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リスクの伝達は悩ましいものがあります。大きく見積もればパニックを引き起こす恐れがありますし、小さく見積もれば被害を大きくする恐れがあります。でも、自分たちの見解を公表したら実刑をくらうとまで予想する科学者はいなかったでしょうね。ついこの間までは。伊地震判決:日本の科学者に波紋 予知失敗で禁錮6年 毎日新聞 2012年10月23日 21時55分 09年に起きたイタリア中部ラクイラの大地震を巡り、地震前に発生のリスクを議論した伊政府の委員会メンバーだった地震学者らに、禁錮6年(求刑同4年)を命じた現地の判決は、世界最悪レベルの地震リスクを抱える日本の科学者にとっても人ごとではない。 昨年、現地で遺族や被告の科学者らに聞き取りをした大木聖子・東京大助教(地震火山情報学)は、「非常に厳しい判決と思う。(伊委員会の)議論はリスクに触れていたが、行政側はパニックを防ごうと『安全宣言』した。訴追された科学者が利用された印象だ」。その上で「現地では地震が増えれば車で寝る習慣があり、リスク情報が伝わっていれば助かった命もあったはず」と指摘する。 山岡耕春・名古屋大教授(地震学)は「本来科学者の議論は自由であるべきなのに、責任が前面に出るとそれが阻害されてしまう」と話す。 東海地震で予知情報の発信を目指す気象庁長官の諮問機関「地震防災対策強化地域判定会」の阿部勝征会長(東京大名誉教授)は、23日の定例会見で判決への感想を問われ、「地震予知は現時点では非常に難しいが、不可能だと証明されたわけでもない。可能性がある以上は最善の努力を尽くし、見逃さないようにしたい」とした。 東日本大震災を予測できなかった反省から、地震学者の中には東海地震の予知体制を改めるべきだとの声もある。【八田浩輔、池田知広】. この件に関しては多くの報道がありますが、この記事を選んだのは以下の理由から。まず、委員会はリスクに触れていたが行政側がパニック対策として安全宣言を出したとしていること。もう一つ、地震の時には車で寝る習慣があったことに触れていること。 繰り返す地震によってエネルギーが解放され、大きな地震が起きにくくなると判断されたようですが、それ自体はあながち間違いとは言えないような気がします。というより、科学者がそう判断したのであればそうなのでしょう。(訂正。これは誤りのようです)そして、その見解を公表することに問題はないはずです。それが安全宣言という形でリスクがゼロであるかのように発表されたとすれば、責められるべきは行政であり、科学者ではないでしょう。 また、車の中で寝ることで被害を防げたという判断には、簡単にはうなずけません。日本で大地震の後に余震が続いたときにいつも見られることですが、車で寝ることで肺塞栓症を起こして亡くなる方が結構いるのです。リスクを多く見積もって実際には大地震が来なかったとき、家で寝ていれば助かった命が失われた可能性はあるでしょう。 結局はこの有罪判決というのは大地震が起きたことを受けての結果論です。いつも私が言っている後出しジャンケンですね。こんなことをすれば、今後リスクに絡むことで協力する科学者はいなくなるでしょう。たとえ不確かな部分があるとしても、確率から見たら、科学者の見解は重要だと思いますけどね。
2012.10.24
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ウイルスによって他人のPCを乗っ取り、強迫メールなどを送りつけた真犯人が犯行声明を出したとのこと。この件に関しては、無実の人が4人も逮捕されていて、うち二人は犯行を認め、動機まで「自白」しています。犯行声明があったから冤罪と分かったものの、そのままだったら名誉回復の機会はなかったことでしょう。 真犯人が卑劣だというのはもちろんですし、安易にソフトをダウンロードしてはいけないとも思いますが、私が一番感じたのは、人間はやってもいない犯行を動機まで含めて「自白」するということです。 つまり、今まで有罪判決を受けてきた「犯罪者」のうち、明らかな物証が無く、自白によって有罪とされた人たちは冤罪かも知れないのです。 