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腹痛を主訴として病院を受診する患者はいっぱい居ます。たいていはたいした病気ではなく、治療の必要もない患者が大半です。でも、中には命に関わる病気もあります。もちろん腹痛だけではなく、頭痛など、他の症状でも同様です。可能性だけなら、どんな可能性だってあります。 時に命に関わるからと、何らかの症状がある患者がすべて救急車を呼んだら、日本の医療は崩壊するでしょう。崩壊するようなことを義務と認定する裁判所と言うところは、医療を崩壊させたがっているように見えます。記事からは分からないこともあるのかもしれませんが、以下のような判決を受け入れてまで医療を続ける必要はないのではないでしょうか。子宮外妊娠の女性死亡 愛知・岡崎市に賠償命令 朝日新聞デジタル 岡崎市民病院(愛知県岡崎市)での受診直後に子宮外妊娠による出血で死亡した同市の女性(当時36)の遺族が、市と医師に7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、名古屋地裁であった。堀内照美裁判長は、病院側が子宮外妊娠の可能性を伝えなかったため、処置が遅れて死亡したと認定し、市と医師に約6700万円の支払いを命じた。 判決によると、女性は2007年10月3日、妊娠を疑って同病院で検査を受けた。女性が帰った後の同日夕には検査結果が出て、担当した女性医師は子宮外妊娠の可能性に気づいた。 翌4日朝に女性から腹痛を訴える電話があり、午前11時に来院することになった。女性が病院に来ないため、病院は何度も女性に電話したが通じず、午後1時に女性から「腹痛で動けない」と電話があった。病院が救急車を呼んだが、女性は自宅で意識を失っていて、5日に出血性ショックで死亡した。 判決は、最初に腹痛を訴える電話があった時点で、女性は危険な状態だったと指摘。子宮外妊娠の可能性が高いことや危険性を具体的に伝え、できるだけ早く来院するよう勧める責任があったと結論づけた。 堀内裁判長は「適切に伝えていれば、迅速な手術と治療で救命できた可能性が高かった」と述べた。 同病院は「判決文を見ていないのでコメントは差し控える」としている。 最近訴訟に関わることが多くなってきて、科学畑の考え方と法律家の考え方にかなりの隔たりがあることを実感しています。科学畑の人であれば、可能性は確率で考えるのに対し、法律家は、可能性があるか無いかで考えます。 記事だけから判断すると、そもそもは単に妊娠しているかどうかを調べただけのようです。そして妊娠が分かった訳ですが、その時点で子宮外妊娠を疑うはずはありません。、翌日腹痛があるとの連絡を受けたときにはいろいろな可能性も考えて、受診の予約をしたのでしょう。でも、この時点で手遅れになりそうな子宮外妊娠を強く疑うというのは無理ではないでしょうか。当日に受診するように言ったのであれば、ミスとは言えないと思います。 妊娠していれば子宮外妊娠の可能性はありますから、可能性を問われれば、産科医は可能性はあると答えてしまいます。そうすると、可能性があり、予見可能だったのに放置したことになってしまうわけです。実際には、妊婦の腹痛の原因は子宮外妊娠以外にもいっぱいあります。ここでは子宮外妊娠のことなど触れても居ません。また、子宮外妊娠だったとしても、いつ破裂して大出血を起こすのかを知ることはできません。 屁理屈であることを承知で書きますが、妊娠すれば子宮外妊娠に限らず、いろいろな原因で死亡する可能性があります。それを承知で妊娠させたのであれば、死ぬ可能性を予見できたのに漫然と妊娠させたことになります。 結婚すれば、いずれ妊娠する可能性は高いでしょう。それを止めずに漫然と結婚に同意した親族が居たのであれば、やはり死ぬ可能性を予見できたのに漫然と結婚させた落ち度があります。 記事の判決は、蓋然性に差があることは認めますが、上の屁理屈と同じ種類の判断だと思われてなりません。2月1日追記 「記事からは分からないこともあるのかもしれませんが」と書きましたが、Yosyan先生によると、いろいろと記事からは分からない事情がありそうです。事実関係については留保とさせて下さい。それでも、ハイリスク・ローリターンの現状はおかしいと思いますので、高額賠償の判決に同意できないことに変わりはありません。
2012.01.31
