇宮へ!宣皇后が危篤です!」少商と不疑が長秋宮に戻る頃には激しい雨となった。2人はびしょ濡れのまま寝殿に駆けつけ、一番後ろで静かにひざまずく。文(ウェン)帝は枕元で付き添いながら、自分が宣神諳の一生を台無しにしたと涙した。しかし宣神諳は皇帝と出会えて幸せだったという。「分かっています…阿姮(ホン)妹妹が流した涙が私より多いことを… これからは彼女と手を取り合い暮らして欲しい…私という存在がなかった頃のように… 陛下、阿姮と話をさせてください」越姮(ユエホン)は宣氏一族のことなら心配ないと安心させた。しかし宣神諳が話したいのは自分たちのことだという。「我が子は19歳の時に襲われたけれど、あなたを疑ったことはないわ」「分かっています…あの年、私の息子も4ヶ月で夭折しました でも疑ったことはありませんでした」「分かってる、決して私を疑わないから外の流言も恐れることなく子供たちを受け入れてくれた」「…私たちは姉妹同然でした」「普通の家の姉妹だったらどれだけ良かったか…」すると宣神諳は子供たちを呼ぶよう頼んだ。皇帝は宣神諳を抱き起こして子供たちの顔を見せた。すると宣神諳は最後の望みとして父が隠居した山で眠りたいという。「この身体は皇陵に葬るしかない…だからお願いです 私の髪を一束ほど切って少商に燃やさせてください、その灰を埋めて欲しい」「分かった、全て望みのままにしよう」そして東海(トウカイ)王には闊達に生きるよう諭し、翟媪の面倒を頼んだ。嫁いだ五公主にはしっかり生きて欲しいと願い、美しい歳月を大切にして欲しいという。「子晟…」不疑は宣皇后に負い目があった。しかし宣神諳は子晟も苦汁をなめて生きて来たと理解を示す。「私が逝った後は過去のことは水に流すといいわ…あなたも自分を許してあげて… 少商、ここへ…」少商は寝台へ近づくと、宣皇后の手を握りしめた。「少商、あなたを巻き添えにし、5年も無駄にさせたわ…」「巻き添えなんて…少商が望んだのです、5年でも10年でも…」「バカな子ね…私のために多くを犠牲にしてしまった だから将来の日々は自分のために生きなさい…私のように無意味な余生を送らないで欲しい 母としてはあなたたち2人の縁がそのまま続いて欲しい… ただ情理を知る目上の者としては婚姻が強引に求められないことも分かる だから万事、心に従えとしか忠告はできない…今を大切にして悔いなきように…」すると宣神諳は苦しくなったのか大きく息を吸い込んだ。「陛下…来世では太平な盛世に生まれ、放浪の苦を免れますように… 来世では両親が健康で長生きして憂患の苦を免れますように…ハァ… あなた…あなたに嫁げて幸せでした… でもどうか来世では…あなたと会うこともないように…」宣神諳は夫婦の情を得られぬまま不遇の人生を終えた。悲しみに包まれる長秋宮、その頃、心の支えを失った少商は呆然と宮中を歩いていた。やがて憔悴した少商は激しい雨の中で倒れてしまう。不疑は意識を失った少商を曲陵(キョクリョウ)侯府へ送り届けた。突然のことに困惑する程始(チォンシー)と蕭元漪(シャオユエンイー)、聞けば宣皇后が逝去したという。「…私は送って来ただけ、すぐ失礼します」「霍不疑、待たんか!」程始は娘を簡単に捨てた霍将軍への怒りが爆発、5年前に娘は死にかけたと明かした。今でも裏庭の離れには作りかけの棺が残っているという。不疑は思わずその場にひざまずき、少商を傷つけたことを謝罪した。「ゆえに2度と邪魔はしません…」しかしどんなに謝られても失った5年間は戻ってこない。蕭元漪は長秋宮にこもっていた嫋嫋を思うと胸が痛んだ。「私が重病を患った時も、阿兄が妻を娶る時も、堂姉が嫁ぐ時にさえあの子は帰らなかった 嫋嫋の選択はあなたのためよ、霍不疑!」不疑は床に頭を打ちつけるように叩頭した。「私の過ちです、少商の一途な情を裏切り、程家の信頼を裏切った 少商と程家には負い目があります、その償いは一生かけても終わらない 北西で戦死できればと思っていたが死ぬ勇気もなく、彼女の恨みも消せず… 私には死ぬ資格さえない」しかし蕭元漪も決して霍将軍に自責の念を植え付けたいわけではないという。そもそも自分たちにも娘が幼い頃に構ってやれなかった苦い経験があった。「今後は嫋嫋の望み通りにさせるわ あなたと娘は互いに情があっても天に翻弄されてしまった 今後も縁が続くかどうかはいずれ答えが出る」つづく( ;∀;)宣皇后…泣けたわ〜
2023.12.22
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上阳赋 The Rebel Princess第59話「解放」王儇(オウケン)は賀蘭箴(ガランシン)との婚姻を承諾する見返りに捕虜の解放を約束させた。知らせを聞いた龐癸(ホウキ)はいつ動くのか指示を求めたが、王妃は見送ることができないという。一方、大成は激しい雷雨に見舞われていた。皇帝陵の山には雷が落ち、土砂崩れで石が転がり落ちて皇帝陵が崩れてしまう。翌朝、急報を聞いた皇帝・馬子澹(バシタン)は驚愕したが、それでも出征の決意は変わらなかった。江夏王・王夙(オウシュク)は朝廷で改めて出兵の反対を表明した。そこで太祖皇帝の遺言に″後世の皇帝が国事で過ちを犯す場合は士族らの連名で皇帝を諌めることができる″とあったと入れ知恵する。温宗慎(オンシュウシン)はもはや皇帝を止める方法はこれしかないと覚悟し、万が一の時は自分が責任を負うと言った。すかさず王夙は自分も一緒だと追従、重臣たちも運命を共にすると決める。次に王夙は宋快恩(ソウカイオン)を慈安(ジアン)寺の家に招いた。懐恩も皇帝の無謀な決断が正しいと思えなかったが、かと言って豫章(ヨショウ)王妃を放っておけないという。すると王夙はすでに護衛を忽蘭(クラン)に派遣して調査中だと教えた。実は懐恩も王妃の消息を知って寧朔(ネイサク)に文を送っておいたという。「王妃は人望の厚い方、寧朔軍は黙っていないでしょう!」王夙はその忠誠心に敬服し、懐恩こそ乱世に終止符を打つ英雄になると持ち上げた。しかし懐恩はそれが叶わぬ夢だと知っている。「ありがたいお言葉ですが恥ずかしい限りです…たとえ能力があっても私は寒門の出身ですから」「…だから何だ?」その声は王藺(オウリン)だった。王藺は生きていた。驚愕した懐恩はしばし立ちすくんだが、ふと我に返って拝礼する。王夙は皇太后の密命が届いた時、懐恩を助けたのは父だと教えた。「父は″粛毅(シュクキ)伯は偉大な人物であり国の柱、汚い連中に殺させてはならぬ″と仰った」すると王夙は父と懐恩を残して出て行った。王藺は懐恩の弱点が寒門出身だと指摘した。蕭綦(ショウキ)は功績を買われて王に冊封されたが、結局、悲惨な末路を迎えている。「蕭綦の二の舞は御免であろう?」そこで王藺は自分と手を組むなら養子に迎えると持ちかけた。士族は衰退したと言ってもその影響力は今も大きい。王藺はもし懐恩が事を成し遂げれば王氏の族譜に載り、いずれ士族の頭になれると懐柔した。蘇錦児(ソキンジ)は子澹の信頼を得るため、一緒に忽蘭へ行くと申し出た。子澹は了承したが、翌朝、書房の前に大臣たちが押し寄せる。「謀反でも起こすつもりか?」「陛下…今日は宮殿を出られませぬ」先頭に立った温丞相は太祖皇帝の位牌を示し、宗廟に残された遺言を盾に皇帝を諌めた。そこで皇帝が考えを変えないなら反省するまで式乾(シキケン)殿に留まるよう迫り、国事なら大臣たちで話し合って進めるという。「陛下、お戻りください」忽蘭では賀蘭箴と王儇の婚礼の儀が始まろうとしていた。アリマとウリモクは賀蘭箴の令牌で捕虜を解放したが、龐癸は王妃を探すことにする。「小禾(ショウカ)と沁之(シンシ)を頼む」その頃、婚礼衣装に身を包んだ王儇は侍女に案内され、ある天幕に入った。天幕には誰もいなかったが、突然、天井から網が落ちてくる。すると王倩(オウセン)が現れ、捕らわれの身となった王儇に短剣をちらつかせた。「今日はひとつずつ貸しを返してもらうわ」王倩は高貴な王儇に土下座を強要し優越感に浸った。しかし背中まで踏みつけられた王儇はさすがに我慢できず、強引に起き上がってしまう。身重の王倩はバランスを崩し転倒、腹を押さえて苦しみ出した。その隙に龐癸が現れ王妃を解放したが、兵士たちが駆けつけ2人は捕まってしまう。一方、賀蘭箴は花嫁の天幕にいた。花嫁衣裳の王儇に感激もひとしおの賀蘭箴、しかし面紗をめくり上げてみると花嫁が別人だと知る。ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ<誰だ?!( ˙꒳˙ )<長澤ま◯みです花嫁はカル族の王女・ミアだった。激怒した賀蘭箴は花嫁を置いて飛び出し、ちょうど父の天幕の前にいた賀蘭拓(ガランタク)を見つけてつかみかかる。「知っていたのか?」「すまない…王命ゆえにどうしようもなかった」すると賀蘭箴は兄の罠だと知らず、父の元へ急いだ。賀蘭箴は足止めする衛兵をなぎ倒し、父の天幕に入った。すると父が腹を突き刺され死んでいる。「父王?…父王?」そこへ賀蘭拓が現れ、賀蘭箴が王を殺したと叫んで拘束した。忽耶奇(コツヤキ)は主を救おうとするも、連行された賀蘭箴の目の前で殺されてしまう。全ては賀蘭拓の計略だった。賀蘭箴は無実を訴えるも、怒り心頭で父の天幕に入る王子の姿を招待客たちが目撃している。誰もが賀蘭箴の仕業だと信じて疑わず、賀蘭拓は正義を振りかざして反逆者を火刑にすると命じた。賀蘭箴は両手を縛られ、吊るされた。そこへ王儇と龐癸が連行される。賀蘭箴は王儇だけは見逃すよう哀願したが、賀蘭拓は最後に真実を伝えることにした。「六盤を滅ぼしたのは蕭綦ではない…俺だ、つまりお前の母と妹妹は俺の手で死んだのさ、ふっ」すると賀蘭拓は王儇に剣を差し出し、賀蘭箴を殺せば助けてやる言った。「俺を殺したかったはずだ…その機会が訪れたな、俺を殺して生き延びるといい」賀蘭箴は自分が蕭綦を殺したと明かし、王儇がためらうことなく自分を殺せるよう仕向けた。王儇がついに剣を振り上げた。しかし賀蘭箴を拘束していた縄を切って解放する。慌てた兵士たちは賀蘭箴と王儇めがけて突進し、賀蘭箴が身を挺して王儇を守った。「逃げろ!」賀蘭箴は約束通り王儇を守り、背中を突き刺され死んでしまう。その時、突然、壇上に巨大な戦鼓が投げ込まれ、兵士たちをなぎ倒した。呆気に取られる賀蘭拓、そこへ男が現れ、賀蘭拓の首に剣を突きつける。「動くなぁぁぁ!」王儇を救ったのは死んだと思っていた蕭綦だった。馬子澹が式乾殿に軟禁されて数日が経った。暉(キ)州の危機の時も二皇子の反乱の時も阿嫵(アブ)を救えず、子澹は今回も何もできずにいる。一方、大臣たちは今や最も重要な将軍となった宋懐恩を引きれようと必死になっていた。王藺は懐恩が蕭綦とは違い、勇敢そうに見えても欲があると見抜いている。「この手の人間は利用されやすい…」王夙は馬静(バセイ)の身分を明かすか聞いたが、王藺はまだ早いと止めた。解放された捕虜たちは豫章王と合流、王儇を救うため引き返していた。小禾は龐癸を解放して王妃と一緒に大王の元へ駆けつけ、賀蘭拓を人質に皆が揃って無事に忽蘭から脱出する。つづく(  ̄꒳ ̄)ヒゲだーわん、ヒゲだんいや一瞬、誰だか分からなかったわw
2022.03.31
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上阳赋 The Rebel Princess第67話「反逆」王藺(オウリン)の護衛・青雲(セイウン)は桂(ケイ)女官に馬静(バセイ)を会わせ、孫と引き換えに宮殿の門を開けるよう頼んだ。伝言を聞いた皇太后は兄の生存に度肝を抜かれながらも、今になって王氏の兄妹が手を取り、天下を取る日が来たと感慨深い。一方、宋懐恩(ソウカイオン)は秋風(シュウフウ)荘に王藺を訪ねた。すると部屋に黄金の礼服が飾られている。王藺は馬静のものだと言ったが、懐恩は思わず失笑した。「ご冗談を…」「粛毅(シュクキ)伯の考えはどうだ?…お前は私の養子になり王氏の族譜に入りたいか? それとも姓を変えず、粛毅伯がよいか?」「…丞相に従います」「そうか、では明日のために万全の準備を…」王藺は懐恩を帰すと王安(オウアン)を呼んだ。明日はいよいよ王朝が交代する日、馬氏の人間を残しておくわけにいかないが、面倒を見て来た馬静に情が湧いてしまったという。「…代わりにやってくれ」その話を偶然、王夙(オウシュク)が聞いていた。夫の異変に不安を感じていた蕭玉岫(ショウギョクシュウ)は宋懐恩が軍営に行くと知って慌てて駆けつけた。しかし必死に引き止める妻を振り払い、懐恩は出かけてしまう。そこで玉岫は王儇(オウケン)に夫が夜中に出発したと知らせた。「…宋懐恩、正体を現したわね」一方、王安は馬静を抱いて裏山へやって来た。すると後をつけた王夙は棒で王安を殴りつけて気絶させ、馬静を連れて行ってしまう。明け方、龐癸(ホウキ)が豫章王府に戻ってきた。「宋懐恩が軍を率いて皇都に向かっています!」王儇は魏(ギ)将軍に兵を集めるよう伝言を託し、胡瑶(コヨウ)を連れて参内すると決める。一方、行方不明となった馬静は未だ消息が分からなかった。すでに動き出した計画、今さら後戻りはできず、王藺は馬静を捜索しながら予定通り進めるという。そこで青雲に王氏が有する兵を全て集めて命令を待つよう告げた。また王安には江夏王の名代として朝廷に出向き、大臣たちを呼んで来るよう命じる。「ここへですか?」「そうだ」玉岫は安らかに眠っている幼子の小さな手に自分の腕輪をはめた。後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にする玉岫、その頃、宮殿に入った王儇は永安宮へと急ぐ。まさか父が生きているとも知らず、王儇は叔母が兄と手を組んで宋懐恩に馬子澹(バシタン)の退位を迫るよう命じたと疑った。「静児を皇位に就かせ、一緒に摂政になるつもり?」「子澹は人心を失った、皇帝の資格はない」「大臣たちが静児を擁立するとでも?」朽ちた屋敷に呼び集められた温宗慎(オンシュウシン)ら大臣は何が始まるのか分からず困惑していた。すると死んだはずの王藺が現れる。ザワザワ(。・ω・) (・ω・ 。) (。・ω・) (・ω・ 。)ザワザワ大臣たちが騒然とする中、温宗慎は思わず失笑した。しぶとく生きていただけでなく、まさかこの国を手中に収めるつもりなのか。そこで王藺は先帝が崩御前に遺したという密詔を渡した。…余はもう長く生きられず国の変化が心配だ、従って王藺に大任を担うよう命じる…確かに密詔には玉璽が押されていた。納得がいかない大臣たちは引き上げることにしたが、王氏の兵が現れ包囲されてしまう。「粛毅伯と大軍は現在、宮殿に向かっています」青雲の報告を聞いた大臣たちは皇都の守衛軍も王藺の手中にあると知り観念、次々と王藺に降った。温丞相と衛(エイ)侯だけは王藺に反発、城楼で魏将軍らと共に宋懐恩の大軍を待ち受けた。ついに廣陽門に到着した懐恩、しかし皇太后と内通しているはずが門は開かない。その頃、蕭綦(ショウキ)はすでに寧朔軍と郊外にいた。「胡瑶から密書が届いたら宣化門から皇都に入れ、外の敵軍を任せる 残りは抜け道から宮殿に向かう」皇太后は待ちに待った孫との再会を前に着替えることにした。しかし王儇がすでに手を回し、門を開けようとした永安宮の侍女と内侍が魏将軍の配下に捕まったとは知る由もない。報告を聞いた温宗慎は皇太后と王藺が手を結んだと知り、今日こそ決着をつけると奮起した。城楼の不穏な様子を察した懐恩はついに攻城準備の号令を出し、城門の魏将軍たちと対峙する。その時、角楼に登った玉岫の叫び声が響き渡った。「懐恩っ!」玉岫は角楼から声を張り上げ、反逆する夫を必死に諌めた。「粛毅伯では満足できず、朝廷や大王、王妃を裏切るつもり?! …私たちが命を懸けてこの地まで来たのは天下太平のためでしょう?! 守ってきたものを自分の手で壊すというの?! …お願いよ!引き返して!撤退するなら王妃から陛下に免罪を頼んでもらうから! 許されなくても私は地獄のそこまであなたについて行くわ! 私にはあなたが必要なの…一緒に帰りましょう!」しかし必死の説得も虚しく、懐恩の放った矢が玉岫をかすめて柱に突き刺さった。「帰る場所などない…玉岫!帰るのだーっ!」「…引き返さないならあなたの前で死にます!」玉岫は夫を戒めるため、角楼から飛び降り命を絶った。しかし我が身を犠牲にしても夫を止めることは叶わず、懐恩はついに反乱を起こす。魏将軍は温丞相と衛侯を避難させ応戦、すると戦況を見ていた懐恩は密かに引き返した。王儇は子澹を逃すため式乾殿に駆けつけた。しかし子澹はすでに包囲された宮殿から逃げられないと覚悟する。そこで王儇はかつて叔父に教えてもらった密道から子澹を逃すことにしたが、隠し扉を開けると地下から兵士の声が聞こえてきた。「誰かいるわ!」龐癸と胡瑶は王儇と皇帝を先に逃し、禁衛軍と共に式乾殿に残った。すると地下道から兵を率いた懐恩が現れる。式乾殿は戦場と化し、胡瑶は反逆者となった懐恩に斬り掛かった。懐恩は手を引くよう訴えたが、結局、妹同然の胡瑶まで手に掛けてしまう。一方、礼服に着替えた皇太后は寝殿を出た。しかし回廊に出たところで力尽き、そのまま愛しい息子の元へ旅立ってしまう。王儇と子澹は太極殿に逃げた。子澹は蕭綦が叩き割った玉座の角に触れ、今日が皇帝でいられる最後の日かもしれないと腹をくくるが…。つづく( ;∀;)哥哥〜信じていたわ〜!
2022.04.28
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上阳赋 The Rebel Princess第49話「皇帝の危機」昭陽殿で独り小皇子・馬静(バセイ)を寝かしつける王儇(オウケン)。一方、皇太后は丞相・温宗慎(オンシュウシン)を永安宮へ呼び出し、豫章(ヨショウ)王を根こそぎ排除してはどうかとほのめかした。温宗慎はようやく安定した国が再び乱れると反対したが、皇太后はもはや手遅れだという。「成否はどうであれ2日以内には知らせが来るはずよ…」温宗慎は皇太后が今回の狩りで豫章王を殺すつもりだと気づき、もし失敗した時は共に立ち向かうと誓った。王儇は皇子を寝床に寝かせ、おむつを交換することにした。そこで脇殿に新しいおむつを取りに来たが、安らかに眠っていたはずの皇子の泣き声がする。 <小皇子、眠ってはいけません、小皇子…王儇が急いで戻ると、鄭(テイ)乳母がちょうど皇子を抱き上げ、身体を揺すっていた。「何をしているの?!」驚いた王儇はすぐ皇子を取り上げ、なぜ皇子を虐げていたのか追及する。鄭乳母は慌ててひざまずき何か言おうとしたが、そこへ皇后・謝宛如(シャエンジョ)が戻ってきた。鄭乳母は皇子が寝床で泣いていたため、抱き上げてなだめただけだと釈明した。しかも皇子が泣き出したのは自分ではなく王妃が来たからだという。王儇は平気で嘘をつく鄭乳母に我慢ならず、思わず平手打ちした。これに宛如は激怒、謝氏に長く仕えた乳母が小皇子を虐げるはずがないとかばう。そこへ控えていた徐(ジョ)女官と阿越(アエツ)が慌てて駆けつけた。宛如は仕返しに徐女官を引っ叩き、これでお互い様だという。雪解けが近いと思われた阿嫵(アーウォ)と宛如、しかし王儇は横暴な宛如の姿に深く失望した。「静児が泣き通しだとおっしゃいましたね、世話をするのが誰か考えてみてください …信じてもらえなくとも忠告しておきます、小皇子をその悪女に近づけぬよう」「ふん、昭陽殿の心配は不要です」「ご安心を、二度と参りません」昭陽殿での騒ぎはすぐ皇太后の耳に入った。理由は分からないが阿嫵が鄭乳母を平手打ち、怒った皇后が徐女官を叩いたという。皇太后は阿嫵が理由もなく人を叩いたりしないと知っていた。乳母が何かしでかしたのは言うまでもないが、まさか徐女官に手を出すとは皇后の高慢も甚だしい。一方、阿越も理不尽な皇后に不満を募らせた。徐女官はもともと先皇太后の侍女、現皇太后さえ礼遇している。経緯を聞いた蘇錦児(ソキンジ)は宮殿では口を慎むよう注意しながら、実は王妃が小皇子を″一度も会ったことがない我が子のようだ″と言っていたと話した。あの時、流産していなければ今頃、王妃の子供も小皇子と同じくらいだったはずだ。それにしても謝氏に仕えて長い鄭乳母がなぜ皇子を虐げるのだろうか。確かに小皇子は生まれつき身体が弱く、泣き続けて衰弱しているという。まさか皇子が眠るたびに乳母が起こしていたとは誰が想像できただろう。これでは太医がいくら調べても異常など見つからないはずだ。「一体なぜそんなことを?」宛如は鄭乳母を信じたものの、王儇の言葉が頭から離れなかった。そこでしばらく皇子を自ら世話すると決める。宛如は食事も後回しにして皇子から目を離さなかったが、確かに皇子はおとなしく眠っていた。一方、江南は再び激しい雨に見舞われた。宋懐恩(ソウカイオン)は自ら増水する川に入って兵士たちと共に堤防を守っていたが、そこへ江夏王・王夙(オウシュク)が駆けつける。「粛毅(シュクキ)伯!…宋将軍!危険だ!上がれ!」「なぜ来られたのですか!堤防が決壊するかもしれません!危険です!」懐恩は江夏王を安全な場所に避難させるよう指示したが、王夙は直ちに懐恩を岸に上げろと命じた。実は水位が下がる傾向にあると分かり、1刻もあれば危機を脱することができるという。そこで2人は石と土を運ばせ、懸命に堤防を守った。王夙が天幕に戻ると、皇都から皇太后の密書が届いた。そこで人払いしてから文を開けたが、そこには恐るべき任務が記されている。…粛毅伯🐥殺… ←いや何か違うけどwその夜、竇(トウ)夫人が人知れず何者かに殺された。蕭綦(ショウキ)は自分の身に危険が迫っているとも知らず、狩り場で皇帝の警護に余念がない。実は皇太后は半月前から林の中に刺客を忍ばせていた。皇帝・馬子隆(バシリュウ)は豫章王を誘き寄せるだけ、あとは全て禁衛軍が片付けてくれる。寧朔軍は林の中まで警戒していたが、穴を掘って地下に隠れている刺客には気づかなかった。翌朝、皇帝と大臣たちは狩りを楽しんだ。しかし皇帝は手加減する豫章王に不満を漏らし、一対一で対決したいという。蕭綦は断ったが、その時、珍しい白狐が現れた。「余が競うと言えば競うのだ!あの白狐を賭ける!豫章王以外は来るな!」子隆は合図の白狐を追って飛び出した。このまま皇帝を独りにすることもできず、蕭綦は仕方なく皇帝を追いかけて行く。やがて蕭綦は森の奥深くに迷い込み、皇帝を見失った。すると皇帝のうめき声と馬のいななきを耳にする。蕭綦は視線の先に皇帝の馬を見つけたが、と同時に刺客が現れ、襲撃されてしまう。皇帝と豫章王を待つ大臣や寧朔軍たち、すると蕭綦の愛馬・墨蛟(ボクコウ)だけが戻ってきた。胡光烈(ココウレツ)は大王に何かあったと気づき、墨蛟を連れて森へ入る。その頃、蕭綦は負傷しながら必死に応戦していた。劣勢になった刺客は撤収、蕭綦は急いで皇帝を探しに向かったが、皇帝は弓矢が胸に直撃して倒れている。するとどこからともなく助けを求める竇(トウ)夫人の子供たちの声が聞こえた。一体、何が起こっているというのか。そこへようやく寧朔軍が到着する。蕭綦は一緒について来た禁衛軍の将軍に皇帝を頼み、寧朔軍を引き連れ刺客を追った。将軍は寧朔軍がいなくなると、慌てて穴の中を確認した。しかし皇太后の刺客は地下で全滅、その時、大臣や禁衛軍たちが駆けつけ、慌てて蓋を閉めて戻る。皇帝を見つけた大臣は驚いて太医を呼んだ。すると弓矢には″蕭″と彫られている。予定外の状況となったが将軍は皇太后の令牌を出し、豫章王が皇帝の命を狙ったとして寧朔軍もろとも捕らえるよう命じた。蕭綦は罠だと知らず、刺客を追って谷へ向かった。しかし次第に身体が鈍くなり、蕭綦は刺客の剣に毒が仕込まれていたと気づく。胡瑤(コヨウ)は腕の傷を治療するよう説得したが、蕭綦は時間がないと拒んだ。寧朔軍の伝令兵が応援を呼びに戻る途中、禁衛軍に出くわした。すると味方のはずの禁衛軍がいきなり弓矢を放ち、兵士は落馬してしまう。つづく( ๑≧ꇴ≦)白狐!一瞬、白浅が出て来たーと空目w
2022.02.24