実を言うと、こんなことは過去の冤罪事件から分かっていたことでした。でも、日本の司法は未だに自白偏重で、メディアもたまに批判的な記事を載せるものの、多くの事件では警察の発表をそのまま報道しています。(脱線ですが、ニュースでは「間違い有りません」と認めたとされることが多いが、今時そんな言葉遣いをする人はいるのかと、いつも疑問) 今回は分かりやすい事例なのか、自白に頼る捜査の危うさを自覚しているように見えて、今後に少し期待をしています。PC遠隔操作:逮捕の2人一時否認…「声明」言及の事件 毎日新聞 2012年10月15日 23時08分 パソコンの遠隔操作ウイルス事件で、秋篠宮ご夫妻の長男悠仁さま(6)が通う幼稚園や横浜市の小学校に襲撃予告のメールを送り付けたとして、威力業務妨害容疑で逮捕された男性2人が一時、捜査当局の取り調べに容疑を否認していたことが、捜査関係者への取材で分かった。2事件ともTBSに送り付けられた犯行声明で関与に言及している。 神奈川県警によると、6月に横浜市のホームページに小学校への襲撃予告を書き込んだとして、男子大学生(19)を逮捕。当初は「やってない」と否認したが、その後、横浜地検に「楽しそうな小学生を見て困らせてやろうと思った」と容疑を認めたという。すでに保護観察処分が決定しているが、県警は一連の経緯について調査を始めた。 一方、8月に秋篠宮ご夫妻の長男悠仁さまが通う幼稚園への襲撃予告を送信したとして、警視庁に逮捕された福岡市の無職男性(28)もいったんは「同居の女性がやった」と関与を否定していた。しかし、その後は容疑を認め「就職活動で不採用になったのでむしゃくしゃしてやった」と具体的に動機を説明。さらに有名子役タレント事務所への脅迫メールを送信したことも認め、再逮捕されていた。ただ、地検の調べには否認していたという。 警視庁はこれまで「容疑を認めており、大阪などの事件とは異なる」と強調していた。ただ、今回の「犯行声明」は、犯人しか知り得ない詳細な内容で、実際に送り付けられたメールと全文が一致していた。捜査の見直しを迫られる可能性もあり、捜査幹部は「動機もきちんと供述していたのに」と困惑した様子で話した。【小泉大士、喜浦遊、松本惇】 ◇警察庁が否認事件調査を指示 警察庁は15日、過去4年間に立件した同様の事件について成り済ましの可能性がないか調べるため、否認事件などを洗い出すよう全国の警察本部に指示した。08年4月以降に偽計・威力業務妨害や脅迫容疑などで立件された事件が対象。容疑者が否認したまま起訴されたケースなどを洗い出し、供述の不審点の有無などを調べるとしている。
2012.10.20
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ここのところブログ名とは関わりのない話題ばかりなので、たまには医療報道を斬ってみます。麻酔と誤って止血剤注射…信大付属病院 信州大医学部付属病院(松本市)は10日、80歳代の男性患者に皮膚の移植手術をする際、局所麻酔で別の止血用薬剤を誤って注射する医療事故があったと発表した。患者は手術中に心拍数や血圧が上昇し、一時意識不明となったが、集中治療室で治療を受け、回復に向かっているという。 同病院によると、患者は動脈が詰まり、足がただれる重症下肢虚血で今月3日、左足に脇腹の皮膚を移植する手術を受けた。手術前、担当医師が局所麻酔用の薬剤リドカインEを注射するはずが、看護師は生理食塩水で希釈した止血用のアドレナリン注射薬が入った注射器3本(計30ミリ・リットル分)を渡し、医師がそのまま注射した。 看護師はアドレナリン注射薬を希釈中に医師から「局麻(局所麻酔薬)下さい」と言われ、手元の注射薬を求められたと思って手渡した。お互いに声に出して薬剤名は確認しなかった。別の看護師がアドレナリン注射薬の量が少ないことに気付き、ミスが分かった。 男性患者は手術後半に心拍数や血圧が上がり、終了後に検査した結果、ストレスなどで心臓の筋肉が動かなくなるたこつぼ型心筋症と診断された。止血剤を注射したことが原因とみられるという。患者は快方に向かっているが、現在も集中治療室で治療を受けている。 