「古代から来た未来人折口信夫」
中沢新一 2008/05 筑摩書房 新書 143p
Vol.2 No.307 ★★★☆☆
歩楽style さんの書き込みから、中沢の新刊に属するこの本がでたことは知ってはいたが、どうもいまいち読む気になれなかった。だいぶ前から手元にあったのだが、読めない。当ブログはチベット密教の流れに突入していた。正木晃などが言うところの、 日本のチベット密教ブームのきっかけをつくった中沢新一 、という視点を当ブログでも借りるとしても、現在の中沢は、ひたすらチベット密教色を払しょくし、 「芸術人類学」 とやらに遁走中である。 島田裕巳などの批判 にまともに答えない以上、現在の仕事をどう正当に評価しようというよりも、どうしても批判的に現在の仕事を見つめてしまう、ということが先にくる。
彼の本は、ひととおり目を通してはみたが、率直に言って、私好みではないようだ。そのテーマはともかくとして、その文章のカメラ目線がどうも気になってしまうのである。つまり、この本もそうであるが、わずか新書本一冊にしても、あちこちの雑誌やテキストに書き散らされた文章を再編集したものである。だから、どこか一貫性がかけており、そのつどそのつど、一文一文に、短い文章で手っ取り早く読者を「つかもう」とする意図が透けてみえて、かったるいのである。
柳田国男、折口信夫、南方熊楠の三人の巨人の頭脳と心が生みだしたものは、日本人に残されたもっとも貴重な宝物である。わたしはこの宝物をしっかりと護り未来に伝える水中の龍でありたいと思う。 p9
「虹の階梯」に始まる中沢のチベット密教情報まきちらしのお行儀の悪さには、ほとほとあきれているので、また新たなテーマを持ちだしたとしても、また同じように食い散らかして終わるのかな、という疑念がすぐ湧いてくる。もし私が柳田国男、折口信夫、南方熊楠を読むとするなら、中沢以外の道をたどる。この人々をおっかけるのに、中沢の後埃をかぶる必要は、なにも感じない。
いまさら「三人の巨人の頭脳と心が生みだしたものは、日本人に残されたもっとも貴重な宝物である」などと、いまさら中沢教授にお墨付きをもらわなきゃいけないような人々でもあるまい。地球に残された「もっとも貴重な宝物」かもしれない 「チベット密教」 をほおり投げておいて、あちこち逃げ回っている教授が、なんとなく哀れになるのである。
「わたしはこの宝物をしっかりと護り未来に伝える水中の龍でありたいと思う」ということであるが、その意味はわかるけれど、自らを「龍」にたとえるところなど、自分が周囲からどのように見られているか、すっかり忘れている破廉恥漢の所作にさえ見えるのである。
折口信夫の残した仕事を見渡してみるとき、わたしはその先駆性に、しばしば呆然とさせられる。彼はいまもまだ、前方をゆっくりと歩みながら、わたしたちの遅れた到着を待ちわびている人のようだ。彼が切り開いた道は、いまではすっかり雑草におおわれてしまっているように見える。その雑草を切り払い、わたしたちはもういちど、その道を歩みなおしてみる必要がある。折口信夫はいまも未来でわたしたちを待っている。 p98
「わたしたち」という言葉の中に、どんな輩をひきづり込んで徒党を組もうとしているのか知らないが、とりあえず私は、中沢のいうところの「わたしたち」の範疇には加わらない。「チベット密教」を食い散らかした後始末に、納得がいくのであれば、考えなおすが、いまのところ、二度も三度も、同じような「詐欺」行為には、私はひっかかりたくない。この文章が「『日本』を超え『人類』を見る眼」などという題のなかに入っている文章であればなおのこと、ひたすら眉唾で見続ける以外にない。
ここに折口信夫の思想の未来性が宿っている、とわたしは思う。彼の考える神道は、歴史の中のどこでもまだ実現されたことのない、ひとつの理念の構造として考えられている。そしてそれが実現されるためには、いままでの宗教が一度も利用したことのない表現手段が活用されなければならない。だからそれはむしろ現代の高度なメディア・テクノロジーの時代でこそ、はじめて現実性をおびる思想なのではあるまいか、とすら思われる。 p111
せっかく島田裕巳などは、いまだに中沢のことを「チベット密教」行者と言ってくれているのに、今度は、神道に浮気ごころを起こして、さかんに秋波をおくっている。しかもタイトルとしては「超宗教としての神道へ」とくる。 上田紀行が「チベット密教」を「世界仏教」の可能性 がある三つのうちの一つの存在に挙げるのに似て、なんとも商売人の売り口上の軽々しいことよ。
当ブログは中沢のよい読者ではないが、批判をする以上、彼の著者には今後もひととおり目を通していかぬばなるまい。以下に読書メモ一覧リストを転記しておく。
仏教が好き! 2008.10.23
男一代菩薩道 インド仏教の頂点に立つ日… 2008.10.23 コメント(4)
21世紀のブディストマガジン「ジッポウ」 2008.10.22
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