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2014.04.06
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『時間』黒井千次(講談社文芸文庫)

 ……春、ですね。
 ……実に、まぁ、のんびりしますねぇ。……ひねもす、のたりのたり、と……。

 「ひねもすのたりのたり」と書いたのは、確か与謝蕪村でしたか。
 「春」にまつわる有名な文学的文言と言えば、この「のたりのたり」と、「春はあけぼの」が挙がりますかね。もちろん、清少納言の『枕草子』であります。

 先日わたくし、清少納言を取り上げたテレビ番組をたまたま見ていたのですが、今更私がそんなことを言ったところで何の評価の変化もないですが、清少納言の言語センスの素晴らしさに心洗われる思いをしました。
 いやー、やはり千年の時を越えて残る作品には、本当に宝石のような、いえ、宝石などよりも遙かに素晴らしい「美の魂」があることを、改めて学んだ気がしました。

 そんなことをちょっと考えながら、確か高校時代に習った覚えのある「春はあけぼの」の文章を思い出してみたのですが、……えー、確かこの文章は、季節季節で最も素晴らしい時間帯を作者が列挙していったものでしたよね。もう一度順番に書いてみます。

「春はあけぼの=明け方」
  「夏は夜=やっぱり夜」
  「秋は夕暮れ=これもそのまま夕暮れ」


 ……ここまででも、けっこうすごい感覚ですよね。わかるわかる、という感じ。とっても共感できます。
 ところが、次に入った時、思わずはっとするんですね。

「冬はつとめて=早朝」

 ……ここに早朝を持ってくるかー。
 ……うーん、この美意識は実に素晴らしいですねー。
 春から秋までは、わかるわかると言っても、ちょっと「卑俗」な感じがなきにしもあらずでしたが、この「冬は早朝」には、凛々しさというか、厳しさというか、なにか背筋のピッと伸びた張りつめた感じがあります。
 いわば、王朝時代のキャリアウーマンの誇りとでもいった「尊厳」じみたものを感じます。やっぱり清少納言は、素晴らしいですねぇ。

 ……と、……はて、なんでこんな話になったかと言いますと、「春」「のたりのたり」からでありましたが、もちろん総ての春が、のたりのたりばかりしているわけではありません。
 もう一つの春の風物といえば、それは新入生・新入社員であります。(やっと少しだけ冒頭の短編小説集の話題に近づいてきました。いえ、わたくし的には、清少納言→キャリアウーマン→新入社員と、つないでいるつもりなんですがー。)

 新入生の方は、もう大昔の体験で記憶の彼方なので少し置いて、新入社員についてであります。テレビのニュース番組などでも、新入社員の話題があれこれ取り上げられていました。
 新入社員のインタビューの場面が映っていたりするのですが、さてこのインタビューシーンで、彼等の喋っていることが、わたくし、もひとつ、ピンと来ません。
 緊張しているような、甘ったれているような、謙虚なような、消極的なような、そしてこじゃれたような、と……どーも、彼らの言葉が私には実感として響いてこないんですね。
 これは一体なんだろうと、わたくし、考え込んでしまいました。

 というところで、ここで冒頭の文庫本の話に唐突に入っていきます。
 この小説集には、6つの短編小説が収録されているのですが、その総てがいわば「サラリーマン小説」であります。
 いえ、ひょっとしたらこの説明の仕方は正しくないのかも知れません。

 各作品の主人公はすべてサラリーマンでありますが、描かれているのは、職場での、仕事に対する、あるいは同僚に対する「違和感」の様なものでありまして、これは突き詰めていくと、いわゆる「存在の不条理」のようなものに到達しそうです。

 そして「存在の不条理」に到達するということは、すべての文学テーマの王道でありまして、それをわざわざ「サラリーマン小説」と、貶めるような説明をする必要はありません。

 ただ私は、ここに描かれるサラリーマン風俗に対し、何といいますか、上述した新入社員のインタビューに持ったような「違和感」を感じたのであります。
 いえ、これは、作品に対する客観的な評価ではなくて、単なる私の好き嫌いのようなものに過ぎないのだとは思います。

 しかしそれだけに、なかなか拭いきれない感じ方であった気もします。
 ……うーん、たぶん、「ご縁」がなかったんでしょうねぇ。


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Last updated  2014.04.06 13:26:11
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Comments

シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
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