やっぱり読書  おいのこぶみ

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2023年07月13日
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カテゴリ: 読書メモ
『廻廊にて』辻邦生

♪時の過行くままに♪ 歌詞ではないけれど
時の魔術師、辻邦生作品、しっとり読みました。
1962年​から雑誌に発表、近代文学賞を受けて、読み継がれた古い文学作品。

20世紀初頭、大戦と大戦のはざまにパリに留学した画学生が、
ロシア人亡命者の娘、同じ画学生「マーシャ」の人生に惹かれ
才能があるのに寡作だったマーシャの
残された日記や手紙で生きた証を辿っていく。

デラシネの行き交うパリ、芸術を成す人は極小、浮かんで消えていく芸術家。
しかし、その人の辿ってきた道と心模様の奥深さは、
成すとなさざるとにかかわらず、その過程こそ真髄なのだと。
いってみれば「いま、ここ」が大事なんだ、という思いは仏教の教えに通じる。

ヨーロッパという地形でみれば、
国境、人種、言葉のモザイク状態で、権勢によって境目が移動する。
その中で翻弄されている人々が、現在でもどんなに多く居ることか。
それはウクライナ侵攻のニュースに触発された現在の知覚だけれども
100年前とも変わらないのだと、そこに普遍性を見た。
成すことが出来なくても、そのたどる道もその人間の本質でもあると、
「時のたっていくこと」を言い尽くしているような作品。

入り組んだ構成の文学らしい文学作品。
30年前、女子学生に人気がある作家と聞いた記憶が…、この作品で納得した。
寄宿舎でマーシャの親友となったアンドレの中性的な魅力がなんとも秀逸なので。






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最終更新日  2023年07月13日 09時04分24秒
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Re:時の過行く、ゆえに(07/13)  
todo23 さん
おお、辻邦夫。北杜夫のお友達ですね。
本当に若いころ読んで、何か感動した記憶はあるのですが、いったいどの本だったのか?
調べてみると我が家の本棚には『背教者ユリアヌス』『回廊にて』『江戸切絵図貼交屏風』の3作品。それに加えて『安土往還記』『異邦にて』『夏の砦』は読んでいるようです。ただ読書録が残っている(すなわち20000年以降に読んだのは『江戸切絵図貼交屏風』だけです。
多分一番感動したのが『夏の砦』だったと思うのだけれども。。。
全3巻の『背教者ユリアヌス』は流石に重いけど、わたしももう一度『夏の砦』あたりを読んでみようかな。 (2023年07月13日 16時00分51秒)

Re[1]:時の過行く、ゆえに(07/13)  
todo23さんへ

>多分一番感動したのが『夏の砦』だったと思うのだけれども。。。

そうですか、辻邦生を次々と読もうと思っていますので、
『夏の砦』も順番が来ます(笑)

実は20年近くまえに神田の古本屋さんで、辻邦生作品全六巻を格安で購入、大事にし過ぎて(笑)未読のまま本棚を飾っておりました。
1972年発行ですから辻邦生の前半の作品が集められているのですね。

『時の扉』や『西行花伝』など後半の作品を少しで止まっていました。
いよいよ人生も押し詰まって…

購入した時の喜びの記事↓
「私の七夕祭り」(2004.7.7)
https://plaza.rakuten.co.jp/bookmokko/diary/200407070000/

(2023年07月13日 18時31分53秒)

Re[2]:時の過行く、ゆえに(07/13)  
todo23 さん
ばあチャルさんへ

全集を神田の古本屋街で購入!

良いなぁ。
もっとも、我が家にはもう置き場所もないですが。。。
そもそも、身近に古本屋さんが無いですしね。。。 (2023年07月14日 16時08分30秒)

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