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中国が日本最大の貿易相手国になったそうです。ところが、中国で活動する外資系企業の売上高トップ10の中に、日系企業は一つもありませんでした。これは中国商務部(商務省)が発表した2003年のデータ(日経Web)ですから、ちょっと古くはありますが、ようやく13位にHONDA系の広州本田汽車、18位にNISSAN系の東風汽車がランクインする程度です。きっと2004年のランキングが出たとしても、TOYOTA系の自動車合弁会社が入るか入らないかくらいで、大きな違いは無いのではないかと予測しています。ウチでは日本のテレビはNHK系しか映りませんが、そのニュースや経済番組では、「中国に進出」して"成功"している日本企業が毎日のように取り上げられています。日本の新聞でも毎日のように、日本企業の中国での活躍ぶりが記事になっています。そんな日本の報道だけをみていると、中国でも日本企業は相当成功していて、日本ブランドの製品が中国国内に溢れ、流行とトレンドを支配している、と勘違いしてしまうでしょう。日本から上海あたりに出張に来て、日系の高級ホテルに宿泊し、市場視察と称して淮海路あたりを散策して、デパートやチェーン・ストアの売り場を見たりすれば、日本ブランドの広告や製品が街中に溢れていて、中国では日本企業が成功している、と言うような勘違いをしてしまうでしょう。ところが、2003年の外資系企業売上高ランキングでも分かるとおり、中国で大きなプレゼンスを持つ日系企業は非常に少ないことが分かります。日本が誇る産業は、自動車と電機-ITなのでしょうか?売上高という尺度で考えると、自動車メーカーが上位に入ってもよさそうなものですが、トップ10にはドイツ系2社とアメリカ系1社のみ登場し、前述の通りHONDA、NISSANが13位と18位と言う状況です。世界を支配しつつあるTOYOTAはどうしたのでしょう?中国の場合、車種ごとに中国側自動車会社が違う分散投資になってしまうので、TOYOTAの合弁会社をいくつか合わせればランクインするのかもしれません。そうは言っても、Volkswagens系の合弁会社が、1位と3位にランクインしているわけですから、これに比べると出遅れが大きいと言わざるを得ないでしょう(なお2004年の自動車販売台数の企業ランクでは、HONDA(広州本田)が4位に、TOYOTA(一汽豊田)が10位に入っています)。電機というカテゴリーになるか分かりませんが、Motorola、HP、DELLの3社がトップテン入りしています。他にもIT関連では、台湾やシンガポールやアメリカ系の企業がトップテン入りしており、10社中石油企業1社を除き、自動車か電機-IT関連の企業です。日本の"お家芸"とも言えそうな領域ですが、日本の家電企業もIT企業もトップ20にも顔を出していない状況です。このランキングは企業ごとの売上ですから、分散投資型の企業がランクインしにくいことは事実です。しかし中国全土の市場シェアで考えても、日系企業のプレゼンスが決して大きくは無いことが分かるはずです。例えば、乗用車の市場シェアでトップ5に入る日系メーカーの車種はありません。パソコンはもちろんのこと、家電やケータイ電話すらトップ5に入る日系ブランドはありません。日本ブランドの消費者向け製品が市場シェア上位を占めるのは、デジカメとムービーカムくらいです。もちろん、上海地区或いは北京・上海・広東地区、または月収3,000RMB以上の高所得者などと市場をセグメントすれば、トップシェアに躍り出る日系ブランドの製品も出てきます。多くの日本企業の多くは、沿岸都市部や高所得者層に絞り込んだ市場戦略を行ってきたからです。地方に行けば行くほど、高所得者が少なくなり、日系ブランドのような高級品を買える人がいなくなる、しかも面展開をすればマーケティングや販売のコストがかさむだけ、そんな理由から、上海や北京を中心に活動してきたわけです。日本企業の中国事業担当の方は、「うちの製品のターゲットになるのは、中国の全人口の10%程度ですよ。それでも、日本のマーケットと同じサイズですからね。」と良くおっしゃいます。全国民ほぼ中流、ほぼ単一民族国家の日本でマーケティングを経験された方にとっては、正論なのかもしれません。でも、中国市場では日本企業だけがライバルではありません。経済格差が大きい多民族の国家でマーケティングをノウハウを培ってきたアメリカやヨーロッパ、アジアの企業と面と向かって戦わなければならないのです。彼らは、広大な中国市場を地域ごと、所得ごとに極め細やかにセグメントして、全体を網羅しつつあるのです。日本の自動車メーカーが、当時自動車大国だったアメリカに殴り込みをかけたときは、カリフォルニア州あたりから細々と始め、じっくり20年かけてアメリカを網羅した、と成功談のように語られていますが、中国にこうした成功談が通用するかは疑問です。日本企業が上海など沿岸部で手を焼いている隙に、日本以外の外国企業や中国の国内企業が全中国を網羅してしまうでしょう。
2005.01.31
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『美女自販機』と言っても、美女が自動販売機で買えるわけでは決してありません。女性による有人の"自動販売機"なのだそうです。北京ではまだ見ていませんが、福建省の福州や上海にお目見えしたそうです(ソースはいずれも"Serchina")。中国では"無人の"自動販売機は根付かないようです。3~4年前、北京の目抜き通りにもたくさんの自動販売機が登場しました。缶入りのビバレッジやチョコレートなどのお菓子まで買える代物です。でもこのとき私は、そのうち無くなるだろうな、と予感していました。それは北京の公衆電話の状況を見れば明らかでした。無人の公衆電話があちこちにありましたが、使えるものはほとんどありませんでした。受話器のコードが切れていたり、プッシュボタンが抜かれていたり、それはメンテナンス不足というより人為的に破壊されたことによるものです。案の定、北京に出現した自動販売機は1ヶ月も立たぬうち、ガラスが割られたりして破壊され、そのうち商品が補充されなくなってしまいました。