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第24話)第51話「それぞれの区切り」凌不疑(リンブーイー)は15年間という長い歳月を耐え、ついに本当の名を明かした。「私の名は霍無傷(フォウーシャン)」「霍兄、すまなかった、今まで気づかぬとは…許してくれ」文(ウェン)帝は亡き義兄の忘形見を抱きしめ号泣したが、不疑は己の罪を認め、死を望むという。すると左(ズオ)御史中丞がこれ幸いと即座に死を賜るよう上奏、皇帝の逆鱗に触れても追及の手を緩めなかった。そもそも凌益(リンイー)が敵と通じた証拠がないという。しかし思いがけず廷尉府の袁慎(ユエンシェン)が証拠を持ってやって来た。凌益の妻・淳于(チュンユー)氏は職人に作らせた女媧像を汝陽(ジョヨウ)王妃に贈っていた。「その中に彭坤(ポンクン)と凌益の書簡が隠してありました、孤城を占領した証拠になるかと…」皇帝は書簡を確認、左御史に投げ渡した。しかし左御史は霍将軍にはまだ東宮の虎符を盗んで軍を動かした大罪があると食い下がる。すると今度は三皇子が駆けつけた。左御史の弟である左将軍は子晟(ズーション)の救出を邪魔しようとして捕まっていた。将軍は拷問により何もかも自供、左家は田(ティエン)家酒楼の番頭・田朔(ティエンシュオ)に大金で抱き込まれていたという。実は田朔は戾(レイ)帝付きの内侍で、腹心中の腹心だった。朝廷から戦神・凌不疑が消えれば安心して山河を奪い返せると考えたのだろう。内侍は田朔と名を変えて商人として潜伏、この数年は酒楼を隠れ蓑にしていたが、朝廷の官員も多く往来していた。「雍(ヨウ)王や小越(ユエ)侯とも結託していたのです! 父皇、彼らは田朔にそそのかされ、国と民に害を及ぼしたかと…」「田朔は霍将軍に恨みがあると言っただけ…戾帝の内侍など知りませぬ!」左御史は無実を訴えるも後の祭り、朝堂から引きずり出されてしまう。「厳しく拷問を科せ!死んでも構わん!」しかし三皇子の報告で田家酒楼はすでにもぬけの殻、謀反の証拠をつかむも田朔に逃げられてしまったという。( ๑≧ꇴ≦)ノ″ さようなら、おじいちゃ~ん!皇帝は奥殿に子晟と三皇子を呼んだ。確かに今回、子晟が虎符を使ったせいで皇太子は弾劾され、名声まで地に落ちている。三皇子は必要に駆られて使ったのだろうと庇ったが、皇帝はすでに気づいていた。「太子の手にあった虎符は偽物だ、小越侯に盗まれた虎符を子晟が取り戻し、そのまま持っていた お前たち2人は最初から…」「そうです」もはや隠し立てできないと悟った三皇子は皇兄ではこの国を担えないと訴え、楼犇(ロウベン)の事件も正しく賞罰しなかった皇兄が原因だという。実は子晟も同じ意見だった。子晟の話では皇太子のそばにいたわずか数ヶ月で東宮の全てを掌握できてしまったという。「太子が即位後、私さえ望めばすぐにでも政を乗っ取れる…そんな場面を見たいと? もちろん二心などありません、しかし私が思うに太子では重責を担えません」「よく言ったわ」すると皇后・宣神諳(シュエンシェンアン)が現れた。皇后は確かに子晟の言葉は理に適っていると認めた。一連の事件は立太子を誤った皇帝、凡庸で才のない皇太子、志を抱く三皇子、深い恨みを持った子晟、そして息子を溺愛した自分自身に関係があるという。「しかし少商(シャオシャン)は?この件と何の関係が?なぜ巻き込んだの?まさかこれも国のためだと? あなたの言葉は全て正しい、小さな情を捨て、天下を潤す なら聞くわ、あの日、城陽(ジョウヨウ)侯府に赴いた時、少商を捨てると決意していたの?」その時、子晟の頬を一筋の涙が流れた。「…はい」「今の言葉は本心?今回の件を悔いてはいないと?」「悔いていません」皇后は不疑の返答に深く失望し、そこで少商を呼んだ。「少商…」子晟は少商が自分の答えを聞いていたと知り、動揺した。「少商、許しを求めるつもりはない、だが信じている、分かってくれると…」「分かっています…でもあなたは私を分かっていたかしら?」すると少商は皇帝と皇后に破談を申し出た。「少商、聞いてくれ…」「今度はあなたが聞く番よ…私は昔から運が悪かった、真心なんて信じなかったわ でもあなたに出会い、言われるがまま好きになり、頼れと言うから頼った 信じろと言うから信じたのよ?でもあなたは? あの時、伝えたはず、私を捨てたら一生、許さないと… 霍将軍、どうか旧情に免じて私を解放してください」( ;∀;)シャンシャン…崇徳(スウトク)宮を出た少商は後宮へ続く長い回廊を歩いていた。すると途中で少商を心配して待っていた袁慎と出くわす。「少商、家に帰るんだ、奴が虎符を使った以上、太子と皇后も廃されるだろう」「廃されてもそれは皇后が自ら願い出たからよ、きっとお疲れのはず… 私も疲れたわ、もう家に帰りたい」少商はとりつく島もなく、会話をさっさと切り上げて行ってしまう。一方、宣神諳は皇帝に皇后の印璽を差し出していた。皇太子を廃し、母としての責任を取って皇后の座を降りたいという。「これまで流されるまま生きて来ました… その昔、陛下に妻がいると知りながら、舅父に言われるまま嫁いだ 私を皇后に立てると言われた時も、后位が荊の道だと知りながら受け入れたのです 太子は父の性格によく似ていました 本来なら書や学説で名を馳せられたはず、でも太子となったばかりに毎日、寝食もままなりません どうか国のために私たちを廃してください 越姮(ユエホン)が皇后なら三皇子も正当に東宮へ入れるでしょう」しかし皇帝は廃后だけはどうしても認められないと拒んだ。「太子に比べて皇后の非がどこにあるのだ?!廃す理由があるか?!」すると宣神諳は初めて思いの丈をぶちまけた。「もし私にも恨みがあったと言えば? この数十年、陛下と阿姮が笑ってふざけ合う姿を見るたび、心が蝕まれる思いでした 本当はいつも嫉妬と恨みに駆られていたのです! もううんざりです、后位に就く限りこの苦しみを味わう! 想い合える夫の愛を望んでいたのに、私は仲睦まじい2人を鷹揚として受け入れるしかなかった もし陛下が私に少しでも夫婦の情があるなら、これ以上、苦しめないでください 一度でいい、宣神諳として生きてみたいのです!陛下!」( ;∀;)皇后ォォォォ~皇太子は東海(トウカイ)王に降格、皇帝は宣神諳の望み通り長秋宮での軟禁を命じた。また凌家は取り潰しとなり、凌益の三兄弟は斬首になったという。霍無傷は凌不疑の分も生きたいと名を引き継ぎ″霍不疑″と改名、償いとして北西に7年の駐留を申し出た。そんな中、曲陵(キョクリョウ)侯府に梁邱起(リャンチゥチー)を通して不疑からの伝言が届く。本日、北西に発つため少商にひと目だけでも会いたいというのだ。しかし少商は双子の兄・程少宮(チォンシャオゴン)に見送りを頼み、巾着袋を託した。「遠き地にいればもう会わなくて済む、過去は断ち切るわ」少商は父と兄たちに散歩に行くと言って出かけた。蕭元漪(シャオユエンイー)と青蓯(チンツォン)は偶然、正門へ向かう少商の後ろ姿を見かける。「女公子はすっかり変わりましたね」「以前は少しでも落ち着いて欲しいと思ったのに、今やあそこまで落ち着き払って別人のよう 何だか以前のように勝ち気で他人を圧倒し、騒ぎを起こしている方が安心する 青蓯、初めから私が間違っていたのかしら?」「成長したのです、母ならば誰もが離れゆく子の姿を見る、一生は付き添えません」少商が馬車に乗ろうとすると、母たちが追いかけて来た。「少商?どこへ行くの?」「長秋宮です」「宣皇后は廃后後、自ら軟禁を申し出た、行ってどうするの?」「そんな時こそおそばにいなくては…阿父と阿母が孤城救援のため私を家に置いたのと同じです どうか忠義を全うできるよう私を長秋宮へ」一方、霍不疑は城門で少商が来るのを待っていた。梁邱飛(リャンチゥフェイ)はそろそろ出立するよう伝えたが、不疑は動こうとしない。その時、馬を駈けて程少宮がやって来た。「少宮、少商は?」少宮は黙って巾着を投げ渡すと、縁が切れた以上は強引に求めないで欲しいという。「…少商は他に何か?」「″もう会うこともない″と…」巾着には不疑が出征する時に託した凌府の印が入っていた。…裏切れば一生許さない、それが彼女だ…不疑は涙を拭うと、北西に出発した。( ;∀;)ウーレイィィィィィィィィィィ! ←違うw少商は母と程姎(チォンヤン)に別れを告げ、宮中に向かった。黙って馬車を見送る蕭元漪、しかし長秋宮が冷宮同然だと知りながら忠義を尽くすと言った嫋嫋(ニャオニャオ)の様子が引っかかる。…まさか、戻らないつもりでは?永遠に冷宮に留まると…「早く!馬車を準備して!」蕭元漪は急いで娘の馬車を追いかけたが、嫋嫋はすでに城内へ入っていた。その時、ちょうど馬車から降りてくる嫋嫋が見える。「嫋嫋!嫋嫋!行ってはダメ!母が間違ってた!母が謝るから…嫋嫋…」蕭元漪は必死に叫んだが、虚しくも城門は閉まってしまう。つづく(⸝⸝ ˘ω˘ )いやあぁぁぁぁ~良かったこれは琅琊榜ep26と東宮最終話に続く名場面かも〜何より皇后が良かったわママ?うーん、ママは…w
2023.12.08
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上阳赋 The Rebel Princess第48話「狩り場での陰謀」王儇(オウケン)は申(シン)太医を屋敷へ呼び出し、人払いした。「命を懸けても子を持ちたいの、あなたが協力できないなら他の医者をあたる」「よくお考えの上ですか?子がお生まれになっても王妃は…」「分かっている、でも望みがあるならあきらめたくないの」「決断されたのなら私の全てを懸け、王妃の命も救える方法をお探しいたします」王儇は生まれ変わっても申太医への恩を忘れないと言った。たとえ自分に万が一のことがあっても申太医に迷惑はかけないという。「ありがとう」王儇は太医を見送ると、徐(ジョ)女官に数日ほど宮殿で過ごすと伝えた。実は自分の冷え性を治す方法があり、鍼治療を受けるという。一方、鄭(テイ)嬷嬷(モーモー)は皇后の使いで月柳(ゲツリュウ)閣を訪ねた。そこで賀蘭箴(ガランシン)の密偵に豫章王を仕留める準備をするよう伝言を託し、次に安平王・馬子澹(バシタン)の配下にも計画を知らせる。その頃、皇帝・馬子隆(バシリュウ)は珍しく昭陽殿を訪ねた。実は豫章王から寧朔に帰りたいと上奏があり、もし辺境に帰れば自分たちの脅威にはならないという。しかし宛如は短絡的過ぎると諌めた。その夜、王儇はなぜか胸騒ぎがして眠れなかった。蕭綦(ショウキ)が狩り場に行くと聞いてからなぜか不安でたまらない。同じ頃、宛如は泣き止まない小皇子に手こずっていた。しかも宮女から皇帝は容(ヨウ)妃の寝殿で過ごすと報告を受け、不満が募る。皇后まで上り詰めても地位は盤石になるどころか皇帝との溝は深まるばかり、しかし今は耐えるしかなかった。江南では江夏王・王夙(オウシュク)の治水計画が順調に進んでいた。3つの堤防を修復できたおかげで水位も抑制され、粛毅(シュクキ)伯・宋懐恩(ソウカイオン)が担当する下流域も5日以内に完工予定だという。これも顧采薇(コサイビ)の協力で人手が集まったおかげだった。思わぬ縁で交流を深める2人、すると王夙はしみじみ自分たちが寒門の出身なら自由に生きられただろうという。しかし采微は士族であれ寒門であれ悩みはあると言った。「出身であれ境遇であれ婚姻であれ、思い通りにいかないものです ですが不幸に直面した時、その対処法だけは自分で選べます」( ゚д゚)<ぽかーん…悟りを得たような言葉を若い女子の口から聞くとは( ˶´꒳`˵ )<私はもう成人ですよ?( ゚д゚)<お、おう(良かった、犯罪じゃない)狩り場へ発つ朝、蕭綦は見送りに出てくれた王儇に辞任の件を伝えた。「陛下から許可をもらった、狩り場から戻ったら寧朔(ネイサク)へ帰ろう」すると王儇はあっさり同意し、もはや皇都に未練はないと言った。そこで蕭綦は将来、2人で旅をしながら暮らそうと提案する。王儇は夫との幸せな未来を夢見て笑顔で送り出したが、本当は不安で一杯だった。その夜、皇太后も眠れぬ夜を過ごしていた。「どうにも不安だわ、私も狩り場へ行くべきだった…」しかし思いがけず桂(ケイ)嬷嬷(モーモー)から阿嫵(アーウォ)が宮殿に来ていると知らされる。そこで皇太后は阿嫵を宮殿に引き止める手立てを考えるよう頼み、皇帝が無事に戻るまで出してはならないと命じた。「夫が死んだと知れば復讐するはずよ…」同じ頃、鳳池(ホウチ)宮では人知れず王儇の鍼治療が始まっていた。翌朝、永安宮に宛如が妃嬪たちを連れて挨拶に現れた。そこへちょうど豫章王妃がやって来る。王儇は丁重に拝礼したが、自分の席がないことに気づいた。すると皇太后は自分のそばに席を作り、阿嫵を座らせてしまう。宛如は阿嫵が自分より高い席に座り面白くないが、皇后の威厳を保つため笑顔でごまかした。和やかに始まった女たちの談笑、しかし王儇はもはや自分が育った宮殿ではないと実感する。…笑いの中に殺気がみなぎっている…私を守ってくれた人たちは変わってしまった…叔母は叔母ではなく太后になり、宛如姐姐は姐姐ではなく皇后になった王儇はちょうど永安宮を出る皇后を呼び止めた。実は皇子に贈り物を届けたいという。「ありがとう、昭陽殿で話しましょう」宛如のよそよそしい態度は変わらなかったが、珍しく素直に豫章王妃の好意を受け取った。一方、皇太后はあと数日でついに阿嫵との縁が切れると思うとやるせなかった。阿嫵が皇后になると信じ、いつか本当の家族になれると思って愛してきたが、こんな結末になると誰が予想できただろうか。それでもこの世の中で暴漢の前に立ちはだかり自分を助けてくれるのは阿嫵だけだろう。「だけどもう姑姑と呼んではくれない…まるで他人のように太后、太后と呼ぶのよ(涙 …子隆と私があの子の夫を殺したと知ったら一生、許さないはず でも私も敵を生かしておけない」しかしその頃、皇帝陵ですでに安平王・馬子澹(バシタン)が動き出していることを皇太后は知る由もなかった。昭陽殿を訪ねた王儇は皇子への贈り物を渡した。すると宛如は人払いし、久しぶりに王儇と2人だけになる。宛如は何を話していいのか分からなかったが、王儇は以前のような姐姐と阿嫵に戻りたいと言った。しかし宛如は昔の自分なら奥深い宮殿の中で死んでしまったという。「ここでは情を断ち切らねば…」その時、奥の間から皇子の泣き声が聞こえた。小皇子・馬静(バセイ)はわけもなく一日中、泣いていた。そこで王儇は皇子を抱かせてほしいと頼み、小さな命を大事そうに抱える。すると驚いたことに皇子は静かになり、やがてそのまま眠りについた。しかし宮女が駆けつけ、皇太后が皇后を呼んでいると伝える。王儇は帰ることにしたが、宛如は皇子の安らかな顔を見て引き止めた。「よく眠っているから少し抱いていてあげて」「でも…誰もいないのに独りで残るのは…」「阿嫵、すぐ戻るわ」宛如は無意識に″阿嫵″と呼びかけ、出て行った。つづく( ๑≧ꇴ≦)腕を広げただーわんの立場w
2022.02.18
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第10話)第37話「報復の流儀」程少商(チォンシャオシャン)は池に落ちてびしょ濡れになった五皇子を長秋(チョウシュウ)宮で着替えさせることにした。五皇子は誰かに見られたらあらぬ誤解を受けると心配したが、嫌な予感は的中する。「あらあら、本当に皇兄と程娘子が密会していたのね~」五公主の勝ち誇った顔を見た少商はこれが五公主の仕業だとすぐに分かった。五公主は父皇と母后の前で五皇子と少商を追及した。焦った五皇子は五公主の取り巻きから鏡心(キョウシン)池で佳人が待っていると聞いたと訴えたが、肝心の証人の姿がない。少商も池に落ちた五皇子を助けただけだと釈明したが、五公主はそんな言い訳を誰が信じるかと鼻で笑った。「ごぅら(够了)っ!」皇后は思わぬ騒ぎに不快感をあらわにし、宴に戻らず長秋宮に帰ってしまう。皇帝は祝宴を台無しにされ怒り心頭だった。しかし皇后の寿誕に免じて今日のところは不問に付すという。こうして一同が引き上げ、五皇子も逃げるように帰って行った。すると凌不疑(リンブーイー)がやっと少商に声をかける。「大丈夫か?」「私を信じる?」「もちろん」「よかった、私は皇后のところへ行くわね」少商はそれ以上、何も言わずに急いで戻って行った。皇后は結局、寝付けないまま朝を迎え、付き添ってくれた皇帝を見送りに出た。するとまだ夜が明けたばかりというのにどこへ出かけていたのか、少商が長秋宮に戻ってくる。「少商、宴の準備で大変だったわね…早く支度して家に帰りなさい」「ありがとうございます、陛下、皇后」その時、五公主が凄まじい剣幕で長秋宮に乗り込んできた。「程少商!殺してやる!」五公主はなぜかびしょ濡れで、全身が真っ黒に汚れていた。五公主は息女たちと飲み明かし、朝方に瓏園(ロウエン)へ戻った。しかし息女が扉を開けた途端、仕掛けてあった桶が飛び出し汚水をぶちまけ、さらに勢いよく放たれた荊が身体を打ち、最後には灰を浴びせられたという。五公主は全て少商の仕業だと訴えたが、皇后は証拠がないと退けた。これに五公主は憤怒、なぜ娘ではなく少商の肩を持つのかと嘆く。そこへ越(ユエ)妃が現れた。「母后の干渉を嫌がって公主府で悠々自適に暮らし、孝行することもなかったくせに 何を今さら…」越姮(ユエホン)は自分の瓏園で起きた騒ぎのため座視できないという。すると五公主は日頃の越妃への鬱憤が爆発、暴言を吐いた。「母が皇后だと忘れている!四六時中、父皇と睦み合い、長秋宮を…」その時、越妃が五公主を平手打ちした。「私を叩いたわね…ワナワナ」「母親の寿誕の宴で程少商を陥れたのよ?ぶたれて当然では?」「嘘よ!証拠があるの?!」「あるとも!」凌不疑が五皇子を池に誘い出した息女を連行した。すでに息女は全て五公主の所業だと白状したという。「五公主は我が新婦が池に行くと知り、五皇子を誘い出して彼女の名声を辱めようとしました」しかし御前に突き出された息女は恐怖のあまり、証言する前に気絶してしまう。五皇子は全て五妹の指示だったと告発した。これに激怒した五公主は兄である五皇子を″雑種″呼ばわりしてしまう。「父皇、私は長秋宮の嫡出、なぜ卑しい者の言葉を信じるのですか?!」皇后は傍若無人な娘の姿に唖然とし、全ては自分の過ちだと嘆いた。「余は若い頃、苦労を重ねた分、子には楽をさせたかった…まさかここまで思い上がるとは… 兄弟への情がなく、越妃に不敬を働き、父皇も尊ばない しかも余の寿誕の宴で少商を陥れるなんて…誰かっ!」驚いた五公主はひざまずき、悪いのは何の因縁もない自分に報復した程少商だと訴えた。しかし五皇子が因縁ならあるとばらしてしまう。「先日、息女たちと程少商を池に落としたくせによく言うよ」何も知らなかった凌不疑は驚愕、少商がまた独りで行動を起こしたと知った。少商は自分が罠を仕掛けたと認めて謝罪した。確かに五公主に池に落とされたが、皇后の寿誕の宴を目前に控えていたため、終わるのを待って報復したという。「池に落とされたから汚水をかけ、宴をぶち壊しにしたから″荊の杖を背負う罰″を負わせたのです 五公主、少しは目が覚めました?…どうやら無駄だったようですね」「程少商っ!こんなことなら毒蛇を放って殺しておけば良かった!(はっ!)」激情に駆られた五公主はうっかり口を滑らせたが、開き直って武将の娘など死なせれば済むことだと言い放った。「公主の私が殺すのは蟻を潰すも同じ、彼らの命に価値はない! 父皇、母后、娘ではなく他人に味方するのですか?!」「…お前はどうかしている、どうかしているぞ!」増長した五公主の悪辣な行動は皇帝と皇后の逆鱗に触れた。皇后はすぐに消えろと叫び、怒りのあまり卒倒してしまう。そこで皇帝は五公主を皇陵に閉じ込め半日ほど反省させるよう命じ、今後は許可なく公主府を出るなと厳命した。皇帝は人払し、皇后を心配して寝殿に入った。すると越姮が引き上げようとした駱済通(ルオジートン)を引き止める。「五公主は帝后が罰する、では密会だと騒ぎ立てた春笤(チュンティアオ)は?」「心ある奴婢を留めて置くことはできません、父兄に頼んで辺境へ売ってもらいます」「ふっ…あなたを侮っていたわ、これほど果敢だったとはね」凌不疑は少商を連れて長秋宮を出た。「あの夜、泣いていたのは辱められて悔しかったからだったのか…いつまで隠すつもりだった? なぜ自分だけで動く?私が信じられないのか?」不疑は縁談が決まった時、これからは少商の後ろ盾となり、知己となって、少商の恐怖や孤独を共有しようと思っていたという。しかし結局、少商にとって自分は恐れ多く、近づきがたい存在のままだった。「楼垚(ロウヤオ)なら君は怯えずに済み、自由気ままでいられた だが私は君を宮中に閉じ込め、恐れを抱かせてしまう…嫌悪感すらも…」不疑は今さらながら少商を留めるべきではなかったと後悔し、独りで行ってしまう。「凌子晟(ズーション)!私は一匹狼、やられたらやり返す!そんな私が好きなのよね?! なのになぜ急に変われと強いるの?!私は程少商よ!凌子晟の新婦というだけじゃない!」すると不疑がふと立ち止まって振り向いた。「分かっている、そのままでいい」少商は皇宮も不疑も受け入れているつもりだった。…それなのになぜこのままの私を受け止めてくれないの?…少商は長秋宮に戻り、改めて皇帝と皇后に謝罪した。すると自分がめちゃくちゃにした瓏園を凌不疑がすでに配下に命じて修復させたと知る。驚いた少商は自分で責任を取ると言ったが、その時、ふせっていた皇后が身体を起こした。「少商、子晟があなたの未婚夫なら余と陛下はあなたの君姑(クンコ)であり君舅(クンキュウ) 誰かに陥れられたのに相談もせず自分で動くとは… 私や陛下を親とも思わず、子晟に愛も注がぬのなら、皆の心を失望させるだけよ?」「…もっと早く教えてくださればいいのに、今さら手遅れです(ボソッ」少商は思わず恨み言を漏らしたが、皇帝は不疑への真心を学ぶことなら今からでも間に合うと諭した。一方、凌不疑は五皇子を待ち伏せし、少商を池に落とした息女たちを全て教えるよう迫った。すると不疑は宮中にいる息女の父親を次々と捕らえ、引き回しの刑にしてしまう。「世に知らしめなければならぬ、これが我が子を躾けぬ親の末路だとな」その夜、曹(ツァオ)常侍(ジョウジ)は皇帝の命で五公主を公主府まで送り届けた。しかし五公主に反省の色は見えず、父皇と母后の容赦ない罰もしょせんは自分を怯えさせたいだけだと侮っている。その余裕も屋敷に入るまでだった。前庭には公主をそそのかして愚行たらしめた罪により死を賜った幕僚たちの亡骸が並んでいる。五公主はようやく自分の過ちの大きさに気づき、その場で泣き崩れた。五公主の″情夫″に死を賜るよう上奏したのは凌不疑だった。そのせいで都中に五公主が情夫を囲っていたと噂が広まり、小越侯は将来の君舅として面目丸潰れとなる。怒り心頭で酒楼に閉じこもった小越侯、すると番頭の田朔(ティエンシュオ)が現れ、いずれ吉報が届くとなだめた。「三皇子は品行方正で厳正中立、陛下も絶賛しておられるとか 君子とは真っ直ぐで邪のない者、三皇子は天子になる運命かと…」「…だが太子という邪魔者がいるかぎり、吉報が届くのは無理だろうな」皇太子と皇太子妃は母后を見舞った。すると皇太子妃が五妹の悪い噂が都に広まっていると報告、皇太子と少商は眉をひそめる。「…母后、どうか気に留めないでください」皇太子は五妹も少しずつ改めるはずだと安心させたが、皇太子妃は罰してこそ教訓になるため溺愛は禁物だと諫言した。「儲妃、少し遠慮しては?良かれと思っても、その言い方は人を不愉快にさせるだけ 慈悲深い皇后は怒りませんが、もし越妃だったらどうなると?」見かねた少商が釘を刺すと、皇太子妃は気まずくなって口をつぐんだ。皇太子妃は東宮に戻ってから皇太子に叱責された。いくら五妹と確執があるとは言え、父母が娘のことで胸を痛めている時に火に油を注ぐなという。皇太子妃は失言を詫びたが、皇太子はあきらかに悪意があったと指摘した。すると皇太子妃は報復するとすれば相手は五妹ではなく、我が子を死なせた曲泠君(チューリンジュン)だという。「曲泠君と殿下が怪しい仲でなければ、私も体調を崩して子を失いませんでした… 彼女は宴であなたに何度か視線を向けた、それだけでこの数日、殿下は心ここにあらずです」皇太子妃はそもそも自分を娶ったのが間違いだと嘆いた。曲泠君に未練があるなら入内(ジュダイ)させて良娣(リョウテイ)に封じれば自分も苦しまずに済むという。皇太子は疑心暗鬼に陥った皇太子妃を持て余し、無益な争いは好まないと言い捨て出て行った。つづく( ゚ェ゚)え?また振り出しに戻るの?ってか今さら阿垚を持ち出すとかエェェェ…そもそも不疑ソックの不具合が原因なのに…w
2023.10.22
