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2017.05.14
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カテゴリ: 昭和期・後半男性

『騎士団長殺し・第1部第2部』村上春樹(新潮社)

 前回の続きです。
 前回は、冒頭の村上春樹大長編小説を読んだ後に下記の本を読んだらとっても面白かったという話をしていました。

『みみずくは黄昏に飛びたつ』村上春樹・川上未映子(新潮社)

 いろいろ面白いところは一杯あったのですが、特に興味深かったのが、冒頭の小説を書いている時の筆者のリアルタイムの思考について語られた部分でありました。
 ちょっとそのあたりをまとめてみたいと思います。

 まず村上はインタビュー中再三このように言っています。

「それが何を意味するとか、いちいち考えている余地はない」

 「頭で解釈できるようなものは書いたってしょうがないじゃないですか。物語というのは、解釈できないからこそ物語になるんであって、これはこういう意味があると思う、って作者がいちいちパッケージをほどいていたら、そんなの面白くもなんともない。」


 村上はノープランで小説を書きあげると言っているわけですね。それに対して、これは我々の共通の疑問であると思うのですが、そのような作り方だと作品としての脈絡がなくなってしまわないかと、インタビュアーの川上が食い下がります。すると、こんなふうに村上は答えます。

(略)だから、小説が……僕はとにかくプログラム無し、プラン無しで話をかいていくわけだけど、その暗がりの中で自分が何をつかめばいいのか、何をつかんじゃいけないのか、そういうことはだいたいわかるんです。僕に小説家としての才能がどれくらいあるかとか、そういうことはまったくわからないけれど、そういう能力とかがある程度自分にあるということは感じるんです。

 どうですか。
 少なくとも私は、ここ数作前からの村上作品に対する私の個人的なもやもや感が(それがあっても村上作品は好きなのですが)、一気に晴れたような気がしました。

 そして、後二つだけ付け加えたい(付け加えたいといっても、上記の内容とこの二つは、村上春樹の中ではたぶん同等の重みだろうと思いますが)ことがあります。その2つ目3つ目はこんな感じのことです。

2.村上春樹が書こうとしていることは「近代的自我」ではないという事。
 3.村上春樹が小説で最も大切にしていることは文体(文章のリズム)であるという事。


 まず「2」については、家の例え話があって、地下一階は「近代的自我」の階で、多くの小説家はこの階で止まった話を書いている、日本文学史に出てくる明治以降のほとんどの作品もそうであると述べています。

 しかし村上が目指すのは、そこよりもうひとつ下の階である、と。
 その地下二階にあるのは、例えば自分の中の闇であったり、世界や宇宙と響き合うものであったり、古代から連綿と続く集合的無意識であったりします。もちろんそれらには、簡単に理解できるような意味や整合性はありません。だからこそ、村上はそれをできる限りそのままの形で、一つの物語のまとまりとして読者に提出するのだと説くわけです。

 そしてそのことを保証するのが、「3」の文体の力である、と。
 村上はこんな風に書いています。

で、そこで何より大事なのは語り口、小説でいえば文体です。信頼感とか、親しみとか、そういうものを生み出すのは、多くの場合語り口です。語り口、文体が人を引きつけなければ、物語は成り立たない。内容ももちろん大事だけど、まず語り口に魅力がなければ、人は耳を傾けてくれません。僕はだから、ボイス、スタイル、語り口ってものすごく大事にします。(略)

 どうですか。この3点の解説があれば、一応近年の村上作品について、面白がるかどうかはともかく、納得はできそうに私は思います。

 さて、冒頭の作品についての読書報告をするスペースがなくなってきたのですが、前回の報告の冒頭で、第2部の中盤あたりまではとにかく一気呵成に読んだという事を書きました。
 しかしなぜ最後までそれが続かなかったのかについて、上記にインタビュー本の3つのまとめとして私が挙げた項目になぞれば、とにかく2つ目3つ目の小説的な結実は大いに堪能した、と。でも1つ目の「暗がりの中で自分が何をつかめばいいのか」ということについては、その物語の塊りは、少し私のイメージとは違っていると感じたということでありましょうか。

 もちろんこれは、私という一読者の勝手な、しかしすべての読者が自由に抱いていいはずの「感想」でありますが。


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Last updated  2017.05.14 15:59:06
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Comments

シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

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