いま北京で自動販売機が健在なのは、空港や地下鉄駅ホームやオフィスビルの共有スペースに設置されているものくらいで、道端に残されたままの自動販売機は無残な姿に曝されています。以前ニューヨークで公衆電話を利用としたときも、5台中2台くらいは使えない状況でしたし、シドニーはもっと酷かったように記憶しています。そもそも、自動販売機が至る所にあって、しかもキチンと機能している国なんて、日本くらいではないでしょうか。日本の場合、売り手側が自動販売機を設置するメリットは大きく二つあります。まず第一に人件費の削減。自動販売機のイニシャル・コストは決して安くありませんが、メンテナンス費用も当然かかりますが、新たに売り場を作り維持していくより割安感があります。それでいて販売員の固定人件費が省けるわけです。第二は販路の開拓或いは拡大です。缶入り飲料などの後発メーカーは、既存のお店になかなか商品を置いてもらえませんが、自社ベンダー(自販機)を設置してしまえば、自分の商品だけの専売店を開店するのと同じような効果が得られます。さらに、自社ベンダーを目抜き通りに設置すれば、広告効果も期待できるわけです。こうしたメリットと性善説的な国民性に支えられて、日本では自動販売機が急速に発展しました。駅の自動切符販売機にしても自動改札にしても、自動販売機と同様に、"人件費の削減"が念頭にあります。売れても売れなくとも売り場にはほぼ固定給の販売員を置いておかなければならない、しかも日本の人件費はいわゆる"先進国"の中でも相当高いほうの部類に属します。散らばり(格差)が小さく、平均すれば高い、と言うことです。例えばアメリカなどと比較して、小売店の販売員やファストフードのアルバイトの人件費は日本のほうが高い、でも上場企業クラスのマネージャーの賃金はアメリカのほうが高かったりもします。中国の人件費は安い、と一般的に言われていますが、私は必ずしもそうは言えないと考えています。確かに工場等で働く単純労働者の賃金は日本とは比較にならないほど安く済むわけですから、多くの日本企業が中国に生産拠点を移転させてきたわけです。ただ、ホワイトカラー特にマネージャークラスになると、日本並みの収入を得ている人たちもたくさんいます。外資系企業の研究開発職などもそうです。要するにメリハリがある、悪く言うと大きな格差があるのです。ウチの会社でも、同じ中国人同士で社歴が同じで、年齢差が10歳も無いのに賃金に50倍の格差があります。いわゆる"能力主義"という考え方が定着していますから、みんな受け容れるのです。これは販売員などにも言えるわけで、たくさん売った人がたくさん報酬を得るのが当然です。ただ"店番"をしていようと、お客さんに一声かけて商品をどんどん売りさばこうと、報酬に大差が生じない日本とは大きく違います。中国の販売員さんはモノを売らなければ無報酬だったりするのです。ですから中国で自動販売機が出現したのも、人件費節減のためでは無かったはずです。モノが売れなければ人件費が発生しない歩合制の国ですし、恐らく自動販売機を設置するイニシャル・コストのほうが、販売員を雇うより高いでしょう。都市部の目抜き通りに自動販売機を設置した最大の目的は、"広告媒体"としての価値にあったのです。無人の状態だと、あっという間に見るも無残に壊されてしまった自販機、これでは"広告媒体"としてもイメージダウンです。ところが、その自販機に若い女の子を入れてみたら....有人である間は破壊されたりしないでしょうし、歩合制で雇われた女の子はどんどん売ろうとするから売上も向上、"広告媒体"としての価値の向上、ということになるわけです。人件費は固定費と考えがちですが、中国ではそうではありません。業績が向上すれば人件費も上昇しますが、業績が振るわなければ人件費も抑えられます。自動化すれば人件費は抑えられるのかもしれませんが、業績不振でも自動化に費やしたイニシャルコストを固定費として償却し続けなければならないのです。
2005.01.25
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上海カネボウの騒動は、どうも中国での新たな合弁会社設立の話が遠因になっているようです。合弁相手と言われているのは、広東省に本社を持つ中国トップクラスの製薬会社で、日本でも販路を開拓しています。「中国のトップクラスの企業と合弁会社を作れば、きっとビジネスもうまく行く」日本にいるとそんな風に思ってしまいます。逆に、日本では無名であまり大きくない中国企業から合弁を持ちかけられたりすると、調べもしないでお断りしたりしてしまいます。日本企業が中国で合弁会社を設立する大きな理由は二つあります。一つは外資規制という消極的な理由からです。業種によっては100%外資による企業の設立が認められていないので、中国企業からの出資を得て合弁会社にしなければならないのです。もう一つは合弁を組むメリットを期待する積極的な場合。日本企業は技術や品質管理には自信があっても、中国での販路開発や資材調達には自信がない場合が多いわけで、そうした自信の無い部分で中国企業の"力"を期待して合弁を組むのです。これは"見知らぬ地"でビジネスを成功させるには大切なことで、製品の流通チャネルにしてもゼロから始めるより、合弁相手の既存のチャネルを活用できたほうがラクなはずです。ただ、合弁相手に頼るところが多いほど、日本企業の思い通りの経営がし難くくなるわけですし、取り分だって減るのです。ですから、特に外資規制上合弁形態しか認められていない業種の場合、合弁相手をどういう位置づけにするかをはっきりさせることが、極めて重要です。即ち、日本側がイニシアティブを持ち続けられるように考えるのか、中国側の既存リソースを活用させてもらうと考えるのか、です。前者の場合は日本側が全部自前でやると言う覚悟が必要ですし、後者の場合は日本の思い通りに進まないだろうという覚悟が必要です。さらに後者の場合は、中国側パートナーに期待するリソースを絞り込む必要があると思います。つまり、中国における知名度や信用度なのか、資金調達力なのか、流通力なのか、資材や原料の調達力なのか、或いは人材なのか、研究開発力なのか。