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2012.11.11
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カテゴリ: 昭和期・後半女性

『小さな貴婦人』吉行理恵(新潮文庫)

 「まー皆さん、聞いてください。」
 で、始まるのは、きわめて関西限定で申し訳ないながら、今は亡き人生幸朗・生恵幸子両師匠の偉大なる「ぼやき漫才」であります。(今、関西限定と書きましたが、便利な時代になったもので、ちょっとチェックをしましたら、ユーチューブでしっかりお二方の勇姿を拝見することが出来ました。)

 「まー皆さん、聞いてください。今や世の中、国挙げてのペットブーム。どこの家も、犬飼うたり猫飼うたり。そこら中でペットペットペット。一方日本の国は今どんどん人口が減ってきて、もはや人間より犬の人口のほうが多いくらいや。この間も、ちょっと朝早う起きて外出たら、玄関出たとたんに道幅いっぱい犬と飼い主だらけ。朝の散歩してはりまんねや。うちの家のそばの河川敷の公園なんか、犬が行列作って歩いとります。河川敷公園の途中にある信号が赤に変わったら、あっという間に犬の大渋滞や。正月お盆のUターンラッシュやないぞっ!」

 ……と、失礼しました。
 ともあれ、世の中は国挙げてのペットブームであります。
 私も今まで、幾つかペットがらみの作品を、本ブログで取り上げてきましたが(例えば尾辻克彦の『吾輩は猫の友だちである』とか)、今回の短編集は、見事に猫の話です。

 現在我が家では、金魚以外のペットは飼育しておりませんが、かつては子供が幼かったこともあって、ハムスターや猫や兎を飼っていた時がありました。
 私自身、犬派か猫派かと問われれば、たぶん猫派だと思います。
 しかしわたくし、今回の短編集を読みつつ、どうしてもその中に入っていけないものを感じ続けていました。あまりに、「猫話」過ぎるのであります。

 登場人物は、中年女性(老女)と猫が基本パターンです。それに何人かの人物が絡んでくるのですが、作品の特徴の一つが、ほぼ男性が出てこない(分かれた元夫ってのは出てきます)ということでありまして、うーん、ひょっとしたらこの筆者は、男になんかこの話は読んで欲しくないと言っているのかと思うほどであります。

 そもそも漱石の『猫』を筆頭に、近代日本の小説にはよく猫が出てきます。(ひょっとしたら、近代だけではないかも知れません。例えば『枕草子』とか、『源氏物語』の女三宮の猫とか。)
 上記に尾辻克彦の作品を挙げましたが、もっと遡れば谷崎潤一郎の『猫と庄造と二人のおんな』とか梶井基次郎の『愛撫』だとか、近代日本文学は猫と極めて高い親和性を持っております。

 もちろんそんな作品には、猫についての描写がいっぱい出てくるのですね。梶井の『愛撫』の中の、猫の耳とキップ切りの話なんて全く絶品であります。
 しかし、本書に出てくる猫の姿はどうも違うんですね。
 それは、登場人物達が、猫に対してだけ心を開いて、他の人間に対してはきわめて「自閉的」であるからでありましょう。そこには、一種「客観性」と呼べるものがほとんど見えません。そしてそれが、いかにも私には読みづらかったです。

 もとより小説とは、一切何を書いてもよい表現形態であります。
 もしも唯一「縛り」があるとすれば、文字表現が作品のおおよそを占めること、くらいでありましょうか。(作品中に絵が入ってくる小説はよくありますし、よく知らないですが、江戸時代の「草子」なんかは、絵の要素がかなり強そうです。)

 私は、自閉的に猫のことばかり書いた小説がルール違反だとは一切思いません。でも、あまりに「趣味的」ではないでしょうか。
 しかし、一方で「小説が趣味的で何が悪い」という声も聞こえそうです。

 で、あれこれ考えたのですが、一体趣味と小説はどのように交差しているのだろうか、と。
 もちろん小説内に、いろんな趣味についての記述は(それも蘊蓄を傾けるほどのものが)しばしば出てきます。
 スポーツ、釣り、賭け事、酒、などから始まって、芸術やそれこそ恋愛(恋愛? 恋愛は趣味なんでしょうか。女遊び、なんて言い方になると趣味っぽいですが)などまでフィールドを広げますと、小説の根幹とかなり重なってきます。

 つまり、小説が人間のあらゆる行為を対象にしている以上、描かれたものが過剰に趣味的であっても、全く問題はないような気がします。
 むしろそんな「過剰さ」や「自閉性」を描くには、猫が一番ふさわしいような気もします。

 なるほど、ひょっとしたら本書の「猫」とは、象徴としての「猫」であるのかも知れません。そうだとすると、それがシンボライズする一種「病んだ魂」は、小説の描く第一専門分野であります。


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Last updated  2012.11.11 17:34:20コメント(0) | コメントを書く
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シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

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