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学校閉鎖の危機と、私立学校裏事情(前編)
学校閉鎖の危機と、私立学校裏事情(中編)
学校閉鎖の危機と、私立学校裏事情(後編)
それから1週間。
私はアンタルヤ在住の友人で、ふたりのお子さんをデブレット・オクル(国立学校)に通わせてらっしゃるmehtapさんのアドバイスを受け、カレイチから車で5分ほどのデヴレット・オクルも見学に行った。
アンタルヤ市内のデヴレット・オクルの中でも評判の高いこの学校には、父兄の寄付によると思われるが、クリマ(エアコン)や学級文庫なども各クラスに備わっているし、一クラスあたりの生徒数が40~45人というのを聞いて、悪くない印象を抱いて帰った。
もう一つ、この学校に関心を持った理由は、バドミントンがアンタルヤ一だということ。昨年バドミントンのクラブができたばかりのうちのコレジは、2度の試合を通じてコテンパンに打ち負かされてしまったのである。
もし、デブレット・オクルに通わせるとしても、エミのバドミントンはどうにか続けさせてやりたい。コーチを外から呼んでクラブを開いてもらうなど、私に出来ることは何でもするつもりだったから、優秀なコーチがいて実績のあるこの学校には、それだけの魅力があった。
もし、学区制がかなり厳密なもので、居住しているマハッレ(地区)に対応する学校しか選択できないなら、もう行き先は決まっている。なんらかの手立ての余地があれば、この学校は有力候補に思えた。
しかし、ナキル(転入)のカユット(登録手続き)は7月中旬からと、他のどの学校よりも早かった。コレジの動向がはっきりするのをギリギリまで待ちながらも、今から必要な書類の準備や根回しをする必要があった。
カレイチの建物のイスカン(居住許可)手続きに奔走しながらも、私の頭の中は学校のことで一杯だった。それこそ学校をテーマに夜な夜な夢を見るほど。
それから、コレジがデブレット・オクルになるかもというガセネタがあった以外は、学校の売買に関する新しい確実情報はなく、父兄の不安と緊張感ばかりが高まっていった。他のコレジのカユット締め切りまで残すところわずか。顔を見合わせれば、話題は一つしかなかった。
私の中では、デヴレット・オクルに行かせる覚悟ができあがりつつあった。私は娘たちに対しても、コレジに別れを告げ、デヴレット・オクルに移る覚悟をさせておくつもりだった。
学期の終了まで1週間を切り、すでに学校に出てこない生徒や、私服で登校する生徒が多い中、娘たちには最後まで制服を着させ休まず登校させるつもりだった。
「あと1週間で、先生とも友達とも離れ離れになるかもしれないんだよ。だから先生や友達と最後の日までなるべく一緒に過ごしましょうよ」
「その制服を着るのも、もしかしたら最後かもしれないのよ。だから最後まで制服で行きましょう」
と、そういって。
しかし、そんなセンチメンタルなことを考えるのは、私たちくらいのものなのかもしれない。
この木曜日に企画されていたターティル・キョイ(休暇村)へのピクニックは、エミのクラスは、参加希望者はたったエミだけ!ナナのクラスも、ナナを入れてたった2人しかおらず、1年生と3年生だけが学校居残りという残念な結果になってしまった。1週間前からこれを心待ちにしていたエミは、ヤケになってしまうほど失望。
一方の私も、子供が行きたくないからと、もう学校は終わったようなものと、きちんと最終日まで学校に通わせない父兄に失望していた。学校が閉校になるかもしれないという時に、最後の日々を、慣れ親しんだ友達同士で思いっきり遊ばせてやれる機会を放棄してしまうとは。
私はここ1週間、送り迎えの度に校舎を見上げ、花の終わってしまった蔓バラの棚の下をくぐりながら、校庭のそこここに植えられた緑の美しさに目を細め、思わず涙ぐんだりした。
アンタルヤに引越しするや否やエミを5歳児クラスに入学させ、それ以来5年間毎日ナナと通い続けた学校である。日本人として見れば不満はあったが、あらためて客観的に見れば不自由の少ない素晴らしい学校だった。
私は、この学校への愛着が娘たち以上に強かったことを発見して、我ながら驚いたのだった。
****
昨日、木曜日。朝、学校に娘たちを送って行くと、ナナの担任教師が私の元に近づき、満面の笑みで吉報を知らせてくれた。
前日水曜日の午後、 学校が売れた!
こと。買ったのは、地中海地方全域で公共事業など大きな建設事業を手掛ける大手の建設会社。私も、コンクリート・ミキサー車の脇などに入っている赤いロゴで、その会社の名前は知っていた。
建設会社だが、以前にもAコレジが経営危機に陥った時、経営を立ち直らせるため援助した実績があるほど、資金が潤沢で慈善意識も高いらしい。
つまり、 学校はこのまま存続し、今まで以上に良くなる可能性が高いこと。
すでに前日のうちにサインを済ませており、今日(木曜)はノーテル(公証人役場)で必要な手続きを済ませ、一両日中には完全に売買契約が完了するだろうこと。
契約が済み次第、カンパニヤ(キャンペーン)を開始し、カユットも始まるだろうこと。失われた生徒を呼び戻すため、おそらく学費は昨年と同額程度になるだろうこと。
学校の存続を信じ、このドタバタ劇の間もどっしりと構えていたナナの担任教師と、すでに涙目の私はひしと抱き合って喜びを分かち合った。
学校の中は、喜びに満ち溢れていた。どの教師も、廊下のそこここで集まっては明るい会話を交わしていた。
階段を下りて1階に行くと、ちょうどそこにエミのバドミントンの顧問である体育の先生がいて、すぐに私の元に駆け寄ってきた。彼女の顔も満開の花のように輝いている。彼女ともひしと抱き合って学校の存続を喜び合い、今日まで娘たちにどのように話して聞かせ、どのように一緒に覚悟を決めてきたか打ち明けるうち、私の目はみるみる涙で一杯になった。
夫にもすぐにメールで報告。資金繰りが厳しいのは承知しているが、どうか娘たちをコレジに通わせて欲しいとお願いした。
夫からも返事が届く。デブレット・オクルに決定したような素振りだった夫だが、コレジの存続を彼も素直に喜んでくれた。
娘たちの幸せを一番に(妻の私より!)考える夫のこと、きっと何とかしてでも今のコレジに通わせてくれることだろう。
エミは、「今日は、人生で一番幸せな日♪」といった。
昨日午後、学校にて弁護士を挟んでの売買契約が無事成立したらしい。
本日金曜日。新しいオーナーにより、学校の全教師を集めてのトプラントゥ(集まり)が開かれ、そこで正式に挨拶があったという。
学校は今まで通り存続し、新しく生まれ変わること。今まで以上に良くなること。
さらに、教師たちにお金の心配なく生徒の教育に専念してもらうよう、こんな言葉をかけたそうだ。
「教育はあなたたちが。お金は私たちが」
その言葉を伝え聞き、私は再び先生方と抱き合って喜びを分かち合った。
もう2度と、学校が転売されたり競売にかけられたりしないことを。そして、コレジがかつての評判を取り戻し、生徒たちも父兄たちも、胸を張ってコレジの名前を言える日の近いことを心から祈りたい。
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