著名な大企業と合弁を組めば、どれもこれも期待できる、と考えてしまうかもしれませんが、必ずしもそうならないケースも多いのです。中国は"ヒト"と"カンケイ"の国だと言われています。私の知る限り、"立派な"中国企業であっても組織横断型の協力体制を築けるところはごく少ないようです。大きな企業であればあるほど、合弁事業に対しても部署ごと、担当者ごとに、温度差が生じます。担当者が代わると対応が変わる、というのは中国のお役所だけの話ではありません。トップダウン型の企業だからと言って、トップが合弁事業の状況の末端に関してまで、常にチェックしているわけではありません。ですから、著名な中国の大企業と合弁を組めば、どれもこれも期待できると考えるのは、必ずしも正しくないと思います。もちろん大企業と合弁を組めば、中国における知名度や信用度が高まるというメリットはありますから、日本の中小企業にとってはメリットが大きいかもしれません。ただ、相手が大きければ大きいほど、日本側のコントロールができなくなります。「中国の著名企業と合弁を組んだから、すべての面でうまく行くだろう」と日本にいる企業のマネージメントは安心するのかもしれませんが、実際はそうではないケースが多いのです。日本側にも同様なことが言えるのですが、親会社から合弁会社に送り込まれてくる責任者の能力やモチベーションによって、合弁の成果は大きく違ってきます。親会社にさっさと戻りたいとばかり思っている人や親会社に敵が多くて協力を取り付けにくい状態の人が送り込まれてこないとは限らないのです....実際大きな中国企業との合弁を日本の本社が決めたあとで、送り込まれてきた日本側の現地責任者には血を吐くほど苦労している方もたくさんいらっしゃいます。全中国を網羅する販売網に期待していたのに、実際はそのチャネルを使うことができず、独自に開発せざるを得なくなったり、資材の調達に中国側の親会社のマージンが上乗せされるため、結局コスト高になったり....。日本の本社に相談しても、現地責任者が中国側とうまくやっていないからだろう、などと逆に責められたり....。逆に日本では無名な小さな中国企業のほうが、合弁事業に対する意気込みが強く、親会社の販路を積極的に開放してくれたり、手続き面で迅速に動いてくれたりして、ビジネス・パートナーとしてはうまく行くケースも多かったりします。繰り返しになりますが、中国は今でも"ヒト"と"カンケイ"でモノゴトが動いています。大企業でいくつもの製品を抱えた営業部長よりも、合弁事業に積極的な中小企業の"老板"(社長)のほうが、セールスに積極的だったりします。親会社の法務部経由で2ヶ月たっても下りなかった認可が、政府当局に知り合いがいる合弁会社の社員に頼めば1週間でOKになる場合もあるのです。もちろん大企業と合弁を組むメリットもあるのですが、実質的な合弁効果を期待するのであれば、企業名や企業規模だけに固執する必要は無いと思います。
2005.01.24
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上海カネボウの"出勤拒否"と"販売中止"について、だいぶ状況が見えてきました。私の推測どおり、日本の本社と"現地化"された現地法人との"温度差"とコミュニケーション不足が招いた悲劇の様相を呈しています。中国での報道(SOHU=典型例)、知人からの情報を総合すると、事情は以下のようです。本社のゴダゴダもあったのでしょうが、ここ4~5年カネボウは、中国での販売事業を、日本本社籍の中国人総経理(社長)に任せっぱなしにしていました。その中国人総経理のもとで社員も頑張って、業績が上がっていったのです。ところが、日本の本社では、中国の大手製薬会社と組んで北京に新たな現地法人を設立しようとしていたのです。直前になって知らされた中国人総経理の"想い"はいかなるものだったか、容易に想像がつきます。北京での新会社の設立に、上海の上層部はネガティブに反応したことが、日本の本社の不信を買ってしまい、いろいろ調べ始めたようです。そして販売ライセンス問題が発覚して、上海の総経理は更迭(日本の本社に異動ということですが)、日本から新たに日本人の総経理が送り込まれてきたという感じです。こうした日本本社の対応に、上海の上層部だけではなく一般スタッフも強く反発して"出勤拒否"に及んだわけです。日本の企業は、中国事業における"現地化"を口にしています。業種によって意味に若干の違いはあるでしょうが、人材も資材も顧客もできるだけ中国国内で調達していこう、と言う考え方です。この点に関して私はまったく正しい方向だと考えています。特に"人材"について言えば、中国人スタッフのマネージメントは中国人しかできないと思いますし、販売や許認可取得においても日本人がやるよりずっとうまく行くはずですから、"ローカルマネージメント"を推進する日本企業は多いようです。様々な判断も現地に委ねて進めていくほうが、いくら頑張っても中国の状況についていけない日本の本社がいろいろ口出しするより、うまく行くことのほうが圧倒的に多いでしょう。そうした観点から考えると、問題発生前の上海カネボウは理想的に"現地化"を推し進めていた、と言えなくも無いのです。日本の本社の関与度が低ければ低いほど、現地主導で迅速で柔軟な対応が可能です。しかし、日本の本社と現地との意思疎通が疎かになってしまい、日本と現地との考え方が次第に乖離してしまい、日本の本社としては思いもしなかった方向に現地法人が進んでいくことになりかねません。基本戦略は日本と現地とで十分すり合わせを行い両者同意の下で決定しつつ、戦術については現地に決定権を委ねることが"現地化"であるわけで、基本戦略のすり合わせも行われず或いは日本の本社の基本戦略が現地にきちんと伝えないまま、現地に任せっぱなし、では"土着化"を招くことになるでしょう。もちろん戦術以下について現地裁量に委ねるとして、大出資者である日本の本社は定期的に状況をチェックする必要があります。それをチェックもせずに"ほったらかし"にして、問題が明らかになった途端に日本からシャシャリ出てきて、現地の言い分もろくに聞かず、責任だけを現地に押し付ける、ということであれば、優秀な中国の人材は日系企業で現地責任者なんてやりたくなくなるはずです。本社の"言うこと"をきちんきちんと遂行する現地責任者だけが重用されることになり、真の意味での"現地化"とは程遠いものになってしまうでしょう。今回の事件について、日本のマスコミは「ライセンス問題による自主的な販売中止」という基調で報道していますが、中国の報道は「人権侵害」「社員による販売中止」「日本側の圧力」という文字が目立っています。中国のマスコミ対策も現地社員のほうがうまいに決まっています。中国におけるブランド・イメージはがた落ちでしょう....日本の価値基準で言う"問題"は必ず起こるものと覚悟して、その解決にあたっても現地の意見を十分尊重することが大切だと思います。意思疎通と相互理解無くして"現地化"などあり得ないと思うのです。