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第19話)第46話「疑念」楼犇(ロウベン)の暗示で父が鉱山にいると突き止めた程少商(チォンシャオシャン)。こうして曲陵(キョクリョウ)侯・程始(チォンシー)は無事に救出され、屋敷へ戻った。「銅牛(ドウギュウ)県の件で家族まで巻き込むとは思わなんだ…」あの日、程始は顔忠(イエンジョン)と相談の上、陥落した場合に備えて精銅を城外に隠すことにした。しかし道中で馬忠(マーロン)の襲撃に遭い精銅を奪われ、顔忠一家は殺されてしまう。程始は応戦しながら逃げ出し、草むらで気を失った。やがて小屋の中で目を覚ますと楼犇がいたという。楼犇は鉱山で働く民が程始を救ってくれたと説明、銅牛県は李逢(リーフォン)の裏切りで陥落したと知った。何でも李逢は顔忠と程始が精銅を携え投降したと罪をなすりつけたという。驚いた程始は帰還の機会を探ったが、楼犇から止められた。馬栄の偵察に見つかれば殺されることは必至、釈明の機会を失えば程家も皆殺しになってしまうという。「汚名をすすげばまた家族団欒ができると…それで小屋に身をひそめていたんだ」それにしても楼犇はなぜ程始を見逃したのか。まだ良心が残っていたのか、それともかつて弟と婚約した嫋嫋(ニャオニャオ)への情けなのか。今となっては程始にも分からなかったが、その時、息子が目を覚ましたと聞いた老夫人が駆けつけた。母は相変わらず大袈裟で馬鹿力だった。息子の傷が癒えていなくてもお構いなし、大泣きしながら叩きまくる。「この親不孝者!お前を助けるためにへそくりまで使ったよ?! あの宝物がなければお前の娘はどうやって路銀を工面できたと?!」すると姑にいつも辛辣な夫人がなぜか母を立てた。「そうです、君姑が節約に励んだおかげで今の程家があるのです」「さすがは蕭元漪(シャオユエンイー)ね…」程始は手を取り合う母と夫人の姿に目を丸くし、自分が留守の間に一体、何があったのかと首を傾げた。その頃、少商は都を離れる楼垚(ロウヤオ)を見送るため城門にいた。皇太子も故郷へ戻ることになった楼太傅と別れを惜しんでいる。「阿垚、私、何と謝ったらいいのか」「″程娘子″、君は悪くない、全ては大兄の自業自得だ」「なぜ赴任先を驊(カ)県にしたの?」「驊県にいる時が人生で1番楽しかったから… でももう一度、選べるなら、君に出会わず、驊県にも行かない人生がいい」いくら道理の分かる楼垚でも、今はまだ少商と向き合う余裕がなかった。まさか少商が推挙したおかげで赴任が叶ったとも知らずに…。一方、楼伯夫人は実家へ帰されていた。楼犇の遺言を知った楼家の長老たちは楼太傅が子弟の前途を阻んで災いを招いたと糾弾したが、楼太傅は全て妻に責任転嫁したという。「まさに″同じ森に棲む鳥も難に遭えば各自飛ぶ″ね…」※夫妻本是同林鳥 大難臨頭各自飛しかし凌不疑は王延姫(ワンイエンジー)は違ったと教えた。実は王延姫は身ごもったまま夜の川に入水し、未だ行方知れずだという。少商は自分に良くしてくれた王延姫の末路を思うと胸が痛んだ。「私のせいね、思えばあの時、父のことばかり案じて慰めの言葉さえかけなかった… 子晟(ズーション)、栄華は求めない、平穏ならいいの、あなたは道を踏み外したりしないでね 絶対、後悔したくないから…」不疑は黙ったまま何も言わなかった。「どうかした?」「…阿母が病なんだ、一緒に来てくれるか?」凌不疑と少商が杏花(キョウカ)別院に到着する頃にはすっかり日も暮れていた。すると今日も崔祐(ツイヨウ)将軍が霍君華(フォジュンホワ)の相手をしてくれている。霍君華は息子の顔を見ると嬉しそうに手招きした。「阿狸(アーリー)!杏仁菓子を作ったわ、食べてみて!」少商と崔祐は母子水入らずにして回廊へ出た。未来の君姑は元気そうに見えたが、崔祐の話では命の灯火がすでに消えかかっているという。霍君華は早産で生まれつき病弱だった。危険を承知で凌益(リンイー)のために命懸けで息子を産み、結局、こんな末路を迎えることになったという。「子晟も早産だった、当時は皆が長生きしないと心配してな 一方、霍家の奥方の産んだ子女たちは皆、健康で身体も丈夫だった そこで験担ぎのため息子に用意した名を取り替えたのだ」こうして霍翀(フォチョン)の息子・阿猙(アージョン)は″不疑″から″無傷(ウーシャン)″へ、阿狸は″無傷″から″不疑″へ名を変えた。不疑と無傷は良く似ており、霍君華は2人にそっくりな格好をさせてはどちらが息子か当てさせたという。凌益は息子を数える程しか抱いたことがなかったせいか、時に間違えることがあった。しかしいくら外見が似ていても、性格はかけ離れていたという。一方は腕白で駆け回り、一方は物静かで理に明るく、書や習字を好んだ。「阿狸は杏仁が好きでな、阿猙は杏仁に触ると発疹が現れるのに木に登って摘んでやっていた」崔祐は改めて少商に子晟のことを頼み、自分からも嫁荷を贈りたいと申し出た。少商は嫁荷なら十分だと遠慮したが、崔祐はあの裕昌(ユーチャン)郡主に対抗するには嫁荷が多ければ多い方が良いという。「郡主は琴棋書画、料理や裁縫にも通じる、そなたは?鶏のごとき鎧を縫ったそうだな? 子晟は将官らの笑い物になっていたぞ?」崔祐は少商の地雷を踏んだ。( ー̀ωー́ )<崔舅父、あなたとは縁が切れましたので見送りは不要です…少商は鶏ではなく鴛鴦だと捨て台詞を残して帰ってしまう。「あの子娘、ふっ、面白い」すると帰りの馬車の中、不疑は身体中に発疹が現れ、倒れてしまう。凌不疑は杏仁を食べて熱を出した。梁邱起(リャンチゥチー)と梁邱飛(リャンチゥフェイ)は明日になれば治ると聞いて安堵したが、若女君が早々に帰ってしまったことが気にかかる。「彭坤(ポンクン)が孤城の真相を白状すれば若主公もわだかまりを捨て、成婚できるさ」その時、寝所から不疑がふらつきながら現れた。「廷尉府から身柄を奪うぞ」凌不疑は廷尉獄に収監された彭坤を連れ去り、北軍獄で拷問した。彭坤は確かに出世のため乾安王を殺したと認めたが、孤城の陥落は完全に霍翀の運が尽きたからだという。これに不疑は激怒、思わず彭坤の首をつかんだ。「凌益に関係があると言ったな?!どういう意味だ?!孤城陥落は凌益が呼応したからか?!」「ふん、すっかり文(ウェン)氏の犬になったのか?実の父親にまで噛みついて功績を求めるとは」不疑は彭坤の首を締め上げたが、ぎりぎりのところで手を離した。「死んだ方がマシだと思わせてやる」すると不疑は拷問の道具を手にした。一方、少商は杏仁で熱を出した子晟を怪しみ、悶々としていた。すると夜更けというのに皇后が訪ねて来る。「最近、体調が悪くて眠りも浅くてね、まだ部屋の灯りが見えたから来てみたの」少商は皇后が皇太子を心配していると分かった。王淳(ワンチュン)、文修君(ウェンシウジュン)、五公主に続き、楼太傅まで騒動を起こして失脚、確かに東宮は無関係で済んだが、皇太子の心中は察して余りある。「私の調査のせいで殿下にご迷惑が…私を責めないのですか?」「なぜ責める必要が?…余が若い頃、そなたのように勇敢なら両親を救えたかもしれないわ」そこで少商は皇后に子晟のことを聞いてみた。「皇后…子晟は幼い頃から物静かで落ち着いていましたか?」「そうね、子晟は朗らかな子で、無傷は寡黙で大人びていたわ でもあんな事になって子晟は無傷のように笑わなくなったの 以前、子晟は死んだ無傷の分まで懸命に生きねばと陛下に言ったそうよ あの子は過酷な半生を送った、でも幸いにも余生をあなたと過ごせる」「…皇后、今夜は一緒にいても?」「もちろんよ…」翌朝、少商の部屋に王姈(ワンリン)が押しかけて来た。王姈は夫を助けて欲しいと嘆願、恥も外聞もなく少商に泣きすがる。「あの人の子を身ごもっているの…お願い、私を助けて!」高貴な育ちでも家庭の温かさを知らずに育った王姈、そんな王姈にとって彭坤は誰より情の厚い夫だった。しかし少商は今回ばかりは力になれないと冷たく追い返す。王姈は諦めて立ち上がったが、どうやら少商は十一郎のことを何も知らないのだと分かった。「凌子晟こそ、この世で最も腹が読めず、最も恐ろしい男よ? 都に夫の内偵は多い、夫が言ってたわ…」王姈の話を聞いた少商は…。つづく(Ŏ艸Ŏ)ウオオオオオオオオ~!フラグ立ちました!それにしても鶏がここまで尾を引くとはねwww
2023.11.19
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上阳赋 The Rebel Princess第50話「追い詰められた蕭綦」刺客を追って谷へ入った蕭綦(ショウキ)。両側を高い岩壁で挟まれた一本道を進んで行くと、やがて視界が開けた。すると鳴りを潜めていた忽蘭(クラン)の王子・賀蘭箴(ガランシン)が吊り橋の前で待ち構えている。向こう岸には人質となった竇(トウ)夫人の子・小禾(ショウカ)と沁之(シンシ)が助けを求めて泣き叫んでいた。蕭綦は子供を解放すれば見逃すと言ったが、賀蘭箴はなぜ自分に逃げる必要があるのかと怪訝そうな顔をする。その時、援軍を呼びに向かった伝令兵が矢を受けながらも帰って来た。「報っ!大王!禁衛軍が大王は皇帝を暗殺しようとした逆賊だと言って追って来ます!」蕭綦はようやく賀蘭箴の策に気づいた。「ここでお別れだ、来世で会おう」賀蘭箴は悠々と吊り橋を渡って行った。蕭綦は子供たちを盾にされ、一歩も動けなかった。すると向こう岸に渡った賀蘭箴は子供たちの命を奪うつもりは毛頭なく、成人まで養うと誓って吊り橋を切り落としてしまう。そこへついに禁衛軍が到着した。逃げ場もなく追い詰められた寧朔軍、しかし兵士たちは迷うことなく敬愛する大王と生死を共にすると決める。一方、野営で大王の帰りを待っていた寧朔軍の分隊のもとにも禁衛軍が駆けつけた。「蕭綦は皇帝の命を狙った逆賊、逃亡中だ!投降しなければ皆殺しにする!」寝耳に水の唐競(トウケイ)たちは猛反発、命をかけて大王を守ると奮起した。賀蘭箴の筋書き通り蕭綦は逆賊となり、自分が手を下すまでもなかった。いくら戦神と呼ばれた蕭綦でも毒に冒された身体では限界、次第にふらふらになって来る。その時、野営から逃げ出した王儇(オウケン)の白馬・驚雲(キョウウン)が駆けつけ、大王の愛馬・墨蛟(ボクコウ)と共に禁衛軍を蹴散らした。驚いた禁衛軍は馬に気を取られ、わずかながら蕭綦は息を整える時間を得る。すると身を挺して自分を守ってくれた二頭の馬が蕭綦の目の前で禁衛軍に襲われた。愛馬を害された蕭綦はふつふつと怒りが込み上げ、再び戦いの渦に飛び込んで行く。一方、皇帝は天幕へ運ばれ、死の淵をさまよっていた。中書・顧閔汶(コビンムン)は謀反にしてはあまりに短絡的だと首を傾げ、衛(エイ)侯に豫章王の仕業とは思えないと訴える。大勢の大臣と禁衛軍がいる狩り場、そもそも林に駆け込んだのは皇帝だった。しかし衛侯は他の大臣たちならすでに気づいているという。「豫章王の仕業かどうかではない、あの男を消す唯一の機会なのだ」蕭綦が王爵に封じられて以来、多くの寒門出身者が出世し、士族の基盤が揺らいでいた。皇帝の暗殺を試みたのが誰であれ、今回は生き残れないだろう。太医は皇帝から矢を抜くことに成功した。しかし強い薬に頼っても長くても3日の命、そこで最悪の事態を想定し、すぐ皇都へ連れ帰るよう勧める。衛侯は急いで馬車を準備するよう命じ、皇太后や皇后のいる場所で遺言を残してもらう必要があると焦った。賀蘭箴は人質の子供を連れて引き上げた。すると帰路でふと立ち止まり、天を仰いで亡き母と妹に敵討ちを報告する。その頃、蕭綦と寧朔軍は禁衛軍と死闘を繰り広げていた。禁衛軍は決してあきらめない寧朔軍に手こずったが相手はもはや数十人、将軍は蕭綦の首を取れと鼓舞する。その時、唐競が率いる寧朔軍の分隊が駆けつけた。「我々は禁衛軍2千人以上を討伐して全滅させ大王の名誉をお守りしました!」すでに全身に毒が回った蕭綦は立っているのもやっとだったが、兄弟たちのために最後の力を振り絞って雄叫びを上げた。その夜、王儇は愛する夫の危機を知らぬまま鳳池(ホウチ)宮で眠りについた。朝晩、激痛の鍼治療に耐える毎日、しかし申(シン)太医のおかげで王儇は熟睡できるようになっている。徐(ジョ)女官と阿越(アエツ)は確かな効果を実感し、王妃の願いが叶うことを祈りながら見守った。寧朔軍と禁衛軍は共倒れの様相となった。いよいよ立てなくなった大王を助けに向かった胡光烈(ココウレツ)、しかし不意を食らって将軍に刺されてしまう。驚いた蕭綦は朦朧とした意識の中で何とか将軍を殺したが、そのままばったり倒れた。やがて朝になった。気を失っていた胡瑶(コヨウ)が目を覚ますと、谷は両軍の兵士の骸で埋め尽くされている。その時、かすかに兄の声が聞こえた。「ふぅ…いゃぉ…」胡瑤は倒れている兄を発見、喜んで駆けつけたが、腹に剣が突き刺さっている。すると胡光烈は息も絶え絶えに大王を探せと言った。胡瑤は骸の山の中で倒れている蕭綦を発見し、息があると分かる。「哥っ!生きてる!」そこで胡光烈は妹を呼び戻し、大王を死んだと思わせて助けるよう頼んだ。胡瑤はその意味を悟って拒否したが、胡光烈は自ら剣を抜いてしまう。胡瑤は兄の骸に大王の鎧を着せ、蕭綦を馬に乗せた。そして大王が死んだと思わせるため、顔が判別できないよう潰さねばならない。胡瑤は兄の死に顔を見下ろし、断腸の思いで剣を振り上げた。「うわあぁぁぁーっ!」皇后・謝宛如(シャエンジョ)は皇子の夜泣きで一睡もできなかった。すると鄭(テイ)乳母が朝食を運んでくる。「静(セイ)児の世話がどれほど大変か分かったわ…あなたを疑ってごめんなさい」そこで宛如は豫章王妃を呼ぶよう頼んだ。つづく。゚(∩ω∩`)゚。 哥ぁぁぁ~で、ウマーはどうなったの?最後のウマーは大王のかしら?(* ゚ェ゚)ケロッ
2022.02.25
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第18話)第45話「行き場なき志」誼のあった馬栄(マーロン)に投降を促し、銅牛(ドウギュウ)県を無血開城した楼犇(ロウベン)。しかしこの降って湧いた功労者に凌不疑(リンブーイー)と程少商(チォンシャオシャン)は疑いの目を向けた。不疑は顔忠(イエンジョン)にも密かに交流のある″旧友″がいたと知り、楼犇に探りを入れる。「世家の子弟だそうだ、ただ世家に迎合したと思われるのを恐れて交流を隠していたらしい 楼兄、ご存知か?」「凌将軍に隠し事はできぬな…その旧友とは私だ」楼犇は潔く認めたが、まさか顔忠が敵に投降するとは思わなかったと嘆き、かと言って友を貶めたくもないので伏せていたという。「…顔兄は家族の命を盾に脅され、馬栄と結託しただけ 精銅を渡して家族を助けるつもりが、馬栄によって一族皆殺しにされたのだ」少商は楼犇の言葉尻を捕らえようとしたが、不疑はこっそり少商の手を握りしめ制した。「楼兄は功績を得た、都へ戻れば必ずや高みに登るはず…先立ってお祝い申し上げる」すると楼犇は都へ戻るため荷物をまとめると言って部屋を出た。実は顔一族が殺された件はまだ伏せていた。どうやら楼犇は焦って口を滑らせたのだろう。凌不疑と少商も皇帝から帰京を命じられていたが、2人はこのまま証拠探しを続けることにした。一方、廷尉府の地下牢では程少宮(チォンシャオゴン)が趣味の亀卜(キボク)でこの先を占っていた。すると″絶体絶命に活路を得る″と出る。少宮は必ず出られると喜んだが、程頌児(チォンソンアル)は弟の占いが当てにならないと知っていた。「何が私の成婚は嫋嫋(ニャオニャオ)より早いだよ…」その時、突然、男装した万萋萋(ワンチーチー)が現れた。萋萋は父に頼んで看守に賄をつかませ面会にやって来た。すると外衣を脱ぎ捨て、真紅の婚礼衣装姿になる。「もう時間がない、だから今夜からこの萋萋、あなたの妻になります! もしあなたが死んだら寡婦のまま一生、再嫁しない 断るならここで髪を下ろし、出家するわ!」萋萋の思わぬ決断に言葉をつまらせる頌児、その時、向かいの牢にいる祖母が賛成すると言った。「程家の男たちが全員、斬首になろうという時にこんな忠義ある嫁を得るとは… 萋萋や、程家代々の先祖に代わってお礼を言う 2人が想い合っているなら頌児を万家の入婿にしてもいい」老夫人は感激して萋萋に自分のかんざしを贈ったが、ふと嫁の顔を見た。「あなたは…やっぱり反対するの?」しかし蕭元漪(シャオユエンイー)は珍しく素直に君姑に従った。確かに以前は真っ向から対立していたが、思えば嫁姑の諍いも程家の子女のため、家族なら根に持たず、何事も一緒に乗り越えようという。こうして頌児と萋萋の結婚は姑と嫁の溝を埋め、程家の結束を強めることになった。楼府では銅牛県で功績を上げて帰京した楼犇のため盛大な祝宴が開かれた。愛妻の王延姫(ワンイエンジー)はもちろん、二房を見下していた楼縭(ロウリー)まで急に従兄を称賛している。「この銅鏡は従兄が自ら磨いて10種の字体で蒹葭(ケンカ)を刻んだの」その時、遅れて少商が現れた。王延姫は少商の来訪を喜んだが、少商はちょうど楼縭が自慢していた誓いの銅鏡を見せて欲しいという。すると凌不疑が袁慎(ユエンシェン)と黒甲衛(コクコウエイ)を引き連れ、乗り込んだ。客人が騒然とする中、袁慎は勅命を示し、銅牛県令一家殺害の被疑者を捕らえに来たという。楼犇はひとまず場所を変えようと提案、家族たちと別室に移動した。凌不疑の話では楼犇が顔忠を騙して一家もろとも殺害、その後、馬栄に投降を促して罪を曲陵(キョクリョウ)侯になすりつけたという。恐らく彭坤(ポンクン)の義子に刺された馬栄も楼犇が殺すよう仕向けたのだろう。楼犇は筋書き頼みかと呆れたが、不疑は証拠を持っていた。馬栄は証拠の隠滅を頼まれていたが、万が一に備えて書簡を残していた。その書簡は楼犇が顔忠に宛てたもので、2人が知り合ってから実際に面会し、家族を連れて程将軍と銅を運び出すよう唆すまで克明に記されている。呆然となる楼家の面々、しかし楼犇は自分の筆跡ではないと否定した。「凌将軍、私の書簡を確認してみよ」「確かに違う」しかし少商が夫人への誓いの品である銅鏡が証拠だと言った。少商はかつて楼垚(ロウヤオ)との婚約で楼家を訪ねた時、二房夫人が自慢げに話していたのを覚えているという。『大郎は書道が得意で、銅鏡の裏に異なる字体で詩を彫ったのよ』楼犇は言い逃れできなくなり、罪を認めた。これも全て出来損ないの息子を守るため二房を押さえつけて来た楼太傅が発端だったが、だからと言って他人を殺して良い理由にはならない。少商は内輪揉めする楼家に嫌気が差し、父の居場所を聞いた。「答えて、私の阿父はどこにいるの?!」すると楼犇は知りたいなら単独で教えると言った。楼犇は少商と2人で書房に入った。すると楼犇は自分が遊歴して書き記した″十四州疆(キョウ)域全図″を広げて見せる。「罪滅ぼしとしてそなたに贈ろう…朝廷でこれを欲しがらぬ者などおらぬ」少商は父の居場所さえ教えてくれれば良いと言ったが、確かにその堪輿(カンヨ)図は見事だった。「これを陛下に献上すれば生きる道を残してくださるはずよ?」しかし楼犇は少商に剣を突きつけた。楼犇は少商を人質にして書房を出た。まさかの事態に楼家も激しく動揺し、楼太傅は一門の不幸だと嘆くあまり倒れてしまう。凌不疑は仕方なく王延姫を捕らえた。「少商を解放して程将軍の行方を吐け、陛下には酌量を嘆願しよう」「嘆願?笑わせる」楼犇は自分の志が天下をも動かすと自負し、悲しいかな皇太子が楼太傅の言いなりで日の目を見ることができなかったと嘆いた。本当なら袁慎のように若くして地位を得られたはず、それが行き場も見つからぬまま落ちぶれようとは…。自分が官職についていれば母も虐げられることはなかっただろう。これも長子として家を支え、自分や弟の子孫を蔑まれ者にしたくない一心だった。「だが妻まで巻き込めぬ、阿垚、泣くな、これからはお前が楼家を支えなくては…」「夫君!まだ引き返せる!名声も地位もいらない、あなたと生きたいだけ!」「延姫…もう君と一緒に蓬莱仙境を探しに行けないな…すまない」すると楼犇は少商を解放して突き飛ばし、自ら首を斬って自害してしまう。王延姫は夫の元へ駆けつけ、泣き崩れた。「目を覚まして!私たちの子を宿したのよ?!」しかし無情にも袁慎は亡骸を廷尉府に運ぶと告げる。少商は取り乱す王延姫の姿に胸を痛めたが、その時、楼犇の言葉を思い出した。『苦難か簡単かは全て心次第…因とは果、果とはすなわち因』すると少商は因が精銅なら果は鉱山だと気づく。「馬はある?阿父を探しに行く」つづく(´・_・`)ベン…何してるのよ…そしてまた独り闇落ちしそうな人が…
2023.11.17
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上阳赋 The Rebel Princess第41話「秘密の同盟」王倩(オウセン)を救うため密かに賀蘭箴(ガランシン)に接触した王儇(オウケン)。すると王妃を待っていた蘇錦児(ソキンジ)は忽耶奇(コツヤキ)に誘い出され、豫章王府で起きる出来事を逐一、報告するよう脅された。「万一、正体が露呈すればお前の生きる場所はなくなる」忽耶奇が戻ると賀蘭箴はひとり露台に立っていた。「王妃のそばにいる侍女が皇后が言っていた蘇錦児です、話もつけました 脅しをかけたらおとなしく従いましたよ」忽耶奇はたかが一介の女だと言ったが、賀蘭箴は女を甘く見るなと釘を刺しておいた。王儇は賀蘭箴の説得に失敗し屋敷へ帰った。そこで今度は龐癸(ホウキ)も連れて賀蘭箴を訪ねると決める。錦児は忽蘭(クラン)人に会いたくないと帯同を拒んだが、王儇は錦児しか頼める相手がいないと言った。「分かりました…」仕方なく拝命した錦児、しかし忽耶奇への嫌悪はどうしても拭えなかった。一方、皇帝・馬子隆(バシリュウ)は江南の水害に頭を悩ませていた。すると皇太后が現れ、王夙(オウシュク)と宋懐恩(ソウカイオン)を江南へ送り、治水に当たらせればいいと勧める。子隆は国の一大事を未経験の2人に託すのはどうかと難色を示したが、皇太后はすべて息子のためだと言った。兄の勢力でさえ勝てなかった豫章王、このまま放っておけばいずれ悩みの種になる。実は朝議で温宗慎(オンシュウシン)が兵の削減を建議したのは皇太后の差金だった。「夙児と宋懐恩を江南に送り、その機会を狙って豫章王の命を奪うの」「でも…阿嫵(アーウォ)はどうなるのです?」ぁ…何でもないです(; ̄▽ ̄) キッ!( ・`ω・´) 蕭綦(ショウキ)が王府へ戻ると王倩母娘が住まいを移していた。奥のことは報告しなくても良いと言ったが、劉(リュウ)執事は気になることがあると奥歯に衣着せる。「何だ?」「…以前、王妃に贈り物を届けた忽蘭の者がまた来ました」「分かった」王倩は蕭綦に気に入られようと少しでも美しく見える衣を選んでいた。しかし薛(セツ)夫人はどんなに着飾ろうと美しさで王儇に勝てないと分かっている。それよりむしろ憔悴した姿のままが良いだろう。「まだ子供だから男心が分からないのね、食事の時はか弱い女を演じなさい」( ゚д゚)お、おう王儇は王倩母娘を夕食に呼んでいた。蕭綦は表向き2人を歓迎したが我関せず、王儇に世子と宋懐恩が江南の治水に当たると報告する。すると食事が始まって早々、劉家職が現れた。将軍たちが正堂に集まったという。蕭綦はそこで食事を切り上げ席を立つと、王儇は困惑する母娘にいつものことだと笑顔を見せた。胡光烈(ココウレツ)と胡瑶(コヨウ)は兵の削減を持ち出した朝廷に怒り心頭だった。すると蕭綦はこの機会に宋懐恩に江南行きを知らせる。王藺(オウリン)が失脚したとはいえ皇太后は王氏、このまま没落を黙って見ていられないのだろう。皇太后の企みが何であれ、ともかく今は江南の被災民を優先させる必要があった。確かに王夙は苦労知らずの道楽息子だが、その治水策は理路整然で実現も可能だという。「だが懐恩…向こうに行けば水害や流民、疫病以外にも気をつけるべきものがある 人の心は計り知れぬ」「肝に銘じます」そこで蕭綦は江南へ発つ前に懐恩と玉秀(ギョクシュウ)の婚姻を決めた。翌朝、豫章王府に宮殿から慶事の使いがやって来た。王倩はいよいよ公主に封じられてしまうと誤解、部屋の片隅に隠れて泣いている。しかし使いが来たのは玉秀へ詔書を届けるためだった。「賜名は蕭玉岫(ショウギョクシュウ)とし、将軍・宋懐恩との婚姻を許可する 2人の婚儀は10日後に挙行するものとする」すると慶事房から美しい花嫁の礼冠が贈られ、さらに皇太后と皇帝から金銀珠宝と金襴緞子を賜った。一方、皇帝陵を抜け出した安平王・馬子澹(バシタン)は賀蘭箴と落ち合っていた。しかし安平王はやはり阿嫵を傷つけた男と同盟を結ぶのは無理だという。賀蘭箴は王儇と安平王が恋仲だったという噂が事実だと確信し、もし太平王が大成を掌握すれば愛する女を簡単に取り戻せると揺さぶった。「正直に言えば俺の目にも王妃は別格に見える…傷つけることなどできない」「つまり王子は王妃に特別の感情を抱いていると?」「ふっ、考えすぎだ、心配するな」すると子澹は今の自分は先帝に愛された三皇子ではなく帰京もままらない身、それでも役に立つのかと訝しむ。すると賀蘭箴は豫章王妃には欠かせない存在だと言った。徐(ジョ)女官は世子が江南へ行くと知り取り乱した。水害の地は疫病が蔓延、世子の身にもしものことがあれば亡き長公主に顔向けできない。そこで王儇はかつて兄が描いた治水策を見せた。実は数年前、王夙は江南を視察している。水害に遭った民に心を痛めた王夙は治水に関心を持ち、多くの資料に目を通して調査に心血を注いだ。しかし王藺は目の前で冊子を破り捨て、傷ついた王夙は三日三晩も部屋から出てこなかったという。王儇は父でさえ息子の才能を見抜けなかったと訴え、この機会に兄が日の目を見ることを望んだ。子澹は阿嫵を取り戻すため賀蘭箴と手を組むことにした。すると賀蘭箴は母を殺し、自分の腕を奪った豫章王への憎悪を募らせる。「豫章王が最も愛する女が目の前で安平王の腕に戻るのだ、どれほどの屈辱を味わうか… 死んでも死に切れないだろう、ふっ」「私が欲しいのは蕭綦の命だけではない…天下だ」王儇は王倩が宮殿からの使いを誤解して怯えていたと知り、様子を見に来た。すると王倩は王儇に抱きつき、忽蘭に行きたくないと涙する。「姐姐…私を助けて…お願い」「倩児、方法を考えているところよ、もう少し時間をちょうだい、最善を尽くすわ」つづく( ;∀;)ァァァ…本当なら錦児が幸せになるはずだったろうに…どうしてこうなった?!
