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2015.07.04
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カテゴリ: 映画/犯罪
【悪の法則】
20150704

「僕を助けてくれませんか?」
「あなたは自分が置かれた状況の事実を見るべきだ。これは私の心からの忠告だ。どうすべきだったかは私からは言えない。犯した過ちを取り消そうとする世界は、過ちを犯した世界とはもはや違う。今あなたは岐路にいて道を選びたいと思っている。だが選択なんてできない、、、受け入れるだけなんだ」


脚本を担当したコーマック・マッカーシーという独特な名前には覚えがあった。
この作家、『ノー・カントリー』の原作者でもある。
『ノー・カントリー』と言ったら、絶望に輪をかけたような、後味の悪い作品だった。
とはいえ、メガホンを取ったのがコーエン兄弟で、徹底的な悪の象徴としてハビエル・バルデムが好演。
さらにはいぶし銀のトミー・リー・ジョーンズが、善き人間の最後の砦として輝いていた。
そのせいか、決して嫌いな作品ではなく、むしろ、人間の非情と無秩序を綿密に表現していたと思う。
さすがはコーエン兄弟監督である。

一方、『悪の法則』はリドリー・スコット監督がメガホンを取った。
『エイリアン』を作った人である。

インパクトは強烈だし、容赦ない危険性に溢れている。
だが、何と言ったら良いのか、そこに品性が見られないのだ。
テーマとなっている人間の原始的本能(ウィキペディア参照)、道徳外など、思う存分残虐性は表現されているのに、セリフに込められた哲学的フレーズがどうも追いつかないのだ。

ストーリーはこうだ。
若く有能な弁護士“カウンセラー”は、恋人のローラとベッドを共にしていた。
その後カウンセラーは、美しいローラにプロポーズするため、宝石商から高価な指輪を購入する。
カウンセラーは決して貧乏ではなかったが、さらなる自己実現を果たすため、裏社会のビジネスに手を染めていく。
カウンセラーの友人である実業家のライナーに、「一回限り」という約束で、麻薬ビジネスに足を踏み入れたのだ。
ライナーから紹介された麻薬の仲買人ウェストリーは、弁護士という立場のカウンセラーに好奇心を抱きつつも、取引に関わるメキシコの麻薬組織が、弁護士には容赦ないと警告する。
カウンセラーは動揺を隠せず、絶句するが、欲望は抑えられず、利益率4000%という数字に決断してしまう。
一方、自動車工場では、ドラム缶に入れたコカインをバキュームカーに隠す作業が行われていた。


こういう作品を目の当たりにすると、やはり人間というのはどうしようもない生きものであることを痛感する。
メキシコの麻薬組織をあげて、徹底的な悪に仕立て上げているが、とにかくハンパない。
美しい人間の女性でも容赦なく殺害し、見る影もない死体をごみ処理場にポイ捨てだし、殺される理由のない人間でも蟻を踏み潰す程度の感覚で殺害される。
そこには感情など存在せず、命乞いは無駄な抵抗に過ぎない。
本能に突き動かされた人間を、常識人にはもうどうすることもできないという現実を物語っている。


だが、この世に「善」などありはしないという究極の結論を突き付けられた気持ちは拭えず、絶望的だ。
とにかく興味本位だけで見てしまうと、大失敗する。
心身ともに健全な方で、どんな映画も肥やしにしたいと思っておられるエネルギッシュな方、限定かも。


2013年公開
【監督】リドリー・スコット
【出演】マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム、ブラッド・ピット




20130124aisatsu





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最終更新日  2015.07.04 07:03:15
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