2005.01.21
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主として日本から輸入した化粧品を中国国内で販売している上海カネボウの社員が出勤拒否をしているそうです((中国情報局)。出勤拒否の理由は日本人幹部社員による「人権侵害」とのことですが、このニュースと前後して、この日系企業が輸入品販売に必要なライセンスを取得していなかったことが発覚し、販売を一時中止した、との報道もありました(日経Web)。NHKニュースによると、日本の本社は必要なライセンスを取得しないまま販売を続けていた中国現地法人の中国人責任者を"更迭"したとのことです。上海の出来事なので、現状の私は報道による情報しか得ていませんが、整理してみると次のようなストーリーが成り立つと推測しています。(1)ライセンス無しで販売していたことに、ようやく日本の本社が気づいた (2)日本の本社は中国現地法人の中国人責任者を詰問し、更迭した (3)日本の本社が考える"コンプリアンス精神"により、ライセンス無しでの販売を直ちに中止した (4)更迭された中国人責任者に代わって、日本人責任者を送り込んできた -- と言う流れだったとすれば、なおかつ現地法人の社員の日本の本社に対するロイヤルティよりも、更迭された中国人責任者へのロイヤルティのほうが大きければ、販売中が自らの職(収入)に与える影響を考えて、"出勤拒否"の行動をとったことは、ごく当然のことと言えるでしょう。仮にこうした流れによって生じた問題であるとすれば、例の如く、日本の本社と中国の現地法人との"温度差"が原因であると言えるでしょう。日本の本社が下した判断:(1)ライセンス無しの販売を直ちに中止する (2)中国人責任者を更迭する は、日本企業にとってごく当然のものだったと思います。日本の企業に根付き始めたコンプリアンス精神がそうさせたのでしょうし、責任を追及するのも組織としては不可欠でしょう。まして、日本では再生途上にあって何かと注目を集める企業なのですから。しかし、ライセンス無し販売については少なくとも4年間、表立った当局の摘発を受けずに済んでいたわけです。この会社の輸入化粧品の販売コーナーは、北京ですら一流デパート1階の非常に目立つところにあるのです。こそこそ売っていたのではなく、堂々と売っていて、当局のお咎めが無かった。このようなことは中国では当たり前なのです。フランスの著名量販店が正式な許可を得ず出店していたことが発覚したこともありましたが、長期間ライセンス無しで営業していましたし、厳しい処罰も受けず、その後も順調に出店を続けています。日本的に考えれば、違法行為は直ちにやめなければならない。でも、中国的に考えれば他に方策が無くは無いのです。報道から推測するに、この会社は自ら販売を中止したわけですが、販売を続けつつライセンスを正式に取得することもできたかもしれません。それが無理だとしても、外部や末端の社員にできるだけ悟られない方法で販売を縮小して、正式なライセンス取得を待つ、ということもできたのではないでしょうか。恐らく、問題の中国人責任者とそのスタッフはそうした対応ができたのではないかと思います。また、そうした対応を日本の本社に提言したのかもしれません。ところが、日本の本社はその中国人責任者を更迭してしまい、問題解決のために日本人幹部を送り込むことにしたのでしょう。日本では公共放送の会長でさえも、「問題の解決を見届けてから進退を判断する」などとのたまうくらいですから、この中国人責任者にライセンスの問題の解決を委ねれば良かったのではないでしょうか。そして、問題が一応解決に向かってから、当人に責任を取ってもらうのか、引き続き頑張ってもらうのか、決めても良かったのではないでしょうか。恐らく、ライセンス無し販売の件は、日本の本社の中国部門責任者ですら長期間知らずにいたのでしょうから、いまさら現地に責任を押し付けるのもおかしな話です。現時点で真相がつかめないのであくまでも推測によるものではありますが、遠く日本から日本流の判断で中国ビジネスに口を出すとこんな風になってしまうのではないか、と思うわけです。もちろん、日本人幹部が中国人社員に対して「人権侵害」を行っていたのかもしれません。そうした状態に近い日系企業が存在しているのも事実ですから。この話題は日を改めて触れてみたいと思います。
2005.01.19
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北京で仕事をしている日本人は数千人いると言われています。中国の首都ですから日本の政府関連の人たちが、上海と比べて多いのが特徴でしょう。また、日本企業が中国総代表部を置くことも多いですから、大企業の役員クラスが駐在しているケースも多いです。ただ、中国総代表部と言っても、マーケティングや営業的なことは上海を中心にコントロールすることが多いようです。首都で政治都市であるが故、様々な許認可上、総代表部だけは北京に置く場合が多くなっています。雇用の形態は大きく、日本からの駐在と現地採用に分けられます。駐在とは、日本企業の社員でありながら、本社の業務命令により、中国の支社に転勤もしくは、関連現地法人に出向という形で、中国で働いている人たちです。現地採用とは、日系その他外資系を含む中国の企業から直接雇用されている形になります。中国のメーカーや欧米系のサービス業で働く日本人も増えていますが、現地採用でやはり多いのは日系企業で働く人たちです。