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2014.07.21
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 「うつ」関係の本を、これまで結構読んできた私だけれど、何かが違う。
 これまで読んできたものには、「礼儀正しさ」や「優しさ」がベースにあった。
 しかし、本著は、かなり「くだけた感じ」で、一見「高飛車」にすら感じられる。

 ところが、読み進めるうちに気付いた。
 本著は、「ハウツー本」や「体験談」「専門書」ではなく「エッセイ」だと。
 これまで読んできた本には書かれていなかった本音が、たくさん書かれている。
 そして、読み終えると、付箋だらけになっていた。

   ***


  その前に、まず一番身近な家族の精神的保護と安定を図り、
  とにかく家族自身の不安は家族自身で解決して、
  患者にぶつけてくれるなと願わずにはいられない。(中略)
  従って精神疾患の場合には、患者自身が「この病気を引き受けて生きていく!」
  という一番大きな課題と格闘する仕事に加えて、
  周囲の反応に耐えるという二つの課題に直面することになる。
  ありふれた身体疾患よりもよほど大変なのである。(p.30)

前に「うつ」というとんでもない大敵がいるだけでなく、
後ろには「周囲の目、反応」という厄介な存在がある。
そして、自分の後ろにいる存在のなかで、最も近いところにいるのは、
「近所の人たち」や「職場の人たち」ではなく「家族」なのだ。


  「もっと前を向け」、「もっと頑張れ」と言われるのは、自分たちの今の努力を否定され、
  さらにひどいことには、「前の外敵と戦っている時に、
   後ろから、しかも自分の一番頼りとする家族から鉄砲で撃たれる」に等しい。
  「後ろから鉄砲で撃たれる」というのは、前の敵と必死で闘っている時、
  苦しい自分を支えてくれる味方だと思っていた仲間から足を引っ張られ、

  私も「後ろから鉄砲で撃たれた」経験があるが、
  予測もしていないだけに、前から飛んできた弾に当たるよりもこたえる。(p.99)

まさに、この感覚である。
そして、その何気なく放たれた無邪気な一発の銃弾に、
患者は延々と苦しみ続けることになる。
この辛さは、味わってみないと分からない!

  精神疾患についての差別・偏見・恐怖の所以についてはいろいろな理由が考えられる。
  ひとつは自分の精神(自我)が自分のものでなくなるという
  精神疾患特有の根源的恐怖、自己統治能力の喪失。
  二つ目は周囲の人たちの無知。
  これには病気についての無知もあるし、
  精神疾患を病んだ人とふれ合ったことのないための無知もある。
  そして三つ目、これは日本特有かつ精神疾患に特有だと思うのだが、
  疾患そのものへの恐怖よりも、
  「精神疾患によって二次的に引き起こされる社会的不利」への恐怖。
  これには失職、無収入、家族離散、離婚その他のものが含まれる。(p.34)

この指摘も、直球ど真ん中だ。
医師として、患者として、支援者として「うつ」に触れた筆者だからこそ為し得る記述である。

  うつ病のつらさは独特である。
  まず朝起きると「何もしなくても」、「理屈なしに」、
  気分が落ち込んで悲観的な思いに体中が締め付けられる。
  元気ややる気が出ない。なぜなのかは分からないが、
  とにかく理屈抜きに疲れてごろごろ横になっていたい。
  ご飯を作る気も食べる気もしない。掃除・洗濯なんてさらにやる気は起きない。(中略)
  あるいは、普段面白いテレビを見てもまるで面白くない。(中略)
  何もしなくてもいつも疲れている。食欲も落ちる。インポになる。
  よく眠れなくなる。やっと眠りについても中途で目覚め朝まで眠れないとか、
  または深夜三時くらいにならないと眠れない。
  何事にも自信がなく、自分の存在が他人の前ではまるで風船のようにたよりなく感じられて、
  それが悲しい。
  さらに体重減少、性欲低下、いらいら、怒りっぽさなども加わる。(p.68)

このような記述は「うつ」に関する書籍なら、どれにでも書かれているようなことだが、
伝わってくる度合いが、他書とは一線を画しており、強烈だ。
これも、やはり医師として、患者として、支援者として「うつ」に触れた筆者だから、
そして、エッセイ風にまとめられた本書だからこその成果である。

  外岡氏によると、心身の病的抑制を打破して目前の行動に踏み切るには、
  「ともかく主義」が良いという。
  もしも不登校の子どもがいたとする。
  で、朝に起きたら何も考えずに、「ともかく顔を洗う」、
  「ともかく食事する」(バナナとか牛乳などに単純化するともっと楽)、
  「ともかく服を着る」、「ともかくカバンを背負う」、「ともかく靴をはいて家を出る」、
  家を出れば大抵、学校も会社も行けるもの。
  問題は行動に移す以前の葛藤だから、
  そこを「ともかく、目の前の課題に限定してひとつひとつこなす」ことによって、
  乗り越えようというのが「ともかく主義」だ。(p.123)

外岡氏というのは、うつ病の分野で森田療法の技法を巧みに取り入れた方とのこと。
これで、すぐに学校や会社に行ければ、本当のところ苦労はないが、
他書にも「とりあえず」という言葉はよく出てくるが、
とにかく、一つ一つをできる範囲で、焦らず、急がずこなしていくことが重要なのだろう。





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Last updated  2014.07.21 15:05:17 コメントを書く
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