2022.01.27
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第21話)第48話「宿願、ここに果たせり」城陽(ジョウヨウ)侯・凌益(リンイー)の五十路を祝うため、凌一族が屋敷へ到着した。凌益は15年も父子の団らんを阻んできた霍君華(フォジュンホワ)が亡くなり安堵したが、夫人の淳于(チュンユー)氏は子晟(ズーション)の父親を見る目が恐ろしかったと警戒する。「もしや君華姐姐から聞いたのでは?あなたが孤城で…」その時、激怒した凌益の平手が夫人の頬を激しく打ち付けた。「子もなせぬ不徳者めが、口を慎め!さもなければこの手で霍君華の元へ送ってやる」淳于氏は夫の仕打ちに憤った。当時、妻が行方不明でも再婚を望んだのは凌益、子をなせなくなったのは霍君華に襲われて子が流れたせいだ。「私の傷をあなたがその手でえぐるとは…やっと分かった、あなたの心には我が子のことだけ 父子で団らんすればいいわ、私は己のために別の前途を探す」一方、成婚を間近に控えた程少商(チォンシャオシャン)は自宅へ戻ることになった。本来なら凌不疑(リンブーイー)の喪が明けるまで待たねばならなかったが、3年も待てない皇帝は法要中の成婚を認める。しかし法要中ともなれば盛大な婚儀を行えず、皇后はせいぜい嫁荷を揃えてやることしかできなかった。「十分、盛大です、こんなに沢山の嫁荷、狭い部屋に入り切るかどうか」長秋宮の前には少商のための輿と嫁荷の長い列が待っていた。少商はもしや不疑が現れるのではと思ったが、皇后は子晟なら来るはずないという。「成婚前に会うのは縁起が悪いわ」少商は皇后に別れの挨拶をして輿に乗った。その時、皇后が前から歩いてくる凌不疑に気づく。「子晟?来たの?!」少商は思わず帷(トバリ)を開けて外へ出た。「どうしたの?」「家まで送る」「成婚までは会えないそうよ…私に話があるの?」しかし不疑は黙ったまま視線を落としてしまう。そこへ皇后がやって来た。「子晟、情けないわよ?成婚すれば毎日、会えるのだから…少商、早く行きなさい」少商は皇后に促され、輿に戻るしかなかった。…凌不疑、やはり話してくれないのね…結局、不疑は何も打ち明けられないまま、黙って少商の輿を見送った。その夜、曲陵(キョクリョウ)侯府では四娘子の成婚を明後日に控え、少商が花嫁衣装を試着していた。当日は長い間、重い衣装や冠をつけ続けるため慣れておかなくてはならない。程姎(チォンヤン)は皇后が特別にあつらえた豪華な冠をながめながら、実は蕭元漪(シャオユエンイー)も一式、準備していたと明かした。しかし少商は姎姎が嫁ぐ時に使えるという。「私が宮中にいる間、堂姉が家を支えた…堂姉がいれば娘を失っても阿母は寂しくない」「そんな…嫁ぐだけよ、失うなんて言わないで」「女が嫁げば残りの半生を夫に託す、夫に危険があれば私も戻らない」そんな娘の覚悟を程始(チォンシー)と蕭元漪が回廊で立ち聞きしていた。「嫋嫋(ニャオニャオ)のそばに戻って1年も満たぬ、埋め合わせをする前に嫁いでしまうとは…」程始は寂しさで涙が止まらなかったが、蕭元漪は娘の言葉がまるで惜別のようで心がざわついた。同じ頃、凌不疑は腹心の梁邱起(リャンチゥチー)と梁邱飛(リャンチゥフェイ)の3人で城陽侯府を訪ねた。城陽侯の五十路の祝いだというのにどこか緊張感に包まれる宴席、すると不疑は外套を羽織ったまま早速、父に祝いの品を渡した。ひとつは銭が詰まった箱、しかしもうひとつの大きな箱から男の生首が現れる。「廷尉獄の裏庭の花職人だ… 数日前、城陽侯は自ら3万銭を渡し、独房内に花びらを吹き散らせたな? だから彭坤(ポンクン)は死んだ、今日は渡した銭と共に首もお返ししよう 満足いただけないなら、孤城三千の亡魂に代わって申し上げる ″享年五十″の祝いをな!」一方、少商はそろそろ城陽侯の祝宴が始まる頃だと気づき、冠を外した。「蓮房(リエンファン)、祝いを用意して符登(フードン)に届けさせて、今すぐよ、急いで」凌益は息子の暴挙に深く落胆した。「確かにお前の母には負い目がある、だが祖先の位牌をよく見てみよ? 教えてくれ、お前は凌氏一族なのか霍一族なのか?」「…本当に知りたいと?」「本当だ、今日、お前の剣で死のうとも疑念を晴らしたい」「では疑念を晴らさず殺すとしたら?」凌不疑の言葉が引き金になり、宴席にいた客人らは一斉に外衣を脱ぎ捨て、隠し持っていた剣を抜いた。すると凌益もゆっくり立ち上がり、剣を抜く。「せがれよ、ここまで生き抜いて来た私が退路を残していないと思うか? …この父のために疑念を晴らす気はないと?」「黄泉にて霍氏一族が語るだろう、お前が死ぬべき理由を…」一方、門前払いされた符登は急ぎ屋敷に引き返していた。「女公子、城陽侯の私兵に遮られ礼品を渡せませんでした 招状がなければ入れないと、屋敷から物音ひとつ聞こえなかったので戻りました」凌不疑は外套を脱ぎ捨て、隠し持っていた剣を梁兄弟に投げ渡した。すると私兵たちも宴席に雪崩れ込み3人を包囲、門を閉じてしまう。宴席は修羅場と化した。窓紗に映る人影は激しく争い、やがておびただしい鮮血が飛び散る。一方、少商は花嫁衣装のまま部屋を出た。しかし中庭で家族が待ち構えている。実はすでに外出禁止令が出て軍営が交代していた。「何か知っているの?」「凌不疑が大変なの、行かないと…彼に関わることなら放っておけない」蕭元漪は帝后に任せるようなだめたが、少商は例え非力でも一度きりの人生で何かを成し遂げたいという。少商は馬で城陽侯府へ急いだ。しかしすでに屋敷への道が封鎖されている。その時、軍装した家族が駆けつけ、衛兵を阻んで道を開けた。「嫋嫋!早く行きなさい!」城陽侯府は静寂に包まれた。亡骸で埋め尽くされた寝殿、凌益は薄明かりの中、決着がついたことを確認する。しかしその時、部屋の片隅から凌不疑が血を流しながら現れた。「父親殺しの汚名を着せられるぞ…」凌益は万が一に備え、皇帝に知らせていた。「何か勘違いしているのでは?お前の子とは従兄・阿狸(アリ)のことか? だったら人違いだ…阿狸はお前に殺された! お前がその手で城門を開け、敵を入城させ、骸を城壁に掛けさせた もう忘れたのか? 姑 父 大 人 !」「まさか…信じられぬ…なぜ知っている?お前は誰だ?!」「まだあるぞ…お前がその手で阿父を殺したことも知っている 叔母と都へ戻った時から決意していた、いつかお前の命を取ると… そして今日がその日だ!」「凌不疑…どちらにしても名義上は私の息子だ…独断で私を殺せば自分の命が代償となる 誰もお前を守れぬぞ!」すると不疑は血まみれの顔で不気味に笑った。「雍(ヨウ)王、小越(ユエ)侯、彭坤…一歩一歩、進みながら今日に至った 霍氏の敵を討てたら死して悔いなし…」凌益は焦って不疑の胸に剣を突き刺したが、不疑は決して退かなかった。凌不疑に徐々に迫られた凌益は足を取られて後ろへ倒れた。背後ではようやく梁兄弟が立ち上がる。「それから…」実はあの時、孤城にいた幼い不疑は偶然、父が凌益に殺される様子を目撃していた。不疑は父の無念を思いながら、ついに凌益の胸に剣を突き刺す。「…私の姓は凌ではない、私の姓は霍だ」その時、不疑が剣を深く差し込み、凌益の身体を貫く鈍い音が聞こえた。「私の名は…霍…無(ウー)」「グハッ…」「…傷(シャン)」凌不疑は霍翀(フォチョン)の息子・霍無傷だった。宿願を果たし万感胸に迫る無傷、その時、突然、門が開き、少商が現れる。つづく( ꒪ͧ⌓꒪ͧ)ウワッ!かなりトラウマになりそう〜だってウーレイが上手過ぎるのよせめてパンダのシャンシャンだったら良かったのに…( ;∀;)って何が?w
2023.11.25
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上阳赋 The Rebel Princess第52話「守るべき者」皇后・謝宛如(シャエンジョ)は皇帝・馬子隆(バシリュウ)から殉葬を賜った。驚いた王儇(オウケン)は慌てて昭陽殿に駆けつけたが、すでに支度を済ませた宛如が小皇子・馬静(バセイ)を抱いている。宛如は息子を阿嫵(アーウォ)に託し、殉葬は馬静を守るためだと説明した。「今までごめんなさい…私の代わりに静児を守り、朝廷から遠ざけて欲しい 平凡でいいの、健康で生きてさえいてくれたら…」「嫌よ、約束できない」「因果応報だわ…自分に返って来た、でも静児を守ってくれるのがまさかあなただなんて…」「だめよ、母親がそばで見守ってあけなくては…」すると皇太后の命を受けた桂(ケイ)嬷嬷(モーモー)が声をかけた。「皇后、お時間です…太后が報告をお待ちです」侍従はすでに毒酒、匕首(ヒシュ)、白綾を準備して控えている。覚悟を決めた宛如はその場でひざまずき、皇子を託せるのは阿嫵だけだと訴え、拝礼した。「今日からあなたが静児の母親よ!ゥッ…」「約束するわ、今日からこの王儇が静児の母となります、決して不幸にはしません」「静児が恩返しをするわ…早く連れて行って、私の最期を見せたくない」「宛如姐姐…」「来世も姉妹同然の幼なじみになりましょう…」王儇が皇子を抱いて昭陽殿を出ると、外はすでに日も暮れ、雨だった。すると雷鳴に驚いた皇子が泣き始めてしまう。徐(ジョ)女官は皇子をなだめたが、その時、おくるみの中から皇后の令牌を見つけた。王儇は小皇子を抱いて式乾殿に戻った。大臣や妃嬪たちは殿前でひざまずき、静かに皇帝を見送っている。殿内では精魂尽き果てた皇太后が書斎で居眠りしていた。王儇は皇太后を起こさないようそっと寝所へ入り、風前の灯となった子隆に息子を会わせる。「子隆哥哥、静児を連れて来ました…抱いてあげて」静児を皇帝の腕の中に寝かせる王儇、すると子隆は皇子の行く末を案じながら悲しみに暮れた。「阿嫵…すまない、昔から申し訳ないと思っていたが、今はさらに…豫章王にも申し訳ない」「誰の仕業なの?」「…阿嫵…余の過ちだ…実は…権力への欲望に目がくらみ、悪事を働いた…」すると子隆は帝位の恐ろしさを思い出して急に胸騒ぎを覚えた。実は皇位を静児に継承させるよう言い残したが、まるで我が子を火の中に放り入れたも同然ではないだろうか。「この宮殿では母上すらも信用できぬ…信用できるのは阿嫵、お前だけだ、お前を信じる」その時、皇帝の声に気づいた皇太后がふと目を覚ました。<隆児!…隆児?!…母ならここにいますよ!子隆は母の足音に気づき、最期の力を振り絞って訴えた。「早く行け…静児を連れて逃げろ…できるだけ遠くへ行くのだ…急げっ…」皇太后は阿嫵が寝所に来ていたとも知らず、息子の枕元に駆けつけた。すると子隆は夢を見ていたと話し、急に身体を起こす。皇太后は息子を腕に抱くと、子隆は母の腕の中で短い人生を振り返りながら、息を引き取った。「はっ!隆児…隆児ぁぁぁぁぁ!」一方、脇殿から抜け出した王儇は鳳池(ホウチ)宮へ戻らず、そのまま馬車に乗り込んで永華門に向かった。蘇錦児(ソキンジ)は窓を開けて皇后の令牌を差し出すと、警戒中の将軍が中を確認する。奇しくもこの緊迫した状況で再び相見えた王儇と魏(ギ)将軍、すると将軍は黙って窓を閉めた。その時、皇帝の崩御を知らせる鐘が鳴り響く。衛兵たちは宮殿に向かって一斉にひざまずくと、王儇はその隙に馬車を走らせた。激しい雷雨の中、誰かの馬車が疾走する王儇たちの馬車の行く手を阻んだ。もしや自分たちの不在に気づいた皇太后が追っ手を差し向けたのだろうか。しかしそれは護衛・龐癸(ホウキ)の隊伍だった。「龐癸です!王妃、本日の午後、情報が入って来ました 皇帝の窮地を知って調査したところ、寧朔(ネイサク)軍の兵は帰京しておらぬ上、 皇帝の刺客事件に大王が関与しているようです」王府の危険を察知した龐癸は独断で屋敷を整理、使用人を解雇して護衛は姿を隠したという。「よくやったわ…すぐ皇都を出ましょう」皇帝の崩御に打ちひしがれる皇太后、そこへ丞相・温宗慎(オンシュウシン)がやって来た。実は禁衛軍のわずかな生き残りが帰京し、方大勇(ホウダイユウ)が軍を率いて寧朔軍を山谷で包囲したが、相打ち死したと報告したという。「つまり豫章王も死んだと?」「はい、近くの村から情報を受けて駆けつけると、方大勇と豫章王の亡骸があったそうです」皇太后は豫章王の死を知り歓喜したが、それだけでは到底、怒りが収まらなかった。「誰か!豫章王妃を捕らえ、関係のある者は全員、投獄しなさい!」すると桂嬷嬷が駆けつけ、王妃が小皇子を連れて宮殿を脱出したと報告する。逆上した皇太后はすぐ皇子を取り戻せと命じたが、そのまま卒倒した。皇太后の意識は戻ったものの、脳の病は悪化していた。太医の見立てではこれから度々、意識が混乱すると思われ、根治は難しいという。わずか1日の間に皇帝の崩御、皇后の殉葬、そして皇子が失踪し、皇太后が病に倒れた。まるで天がこの国を滅ぼそうとしているかのよう、温宗慎はついに覚悟を決めて皇太后を見舞った。皇太后は温宗慎の姿を見つけると、重い身体を起こした。この大局を安定させることができるのは温宗慎だけ、皇太后はかつての想い人に熱い信頼を寄せる。しかし温宗慎は国のために直ちに君主を立てるべきだと上奏した。大成の士族は王・謝・顧・温、温氏も王氏とまではいかなくても由緒正しき家柄だという。その意味を察した皇太后は再び興奮し、帝位を継ぐのは静児だけだと反発した。「しかし太后、皇位が空けば国は不利になります!士族も同意せぬでしょう」「…私は人を見誤った、温宗慎、出て行って!」皇太后は金全(キンゼン)を呼ぶよう命じた。そこで侍女・朝雲(チョウウン)は監禁している金全の元へ急ぐ。「密令よ、太后のために重要な仕事を…」つづく( ๑≧ꇴ≦)いよいよシーズン3へ!それにしてもパンダ、仕事早すぎw
2022.03.04
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上阳赋 The Rebel Princess第65話「露呈した嘘」王夙(オウシュク)は徐(ジョ)女官の死に衝撃を受けながらも阿嫵(アーウォ)に真実を明かすことはできなかった。結局、王儇(オウケン)たちは慈安(ジアン)寺で徐女官の痕跡を見つけられず、引き上げることにする。しかし義兄の様子を怪しんだ蕭綦(ショウキ)は裏山の捜索を命じ、腹心の唐競(トウケイ)にはある人物を調べるよう頼んだ。「…江夏王だ」王夙は秋風(シュウフウ)荘で父と合流した。あの時、父は故意に王安(オウアン)を使って徐女官を隠し部屋へ誘い入れ、宋懐恩(ソウカイオン)を煽って殺させたのだろう。父の目論見通り、これで懐恩は自分たちの言いなりになるしかなくなった。王夙は父のやり方に憤り、もしこれが阿嫵だったらどうしたのかと迫る。「阿嫵だったら迷ったであろうな…ともかくお前は王氏の当主として毅然としていろ 覚えておけ、大事をなす者は揺れてはならぬ」しかしその頃、寧朔軍が裏山で掘られたばかりの跡を発見、そこから徐女官が変わり果てた姿で見つかった。王儇は徐女官の墓前で泣き崩れた。「一体、誰なの?…誰の仕業?」すると蕭綦が手がかりがあると明かし、徐女官の死には王夙が関与していると告げる。「いいえ、そんなはずないわ…」王儇は到底、信じられなかったが、龐癸(ホウキ)を遣いに出して兄を呼び出した。王儇は母の墓前で兄を待っていた。「なぜここに呼んだと思う?母亲(ムーチン)の前では嘘のない兄妹でいたいの…徐女官のことよ?」王夙は妹に勘づかれたと知って動揺したが、父に言われた通り毅然とした態度を貫くしかなかった。「徐女官の死は不慮の事故だった、今はそれしか言えない、私も悲しみに暮れ、己を責めた …阿嫵、やむを得ぬ事情がある、すでに賽は投げられた、王氏のためにやるしかない、覚えておけ」すると王夙は阿嫵が巻き込まれないよう蕭綦と寧朔へ帰れと勧めた。しかし王儇は今となっては兄を信じられるか自信がないと落胆し帰ってしまう。王夙は母親代わりの徐女官だけでなく妹の信頼まで失い、独りなると堰を切ったように母の墓前で泣き崩れた。王儇の報告を聞いた蕭綦は、義兄が自分たちを守るため寧朔に帰そうとしていると気づた。恐らく皇都が危険に陥るという意味だろう。「もしあなたと寧朔軍が皇都を離れたら、黒幕は行動に出るかしら?」「…確かに、ならば我々が一芝居うってやろう 彼らに表舞台に登場してもらい、背後にいるのは誰なのか見せてもらおうじゃないか」一方、錦繍(キンシュウ)宮ではついに蘇錦児(ソキンジ)が産気づいた。知らせを聞いた皇帝・馬子澹(バシタン)は急いで駆けつけると、錦児が無事に皇子を出産する。喜んだ子澹は寝所へ入ったが、産婆たちの様子がどこかおかしかった。「赤子は?…見せてくれ」産婆は仕方なく赤子を渡したが、我が子を見た子澹は驚愕のあまり動けなくなってしまう。蘇貴妃が産んだのは異民族の子だった。書斎に呼ばれた申(シン)太医は以前から不可解な点があったと認め、出産まで正確な判断ができなかったと謝罪する。「辞して故郷に帰り、二度と戻りません」その頃、王儇は永安宮で皇太后を見舞っていた。元気になったら馬静(バセイ)を連れて来ると励ます王儇、すると桂(ケイ)女官が息急き切って駆け込んで来る。「錦繍宮で騒ぎが…蘇貴妃が男子を産みましたが、どうやら陛下のお子ではないようです」子澹が再び錦繍宮にやって来た。慌てた錦児は侍女に赤子を連れて出て行くよう命じたが、運悪く皇帝に見つかってしまう。「待て…」子澹は寝台にいた錦児の腕をつかみ、赤子の前へ引きずり下ろした。驚いた錦児は暴行されたと釈明したが、面目を潰された子澹の怒りは収まらない。感情的になった子澹は思わず衛兵の帯剣を抜き、赤子に向かって振り上げた。錦児は咄嗟に我が子を抱きしめ守ると、赤子が泣き出してしまう。「陛下!」「陛下!」従者たちは一斉に皇帝を諌めた。子澹は怒りをどこへぶつけて良いか分からず、近くにあった灯籠を斬りつける。「子澹、あなただけを愛してきました、でもお心は私になかった…これで終わりです」錦児は目を覚さます時が来たと悟った。すると子澹は赤子を取り上げ、衛兵に錦児の処分を命じる。しかしそこへ王儇が現れた。「この子との間には確執があるの…私に任せて」「好きにしろ」錦児は王氏の護衛たちに連行され、王宮の裏門から出た。すると王儇が待っている。王儇は黙って酒を注ぐと、錦児は毒酒だと思って飲み干した。「私の人生は2人のためにありました、子澹とあなたです 本当に懐かしい、王氏の屋敷での日々が…冗談を言い合い、喧嘩もしました あの頃は何の心配もありませんでした 私は身寄りもなく、名もなかった…″蘇錦児″という名はあなたがくれました すぉぢんあーる…この名が大好きです 恋心にとらわれなければ、もしその後の一切がなければ、どんなに良かったか…でもこれが現実です この人生では何も得られなかった」錦児は死をもって償うと言ったが、王儇の酒に毒など入っていなかった。そこへ侍女が赤子を連れて現れる。「江南に住まいを用意したわ、この子と幸せに暮らしなさい、身分を知られないようにね」王儇は今日で全てを水に流すという。「郡主!」錦児は思わずその場にひざまずき、叩頭して別れを告げた。「…姐姐、お元気で」宋懐恩はついに豫章王府へ行くと決めた。そこで蕭玉岫(ショウギョクシュウ)に豫章王府へ挨拶に行こうと伝えたが、どういう風の吹き回しかと玉岫が笑う。「私と大王は今やどちらも朝廷の官吏だ、昔のように勝手はできない」「…朝廷のことはよく分からないけれど、あなたに従います」懐恩は玉岫を先に休ませると、頭を抱えた。この証拠を蕭綦に渡せば蕭綦と皇帝との間に波風を立てることになる。大成の忠臣である蕭綦にとって苦渋の選択になるが、最終的には正義を通すだろう。『蕭綦が子澹に背くなら粛毅(シュクキ)伯、お前はどうする?』懐恩は王藺の言葉を思い出し、悶々となった。豫章王府に宋懐恩と玉岫夫妻がやって来た。阿嫵と玉岫の手前、懐恩を暖かく迎える蕭綦、そこで王儇は玉岫を連れて奥殿へ向かう。すると玉岫は昔を思い出し、悩みもなく穏やかだったと懐かしんだ。懐恩は良くしてくれるが、自分との間に溝を感じるという。「何を考え、何がしたいのか、私には教えてくれません」玉岫は懐恩の本心が分からないとこぼした。しかし王儇はただの取り越し苦労だろうと安心させる。一方、蕭綦は懐恩を連れて正堂に入った。懐恩はひざまずいて先の一件を謝罪したが、蕭綦は懐恩が任務を全うしただけだと理解を示す。「非難してください、罵倒された方が気が楽です」口では懐恩を許しながらどこか冷ややかな蕭綦、そこで懐恩は本題に入った。懐恩は士族たちに下心があるが、生死を共にしてきた豫章王との仲を引き裂くことはできないと情に訴えた。「″楝羽(レンウ)山の変″で大王たちが陥れられたと知った時、真相を明らかにすると誓い、 今日に至るまで調べ続けてきました 重要な手がかりとなる密書を手に入れました 忽蘭(クラン)にありました…」つづく(´-ω-。` )ぢんR…子供を見捨てるかと思ったら、ちゃんと守った~これで私も過去を忘れるわ(←誰?w
2022.04.21