労働環境や待遇は千差万別ですが、同じ日系企業の中で働いている場合でも、駐在と現地採用でも大きな違いがあるのが普通です。特に待遇面の違いは顕著です。日本からの駐在者の給料は、日本で得る給料に海外勤務手当てなどが上乗せされる場合がほとんどで、北京での住居も外国人向けの高級マンションが保証されたりします。一方、現地採用となると、現地の基準で給料が決定され、住居も自腹であったり、会社負担であっても駐在者が住むような高級マンションではなかったりします。そもそも、こうした待遇の格差は、当人の能力や業績から生じる、とは言えない状況で、日本企業による"人件費削減"が大きな要因となっています。日本の本社とすれば、中国に社員を駐在させることは、日本以上にお金がかかることです。ですから、駐在員は"少数精鋭"であるべきだと考えます。ですから、現地で日本人スタッフが必要な場合、現地で採用することになります。人件費に関しては、日本人であろうが中国人であろうが、本社からの駐在であろうが現地採用であろうが、原則として中国の現地法人が財務上負担しなければなりません(駐在員の人件費を日本の本社で処理している企業も実際は多いのですが、これは両国の税法上問題があります)。日本企業の現地責任者は自分のことは棚に上げて、自分を含む駐在者並みの待遇を現地採用の日本人にも施してしまったら、コストが高くついてしまうと考えますから、中国人スタッフとのバランスも考慮しながら、現地採用の日本スタッフの待遇を決定する場合が多いわけです。日本からの駐在者が有能で、現地採用の日本人が有能でない、とは言い切れません。しかし、駐在者が待遇面その他で現地採用者より優遇されている以上、そのミッションの違いもはっきりさせる必要があるでしょう。一般的に駐在者のメリットは、(1)日本での業務経験が豊富 (2)日本の本社や他の日本企業の事情に精通している (3)日本の本社に対するロイヤルティが高い、と言うことではないでしょうか。年齢的にも、現地採用者は20代~30代前半の若者が多いのですが、業務経験という点で現地採用者のほうが勝ってれば、この前提すら崩れてしまいます(技術職などにこうしたケースが発生しています)。経験や会社に対するロイヤルティと言うのは、能力とは別の次元のものなので、厚遇されている駐在者はまず、こうしたメリットが活かせるミッションを遂行する必要があります。それすらできずに、能力も現地採用者より劣っているような駐在員であれば、即刻帰任してもらうべきです。中国の日系企業に現地採用で職を求める若い日本人が増えています。中国で留学し、語学もこの国の事情も"腰掛け"駐在者と比べると、たいへん勝っていて、能力も高い人材も多いです。そのいっぽう、何らかの"事情"で中国に居ついてしまい、仕事が必要となり、日系企業だと良い待遇で雇ってくれるだろう、と思っている若者が多いのも事実です。前者のような人材は、中国の日系企業にとっても非常に貴重と言えるでしょう。日本の本社からの駐在者にも、中国人スタッフにも、できないような役割を果たしてもらえる可能性が高いからです。ウチの現地法人の場合、実績があがれば国籍や年齢に関係無く待遇が向上しますから、日本の本社で待遇が固まっている駐在者より高い給料を得られる機会もあります。現に、現地法人の責任者である私より、ずっと高い給料を得ているスタッフが何人もいますから、日本にいるよりチャンスは大きいと思います。しかし、後者のような日本人はどこに行ってもツライのではないかな、と思います。中国で働くと言うことは、日本で働く以上にたいへんなのです。ウチの場合、中国人スタッフの大学新卒者の初任給は手取りで2,500RMB。外国語ができれば、その分上乗せされますが、最大で1,000RMBですから、合計でも3,500RMB(約5万円)と言ったところでしょう。私も面接することがありますが、こちらの大学に留学して卒業したての日本人に「最低でも手取り8,000RMBと住居は会社負担。」などと要求を出されて、「日本人なんだから当然でしょう」みたいな顔でいられると、どう考えても理不尽に思えてしまいます。「日本人だからこういうことができる」みたいなセールスポイントが無いと、中国人に対する人種差別になりかねません。不当に低い待遇を受けている現地採用の日本人もいるのも事実ですが、合理的とは言えない厚遇で働いている現地採用の日本人がいるのも事実です。これは、ある意味で駐在者にも言えるわけで、自分が責任者となっている中国の現地法人の業績が2倍に伸びたとしても、日本の本社の待遇では、給料が2倍になるわけではないのです。いっぽうで、業績低迷で赤字続きだったり、平日ゴルフ三昧でオフィスでは日本の新聞が届くのを待っているだけのような駐在者でも、日本で働く以上の待遇が保証されていていたりします。こうした矛盾を変えていかなければ、日本企業はいつまでたっても、中国でうまくやっていけないのではないか、と思うのです。
2005.01.17
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韓国ハンナラ党の国会議員ら脱北者問題について北京で記者会見を行おうとして、中国当局に実力で阻止されました(産経Web、他)。中国国外のマスコミ関係者の目の前で、「言論の自由」を問われる強行手段をとったわけですから、中国当局も相当な覚悟で臨んだのでしょう。韓国政府は直ちに中国大使を呼び付けて強い姿勢で抗議したそうで、どこかの国より毅然とした外交ができているなぁ、と感心しました。冷静に考えてみてください。現代化して経済成長を続けている北京や上海の市街地を歩いていると、すっかり忘れてしまいがちですが、中国では「言論の自由」が保証されていないのです。とは言っても、オーウエルの『1984』みたいに秘密警察がいちいち監視している、という感じではありません。レストランやカフェなどでお酒を飲みながら、現政権についての不満を大声で話していても、直ちに捕まるわけではありませんから、最近はおおっぴらに政府の悪口を語り合う中国人も増えています。でも、報道はもちろんのこと、出版や集会にも許可が必要という決まりがあります。