記者会見した天野直二病院長は「二度と繰り返さないよう、速やかな再発防止策を講じたい」と陳謝した。 (2012年10月11日 読売新聞) 当初の予定ではリドカインEを注射するはずだったとのことです。リドカインEにもアドレナリンは入っていますから、止血用のアドレナリンの濃度が分からないと、アドレナリンが予定よりも過量投与となったのか分かりません。 また、手術を行ったのですから、当然局所麻酔薬は投与されたのでしょう。そのとき、予定通りリドカインEを使ったのであれば、更にアドレナリンを投与したことになります。そんな馬鹿なことはしないとは思いますが、書かれていない以上、疑いは晴れません。 中日新聞の記事では、局所麻酔薬を投与し直して手術をしたことが記されていますが、薬剤名は書かれていません。 毎日新聞の記事では、止血用に用意されたのは0.01%のアドレナリン希釈液とのことです。これはリドカインEよりも一桁濃度の高いアドレナリンを含みますので、10倍のアドレナリンを投与したことになります。 結局読売の記事を読んだだけではミスが容態悪化の原因かどうかすら分かりません。また、3社の記事を読んでも、使われた局所麻酔薬が何であったのか不明です。いつものことですが、知りたいことが書かれていない記事を見ると、じれったくなりますね。
2012.10.12
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大野病院の医師逮捕事件の時は、福島県の医療が崩壊しても同情しないと思っていた。原発事故の後では、何とか福島県を応援したいと思っていた。でもまた、福島県が嫌いになりそうだ。院長「謝罪の必要ない」 怒りの遺族、退席相次ぐ 双葉病院50人死亡 2012.9.30 20:04 産経ニュース 政府事故調の報告に続き、双葉病院は病院側の責任を否定したが、鈴木市郎院長(78)が「謝罪の必要はない」と話すなどしたことに遺族側は激高。途中で退席する遺族が相次いだ。 「亡くなったことに対しては謝罪はなかった」。ドーヴィル双葉にいた姉=当時(79)=を亡くした会津美里町の男性会社員(67)はそう憤る。男性会社員によると、説明会で鈴木院長は「謝罪の必要はない」「家族が病院側に安否を問い合わせるべきだ」と神経を逆なでするような発言をしたという。男性会社員は公開質問状の提出を検討する考えを示した。 浪江町の主婦(53)は双葉病院にいた兄=当時(62)=を亡くした。事故後1カ月以上たってから来た電話は兄が転院先で死亡したという連絡だった。「もう少し早く連絡がほしかった。誠意がない」と吐き捨てた。 同病院で弟=当時(65)=を亡くした埼玉県越谷市の主婦(68)は1時間余りで説明会を途中退席した。「今までの経過説明だけ。新しい話はなかった」と不満を漏らした。 また、ドーヴィル双葉で祖父=当時(92)と祖母=同(88)=を亡くした大熊町の男性会社員(33)は「どういう経緯で亡くなったか聞きたかったが、何もない。墓前に報告したかったが…」と不満そうに話した。 さらに「同じような震災があったときにまた患者をたらい回しにしないためにも、今回の教訓を生かすべきだ」と指摘した。 説明会後、記者会見した鈴木院長は「名誉回復を果たせたと思ったが、『説明よりも謝ってほしい』といわれてショックだった」と話し、以後は口をつぐんだままだった。 双葉病院が避難をするときのことはネット上でも話題となっているし、本(未読)も出ています。当初は患者を見捨てて逃げたと報道されましたが、実際には過酷な状況の中で精一杯のことをしていたのです。 職員の中には家を失った人もいたし家族を失った人も居ました。それでも患者を守るために必死に働いていたのです。言うべき言葉は「ありがとう」であって、謝罪しろではないでしょう。 実を言うと、引用したのは最も悪意有る記事で、他社の記事ではそれ程荒れた雰囲気を感じません。実際は少数の分からず屋が騒いだだけなのかも知れません。そうだとしても、福島県のために尽くしたいと思う医師を遠ざけるに十分な記事が掲載されましたね。
2012.10.03
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