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2015.04.04
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カテゴリ: 明治~・劇作家

『元禄忠臣蔵・上下』真山青果(岩波文庫)

 さて前回は、冒頭の戯曲の読書紹介をしようとして「迷宮」にはまりこんでしまいました。その迷宮とはつまり、江戸時代に「スポーツ競技鑑賞」という娯楽はなかったかどうか、ということであります。

 実は私は、「忠臣蔵」こそが当時の「スポーツ競技鑑賞」であったと考えたかったわけですね。
 それほどに、本書には、当時の庶民達が、まるで阪神タイガースの身びいきファンのように(すみません。別に阪神タイガースファンが身びいきばかりをしているなどとは思っておりません、たぶん)、「浅野さまいとしや、吉良さま憎や」(この歌は実際にあったはやり唄だそうです)的状況にあったことが、これでもかこれでもかと書いてあります。

 そしてそれは、無責任な庶民だけでなく、普通の武士からお上から、果ては公家さんまでが、手に汗握って赤穂浪士の仇討ちを今か今かと待っていた様に書いてあります。
 しかし、これって本当なんでしょうかね。

 だって、当時の武士たちや公家たちは、寄ると触ると浅野内匠頭と吉良上野介の話になり、浪士たちに敵を討たせたいものだと語り合っていたといいますが、敵を討たせたいと言うことは、江戸市中でのテロリズムをみんなで心待ちにするということであります。

 本作の筆者、真山青果の時代作品は、厳密に考証されているというのが評価のひとつでありますが(本作においてもト書きにおける緻密な考証的文章は極めて特徴的であります)、江戸市民みんながテロリズムを待つ、つまり吉良上野介が首をちょん切られることを期待するに至っては、もう、ちょっと、その感覚が、わたくし、よく分からなくなっているんでありますが……。

 しかし少し考えてみれば、このぼんやりとした江戸市民の共同幻想のような雰囲気の底にあるものは、やはりよく言われるところの日本人の死に対する軽視ではないか、と。
 実際日本人の死に対する軽視(歪な死に対する親和性)は、現在に至ってもいっこうに止まるところを知らず、日本人の年間自殺者数は他国に比べて遙かに高止まりしています。

 森鴎外が書いた『阿部一族』などの「殉死三部作」にも、確かに安易に死に赴こうとすることへの批判を書きつつも、一方では逃れられない(と判断する)死に従容として立ち向かう登場人物の姿と精神については、極めてストイックに賛美的な文体で描かれています。
 こんな文化は、日本以外にも結構あるものなんでしょうか、世界には。

 という、少々の「違和感」を覚えつつ、一方、筆者の作劇術については、実に見事なものだと感心いたしました。
 わたくし、本書を読んで、「演劇的状況」とは何かということを少し考えたのですが、いえ、所詮素人考えではありますが、一等簡単な例で述べますと、小学生みたいですけれど、好きな女の子に意地悪をする、というのが原初的な演劇的状況ではないのか、と。

 言動と心理の乖離とでも申しますか、そういった状況に我々は最も演劇的状況を認めるような気がします。
 だとすると、なるほど、「忠臣蔵」はまさに打ってつけの素材となります。
 昔から「忠臣蔵」は「独参湯(薬の名前)」と呼ばれ、芝居に乗せれば必ず当たる演目といわれ重宝されてきた意味が、少し分かったような気がします。


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Last updated  2015.04.04 08:53:22コメント(0) | コメントを書く


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シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

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