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上阳赋 The Rebel Princess第53話「侍女の裏切り」病の床に伏し、信じていた温宗慎(オンシュウシン)にも裏切られた皇太后。しかし何としてでも孫の馬静(バセイ)を取り返すため、皇后時代の侍従・金全(キンゼン)を呼ぶよう命じた。口封じのため監禁されていた金全は侍女・朝雲(チョウウン)の顔を見ると涙を流して喜び、皇太后のため再び働くことになる。一方、豫章(ヨショウ)王妃・王儇(オウケン)の馬車は城門で足止めされていた。護衛・龐癸(ホウキ)が皇后の令牌を示したが、守衛は皇帝が崩御した一大事に皇都を出るのはおかしいと怪しむ。そこへ皇太后の命で王儇を追う禁衛軍がやって来た。「門を開けてはならぬ!太后の命令だ!豫章王は反逆により楝羽(レンウ)山で殺された! 皇后の令牌を盗み、脱出を企てた王妃を殺せーっ!」←え?殺すの?( ̄▽ ̄;)龐癸は覚悟を決めて馬を降り、護衛たちと王妃の馬車を守った。すると騎馬隊が一斉に弓矢を放ち、次々と護衛たちが倒れてしまう。その時、王妃の馬車だと知った守衛たちが立ち上がった。「じぃぁんしめん!我々は豫章王の部下だった!王妃を危険にさらしてはならない!」守衛は城門を開けて王妃一行を逃し、命をかけて禁衛軍を阻止した。郊外まで逃げたところで王儇は馬車を止めた。このまま皇子が自分と一緒にいては危険と判断し、二手に分かれるという。そこで王儇は馬静を徐(ジョ)女官に託し、阿越(アエツ)と一緒に江南にいる兄・王夙(オウシュク)に送り届けるよう頼んだ。そして自身は蘇錦児(ソキンジ)と龐癸で大王を探しに狩り場へ向かうという。錦児は王妃が居眠りしている隙に窓から目印を落とした。すると物音に気づいて王儇が目を覚ましてしまう。焦った錦児は怯えながら、暉(キ)州の時と同じように王妃を守れなかったらと思うと怖いと訴えた。「…ごめんなさい」「ばかね、私たちは一緒に育ち、嫁いでからも2人で困難を共にしてきた、なぜ謝るの?」王儇は神様が必ず守ってくれると励ましたが、まさか姉妹同然の錦児に裏切られようとは夢にも思わなかった。賀蘭箴(ガランシン)の一行は分かれ道で錦児が馬車から落とした目印を拾った。そこでここからは腹心・忽耶奇(コツヤキ)に追跡を任せ、王儇を傷つけずに連れてくるよう命じる。一方、禁衛軍も部隊を招集し、豫章王妃を追っていた。しかし暗闇の中、潜んでいた賀蘭箴の配下に襲撃され、一網打尽にされてしまう。やがて遅れて刺客を連れた金全が分かれ道にやって来た。雷雨でぬかるんだ道にはどちらにも馬車が通った跡が残っている。金全は恐らく王妃が江夏王を頼ると考え、迷わず江南を目指した。江南の王夙は今朝も堤防の見回りに出かけた。すると道すがら行き倒れの男を見かける。男は兵士には目もくれず王夙に助けを求め、こっそり手首の入れ墨を見せた。王夙は男が父の護衛だと気づき、救助するふりをして幕営にかくまった。すると父・王藺(オウリン)が実は生存していると知る。宮殿に潜んでいた護衛は王藺が危険に陥ったため北へ向かい救出、刺客たちをあざむくため他人の骸を利用して死を装い、秘密裏に逃亡していた。当初は王藺の死を完全に信じさせるため息を潜めていたが事態が悪化、危険を冒してまで会いに来たという。龐癸は夜を徹して馬車を走らせ、追っ手をまいた。そこで馬を休ませがてら休憩することになり、錦児が近くの川で水を汲んで来てくれる。何も知らず勧められるまま水を飲んだ王儇と龐癸、すると2人は急に意識を失った。一方、王夙は医者を連れ、護衛の案内で人里離れた荒ら屋にやって来た。すると疫病を患い憔悴した父が横たわっている。王藺も護衛も近づいてはならないと警告したが、王夙は無視して父に駆け寄った。錦児は愛する安平王のため王儇を裏切った。「王妃…申し訳ありません、お許しください…本当は安平王に連れて来いと命じられました でも王妃が戻られれば、恐らく安平王は後先考えず王妃と婚姻するはず… あなたは豫章王妃、無理に臣下の妻と婚姻した皇帝が国を治められるでしょうか…いいえ 婚姻はさせません!恨むならどうぞ私を、すべて私の一存です 安平王のためなら地獄へ堕ちたとしても甘んじて受け入れます…」その時、ついに忽耶奇が到着する。「うまくいったな、俺の目は正しかった、お前は残酷な女だ」忽耶奇は配下に王妃と護衛を連れて行くよう命じた。王妃への後ろめたさに目を潤ませる錦児、しかしこれでようやく役目が終わったと安堵する。「もう二度と訪ねて来ないで…」「それは難しいな…お前のような女を放っておけるわけがない」当初から錦児に目をつけていた忽耶奇、錦児は馬車に押し込まれ恥辱されてしまう。 皇帝陵では馬子澹(バシタン)が平常心でその時を待っていた。するとその夜、ついに皇都から合図の照明弾が打ち上がる。一方、瀕死の重傷を負った蕭綦(ショウキ)は見知らぬ民家で気がついた。「娘(ニャン)!あの男の人が目を覚ましたよ!」子供から聞いた父親は慌てて離れに駆けつけた。「…他に…誰か生き残っていた者は…」「お前さんは1人で倒れていた」蕭綦は寧朔軍が全滅したと知り、再び意識を失った。王藺は医官の手当てで快方に向かった。江南は今日も激しい雨、以前はこの時期に水害と疫病が蔓延したが、護衛の話では王夙の治水のおかげで状況が一転したという。「江夏王を過小評価しておられましたね?」「…そうか、今度はちゃんと評価しよう」蕭綦を助けてくれたのは山奥で薬材を作っている一家だった。おかげで蕭綦は命拾いしたが、このまま静養している時間はない。「よう!起きてもいいのかい?さあ、薬だよ…お前さんはすごいねえ~ この怪我なら普通は何ヶ月も起き上がれない」「ずっと寝ていて、外で何が起きたかも知らなくて…」すると男はふもとで聞いた話を教えた。豫章王が反逆して皇帝は殺され、皇后は殉葬、皇太后も倒れたという。何でも城楼には豫章王の首が晒されているとか。「豫章王妃について何か知っているか?」「確か皇都を脱出したそうだ、お尋ね者になり官府が捜索している」蕭綦は床を離れ、楝羽山での攻防を思い出していた。自分と生死を共にすると誓い、戦ってくれた兄弟、そして愛馬…。寄る辺もなく逃亡している阿嫵(アーウォ)は今どこにいるのだろうか。実はその頃、王儇は草原を走る馬車の中にいた。「止めてっ!」意識が戻った王儇は賀蘭箴の姿を見て驚愕、馬車が止ると飛び降りる。しかしそこは何もない草原がただ広がっているだけだった。つづく:(;゙゚’ω゚’): 錦児…本当に地獄に落ちてしまったじゃないの…
2022.03.10
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上阳赋 The Rebel Princess第66話「蕭綦の計画」宋懐恩(ソウカイオン)は蕭綦(ショウキ)に皇帝・馬子澹(バシタン)と賀蘭箴(ガランシン)の密書を渡した。ついに″楝羽(レンウ)山の変″の真相を知った蕭綦は敵討ちを決意、その夜、寧朔(ネイサク)軍を招集する。しかし正堂に王儇(オウケン)が現れた。王儇は復讐すれば国が混乱すると反対したが、蕭綦は制止を振り切り出かけてしまう。「誰か!王妃を守れ、今夜はどこにも行かせるな」病床の皇太后は物音に気づいて目を覚ました。何やら外が騒がしい。すると桂(ケイ)女官が駆けつけ、豫章(ヨショウ)王が大臣たちを呼び集め、寧朔軍を引き連れて太極殿に入って行ったと報告した。「それはいい…子澹は罰を受けるのね」その頃、蕭綦は大臣たちに″楝羽山の変″の調査が終わったと報告、真犯人は皇帝だと伝えた。式乾(シキケン)殿に禁衛軍の将軍が駆けつけ、蕭綦が反乱を起こしたと報告した。「陛下!急いでお逃げください!」「逃げる?…一体どこへ?」子澹は現実と向き合わねばならない時が来たと悟り、腹をくくる。一方、王儇は身支度を整え、正門へ向かった。守衛は大王の命で通すわけにいかないと制止したが、王儇はいきなり龐癸(ホウキ)の剣を抜いて守衛を脅す。「これでも止めるの?…開門!」王藺(オウリン)の計画は順調に進んでいるように見えた。今夜、蕭綦が皇帝を殺すか幽閉すれば、王氏の護衛兵が各地で反乱を平定するよう動くことになっている。皇都付近の軍営は粛毅(シュクキ)伯が掌握していた。しかし青雲(セイウン)はひとつだけ想定外の動きがあったと報告する。「豫章王妃が宮殿に向かったようです」太極殿は騒然としていた。証拠を見た丞相・温宗慎(オンシュウシン)は真偽がどうあれ軍を率いて宮殿に乗り込んだのは大きな過ちだと非難する。「どうかここで踏みとどまってくれ!」「…止めても無駄です、すでに決めました」すると皇帝がやって来た。子澹は書信を書いたのが自分だと認め、皇位を奪って何が悪いと開き直る。「先帝と兵士らの敵を討つだと?詭弁を弄するな…王座を奪うためではないかっ?!」「…血まみれの王座など興味はない、お前を殺したら兵士を連れて寧朔へ帰る」ついに楝羽山でむなしく死んで行った兄弟たちの敵を打つ時が来た蕭綦、しかしその時、太極殿に豫章王妃の来訪を伝える前触れが響き渡った。阿嫵(アーウォ)の姿を見た王夙(オウシュク)は驚いた。思わずの妹の元へ行こうとする王夙、しかし宋懐恩が咄嗟に王夙の腕をつかんで止める。すると王儇は子澹の前に立ち、蕭綦を諌めた。「こいつをかばうのか?」「国を守りたいだけ」「阿嫵…そなたの願いなら何でも聞いてきたが、今回だけは好きにさせてもらう!」「だめよ…蕭綦、力でねじ伏せてはだめ 心に何の信念もなく謙虚さを失えば、あなたは粗野な武人で終わる」その時、蕭綦がいきなり剣を振り上げ、皇帝に斬り掛かった。大臣たちは息をのみ、子澹にも緊張が走る。しかし蕭綦の剣は子澹をかすめ、玉座の角を叩き割った。夜が白々と明けて来た。蕭綦は兵士たちの遺骨を持ち、寧朔軍を連れて皇都をあとにする。その姿を王儇は城楼から見送っていた。蕭綦は振り返って王儇に目配せすると、胡瑶(コヨウ)に皇都に残って王妃を守るよう命じる。危険な一手に出た蕭綦と王儇、果たして黒幕は行動を起こすのか。王儇は王府に蕭玉岫(ショウギョクシュウ)を呼んだ。すると玉岫は懐恩が自分に何か隠しているようだとこぼす。最近では家に戻っても慌ただしく、どこか上の空で、気性も荒くなっていた。「まるで別人です」「誰かと会っている様子は?」「皇都付近の将軍ではないでしょうか?」玉岫は懐恩が大王と一緒に寧朔に帰らず、皇都に残ったことに驚いていた。「もしや大王や王妃に隠し事があるのでしょうか?」「あまり思い詰めないで…」そこで王儇は久しぶりに昔を思い出し、玉岫と酒を楽しんだ。王藺は蕭綦が皇帝を見逃したと聞いても玉座をあきらめなかった。今も昔も謀反を起こす者に退路などないという。困惑する王夙だったが、何より阿嫵を巻き込むことだけは避けたかった。しかし王藺は王氏に生まれたからには仕方がないという。「阿嫵だけではない、私もお前も同じ運命だ…状況が変わった以上、計画を立て直すぞ」子澹は式乾殿に引きこもり、飲んだくれていた。すると誰かが寝殿に入って来る。「出て行け~ヘロヘロ〜消えろぉぉぉ〜お?…(はっ!)阿嫵?!」焦った子澹は愛しい阿嫵に無様な姿を見せたくないと、出て行くよう頼んだ。王儇は泥酔した子澹を叱咤したが、子澹はまるで子供のように駄駄をこねる。「蕭綦に大臣らの前で恥をかかされたのだぞ?…余は名声も人心も失ってしまったあ!」それでも玉座に座るのは阿嫵を守るためだと再び酒を飲み出す子澹。王儇は慌てて酒を取り上げたが、子澹はあまりの惨めさに泣き出してしまう。「…こんなの哥哥じゃない、哥哥は世を救うため聖賢の書を読み、慈愛の心を抱いた人よ? 阿嫵の子澹哥哥は皇帝になったの 民の苦しみを和らげ、朝廷の動乱を平定し、国を安定させなくては…」しかし子澹は全て間違っていたと絶望し、自分は皇帝にふさわしくないと嘆いた。「王氏の女子を得た者が天下を得る…そなたの夫に皇位を譲ってやる」「私と蕭綦にそんな考えはないわ」「では甥に返してやらねば…」「幼い静(セイ)児に今の朝廷は危険すぎる」子澹は途方に暮れ、全てを失ってしまった今、自分の生死も後世の評価もどうでもいいと投げやりになった。「だがそなたの許しは欲しい…」「…何はともあれ今は子澹哥哥が皇帝よ?どうか立ち直って…君主が必要なの」王儇は転がっていた冕冠(ベンカン)を拾い、子澹に渡して帰った。…大成の民が苦しみもがいている中、子澹は自分を責め、酒に溺れる日々を送っていた…朝廷はよどんだ水のように静かだが、よどんだ水の下に巨大な波が潜んでいる…蕭綦が皇都を発ち、隠れていた勢力は歩調を早めるだろう…私は疲れ切り、怖くもあった…しかし逃げ出すことはできない王藺が動き出した。青雲は密かに桂女官を呼び出し、実は王藺が生存し、皇都にいると伝える。つづく(  ̄꒳ ̄)子澹、むしろ惨めな姿も見せられるぢんRの方が好きだったんじゃ…さていよいよパパが動き出し、大詰めです
2022.04.22
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上阳赋 The Rebel Princess第51話「遺言」王儇(オウケン)の告発で一度は鄭(テイ)乳母を怪しんだ謝宛如(シャエンジョ)。しかし自分の誤解だったと気づき、あろうことか皇后の侍女を辱めた王儇に怒りを募らせた。王儇は昨日の今日だというのに昭陽殿へ呼ばれた。宛如の話では小皇子・馬静(バセイ)のそばで過ごしたが、鄭乳母がいなくても泣き通しだったという。「あなたは罪のない人を中傷したのよ?!…何を企んでいるの?!」王儇は自分の顔を見ようとしない鄭乳母の様子をいぶかしみ、皇子に会わせて欲しいと頼んだ。皇子は確かにまた泣いていた。そこで王儇は皇子の身体を調べてみたが、結局、何も見つけることができない。宛如は鄭乳母に謝れと迫ったが、なぜか鄭乳母は王妃も小皇子を心配してのことだとかばった。「愚かね…」乳母の悪事にも気づかない宛如に王儇は思わず捨て台詞を残して帰ってしまう。しかし宛如は王儇の負け惜しみだと思っていた。鄭乳母は寝不足の皇后を寝殿で休ませ、皇子を連れて側殿に戻った。そこでもう1人の乳母と一緒に皇子を沐浴させ、急いで着替えさせることにする。自分を信じて厚遇してくれる皇后には後ろめたいが、乳母たちは恩のある主を裏切ることができなかった。王儇が昭陽殿を出ると永安宮の侍女が迎えにやって来た。仕方なく皇太后へ挨拶に向かうことにしたが、その時、王儇は何気なく見た自分の手が真っ赤になっていると気づく。「王妃?!紅斑が…」「はっ!…昭陽殿に戻るわよ」鄭乳母は皇子が着ていた衣をすぐ処分するよう頼んだ。すると突然、豫章王妃が乗り込んでくる。王妃の姿に動揺した乳母はうっかり皇子の衣を落とし、慌てて拾って小脇に挟んだ。王儇は何を隠したのか迫ったが、乳母は何でもないと取り繕う。そこで徐(ジョ)女官が皇子の衣を奪い取ると、ちょうど騒ぎに気づいた宛如がやって来た。「王儇!大概にしなさい!」「王妃、これです!」徐女官が皇子の衣のからくりに気づいた。皇子が泣き止まない原因は衣に仕込まれた桃の皮だった。王儇は赤くなった自分の手を見せ、桃の皮に触れると自分もこうなると教える。いよいよ逃げられなくなった鄭乳母はその場でへたり込むように平伏した。すると王儇は自分を信じなくても構わないと言い放ち、引き上げる。宛如は信じていた鄭乳母の裏切りに激高、黒幕の名を白状するまで鞭を打てと命じた。まさかその頃、瀕死の状態で帰途についた皇帝・馬子隆(バシリュウ)が宮殿に入ったとも知らずに…。王儇は皇太后を訪ねた。すると待たされたせいなのか皇太后は機嫌が悪く、鳳池(ホウチ)宮で禁足を命じる。その時、侍従が息急き切って駆けつけた。「太后!陛下が狩り場で刺客に遭い、帰京されました!」皇帝はすでに式乾(シキケン)殿に入ったが、太医からすぐ来ないと最期に立ち会えないと知らせが来たという。一方、胡瑤(コヨウ)は意識を失った大王を馬に乗せ、道なき道を進んでいた。皇帝危篤の知らせが宮中を駆け巡った。皇太后はわが子の変わり果てた姿に驚愕、もはや助かる見込みはないと知る。すると丞相・温宗慎(オンシュウシン)は一緒にいた豫章王が行方不明だと報告、禁衛軍が今も狩り場で調査中だという。悲しみに暮れる皇太后、しかし太医は一刻も早く遺言を聞いて欲しいと嘆願した。出遅れた宛如は皇帝の寝所に入れてもらえず取り乱していた。そこで王儇が寄り添い、自分がそばにいるとなだめる。やがて豫章王の居場所を探していた徐女官が戻って来た。しかし豫章王の所在を知る者がおらず、寧朔(ネイサク)軍の兵士も誰ひとり帰京していないという。報告を聞いた王儇は胸騒ぎがした。…先帝が崩御した日の宮中の乱は記憶に新しい…突然、皇帝が刺客に遭い、蕭綦(ショウキ)の行方が知れない今、大きな嵐の予感がする…蕭綦、今まで負けを知らなかったあなたが危険な目に遭っている…どうすればいいの?蕭綦、どこにいるの?子隆は死の淵をさまよいながら遺詔を残し、宛如を呼んだ。ようやく寝所に通された宛如、すると青ざめた顔の子隆が寝台に横になっている。「陛下?何があったのですか、陛下…陛下?私はここです…ウッ…」すると皇太后が中書・顧閔汶(コビンムン)に遺詔を読むよう命じた。「″皇長子・馬静を太子に冊封し、余の死後は太子が帝位を継承するものとする″…」「何をおっしゃるのです、陛下、まだ逝かれてはなりません!陛下…」「″なお皇后謝氏は殉葬を賜る、余と皇帝陵に入れよ″」悲しみに暮れていた宛如は″殉葬″と聞いて急に我に返った。すると宛如は思わず顧閔汶から遺詔を奪い取り、投げ捨ててしまう。恐らく皇太后の差し金だろう。憤懣やるかたない宛如だったが、子隆は消えいるような声で宛如にささやいた。「余は…もう…疲れた…そなたは大成初の謝氏の皇后… 余の死後…そなたと静児を守ってくれる者がおらぬ…安心して目をつぶれぬのだ… 宛如よ…そなたは…余を慕っておるか?」「はい…」「ならば一緒に…逝こう…それが…静児を守る最善の方法なのだ…」皇太后は桂(ケイ)嬷嬷(モーモー)に皇后を昭陽殿に送るよう命じた。子隆から無理やり引き離される宛如、しかしどんなに泣き叫んでも、今や皇帝に自分をかばう力は残っていない。一方、王儇は何も知らず、殿前で静かに待っていた。すると桂嬷嬷がやって来る。「豫章王妃…皇后殿下がお呼びです」「中にいるはずでは?」「昭陽殿に戻られました」「どうして?」実は皇帝が遺言を残し、皇后の殉葬を命じていた。( ゚д゚)<殉葬…つづく
2022.03.03
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上阳赋 The Rebel Princess第60話「大王と粛毅伯」蕭綦(ショウキ)と王儇(オウケン)は民たちを引き連れ、寧朔(ネイサク)へ到着した。城門にいた牟連(ホウレン)は豫章(ヨショウ)王と王妃だと気づいて出迎えようとしたが、劉(リュウ)将軍が現れ阻止する。「反逆者を捕らえよ!」驚いた蕭綦は城楼に向かって濡れ衣を着せられたと釈明し、後ろに控える大成の民を助けて欲しいと訴えた。しかし運悪く背後から忽蘭(クラン)の大軍がやって来る。劉将軍は豫章王が他民族まで利用し謀反を企てるつもりだと非難、勝手に開門しないよう牟連を拘束してしまう。「門を開けた者は軍法にのっとり処分する!」蕭綦たちは城内に入れず、後方から敵軍が今にも襲い掛かろうとしていた。「みんな落ち着いて!後ろへ!」王儇は女子供たちを門の前に集め、蕭綦は男たちと共に戦いを挑む。しかし多勢に無勢、蕭綦たちはじりじりと追い詰められた。その時、城楼から一斉に忽蘭兵めがけて矢が放たれる。すると固く閉ざされていた城門が開き、寧朔軍が盾となって大王と民たちを守った。「大王!来るのが遅くなり申し訳ございません!」蕭綦は牟連たちの忠誠心に感激し、必ずや無実の罪で死んだ兵士たちの屈辱を晴らし、正義を取り戻すと誓うのだった。蕭綦は人質の賀蘭拓(ガランタク)を解放することで忽蘭軍を撤退させた。すると城内で捕らわれの身となった劉将軍が引っ立てられる。「劉将軍は朝廷が派遣した者、城門を開けようともせず、牟将軍を捕らえたゆえ制圧しました」しかし蕭綦は皆が心を一つにしてこそ寧朔軍の強さがあると話し、劉将軍を解放して部下の無礼を丁重に詫びた。「この話は終わりだ、2度と蒸し返してはならない」劉将軍は寛大な豫章王に敬服し、おとなしく従った。蕭綦と王儇は思い出深い寧朔で一夜を過ごした。しかし寧朔軍の違背はすぐ皇都に伝わるはず、朝廷は黙っていないだろう。蕭綦は真実を明らかにするために皇都へ行くと決意したが、危険だらけの旅になるため王儇を連れて行くわけにいかなかった。「阿嫵(アーウォ)、君は寧朔に置いていく」「私たちは多くの試練を共に乗り越えてきた、あなたは私の最も大切な人よ…もう離れたくない」王儇は一緒に行きたいと懇願、すると蕭綦も覚悟を決めて生死を共にしようと約束した。皇都に豫章王の生存と王妃奪還の知らせが舞い込んだ。にわかに浮き足立つ宮中、一方、身を潜める王藺(オウリン)も王夙(オウシュク)から阿嫵が救出されたと聞いていた。さすがは強運の持ち主だと笑顔を見せる王藺、しかし蕭綦もやはり凡人ではなかったらしい。「気を揉んでいるのは私だけではないだろう 皆が気づいている、楝羽(レンウ)山の変は蕭綦を陥れるために仕組まれたことだと… 蕭綦が死ねば皇帝殺しの罪をなすりつけられたが神が生かした、この件はまだ終わらぬぞ」…大成は朝廷も国全体も混乱に陥っていた皇帝は軟禁され、軍は混戦し、民は貧困を強いられている反逆者の汚名を着せられた蕭綦は反乱を鎮めるため、寧朔軍を率いて南下したこれから自分たちに何が待ち受けているのか想像もできずに…寧朔軍が鎮圧しながら南下する中で王儇は離散した家族の悲しみが国中に広がっていると実感した。老人や子供たちは飢えて死に、母親は食糧を得るために自らを売らねばならない。前日まで談笑していた兵士たちが翌日には命を落としていた。しかし国中が塗炭の苦しみを味わっていても、朝廷の士族たちは権力争いに勤しんでいる。そんな朝廷への不満からか、民たちは平定に尽力する寧朔軍に好意的だった。朝廷は蕭綦の報復を恐れた。このままでは腹の虫がおさまらず、蕭綦が本当に反乱を起こすかもしれない。そこで丞相・温宗慎(オンシュウシン)は皇帝に反逆の罪を赦免してもらう詔書を頼もうと決めた。「反乱軍を一掃した功績に報いれば、きっと状況は好転するはず…」しかし子澹は急に手のひらを返して自分を頼ってきた温丞相に冷たかった。「恐れるな、お前なら解決できる…1つだけ言おう、あいつはこのまま元の場所に戻る」蘇錦児(ソキンジ)は王儇がまだ生きていたことに激しく動揺した。子澹との共寝が叶い、幸運にも身ごもることができたが、子澹の心はまた王儇へ向いてしまう。侍女の話では豫章王たちはすでに川を越えていた。「豫章王妃は?」「ご一緒だそうです」錦児は最も恐れている人間に会わねばならないと思うと軽いめまいに襲われた。錦児は差し入れを持って式乾殿を訪ねた。軟禁されても臣下を責めることなく政務に励む子澹、そんな皇帝を見た錦児はあまりに哀れだと嘆く。しかし子澹は朝廷が自分を″無能な皇帝″と思うのは勝手だが、実際に無能であってはならないと言った。「陛下はひどいことをされても文句を言いませんが、ご自身への好意もお分かりになりません」「…分かっている、そなたは身重だ、しっかり休め」子澹は自分の長子が無事に生まれて欲しいと気づかった。温宗慎が皇帝の協力を得られず、朝廷は誰が蕭綦の首に鈴をつけるかで紛糾した。今のところ豫章王と対抗できるのは20万の兵を持つ粛毅(シュクキ)伯・宋懐恩(ソウカイオン)しかいない。しかし大王を知り尽くしている懐恩はその決意を覆すことなどできないと分かっていた。「よく考えてくれ、今のそなたは大成の粛毅伯か、それとも蕭綦の部下か…」温宗慎は懐恩に揺さぶりをかけた。蕭綦たち寧朔軍は皇都を目前にして宋懐恩の軍に足止めされた。「地方の軍は許可がなければ入れません」「懐恩、私を迎えに来たのか?それとも止めに来たのか?」「説得に来ました」懐恩は朝廷の命で来たと言い訳し、寧朔に戻ることが最善だと助言する。「蕭綦…命を受けよ、背けば死罪だ!」「…皇都では大勢の者が私の死を望んでいる、今度は誰が殺しに来るのか…お前か?粛毅伯」「まさか、私は命令されただけです、豫章王」「豫章王?…そんな者はもう存在しない 私はもはや皇帝殺しの反逆者に過ぎぬ、反逆者に命令など下すわけがない」蕭綦は懐恩の裏切りに深く失望し、朝廷に戻れと言った。「こう伝えろ、私が戻ったとな…」すると懐恩は朝廷からの書状を捨て、黙って引き返して行った。つづく(  ̄꒳ ̄)あれ?懐妊したわ〜のシーンあった?見逃してる?
