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第46話「疑念」

楼犇(ロウベン)の暗示で父が鉱山にいると突き止めた程少商(チォンシャオシャン)。
こうして曲陵(キョクリョウ)侯・程始(チォンシー)は無事に救出され、屋敷へ戻った。
「銅牛(ドウギュウ)県の件で家族まで巻き込むとは思わなんだ…」

あの日、程始は顔忠(イエンジョン)と相談の上、陥落した場合に備えて精銅を城外に隠すことにした。
しかし道中で馬忠(マーロン)の襲撃に遭い精銅を奪われ、顔忠一家は殺されてしまう。
程始は応戦しながら逃げ出し、草むらで気を失った。
やがて小屋の中で目を覚ますと楼犇がいたという。

何でも李逢は顔忠と程始が精銅を携え投降したと罪をなすりつけたという。
驚いた程始は帰還の機会を探ったが、楼犇から止められた。
馬栄の偵察に見つかれば殺されることは必至、釈明の機会を失えば程家も皆殺しになってしまうという。
「汚名をすすげばまた家族団欒ができると…それで小屋に身をひそめていたんだ」
それにしても楼犇はなぜ程始を見逃したのか。
まだ良心が残っていたのか、それともかつて弟と婚約した嫋嫋(ニャオニャオ)への情けなのか。
今となっては程始にも分からなかったが、その時、息子が目を覚ましたと聞いた老夫人が駆けつけた。

母は相変わらず大袈裟で馬鹿力だった。
息子の傷が癒えていなくてもお構いなし、大泣きしながら叩きまくる。
「この親不孝者!お前を助けるためにへそくりまで使ったよ?!
 あの宝物がなければお前の娘はどうやって路銀を工面できたと?!」

「そうです、君姑が節約に励んだおかげで今の程家があるのです」
「さすがは蕭元漪(シャオユエンイー)ね…」
程始は手を取り合う母と夫人の姿に目を丸くし、自分が留守の間に一体、何があったのかと首を傾げた。

その頃、少商は都を離れる楼垚(ロウヤオ)を見送るため城門にいた。
皇太子も故郷へ戻ることになった楼太傅と別れを惜しんでいる。

「″程娘子″、君は悪くない、全ては大兄の自業自得だ」
「なぜ赴任先を驊(カ)県にしたの?」
「驊県にいる時が人生で1番楽しかったから…
 でももう一度、選べるなら、君に出会わず、驊県にも行かない人生がいい」
いくら道理の分かる楼垚でも、今はまだ少商と向き合う余裕がなかった。
まさか少商が推挙したおかげで赴任が叶ったとも知らずに…。



一方、楼伯夫人は実家へ帰されていた。
楼犇の遺言を知った楼家の長老たちは楼太傅が子弟の前途を阻んで災いを招いたと糾弾したが、楼太傅は全て妻に責任転嫁したという。
「まさに″同じ森に棲む鳥も難に遭えば各自飛ぶ″ね…」※夫妻本是同林鳥 大難臨頭各自飛
しかし凌不疑は王延姫(ワンイエンジー)は違ったと教えた。
実は王延姫は身ごもったまま夜の川に入水し、未だ行方知れずだという。
少商は自分に良くしてくれた王延姫の末路を思うと胸が痛んだ。
「私のせいね、思えばあの時、父のことばかり案じて慰めの言葉さえかけなかった…
 子晟(ズーション)、栄華は求めない、平穏ならいいの、あなたは道を踏み外したりしないでね
 絶対、後悔したくないから…」
不疑は黙ったまま何も言わなかった。
「どうかした?」
「…阿母が病なんだ、一緒に来てくれるか?」



凌不疑と少商が杏花(キョウカ)別院に到着する頃にはすっかり日も暮れていた。
すると今日も崔祐(ツイヨウ)将軍が霍君華(フォジュンホワ)の相手をしてくれている。
霍君華は息子の顔を見ると嬉しそうに手招きした。
「阿狸(アーリー)!杏仁菓子を作ったわ、食べてみて!」

少商と崔祐は母子水入らずにして回廊へ出た。
未来の君姑は元気そうに見えたが、崔祐の話では命の灯火がすでに消えかかっているという。
霍君華は早産で生まれつき病弱だった。
危険を承知で凌益(リンイー)のために命懸けで息子を産み、結局、こんな末路を迎えることになったという。
「子晟も早産だった、当時は皆が長生きしないと心配してな
 一方、霍家の奥方の産んだ子女たちは皆、健康で身体も丈夫だった
 そこで験担ぎのため息子に用意した名を取り替えたのだ」
こうして霍翀(フォチョン)の息子・阿猙(アージョン)は″不疑″から″無傷(ウーシャン)″へ、阿狸は″無傷″から″不疑″へ名を変えた。
不疑と無傷は良く似ており、霍君華は2人にそっくりな格好をさせてはどちらが息子か当てさせたという。
凌益は息子を数える程しか抱いたことがなかったせいか、時に間違えることがあった。
しかしいくら外見が似ていても、性格はかけ離れていたという。
一方は腕白で駆け回り、一方は物静かで理に明るく、書や習字を好んだ。
「阿狸は杏仁が好きでな、阿猙は杏仁に触ると発疹が現れるのに木に登って摘んでやっていた」