記者会見を開くには、中国当局の許可が必要です。とは言って、すべての記者会見が許可を得て開かれているかと言うとそうではありません。政府関係者が臨席するような記者会見でも、許可無しで平気で行われています。ですから、中国で開かれる記者会見のほとんどは、「許可無し」です。ただ注意しなければならないのは、許可無しの記者会見は、本来ダメなのですから、中国当局に中止を求められたら何も言えないのです。これは、企業が実施するプレス・コンファレンスにも当てはまります。日本企業も新製品の発表などで、中国でプレス・コンファレンスを実施しますが、報道関係者を呼び「集会」を行うわけですから、ほんとうは中国当局の許可が必要なのです。現実的には、新製品のプレス・コンファレンスを実施するにあたって、いちいち中国当局の許可を得ている企業など、ほとんどありませんし、そうしたプレス・コンファレンスに公安が乗り込んできて、電源を切り中止を叫ぶようなことは、ほとんどあり得ないでしょう。報道関係者を呼ばないプロモーション・イベントなども、「集会」に該当しますから、本来は許可が必要です。北京で開催されるコンサートなどは、公安当局に集会許可を得ています。小さなライブハウスで行われるコンサートでも、ちょっと心配なアーティストは必ず許可を得てから開催しているようです。しかし企業が行うプロモーション・イベントは、ほとんど許可を得ないで行われています。そもそも広告行為を行う場合、中国当局の許可を得る必要があるのです。テレビや新聞の広告などは、メディア側が厳格にチェックすることで中国当局の許可を得たことになっていますが、ポスターやチラシなどは政府機関の許可番号を得ないと本来はダメなのです。イベントも広告行為ですから、ほんとうは許可が必要なのです。地域によって、機関によって、担当者によって、対応が異なるのが中国ですから、一概には言えませんが、広告印刷物には特に注意が必要です。許可なしのチラシを店頭で配っていて摘発され、多額の罰金を支払うハメになった日本企業はたくさんあります。プレス・コンファレンスやプロモーション・イベントに、いちいち許可をとってやる企業は少ないですし、面倒な手続きと摘発される危険性を天秤にかければ、許可無しでもいいかぁ、と思ってしまうでしょう。でも、中国当局が乗り込んできて、「許可を得てないから、スグに中止しなさい」と言われると逆らえない、と言うことを覚えておいてください。日中関係が更に悪化して、日本への批判がその経済行為にまで及ぶようになって行けば、見せしめ的効果も含めて、中国当局が、日本企業の無許可のプレス・コンファレンスを強行阻止することもあるかもしれません。ことしあたり、もしかしたらどこかの会社がぶち当たりそうな予感がします.....まるでロシアン・ルーレットみたいですけど。
2005.01.14
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日本的感覚で「怪文書」と聞くと、大物政治家や大企業の社長のスキャンダルに絡む話で、一般ピープルには直接関わりの無いイメージでしょう。ところが中国でビジネスをしていると、「怪文書」はとても身近なモノになるはずです。もしあなたが中国の現地法人でマネージメントの立場にあれば、社員に関する「怪文書」があなた宛に届くことがあるでしょう。「○○課の△△さんが、会社のお金を使い込んでいる」など、同僚や上司の不正行為を暴く内容のものが多いと思います。当たり前のことですが、こうした「怪文書」には発信者名は書かれていませんし、その内容は事実か事実でないかのどちらかです。こうした類の情報は一切無視する、というのも対応の一つだと思います。無かったものとして処理すると言うことです。でも気になるようでしたら、できるだけ悟られないように、まず発信者を特定してみてはどうでしょうか。発信者を絞り込めば、「怪文書」の当事者との関係が推定されます。多くのケースの場合、発信者と当事者の間には、何らかの利害関係が存在します。こうした場合、私は無視したほうが良いと思っています。なぜ無視するのか、と言いますと、こうした「怪文書」のほとんどは、正義感で発信されたものではなく、ライバルや上司や部下を蹴落とす目的で発信されている場合が、圧倒的に多いからです。ご存知の通り、いまの中国は日本と比較にならないほどの競争社会です。自分がのし上がるということは、誰かを蹴落とすこと、とも言えます。実力が無いスタッフ、実力があっても評価されていないスタッフは、何か別の方法を使ってのし上がることを目指す場合も多いはずです。もし、自分自身で正当で正義感に満ちていると思っているのであれば、中国人の性格的には匿名にしたり文書にしたりせず、直接話をしたがるはずです。それでも多くの日本人は、事実関係を知りたいという衝動に駆られるでしょう。でも、その「怪文書」の当事者や発信者と推定されるスタッフを"クビ"にしてもいいくらいに思っているのでなければ、止めたほうが良いと思います。そもそも真実を暴くことは簡単なことではありません。真面目に突き詰めて行けば、莫大な労力が必要ですし、その調査にあたって秘密主義を貫こうとしても多くのスタッフを巻き込むことにもなりかねません。「怪文書」に書かれた当事者の不正が、たとえ事実と判明したとしても、私の場合は発信者も"同じ穴のムジナ"だと疑いを持ってしまいます。実際、発信者も似たような不正をしていたりするケースが多いのです。「怪文書」が元となって人事的な処分が下されたことを、直接関わりの無いスタッフまで知ることになるはずですから、「怪文書」は"有効な手段"として認識され、後と絶たなくなってしまうでしょう....あなた自身が「怪文書」の当事者になるケースも想定しておく必要があります。あなたがオーナー社長でもない限り、日本の本社の社長や役員に、あなたが知らない間に「怪文書」が送りつけられることも覚悟しておくべきです。中国の現地法人で、不当な評価を受けていると思っているスタッフ、ライバルが厚遇されていると思っているスタッフ、或いは解雇した元社員など、あなたの周りには「怪文書」の発信者候補がうようよしています。「(日本人マネージャー)○○さんは××さんとデキていて、不当に厚遇している」のような密告書が、メールやFAXで日本の本社の社長宛にダイレクトに送られることもあるでしょう。