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原発事故は大変な出来事ではありますが、現在までのところ、健康被害が問題になるような大量被爆した一般人は発見されていない模様。それでも、原発事故による放射線被害を、実際以上に見せたがっている人たちが居るようで、それほど心配ないという発言をすると御用学者と言われてしまう。(反論もいくつか載せておかないと信じてしまう人も居そう) そのような中で、ただでさえ不安で仕方のない人たちが誰を信じていいものか分からなくなって、インチキに引っかかるのだろう。不安のあるところ、必ずインチキ商売が手を伸ばしてくる。 ホメオパシーやEM菌などの怪しい放射線対策は以前から警鐘が鳴らされていたが、なかなか購読者の多い一般紙では取り上げられなかった。でも、今回、朝日新聞がきわめて怪しい放射線ビジネスを取り上げた。明らかにインチキと思われるものだが、不安なときには見抜けないものだろう。「髪の毛で内部被曝調べる」検査業者横行 実際は不可能朝日新聞デジタル 「髪の毛で内部被曝(ひばく)の状態がチェックできる」という検査が、福島県内の幼稚園や保育園で広がっている。内部被曝量は毛髪では測定できないが、検査業者は「被曝だけでなく、がんや心の悩みもわかる」と説明。昨年夏以降、500人以上が受けたという。民間の保育園でつくる日本保育協会福島県支部は詐欺の疑いもあるとして、注意を促す通知を出した。 この検査は、東京都内のペット用品業者が設立した「日本QRS健康管理協会」を窓口に、超音波検診を行う「生理科学研究所」などが、1人当たり8400円で請け負っている。 業者によると、3~4センチの毛髪20~30本を量子共鳴分析器(QRS)という装置に乗せて微弱な電流を流せば、ヨウ素やセシウム137、ストロンチウムなど8項目の内部被曝の状態が、マイナス20からプラス20の数値で出るという。一定レベル以上であれば、医療機関への受診を勧めるという。 「被曝だけでなく、がんや心の悩みもわかる」と言う発言だけでインチキと判断するくらいの分別は欲しいと思うのだが、それは不安の渦中にいないから言えることなのだろう。 最近は減ってきたように思うが、放射線不安をあおる人々は、事実上インチキ業者を支援していることを自覚して欲しい。また、実際にインチキ業者と提携して不安をあおる団体もあるので、たとえ不安に思っても、そのような団体の言動に惑わされないで欲しい。
2012.01.27
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今年の全日本卓球では、ビックリすることばかりだった。まずビックリしてのは、ついに男子でも一般の部で小学生が勝利を納めたこと。男子は、成人と小学生の体格差が大きい。女子では勝負になっても、男子は無理だろうと思っていた。でも、小学6年生の出雲卓斗選手は、史上初めて一般の部で勝利を挙げた。それも二回も。 女子の小学生トリオは今年も健在で、小学5年生の伊藤美誠・平野美宇選手が3回戦まで進出し、小学6年生の加藤美優選手は5回戦に進出して、昨年のチャンピオンの石川佳純選手に敗れはしたものの、一ゲームを取った。平野美宇選手はジュニアでは決勝戦まで進出し、準優勝に輝いた。 一般の女子シングルスでは、今まで決勝にすら進んだことのない福原愛選手が優勝。今までは世界ランクから言ったら優勝候補の筆頭であり続けたのだが、石川選手に世界ランクでも抜かれたことで重しが取れたのかも知れない。でも、今年の福原選手は鬼のように強かった。ほとんどすべてのボールをライジングで捉えて、相手に何かをする時間を与えない。 いろいろと予想外の展開が多かった大会だったが、男子シングルスだけは盤石と思われた。水谷を破るとしたら、岸川聖也か張一博の両選手だろうと思っていたが、決勝の相手は吉村真晴という選手。誰、それ。 水谷選手は準決勝まで、一ゲームしか落としていない。桁違いの強さを発揮して勝ち上がってきた。無名の選手がバカあたりすることはよくあるが、決勝だけはわけが違う。優勝が目の前にちらつくと、どうしても力が入り、バランスを崩して勢いが止まるものだ。善戦することはあっても、勝ちきることは無理だろうと思っていた。そして、最終ゲームの終盤、水谷がポイントを連取してチャンピオンシップポイントを握り、勝負は決まったかと思われた。ところがそこから大逆転。並外れた精神力を持った高校生が新チャンピオンとなった。 私、見くびっておりました。謹んでお詫び申し上げます。
2012.01.22
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HIVキャリアの看護師を退職させることについては以前取り上げたことがあるのですが、裁判になったら病院が負けるだろうと思っていました。そうしたら、似たような事例が実際に提訴されました。たぶん勤務先の病院が負けるのでしょう。日本が法治国家であれば。 「たぶん」と言う言葉には、私の、この国の司法関係者への不信感が込められており、本来なら勤務先の病院の対応は完全にアウトだと思います。 ただし、大学病院については事情が違います。紹介元の病院に患者の病態を知らせるのは通常のことで、非難されることではありません。今回はたまたまそれが勤務先の病院でもあったと言うことです。