2022.04.02
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上阳赋 The Rebel Princess第40話「王倩の策略」皇太后は王倩(オウセン)が永安宮ではなく昭陽殿に助けを求めたと聞いた。知恵があれば謝氏の宛如(エンジョ)が王氏の女に手を差し伸べるはずないと分かりそうなもの、皇太后は計算高い母親とは似ても似つかぬと漏らす。「殿下、もし永安宮を訪ねて来たらどうしますか?」「追い返して」薛(セツ)夫人は娘が宮中に行ったと聞いて困惑した。もし間違いを起こしたら取り返しがつかない。するとちょうど王倩が戻って来た。安堵した薛夫人は豫章(ヨショウ)王夫妻が必ず助けてくれると慰めたが、王倩は期待できないという。「皇后の方が頼れるわ」「皇后?!」実は宛如は忽蘭(クラン)へ嫁がずに済む方法は豫章王を誘惑するしかないと吹き込み、王倩に媚薬を授けていた。皇帝・馬子隆(バシリュウ)は謝守正(シャシュセイ)の件で蕭綦(ショウキ)を呼んだ。証拠の帳簿を見る限り謝守正の死罪は当然だが、水清ければ魚棲まず、このままでは国のために働く者がいなくなってしまう。「お前は忠臣だ、朕も承知しておる、しかし忠臣がたった1人で一国の朝廷と呼べるか?!」すると皇帝は調査をここで止めるよう命じた。「お前が楯つくと殺したくなる…しかしお前まで失ったら本当に孤独になってしまう、分かるな?」蕭綦は皇帝が投げ捨てた帳簿を黙って拾った。実は密かに宋懐恩(ソウカイオン)の頁を破り捨てていた蕭綦、そこで帳簿を香炉の中に投げ込んでしまう。「…分かります」その頃、安平王・馬子澹(バシタン)は皇帝陵を抜け出し、皇都に向かっていた。王倩と薛夫人は覚悟を決め、豫章王府を訪ねた。来訪を知った徐(ジョ)女官は母娘に嫌悪感をあらわにしたが、王儇は2人に会うという。「私も母親になれば何としても我が子を守りたいと思うはずよ…」王妃の言葉を聞いた徐女官はそれ以上、何も言えなくなった。その頃、玉秀(ギョクシュウ)と阿越(アエツ)は回廊でばったり王倩母娘と出くわしていた。王倩はまだ玉秀への恨みがあったが、薛夫人は下人と言い争えば自分の品格を下げるだけだと嫌味を言う。すると憤慨した阿越が玉秀に向かって急に拝礼した。「小姐、数日後には冊封ですね、大王の妹になれば王妃の小姑に、大将軍に嫁げば将軍夫人です さあ、衣の仕立てに参りましょう」こうして阿越は傲慢な王倩をやり込め、玉秀を連れて先を急いだ。王倩は王儇にすがりつき許しを請うた。そこで王儇は天子に二言がないため、他の方法を探すとなだめる。実はすでに賀蘭箴(ガランシン)と面会する約束を取り付けていたが、王倩をぬか喜びさせないよう教えなかった。落胆した王倩はこれも運命だとあきらめ、もう二度と戻れないと号泣して出て行ってしまう。薛夫人は大袈裟に倒れて泣き崩れたが、徐女官は耳をつんざくような金切り声にたまりかねた。「夫人、体調がすぐれない王妃の前で騒がないでください」「…え?王妃、お加減が?」「いいえ、寝不足なだけよ」すると薛夫人は自分たちを憐れむなら豫章王府に住まわせて欲しいと懇願した。実は皇都に来る前、占い師から″西に福あり東に難あり″と言われ、東にある王氏の屋敷でこの苦難に陥ったという。「王府は皇都の西にあります、福が訪れる方角なんです! 希望があるなら妄言にでもすがりたい!王妃~どうか助けてください!」「もう泣かないで…」王儇は平伏する叔母に手を差し伸べただけだったが、薛夫人は先走って王妃が自分たちを助けてくれると喜んだ。忽耶奇(コツヤキ)は主が王妃への情で事を仕損じることを危ぶんだ。すると賀蘭箴は蕭綦を始末するためにまずは弱点を押さえねばならないという。しかし忽耶奇は蕭綦の弱点が主の弱点でもあると感じていた。蕭綦は正堂で腹心たちと夕食を囲んだ。すると胡光烈(ココウレツ)が寧朔(ネイサク)から来た兵士の話によると、賀蘭箴は賀蘭拓(ガランタク)の罠にはまって皇都に来る羽目になったという。蕭綦は賀蘭拓が国境に軍を派遣し続け多くの兵力を失ったことから、賀蘭箴の方が冷静だと評価した。しかし戦場で生きてきた胡光烈はふと和親がまとまり戦がなくなったら、何をすればいいのか分からないと戸惑う。蕭綦は笑いながら、戦と戦の間隔を長くするのが自分たちの仕事だと言った。そんなある日、江南が水害に見舞われた。しかし大臣たちは私腹を肥やすばかりで国庫はひっ迫、そこで丞相・温宗慎(オンシュウシン)は莫大な軍事費から捻出してはどうかと進言する。和親を結べば平和が訪れ、北の国境の軍事費を削減しても問題はないはずだ。「10万の兵を故郷へ帰せば田畑を耕す者が増え、軍事費は減るのです 支出は減り、収入は倍になる、一石二鳥でしょう」その時、黙って聞いていた蕭綦が口を開いた。「温丞相、1つ伺いたいことがあります もし忽蘭が同盟を反故にし、北の国境に攻め入れば確実に私たちは負けるでしょう その時は温丞相が責任をお取りになりますか?」温宗慎は言葉につまったが、中書・顧閔汶(コビンムン)がその心配はないと助け舟を出した。忽蘭に嫁ぐのは王氏の女人、いずれ王后となり、大成の血筋である王子が生まれれば両国の絆が深まるという。「…一理ある、だがそれでは答えになっていません、もう一度お聞きします 仮に戦が起こったとして責任は誰が取るのですか?所在を明らかにしていただきたい」蕭綦はもし責任をとってくれるなら軍の指揮権も爵位も全て譲ると断言した。豫章王の言葉に静まり返る朝堂、すると皇帝は忠臣たちの言い争いにへき易し、退朝を命じて帰ってしまう。蕭綦は温宗慎が多数の声を代弁していると分かっていた。しかも力を増す温宗慎に盾つく者はいない。「我々の味方はいない…」宋懐恩(ソウカイオン)は大王が兵権を持つ以上、朝廷は何もできないと安心させたが、大臣たちは今や軍の縮小を掲げ始めた。蕭綦は権力争いしか興味のない重臣たちに嫌気が差して寧朔に帰ろうと笑ったが、懐恩は困惑する。「王妃はどうするのです?」「お前は皇都に慣れて帰りたくないのだな…それとも玉秀のためか?」しかし懐恩が言い訳する前に皇太后の使いが豫章王を呼びに来た。皇太后は江南の水害の件で豫章王に相談を持ちかけた。実はこの件を王夙(オウシュク)に任せたいという。蕭綦は治水がとても危険な任務だと難色を示したが、皇太后は王氏の世子として王夙が先頭を立って出て行くべきだと言った。「…はい、仰せの通りに」「危険を防ぐための策は講じてある」皇太后は王夙を守るため宋将軍を貸して欲しいと頼んだ。こうして蕭綦は朝廷で孤立を深めるだけでなく、右腕である懐恩まで奪われてしまう。王儇は宿舎にいる賀蘭箴を訪ねた。「和親の公主を替えて欲しいの」「予想通りだ…そう言うとは思っていたが、俺に替える義務はない」王儇は叔母の悲しみを訴えたが、賀蘭箴は身代わりになる娘のことはどうでもいいのかと呆れた。「私は聖人じゃないの、従妹を助けたいだけ」「それが本音か?…ならば俺も本音を言おう 俺は国のために女を選んだが、実のところ俺の女ではないゆえ誰でもいいのだ 王倩に決めたのはただの気まぐれだ」「ただの気まぐれで王倩の人生を壊すの?」一方、忽耶奇は階下で待っている王妃の侍女に声をかけた。「錦児(キンジ)か?…王妃がそう呼んでいた、ついて来い」忽耶奇は皇后から仰せつかったとかまをかけてみた。すると侍女が黙ってついて来る。そこで忽耶奇は回廊を曲がったところでいきなり錦児の口をふさいだ。「お前が豫章王の屋敷に送られた皇后の間者だな?」錦児は忽耶奇の言葉に呆然となった。まさか皇后が裏で忽蘭の王子と手を結んでいたとは…。「いいか、よく聞け?今日から屋敷で起こる出来事は逐一、報告しろ」つづく( ˙꒳˙ )え?アウォの着物が…🌀
2022.01.20
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上阳赋 The Rebel Princess第54話「新たな皇帝」目を覚ました王儇(オウケン)は再び賀蘭箴(ガランシン)の手に落ちていた。「私のそばにいた者は?!パンダとヂンRは?!」「パンダは死んだ、蘇錦児(ソキンジ)のことは…気にするな」王儇は錦児がくれた水に薬が入っていたと気づき、実は長いこと自分を裏切って賀蘭箴と通じていたと知る。すると賀蘭箴が今や大成の至る所に貼られた豫章王妃の手配書を見せた。「誤解するな…今のそなたには忽蘭(クラン)しか安全な地はない、行こう、私がかくまう」一方、朝廷では依然、皇子の行方がつかめず、大臣たちは空となった帝位に頭を悩ませていた。丞相・温宗慎(オンシュウシン)は諸王たちの皇位争いを懸念、もはや別の皇帝を立てるしかないと決意する。それはつまり安平王・馬子澹(バシタン)を新帝に立てることを意味した。中書・顧閔汶(コビンムン)は思わず謝(シャ)氏の血を引いていると口を滑らせたが、今の朝廷に王氏だ謝氏だと争っている余裕はない。すると城門の守衛から報告が届いた。安平王が勅命なしに帰京したという。子澹はわざと城門の前で待機していた。もし新帝として受け入れられなければ、謀反と糾弾される恐れがある。すると大臣たちが駆けつけ、温丞相が″安平王″の帰京を出迎えた。しかし子澹は無視する。その時、突然、衛(エイ)侯がひざまずいて拝礼した。「次期皇帝のご帰還をお喜び申し上げます!」( ̄ー ̄)ニヤリ子澹は永安宮の寝所を訪ねた。病床の皇太后は侍女が戻って来たと思ったが、水を飲ませてくれたのが憎き謝氏の息子・子澹だと気づいて悲鳴を上げる。回廊に控えていた侍女たちは気が気でないが、許可なく入ることなどできなかった。「…長年、知恵を働かせましたね? 父上に毒を盛り、母上に濡れ衣を着せ、謝氏を没落させた そして私と阿嫵(アーウォ)を引き裂きました 皇帝とご自分の兄を殺し、息子を皇位に就かせた…で、このような末路にご満足ですか?」子澹は当時、神を恨んだ。悪事を働き、道理に背いた皇太后がなぜ宮殿に居座れるのか。いつか必ず両親の敵を討とうと考えて来たが、こうして哀れな皇太后を目の前にすると、やはり神は平等なのだと納得した。「楝羽(レンウ)山の変はあなたが仕組んだことだ… まさか私に利用されるとは想像もしなかったでしょう? 真実を教えましょう、あなたの息子・子隆(シリュウ)の死は…」温丞相が永安宮にやって来た。凌春(リョウシュン)と元宵(ゲンショウ)は太平王が中にいると止めたが、その時、皇太后の断末魔のような叫びが聞こえてくる。驚いた温宗慎は寝所へ乗り込み、嫡母である皇太后への忠誠と孝行を欠けば民心が離れると諌めた。しかし子澹は深読みするなと言って皇太后の頭を優しくなでる。「孝行したくて会いに来ただけだ、焦ることはない…日を改めて見舞いに参ります」子澹が永安宮を出る頃にはすっかり日が暮れていた。凌春は道中に助けた娘が目を覚ましたと報告し、身元を調べたところ寧朔(ネイサク)軍の胡瑶(コヨウ)だったという。しかし肝心の豫章(ヨショウ)王妃の行方が分からなかった。実は蘇錦児が約束を違え、目印を残さなかったという。すると子澹は独りで鳳池(ホウチ)宮を訪ね、人質となって過ごした阿嫵との時間を懐かしんだ。…承康(ショウコウ)2年8月、太極殿で安平王・馬子澹の即位の儀が行われた…そして生母の謝貴妃は香純昱寧(イグネイ)皇太后に追封される…こうして大成の朝廷では2年の内に3度も皇帝が変わり、国中が不安に陥っていた江南は今日も激しい雨だった。安平王の即位を知った王藺(オウリン)はみすみす好機を逃したと苛立ち、王夙(オウシュク)に八つ当たりする。豫章王が謀反を企て皇帝暗殺に失敗して死んだなど誰が信じるものか。恐らく温宗慎ら古参は子澹の企みだと気づいているのだろう。「もはや江南に隠れる意味はない…」賀蘭箴の一行が忽蘭の幕営に帰って来た。忽蘭王は豫章王と寧朔軍を滅ぼした息子の帰還を手放しで喜び、カル族の使者として来訪していたコンプ王を紹介する。実はこれを機に賀蘭箴に王の座を譲り、カル族の王女・ミアとの婚姻を決めていた。しかし賀蘭箴は自ら婚姻を断り、コンプ王を怒らせてしまう。思いがけず忽蘭とカル族の和親は破断となった。賀蘭箴は婚姻するくらいなら王の座を放棄すると言い出し、忽蘭王は激怒して刀を突きつける。しかし息子はもはや賀蘭箴だけだった。「…なぜ私しかおらぬかは父上がよくご存知のはず 私にとって大切な2人、母上と妹はこの世を去った、助けられる機会はあったのに… あなたがその機会をふいにしたのです、だから二度と愛する人を失いたくありません 忽蘭に連れて来た女人と婚姻するつもりです」忽蘭王は原因が女だと知って失笑し、剣を収めた。賀蘭箴は王儇の幕舎を訪ね、世話係のアリマを紹介した。アリマは草原では珍しく大成の言葉に長けているという。しかし機嫌が悪い王儇は視線を落としたまま、アリマの顔をろくに見ようともしなかった。すると賀蘭箴は王儇の顔がよごれていると気づき、アリマにお湯を運んでくるよう命じる。「さあ…草原特製のお茶だ」「出て行って」賀蘭箴はこの茶を飲めば身体が温まると伝え、今日のところはおとなしく出て行った。一方、深手を負ってさまよっていた胡瑶はいつの間にか倒れ、気がつけば宮殿にいた。すると助けられたのは自分独り、一緒にいたはずの大王がいなかったと知って安堵する。慣れない衣に身を包んで皇帝に謁見した胡瑶、そこで豫章王と寧朔軍は無実だと訴え、潔白を証明して欲しいと嘆願した。しかし子澹は興味がなさそうに朝廷が調査しているとあしらい、寧朔軍にも大赦が適用されるという。「そなたが宮殿を出ようと誰も止めまい」忽蘭王は息子が特別に準備したという王妃の天幕を訪ねた。すると豫章王妃は賀蘭箴に拉致されて草原に来ただけで、息子に何の感情もないどころか嫌っていると知る。安堵した忽蘭王は和親のために王妃を解放すると持ちかけた。「本当ですか?」「使いの者に送らせよう、今夜だ、二度と戻って来ないでくれ」|ω・`).oO(あの毛皮…私のより大きいかしら?その頃、蕭綦(ショウキ)は恩人が留守の間に無理をして旅立っていた。…必ずや恩を返しに戻る…壁には蕭綦が残した言葉が刻まれていた。つづく(  ̄꒳ ̄)今回の見どころは…子澹のキラキラ衣装とアウォとおじいちゃんのモフモフ対決!←どこ見てんだw
2022.03.11
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上阳赋 The Rebel Princess第56話「憎悪と流言」新帝・馬子澹(バシタン)が倒れた。知らせを聞いた大臣たちが急ぎ駆けつけたところ、ちょうど申(シン)太医が寝殿から出てくる。太医の見立てでは古傷が何らかの刺激によりぶり返したとのこと、しかし今回は問題ないという。「ただ今後は刺激を与えてはなりませぬ」そこで丞相・温宗慎(オンシュウシン)は衛兵に何があったのか聞いた。衛兵は皇帝がずっと豫章(ヨショウ)王妃と蘇錦児(ソキンギ)を探していたが、錦児が訪ねて来て間も無く倒れたと説明する。「王妃は夫のあとを追ったとか…」子澹は錦児も側仕えたちも追い出し、独り悲嘆に暮れた。まさかあの阿嫵(アーウォ)が自死するとは、豫章王を本気で慕っていたというのか。子澹は阿嫵と共に過ごした10数年が豫章王とのたった数年に負けたのかと思うとやるせなかった。阿嫵を取り戻そうと忌み嫌っていた政権争いに身を投じたが、今となっては皇帝の座に何の意味もなくなってしまう。「死んでそなたのあとを追うか…ふっ…わはははは!」一方、蕭綦(ショウキ)は阿嫵を探して楝羽(レンウ)山にやって来た。ひとまず情報集めに山間の茶屋に入ると、店主と客が噂話をしている。「″皇帝が二度変わり大成の世は傾く″、そこらの子供でも唱えているさ~」「確かに豫章王がこの世を去ってから皆の心にぽっかり穴が空いちまった まるで守護神を失ったようだ、皇家は右往左往するばかり、この先、どうなる?」その時、運悪く店に禁衛軍がやって来た。蕭綦は咄嗟に裏から脱出、兵士たちの様子をうかがう。どうやら禁衛軍は阿嫵を探しに来ていた。豫章王妃は身を投げたという噂だが、子澹は阿嫵の亡骸を見つけるまで信じられないらしい。すると兵士たちは確かにこんな美人がそばにいれば天下など必要ないと笑った。その頃、ついに徐(ジョ)女官と阿越(アエツ)が江南に到着、江夏王と再会を果たした。王夙(オウシュク)は阿嫵が馬静(バセイ)を連れて逃げたと聞いて驚愕したが、先帝と先皇后の最期の望みだったという。あれから王妃の消息は分からず、王夙の元にも何の知らせもなかった。しかし龐癸(ホウキ)が一緒なら無事だろう。王夙はともかく2人を休ませることにしたが、念のため身分を隠すよう命じた。「小皇子はここではない所で育てよう…心当たりがある」賀蘭箴(ガランシン)は王儇(オウケン)を連れ出し、高台から美しい花畑を見せた。大成から戻ったあと王儇のために作った花畑で、心を込めた贈り物だという。「…私が受け取ると思う?」「阿嫵、現実を受け入れろ、豫章王はこの世を去った 前を向け、目の前にはそなたを大切にし、生涯そなたを守る男がいる」しかし王儇は蕭綦の最期を見たのかと迫った。賀蘭箴は大成の人間がこぞって話していたとごまかしたが、それがかえって王儇に希望を持たせてしまう。「流言を聞いたのね?」「流言ではない」「自分の目で見たの?」「それは…いいや」「私を欺いたのね?確信はないのに…」賀蘭箴はともかく血生臭い朝廷から離れて草原で身体を休ませるようなだめたが、王儇は頑なだった。「花畑は気に入ったわ、山や木々も好き…でも受け取れない」その夜、王夙は顧(コ)府を訪ね、采薇(サイビ)に赤子を預かって欲しいと頼んだ。しかし子供の身分を明かせず、かつて酔った勢いで一夜を共にした舞姫が産んだと嘘をつく。采微は衝撃を受けながらも引き受けることにしたが、王夙はどうやら采微の切ない気持ちが分かっていないらしい。安堵した王夙は顧府を後にすると、その様子を密かに皇太后の配下・金全(キンゼン)が見ていた。翌朝、青雲(セイウン)は王藺(オウリン)に朝食を届けがてら、軍営で徐女官と阿越を見たと報告した。その後、江夏王が独りで顧氏の屋敷を訪ねたが、出て来た時には背負っていたはずの竹籠がなかったという。忽蘭に嫁ぎ拓妃となった王倩(オウセン)は思いがけず草原にいる王儇を見かけた。術士からサソリの毒には解毒薬がないと聞いた王倩は王儇を訪ね、旧情を深めに来たと装う。「ここの寝具は毛皮で熟睡できないかと…綿の布団を持って来ました」王儇は王倩の姿に驚きを隠せなかったが、その大きなお腹に気づいた。「懐妊して何ヶ月?」「5ヶ月です…ここには家族がいないから会えて嬉しい」殊勝な王倩に戸惑う王儇、すると王倩の侍女が王儇の寝台に布団を敷き終わり、帰って行った。金全はついに小皇子を発見、その夜、刺客と共に顧家に潜入した。采微の横ですやすや眠っている馬静、金全は采微を起こさないようそっと抱き上げたが、采微がふと目を覚ましてしまう。「誰かっ!」すると突然、王氏の護衛が現れ、金全たちを殺して馬静を救った。一方、賀蘭箴はアリマから知らせを聞いて王儇の天幕に駆けつけた。王儇は眠っていたが、サソリがその首元を歩いている。危ない所でサソリをつかんだ賀蘭箴、すると王儇が目を覚ました。「俺が来ていなければ毒に冒されていたな」すると賀蘭箴は飛び出して行った。アリマは拓妃の侍女の様子がおかしいと気づき、賀蘭箴に報告していた。「ありがとう、アリマ」するとアリマはひざまずき、かつて王妃と会ったことがあると伝える。あれは遊牧民族の祭りに豫章王と王妃が飛び入りした時のことだった。アリマはその時に豫章王を踊りに誘った女子だという。豫章王が亡くなったと噂が広まり忽蘭に侵略され、アリマは奴隷に身をやつしていた。「豫章王の最期は知っているかしら?」「聞いた話では豫章王は罠にはめられ、楝羽山で殺されたと…」しかし誰の仕業なのかまでは分からなかった。一方、賀蘭箴は賀蘭拓(ガランタク)の天幕を訪ね、報復として方術士の首を届けた。寝耳に水だった賀蘭拓は無関係だと釈明し、むしろ愛する女子ができたことを喜んでいたと訴える。「それが事実なら感謝する、疑って悪かったな… 王倩に伝えてくれ、王儇を害するものは誰でも同じ目に遭うとな」賀蘭拓は身重の王倩を引っ叩いた。王倩は夫のためにしたことだと反発、成功すれば夫の功績になったはずだという。しかし賀蘭拓は王儇に手を出すなと叱った。つづく( ๑≧ꇴ≦)アウォの衣装が可愛い!
2022.03.17
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上阳赋 The Rebel Princess第57話「貴妃への転機」王儇(オウケン)の暗殺に失敗した王倩(オウセン)。賀蘭拓(ガランタク)は仕事の邪魔をするなと折檻したが、王倩は自分で王儇を殺して大成での恨みを晴らしたいという。しかし賀蘭拓は婚礼の儀まで手を出すなと命じた。「俺の仕事が終わったら煮るなり焼くなり好きにしろ!」一方、小皇子・馬静(バセイ)は危うく連れ去られそうになったところを王藺(オウリン)に救われた。翌朝、王夙(オウシュク)は父から隠し事をしたと責められたが、実は阿嫵(アーウォ)から身分を隠して守るよう伝言があったと釈明する。王藺は顧采微(コサイビ)を襲ったのが皇太后の手下だったと教え、小皇子は自分のそばに置くのが最も安全だと言った。その意味を悟った王夙は小皇子が権力争いに巻き込まれるのを阿嫵は望まないと反対したが、王藺は皇子に生まれた以上、巻き込まれるのも宿命だという。王夙は采微が怪我をしたと知り、急いで顧家を訪ねた。「迷惑をかけてしまったな、すまない」しかし采微はむしろ預かったのが王夙の子供ではなかったことに安堵している。王夙は嘘をついたと認めて事情を明かそうと思ったが、采微が遮った。「あの子が誰であろうと気にしません、このまま知らぬふりを通します、理由があるのでしょう?」「ああ、助かるよ」すると王夙は明日、皇都に戻ると伝え、一緒に行かないかと誘った。采微は何の約束もなく心許ないと感じ、皇都に行っても今の顧氏では役に立てないと言葉を濁す。そこで王夙は約束の品として自分の玉佩を贈り、采微も自ら刺繍した手巾を渡した。王儇は賀蘭拓の天幕から出て来た王倩を呼び止めた。すると王倩はさそりのことなら自分ではなく術士のせいだと言い逃れ、ここで贅沢な暮らしができるのも王儇のおかげだと心にもないことを言う。そんな歯が浮くよう台詞を王儇が信じるはずもなく、相変わらず嘘つきで性格が悪くなったと呆れた。しかし王倩は王儇が夫も両親も失い、侍女にまで裏切られたのは報いだと言い放って行ってしまう。皇帝・馬子澹(バシタン)は阿嫵の自死を知って倒れ、それから飲まず食わずとなった。心配した蘇錦児(ソキンジ)は式乾殿を訪ねたが、冷たく追い返されてしまう。しかし錦児は門前でひたすら待ち続けた。侍女・凌春(リョウシュン)は困惑したが、確かに憔悴して行く皇帝にただ手をこまねいているわけにもいかない。「陛下に薬を飲むよう説得してもらえますか?」錦児は皇帝に目通りが叶い、たとえ死を命じられても言わねばならないと切り出した。「一国の主として国のために生きてください 王妃は豫章(ヨショウ)王の妻です、もう認めてください お2人は長い時間をかけて愛を育まれました、王妃は陛下を忘れたのです 王妃を命懸けで守り天下を取っても、どれだけ尽くしても、王妃の心に陛下はいません…」「誰か!追い出してくれ!」凌春は皇帝の怒号を聞いて駆けつけた。しかし錦児は話をやめない。「陛下?!…私はしがない侍女ですが、陛下が王妃に尽くすように私も陛下に尽くして来ました 私は尽くしたいのです、陛下に哀れんで欲しいのではありません 亡き王妃もこのような陛下のお姿を見たくはないでしょう お願いです、どうか早く立ち直り、ご自身を大切に…」「…話が済んだら出ていけ」すると凌春は錦児を連れて行った。豫章王妃の死で皇帝はふさぎこみ、朝議にも顔を出さなかった。大臣たちは王妃の死を皇帝の耳に入れたのが蘇錦児だと知り、この機に罪人の侍女も始末しようと決める。すると式乾殿に鳳池(ホウチ)宮の宮女が駆けつけた。蘇錦児が投獄され、皇帝に助けて欲しいという。蘇錦児は拘束され、地下牢に連行された。牢で待っていた温宗慎(オンシュウシン)と衛(エイ)侯は豫章王妃の自死が事実かと確認、錦児が認めると処刑を命じる。しかし地下牢から出ようとしたところで皇帝がやって来た。子澹は自分の従者を勝手に殺すつもりかと激怒したが、2人は皇帝のためであり後悔はないという。「陛下、豫章王の残党を生かすわけにはいきません!」すると子澹は朝廷が錦児をどうしても殺したいなら逆に可愛がると言い放ち、その場で錦児を貴妃に封じてしまう。その頃、カルから戻って来た忽蘭(クラン)王は未だ王儇が生きていると知って憤慨した。賀蘭拓は賀蘭箴(ガランシン)が王儇に大勢の護衛をつけたため近寄れないと釈明し、婚儀の日までに方法を考えるとなだめる。一方、賀蘭箴は王儇に草原の婚礼服を届けた。心配せずとも婚礼は王儇に地位を与えるため、何も強要するつもりはないという。しかし王儇は未だ蕭綦(ショウキ)の死を信じられず、″豫章王妃″以外の称号はいらないと断った。賀蘭箴は現実を受け入れるよう説得したが、王儇はたとえ蕭綦の死が事実だとしても、婚礼服は着ないと突き返す。「帰って…」「俺には気がないようだ…少しも心が揺れないと?」「…あなたとの時間は苦痛であるだけ、永遠に消え去って欲しい」( ꒪ͧ⌓꒪ͧ)ガーン…な賀蘭箴w賀蘭箴は自分の天幕に戻り、阿嫵の婚礼服を大切に飾っておいた。自分との時間が苦痛以外の何物でもないと突き放され、さすがに深く傷ついた賀蘭箴、しかしそれでも一生、阿嫵を待つと決意する。その頃、蕭綦は愛する妻を取り返すため、孤独な旅を続けていた。🦁<ナーツィゴンニャー〜♪ ←あくまでイメージw蘇錦児が目を覚ますといつの間にか寝殿にいた。すると控えて侍女が錦繍(キンシュウ)宮は保護され、誰も蘇貴妃を傷つけないと安心させる。実は牢獄で首を吊られて気を失ったあと、子澹が病を押して助けに来ていた。子澹はその場で蘇錦児を貴妃に冊封、錦繍宮を下賜したという。…子澹の心には私がいたのね!…感激した錦児は身支度もせず、少女のように裸足のまま駆け出した。子澹は今日もひとり阿嫵の絵を眺めていた。すると意識を取り戻した錦児が現れ、拝礼して助命に感謝する。「…余が落ちぶれ隠れて帰京した時、助けてもらった恩を忘れぬと言ったではないか この数年、そなたの余への想いは分かっておる」「このご恩、死ぬまで忘れません、私はこの人生を陛下のために生きています」しかし子澹は錦児が望む答えをくれなかった。「…余は誰のために生きればいいのか分からぬ」子澹が錦児を助けたのは想いが通じたからではなく、阿嫵が大切にしていた侍女だからだった。( ꒪ͧ⌓꒪ͧ)ガーン…再び王夙と宋懐恩(ソウカイオン)の一行が江南から帰京した。夫の無事な姿を見て涙する蕭玉岫(ショウギョクシュウ)、一方、王夙は徐(ジョ)女官と阿越(アエツ)を連れて久しぶりに王氏の屋敷に戻る。「阿嫵が戻るまで以前の部屋を使いなさい…王安、一緒に出かけるぞ」王夙は王安を連れて母が眠る慈安(ジアン)寺を訪ねた。そこで静慈師太に母が頻繁に夢に現れるようになり、母のそばで過ごせるよう寺の近くに静かな家を探していると告げる。「手を貸してくださいませんか?」「さすがは孝行息子ですね、当然、協力しましょう」その夜、なかなか寝付けない阿嫵は幕営を散策していた。すると偶然、夫と密会しているアリマを目撃する。「アリマ?」驚いたアリマはウリモクとひざまずき、王妃に拝礼した。ウリモクはアリマの夫で、奴隷として一緒に連行されたという。王儇はウリモクが祭りでアリマの酒を飲んだ男だと思い出したが、その時、どこからともなく王儇を呼ぶ声が聞こえた。「王妃!」王儇が付近を見回すと、捕虜の牢屋に見覚えのある顔がある。「龐癸(ホウキ)?!」王儇は急いで牢屋に駆けつけた。「生きていたのね、死んだと思っていたわ…」「王妃、私は無事です!」つづく( ;∀;)ぱんだあぁぁぁぁ!