「火の無いところに煙は立たない」と言いますから、何か"思い当たる節"がある場合も多かったりするでしょう。もちろん、怪文書攻撃に曝されないために、身の回りをできるだけキレイにしておく努力は必要です。とは言え、聖人潔白であり続けることなど、並みの人間では困難でしょう....こうした場合も、無視を決め込むのが一番だと思います。日本の本社のお偉い方は、中国に駐在させている日本人スタッフを信じてあげてください。中国には全幅の信頼を寄せらる人材を送り込んでください。それと、少しくらいは目をつむる、という寛容な態度で、中国駐在のスタッフを見てあげてください。都合の良い話に聞こえるかもしれませんが....「怪文書」の中には、「(日本人マネージャー)○○さんの仕事の進め方は間違っている。これでは業績が上がらない。」と言うような、現地法人の将来を見据えた積極的な提案書のように見えるモノまであったりします。当事者に祀り上げられた日本人マネージャーのやり方を否定するだけではなく、改善方法を具体的に提示しているものは別とすれば、そうした「提案書」の多くも、「会社」のためではなく「自分自身」のため、に発信されています。受け取った「提案書」に書かれた具体的な改善策が、冷静に判断して合理的に思えるようでしたら、現地の日本人マネージャーにそれとなく諭してあげれば良いのではないでしょうか。いずれにしても、中国で「怪文書」の類は日常茶飯事です。その多くは、発信者自身の利益獲得のために出されます。「怪文書」の内容が事実である場合も多いでしょうが、日本流にキチンと対応すると莫大な労力が必要なばかりか、組織に与えるダメージも大きいはずです。「見て見ぬ振り」をするのは潔いとは思えないかもしれませんが、動じることなく冷静に対応するのが一番かと思います。
2005.01.13
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中国ビジネスは"贈り物"が欠かせません。これは賄賂やバックマージンとは別で、一種の"儀式"ですから、会議や会食など公の席で堂々と授受が行われて然るべきです。日本のお中元やお歳暮に近い習慣だと思うのですが、ある意味で日本よりは合理的だと思います。日本の場合、取引きの状況に関わらず、去年贈ったから今年も、みたいな感覚があります。長い間会っていない相手に、年1回・2回の義理として"付け届け"をして関係を保とう、と言う意味合いもあります。ですから、相手に直接手渡さず、宅配便で届けても、特に礼を欠くことにはならないでしょう。ところが中国の場合、ビジネスの節目・節目で"贈り物"をする場合が多く、お会いする機会に直接手渡すことが原則です。お正月だから贈る、というのではなく、初めて会ったときや契約がまとまったとき、久々に相手方を訪ねるときときに贈る、と言う感じでしょうか。そして、両者間の物理的距離が遠ければ遠いほど"贈り物"は意味を持つようになります。ですから、日本から中国に商談で訪れるような場合、"贈り物"つまりお土産は不可欠と言えるでしょう。もちろん、毎回必要というわけではありません。外国からの来訪者の場合、最初のお土産が重要になってきます。商談や交渉のため日本企業の重役が中国を訪れ、中国企業や政府機関と初めて打ち合わせを行う場合、お土産は不可欠です。もちろん、多くの日本企業も中国訪問時はお土産が必要と認識はしてはいるようです。それでは、日本から代表者がやってくるような場合のお土産はどんなものが喜ばれるのでしょうか。最も喜ばれない確率が高いのは、その会社で用意してあるノベルティ(記念品)の類でしょう。ロゴ入りの高級腕時計、高級ボールペン、システム手帳、置物など、多くの日本企業では主として日本国内の取引先に贈るためにノベルティを用意しているはずです。そうしたノベルティにはその企業のトップの想い入れなどもあったりして、贈る側としてかなり自信があったりします。既に在庫があるので、わざわざ買いに行く必要も無いですから、便利でもあります。でも、会社のオリジナル・ノベルティ(記念品)は、きっと中国側の顰蹙を買ってしまうでしょう。自分で貰ったときの事を想像してみてください。どこかの会社のロゴ入りのノベルティなんて、大事に使ったりしないはずです。中国でも、多くの会社がロゴ入りノベルティを作ったりしていますが、"贈り物"というよりは、その他大勢の方への"粗品"という位置づけです。何百人も集まる会議などで、一斉にバラ撒くお土産、と言ったイメージですから、重要な商談の取っ掛かりには、高級で自慢の品であっても、相応しくは無いのです。まして、Tシャツやタオルだったりしたら、最悪です。次に間違いを犯しやすいのが、自社製品です。自動車や家電やデジタル製品でしたら、それは喜ばれるでしょうが、そうでなければ避けるべきです。特に単価で1,000円以下の消費財であれば、お土産ではなく、バラ撒き用に大量に用意するか、サンプルという位置づけでお渡ししたほうがよろしいかと思います。お菓子や特産物などの食べ物も、いくら高級で貴重だとしても、初対面の相手には避けたほうが良いでしょう。フカヒレや干し鮑のように中国でもポピュラーなものなら別ですが、中国人誰もがその価値を理解できるような日本の特産物はありませんから。また日本の伝統工芸品、例えば日本人形や漆塗りの器など、高価であっても、相手の趣味や指向を知り尽くしていない時点では、お土産にするのは避けたほうが良いでしょう。特に陶磁器などは中国が本元と思われている工芸品には注意が必要です。いずれにせよ、ウンチクを語って評価してもらえるような貴重品は、相手との関係が深まった時点で用意されたほうが効果的です。初対面の中国企業に、100g10万円の龍井茶をお土産でいただいても、多くの日本人は俄かには有り難味を感じないのと同じことです。ここまで否定して、何が良いのか、と尋ねられると辛いのですが、現時点で一番確実なのは、日本ブランドの最新のデジカメかビデオカメラではないかと思います。もちろん、中国で使用できる製品で無ければなりませんし、同じ製品が中国で発売されているかどうかも確認する必要があります。