勤務先の病院では、あくまでその情報を患者情報として扱い、従業員の労務管理の情報として扱ってはいけなかったということでしょう。HIV:「感染で退職強要された」看護師が2病院提訴 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染の検査をした病院が、感染を無断で勤務先の病院に伝え退職を余儀なくされたとして、九州の20代の看護師が両病院を経営する2法人を相手に、慰謝料など計約1100万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。厚生労働省が都道府県に出したガイドラインは、医療現場を含めた職場でHIV感染が就業禁止の理由にならないと定めている。原告弁護士や専門家によると、医療従事者である看護師がHIV感染と退職を巡って提訴するのは初めてという。 提訴は11日付。訴状によると、看護師は九州の総合病院に勤めていた昨年6月、目に異常を感じ複数の病院を受診。その後勤務先の総合病院にかかり、8月、紹介された大学病院での診察でHIV感染の可能性が浮上し、検査で陽性と判明した。 看護師はHIV治療薬の副作用による体調不良などで一時的に病欠したが、大学病院の医師から「注射などで自分を刺して患者を刺すことはあり得ず、あったとしても感染させるリスクは小さいので上司に報告する必要もない。看護師を続けることは可能」と言われ、出勤した。 しかし、勤務先の病院幹部らから「HIVが陽性という報告を受けた。患者への感染リスクがあるので休んでください」「業務規定では90日以上休むと退職扱いになる」などと言われ、大学病院から勤務先に感染の事実が伝わっていることを知った。看護師は休職し、11月末、病院を退職した。看護師は「診療情報が患者の同意なく別の病院に伝わったのは医師の守秘義務に反する」と主張している。 大学病院と看護師が勤務していた病院は「訴状を見て対応したい。現時点でコメントできない」としている。【金秀蓮】 ◇HIV ヒトの免疫細胞を壊すウイルスで、進行するとエイズ(後天性免疫不全症候群)を発症する。90年代前半までは感染すると死に至る「不治の病」と言われたが、抗HIV薬の開発や治療法の進歩で死亡率は減少。エイズの発症を防ぐことができるようになり、厚生労働省は「コントロール可能な慢性疾患」と位置づけている。毎日新聞 2012年1月13日 2時39分(最終更新 1月13日 8時54分) (この記事は前エントリのコメント欄でPちゃんさんに教えていただきました) 患者の個人情報は守られるべきですが、実際には勤務先には病気のことはすぐに分かります。休業するには通常診断書が必要だからです。ですから、使用者(雇い主)はその情報を適切に扱う義務があるのでしょう。不当に利用してはいけないと言うことです。 厚労省のガイドラインを見ても、勤務先病院の対応はダメダメですね。もちろん医療機関もガイドラインの例外ではありません。 ちなみに、私の勤務先の健康診断では、HIV検査は行いませんが、HB、HCは行います。職員の中に陽性の人は居ますが、普通に病棟で働いています。
2012.01.14
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前回怪しい代替療法について書いたばかりだというのに、やってしまいました。あろう事か、うちの病院自体が怪しげな広告の載っている雑誌を配布してしまったのです。 つい最近、整形外科医から、問題のある広告の載ったテレビ番組表が患者談話室に置かれていると報告がありました。実際に見てみると、ひと月分のテレビ番組表の載った小冊子のフリーペーパーです。 番組表とほんの少しの記事らしきもの以外は、すべて広告です。そして、その内容の半分以上は代替医療で、残りもオカルト関係が多く、病に疲れた人にとっては頼りたくなりそうな内容です。 特に危険なのは、やはり癌治療でしょう。医師から根治不可能な癌だと告げられれば、「○○で治るよ」と言う言葉に心は揺らぐでしょう。そのような癌治療に関するものだけでも6種類ありました。 もちろん「○○で治るよ」と言うようなストレートな表現ではなく、「癌は治ります。そのためには免疫力がナンタラカンタラ。免疫力なら○○」と言う具合。これだと法的には問題ないのでしょうが、治ると言われれば何にでも飛びつきたい人にとっては「○○で治るよ」と言われたのと同じでしょう。 内容を確認した後、すぐに事務に連絡し、今後は配布しないようにしました。患者サービスの一環としてテレビ番組表を配りたいという気持ちは分かりますが、配布する前に内容を確認して欲しいものです。 追加情報として、医療紛争専門の弁護士の広告もいくつかありました事をお知らせしておきます。急に配布をやめると、勘ぐられるかも知れませんね。
2012.01.12
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