2022.03.24
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上阳赋 The Rebel Princess第58話「王妃の消息」王儇(オウケン)はその夜、偶然にも中原人の捕虜たちの牢屋にいる龐癸(ホウキ)と再会した。すると驚いたことに捕虜の中に小禾(ショウカ)と沁之(シンシ)兄妹がいる。実は賀蘭箴(ガランシン)が兄妹を人質として連れ去り、助けようとした蕭綦(ショウキ)たちが総攻撃に遭っていた。「小禾、大王を見た?!」「はい、しかし私と妹を助ける前に…(はっ!)」小禾は思わず口ごもったが、まだ幼い沁之が素直に伝えてしまう。「あの時、大王叔叔は崖でたくさんの人に囲まれていたの…」仕方なく小禾は賀蘭箴が吊り橋を切り、蕭綦たちは崖のきわに追い込まれて逃げ場を失ったと教えた。結局、兄妹は賀蘭箴に連行され、大王は殺されたという。驚いた捕虜たちは一斉にひざまずき、お悔やみを申し上げた。「立って…」王儇は絞り出すように声を出したが、あまりの衝撃に耐えられず、その場から走り去ってしまう。一方、皇都に戻った王藺(オウリン)は王夙(オウシュク)の手筈で密かに慈安(ジアン)寺に身を隠した。王安(オウアン)は死んだと思っていた主と感動の再会を果たしたが、まさかこんな狭い部屋に閉じ込められているとは思いもせず、涙に暮れる。「人の心には天下があり、垣根には縛られぬ…」王藺はここで小皇子・馬静(バセイ)を育てると決めた。その時、門が開く音がする。王夙は階下へ様子を見に行くと、静慈師太が弟子を連れて掃除に来ていた。「ここは生前、長公主が丹念に拭き掃除をされた部屋でございます 私もその遺志を継ぎ、拭き掃除に参りました」「お気持ちは感謝しますが静かに暮らしたいのです、誰にも邪魔されたくありません 掃除なら私がしましょう」静慈師太は孝行な江夏王に任せると言って引き上げたが、上階に誰かいると薄々、勘づいていた。皇帝・馬子澹(バシタン)は朝議に復帰したが上の空だった。すると丞相・温宗慎(オンシュウシン)が東方と北方の民が反乱を起こし、西北でも動きがあると報告、兵が足りないので増援部隊を送るよう上奏する。粛毅(シュクキ)伯・宋懐恩(ソウカイオン)はそれとなく江夏王の顔を見たが、王夙は首を小さく横に振った。結局、誰も名乗りを上げず、温宗慎は仕方なく衛(エイ)氏の息子・勘(カン)を推薦する。皇帝はまるで興味がなさそうに了承すると、面倒臭そうに退朝した。宋懐恩は王夙になぜ止めたのか聞いた。すると王夙は勇敢に戦った豫章王の末路を見れば分かるという。「待て、今は待つのだ」実は推薦された衛氏の息子なら王夙もよく知っていた。確かに兵書を熟読しているかもしれないが、机上の空論で勝てるほど実践は甘くない。恐らく代わりに派遣できる者がおらず朝廷は慌てふためくはずだ。「手を上げるのはその時に…」一方、衛侯は丞相を呼び止めていた。実は豫章王亡き今、宋懐恩に人気が集まり、当時の蕭綦と同等の威信を持っているようだという。しかし蕭綦と違って宋懐恩は役人との交流を好み、屋敷も豪華に飾り立てていた。衛侯は丞相も見に行ってはどうかと勧めたが、温宗慎は見たところでどうにもならないという。「おいおい考えるとしよう」貴妃に封じられた蘇錦児(ソキンジ)は皇帝唯一の妃だったが、子澹は一度も錦繍宮に現れなかった。「陛下がお越しにならないなら、私が行くしかないわね…」痺れを切らした錦児は差し入れを持って式乾殿を訪ねた。子澹はまだ政務中だったが、いずれにせよ貴妃にも蓮の実の吸い物にも興味はない。そこで錦児は子澹のそばへ行く口実に少しばかり墨を擦り、早々に帰ることにした。すると子澹は錦児の残り香に気づいてふと引き止める。「(クンクン…)そなたの身体から蘇合香(ソゴウコウ)の香りがする…」「(ニヤリ…)私は王妃と共に育って来ました、王妃の好みに影響されて…」錦児はかつて謝宛如(シャエンジョ)の企みで使った方法を利用し、再び子澹の寝屋に潜り込むことに成功した。王儇は愛する蕭綦を失い途方に暮れた。まさかその頃、蕭綦が自分を探しながらライオ◯キングになっているとも知らず…。翌朝、凌春(リョウシュン)が嬉しそうに式乾殿に駆けつけた。「陛下!豫章王妃は生きています!」実は豫章王を捜索中の兵から急報が舞い込み、賀蘭箴が忽蘭(クラン)に連れて行った女人が王妃にうり二つで、豫章王妃に間違いないと噂になっているという。思わず寝所の帳から飛び出した子澹だったが、ふと錦児の話と違うことに気づいた。錦児は咄嗟に崖から身を投げながらも王妃が助かったと喜び、何にせよ良い知らせだと満面の笑みを浮かべる。「…ああ、その通りだ」すると子澹は急に冷たくなり、そのまま出て行ってしまう。王藺も王夙から阿嫵の消息を聞いていた。子澹が大成をくまなく探しても見つからなかったはず、どうやら阿嫵が自死したというのは錦児の嘘だったのだろう。「錦児は幼い頃より家族同然ながら、阿嫵を救う手をお前と相談することもなく子澹を訪ねた 計略があったのだろう…」「…蘇貴妃を甘く見ていました」錦児の裏切りに唖然とする王夙、しかし宋懐恩の方は自分たちの役に立ちそうだと報告した。喜んだ王藺は懐恩が望むものを満足いくまで与えるよう助言し、懐恩が豫章王を超えたと考えるようになれば蕭綦への依存から脱却できるという。すると王安がやって来た。皇帝が王夙を呼んでいるという。そこで王藺は子澹が阿嫵を救出するために忽蘭へ行けと命じても応じるなと助言した。阿嫵を連れ戻すためなら子澹はどんな犠牲も払うはず、そうなれば士族の不満が爆発する。王藺はその責任を子澹1人に負わせ、この混乱を利用して王氏を再興しようと企んだ。何より阿嫵には反逆者の妻という罪名があり帰京しても危険なだけ、賀蘭箴が阿嫵に心を寄せているなら今はかえって忽蘭にいる方が安全だという。参内した王夙は回廊で偶然、蘇貴妃と出くわした。王夙は貴妃に拝礼しようとしたが、それより先に錦児が丁重に挨拶する。「貴妃に封じられたのですから一礼は結構です」「…恐れ多いことです」すると錦児は気まずそうに去って行った。王夙は朝堂に入る前に宋懐恩を呼び止め、これから朝廷が大騒ぎになるが、自分に従って欲しいと釘を刺した。「一体、何事ですか?」「…屋敷で宴を開く、来てくれればその時に分かる」すると王夙の言った通り朝廷は紛糾した。子澹は朝議で上陽郡主が忽蘭で生きていると報告、江夏王を交渉に行かせ、拒まれば戦うと宣言する。驚いた大臣たちは猛反発したが、子澹は阿嫵のためなら国などどうでも良いと言い放った。「江夏王、そなたはどう考える?」「…陛下、妹1人のために国を危険にさらすことはできません! 朝廷では兄妹愛よりも国の利益が重要です!」「江夏王っ!…余を失望させたな、妹を見捨てるとは兄の風上にも置けぬ! 粛毅(シュクキ)伯…お前の妻と上陽郡主は姉妹同然、お前も豫章王に可愛がられた部下だ 上陽郡主を助けるか?」宋懐恩はすぐにでも助けに行きたい気持ちを必死に抑え、江夏王に追従した。「上陽郡主と共に戦い、人となりをよく存じております …万が一、陛下の意向を知れば郡主は同意しないはず、どうかご再考くださいますよう」大方の予想を裏切り王夙と懐恩まで戦に反対した。孤立無縁となった子澹は激高し、自分独りでも阿嫵を救いに行くと決める。「すでに心を決めた…退朝せよ」陛下!なりませぬ!ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ<陛下!三思!侍女から報告を聞いた錦児は恐れていた事態になり動揺した。大臣たちは皇帝の書房の前で嘆願を始め、朝廷は大混乱だという。「陛下、謁見が許されぬなら大臣らは死んでも動かぬと…」「伝えて来い、3日後に出征する、死にたいなら望み通りにしてやるとな」すると子澹は侍従に剣を投げた。王藺は予想通りの展開に高笑いした。しかしあの温宗慎がいるかぎり戦は起こらないだろう。子澹が騒げば騒ぐほど無能さと幼稚さが露呈し、人心を失うだけだ。すると王藺は王夙に懐恩を呼んでくるよう命じた。その夜、王儇が珍しく賀蘭箴の天幕を訪ねた。「民を大成に送り返してくれたら要求をのむわ」「婚姻してくれるか」「ええ…民を解放してくれるなら婚姻する」喜んだ賀蘭箴は思わず王儇を抱きしめた。王儇は早速、牢屋を訪ね、賀蘭箴が解放を約束したと教えた。そこで龐癸に近いうちに民たちと発つよう告げる。つづく
2022.03.25
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岁岁青莲 Blooming Days第29話「仁愛から偏愛へ」駱青蓮(ラクセイレン)の息子・賀南昭(ガナンショウ)は清康(セイコウ)殿にいた。安堵する青蓮だったが、総管・于徳常(ウトクジョウ)は安(アン)王が愛孫に会えるのも最後かもしれないと涙ぐむ。その時、南昭はうとうとしている祖父に上奏文を読み聞かせていた。すると薬の時間になり、宦官が安王の薬湯を置いて下がる。南昭は祖父に薬を飲ませようとしたが、安王はもはや飲んでも治らないと拒否した。「南昭、私が治らなかったどうする?」「必ず治ります!これからまだまだ学問や狩りを習いたいのです!」その様子を青蓮が見ていた。「爺爺(イエイエ)、薬を飲めば必ず治ります!」安王は南昭の必死の訴えに心を動かされ薬を飲んだが、その時、青蓮の姿に気づいた。安王は幼いうちに両親を次々に亡くし、16歳で大将軍となって戦功を挙げた。そして安王に封じられ曲涼に赴き、40数年が過ぎてもその栄光は衰えていない。しかし両親の愛を知らぬ人生は寂しいものだった。「南昭を羨ましく思う…」すると安王は青蓮と話があると言って南昭を下げた。「爺爺のために祈りに行ってくれ」安王は自分の病が重いゆえ、駱青蓮に何か望みはないか聞いた。しかし青蓮はないという。「老三を安王にとは願わぬのか?」「願います…それ以上に安王の長寿を願っています」「私には子孫が多い、だが私を心配してくれる者は少ない」安王は青蓮が自分を避けていたのは、王位を奪いたくないからだと気づいていた。「この身も長くない、王位も代替わりせねば… 曲涼のため明主を見つけるのも親孝行であるぞ?」青蓮はあふれる涙を拭いながら、安王のためにも民を幸せにしなくてはならないと心に誓った。一方、南昭は祖父の回復を祈るため、わずかな側近だけで寺にいた。しかし太監が現れ、徳(トク)夫人が呼んでいると口実をつけて控えていた染雲(ゼンウン)を連れ出してしまう。すると御堂に血まみれの侍女が倒れ込んだ。「刺客がいます!」小公子を警護していた衛兵は剣を抜いて中庭へ飛び出したが、その時、侍女がふいに立ち上がり、隠し持っていた匕首で拝んでいる小公子の背中を刺してしまう。阮之湄(ゲンシビ)の計画が成功し、屋敷に麻袋に入れた南昭の亡骸が届いた。あとは八弟・賀連化(ガレンカ)の到着を待つだけとなったが、そこに突然、右長史・顧斯年(コシネン)が勅旨を持って現れる。実は袋の中に入っていたのは南昭ではなく、防護服を着ていた替え玉だった。安王はこの企てを察し、南昭をわざと参拝に行かせて先手を打った。替え玉の少年と背中に刺さった凶器が動かぬ証拠となり、阮之湄は直ちに清康殿へ連行されてしまう。一方、母に無事を知らせた南昭は王府の偏殿にしばらく留まるよう命じられた。しかし窓から侵入した何者かに連れ去られてしまう。安王は自ら老四夫妻を審問。自分の優柔不断が虎を育ててしまったと嘆き、賀連修を懲理(チョウリ)院に収監するよう命じた。「証拠が揃ったら日を選び…」「王爺!」その時、駱青蓮が現れた。青蓮は敬愛する祖父が叔父を殺したとなれば南昭が悲しむと反対し、かつて子を失う痛みを味わったが、なおさら我が子を殺める苦しみは計り知れないという。「王爺にも後悔させたくないのです」しかし阮之湄は安王を買いかぶり過ぎだと呆れた。「安王は後悔などしない! 安王は仁愛を掲げながら、その愛で他者をさらに苦しめるの!」阮之湄は誰も口に出せなかった安王の偏愛を指摘、それがかえって賀連儲(ガレンチョ)や南昭を不幸にしていると訴えた。「世子を決められないのは子息が才子ぞろいゆえですって?違うわ! ″己を越える者がいない″と思っているからよ!」阮之湄はこれまでの鬱憤を晴らすと叩頭、全て自分1人の罪だと賀連修をかばった。しかし安王は阮之湄の諫言を責めず、むしろ老四に少しでもこの胆力があれば賀連化のために手を汚すこともなかったという。賀連修は父王が全てお見通しだったと知り、号泣した。そこへ助けたはずの南昭が失踪したと急報が届き、安王はあまりの衝撃で倒れてしまう。一方、賀連信は先祖供養の祭祀で無事に大役を果たしていた。すると蘇南春(ソナンシュン)が慌てて飛び込んでくる。「公子!お戻りください!小公子が大変です!」阮之湄はひとまず収監されることになり、処分は後日に決まることになった。すると連行される愛妻を追って賀連修がやって来る。顧斯年は夫婦の最後の別れを見逃したが、阮之湄は人目もはばからず夫に抱きつき、気づかれないよう伝えた。「私が必ず罪から守ってみせます、まだ王位を継ぐ望みはあるわ」しかしその言葉を聞いた賀連修は落胆してしまう。「罪を負ったのは王位のためか…南昭の件は?君ではないのなら誰だ?」「権力争いとは関係ないのかも、1人います」阮之湄が予想した通り南昭を連れ去ったのは呂北逸(リョホクイツ)だった。賀元雪(ガゲンセツ)は食事を作りながら、納屋から漏れ聞こえる話し声に気づいた。どうやら呂北逸が誰かを拉致したらしい。その時、呂北逸は自分が南昭の両親の旧友だと明かしていた。しかし自分は善人ではないと脅す。南昭は男が王府で自分を殺さず連れ去ったことから、寺で襲ってきた刺客たちとは違うと分かった。実は聡明な南昭は刺客を放った黒幕が四叔父だと気づいている。「なぜか分からない、尊敬する四叔父がなぜ私を憎むのか」「功利のために人は必死になるものだ」呂北逸は南昭を立ち上がらせた。その時、南昭が肌身離さず持っている櫛を落としてしまう。「はっ…それは娘(ニャン)から?何か意味でも?」「旧友の持ち物だそうです、ある字を戒めにしろと…″義″です」呂北逸は武器庫の一件で駱青蓮が拉致された時、客桟で聞いた青蓮の言葉を思い出した。…この世は義理より利益を求める人が多い…「11年が経った、君にとって私は今もなお裏切り者なのか?(ボソッ」その時、庭から賀元雪の声が聞こえた。「北逸?薪をお願い!」呂北逸は仕方なく南昭を縛り上げて口を覆い、何食わぬ顔で賀元雪と昼食を共にした。すると賀元雪から遠回しに自分のために他の命を犠牲にするのは身勝手だと責められてしまう。「知っていたのか」安王は意識が戻ると駱青蓮を呼んだ。「確かに私は独りよがりで南昭を危険にさらした…私が間違っていた」安王は阮之湄に指摘された通りだと自責の念に駆られながら、今回は老四と阮之湄の仕業ではないという。「私もまだ甘い…他に誰がいる?」すると駱青蓮は賀家の血を引く南昭なら必ず無事に生還すると安心させた。賀元雪は納屋にいるのが三兄と駱青蓮の子だと気づいていた。「考えてみて、四哥が見返りに駱青蓮をくれたとしても、息子を殺したら許されないわ」「君は私があの子を殺すと?」一方、賀連信は急ぎ側近を連れて曲涼を目指し馬を駆けていた。しかし道中、四兄に従う賀連佐(ガレンサ)に足止めされてしまう。南昭は納屋に落ちていた陶器のかけらを見つけ、自分で縄を切った。しかしうっかり物音を立て、外へ出ようとしたところで呂北逸に捕まってしまう。「北逸っ!…南昭、逃げて!」賀元雪のおかげで南昭は自分をさらった男が″呂北逸″だと知り、逃げる必要がないと分かった。「物心ついた頃に娘が言った、私には味方が6人いると… 父親(フーチン)、母親(ムーチン)、爺爺、奇柔(キジュウ)娘、静容(セイヨウ)娘 そして面識がない呂北逸だ、父親以外では最も娘に優しい人だと聞いた」実は南昭が持っていたあの思い出の櫛の意味は、その情義を学ぶことだという。すると呂北逸がいきなり短剣を出して南昭に切り掛かった。安王の前では気丈に振る舞う駱青蓮だったが、独りになると涙があふれた。清康殿に官吏たちが駆けつける中、賀連修は静かにその時を待つ。果たして南昭の生死は…。つづく( ˙꒳˙ )お?阮之湄がここで退場?するとやはりラスボスはあの人ですか?
2024.11.26
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上阳赋 The Rebel Princess第61話「駆け引き」豫章(ヨショウ)王・蕭綦(ショウキ)の入京を何とか阻止したい朝廷。そこで粛毅(シュクキ)伯・宋懐恩(ソウカイオン)を説得に向かわせたが、あえなく失敗した。朝廷は結局、自分たちが軟禁した皇帝・馬子澹(バシタン)を頼らざるを得なくなり、激しい雨の中で嘆願を続けるに至る。「陛下…恐れながら大臣たちは2刻もひざまずいたままです」侍女・凌春(リョウシュン)は見かねて皇帝に報告、すると子澹はようやく重い腰を上げて回廊へ出た。「着替えてこい、半刻後に太極殿で話をしよう」丞相・温宗慎(オンシュウシン)はもはや蕭綦率いる寧朔(ネイサク)軍の入京は防ぎようがないと上奏した。そこであえて皇帝が入京を認め、互いの面目を保てば蕭綦も勝手な行動ができなくなるという。子澹は自分たちが譲歩して入京を許すことにしたが、反逆罪についてはそのままにした。「奴に分からせる、無実かどうかは調べの結果しだいだとな…」その夜、宋懐恩の不安をよそに蕭玉岫(ショウギョクシュウ)は大王と王妃の帰京を心待ちにしていた。「見て!明日、大王と王妃に会う時にこれを着るつもりなの! 大王とあなたが肩を並べて朝廷に立つ、これで士族も見下せなくなるわ~」「つまり…大王がいなければ寒門出身を守れないと?」「もちろんよ~大王は寒門出身で初めての王だもの、寒門の首領だわ」すると懐恩は今や豫章王の部下ではないと憤慨した。″楝羽(レンウ)山の変″で豫章王が死んだと知り、いよいよ自分が取って代わろうと心を決めた途端、実は大王が生きて帰って来るという。玉岫は夫の思わぬ言葉に困惑し、大王にとって懐恩はなくてはならない人だと訴えた。翌朝、温宗慎は念のため皇帝に蕭綦の出迎えに行くのか確認した。すると子澹はなぜ皇帝が反逆者を出迎えるのかと烈火の如く怒り出し、温宗慎は戸惑いを隠せない。「誠に僭越ながら、陛下は王儇(オウケン)を忘れられず蕭綦を…」「なら自分はどうなのだ?」「陛下、私は太后を見舞いに行っただけです、他意はございません」すると子澹は丞相の心が分かると言った。「深い情があったからこそ未練が断ち切れぬ…出迎えの件はもう言うな、江夏王に行かせよ」蕭綦と寧朔軍がついに皇都に到着した。出迎えを任された王夙(オウシュク)は城門を飛び出し、愛しい妹と抱き合って再会を喜ぶ。「哥哥(グァグァ)、静(セイ)児はどう?」「心配ない、きちんと面倒を見ているよ」すると王夙はこれから詔書を読むが、自分の責務のため容赦して欲しいと断った。兄が詔書を開くのと同時にひざまずく王儇、しかし蕭綦は礼を尽くさず、王儇も立たせてしまう。王夙は呆然としていたが、その時、蕭綦がいきなり詔書を取り上げ、自ら読み上げ始めた。「…″楝羽山の変″は未解決であるが、蕭綦は3代の皇帝に仕え、戦場で功も立てた しばし反逆の罪を免じ、皇都の屋敷にとどまることを許す ただし真相が明らかになるまで地位は回復せず、朝廷への出入りも禁ず…」蕭綦は詔書の内容に呆れた。″楝羽山の変″から半年、これ以上、待てないからこそ自ら戻って来たという。「″楝羽山の変″は解決していない、私自身で調べます… 先帝を暗殺したのが誰なのか、私に罪を被せ、兵を害したのは誰なのか知りたい」朝廷は蕭綦が赦免だけでは納得せず、真相解明を求めていると聞いた。驚いた温宗慎たちは御花園で弓を射っている皇帝を訪ね、やはり出迎えに行くよう説得する。「陛下、蕭綦1人の怒りではない、10万の兵の怒りなのです! 怒りを鎮めなければその後はどうなるか目に見えています!」一方、王夙は阿嫵に蕭綦の説得を頼んでいた。しかし王儇はこの件をうやむやにはできないと訴え、兄が盾になってもいけないという。蕭綦は皇帝の勅命の撤回を要求、するとそこへ子澹と大臣たちがやって来た。王儇は皇帝に拝礼しようとしたが、蕭綦が腕をつかんで止めた。憤慨した衛(エイ)侯は寧朔軍にひざまずくよう命じたが、子澹が構わないという。すると温宗慎が皇帝は豫章王の復位に来たと言った。「大軍を率いて皇都にやって来たのだ、お前の要求を聞いてやろう」「要求はただひとつ、″楝羽山の変″の真相だ」「その件ならすでに調べを始めている…顧閔汶(コビンムン)、お前が担当だな?まだ動きはないのか?」顧閔汶は複雑な事件で思うように調べが進んでいないと報告、その場にひざまずいて許しを請うた。そこで子澹は杖刑を命じたが、蕭綦が止める。「例え陛下が尚書を殺しても真相は解明できず、何の意味もありません」「…では余に杖刑を、豫章王の気が済むまで止めるな」陛下!>・゚・。゚・(ノД`)人(´Д`)人(Д` )ノ・゚。 ・゚・<陛下!大臣たちは一斉にひざまずき、皇帝を鎮めようとした。皇帝と豫章王がしばし睨み合い、城門は緊張に包まれる。その時、王夙が豫章王に調べさせてはどうかと上奏した。 ←ナイスアシストw「…豫章王、お前の意見は?」すると蕭綦はようやく皇帝に拝礼した。「仰せの通りに…」宋懐恩が屋敷へ戻ると、玉岫は矢継ぎ早に大王と王妃の様子を聞いた。しかし皇帝が自ら出迎えたため、話すこともできなかったという。玉岫はならば差し入れを持って屋敷を訪ねると言ったが、懐恩は止めた。「玉岫、もう王妃の侍女ではない、そなたは粛毅伯の妻だ」「…懐恩?今の身分がどうあれ恩人を忘れてはなりません」すると懐恩は驚いた様子で、遠路はるばる来た大王と王妃を少し休ませるよう諌めた。玉岫は自分の早合点だったと気づいて安堵し、日を改めて出かけると笑う。一方、豫章王府に戻った王儇は徐(ジョ)女官、阿越(アエツ)と再会、無事を喜んだ。そこで小皇子・馬静(バセイ)がどこにいるのか聞いたが、江夏王が信頼のおける人に預けたとしか知らないという。2人はそれより蘇錦児(ソキンジ)のことが不可解だった。王妃が連れ去られたあと、お供していたはずの錦児が1人で帰京、今では貴妃になったという。王儇は賀蘭箴(ガランシン)から錦児の裏切りを聞いていたが、自分にも分からないと嘘をついた。「錦児姐姐は大王と王妃が亡くなったと嘘をつき、皇帝もそれを信じていたそうです 王妃、言わせてください、阿越は錦児姐姐を少し怪しんでいました…」阿越が本音を漏らすと、徐女官も人は変わるものだと嘆いた。寝殿に戻った蕭綦は寂しそうな姿の阿嫵を心配した。「どうかしたか?」「…時が経ち、人が変わった」「それは誰のことだ?」「多くの人よ」「私もか?」「変わったと思うの?」蕭綦は皆に変わったと言われるが、自分自身では同じだと思うという。「そなた以外の者にはどう思われても良い」すると王儇は今日の蕭綦は確かに無礼だったが、正しいことをしたと評価した。蕭綦も寧朔軍のために正義を主張した阿嫵に感謝し、豫章王よりずっと偉大だと笑う。しかし王儇はこの先も危機が待っているようで不安だった。「約束して、真相を明らかにし罪なき人は殺さないと…」その時、急に雷鳴が轟いた。翌日、王夙は豫章王府に阿嫵を訪ねた。そこで馬静を江南の顧采薇(コサイビ)に預けたと嘘をつく。もし自分のそばに置いて正体がばれたら士族が狙いかねないため、江南に残して来るのが安全だと考えたと説明した。「身分は明かしていない、一夜限りの舞姫との間に生まれた子だと伝えた」すると王儇は真実味がある嘘だとからかった。王夙は自分を疑わない妹の姿に良心が痛み、うっかり口を滑らせそうになる。「阿嫵…父亲大人が…」つづく( ̄▽ ̄;)ひげだん、怖かった~確かに変わってしまった気がする
2022.04.08
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梦华录 A Dream of Splendor最終話「それぞれの願い」顧千帆(コチェンファン)は皇后・劉婉(リュウエン)と接触し、忠誠を誓う代わりに趙盼児(チョウパンアール)を見逃して欲しいと訴えた。しかし皇后から欧陽旭(オウヨウキョク)への訴えを取り下げさせるよう迫られ拒否、交渉は決裂する。「…悪いけど力にはなれないわ」顧千帆は咄嗟に皇后に短剣を突きつけ、パンRが助かるなら命も売り渡す覚悟だと脅した。「私は裁きへの干渉を求めているのではない、同じ女子であるパンRに機会を与えてやって欲しい その後は勝とうが負けようが恨み言は申しません」「いいでしょう」すると顧千帆は去り際、真実を明かした。「陛下の手元にある夜宴図は真作です、パンRが贋作だと示唆したゆえ、あなたは難を逃れた」何も知らなかった劉婉は驚愕した。聞けばパンRは賎民のままならぬ辛さなら自分も良く分かると共感し、皇后を助けたという。顧千帆はパンRが欧陽旭を訴えたのも、皇后が斉牧(サイボク)からの侮辱に耐えられなくなったことと同じだと話した。パンRはなかなか意識が戻らず、皆を心配させた。しかしパンRの気概に感銘を受けた高鵠(コウコク)が太宗から下賜された妙薬を届けてくれる。顧千帆は高観察を信じ、薬を砕いてからパンRに口移しで飲ませた。するとついにパンRが目を覚ます。一方、劉婉は皇帝や顧千帆の話を噛みしめながら、ようやく自分の過ちに気づいていた。「陛下に謁見したいと伝えて」皇后はパンRに再び機会を与えた。そこで皇帝は公平を期すべく長官を交代させ、審理を公開とする。パンRは重い身体をひきずりながら再び登聞鼓院(トウブンコイン)へ出廷し、早速、杖刑(ジョウケイ)の続きを受けることになった。しかしそこへ伝令官として崔(サイ)内侍が駆けつけ、聖旨を伝える。「皇后の誕辰を祝い、本日より女子に対する杖刑以下の罰は銭で免除できるものとする…ちんつー」顧千帆たちは急いで門で見守っている葛招娣(カツショウテイ)と陳廉(チンレン)に銭を集めろと指示した。「30貫だ!」すると集まっていた民衆がパンRのために寄付してくれる。その中には開封府の前でパンRを蔑んだ男たちもいた。パンRは30貫と引き換えに残りの杖刑を免れた。欧陽旭は皇后が助けてくれると信じて出廷し、依然として婚約破棄を否認する。証書はとうに破棄し、結納品もなく、婚約を証明する物などないはずだ。パンR側の証人・孫三娘(ソンサンニャン)は身内も同然、また杜長風(トチョウフウ)も今や孫氏の許嫁のため、2人の証言は信頼性に欠ける。「確かに酒によって婚姻をほのめかしたことがありました、過ちは認めます なれど男側からの婚約破棄は容赦されるかと…」欧陽旭は誠意を示してパンRに謝罪したが、パンRは偽りの謝罪など必要ないと冷ややかだった。「欧陽旭、訴状をしっかり読んだ?婚約破棄は訴えの一部、問題は私を中傷したことよ?」三娘は婚約祝いに家宝の硯(スズリ)を欧陽旭に贈ったと証言した。返還を求めたがすげなく追い返され、用心棒に都から追い出されそうになったという。しかし欧陽旭が離京前にすべての身代を質入れしたため、硯を見つけることができた。池蟠(チハン)は質札と硯を証拠として提出、硯には確かに三娘が説明した通り表に文言、裏には″孫″と表記があり、質札の契約人は欧陽旭となっている。パンRは婚約する前から欧陽旭が自分から再三、銭を借りながら返済を拒んだと訴えた。「だまし取りは窃盗と同罪のはず、5貫以上は斬首となります」その時、つい立ての裏で審理を聞いていた皇帝は、激怒してうっかり椅子を叩いてしまう。長官は咳払いして慌てて誤魔化したが、顧千帆は皇帝の存在に薄々、勘付いた。皇帝は皇后と一緒に審理を見守っていた。「…皇上、先日は私が悪うございました」「長年、連れ添った夫婦ではないか、幸いにもまだ取り返しがつく」「でも斉牧を許すことはできません」「私が群臣の反対を押し切ってそなたを立后したのは、野心あふれる有能な女子だったからだ(コソッ)知っての通り私は決して知慮に富む賢君ではない… そなたを好いたのは己にないものを持っていたからだ よいな?これからは天下の民の噂話に耐え得るような手立てを取れ この大宋はそなたの家でもあるのだ」欧陽旭は思わぬ証拠に動揺し、硯の件は失念しただけだと釈明した。「これは趙盼児の報復行為だ!君はなぜこんな下劣なことを…」「あの日の発言に感謝するわ」開封府で訴えを差し戻された後、パンRは帰り際、自分の訴えを受け止める勇気もないのかと欧陽旭を非難した。