中国で既に発売されている製品ですと、有り難味が半減してしまいます。私は日本の本社のお偉いさんが中国側の要人に会いに来るときは、型番まで指定して買ってきてもらいます。経費節減の折、高過ぎる、と言われたりしますが、だったらお土産は要りません、と突っぱねます。会社のありきたりの記念品を渡すほうがよほど無駄遣いに思えるからです。仮に既に当人がデジカメやビデオカメラを持っていたとしても、最新モデルなら嬉しいでしょうし、家族や部下への贈り物として使い回しが効きます。極端な話、換金することも容易です。お土産を渡す場面に、相手側が複数同席する場合は、同席者へのお土産も用意しなければなりません。同じものがベストですが、人数が多い場合はランク分けしても構わないと思います。概ね相手が5人以上でしたら、その場面で一番偉い方へのお土産だけに細心の注意を払い、ほかの方は数が足りれば良いくらいの気持ちでも良いでしょう。二番目に偉い方には、その方が主役となる別の機会に、一番のお土産をお渡しすれば良いはずです。なお、食事会のときなどは、運転手さんも同席したりしますから、当然その方も数に含めておく必要があります。事前のリサーチと余分目の準備は欠かせません。相手側もきっとお土産を用意しているはずです。貰って嬉しいモノかどうかは別として、有難く受け取りましょう。これで"儀式"は完了です。
2005.01.12
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自分に非がないと思っていても、上司の前では自分の主張をせず素直に怒られているのは、日本人くらいではないでしょうか。欧米の映画では、言われも無い文句を言うボスに逆らって即刻クビになる社員のシーンがよく登場します。以前シドニーで働いていたときも、私の意見や小言に対してオーストラリア人は必ず一言二言、自分の言いたいことを言い放したものです。とは言え、中国人の"言い訳"は世界でもトップクラスではないかと、私も思っています。中国でビジネスをしていると、中国人の"言い訳"を聞くことにうんざりしてしてくると思います。気の短い日本人は、「また言い訳!」「もう言い訳なんて聞きたくない!」「"兎に角"ツベコベ言わずやってくれ!」という風になってしまい、相手の"言い訳"を聞くことすら止めてしまいます。しかし、自分の部下であろうが、取引先であろうが、中国人の"言い訳"をじっくり聞く、ということは、決して無駄なことではないと思います。まず第一に、相手の話をじっくり聞いてあげる、ということは、相手を尊重することになりますし、相手のメンツを保つことになります。そして第二に、相手の"言い訳"の傾向を掴むことができます。"言い訳"の傾向が掴めれば、対策を練ることができます。"言い訳"の元を断ち切っていくことで、次第に相手の同様の"言い訳"を封じ込めることも可能です。つまり、だんだんとビジネスがスムースすすむようになる、と言うことです。私の経験上、多くの"言い訳"は第三者が"悪者"に祀り上げられることで完成します。最も多いパターンは、「○○さんに頼んだのに、指示通りやってくれなかった」とか「○○公司がスケジュールどおり動いてくれない」とか。同僚や部下、取引先の会社などに責任を転嫁するような"言い訳"です。この"言い訳"は、当人に責任と権限を与えることによって、封じ込めることが可能です。"言い訳"するスタッフと共同作業を行う同僚を第三者が選んだとしたら、同僚の怠慢はスタッフィングした第三者の責任、と言えてしまうのです。"言い訳"する中間管理職の部下をあなた自身が選んだとしたら、部下の怠慢はその部下を選んだあなたの責任、と言えてしまうのです。一番良い解決策は、仕事を依頼する当人にスタッフィングさせること。それが困難であれば、仕事に取り掛かる前に、共同作業をのスタッフィングについて十分説明し、そのチームの責任者であることの同意をキチンと取り付けることです。取引先の会社にしても、同様のことが言えます。仕事を委ねた社員に取引先を選択する権限を与え、その取引先に対しての責任も持ってもらう。それが困難であれば、事前に同意をキチンと取り付け、納得してもらった上で、仕事に取り掛かってもらう。こうすれば、「○○さんが悪い」とも「○○公司が悪い」とも言いにくくなるはずです。それでも"言い訳"するようでしたら、事前に同意したことを持ち出せば良いでしょう。きっと"言い訳"できなくなります。それでも、あれこれ言ってくるようでしたら、もうその人と仕事をするのは止めましょう。更にヒトや組織ではなく、モノを悪者に祀り上げるケースもあります。ネットがダウンした、とか、プリンタのインクが無くなった、とか、ハードデスクがクラッシュした、とか。この場合、自分の会社の中であれば、それぞれの責任を明確にしてあげる必要があります。自分のPCの管理はどこまで自分で行うのか、IT担当者のサポートの範囲はどこまで及ぶのか、プリンタのインクが無くなった時、誰がどう対応しなければならないのか。IT担当者が退勤後はどうサポートするのか、など。一つ一つ"言い訳"の原因を突き詰めていき、同じような"言い訳"ができないような環境を極め細やかに作り上げて行けば良いのです。社員や取引先の責任と権限を明確に定義していけば、"言い訳"は自ずと減っていくはずです。フツーの神経の中国人であれば、"言い訳"することが恥ずかしくなるはずです。それでも"言い訳"し続けるのは、責任感の無い中国人も、もちろん居るでしょうが....日本企業はとかく責任の所在を曖昧にしたがりますし、日本人は横並びの共同作業を得意としますが、中国人にもそうあって欲しい、と願っても難しいと思います。中国人の"言い訳"をじっくり聞くことは、相手の責任感を推し量る意味でも重要ですし、日本的管理システムの抜け穴を見つけ出すことにも繋がるはずです。管理する側が問題を解決しても尚、「もうキミの言い訳なんて聞きたくない!!」と思うような相手でしたら、もうその人とお付き合いするのは止めればよいのです。中国にはまだまだたくさんの人材と優良な取引先が隠れているはずですから....
2005.01.11
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