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小説部門2席「青切りみかん」は最近増えてきた、かつ今後も増えていくだろう介護・福祉をモチーフにしている。時に重苦しくなるこのモチーフを、この作品では沖縄らしいユーモアの中で描いた。年老いた母の思い出と自分の少年時代が重なっていく好短編である。 佳作「君にまた会いたい」は、どういうわけか非常に多くなった多視点型の作品である。目取真俊の「眼の奥の森」の影響なのだろうか?沖縄県の学生を対象にしたビブリオ文学賞の応募作品にもあったし、第7回の佳作 野原誠喜さんの「それぞれの島」もそうである。野原さんは大変才能のある青年で後に新報短編賞をとっている。 さて多視点型であるが、目取真のような傑作は別にして、こういうアマチュアの文学賞にはあまりお勧めでない。よほど効果が出ればいいのであるが、わずか60枚で次々に視点人物が変わるのは煩雑である。「君にまた会いたい」も何人もの目から見た女性でありながら、ほとんど同じ像しか結んでいない。小細工をせずにもっとストレートにいけば、死んだ女性が魅力的なだけにもっと良い作品になったのではないだろうか。
Feb 9, 2014
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小説部門では特にジャンルを制限していないため、多様な作品の応募がある。ただ過去の受賞作の多くはいわゆる「純文学的」な作品が多かった。「純文学的」の定義は難しいが、乱暴に言うと「芥川賞候補になりそうな」「リアリズム小説」であり、「ストーリーよりも人物の内面や描写に重点を置いた作品」、というぐらいだろうか。日本の近代文学の中心を形成してきたタイプの小説である。 もう一方、現在「大衆小説」といういいかたは死語のような気がするのでエンターテイメントと呼ぶなら、「直木賞候補になりそうな」「SFや推理小説などもふくんだ」「細かな内面などよりストーリーの面白さに重点を置いた作品」である。 もちろん上記の分類はいろいろな中間領域などがあり難しいのであるが、その議論はここでの目的ではない。 いわゆる「純文学的」な作品のほうがなぜ受賞しやすいかというと、「純文学的」な作品が価値があるからではなくて、アマチュアにはこちらのほうが書きやすいからである。特に長い人生を歩んでいれば、それなりの私小説的な作品はかけたりする。またこれといってストリーはないのであるが、若いみずみずしい感覚が高く評価されたりする。 一方エンタメは読むのは面白いのであるが、書くのは大変である。偶然の傑作というのはまず出ない。相当の修行をして技術を身に着ける必要がある。一方で一度スキルを身に着けると、量産が可能になる。 今回小説の一席となった「オキナワ・ノート」は初の本格的なエンタメである。タイトルは大江健三郎の有名なエッセイのパロディーであり、noteにはさまざま意味があるが、ここでは「香り」の意味である。香水などの香りを調合する「調香師」が、沖縄を代表する香りを作ることが作品の縦軸なのであるが、そこに香りを軍事利用しようとする自衛隊や米軍が絡んでくるという、あらすじにするとまさに荒唐無稽なのであるが、それがわずか60枚できっちりとした短編になっている。 作者は昨年の「アドニスの新たなる百年」でも二席を受賞した。正直いってダブル一席でよかった作品である。こちらはバイオリンなど弦楽器の作成・修理に携わる職人を主人公として、「アドニス」という架空の楽器ブランドの謎が、徐々に解き明かされていく物語である。本土出身者の沖縄体験がスパイスのように効いていて、沖縄の納豆には練りからしがついていないところなど、私は思わずそうそうと言ってしまった。 また昨年の新沖縄文学賞の佳作もとっている。今後沖縄を基盤とする新しいタイプのエンターテイメントとして中央に進出してほしいし、またその力を十分にもった才能である。
Feb 8, 2014
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入選作品一席 オキナワノート二席 青切りみかん佳作 君にまた会いたい奨励賞 あの夏*奨励賞は高校生まで。最終選考に残った作品「相対性未来」「私は風になる」「無私の碑」「語る風」奨励賞候補作「キジムナーの森」「死んだ君を語る物語」 小説は一作品の分量が多いため、全部で四作品しか入選しない。今年は内容がいいので佳作を増やしましょうというのは許してくれないのである。今年はそれほどでもなかったが、年によってはほとんど差のない作品の、一方が佳作として称賛され、一方は何もなしということになってしまう。大体50作の中から10作品えらばれる最終選考候補の作者に対しては、あなたはもう少しでしたと伝えたいものである。
Feb 3, 2014
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『はなうる』掲載の記事をよみ、このブログを訪れたかたにお詫びします。 ぐずぐずしており、講評はまだできていません。理由は一つ前の記事をご覧下さい。 明日あたりからしっかりやります。
Feb 2, 2014
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複数の方からその後の問い合わせがあった。こういうブログを開いていて放置と言うのは心配をかけてしまう。久々の更新です。 実をいうとこのような大手術を受けた後としては、相当よい事例のようである。しかし私は手術前甘く見ていた部分があった。うまくいけば元通りになるだろうという思いである。これだけ内蔵をとっておいて元通りなるはず無いのである。 二ヶ月ほど前までは、のどの縫合痕が収縮して食事が通らなくなることがあった。食事が苦痛というのは本当につらいことである。また消化器官が短くなったため、炭水化物を食べると意識がもうろうとするようなこともあった。こんな状態が一生続くのか、と思った。 しかし実際には年末から正月にかけて相当改善している。食道に数回バルーンをいれてもらい、食事がのどを通らないと言うことは無くなった。食欲にしてもそれなりに回復して、ある意味以前より良好な体重で安定している。あとは精神的に、この「万全」とは言い難いが、十分に生きていける状態になれていくことだと思う。 幸い私の職業はそう体力をつかうものではない。いままで大教室でもノーマイクでやっていたが、無理せずつかえばいいのである。研究をすすめるについてもほとんど問題ない。 何年ぶりかで訪ねてくれる卒業生が複数おり、本当にはげましになった。また今年の卒論は十分に指導してあげられなかったのに、本当に立派にやってくれた。こういう人々の励ましに答えるためにもいつまでもくよくよしていてはいけない。というわけで今年もよろしくおねがいします。
Feb 2, 2014
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