すると欧陽旭は勝ち誇ったように刑法と慣習は全く別物だと言ったという。「それを聞いて悟ったわ、婚約破棄では断罪できないとね… 欧陽旭、私はあなたを地獄へ送る、あなたが私の首を締めたようにね」「何の話だ?…首など締めていないぞ!そんな証拠はあるはずない!」焦った欧陽旭は従者に助けを求めようとしたが、すでに従者は姿を消していた。その時、証拠集めに奔走していた宋引章(ソウインショウ)が駆けつける。「証拠ならありまーす!」欧陽旭の侍従・淑徳(シュクトク)と書生・子明(シメイ)は賊に殺されたことになっていた。実は子明の屍(シカバネ)から″歩虚韵(ホキョイン)″という楽譜が見つかっていたが、確認した引章は楽譜の奇妙な点に気づいたという。「これは道家の祭事で演奏される音曲で、書生は道教の修行者でした しかし歩虚詞と工尺譜(コウシャクフ)が一致していないのです そこで奇妙な箇所だけを横に読んでみると、ある文章が現れました、″欧陽旭が私を殺した″と…」驚いた皇帝はまた椅子を叩きそうになったが、すんでのところでこらえた。楽譜の裏には″紫陽観(シヨウカン)″という文字もあった。そこで引章は欧陽宅の近くに建つ紫陽観を捜索、すると座蒲(ザフ)の下から書生の遺書を発見する。「欧陽旭は侍従を死に至らしめ、大金で刺客を雇い、趙氏を殺そうとしたと… それを目の当たりにした書生は口封じに殺されると思い、楽譜に暗号を記したのです 欧陽旭は音律を知らぬため、気づかれません」酒楼組合へ向かっていたパンRたちを襲った黒幕は欧陽旭だった。欧陽旭は激しく取り乱し、捕らわれまいと暴れ出した。するとついに皇帝と皇后が姿を現す。欧陽旭は全て聞かれていたと知り呆然、その場にへたり込んだ。「欧陽旭の官職を全て剥奪し、詔獄(ショウゴク)へ…いいや、皇城司の獄へ収監せよ! 顧千帆、朕に代わりしっかり取り調べてくれ」皇帝は趙氏、孫氏、宋氏の功績を認め、何でも望みを叶えることにした。「孫氏、言ってみよ」「わっ!私ですか?!…私は永安楼の新作料理を召し上がって頂ければ十分です 願わくば誥命(コウメイ)夫人の衣を賜りたく、栄に浴することができましたら、この上ない幸せです」「許そう」今や立派に自立した引章は、これを機に登聞鼓院が常に開かれ、杖刑が減ることを望むと嘆願した。皇帝はさすが″風骨″の文字を授かっただけのことはあると感心し、許可するという。皇帝は最後にパンRの望みを聞くことにした。するとパンRはいきなり3度ほど叩頭し、政に口を出す無礼を謝罪する。「私は父の罪により楽妓となりました…父は民を救ったがゆえに死んだのです 宋氏は官妓の家の出ですが、世塵(セジン)にまみれることなく、琵琶に邁進しています そんな私たちは欧陽旭より卑しいでしょうか?」パンRは賎民が決して卑しくないと証明するため欧陽旭を訴えたと説明した。男女を問わず一度、賎民になれば容易に抜け出すことはできず、一生、世間から見下されてしまう。パンRは楽師や職人、奴婢の家に生まれた者を賎民である苦しみから解き放って欲しいと涙ながらに嘆願した。良賎制は秦漢(シンカン)期に始まった。皇帝も改めたいと思っていたが、天下の大業ゆえ、代々の帝王が徐々に進める必要があるという。「では今日はまず1つだけ定めるとしよう… 今後、教坊司の優秀な楽師や職人に内侍省翰林院の職を授けるものとする つまり官吏だ、当然ながら賎民ではなくなる また国に貢献し、善行を積んできた官奴婢と私奴婢に対しては上奏を許可する 朝廷が適切に取り計らおう」そして皇帝もこの日をきっかけに堂々と劉婉を伴って朝議に向かった。永安楼では宋引章の琵琶を聞こうと多くの客が集まった。その様子を池蟠は上階から幸せそうに眺めている。一方、三娘は夢を叶え、杜長風との婚儀で鳳凰冠をかぶり、礼服を着た。傅子方(フシホウ)は母の新たな門出を喜び、仲睦まじい陳廉と招娣も2人を祝福する。こうして紆余曲折を経て幸せをつかんだパンR。顧千帆は愛するパンRが嫁いでくれる日を待ちながら、今日もパンRに付き添っていた。終わり無事に完走しました!中国ドラマにハマるきっかけがパンR演じるリウイーフェイが出演した武侠ドラマ金庸の女神と言われたイーフェイが久しぶりにドラマ復帰した作品でしたが、期待が大きすぎたせいか、ちょっとこれじゃない感が…ともあれ私の愚痴を聞きながら最後までお付き合いくださった皆様、ありがとうございましたw
2023.06.14
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岁岁青莲 Blooming Days第28話「新たな世継ぎ候補」辺境の警備を命じられた賀連倚(ガレンイ)。東籬(トウリ)は倚公子への秘めた想いを賀連信(ガレンシン)と駱青蓮(ラクセイレン)に打ち明け、奴婢として賀連倚についていきたいと懇願した。「情に厚く、勇気にあふれ、見返りを求めない…あなたたちは同じね」賀連信は青蓮に決断を委ねると、青蓮は東籬のたっての願いを叶えた。世子が廃されて数ヶ月。賀連儲(ガレンチョ)を見限った安(アン)王は過去への執着を手放すかのように賀連信と駱青蓮の息子・賀南昭(ガナンショウ)を王府に呼び寄せ溺愛した。そんなある日、睿(エイ)郡王邸に南昭を迎えに来るよう知らせが来る。実は賀連信が息子を恋しがる青蓮のため、以前から父王に頼んでいた。「だが南昭が戻ると私が冷遇されそうだな…ふっ」一方で嫡妻・方懐蕊(ホウカイズイ)が養育する賀時児(ガジジ)は父とめったに会えず、もはや顔も忘れそうだと嘆いた。そこで方懐蕊は時児を連れて且歌苑(ショカエン)を訪ねることにしたが、偶然、賀連信と駱青蓮が出かける姿を目撃、断念する。「今日はやめておきましょう」安王は両親が迎えにきてもなかなか南昭を離せなかった。そこへ思いがけない知らせが届く。賀連儲が自害を図り、賀連信と同腹の八子・賀連化(ガレンカ)のおかげで事なきを得たという。「廃された世子にも手を差し伸べるとは大したものだ、明日、老八を呼べ」青蓮は安王が今も賀連緒を思って心を痛めている姿に同情した。曲涼の主としてこの30数年、心を砕いて多くのものを犠牲にしてきた分、悲しみや失望も大きいのだろう。これほど英明な安王さえ、亡き王妃の忘形見のこととなるとお粗末な対応だった。青蓮はこれも子への愛ゆえなのだと理解できたが、そんな安王の心を傷つけているのが息子たちの権力争いだと思うとやるせない。すると賀連信はしみじみ王位継承への道は険しいと漏らした。賀連修(ガレンシュウ)は嫡妻・阮之湄(ゲンシビ)から二兄が自害したと聞いた。「私が化公子に伝えて助けてもらったわ、忠実な官吏も手放した、化公子に仕えさせる」阮之湄は武器庫を失った賀連修に王位を継ぐ見込みはないと判断し、代わりに対抗する力があれど操りやすい賀連化に白羽の矢を立てたという。賀連修は妻から見放されたと悟り、妻の心にあるのは王位だけだと落胆した。それから11年後…。病が続いていた安王は清康(セイコウ)殿に閉じこもり、10日間も朝議を開かなかった。その日も兄弟と官吏たちは前庭に集まっていたが、門が開く様子はない。すると総管・于徳常(ウトクジョウ)が現れ、安王の勅命を口頭で伝えた。「王爺は病のため、信公子が先祖供養を代行するように…」この決定を聞いた徳夫人(トクフジン)は急いで謁見に向かったが、安王に追い返されてしまう。実はその時、奥殿には右長史・顧斯年(コシネン)がいた。安王は徳夫人が戦功を挙げた息子・賀連化に先祖供養を任せないことが不満だと分かっている。「私も意外に思いました、化公子の声望は高まり、大軍も握っていますから…」しかし顧斯年は安王が南昭のために世継ぎを選ぶつもりだと拝察した。恐らく誰もが同じように思っているだろう。安王の予想通り賀連修は10年も悪戦苦闘した挙句、子供に負けたと逆上していた。賀連化を担ぎ上げた阮之湄も困惑、まさか昭徳将軍止まりとは予想外だという。「でも私はあきらめない、まだ望みはあるはず…王爺の視線を遮る者を消せばいいのよ」賀連信は急ぎ慕天殊(ボテンシュ)に文を送り、駱青蓮に供養代行を任されたと報告した。先祖供養は王位継承の一歩手前、賀連信は待ちに待った機会を得られたという。青蓮は賀連信が子を頼って得た王位ではないことを知らしめるため、安王に認められたいのだと分かった。「王爺もお年を召された、でも頭は衰えていない、王爺なりの考えがあるのです」「そう言ってくれるのはお前だけだ」すると賀連信は自分の留守中、南昭を連れて王府に移るよう頼んだ。「父親の近くの方が安心だ」賀連信が予見した通り賀連化は曲涼へ向かった。すでに曲涼への道中に伏兵を置いていた慕天殊は賀連化が軍営を出たと報告を受け、直ちに阻止するよう伝令する。一方、駱青蓮は南昭を連れて王府に入った。徳夫人の侍女・秋実(シュウジツ)は青蓮夫人たちを寝殿まで案内する道すがら、南昭に作りたての菓子を勧める。青蓮は部屋に入ってから食べると断ったが、結局、秋実は持って帰ってしまう。「ふっ、どうやら徳夫人の気が変わったのね 南昭、持参したもの以外は決して口にしないで、いいわね」青蓮は何人もの手を経る食べ物を最も警戒していた。「匕首は持ってるわね、油断は禁物よ」安王が昼寝から目覚めると、駱青蓮が差し入れたお茶があった。青蓮は南昭を連れて挨拶に来たが、安王が寝ていると聞いて帰ったという。「近頃、青蓮に変わったことは?」「相変わらず落ち着いた様子です、ただ小公子から離れようとしません」徳夫人は風邪を理由に駱青蓮と孫の挨拶を断った。しかし青蓮は嫁として世話をしたいと生姜汁を差し入れる。徳夫人は受け取ったものの口をつけず、賀連信が王位に就けば青蓮が事実上の嫡妻だと嫌味を言った。「安王が老三を重用するのは優秀な孫のおかげだと今日、知ったわ 老八は日々、戦に明け暮れているのに、あんな子供に負けるなんて…」「夫人、考え過ぎです」青蓮は確かに賀連化こそ継承者に相応しいが、今は辺境にいるため賀連信が先祖供養を任されたに過ぎないと安心させた。徳夫人が懿(イ)夫人の元で育った賀連信より、朝暉(チョウキ)院で自分が育てた賀連化を溺愛するのも仕方がなかった。それにしても賀連信の重用が南昭のおかげと聞くや孫まで嫌うとは…。駱青蓮は帰りの道すがら、世事に疎い徳夫人がどこからそんな噂を聞いたのか訝しんでいた。「やはり青蓮夫人は″解語の花″ね」その時、思いがけず阮之湄が現れた。阮之湄は徳夫人がふさいでいると聞いて差し入れを持ってきたと話した。「徳夫人は化公子の王位継承を願っていたから…」「之湄夫人の率直さに感服します、ただ世継ぎ選びに女が口を挟むべきではない」「女なら誰しも夫の出世を願うもの、青蓮夫人も同じでしょう?」阮之湄は意味ありげに微笑んで先を急いだ。すると背後から青蓮の声が聞こえる。「本当に夫のためですか?自分の望みではないと言い切れると? では失礼します…」駱青蓮は自分と徳夫人の会話がすでに阮之湄の耳に入っていることに驚いた。しかも安王と自分しか知らない″解語の花″という言葉をどうやって聞いたのか。「勘が鋭く耳も早い、本当にやり手だわ」一方、阮之湄も駱青蓮を改めて手強い相手だと認識していた。あの様子からして南昭は厨房に忍び込んで毒を入れた菓子も食べていないのだろう。「手はずは整った?」「夫人、ご安心を…明日を待つだけです」その夜、賀連信は慕天殊からの密書を受け取った。…海瑶(カイヨウ)夫人を赦免してくださるなら、公子の王位継承に全力を尽くします…先祖供養当日、駱青蓮は南昭が刺客に襲われる悪夢を見て飛び起きた。嫌な予感がした青蓮は身支度もせず寝所を飛び出したが、南昭の部屋はもぬけの殻。何でも今朝、于総管が安王の命で南昭を連れて出かけたという。つづく∑(⊙∀⊙)ヒャーーー!まさか総管?!
2024.11.25
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上阳赋 The Rebel Princess第55話「懐恩の決意」新帝・馬子澹(バシタン)は即位にあたり恩赦を実施、寧朔(ネイサク)軍も赦免となった。城門では守衛たちが次々と晒し首を回収していたが、豫章(ヨショウ)王たちを見送りたいと集まった民たちが見守っている。すると城外の露店でその様子を見ていた客たちが噂話を始めた。「王妃は寧朔に行ったとか…」「忽蘭(クラン)に連れ去られたという話もあるぞ?」「反逆者の妻に転落か~」しかし店主は王妃をかばった。店主は王妃のおかげで生き延びたと話し、豫章王も戦死した兵の家族の面倒を見ていた立派な人だという。その話を農民に成り済ました蕭綦(ショウキ)が聞いていた。その頃、忽蘭では和親の障害となる豫章王妃を乗せた馬車が密かに幕営を出ていた。忽蘭王を信じて脱出を試みた王儇(オウケン)、しかし夜の林の中に独り放り出されてしまう。一方、蕭綦は寧朔軍の首を運ぶ兵士たちを追跡していた。山へ入った兵士たちは穴を掘って首を放り込みながら、豫章王妃は夫が死んだことも知らずに探し続けているだろうと笑っている。すると蕭綦が現れ、兵士たちを皆殺しにし、殉葬させた。…兄弟たちよ、お前たちが私のために受けた苦痛と屈辱を何倍にもして返す…約束しよう、この蕭綦、皆のために必ず雪辱を果たす蕭綦は松明を放り込み、燃え盛る炎に復讐を誓った。王儇は夜の林に置いてきぼりにされ、怯えながらさまよっていた。そこへ王儇の置き手紙を見た賀蘭箴(ガランシン)が迎えに来てくれる。実はこの林は猛獣だらけ、王儇は忽蘭王が初めから自分を殺すつもりだったと知り落胆した。「もう大丈夫だ、一緒に帰ろう…神に誓ってもいい、命をかけて君を守る」江南では王夙(オウシュク)が父に皇太后から届いた密命を見せていた。王藺(オウリン)は妹をみくびっていたと後悔し、今や江夏王となった息子に判断を委ねる。すると王夙は宋懐恩(ソウカイオン)を生かしたいと言った。懐恩はこれまで我が身を省みず何度も阿嫵(アーウォ)を助けており、恩を返したいという。何より一緒に治水作業を行う中で、懐恩が賢く勇敢だと高く評価していた。王藺はあっさり息子の意見に従った。いささか拍子抜けする王夙、すると王藺は王夙と阿嫵に恨まれても仕方がないという。「お前たちと瑾若(キンジャク)に厳し過ぎた…瑾若に顔向けはできないが後悔はしていない 私がしてきたことは自身のためではなく、王氏の繁栄のためだ」歴代の皇帝は即位すると王氏の制圧を試みた。王藺は側女の韓(カン)氏が懐妊して死を賜った時、自分の子は自分の手中に置くと心に誓ったという。「二度と他人に抑えつけさせぬとな…」「分かります」「何を分かったと?本当に分かっていたのなら1人の女にうつつを抜かさなかったはずだ」「…桓宓(カンヒツ)の件は私が間違っていました」「これから頼れるのはお前だけだ…志を共にせぬか?」王夙は思わぬ父の言葉に目を潤ませ、一緒に王氏を盛り返すと誓った。しかし王藺は自分たち2人だけでは難しいという。「助っ人が必要だ…」王夙は懐恩のことだと分かった。賀蘭箴は忽蘭王を訪ね、例え父でも王儇を傷つければ容赦しないと釘を刺した。そこで王儇以外を妃にするつもりはないと宣言、髪の毛1本でも傷つければ忽蘭と決別すると脅す。忽蘭王は憤慨したが息子は賀蘭箴1人だけ、結局、何も言い返すことができなかった。新帝は軍の残党を排除する絶好の機会に大赦を行い、朝廷は戸惑いを隠せなかった。丞相・温宗慎(オンシュウシン)だけは一挙に排除するのは難しいと理解を示したが、時局が急速に変化し、大臣たちも戦々恐々としてる。そこで温宗慎は争う心を捨てて国のために働こうと団結を呼びかけた。しかし皇帝に謁見を願い出ても馬子澹は会おうとせず、半日は書斎にこもって詩を書いている。一方、忽蘭王も聞き分けのない息子に頭を悩ませていた。賀蘭拓(ガランタク)は父子の争いに乗じて継承式を延期するよう提案したが、忽蘭王は継承式も婚礼も延ばすつもりはないという。「もはや大成にとって王儇は重要ではなくなった…お前が人を送り始末してくれ」「分かりました」すると忽蘭王は明日にもカルに発って両部族の和親をまとめ、10日後には継承式と婚儀を行うと決めた。粛毅(シュクキ)伯・宋懐恩の耳にもついに寧朔軍の凶報が入った。そこで直ちに軍営を発とうとしたが、江夏王に足止めされてしまう。ひとまず馬を降りて王夙と膝を突き合わせた懐恩、しかし怒りは収まらず、大王と王妃の潔白を証明するために命をかけると奮起した。しかしどちらにしても江夏王がいなければ自分はとうに死んでいたと知る。懐恩は皇太后の密命を見て呆然、悔し涙を流しながら、国に忠誠を誓った自分たちへの不当な扱いに憤った。「豫章王のような英雄がこんな終わりを迎えるとは…あまりにも無念です…とても悲しい 私がそばを離れたから…はっ!」その時、懐恩は皇太后が大王を殺すために故意に自分を遠ざけたと気づく。すると王夙は帰京を止めにきたのではなく、帰京後にどうするか相談したいと言った。「どうだろう、このまま死を待つより命懸けで生きる道を模索してみないか?」王夙は王氏という名家と豪傑の懐恩が手を組めば悪を根こそぎ排除し、この乱世で覇業を成し遂げられると訴えた。懐恩は江夏王の提案を注意深く考えた。幕舎を取り囲んだ兵士たちは剣を抜き、江夏王の合図を今か今かと待っている。…杯が割れる音がしたら首をはねろ…すると王夙はついに杯をゆっくり持ち上げた。その時、懐恩がようやく重い口を開く。「江夏王は私の命を救ってくださいました… 条件があります、一緒に豫章王の潔白を証明してください それから…王妃を探しましょう」「ふっ…もう探させている」王夙は配下に下がるよう合図を送り、懐恩と杯を交わした。賀蘭拓は方(ホウ)術士の天幕を訪ねた。忽蘭王に王儇を殺せと命じられたが、和親がまとまって賀蘭箴が王位を継承すれば草原を統一する大王になり、自分が追求されるだろう。「そうなれば私は草原と大成どちらでも罪人となる…トホホホ…」しかし術士は失笑した。「今、手を下さぬのなら、いつやるのだ?」馬子澹の待ち人がついに皇宮に現れた。書斎にこもっていた子澹は急いで寝殿に戻ると、憔悴しきった蘇錦児(ソキンジ)がへたり込んでいる。「安平王…いいえ、皇帝陛下でした」「ずっと探していたのだ…無事で良かった、阿嫵は?そばにいなかったのか?今どこに?」「…亡くなりました」錦児は皇帝が王妃をあきらめるよう嘘をついた。実は逃亡生活を続けるうち王妃が豫章王の死を知って大病を患ったという。錦児は皇帝の元へ帰ろうと再三、説得し、王妃も徐々に落ち着きを取り戻して行った。すると王妃が豫章王を弔うため楝羽(レンウ)山に行くと言い出し、その言葉を信じてついて行ったが、山崖に到着すると身を投げたという。「嘘だっ!…阿嫵が自死を選ぶはずがない…偽りだぁぁぁ!」子澹は烈火の如く怒り出した。つづく
2022.03.17
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梦华录 A Dream of Splendor第13話「女子の商い」宋引章(ソウインショウ)は公務で教坊司に来ていた著作部の沈如琢(シンジョタク)と知り合った。しかし周舎(シュウシャ)との苦い経験から沈如琢を警戒、帰りも送って行くと言われたが、遠慮して輿に乗ってしまう。すると沈如琢が馬に乗って輿について来た。「私が怖いのですか?」「いいえ、ただ人見知りなだけで…ついて来ないでください」「美女の命には逆らえません、私の住まいは長楽坊左街(サガイ)に… 話がしたければ大歓迎です、ぜひお越しください」一方、茶坊を開店して意気揚揚としていた趙盼児(チョウパンアール)は早くも行き詰まった。繁盛したのは初日だけ、なぜか客足はぱったり止まってしまう。パンRは仕方なく早仕舞いして孫三娘(ソンサンニャン)と屋敷に戻った。すると具合が悪いと言っていた引章の姿が見えない。2人は心配して探しに行くことにしたが、その時、ちょうど引章が帰って来た。実は引章は顧千帆(コチェンファン)の助言で奮起し、独断で教坊司に行ったという。パンRは頼りない引章が玉石混淆(ギョクセキコンコウ)の教坊司でやって行けるのか半信半疑だった。しかし引章はちゃんと教坊使に挨拶がわりの龍涎(リュウゼン)香を贈り、軽薄な男には距離を置き、無事に琵琶色の教官になれたという。「守ってもらうばかりじゃなく、私もパンR姐姐を守れるようになりたいの 張好好(チョウコウコウ)のようになって皇上に称賛されたら、高(コウ)家も手出しできなくなるわ」パンRは引章を子供扱いしていたことに気づき、今回は自分が間違っていたと謝った。皇城司では陳廉(チンレン)が自分で捕縛した遼(リョウ)人の拷問に立ち会いたいと希望していた。しかし顧千帆は認めず、孔午(コウゴ)と一緒に地下牢へ行ってしまう。孔午は口の固い密偵に手こずっていたが、顧千帆が現れると密偵は釈放を条件に白状した。「起居舎人(キキョシャジン)の石泉(セキセン)と結託した」「…その言葉を信じさせるために拷問に耐えていたのか、ご苦労なことだな」実は石泉は官職こそ低いが顧千帆の叔父である御史中丞(ギョシチュウジョウ)・斉牧(セイボク)の婿だった。恐らく江南の一件で功を立てた顧千帆が皇后派だと踏み、讒言すれば喜んで清流派に対抗すると考えたのだろう。「お前は詰めが甘った」顧千帆は密偵が首から下げている玉(ギョク)を見逃さなかった。「遼人は金を好むが西夏(セイカ)人は玉を好む…お前は西夏の者だな 西夏は遼との戦を恐れ、連環の計を仕掛けて大宋と遼を争わせるつもりか?」「何の話か分からぬ…」すると顧千帆は″琵琶″を弾けと命じた。孔午は銅の鞭で密偵を打った。 鞭は龍の鱗のように小さな銅刃が連なり、美女がはじく弦のごとくしなやかによじれることから琵琶と呼ばれる。「釈放されたいならありのまま話せ」「顧千帆…あくどい生き閻魔め!必ず報いがあるぞ!先祖ともども地獄で朽ちるがいい!」すると密偵は憎しみを募らせ、顧千帆の顔に血を吐きかけた。顧千帆は平然と書斎に戻ったが、急に孤独感に苛まれ、思わず手洗い用の湯を頭から被ってしまう。翌朝、雷敬(ライケイ)の側近・于中全(ウチュウゼン)が南衙(ナンガ)にやって来た。異民族の密偵を捕まえたのは陳廉だったが、その場所が自分の管轄だったため引き継ぎたいという。「功を横取りですか?捕らえたのは私ですよ?恥ずかしい人ですね~」「″顧千帆″!配下のしつけがなっていないな」于中全はうっかり口を滑らせ、慌てて失言を謝罪した。そこへちょうど孔午が駆けつけ、密偵が白状したと報告する。「筋骨は断たれ長くはないかと…」「何だと?!」于中全が驚いて声を荒らげると、顧千帆はやはり一味なのだと分かった。「口封じが狙いだったのか?」「戯言です、万死に値します」于中全はその場でひざまずき、自分の頬を叩いてから平伏した。「死ぬほどではない…ただ今から雑巾で北衙からここまでお前が歩いた道を全て拭いてもらう 今度、私がいる南衙を汚すようなら、その時は舌で清めてもらうからな」顧千帆は孔午に供述書を返し、医者を呼ぶ必要はないと言った。「拇印を押させたら殺せ…」「そんな~」陳廉は思わず密偵を憐れんだが、顧千帆も最初は人を殺すのが怖かったという。「衣についた血は洗い流せるが、汚れた白い紙はどうやっても元に戻せない だからお前に尋問はさせない」顧千帆はパンRの商いが上手く行っていないと知り、茶坊を訪ねた。「アイヤ~もう閑古鳥が鳴いているのか?」「生き閻魔が入口を塞いでいるからよ」顧千帆はパンRの憎まれ口を聞いて思わず顔を綻ばせたが、自分のあだ名をまだ覚えていたのかと感心する。「怖くないのか?」「別に、だって初対面じゃないもの…それよりお願いがあるの」「賭けならやめないぞ?」「ケチね~教えて欲しいことがあるのよ」パンRは顧千帆のおかげで店が流行らない理由を知った。実は東京の街は職で分かれており、生薬なら薬巷(ヤクコウ)局で、衣なら藩楼(ハンロウ)の東で買うという。茶を飲むなら普通は茶湯巷、しかし趙家茶坊は馬商人が行き交う″馬行街″にあった。開店当日はたまたま近くの観音院で生誕祭があったが、普段は馬商人しかいないという。何も知らなかったパンRは人通りが多く、競争相手もいない最適な場所を選んだつもりだった。しかしパンRの手の込んだ茶は文人に好まれても、庶民は茶葉に湯をかけただけの散茶を好むという。パンRは珍しく本音を漏らした。人前では平気なふりをしているが、本当は辛くて心が引き裂かれ、かき混ぜられているようだという。すると顧千帆は自分にも分かると言った。実は華亭(ケイカ)県でパンRを訪ねた夜、直前に生死を共にした仲間に裏切られたという。「だから奴を殺した…」しかしパンRは仲間に同情するのではなく、顧千帆を心配した。「辛かったでしょうね…」「君の目に私はどう映っている?本音を聞かせてくれ」「…いつも引章に″人は三娘の作る一口酥(イッコウソ)のようなもの″と言っているわ 同じように見えて中は何層も重なってる、自分で味わって初めてどんな味か分かるものだって… 人の目なんて気にしないで」パンRにとって自分を助けてくれる顧千帆は英雄だった。顧千帆は生き閻魔と恐れられ、宦官の手先と蔑まれる自分が英雄に見えるのかと卑下する。しかしパンRはそれでも何もしない官吏よりましだと言った。「国と民の手先になれと?」「無為に生きるより大義ある死を選ぶの」顧千帆はパンRの思いやりに感謝して賭けの期間を二月に延ばしたが、パンRは一月後に必ず成果を出してみせるという。顧千帆はそんなパンRの負けん気の強さが自分と重なり、満面の笑みがバレないように背を向けた。( ̄▽ ̄;)いやだからもう好きなんだろう?!于中全は屈辱に耐えながら雑巾掛けを続けていた。すると配下が駆けつけ、顧千帆がまた馬行街の女店主を訪ねていると知る。「ひいきにしているのだな…」引章が店にやって来た。外で警戒していた陳廉が慌てて駆けつけたが手遅れ、すると顧千帆はまた引章に誤解されないよう咄嗟に沈如琢について報告に来たとごまかす。「あの方は儀礼局検討・沈銘(シンメイ)のご子息だ、都の名家で音律や舞楽に最も長けている 今回は翰林(カンリン)での文献校正の務めで教坊司で文書を集めているのだ 悪人ではないし、君を追いかけたのも他意はない」「…なぜご存知で?指揮が守ってくれたのですか?」「(はっ!)指揮ではありません、副使ですよ!出世されたのです!」陳廉は慌てて話を遮り、引章をなかば強引に奥へ連れて行った。三娘は引章が男に追いかけられたと知り驚いた。「どうして言ってくれなかったの?!」「何もされてないから大丈夫」しかし三娘は引章を心配し、顧千帆に本当に問題のない男なのかと食い下がる。「そうだ!売り上げが落ちたのはあなたのせいね?!何か手を回したの?!」顧千帆は今度は三娘に誤解され、仕方なく自分のせいだと認めて帰ってしまう。すると見かねたパンRが顧副使は無関係だと教えた。「理由なら分かったの」 その夜、屋敷に戻ったパンRたちは店の方針について話し合った。しかし思いがけず三娘と引章の意見がぶつかり、言い争いに発展してしまう。喧嘩両成敗、パンRは三娘の口の悪さを指摘し、他人はともかく友を傷つけては駄目だと叱った。また引章は店への出資が多いが、だからと言って三娘を蔑ろにしてはならないという。「もう忘れたの?病の三娘があなたを助けに行ったことを…」すると引章は急にひざまずき、自分を救い出してくれた2人の恩人に改めて頭を下げた。驚いたパンRと三娘は引章を立たせようとしたが、足を滑らせ転んでしまう。これを機に3人は大笑い、いつの間にか仲の良い姉妹に戻っていた。パンRは今さら店舗を引っ越す余裕がなく、改装すると決めた。まず空間を2つに分け、下の階には数席ほど用意し、安い散茶で客を引き寄せる。しかし上の階では以前よりも高級な茶を出し、文人たち向けにすることにした。「私たちの中で引章が一番、有名よ?だから茶坊は引章を中心に作るの、まずは店の名を変えましょう 引章はもう給仕をしなくていい、上の階を貴賓室にしてそこで演奏するの 1日に弾くのは3曲にして、暇な時は銭王太妃仕込みの生け花をする そうすれば文人や墨客たちが押し寄せるわ」するとパンRは昨夜のような揉め事が起こらないよう、取り決めをした。厨房の責任者は三娘、パンRは店の経営、引章は芸事や装飾を担当し、他のことは3人中2人の同意を得て決める。「女子(オナゴ)の商いは男より難しいもの、茶坊がまた損を出しても耐えられる?」つづく( ̄◇ ̄;)何というか…ほにゃらら先生の長台詞みたいだわw
2023.03.10
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