崔祐は改めて少商に子晟のことを頼み、自分からも嫁荷を贈りたいと申し出た。
少商は嫁荷なら十分だと遠慮したが、崔祐はあの裕昌(ユーチャン)郡主に対抗するには嫁荷が多ければ多い方が良いという。
「郡主は琴棋書画、料理や裁縫にも通じる、そなたは?鶏のごとき鎧を縫ったそうだな?
 子晟は将官らの笑い物になっていたぞ?」
崔祐は少商の地雷を踏んだ。
( ー̀ωー́ )<崔舅父、あなたとは縁が切れましたので見送りは不要です…
少商は鶏ではなく鴛鴦だと捨て台詞を残して帰ってしまう。
「あの子娘、ふっ、面白い」
すると帰りの馬車の中、不疑は身体中に発疹が現れ、倒れてしまう。

凌不疑は杏仁を食べて熱を出した。
梁邱起(リャンチゥチー)と梁邱飛(リャンチゥフェイ)は明日になれば治ると聞いて安堵したが、若女君が早々に帰ってしまったことが気にかかる。
「彭坤(ポンクン)が孤城の真相を白状すれば若主公もわだかまりを捨て、成婚できるさ」
その時、寝所から不疑がふらつきながら現れた。
「廷尉府から身柄を奪うぞ」

凌不疑は廷尉獄に収監された彭坤を連れ去り、北軍獄で拷問した。
彭坤は確かに出世のため乾安王を殺したと認めたが、孤城の陥落は完全に霍翀の運が尽きたからだという。
これに不疑は激怒、思わず彭坤の首をつかんだ。
「凌益に関係があると言ったな?!どういう意味だ?!孤城陥落は凌益が呼応したからか?!」
「ふん、すっかり文(ウェン)氏の犬になったのか?実の父親にまで噛みついて功績を求めるとは」
不疑は彭坤の首を締め上げたが、ぎりぎりのところで手を離した。
「死んだ方がマシだと思わせてやる」
すると不疑は拷問の道具を手にした。

一方、少商は杏仁で熱を出した子晟を怪しみ、悶々としていた。
すると夜更けというのに皇后が訪ねて来る。
「最近、体調が悪くて眠りも浅くてね、まだ部屋の灯りが見えたから来てみたの」
少商は皇后が皇太子を心配していると分かった。
王淳(ワンチュン)、文修君(ウェンシウジュン)、五公主に続き、楼太傅まで騒動を起こして失脚、確かに東宮は無関係で済んだが、皇太子の心中は察して余りある。
「私の調査のせいで殿下にご迷惑が…私を責めないのですか?」
「なぜ責める必要が?…余が若い頃、そなたのように勇敢なら両親を救えたかもしれないわ」
そこで少商は皇后に子晟のことを聞いてみた。
「皇后…子晟は幼い頃から物静かで落ち着いていましたか?」
「そうね、子晟は朗らかな子で、無傷は寡黙で大人びていたわ
 でもあんな事になって子晟は無傷のように笑わなくなったの
 以前、子晟は死んだ無傷の分まで懸命に生きねばと陛下に言ったそうよ
 あの子は過酷な半生を送った、でも幸いにも余生をあなたと過ごせる」
「…皇后、今夜は一緒にいても?」
「もちろんよ…」



翌朝、少商の部屋に王姈(ワンリン)が押しかけて来た。
王姈は夫を助けて欲しいと嘆願、恥も外聞もなく少商に泣きすがる。
「あの人の子を身ごもっているの…お願い、私を助けて!」
高貴な育ちでも家庭の温かさを知らずに育った王姈、そんな王姈にとって彭坤は誰より情の厚い夫だった。
しかし少商は今回ばかりは力になれないと冷たく追い返す。
王姈は諦めて立ち上がったが、どうやら少商は十一郎のことを何も知らないのだと分かった。
「凌子晟こそ、この世で最も腹が読めず、最も恐ろしい男よ?
 都に夫の内偵は多い、夫が言ってたわ…」
王姈の話を聞いた少商は…。

つづく


(Ŏ艸Ŏ)ウオオオオオオオオ~!フラグ立ちました!
それにしても鶏がここまで尾を引くとはねwww





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最終更新日  2023.11.19 21:39:05
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